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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-25
(45)【発行日】2024-10-03
(54)【発明の名称】橋面測量システム及び橋面測量方法
(51)【国際特許分類】
   E01D 21/10 20060101AFI20240926BHJP
   E01D 21/00 20060101ALI20240926BHJP
   G01C 15/00 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
E01D21/10
E01D21/00 B
G01C15/00 103A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020192390
(22)【出願日】2020-11-19
(65)【公開番号】P2022081079
(43)【公開日】2022-05-31
【審査請求日】2023-11-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000148346
【氏名又は名称】株式会社錢高組
(73)【特許権者】
【識別番号】591284601
【氏名又は名称】株式会社演算工房
(74)【代理人】
【識別番号】100095452
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 博樹
(72)【発明者】
【氏名】角田 晋相
(72)【発明者】
【氏名】細野 順平
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 祐蔵
(72)【発明者】
【氏名】林 稔
(72)【発明者】
【氏名】岡本 剛司
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-033762(JP,A)
【文献】特開2004-170164(JP,A)
【文献】特開平05-079841(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 1/00-24/00
G01C 1/00- 1/14
G01C 5/00-15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋梁上の移動作業車の存在領域であって施工ブロックの上面を見渡せるところに配置されるトータルステーションと、
橋梁の柱頭部に配置される第1既知点と、
前記トータルステーションの視準可能位置に配置される第2既知点と、
前記トータルステーションによる測量を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記トータルステーションによる前記第1既知点及び第2既知点の位置情報の検出結果に基づいて該トータルステーションの3次元の自己位置(X,Y,Z)を特定し、
前記自己位置を特定した状態のトータルステーションによって前記移動作業車の存在領域にある施工ブロックの上面に関する測量を実行する、
ことを特徴とする橋面測量システム
【請求項2】
請求項1に記載された橋面測量システムにおいて、
前記第2既知点は、橋梁の前記柱頭部からの張出し方向に位置する完成ブロックに配置され、
前記制御部は、
前記トータルステーションによる前記第1既知点及び第2既知点の位置情報の検出結果に基づいて該トータルステーションの水平方向における2次元の位置(X,Y)を求め、更に前記第1既知点の位置情報の検出結果に基づいて該トータルステーションの鉛直方向における位置(Z)を求めることで該トータルステーションの3次元の自己位置(X,Y,Z)を特定する、
ことを特徴とする橋面測量システム。
【請求項3】
請求項2に記載された橋面測量システムにおいて、
前記第2既知点は、前記完成ブロックの出来形高さの測量点である、
ことを特徴とする橋面測量システム。
【請求項4】
請求項1に記載された橋面測量システムにおいて、
前記第2既知点は、橋梁の橋面から離れた位置に配置される、
ことを特徴とする橋面測量システム。
【請求項5】
橋梁上の移動作業車の存在領域であって施工ブロックの上面を見渡せるところにトータルステーションを配置し、
橋梁の柱頭部に第1の既知点を配置し、
前記トータルステーションの視準可能位置に第2の既知点を配置し、
前記トータルステーションによる前記第1既知点及び第2既知点の位置情報の検出結果に基づいて該トータルステーションの3次元の自己位置(X,Y,Z)を特定し、前記自己位置を特定した状態のトータルステーションによって前記移動作業車の存在領域にある施工ブロックの上面に関する測量を実行する、
ことを特徴とする橋面測量方法。
【請求項6】
請求項5に記載された橋面測量方法において、
前記第2既知点は、橋梁の前記柱頭部からの張出し方向に位置する完成ブロックに配置され、
前記トータルステーションによる前記第1既知点及び第2既知点の位置情報の検出結果に基づいて該トータルステーションの水平方向における2次元の位置(X,Y)を求め、更に前記第1既知点の位置情報の検出結果に基づいて該トータルステーションの鉛直方向における位置(Z)を求めることで該トータルステーションの3次元の自己位置(X,Y,Z)を特定する、
ことを特徴とする橋面測量方法。
【請求項7】
請求項5に記載された橋面測量方法において、
前記第2既知点は、橋梁の橋面から離れた位置に配置される、
ことを特徴とする橋面測量方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トータルステーションを用いる橋面測量システム及び橋面測量方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば張出し架設によるPC橋梁工事では、施工中に荷重状態や構造系の変化、更に環境温度の変化等により桁の高さが逐次変動する。そのため、橋面の高さ測量を定期的に行って施工高さを補正しながら施工を進める。最近は、トータルステーションを用いて橋梁の出来形の高さを自動計測するシステムが使われている。その具体例として特許文献1に記載されている設置高さ管理システムが挙げられる。
この設置高さ管理システムは、橋梁の柱頭部にトータルステーションを据え付け、施工が終わった完成ブロックの上面にターゲットを配置している。更に施工中のブロックの上面には傾斜計を配置している。そして、前記各配置のトータルステーション、ターゲット及び傾斜計によって施工中のブロックの橋面の高さを測量している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-33762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載されている設置高さ管理システムでは、橋梁の柱頭部に据え付けられたトータルステーションから施工中のブロックの上面は視準できない。そのため、施工中の施工ブロックの上面に傾斜計を配置してそれを補っている。
即ち、特許文献1の前記システムは、ターゲットの他に傾斜計が必要になるので、必要な機器の種類が多くなると共にシステムの全体構成が複雑になる問題がある。
また、施工ブロックの施工中において、ブロック用の型枠を設置するに際して型枠位置を、トータルステーションによって誘導して作業性を向上することに関しては考慮する記載が見当たらない。
【0005】
本発明の目的は、トータルステーションの配置を施工の進行に伴って移動させ、その移動毎に該トータルステーションの3次元の自己位置の特定を容易に行えるようにして、以って施工ブロックの上面に関する測量を容易に行える橋面測量システム及び橋面測量方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様に係る橋面測量システムは、橋梁上の移動作業車の存在領域に配置されるトータルステーションと、橋梁の柱頭部に配置される第1既知点と、前記トータルステーションの視準可能位置に配置される第2既知点と、前記トータルステーションによる測量を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記トータルステーションによる前記第1既知点及び第2既知点の位置情報の検出結果に基づいて該トータルステーションの3次元の自己位置(X,Y,Z)を特定し、前記自己位置を特定した状態のトータルステーションによって前記移動作業車の存在領域にある施工ブロックの上面に関する測量を実行する、ことを特徴とする。
【0007】
ここで、「橋梁上の移動作業車の存在領域に配置される」とは、本願明細書では、前記トータルステーションを前記移動作業車の構成部材に直接取り付けることに限らず、三脚等を利用して前記移動作業車と独立した状態で前記移動作業車の存在領域に配置することも含む意味で使われている。
また、「施工ブロックの上面に関する測量を実行する」とは、前記施工ブロックの完成後にその上面の出来形高さを測定することの他に、施工初期の段階でブロック用の型枠を設置するに際しての型枠位置を誘導することも含む意味で使われている。
【0008】
本態様によれば、前記トータルステーションは、橋梁上の移動作業車の存在領域に配置される。従って、前記トータルステーションは、前記移動作業車の存在領域、即ち施工ブロックの上面を見渡せるところに位置することが可能になる。これにより、該施工ブロックの上面の測量においては、障害物の影響を受けにくいので、直接測量することが可能になる。即ち、従来の傾斜計のような機器は不要になる。
一方、前記トータルステーションは、施工の進行に伴って移動する毎に自己位置が変わるので、その都度トータルステーションの自己位置の把握処理が必要となる。本態様によれば、前記第1既知点は橋梁の柱頭部に配置され、前記第2既知点は前記トータルステーションによる視準可能位置に配置される。従って、前記制御部は、前記トータルステーションによる前記第1既知点及び第2既知点の位置情報の検出結果に基づいて該トータルステーションの3次元の自己位置(X,Y,Z)を特定することが可能となる。即ち、本態様によれば、トータルステーションの自己位置の特定を容易に行うことができる。
そして、前記自己位置を特定した状態のトータルステーションによって前記移動作業車の存在領域にある施工ブロックの上面に関する測量を容易に実行することができる。即ち、ブロックの施工初期の段階ではブロック用の型枠を設置するに際して型枠位置を誘導することが可能になり、また、前記施工ブロックの完成後にその上面の出来形高さを容易に測定することができる。
【0009】
本発明の第2の態様は、第1の態様の橋面測量システムにおいて、前記第2既知点は、橋梁の前記柱頭部からの張出し方向に位置する完成ブロックに配置され、前記制御部は、前記トータルステーションによる前記第1既知点及び第2既知点の位置情報の検出結果に基づいて該トータルステーションの水平方向における2次元の位置(X,Y)を求め、更に前記第1既知点の位置情報の検出結果に基づいて該トータルステーションの鉛直方向における位置(Z)を求めることで該トータルステーションの3次元の自己位置(X,Y,Z)を特定する、ことを特徴とする。
【0010】
本態様によれば、前記第2既知点は、橋梁の前記柱頭部からの張出し方向に位置する完成ブロックに配置されている。完成ブロックは、完成前は3次元の位置が特定されていないが完成後は特定されている。よって、完成ブロックは、トータルステーションに対する既知点として利用することが可能と言える。これにより、第1既知点と第2既知点の両方が橋梁上に配置されることになるので、前記トータルステーションは、障害物の影響を受けにくくなり、以って自己位置の特定処理を容易に行うことができる。
但し、完成ブロックは、橋梁の前記柱頭部からの張出し方向に位置するので片持ち梁構造の状態で存在する。この片持ち梁構造の状態では、その高さ方向(Z方向)については、荷重状態や構造系の変化、更に環境温度の変化等により変動することがある。一方、水平方向における2次元の位置(X,Y)は変動しないとみなすことが可能である。
本態様によれば、前記制御部は、前記トータルステーションによる前記第1既知点及び第2既知点の位置情報の検出結果に基づいて該トータルステーションの水平方向における2次元の位置(X,Y)を求める。更に前記第1既知点の位置情報の検出結果に基づいて該トータルステーションの鉛直方向における位置(Z)を求めることで該トータルステーションの3次元の自己位置(X,Y,Z)を特定する。第1既知点は変動の虞はないと言えるから、高さ方向についての位置(Z)を求めることができる。従って、完成ブロックの片持ち梁構造の状態の影響を実質的には受けずにトータルステーションの3次元の自己位置(X,Y,Z)を特定することができる。
【0011】
本発明の第3の態様は、第2の態様の橋面測量システムにおいて、前記第2既知点は、前記完成ブロックの出来形高さの測量点である、ことを特徴とする。
【0012】
本態様によれば、前記第2既知点は、前記完成ブロックの出来形高さの測量点であるので、出来形高さの測量位置である測量点を、トータルステーションの自己位置特定に必要な基準点である既知点として兼用することができ、効率的である。
【0013】
本発明の第4の態様は、第1の態様の橋面測量システムにおいて、前記第2既知点は、橋梁の橋面から離れた位置に配置される、ことを特徴とする。
【0014】
本態様によれば、前記第2既知点は、橋梁の橋面から離れた位置に配置されるので、前記トータルステーションの視準可能位置の選定がし易く、該視準可能位置への配置が容易である。
【0015】
本発明の第5の態様に係る橋面測量方法は、橋梁上の移動作業車の存在領域にトータルステーションを配置し、橋梁の柱頭部に第1の既知点を配置し、前記トータルステーションの視準可能位置に第2の既知点を配置し、前記トータルステーションによる前記第1既知点及び第2既知点の位置情報の検出結果に基づいて該トータルステーションの3次元の自己位置(X,Y,Z)を特定し、前記自己位置を特定した状態のトータルステーションによって前記移動作業車の存在領域にある施工ブロックの上面に関する測量を実行する、ことを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、前記トータルステーションは、橋梁上の移動作業車の存在領域に配置されるので、第1の態様と同様の効果を得ることができる。
【0017】
本発明の第6の態様は、第5の態様の橋面測量方法において、前記第2既知点は、橋梁の前記柱頭部からの張出し方向における先端に位置する完成ブロックに配置され、前記トータルステーションによる前記第1既知点及び第2既知点の位置情報の検出結果に基づいて該トータルステーションの水平方向における2次元の位置(X,Y)を求め、更に前記第1既知点の位置情報の検出結果に基づいて該トータルステーションの鉛直方向における位置(Z)を求めることで該トータルステーションの3次元の自己位置(X,Y,Z)を特定する、ことを特徴とする。
【0018】
本態様によれば、前記第2既知点は、橋梁の前記柱頭部からの張出し方向に位置する完成ブロックに配置されるので、第2の態様と同様の効果を得ることができる。
【0019】
本発明の第7の態様は、第5の態様の橋面測量方法において、前記第2既知点は、橋梁の橋面から離れた位置に配置される、ことを特徴とする。
【0020】
本態様によれば、前記第2既知点は、橋梁の橋面から離れた位置に配置されるので、第4の態様と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係る橋面測量システムの実施形態1を説明する概略側面図である。
図2】同実施形態1を説明する要部斜視図である。
図3】同実施形態1のシステムによる測量の実行を説明するフローチャートである。
図4】本発明に係る橋面測量システムの実施形態2を説明する概略側面図である。
図5】同実施形態2のシステムによる測量の実行を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[実施形態1]
以下、本発明の実施形態1に係る橋面測量システムについて、図1から図3を用いて詳細に説明する。
以下の説明においては、互いに直交する3つの軸を、各図に示すように、それぞれX軸、Y軸、Z軸とする。Z軸方向は、鉛直方向(重力が作用する方向)に相当する。X軸方向及びY軸方向は、水平方向に相当する。ここでは、X軸方向は橋梁の張出し方向に対応し、Y軸方向は橋梁の幅方向に対応する。
【0023】
図1及び図2に示したように、本実施形態の橋面測量システム1は、PC橋梁の張出し施工において、橋梁3上の移動作業車5の存在領域に配置されるトータルステーション7と、橋梁3の柱頭部9に配置される第1既知点11と、トータルステーション7の視準可能位置に配置される第2既知点13と、トータルステーション7による測量を制御する制御部15と、を備える。ここで、第1既知点11及び第2既知点13の「既知点」とは、文字通り位置が特定されている所、即ち位置が把握されている所である。
図1において、符号2は橋脚を示し、該橋脚2の脚頭部4の上に柱頭部9が位置する。橋梁3は、柱頭部9から移動作業車5を介してブロックBLを張出し方向となる2方向に、即ちX軸方向における+X方向と-X方向の2方向に、1ブロックずつ(1BL→2BL→3BL)作り込んでいくことで作られる。図1において、各ブロック1BL、2BL、3BLは完成ブロックを示す。張出し方向の先端に位置する完成ブロック3BLに対して次のブロックnBLを施工して延長する。図1は、次のブロックnBLの施工初期の段階に相当し、該次のブロックnBLを施工するためのブロック用の型枠6が設置された状態が示されている。
【0024】
制御部15は、トータルステーション7による第1既知点(X1,Y1,Z1)11及び第2既知点(X2,Y2,Z2)13(図2)の位置情報の検出結果に基づいて該トータルステーション7の3次元の自己位置(X,Y,Z)を特定するように構成されている。
更に制御部15は、自己位置(X,Y,Z)を特定した状態のトータルステーション7によって、移動作業車5の存在領域にある次のブロックnBLである施工ブロック17(図2)の上面19に光を照射することによって測量を実行するように構成されている。
【0025】
以下、本実施形態に係る橋面測量システム1を構成する各構成部材について詳しく説明する。
<トータルステーション>
トータルステーション7は、一般に広く採用されている測量機器であるが、目標点に光を照射し、反射して測量機器に戻った光を電子的に解析して目標点までの距離と角度を測定することができる。
トータルステーション7の自己位置と方位が予め測量等により特定されていれば、前記測定により得られた距離と角度から3次元座標に換算することで、前記目標点の3次元位置(X,Y,Z)を測量することができる。
【0026】
<トータルステーションの配置>
トータルステーション7は、橋梁3上の移動作業車5の存在領域に配置される。
本実施形態では、トータルステーション7は、移動作業車5の構成部材に直接取り付けられている。即ち、施工ブロック17の上面19に臨むように該上面の上方に位置するように取り付けられている。トータルステーション7を移動作業車5の構成部材に取り付けるための取付構造は一般的なものであるので、図示及び説明を省く。図2では、移動作業車5の図示が省かれてトータルステーション7のみが記されている。
尚、トータルステーション7は、移動作業車5の構成部材に直接取り付ける構造に限らず、三脚等を利用して移動作業車5と独立した状態で該移動作業車5の存在領域、即ち施工ブロック17の上面を見渡せるところに配置してもよい。
【0027】
<第1既知点>
本実施形態では、トータルステーション7の自己位置を把握するために用いる第1既知点(X1,Y1,Z1)11は、上記の通り橋梁3の柱頭部9に配置される。
具体的には、第1既知点11は、柱頭部9の上面であってX軸方向とY軸方向における中央に配置されている。尚、この中央への配置に限定されないことは勿論である。橋梁3の柱頭部9の上面は、その3次元の位置が特定されているとすることができるところである。
第1既知点11は、この測量分野で広く採用されているプリズムターゲットが使用されている。尚、第1既知点11は、トータルステーション7に反射光を戻せるものであればよく、前記プリズムターゲットに限定されないことは勿論である。
【0028】
<第2既知点>
第2既知点(X2,Y2,Z2)13は、上記の通りトータルステーション7の視準可能位置に配置される。
本実施形態では、第2既知点13は、橋梁3の柱頭部9からの張出し方向(X軸方向)に位置する完成ブロックBLに配置されている。更に具体的には、第2既知点13は、図1図2に示したように、完成ブロック3BLの張出し方向における先端の、完成ブロック3BLの出来形高さの測量点21である。この出来形高さの測量点21は、本実施形態では完成ブロック3BLのY軸方向における中央に位置する。ここで、第2既知点13は前記中央への配置に限定されないことは勿論である。尚、図2では、3個の完成ブロック1BL、2BL、3BLを一纏めにして単一の完成ブロックBLとして記載されている。
第2既知点13は、第1既知点11と同じく、この測量分野で広く採用されているプリズムターゲットが使用されている。また、第2既知点13も、トータルステーション7に反射光を戻せるものであればよく、前記プリズムターゲットに限定されないことは勿論である。
【0029】
<制御部、トータルステーションの自己位置の特定>
制御部15は、既述のとおり、トータルステーション7による第1既知点(X1,Y1,Z1)11及び第2既知点13の位置情報の検出結果に基づいて該トータルステーション7の3次元の自己位置(X,Y,Z)を特定する。
本実施形態では、第2既知点(X2,Y2,Z2)13は、完成ブロック3BLの張出し方向における先端のY軸方向における中央に配置されている。ここで、完成ブロック3BLは、橋梁3の柱頭部9からの張出し方向の先端に位置するので片持ち梁構造の状態で存在する。この片持ち梁構造では、その高さ方向(Z方向)については、荷重状態や構造系の変化、更に環境温度の変化等により変動することがある。一方、水平方向における2次元の位置(X2,Y2)は変動しないとみなすことが可能である。
そこで、本実施形態では、第2既知点(X2,Y2,Z2)13は、トータルステーション7の水平方向における2次元の位置(X,Y)を決めるための基準点として用いる。
【0030】
具体的には、トータルステーション7から目標点である第1既知点(X1,Y1,Z1)11及び第2既知点(X2,Y2,Z2)13に光を照射し、その反射光を受けて電子的に解析して目標点までの距離と角度を測定する。トータルステーション7の自己位置は特定されていないが、目標点である第1既知点(X1,Y1)11及び第2既知点(X2,Y2)13は、いずれも位置が特定されている。そこで、先ず第1に、前記測定により得られた距離を後方交会法の2点法によって換算することで、トータルステーション7の水平方向における2次元の自己位置(X0,Y0)を求める。
【0031】
次に、制御部15は、更に第1既知点(X1,Y1,Z1)11の位置情報の検出結果に基づいて該トータルステーション7の鉛直方向における位置(Z)を求める。即ち、該トータルステーションの3次元の自己位置(Z0)を求める。第1既知点11は位置変動の虞はないと言えるから、該第1既知点11に光を照射することで高さ方向についての自己位置(Z0)を求めることができる。
前記のように求めた2次元の自己位置(X0,Y0)と、高さ方向の自己位置(Z0)によって、トータルステーション7の3次元の自己位置(X0,Y0,Z0)を特定することができる。即ち、トータルステーション7の3次元の自己位置(X0,Y0,Z0)を、完成ブロック3BLの片持ち梁構造の状態の影響を実質的には受けずに特定することができる。
【0032】
<施工ブロックの上面の測量>
制御部15は、上記の通り、自己位置(X0,Y0,Z0)を特定した状態のトータルステーション7によって、移動作業車5の存在領域にある次のブロックnBLである施工ブロック17の上面19に光を照射することによって測量を実行する。
具体的には、施工ブロック17の施工初期の段階では、ブロック用の型枠6を設置するに際してトータルステーション7からの光照射8(図1)によって型枠位置を誘導する。即ち、光照射8の照射点に沿ってブロック用の型枠6を設置する。そして、型枠6内で鉄筋の組付け等及びコンクリート打設を行って施工ブロック17を作る。
次に、施工ブロック17のコンクリートが硬化した状態で、その上面19に光照射10を行って該上面19の高さを測定する。
尚、施工ブロック17の上面19の高さの測定は、プリズムターゲットを配置して行う場合と、プリズムターゲットを配置しないで行う場合の両方がある。
【0033】
<トータルステーション7の自己位置の求め~施工ブロックの測量>
次に、図3のフローチャートに基づいて、本実施形態の橋面測量システム1による橋面の測量の全工程を説明する。
(1)先ずステップS1で、以下の(101)から(103)をそれぞれ行う。
(101)橋梁3上の移動作業車5にトータルステーション7を取り付ける。
(102)橋梁3の柱頭部9に第1既知点(X1,Y1,Z1)11を配置する。
(103)トータルステーション7の視準可能位置である完成ブロック3BLに第2既知点(X2,Y2,Z2)13を配置する。
ここで、(101)から(103)は、それを行う順番は決める必要は無いので、同時進行で行ってよい。トータルステーション7と第1既知点11と第2既知点13の相対配置は、トータルステーション7が第1既知点11と第2既知点13を視準可能となる関係の配置である。
【0034】
(2)続いて、ステップS2で、以下の(201)(202)を行う。
(201)トータルステーション7の2次元の自己位置(X0,Y0)を上記のようにして求める。
(202)トータルステーション7の高さ方向に自己位置(Z0)を上記のようにして求める。
【0035】
(3)続いて、ステップS3で、上記(201)と(202)で求めた各自己位置(X0,Y0)及び(Z0)により、トータルステーション7の3次元の自己位置(X0,Y0,Z0)を求める。これにより、当該橋面測量システム1において、トータルステーション7の自己位置(X0,Y0,Z0)が特定される。
(4)続いて、ステップS4で、自己位置(X0,Y0,Z0)を特定した状態のトータルステーション7によって移動作業車5の存在領域にある施工ブロック17の上面19に関する測量を実行する。即ち、ブロックBLの施工初期の段階ではブロック用の型枠6を設置するに際して型枠位置を誘導する。また、施工ブロック17の完成後にその上面19の出来形高さを測定する。
測定後、移動作業車5を移動させて、前記と同様にして次のブロックの施工を行う。
【0036】
<実施形態1の効果の説明>
(1)本実施形態によれば、トータルステーション7は、橋梁3上の移動作業車5の存在領域に配置される。従って、トータルステーション7は移動作業車5の存在領域、即ち施工ブロックの上面を見渡せるところに位置すること可能になる。これにより、該施工ブロック17の上面19の測量においては、障害物の影響を受けにくいので、直接測量することが可能になる。即ち、従来の傾斜計のような機器は不要になる。
一方、トータルステーション7は、施工の進行に伴って移動する毎に自己位置が変わるので、その都度トータルステーション7の自己位置の把握処理が必要となる。本実施形態によれば、第1既知点(X1,Y1,Z1)11は橋梁3の柱頭部9に配置され、第2既知点(X2,Y2,Z2)13はトータルステーション7による視準可能位置に配置される。従って、制御部15は、トータルステーション7による第1既知点11及び第2既知点13の位置情報の検出結果に基づいて該トータルステーション7の3次元の自己位置(X0,Y0,Z0)を特定することが可能となる。即ち、本態様によれば、トータルステーション7の自己位置(X0,Y0,Z0)の特定を容易に行うことができる。
そして、自己位置(X0,Y0,Z0)を特定した状態のトータルステーション7によって移動作業車5の存在領域にある施工ブロック17の上面19に関する測量を容易に実行することができる。即ち、ブロックの施工初期の段階ではブロック用の型枠6を設置するに際して型枠位置を誘導することが可能になり、また、施工ブロック17の完成後にその上面19の出来形高さを容易に測定することができる。
【0037】
(2)また、本実施形態によれば、第2既知点(X2,Y2,Z2)13は、橋梁3の柱頭部9からの張出し方向に位置する完成ブロック3BLに配置されている。完成ブロック3BLは、完成前は3次元の位置が特定されていないが完成後は特定されている。よって、完成ブロック3BLは、トータルステーション7に対する既知点として利用することが可能と言える。これにより、第1既知点(X1,Y1,Z1)11と第2既知点(X2,Y2,Z2)13の両方が橋梁3上に配置されることになるので、トータルステーション7は、障害物の影響を受けにくくなり、以って3次元の自己位置(X0,Y0,Z0)の特定処理を容易に行うことができる。
また、本実施形態によれば、制御部15は、トータルステーション7による第1既知点(X1,Y1,Z1)11及び第2既知点(X2,Y2,Z2)13の位置情報の検出結果に基づいて該トータルステーション7の水平方向における2次元の位置(X0,Y0)を求める。更に第1既知点(X1,Y1,Z1)11の位置情報の検出結果に基づいて該トータルステーション7の鉛直方向における位置(Z0)を求めることで、該トータルステーション7の3次元の自己位置(X0,Y0,Z0)を特定する。第1既知点11は変動の虞はないと言えるから、高さ方向についての位置(Z0)を求めることができる。従って、完成ブロック3BLの片持ち梁構造の状態の影響を実質的には受けずにトータルステーション7の3次元の自己位置(X0,Y0,Z0)を特定することができる。
【0038】
(3)また、本実施形態によれば、第2既知点(X2,Y2,Z2)13は、完成ブロック3BLの出来形高さの測量点21であるので、出来形高さの測量位置である測量点21を、トータルステーションの自己位置特定に必要な基準点である既知点として兼用することができ、効率的である。
【0039】
[実施形態2]
次に、本発明の実施形態2に係る橋面測量システム1について、図4及び図5を用いて詳細に説明する。
本実施形態の橋面測量システム1は、第2既知点13が橋梁3の橋面19から離れた位置に配置される。具体的には、図4に示したように、第2既知点13は、橋梁3の上ではなく、橋梁3から側方に離れた位置に配置される。その位置は、移動作業車5に取り付けたトータルステーション7から視準可能な位置であればよく、特定の場所に限定されない。
その他の構成は、実施形態1と同様であるので、同一部分に同一符号を付して、その説明を省略する。また、実施形態1と同様の作用及び効果についてもその説明は省略する。
【0040】
<トータルステーション7の自己位置の求め~施工ブロックの測量>
次に、図3のフローチャートに基づいて、本実施形態の橋面測量システム1による橋面の測量の全工程を説明する。
(1)先ずステップS11で、以下の(301)から(303)をそれぞれ行う。
(301)橋梁3上の移動作業車5にトータルステーション7を取り付ける。
(302)橋梁3の柱頭部9に第1既知点(X1,Y1,Z1)11を配置する。
(303)トータルステーション7の視準可能位置である橋梁3の側方に第2既知点13を配置する。
ここで、(301)から(303)は、それを行う順番は決める必要は無いので、同時進行で行ってよい。トータルステーション7と第1既知点11と第2既知点13の相対配置は、トータルステーション7が第1既知点11と第2既知点13を視準可能となる関係の配置である。
【0041】
(2)続いて、ステップS12で、トータルステーション7による第1既知点(X1,Y1,Z1)11及び第2既知点(X2,Y2,Z2)13の位置情報の検出結果に基づいて該トータルステーション7の3次元の自己位置(X0,Y0,Z0)を特定する。
(3)続いて、ステップS13で、自己位置(X0,Y0,Z0)を特定した状態のトータルステーション7によって移動作業車5の存在領域にある施工ブロック17の上面19に関する測量を実行する。この測量の実行は、実施形態1のステップS4と同様であり、その説明は省略する。
【0042】
本実施形態によれば、第2既知点13は、橋梁3の橋面から離れた位置に配置されるので、トータルステーション7の視準可能位置の選定がし易く、該視準可能位置への配置が容易である。
【0043】
[その他の実施形態]
本発明について実施形態1乃至実施形態2を用いて上記の通り説明したが、本発明は上記実施形態の例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内での種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
例えば、上記実施形態では、第2既知点13は、完成ブロック3BLの張出し方向における先端の、完成ブロック3BLの出来形高さの測量点21であるが、これに限定されず、他の完成ブロック2BL等の出来形高さの測量点を用いてもよい。
【0044】
また、上記実施形態では、トータルステーション7は移動作業車5に直接取り付けたので、施工ブロック17の施工が完成して、移動作業車5が次の施工位置に移動する際に一緒に移動する。トータルステーション7が、移動作業車5の構成部材に直接取り付ける構造ではなく、三脚等を利用して移動作業車5と独立した状態で該移動作業車5の存在領域に配置した場合は、次の施工位置への移動は三脚毎トータルステーション7を移動させることで、簡単に行える。
【符号の説明】
【0045】
1…橋面測量システム、2…橋脚、3…橋梁、4…脚頭部、5…移動作業車、
6…ブロック用の型枠、7…トータルステーション、8…光照射、9…柱頭部、
10…光照射、11…第1既知点、13…第2既知点、15…制御部、
17…施工ブロック、19…上面、21…出来形高さの測量点、
BL…ブロック、nBL…次のブロック
図1
図2
図3
図4
図5