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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-25
(45)【発行日】2024-10-03
(54)【発明の名称】液体吐出装置及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/165 20060101AFI20240926BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240926BHJP
   B41J 2/17 20060101ALI20240926BHJP
   B41J 2/175 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
B41J2/165 211
B41J2/01 401
B41J2/17 201
B41J2/165 505
B41J2/01 451
B41J2/175 101
B41J2/175 503
B41J2/175 121
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2020173540
(22)【出願日】2020-10-14
(65)【公開番号】P2022064737
(43)【公開日】2022-04-26
【審査請求日】2023-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高坂 圭
(72)【発明者】
【氏名】楢▲崎▼ 哲也
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-089834(JP,A)
【文献】特開2008-238614(JP,A)
【文献】特開2019-034547(JP,A)
【文献】特開2005-193388(JP,A)
【文献】特開2002-331685(JP,A)
【文献】特開2017-080916(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するノズルを有する記録ヘッドと、
前記ノズルから廃液を吸引するポンプを備え、前記廃液を収容する廃液タンクへ前記廃液を排出する回復手段と、
前記回復手段を制御する制御手段と、
を備えた液体吐出装置であって、
前記制御手段は、前記回復手段に対して、前記ポンプによる前記廃液の吸引量が第1の量である第1回復処理を実行できるとともに、前記第1の量と前記廃液タンクの廃液量との和が閾値以上である場合には、前記ポンプによる前記廃液の吸引量が前記第1の量よりも少ない第2の量である第2回復処理を実行する、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記廃液量は、前記廃液タンクに排出された廃液の合計から蒸発量を差し引いた量である、
ことを特徴とする請求項に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記第2回復処理は、前記ポンプの駆動回数が前記第1回復処理と同じである
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の液体吐出装置
【請求項4】
前記第2回復処理は、前記ポンプの駆動速度が前記第1回復処理と同じである、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の液体吐出装置
【請求項5】
前記廃液タンクは、前記液体吐出装置の本体に対して着脱可能に設けられる、
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記廃液タンクが交換されたか否かを判定する判定手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記判定手段により前記廃液タンクが交換されたと判定された場合において、前記廃液タンクの交換前に前記第2回復処理を実行した場合は、前記ポンプによる前記廃液の吸引量が第3の量である第3回復処理を実行し、
前記第3の量が、前記第1の量及び前記第2の量の差である、
ことを特徴とする請求項に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記記録ヘッドに供給する液体を収容する供給タンクと、
前記供給タンクから前記記録ヘッドへの液体の供給経路を形成する経路形成部材と、をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記記録ヘッドは、液体を吸収する吸収体を含む、
ことを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
前記制御手段は、前記第2の量と前記廃液タンクの廃液量との和が閾値以上である場合には、前記回復手段に対して、前記第1回復処理及び前記第2回復処理を行わないように制御する、
ことを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の液体吐出装置
【請求項10】
前記制御手段は、前記第1回復処理において、前記ポンプを第1の駆動量で駆動させ、前記第2回復処理においては、前記ポンプを第1の駆動量よりも少ない第2の駆動量で駆動させる、
ことを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の液体吐出装置
【請求項11】
液体を吐出する吐出手段と、
前記吐出手段から液体を吸引する回復処理を行い、吸引した液体の廃液を収容する廃液タンクへ排出する回復手段と、
前記回復手段を制御する制御手段と、
前記廃液タンクが交換されたか否かを判定する判定手段と、
前記回復処理の履歴を記憶する記憶手段と、
を備えた液体吐出装置であって、
前記廃液タンクは、前記液体吐出装置の本体に対して着脱可能に設けられ、
前記制御手段は、前記廃液タンクの収容可能量に関する情報に基づいて、前記回復手段による液体の吸引量を変更し、
前記制御手段は、前記判定手段により前記廃液タンクが交換されたと判定された場合において、前記廃液タンクの交換前に前記吸引量を減少させて前記回復処理を実行した前記履歴があるときは、前記吸引量を減少させた分の吸引を実行するよう前記回復手段を制御する、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項12】
液体を吐出するノズルを有する記録ヘッドと、
前記ノズルから廃液を吸引するポンプを備え、前記廃液を収容する廃液タンクへ前記廃液を排出する回復手段と、
を備えた液体吐出装置の制御方法であって、
前記回復手段を制御する制御工程と、
を含み
前記制御工程は前記回復手段に対して、前記ポンプによる前記廃液の吸引量が第1の量である第1回復処理を実行する工程、及び、
記第1の量と前記廃液タンクの廃液量との和が閾値以上である場合には、前記回復手段に対して、前記ポンプによる前記廃液の吸引量が前記第1の量よりも少ない第2の量である第2回復処理を実行する工程を含む、
ことを特徴とする制御方法。
【請求項13】
前記廃液量は、前記廃液タンクに排出された廃液の合計から蒸発量を差し引いた量である、
ことを特徴とする請求項12に記載の制御方法
【請求項14】
前記第2回復処理は、前記ポンプの駆動回数が前記第1回復処理と同じである、
ことを特徴とする請求項12又は13に記載の制御方法
【請求項15】
前記第2回復処理は、前記ポンプの駆動速度が前記第1回復処理と同じである、
ことを特徴とする請求項12~14のいずれか1項に記載の制御方法
【請求項16】
前記廃液タンクは、前記液体吐出装置の本体に対して着脱可能に設けられる、
ことを特徴とする請求項12~15のいずれか1項に記載の制御方法
【請求項17】
前記廃液タンクが交換されたか否かを判定する判定工程をさらに備え、
前記制御工程は、前記判定工程により前記廃液タンクが交換されたと判定された場合において、前記廃液タンクの交換前に前記第2回復処理を実行した場合は、前記ポンプによる前記廃液の吸引量が第3の量である第3回復処理を実行する工程を含み、
前記第3の量が、前記第1の量及び前記第2の量の差である、
ことを特徴とする請求項16に記載の制御方法
【請求項18】
前記記録ヘッドは、液体を吸収する吸収体を含む、
ことを特徴とする請求項12~17のいずれか1項に記載の制御方法
【請求項19】
前記制御工程では、前記第2の量と前記廃液タンクの廃液量との和が閾値以上である場合には、前記回復手段に対して、前記第1回復処理及び前記第2回復処理を行わないように制御する、
ことを特徴とする請求項12~18のいずれか1項に記載の制御方法
【請求項20】
前記制御工程では、前記第1回復処理において、前記ポンプを第1の駆動量で駆動させ、前記第2回復処理においては、前記ポンプを第1の駆動量よりも少ない第2の駆動量で駆動させる、
ことを特徴とする請求項12~19のいずれか1項に記載の制御方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェット記録装置に代表される液体吐出装置では、液体を吐出する吐出ヘッドの回復処理が実行されることがある。例えば、インクジェット記録装置では、インク流路内に発生した気泡の影響による吐出不良を抑制するために、記録ヘッドの回復処理が実行されることがある。このような回復処理の一例としては、ポンプにより記録ヘッドのノズルからインクが吸引され、吸引されたインクが廃インクとして廃インクタンクに排出される処理が挙げられる。特許文献1には、記録ヘッドの吐出不良が生じた場合にユーザーの指示により吸引ポンプを作動させて記録ヘッドの回復処理を実行することが開示されている。また、特許文献1には、廃インクタンクの廃インク量が一定量を超えたときは、ユーザーによる回復処理の指示があってもポンプを作動させない、すなわち回復処理を実行しないことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平5-201027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術では、廃液タンクの収容可能量が少ない場合には、回復処理が実行されず、吐出ヘッドの吐出性能を回復できないことがある。
【0005】
本発明は、廃液タンクの現在の収容可能量に応じた回復処理を実行する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面によれば、
液体を吐出するノズルを有する記録ヘッドと、
前記ノズルから廃液を吸引するポンプを備え、前記廃液を収容する廃液タンクへ前記廃液を排出する回復手段と、
前記回復手段を制御する制御手段と、
を備えた液体吐出装置であって、
前記制御手段は、前記回復手段に対して、前記ポンプによる前記廃液の吸引量が第1の量である第1回復処理を実行できるとともに、前記第1の量と前記廃液タンクの廃液量との和が閾値以上である場合には、前記ポンプによる前記廃液の吸引量が前記第1の量よりも少ない第2の量である第2回復処理を実行する、
ことを特徴とする液体吐出装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、廃液タンクの現在の収容可能量に応じた回復処理を実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係るインクジェット記録装置の斜視図。
図2図1のインクジェット記録装置の供給機構を示す詳細説明図。
図3図1のインクジェット記録装置の回復機構の斜視図。
図4】回復機構の構成例を示す図。
図5】記録ヘッドの構成例を表す模式図。
図6】記録装置のハードウェア構成例を示すブロック図。
図7】回復機構による記録ヘッド内のインクの吸引工程を示すフローチャート。
図8】システムクリーニングのシーケンスを示すフローチャート。
図9】システムクリーニングの吸引パラメータを例示する図。
図10】システムクリーニングの廃インクタンク使用率を示す図。
図11】システムクリーニングの負圧プロファイルの模式図。
図12】吸引ポンプの駆動量と、記録ヘッドの吸収体の充填率の関係を示す模式図。
図13】記録ヘッドの充填率と、次のシステムクリーニングまでの期間の関係を示す図。
図14】回復処理のシーケンスを示すフローチャート。
図15】比較例のシステムクリーニングの廃インクタンク使用率を表す模式図。
図16図14のシーケンスを用いてシステムクリーニングを実行する場合の廃インクタンク使用率を表す模式図。
図17】(a)は、廃インクタンクを示す詳細図。(b)は、廃インクタンクの着脱態様を説明する図。
図18】システムクリーニングのシーケンスを示すフローチャート。
図19】システムクリーニングの吸引パラメータを例示する図。
図20】システムクリーニングの廃インクタンク使用率を示す図。
図21】システムクリーニングの負圧プロファイルの模式図。
図22】回復処理のシーケンスを示すフローチャート。
図23】回復処理のシーケンスを示すフローチャート。
図24】廃インクタンク交換シーケンスを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
なお、この明細書において、「記録」(「プリント」という場合もある)とは、文字、図形等有意の情報を形成する場合のみならず、有意無意を問わない。また人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かを問わず、広く記録媒体上に画像、模様、パターン等を形成する、または媒体の加工を行う場合も表すものとする。
【0011】
また、「記録媒体」とは、一般的な記録装置で用いられる紙のみならず、広く、布、プラスチック・フィルム、金属板、ガラス、セラミックス、木材、皮革等、インクを受容可能なものも表すものとする。
【0012】
さらに、「インク」(「液体」と言う場合もある)とは、上記「記録(プリント)」の定義と同様広く解釈されるべきものである。従って、記録媒体上に付与されることによって、画像、模様、パターン等の形成または記録媒体の加工、或いはインクの処理(例えば記録媒体に付与されるインク中の色剤の凝固または不溶化)に供され得る液体を表すものとする。
【0013】
またさらに、「ノズル」とは、特にことわらない限り吐出口ないしこれに連通する液路およびインク吐出に利用されるエネルギーを発生する素子を総括して言うものとする。
【0014】
<第1実施形態>
<インクジェット記録装置の概要(図1)>
図1は、一実施形態に係るインクジェット記録装置1(以下、記録装置1とも表記する)の内部構成を示す斜視図である。記録装置1は、液体としてインク滴を吐出する記録ヘッド4と、記録ヘッド4を搭載し、走査方向に往復移動可能なキャリッジ3とを備える。
【0015】
本実施形態の記録ヘッド4は、熱エネルギーを利用してインクを吐出するインクジェット方式の記録ヘッドであり、熱エネルギーを発生するための電気熱変換体を複数備えたものである。詳しくは、電気熱変換体に印加されるパルス信号によって熱エネルギーを発生し、この熱エネルギーによってインク液内部に膜沸騰を起こさせ、さらに膜沸騰の発泡圧力を利用して、吐出口よりインクを吐出して記録を行うものである。しかしながら、記録ヘッド4の構成としては、他の周知の技術を適宜採用可能である。
【0016】
また、記録装置1は、記録ヘッド4への液体の供給機構として、記録ヘッド4に供給するインクを収容する液体容器11(供給タンク)と、液体容器11及び記録ヘッド4を接続しインクの供給経路を形成する経路形成部材としての供給チューブ8とを備える。
【0017】
<供給機構(図2)>
図2は、図1の記録装置1の供給機構を示す詳細図である。本実施形態では、記録装置1は、液体容器11として、カラーインク用の液体容器11aと、ブラックインク用の液体容器11bとを含む。また、記録装置1は、供給チューブ8として、カラーインクの供給経路を形成する供給チューブ8aと、ブラックインクの供給経路を形成する供給チューブ8bとを含む。また、記録装置1は、チューブバルブ9を含む。チューブバルブ9をユーザーが手動で動かすことによって、供給チューブ8a、8bが閉塞可能に構成される。つまり、チューブバルブ9は、液体容器11a、11bから記録ヘッド4へ液体を供給可能な状態と、液体容器11a、11bから記録ヘッド4へ液体を供給不可能な状態とを切り替えることができる。
【0018】
<回復機構(図3図4)>
図3は、図1の記録装置1の回復機構2の斜視図である。また、図4は、回復機構2の構成例を示す図である。記録装置1は、記録ヘッド4の吐出性能を回復させる回復機構2を含む。本実施形態では、回復機構2は、記録ヘッド4からインクを吸引する回復処理を行い、吸引した液体を廃液タンクとしての廃インクタンク28へ排出する。回復機構2は、キャップ20と、吸引チューブ21と、吸引ポンプ23とを含む。
【0019】
キャップ20は、記録ヘッド4のノズル7(図5等参照)を覆うものである。キャップ20は、例えば記録ヘッド4による記録が行われないときにノズル7からの溶媒蒸発や異物付着を抑制したり、後述する回復処理の際にノズル7から吐出されたインクを受容したりする。また、キャップ20は、吸引チューブ21を介して吸引ポンプ23と連結されている。なお、図3では、キャップ20として、カラーインクを吐出するノズル7を覆うCLキャップ20aと、ブラックインクを吐出するノズル7を覆うキャップBK20bとが示されている。また、図3では、吸引チューブ21として、CLキャップ20aに接続する吸引チューブ21aと、BKキャップ20bに接続する吸引チューブ21bとが示されている。
【0020】
吸引ポンプ23は、キャップ20を介してノズル7からインクを吸引する。本実施形態では、吸引ポンプ23は、軸部材25と、軸部材25の外周部に突出して設けられるコロ24と、軸部材25に沿った形状を有するガイド26とを含む。また、軸部材25及びガイド26は、これらの間で吸引チューブ21の一部を支持するように設けられている。
【0021】
軸部材25が後述するパージモータ4009により矢印方向へ回転すると、コロ24は、ガイド26が軸部材25に沿って設けられる領域において、吸引チューブ21を順次潰しながら回転する。記録ヘッド4のノズル7が設けられる吐出面をキャップ20で密閉した状態で吸引ポンプ23を回転させることで、吸引チューブ21内を減圧させることができる。これにより、ノズル7からインクを吸引することができる。
【0022】
吸引ポンプ23によるインクの吸引量は、コロ24の回転数、回転速度等によって制御され得る。吸引ポンプ23から排出されたインクは、廃インクチューブ27を経由して廃インクタンク28に収容される。廃インクタンク28内には廃インク吸収体29が設けられている。廃インクが廃インク吸収体29に吸収されることにより、記録装置1が傾いた場合等に廃インクが廃インクタンク28から漏れることを抑制することができる。なお、本実施形態では、廃インクタンク28は記録装置1の本体に内蔵されており、ユーザーによる交換はできない構成であるものとして説明する。しかしながら、第2及び第3実施形態で示されるように、廃インクタンク28は、記録装置1の本体に対して着脱可能に構成され、ユーザーによる交換が可能であってもよい。
【0023】
<記録ヘッド(図5)>
図5は、記録ヘッド4の構成例を示す模式図である。記録ヘッド4の上部には、供給チューブ8が連結されており、液体容器11から記録ヘッド4へとインクが供給される。記録ヘッド4の内部空間4aにはヘッド吸収体14が設けられている。ヘッド吸収体14は、記録ヘッド4内にインクを留めるためにインクを吸収・保持する部材である。また、内部空間4aのヘッド吸収体14の上部には、空気層13が存在する。また、ヘッド吸収体14の下側には液室6が設けられており、液室6の下部にはノズル7が設けられている。前述したキャップ20は、ノズル7を下側から覆うことができる。
【0024】
<ハードウェア構成例(図6)>
図6は、記録装置1のハードウェア構成例を示すブロック図である。
【0025】
制御回路4000は、記録装置1を統括的に制御する。制御回路4000は、例えばCPUに代表されるプロセッサーであり、ROM4001に格納された制御プログラムをRAM4002に展開して実行する。後述する各フローチャートは、制御プログラムで実行されるシーケンスの一部を示している。
【0026】
ROM4001は制御回路4000が実行する制御プログラム及び制御における各設定値を格納している。RAM4002は制御回路4000が実行する制御プログラムの展開、印字データ及び制御命令の記憶、各制御における制御変数の記憶を行う。タイマー回路4003は、現在の時刻を取得することが可能な回路、又は経過時間を計測することが可能な回路である。不揮発性メモリ4004は、本体の電源を切った状態でも、制御で記憶したパラメータを記憶できるメモリであり、例えば後述する制御で経過時間を算出する際の起点となる時刻の書き込み及び読み出し等が行われる。
【0027】
外部接続回路4005は、記録装置1と外部のホスト装置等を有線又は無線で通信を行う際のインターフェースとして、制御回路4000と外部のホスト装置等の間の制御信号の送受信を中継する回路である。例えば、記録装置1には、外部接続回路4005を介して、外部より印字する画像のデータが入力される。また、外部接続回路4005を介して、現在の時刻が記録装置1に入力されてもよい。
【0028】
記録装置1が記録媒体に画像を記録する場合、制御回路4000は、外部接続回路4005により受信した画像データをRAM4002に展開する。そして、制御回路4000は、RAM4002上のデータに基づいて、記録ヘッドユニット駆動回路4006を介して記録ヘッドユニット4007の駆動を制御し、同時にキャリッジモータ駆動回路4010を介してキャリッジモータ4011を制御する。制御回路4000による制御により記録媒体の所望の位置にインクの吐出が行われることで、一回の記録走査が実行されたこととなる。また制御回路4000は、紙送りモータ駆動回路4012を介して紙送りモータ4013を制御することで、記録媒体を所定量だけ搬送させる。記録装置1は、記録走査と記録媒体の搬送を繰り返すことにより、記録媒体の搬送方向に亘って画像の記録を実行する。
【0029】
また、後述する予備吐出は、制御回路4000が記録ヘッドユニット駆動回路4006を介して記録ヘッドユニット4007の駆動を制御することで実行される。この場合、記録ヘッド4を駆動するパターンは、記録動作と同様にRAM4002に展開したデータ、ROM4001のデータ、又は制御回路で生成されたデータの何れかに基づいたものであってもよい。
【0030】
また、パージモータ駆動回路4008は、吸引ポンプ23を回転させるパージモータ4009を駆動する回路である。例えば、回復フラグが設定され、その情報が不揮発性メモリ4004に記憶されている場合に、制御回路4000がパージモータ駆動回路4008によりパージモータ4009を駆動することで、後述する回復処理が実行される。
【0031】
<記録ヘッドの回復処理>
ここで、記録ヘッド4の回復処理について説明する。記録装置1は、記録ヘッド4の吐出性能を回復するための回復処理を実行可能である。さらに言えば、記録装置1は、装置の状態等に応じて、廃インクの排出量が異なる複数の回復処理が実行可能である。本実施形態では、記録装置1は、排出量が異なる回復処理として、クリーニングと、システムクリーニングを実行可能である。
【0032】
クリーニングは、システムクリーニングと比較して廃インクの排出量が少ない回復処理である。例えば、クリーニングにはいわゆる予備吐出が含まれる。予備吐出は、インク吐出によって記録ヘッドのインク吐出口内の増粘したインクや塵埃を排出して記録ヘッド4の吐出性能を維持・回復すること等を目的として実行され得る。また、例えばクリーニングには記録ヘッド4の吐出面のワイピングが含まれる。クリーニングは、画像の記録処理を実行する前や記録処理の実行中に実行され得る。また、クリーニングは、ユーザーの指示に基づいて実行されてもよいし、後述するシステムクリーニングよりも短い一定の周期で実行されてもよい。なお、記録装置1は、クリーニングとして、廃インク量の異なる複数種類の処理を実行可能であってもよい。
【0033】
システムクリーニングは、クリーニングと比較して廃インクの排出量が多い回復処理である。本実施形態では、システムクリーニングには、吸引ポンプ23による記録ヘッド4のインクの吸引動作が含まれる。例えば、システムクリーニングは、記録ヘッド4の吐出性能の低下度合いが比較的大きい場合や、前述したクリーニングでは記録ヘッド4の吐出性能が十分に回復しなかった場合にユーザー指示に基づいて実行され得る。また例えば、システムクリーニングは、1~2年に1回などクリーニングよりも長い一定の周期で実行されてもよい。
【0034】
システムクリーニングは、記録ヘッド4内の気泡除去、固着インクの排出、インク充填等を目的として実行され得る。例えば、記録ヘッド4内の気泡は以下のように発生する。すなわち、供給チューブ8の内壁に気泡が生成し、記録動作を実行した際にその気泡が記録ヘッド4内部に徐々に流入する。記録ヘッド4に気泡が流入すると、ヘッド吸収体14の内部に充填されたインク量が徐々に減少し、記録ヘッド4の吐出不良となる。このような吐出不良では、ヘッド吸収体14にインクを十分に充填する必要があるため、吸引ポンプ23により吐出面側から記録ヘッド4内のインクを吸引する動作の含まれるシステムクリーニングが必要となる。
【0035】
ところで、システムクリーニングは吸引ポンプ23により記録ヘッド4内のインクを強制的に排出するため廃インクの排出量が多くなり、廃インクタンク28の現在の廃インクの収容可能量が少ない場合には実行できない場合がある。一方で、システムクリーニングが実行できない場合、記録動作を継続することができなくなってしまう場合がある。そこで、本実施形態では、後述するように、廃インクタンク28の廃インクの収容可能量に応じてシステムクリーニングを実行している(図9のシステムクリーニングSC1、SC2参照)。
【0036】
なお、システムクリーニングは、その動作として吸引ポンプ23による記録ヘッド4のインクの吸引動作に加えて予備吐出等を含んでいてもよい。例えば、システムクリーニングでは、吸引ポンプ23による記録ヘッド4のインクの吸引動作の後に予備吐出、ワイピング等の動作が実行されてもよい。
【0037】
<システムクリーニングの動作説明(図7図8)>
図7は、回復機構2による記録ヘッド4内のインクの吸引工程を示すフローチャートである。本フローチャートは、例えば図8のステップC01及びC02の処理の具体例を示している。すなわち、本フローチャートは、システムクリーニングの処理の一部を示している。
【0038】
ステップB01(以下、単にステップB01と表記する。他のステップについても同様とする。)で、制御回路4000は、吸引繰り返し回数KをK=1に設定する。B02で、制御回路4000は、キャップ20を移動させて記録ヘッド4のノズル7の配置面に密着させる(キャップクローズ)。
【0039】
B03で、制御回路4000は、パージモータ駆動回路4008によりパージモータ4009を駆動して吸引ポンプ23の回転を開始する。すなわち、吸引ポンプ23による吸引が開始する。吸引ポンプ23が所定の回転数回転した後、B04で、制御回路4000は、パージモータ駆動回路4008によりパージモータ4009の駆動を終了して吸引ポンプ23の回転を終了する。すなわち、吸引ポンプ23による吸引が終了する。B05で、キャップ20を記録ヘッド4から離間させる(キャップオープン)。これにより、記録ヘッド4の内部が大気圧へ開放される。
【0040】
B06で、制御回路4000は、パージモータ駆動回路4008によりパージモータ4009を駆動して吸引ポンプ23を回転させ、ノズル7からのインクの吸引を伴わないでキャップ20からインクを吸引する空吸引を開始する。キャップ20が大気開放された状態で吸引ポンプ23を回転させることで、キャップ20内に残留するインクが吸引されて廃インクタンク28に排出される。吸引ポンプ23が所定の回転数回転した後、B07で、制御回路4000は、パージモータ駆動回路4008によりパージモータ4009の駆動を終了して吸引ポンプ23の回転を終了し、空吸引を停止する。
【0041】
その後、B08で、制御回路4000は、不図示のワイパを用いて記録ヘッド4の吐出面のワイピングを実施する。
【0042】
B09で、制御回路4000は、吸引繰り返し回数K=閾値Kthであるか否かを確認し、吸引繰り返し回数K=閾値Kthである場合はB10に進み、吸引繰り返し回数K=閾値Kthでない場合にはB12に進む。
【0043】
B10で、制御回路4000は、不図示のワイパを用いて記録ヘッド4の吐出面のワイピングを行う。B11で、制御回路4000は、記録ヘッド4の予備吐出を実施し、本フローチャートを終了する。
【0044】
一方、B09の分岐でNoに進んだ場合、制御回路4000は、B12で、繰り返し回数Kに1を加算して(K=K+1)、B02に戻り、処理を繰り返す。
【0045】
なお、本実施形態では、キャップ20内部の大気圧への開放を記録ヘッド4からキャップを離間させることにより行ったが、キャップ20に設けられた大気開放弁を開放することにより実施してもよい。
【0046】
図8は、システムクリーニングのシーケンスを示すフローチャートである。本フローチャートは、例えば図14のフローチャートのS07の処理の具体例を示している。
【0047】
C01で、制御回路4000は、吸引動作(BK個別吸引)を実施する。例えば、制御回路4000は、ブラックインク用のBKキャップ20b及び吸引チューブ21bを用いて、記録ヘッド4のブラックインクを吐出するノズル7に対して、図7に示すシーケンスを実施する。
【0048】
C02で、制御回路4000は、吸引動作(CL個別吸引)を実施する。例えば、制御回路4000は、カラーインク用のCLキャップ20a及び吸引チューブ21aを用いて、記録ヘッド4のカラーインクを吐出するノズル7に対して、図7に示すシーケンスを実施する。なお、C01~C02について、ブラックインクとカラーインクを個別吸引するか同時吸引するかは、適宜設定可能である。
【0049】
C03で、制御回路4000は、C01及びC02の吸引動作による廃インク量の加算を実施する。その後、C04で、制御回路4000は、累積の廃インク量が所定の閾値以上であるか否かを確認し、閾値以上である場合はC05進み、閾値未満である場合はフローチャートを終了する。すなわちC04では、累積の廃インク量を廃インクタンク28の容量と比較することで、廃インクタンク28が満タンか否かを判断している。C05で、制御回路4000は、廃インクフルエラーを不図示の表示部等に表示してフローチャートを終了する。例えば、廃インクフルエラーが表示されると、記録装置1の記録動作が禁止され得る。また、C04にて累積の廃インク量を比較する際に、廃インクタンク28の90%の容量と比較して、超えていた場合はC05にてユーザーに廃インクタンク28の交換時期が近いことを警告する通知をしてもよい。
【0050】
<吸引パラメータとインク充填率の関係(図9図13)>
図9は、システムクリーニングの吸引パラメータを例示する図である。本実施形態では、記録装置1は、廃インクタンク28の廃液の収容可能量に応じて2種類のシステムクリーニングSC1、SC2を実行することができる。以下、システムクリーニングSC1、SC2を単にSC1、SC2とそれぞれ表記する場合がある。
【0051】
SC2では、BK個別吸引時は駆動速度Y1、駆動量X2、駆動回数1回であり、CL個別吸引時は駆動速度をY1、駆動量X4(>X2)、駆動回数1回である。ここで、本実施形態では、駆動速度は吸引ポンプ23の単位時間あたりの回転数であり、駆動量はシステムクリーニング1回あたりの吸引ポンプの回転量である。
【0052】
一方、SC1では、BK個別吸引の駆動速度Y1、駆動回数1回はSC2と同じだが、駆動量X1が駆動量X2よりも小さい値となっている。本実施形態では、駆動量X1=(1/2)*X2である。また、SC1では、CL個別吸引についても、駆動速度Y1、駆動回数1回はSC2と同じだが、駆動量X3が駆動量X4よりも小さい値となっている。本実施形態では、駆動量X3=(1/2)*X4である。
【0053】
つまり、SC1とSC2とでは、吸引ポンプ23の駆動速度、駆動回数は変更されずに、吸引ポンプ23の駆動量が変更されている。これにより、SC1とSC2とでは、実行時の廃インク量が変更されている。換言すれば、SC1とSC2とでは、吸引ポンプ23の駆動量を変更することにより、吸引ポンプ23による記録ヘッド4からのインクの吸引量が変更されている。なお、インクの吸引量が多いほど、回復処理における回復強度が高いと言えるので、SC1とSC2では、回復強度が変更されていると言える。
【0054】
図10は、システムクリーニングの廃インクタンク使用率を示す図である。廃インクフルエラー閾値を使用率100%とした場合に、SC2の廃インク量は50%、SC1の廃インク量は25%となっている。すなわち、本実施形態では、SC2では廃インクタンク28の全体の収容可能量の2分の1の量の廃インクが排出され、SC1では廃インクタンク28の全体の収容可能量の4分の1の量の廃インクが排出される。なお、図10では、廃インクの蒸発を考慮しない未蒸発廃インク量を示している。
【0055】
図11は、システムクリーニングの負圧プロファイルの模式図である。SC1、SC2では、BK個別吸引・CL個別吸引それぞれにおける駆動回数が1回のため、キャップ20内負圧Pは、BK個別吸引・CL個別吸引いずれの場合も1山の負圧波形となる。また、SC1、SC2は駆動速度が同じ(Y1)であるため、到達負圧は同じである。一方、SC1はSC2よりも吸引ポンプ23の駆動量が少ないため、吸引ポンプ23の駆動時間が短くなる。本実施形態では、SC1は、駆動量がSC2の半分(X1=(1/2)*X2)であり、駆動速度Y1がSC2と同じであるため、駆動時間はSC2の半分になる。
【0056】
図12は、システムクリーニングの吸引ポンプ23の駆動量と、記録ヘッドの吸収体の充填率の関係(充填効率)を示す模式図である。吸引ポンプ23の駆動量を増やすと、液体容器11からより多くのインクを記録ヘッド4に供給でき、記録ヘッド4の吸収体の充填率は増える方向となる。ここで、SC2では、駆動速度Y1において駆動量X2を充填率が飽和しているポイントに設定しているので、充填率が100%となっている。一方、SC1では、SC2よりも駆動量を半減する為、充填率が50%に下がっている。
【0057】
また、システムクリーニングの充填効率は吸引ポンプ23の駆動速度、駆動回数に応じて変化する。例えば、駆動速度Y1を維持して吸引ポンプ23の駆動回数を1回から4回に増やすと、負圧波形としては4山の吸引となるが、吸引ごとに負圧がリセットされてしまうので、充填効率が悪化する。また、駆動速度をY1から例えば(1/4)*Y1まで減らすと、吸引ポンプ23の到達負圧Pmが下がってしまうので、充填効率が悪化する。従って、記録ヘッド4の充填効率を上げる為には、システムクリーニングの駆動速度を増やし、駆動回数を減らすことが考えられる。
【0058】
図13は、記録ヘッドの充填率と、次のシステムクリーニングまでの期間の関係を示す図である。SC2の充填率は100%であり、次のシステムクリーニングが必要になるまでの期間は2年である。一方、SC1の充填率は50%であり、次のシステムクリーニングが必要になるまでの期間は1年と短くなる。従って、ユーザーがシステムクリーニングを実施する頻度を減らすためには、充填率を上げたパラメータ、本実施形態ではSC2を実行することが考えられる。一方で、廃インクタンク28の残りの収容可能量が少ない場合には、大量のインクを廃インクタンク28に排出できないため、廃インク量の少ないSC1を実行することが考えられる。なお、上述した次のシステムクリーニングまでの期間は、記録装置1が設置されている環境の温湿度や記録装置の使用頻度などで変化するため、平均的な使用条件で想定した数値例である。
【0059】
<回復処理の処理例(図14~16)>
図14は、回復処理のシーケンスを示すフローチャートである。記録装置1は、本フローチャートに従って回復処理の動作内容を選択して実行する。本フローチャートは、例えば、不揮発性メモリ4004に回復フラグが設定されると開始する。回復フラグは、例えば、ユーザーによる入力や、前回の回復処理からの経過期間、装置の状況等に応じて設定され得る。装置の状況に応じて設定される例としては、異常終了後にキャップオープン状態で放置された場合、収容容器11が交換された場合等、前回の回復処理から記録動作に要したインク滴の量(ドット数)が一定の値以上になった場合等が挙げられる。
【0060】
S01で、制御回路4000は、回復フラグがシステムクリーニングかどうか確認する。システムクリーニングではない場合、すなわち、クリーニングのフラグの場合、S08に進んで、設定されたクリーニングを実施する。クリーニングの動作例としては、予備吐出、ワイピング等が挙げられる。S01でシステムクリーニングのフラグが設定されている場合は、S02に進む。回復フラグとしてシステムクリーニングのフラグが立つ場合としては、ユーザーによる入力があった場合や、前回のシステムクリーニングから長期間、例えば1~2年、経過した場合等が挙げられる。
【0061】
S02で、制御回路4000は、回復強度kをNcln(本実施形態では2)に設定する。S03で、制御回路4000は、現在の廃インク量にシステムクリーニングの吸引量を加算し、廃インクフルエラー閾値以上になるか確認する。すなわち、(現在の廃インク量+吸引量)≧閾値であるか否かを確認する。より具体的には、回復強度kが2の場合、(現在の廃インク量+SC2の吸引量(=廃インク量))≧閾値であるか否かを確認する。また、回復強度kが1の場合、(現在の廃インク量+SC1の吸引量(=廃インク量))≧閾値であるか否かを確認する。
【0062】
なお、現在の廃インク量は、以下のようにして特定され得る。例えば、制御回路4000は、過去の回復処理等において予備吐出や吸引ポンプ23による吸引が実行された際のインクの滴量をカウントし、その合計値を廃インク量として不揮発性メモリ4004等に記憶させてもよい。そして、S03の処理において不揮発性メモリ4004に記憶されている値を読み出すことにより、廃インク量を特定してもよい。また、制御回路4000は、廃インクタンク28に設けられたセンサ等により廃インク量を検出してもよい。センサの例としては、廃インク吸収体29がインクを吸収することによる色変化を光学的に検出するもの等が挙げられる。
【0063】
制御回路4000は、S03にて閾値未満の場合、S06に進んで、回復強度kのシステムクリーニングを設定する。例えば、制御回路4000は、回復強度kが2のときはシステムクリーニングSC2を設定し、回復強度kが1のときはシステムクリーニングSC1を設定する。その後、S07で、制御回路4000は、設定されたシステムクリーニングを実行する。
【0064】
一方、制御回路4000は、S03にて閾値以上の場合は、S04を経由してS02に戻り、回復強度kを減算するか、S05に進む。例えば、現在の回復強度kが2の場合はS02に戻り回復強度kを1に設定する。一方、現在の回復強度kが1の場合はS05に進む。S05で、制御回路4000は、クリーニングをキャンセルする。
【0065】
上記フローチャートでは、制御回路4000は、S02~S03で廃インクタンク28の収容可能量に関する状態を特定している。具体的には、制御回路4000は、廃インクタンク28の収容可能量が、SC1又はSC2を実行可能な状態であるのか、SC1及びSC2のいずれも実行できない状態であるのかを特定する。そして、制御回路4000は、S06で、特定された状態に基づいて回復機構2によるインクの吸引量を変更している。これにより、廃インクタンク28の収容可能量に応じて回復処理を実行することができる。
【0066】
また、本実施形態によれば、制御回路4000は、廃インクタンク28の収容可能量に関する状態として、現在の廃インクタンク28の廃インク量(廃液量)を特定している。そして、この廃インク量に基づく値としての現在の廃インク量と吸引ポンプ23による吸引量の和が閾値以上の場合には、閾値未満の場合よりも吸引ポンプ23による吸引量を少なくしている。具体的には、回復強度kが2のときにS03で閾値以上となった場合には、SC1よりも吸引量の少ないSC2が実行され得る。よって、廃インクタンク28の収容可能量が減少してきた場合であっても、その収容可能量に応じた回復処理を実行することができ、記録動作を継続して実行可能とすることができる。
【0067】
図15及び図16を用いて、本実施形態の作用効果についてさらに説明する。
【0068】
図15は、比較例としてシステムクリーニングのパラメータをSC2に固定した場合のシステムクリーニングの廃インクタンク使用率を表す模式図である。SC2における廃インク量は廃インクタンク28の全体の収容可能量の50%であるため、廃インクタンク使用率が50%未満の場合はSC2を実行することができる。一方、廃インクタンク使用率が50%以上の場合は、SC2を実行すると廃インク量が廃インクタンク28の収容可能量を超えてしまうため、SC2は実行することができない。そのため、記録装置1は、吐出不良等を回復できず、記録動作を継続できなくなる。
【0069】
図16は、図14のシーケンスを用いてシステムクリーニングを実行する場合の廃インクタンク使用率を表す模式図である。廃インクタンク使用率が50%となるまでは比較例と同様にSC2を実行することができる。また、本実施形態では、廃インクタンク使用率が50%以上75%未満の場合は、SC1よりも廃インク量が少ないSC1を実行することができる。そして、廃インクタンク使用率が75%以上の場合はシステムクリーニングが禁止される。つまり、比較例では、廃インクタンク使用率が50%を超えるとシステムクリーニングを実行できなくなるが、本実施形態の方法では廃インクタンク使用率が50%を超えても75%未満の場合はシステムクリーニングを実行することができる。このように、本実施形態によれば、廃インク量が所定値以上の場合には、廃インク量を減らしつつ記録ヘッド4のヘッド吸収体14に必要最低限のインク量を充填することができるので、比較例よりも記録動作を長く継続することが可能になる。また、比較例と比べて、廃インクタンク28により多くの廃インクを収容させることが可能になる。
【0070】
なお、本実施形態では、S03において(現在の廃インク量+吸引量)が閾値を超えるか否かを確認しているが、閾値の設定は適宜変更可能である。例えば、廃インクタンク28内の現在の廃インク量が閾値以上であるか否かを確認してもよい。この場合、例えば、SC1とSC2でそれぞれ別個の閾値が設定されていてもよい。また例えば、廃インク量等から廃インクタンク28の収容可能量、換言すれば残容量に対して閾値が設定されてもよい。残容量が閾値以上であるか否かを確認してもよい。或いは、閾値として廃インクタンク28の使用率に対して閾値が設定されてもよい。つまり、システムクリーニングが実行された場合に、廃インク量の合計が廃インクタンク28の容量を超えないように閾値が設定されてもよい。
【0071】
また、本実施形態では、記録装置1は、廃インク量(吸引ポンプ23による吸引量)が異なる2種類のシステムクリーニングを実行するが、廃インク量が異なる3種類以上のシステムクリーニングを実行可能であってもよい。また、例えば、廃インクタンク28の残容量からSC1を実行できない場合、廃インクの排出量が廃インクタンク28の残容量となるようにシステムクリーニングを実行してもよい。
【0072】
<第2実施形態>
<インクタンクの構成(図17)>
図17(a)は、第2実施形態に係る廃インクタンク30を示す詳細図である。図17(b)は、廃インクタンク30の着脱態様を説明する図である。以下、第1実施形態と同様の構成については同様の符号を付して説明を省略することがある。
【0073】
本実施形態では、廃インクタンク30は、記録装置1の本体に対して着脱可能に構成される。吸引ポンプ23から排出されたインクは、廃インクチューブ27を介して、廃インクタンク30に連結されている。滴下口31aにはカラーインクが、滴下口31bにはブラックインクが排出される。滴下口31a、31bにて排出されたインクは廃インクタンク30に内蔵された吸収体に吸収される。図17(b)に示すように、廃インクタンク30は記録装置1から着脱することが可能である。
【0074】
<システムクリーニングの動作説明(図18
図18は、システムクリーニングのシーケンスを示すフローチャートである。概略として、本フローチャートは、廃インクの蒸発量を考慮する点、及び吸引による廃インク量を不揮発性メモリ4004等に記憶されている廃インク量に加算してから吸引工程を実行する点が図8のフローチャートと異なる。また、本フローチャートは、BK・CL同時吸引を実行する点も図8のフローチャートと異なる。
【0075】
D01で、制御回路4000は、吸引による蒸発後廃インク量の加算を実施する。本実施形態では、吸引によって排出された廃インク量に対して、所定時間経過で50%が蒸発し、50%が残存すると想定して加算する。この蒸発率の数値については、廃インクタンク30の形状や廃インクタンク30に設けられた大気連通経路などに応じて適宜設定可能である。
【0076】
次にD02で、制御回路4000は、蒸発後廃インク量が閾値以上であるか否かを確認し、閾値未満の場合はD03で吸引工程(BK・CL同時吸引)、D04で吸引工程(CL個別吸引)を実施する。一方、制御回路4000は、D02で蒸発後廃インク量が閾値以上の場合は、D05で廃インクフル警告を表示してクリーニング動作をキャンセルする。廃インクフルエラーが表示されると、廃インクタンク30が交換されるまで記録装置1の動作は全て禁止される。
【0077】
<吸引パラメータとインク充填率の関係(図19図21)>
図19は、システムクリーニングの吸引パラメータを例示する表である。本実施形態では、記録装置1は、第1実施形態と同様に2種類のシステムクリーニングSC1、SC2を実行することができる。
【0078】
SC2では、BK・CL同時吸引、CL個別吸引ともに駆動速度をY1、駆動量をX2、駆動回数を1回としている。また、SC1では、BK・CL同時吸引、CL個別吸引ともに駆動速度、駆動回数はSC2と同じだが、駆動量X1が駆動量X2よりも小さい値になっている。本実施形態では、駆動量X1=(1/2)*X2である。
【0079】
図20は、システムクリーニングの廃インクタンク使用率を示す表である。廃インクフルエラー閾値を蒸発後廃インク量で100とした場合、SC2の未蒸発廃インク量は50、蒸発後廃インク量は25となっている。また、SC1の未蒸発廃インク量は25、蒸発後廃インク量は12.5となっている。廃インクタンク30に排出された廃インクが蒸発すると、その蒸発分だけ廃インクタンク30の収容可能量が増加することになる。よって、本実施形態では、廃インクの蒸発を考慮した廃インクフルエラーの閾値が設定されている。
【0080】
図21(a)及び図21(b)は、システムクリーニングの負圧プロファイルの模式図である。図21(a)の上段はSC1におけるBKキャップ20b内の波形、下段はSC2におけるBKキャップ20b内の波形をそれぞれ示している。また、図21(b)の上段はSC1におけるCLキャップ20a内の波形、下段はSC2におけるCLキャップ20a内の波形をそれぞれ示している。
【0081】
SC1、SC2いずれも、BKキャップ20b内は1山、CLキャップ20a内は2山の負圧波形となっている。また、SC1、SC2と駆動速度が同じであるため、到達負圧は同じである。また、SC1はSC2と駆動速度が同じでSC2よりも駆動量が少ないため、SC2よりも駆動時間が短くなる。
【0082】
<回復処理の処理例(図22)>
図22は、回復処理の例を示すフローチャートである。R01、R02、R04、R05、R06、R07、R08はそれぞれ、図14のS01、S02、S04、S05、S06、S07、S08と同様の処理であるため説明を省略する。
【0083】
図14の処理との差分として、R03においては、現在の「蒸発後」廃インク量とシステムクリーニングの「未蒸発」廃インク量を加算し、廃インクフルエラー閾値との比較を実施している。すなわち、制御回路4000は、R03で、(現在の蒸発後廃インク量+未蒸発吸引量)≧閾値であるか否かを確認する。これは、システムクリーニング実行時には大量の「未蒸発」インクが廃インクタンク30に排出されるため、蒸発後インク量に基づいて閾値の判定を行うと、排出された廃インクが廃インクタンク30から溢れる懸念があり、それを回避するためである。なお、廃インクタンク30に排出された廃インクの量は所定時間の経過により図20で示した蒸発後インク量に近づくため、システムクリーニングが実施された場合に廃インク量として実際に加算される数値は「蒸発後」の数値としている。
【0084】
以上説明したように、本実施形態によれば、廃インクタンク30の蒸発後廃インク量、すなわち、廃インクタンク30に排出された廃インクの合計からその蒸発量を差し引いた量に基づいてシステムクリーニングでの廃インク量を決定している。したがって、廃インクタンク30内の実際の廃インク量により即してシステムクリーニングでの廃インク量を決定することができる。また、本実施形態によれば、廃インクの蒸発量を考慮しない場合と比べて、廃インクタンク30に排出された未蒸発廃インク量の合計が多い場合でもシステムクリーニングを実行することができる場合がある。したがって、記録装置1は記録動作等をより継続することができる。また、廃インクタンク30により多くの廃インクを収容させることが可能となる。
【0085】
<第3実施形態>
第3実施形態では、記録装置1は、廃インクタンク30が交換された場合に、過去のシステムクリーニングの実行状況に応じて追加的にシステムクリーニングを実行する。具体的には、SC1は、SC2を実行可能なほど廃インクタンク30に余裕がない場合に、回復強度を弱めて可能な範囲でシステムクリーニングを実行するものであるといえる。したがって、本実施形態では、SC1の実行後に廃インクタンク30が交換されて収容可能量に余裕ができた場合には、追加的にシステムクリーニングを実行することで、十分に記録ヘッド4の吐出性能を回復させる。以下、第1実施形態及び第2実施形態と異なる構成を中心に説明し、同様の構成については説明を省略することがある。
【0086】
<回復処理の処理例(図23図24)>
図23は、回復処理のシーケンスを示すフローチャートである。T01~T08は図14のS01~S08とそれぞれ同様の処理のため説明を省略する。
【0087】
図14の処理との差分として、本実施形態では、T06の処理後、T09において、実行するシステムクリーニングがSC1の場合にはその実行履歴を不揮発性メモリ4004に記憶し、その後T07に進んでいる。
【0088】
図24は、廃インクタンク交換シーケンスを示すフローチャートである。本フローチャートは、例えば記録装置1の電源オン時や、所定の周期で実行され得る。
【0089】
V01で、制御回路4000は、廃インクタンク30のIDが変化したか否かを判定し、IDが変化している場合にはV02に進み、IDが変化していない場合はフローチャートを終了する。例えば、制御回路4000は、不揮発性メモリ4004に記憶されている廃インクタンク30のIDと、今回廃インクタンク30から取得したIDとを比較することにより判定を実行する。
【0090】
V02で、制御回路4000は、SC1の実施履歴があるか否かを確認し、履歴が有る場合はV03に進み、履歴がない場合はフローチャートを終了する。例えば、制御回路4000は、不揮発性メモリ4004にSC1の実行履歴が記憶されているか否かを確認する。例えば、廃インクタンク30の交換前に図23のフローチャートにしたがいSC1を実行していた場合には、T09の処理により不揮発性メモリ4004に実施履歴が記憶されている。
【0091】
V03で、制御回路4000は、今装着されている廃インクタンク30の廃インク量にSC1の吸引量を加算して廃インクフルエラー閾値以上になるか確認する。すなわち、(現在の廃インク量+吸引量)≧閾値であるか否かを確認する。閾値未満の場合にはV04に進み、閾値以上の場合にはフローチャートを終了する。
【0092】
V04で、制御回路4000は、不足分のシステムクリーニングを追加実行する。本実施形態では、制御回路4000は、不足分としてSC1を実行する。
【0093】
なお、本実施形態では、SC1の廃インク量はSC2の廃インク量の半分のため、廃インクタンク30交換後にもう一度SC1を追加で実行することでSC2を1回実行した場合と同じ廃インク量に達する。このため、追加のシステムクリーニングとしてSC1を実行している。しかしながら、追加のシステムクリーニングは、吸引ポンプ23による吸引量がSC2及びSC1の吸引量の差分となるように、実行されてもよい。例えば、SC1の廃インク量がSC2の廃インク量の3分の1に設定されている場合、追加のシステムクリーニングは、廃インク量がSC2の3分の2になるように実行されてもよい。なお、追加実行するシステムクリーニングの条件は、廃インク量の他、吸引ポンプ23の駆動量、駆動速度、駆動回数等に基づいても決定され得る。
【0094】
V05で、制御回路4000は、SC1の実施履歴を消去する。その後、フローチャートを終了する。
【0095】
以上説明したように、本実施形態によれば、廃インクタンク30が交換された場合において、その交換前に吸引ポンプ23の吸引量を減少させた回復処理、すなわちSC1を実行した履歴があるときは、減少量分のインク吸引を実行する。これにより、廃インクタンク30の交換前に相対的に回復強度の弱い回復処理を実行していた場合でも十分に記録ヘッド4の吐出性能を回復することができる。
【0096】
<他の実施形態>
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0097】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0098】
1 記録装置、2 回復機構、3 キャリッジ、4 記録ヘッド、4000 制御回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
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図17
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図19
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図22
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図24