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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-25
(45)【発行日】2024-10-03
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 15/06 20060101AFI20240926BHJP
   B60C 15/00 20060101ALI20240926BHJP
   B60C 9/08 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
B60C15/06 N
B60C15/00 H
B60C9/08 J
B60C15/06 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020181787
(22)【出願日】2020-10-29
(65)【公開番号】P2022072390
(43)【公開日】2022-05-17
【審査請求日】2023-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保 直也
【審査官】久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-025213(JP,A)
【文献】特開2013-209092(JP,A)
【文献】特開昭56-095709(JP,A)
【文献】特開平06-143946(JP,A)
【文献】特開平08-011234(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0095397(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第00650855(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 15/06
B60C 15/00
B60C 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のビードコアと、有機繊維コードを含み前記一対のビードコア間に掛け渡されたカーカスプライと、金属コードを含み前記カーカスプライのクラウン部のタイヤ半径方向外側に配置されたベルトと、前記ビードコアのタイヤ半径方向外側に配置されたビードフィラーと、金属コードを含み前記ビードフィラーの側面に沿わせて配置され前記ビードフィラーの外端を越えてタイヤ半径方向外側に延在するサイド補強層と、を備え、
前記カーカスプライは、前記一対のビードコア間に掛け渡された第1プライと、前記第1プライのタイヤ外面側に配置された第2プライと、を含み、前記第2プライのタイヤ半径方向の内側端が前記ビードフィラーの前記外端よりもタイヤ半径方向外側かつ前記サイド補強層のタイヤ半径方向の外側端よりもタイヤ半径方向内側に位置しており、前記第2プライは、前記内側端からタイヤ半径方向外側に延在して前記第2プライのタイヤ半径方向の内側端部が前記サイド補強層のタイヤ半径方向の外側端部と重なりを有しており、かつ前記ベルトの端部と重なり合う位置で終端している、空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記第1プライが、前記一対のビードコア間にわたって連なるプライ本体部と、前記プライ本体部から延び前記ビードコアの周りにタイヤ幅方向内側から外側に向かって折り返された折返し部と、を備え、前記第2プライの前記内側端部が前記プライ本体部と前記サイド補強層の前記外側端部との間に配置された、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記サイド補強層が前記ビードフィラーのタイヤ幅方向内側の側面に沿わせて配置された、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤには、トレッド部からサイドウォール部を得てビード部に至るカーカスプライが設けられ、カーカスプライのクラウン部外周にベルトが配置されている。空気入りタイヤを軽量化するために、特許文献1には、カーカスプライのクラウン部においてベルト幅の30~60%の領域にわたる欠落部を設けた、いわゆる中抜き構造のプライを設けることが開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、カーカスプライとして、ビードコアの周りを内側から外側に向け折り返したターンアップ部を有して一対のビードコア間にわたって連なるターンアッププライと、ターンアッププライのタイヤ外面側にてトレッド部の中央領域を除く両側域のベルト内面位置から少なくともビードコアまで延在する中抜きダウンプライとを設けることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-191722号公報
【文献】特開平8-11234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
カーカスプライに中抜き構造のプライを設けることにより空気入りタイヤの軽量化を図ることはできるが、剛性を維持しつつ軽量化を図るという点で更なる改善が求められる。
【0006】
本発明の実施形態は、剛性と軽量化の両立を図ることができる空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態に係る空気入りタイヤは、一対のビードコアと、有機繊維コードを含み前記一対のビードコア間に掛け渡されたカーカスプライと、金属コードを含み前記カーカスプライのクラウン部のタイヤ半径方向外側に配置されたベルトと、前記ビードコアのタイヤ半径方向外側に配置されたビードフィラーと、金属コードを含み前記ビードフィラーの側面に沿わせて配置され前記ビードフィラーの外端を越えてタイヤ半径方向外側に延在するサイド補強層と、を備えたものである。前記カーカスプライは、前記一対のビードコア間に掛け渡された第1プライと、前記第1プライのタイヤ外面側に配置された第2プライと、を含む。前記第2プライは、タイヤ半径方向の内側端部が前記サイド補強層のタイヤ半径方向の外側端部と重なりを有して当該内側端部からタイヤ半径方向外側に延在し、前記ベルトの端部と重なり合う位置で終端している。
【0008】
本実施形態においては、前記第1プライが、前記一対のビードコア間にわたって連なるプライ本体部と、前記プライ本体部から延び前記ビードコアの周りにタイヤ幅方向内側から外側に向かって折り返された折返し部と、を備え、前記第2プライの前記内側端部が前記プライ本体部と前記サイド補強層の前記外側端部との間に配置されてもよい。また、前記サイド補強層が前記ビードフィラーのタイヤ幅方向内側の側面に沿わせて配置されてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施形態に係る空気入りタイヤであると、剛性と軽量化を両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係る空気入りタイヤの半断面図
図2】第1実施形態に係る空気入りタイヤの半断面模式図
図3図1の一部拡大図(トレッド部の端部の断面図)
図4図1の一部拡大図(ビード部の断面図)
図5】第2実施形態に係る空気入りタイヤの半断面模式図
図6】第2実施形態に係る空気入りタイヤの一部拡大断面図
図7】第3実施形態に係る空気入りタイヤの半断面模式図
図8】比較例2の空気入りタイヤの半断面模式図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0012】
[第1実施形態]
図1に示す第1実施形態に係る空気入りタイヤ10(以下、単にタイヤ10という。)は、リムに固定される左右一対のビード部12と、該一対のビード部12からそれぞれタイヤ半径方向外側に連なる左右一対のサイドウォール部14と、該一対のサイドウォール部14の間に跨がって延び接地面を構成するトレッド部16とを有する。図1は、タイヤ回転軸を含む子午線断面でタイヤ10を切断した右側半断面図であり、この例ではタイヤ10は左右対称である。
【0013】
図中、符号CLは、タイヤ軸方向中心に相当するタイヤ赤道面を示す。本明細書において、タイヤ幅方向とは、タイヤ回転軸に平行な方向をいい、図において符号WDで示す。タイヤ幅方向WD内側とはタイヤ赤道面CLに近づく方向であり、タイヤ幅方向WD外側とはタイヤ赤道面CLから離れる方向である。タイヤ半径方向とは、タイヤ回転軸に垂直な方向をいい、図において符号RDで示す。タイヤ半径方向RD内側とはタイヤ回転軸に近づく方向であり、タイヤ半径方向RD外側とはタイヤ回転軸から離れる方向である。タイヤ周方向とは、タイヤ回転軸を中心として回転する方向をいう。
【0014】
図1及び図2に示すように、タイヤ10は、一対のビードコア18と、該一対のビードコア18間に掛け渡されたカーカスプライ20と、カーカスプライ20のクラウン部のタイヤ半径方向RD外側に配置されたベルト22と、ビードコア18のタイヤ半径方向RD外側に配置されたビードフィラー24と、該ビードフィラー24の側面に沿わせて配置されたサイド補強層26と、を備える。
【0015】
ビードコア18は、スチール製のビードワイヤで構成されたタイヤ周方向の全周にわたって延びる環状部材であり、ビード部12に埋設されている。ビード部12にはまた、ビードコア18の外周に設置されたビードフィラー24が埋設されている。ビードフィラー24は、タイヤ半径方向RD外側ほど幅狭の断面略三角形状をなしてタイヤ周方向の全周にわたって延びる環状の硬質ゴム部材である。
【0016】
カーカスプライ20は、一対のビードコア18間にトロイダル状に掛け渡されており、すなわち、トレッド部16から両側のサイドウォール部14を経て一対のビード部12に至り、ビード部12において係止されている。カーカスプライ20は、補強材としての有機繊維コードを含み、詳細には、有機繊維コードの配列体と該配列体を被覆するトッピングゴムを含む。配列体は、有機繊維コードを所定の打ち込み本数で平行配列してなる。有機繊維コードはタイヤ周方向に対して実質上直角(例えば80°~90°)に、即ち子午線方向に沿って配されている。有機繊維コードとしては、例えば、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、アラミド繊維、ナイロン繊維等が挙げられる。
【0017】
ベルト22は、トロイダル状をなすカーカスプライ20のクラウン部、即ち頂部の外周側に設置されており、トレッド部16においてカーカスプライ20の外周面に重ねて設けられている。ベルト22は、少なくとも1枚、好ましくは2枚以上のベルトプライで構成されている。この例では、ベルト22は、最大幅ベルトとしての第1ベルト28と、その外周に重ねて配された第1ベルト28よりも幅の狭い第2ベルト30との2枚で構成されている。第1ベルト28及び第2ベルト30は、スチールコード等の金属コードを含み、詳細には、金属コードをタイヤ周方向に対して所定角度(例えば15°~35°)で傾斜させかつタイヤ幅方向WDに所定間隔で配設し、トッピングゴムで被覆してなる。該金属コードは2枚のベルト28,30間で互いに交差するよう配設されている。
【0018】
ベルト22のタイヤ半径方向RD外側には、接地面をなすトレッドゴム32が設けられている。この例では、ベルト22とトレッドゴム32との間にはベルト補強層34が設けられている。ベルト補強層34は、タイヤ周方向に対して実質的に平行に延びる有機繊維コードを有するキャッププライにより構成されている。
【0019】
図3に拡大して示すように、ベルト22の端部22A、詳細には第1ベルト28の端部とカーカスプライ20との間には、ゴム製のベルト下パッド36が設置されている。
【0020】
サイドウォール部14におけるカーカスプライ20のタイヤ外面側には、タイヤ外表面を構成するサイドウォールゴム37が設けられている。
【0021】
図4に拡大して示すように、ビード部12には、ビード部12の外表面をなしてリムと接触するリムストリップゴム38がサイドウォールゴム37に隣接して設けられている。また、ビード部12においてカーカスプライ20をタイヤ半径方向RD内側から覆うようにラバーチェーハー40が設けられている。
【0022】
タイヤ10の内面、即ちカーカスプライ20のタイヤ内面側には、空気非透過性ゴムからなるインナーライナー42が設けられている。
【0023】
サイド補強層26は、スチールコード等の金属コードを含む補強層であり、例えばベルト22と同様に、タイヤ周方向に対して所定角度(例えば15°~35°)で傾斜させた金属コードを所定間隔で配設し、トッピングゴムで被覆してなる。サイド補強層26の金属コードのタイヤ周方向に対する角度は、カーカスプライ20の有機繊維コードのタイヤ周方向に対する角度よりも小さい。
【0024】
図4に示すように、サイド補強層26は、ビードフィラー24の側面に沿わせて配置されており、詳細にはビードフィラー24の側面に重ねて設けられ、当該側面に接着されている。この例では、サイド補強層26は、ビードフィラー24のタイヤ幅方向WD内側の側面(即ち、内側側面)24Aに沿わせて配置されている。
【0025】
サイド補強層26は、この例では、ビードフィラー24の下端からタイヤ半径方向RD外側に延びており、ビードフィラー24の内側側面24Aの全体に重ねて設けられている。サイド補強層26のタイヤ半径方向RDの内側端26Aは、ビードフィラー24の下端近傍に位置しており、ビードコア18には重ならないようにビードコア15のタイヤ半径方向RD外側に位置している。なお、サイド補強層26は、必ずしも内側側面24Aの全体にわたって設けられていなくてもよく、例えば内側側面24Aの高さ方向における中間位置からタイヤ半径方向RD外側に延びてもよい。
【0026】
サイド補強層26は、ビードフィラー24のタイヤ半径方向RD外側端(即ち、外端)24Bを越えてタイヤ半径方向RD外側に延在している。この外端24Bを越えて延在する延在部26Bの長さL1は10mm以上であることが好ましい。サイド補強層26のタイヤ半径方向RDの外側端26C、即ち延在部26Bの先端は、クラック防止のため、タイヤ最大幅位置P1(図1参照)よりもタイヤ半径方向RD内側に位置している。
【0027】
ここで、タイヤ最大幅位置P1は、サイドウォール部14におけるタイヤ10の外表面のプロファイルラインが、タイヤ赤道面CLからタイヤ幅方向WDに最も離れる位置であり、そのタイヤ半径方向RDにおける位置である。該プロファイルラインは、リムプロテクターなどの突起を除いたサイドウォール部本体の外表面の輪郭であり、通常、複数の円弧を滑らかに接続することで規定されるタイヤ子午線断面形状を有する。
【0028】
本実施形態において、カーカスプライ20は、一対のビードコア18間に掛け渡された第1プライ44と、該第1プライ44のタイヤ外面側(例えばサイドウォール部14ではタイヤ幅方向WD外側)に配置された第2プライ46とで構成されている。
【0029】
第1プライ44は、一対のビードコア18間にわたって連なるトロイダル状のプライ本体部44Aと、該プライ本体部44Aから延びビードコア18の周りにタイヤ幅方向WD内側から外側に向かって折り返された折返し部44Bと、を備え、両端部で折り返すことにより係止されている。そのため、プライ本体部44Aと折返し部44Bとの間に、ビードコア18とビードフィラー24が配されている。
【0030】
プライ本体部44Aは、トレッド部16から両側のサイドウォール部14を経てそれぞれビード部12に至り、ビード部12においてビードフィラー24の内側側面24Aに沿って延びてビードコア18の内周面まで延在している。プライ本体部44Aは、サイド補強層26のタイヤ内面側を通って延在している。
【0031】
折返し部44Bは、ビードコア18の内周面からビードフィラー24のタイヤ幅方向WD外側の側面(即ち、外側側面)24Cに沿ってタイヤ半径方向RD外側に延びている。この例では、折返し部44Bは、ビードフィラー24の外端24Bを越え、更にサイド補強層26の外側端26Cを越え、タイヤ最大幅位置P1を越えて延在している。従って、折返し部44Bのタイヤ半径方向RDの外側端44B1はタイヤ最大幅位置P1よりもタイヤ半径方向RD外側に位置している。なお、折返し部44Bの外側端44B1の位置は特に限定されず、例えばタイヤ最大幅位置P1よりもタイヤ半径方向RD内側でもよい。
【0032】
第2プライ46は、トロイダル状をなすカーカスプライ20のクラウン部、即ち頂部に欠落部48を持つ中抜き構造のプライであり、中抜きプライとも称される。すなわち、第2プライ46は、クラウン部が取り除かれており、トレッド部16の両端部から両側のサイドウォール部14に延在する左右一対のプライからなる。
【0033】
第2プライ46、詳細には当該第2プライ46を構成する上記一対のプライは、それぞれ、その一端がベルト22の端部22Aと重なり合い、他端がビードコア18で折り返されることなくサイド補強層26と重なり合っている。すなわち、第2プライ46は、そのタイヤ半径方向RDの内側端部46Aが、サイド補強層26のタイヤ半径方向RDの外側端部である上記延在部26Bと重なりを有して当該内側端部46Aからタイヤ半径方向RD外側に延在し、ベルト22の端部22Aと重なり合う位置で終端している。
【0034】
詳細には、図2及び図3に示すように、第2プライ46のタイヤ半径方向RDの外側端部46Bは、ベルト22のタイヤ幅方向WDにおける端部22Aと重なり合っている。この例では、ベルト下パッド36を介して、第2プライ46の外側端部46Bと第1ベルト28の幅方向端部とが重なり合っている。これにより、第2プライ46の外側端部46Bは、第1プライ44のプライ本体部44Aとベルト22の端部22Aとの間に挟まれて係止されている。
【0035】
第2プライ46のタイヤ半径方向RDの外側端(即ち、外側端部46Bの先端)46B1は、ベルト22の幅方向外端22A1よりもタイヤ幅方向WD内側に位置しており、ベルト22の端部22Aと重なり合う位置で終端している。ここで、ベルト22の端部22Aと重なり合う位置とは、ベルト22の幅方向外端22A1からベルト22のタイヤ幅方向WDにおける全幅の15%までの範囲であり、より好ましくは10%までの範囲である。第2プライ46とベルト22との重なり幅L2は、特に限定されないが、第2プライ46に沿う長さ(詳細には、ベルト22の幅方向外端22A1から第2プライ46に法線を引き、該法線と第2プライ46との交点から外側端46B1までの第2プライ46に沿う長さ)で、例えば5mm以上であることが好ましく、工程面を考慮して5~20mmであることが好ましい。
【0036】
図2及び図4に示すように、第2プライ46のタイヤ半径方向RDの内側端部46Aは、サイド補強層26の延在部26Bと重なり合っている。この例では、第2プライ46の内側端部46Aは、第1プライ44のプライ本体部44Aとサイド補強層26の延在部26Bとの間に配置されており、プライ本体部44Aとサイド補強層26との間に挟まれて係止されている。
【0037】
第2プライ46のタイヤ半径方向RDの内側端(即ち、内側端部46Aの先端)46A1は、サイド補強層26の外側端26Cよりもタイヤ半径方向RD内側に位置している。該内側端46A1は、ビードフィラー24の外端24Bよりもタイヤ半径方向RD外側に位置している。すなわち、第2プライ46は、ビードフィラー24と重ならないように、ビードフィラー24の外端24Bよりも手前で終端している。第2プライ46とサイド補強層26との重なり幅L3は、特に限定されないが、第2プライ46に沿う長さで、例えば5mm以上であることが好ましく、工程面を考慮して5~20mmであることが好ましい。
【0038】
本実施形態に係る空気入りタイヤ10であると、ビードフィラー24の外端24Bを越えて延在するサイド補強層26を設けた上で、中抜きプライである第2プライ46を、サイド補強層26の外側端部である延在部26B及びベルト22の端部22Aとそれぞれ重なりを持つように配置している。これにより、第2プライ46は、その一端がベルト22と第1プライ44との間に挟まれて固定され、他端がサイド補強層26と第1プライ44との間に挟まれて固定されている。これにより第2プライ46は内圧充填時に高い張力を負担して剛性向上に寄与することができる。
【0039】
また、金属コードを含む剛性の高いサイド補強層26に延在部26Bを設けた上で、第2プライ46の幅(即ち、内側端46A1から外側端46B1までの長さ)を短くしたことにより、軽量化を図りつつ、操縦安定性等に寄与する剛性を向上することができ、剛性と軽量化を両立することができる。
【0040】
本実施形態であると、また、第2プライ46の内側端部46Aを第1プライ44のプライ本体部44Aとサイド補強層26の延在部26Bとの間に配置したことにより、第2プライ46の内側端部46Aをよりしっかりと係止することができる。
【0041】
また、サイド補強層26をビードフィラー24の内側側面24Aに沿わせて配置したことにより、第2プライの内側端部46Aを係止する効果を更に高めることができる。
【0042】
[第2実施形態]
図5は第2実施形態に係る空気入りタイヤ10Aの半断面模式図であり、図6は該タイヤ10Aの一部の断面図である。第2実施形態では、サイド補強層26をビードフィラー24のタイヤ幅方向WD外側の側面(即ち、外側側面)24Cに沿わせて配置した点で、第1実施形態とは異なる。
【0043】
すなわち、第2実施形態において、サイド補強層26は、ビードフィラー24の外側側面24Cに重ねて設けられ、当該外側側面24Cに接着されている。サイド補強層26は、ビードフィラー24の下端から外側側面24Cに沿ってタイヤ半径方向RD外側に延び、ビードフィラー24の外端24Bを越えてタイヤ半径方向RD外側に延在している。第1実施形態と同様、外端24Bを越えて延在する延在部26Bの長さL1は10mm以上であることが好ましく、また、サイド補強層26の外側端26Cはタイヤ最大幅位置P1よりもタイヤ半径方向RD内側に位置している。
【0044】
カーカスプライ20の構成は第1実施形態と同様であるが、サイド補強層26をビードフィラー24の外側側面24Cに沿わせて配置したことにより、第1プライ44のプライ本体部44Aはビードフィラー24の内側側面24Aに直接重ねられている。折返し部44Bは、サイド補強層26のタイヤ外面側を通ってタイヤ半径方向RD外側に延在しており、ビードフィラー24の外端24Bを越え、更にサイド補強層26の外側端26Cを越えて延在している。
【0045】
一方、中抜きプライである第2プライ46については第1実施形態と同様であり、第2プライ46は、その内側端部46Aがサイド補強層26の延在部26Bと重なりを有して当該内側端部46Aからタイヤ半径方向RD外側に延在し、ベルト22の端部22Aと重なり合う位置で終端しており、第2プライ46の内側端部46Aは第1プライ44のプライ本体部44Aとサイド補強層26の外側端部である延在部26Bとの間に配置されて係止されている。
【0046】
第2実施形態であると、第1実施形態と同様、サイド補強層26に延在部26Bを設けた上で、第2プライ46の幅を短くしたことにより、軽量化を図りつつ剛性を向上することができる。また、第2プライ46の内側端部46Aを第1プライ44のプライ本体部44Aとサイド補強層26の延在部26Bとの間に配置したことにより、第2プライ46の内側端部46Aの係止効果を高めることができる。
【0047】
第2実施形態について、その他の構成及び効果は第1実施形態と同じであり、説明は省略する。
【0048】
[第3実施形態]
図7は第3実施形態に係る空気入りタイヤ10Bの半断面模式図である。第3実施形態では、中抜きプライである第2プライ46の内側端部46Aを、サイド補強層26の外側端部である延在部26Bと第1プライ44の折返し部44Bとの間に配置した点で、第1実施形態とは異なる。
【0049】
すなわち、第3実施形態において、サイド補強層26は、第1実施形態と同様、ビードフィラー24の内側側面24Aに沿わせて配置されて、ビードフィラー24の外端24Bを越えてタイヤ半径方向RD外側に延在している。カーカスプライ20は、第1プライ44については第1実施形態と同様であり、第2プライ46の外側端部46Bの構成も第1実施形態と同様である。
【0050】
一方、第2プライ46の内側端部46Aは、第1実施形態とは異なり、サイド補強層26の延在部26Bよりもタイヤ幅方向WD外側に配されており、延在部26Bと第1プライ44の折返し部44Bとの間に挟まれて係止されている。第2プライ46の内側端46A1は、サイド補強層26の外側端26Cよりもタイヤ半径方向RD内側であって、ビードフィラー24の外端24Bよりもタイヤ半径方向RD外側に位置している。第2プライ46とサイド補強層26との重なり幅L3は、第1実施形態と同様、第2プライ46に沿う長さで、5mm以上であること、例えば5~20mmであることが好ましい。
【0051】
第3実施形態であると、第1実施形態と同様、サイド補強層26に延在部26Bを設けた上で、第2プライ46の幅を短くしたことにより、軽量化を図りつつ剛性を向上することができる。第3実施形態について、その他の構成及び効果は第1実施形態と同じであり、説明は省略する。
【0052】
[その他]
本実施形態における各部の寸法やタイヤ最大幅位置等は、空気入りタイヤを正規リムに装着して正規内圧を充填して無負荷状態で測定される値である。正規リムとは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば標準リム、TRAであれば"Design Rim"、ETRTOであれば"MeasuringRim"である。正規内圧とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表"TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES"に記載の最大値、ETRTOであれば"INFLATION PRESSURE"である。
【実施例
【0053】
図1~4に示した構造に従って、実施例1の空気入りラジアルタイヤ(サイズ:225/55R19 99V)を試作した。実施例1のタイヤにおいて、サイド補強層26としては、タイヤ周方向に対する角度を23°とした2+2×0.25HTのスチールコードをエンド数20本/25mmとして配設したものを用いて、延在部26Bの長さL1=15mmとした。カーカスプライ20としては、タイヤ周方向に対して実質上直角に配設した1670dtex/2のポリエステルコードをエンド数23本/25mmとしたゴム引き布を第1プライ44及び第2プライ46に用いた。そして、第2プライ46の幅を85mmとし、第2プライ46の外側端部46Bとベルト22の端部22Aとの重なり幅L2=11mmとし、第2プライ46の内側端部46Aとサイド補強層26との重なり幅L3=9mmとした。
【0054】
比較例1として、欠落部48を有しない(即ち、中抜きプライではない)2枚のプライでカーカスプライ20を構成し、更にサイド補強層26を設けず、その他は実施例1と同様の構成を持つ空気入りラジアルタイヤを試作した。
【0055】
比較例2として、図8に示すように、実施例1に対して、サイド補強層26を省略し、更に上記第2プライ46の代わりに、従来構造の中抜きプライ100を配置し、その他は実施例1と同様の構成を持つ空気入りラジアルタイヤを試作した。中抜きプライ100は、ベルト22の端部22Aと重なりを持つ位置からタイヤ半径方向内側に延び、ビードコア18の周りをタイヤ幅方向内側から外側に向かって折り返してなる折返し部101を持ち、一端がベルト22で係止され、他端がビードコア18で係止されている。
【0056】
実施例1及び比較例1,2のタイヤについて、剛性、耐カット性及び低転がり抵抗性能を評価した。評価方法は以下のとおりである。
【0057】
・剛性(横剛性):試作タイヤを正規リム(19×7.0)に装着し、内圧(250kPa)を充填し、荷重(5.2kN)をタイヤに与え、同時に横方向に力を加えた時、単位長さ(1mm)だけ横方向にたわませるのに必要な横方向の力を測定し、比較例1の測定値を100とした指数で表示した。指数が大きいほど、横剛性が高いことを表す。
【0058】
・耐カット性:試作タイヤを正規リム(19×7.0)に装着し、内圧(250kPa)を充填し、三角形の突起部を設けた台上に、50±2.5m/分の押し付け速度でタイヤを押し付け、タイヤのサイド部がリムに接し、コードの切断音が聞こえた時の三角台の押し込み力とタイヤのたわみ量より破壊エネルギーを測定し、比較例1の測定値を100とした指数で表示した。指数が大きいほど、耐カット性に優れることを表す。
【0059】
・低転がり抵抗性能:試作タイヤを正規リム(19×7.0)に装着し、内圧(250kPa)を充填し、転がり抵抗測定ドラム試験機を用いて、荷重(5.2kN)、速度(80km/h)の条件で走行させたときの転がり抵抗を測定し、転がり抵抗の逆数について比較例1の値を100とした指数で表示した。指数が大きいほど、転がり抵抗が小さく、低転がり抵抗性能(即ち、低燃費性)に優れることを表す。
【0060】
【表1】
【0061】
結果は表1に示すとおりである。一般の2プライ構成を持つ比較例1に対し、比較例2では第2プライを中抜きプライとすることにより軽量化による低転がり抵抗性能の向上効果は得られたが、剛性が低下した。これに対し、実施例1であると、第2プライ46の幅を比較例2よりも更に短くすることにより、更なる軽量化が図られて低転がり抵抗性能の向上効果に優れていた。サイド補強層26を設け、それをタイヤ半径方向外側に延長させたことにより、剛性が向上し、サイドウォール部の耐カット性の向上効果も得られた。
【0062】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これら実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0063】
10,10A,10B…空気入りタイヤ、18…ビードコア、20…カーカスプライ、22…ベルト、22A…ベルトの端部、24…ビードフィラー、24A…ビードフィラーの内側側面、24B…ビードフィラーの外端、26…サイド補強層、26B…サイド補強層の延在部(外側端部)、44…第1プライ、44A…プライ本体部、44B…折返し部、46…第2プライ、46A…第2プライの内側端部、46B…第2プライの外側端部、48…欠落部、WD…タイヤ軸方向、RD…タイヤ半径方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8