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特許7560996スターター二成分現像剤、補給用二成分現像剤、二成分現像剤の製造方法
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  • 特許-スターター二成分現像剤、補給用二成分現像剤、二成分現像剤の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-25
(45)【発行日】2024-10-03
(54)【発明の名称】スターター二成分現像剤、補給用二成分現像剤、二成分現像剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/10 20060101AFI20240926BHJP
   G03G 9/08 20060101ALI20240926BHJP
   G03G 9/097 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
G03G9/10
G03G9/08 381
G03G9/097 375
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020179909
(22)【出願日】2020-10-27
(65)【公開番号】P2022070699
(43)【公開日】2022-05-13
【審査請求日】2023-10-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 亜希
(72)【発明者】
【氏名】細井 一人
(72)【発明者】
【氏名】辻本 大祐
(72)【発明者】
【氏名】松尾 龍一郎
(72)【発明者】
【氏名】坂本 一幸
(72)【発明者】
【氏名】小堀 尚邦
【審査官】福田 由紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-056771(JP,A)
【文献】特開2017-003659(JP,A)
【文献】特開2019-148726(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/08-9/113
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナーと、磁性キャリアを含むスターター二成分現像剤であって、
前記磁性キャリアは、磁性キャリア粒子と、前記磁性キャリア粒子の表面に存在するシリカ微粒子Aを有する磁性キャリアであり、
前記シリカ微粒子Aは、一次粒子の個数平均粒径が80nm以上150nm以下であり、
前記シリカ微粒子Aは、温度23℃相対湿度50%の環境において帯電させた状態から1800秒後の電荷減衰定数αが、0.0020以上0.0100以下であり、
前記磁性キャリア粒子の表面の前記シリカ微粒子Aによる被覆率が1.0面積%以上5.2面積%以下であることを特徴とするスターター二成分現像剤。
【請求項2】
前記トナーは、結着樹脂を含有するトナー粒子と、前記トナー粒子の表面に前記シリカ微粒子Aを有する請求項1に記載のスターター二成分現像剤。
【請求項3】
前記磁性キャリア粒子と前記シリカ微粒子Aを混合することにより、前記磁性キャリア粒子の表面に前記シリカ微粒子Aを付着させた後、前記磁性キャリア粒子の表面に前記トナーを静電的に混合付着させることを特徴とする請求項1または2に記載のスターター二成分現像剤の製造方法。
【請求項4】
トナーと、磁性キャリアを含む補給用二成分現像剤であって、
前記磁性キャリアは、磁性キャリア粒子と、前記磁性キャリア粒子の表面に存在するシリカ微粒子Aを有する磁性キャリアであり、
前記シリカ微粒子Aは、一次粒子の個数平均粒径が80nm以上150nm以下であり、
前記シリカ微粒子Aは、温度23℃相対湿度50%の環境において帯電させた状態から1800秒後の電荷減衰定数αが、0.0020以上0.0100以下であり、
前記磁性キャリア粒子の表面の前記シリカ微粒子Aによる被覆率が1.0面積%以上5.2面積%以下であることを特徴とする補給用二成分現像剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法を用いて静電荷像を顕像化するための画像形成方法に使用されるスターター二成分現像剤、補給用二成分現像剤及び二成分現像剤の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式の画像形成方法は、静電潜像担持体上に種々の手段を用いて静電潜像を形成し、この静電潜像にトナーを付着させて、静電潜像を現像する方法が一般的に使用されている。この現像に際しては、磁性キャリアをトナーと混合し、摩擦帯電させて、トナーに適当量の正又は負の電荷を付与し、その電荷をドライビングフォースとして現像させる二成分現像方式が広く採用されている。
【0003】
二成分現像方式は、磁性キャリアに対して現像剤の撹拌、搬送、帯電などの機能を付与できるため、トナーとの機能分担が明確であり、このため現像剤性能の制御性が良いなどの利点がある。
【0004】
一方、近年、電子写真分野の技術進化により、装置の高速化、高寿命化はもとより高精細化、画像品位の安定化を有することがますます厳しく要求されてきている。このような要求に応えるため、二成分現像剤の高性能化が求められている。
【0005】
例えば、初期使用時からの帯電量を安定に維持できる現像剤を得るために、キャリア表面に無機微粒子を付着させた後、キャリア表面にトナーを静電的に混合付着させる製造方法が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平5-303235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1により、長期間の帯電安定性という観点では改善されてきた。しかしながら、プリントオンデマンド市場に対応するような高画質化という点で、転写性等の向上は改善の余地が残されているのが現状である。転写性の向上を考えた場合、トナーの現像性をさらに高める必要があり、そのためにはトナー一粒子表層の帯電均一性が重要となる。例えば、磁性キャリア粒子にシリカ微粒子を外添すると、磁性キャリア一粒子表層では、シリカ微粒子の存在分布がどうしても不均一な状態となってしまう場合がある。シリカ微粒子は電気抵抗が高いため、磁性キャリア一粒子の帯電分布が不均一となり、トナーとの摩擦帯電後のトナー一粒子表面においても帯電分布が不均一になってしまう場合がある。その結果、トナーと静電潜像担持体との静電付着力が高くなってしまい転写性に影響を及ぼし問題となる場合がある。
【0008】
本発明の目的は、上述した課題を解決するものであり、転写性が良好な高画質を使用初期から長期にわたって安定して出力できる二成分現像剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、下記に示すようなスターター二成分現像剤及び補給用二成分現像剤を使用することで、トナー一粒子表面の帯電均一性が向上し、転写性が良好な高画質を使用初期から長期にわたって安定して出力できることを見出した。
【0010】
つまり、本発明は、
トナーと、磁性キャリアを含むスターター二成分現像剤であって、
前記磁性キャリアは、磁性キャリア粒子と、前記磁性キャリア粒子の表面に存在するシリカ微粒子Aを有する磁性キャリアであり、
前記シリカ微粒子Aは、一次粒子の個数平均粒径が80nm以上150nm以下であり、
前記シリカ微粒子Aは、温度23℃相対湿度50%の環境において帯電させた状態から1800秒後の電荷減衰定数αが、0.0020以上0.0100以下であり、
前記磁性キャリア粒子表面において、前記シリカ微粒子Aによる被覆率が1.0面積%以上5.2面積%以下であることを特徴とするスターター二成分現像剤である。
【0011】
また本発明の別の態様は、
トナーと、磁性キャリアを含む補給用二成分現像剤であって、
前記磁性キャリアは、磁性キャリア粒子と、前記磁性キャリア粒子の表面に存在するシリカ微粒子Aを有する磁性キャリアであり、
前記シリカ微粒子Aは、一次粒子の個数平均粒径が80nm以上150nm以下であり、
前記シリカ微粒子Aは、温度23℃相対湿度50%の環境において帯電させた状態から1800秒後の電荷減衰定数αが、0.0020以上0.0100以下であり、
前記磁性キャリア粒子表面において、前記シリカ微粒子Aによる被覆率が1.0面積%以上5.2面積%以下であることを特徴とする補給用二成分現像剤である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、転写性が良好な高画質を使用初期から長期にわたって安定して出力できるスターター二成分現像剤を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】画像形成装置の概略図である。
図2】画像形成装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明において、数値範囲を表す「○○~××」の記載は、特に断りのない限り、端点である下限及び上限を含む数値範囲を意味する。
【0015】
本発明に係る磁性キャリアとトナーを含むスターター二成分現像剤及び補給用二成分現像剤は、磁性キャリアが磁性キャリア粒子の表面にシリカ微粒子Aが存在する磁性キャリアであって、シリカ微粒子Aが下記の要件を満たす。
シリカ微粒子Aは、一次粒子の個数平均粒径が10nm以上200nm以下である。
シリカ微粒子Aは、温度23℃相対湿度50%の環境において帯電させた状態から1800秒後の電荷減衰定数αが、0.0005以上0.0100以下である。
また、磁性キャリア粒子表面において、シリカ微粒子Aによる被覆率が1.0面積%以上15.0面積%以下である。
【0016】
この要件を満たすことで、電子写真特性の転写性が向上した効果が得られる。転写性の向上効果は下記の理由によるものと考える。
磁性キャリア粒子に従来のシリカ微粒子を表面に付着させた場合、磁性キャリア一粒子表面のシリカ微粒子存在分布が不均一となるため、磁性キャリア一粒子表面の帯電分布も不均一となる。その結果、磁性キャリアとの摩擦帯電により帯電したトナー一粒子表面の帯電分布の均一性も悪化してしまう。特に従来のシリカ微粒子では電荷の動きが遅いため、帯電分布の均一性の効果を得難く、トナー一粒子表面の帯電分布の均し効果が得られにくい。
【0017】
しかし、本発明では、23℃50%RH環境下での電荷減衰定数αが、0.0005以上0.0100以下であるシリカ微粒子Aを、磁性キャリア粒子表面に有する。
シリカ微粒子Aの電荷減衰定数αを上記の範囲とすることで、磁性キャリア粒子表面に存在するシリカ微粒子Aでの電荷の動きを速める効果が得られる。そのため、磁性キャリアとトナーとの摩擦帯電時に磁性キャリア一粒子とトナー一粒子の間で電荷のやり取りが速やかに行われ、トナー一粒子表面の帯電分布の均し効果が得られる。その結果、トナー一粒子の表層の帯電均一性が向上し、トナーと静電潜像担持体との静電付着力が低減し転写性が良好となると考えている。
【0018】
シリカ微粒子Aの23℃50%RH環境下での電荷減衰定数αが0.0005以上であると、シリカ微粒子Aの電荷移動を促進させる。それにより磁性キャリア粒子とトナー粒子間の電荷のやり取りが速やかに行われ、静電付着力低減を達成することができる。
また、シリカ微粒子Aの23℃50%RH環境下での電荷減衰定数αが0.0100以下であると、磁性キャリア表面からの、過剰な電荷の漏洩を抑え、それによりトナーの局所的な帯電を抑え、かぶり等の弊害の発生を防ぐことができる。
【0019】
シリカ微粒子Aの一次粒子の個数平均粒径が10nm以上200nm以下である。
磁性キャリア粒子表面に有するシリカ微粒子Aの一次粒子の個数平均粒径が10nm以上であると、二成分現像剤は長期間使用された場合においても、磁性キャリア粒子に埋没せず高いスペーサー効果と帯電の維持性を長期間にわたって発揮することができる。
また、シリカ微粒子Aの一次粒子の個数平均粒径が200nm以下であると、二成分現像剤は長期間使用された場合においても、現像器内での機械的負荷の影響により粒径の大きいシリカ微粒子Aが磁性キャリア粒子からトナーや現像器内部材に移行しない。そのため、長期間にわたってトナーが使用された場合においても、高いスペーサー効果と帯電の維持性を長期間にわたって発揮することができる。
【0020】
さらに、シリカ微粒子Aの一次粒子の個数平均粒径は、より高いスペーサー効果と帯電のより長期間の維持の観点から、80nm以上150nm以下であることが好ましい。
【0021】
また、磁性キャリア粒子の表面のシリカ微粒子Aによる被覆率が、1.0面積%以上15.0面積%以下である。シリカ微粒子Aの磁性キャリア粒子表面の被覆率が1.0面積%以上であると、トナー一粒子の帯電均一性を向上させることができる。シリカ微粒子Aの磁性キャリア粒子表面の被覆率が15.0面積%以下であると、シリカ微粒子Aによる磁性キャリア粒子表面からの過剰な電荷漏洩の発生がなく、それによりトナー粒子の帯電維持性が得られる。所望のシリカ微粒子Aの被覆率を得るためには、磁性キャリア粒子とシリカ微粒子Aとを混合し、磁性キャリア粒子の表面のシリカ微粒子Aによる被覆率を1.0面積%以上16.5面積%以下に調整した上で、その混合物とトナーとを混合する方法が好適である。また、用いるシリカ微粒子Aの個数平均粒径や添加量及び混合条件を調整することにより所望のシリカ微粒子Aの被覆率を得ることができる。
【0022】
次に、好ましい態様などを説明する。
<シリカ微粒子A>
本発明で用いるシリカ微粒子Aは、シリカ(SiO)を主成分とする粒子であり、燃焼法、溶融法、水熱合成等の公知の製造方法で製造可能である。なかでも、高温高湿環境下での帯電緩和抑制効果をさらに高めるために、また、高抵抗であり湿度の影響を受けにくいという観点から、燃焼法や溶融法で製造されたシリカ微粒子Aが好ましい。
【0023】
燃焼法は、シロキサン化合物を気化することにより生じたシロキサンガスを窒素等のキャリアガスとともにバーナーへ導入し、例えば酸素等の支燃性ガスと拡散混合してシロキサンガスを燃焼させることでシリカ微粒子を生成させる方法である。また、燃焼法の態様としては、四塩化ケイ素を酸素と、水素と、例えば窒素等の希釈ガスとの混合ガスとともに、高温で燃焼させてシリカ微粒子(ヒュームドシリカ)を生成させる方法を挙げられる。
【0024】
また、溶融法は、金属シリコーン微粒子スラリーを火炎中に噴霧して酸化反応させながら球形化させてシリカ粒子を得る方法である。
【0025】
本発明においては、シリカ微粒子Aの一次粒子の個数平均粒径の制御性と23℃50%RH環境下での電荷減衰定数αの制御性という観点から、シロキサンガスを燃焼してシリカ微粒子を生成させる燃焼法が好ましい例として挙げられる。
シロキサン化合物としては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン等が挙げられる。
【0026】
本発明では、シリカ微粒子Aの23℃50%RH環境下での電荷減衰定数αの制御は、シリカ微粒子Aが含有する鉄原子の含有量で制御可能である。電荷減衰定数αの制御のために、シリカ微粒子Aがさらにアルミニウム原子を含有することが好ましい。シリカ微粒子Aに含有させる鉄原子の含有量としては、20ppm以上2000ppm以下であることが好ましく。シリカ微粒子Aに含有させるアルミニウム原子の含有量としては、200ppm以上2000ppm以下であることが好ましい。
【0027】
これら金属原子をシリカ微粒子Aに含有させる方法としては、シロキサン化合物の純度を調整して含有させることが可能である。
【0028】
さらに、シリカ微粒子Aは、その表面をシランカップリング剤、シリコーンオイルなどにより疎水化処理されていることが好ましい。
シランカップリング剤としては、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)が好ましい。
シリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイルが好ましい。
【0029】
シランカップリング剤による表面処理の方法は、特に限定されず、公知の手法を用いることができる。例えば、シリカ微粒子Aを撹拌することによって雲状とし、気化したシランカップリング剤を噴霧する方法、又はシランカップリング剤の蒸気をクラウド状としたシリカ微粒子Aに接触させる方法が一般的である。
【0030】
上述したシランカップリング剤による表面処理では、シリカ微粒子A100重量部あたりシランカップリング剤を1~80重量部の範囲で用いることが好ましい。
【0031】
本発明では、磁性キャリアには、シリカ微粒子Aを単独で使用してもよいし、その他の外添剤との複数種を併用してもよい。
【0032】
<磁性キャリア>
磁性キャリア粒子としては、通常のフェライト、マグネタイト等の磁性キャリア粒子や樹脂コートキャリア粒子を使用することができる。また、樹脂中に磁性粉が分散されたバインダー型の磁性キャリアコア粒子も用いることができる。
【0033】
樹脂コートキャリア粒子は、磁性キャリアコアと磁性キャリアコア表面を被覆(コート)する樹脂被覆層からなる。樹脂被覆層に用いられる樹脂としては、スチレン-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-メタクリル酸エステル共重合体等のスチレン-アクリル系樹脂;アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸エステル共重合体等のアクリル系樹脂;ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、モノクロロトリフルオロエチレン重合体、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素含有樹脂;シリコーン樹脂;ポリエステル樹脂;ポリアミド樹脂;ポリビニルブチラール;アミノアクリレート樹脂が挙げられる。その他には、アイオモノマー樹脂やポリフェニレンサルファイド樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、単独又は複数を併用して用いることができる。
【0034】
磁性キャリアは、磁性キャリア粒子の表面に付着しているシリカ微粒子Aを含む。磁性キャリア粒子に対し、シリカ微粒子Aを添加し、例えばV型混合機、ヘンシェルミキサー、ターブラーミキサー等の混合装置を用いて混合することで、磁性キャリア粒子の表面にシリカ微粒子Aを付着させた磁性キャリアが得られる。
【0035】
<その他の磁性キャリアの外添剤>
本発明の磁性キャリア粒子には、磁性キャリア粒子の流動性の向上や摩擦帯電性の調整のために、シリカ微粒子A以外の外添剤が添加されてもよい。
シリカ微粒子A以外の外添剤としては、酸化ケイ素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)、チタン酸ストロンチウム、酸化チタン(チタニア)、炭酸カルシウムなどの無機微粒子が好ましい。
【0036】
<現像剤>
本発明のスターター二成分現像剤及び補給用二成分現像剤は、磁性キャリアとトナーを混合した二成分現像剤である。現像機に最初に設置するスターター二成分現像剤の磁性キャリアとトナーの混合比率は、スターター二成分現像剤の、トナー濃度が、2質量%以上15質量%以下となるように混合することが好ましく、より好ましくは4質量%以上13質量%以下となるように混合することである。また長期の使用に伴い補給される補給用二成分現像剤としては、磁性キャリアとトナーの混合比率は、補給用二成分現像剤のトナー濃度が、85質量%以上98質量%以下となるように混合することが好ましく、より好ましくは、88質量%以上95質量%以下となるように混合することである。
【0037】
[トナー粒子]
<結着樹脂>
本発明におけるトナー粒子は、結着樹脂として、下記の重合体などを用いることが可能である。
ポリスチレン、ポリ-p-クロルスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の単重合体;スチレン-p-クロルスチレン共重合体、スチレン-ビニルトルエン共重合体、スチレン-ビニルナフタリン共重合体、スチレン-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-メタクリル酸エステル共重合体などのスチレン系共重合体;スチレン系共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステル樹脂とビニル系樹脂が混合、又は両者が一部反応したハイブリッド樹脂;ポリ塩化ビニル、フェノール樹脂、天然変性フェノール樹脂、天然樹脂変性マレイン酸樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などが挙げられる。
これらの中でも、トナーの低温定着性及び帯電性の観点から、ポリエステル樹脂を用いることが好ましい。
【0038】
<着色剤>
本発明におけるトナー粒子には、着色剤を含有させてもよい。着色剤としては、公知のイエロー着色剤、マゼンタ着色剤、シアン着色剤、ブラック着色剤を用いることができる。
【0039】
ブラック着色剤としては、カーボンブラック;イエロー着色剤、マゼンタ着色剤及びシアン着色剤とを用いて黒色に調整したものが挙げられる。
【0040】
マゼンタトナー用着色顔料しては、以下のものが挙げられる。縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アンスラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物が挙げられる。具体的には、C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、39、40、41、48:2、48:3、48:4、49、50、51、52、53、54、55、57:1、58、60、63、64、68、81:1、83、87、88、89、9、112、114、122、123、144、146、150、163、166、169、177、184、185、202、206、207、209、220、221、238、254、269;C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.バットレッド1、2、10、13、15、23、29、35などが挙げられる。
【0041】
着色剤には、顔料単独で使用してもかまわないが、染料と顔料とを併用してその鮮明度を向上させでもよい。
【0042】
マゼンタトナー用染料としては、以下のものが挙げられる。C.Iソルベントレッド1、3、8、23、24、25、27、30、49、81、82、83、84、100、109、121、C.I.ディスパースレッド9、C.I.ソルベントバイオレット8、13、14、21、27、C.I.ディスパーバイオレット1などの油溶染料、C.I.ベーシックレッド1、2、9、12、13、14、15、17、18、22、23、24、27、29、32、34、35、36、37、38、39、40、C.I.ベーシックバイオレット1、3、7、10、14、15、21、25、26、27、28などの塩基性染料。
【0043】
シアントナー用着色顔料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントブルー1、2、3、7、15:2、15:3、15:4、16、17、60、62、66;C.I.バットブルー6、C.I.アシッドブルー45、フタロシアニン骨格にフタルイミドメチルを1~5個置換した銅フタロシアニン顔料など。
【0044】
イエロー用着色顔料としては、以下のものが挙げられる。縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アンスラキノン化合物、アゾ金属化合物、メチン化合物、アリルアミド化合物。具体的には、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、15、16、17、23、62、65、73、74、83、93、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、155、168、174、180、181、185、191;C.I.バットイエロー1、3、20などが挙げられる。また、C.I.ダイレクトグリーン6、C.I.ベーシックグリーン4、C.I.ベーシックグリーン6、ソルベントイエロー162などの染料も使用することができる。
【0045】
着色剤の使用量は、結着樹脂100質量部に対して0.1質量部~30質量部であり、好ましくは0.5質量部~20質量部であり、より好ましくは3質量部~15質量部である。
【0046】
また、トナー粒子において、結着樹脂に予め、着色剤を混合し、マスターバッチ化させたものを用いることが好ましい。そして、この着色剤マスターバッチとその他の原材料(結着樹脂及びワックス等)を溶融混練させることにより、トナー粒子中に着色剤を良好に分散させることができる。
【0047】
<離型剤>
必要に応じて、一種又は二種以上の離型剤を、トナー粒子中に含有させてもかまわない。離型剤としては次のものが挙げられる。
低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックスなどの脂肪族炭化水素系ワックスが好ましく使用できる。また、酸化ポリエチレンワックスなどの脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物、又はそれらのブロック共重合物;カルナバワックス、サゾールワックス、モンタン酸エステルワックスなどの脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;及び脱酸カルナバワックスなどの脂肪酸エステル類を一部又は全部を脱酸化したものなどが挙げられる。
【0048】
離型剤の量は、結着樹脂100質量部あたり0.1質量部~20質量部が好ましく、0.5質量部~10質量部がより好ましい。
【0049】
また、離型剤の示差走査型熱量計(DSC)で測定される昇温時の最大吸熱ピーク温度で規定される融点は、65℃~130℃であることが好ましい。より好ましくは80℃~125℃である。融点が65℃以上であると、トナーの粘度が適切な範囲となり、感光体へのトナー付着が発生しにくくなる。融点が130℃以下であると、低温定着性が良好となる。
【0050】
<その他の外添剤>
本発明のトナーには、トナーの流動性の向上や摩擦帯電性の調整のために、シリカ微粒子Aまたはそれ以外の外添剤が添加されてもよい。シリカ微粒子A以外の外添剤としては、酸化ケイ素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)、チタン酸ストロンチウム、酸化チタン(チタニア)、炭酸カルシウムなどの無機微粒子が好ましい。
【0051】
次に、二成分現像剤を用いる現像装置を備えた画像形成装置について例を挙げて説明するが、本発明はこれに限るものではない。
【0052】
<画像形成方法>
(画像形成装置)
図1に記載された画像形成装置の一例を用いて画像形成方法を説明する。静電潜像担持体1は図中矢印方向に回転する。静電潜像担持体1は帯電手段である帯電器2により帯電される。帯電した静電潜像担持体1の表面に静電潜像形成手段である露光器3により露光することで静電潜像を形成する。現像器4は、スターター二成分現像剤を収容する現像容器5を有し、現像剤担持体6は回転可能な状態で配置され、且つ、現像剤担持体6内部に磁界発生手段としてマグネット7を内包している。マグネット7の少なくとも一つは静電潜像担持体1に対して対向する位置になるように設置されている。
【0053】
スターター二成分現像剤は、マグネット7の磁界により現像剤担持体6上に保持され、規制部材8により、二成分現像剤の量が規制され、静電潜像担持体1と対向する現像部に搬送される。
現像部においては、マグネット7により発生する磁界が磁気ブラシを形成する。その後、直流電界に交番電界を重畳してなる現像バイアスを印加することにより静電潜像はトナー像として静電潜像担持体1上に可視像化される。静電潜像担持体1上に形成されたトナー像は、転写帯電器11によって記録媒体12に静電的に転写される。
また、長期使用に伴い、現像容器5内のスターター二成分現像剤量減少した際には、ホッパー17より、補給用二成分現像剤が随時補給される画像形成方法となっている。
【0054】
ここで、図2に示すように、静電潜像が静電潜像担持体1から中間転写体9に一旦転写し、その後、転写材(記録媒体)12へ静電的に転写してもよい。その後、記録媒体12は、定着器13に搬送され、ここで加熱、加圧されることにより、記録媒体12上にトナーが定着される。その後、記録媒体12は、出力画像として装置外へ排出される。なお、転写工程後、静電潜像担持体1上に残留したトナーは、クリーナー15により除去される。
その後、クリーナー15により清掃された静電潜像担持体1は、前露光16からの光照射により電気的に初期化され、上記画像形成動作が繰り返される。
【0055】
図2は、フルカラー画像形成装置の一例を示す。
図中のK、Y、C、Mなどの画像形成ユニットの並びや回転方向を示す矢印は何らこれに限定されるものではない。ちなみにKはブラック、Yはイエロー、Cはシアン、Mはマゼンタを意味している。図2において、静電潜像担持体1K、1Y、1C、1Mは矢印方向に回転する。各静電潜像担持体1は帯電手段である帯電器2K、2Y、2C、2Mにより帯電され、帯電した各静電潜像担持体1の表面には、静電潜像形成手段である露光器3K、3Y、3C、3Mにより露光し、静電潜像を形成する。
【0056】
その後、現像手段である現像器4K、4Y、4C、4Mに具備される現像剤担持体6K、6Y、6C、6M上に担持されたスターター二成分現像剤により静電潜像はトナー像として可視像化される。さらに転写手段である中間転写帯電器10K、10Y、10C、10Mにより中間転写体9に転写される。さらに転写手段である転写帯電器11により、記録媒体12に転写され、記録媒体12は、定着手段である定着器13により加熱圧力定着され、画像として出力される。そして、中間転写体9のクリーニング部材である中間転写体クリーナー14は、転写残トナーなどを回収する。
【0057】
現像方法としては、具体的には、現像剤担持体6に交流電圧を印加して、現像領域に交番電界を形成しつつ、磁気ブラシが静電潜像担持体1に接触している状態で現像を行うことが好ましい。現像剤担持体(現像スリーブ)6と静電潜像担持体1のドラムとの距離(S-D間距離)は、100μm以上1000μm以下であることが、キャリア付着防止及び画像形成におけるドット再現性の向上において良好である。S-D間距離が100μm以上であると現像剤の供給が十分であり、画像濃度が良好になる。S-D間距離が1000μm以下であると、マグネット7からの磁力線が広がりにくく磁気ブラシの密度が良好になり、ドット再現性が向上する。また、キャリアを拘束する力が高まりキャリア付着を抑制できる。
【0058】
交番電界のピーク間の電圧(Vpp)は、好ましくは300V以上3000V以下、より好ましくは500V以上1800V以下である。また、交番電界の周波数は、好ましくは500Hz以上10000Hz以下、より好ましくは1000Hz以上7000Hz以下であり、それぞれプロセスにより適宜選択して用いることができる。
【0059】
この場合、交番電界を形成するための交流バイアスの波形としては三角波、矩形波、正弦波、あるいはDuty比を変えた波形が挙げられる。ときにトナー像の形成速度の変化に対応するためには、非連続の交流バイアス電圧を有する現像バイアス電圧(断続的な交番重畳電圧)を現像剤担持体に印加して現像を行うことが好ましい。印加電圧が300V以上であると十分な画像濃度が得られやすく、また非画像部のカブリトナーを回収しやすくなる。また、3000V以下であると磁気ブラシを介した潜像の乱れが生じにくく、良好な画質が得られる。
【0060】
次に、本発明に関わる各物性の測定方法について記載する。
<シリカ微粒子Aの一次粒子の個数平均粒径の測定方法>
シリカ微粒子Aの一次粒子の個数平均粒径は、電界放出形走査電子顕微鏡(商品名:S-4800、(株)日立ハイテクノロジーズ製)(以下、「S-4800」とも称する。)にて撮影される磁性キャリア粒子の表面のシリカ微粒子A画像から算出される。画像撮影条件は以下のとおりである。
【0061】
(1)試料作製
試料台(アルミニウム試料台15mm×6mm)に導電性ペーストを薄く塗り、その上に磁性キャリア粒子を吹きつける。さらにエアブローして、余分な磁性キャリア粒子を試料台から除去し十分乾燥させる。試料台を試料ホルダにセットし、試料高さゲージにより試料台高さを36mmに調節する。
【0062】
(2)S-4800観察条件設定
個数平均径の算出は、S-4800の反射電子像観察により得られた画像を用いて行う。S-4800の鏡体に取り付けられているアンチコンタミネーショントラップに液体窒素を溢れるまで注入し、30分間置く。S-4800の「PC-SEM」を起動し、フラッシング(電子源であるFEチップの清浄化)を行う。画面上のコントロールパネルの加速電圧表示部分をクリックし、[フラッシング]ボタンを押し、フラッシング実行ダイアログを開く。フラッシング強度が2であることを確認し、実行する。フラッシングによるエミッション電流が20~40μAであることを確認する。試料ホルダをS-4800鏡体の試料室に挿入する。コントロールパネル上の[原点]を押し試料ホルダを観察位置に移動させる。
加速電圧表示部をクリックしてHV設定ダイアログを開き、加速電圧を[1.1kV]、エミッション電流を[20μA]に設定する。オペレーションパネルの[基本]のタブ内にて、信号選択を[SE]に設置し、SE検出器を[上(U)]及び[+BSE]を選択し、[+BSE]の右の選択ボックスで[L.A.100]を選択し、反射電子像で観察するモードにする。同じくオペレーションパネルの[基本]のタブ内にて、電子光学系条件ブロックのプローブ電流を[Normal]に、焦点モードを[UHR]に、WDを[4.5mm]に設定する。コントロールパネルの加速電圧表示部の[ON]ボタンを押し、加速電圧を印加する。
【0063】
(3)焦点調整
操作パネルのフォーカスつまみ[COARSE]を回転させ、ある程度焦点が合ったところでアパーチャアライメントの調整を行う。コントロールパネルの[Align]をクリックし、アライメントダイアログを表示し、[ビーム]を選択する。操作パネルのSTIGMA/ALIGNMENTつまみ(X,Y)を回転し、表示されるビームを同心円の中心に移動させる。次に[アパーチャ]を選択し、STIGMA/ALIGNMENTつまみ(X,Y)を一つずつ回し、像の動きを止める又は最小の動きになるように合わせる。アパーチャダイアログを閉じ、オートフォーカスで、ピントを合わせる。その後、倍率を80,000(80k)倍に設定し、上記と同様にフォーカスつまみ、STIGMA/ALIGNMENTつまみを使用して焦点調整を行い、再度オートフォーカスでピントを合わせる。この操作を再度繰り返し、ピントを合わせる。ここで、観察面の傾斜角度が大きいと被覆率の測定精度が低くなりやすいので、ピント調整の際に観察面全体のピントが同時に合うものを選ぶことで、表面の傾斜が極力無いものを選択して解析する。
【0064】
(4)画像保存
ABCモードで明るさ合わせを行い、サイズ640×480ピクセルで写真撮影して保存する。この画像ファイルを用いて下記の解析を行う。磁性キャリア粒子一つに対して写真を1枚撮影し、少なくとも磁性キャリア粒子について25粒子以上の画像を得る。
【0065】
(5)画像解析
磁性キャリア粒子の表面上の少なくとも300個のシリカ微粒子Aについて粒径を測定して、個数平均粒径を求める。本発明では画像解析ソフトImage-Pro Plus ver.5.0を用いて、上述した手法で得た画像を2値化処理することでシリカ微粒子Aの個数平均径を算出する。
【0066】
<シリカ微粒子Aの電荷減衰定数αの測定方法>
磁性キャリアあるいはトナーの各々に使用した外添剤の電荷減衰定数αの算出は、静電気拡散率測定装置(商品名:NS-D100、ナノシーズ社製)付属を用いて、JIS C 61340-2-1に準拠した方法で行う。
・試料のセット
アルミニウム製の試料パン(内径10mm、深さ1mmの凹部が形成)に外添剤を入れる。その後、平板を用いて外添剤を上から押しこみ、すり切り充填させる。
・環境放置
外添剤が充填された試料パンをアルミニウム製試料セルに載せ、温度23℃、相対湿度50%の環境下で12時間以上放置する。
・帯電
接地させた試料セルを測定器内に設置し、コロナ放電によって試料を0.1秒間帯電させる。
・電位測定
コロナ放電終了直後から1800秒間表面電位を測定する。測定開始の表面電位を初期表面電位V0とし、1800秒までの表面電位推移から、下記式に従い電荷減衰定数αを算出する。
ln(Vt/V0)=-αt(1/2)
(上記式中、Vは、表面電位(V)を示し、Vtは、t秒後の表面電位(V)を示し、V0は、初期表面電位(V)を示し、αは、電荷減衰定数(1/s(1/2))を示し、tは、減衰時間(秒)を示す。)
【0067】
<磁性キャリア粒子の表面におけるシリカ微粒子Aによる被覆率の測定方法>
磁性キャリア粒子の表面におけるシリカ微粒子Aによる被覆率の測定は、電界放出形走査電子顕微鏡(商品名:S-4800、(株)日立ハイテクノロジーズ製)にて撮影される磁性キャリア粒子の表面のシリカ微粒子A画像から算出される。まず、S-4800にて撮影された磁性キャリア表面画像を20個無作為にサンプリングする。
その画像情報を、画像解析ソフト(商品名:Image-Pro Plus ver.5.0、(株)日本ローパー製)によって、磁性キャリア粒子の表面とシリカ微粒子Aとの明度が異なることを利用して、2値化する。この2値化によって、シリカ微粒子Aの面積SSiOと磁性キャリア粒子の面積(シリカ微粒子A部分の面積も含む)SCarrierに分ける。
そして、シリカ微粒子Aによる磁性キャリア粒子の被覆率(面積%)σSiOは、下式によって算出される。
σSiO(面積%)=SSiO/SCarrier×100
【0068】
<磁性キャリアからのシリカ微粒子Aの分離>
磁性キャリアからのシリカ微粒子Aを分離する方法としては、例えば、以下の方法を用いることができる。
ガラス製の100mL平底ビーカーにイオン交換水30mLを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を0.3mL加え、コンタミノンN溶液を調製する。
発振周波数50kHzの発振器2個を位相を180度ずらした状態で内蔵した、電気的出力120Wの超音波分散器(商品名:Ultrasonic Dispension System Tetra150、日科機バイオス社製)を準備する。超音波分散器の水槽内に3.3Lのイオン交換水を入れ、この水槽中にコンタミノンNを2mL添加する。
コンタミノンN溶液を入れたビーカーを、超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
コンタミノンN溶液を入れたビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、磁性キャリア1.0gをいれ、分散させる。そして、30秒間超音波分散処理を継続する。なお、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃~40℃となる様に適宜調節する。
その後、磁性キャリアを入れたビーカーに磁石を近づけ、ビーカー越しにキャリアを引き寄せる。その状態でビーカー内の上澄み液(コンタミノンN溶液)を採取する。採取した上澄み液を濾過し、固形分をイオン交換水5gで洗浄し、シリカ微粒子Aを得る。
【実施例
【0069】
以下、実施例に基づいて具体的に本発明について説明する。しかしながら、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。なお、特に断りのない限り部は、全て質量基準である。
【0070】
<シリカ微粒子A1の製造例>
シリカ微粒子A1は拡散燃焼法によって以下のように製造した。
シリカ微粒子A1の製造にあたり、燃焼炉として、内炎及び外炎が形成される二重管構造の炭化水素―酸素混合型バーナーを用いた。このバーナーは、バーナー中心部にスラリー噴射用の二流体ノズルが接地され、原料のケイ素化合物が導入されるように構成されている。また、二流体ノズルの周囲から炭化水素-酸素の可燃性ガスが噴射され、還元雰囲気である内炎及び外炎を形成するように構成されている。可燃性ガス及び酸素の量ならびに流量の制御により、雰囲気、温度及び火炎の長さなどを調整することができる。
また、火炎中において、原料のケイ素化合物からシリカ微粒子が生成され、さらにシリカ微粒子が所望の粒径になるまで融着させることができる。その後、冷却し、生成されたシリカ微粒子をバグフィルターなどにより捕集することによって、所望の粒径のシリカ微粒子Aが得られる。
【0071】
原料のケイ素化合物としては、鉄原子180ppm、アルミニウム原子を600ppm含有したヘキサメチルシクロトリシロキサンを用いて、シリカ微粒子を製造した。
次に、得られたシリカ微粒子100質量部に対して、ヘキサメチルジシラザン3.9質量部を用いて表面処理を行い、シリカ微粒子A1を得た。
【0072】
得られたシリカ微粒子A1の一次粒子の個数平均粒径を表1に示した。またシリカ微粒子A1の鉄含有量、アルミニウム含有量、23℃50%RH環境下での電荷減衰定数αを表1に示す。
【0073】
<シリカ微粒子A2~14の製造例>
シリカ微粒子A1の製造例において、一次粒子の個数平均粒径とヘキサメチルシクロトリシロキサンの鉄含有量、アルミニウム含有量を変化させてシリカ微粒子A2~14を得た。各シリカ微粒子Aの一次粒子の個数平均粒径、鉄含有量、アルミニウム含有量、電荷減衰定数αを表1に示す。
【0074】
【表1】
【0075】
<磁性キャリア粒子1の製造例>
・Fe 63.2部
・MnCO 29.0部
・Mg(OH) 6.6部
・SrCO 1.2部
上記材料を上記組成比となるようにフェライト原材料を秤量した。
その後、直径1/8インチのステンレスビーズを用いた乾式振動ミルで5時間粉砕・混合した。得られた粉砕物をローラーコンパクターにて、約1mm角のペレットにした。
このペレットを目開き3mmの振動篩にて粗粉を除去し、次いで目開き0.5mmの振動篩にて微粉を除去した後、バーナー式焼成炉を用いて、窒素雰囲気下(酸素濃度0.01体積%)で、温度1000℃で4時間焼成し、仮焼フェライトを作製した。得られた仮焼フェライトの組成は、下記の通りであった。
(MnO)a(MgO)b(SrO)c(Fe)d
上記式において、a=0.257、b=0.117、c=0.007、d=0.393
【0076】
得られた仮焼フェライトをクラッシャーで0.3mm程度に粉砕した後に、直径1/8インチのジルコニアビーズを用い、仮焼フェライト100部に対し、水を30部加え、湿式ボールミルで1時間粉砕した。さらに、得られたスラリーを、直径1/16インチのアルミナビーズを用いた湿式ボールミルで4時間粉砕し、フェライトスラリー(仮焼フェライトの微粉砕品)を得た。
得られたフェライトスラリーに、仮焼フェライト100部に対して分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム1.0部、バインダーとしてポリビニルアルコール2.0部を添加し、スプレードライヤー(大川原化工機製)を用いて球状粒子に造粒した。得られた球状粒子を粒度調整した後、ロータリーキルンを用いて、650℃で2時間加熱し、分散剤やバインダーの有機成分を除去した。
【0077】
焼成雰囲気をコントロールするために、電気炉にて窒素雰囲気下(酸素濃度1.00体積%)で、室温から温度1300℃まで2時間で昇温し、その後、温度1150℃で4時間焼成した。その後、4時間をかけて、温度60℃まで降温し、窒素雰囲気から大気に戻し、温度40℃以下で取り出した。
凝集した粒子を解砕した後に、磁力選鉱により低磁力品をカットし、目開き250μmの篩で篩分して粗大粒子を除去し、体積分布基準の50%粒径(D50)36.0μmの磁性キャリアコア1を得た。
【0078】
<被覆樹脂1の調製>
・シクロヘキシルメタクリレートモノマー 26.8質量%
・メチルメタクリレートモノマー 0.2質量%
・メチルメタクリレートマクロモノマー 8.4質量%
(片末端にメタクリロイル基を有する重量平均分子量5000のマクロモノマー)
・トルエン 31.3質量%
・メチルエチルケトン 31.3質量%
・アゾビスイソブチロニトリル 2.0質量%
上記材料のうち、シクロヘキシルメタクリレートモノマー、メチルメタクリレートモノマー、メチルメタクリレートマクロモノマー、トルエン、及びメチルエチルケトンを還流冷却器、温度計、窒素導入管及び攪拌装置を取り付けた四つ口のセパラブルフラスコ中で混合した。セパラブルフラスコに窒素ガスを導入して充分に窒素雰囲気とした後に、80℃まで加温し、アゾビスイソブチロニトリルを添加して5時間還流し重合を行った。
得られた反応物にヘキサンを注入して共重合体を沈殿析出させた。
沈殿物を濾別後、真空乾燥して樹脂を得た。
次いで、得られた樹脂30部を、トルエン40部及びメチルエチルケトン30部の混合溶媒に溶解して、樹脂溶液1(樹脂固形分濃度30質量%)を得た。
【0079】
<被覆樹脂溶液1の調製>
・樹脂溶液1(樹脂固形分濃度30%) 33.3質量%
・トルエン 66.4質量%
・カーボンブラック(Regal330;キャボット社製) 0.3質量%
(一次粒子の個数平均粒径:25nm、窒素吸着比表面積:94m/g、DBP吸油量:75mL/100g)
上記材料を、ペイントシェーカーに投入し、直径0.5mmのジルコニアビーズを用いて、1時間分散を行った。得られた分散液を、5.0μmのメンブランフィルターで濾過をおこない、被覆樹脂溶液1を得た。
【0080】
<樹脂コートキャリア粒子1の製造例>
常温で維持されている真空脱気型ニーダーに、被覆樹脂溶液1及び磁性キャリア粒子1を投入した。この時、被覆樹脂溶液1は、100部の磁性キャリア粒子1に対して、樹脂成分2.5部となるように投入した。
被覆樹脂溶液1及び磁性キャリア粒子1の投入後、回転速度30rpmで15分間撹拌し、溶媒が一定量(80質量%)以上揮発した後、減圧混合しながら80℃まで昇温し、2時間かけて溶媒を留去した後に冷却した。
得られた磁性キャリアを、磁力選鉱により低磁力品を分別し、開口70μmの篩を通した後、風力分級器で分級し、体積分布基準の50%粒径(D50)が38.4μmの樹脂コートキャリア粒子1を得た。
【0081】
<磁性キャリア1-1の製造例>
100部の樹脂コートキャリア粒子1及び0.05部のシリカ微粒子A1をターブラシェイカーに仕込み、10分間浸透撹拌して磁性キャリア1-1を得た。
得られた磁性キャリア1-1の樹脂コートキャリア粒子1の表面におけるシリカ微粒子A1による被覆率を表2に示す。
【0082】
<磁性キャリア1-2~1-14の製造例>
表2に示すようにシリカ微粒子A1~A14の仕込み量を変更した他は磁性キャリア1-1の製造例と同様にして、磁性キャリア1-2~1-14を得た。
得られた磁性キャリア1-2~1-14の樹脂コートキャリア粒子1の表面におけるシリカ微粒子A2~A14の被覆率を表2に示す。
【0083】
【表2】
【0084】
<ポリエステル樹脂Lの製造例>
ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン76.9部(0.167モル)、テレフタル酸25部(0.145モル)、アジピン酸8.0部(0.054モル)、及びチタンテトラブトキシド0.5部をガラス製4リットルの4つ口フラスコに入れ、温度計、撹拌棒、コンデンサー及び窒素導入管を取りつけマントルヒーター内においた。次にフラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、200℃の温度で撹拌しつつ、4時間反応させた。その後、無水トリメリット酸1.2部(0.006モル)を添加し、180℃で1時間反応させ、ポリエステル樹脂Lを得た。
このポリエステル樹脂Lの酸価は5mgKOH/gであり、水酸基価は65mgKOH/gであった。また、GPCによる分子量は、重量平均分子量(Mw)8,000、数平均分子量(Mn)3,500、ピーク分子量(Mp)5,700、軟化点は90℃であった。
【0085】
<ポリエステル樹脂Hの製造例>
ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン71.3部(0.155モル)、テレフタル酸24.1部(0.145モル)、及びチタンテトラブトキシド0.6部をガラス製4リットルの4つ口フラスコに入れ、温度計、撹拌棒、コンデンサー及び窒素導入管を取りつけマントルヒーター内においた。次にフラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、200℃の温度で撹拌しつつ、2時間反応させた。その後、無水トリメリット酸5.8部(0.030モル%)を添加し、180℃で10時間反応させ、非晶性のポリエステル樹脂Hを得た。
このポリエステル樹脂Hの、GPCによる分子量は、重量平均分子量(Mw)200,000、数平均分子量(Mn)5,500、ピーク分子量(Mp)13,500、軟化点は150℃であった。
【0086】
<トナー1の製造例>
・ポリエステル樹脂L 75.00部
・ポリエステル樹脂H 25.00部
・C.I.ピグメントブルー15:3 5.7部
・3,5-ジ-t-ブチルサリチル酸アルミニウム化合物 0.1部
・ノルマルパラフィンワックス(融点:90℃) 5部
上記材料をヘンシェルミキサー(商品名:FM-75型、三井鉱山(株)製)で予備混合した後、二軸混練押し出し機(商品名:PCM-30型、株式会社池貝製)によって、160℃で溶融混練した。
得られた混練物を冷却し、ハンマーミルで1mm以下に粗粉砕した後、機械式粉砕機(商品名:T-250、ターボ工業(株)製)にて微粉砕した。
得られた微粉砕物を、ファカルティ(商品名:F-300、ホソカワミクロン社製)を用いて分級した。運転条件は、分級ローター回転数を11000rpm、分散ローター回転数を7200rpmとした。
こうして重量平均粒径(D4)6.2μmの負摩擦帯電性のトナー粒子1を得た。
ついで、
・トナー粒子1 100部
・シリカ微粒子A1 2.5部
上記処方で示した原材料をヘンシェルミキサー(商品名:FM-10C型、日本コークス(株)製)を用いて、回転数67s-1(4000rpm)、回転時間2minで混合した後、目開き150μmのメッシュで篩い、トナー1を得た。得られたトナー1を表3に示す。
【0087】
<トナー2~14の製造例>
シリカ微粒子A1を表3に示す様にシリカ微粒子A2~A14に変更した他はトナー1の製造例と同様にして、トナー2~14を得た。
【0088】
【表3】
【0089】
<現像剤1~14の製造例>
トナー濃度が8%となるように、表4に示す磁性キャリア1-1~1-14とトナー1~14を組み合わせ、振とう機(商品名:YS-8D型、(株)ヤヨイ製)にて振とうし、表4に示すスターター二成分現像剤1~14を調製した。振とう機の振幅条件は200rpm、2分間とした。
また、表5に示す組み合わせで、10部の磁性キャリア1-1~1-14に対し90部のトナー1~14を加え、常温常湿23℃/50%RHの環境において、V型混合機により5分間混合し、表5に示す補給用二成分現像剤1~14を得た。
【0090】
【表4】
【0091】
【表5】
【0092】
<実施例1>
スターター二成分現像剤1と補給用二成分現像剤1とを組み合わせて用い、以下の評価を行った。
【0093】
[画像評価]
カラー複写機(商品名:imagePRESS C850、キヤノン(株)製)又はその改造機を用いて以下の評価を実施した。
画像形成装置のシアン色用のステーションの現像器に、スターター二成分現像剤1を投入し、ホッパーに補給用二成分現像剤1をセットし、通紙耐久試験前後での転写性、かぶりの評価を行った。
【0094】
転写性は、通紙耐久試験として、温度23℃/相対湿度5%の印刷環境(以下「N/L」環境)の下で、画像比率5%のテストチャートを用い、10,000枚の耐久評価を行った。
条件:
紙 高白色用紙(商品名:GF-C081、キヤノンマーケティングジャパン(株)製:A4サイズ、81.4g/m2
画像形成速度 フルカラーで85枚/min
現像条件 現像コントラストを任意値で調整可能にし、本体による自動補正が作動しないように改造した。
【0095】
かぶりは、通紙耐久試験として、温度30℃/相対湿度80%の印刷環境(以下「H/H」環境)の下で、画像比率5%のテストチャートを用い、10,000枚印刷後の画像の評価を行った。
条件:
紙 漂白紙(商品名:CS-068、キヤノンマーケティングジャパン(株)製:A4サイズ、68.0g/m2
画像形成速度 フルカラーで85枚/min
現像条件 現像コントラストを任意値で調整可能にし、本体による自動補正が作動しないように改造した。
【0096】
各評価項目を以下に示す。
<通紙耐久試験前の転写性の評価及び通紙耐久試験後の転写性の評価>
通紙耐久試験前(初期)に下記の転写性の評価を行い、10,000枚通紙耐久試験を行った直後に下記の転写性の評価を行った。
ベタ(FFh)画像を形成し、以下の基準に基づき評価した。
一次転写後に感光体上に残ったトナーと一次転写前の感光体上のトナーをそれぞれ透明なポリエステル製の粘着テープによりテーピングしてはぎ取った。はぎ取った粘着テープを紙上に貼り、その濃度を分光濃度計(商品名:500シリーズ、X-Rite社製)で測定した。
以上により得られた一次転写前の感光体上のトナーの濃度と、転写後に感光体上に残ったトナーの濃度の変化率を転写効率とし、下記の評価基準に基づいて評価を行った。C以上を本発明の効果が得られていると判断した。
(評価基準)
A:転写効率;90%以上
B:転写効率;85%以上90%未満
C:転写効率;80%以上85%未満
D:転写効率;80%未満
【0097】
<通紙耐久試験後のかぶりの評価>
べた白(00h)画像を形成し、以下の基準に基づき評価した。
測定は、反射率計リフレクトメーター(商品名:モデル TC-6DS、東京電色社製)を用いて行い、画像形成後の白地部の反射濃度の最悪値をDs、画像形成前の記録媒体の反射平均濃度をDrとし、Dr-Dsをかぶり量としてかぶり評価を行った。したがって、数値が小さいほどかぶりが少ないことを示す。
(評価基準)
A:かぶり量が1.00未満
B:かぶり量が1.00以上3.00未満
C:かぶり量が3.00以上
【0098】
以上の結果を表6に示す。
【表6】
【0099】
<実施例2~4及び7、参考例5,6,8,9及び比較例1~5>
スターター二成分現像剤と補給用二成分現像剤とを表6に示すように組み合わせて用いた他は、実施例1と同様に評価を行った。結果を表6に示す。
上記すべての評価においてB評価以上のとき、本発明の効果が得られていると判断した。
【符号の説明】
【0100】
1 静電潜像担持体
2 帯電器
3 露光器
4 現像器
5 現像容器
6 現像剤担持体
7 マグネット
8 規制部材
9 中間転写体
10 中間転写帯電器
11 転写帯電器
12 転写材(記録媒体)
13 定着器
14 中間転写体クリーナー
15 クリーナー
16 前露光、
17 ホッパー
図1
図2