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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-25
(45)【発行日】2024-10-03
(54)【発明の名称】トナー及び画像形成方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/097 20060101AFI20240926BHJP
【FI】
G03G9/097 375
G03G9/097 371
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020180037
(22)【出願日】2020-10-27
(65)【公開番号】P2022070772
(43)【公開日】2022-05-13
【審査請求日】2023-10-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 亜希
(72)【発明者】
【氏名】坂本 一幸
(72)【発明者】
【氏名】細井 一人
(72)【発明者】
【氏名】松尾 龍一郎
(72)【発明者】
【氏名】辻本 大祐
(72)【発明者】
【氏名】小堀 尚邦
【審査官】福田 由紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-084095(JP,A)
【文献】特開2009-134073(JP,A)
【文献】特開2017-003659(JP,A)
【文献】特表2009-520667(JP,A)
【文献】特表2010-527882(JP,A)
【文献】特表2005-536611(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/08-9/097
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂を含有するトナー粒子と前記トナー粒子の表面にシリカ微粒子を有するトナーであって、
該シリカ微粒子は、鉄原子を200ppm以上2000ppm以下含有するシリカ微粒子Aを含有し、
該シリカ微粒子Aは、一次粒子の個数平均粒径が80nm以上200nm以下であり、かつ
温度23℃相対湿度50%の環境において帯電させた状態から1800秒後の電荷減衰定数αが、0.0005以上0.0100以下であり、
該トナー粒子の重量平均粒径(D4)が3.0μm以上5.7μm以下であることを特徴とするトナー。
【請求項2】
前記トナーの重量平均粒径(D4)が3.0μm以上5.3μm以下である請求項1に記載のトナー。
【請求項3】
前記シリカ微粒子Aは、アルミニウム原子を200ppm以上2000ppm以下含有する請求項に記載のトナー。
【請求項4】
前記シリカ微粒子Aは、疎水化処理されたシリカ粒子である請求項1~のいずれか1項に記載のトナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式、静電記録方式、静電印刷方式、トナージェット方式に用いられるトナーに関する。また、本発明は、電子写真方式の画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機およびプリンターが広く普及するに従い、トナーに要求される性能もより高度になっている。近年では、プリントオンデマンド(POD)と呼ばれる、製版工程を経ずに直接印刷するデジタル印刷技術が注目されている。このプリントオンデマンド(POD)は、小ロット印刷、1枚毎に内容を変えた印刷(バリアブル印刷)、および分散印刷にも対応していけることから、従来のオフセット印刷に対して利点がある。トナーを用いた画像形成方法のPOD市場への適用を考えた場合、様々な環境で長期間にわたり高速で且つ、多量に出力する場合であっても高品質な画質のプリント成果物を安定的に得ることが求められる。プリント成果物の品質を落とす項目の1つに白地画像かぶりがある。これは本来白地であってほしい部分にトナーが付着して画像品位が低下する現象であるこの白地画像かぶりの抑制方法について、以下の特許文献で提案されている。
【0003】
特許文献1は、トナー外添剤として粒径5~60nmの角を有するアルミナ粒子を使用することで、外添剤のキャリアへの移行量を低減し帯電性を保持し、画像の白地部のかぶりを抑制している。
また、特許文献2ではトナー外添剤として一次粒径が30nm以上100nm以下、一次粒子の平均円形度が0.82以上0.94以下、一次粒子の累積84%となる円形度が0.92超のチタン酸ストロンチウムを使用することで分散性に優れ、帯電性を保持し、画像の白地部のかぶりを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-138990号公報
【文献】特開2019-28428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1および2の構成で画像の白地部のかぶりの抑制に対して一定の効果は見られるものの、トナー小粒径化により、トナーとトナーの平均粒径より小さな微粉の量が多くなると、キャリアとの静電的な拘束力が低下し、現像器内汚染や画像の白地部のかぶりが悪化する可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題は、下記のトナーを使用することにより解決することができる。
結着樹脂を含有するトナー粒子と前記トナー粒子の表面にシリカ微粒子を有するトナーであって、前記シリカ微粒子は、鉄原子を200ppm以上2000ppm以下含有するシリカ微粒子Aを含有し、前記シリカ微粒子Aは、一次粒子の個数平均粒径が80nm以上200nm以下であり、かつ温度23℃相対湿度50%の環境において帯電させた状態から1800秒後の電荷減衰定数αが、0.0005以上0.0100以下であり、
前記トナー粒子の重量平均粒径(D4)が3.0μm以上5.7μm以下であることを特徴とするトナーである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、トナー流動性を保持し、トナー凝集を防止し、微粉と現像ローラ上のキャリアとの静電的な拘束力が向上し、微粉飛散が軽減され画像の白地部のかぶりが抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。
本発明の一実施形態は、結着樹脂を含有するトナー粒子と前記トナー粒子の表面にシリカ微粒子を有するトナーであって、
前記シリカ微粒子は、鉄原子を200ppm以上2000ppm以下含有するシリカ微粒子Aを含有し、
前記シリカ微粒子Aは、一次粒子の個数平均粒径が80nm以上200nm以下であり、かつ
温度23℃相対湿度50%の環境において帯電させた状態から1800秒後の電荷減衰定数αが、0.0005以上0.0100以下であり、
前記トナー粒子の重量平均粒径(D4)が3.0μm以上5.7μm以下であることを特徴とするトナーに関する。
【0009】
さらに本発明の別の実施形態は、前記トナーの重量平均粒径(D4)が3.0μm以上5.3μm以下であること、前記シリカ微粒子Aは、アルミニウム原子を200ppm以上2000ppm以下含有すること、前記シリカ微粒子Aは、疎水化処理されたシリカ粒子であることを特徴とするトナーに関する。
【0010】
このような本発明のトナーを用いることにより、前記課題である画像の白地部のかぶりを抑制することができる。
【0011】
本発明のトナーを用いることによるこの画像の白地部のかぶりを抑制する作用効果メカニズムについて、本発明者らは以下のように推定している。
【0012】
現像器内汚染や画像の白地部のかぶりが発生する理由は、トナーおよび微粉がキャリアとの静電的な拘束力が低下しやすいためである。
【0013】
本発明では、適度な電荷減衰を生じるシリカをトナー粒子に外添することで次の作用、効果を発揮すると考えている。適度な電荷減衰を生じるシリカを外添したトナーは、帯電立ち上がりが速く、電荷のやり取りが速やかに行われるため、キャリアへの静電的な拘束力が増し、トナーおよび微粉が飛散し、感光体への付着がなくなることで、現像器内汚染や画像の白地部のかぶりが抑制される。特に、高温高湿環境下で、小粒径化トナーを用いた場合、微粉粒径も小さいものが多くなり、微粉の量が増加する傾向があり、さらに帯電低下が懸念されるので、本発明のトナーを用いた場合の効果はより顕著である。以上のように粒径が比較的大きく、適度な電荷減衰を生じるシリカをトナー粒子に外添することによって、トナー流動性を確保し、トナー凝集と、現像器内汚染や画像の白地部のかぶりの発生を防止することができる。
本発明においてその目的を達成するための各構成要素を以下に詳述する。
【0014】
[シリカ微粒子A]
本発明のトナーには、酸化ケイ素(シリカ)微粒子をトナー粒子表面に有し、一次粒子の個数平均粒径が80nm以上200nm以下のシリカ微粒子Aが好ましく使用できる。シリカ微粒子Aの粒径が前記範囲にあることで現像装置内での機械的負荷を受けた際にもトナー表面で凸部を維持でき、トナー帯電量が低下しにくく、反射濃度のバラツキと非画像部カブリの低減に寄与する。
【0015】
本発明で用いるシリカ微粒子Aは、シリカ(即ちSiO)を主成分とする粒子であり、燃焼法、溶融法、水熱合成等の公知の製造方法で製造可能である。なかでも、高温高湿環境下での帯電緩和抑制効果をさらに高めるために、また、高抵抗であり湿度の影響を受けにくいという観点から、燃焼法や溶融法で製造されたシリカ微粒子Aがより好ましい。
【0016】
燃焼法は、シロキサン化合物を気化することによりシロキサンガスを窒素等のキャリアガスとともにバーナーへ導入し、例えば酸素等の支燃性ガスと拡散混合してシロキサンガスを燃焼させることでシリカ微粒子を生成させる方法である。また、別の燃焼法は、四塩化ケイ素を酸素、水素、例えば窒素等の希釈ガスとの混合ガスとともに、高温で燃焼させてシリカ微粒子(ヒュームドシリカ)を生成させる方法である。
また、溶融法は、金属シリコン微粒子スラリーを火炎中に噴霧して酸化反応させながら球形化させてシリカ粒子を得る方法である。
【0017】
本発明においては、シリカ微粒子Aの一次粒子の個数平均粒径を80nm以上200nm以下に制御するためと鉄原子を含有させるという観点から、シロキサンガスを燃焼してシリカ微粒子を生成させる燃焼法が好ましい例として挙げられる。
シロキサン化合物としては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン等が挙げられる。金属原子をシリカ微粒子Aに含有させる方法としては、シロキサン化合物の純度を調整して含有させることが可能である。
【0018】
本発明では、シリカ微粒子Aに鉄原子、好ましくはさらにアルミニウム原子を含有させることによって本発明で用いるシリカ微粒子Aを得ることができる。
シロキサン化合物の純度を調整しながらこれら金属原子をシリカ微粒子Aに含有させる方法がある。
トナー流動性を確保し、トナー凝集と、現像器内汚染や画像の白地部のかぶりの発生を防止するという観点から、シリカ微粒子Aは、鉄原子を20ppm以上2000ppm以下含有し、アルミニウム原子を200ppm以上2000ppm以下含有することが好ましい。
さらに、トナー流動性を確保し、トナー凝集と、現像器内汚染や画像の白地部のかぶりの発生を防止するという観点から、シリカ微粒子Aは、温度23℃相対湿度50%の環境において帯電させた状態から1800秒後の電荷減衰定数αが、0.0005以上0.0100以下であることが好ましい。
【0019】
前記シリカ微粒子は、その表面を、脂肪酸又はその金属塩、ジシリルアミン化合物、ハロゲン化シラン化合物、シリコーンオイル、シランカップリング剤、チタンカップリング剤などで表面処理してもよい。これらによる疎水化処理は、特に高温高湿環境下でトナーの帯電安定性を向上できる点で好ましい。その中でも、n-オクチルエトキシシラン処理や3,3,3-トリフロロプロピルトリメトキシシラン処理、ヘキサメチルジシラザン処理がより、帯電安定性の効果を高める点で好ましい。
【0020】
シリカ微粒子のトナー粒子との混合は、ヘンシェルミキサー、メカノハイブリッド(日本コークス社製)、スーパーミキサー、ノビルタ(ホソカワミクロン社製)等の公知の混合機を用いることができ、特に装置は限定されるものではない。本発明における前記シリカ微粒子の添加量は、トナー粒子に対して0.5質量%以上15質量%以下である。
【0021】
[その他外添剤]
本発明のトナーには、前述したシリカ微粒子のほかに、帯電量や流動性を調整するために必要に応じて他の無機微粉末を含有させることもできる。無機微粉末は、トナー粒子に内添しても良いし外添剤としてトナー粒子と混合してもよい。外添剤としては、シリカ、酸化チタン、チタン酸ストロンチウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウムのような無機微粉末が好ましい。無機微粉末は、ステアリン酸系化合物、シラン化合物、シリコーンオイル又はそれらの混合物のような疎水化剤で疎水化されていてもよい。
【0022】
外添剤は、トナー粒子100質量部に対して0.1質量部以上10.0質量部以下使用されることが好ましい。トナー粒子と外添剤との混合は、ヘンシェルミキサーのような公知の混合機を用いることができる。
【0023】
[結着樹脂]
本発明のトナーに使用される結着樹脂としては、特に限定されず、下記の重合体又は樹脂を用いることが可能である。
【0024】
例えば、ポリスチレン、ポリ-p-クロルスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の単重合体;スチレン-p-クロルスチレン共重合体、スチレン-ビニルトルエン共重合体、スチレン-ビニルナフタリン共重合体、スチレン-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-メタクリル酸エステル共重合体、スチレン-α-クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン-ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン-ビニルメチルケトン共重合体、スチレン-アクリロニトリル-インデン共重合体などのスチレン系共重合体;ポリ塩化ビニル、フェノール樹脂、天然変性フェノール樹脂、天然樹脂変性マレイン酸樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール、テルペン樹脂、クマロン-インデン樹脂、石油系樹脂などが使用できる。
【0025】
これらの中で、低温定着性、帯電性制御の観点から、ポリエステル樹脂を用いることが好ましい。
【0026】
本発明で好ましく用いられるポリエステル樹脂としては、「ポリエステルユニット」を結着樹脂鎖中に有している樹脂である該ポリエステルユニットを構成する成分としては、具体的には、2価以上のアルコールモノマー成分と、2価以上のカルボン酸、2価以上のカルボン酸無水物及び2価以上のカルボン酸エステル等の酸モノマー成分が挙げられる。
【0027】
例えば、該2価以上のアルコールモノマー成分として、以下のものが挙げられる。ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3.3)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.0)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.0)-ポリオキシエチレン(2.0)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン等のビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブテンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ソルビット、1,2,3,6-ヘキサンテトロール、1,4-ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4-ブタントリオール、1,2,5-ペンタントリオール、グリセリン、2-メチルプロパントリオール、2-メチル-1,2,4-ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5-トリヒドロキシメチルベンゼン等。
【0028】
これらの中で好ましく用いられるアルコールモノマー成分としては、芳香族ジオールであり、ポリエステル樹脂を構成するアルコールモノマー成分において、芳香族ジオールは、80モル%以上の割合で含有することが好ましい。
【0029】
一方、該2価以上のカルボン酸、2価以上のカルボン酸無水物及び2価以上のカルボン酸エステル等の酸モノマー成分としては、以下のものが挙げられる。フタル酸、イソフタル酸及びテレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸類又はその無水物;コハク酸、アジピン酸、セバシン酸及びアゼライン酸などのアルキルジカルボン酸類又はその無水物;炭素数6~18のアルキル基又はアルケニル基で置換されたコハク酸もしくはその無水物;フマル酸、マレイン酸及びシトラコン酸などの不飽和ジカルボン酸類又はその無水物。
【0030】
これらの中で好ましく用いられる酸モノマー成分としては、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、フマル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸やその無水物等の多価カルボン酸である。
【0031】
また、該ポリエステル樹脂の酸価は、20mgKOH/g以下であることが、顔料の分散性及び摩擦帯電量の安定性の観点で好ましい。
【0032】
なお、該酸価は、樹脂に用いるモノマーの種類や配合量を調整することにより、上記範囲とすることができる。具体的には、樹脂製造時のアルコールモノマー成分比/酸モノマー成分比、分子量を調整することにより制御できる。また、エステル縮重合後、末端アルコールを多価酸モノマー(例えば、トリメリット酸)で反応させることにより制御できる。
【0033】
[着色剤]
本発明のトナーで現像してフルカラー画像を形成する場合、着色剤を含有させて、黒色トナー、マゼンタトナー、シアントナー、イエロートナーのカラートナーを調製して使用する。本発明のトナーに含有できる着色剤としては、以下のものが挙げられる。
【0034】
黒色着色剤としては、主にカーボンブラックを使用し、必要に応じて染料、顔料を加えてもよい。また、イエロー着色剤とマゼンタ着色剤及びシアン着色剤とを用いて黒色に調色したものが挙げられる。着色剤には、顔料を単独で使用してもかまわないが、染料と顔料とを併用してその鮮明度を向上させた方がフルカラー画像の画質の点からより好ましい。
【0035】
マゼンタ着色顔料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、39、40、41、48:2、48:3,48:4、49、50、51、52、53、54、55、5.7:1、58、60、63、64、68、81:1、83、87、88、89、90、112、114、122、123、146、147、150、163、184、202、206、207、209、238、269、282;C.I.ピグメントバイオレット19;C.I.バットレッド1、2、10、13、15、23、29、35。
【0036】
マゼンタ着色染料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ソルベントレッド1、3、8、23、24、25、27、30、49、81、82、83、84、100、109、121;C.I.ディスパースレッド9;C.I.ソルベントバイオレット8、13、14、21、27;C.I.ディスパーバイオレット1などの油溶染料、C.I.ベーシックレッド1、2、9、12、13、14、15、17、18、22、23、24、27、29、32、34、35、36、37、38、39、40;C.I.ベーシックバイオレット1、3、7、10、14、15、21、25、26、27、28などの塩基性染料。
【0037】
シアン着色顔料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントブルー2、3、15:2、15:3、15:4、16、17;C.I.バットブルー6;C.I.アシッドブルー45、フタロシアニン骨格にフタルイミドメチル基を1個以上5個以下置換した銅フタロシアニン顔料。
シアン着色染料としては、C.I.ソルベントブルー70がある。
【0038】
イエロー着色顔料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、15、16、17、23、62、65.73、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、151、154、155、168、174、175、176、180、181、185;C.I.バットイエロー1、3、20。
イエロー着色染料としては、C.I.ソルベントイエロー162がある。
【0039】
上記着色剤は、結着樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上30質量部以下で使用されることが好ましい。
【0040】
[離型剤:ワックス]
本発明のトナーに用いられる離型剤として、例えば以下のようなワックスが挙げられる。
低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、アルキレン共重合体、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスなどの炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックスなどの炭化水素系ワックスの酸化物又はそれらのブロック共重合物;カルナバワックスなどの脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;脱酸カルナバワックスなどの脂肪酸エステル類を一部又は全部を脱酸化したもの。
【0041】
さらに、以下のものが挙げられる。パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸などの飽和直鎖脂肪酸類;ブラシジン酸、エレオステアリン酸、パリナリン酸などの不飽和脂肪酸類;ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコールなどの飽和アルコール類;ソルビトールなどの多価アルコール類;パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸などの脂肪酸類と、ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコールなどのアルコール類とのエステル類;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドなどの脂肪酸アミド類;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドなどの飽和脂肪酸ビスアミド類;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’-ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’-ジオレイルセバシン酸アミドなどの不飽和脂肪酸アミド類;m-キシレンビスステアリン酸アミド、N,N’-ジステアリルイソフタル酸アミドなどの芳香族系ビスアミド類;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなどの脂肪族金属塩(一般的に金属石けんといわれているもの);脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸などのビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス類;ベヘニン酸モノグリセリドなどの脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂の水素添加によって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物。
【0042】
これらのワックスの中でも、低温定着性、耐高温オフセット性を向上させるという観点から、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスなどの炭化水素系ワックス、もしくはカルナバワックスなどの脂肪酸エステル系ワックスが好ましい。
【0043】
該ワックスの含有量は、結着樹脂100質量部に対して、1.0質量部以上15質量部以下で使用されることが好ましい。該ワックスの含有量がこの範囲にあるとき、高温での耐オフセット性を効率的に発揮することができる。
【0044】
また、トナーの保存性と耐高温オフセット性の両立の観点から、示差走査熱量分析装置(DSC)で測定される昇温時の吸熱曲線において、温度30℃以上200℃以下の範囲に存在する最大吸熱ピークのピーク温度が50℃以上110℃以下であることが好ましい。
【0045】
[ワックス分散剤]
ワックスの結着樹脂への分散性を向上させるために、ワックス成分に近い極性部位と樹脂極性に近い部位を併せ持つ樹脂をワックス分散剤として添加してもよい。具体的には、炭化水素化合物でグラフト変性されたスチレンアクリル系樹脂が好ましい。
【0046】
ワックス分散剤はその樹脂部分に、環式炭化水素基または芳香環を導入すると、トナーの帯電維持性が向上する。これによりトナー粒子による本発明のチタン酸ストロンチウム粒子の帯電補助特性を減じることが抑制されるので好ましい。
【0047】
[荷電制御剤]
トナーには、必要に応じて荷電制御剤を含有させることもできる。トナーに含有される荷電制御剤としては、公知のものが利用できるが、特に、無色でトナーの帯電スピードが速くかつ一定の帯電量を安定して保持できる芳香族カルボン酸の金属化合物が好ましい。
【0048】
ネガ系荷電制御剤としては、以下のものが挙げられる。サリチル酸金属化合物、ナフトエ酸金属化合物、ジカルボン酸金属化合物、スルホン酸又はカルボン酸を側鎖に持つ高分子型化合物、スルホン酸塩或いはスルホン酸エステル化物を側鎖に持つ高分子型化合物、カルボン酸塩或いはカルボン酸エステル化物を側鎖に持つ高分子型化合物、ホウ素化合物、尿素化合物、ケイ素化合物、カリックスアレーン。ポジ系荷電制御剤としては、四級アンモニウム塩、前記四級アンモニウム塩を側鎖に有する高分子型化合物、グアニジン化合物、イミダゾール化合物。荷電制御剤はトナー粒子に対して内添しても良いし外添しても良い。荷電制御剤の添加量は、結着樹脂100質量部に対し0.2質量部以上10質量部以下が好ましい。
【0049】
[現像剤]
本発明のトナーは、一成分系現像剤としても使用できるが、ドット再現性をより向上させるために、磁性キャリアと混合して、二成分系現像剤として用いることが好ましい。また、長期にわたり安定した画像が得られるという点でも二成分系現像剤として用いることが好ましい。
【0050】
磁性キャリアとしては、下記のような公知のものを使用できる。表面を酸化した鉄粉、或いは、未酸化の鉄粉や、鉄、リチウム、カルシウム、マグネシウム、ニッケル、銅、亜鉛、コバルト、マンガン、クロム、希土類などの金属粒子、それらの合金粒子、酸化物粒子、フェライト等の磁性体や、磁性体と、この磁性体を分散した状態で保持する結着樹脂とを含有する磁性体分散樹脂キャリア(いわゆる樹脂キャリア)。
【0051】
本発明のトナーを磁性キャリアと混合して二成分系現像剤として使用する場合、その際の磁性キャリアとの混合比率は、二成分系現像剤中のトナー濃度として、2質量%以上15質量%以下、好ましくは4質量%以上13質量%以下にすると良好な結果が得られる。
【0052】
[製造方法]
本発明のトナーの製造方法は、乳化凝集法、溶融混練法、溶解懸濁法など従来公知のトナー製造方法であれば特に限定されないが、原材料の分散性を高めるという観点から溶融混練法が好ましい。
【0053】
溶融混練法は、トナー粒子の原材料であるトナー組成物を溶融混練し、得られた混練物を粉砕することを特徴とする。製造方法の例を挙げて説明する。
【0054】
原料混合工程で、トナー粒子を構成する材料として、ポリエステル樹脂、離型剤、及び着色剤、並びに必要に応じて荷電制御剤等の他の成分を所定量秤量して配合し、混合する。混合装置の一例としては、ダブルコン・ミキサー、V型ミキサー、ドラム型ミキサー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウタミキサ、メカノハイブリッド(日本コークス工業(株)製)などが挙げられる。
【0055】
次に、混合した材料を溶融混練して、結着樹脂中に他原材料等を分散させる。溶融混練工程では、加圧ニーダー、バンバリィミキサーなどのバッチ式練り機や、連続式の練り機を用いることができ、連続生産できる優位性から、1軸又は2軸押出機が主流となっている。例えば、KTK型2軸押出機((株)神戸製鋼所製)、TEM型2軸押出機(東芝機械(株)製)、PCM混練機((株)池貝製)、2軸押出機(ケイ・シー・ケイ社製)、コ・ニーダー(ブス社製)、ニーデックス(日本コークス工業(株)製)などが挙げられる。更に、溶融混練することによって得られる樹脂組成物は、2本ロール等で圧延され、冷却工程で水などによって冷却してもよい。
【0056】
ついで、樹脂組成物の冷却物は、粉砕工程で所望の粒径にまで粉砕される。粉砕工程では、例えば、クラッシャー、ハンマーミル、フェザーミルなどの粉砕機で粗粉砕した後、更に、微粉砕機で微粉砕する。微粉砕機としては、クリプトロンシステム(川崎重工業(株)製)、スーパーローター(日清エンジニアリング(株)製)、ターボ・ミル(フロイント・ターボ(株)製)やエアージェット方式による微粉砕機などが挙げられる。
【0057】
その後、必要に応じて慣性分級方式のエルボージェット(日鉄鉱業(株)製)、遠心力分級方式のターボプレックス(ホソカワミクロン(株)製)、TSPセパレータ(ホソカワミクロン(株)製)、ファカルティ(ホソカワミクロン(株)製)などの分級機や篩分機を用いて分級し、トナー粒子を得る。
【0058】
トナー粒子の重量平均粒径は3.0μm以上5.7μm以下であることが本発明の外添剤による効果を十分に得ることができ、好ましい。さらに粒子に機械的衝撃力を与え、熱風などによる加熱処理を行うことにより、トナー粒子の円形度を高めてもよい。トナー粒子同士の電荷授受機会と摩擦摺擦力を多くし、帯電立ち上がり速度を高めるために、トナー粒子の平均円形度としては0.962以上0.972以下が好ましい。
【0059】
上記のごとき製造方法で製造されたトナー粒子に必要に応じ選択された外部添加剤を加えて混合(外添)する。混合装置の一例としては、ダブルコン・ミキサー、V型ミキサー、ドラム型ミキサー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウタミキサ、メカノハイブリッド(日本コークス工業株式会社製)などが挙げられる。
【0060】
[画像形成方法]
本発明のトナーに着色剤を含有させたカラートナーと黒色トナーとを有するトナーセットは、公知の画像形成方法に適用できる。具体的には、静電荷像担持体を帯電する工程、帯電している静電荷像担持体に静電荷像を形成する工程、形成された静電荷像をトナーで現像してトナー画像を形成する工程、形成されたトナー画像を転写材に転写する工程、及び転写されたトナー画像を転写材に定着して定着画像を形成する工程、を含む画像形成方法に好適に使用できる。
【0061】
そして、前記形成された静電荷像をトナーで現像してトナー画像を形成する工程は、トナーセットのうちの黒色トナーを用いて黒色トナー画像を形成する工程と、トナーセットのうちのカラートナーを用いてカラートナー画像を形成する工程とを有していればよい。また、カラートナーがマゼンタトナー、シアントナー、イエロートナーの3種であった場合は、カラートナーの当該工程は3つとなる。なお、後述の実施例ではカラートナーとしてシアントナーを代表させ、黒色トナーとシアントナーとのトナーセットによる例を示している。
【0062】
[トナー粒子の重量平均粒径(D4)の測定方法]
トナー粒子の重量平均粒径(D4)は、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター(株)製)と、測定条件設定及び測定データ解析をするための付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター(株)製)を用いて、実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで測定し、測定データの解析を行い、算出する。
【0063】
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター(株)製)が使用できる。
【0064】
なお、測定、解析を行う前に、以下のように前記専用ソフトの設定を行う。
前記専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更画面」において、コントロールモードの総カウント数を50,000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター(株)製)を用いて得られた値を設定する。閾値/ノイズレベルの測定ボタンを押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1,600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、測定後のアパーチャーチューブのフラッシュにチェックを入れる。
【0065】
専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定画面」において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μm以上60μm以下に設定する。
【0066】
具体的な測定法は以下のとおりである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250mL丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mLを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、解析ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100mL平底ビーカーに前記電解水溶液約30mLを入れ、この中に分散剤として下記の希釈液を約0.3mL加える。
・希釈液:「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業(株)製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力が120Wである下記の超音波分散器の水槽内に所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2mL添加する。
・超音波分散器:「UltrAsonic Dispension System TetorA150」(日科機バイオス(株)製)
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。なお、超音波分散にあたっては、水槽の水温が15℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーを分散した前記(5)の電解水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50,000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行い、重量平均粒径(D4)を算出する。なお、専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、分析/体積統計値(算術平均)画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)である。
【実施例
【0067】
以下、製造例及び実施例により本発明を説明する。
<シリカ微粒子の製造例>
シリカの製造には、燃焼炉は、内炎と外炎が形成できる二重管構造の炭化水素-酸素混合型バーナーを用いた。バーナー中心部にスラリー噴射用の二流体ノズルが接地され、原料の珪素化合物が導入される。二流体ノズルの周囲から炭化水素-酸素の可燃性ガスが噴射され、還元雰囲気である内炎及び外炎を形成する。可燃性ガスと酸素の量及び流量の制御により、雰囲気と温度、火炎の長さ等が調整される。火炎中において珪素化合物からシリカ微粒子が形成され、さらに所望の粒径になるまで融着させる。その後、冷却後、バグフィルター等により捕集することによって得られる。
【0068】
原料の珪素化合物として、ヘキサメチルシクロトリシロキサンを用いて、シリカを製造し、得られた無機微粒子100質量部に対して、表面処理剤を用いて表面処理し、シリカ微粒子得た。表面処理剤としては、脂肪酸又はその金属塩、ジシリルアミン化合物、ハロゲン化シラン化合物、シリコーンオイル、シランカップリング剤、チタンカップリング剤などが、トナーの帯電安定性を向上できる点で好ましい。その中でも、n-オクチルエトキシシラン処理や3,3,3-トリフロロプロピルトリメトキシシラン処理、ヘキサメチルジシラザン処理がより、帯電安定性の効果を高める点で好ましい。
【0069】
<結着樹脂の製造例>
(ポリエステル樹脂の製造例)
・ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン:多価アルコール総モル数に対して80.0mol%
・ポリオキシエチレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン:多価アルコール総モル数に対して20.0mol%
・テレフタル酸:多価カルボン酸総モル数に対して80.0mol%
・無水トリメリット酸:多価カルボン酸総モル数に対して20.0mol%
冷却管、撹拌機、窒素導入管、及び、熱電対のついた反応槽に、上記材料を投入した。そして、モノマー総量100質量部に対して、触媒として2-エチルヘキサン酸錫(エステル化触媒)を1.5質量部添加した。次にフラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、200℃の温度で撹拌しつつ、2.5時間反応させた。
【0070】
さらに、反応槽内の圧力を8.3kPAに下げ、1時間維持した後、180℃まで冷却し、そのまま反応させASTM D36-86に従って測定した軟化点が110℃に達したのを確認してから温度を下げて反応を止めた。得られたポリエステル樹脂1の軟化点(Tm)は115℃であった。
【0071】
<ワックス分散剤の製造例>
温度計及び撹拌機の付いたオートクレーブ反応槽中に、キシレン300.0質量部、ポリプロピレン(融点75℃)10.0質量部を入れ充分溶解し、窒素置換後、スチレン73.0質量部、メタクリル酸シクロヘキシル5.0質量部、ブチルアクリレート12.0質量部、及びキシレン250.0質量部の混合溶液を180℃で3時間滴下し重合した。さらにこの温度で30分間保持し、脱溶剤を行い、ワックス分散剤を得た。
【0072】
<トナーの製造例>
以下カラートナーの代表例として、シアントナーの製造例を示す。
【0073】
・ポリエステル樹脂 100.0質量部
・3,5-ジ-t-ブチルサリチル酸アルミニウム化合物 0.1質量部
・フィッシャートロプシュワックス(最大吸熱ピーク温度90℃) 5.0質量部
・ワックス分散剤 6.5質量部
・C.I.ピグメントブルー15:3 5.0質量部
前記処方で示した原材料をヘンシェルミキサー(FM75J型、三井三池化工機(株)製)を用いて、回転数20s-1、回転時間5分で混合した後、温度130℃、バレル回転数200rpmに設定した二軸混練機(PCM-30型、株式会社池貝製)にて混練した。得られた混練物を冷却し、ハンマーミルにて1mm以下に粗粉砕し、粗砕物を得た。得られた粗砕物を、機械式粉砕機(T-250、ターボ工業(株)製)にて微粉砕した。さらに回転型分級機(200TSP、ホソカワミクロン社製)を用い、分級を行い、トナー粒子を得た。回転型分級機(200TSP、ホソカワミクロン社製)の運転条件は、分級ローター回転数を50.0s-1とした。得られたトナー粒子は、重量平均粒径(D4)が4.9μmであった。
【0074】
得られたトナー粒子に、シリカ微粒子を5.0質量%、ヘキサメチルジシラザン10.0質量%で表面処理した一次平均粒子径10nmの疎水性小粒径シリカ微粒子0.2質量%を添加し、ヘンシェルミキサー(FM75J型、三井三池化工機(株)製)で回転数15s-1、回転時間10分、ジャケット温度45℃で混合した。
【0075】
その後、さらにチタン酸ストロンチウムを3.0質量%と、ヘキサメチルジシラザン10.0質量%で表面処理した一次平均粒子径10nmの疎水性小粒径シリカ微粒子0.8質量%を添加した後、回転数30s-1、回転時間4分、ジャケット温度20℃で混合した後、目開き54μmの超音波振動篩を通過させ、平均円形度0.967のトナー1を得た。
【0076】
[トナー2~22の製造]
以上説明した製造例において、トナー粒子の重量平均粒径、トナー外添剤(シリカ)の個数平均粒径、電荷減衰定数、表面疎水化処理の有無を表1に記載したようになるよう調整して製造し、トナー1の製造例と同様にして、トナー2~22を得た。
【0077】
【表1】
【0078】
<磁性コア粒子の製造例>
(工程1:秤量・混合工程)
・Fe23 62.7質量部
・MnCO3 29.5質量部
・Mg(OH)2 6.8質量部
・SrCO3 1.0質量部
上記材料を上記組成比となるようにフェライト原材料を秤量した。その後、直径1/8インチのステンレスビーズを用いた乾式振動ミルで5時間粉砕・混合した。
【0079】
・工程2(仮焼成工程):
得られた粉砕物をローラーコンパクターにて、約1mm角のペレットにした。このペレットを目開き3mmの振動篩にて粗粉を除去し、次いで目開き0.5mmの振動篩にて微粉を除去した。その後、バーナー式焼成炉を用いて、窒素雰囲気下(酸素濃度0.01体積%)で、温度1,000℃で4時間焼成し、仮焼フェライトを作製した。得られた仮焼フェライトの組成は、下記のとおりである。
(MnO)(MgO)b(SrO)c(Fe23d
上記式において、A=0.25.7、b=0.117、c=0.007、d=0.393である。
【0080】
(工程3:粉砕工程)
得られた仮焼フェライトをクラッシャーで0.3mm程度に粉砕した後に、直径1/8インチのジルコニアビーズを用い、仮焼フェライト100質量部に対し、水を30質量部加え、湿式ボールミルで1時間粉砕した。そのスラリーを、直径1/16インチのアルミナビーズを用いた湿式ボールミルで4時間粉砕し、フェライトスラリー(仮焼フェライトの微粉砕品)を得た。
【0081】
(工程4:造粒工程)
フェライトスラリーに、仮焼フェライト100質量部に対して分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム1.0質量部、バインダーとしてポリビニルアルコール2.0質量部を添加した。そして、スプレードライヤー(製造元:大川原化工機(株))を用いて、球状粒子に造粒した。得られた粒子を粒度調整した後、ロータリーキルンを用いて、温度650℃で2時間加熱し、分散剤やバインダーの有機成分を除去した。
【0082】
(工程5:焼成工程)
焼成雰囲気をコントロールするために、電気炉にて窒素雰囲気下(酸素濃度1.00体積%)で、室温から温度1,300℃まで2時間で昇温し、その後、温度1,150℃で4時間焼成した。その後、4時間をかけて、温度60℃まで降温し、窒素雰囲気から大気に戻し、温度40℃以下で焼成物を取り出した。
【0083】
(工程6:選別工程)
焼成物の凝集した粒子を解砕した後に、磁力選鉱により低磁力品をカットし、目開き250μmの篩で篩分して粗大粒子を除去し、体積分布基準のメジアン径が37.0μmの磁性コア粒子1を得た。
【0084】
<被覆樹脂の調製>
・シクロヘキシルメタクリレートモノマー 26.8質量%
・メチルメタクリレートモノマー 0.2質量%
・メチルメタクリレートマクロモノマー 8.4質量%
(片末端にメタクリロイル基を有する重量平均分子量5,000のマクロモノマー)
・トルエン 31.3質量%
・メチルエチルケトン 31.3質量%
・アゾビスイソブチロニトリル 2.0質量%
上記材料のうち、シクロヘキシルメタクリレート、メチルメタクリレート、メチルメタクリレートマクロモノマー、トルエン、メチルエチルケトンを、還流冷却器、温度計、窒素導入管及び撹拌装置を取り付けた四つ口のセパラブルフラスコに入れ、窒素ガスを導入して窒素ガスで系内を置換した。その後、温度80℃まで加温し、アゾビスイソブチロニトリルを添加して5時間還流し重合させた。得られた反応物にヘキサンを注入して共重合体を沈殿析出させ、沈殿物を濾別後、真空乾燥して被覆樹脂1を得た。得られた被覆樹脂1を30質量部、トルエン40質量部、メチルエチルケトン30質量部に溶解させて、重合体溶液1(固形分30質量%)を得た。
【0085】
<被覆樹脂溶液の調製>
・重合体溶液1(樹脂固形分濃度30%) 33.3質量%
・トルエン 66.4質量%
・カーボンブラック 0.3質量%
(一次粒径25nm、窒素吸着比表面積94m2/g、DBP吸油量75mL/100g)
上記材料を、直径0.5mmのジルコニアビーズを用いて、ペイントシェーカーで1時間分散を行った。得られた分散液を、5.0μmのメンブランフィルターで濾過を行い、被覆樹脂溶液1を得た。
【0086】
[磁性キャリアの製造]
(樹脂被覆工程)
常温で維持されている真空脱気型ニーダーに被覆樹脂溶液1を磁性コア粒子1の100質量部に対して樹脂成分として2.5質量部になるように投入した。投入後、回転速度30rpmで15分間撹拌し、溶媒が一定以上(80質量%)揮発した後、減圧混合しながら温度80℃まで昇温し、2時間かけてトルエンを留去した後冷却した。得られた磁性キャリアを、磁力選鉱により低磁力品を分別し、開口70μmの篩を通した後、風力分級器で分級し、体積分布基準のメジアン径が38.2μmの磁性キャリアを得た。
【0087】
[実施例1~6及び8、参考例7及び9~17、比較例1~5]
トナー1と磁性キャリアで、トナー濃度が10質量%になるようにV型混合機(V-10型:(株)徳寿製作所)で0.5s-1、回転時間5分で混合し、二成分系現像剤1を得た。また、同様に表1に記載のトナー2~22と磁性キャリアを混合し、二成分系現像剤2~22を得た。
【0088】
この二成分系現像剤1~17を実施例1~6及び8、参考例7及び9~17として、二成分系現像剤18~22を比較例1~5として次の印字耐久試験を実施後、(1)~(3)に従って、トナーの性能評価を行った。次にその具体的内容を示す。
【0089】
《印字耐久試験》
画像形成装置として、キヤノン製デジタル商業印刷用プリンターimAgeRUNNER ADVANCE C5560改造機を用い、ブラック位置の現像器に二成分系現像剤1を入れた。装置の改造点としては、定着温度、プロセススピード、現像剤担持体の直流電圧VDC、静電潜像担持体の帯電電圧V、及び、レーザーパワーを自由に設定できるように変更した。画像出力評価は、所望の画像比率のFFh画像(ベタ画像)を出力し、FFh画像のトナーの載り量が所望になるようにVDC、V、及びレーザーパワーを調整して、後述の評価を行った。
【0090】
FFhとは、256階調を16進数で表示した値であり、00hが256階調の1階調目(白地部)であり、FFhが256階調の256階調目(ベタ部)である。
【0091】
高温高湿環境下(温度30℃、相対湿度80%)で15,000枚の10%画像Dutyの画像で印字耐久試験を行い、装置内より現像剤を採取し、トナーの性能評価を実施した。
【0092】
《トナー性能評価》
(1)かぶり測定
紙:CS-680(680g/m2
(キヤノンマーケティングジャパン株式会社)
評価画像:上記A4用紙の全面に00h画像
VbAck:150V
(現像剤担持体の直流電圧VDC、静電潜像担持体の帯電電圧V、及びレーザーパワーにより調整)
試験環境:高温高湿環境(温度30℃/湿度80%RH)
定着温度:170℃
プロセススピード:377mm/sec
上記評価画像を出力し、かぶりを評価した。かぶりの値をかぶりの評価指標とした。リフレクトメータ(REFLECTOMETER MODEL TC-6DS:東京電色製)を用い、通紙前の評価紙の平均反射率Ds(%)を測定する。次に、通紙後の評価紙の平均反射率Dr(%)を測定する。そして、下記式を用いてかぶりの値を算出した。得られたカブリの値を下記の評価基準に従って評価した。
かぶり = Dr(%)-Ds(%)
(評価基準)
ランクA:かぶり1.0%未満
ランクB:かぶり1.0%以上、1.5%未満
ランクC:かぶり1.5%以上、2.0%未満
ランクD:かぶり2.0%以上、2.5%未満
ランクE:かぶり2.5%以上、3.0%未満
ランクF:かぶり3.0%以上
【0093】
(2)凝集度測定:
凝集度の測定は、パウダーレオメーター(FT4、フリーマンテクノロジー社)を使用し、所定の容器にトナーを10g秤量し、撹拌後、一定の圧力で押し固め、高温高湿環境(室温度30℃、湿度80%)に72時間保管した。保管後、専用の針状冶具でトナーを突き刺す際の力を測定した。この時の値の大小を凝集度の評価とし、得られた値に基づいて以下のような判定とした。凝集度の値の単位は[mJ/mm]である。
ランクA:20未満
ランクB:20以上、22未満
ランクC:22以上、24未満
ランクD:24以上、26未満
ランクE:26以上、30未満
ランクF:30以上
【0094】
(3)流動性測定:
高温高湿環境(室温度30℃、湿度80%)に72時間保管したトナーを円柱形状の容器(底面直径15cm、高さ30cm)に100g入れ、容器が90度/秒に向きが変更になる振動を加えることを30秒間行った直後に容器を垂直に立て、容器底に設けてある5cm×5cmの穴をふさいでいるふたを取り外し、容器から排出されたトナー量を計測し、この排出量の割合(%)の大小を流動性の評価として以下のような判定とした。
ランクA:72%以上
ランクB:68%以上、72%未満
ランクC:64%以上、68%未満
ランクD:60%以上、64%未満
ランクE:50%以上、59%未満
ランクF:50%未満
得られたトナーの性能評価の結果を表2に示す。
【0095】
【表2】
【0096】
以上の結果で示されるように、本発明によれば、トナー流動性を保持しつつトナー凝集を防止し、白地画像のかぶりを抑制することができる。