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特許7560983ベシクル組成物およびそれを含有する化粧料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-25
(45)【発行日】2024-10-03
(54)【発明の名称】ベシクル組成物およびそれを含有する化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/63 20060101AFI20240926BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20240926BHJP
   A61K 8/68 20060101ALI20240926BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20240926BHJP
   A61K 8/39 20060101ALI20240926BHJP
   A61K 8/14 20060101ALI20240926BHJP
   A61Q 5/12 20060101ALI20240926BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
A61K8/63
A61K8/44
A61K8/68
A61K8/34
A61K8/39
A61K8/14
A61Q5/12
A61Q19/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020157948
(22)【出願日】2020-09-18
(65)【公開番号】P2021050200
(43)【公開日】2021-04-01
【審査請求日】2023-08-01
(31)【優先権主張番号】P 2019172186
(32)【優先日】2019-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000145862
【氏名又は名称】株式会社コーセー
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100147865
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 美和子
(72)【発明者】
【氏名】阿部 伎
【審査官】上坊寺 宏枝
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-255109(JP,A)
【文献】国際公開第2008/149601(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/056956(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)~(F);
(A)ジラウロイルグルタミン酸リシンナトリウム
(B)セラミド類
(C)フィトステロール
(D)モノステアリルグリセリンエーテル
(E)ジプロピレングリコール及び/又はトリプロピレングリコール
(F)水
を含有するベシクル組成物であり、
前記成分(B)の含有量がベシクル組成物中1.5~3.5質量%であることを特徴とす
るベシクル組成物。
【請求項2】
前記成分(A)~(C)の含有質量比(A):(B):(C)が3~5:5~6:10~
12である請求項1に記載のベシクル組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のベシクル組成物を配合することを特徴とする化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はベシクル組成物に関し、さらに詳細にはジラウロイルグルタミン酸リシンナトリウム、セラミド類、フィトステロール、モノステアリルグリセリンエーテルを含有するベシクル組成物に関する。更に該ベシクル組成物を配合した化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミド類は、毛髪中の細胞膜複合体において重要な構成成分であり、毛髪の損傷防止、さらに損傷修復に有用であると報告されている(例えば、特許文献1、2参照)。また、セラミド類は、皮膚においても細胞間脂質の主要な成分として存在し、バリア機能に大きく関与している。このため従来より、皮膚外用剤や毛髪化粧料などに、セラミド類を配合することが検討されてきた。しかしながら、セラミド類は、結晶性が高く、水にも油にも相溶性が悪いため、セラミド自体の配合量が限られたり、溶媒成分が増えることによるべたつき等の使用感の悪化や、経時変化による結晶析出等の安定性など、製剤化するうえでの問題点があった。
そのため、これまでもセラミド類を安定に配合する技術が検討されており、その中でも、ベシクル粒子の形態でセラミド類を安定化する方法が多く検討されてきた(例えば、特許文献3~5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-001953号公報
【文献】特開2008-255030号公報
【文献】特開2006-199634号公報
【文献】特開2008-019230号公報
【文献】特開2014-208626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような事情を鑑みてなされたものであり、セラミド類を高配合しても結晶析出がなく、経時安定性に優れたベシクル組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる実情に鑑み、本発明者は鋭意検討した結果、ジラウロイルグルタミン酸リシンナトリウム、フィトステロール、モノステアリルグリセリンエーテル、及びジラウロイルグルタミン酸リシンナトリウム、コレステロール及び/又はフィトステロール、モノステアリルグリセリンエーテルセラミド類を、特定の割合で組合せてベシクル形成することにより、上記の課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、下記に挙げられる実施態様に関するものであるが、これらに限定されるものではない。
〔1〕次の成分(A)~(F);
(A)ジラウロイルグルタミン酸リシンナトリウム
(B)セラミド類
(C)フィトステロール
(D)モノステアリルグリセリンエーテル
(E)ジプロピレングリコール及び/又はトリプロピレングリコール
(F)水
を含有するベシクル組成物であり、前記成分(B)の含有量が、ベシクル組成物中1.5~3.5質量%であるベシクル組成物。
〔2〕前記成分(A)~(C)の含有質量比(A):(B):(C)が3~5:5~6:10~12である〔1〕記載のベシクル組成物。
〔3〕前記ベシクル組成物を配合することを特徴とする化粧料。
【発明の効果】
【0007】
本発明のベシクル組成物は、セラミドを多く配合しながらも結晶析出がなく、セラミドの安定配合に優れるものである。さらに該ベシクル組成物を配合した化粧料は、経時安定性に優れ、セラミドの有効成分としての機能を長期にわたり発揮し得るものである。そのため、本発明のベシクル組成物およびそれを含有する化粧料は、高保湿あるいは肌荒れ改善用のスキンケア化粧料や、損傷補修あるいはハリ・コシ感の向上を目的とする毛髪化粧料として有用なものである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において、「~」はその前後の数値を含む範囲を意味するものとする。
【0009】
<成分(A)>
本発明に用いられる成分(A)ジラウロイルグルタミン酸リシンナトリウムは、構造的に疎水基と親水基とを分子内に2個ずつ有する、多鎖多親水基型の界面活性剤であり、ベシクルを形成するための必須成分である。成分(A)の市販品としては、ペリセアL-30(純固形分濃度30%;旭化成ファインケム社製)が挙げられる。
【0010】
本発明における成分(A)の含有量は、特に限定されないが、経時安定性の観点で、その下限は、ベシクル組成物中0.5質量%(以下、単に「%」と表す)以上であることが好ましく、1%以上であることがより好ましい。また成分(A)の含有量は、同様に、その上限は、3.0%以下であることが好ましく、2.0%以下であることがより好ましい。
【0011】
<成分(B)>
本発明に用いられる成分(B)セラミド類とは、セラミド及びその誘導体を包含するものであり、通常の化粧料等に使用できるものであれば限定されないが、以下のものとして定義することができる。すなわち、分子中に1個以上の長鎖の直鎖および/もしくは分岐アルキル又はアルケニル基、更に、少なくとも2個以上の水酸基、1個以上のアミド基(および/またはアミノ基)を有する非イオン系両親媒性物質、あるいは当該非イオン系両親媒性物質の水酸基にフォスファチジルコリン残基、または糖残基が結合した誘導体として表現される一連の化合物である。
【0012】
本発明のセラミド類は、天然抽出物であっても、合成物であってもよく、例えば、天然物由来のセラミド(例えば、動物由来のセラミド(ヒト型セラミド、ヒト以外の動物(例えば、ウマ)由来の天然セラミド)、および植物由来のセラミド)、および合成手法によって製造されるセラミド(例えば、合成セラミド、プソイドセラミド(合成擬似セラミド)、およびそれらの誘導体)などが挙げられる。またセラミド類の具体例としては、セラミド1、セラミド2、セラミド3、セラミド3B、セラミド4、セラミド5、セラミド6、セラミド6I、およびセラミド6IIが挙げられる。これらは、天然セラミドに分類される。セラミドの後の数字は、セラミドのタイプを表している。また、セラミド類として、セラミドNP、セラミドNG、セラミドNSなどが挙げられる。セラミドの後のアルファベット表記は、脂肪酸とスフィンゴイドとの組み合わせを表している。なお、セラミド類は、上記のように、機能や由来による分類表記(例えば、セラミド2)や、構造による分類表記(例えば、セラミドNS)など、複数の表記方法が存在しており、一部の成分について複数の表記方法による重複があるかもしれないが、本発明で使用するセラミド類は、その表記によって限定されるものではない。
また、本発明のセラミド類として、スフィンゴシン、フィトスフィンゴシンのリン脂質誘導体、つまりスフィンゴリン脂質が挙げられる。スフィンゴリン脂質の具体例としては、スフィンゴミエリン、フィトスフィンゴミエリンが挙げられる。また、本発明のセラミド類には、上記したセラミド類の配糖体であるグルコシルセラミドやセレブロシドが含まれ、また、ガングリオシドなどのスフィンゴ糖脂質およびフィトスフィンゴ糖脂質が含まれる。また、セラミド類は、適宜、それぞれのセラミド類がとり得る異性体の任意の混合比率の混合物の形態であってもよく、また、特定の異性体の形態であってもよい。これらのセラミド類は、前記の具体例の一種または二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0013】
セラミド類は、皮膚の水分を蒸散させないバリア機能、および毛髪の補修機能を果たし得るが、本発明におけるベシクル組成物として、皮膚や毛髪に適用された場合には、高い保湿効果、肌あれ改善機能と、毛髪にハリやコシを付与する効果を発揮し得る。そのため、本発明においては、前記セラミド類の中でも、天然セラミド類が好ましく、特にセラミドNGが好ましい。
【0014】
本発明における成分(B)の含有量は、ベシクル組成物中1.5~3.5%である。この範囲であると、経時安定性に優れるベシクル組成物が得られ、その効果を有用に発揮し得る。
【0015】
<成分(C)>
本発明に用いられる成分(C)フィトステロールは、植物性ステロール類の総称であり、詳細には、スチグマスタノール、カンペステロール、シトステロールなどを包含するものであり、通常の化粧料等に使用できるものであれば、特に限定されないが、例えば、小麦胚芽などの植物体から、複数のフィトステロールを含有するステロール分画を抽出して用いることができる。成分(C)の市販品としては、フィトステロールQI(エーザイフード・ケミカル社製)等が挙げられる。
【0016】
本発明における成分(C)の含有量は、特に限定されないが、経時安定性の観点で、その下限は、3.0%以上であることが好ましく、またその上限は、ベシクル組成物中6.0%以下であることが好ましく、4.5%以下であることがより好ましい。
【0017】
本発明のベシクル組成物において、前記成分(A)~(C)の含有質量比(A):(B):(C)が3~5:5~6:10~12であると、経時安定性が、より良好なものとなるため好ましい。
【0018】
<成分(D)>
本発明に用いられる成分(D)モノステアリルグリセリンエーテルは、ベシクル組成物における二分子膜構造の安定性に寄与しており、これを含有することで経時安定性を向上させることができる。
【0019】
本発明における成分(D)の含有量は、特に限定されないが、ベシクル組成物中1.0~1.6%が好ましい。この範囲であれば、経時安定性に優れるベシクル組成物を得ることができる。
【0020】
<成分(E)>
本発明に用いられる成分(E)ジプロピレングリコール及び/又はトリプロピレングリコールは、成分(B)を溶解するための溶媒としての効果に優れており、より経時安定性に優れるベシクル組成物を調製することができる。
本発明における成分(E)の含有量は、特に限定されず、成分(B)の含有量に応じて適宜決めることができるが、ベシクル組成物中9.0~35%が好ましく、さらに15.0~30.0%がより好ましい。
【0021】
<成分(F)>
本発明に用いられる成分(F)水は、化粧料や皮膚外用剤に使用されるものであれば特に制限はなく、精製水の他、本発明の効果を損なわない範囲において、例えば、硬水、天然水、海水、海洋深層水、電解アルカリイオン水、電解酸性イオン水、イオン水、クラスター水や、ラベンダー水、ローズ水、オレンジフラワー水などの植物由来の水蒸気蒸留水等の水を用いることができる。
本発明における成分(F)の含有量は、特に限定されないが、経時安定性の観点から、
ベシクル組成物中、概ね50~98%が好ましい。
【0022】
本発明のベシクル組成物の製造方法としては、種々の方法を用いることができるが、その一例としては、成分(A)、成分(F)を含む水系成分を85℃に加熱し、そこに95℃で加熱溶解させた成分(B)~成分(E)を攪拌混合した後、徐々に室温まで冷却することで得ることができる。
【0023】
本発明のベシクル組成物は、ベシクル組成物をそのまま化粧料とすることも可能であるが、該ベシクル組成物を0.1~90%の範囲で用いて、これに他の任意成分を配合して化粧料とすることも可能である。それらの化粧料は、特に限定されないが、化粧水、乳液、クリーム、アイクリーム、美容液、マッサージ料、パック料、ハンドクリーム、ボディクリーム等のスキンケア化粧料、ヘアリンス、ヘアトリートメント、ヘアエッセンス、ヘアクリーム、ヘアフォーム、ヘアスプレーなどの毛髪化粧料が挙げられる。特には、毛髪にハリやコシを付与する効果の点で、毛髪化粧料が好ましい。
【0024】
本発明のベシクル組成物及びそれを配合した化粧料には、前記成分(A)~(F)以外に、本発明の効果を妨げない範囲で、通常の化粧料に配合される任意成分、すなわち、油剤、アルコール類、粉体、水溶性高分子、皮膜形成剤、界面活性剤、油溶性ゲル化剤、有機変性粘土鉱物、樹脂、紫外線吸収剤、防腐剤、抗菌剤、香料、酸化防止剤、pH調整剤、キレート剤等を配合することができる。
【実施例
【0025】
以下に実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。尚、これらは本発明を何ら限定するものではない。
【0026】
実施例1~7、比較例1~9:ベシクル組成物
表1に示すベシクル組成物を下記製造方法により調製し、下記の評価方法に基づき、ベシクルの確認及び保存安定性試験を行った。また、毛髪への適用試験を行い、下記の判定基準により評価判定した。結果を併せて表1に示す。
【0027】
(製造方法)
A.成分(1)~(10)を110℃まで加温し、均一に混合溶解する。
B.成分(11)を85℃まで加温する。
C.Bを攪拌しながら徐々にAを加えて乳化し、室温まで冷却した後、ベシクル組成物を得た。
【0028】
【表1】
【0029】
(評価方法)
(イ)ベシクルの確認(直後)
調製直後の実施例1~7及び比較例1~9のサンプルについて、ベシクルの形成の確認として、二分子膜構造に起因するマルテーゼクロス像を、偏光顕微鏡を用いて観察した。観察されたマルテーゼクロス像の量について、以下の3段階判定基準を用いて判定した。
<判定基準>
(判定):(評価)
◎:マルテーゼクロス像が多数確認できる。
○:マルテーゼクロス像が多数は存在しないが、容易に確認できる。
×:マルテーゼクロス像が確認できない。
【0030】
(ロ)ベシクルの確認(経時)
ベシクル組成物の経時安定性確認として、保存試験を行った。室温下にて一ヶ月間、保存した実施例1~7及び比較例1~9のサンプルについて、ベシクルの残存状態を、偏光顕微鏡を用いてマルテーゼクロス像を観察することにより行った。確認されたマルテーゼクロス像の量について、組成物調整直後の状態と比較し、以下の3段階判定基準を用いて判定した。
<判定基準>
(判定):(評価)
○:マルテーゼクロス像が同様に確認できた。
△:マルテーゼクロス像は一部確認できるが、明らかに減少した。
×:マルテーゼクロス像は観察できなかった。
【0031】
(ハ)保存安定性(結晶析出)
ベシクル組成物の保存安定性確認として、実施例1~7及び比較例1~9のサンプルについて、光学顕微鏡を用いてベシクル粒子の観察を行った。その後、各試料を50℃の恒温槽にて1ヵ月保存し、セラミドの結晶析出を目視にて、またベシクル粒子の観察を光学顕微鏡を用いて行い、以下の4段階判定基準を用いて判定した。
<判定基準>
(判定):(評価)
◎:結晶析出もなく、ベシクルの形態についても全く変化は認められない。
○:結晶析出もほとんどなく、またベシクルの形態についてもほとんど変化は認められない。
△:結晶析出及び/又はベシクルの形態について、やや変化が認められる。
×:結晶析出及び/又はベシクルの形態について明らかに変化が認められる。
【0032】
(ニ)毛髪補修効果(毛髪破断強度の比較)
ベシクル組成物の毛髪への適用評価として、毛髪破断強度測定を次の手順にて行い、標準品との相対比較を行うことにより、毛髪補修効果について、下記の4段階判定基準を用いて判定した。
1.実施例1~7及び比較例1~9のサンプルに、同一人由来の毛髪を1時間浸漬する。
2.1時間浸漬した毛髪を取り出し、ドライヤーで表面の水分を除去する。
3.2の毛髪の1本をEZテスター(島津製作所製製)を用いて、毛髪の破断時の応力を測定する。10本測定し、破断応力の平均値を求める。
4.比較例6(標準品)の破断応力の平均値を100としたときの、その他サンプルの値を算出し、その比較から、毛髪破断強度の向上度合いを毛髪補修効果として判定した。
<判定基準>
(判定):(比較値)
◎:120以上
〇:110以上~120未満
△:105以上~110未満
×:105未満
【0033】
(ホ)ハリコシ感(純曲げ試験)
ベシクル組成物の毛髪への適用評価として、純曲げ試験を次の手順にて行い、標準品との相対比較を行うことにより、適用後の毛髪のハリコシ感について、下記の4段階判定基準を用いて判定した。
1.実施例1~7及び比較例1~9のサンプルに、同一人由来の毛髪を1時間浸漬する。
2.1時間浸漬した毛髪を取り出し、毛髪表面の試料をキムタオルにて除去し、25℃恒温恒湿槽にて24時間放置する。
3.30mm間隔で並べた長さ10mm、幅15mmの方眼紙2枚に、毛髪100本を1mm間隔に10本貼り付け、測定サンプルとした。測定サンプルを、毛髪こし感テスター(KES-FB2-S カトーテック社製)にセットし、曲げモーメント(M)を測定した(測定は往復させた)。測定は5回行い、結果はその平均値を用いた。往復させて測定した際のヒステリシス曲線から、曲率0.5における曲げモーメント(M)の差を求め、曲げ回復性(2HB)を算出した。なお、曲げ回復性(2HB)は人間が物体を曲げて元に戻すときに感じる回復性(弾力性)の指標となり、値が小さいほど回復性(弾力性)が良いことを表す。
<測定条件>
曲率速度:0.5cm-1/SEC
曲率範囲:±2.5cm-1
クランプ間隔:1cm
4.比較例6(標準品)の2HBの平均値を1としたときの、その他サンプルの値を算出し、その比較から、ハリコシ感の向上について、以下の判定基準に従って判定した。
<判定基準>
(判定):(比較値)
◎:0.85未満
〇:0.85~0.95未満
△:0.95以上
【0034】
(ヘ)なめらかさ
化粧品評価専門パネル10名に、実施例1~7及び比較例1~9の各試料を髪に使用してもらい、その後ドライヤーで十分に乾燥させ、毛髪表面のなめらかさについて、各自が以下の5段階判評価基準に従って、評価を行い、更に全パネルの評点の平均値を算出し、下記の3段階判定基準を用いて判定した。
<評価基準>
(評価) :(評点)
非常に感じる : 5点
やや感じる : 4点
普通 : 3点
あまり感じない: 2点
感じない : 1点
<判定基準>
(全パネルの評点の平均値):(判定)
平均点4.5以上 : ◎(なめらかさにとても優れる)
平均点3.5以上4.5未満: ○(なめらかさに優れる)
平均点3.5未満 : △
【0035】
表1の結果から明らかなように、実施例1~7は、各評価項目において優れるものであった。一方、成分(A)あるいは成分(C)を含有しない比較例1、3は、ベシクルの形成が確認できず、その他の評価項目に関して、未測定である。成分(D)を含有しない比較例2は、製造直後にベシクル形成が確認できるものの、経時安定性に劣り、結晶析出がみられるものであった。また、毛髪補修効果、ハリコシ感、なめらかさの点においても劣る結果となった。成分(B)の含有量が多い比較例4、5は、セラミドの結晶析出が確認され、保存安定性に劣るものであった。また、セラミド析出によって毛髪補修効果にも劣り、なめらかさも損なわれるものであった。成分(B)の含有量が少ない比較例6、7、9は、特に毛髪補修の観点で劣るものであった。成分(E)を含有しない比較例8は、ベシクル組成物の保存安定性に劣り、ハリコシ感、なめらかさ等の点で劣るものであった。
【0036】
実施例8:ヘアトリートメント
(成分) (%)
1.塩化ベヘニルトリメチルアンモニム 1.5
2.セトステアリルアルコール 4.5
3.ベヘニルアルコール 1.5
4.ジメチルポリシロキサン(25℃において100mPa・s) 10.0
5.ジメチルポリシロキサン(25℃において100000mPa・s) 1.5
6.水添ヤシ油 0.5
7.オリーブ脂肪酸エチル 0.5
8.エチルヘキサン酸セチル 0.5
9.グリセリン 1.0
10.ジプロピレングリコール 1.5
11.プロピレングリコール 2.0
12.クエン酸 0.01
13.クエン酸Na 0.01
14.精製水 残量
15.エタノール 0.5
16.香料 0.5
17.実施例1で得られたベシクル組成物 5.0
【0037】
(製造方法)
A:No.1~8を70℃で均一に加熱混合溶解する。
B:No.9~14を70℃で均一に加熱混合溶解する。
C:BにAを添加し、乳化混合する。
D:Cを冷却し、No.15~17を添加し、ヘアトリートメントを得た。
(結果)
実施例8のヘアトリートメントは、セラミドの結晶析出がなく、使用時の浸透感も良好であり、乾燥後の髪の滑らかさ、ハリコシ感にも優れるものであった。
【0038】
実施例9:アウトバス用ヘアミルク
(成分) (%)
1.塩化ベヘニルトリメチルアンモニム 1.0
2.セトステアリルアルコール 1.2
3.ベヘニルアルコール 1.0
4.ジメチルポリシロキサン(25℃において6mPa・s) 5.0
5.オレイン酸エチル 1.0
6.イソノナン酸イソトリデシル 0.8
7.イソノナン酸イソノニル 0.5
8.エチルヘキサン酸セチル 1.5
9.POE(60)硬化ヒマシ油 0.2
10.ジプロピレングリコール 1.0
11.クエン酸 0.1
12.香料 0.3
13.エタノール 5.0
14.精製水 残量
15.実施例1で得られたベシクル組成物 5.0
【0039】
(製造方法)
A:No.1~9を70℃で均一に加熱混合溶解する。
B:No.10、11、14を70℃で均一に加熱混合溶解する。
C:BにAを添加し、乳化混合する。
D:Cを冷却し、No.12、13、15を添加し、アウトバス用ヘアミルクを得た。
(結果)
実施例9のアウトバス用ヘアミルクは、セラミドの結晶析出がなく、使用時の浸透感も良好であり、塗布時の滑らかさや、仕上がりの指通り、ハリコシ感にも優れるものであった。
【0040】
実施例10:乳液
(成分) (%)
1.モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20モル)ソルビタン 1.0
2.セトステアリルアルコール 1.5
3.エチルヘキサン酸セチル 1.0
4.ジメチルポリシロキサン(25℃において100mPa・s) 1.0
5.トリエチルヘキサノイン 2.0
6.POE(20)硬化ヒマシ油 0.2
7.ジプロピレングリコール 1.0
8.グリセリン 0.1
9.カルボキシビニルポリマー 0.2
10.水酸化ナトリウム 0.05
11.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
12.香料 0.3
13.エタノール 5.0
14.精製水 残量
15.実施例1で得られたベシクル組成物 5.0
【0041】
(製造方法)
A:No.1~6を70℃で均一に加熱混合溶解する。
B:No.14にNo.7~11を70℃で均一に加熱混合溶解する。
C:BにAを添加し、乳化混合する。
D:Cを冷却し、No.12、13、15を添加し、乳液を得た。
(結果)
実施例10の乳液は、セラミドの結晶析出がなく経時安定性が良好であり、使用時には浸透感にも優れ、肌荒れ改善効果を十分に発揮するものであった。