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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-25
(45)【発行日】2024-10-03
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/01 20060101AFI20240926BHJP
   B60C 11/03 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
B60C11/01 B
B60C11/03 300E
B60C11/03 B
B60C11/03 100B
B60C11/01 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020183028
(22)【出願日】2020-10-30
(65)【公開番号】P2022073198
(43)【公開日】2022-05-17
【審査請求日】2023-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】光延 裕紀
【審査官】高島 壮基
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-019424(JP,A)
【文献】特開2020-125084(JP,A)
【文献】特開2011-156961(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00-19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に装着した状態で車両進行方向に向かってタイヤ幅方向右側と左側とで異なったトレッドパターンを有するトレッド部を備えた空気入りタイヤであって、
前記トレッド部は、
タイヤ幅方向右側にタイヤ周方向に沿って複数設けられた右側ショルダーブロックと、
タイヤ幅方向左側にタイヤ周方向に沿って複数設けられた左側ショルダーブロックと、
を有し、
前記右側ショルダーブロックには、踏み込み側及び蹴り出し側の側壁のうち、踏み込み側の側壁のみに凹部が形成されるか、又は踏み込み側の側壁に蹴り出し側の側壁の凹部より大きな凹部が形成され、
前記左側ショルダーブロックには、踏み込み側及び蹴り出し側の側壁のうち、蹴り出し側の側壁のみに凹部が形成されるか、又は蹴り出し側の側壁に踏み込み側の側壁の凹部より大きな凹部が形成され、
前記右側ショルダーブロックの列及び前記左側ショルダーブロックの列には、第1ショルダーブロックと、前記第1ショルダーブロックよりもタイヤ幅方向外側に張り出した第2ショルダーブロックとが含まれ、
前記第1ショルダーブロックに形成された前記凹部は、タイヤ周方向に延びる主溝の延長線上に形成されている、空気入りタイヤ。
【請求項2】
車両に装着した状態で車両進行方向に向かってタイヤ幅方向右側と左側とで異なったトレッドパターンを有するトレッド部を備えた空気入りタイヤであって、
前記トレッド部は、
タイヤ幅方向右側にタイヤ周方向に沿って複数設けられた右側ショルダーブロックと、
タイヤ幅方向左側にタイヤ周方向に沿って複数設けられた左側ショルダーブロックと、
を有し、
前記右側ショルダーブロックには、踏み込み側及び蹴り出し側の側壁のうち、踏み込み側の側壁のみに凹部が形成されるか、又は踏み込み側の側壁に蹴り出し側の側壁の凹部より大きな凹部が形成され、
前記左側ショルダーブロックには、踏み込み側及び蹴り出し側の側壁のうち、蹴り出し側の側壁のみに凹部が形成されるか、又は蹴り出し側の側壁に踏み込み側の側壁の凹部より大きな凹部が形成され、
前記凹部は、タイヤ幅方向内側から外側に向かって拡大し、かつ各ブロックの上面からブロックの高さ方向中間部にわたって形成されている、空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記右側ショルダーブロックに形成された前記凹部は、踏み込み側及び蹴り出し側の側壁のうち、踏み込み側の側壁のみに形成され、
前記左側ショルダーブロックに形成された前記凹部は、踏み込み側及び蹴り出し側の側壁のうち、蹴り出し側の側壁のみに形成されている、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記トレッド部は、
タイヤ周方向に沿って、タイヤ幅方向中央部に設けられたセンターリブと、
タイヤ周方向に沿って、前記センターリブと前記右側ショルダーブロックとの間に複数設けられた右側メディエイトブロックと、
タイヤ周方向に沿って、前記センターリブと前記左側ショルダーブロックとの間に複数設けられた左側メディエイトブロックと、
を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記右側メディエイトブロックには、踏み込み側の側壁に前記凹部が形成され、
前記左側メディエイトブロックには、蹴り出し側の側壁に前記凹部が形成されている、請求項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記右側ショルダーブロックの踏み込み側の側壁には、複数の前記凹部が隣接配置され、前記凹部の合計の長さは当該側壁に沿ったブロック上面の端縁の全長に対して70%~90%であり、
前記左側ショルダーブロックの蹴り出し側の側壁には、複数の前記凹部が隣接配置され、前記凹部の合計の長さは当該側壁に沿ったブロック上面の端縁の全長に対して70%~90%である、請求項1~5のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記トレッドパターンは、点対称パターンである、請求項1~6のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関し、より詳しくは、トレッド部の幅方向両側に複数のショルダーブロックが設けられた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トレッド部のタイヤ幅方向両側にタイヤ周方向に沿って複数のショルダーブロックが設けられた空気入りタイヤが広く知られている。一般的に、スタッドレスタイヤなどの冬用タイヤでは、エッジ効果、除水効果等を高めるために、複数のサイプがショルダーブロックに形成されている。また、ショルダーブロックの側壁に切欠き状の凹部が形成されたタイヤも提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
特許文献1,2の空気入りタイヤでは、ショルダーブロックの踏み込み側及び蹴り出し側の側壁に切欠き状の凹部が複数存在し、各側壁にギザギザ状の凹凸が形成されている。このような凹部をショルダーブロックの側壁に形成すると、例えば、エッジ効果の向上が期待されるが、ブロックの剛性は低下することになる。そして、ブロックの剛性が低下すれば、耐久性、操縦安定性といった重要なタイヤ性能の低下を招く場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-14644号公報
【文献】特開2000-225814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、左側通行の国では、右折時よりも左折時においてカーブの曲率半径が小さくなるため、特に左折時において滑りが発生し易くなる。このため、左折時により大きなトラクションを確保し、操縦安定性を向上させることは重要な課題である。左折時のトラクションを改善する方法として、ショルダーブロックの側壁に凹部を形成することが考えられるが、この場合、上述のようにブロックの剛性が低下するという課題がある。
【0006】
本発明の目的は、ショルダーブロックの剛性を確保しつつ、左折時のトラクションを向上させることが可能な空気入りタイヤを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る空気入りタイヤは、車両に装着した状態で車両進行方向に向かってタイヤ幅方向右側と左側とで異なったトレッドパターンを有するトレッド部を備えた空気入りタイヤであって、トレッド部は、タイヤ幅方向右側にタイヤ周方向に沿って複数設けられた右側ショルダーブロックと、タイヤ幅方向左側にタイヤ周方向に沿って複数設けられた左側ショルダーブロックとを有する。右側ショルダーブロックには、踏み込み側及び蹴り出し側の側壁のうち、踏み込み側の側壁のみに凹部が形成されるか、又は踏み込み側の側壁により大きな凹部が形成され、左側ショルダーブロックには、踏み込み側及び蹴り出し側の側壁のうち、蹴り出し側の側壁のみに凹部が形成されるか、又は蹴り出し側の側壁により大きな凹部が形成されている。
【0008】
上記構成によれば、カーブの曲率半径が小さい左折時において、主に、右側ショルダーブロックの踏み込み側に形成された右側の凹部が滑りを抑制し、左側ショルダーブロックの蹴り出し側に形成された左側の凹部が路面に対するグリップ力を向上させる。上記構成は、特に雪氷路面において有効である。左折時にはトレッド部の幅方向右側により大きな荷重が作用し易いが、このとき、例えば右側の凹部が高いエッジ効果を発揮し、左側の凹部が雪氷をしっかりとらえて蹴り出す。右側の凹部と左側の凹部の相乗効果により、左折時のトラクションを効果的に向上させることができる。また、必要最小限の凹部を適切な場所に配置することで、ショルダーブロックの剛性低下を抑制でき、良好な耐久性、操縦安定性等を確保することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ショルダーブロックを備えた空気入りタイヤにおいて、ショルダーブロックの剛性を確保しつつ、左折時のトラクションを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態の一例である空気入りタイヤの斜視図である。
図2図1中のAA線断面図である。
図3】実施形態の一例である空気入りタイヤの平面図であって、トレッド部の一部を示す図である。
図4】トレッド部の一部を拡大して示す斜視図である。
図5】トレッド部の一部を拡大して示す斜視図である。
図6】ショルダー部及びその近傍を拡大して示す斜視図である。
図7】実施形態の一例である空気入りタイヤの右側面図であって、ショルダー部及びサイドウォール部の一部を拡大して示す図である。
図8】サイドブロックを模式的に示す図である。
図9図7中のBB線断面の一部を示す図である。
図10】実施形態の他の一例である空気入りタイヤの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る空気入りタイヤの実施形態の一例について詳細に説明する。以下で説明する実施形態はあくまでも一例であって、本発明は以下の実施形態に限定されない。また、以下で説明する複数の実施形態、変形例の各構成要素を選択的に組み合わせることは当初から想定されている。
【0012】
図1は、実施形態の一例である空気入りタイヤ1の斜視図である。図1に示すように、空気入りタイヤ1は、路面と接地する部分であるトレッド部10を備える。トレッド部10は、複数のブロックを含むトレッドパターンを有し、タイヤ周方向に沿って環状に形成されている。また、トレッド部10には、タイヤ周方向に延びた複数の主溝20,21と、主溝20,21と交差する方向に延びた複数の横溝25,26とが形成されている。詳しくは後述するが、トレッド部10は、空気入りタイヤ1が車両に装着された状態で、車両進行方向に向かってタイヤ幅方向右側と左側とで異なったトレッドパターンを有する。
【0013】
本実施形態において、車両進行方向とは、車両が前進する方向を意味する。以下では、空気入りタイヤ1及びその構成要素の説明において「左右」の用語を使用する。空気入りタイヤ1の「右側」とは車両が前進する方向に向かって右側を意味し、「左側」とは車両が前進する方向に向かって左側を意味する。図1を含む一部の図面には、車両が前進する方向に向かって「前後左右」の方向を示す矢印を図示している。
【0014】
また、トレッドパターンを形成するブロック等について「踏み込み側」及び「蹴り出し側」の用語を使用する。ブロック等の「踏み込み側」とは、車両が前進する方向に空気入りタイヤ1が回転したときに路面に対して先に接地する側(回転方向前方)を意味し、「蹴り出し側」とは路面に対して後で接地する側(回転方向後方)を意味する。
【0015】
トレッド部10は、複数の主溝20,21及び複数の横溝25,26により区画された複数のブロックを有する。トレッド部10は、当該ブロックとして、タイヤ周方向に沿って複数設けられたショルダーブロック40A,40Bを有する。複数のショルダーブロック40Aは、トレッド部10の幅方向右側において、タイヤ周方向に一列に並んで設けられている。また、複数のショルダーブロック40Bは、トレッド部10の幅方向左側において、タイヤ周方向に一列に並んで設けられている。なお、「タイヤ幅方向」と「トレッド部10の幅方向」は同じ方向であり、以下、両方の用語を適宜使用する。
【0016】
トレッド部10は、タイヤ幅方向中央部に設けられたセンターリブ30と、複数のメディエイトブロック50A,50Bとを有する。複数のメディエイトブロック50Aは、センターリブ30とショルダーブロック40Aとの間において、タイヤ周方向に一列に並んで設けられている。複数のメディエイトブロック50Bは、センターリブ30とショルダーブロック40Bとの間において、タイヤ周方向に一列に並んで設けられている。また、センターリブ30は、タイヤ周方向に沿ってタイヤ赤道CL上に設けられている。タイヤ赤道CLとは、タイヤ幅方向中央を通るタイヤ周方向に沿った線を意味する。
【0017】
空気入りタイヤ1は、さらに、ショルダー部11と、サイドウォール部12と、ビード部13とを備える。ショルダー部11、サイドウォール部12、及びビード部13は、空気入りタイヤ1の側面を形成する部分であって、空気入りタイヤ1の左右両側にそれぞれ設けられている。空気入りタイヤ1は、トレッド部10の幅方向両端部(左右両端部)からタイヤ径方向内側に延びる一対のショルダー部11、一対のサイドウォール部12、及び一対のビード部13を備える。
【0018】
本実施形態では、空気入りタイヤ1の接地端Eがトレッド部10とショルダー部11の境界位置となる。また、空気入りタイヤ1の側面に形成された環状のサイドリブ90が、ショルダー部11とサイドウォール部12の境界位置となる。接地端Eとは、空気入りタイヤ1が正規リムに装着されて内圧が正規内圧に調整され、正規荷重が負荷されたときに接地する部分のタイヤ幅方向両端を意味する(正規リム等については、特開2020-131965号公報の記載と同様)。
【0019】
ショルダー部11は、空気入りタイヤ1の肩にあたる部分であって、トレッド部10の幅方向両端から幅方向外側に張り出すと共に、タイヤ径方向内側に延びている。また、ショルダー部11は、トレッド部10と同様に、タイヤ周方向に沿って環状に形成されている。本実施形態では、タイヤ周方向に沿った規則的な凹凸が左右のショルダー部11に形成されている。この凹凸は、後述するサイドトラクション性能の向上に寄与する。
【0020】
サイドウォール部12は、各ショルダー部11からタイヤ径方向内側に延び、タイヤ周方向に沿って環状に形成されている。サイドウォール部12は、空気入りタイヤ1の幅方向外側に最も張り出した部分であって、外側に向かって凸となるように緩やかに湾曲している。サイドウォール部12には、第1サイドブロック60、第2サイドブロック70、及び第3サイドブロック80がそれぞれ複数設けられている。各サイドブロックは、ショルダー部11の凹凸と共にサイドトラクション性能の向上に寄与する。
【0021】
ビード部13は、各サイドウォール部12からタイヤ径方向内側に延び、タイヤ周方向に沿って環状に形成されている。ビード部13は、ホイールのリムに固定される部分であって、空気入りタイヤ1の内周部を構成している。ビード部13は、内側に向かって凸となるように緩やかに湾曲しており、サイドウォール部12よりも空気入りタイヤ1の幅方向内側に位置する。
【0022】
図2は、図1中のAA線断面図であって、空気入りタイヤ1の内部構造を示す。図2に示すように、空気入りタイヤ1は、ゴムで被覆されたコード層であるカーカス15を備える。カーカス15は、例えば、2枚のカーカスプライにより構成され、荷重、衝撃、空気圧等に耐えるタイヤ骨格を形成する。また、カーカス15は、タイヤ周方向に対して直交する方向にカーカスコードが配置されたラジアル構造を有する。カーカス15を被覆して保護するゴム層は、一般的に、トレッドゴム、サイドウォールゴム等の複数のゴム部材を用いて構成されている。
【0023】
空気入りタイヤ1では、トレッド部10とカーカス15の間にベルト16が設けられている。ベルト16は、タイヤ周方向に張られた補強帯であり、カーカス15を強く締めつけてトレッド部10の剛性を高める。ベルト16は、例えば、2枚のベルトプライにより構成されている。また、カーカス15の内周面には、空気圧を保持するためのゴム層であるインナーライナー17が貼付されている。
【0024】
空気入りタイヤ1は、さらに、ビードコア18と、ビードフィラー19とを備える。ビードコア18及びビードフィラー19は、左右両側のビード部13にそれぞれ設けられている。ビードコア18は、束ねられた鋼線をゴムで被覆したリング状の部材である。ビードフィラー19は、硬質のゴムで構成され、ビード部13の剛性を高める機能を有する。ビードフィラー19は、ビードコア18よりもタイヤ径方向外側に配置されている。
【0025】
本実施形態では、カーカス15を構成するカーカスプライが、一対のビードコア18に架け渡されるように配置されている。カーカスプライは、タイヤ幅方向内側からビードコア18に架け渡され、ビードコア18及びビードフィラー19を包むようにサイドウォール部12側に折り返されている。図2に示す例では、カーカスプライの端であるプライ端15Eが、各サイドウォール部12に位置している。カーカス15が2枚のカーカスプライを含む場合、一般的には、もう1枚のカーカスプライのプライ端は各ビード部13に位置する。詳しくは後述するが、サイドウォール部12には、プライ端15Eのタイヤ幅方向外側に、第3サイドブロック80が形成されている。
【0026】
図3は、空気入りタイヤ1の平面図であって、トレッド部10の一部を示す図である。図3では、ブロック上面及びリブ上面にドットハッチングを付している。なお、「ブロック上面及びリブ上面」とは、タイヤ径方向外側に向いた面であって、路面に接地する面を意味する。
【0027】
図3に示すように、トレッド部10は、タイヤ赤道CLの両側に形成された2本の主溝20と、主溝20よりもタイヤ幅方向外側に形成された2本の主溝21とを有する。トレッド部10には、トレッド部10の幅方向両側に2本ずつ、合計4本の主溝が形成されている。また、トレッド部10は、タイヤ径方向外側に向かって隆起した陸部として、センターリブ30と、複数のショルダーブロック40A,40Bと、複数のメディエイトブロック50A,50Bとを有する。
【0028】
以下、トレッド部10の幅方向右側にタイヤ周方向に沿って複数設けられたショルダーブロック40Aを、単に「右側のショルダーブロック40A」という場合がある(メディエイトブロック50A等についても同様)。また、トレッド部10の幅方向左側にタイヤ周方向に沿って複数設けられたショルダーブロック40Bを、単に「左側のショルダーブロック40B」という場合がある(メディエイトブロック50B等についても同様)。
【0029】
トレッド部10には、タイヤ周方向に所定の間隔をあけて横溝25,26が交互に形成されている。横溝25,26はいずれも、トレッド部10の幅方向内側から外側に向かって延びるように、メディエイトブロック50A,50Bの列、及びショルダーブロック40A,40Bの列を横切り、接地端Eを超えてショルダー部11まで形成されている。なお、横溝25,26は、横溝25が主溝20を横切ってセンターリブ30内で終端しているのに対して、横溝26が主溝20との交点で終端している点で異なっている。
【0030】
本実施形態では、主溝20により、センターリブ30とメディエイトブロック50A,50Bの列が分断され、主溝21により、ショルダーブロック40A,40Bの列とメディエイトブロック50Aの列が分断されている。また、横溝25,26により、ショルダーブロック40A,40Bの列を構成する各ブロック、及びメディエイトブロック50A,50Bの列を構成する各ブロックがそれぞれ分断されている。そして、ショルダーブロック40A,40B、及びメディエイトブロック50A,50Bの各列には、互いに同じ数のブロックが含まれている。
【0031】
トレッド部10のトレッドパターンは、例えば、タイヤ赤道CL上に設けられたセンターリブ30により路面との良好な接地性を確保し、左右のショルダーブロック40A,40B、及びメディエイトブロック50A,50Bにより雪氷路面に対する高いグリップ力を発揮する。詳しくは後述するが、右側のショルダーブロック40Aには踏み込み側の側壁に凹部45が形成され、左側のショルダーブロック40Bには蹴り出し側の側壁に凹部45が形成されている。この凹部45が、特に左側通行の国で滑りが発生し易い左折時において、トラクション性能を効果的に向上させる。
【0032】
トレッド部10には、右側のショルダーブロック40Aとして、互いに形状が異なる2種類のブロック(第1ショルダーブロック41及び第2ショルダーブロック42)が設けられている。第2ショルダーブロック42は、第1ショルダーブロック41よりもタイヤ幅方向外側に張り出したブロックである。左側のショルダーブロック40Bの列にも、第1ショルダーブロック41及び第2ショルダーブロック42が含まれる。ショルダーブロック40A,40Bの各々において、第1ショルダーブロック41と第2ショルダーブロック42は、タイヤ周方向に交互に配置されている。
【0033】
また、メディエイトブロック50A,50Bの列にも、互いに形状が異なる2種類のブロック(第1メディエイトブロック51及び第2メディエイトブロック52)が設けられている。メディエイトブロック50A,50Bの各々において、第1メディエイトブロック51と第2メディエイトブロック52は、タイヤ周方向に交互に配置されている。本実施形態では、メディエイトブロック50A,50Bにも、凹部45と同様の機能を有する凹部56,57が形成されている。
【0034】
トレッド部10は、上述のように、タイヤ赤道CLに対してタイヤ幅方向右側と左側とで異なったトレッドパターンを有する。つまり、トレッド部10のトレッドパターンは、タイヤ赤道CLに対して左右対称ではない。他方、トレッド部10のトレッドパターンは、タイヤ赤道CLを通るタイヤ径方向に沿った軸を中心としてトレッド部10を180°回転させたときに元の形状と重なる点対称パターンである。点対称のトレッドパターンを採用することにより、例えば、車両に対する空気入りタイヤ1の装着方向が制限されなくなるためユーザビリティが向上する。
【0035】
トレッド部10の陸部には、多数のサイプが形成されている。ショルダーブロック40A,40Bの各々には、ブロックの側壁まで延びるサイプ43がタイヤ周方向に並んで複数形成されている。さらに、センターリブ30、及びメディエイトブロック50A,50Bの各々にも、側壁まで延びる複数のサイプ31,53がそれぞれ形成されている。これらのサイプは、雪や氷をひっかくエッジ効果を高め、雪氷路面での良好な制駆動性、操縦安定性を実現する。このようなトレッドパターンを有する空気入りタイヤ1は、スタッドレスタイヤなどの冬用タイヤに好適である。
【0036】
以下、図3図5を参照しながら、トレッドパターンを形成する各構成要素について、特にショルダーブロック40A,40B、及びメディエイトブロック50A,50Bについて、さらに詳説する。図4及び図5は、ショルダーブロック40Aとメディエイトブロック50Aの一部を拡大して示す斜視図である。
【0037】
[主溝]
図3に示すように、主溝20は、センターリブ30の左右両側に1本ずつ形成され、タイヤ幅方向に折れ曲がりながらタイヤ周方向に延びてジグザグ状に形成されている。このため、2本の主溝20に左右両側から挟まれたセンターリブ30は、ジグザグ形状を有する。主溝20は、タイヤ周方向に対して傾斜した第1溝部20a及び第2溝部20bを含む。第1溝部20a及び第2溝部20bが互いに反対方向に傾斜し、タイヤ周方向に交互に配置されることで、主溝20はジグザグ状に形成されている。
【0038】
主溝20には、第1溝部20aと第2溝部20bの交点に屈曲部が存在する。本実施形態では、タイヤ周方向に対する傾斜角度が、第1溝部20a>第2溝部20bであり、長さが、第1溝部20a<第2溝部20bとなっている。そして、1つの第1溝部20aと1つの第2溝部20bからなる主溝20の1ピッチの両端が、タイヤ周方向に並ぶように形成されている。このような規則的なジグザグ形状の主溝20を形成することで、例えば、雪をつかみ踏み固める雪柱せん断力が向上し、雪道での良好な走行性能が得られる。
【0039】
主溝21は、ショルダーブロック40Aの列とメディエイトブロック50Aの列との間において、タイヤ幅方向に折れ曲がりながらタイヤ周方向に延びてジグザグ状に形成されている。また、ショルダーブロック40Bの列とメディエイトブロック50Bの列との間にも主溝21が形成されている。主溝21は、横溝25,26と交差し、横溝25との交点で主溝20の第1溝部20aと同じ方向に大きく曲がっている。このため、主溝21と横溝25との交点でも、雪をしっかりつかむことができ、高い雪柱せん断力が得られる。
【0040】
主溝21は、2本の横溝25の間において直線状に形成され、タイヤ周方向に対して緩やかに傾斜している。また、主溝21は、横溝26を横切り、主溝20の第2溝部20bと略平行に形成されている。詳しくは後述するが、主溝21の直線状に形成された部分の延長線上に、第1ショルダーブロック41に形成された凹部45が存在する。主溝21は、主溝20と同じ幅又はより広い幅で形成されていてもよいが、本実施形態では、主溝20が主溝21よりも幅広に形成されている。
【0041】
[横溝]
図3に示すように、横溝25,26は、トレッド部10の左右両側に複数形成されている。複数の横溝25,26はいずれも、主溝20,21と交差し、トレッド部10の平面視において緩やかに湾曲した形状を有する。トレッド部10の幅方向右側と左側とでは横溝25,26が曲がる方向が反対であり、右側の横溝25,26は蹴り出し側に凸となるように湾曲し、左側の横溝25,26は踏み込み側に凸となるように湾曲している。横溝25,26は、接地端Eに近づくほどタイヤ幅方向に沿うようになって曲率が小さくなり、センターリブ30に近づくほどタイヤ周方向への傾きが大きくなっている。
【0042】
横溝25,26は、例えば、タイヤ周方向に等間隔で交互に形成されている。横溝25は、上述のように、主溝20を横切り、センターリブ30内に一端が存在している。他方、横溝26は、主溝20との交点が一端となっている。なお、トレッド部10の幅方向右側に形成された横溝25と、トレッド部10の幅方向左側に形成された横溝25とは、タイヤ周方向に沿って千鳥状に配置されており(横溝26についても同様)、センターリブ30を分断する横溝は存在しない。
【0043】
横溝25,26は、トレッド部10の幅方向右側及び左側のそれぞれにおいて、互いに略平行に形成されている。また、横溝25,26は、センターリブ30側から接地端E側に向かって次第に拡幅している。この場合、良好な排水・排雪性能が得られる。横溝25,26は、接地端Eを超えてショルダー部11まで延び、サイドウォール部12との境界に形成されたサイドリブ90で終端している。横溝25,26は、接地端E又はその近傍で、タイヤ径方向内側に大きく曲がり、ショルダー部11の傾斜に沿ってサイドリブ90まで延びている。
【0044】
[センターリブ]
図3に示すように、センターリブ30は、タイヤ赤道CL上に設けられた陸部であって、タイヤ周方向に連続して環状に形成されている。タイヤ赤道CL上に剛性の高い環状のセンターリブ30を設けることにより、例えば、路面との接地性が向上し、特に乾燥路面や雪が深い路面において良好な制駆動性が得られる。なお、センターリブ30の高い剛性を確保するため、センターリブ30に入り込む横溝25は、後述する側壁30a,30cとリブの幅方向に並ばないように、センターリブ30の幅が太い部分に形成されている。
【0045】
センターリブ30は、上述のように、平面視においてジグザグ形状を有する。センターリブ30の幅方向右側の側壁は、側壁30a,30bが交互に繰り返されて形成され、左側の側壁は、側壁30c,30dが交互に繰り返されて形成されている。言い換えると、側壁30a,30cは主溝20の第1溝部20aの溝壁であり、側壁30b,30dは主溝20の第2溝部20bの溝壁である。側壁30a,30cと、側壁30b,30dとが、タイヤ周方向に対して互いに反対方向に傾斜することで、センターリブ30はタイヤ周方向に延びてジグザグ状に形成される。
【0046】
本実施形態では、側壁30a,30cが互いに近接して形成され、側壁30a,30cの近傍に、センターリブ30の幅が最も細くなった括れ部33が形成されている。なお、括れ部33の左右に第1メディエイトブロック51が配置され、第1メディエイトブロック51のタイヤ幅方向外側に第1ショルダーブロック41が配置されている。左右の第1ショルダーブロック41、第1メディエイトブロック51、及びセンターリブ30の括れ部33は、トレッド部10の幅方向右端から左端に向かって、幅方向に対して踏み込み側に所定の角度(例えば、10°~40°)傾斜した方向に並んでいる。
【0047】
センターリブ30は、ジグザグ形状を有することにより、また入り込んだ横溝25により、タイヤ周方向に連続した剛性の高い陸部でありながら良好なエッジ効果を発揮する。また、センターリブ30には、側壁30a~30dまで延びるサイプ31がタイヤ周方向に並んで複数形成されている。この複数のサイプ31によっても、エッジ効果が発揮される。サイプ31は、一端がセンターリブ30内に存在し、センターリブ30を幅方向に横断しないように形成されている。これにより、センターリブ30の剛性を維持しつつ、エッジ効果を高めることができる。
【0048】
センターリブ30の側壁30b,30dには、複数の凹部32が形成されている。凹部32は、例えば、エッジ効果の向上に寄与する。凹部32は、後述する凹部44,45等と同様に、平面視略三角形状に形成された切欠き状の窪みであって、センターリブ30の上面からリブの高さ方向中間部にわたって、主溝20よりも浅い深さで形成されている。また、側壁30b,30dでは、凹部32が拡大する方向が反対である。側壁30bの凹部32は、蹴り出し側から踏み込み側に向かって大きくなっているのに対し、側壁30dの凹部32は、踏み込み側から蹴り出し側に向かって大きくなっている。
【0049】
[ショルダーブロック]
図3図5に示すように、ショルダーブロック40A,40Bは、トレッド部10の幅方向両端部にそれぞれ形成された島状の陸部である。上述のように、右側のショルダーブロック40Aの列には、タイヤ周方向に交互に配置された、第1ショルダーブロック41と、第1ショルダーブロック41よりもタイヤ幅方向外側に張り出した第2ショルダーブロック42とが含まれる。また、左側のショルダーブロック40Bの列についても同様に、タイヤ周方向に交互に配置された、第1ショルダーブロック41と、第2ショルダーブロック42とが含まれる。
【0050】
詳しくは後述するが、第1ショルダーブロック41のタイヤ幅方向外側を向いた側壁41dには、タイヤ幅方向内側に窪んだ凹部46が形成されている。他方、第2ショルダーブロック42のタイヤ幅方向外側に向いた側壁42dには、凹部46のような大きな凹部は形成されていない。このため、第2ショルダーブロック42は、第1ショルダーブロック41よりも相対的に外側に張り出し、ショルダー部11にはタイヤ周方向に沿って規則的な凹凸が形成される。
【0051】
第1ショルダーブロック41及び第2ショルダーブロック42の各々には、複数のサイプ43が形成されている。サイプ43は、各ブロックにおいて、側壁まで延び、タイヤ周方向に並んで複数形成されている。このように、各ブロックに複数のサイプ43を形成することで、高いエッジ効果が発揮され、雪氷路面における良好な走行性能が得られる。本実施形態では、各ブロックに4本のサイプ43が形成されているが、サイプ43の本数はこれに限定されず、例えば5本以上であってもよい。
【0052】
第1ショルダーブロック41及び第2ショルダーブロック42の各々において、複数のサイプ43は、平面視波形に形成され、各ブロックのタイヤ幅方向内側に向いた側壁41c,42cからタイヤ幅方向に沿うように幅方向外側に延びている。他方、サイプ43は、タイヤ幅方向外側に向いた側壁41d,42dまで延びず、ブロック内で終端している。この場合、ブロックの剛性を確保しつつ、高いエッジ効果を得ることができる。サイプ43は、2Dサイプ、3Dサイプのいずれであってもよい。
【0053】
第1ショルダーブロック41は、タイヤ周方向一方側を向いた側壁41a、タイヤ周方向他方側を向いた側壁41b、及び側壁41a,41bをつなぐ2つの側壁41c,41dを有する。同様に、第2ショルダーブロック42は側壁42a~42dを有する。側壁41a,42bは、横溝25に沿って形成された壁部(溝壁)であって、横溝25を隔てて対向している。側壁41b,42aは、横溝26に沿って形成された壁部であって、横溝26を隔てて対向している。側壁41c,42cは、主溝21に沿って形成された壁部である。
【0054】
なお、各ブロックの側壁は、ブロック上面に対して垂直ではなく、ブロック上面側から溝底側に向かって、特に溝底の近傍がブロックの外側に広がるように湾曲している(センターリブ30及びメディエイトブロック50A,50Bの側壁についても同様)。
【0055】
第1ショルダーブロック41の側壁41cは、側壁41a側から側壁41b側に向かって次第にタイヤ幅方向外側に位置するように、例えば、タイヤ周方向に対して10°以下の角度でタイヤ幅方向に傾斜している。他方、側壁41dはタイヤ周方向に沿って形成されている。このため、第1ショルダーブロック41の上面は、側壁41a側から側壁41b側に向かって次第に小さくなった平面視略四角形状である。第2ショルダーブロック42の側壁42cは、側壁41cの延長線上に位置する。第2ショルダーブロック42の上面は、第1ショルダーブロック41の上面と同様の平面視略四角形状である。
【0056】
各ブロックの側壁41c,42cには、センターリブ30の側壁30b,30dと同様に、複数の凹部44(特に図4参照)が形成されている。凹部44は、平面視略三角形状に形成された切欠き状の窪みであって、エッジ効果等を向上させる役割を果たす。凹部44は、ブロック上面からブロックの高さ方向全長にわたって形成されてもよいが、好ましくはブロック上面からブロックの高さ方向中間部にわたって形成される。この場合、ブロックの剛性を確保しつつ、エッジ効果等を高めることができる。
【0057】
凹部44の深さは、例えば、側壁41c,42cの高さの30%~70%、又は40%~60%である。この場合、ブロックの剛性を確保しつつ、エッジ効果等を高めることが容易になる。ここで、凹部44の深さとは、ブロック上面から凹部44の底面までのタイヤ径方向に沿った長さを意味し(他の凹部についても同様)、側壁の高さとは、隣接する溝の底からブロック上面までのタイヤ径方向に沿った長さを意味する。凹部44は、側壁41a,42a側から側壁41b,42b側に向かって大きくなり、次第にブロックの内側に深く入り込むように形成されている。側壁41cには、各凹部44が形成された部分からサイプ43が形成され、各ブロックには同じ数のサイプ43と凹部44が存在する。
【0058】
第1ショルダーブロック41の側壁41a,41bは、タイヤ幅方向に対して緩やかに傾斜している。右側の第1ショルダーブロック41では、側壁41a,41b(以下、「側壁41a(A),41b(A)」という場合がある)のタイヤ幅方向内側部分が外側部分よりも踏み込み側に位置するように、例えば、タイヤ幅方向に対して10°~40°の角度でタイヤ周方向に傾斜している。左側の第1ショルダーブロック41では、側壁41a,41b(以下、「側壁41a(B),41b(B)」という場合がある)のタイヤ幅方向内側部分が外側部分よりも蹴り出し側に位置するように側壁41a(A),41b(A)と同じ角度でタイヤ幅方向に対して傾斜している。
【0059】
第1ショルダーブロック41には、雪氷路面に対して高いグリップ力を発揮する凹部45が形成されている。凹部45は、凹部44と同様に平面視略三角形状に形成された切欠き状の窪みであるが、その大きさは凹部44よりも大きい。また、凹部45は、左右の第1ショルダーブロック41において、タイヤ周方向に対する向きが異なっている。右側の第1ショルダーブロック41には、タイヤ周方向一方側を向いた踏み込み側の側壁41a(A)に凹部45が形成され、左側の第1ショルダーブロック41には、タイヤ周方向他方側を向いた蹴り出し側の側壁41a(B)に凹部45が形成されている。
【0060】
本実施形態では、右側の第1ショルダーブロック41の側壁41a(A),41b(A)のうち、踏み込み側の側壁41a(A)のみに凹部45が形成されている。左側の第1ショルダーブロック41には、側壁41a(B),41b(B)のうち、蹴り出し側の側壁41a(B)のみに凹部45が形成されている。つまり、第1ショルダーブロック41の側壁41bには、凹部45のような窪みが存在しない。
【0061】
このように凹部45を配置した場合、第1ショルダーブロック41の剛性を確保しつつ、左折時のトラクションを効果的に向上させることができる。カーブの曲率半径が小さい左折時において、主に、右側の凹部45が滑りを抑制し、左側の凹部45がグリップ力を向上させる。なお、本実施形態のトレッドパターンは、点対称のパターンであるから、どの向きに装着しても、凹部45が形成された側壁41aは、右側の第1ショルダーブロック41では踏み込み側に位置し、左側の第1ショルダーブロック41では蹴り出し側に位置する。
【0062】
凹部45は、タイヤ幅方向内側から外側に向かって拡大し、かつ第1ショルダーブロック41の上面からブロックの高さ方向中間部にわたって形成されている。側壁41aには、高さ方向中間部に平面視略三角形状の凹部45の底面が形成され、ブロック上面と凹部45の底面との間に段差が形成される。好適な凹部45の深さの一例は、側壁41aの高さの20%~70%、又は30%~60%である。この場合、第1ショルダーブロック41の剛性を確保しつつ、エッジ効果等を高めることが容易になる。
【0063】
凹部45は、凹部44と比べて第1ショルダーブロック41の内側に深く入り込み、凹部44よりも大きく形成されている。タイヤ幅方向に延びる第1ショルダーブロック41の側壁41aの形状は、タイヤ周方向に延びる側壁41cの形状よりも雪氷路面に対するグリップ力に大きく影響するため、側壁41aに大きな凹部45を形成することで、例えば、高いエッジ効果や雪柱せん断力を得ることができる。なお、本明細書において「凹部の大きさ」とは、特に断らない限り、ブロック上面における凹部の開口面積、及び凹部の容積の両方を意味するものとする。
【0064】
第1ショルダーブロック41のブロック上面における凹部44,45の開口面積は、凹部45>凹部44であり、また凹部44,45の容積は、凹部45>凹部44である。一方、凹部45は凹部44よりも浅く形成されている。側壁41aの形状はグリップ力に大きく影響すると共に、ブロックの剛性にも大きく影響する。このため、ある程度の大きさで凹部45を形成してグリップ力を向上させる一方、凹部45の深さはやや浅くしてブロック剛性を確保している。なお、凹部44,45の壁面は、ブロックの側壁と同様に、凹部44,45の底面の近傍で湾曲している。
【0065】
凹部45は、側壁41aに沿ったブロック上面の端縁(側壁41aの上端)のうち、50%以上の範囲に形成されることが好ましい。本実施形態では、側壁41aのタイヤ幅方向内側の端(以下、「内端」とする)から、接地端Eの近傍を除く広範囲に凹部45が形成されている。側壁41aの内端は主溝21と横溝25の交点に位置するため、ここに凹部45を形成することで、凹部45に雪が入り易くなり雪柱せん断力がさらに向上する。また、側壁41aには、互いに隣接する2つの凹部45が形成されている。2つの凹部45により、例えば、側壁41aの上端の全長に対して、凹部45の合計の長さは70%~90%となっている。
【0066】
図3の紙面下部に、凹部45の平面視形状を模式的に図示している。凹部45は、上述のように、タイヤ幅方向内側から外側に向かって面積が拡大した平面視略三角形状を有する。この三角形の角45aは、凹部45のタイヤ幅方向内側の端に位置し、角45b,45cより内角が小さく最も尖っている。また、角45a,45bを結ぶ辺45d、及び角45a,45cを結ぶ辺45eは、角45b,45cを結ぶ辺45fよりも長くなっている。角45bは、側壁41aのタイヤ幅方向外側においてブロックの内側に位置する角、角45cは、側壁41aのタイヤ幅方向外側においてブロックの外側に位置する角である。
【0067】
角45b,45cは、どちらが凹部45のタイヤ幅方向外端であってもよいが、本実施形態では、ブロックの内側に位置する角45bが凹部45のタイヤ幅方向外側の端に位置している。そして、角45bの内角<角45cの内角となっている。角45cは、例えば鈍角である。なお、第1ショルダーブロック41の2つの凹部45は、側壁41aの内端側に形成された凹部45の角45cと、側壁41aの外端側に形成された凹部45の角45aとが一致するように隣接配置されている。
【0068】
また、第1ショルダーブロック41に形成された凹部45は、主溝21の延長線上に形成されている。本実施形態では、主溝21が横溝25との交点でタイヤ幅方向に大きく曲がっている。そして、主溝21のうち、2本の横溝25の間に形成される部分の延長線上に、第1ショルダーブロック41の凹部45が形成されている。言い換えると、第1ショルダーブロック41の側壁41aの一部が、主溝21の一部とタイヤ周方向に並んで配置され、当該側壁41aの一部に凹部45が形成されている。このように凹部45を配置することで、例えば、凹部45への雪の導入が促進され、雪柱せん断力がさらに向上する。
【0069】
第2ショルダーブロック42には、第1ショルダーブロック41と同様に、凹部45が形成されている。第2ショルダーブロック42の凹部45は、例えば、第1ショルダーブロック41の場合と同様の形状、大きさ、配置で形成される。第2ショルダーブロック42の凹部45は、側壁42aの内端から形成されている。また、側壁42aには、タイヤ幅方向に連なるように2つの凹部45が形成されている。
【0070】
本実施形態では、全ての第1ショルダーブロック41及び第2ショルダーブロック42に凹部45が形成されているが、一部のブロックに対して選択的に凹部45を形成することも可能である。一例としては、第1ショルダーブロック41及び第2ショルダーブロック42の一方のみに凹部45を形成することが挙げられる。但し、トラクション性及び操縦安定性の向上の観点から、両方のブロックに凹部45を形成することが好ましい。
【0071】
右側の第2ショルダーブロック42には、側壁42a,42bのうち、タイヤ周方向一方側を向いた踏み込み側の側壁42aのみに凹部45が形成されている。一方、左側の第2ショルダーブロック42には、側壁42a,42bのうち、タイヤ周方向他方側を向いた蹴り出し側の側壁42aのみに凹部45が形成されている。このように凹部45を形成することで、第2ショルダーブロック42の剛性を確保しつつ、左折時のトラクションを効果的に向上させることができる。
【0072】
第2ショルダーブロック42は、全体的に第1ショルダーブロック41よりもタイヤ幅方向外側に配置されている。このため、側壁42aの内端は、第1ショルダーブロック41の側壁41aの内端よりもタイヤ幅方向外側に位置する。そして、凹部45は、各ブロックにおいて側壁41a,42aの内端から形成されるため、第1ショルダーブロック41の凹部45と、第2ショルダーブロック42の凹部45とは、タイヤ周方向に完全に並ばずタイヤ幅方向にずれて配置される。つまり、ショルダーブロック40A,40Bに形成された凹部45は、タイヤ幅方向内側、外側、内側・・・のようにタイヤ周方向に沿って千鳥状に配置されている。
【0073】
各ブロックの側壁41a,42aには、凹部45の底面から、側壁41a,42aの高さ方向に沿って線溝47(特に図4参照)が形成されている。線溝47は、凹部45の底面から側壁41a,42aの下端部にわたって細線状に形成され、側壁41a,42aに段差を形成している。側壁41a,42aには、線溝47に隣接する内端側の領域が、線溝47に隣接する外端側の領域よりもブロックの内側に凹み、線溝47に沿った段差が形成されている。線溝47により形成される段差は、例えば、横溝25を流れる雪の一部を堰き止め、凹部45への雪の導入を促進する。側壁41a,42aには、1つの凹部45につき1本ずつ、合計2本の線溝47が形成されている。
【0074】
また、各ブロックの側壁41b,42bには、側壁41a,42aに形成された凹部45とそれぞれ対向する位置に屈曲部48,49(特に図5参照)が形成されている。側壁41b,42bの上端は、略直線状に形成されているが、側壁41b,42bにはブロックの外側に小さく張り出すように形成された屈曲部48,49が存在している。この屈曲部48,49は、各ブロックに形成された2つの凹部45のうち、タイヤ幅方向外側に位置する凹部45と横溝25,26を隔てて対向している。屈曲部48,49を形成することにより、凹部45への雪の導入を促進することができる。
【0075】
[メディエイトブロック]
図3図5に示すように、メディエイトブロック50A,50Bは、センターリブ30とショルダーブロック40A,40Bとの間にそれぞれ形成された島状の陸部である。上述のように、右側のメディエイトブロック50Aの列は、第1メディエイトブロック51と、第2メディエイトブロック52とが含まれ、互いに形状が異なるこの2種類のブロックがタイヤ周方向に交互に配置されて形成されている。また、左側のメディエイトブロック50Bの列についても同様に、タイヤ周方向に交互に配置された、第1メディエイトブロック51と、第2メディエイトブロック52とが含まれる。
【0076】
第1メディエイトブロック51及び第2メディエイトブロック52の各々には、複数のサイプ53が形成されている。サイプ53は、各ブロックにおいて、センターリブ30側を向いた側壁51c,52c、及びショルダーブロック40A,40B側を向いた側壁51d,52dからタイヤ幅方向に延び、タイヤ周方向に並んで複数形成されている。なお、各サイプ53の一端はブロック内に存在し、各ブロックを分断するようなサイプは形成されていない。
【0077】
また、第1メディエイトブロック51及び第2メディエイトブロック52の各々には、ブロック上面の中央部に環状サイプ95が形成されている。環状サイプ95は、長さの短い複数の小サイプが同一円周上に配置され、全体として円環形状(或いは、かざぐるま状ないし渦巻き状)を呈するように集合したサイプ群である。本実施形態では、5つの小サイプにより環状サイプ95が形成されている。各小サイプは、例えば、一端が同一円周上に配置され、他端が環状サイプ95の中心側に位置するように途中で環状サイプ95の内側に折れ曲がっている。
【0078】
環状サイプ95は、全てのメディエイトブロック50A,50Bに形成されているが、一部のブロックに対して選択的に形成されてもよい。なお、環状サイプ95は、ショルダーブロック40A,40Bには形成されていない。環状サイプ95は、全方向に対してエッジ効果を生じさせるが、ブロックの剛性も低下させる。本実施形態では、メディエイトブロック50A,50Bだけに環状サイプ95を形成することで、ショルダーブロック40A,40Bの剛性を相対的に高くし、操縦安定性を高めている。
【0079】
第1メディエイトブロック51は、タイヤ周方向一方側を向いた側壁51a、タイヤ周方向他方側を向いた側壁51b、及び側壁51a,51bをつなぐ2つの側壁51c,51dを有する。同様に、第2メディエイトブロック52は側壁52a~52dを有する。側壁51a,52bは横溝25に沿って形成された壁部(溝壁)であって、横溝25を隔てて対向している。側壁51b,52aは、横溝26に沿って形成された壁部であって、横溝26を隔てて対向している。タイヤ周方向への側壁51a,52aの傾斜は、第1ショルダーブロック41の側壁41a,42aよりも大きくなっている。
【0080】
第1メディエイトブロック51の側壁51cは、主溝20の第1溝部20a及び第2溝部20bに沿って形成された壁部である。主溝20は、第2溝部20bと第2溝部20bとの交点で大きく曲がっているので、側壁51cもこの交点に対応する位置で大きく曲がり、第1メディエイトブロック51の上面は平面視略五角形状を有する。他方、第2メディエイトブロック52の側壁52cは、主溝20の第2溝部20bに沿って形成された壁部であるから、略直線状に形成されている。また、第2溝部20bと主溝21は略平行であるから、第2メディエイトブロック52の上面は平面視略四角形状を有する。
【0081】
各ブロックの側壁51c,52cには、平面視略三角形状の切欠き状の窪みである凹部54(特に図4参照)が形成されている。凹部54は側壁51cに1つ、側壁52cに2つ形成されており、主溝20を隔てて対向するセンターリブ30の側壁に形成された凹部32と略同じ大きさで形成されている。凹部54が拡大する向きは、タイヤ幅方向に隣り合うショルダーブロック40A,40Bの凹部44の向きと同じであり、対向するセンターリブ30の側壁に形成された凹部32の向きと反対になっている。
【0082】
各ブロックの側壁51d,52dには、複数の凹部55(特に図5参照)が形成されている。凹部55は、主溝21を隔てて対向するショルダーブロック40A,40Bの側壁41c,42cに形成された凹部44と略同じ大きさである。凹部55は、側壁51d,52dの各々に5つずつ形成されており、側壁41c,42cの各々に形成された凹部44(4つ)より1つ多い。なお、凹部55が拡大する向きは、側壁41c,42cの凹部44の向きと反対になっている。
【0083】
第1メディエイトブロック51及び第2メディエイトブロック52の各々には、ショルダーブロック40A,40Bと同様に、凹部56,57がそれぞれ形成されている。なお、本実施形態では、全てのメディエイトブロック50A,50Bに凹部56,57がそれぞれ形成されているが、一部のブロックに対して選択的に凹部56,57を形成することも可能である。右側の第1メディエイトブロック51には、側壁51a,51bのうち、タイヤ周方向一方側を向いた踏み込み側の側壁51aのみに凹部56が形成され、左側の第1メディエイトブロック51には、側壁51a,51bのうち、タイヤ周方向他方側を向いた蹴り出し側の側壁51aのみに凹部56が形成されている。
【0084】
凹部56は、第1メディエイトブロック51の上面から凹部45と同様の深さで形成され、タイヤ幅方向内側から外側に向かって拡大している一方、平面視略四角形状を有し、凹部45よりも大きく形成されている。また、凹部45は各ブロックに2つずつ形成されているが、凹部56は第1メディエイトブロック51に1つずつ形成されている。第1メディエイトブロック51では、主溝20と横溝25の交点に位置する側壁51aの内端から、1つの大きな凹部56を形成することにより、例えば、雪柱せん断力を高め、雪氷路面に対するグリップ力を大きくしている。
【0085】
右側の第2メディエイトブロック52には、側壁52a,52bのうち、タイヤ周方向一方側を向いた踏み込み側の側壁52aのみに凹部57が形成され、左側の第2メディエイトブロック52には、側壁52a,52bのうち、タイヤ周方向他方側を向いた蹴り出し側の側壁52aのみに凹部57が形成されている。凹部57は、第2メディエイトブロック52の上面から凹部45,56と同様の深さで平面視略三角形状に形成され、タイヤ幅方向内側から外側に向かって拡大しているが、凹部45よりも小さくなっている。また、凹部57は第2メディエイトブロック52に1つずつ形成されている。
【0086】
凹部56は、側壁51aの上端の全長に対して50%以上の長さで形成されている。一方、凹部57は、側壁52aの上端の全長に対して50%未満の長さで形成され、その大きさは凹部56の大きさの半分程度である。そして、凹部57はその全体が、タイヤ周方向に凹部56と重なるように形成されている。また、第2メディエイトブロック52の側壁52a,52cの境界に位置する角には、主溝20と横溝26との交点の方向を向いた斜面96が形成されている。斜面96は、凹部57に隣接して形成され、例えば凹部57への雪の導入を促進する。
【0087】
各ブロックの側壁51b,52bには、側壁51a,52aに形成された凹部56,57とそれぞれ対向する位置に屈曲部58,59(特に図5参照)が形成されている。側壁51b,52bの上端は略直線状に形成されているが、側壁51b,52bにはブロックの外側に小さく張り出すように形成された屈曲部58,59が存在している。この屈曲部58,59は、各ブロックに形成された凹部56,57と横溝25,26を隔てて対向しており、凹部56,57への雪の導入を促進する。また、各ブロックの側壁51a,52aには、凹部56,57の底面から側壁51a,52aの高さ方向に沿って段差が形成されている。
【0088】
以下、図6図9を参照しながら、ショルダー部11及びサイドウォール部12について、さらに詳説する。図6は、ショルダー部11及びその近傍を拡大して示す斜視図である。図6では、サイドブロックにドットハッチングを付している(図7についても同様)。
【0089】
図6に示すように、ショルダー部11の凹凸構造は、トレッド部10のショルダーブロック40A,40Bにより形成され、特に当該各ブロックのタイヤ幅方向外側に向いた側壁41d,42dの形状がショルダー部11の形状に大きく反映される。ショルダーブロック40A,40Bには2種類のブロックが含まれ、側壁41dに凹部46を有する第1ショルダーブロック41が、ショルダー部11の凹凸の凹部を形成する。第2ショルダーブロック42は、第1ショルダーブロック41よりも相対的にタイヤ幅方向外側に張り出し、ショルダー部11の凹凸の凸部を形成する。
【0090】
第1ショルダーブロック41と第2ショルダーブロック42は、上述のように、タイヤ周方向に交互に配置され、これにより、ショルダー部11にはタイヤ周方向に沿って規則的な凹凸が形成される。本実施形態では、各ブロックの側壁41d,42dのタイヤ周方向長さが、側壁41d>側壁42dとなっている。即ち、タイヤ周方向に沿ったショルダー部11の凹凸の長さは、凹部>凸部となっている。また、第1ショルダーブロック41と第2ショルダーブロック42は、ショルダー部11においても横溝25,26により分断されている。
【0091】
ショルダー部11の各ブロックの間には、トレッド部10の接地端Eを超えてサイドリブ90まで延びた横溝25,26が形成されている。ショルダー部11の横溝25,26は、トレッド部10の排水・排雪性能を高めると共に、サイドリブ90まで第1ショルダーブロック41と第2ショルダーブロック42を区画する。ショルダー部11には、横溝25,26により区画された大きな凹凸がはっきりと形成され、これにより高いサイドトラクション性能が得られる。
【0092】
第1ショルダーブロック41の凹部46は、ブロック上面から側壁41dの高さ方向中間部にわたって形成されている。また、凹部46は、側壁41dの側壁41a側の端から側壁41b側の端にわたって形成されている。側壁41dは、ブロック上面側(タイヤ径方向外側)からタイヤ径方向内側に向かって次第にタイヤ径方向外側に張り出すように傾斜しており、凹部46が形成された部分も同様に傾斜している。なお、凹部46のタイヤ径方向内側部分は、ブロックの内側に凸となるように湾曲している。
【0093】
凹部46は、ブロック上面から、側壁41dの高さ(空気入りタイヤ1の側面視においてブロック上面からサイドリブ90までの長さ)の50%以上の長さで形成されることが好ましい。凹部46は、例えば、側壁41dの高さの50%~80%の長さで形成される。本実施形態では、側壁41dのサイドリブ90側、即ちタイヤ径方向内側に、第2ショルダーブロック42の側壁42dとタイヤ周方向に並ぶ凸領域93が形成されている。この場合、第1ショルダーブロック41の高さ方向にも凹凸を形成できる。
【0094】
左右のショルダー部11において、凹部同士及び凸部同士は、タイヤ幅方向に完全に重ならず、むしろ重なりの程度が小さくなる配置となっている(図3参照)。上述のように、左右の第1ショルダーブロック41同士、及び左右の第2ショルダーブロック42同士は、タイヤ幅方向に対して所定の角度で傾斜した方向に並んでいる。そして、タイヤ幅方向における異種のブロック同士(第1ショルダーブロック41及び第2ショルダーブロック42)の重なりは、タイヤ幅方向における同種ブロック同士の重なりより大きくなっている。
【0095】
つまり、異種のブロック同士がタイヤ幅方向に重なる長さの方が、同種のブロック同士がタイヤ幅方向に重なる長さより長くなっている。この場合、例えば、左右のバランスが良くなり、サイドトラクション性、操縦安定性がさらに向上する。なお、トレッド部10は点対称パターンであるから、左右のショルダー部11の凹凸パターンは、タイヤ赤道CLを通るタイヤ径方向に沿った軸を中心として空気入りタイヤ1を180°回転させたときに元の形状と重なる点対称パターンである。
【0096】
空気入りタイヤ1の側面には、各ショルダーブロックとサイドウォール部12との間には、ショルダーブロックの各々がつながったサイドリブ90が形成されている。サイドリブ90は、タイヤ周方向に連続して環状に形成され、各ショルダーブロックよりもタイヤ幅方向外側に突出している。なお、空気入りタイヤ1では、サイドリブ90によりショルダー部11とサイドウォール部12が区画されている。また、サイドリブ90とサイドブロック等との間に形成される段差は、サイドトラクション性能の向上に寄与する。
【0097】
サイドウォール部12には、上述のように、複数のサイドブロックが形成されている。サイドブロックは、タイヤ幅方向外側に向かって隆起した凸部である。サイドウォール部12は、互いに形状、大きさが異なる3種類のサイドブロックとして、第1サイドブロック60と、第2サイドブロック70と、第3サイドブロック80とを有する。第2サイドブロック70及び第3サイドブロック80は、例えば、互いに略同じ高さで形成され、第1サイドブロック60に対してはより高く形成されている。即ち、各サイドブロックの高さは、第1サイドブロック60<第2サイドブロック70≒第3サイドブロック80となっている。
【0098】
第1サイドブロック60、第2サイドブロック70、及び第3サイドブロック80はいずれも、タイヤ周方向に沿って複数設けられている。第1サイドブロック60及び第2サイドブロック70は、タイヤ周方向に交互に設けられている。また、第3サイドブロック80は、第1サイドブロック60及び第2サイドブロック70よりもタイヤ径方向内側において、当該各ブロックとタイヤ径方向に並んで配置されている。本実施形態では、3種類のサイドブロックが1つずつ集合して1つの大きなブロック群が形成されている。サイドウォール部12には、3種類のサイドブロックが同数設けられている。
【0099】
3種類のサイドブロックは、ショルダー部11の凹凸に対応するピッチ、即ち第1ショルダーブロック41と第2ショルダーブロック42の交互配置に対応するピッチで、タイヤ周方向に沿って規則的に配置されている。即ち、第1サイドブロック60と、第2サイドブロック70と、第3サイドブロック80とが1つずつ連結されてなるブロック群がタイヤ周方向に等間隔で配置されている。3種類のサイドブロックは、ショルダー部11の凹凸構造と協同して、例えば轍のある雪氷路面や、深雪路面を走行する際に、良好なトラクション性能を発揮する。また、タイヤ周方向に沿ったショルダー部11の凹凸とサイドブロックの規則的な繰り返し配置は、操縦安定性を大きく向上させる。
【0100】
以下、3種類のサイドブロックについて、また各サイドブロックとショルダー部11の凹凸構造との関係について詳説する。図7は、空気入りタイヤ1の右側面の一部を拡大して示す図である。図8は、説明の便宜上、各サイドブロックの側壁がブロック上面に対して垂直であるものとして、各サイドブロックの側面視形状を模式的に示した図である。
【0101】
図7及び図8に示すように、ショルダー部11の凹部を形成する第1ショルダーブロック41は、空気入りタイヤ1の側面視において、第1サイドブロック60及び第2サイドブロック70のうち、タイヤ径方向において第1サイドブロック60との重なりが大きくなっている。また、ショルダー部11の凸部を形成する第2ショルダーブロック42は、第1サイドブロック60及び第2サイドブロック70のうち、タイヤ径方向において第2サイドブロック70との重なりが大きくなっている。
【0102】
つまり、空気入りタイヤ1の側面視において、タイヤ幅方向外側に大きく突出したブロック同士がタイヤ径方向に並び、タイヤ幅方向外側への突出が小さなブロック同士がタイヤ径方向に並ぶように、ショルダーブロック及びサイドブロックが規則的に配置されている。このようなブロックパターンを形成することにより、空気入りタイヤ1の側面の凹凸がはっきりしてエッジが大きくなるので、大きなサイドトラクションを実現できる。
【0103】
第1ショルダーブロック41は、サイドリブ90を介してタイヤ径方向に第1サイドブロック60と隣接配置されている。また、第2ショルダーブロック42は、サイドリブ90を介してタイヤ径方向に第2サイドブロック70と隣接配置されている。空気入りタイヤ1の側面視において、第2サイドブロック70の一部も、第1ショルダーブロック41とタイヤ径方向に並んでいるが、タイヤ径方向における第1ショルダーブロック41との重なりは、第1サイドブロック60の方が大きくなっている。なお、タイヤ径方向における第2ショルダーブロック42と第1サイドブロック60との重なりは僅かである。
【0104】
本実施形態では、左右のサイドウォール部12のサイドブロックのパターンが点対称に形成されている。つまり、左右のサイドブロックのパターンは、タイヤ赤道CLを通るタイヤ径方向に沿った軸を中心として空気入りタイヤ1を180°回転させたときに元の形状と重なる点対称パターンである。また、ショルダー部11の凹凸パターンを含む空気入りタイヤ1の左右両側のブロックパターンは、点対称に形成されている。このため、図7は空気入りタイヤ1の右側面を図示しているが、左側面のブロックパターンも図7に図示するものと同じである。但し、左側面の場合、前後の方向は反対になる。
【0105】
第1サイドブロック60は、3種類のサイドブロックの中で最も面積が小さく、高さが低い小ブロックである。第1サイドブロック60は、タイヤ周方向一方側に折れ曲がり、タイヤ周方向一方側に隣り合う第2サイドブロック70につながっている。一方、第1サイドブロック60は、タイヤ周方向他方側に隣り合う第2サイドブロック70には連結されておらず、この第2サイドブロック70と第1サイドブロック60との間には側面視略V字状の溝状間隙92が形成されている。即ち、サイドウォール部12には、タイヤ周方向に隣り合う第1サイドブロック60と第2サイドブロック70とが1つずつ連結されてなるブロックペアが、タイヤ周方向に等間隔で配置されている。
【0106】
第1サイドブロック60は、上述のように、サイドリブ90を介して第1ショルダーブロック41と隣接配置されている。第1サイドブロック60は、サイドリブ90よりも高さが低く、サイドリブ90との間には段差が形成されている。以下では、説明の便宜上、第1サイドブロック60及び第2サイドブロック70のサイドリブ90側(タイヤ径方向外側)の端を「基端」、基端と反対側の端を「先端」という場合がある。第1サイドブロック60は、先端がタイヤ周方向一方側に延び、タイヤ周方向他方側には第1ショルダーブロック41とタイヤ径方向に重なる範囲を超えて延びていない。
【0107】
本実施形態では、第1サイドブロック60のタイヤ径方向内側に、例えば、溝状間隙92及び第3サイドブロック80が形成されている。そして、空気入りタイヤ1の側面視において、タイヤ径方向外側から順に、第1ショルダーブロック41の凹部46、凸領域93、サイドリブ90、第1サイドブロック60、溝状間隙92、及び第3サイドブロック80がタイヤ径方向に並んでいる。これにより、第1サイドブロック60のタイヤ径方向には、複数の凹凸が形成される。この凹凸は、例えば、タイヤ周方向の凹凸を補完し、サイドトラクション性能の向上に寄与する。
【0108】
第1サイドブロック60は、基端部がタイヤ径方向内側に真っ直ぐ延び、途中でタイヤ周方向一方側に折れ曲がった形状を有し、先端が第2サイドブロック70につながっている。また、第1サイドブロック60は、タイヤ周方向一方側に折れ曲がった屈曲部から先端に向かって次第にサイドリブ90から離れるようにタイヤ径方向内側に傾斜している。このため、サイドリブ90から、第1サイドブロック60のタイヤ径方向内側の端縁までのタイヤ径方向に沿った長さは、タイヤ周方向他方側で短く、タイヤ周方向一方側(先端側)に向かって長くなっている。
【0109】
第1サイドブロック60は、サイドリブ90からタイヤ径方向に沿って延びた短い側壁60a,60bと、側壁60a,60bとの境界位置から、それぞれタイヤ周方向一方側に向かって第2サイドブロック70まで延びた側壁60c,60dとを有する。側壁60aは、第1サイドブロック60のタイヤ周方向他方側のブロック端縁を形成し、側壁60cは、第1サイドブロック60のタイヤ径方向内側のブロック端縁を形成する。側壁60cのタイヤ周方向に対する傾斜角度は、例えば10°~40°である。
【0110】
第2サイドブロック70は、上述のように、サイドリブ90を介して第2ショルダーブロック42と隣接配置されている。第2サイドブロック70は、サイドリブ90と同じ高さで形成されているため、第2サイドブロック70とサイドリブ90との間に段差は存在しない。また、第2サイドブロック70のタイヤ径方向内側には、同程度の高さを有する第3サイドブロック80が隣接配置されている。このため、第2サイドブロック70のタイヤ径方向には、第1サイドブロック60の場合と比べて大きな凹凸は存在しない。
【0111】
第2サイドブロック70は、第1サイドブロック60と同様に、基端部がタイヤ径方向内側に真っ直ぐ延び、途中でタイヤ周方向一方側に折れ曲がった形状を有する。一方、第2サイドブロック70は、第1サイドブロック60よりも一回り大きく形成され、第1サイドブロック60よりもさらにタイヤ径方向内側に延びている。第2サイドブロック70は、タイヤ周方向一方側に折れ曲がった屈曲部から先端に向かってタイヤ径方向内側に傾斜し、サイドリブ90からタイヤ径方向内側の端縁までのタイヤ径方向に沿った長さは先端に向かって次第に長くなっている。
【0112】
また、第2サイドブロック70の先端は、タイヤ側面視において、横溝25とタイヤ径方向に重なる範囲を超え、タイヤ周方向一方側に隣り合う第1サイドブロック60とタイヤ径方向に重なる位置まで延びている。なお、この第1サイドブロック60と第2サイドブロック70は連結されていない。第2サイドブロック70の先端部は、溝状間隙92を隔てて第1サイドブロック60と対向配置され、第1サイドブロック60よりもタイヤ径方向内側において、第1ショルダーブロック41及び第1サイドブロック60とタイヤ径方向に並んで配置されている。
【0113】
第2サイドブロック70は、サイドリブ90からタイヤ径方向に沿って延びた側壁70a,70bと、側壁70a,70bとの境界位置から、それぞれタイヤ周方向一方側に延びた側壁70c,70dと、側壁70c,70dのタイヤ周方向一方側の端同士をつなぐ側壁70eとを有する。側壁70aは、第2サイドブロック70のタイヤ周方向他方側のブロック端縁を形成し、側壁70cは、第2サイドブロック70のタイヤ径方向内側のブロック端縁を形成する。側壁70eは、側壁70c,70dに対して略直交している。
【0114】
第2サイドブロック70の側壁70aには、第1サイドブロック60の先端がつながっている。第2サイドブロック70は第1サイドブロック60よりも高いため、2つのブロックの間には段差が存在する。即ち、側壁70aの上端は第1サイドブロック60のブロック上面から突出し、側壁70aに沿って段差が形成されている。側壁70cは、第2サイドブロック70の先端側に向かって次第にサイドリブ90から離れるようにタイヤ径方向内側に傾斜している。側壁70cは、第1サイドブロック60の側壁60cと連続し、側壁60cの延長線上に形成されている。
【0115】
第1サイドブロック60と第2サイドブロック70のブロックペアは、1つのブロック内に凹凸が存在するブロックであって、これがタイヤ周方向に等間隔で配置されることにより、サイドウォール部12にはタイヤ周方向に沿って規則的な凹凸が形成される。サイドウォール部12のこの規則的な凹凸構造は、ショルダー部11の凹凸構造と協同して、例えば、轍のある雪氷路面や、深雪路面を走行する際に、良好なサイドトラクション性、操縦安定性を発揮する。各ブロックペアの間には、側面視略V字状の溝状間隙92が形成されているため、タイヤ周方向に沿った凹凸はさらに大きくなり、大きなサイドトラクションが得られる。
【0116】
また、ブロックペアは、タイヤ周方向他方側から一方側に向かって、面積が大きくなり、高さが高くなり、サイドリブ90からタイヤ径方向内側の端縁までのタイヤ径方向に沿った長さが長くなっている。つまり、ブロックペアでは、タイヤ周方向一方側において雪氷をとらえ易い形状となっている。このため、タイヤ周方向一方側が空気入りタイヤ1の回転方向前方となる左側のサイドウォール部12において、より大きなサイドトラクションが得られ易い。
【0117】
サイドウォール部12には、ブロックペアを構成する2つのブロックと、サイドリブ90とに囲まれた凹部91が形成されている。凹部91は、第1サイドブロック60の側壁60b,60dと、第2サイドブロック70の側壁70aと、サイドリブ90とに囲まれた窪みであって、タイヤ側面視において、横溝26とタイヤ径方向に重なる位置に形成されている。凹部91は、タイヤ周方向に沿った凹凸を大きくし、サイドトラクション性能の向上に寄与する。サイドウォール部12のサイドリブ90の近傍には、タイヤ周方向に沿って、第1サイドブロック60による小さな凸部、凹部91、第2サイドブロック70による大きな凸部、及び溝状間隙92による凹部が繰り返し形成されている。
【0118】
第3サイドブロック80は、上述のように、第1サイドブロック60及び第2サイドブロック70よりもタイヤ径方向内側において、当該各ブロックとタイヤ径方向に並んで配置されている。本実施形態では、第3サイドブロック80が第1サイドブロック60及び第2サイドブロック70の両方につながり、3つのブロックが一体化されて1つのブロック群が形成されている。第3サイドブロック80は、第1サイドブロック60及び第2サイドブロック70からなるブロックペアを補完するように、或いは3つのサイドブロックが協同して雪をしっかりとらえ、サイドトラクション性能を向上させる。
【0119】
第3サイドブロック80は、タイヤ径方向内側からブロックペアの方向に向かって次第に面積が大きくなった平面視略四角形状を有する。第3サイドブロック80は、ブロックペアの連結部をタイヤ径方向内側から覆うように、2つのブロックの一方に偏ることなく、各ブロックに広く接した状態で配置されている。また、第3サイドブロック80は、タイヤ側面視において、横溝26及び凹部91とタイヤ径方向に並んで配置されている。この場合、例えば、横溝26によるショルダー部11の窪みを第3サイドブロック80により補って雪氷に対する接地面を増やし、サイドトラクション性能を高めることができる。
【0120】
第3サイドブロック80は、タイヤ側面視において、第1ショルダーブロック41及び第2ショルダーブロック42とタイヤ径方向に重なる範囲にも形成されている。第3サイドブロック80は、タイヤ径方向において、第2ショルダーブロック42との重なりよりも、第1ショルダーブロック41との重なりが大きくなるように配置されている。なお、第3サイドブロック80の大きさは、例えば、第2サイドブロック70と同程度である。ブロックペアのタイヤ径方向内側に第3サイドブロック80を隣接配置して1つの大きなブロック群を形成することで、タイヤが深く埋まる轍や深雪路面においても、大きなトラクションを発生させることができる。
【0121】
第3サイドブロック80は、タイヤ周方向他方側に位置し、第1サイドブロック60の側壁60cに対して略垂直に形成された側壁80aと、タイヤ径方向内側に位置し、側壁60cと略平行に形成された側壁80bと、タイヤ周方向一方側に位置し、第2サイドブロック70の側壁70cに対して鈍角に交わった側壁80cとを有する。側壁80aは、タイヤ周方向他方側に隣り合う別のブロック群を構成する第2サイドブロック70の側壁70eと略平行であり、側壁70eとの間に所定の隙間をあけて対向している。
【0122】
第3サイドブロック80の側壁80a、側壁80aに隣接する第1サイドブロック60の側壁60c、及び所定の隙間をあけてこれらに対向する第2サイドブロック70の側壁70d,70eにより、各ブロック群の間には、タイヤ周方向一方側に突出するように側面視略V字状の溝状間隙92が形成されている。なお、3種類のサイドブロックの側壁60c,60d,70c,70d,80bは、互いに略平行に形成され、タイヤ周方向一方側に向かってタイヤ径方向内側に傾斜している。
【0123】
各サイドブロックの側壁は、ブロック端縁に向かってブロック高さが次第に低くなるように傾斜していることが好ましい。サイドウォール部12に高さのあるブロックを形成する場合、金型のブロックの角部に対応する部分にゴムが流れ込み難く、気泡が残ってブロックの角部が欠けるベアと呼ばれる不具合が発生する場合がある。サイドブロックの側面をブロック上面に対して垂直ではなく斜面にすることで、金型へのゴムの流入がスムーズになりベアの発生を抑制することができる。側壁は、例えば、ブロックの内側に凸となるように湾曲していてもよく、ブロックの外側に凸となるように湾曲していてもよい。
【0124】
第2サイドブロック70及び第3サイドブロック80は、第1サイドブロック60よりも高く形成されるので、第1サイドブロック60に比べてベアが発生し易い。サイドブロックの側壁に緩やかで大きな斜面を形成すれば、ベアの発生を抑制し易くなるが、その場合、トラクション性能を確保することが難しくなる。本実施形態では、側壁70a,70b,70e,80c等のタイヤ周方向に対する傾斜角度が比較的大きな側壁については、傾斜をきつくしてトラクション性能を確保している。他方、側壁70c,80b等のタイヤ周方向に対する傾斜角度が比較的小さな側壁については、その側壁又はその側壁に隣接する領域に、緩やかな斜面71,81,82を形成してベアを抑制している。
【0125】
図7に示すように、斜面71は、側壁70cと隣接する領域において、側壁70cに沿って形成されている。斜面71は、サイドウォール部12のサイドブロックが存在しない領域の外面に対して、側壁70cよりも小さな傾斜角度で緩やかに形成されている。斜面71は、側壁70eにも隣接するように形成されている。即ち、第2サイドブロック70は、傾斜のきつい側壁70eを残しつつ、第2サイドブロック70の角部の近傍に斜面71を形成してベアを抑制している。斜面81,82は、第3サイドブロック80の各側壁と隣接する領域において、斜面71の長手方向と同じ方向に延びて形成されている。なお、斜面71,81,82と側壁との間には、傾斜角度が変化する屈曲部が存在する。
【0126】
図9は、図7中のBB線断面の一部を示す図である。図9に示すように、第3サイドブロック80は、タイヤ幅方向外側に最も張り出している。第3サイドブロック80は第2サイドブロック70と略同じ高さで形成されているが、第3サイドブロック80は、第2サイドブロック70が形成された部分よりもサイドウォール部12がより外側に膨らんだタイヤ径方向内側に位置するため、第3サイドブロック80がタイヤ幅方向の最外周部となっている。
【0127】
図9の仮想線Xは、カーカス15のプライ端15E(図2参照)の位置を示している。第3サイドブロック80は、タイヤ幅方向においてプライ端15Eと重なる位置に形成されている。サイドウォール部12には、プライ端15Eと重なる位置に段差が形成される場合があるので、プライ端15Eを外側から覆うように第3サイドブロック80を形成することで、段差をなくす、又は目立たなくすることができる。また、プライ端15Eと重なる領域には、気泡が生じてベアが発生し易い。図9に例示する形態では、プライ端15Eとタイヤ幅方向に重なる位置に第3サイドブロック80の斜面81が形成されている。この場合、斜面81の機能によりベアを抑制することができる。
【0128】
以上のように、上記構成を備えた空気入りタイヤ1によれば、ブロックの剛性を確保しつつ、左折時のトラクションを大きく向上させることができる。左側通行の国では、右折時よりも左折時においてカーブの曲率半径が小さくなるため、特に雪氷路面では左折時に滑りが発生し易くなる。このため、左折時により大きなトラクションを確保し、操縦安定性を向上させる必要がある。空気入りタイヤ1は、スタッドレスタイヤなどの冬用タイヤに好適であり、雪氷路面に対して高いグリップ力を発揮する。
【0129】
空気入りタイヤ1によれば、左折時において、右側のショルダーブロック40A及びメディエイトブロック50Aの踏み込み側に形成された凹部45が、例えば、雪氷路面をひっかいて高いエッジ効果を発揮する。さらに、左側のショルダーブロック40A及びメディエイトブロック50Aの蹴り出し側に形成された凹部45が、例えば、雪氷をとらえて高い雪柱せん断力を発揮する。空気入りタイヤ1によれば、かかる効果により、また各ブロックの角、サイプ、溝交点等によるエッジ効果や除水効果、雪柱せん断力などが総合的に作用し、雪氷路面における優れたトラクション性、操縦安定性等を実現できる。
【0130】
空気入りタイヤ1では、必要最小限の凹部45を必要な場所だけに選択的に配置することで、トラクション性能を向上させつつ、ブロックの剛性低下を十分に抑制でき、良好な耐久性、操縦安定性等のタイヤ性能を確保している。また、空気入りタイヤ1のブロックパターンは点対称に形成されているため、車両に対するタイヤの装着方向が制限されない。点対称のブロックパターンは、左右のバランスを良好にし、操縦安定性の向上にも寄与する。
【0131】
さらに、空気入りタイヤ1によれば、轍のある雪氷路面や深雪路面においても、良好なトラクション性能が発揮され、高い操縦安定性を実現できる。轍のある雪氷路面や深雪路面を走行する際にはタイヤが雪や氷に埋まって十分な操縦安定性が得られない場合がある。空気入りタイヤ1は、第1サイドブロック60及び第2サイドブロック70からなるブロックペア、これに第3サイドブロック80が集合して形成された大きなブロック群により、またショルダー部11の凹凸構造が効果的に組み合わされることにより、優れたサイドトラクション性能が得られる。つまり、深い轍のある路面や、深い雪の路面などであっても、良好な走行性能を実現できる。
【0132】
また、空気入りタイヤ1では、特に、左側のサイドウォール部12において、タイヤの回転方向前方に向かってエッジが拡大したサイドブロックパターンとなっているので、高いサイドトラクション性能が得られやすい。例えば、深い轍のある路面を左折する際には、このサイドブロックが轍の左側面をとらえてトラクションを向上させ、優れた操縦安定性を実現する。
【0133】
なお、上述の実施形態は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜設計変更できる。例えば、上述の実施形態では、図6に示すように、タイヤ側面視において、第1ショルダーブロック41と第1サイドブロック60がサイドリブ90を介してタイヤ径方向に隣接し、第2ショルダーブロック42と第2サイドブロック70がサイドリブ90を介してタイヤ径方向に隣接したブロックパターンを例示したが、図10に例示するような形態としてもよい。
【0134】
図10に例示する形態は、空気入りタイヤの側面に、ショルダー部11のショルダーブロック40A,40Bによる凹凸構造と、サイドウォール部12の3種類のサイドブロックによる凹凸構造とが形成されている点で、上述の形態と共通する。一方、ショルダー部11の凹部を形成する第1ショルダーブロック41は、タイヤ径方向において第2サイドブロック70との重なりが大きく、ショルダー部11の凸部を形成する第2ショルダーブロック42は、タイヤ径方向において第1サイドブロック60との重なりが大きくなっている点で、上述の実施形態と異なる。
【0135】
つまり、空気入りタイヤ1の側面視において、タイヤ幅方向外側に大きく突出したショルダー部11の凸部と、小ブロックである第1サイドブロック60とがタイヤ径方向に並び、タイヤ幅方向外側への突出が小さなショルダー部11の凹部と、大ブロックである第2サイドブロック70とがタイヤ径方向に並ぶように、タイヤ側面のブロックパターンが形成されている。この場合、例えば、ショルダー部11の凹部による接地面積の減少を第2サイドブロック70が補って良好なサイドトラクションを確保できる。また、安定したサイドトラクションが発生し、操縦安定性が向上する。
【0136】
図10に例示する形態では、第1ショルダーブロック41が、サイドリブ90を介してタイヤ径方向に第2サイドブロック70と隣接配置されている。また、第2ショルダーブロック42は、サイドリブ90を介してタイヤ径方向に第1サイドブロック60と隣接配置されている。
【0137】
また、上述の実施形態では、右側のショルダーブロック及びメディエイトブロックの踏み込み側及び蹴り出し側の側壁のうち、踏み込み側の側壁のみに凹部45が形成されているが、蹴り出し側の側壁に凹部を形成してもよい。但し、ブロックの剛性を確保しつつ、左折時のトラクションを向上させるためには、凹部の大きさは、踏み込み側の凹部>蹴り出し側の凹部とする必要がある。具体的には、踏み込み側の凹部に対して、蹴り出し側の凹部の開口面積又は容積の少なくとも一方をより小さくする。凹部が複数形成される場合は、例えば、複数の凹部の合計で評価する。なお、左側のブロックについても、踏み込み側の凹部の大きさ<蹴り出し側の凹部の大きさとする必要がある。
【0138】
また、ショルダー部及びサイドウォール部には、サイドトラクション機能を有さない凹凸のない構造を適用してもよい。或いは、従来公知の凹凸構造を適用してもよい。左右のブロックパターンは、点対称パターンに限定されず、左右対称パターン又は非対称パターンとしてもよい。
【符号の説明】
【0139】
1 空気入りタイヤ、10 トレッド部、11 ショルダー部、12 サイドウォール部、13 ビード部、15 カーカス、15E プライ端、16 ベルト、17 インナーライナー、18 ビードコア、19 ビードフィラー、20,21 主溝、20a 第1溝部、20b 第2溝部、25,26 横溝、30 センターリブ、30a~30d 側壁、31 サイプ、32 凹部、33 括れ部、40A,40B ショルダーブロック、41 第1ショルダーブロック、41a~41d 側壁、42 第2ショルダーブロック、42a~42d 側壁、43 サイプ、44~46 凹部、47 線溝、48,49 屈曲部、50A,50B メディエイトブロック、51 第1メディエイトブロック、51a~51d 側壁、52 第2メディエイトブロック、52a~52d 側壁、53 サイプ、54~57 凹部、58,59 屈曲部、60 第1サイドブロック、60a~60d 側壁、70 第2サイドブロック、70a~70e 側壁、71 斜面、80 第3サイドブロック、80a~80c 側壁、81,82 斜面、90 サイドリブ、91 凹部、92 溝状間隙、93 凸領域、95 環状サイプ、96 斜面、CL タイヤ赤道、E 接地端
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10