IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士重工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-車両のバンパ構造 図1
  • 特許-車両のバンパ構造 図2
  • 特許-車両のバンパ構造 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-25
(45)【発行日】2024-10-03
(54)【発明の名称】車両のバンパ構造
(51)【国際特許分類】
   B60R 19/22 20060101AFI20240926BHJP
   B60R 19/18 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
B60R19/22 A
B60R19/18 Q
B60R19/18 R
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020205428
(22)【出願日】2020-12-10
(65)【公開番号】P2022092548
(43)【公開日】2022-06-22
【審査請求日】2023-11-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100142550
【弁理士】
【氏名又は名称】重泉 達志
(74)【代理人】
【識別番号】100180758
【弁理士】
【氏名又は名称】荒木 利之
(72)【発明者】
【氏名】岸 優汰
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 亘
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-040423(JP,A)
【文献】特開2014-069695(JP,A)
【文献】特開2008-049935(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 19/22
B60R 19/16,19/18
B60R 19/02,19/54
B62D 17/00-25/08
B62D 25/14-29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前端側又は後端側に設置され、車幅方向へ延びる衝撃吸収体を備え、
前記衝撃吸収体は、衝突体に対し所定の抗力を生じる車幅方向外端側の小抗力区間と、前記小抗力区間の車幅方向内側に隣接し前記小抗力区間よりも衝突体に対する抗力が大きい大抗力区間と、を有し、
前記衝撃吸収体は、前記大抗力区間と前記小抗力区間の境界において、前記大抗力区間が前記小抗力区間よりも、車両の前端側に設置される場合は前方へ突出し、車両の後端側に設置される場合は後方へ突出する車両のバンパ構造。
【請求項2】
前記衝撃吸収体の前記小抗力区間は、車幅方向にわたって、前後方向に略一定の厚さで形成される請求項1に記載の車両のバンパ構造。
【請求項3】
前記衝撃吸収体の前記小抗力区間は、車幅方向外側へ向かって前後方向内側へ傾いて形成される請求項1または2に記載の車両のバンパ構造。
【請求項4】
前記衝撃吸収体が第1衝撃吸収体をなし、
前記第1衝撃吸収体の上側または下側に設置され、前記第1衝撃吸収体より車幅方向寸法が短い第2衝撃吸収体を備え、
前記第1衝撃吸収体の前記小抗力区間の少なくとも車幅方向端部側は、前記第2衝撃吸収体の車幅方向端部よりも車幅方向外側に形成される請求項1から3のいずれか1項に記載の車両のバンパ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車幅方向へ延びる衝撃吸収体を備えた車両のバンパ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のバンパ構造として、車幅方向へ延びるフロントバンパリインフォースと、フロントバンパリインフォースの前面部に設けられるバンパアブソーバと、を備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のバンパ構造では、バンパアブソーバにおける車幅方向の端部の外側面は、後方へ向かうにつれて車幅方向外側へ傾斜する傾斜面とされ、この傾斜面に金属からなる板状部材が取り付けられる。このバンパ構造では、車両前部の車幅方向端部に衝突体が衝突したときに、バンパアブソーバの傾斜面の板状部材で衝突体を車幅方向外側へはじき、衝突体がバンパアブソーバを介してフロントバンパリインフォースに底付くことを防止する、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2012/124058号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のバンパ構造では、バンパアブソーバの傾斜面の板状部材で衝突体を車幅方向外側へはじいてしまうため、衝突体に対して十分なエネルギ吸収を図ることができない。
【0005】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、衝突体に対して十分なエネルギ吸収を図ることのできる車両のバンパ構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、車両の前端側又は後端側に設置され、車幅方向へ延びる衝撃吸収体を備え、前記衝撃吸収体は、衝突体に対し所定の抗力を生じる車幅方向外端側の小抗力区間と、前記小抗力区間の車幅方向内側に隣接し前記小抗力区間よりも衝突体に対する抗力が大きい大抗力区間と、を有する車両のバンパ構造が提供される。
【0007】
この車両のバンパ構造によれば、衝撃吸収体に小抗力区間及び大抗力区間が隣接して形成されているので、小抗力区間と大抗力区間の境界近傍に衝突する衝突体は、抗力の小さな小抗力区間側、すなわち車幅方向外側へ案内される。車幅方向外側へ案内された衝突体は、衝撃吸収体の小抗力区間に沿って車幅方向外側へ移動することによってエネルギ吸収が図られる。このように、衝突時における衝突体の移動方向を侵入方向と異なる方向に変換することでストローク量を大きくし、衝突体のエネルギ吸収量を増大させることができる。
【0008】
また、上記車両のバンパ構造において、前記衝撃吸収体の前記小抗力区間は、車幅方向にわたって、前後方向に略一定の厚さで形成されてもよい。
【0009】
この車両のバンパ構造によれば、小抗力区間と大抗力区間の境界で抗力が急激に変化する一方で、小抗力区間では抗力が急減に変化することはない。
【0010】
また、上記車両のバンパ構造において、前記衝撃吸収体の前記小抗力区間は、車幅方向外側へ向かって前後方向内側へ傾いて形成されてもよい。
【0011】
この車両のバンパ構造によれば、衝撃吸収体の小抗力区間が車幅方向外側へ向かって前後方向内側へ傾いているので、車両に対して相対的に前後方向内側へ移動する衝突体を車幅方向外側へ移動させやすい。
【0012】
また、上記車両のバンパ構造において、前記衝撃吸収体が第1衝撃吸収体をなし、前記第1衝撃吸収体の上側または下側に設置され、前記第1衝撃吸収体より車幅方向寸法が短い第2衝撃吸収体を備え、前記第1衝撃吸収体の前記小抗力区間の少なくとも車幅方向端部側は、前記第2衝撃吸収体の車幅方向端部よりも車幅方向外側に形成されてもよい。
【0013】
この車両のバンパ構造によれば、第1衝撃吸収体の小抗力区間の少なくとも車幅方向端部側を第2衝撃吸収体の車幅方向端部よりも車幅方向外側に形成したので、車幅方向について第2衝撃吸収体によるエネルギ吸収が図れない部分について、エネルギ吸収量が比較的大きな小抗力区間でエネルギ吸収を図ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の車両のバンパ構造によれば、衝突体に対して十分なエネルギ吸収を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態を示す車両のバンパ構造の斜視説明図である。
図2】車両のバンパ構造の分解斜視説明図である。
図3】衝突時の衝突体の移動経路を示したバンパ構造の平面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1から図3は本発明の一実施形態を示すものであり、図1は車両のバンパ構造の斜視説明図、図2は車両のバンパ構造の分解斜視説明図、図3は衝突時の衝突体の移動経路を示したバンパ構造の平面説明図である。
【0017】
図1に示すように、この車両のバンパ構造は、車両前端の意匠面をなすバンパフェイス100の後方に、車幅方向へ延びる複数の衝撃吸収体1,2,3を備えている。図1では説明のため、バンパフェイス100を車体4側から外した状態を示している。本実施形態においては、下側衝撃吸収体1、中央側衝撃吸収体2、上側衝撃吸収体3の3つの衝撃吸収体が設けられる。各衝撃吸収体1,2,3は、それぞれ、車体4の所定箇所に固定される。
【0018】
図2に示すように、車体4は、例えば鋼板をプレス成型したパネル状の部材を集成し、スポット溶接等で接合して構成されている。車体4は、前後方向へ延びる左右一対のサイドフレーム41と、各サイドフレーム41の前端をブラケットを介して連結し車幅方向へ延びるバンパビーム42と、各サイドフレーム41の前端側に接続され上下方向へ延びる左右一対のラジエータパネル43と、各ラジエータパネル43の下端を連結し車幅方向へ延びるラジエータロアサポート44と、各ラジエータパネル43の上端を連結し車幅方向へ延びるラジエータアッパサポート45と、ラジエータアッパサポート45の車幅方向端部と前後方向へ延びる左右一対のアッパフレーム(図示せず)とを接続する左右一対の接続部材46と、を備えている。バンパビーム42はラジエータアッパサポート45よりも車幅方向外側に長く形成され、ラジエータアッパサポート45の車幅方向外側には左右一対のヘッドランプ(図示せず)が配置される。
【0019】
また、車体4は、サブフレーム47を備えている。サブフレーム47は、各サイドフレーム41よりも下方で前後方向へ延びる左右一対の前後延在部47aと、各前後延在部47bの前端を連結し車幅方向へ延びる車幅延在部47bと、を有する。車幅延在部47bは、ラジエータロアサポート44よりも前方に配置される。
【0020】
第1衝撃吸収体としての下側衝撃吸収体1は、サブフレーム47の車幅延在部47bの前側に設けられる。下側衝撃吸収体1の材質は任意であるが、例えば樹脂とすることができ、本実施形態においては非発泡ポリプロピレンである。下側衝撃吸収体1は、衝突体に対し所定の抗力を生じる車幅方向外端側の左右一対の小抗力区間11と、各小抗力区間11の車幅方向内側に隣接し小抗力区間11よりも衝突体に対する抗力が大きい大抗力区間12と、を有している。
【0021】
本実施形態においては、小抗力区間11は、車幅方向にわたって、前後方向に略一定の厚さで形成される。具体的に、サブフレーム47の車幅延在部47bは、側面視四角形状の閉断面を有しており、小抗力区間11は、車幅延在部47bの前面に沿って、前後方向に比較的薄く形成される。本実施形態においては、サブフレーム47の車幅延在部47bの端部側は、車幅方向外側へ向かって後方に傾いて形成されており、各小抗力区間11は、車幅延在部47bに沿って車幅方向外側へ向かって後方に傾いて形成される。
【0022】
一方、大抗力区間12には、車幅方向にわたって、車幅延在部47bから前方へ突出する部分が断続的に形成されている。尚、車幅延在部47bから前方へ突出する部分を連続的に形成してもよい。具体的に、大抗力区間11は、上下方向に所定の厚さを有し、車幅延在部47bの前面から前方へ比較的大きく突出する。
【0023】
中央側衝撃吸収体2は、バンパビーム42の前側に設けられる。中央側衝撃吸収体2の材質は任意であるが、例えば樹脂とすることができ、本実施形態においては発泡ポリプロピレンである。また、本実施形態においては、中央側衝撃吸収体2の車幅方向長さは、下側衝撃吸収体1とほぼ同じ長さである。中央側衝撃吸収体2は、前部に凹部や穴部が形成されているものの、バンパビーム42の前面に沿って、前後方向にほぼ同じ厚さで形成されている。
【0024】
第2衝撃吸収体としての上側衝撃吸収体3は、ラジエータアッパサポート45の前側に設けられる。上側衝撃吸収体3の材質は任意であるが、例えば金属とすることができ、本実施形態においては鋼板である。また、上側衝撃吸収体3の車幅方向寸法は下側衝撃吸収体1より短く、本実施形態においては、上側衝撃吸収体3は、下側衝撃吸収体1の各小抗力区間11よりも車幅方向内側に配置される。
【0025】
以上のように構成された車両のバンパ構造では、図3に示すように、下側衝撃吸収体1に小抗力区間11及び大抗力区間12が隣接して形成されているので、小抗力区間11と大抗力区間12の境界近傍に衝突する衝突体Bは、抗力の小さな小抗力区間11側、すなわち車幅方向外側へ案内される。小抗力区間11が車幅方向にわたって略一定の厚さで形成されているので、小抗力区間11と大抗力区間12の境界で抗力が急激に変化する一方で、小抗力区間11では抗力が急減に変化することはない。車幅方向外側へ案内された衝突体Bは、下側衝撃吸収体1の小抗力区間11に沿って車幅方向外側へ移動し、小抗力区間11でエネルギ吸収が図られる。このように、衝突時における衝突体Bの移動方向を侵入方向とは異なる方向に変換することでストローク量を大きくし、衝突体Bのエネルギ吸収量を増大させることができる。本実施形態では、下側衝撃吸収体1のエネルギ吸収量が増大するため、歩行者に衝突した際の脚部保護に有利である。
【0026】
この車両のバンパ構造によれば、図3に示すように、下側衝撃吸収体1の小抗力区間11が車幅方向外側へ向かって後方へ傾いているので、車両に対して相対的に後方へ移動する衝突体Bを車幅方向外側へ移動させやすい。これにより、車両前端が車幅方向外側へいくほど後方へ向かう傾斜が大きく形成されていることと相俟って、衝突時に衝突体Bを車幅方向外側へスムースに移動させることができる。従って、衝突体Bのストローク量を的確に確保することができる。
【0027】
また、小抗力区間11を前後に薄く形成することができ、例えば、バンパフェイス100を抵抗力区間11に近接させて配置したり、抵抗力区間11の近傍に所定の車載部品を搭載したりすることができ、車両の小抗力区間11近傍の造形自由度及び設計自由度が向上する。
【0028】
また、下側衝撃吸収体1の小抗力区間11を上側衝撃吸収体3の車幅方向端部よりも車幅方向外側に形成したので、車幅方向について上側衝撃吸収体3によるエネルギ吸収が図れない部分について、エネルギ吸収量が比較的大きな小抗力区間11でエネルギ吸収を図ることができる。従って、上側衝撃吸収体3の車幅方向外側で、衝突時のエネルギ吸収量不足を軽減できる。本実施形態では、歩行者に衝突した際、上側衝撃吸収体3の存在しない車両の車幅方向外側では上肢の侵入量が比較的大きくなり易いところ、下側衝撃吸収体1のエネルギ吸収量を増大させることにより、傷害値の増大を抑制することができる。
【0029】
尚、前記実施形態においては、車両前端側のバンパ構造に本発明を適用したものを示したが、車両後端側のバンパ構造に本発明を適用することもできる。また、バンパ構造が3つの衝撃吸収体を備えるものを示したが、車幅方向外端側に小抗力区間を有する衝撃吸収体を少なくとも1つ備えていれば、衝撃吸収体の数は任意に変更することができる。
【0030】
また、前記実施形態においては、下側衝撃吸収体1の各小抗力区間11の全部が上側衝撃吸収体3の車幅方向外側に形成されるものを示したが、各小抗力区間11の少なくとも車幅方向端部側が上側衝撃吸収体3の車幅方向外側に形成されていればよい。また、前記実施形態においては、上側の衝撃吸収体が下側の衝撃吸収体よりも短いものを示したが、下側の衝撃吸収体が上側の衝撃吸収体よりも短い場合は、上側の衝撃吸収体に小抗力区間を形成してもよい。
【0031】
また、前記実施形態においては、下側衝撃吸収体3の小抗力区間11と大抗力区間12を一体的に形成したものを示したが、小抗力区間11と大抗力区間12を別個に形成してもよい。この場合、小抗力区間11と大抗力区間12を別の材料としてもよい。さらに、下側衝撃吸収体1の小抗力区間11が車幅方向外側へ向かって後方へ傾いて形成されるものを示したが、必ずしも傾いて形成されている必要はない。
【0032】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【符号の説明】
【0033】
1 下側衝撃吸収体
2 中央側衝撃吸収体
3 上側衝撃吸収体
4 車体
11 小抗力区間
12 大抗力区間
41 サイドフレーム
42 バンパビーム
43 ラジエータパネル
44 ラジエータロアサポート
45 ラジエータアッパサポート
46 接続部材
47 サブフレーム
47a 前後延在部
47b 車幅延在部
100 バンパフェイス
B 衝突体
図1
図2
図3