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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-25
(45)【発行日】2024-10-03
(54)【発明の名称】エンジン制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 41/32 20060101AFI20240926BHJP
   F02D 45/00 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
F02D41/32
F02D45/00 368F
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020170832
(22)【出願日】2020-10-09
(65)【公開番号】P2022062733
(43)【公開日】2022-04-21
【審査請求日】2023-09-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100100413
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 温
(72)【発明者】
【氏名】出蔵 恭平
(72)【発明者】
【氏名】田中 雄大
【審査官】上田 真誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-170165(JP,A)
【文献】特開平03-286159(JP,A)
【文献】特開2003-027991(JP,A)
【文献】特開2005-076529(JP,A)
【文献】特開2009-162203(JP,A)
【文献】特開2017-201160(JP,A)
【文献】特開2015-190318(JP,A)
【文献】特開2009-270481(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 41/00-45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼室内に燃料を噴射する第1の噴射と、前記第1の噴射の後に前記第1の噴射よりも少量の燃料を噴射して点火栓の周囲に前記第1の噴射により形成された混合気よりも燃料リッチな混合気を形成する第2の噴射とを行うインジェクタを有する燃料噴射装置を備えるエンジンを制御するエンジン制御装置であって、
前記第1の噴射を行う際の前記インジェクタの噴射量特性を学習する第1の学習、および、前記第2の噴射を行う際の前記インジェクタの噴射量特性を学習する第2の学習を行う噴射量学習部を備え、
前記燃料噴射装置は、前記第1の噴射により前記燃焼室内に均質の混合気を形成し、その後前記第2の噴射により点火栓近傍に周囲よりも燃料リッチな混合気を形成し、前記燃焼室の平均空燃比が理論空燃比に対して燃料リーンなリーン燃焼を行わせるリーン燃焼制御を実行し、
前記噴射量学習部は、
メモリクリア後に前記第2の学習が所定回数以上行われた履歴があるか否かを判断し、
前記第2の学習が所定回数以上行われた履歴がないことを示す未了の状態において前記第1の学習を行うときの前記第1の学習の終了が判定される条件を、前記第2の学習が所定回数以上行われた履歴があることを示す完了の状態において前記第1の学習を行うときの前記第1の学習の終了が判定される条件に対して、前記第1の学習の終了が早期化されるよう変更し、
前記第2の学習が前記未了の状態において行われる前記第1の学習の終了後に、前記第2の学習を行い、
前記燃料噴射装置は、前記第2の学習が前記未了の状態においては、前記リーン燃焼制御の実行を禁止すること、
を特徴とするエンジン制御装置。
【請求項2】
前記エンジンは、一時的に貯蔵された燃料蒸発ガスを吸気装置に導入する燃料蒸発ガス処理装置と、
前記燃料蒸発ガス処理装置から導入される前記燃料蒸発ガスの濃度を学習する第3の学習を行う燃料蒸発ガス濃度学習部とを備え、
前記噴射量学習部は、前記第2の学習が前記未了の状態においては、前記第2の学習を前記第3の学習よりも優先して実行すること
を特徴とする請求項1に記載のエンジン制御装置。
【請求項3】
前記噴射量学習部は、前記第1の噴射における前記インジェクタの噴射時間と空燃比との相関に基づいて前記第1の学習を行うとともに、前記第2の噴射における前記インジェクタの駆動電圧と空燃比との相関に基づいて前記第2の学習を行うこと
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエンジン制御装置。
【請求項4】
前記燃料噴射装置は、前記インジェクタに供給される燃圧が異なった状態で前記第2の噴射を行う機能を有し、
前記第2の学習は、異なった複数水準の燃圧に対してそれぞれ実行されること
を特徴とする請求項1から請求項までのいずれか1項に記載のエンジン制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直噴式の燃料噴射装置を有するエンジンを制御するエンジン制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車等に搭載されるガソリンエンジンにおいて、燃焼の安定化や排ガスのエミッションコントロールのため、空燃比を精度よく制御することが重要である。
このため、例えばインジェクタ等の構成部品のばらつきや、燃料蒸発ガス処理装置からエンジンの吸気装置へ導入されるパージガス(エバポ)の濃度を学習し、燃料噴射制御に反映させることが求められる。
【0003】
空燃比の制御精度を改善するための学習補正に関する従来技術として、例えば特許文献1には、リーン燃焼モードでの空燃比制御の精度を確保するため、ストイキ燃焼モードにおける噴射量学習を実施したこと、ストイキ燃焼モードにおけるエバポ濃度学習を実施したこと等を、ストイキ燃焼モードからリーン燃焼モードへ切り替えることが可能な条件とすることが記載されている。
特許文献2には、燃焼室内に燃料を噴射する主燃料インジェクタ、及び、吸気通路内に燃料を噴射する補助燃料インジェクタを有するエンジンにおいて、補助燃料インジェクタの作動、非作動の切替時には、空燃比エラーによる誤学習を防止するため、所定の時間にわたって空燃比学習を禁止することが記載されている。
また、火花点火式直噴エンジンの燃料噴射制御に関する従来技術として、特許文献3には、吸気行程中の燃料噴射により燃焼室全体にストイキよりも比較的リーンな均質混合気を形成するとともに、圧縮行程中の燃料噴射により点火栓周りにストイキよりも比較的リッチな混合気を形成して燃焼させる成層燃焼を行うことが記載されている。
特許文献4には、上部中央に点火プラグを有する気筒内にタンブル流を発生させ、タンブル流の高速部が筒内インジェクタに向かって移動する時期に高速部に向けて燃料を噴射し、良好な成層燃焼を得ることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020- 33933号公報
【文献】特開平11-351011号公報
【文献】特開平11-324765号公報
【文献】特開2016-130495
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
リーン燃焼時に、主に要求空燃比を実現するためのメイン噴射に加えて、着火性、燃焼安定性を担保するために点火栓周囲を燃料リッチ雰囲気にするアシスト噴射を行う場合、インジェクタに印加する噴射信号に対する噴射量特性にはインジェクタ毎の個体差が存在するため、要求したアシスト噴射量を精度よく実現できない場合がある。このような場合には、着火性を確保するために必要な燃料を噴射することができず、失火の原因となる場合がある。
安定したリーン燃焼を成立させるためには、燃料噴射量が微小であるアシスト噴射におけるインジェクタの噴射量特性を学習し、噴射量のばらつきを抑制する必要がある。
通常、アシスト噴射時におけるインジェクタの噴射量特性の学習は、例えば、新車製造時や、バッテリの取り外しによるECUのメモリクリアの後、初回始動時におけるストイキ燃焼時に行われる。
【0006】
一方、上述したアシスト噴射におけるインジェクタの噴射量特性以外にも、比較的燃料噴射量が大きいメイン噴射におけるインジェクタの噴射量特性や、燃料蒸発ガス処理装置のキャニスタから導入されるエバポガスの濃度などの学習を行うことが求められる。
これらはいずれも要求空燃比に対して、排気装置に設けられる空燃比センサで検知する実空燃比の偏差を、メイン噴射の噴射信号にフィードバックするものである。
リーン燃焼においては、一般に、ストイキ燃焼よりも緻密な空燃比の制御が求められることから、上述した各学習を精度よく実施する必要がある。
これらの各学習は、精度を担保するためには同時に行うことはできず、時系列で順次行う必要があるが、メイン噴射におけるインジェクタの噴射量特性、エバポガスの濃度学習に時間を要し、アシスト噴射におけるインジェクタの噴射量特性の学習完了までの期間が長期化すると、リーン燃焼を実施できない状態が長引くことから、車両の燃費が悪化してしまう。
上述した問題に鑑み、本発明の課題は、空燃比の制御精度を確保しつつリーン燃焼を早期に実行可能なエンジン制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下のような解決手段により、上述した課題を解決する。
本発明の一態様によれば、燃焼室内に燃料を噴射する第1の噴射と、前記第1の噴射の後に前記第1の噴射よりも少量の燃料を噴射して点火栓の周囲に前記第1の噴射により形成された混合気よりも燃料リッチな混合気を形成する第2の噴射とを行うインジェクタを有する燃料噴射装置を備えるエンジンを制御するエンジン制御装置であって、前記第1の噴射を行う際の前記インジェクタの噴射量特性を学習する第1の学習、および、前記第2の噴射を行う際の前記インジェクタの噴射量特性を学習する第2の学習を行う噴射量学習部を備え、前記燃料噴射装置は、前記第1の噴射により前記燃焼室内に均質の混合気を形成し、その後前記第2の噴射により点火栓近傍に周囲よりも燃料リッチな混合気を形成し、前記燃焼室の平均空燃比が理論空燃比に対して燃料リーンなリーン燃焼を行わせるリーン燃焼制御を実行し、前記噴射量学習部は、メモリクリア後に前記第2の学習が所定回数以上行われた履歴があるか否かを判断し、前記第2の学習が所定回数以上行われた履歴がないことを示す未了の状態において前記第1の学習を行うときの前記第1の学習の終了が判定される条件を、前記第2の学習が所定回数以上行われた履歴があることを示す完了の状態において前記第1の学習を行うときの前記第1の学習の終了が判定される条件に対して、前記第1の学習の終了が早期化されるよう変更し、前記第2の学習が前記未了の状態において行われる前記第1の学習の終了後に、前記第2の学習を行い、前記燃料噴射装置は、前記第2の学習が前記未了の状態においては、前記リーン燃焼制御の実行を禁止すること、を特徴とする。
発明によれば、少量の燃料を噴射する際の噴射量特性に係る第2の学習が未了の状態においては、第1の学習の終了が判定される条件を、第1の学習の終了が早期化されるよう変更することにより、第1の学習、第2の学習がともに終了する時期を早期化し、第2の噴射の燃料噴射量精度を確保してリーン燃焼が実施可能となる時期を早期化することができる。
【0008】
本発明において、前記エンジンは、一時的に貯蔵された燃料蒸発ガスを吸気装置に導入する燃料蒸発ガス処理装置と、前記燃料蒸発ガス処理装置から導入される前記燃料蒸発ガスの濃度を学習する第3の学習を行う燃料蒸発ガス濃度学習部とを備え、前記噴射量学習部は、前記第2の学習が前記未了の状態においては、前記第2の学習を前記第3の学習よりも優先して実行する構成とすることができる。
これによれば、第2の学習が未了である場合には、第3の学習よりも第2の学習を優先して実行することにより、リーン燃焼が実施可能となる時期をより確実に早期化することができる。
例えば、原則として第2の学習を第3の学習に対して優先して行うとともに、例えばキャニスタの吸着量が過多であるなどの理由により第3の学習を行う緊急性を有する場合にのみ第3の学習を第2の学習に優先させる構成とすることができる。
【0009】
本発明において、前記噴射量学習部は、前記第1の噴射における前記インジェクタの噴射時間と空燃比との相関に基づいて前記第1の学習を行うとともに、前記第2の噴射における前記インジェクタの駆動電圧と空燃比との相関に基づいて前記第2の学習を行う構成とすることができる。
これによれば、第1の噴射において用いられる噴射量の領域と、第2の噴射において用いられる噴射量の領域とにおいて、それぞれの噴射量特性を適切に反映させた学習を行うことが可能であり、空燃比制御の精度を向上することができる。
【0010】
本発明において、前記燃料噴射装置は、前記インジェクタに供給される燃圧が異なった状態で前記第2の噴射を行う機能を有し、前記第2の学習は、異なった複数水準の燃圧に対してそれぞれ実行される構成とすることができる。
これによれば、インジェクタに供給される燃圧が変化する場合であっても空燃比制御の精度を確保することができる。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、本発明によれば、空燃比の制御精度を確保しつつリーン燃焼を早期に実行可能なエンジン制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明を適用したエンジン制御装置の実施形態を有するエンジンの構成を模式的に示す図である。
図2】実施形態におけるインジェクタの噴射量特性の一例を模式的に示す図である。
図3】実施形態のエンジン制御装置における空燃比制御に関する学習処理を示すフローチャートである。
図4】実施形態におけるベース空燃比学習、エバポ濃度学習、プレQmin学習の実施状態を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を適用したエンジン制御装置の実施形態について説明する。
実施例のエンジン制御装置は、例えば、乗用車等の自動車に走行用動力源として搭載される水平対向4気筒のガソリン直噴ターボ過給エンジン、及び、その補機類を統括的に制御するものである。
【0014】
図1は、実施形態のエンジン制御装置を有するエンジンの構成を模式的に示す図である。
エンジン1は、クランクシャフト10、シリンダブロック20、シリンダヘッド30、ターボチャージャ40、インテークシステム50、エキゾーストシステム60、キャニスタ70、EGR装置80、エンジン制御ユニット(ECU)100等を有して構成されている。
【0015】
クランクシャフト10は、エンジン1の出力軸となる回転軸である。
クランクシャフト10の一方の端部には、図示しない変速機等の動力伝達機構が接続されている。
クランクシャフト10には、図示しないコンロッドを介してピストンが連結されている。
クランクシャフト10の端部には、クランクシャフトの角度位置を検出するクランク角センサ11が設けられている。
クランク角センサ11の出力は、ECU100に伝達される。
【0016】
シリンダブロック20は、クランクシャフト10を、車体に縦置き搭載する場合における左右方向から挟みこむように二分割として構成されている。
シリンダブロック20の中央部には、クランクシャフト10を収容するとともに、クランクシャフト10を回転可能に支持するメインベアリングを有するクランクケース部が設けられている。
クランクケース部を挟んで左右に配置されるシリンダブロック20の左右バンクの内部には、ピストンが挿入され内部で往復するシリンダが例えば一対ずつ(4気筒の場合)形成されている。
【0017】
シリンダヘッド30は、シリンダブロック20のクランクシャフト10とは反対側の端部(左右端部)にそれぞれ設けられている。
シリンダヘッド30は、燃焼室31、点火プラグ32、吸気ポート33、排気ポート34、吸気バルブ35、排気バルブ36、吸気カムシャフト37、排気カムシャフト38等を備えて構成されている。
燃焼室31は、シリンダヘッド30のピストン冠面と対向する箇所を、例えばペントルーフ状に凹ませて形成されている。
点火プラグ32は、燃焼室31の中央に設けられ、ECU100からの点火信号に応じてスパークを発生し、混合気に点火するものである。
【0018】
吸気ポート33は、燃焼用空気(新気)を燃焼室31に導入する流路である。
排気ポート34は、燃焼室31から既燃ガス(排ガス)を排出する流路である。
吸気バルブ35、排気バルブ36は、吸気ポート33、排気バルブ34を所定のバルブタイミングで開閉するものである。
吸気バルブ35、排気バルブ36は、各気筒に例えば2本ずつ設けられる。
吸気バルブ35、排気バルブ36は、クランクシャフト10の1/2の回転数で同期して回転する吸気カムシャフト37、排気カムシャフト38によって開閉される。
吸気カムシャフト37、排気カムシャフト38のカムスプロケット部には、各カムシャフトの位相を進角、遅角させて各バルブの開弁時期、閉弁時期を変化させる図示しないバルブタイミング可変機構が設けられている。
【0019】
ターボチャージャ40は、エンジン1の排気が有するエネルギを利用して、燃焼用空気(新気)を圧縮し、過給する過給機である。
ターボチャージャ40は、タービン41、コンプレッサ42、エアバイパス流路43、エアバイパスバルブ44、ウェイストゲート流路45、ウェイストゲートバルブ46等を備えている。
タービン41は、エンジン1の排ガスによって回転駆動される。
コンプレッサ42は、タービン41に同軸に取り付けられ、タービン41によって回転駆動され空気を圧縮する。
【0020】
エアバイパス流路43は、コンプレッサ42の下流側から空気の一部を抽出し、コンプレッサ42の上流側に還流させるものである。
エアバイパスバルブ44は、エアバイパス流路43に設けられ、ECU100からの指令に応じてエアバイパス流路43を実質的に閉塞する閉状態と、エアバイパス流路43を空気が通過可能な開状態とを、二段階に切換えるものである。
エアバイパスバルブ44は、電動アクチュエータによって開閉駆動される弁体を有する電動バルブとなっている。
エアバイパスバルブ44は、例えば、スロットルバルブ56を急激に閉じた場合等に、ターボチャージャ40のサージング防止やブレードの保護等を図るため開状態とされ、コンプレッサ42よりも下流側の吸気管内の空気をコンプレッサ42の上流側に還流させ、余剰圧力を低減させる。
【0021】
ウェイストゲート流路45は、過給圧制御や触媒の昇温等を目的として、タービン41の上流側から排ガスの一部を抽出し、タービン41の下流側にバイパスさせるものである。
ウェイストゲート流路45は、タービン41のハウジングに一体に形成されている。
ウェイストゲートバルブ46は、ウェイストゲート流路45に設けられ流路を開閉する弁体を有し、ウェイストゲート流路45を通過する排ガスの流量を制御するものである。
ウェイストゲートバルブ46は、ECU100からの指令に応じて弁体を開閉駆動する電動アクチュエータを有する電動ウェイストゲートバルブである。
ウェイストゲートバルブ46は、全開状態と全閉状態とを切換可能であるとともに、これらの中間位置においても任意の開度設定が可能となっている。
【0022】
インテークシステム50は、空気を導入して吸気ポート33に導入するものである。
インテークシステム50は、インテークダクト51、チャンバ52、エアクリーナ53、エアフローメータ54、インタークーラ55、スロットルバルブ56、インテークマニホールド57、吸気圧センサ58、インジェクタ59等を備えて構成されている。
【0023】
インテークダクト51は、外気を導入して吸気ポート33に導入する流路である。
チャンバ52は、インテークダクト51の入口部近傍に連通して設けられた空間部である。
エアクリーナ53は、インテークダクト51におけるチャンバ52との連通箇所の下流側に設けられ、空気を濾過してダスト等を取り除くものである。
エアフローメータ54は、エアクリーナ53の出口近傍に設けられ、インテークダクト51内を通過する空気流量を計測するものである。
エアフローメータ54の出力は、ECU100に伝達される。
ターボチャージャ40のコンプレッサ42は、エアフローメータ54の下流側に設けられている。
【0024】
インタークーラ55は、インテークダクト51におけるコンプレッサ42の下流側に設けられ、例えば走行風等との熱交換によって、圧縮され高温となった空気を冷却する熱交換器である。
スロットルバルブ56は、インテークダクト51におけるインタークーラ55の下流側に設けられ、空気の流量を調節してエンジン1の出力を制御するバタフライバルブである。
スロットルバルブ56は、ドライバによる図示しないアクセルペダル操作等に応じて、図示しないスロットルアクチュエータによって開閉駆動される。
また、スロットルバルブ56には、その開度を検出するスロットルセンサが設けられ、その出力はECU100に伝達される。
インテークマニホールド57は、スロットルバルブ56の下流側に設けられ、空気を各気筒の吸気ポート33に分配する分岐管である。
吸気圧センサ58は、インテークマニホールド57内の空気の圧力(吸気圧力)を検出するものである。
吸気圧センサ58の出力は、ECU100に伝達される。
インジェクタ59は、インテークマニホールド57のシリンダヘッド30側の端部に設けられ、ECU100により指令される噴射信号に応じて、燃焼室31内に燃料を噴射して混合気を形成するものである。
【0025】
エキゾーストシステム60は、排気ポート34から排出された排ガスを外部に排出するものである。
エキゾーストシステム60は、エキゾーストマニホールド61、エキゾーストパイプ62、三元触媒63、吸蔵還元触媒64、サイレンサ65、空燃比センサ66、67等を有して構成されている。
エキゾーストマニホールド61は、各気筒の排気ポート34から出た排ガスを集合させる集合管である。
ターボチャージャ40のタービン41は、エキゾーストマニホールド61の下流側に配置されている。
エキゾーストパイプ62は、タービン41から出た排ガスを外部に排出する管路である。
【0026】
三元触媒63、エキゾーストパイプ62の中間部分に設けられている。
三元触媒63は、排ガス中のHC、NOx、CO等を浄化するものである。
三元触媒63は、タービン41の出口に隣接して設けられている。
三元触媒は、空燃比が理論空燃比(ストイキ)近傍である所定の活性範囲において浄化機能を発揮する。
【0027】
吸蔵還元触媒64は、エキゾーストパイプ62の中間部分でありかつフロント触媒63の下流側(出口側)に設けられている。
リア触媒64は、空燃比リーンでエンジン1が運転される際に排ガス中のNOを一時的に吸蔵するとともに、空燃比リッチでの運転時に、燃料を還元剤としてNOを還元処理するリーンノックストラップ触媒(LNT)である。
吸蔵還元触媒64の入口部、出口部には、排ガス中のNO濃度を検出する図示しないNOセンサが設けられる。
【0028】
サイレンサ65は、エキゾーストパイプ62の出口近傍に設けられ、排ガスの音響エネルギを低減するものである。
空燃比センサ66は、タービン41の出口と三元触媒63の入口との間に設けられている。
空燃比センサ67は、三元触媒63の出口と吸蔵還元触媒64の入口との間に設けられている。
空燃比センサ66、リアOセンサ67は、ともに排ガス中の酸素濃度に応じた出力電圧を発生することによって、排ガス中の酸素量を検出するリニア出力センサである。
空燃比センサ66、67の出力は、ともにECU100に伝達される。
【0029】
キャニスタ(チャコールキャニスタ)70は、エンジン1の燃料として用いられるガソリンが貯留される図示しない燃料タンクで発生した燃料蒸発ガス(エバポ)が導入され、一時的に吸蔵される燃料蒸発ガス処理装置である。
キャニスタ70は、燃料蒸発ガスを一時的に吸着可能な活性炭を、樹脂製の筐体であるキャニスタケース内に収容して構成されている。
【0030】
キャニスタ70は、主に非過給時用のパージライン71、パージコントロールバルブ72、及び、主に過給時用のパージライン73、パージコントロールバルブ74等を備えて構成されている。
【0031】
パージライン71は、両端部がキャニスタ70、及び、インテークマニホールド57にそれぞれ接続され、これらの内部間を連通させる流路である。
パージライン71は、インテークマニホールド57内が負圧となる非過給時に、キャニスタ70から放出された燃料蒸発ガスからなるパージガスを、インテークマニホールド57内に導入するものである。
パージコントロールバルブ(PCV)72は、パージライン71の途中に設けられたデューティ制御ソレノイドバルブである。
PCV72は、ECU100からの指令に応じて、開状態と閉状態との切換、及び、開状態における開度の設定が可能となっている。
【0032】
パージライン73は、両端部がキャニスタ70、及び、インテークダクト51におけるコンプレッサ42の入口部に隣接する領域に接続され、これらの内部間を連通させる流路である。
パージライン73は、インテークマニホールド57内が正圧となり、パージライン71によるパージガスの導入が困難となる過給時に、パージガスをコンプレッサ42よりも上流側のインテークダクト51内に導入するものである。
パージコントロールバルブ(PCV)74は、パージライン73の途中に設けられた電磁弁である。
PCV74は、ECU100からの指令に応じて、開状態と閉状態との切換が可能となっている。
【0033】
EGR装置80は、例えば部分負荷時のポンプ損失の低減、燃焼温度の抑制による冷却損失の低減、NOの発生抑制などを目的として、排気装置60から抽出した排ガスをインテークマニホールド57に導入(再循環)させるものである。
EGR装置80は、EGRライン81、EGRバルブ82、EGRクーラ83等を備えている。
【0034】
EGRライン81は、排ガス流路の一部からインテークマニホールド57に排ガスを導入する管路である。
EGRライン81は、図1に示す例ではエキゾーストパイプ62から排ガスを抽出しているが、エキゾーストマニホールド61や、排気ポート34から抽出する構成としてもよい。
EGRバルブ82は、ECU100からの指令に応じて、EGRライン81をEGRガス(排ガス)が通流可能な開状態と、EGRライン81が閉塞された閉状態とを切り替えるとともに、開状態における開度(排ガス流量)を調節可能となっている。
EGRクーラ83は、EGRライン81の途中に設けられ、排ガスを例えばエンジン1の冷却水や走行風などとの熱交換により冷却するものである。
【0035】
エンジン制御ユニット(ECU)100は、エンジン1及びその補機類を統括的に制御するものである。
ECU100は、CPU等の情報処理手段、RAMやROM等の記憶手段、入出力インターフェイス及びこれらを接続するバス等を備えて構成されている。
また、ECU100には、ドライバによる図示しないアクセルペダルの踏み込み量を検出するアクセルペダルセンサ101が設けられている。
ECU100は、アクセルペダルセンサ101の出力等に基づいて、ドライバ要求トルクを設定する機能を備えている。
ECU100は、エンジン1が実際に発生するトルクが、設定されたドライバ要求トルクに近づくよう、スロットルバルブ開度、過給圧、燃料噴射量、点火時期、バルブタイミング等を制御する。
【0036】
また、ECU100は、エンジンの負荷状態に応じて、燃焼室31内の空燃比が理論空燃比近傍となるストイキ燃焼による運転と、ストイキ燃焼に対して燃料リーン雰囲気となるリーン燃焼による運転とを切り替える機能を有する。
ストイキ燃焼においては、例えば吸気行程における単一の噴射(メイン噴射)によって、燃焼室31内に均質の混合気を形成する。
リーン燃焼においては、例えば吸気行程における噴射(メイン噴射)によって、燃焼室31内に均質かつストイキ燃焼に対して燃料リーンとなる混合気を形成するとともに、圧縮行程におけるメイン噴射よりも少量の噴射(アシスト噴射)によって、点火プラグ32の周囲に、他の部分よりも相対的に燃料リッチとなる混合気を形成し、成層燃焼を行う。
【0037】
ECU100は、メイン噴射において用いられる燃料噴射量の領域において、インジェクタ59に供給されるパルス状の電圧(噴射信号)の噴射パルス幅(噴射時間と同等)に対する燃料噴射量の相関を学習するベース空燃比学習(第1の学習)を行う機能を有する。
また、ECU100は、アシスト噴射において用いられる燃料噴射量の領域(インジェクタ59の最小燃料噴射量Qmin近傍の領域)において、噴射信号の電圧に対する燃料噴射量の相関を学習するQmin学習(第2の学習)を行う機能を有する。
なお、実際の燃料噴射制御においては、インジェクタ59の最小燃料噴射量Qmin近傍の領域(インジェクタ59が全開まで開弁しない領域)における燃料噴射量は、仮にインジェクタ59が全開まで開弁したと仮定した場合に、当該燃料噴射量を噴射するために要求される仮想的な噴射パルス幅によって表現している。
したがって、Qmin学習においては、仮想的な噴射パルス幅(噴射時間)と、噴射信号の電圧との相関を学習する構成とすることができる。
なお、Qmin学習のなかでも、例えばECU100のRAMがリセット(メモリクリア)された後、初回のリーン燃焼が許可される前に行われるものを、以下プレQmin学習と称して説明する。
【0038】
図2は、実施形態におけるインジェクタの噴射量特性の一例を模式的に示す図である。
図2において、横軸は噴射信号のパルス幅を示し、縦軸は燃料噴射量を示している。
図2に示すように、比較的噴射量が大きいベース空燃比学習の対象領域においては、燃料噴射量は、噴射信号のパルス幅の増加に応じて、概ねリニアに増加する特性を示す。
このことは、メイン噴射の領域においては、燃料噴射量は、パルス幅すなわち噴射時間により制御可能であることを示している。
一方、比較的噴射量が小さいプレQmin学習対象領域においては、噴射信号のパルス幅に対する燃料噴射量の相関が、ベース空燃比学習対象領域とは異なっている。
このような燃料噴射量が微小な領域においては、ECU100は、燃料噴射量を噴射信号の電圧により制御している。
ベース空燃比学習対象領域と、プレQmin学習対象領域との間は、緻密な燃料噴射量の制御が困難なバウンス領域となっている。
バウンス領域は、エンジン1の通常の運転時においては使用しないようになっている。
【0039】
図3は、実施形態のエンジン制御装置における空燃比制御に関する学習処理を示すフローチャートである。
以下、ステップ毎に順を追って説明する。
【0040】
<ステップS01:プレQmin学習未了判断>
ECU100は、RAMリセット(メモリクリア)後に、所定回数以上のプレQmin学習が行われた履歴があるか否かを判別する。
所定回数以上のプレQmin学習が完了している場合(リーン燃焼が許可される場合)はステップS02に進み、所定回数以上のプレQmin学習が未了である場合(リーン燃焼が許可されない場合)はステップS05に進む。
【0041】
<ステップS02:リーン燃焼許可>
ECU100は、リーン燃焼が許可された状態とする。
これにより、エンジン1の運転状態に応じて、ストイキ燃焼から、アシスト噴射を伴うリーン燃焼へ切り替えることが可能となる。
その後、ステップS03に進む。
【0042】
<ステップS03:ベース空燃比学習実行(通常)>
ECU100は、所定のベース空燃比学習条件が充足されたときに、ベース空燃比学習を実行する。
ベース空燃比学習では、例えば、ストイキ燃焼状態でありかつ定常状態であるときに、所定の目標空燃比に対して初期の噴射信号パルス幅を設定して噴射を行い、空燃比センサ66により空燃比を検出する。
その後、検出された実際の空燃比と、目標空燃比との偏差に応じて、噴射信号のパルス幅を補正するフィードバックを、所定の学習終了時間が経過するまで繰り返す。
なお、ベース空燃比学習の実行中は、パージコントロールバルブ72,74は閉状態とされ、エバポの導入は停止した状態となっている。
学習終了時間の経過後、ベース空燃比学習を終了し、ステップS04に進む。
【0043】
<ステップS04:エバポ濃度学習実行(通常)>
ECU100は、所定のエバポ濃度学習条件が充足されたときに、エバポ濃度学習(第3の学習)を実行する。
エバポ濃度学習では、例えば、ストイキ燃焼状態でありかつ定常状態であるときに、パージコントロールバルブ72,74を所定のパターンで開閉し、その際に空燃比センサ66により検出される空燃比の変動を検出する。
その後、検出された実際の空燃比と、目標空燃比との偏差に応じて、メイン噴射の噴射信号のパルス幅を補正するフィードバックを、所定の学習終了時間が経過するまで繰り返す。
このときのパルス幅の補正量は、キャニスタ70から供給されるエバポの濃度を反映している。
学習終了時間の経過後、エバポ濃度学習を終了し、一連の処理を終了(リターン)する。
【0044】
<ステップS05:ベース空燃比学習実行(短縮)>
ECU100は、所定のベース空燃比学習条件が充足されたときに、ステップS03と同様にベース空燃比学習を実行する。
但し、このときの学習終了時間は、通常時に対して短縮されている。学習終了時間の短縮量は、例えば、ベース空燃比学習の学習精度が、リーン燃焼を行う場合に最低限問題とならない程度まで学習が進行することを考慮して設定することができる。
短縮された学習終了時間の経過後、ベース空燃比学習を終了し、ステップS06に進む。
【0045】
<ステップS06:エバポ濃度学習緊急性有無判断>
ECU100は、リーン燃焼を行う必要性に対して、キャニスタ70のパージ(エバポ放出)を行う必要性が高く、エバポ濃度学習を実行する緊急性があるか否かを判別する。
例えば、キャニスタ70への燃料蒸発ガスの吸蔵量が所定の上限値以上であり、エバポの車外放出のリスクがある場合には、エバポ濃度学習の緊急性があるものと判定する。
エバポ濃度学習の緊急性がある場合はステップS10に進み、その他の場合はステップS07に進む。
【0046】
<ステップS07:プレQ min 学習実行>
ECU100は、プレQ min 学習を実行する。
プレQ min 学習は、エンジン1をストイキ燃焼で運転した状態でメイン噴射の燃料噴射量を固定するとともに、メイン噴射に引き続いてリーン燃焼時のアシスト噴射に相当する比較的少量の燃料を噴射する。
この少量の燃料の噴射時における噴射信号の電圧を段階的に変化させ、その際に空燃比センサ66により検出される空燃比の変化をモニタし、噴射信号の電圧と燃料噴射量との相関を学習する。
なお、エンジン1の運転状態に応じてインジェクタ59に供給される燃料の圧力(燃圧)を可変とした場合には、異なった複数水準の燃圧において、それぞれプレQ min 学習を行う構成とすることができる。
所定の学習終了時間の経過後、プレQ min 学習を終了し、ステップS08に進む。
【0047】
<ステップS08:エバポ濃度学習実行(短縮)>
ECU100は、所定のエバポ濃度学習条件が充足されたときに、ステップS04と同様にしてエバポ濃度学習を実行する。
但し、このときの学習終了時間は、通常時に対して短縮されて設定されている。学習終了時間の短縮量は、キャニスタパージを行うために最低限問題がない程度まで学習が進行することを考慮して設定することができる。
これにより、早期にエバポ濃度学習を終了させ、キャニスタ70のパージが許可された状態とすることができる。
学習終了時間の経過後、エバポ濃度学習を終了し、ステップS09に進む。
【0048】
<ステップS09:プレQmin学習回数を加算>
ECU100は、プレQmin学習回数を加算する。
その後、一連の処理を終了(リターン)する。
【0049】
<ステップS10:エバポ濃度学習実行(通常)>
ECU100は、所定のエバポ濃度学習条件が充足されたときに、ステップS04と同様にしてエバポ濃度学習を実行する。
学習終了時間の経過後、エバポ濃度学習を終了し、ステップS11に進む。
【0050】
<ステップS11:プレQmin学習実行>
ECU100は、ステップS07と同様にしてプレQmin学習を実行する。
所定の学習終了時間の経過後、プレQmin学習を終了し、ステップS12に進む。
【0051】
<ステップS12:プレQmin学習回数を加算>
ECU100は、プレQmin学習回数を加算する。
その後、一連の処理を終了(リターン)する。
【0052】
図4は、実施形態におけるベース空燃比学習、エバポ濃度学習、プレQmin学習の実施状態を示すタイミングチャートである。
図4(a)は、プレQmin学習が完了している通常の状態を示し、図4(b)は、プレQmin学習が未了である状態を示している。
図4(a)に示すように、プレQmin学習が一旦完了した場合、プレQmin学習を再度行う必要はなく、ベース空燃比学習、エバポ濃度学習は、それぞれ通常の学習終了時間が経過するまで行うことができる。これにより、各学習の学習精度を向上し、より精密な空燃比制御を行うことが可能となる。
【0053】
これに対し、図4(b)に示すように、プレQmin学習が未了の状態では、ベース空燃比学習の学習終了時間を短縮し、かつ、エバポ濃度学習に対してプレQmin学習を優先して実行することにより、例えば失火や燃焼の不安定化などが生じない程度のベース空燃比学習の必要最低限の精度は維持しつつ、プレQmin学習を迅速に完了させ、リーン燃焼が許可される時期を早期化して車両の燃費を改善することができる。
なお、エバポ濃度学習の緊急性があり、エバポ濃度学習をプレQmin学習より先に行った場合であっても、プレQmin学習の未了時にはエバポ濃度学習の学習終了時間を短縮することにより、プレQmin学習の終了時期を早めることができる。
【0054】
以上説明した本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)アシスト噴射で用いられるインジェクタ59の最小燃料噴射量Qmin近傍の燃料を噴射する際の噴射量特性に係るプレQmin学習が未了の状態においては、メイン噴射で用いられる領域に係るベース空燃比学習の終了が判定される条件を、ベース空燃比学習の終了が早期化されるよう変更することにより、ベース空燃比学習、プレQmin学習がともに終了する時期を早期化し、アシスト噴射の燃料噴射量精度を確保してリーン燃焼が実施可能となる時期を早期化することができる。
(2)プレQmin学習が未了である場合には、エバポ濃度学習よりもプレQmin学習を優先して実行することにより、リーン燃焼が実施可能となる時期をより確実に早期化することができる。
(3)ベース空燃比学習では噴射時間(パルス幅)と空燃比との相関に基づいて学習を行い、プレQmin学習では噴射信号の電圧と空燃比との相関に基づいて学習を行うことにより、メイン噴射において用いられる噴射量の領域と、アシスト噴射において用いられる噴射量の領域とにおいて、それぞれの噴射量特性を適切に反映させた学習を行うことが可能であり、空燃比制御の精度を向上することができる。
(4)異なった複数水準の燃圧に対してそれぞれプレQmin学習を行うことにより、インジェクタ59に供給される燃圧が変化する場合であってもアシスト噴射の空燃比制御の精度を確保することができる。
【0055】
(変形例)
本発明は、以上説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。
(1)エンジン制御装置及びエンジンの構成は、上述した実施形態に限定されることなく、適宜変更することができる。
例えば、エンジンのシリンダレイアウト、気筒数、過給機の有無、各触媒やセンサ類の配置などは、適宜変更することができる。
(2)実施形態では、プレQmin学習が未了である場合には、ベース空燃比学習の学習終了時間を短縮しているが、これ以外の手法により、ベース空燃比学習の終了を判定する条件を、ベース空燃比学習の終了が早期化される方向へ変更してもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 エンジン 10 クランクシャフト
11 クランク角センサ 20 シリンダブロック
30 シリンダヘッド 31 燃焼室
32 点火プラグ 33 吸気ポート
34 排気ポート 35 吸気バルブ
36 排気バルブ 37 吸気カムシャフト
38 排気カムシャフト 40 ターボチャージャ
41 タービン 42 コンプレッサ
43 エアバイパス流路 44 エアバイパスバルブ
45 ウェイストゲート流路 46 ウェイストゲートバルブ
50 インテークシステム 51 インテークダクト
52 チャンバ 53 エアクリーナ
54 エアフローメータ 55 インタークーラ
56 スロットルバルブ 57 インテークマニホールド
58 吸気圧センサ 59 インジェクタ
60 エキゾーストシステム 61 エキゾーストマニホールド
62 エキゾーストパイプ 63 三元触媒
64 吸蔵還元触媒 65 サイレンサ
66,67 空燃比センサ
70 キャニスタ 71 パージライン
72 パージコントロールバルブ 73 パージライン
74 パージコントロールバルブ
80 EGR装置 81 EGRライン
82 EGRバルブ 83 EGRクーラ
100 エンジン制御ユニット(ECU)
101 アクセルペダルセンサ
図1
図2
図3
図4