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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-25
(45)【発行日】2024-10-03
(54)【発明の名称】コイル部品及びコイル部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/29 20060101AFI20240926BHJP
【FI】
H01F27/29 123
H01F27/29 F
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020184044
(22)【出願日】2020-11-04
(65)【公開番号】P2021141306
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-10-24
(31)【優先権主張番号】P 2020034486
(32)【優先日】2020-02-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126572
【弁理士】
【氏名又は名称】村越 智史
(72)【発明者】
【氏名】若林 博孝
【審査官】古河 雅輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-023268(JP,A)
【文献】特開2008-085280(JP,A)
【文献】特開2015-053495(JP,A)
【文献】国際公開第2015/125621(WO,A1)
【文献】特開2008-263013(JP,A)
【文献】特開2021-125474(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/00 -21/12
H01F 27/00
H01F 27/02
H01F 27/06
H01F 27/08
H01F 27/23
H01F 27/26 -27/30
H01F 27/32
H01F 27/36
H01F 27/42
H01F 38/42
H01G 4/00 - 4/10
H01G 4/14 - 4/22
H01G 4/224
H01G 4/255- 4/40
H01G 13/00 -17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の金属磁性粒子及び樹脂製の結着材を含む基体と、
前記基体の表面に、前記表面のうちの第1面に接するように設けられた外部電極と、
前記外部電極と電気的に接続され、前記基体の内部においてコイル軸の周りに巻回され、一端及び他端が前記基体の前記第1面から露出している導体と、を備え、
前記外部電極は、前記第1面において前記基体と接する第1の電極層と、前記第1の電極層を覆う第2の電極層と、前記第2の電極層を覆うめっき層と、を有し、
前記第1の電極層及び前記第2の電極層のそれぞれは、複数のフィラー及び樹脂を含み、
前記第2の電極層における前記フィラーの体積の割合は、前記第1の電極層における前記フィラーの体積の割合より大きい、コイル部品。
【請求項2】
前記第1の電極層における樹脂の体積の割合は、前記第2の電極層における樹脂の体積割合より大きい、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記第1の電極層と前記基体との密着強度は、前記第2の電極層と前記基体との密着強度より高い、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記第1の電極層における樹脂の割合は、65vol%以下である、請求項1~3の何れか一項に記載のコイル部品。
【請求項5】
前記複数のフィラーは、金属材料によって構成されている、請求項1~4の何れか一項に記載のコイル部品。
【請求項6】
前記複数のフィラーは、球形状の第1のフィラーと、扁平形状の第2のフィラーと、を含み、
前記第1のフィラーのアスペクト比は2以下であり、前記第2のフィラーのアスペクト比は3以上である、請求項1~5の何れか一項に記載のコイル部品。
【請求項7】
前記第2の電極層における前記複数のフィラーのうち、前記第1のフィラーの割合は40vol%以上70vol%以下であり、前記第2のフィラーの割合は30vol%以上60vol%以下である、請求項6に記載のコイル部品。
【請求項8】
前記第2の電極層に含まれる前記複数のフィラーの少なくとも一部は、前記めっき層と金属結合している、請求項1~7の何れか一項に記載のコイル部品。
【請求項9】
前記めっき層は、前記第2の電極層と接触し、Niによって構成される第1のめっき層を含む、請求項1~8に記載のコイル部品。
【請求項10】
前記第1のめっき層は、前記第2の電極層の外面全体を覆っている、請求項9に記載のコイル部品。
【請求項11】
前記樹脂は、熱硬化性樹脂である、請求項1~10に記載のコイル部品。
【請求項12】
複数の金属磁性粒子及び樹脂製の結着材を含む基体と、
前記基体の表面に、前記表面のうちの第1面に接するように設けられた外部電極と、
前記外部電極と電気的に接続され、前記基体の内部においてコイル軸の周りに巻回され、一端及び他端が前記基体の前記第1面から露出している導体と、を備え、
前記外部電極は、複数の第1フィラー及び第1樹脂を含み、前記第1面において前記基体と接する第1の電極層と、前記第1の電極層を覆い複数の第2フィラー及び第2樹脂を含む第2の電極層と、前記第2の電極層を覆うめっき層と、を有し、
前記第1の電極層、前記第2の電極層、及び前記めっき層は、積層方向において積層されており、
前記積層方向に平行に延びる平面で切断した断面視において、前記第2の電極層の面積に対する前記第2フィラーの面積の割合は、前記第1の電極層の面積に対する前記第1フィラーの面積の割合より大きい、コイル部品。
【請求項13】
前記積層方向に平行に延びる平面で切断した断面視において、前記第1の電極層の面積に対する前記第1樹脂の面積の割合は、前記第2の電極層の面積に対する前記第2樹脂の面積の割合より大きい、請求項12記載のコイル部品。
【請求項14】
請求項1~13の何れか一項に記載のコイル部品を備える、回路基板。
【請求項15】
請求項14に記載の回路基板を備える、電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の開示は、コイル部品及びコイル部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のインダクタ等のコイル部品は、典型的に、磁性材料からなる磁性基体と、当該磁性基体内に設けられ、コイル軸の周りに巻回されている導体と、当該導体の端部に接続された外部電極と、を備える。このコイル部品は、例えばはんだを用いて外部電極と基板とを電気的に接続することによって実装され、様々な電子機器の部品として用いられる。従来のコイル部品は、例えば、特許文献1に開示されている。特許文献1のコイル部品の外部電極は、金属フィラー及び樹脂を含む導電性ペーストを熱処理することによって形成される電極層を含んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-120809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
金属フィラー及び樹脂を含む導電性ペーストを用いて電極層を形成する場合、当該電極層の上にめっき層を設けることが一般的である。電極層と基材との密着性を高める観点では、電極層に含まれる樹脂の比率を高めることが望ましい。しかしながら、電極層における樹脂の割合を高めると、電極層の上にめっき層を成長させる際に、当該めっき層に構造欠陥が形成されやすくなる。その結果、電極層とめっき層との密着強度が低下するおそれがある。
【0005】
本発明の目的の一つは、外部電極に含まれる電極層とめっき層との密着強度の向上を図ることが可能なコイル部品を提供することである。本発明のこれ以外の目的は、明細書全体の記載を通じて明らかにされる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態に係るコイル部品は、基体と、基体の表面に設けられた外部電極と、外部電極と電気的に接続され、コイル軸の周りに巻回されている導体と、を備え、外部電極は、第1の電極層と、第1の電極層を覆う第2の電極層と、第2の電極層を覆うめっき層と、を有し、第1の電極層及び第2の電極層のそれぞれは、複数のフィラー及び樹脂を含み、第2の電極層におけるフィラーの体積の割合は、第1の電極層におけるフィラーの体積の割合より大きい。
【0007】
本発明の一実施形態において、第1の電極層における樹脂の体積の割合は、第2の電極層における樹脂の体積の割合より大きくてもよい。
【0008】
本発明の一実施形態において、第1の電極層と基体との密着強度は、第2の電極層と基体との密着強度より高くてもよい。
【0009】
本発明の一実施形態において、第1の電極層における樹脂の割合は、65vol%以下であってもよい。
【0010】
本発明の一実施形態において、複数のフィラーは、金属材料によって構成されていてもよい。
【0011】
本発明の一実施形態において、複数のフィラーは、球形状の第1のフィラーと、扁平形状の第2のフィラーと、を含み、第1のフィラーのアスペクト比は2以下であり、第2のフィラーのアスペクト比は3以上であってもよい。
【0012】
本発明の一実施形態において、第2の電極層における複数のフィラーのうち、第1のフィラーの割合は40vol%以上70vol%以下であり、第2のフィラーの割合は30vol%以上60vol%以下であってもよい。
【0013】
本発明の一実施形態において、第2の電極層に含まれる複数のフィラーの少なくとも一部は、めっき層と金属結合していてもよい。
【0014】
本発明の一実施形態において、めっき層は、第2の電極層と接触し、Niによって構成される第1のめっき層を含んでもよい。
【0015】
本発明の一実施形態において、第1のめっき層は、第2の電極層の外面全体を覆っていてもよい。
【0016】
本発明の一実施形態において、樹脂は、熱硬化性樹脂であってもよい。
【0017】
本発明の一実施形態は、上記の何れかの電子部品を備える回路基板に関する。また、本発明の一実施形態は、上記の回路基板を備える電子機器に関する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、外部電極に含まれる電極層とめっき層との密着強度の向上を図ることが可能なコイル部品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係るコイル部品を模式的に示す斜視図である。
図2図1のコイル部品の磁性基体の断面を拡大して模式的に示す拡大断面図である。
図3図1のコイル部品の導体の一方の端部と外部電極との接合部分の周辺の断面を拡大して示す拡大断面図である。
図4図1のコイル部品の外部電極及び導体を示す断面図である。
図5図1のコイル部品の外部電極の断面の電子顕微鏡像の模式図である。
図6図1のコイル部品の基体と外部電極との接合部分の断面を模式的に示す拡大断面図である。
図7A】本発明コイル部品の外部電極の別の実施形態を模式的に示す断面図である。
図7B】本発明コイル部品の外部電極の別の実施形態を模式的に示す断面図である。
図8】本発明の別の実施形態に係るコイル部品を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、適宜図面を参照し、本発明の様々な実施形態を説明する。なお、複数の図面において共通する構成要素には、当該複数の図面を通して同一の参照符号が付されている。各図面は、説明の便宜上、必ずしも正確な縮尺で記載されているとは限らない点に留意されたい。
【0021】
図1を参照して、本発明の一実施形態に係るコイル部品1の概要を説明する。図1は、コイル部品1を模式的に示す斜視図である。図1に示されるように、コイル部品1は、基体10と、基体10の内部に設けられたコイル導体(導体)25と、基体10の表面に設けられた外部電極21と、基体10の表面において外部電極21から離間した位置に設けられた外部電極22と、を備える。
【0022】
本明細書においては、文脈上別と解される場合を除き、コイル部品1の「長さ」方向、「幅」方向及び「高さ」方向はそれぞれ、図1の「L軸」方向、「W軸」方向及び「T軸」方向とする。
【0023】
コイル部品1は、不図示の回路基板に実装される。この回路基板には、2つのランド部が設けられている。コイル部品1は、外部電極21,22と、当該外部電極21,22に対応するランド部とをそれぞれ接合することで回路基板に実装され得る。この回路基板が搭載され得る電子機器には、スマートフォン、タブレット、ゲームコンソール、及びこれら以外の様々な電子機器が含まれる。この回路基板は、電子機器の一種である自動車の電装品に搭載されてもよい。
【0024】
コイル部品1は、基体10の表面に外部電極21,22を有するインダクタ、トランス、フィルタ、リアクトル、及びこれら以外の様々なコイル部品に適用され得る。コイル部品1は、カップルドインダクタ、チョークコイル、及びこれら以外の様々な磁気結合型コイル部品にも適用することができる。コイル部品1の用途は、本明細書で明示されるものに限定されない。
【0025】
基体10は、絶縁材料で構成される。一実施形態において、基体10は主に磁性材料で構成され、直方体形状に形成されている。本発明の一実施形態に係るコイル部品1の基体10は、長さ寸法(L軸方向の寸法)が1.0mm~4.5mm、幅寸法(W軸方向の寸法)が0.5mm~3.2mm、高さ寸法(T軸方向の寸法)が0.5mm~5.0mmとなるように形成されている。基体10の寸法は、本明細書で具体的に説明される寸法には限定されない。本明細書において「直方体」又は「直方体形状」という場合には、数学的に厳密な意味での「直方体」のみを意味するものではない。
【0026】
基体10は、第1の主面10a、第2の主面10b、第1の端面10c、第2の端面10d、第1の側面10e、及び第2の側面10fを有する。基体10の外面は、これらの6つの面によって画定されている。第1の主面10aと第2の主面10bとはそれぞれ高さ方向両端の面を成し、第1の端面10cと第2の端面10dとはそれぞれ長さ方向両端の面を成し、第1の側面10eと第2の側面10fとはそれぞれ幅方向両端の面を成している。
【0027】
図1に示されるように、第1の主面10aは基体10の上側にあるため、第1の主面10aを「上面」と呼ぶことがある。同様に、第2の主面10bを「下面」と呼ぶことがある。コイル部品1は、第1の主面10aが回路基板と対向するように配置されるので、第1の主面10aを「実装面」と呼ぶこともある。コイル部品1の上下方向に言及する際には、図1の上下方向を基準とする。
【0028】
次に、図2を参照して磁性を持つ基体10について更に説明する。図2は、基体10の断面を拡大して模式的に示す拡大断面図である。図示のように、基体10は、複数の第1金属磁性粒子11、複数の第2金属磁性粒子12、及び結着材13を含む。結着材13は、複数の第1金属磁性粒子11及び複数の第2金属磁性粒子12を互いに結着させている。言い換えると、基体10は、結着材13並びに結着材13により結着されている複数の第1金属磁性粒子11及び複数の第2金属磁性粒子12によって構成されている。基体10は、磁性材料、または非磁性材料、または非磁性材料として誘電材料を含んでもよい。
【0029】
複数の第1金属磁性粒子11は、複数の第2金属磁性粒子12よりも大きな平均粒径を有する。すなわち、複数の第1金属磁性粒子11の平均粒径(以下、第1平均粒径と呼ぶ。)と、複数の第2金属磁性粒子12の平均粒径(以下、第2平均粒径と呼ぶ。)とは、異なっている。第1平均粒径は例えば30μmであり、第2平均粒径は例えば2μmであるが、それぞれ、これらと異なる平均粒径であってもよい。本発明の一の実施形態において、基体10は、第1平均粒径及び第2平均粒径と異なる平均粒径を有する不図示の複数の第3金属磁性粒子(以下、第3金属磁性粒子の平均粒径を第3平均粒径と呼ぶ。)を更に含んでもよい。第3平均粒径は第1平均粒径よりも小さく第2平均粒径より大きくても、第2平均粒径より小さくてもよい。以下の説明では、本明細書においては、第1金属磁性粒子11、第2金属磁性粒子12及び第3金属磁性粒子を互いに区別する必要がない場合には、磁性基体10に含まれる第1金属磁性粒子11、第2金属磁性粒子12及び第3金属磁性粒子を「金属磁性粒子」と総称することがある。
【0030】
第1金属磁性粒子11及び第2金属磁性粒子12は、様々な軟磁性材料から成る。第1金属磁性粒子11は、例えば、Feを主成分とする。具体的には、1金属磁性粒子11は、(1)Fe、Ni等の金属粒子、(2)Fe、Si、Crを含む合金、Fe、Si、Alを含む合金、Fe、Niを含む合金等の結晶合金粒子、(3)Fe、Si、Cr、B、Cを含む合金、Fe、Si、Cr、Bを含む合金等の非晶質合金粒子、又は(4)これらが混合された混合粒子である。磁性基体10に含まれる金属磁性粒子の組成は、前記のものに限られない。第1金属磁性粒子11は、例えば、Feを85wt%以上含む。これにより、優れた透磁率を有する磁性基体10を得ることができる。第2金属磁性粒子12の組成は、第1金属磁性粒子11の組成と同じであってもよいし異なっていてもよい。磁性基体10が不図示の複数の第3金属磁性粒子を含む場合、第3金属磁性粒子の組成は、第2金属磁性粒子12の組成と同様に、第1金属磁性粒子11の組成と同じであってもよいし異なっていてもよい。
【0031】
金属磁性粒子は、その表面を不図示の絶縁膜で被覆されていてもよい。例えば、この絶縁膜は、ガラス、樹脂又はこれら以外の絶縁性に優れた材料から形成されている。この絶縁膜は、例えば、第1金属磁性粒子11とガラス材料の粉末とを不図示の摩擦混合機内で混合することにより第1金属磁性粒子11の表面に形成される。ガラス材料から形成される絶縁膜は、摩擦混合機内において圧縮摩擦作用により第1金属磁性粒子11の表面に固着している。ガラス材料は、ZnO及びP25を含んでもよい。この絶縁膜は、様々なガラス材料から形成され得る。絶縁膜14は、ガラス粉に代えて又はガラス粉に加えて、アルミナ粉、ジルコニア粉又はこれら以外の絶縁性に優れた酸化物の粉末から形成されてもよい。絶縁膜の厚さは、例えば100nm以下とされる。
【0032】
第2金属磁性粒子12は、第1金属磁性粒子11の絶縁膜と異なる絶縁膜で被覆されていてもよい。この絶縁膜は、第2金属磁性粒子12が酸化してできる酸化膜であってもよい。この絶縁膜の厚さは、例えば20nm以下とされる。この絶縁膜は、大気中雰囲気にて第2金属磁性粒子12を熱処理することで、第2金属磁性粒子12の表面に形成される酸化膜であってもよい。この絶縁膜は、Fe及びこれ以外の第2金属磁性粒子12に含有される元素の酸化物を含む酸化膜であってもよい。この絶縁膜は、第2金属磁性粒子12をリン酸へ投入して攪拌することにより、第2金属磁性粒子12の表面に形成されるリン酸鉄膜であってもよい。第1金属磁性粒子11の絶縁膜は第1金属磁性粒子11が酸化してできる酸化膜であってもよく、第2金属磁性粒子12の絶縁膜は第2金属磁性粒子12の酸化によらず、別途設けられる被覆膜としてもよい。
【0033】
結着材13は、例えば、絶縁性に優れた熱硬化性樹脂である。結着材13には、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリスチレン(PS)樹脂、高密度ポリエチレン(HDPE)樹脂、ポリオキシメチレン(POM)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリフッ化ビニルデン(PVDF)樹脂、フェノール(Phenolic)樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、又はポリベンゾオキサゾール(PBO)樹脂が用いられ得る。また、結合材13としてガラス等を用いてもよく、結合剤13は絶縁フィラー等を含んでもよい。
【0034】
導体25は、所定のパターンを有するように形成されている。図示の実施形態では、導体25は、コイル軸Axの周りに巻回されている(図1参照)。導体25は、例えば、平面視において、楕円形状、ミアンダ形状、直線形状、又はこれらを組み合わせた形状を有する。導体25は、任意の形状を有していて良く、例えばスパイラル形状であってもよい。
【0035】
導体25は、Cu、Ag、又はこれら以外の導電性材料から形成されている。導体25は、端面25a2及び端面25b2以外の表面の全域が絶縁膜に覆われていてもよい。図示のように導体25がコイル軸Axの周りに複数ターン巻回されている場合には、導体25の各ターンは、隣接する他のターンと離間していてもよい。この場合、隣接するターン同士の間には基体10が介在している。
【0036】
導体25は、その一方の端部に引出導体25a1を有し、その他方の端部に引出導体25b1を有する。引出導体25a1の端部には端面25a2が形成され、引出導体25b1の端部には端面25b2が形成されている。導体25の一方の端部である引出導体25a1は外部電極21と電気的に接続され、導体25の他方の端部である引出導体25b1は外部電極22と電気的に接続されている。
【0037】
本発明の一実施形態において、外部電極21は、基体10の第1の主面10a、第2の主面10b、第1の端面10d、第1の側面10e、及び第2の側面10fの一部に設けられている。外部電極22は、基体10の第1の主面10a、第2の主面10b、第2の端面10c、第1の側面10e、及び第2の側面10fの一部に設けられている。外部電極21と外部電極22とは、互いに離間して配置されている。各外部電極21、22の形状及び配置は、図示された例には限定されない。引出導体25a1及び引出導体25b1は、それぞれ基体10の第1の主面(すなわち、実装面)10aに引き出されており、引出導体25a1の端面25a2及び引出導体25b1の端面25b2は第1の主面10aにおいて基体10から露出する。すなわち、引出導体25a1の端面25a2及び引出導体25b1の端面25b2は、同一の面において基体10から露出する。引出導体25a1の端面25a2及び引出導体25b1の端面25b2は、互いに異なる面において基体10から露出していてもよい。
【0038】
次に、図3図4、及び図5を参照して、本発明の一実施形態に係るコイル部品1の外部電極について詳細に説明する。図3は、図1のコイル部品1の導体25の一方の端部と外部電極21との接合部分の周辺の断面を拡大して示す拡大断面図である。図4は、コイル部品1の外部電極21及び導体25を示す断面図である。図5は、図1のコイル部品の外部電極の断面の電子顕微鏡像の模式図である。以下の説明では、外部電極21について説明するが、特段の事情がない限り外部電極21の説明は外部電極22にも援用される。また、図3図5は外部電極21を説明する図であるが、外部電極22についても援用される。図3図5に示されるように、外部電極21は、金属膜23と、電極層24と、めっき層26と、を有する。金属膜23、電極層24、及びめっき層26は、基体10のうち導体25の一方の端部(すなわち、端面25a2)が露出する第1の主面10aに、この順に積層されている。積層方向は、基体10の表面のうち導体25の一方の端部(すなわち、端面25a2)が露出する面(図示の例では、第1の主面10a)に垂直な方向に延びる。図3から図5はいずれも、この積層方向に沿ってコイル部品1を切断した断面を示している。
【0039】
金属膜23は、第1の主面10a及び導体25の一方の端部に接するように設けられる。金属膜23は、例えばスパッタ膜であり、金属膜23と導体25の一方の端部(すなわち、端面25a2)との少なくとも一部は、金属結合によって接続されている。ここで、「少なくとも一部」とは、端面25a2の何れかの領域を意味する。例えば、金属膜23と端部25a1とは、端面25a2の周縁PP(図3参照)において金属結合によって接続されていてもよい。図3は、端面25a2の全面において、金属膜23と導体25の端部25a1とが金属結合により接続されている例を示している。図3の例では、金属膜23と端部25a1とは、端面25a2の周縁PPにおいても金属結合している。
【0040】
金属膜23の材料は、例えば、Ag、Au、Pd、Pt、Cu、Ni、Ti、Ta等の金属、又はこれらの合金である。金属膜23に用いられる金属は、酸化しにくい金属、又は酸化しても容易に還元可能な金属が好ましい。また、金属膜23には、体積抵抗率が低い材料が用いられることが好ましい。金属膜23の厚みは特に限定されないが、例えば0.5μm以上5μm以下とすることができる。金属膜23に含まれる金属の主成分のイオン化傾向は、導体25を構成する金属のイオン化傾向よりも小さいことが好ましい。ここで、「金属膜23に含まれる金属の主成分」とは、金属膜23を構成する金属のうち重量%で金属種の過半を占める金属の成分をいう。金属膜23に含まれる金属の種類が一種類であれば、主成分とはその金属の成分をいう。一例として、導体25を構成する材料がCuである場合、金属膜23に含まれる金属はAgとすることができる。
【0041】
金属膜23に含まれる金属粒子のアスペクト比の平均は、0.8以上1.5以下である。ここで、金属粒子のアスペクト比とは、境界面BIに水平な方向における金属膜23に含まれる一の金属粒子の寸法をa、境界面BIに垂直な方向における当該一の金属粒子の寸法をbとした場合のb/aの値のことをいう。金属粒子のアスペクト比の平均は、例えば、5個、10個等の複数個の金属粒子の各アスペクト比の平均値とすることができる。金属膜23に含まれる金属粒子同士は、金属結合している。
【0042】
電極層24は、金属膜23の上に設けられており、導体25の一方の端部と電気的に接続されている。電極層24は、積層方向において積層された複数の層を有する。図示の実施形態において、電極層24は、第1の電極層24Aと、第1の電極層24Aを覆う第2の電極層24Bと、を有している。第2の電極層24Bは、積層方向において、第1の電極層24Aに対して金属膜23と反対側に設けられている。図示の実施形態では、第1の電極層24Aは、金属膜23及び基体10の主面10aの一部を覆うように形成されている。第1の電極層24Aは、金属膜23の少なくとも一部を覆うように形成されればよい。この場合、第1の電極層24Aは、基体10の主面10aの一部を覆うように形成されていてもよく、基体10の主面10aを覆わないように形成されていてもよい。第2の電極層24Bは、第1の電極層24Aの外面全体(すなわち、金属膜23及び基体10と接触していない面)、並びに、基体10の第2の主面10b、第1の端面10d、第1の側面10e、及び第2の側面10fの一部を覆うように形成されている。外部電極22に含まれる第2の電極層24Bは、第1の電極層24Aの外面全体(すなわち、金属膜23及び基体10と接触していない面)、並びに、基体10の第2の主面10b、第2の端面10c、第1の側面10e、及び第2の側面10fの一部を覆うように形成されている。第1の電極層24Aの厚さは、例えば10μm~20μm程度であり、第2の電極層24Bの厚さは、例えば20μm~30μm程度である。第1の電極層24Aと第2の電極層24Bとの界面は、第1の電極層24Aに含まれる樹脂Rと第2の電極層24Bに含まれる樹脂Rとの境界とすることができる。第1の電極層24Aに含まれる樹脂Rと第2の電極層24Bに含まれる樹脂Rとの境界は、例えば光学顕微鏡を用いて観察することで確認できる。
【0043】
電極層24(すなわち、第1の電極層24A及び第2の電極層24B)は、複数のフィラーF及び樹脂Rを含んでいる。以下の説明では、第1の電極層24Aに含まれるフィラーをフィラーFA、第2の電極層24Bに含まれるフィラーをフィラーFB、第1の電極層24Aに含まれる樹脂をRA、第2の電極層24Bに含まれる樹脂をRBとして説明する。第2の電極層24BにおけるフィラーFBの体積の割合は、第1の電極層24AにおけるフィラーFAの体積の割合より大きい。本発明の一又は複数の実施形態において、第1の電極層24AにおけるフィラーFBの体積と第2の電極層24BにおけるフィラーFBの体積の大小は、積層方向に沿って延びる平面(つまり、積層方向に平行に延びる平面。)で外部電極21を切断した切断面において、第1の電極層24Aの面積に対するフィラーFAの面積の割合と第2の電極層24Bの面積に対するフィラーFBの面積の割合を比較することにより決定することができる。すなわち、第2の電極層24Bの面積に対するフィラーFBの面積の割合が第1の電極層24Aの面積に対するフィラーFAの面積の割合より大きい場合に、第2の電極層24BにおけるフィラーFBの体積の割合は、第1の電極層24AにおけるフィラーFAの体積の割合より大きい。第1の電極層24Aの面積は、第1の電極層24Aに含まれるフィラーFAの面積と樹脂RAの面積の合計を意味する。第2の電極層24Bの面積は、第2の電極層24Bに含まれるフィラーFBの面積と樹脂RBの面積の合計を意味する。積層方向に沿って延びる平面(つまり、積層方向に平行に延びる平面。)で外部電極21を切断した切断面における第1の電極層24A、第2の電極層24B、フィラーFA、フィラーFB、樹脂RA、及び樹脂RBの面積は、当該切断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により撮像して得られるSEM写真において画像処理を行うことにより測定することができる。第1の電極層24Aに含まれるフィラーFAは、複数の第1のフィラーFA1と、複数の第2のフィラーFA2とを含む。同様に、第2の電極層24Bに含まれるフィラーFBは、複数の第1のフィラーFB1と、複数の第2のフィラーFB2とを含む。複数の第1のフィラーFA1、FB1のそれぞれは球形状であり、そのアスペクト比は2以下である。複数の第2のフィラーFA2、FB2のそれぞれは扁平形状であり、そのアスペクト比は3以上である。本明細書中において、アスペクト比とは、電極層24の厚さ方向の断面におけるフィラーFの長軸方向の寸法に対する短軸方向の寸法の比(すなわち、最大粒径を最小粒径で除算した値)をいう。電極層24の厚さ方向の断面において、第2のフィラーFA2、FB2の最大粒径の平均は、第1のフィラーFA1、FB1の最大粒径の平均より大きくなっている。第1のフィラーFFA1、FB1の最大粒径の平均は、例えば1μm~10μmであり、第2のフィラーFA2、FB2の最大粒径の平均は、例えば0.1μm~10μmである。第1の電極層24Aにおける複数のフィラーFAのうち、第1のフィラーFA1の割合は30vol%以上70vol%以下であり、第2のフィラーFA2の割合は30vol%以上70vol%以下である。第2の電極層24Bにおける複数のフィラーFBのうち、第1のフィラーFB1の割合は40vol%以上70vol%以下であり、第2のフィラーFB2の割合は30vol%以上60vol%以下である。
【0044】
第1のフィラーFA1、FB1及び第2のフィラーFA2、FB2は、例えばAg、Cu、Au、Pd、又はNi等の導電性に優れた金属材料によって構成される。あるいは、第1のフィラーFA1、FB1及び第2のフィラーFA2、FB2の材料として、AgPd、黄銅、又は青銅のような合金を用いることもできる。第1のフィラーFA1、FB1及び第2のフィラーFA2、FB2は、Agのような低抵抗金属の皮膜で被覆された金属フィラーであってもよい。また、第1のフィラーFA1、FB1及び第2のフィラーFA2、FB2は、同じ成分の金属を含んでいる。図示の実施形態では、第1のフィラーFA1、FB1及び第2のフィラーFA2、FB2は、共にAgによって構成されている。第1のフィラーFA1、FB1と第2のフィラーFA2、FB2とは、互いに異なる金属を含んでいてもよく、互いに異なる金属のみによって構成されていてもよい。また、第1の電極層24Aに含まれる第1のフィラーFA1と第2の電極層24Bに含まれる第1のフィラーFB1とは、互いに異なる金属を含んでいてもよく、互いに異なる金属のみによって構成されていてもよい。第1の電極層24Aに含まれる第2のフィラーFA2と第2の電極層24Bに含まれる第2のフィラーFB2とは、互いに異なる金属を含んでいてもよく、互いに異なる金属のみによって構成されていてもよい。第1のフィラーFA1、FB1と第2のフィラーFA2、FB2とが互いに異なる金属を含む場合においても第1のフィラーFA1、FB1と第2のフィラーFA2、FB2とは金属結合し、第1のフィラーFA1、FB1と第2のフィラーFA2、FB2との結合部は合金化する。この場合、第1のフィラーFA1、FB1に含まれる金属と第2のフィラーFA2、FB2に含まれる金属との組み合わせは、同種の金属間における金属結合よりも結合強度が強くなる組み合わせを選択することが好ましい。異なる金属の組み合わせによる合金の結合強度については、公知の文献をもっても明らかに出来る。
【0045】
第1の電極層24A及び第2の電極層24Bの第1のフィラーFA1、FB1及び第2のフィラーFA2、FB2は、コイル部品1の製造過程おいて熱処理されている。これにより、第1のフィラーFA1、FB1及び第2のフィラーFA2、FB2は、互いに金属結合している。また、第1の電極層24A及び第2の電極層24Bは、第2のフィラーFA2、FB2同士が、当該第2のフィラーFA2、FB2の長軸同士が互いに平行な状態で金属結合している部分を含んでいてもよい。第1の電極層24A及び第2の電極層24Bは、第1のフィラーFA1、FB1同士が金属結合している部分を含んでいてもよい。第1の電極層24Aと金属膜23との界面において、第2のフィラーFA2は金属膜23と金属結合している。これにより、第1の電極層24Aと金属膜23とは電気的に接続されている。また、第2の電極層24Bとめっき層26との界面において、第2のフィラーFB2はめっき層26と金属結合している。第2のフィラーFB2の長軸方向は、電極層24の厚さ方向と垂直な方向に対して略平行である。これにより、第2の電極層24Bとめっき層26とは電気的に接続されている。同様に、第1の電極層24Aの第1のフィラーFA1は金属膜23と金属結合していてもよい。第2の電極層24Bの第1のフィラーFB1はめっき層26と金属結合していてもよい。
【0046】
第1の電極層24A及び第2の電極層24Bに含まれる樹脂RA,RBは、例えば熱硬化性樹脂である。熱硬化性樹脂としては、一般的に接着用途等に使用される熱硬化性樹脂を用いることができ、例えばエポキシ樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、シアネート樹脂、アミノ樹脂、オキセタン樹脂、シリコーン変性有機樹脂、ポリイミド樹脂、マレイミド樹脂、及びBT(ビスマレイミド・トリアジン)樹脂等が挙げられる。第1の電極層24Aに含まれる樹脂及び第2の電極層24Bに含まれる樹脂は、2種類以上の熱硬化性樹脂を含んでいてもよい。第1の電極層24Aに含まれる樹脂RAと第2の電極層24Bに含まれる樹脂RBとは、互いに同種類であってもよいし、互いに異なっていてもよい。本発明の一又は複数の実施形態において、第1の電極層24Aにおける樹脂RAの体積の割合は、第2の電極層24Bにおける樹脂RBの体積の割合より大きい。第1の電極層24Aにおける樹脂RAの体積と第2の電極層24Bにおける樹脂RBの体積の大小は、積層方向に沿って延びる平面で外部電極21を切断した切断面において、第1の電極層24Aの面積に対する樹脂RAの面積の割合と第2の電極層24Bの面積に対する樹脂RBの面積の割合を比較することにより決定することができる。すなわち、第1の電極層24Aの面積に対する樹脂RAの面積の割合が第2の電極層24Bの面積に対する樹脂RBの面積の割合より大きい場合に、第1の電極層24Aにおける樹脂RAの体積の割合は、第2の電極層24Bにおける樹脂RBの体積の割合より大きい。これにより、第1の電極層24Aと基体10との密着強度は、第2の電極層24Bと基体10との密着強度より高くなっている。第1の電極層24Aにおける樹脂RAの割合は、65vol%以下である。第1の電極層24Aにおける樹脂RAの割合は30vol%~65vol%であることが好ましい。さらに、第1の電極層24Aにおける樹脂RAの割合は65vol%より小さいことがより好ましい。第2の電極層24Bにおける樹脂RBの割合は、60vol%以下である。第2の電極層24Bにおける樹脂RBの割合は25vol%~60vol%であることが好ましい。さらに、第2の電極層24Bにおける樹脂RBの割合は55vol%より小さいことがより好ましい。
【0047】
第1の電極層24Aは、第1のフィラーFA1となる第1の金属粒子と、第2のフィラーFA2となる第2の金属粒子と、未硬化の樹脂とを含む第1の導電性ペーストから形成される。第2の電極層24Bは、第1のフィラーFB1となる第1の金属粒子と、第2のフィラーFB2となる第2の金属粒子と、未硬化の樹脂とを含む第2の導電性ペーストから形成される。第1の導電性ペーストと第2の導電性ペーストとでは、第1の金属粒子及び第2の金属粒子の含有率が異なっている。第1の金属粒子及び第2の金属粒子は、それぞれ、コイル部品1の製造過程における熱処理によって金属結合される前の第1のフィラーFA1、FB1及び第2のフィラーFA2、FB2である。第2の金属粒子のそれぞれは扁平形状であり、当該第2の金属粒子の長軸方向の両端部Eにおいて、第2の金属粒子の外形の曲率は最小となる。第2の金属粒子の最小曲率半径(すなわち、第2の金属粒子の長軸方向の端部の曲率)の平均は、第1の金属粒子の0.5μm以下である。一例として、第2の金属粒子の最小曲率半径は、0.1μm以下である。図5においては、熱処理によって金属結合された第2のフィラーFA2、FB2の端部を第2の金属粒子の端部Eとして示している。図5では金属結合された第2のフィラーFA2、FB2の端部の境界を模式的に示している。第2のフィラーFA2、FB2の端部の境界は、例えば、第2のフィラーFA2、FB2を含む電極層24の断面を電子顕微鏡を用いて50000倍で観察することで確認できる。実際の観察においては第2のフィラーFA2、FB2の端部の境界を明確に観察できない場合もある。例えば、第2のフィラーFA2、FB2の端部が他の第1のフィラーFA1、FB1もしくは第2のフィラーFA2、FB2と結合している場合、境界を明確に観察できないことがある。この場合、電子顕微鏡で観察される第2のフィラーFA2、FB2の内部の結晶粒子の境界を、第2のフィラーFA2、FB2の境界としてもよい。第2のフィラーFA2、FB2の内部の結晶粒子の境界を明確に観察できない場合には、明確に観察できない第2のフィラーFA2、FB2の端部以外の部分の形状から、任意の公知の推定方法によって推定される曲線を第2のフィラーFA2、FB2の端部の境界としてもよい。
【0048】
めっき層26は、第2の電極層24Bの上に設けられている。めっき層26は、第2の電極層24Bの外面全体(すなわち、第1の電極層24A及び基体10と接触していない面)を覆っている。図示の実施形態では、めっき層26は多層構造を有しており、第2の電極層24Bと接触する第1のめっき層26Aと、第1のめっき層26Aの上に設けられた第2のめっき層26Bとを有している。第1のめっき層26Aの厚さは、例えば5μm~7μmであり、第2のめっき層26Bの厚さは、例えば5μm~10μmである。第1のめっき層26Aは例えばNiから構成されており、第2のめっき層26Bは例えばSnから構成されている。第1のめっき層26Aは、Ni以外にも、はんだ付け時の熱処理に対して耐食性を示すバリア層になる金属もしくは合金から構成されていてもよい。第2のめっき層26Bは、Sn以外にも、はんだ濡れ性が良好な金属もしくは合金から構成されていてもよい。めっき層26は、Ni等又はSn等からなる単層のめっき層であってもよい。
【0049】
図6は、コイル部品1の基体10と外部電極21との接合部分の断面を拡大して示す断面図である。図6に示されるように、基体10の表面は、第1金属磁性粒子11及び/又は第2金属粒子12の脱粒によって生じた複数の凹凸を有している。これにより、基体10と第1の電極層24Aとの界面は複数の凹凸を有しており、アンカー効果により基体10と第1の電極層24Aとが結合している。同様に、第1の電極層24Aと第2の電極層24Bとの界面、第2の電極層24Bと第1のめっき層26Aとの界面、及び第1のめっき層26Aと第2のめっき層26Bとの界面もそれぞれ複数の凹凸を有しており、第1の電極層24Aと第2の電極層24B、第2の電極層24Bと第1のめっき層26A、第1のめっき層26Aと第2のめっき層26Bのそれぞれは、アンカー効果によって互いに結合している。これにより、外部電極21,22全体の強度向上が図られている。
【0050】
次に、本発明の一実施形態に係るコイル部品1の製造方法について説明する。まず、金属材料等によってコイル状に形成された導体25と、第1金属磁性粒子11及び第2金属磁性粒子12を含む粒子群と樹脂等からなる結着剤13とを混練して作製された混合樹脂組成物と、を成形金型に入れて、導体25の引出導体25a1の端面25a2、及び、引出導体25b1の端面25b2が、表面に露出するように圧縮成形する。コイル状に形成された導体25は、例えば、導線をスパイラル状に巻線して形成されたものを用いるが、巻線以外には、平面コイルとしてもよく、特にコイル形状を制限するものではない。導体25は絶縁被覆を有することもできる。成形体中の樹脂を硬化することで、導体25が埋め込まれた基体10が得られる。
【0051】
次に、導体25の引出導体25a1の端面25a2、及び、引出導体25b1の端面25b2が露出した磁性基体10の表面を平滑化し、酸化物を取り除く。ここでは、研磨剤を用いて研磨してから、プラズマエッチングを行った。この研磨剤の粒径としては、第1金属磁性粒子11より小さい粒径のものを用いることが好ましい。例えば、第1金属粒子11の平均粒径が30μmであれば、25μmの粒径が選ばれる。エッチングは、例えばプラズマエッチングなど、磁性基体の表面の酸化物を除去することができる方法であればよい。
【0052】
次に、金属膜23を形成する。金属膜23を形成する方法としては、例えば、スパッタリング堆積法、特には高密度スパッタリング堆積法がある。高密度スパッタリング堆積法とは、大電力を短時間のみかけることで、スパッタ膜が高温になることを防止しながら、緻密な膜を得る方法である。スパッタ時に試料を冷却することにより、さらに大電力をかけることができるようになりさらに緻密なスパッタ膜を得ることができる。この方法により上記の金属を用いれば、スパッタリング収率が高く、金属膜23を効率よく形成することができる。本明細書では、スパッタリング堆積法により形成された金属膜をスパッタ膜という。金属膜23の形成方法は、導体25の端面25a2と金属膜23とを金属結合させることができれば、スパッタリング堆積法以外の方法により金属膜23を形成してもよい。
【0053】
次に、金属膜23の上に電極層24を形成する。電極層24の形成には、まず、第1の電極層24Aを形成する。第1の電極層24Aの形成には、まず、第1のフィラーFA1となる第1の金属粒子と、第2のフィラーFA2となる第2の金属粒子とを含む第1の導電性ペーストを準備する。次に、印刷法等により第1の導電性ペーストの層を形成する。次に、熱処理等により、第1の導電性ペーストの層に含まれる第1の金属粒子及び第2の金属粒子を金属結合させる。一例として、熱処理は、170℃~250℃、30分~60分の条件で行われる。また、第1のフィラーFA1及び第2のフィラーFA2の材質によっては、低酸素又は還元雰囲気で熱処理を行う。次に、第1の電極層24Aの上に第2の電極層24Bを形成する。第2の電極層24Bの形成には、印刷法等により、第1のフィラーFB1となる第1の金属粒子と、第2のフィラーFB2となる第2の金属粒子とを含む第2の導電性ペーストの層を形成する。次に、熱処理等により、第2の導電性ペーストの層に含まれる第1の金属粒子及び第2の金属粒子を金属結合させる。第2の導電性ペーストに対する熱処理は、例えば第1の導電性ペーストに対する熱処理と同様の条件で行われる。この工程により、金属膜23を介して導体25の端部と電気的に接続される電極層24が形成される。
【0054】
最後に、めっき法により、第1のめっき層26A及び第2のめっき層26Bを形成する。以上の工程により、外部電極21、22が形成され、コイル部品1が製造される。製造されたコイル部品1は、外部電極21、22がそれぞれ回路基板のランド部にはんだ接合されることで、回路基板に実装される。
【0055】
以上説明したように、コイル部品1の外部電極21,22は、第1の電極層24Aと、第1の電極層24Aを覆う第2の電極層24Bと、第2の電極層24Bを覆うめっき層26と、を有し、第2の電極層24BにおけるフィラーFBの体積の割合は、第1の電極層24AにおけるフィラーFAの体積の割合より大きい。一般に、電極層24と基材10との密着性を高める観点では、電極層24に含まれる樹脂Rの割合を高めることが望ましい。しかしながら、電極層24における樹脂Rの割合を高めると、電極層24の上にめっき層26を成長させる際に、当該めっき層26に構造欠陥が形成されやすくなり、電極層24とめっき層26との密着強度が低下するおそれがある。本発明の一実施形態に係るコイル部品1では、基体10と接触する第1の電極層24AにおけるフィラーFAの体積の割合を相対的に小さく(すなわち、樹脂RAの体積の割合を相対的に大きく)することにより、基体10との密着強度を確保している。一方、めっき層26と接触する第2の電極層24BにおけるフィラーFBの体積の割合を相対的に大きく(すなわち、樹脂RBの体積の割合を相対的に小さく)することにより、第2の電極層24Bの上にめっき層26を成長させる際に構造欠陥が形成されることを抑制できる。したがって、電極層24と基体10との密着強度を確保しつつ、電極層24とめっき層26との密着強度の向上を図ることができる。
【0056】
電極層24の複数のフィラーFA,FBは、球形状の第1のフィラーFA1、FB1と、扁平形状の第2のフィラーFA2、Fb2と、を含み、第1のフィラーFA1、FB1のアスペクト比は2以下であり、第2のフィラーFA2、FB2のアスペクト比は3以上であってもよい。第2のフィラーFA2、FB2のそれぞれが扁平形状であることにより、第2のフィラーFA2、FB2の長軸方向の両端部Eにおける曲率は小さく、長軸方向の中央部における曲率は大きくなっている。このため、第2のフィラーの長軸方向の両端部Eにおいては熱処理を行うことによる金属結合に必要なエネルギーが小さく、第2のフィラーの長軸方向の中央部においては熱処理を行うことによる金属結合に必要なエネルギーが大きい。したがって、第2のフィラーの長軸方向の両端部Eにおいては金属結合による結合が進行しやすく、第2のフィラーの長軸方向の中央部においては金属結合による結合が進行しにくい。よって、第2のフィラーFA2,FB2の長軸方向の両端部Eによって電気的な接続を確保しつつ、熱処理を行うことによる金属結合に伴う第1のフィラーFA1、FB1及び第2のフィラーFA2、FB2の凝集を抑制することができる。その結果、電極層24内において第1のフィラーFA1、FB1及び第2のフィラーFA2、FB2が偏在することが抑制され、外部電極21、22の強度低下を抑制することができる。
【0057】
第2の電極層24Bにおける複数のフィラーFBのうち、第1のフィラーFB1の割合は40vol%以上70vol%以下であり、第2のフィラーFB2の割合は30vol%以上60vol%以下であってもよい。これにより、第2の電極層24BのフィラーFBと樹脂RBの分散状態において、樹脂RBは、第1のフィラーFB1と第2のフィラーFB2からなるフィラーFBの凝集体の間を充填しつつ、樹脂RBの偏析を抑制することができる。特に、めっき層26と第2の電極層24Bとの接合界面付近での樹脂RBの偏析を抑制することができる。
【0058】
第2の電極層24Bに含まれる複数のフィラーFの少なくとも一部は、めっき層26と金属結合していてもよい。これにより、めっき層26と第2の電極層24Bとの間における電気抵抗の低下を図ることができる。
【0059】
次に、図7A及び図7Bを参照して、コイル部品1の外部電極21,22の別の実施形態について説明する。図7A及び図7Bは、コイル部品1の外部電極の別の実施形態を模式的に示す断面図である。図7Aに示されるように、別の実施形態に係る外部電極121は、基体10の第1の主面10aの一部のみに設けられていてもよい。この場合、外部電極121の第2の電極層24Bの外面のみを覆っている。また、図7Bに示されるように、別の実施形態に係る外部電極221は、基体10の第1の主面10a及び第1の端面10dの一部のみに設けられていてもよい。この場合、外部電極221の第2の電極層24Bの外面及び第1の端面10dの一部を覆うように形成される。
【0060】
次に、図8を参照して本発明の別の実施形態のコイル部品100について説明する。図8は、コイル部品100を模式的に示す斜視図である。図示のように、コイル部品100は、コイル部品1と同様に、基体10内にコイル導体25と、基体10の表面に設けられた外部電極21と、基体10の表面において外部電極21から離間した位置に設けられた外部電極22と、を備える。コイル部品100は、基体10内に設けられた絶縁板50を備え、導体25が絶縁板50の上面及び下面に設けられている点でコイル部品1と相違している。
【0061】
コイル部品100の外部電極21,22も、コイル部品1と同様に、第1の電極層24Aと、第1の電極層24Aを覆う第2の電極層24Bと、第2の電極層24Bを覆うめっき層26と、を有し、第2の電極層24BにおけるフィラーFの体積の割合は、第1の電極層24AにおけるフィラーFの体積の割合より大きい。したがって、コイル部品1と同様の理由により、電極層24と基体10との密着強度を確保しつつ、電極層24とめっき層26との密着強度の向上を図ることができる。
【0062】
前述の様々な実施形態で説明された各構成要素の寸法、材料及び配置は、それぞれ、各実施形態で明示的に説明されたものに限定されず、当該各構成要素は、本発明の範囲に含まれ得る任意の寸法、材料及び配置を有するように変形することができる。また、本明細書において明示的に説明していない構成要素を、上述の各実施形態に付加することもできるし、各実施形態において説明した構成要素の一部を省略することもできる。
【0063】
例えば、コイル部品1及びコイル部品100の外部電極21、22は、金属膜23を有していなくてもよい。この場合、電極層24と導体25の端部とは直接接続されていてもよい。
【符号の説明】
【0064】
1,100…コイル部品、10…磁性基体、21…外部電極、22…外部電極、23…金属膜、24…電極層、24A…第1の電極層、24B…第2の電極層、FA1,FB1…第1のフィラー、FA2,FB2…第2のフィラー、RA,RB…樹脂、25…導体、26…めっき層、26A…第1のめっき層、26B…第2のめっき層。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8