(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-25
(45)【発行日】2024-10-03
(54)【発明の名称】ホームドア工事用の覆工板構造、点字ブロック用覆工板、点字ブロック用覆工板の製造方法及びホームドアの工事方法
(51)【国際特許分類】
E01C 9/08 20060101AFI20240926BHJP
E01F 1/00 20060101ALI20240926BHJP
E01F 9/506 20160101ALI20240926BHJP
E01F 9/553 20160101ALI20240926BHJP
B61B 1/02 20060101ALN20240926BHJP
【FI】
E01C9/08 A
E01F1/00
E01F9/506
E01F9/553
B61B1/02
(21)【出願番号】P 2020216451
(22)【出願日】2020-12-25
【審査請求日】2023-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591075641
【氏名又は名称】東鉄工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000227146
【氏名又は名称】日綜産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094525
【氏名又は名称】土井 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100094514
【氏名又は名称】林 恒徳
(72)【発明者】
【氏名】今井 勉
(72)【発明者】
【氏名】加藤 正義
(72)【発明者】
【氏名】忠 直樹
(72)【発明者】
【氏名】笹川 透
(72)【発明者】
【氏名】宇津木 浩行
(72)【発明者】
【氏名】岩井 俊且
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 暁伸
(72)【発明者】
【氏名】吉村 公一
【審査官】坪内 優佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-007321(JP,A)
【文献】特開2011-196094(JP,A)
【文献】韓国公開特許第2009-0000388(KR,A)
【文献】特開2020-153147(JP,A)
【文献】特許第4880797(JP,B1)
【文献】特許第4604132(JP,B1)
【文献】特開2011-006844(JP,A)
【文献】特開2011-195009(JP,A)
【文献】特開2014-061732(JP,A)
【文献】特開2007-277892(JP,A)
【文献】特開2017-017801(JP,A)
【文献】特開平07-229105(JP,A)
【文献】特開平11-200309(JP,A)
【文献】特開2007-016439(JP,A)
【文献】特開平09-250114(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 1/00-17/00
E01F 9/00-15/14
B61B 1/00-15/00
E01F 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の幅と前記第1の幅より長い第1の長さを有する長方形をなし、ホーム先端側に前記第1の長さの方向が線路に沿って配置される線路側の覆工板ユニットと、
前記覆工板ユニットのホーム先端と反対側に隣接して配置され、第2の幅と前記第2の幅より長い第2の長さを有する長方形の点字ブロック用覆工板とを有し、
前記覆工板ユニットは、1枚の覆工板または線路に沿って並列に配置される複数枚の覆工板を有し、前記第1の幅は法令で規定された点字ブロックのホーム先端からの距離であり、
前記覆工板及び前記点字ブロック用覆工板は、内部に空間を形成する内部空間形成構造体と、前記内部空間形成構造体の表面を覆う床板とを有し、
前記点字ブロック用覆工板の床板は、前記第2の長さ方向に複数枚連続して配置された複数の点字ブロック床板を有し、
各点字ブロック床板は、前記覆工板ユニットに接する点字ブロック用覆工板の長辺に沿って、表面に点字突起が形成される、ホームドア工事用の覆工板構造。
【請求項2】
前記複数の点字ブロック床板はそれぞれ、所定の厚さを有する金属板であり、前記金属板への金型プレス加工により前記点字突起が形成される、請求項1に記載のホームドア工事用の覆工板構造。
【請求項3】
前記金属板の前記点字突起には突起頂部の面に凹凸が形成され、前記点字突起が形成された領域表面に、滑り止め粒子を含む塗料による第1の塗装と第1の塗装上の黄色塗装が付与された、請求項2に記載のホームドア工事用の覆工板構造。
【請求項4】
前記内部空間形成構造体は、前記覆工板及び前記点字ブロック用覆工板それぞれの長辺の長さを有し、前記覆工板及び前記点字ブロック用覆工板それぞれの幅方向に所定の間隔を介して配置された複数の角形管と、前記複数の角形管を連結する連結部材を有し、
前記複数の角形管の表面が前記床板で覆われる、請求項1に記載のホームドア工事用の覆工板構造。
【請求項5】
前記覆工板ユニットは、前記複数枚の覆工板を有し、
前記複数枚の覆工板は、M本の前記複数の角形管を有する第1の覆工板と、前記Mより少ないN本の前記複数の角形管を有し前記第1の覆工板より狭い幅の第2の覆工板とを有し、
前記第2の覆工板が有する前記複数の角形管の板厚が、前記第1の覆工板が有する前記複数の角形管の板厚より厚い、請求項4に記載のホームドア工事用の覆工板構造。
【請求項6】
第1の幅と前記第1の幅より長い第1の長さを有する長方形をなし、ホーム先端側に前記第1の長さの方向が線路に沿って配置される線路側の覆工板ユニットに、ホーム先端と反対側に隣接して配置され、第2の幅と前記第2の幅より長い第2の長さを有する長方形の点字ブロック用覆工板であって、
前記覆工板ユニットは、1枚の覆工板または線路に沿って並列に配置される複数枚の覆工板を有し、前記第1の幅は法令で規定された点字ブロックのホーム先端からの距離であり、
前記点字ブロック用覆工板は、内部に空間を形成する内部空間形成構造体と、前記内部空間形成構造体の表面を覆う床板とを有し、
前記点字ブロック用覆工板の床板は、前記第2の長さ方向に複数枚連続して配置された複数の点字ブロック床板を有し、
各点字ブロック床板は、前記覆工板ユニットに接する点字ブロック用覆工板の長辺に沿って、表面に点字突起が形成される、ホームドア工事用の点字ブロック用覆工板。
【請求項7】
請求項1に記載のホームドア工事用覆工板構造の製造方法であって、
前記点字ブロック用覆工板の表面を覆う床板に、M個のドーム型点状突起を形成するドーム型点状突起金型を用いたプレス加工を行って前記M個のドーム型点状突起を表面に形成することをN回繰り返し行う工程と、
前記ドーム型点状突起が形成された床板に、前記ドーム型点状突起の頂部を平坦化するハーフドーム型点状突起金型を用いたプレス加工を行って前記ドーム型点状突起の頂上部を平坦化する工程と、
M×N個のハーフドーム型点状突起が形成された床板を高温に熱した状態で、前記床板の表面に滑り止め粒子が混入された塗料を焼き付けて静電塗装し、更に、色弱対策用の黄色塗料を塗装する工程とを有する、
ホームドア工事用の覆工板構造の製造方法。
【請求項8】
請求項1に記載のホームドア工事用覆工板構造をホーム先端の表面に被覆する第1工程と、
前記点字ブロック用覆工板を被覆したまま前記覆工板ユニットを仮に撤去し、前記覆工板ユニットで覆われていた領域の下のホーム内部にケーブルキャビネットまたはホームドア設置基板を敷設し、前記覆工板ユニットを元の位置に被覆する第2工程と、
前記点字ブロック用覆工板を被覆したまま前記覆工板ユニットを撤去し、前記覆工板ユニットで覆われていた領域のホーム表面に先端タイルを敷設する第3工程と、
前記先端タイル上に前記ホームドアを設置する第4工程と、
前記点字ブロック用覆工板を撤去し、前記点字ブロック用覆工板が覆われていた領域のホーム表面に警告タイルを敷設する第5工程とを有し、
前記第3工程後、前記第4工程と第5工程が任意の時間帯で行われる、ホームドアの工事方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道プラットホームにホームドア等を設置する工事中に利用されるホームドア工事用の覆工板構造、点字ブロック用覆工板、点字ブロック用覆工板の製造方法及びホームドアの工事方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道プラットホームへのホームドアの設置が普及してきている。ホームドアを鉄道プラットホームに設置する場合、ホームドアの開閉制御装置の重量に耐え得る構造や、開閉制御装置への電源や信号ケーブルを配置する構造が必要になる。そのため、既設のプラットホームには、それらの構造を設ける工事が必要になる。
【0003】
ホームドア設置工事は、鉄道サービスが提供されない深夜に行われる。一方、鉄道サービスが提供されている時間帯では、プラットホームの工事が行われている箇所に工事箇所を覆う覆工板が敷設される。覆工板を敷設することで、利用者は工事中でも通常に近い状態でホーム上を歩行し鉄道を利用することができる。
【0004】
ホームドア設置工事が可能な時間は、深夜の終電から早朝の始発までの例えば2~3時間程度しかない。そのうえ、工事開始時に覆工板を撤去し工事終了時に覆工板を敷設すると、実際に工事が行える時間は更に短くなる。そのため、覆工板の敷設と撤去の工数をできるだけ短くすることが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-6844号公報
【文献】特開2012-7321号公報
【文献】特許第4604132号公報
【文献】特許第4880797号公報
【文献】特開2020-153147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
覆工板の敷設と撤去を効率的に行うことを目的として、幅約500mm、長さ2000~2500mmの細長い覆工板をホームの幅方向に複数枚並べた覆工板のユニットを、ホームまたは線路の長さ方向に連続して敷設することが行われている。この覆工板は、軽量化の目的で、それぞれ間隔を空けて並べた複数本の角形鋼管を、表面側の床板により被覆した構造を有する。複数の角形鋼管を並べた構造体は、覆工板の内部に空間を形成するので軽量化できる。
【0007】
一方、バリアフリー法により、仮設時においても点字ブロックと呼ばれるホーム縁端警告ブロック(以下、警告ブロックと称する。)をホーム先端から所定距離の位置に敷設する必要がある。そのため、ホームの幅方向に並べられた例えば3枚の覆工板の表面に、複数の警告ブロックが連続して形成された帯状の警告ブロックシートがラインテープ等で貼り付けられる。ラインテープで貼り付けるのは警告ブロックの撤去・復旧が容易になるからである。
【0008】
警告ブロックの設置位置は、バリアフリー整備ガイドライン(以下、ガイドラインと称する。)でホーム先端から800mm以上、最大でも1000mm程度と規定されているため、例えば、ホーム先端から800mmが採用される。800~1000mm内の最短800mmにすることが、例えば、狭い幅のホームには好ましい。警告ブロックのホーム幅方向が400mm以上と規定されているので、覆工板が500mm幅の場合、警告ブロックがホーム先端から2枚目と3枚目の覆工板を跨いで貼り付けられることになる。作業効率化の観点から、警告ブロックシートが利用されるため、警告ブロックシートが2枚の覆工板を跨いで貼り付けられる。
【0009】
しかし、強風時には覆工板の隙間から巻き上げる風でラインテープがはがされ、警告ブロックシートが飛散するリスクがある。更に、降雨時に警告ブロックシートを敷設する復旧作業では、ガスバーナ等で覆工板を乾燥させながら、ラインテープで警告ブロックシートを覆工板に貼り付けている。そのため復旧作業に時間を要し、工事時間が短くなることが発生している。
【0010】
更に、工事開始前に撤去する覆工板は、1枚目の覆工板に加えて、警告ブロックシートが跨いで貼り付けられる2枚目と3枚目の覆工板となり、工事開始前に3枚の覆工板を全て撤去し工事中断時に全て復旧させることになり、作業効率が悪い。また、2枚目と3枚目の覆工板を別々に撤去しそれぞれの位置の工事をするなど柔軟な工事手順を採用できず、工期が長期化する場合がある。
【0011】
そこで、本発明の目的は、ホームドア工事中において覆工板の設置作業効率を向上させたホホームドア工事用の覆工板構造、点字ブロック用覆工板、点字ブロック用覆工板の製造方法及びホームドアの工事方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の側面によれば、第1の幅と前記第1の幅より長い第1の長さを有する長方形をなし、ホーム先端側に前記第1の長さの方向が線路に沿って配置される線路側の覆工板ユニットと、
前記覆工板ユニットのホーム先端と反対側に隣接して配置され、第2の幅と前記第2の幅より長い第2の長さを有する長方形の点字ブロック用覆工板とを有し、
前記覆工板ユニットは、1枚の覆工板または線路に沿って並列に配置される複数枚の覆工板を有し、前記第1の幅は法令で規定された点字ブロックのホーム先端からの距離であり、
前記覆工板及び前記点字ブロック用覆工板は、内部に空間を形成する内部空間形成構造体と、前記内部空間形成構造体の表面を覆う床板とを有し、
前記点字ブロック用覆工板の床板は、前記第2の長さ方向に複数枚連続して配置された複数の点字ブロック床板を有し、
各点字ブロック床板は、前記覆工板ユニットに接する点字ブロック用覆工板の長辺に沿って、表面に点字突起が形成される、ホームドア工事用の覆工板構造である。
【0013】
また、本発明の第2の側面によれば、点字ブロック用覆工板の表面を覆う床板に、M個のドーム型点状突起を形成するドーム型点状突起金型を用いたプレス加工を行って前記M個のドーム型点状突起を表面に形成することをN回繰り返し行う工程と、
前記ドーム型点状突起が形成された床板に、前記ドーム型点状突起の頂上部を平坦化するハーフドーム型点状突起金型を用いたプレス加工を行って前記ドーム型点状突起の頂上部を平坦化する工程と、
M×N個のハーフドーム型点状突起が形成された床板を高温に熱した状態で、前記床板表面に滑り止め粒子が混入された塗料を焼き付けて静電塗装し、更に、色弱対策用の黄色塗料を塗装する工程とを有する、点字ブロック用の覆工板の製造方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ホームドア工事中において覆工板の作業効率を向上させることができる。また、覆工板に法令で定められた点字ブロックを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】ホームドア工事開始前のプラットホームの構造例を示す断面図である。
【
図2】従来のホームドア工事中断時でのプラットホームの構造例を示す断面図である。
【
図3】ホームドア工事中断時での覆工板と覆工桁の構成を示す側面図である。
【
図4】ホームドア工事完了後のプラットホームの構造例を示す図である。
【
図5】本実施の形態におけるホームドア工事用の覆工板構造の一例を示す平面図である。
【
図6】ホームドア工事用の覆工板構造を構成する3枚の覆工板の非連結状態を示す平面図である。
【
図7】本実施の形態の覆工板の構造例を示す平面図及び側面図である。
【
図8】本実施の形態の覆工板構造を使用するホームドア工事中断時でのプラットホームの構造例を示す図である。
【
図9】本実施の形態の警告ブロック床板の製造工程例を示す図である。
【
図10】従来のホームドア工事中断時に仮設される覆工板構造を示す平面図である。
【
図11】第1のホームドアが設置されたホームの断面図である。
【
図12】第1のホームドアが設置されたホームの平面図及び断面図である。
【
図13】工程3でのホームの平面図及び断面図である。
【
図14】工程4でのホームの平面図及び断面図である。
【
図15】第2のタイプのホームドアが設置されたホームの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
点字ブロックには、複数の点状突起が行列状に配置された点状ブロック、内方線付き点状ブロック(ホーム縁端警告ブロック)、複数の線状突起が配置された線状ブロック(誘導ブロック)等が含まれる。これらの点字ブロックは、ホーム先端または縁端から所定の距離の位置に敷設される。以下の説明では、これら点字ブロックのうち、ホーム縁端警告ブロック(以下、警告ブロックと称する。)を例にして説明するが、本発明では警告ブロックを点状ブロックや線状ブロックに置き換えてもよい。これに伴い、請求項の点字ブロック用覆工板、点字ブロック床板は、以下の説明では、それぞれ警告ブロック用覆工板、警告ブロック床板を例にして説明する。
【0017】
[ホームドア工事開始前のプラットホーム]
図1は、ホームドア工事開始前のプラットホームの構造例を示す断面図である。
図1に示す例は、盛土式の鉄道プラットホームの断面構造である。盛土式プラットホームでは、地面10に盛り付けた盛土11が、線路側19に設けた複数のブロックで構成された擁壁13で保護される。そして、擁壁13と盛土11上の線路側にRC(Reinforced Concrete)板14が設けられ、ホームの線路側と反対側に設けた鋼管杭(図示せず)とRC板14と盛土11の上にアスファルト塗装15及び敷モルタル16が設けられ、敷モルタル16の上の線路側に先端タイル18が、ホーム側に警告ブロック17が、それぞれ設けられる。
【0018】
盛土式プラットホーム上にホームドアを設置するためには、ホームドアであるドア開閉制御装置をホーム上に設置し、ドア開閉制御装置に接続する電源及び制御信号のケーブルをホーム下に配置する必要がある。そのため、ドア開閉制御装置の重量に耐えられるようにし、ケーブルを配置できるようにするために、盛土式プラットホームを改造する必要がある。
【0019】
[ホームドア工事中断時のプラットホーム]
図2は、従来のホームドア工事中断時でのプラットホームの構造例を示す断面図である。ホームドア工事中断時とは、始発電車から終電までの間のホームドア工事が中断されている時である。ホームドアの工事が始まると、
図1に示したホームドア工事開始前の状態から、施設される鋼管杭21(
図4参照)の位置のアスファルト塗装15とその下側の盛土11を掘削し、鋼管杭21が施設される。それと共に、ホーム先端部では、警告ブロック17と、先端タイル18と、敷モルタル16と、RC板14が撤去される。更に、RC板14の下側の盛土11を掘削し、盛土11と擁壁13の上に覆工板を支える仮桁として覆工桁20Cが設けられる。覆工桁20Cは、ホームの長さ方向(紙面に垂直な方向)に、所定の間隔を設けて複数設けられる。鋼管杭21は、ホーム長さ方向に所定間隔で設けられる複数の覆工桁20Cの間に位置し、
図2の断面図では見えないので、破線で示される。
【0020】
図2に示すとおり、ホームの長さ方向に所定の間隔で設けられた覆工桁20Cの上に高さ調整桁12を介して、ホームの長さ方向に長い長方形の覆工板P1,P2,P3が、ホームの線路側先端位置に、線路に沿って、ホームの長さ方向と垂直の方向に並列に載置される。
【0021】
図3は、ホームドア工事中断時での覆工板と覆工桁の構造を示す側面図である。
図3は、線路側からホームを見た側面図である。前述の通り、擁壁13と擁壁13の上に設けられた複数の覆工桁20Cの上に、3枚の覆工板P1,P2,P3が紙面垂直方向に並列に載置される。そして、覆工板P1,P2,P3それぞれは、図示しないクランパにより覆工桁20Cに固定される。覆工桁20Cは、例えば、H型鋼を横方向にして擁壁13等の上に設けられる。
図3の側面図では、前述の鋼管杭21は見えないので省略される。
【0022】
図1、
図2、
図3に示すように、ホーム先端の警告ブロック17、先端タイル18、敷モルタル16及びRC板14を撤去し、新たに覆工桁20Cを設置し、覆工桁20Cの間に覆工板P1,P2,P3を渡す構造にする。このような構造にすることで、ホームドア工事中は、終電後に覆工板P1,P2,P3を撤去してホーム構造の改築を行い、始発前に覆工板P1,P2,P3を覆工桁20Cに敷設して復旧するので、覆工板の撤去と復旧の作業性が高くなる。
【0023】
[ホームドア工事完了後のプラットホーム]
図4は、ホームドア工事完了後のプラットホームの構造例を示す図である。ホームドア工事が完了した状態では、覆工桁20Cが横桁20として、鋼管杭21と擁壁13の上に、ホーム長さ方向に沿って所定間隔に設けられる。横桁20は、例えば、H鋼を横方向に倒して設けられる。また、横桁20には、ケーブル通し穴25が設けられる。そして、ホーム長さ方向に沿って所定間隔に設けられた1対の横桁20を渡すように、プレキャスト・プレストレスト・コンクリート板(PPC板)22が設けられる。PPC板はホームドアを設置する基板である。
【0024】
そして、PPC板22とホームのアスファルト塗装15(
図1、2参照)の上には、警告ブロック23と先端タイル24が設けられ、先端タイル24上にドア開閉制御装置31が設置される。開閉するホームドアの1対の扉32は、1対のドア開閉制御装置31内から移動して閉じた状態となり、また、1対のドア開閉制御装置31内に移動して開いた状態となる。ドア開閉制御装置31はホームドアを構成し、ドアを収容する筐体の機能と、ドアの開閉を制御する制御装置の機能とを有する。ホームドアであるドア開閉制御装置31は、ホームドア設置基板であるPPC板22にアンカーボルトにより固定される。
【0025】
ホームドア工事で新たに設けられた鋼管杭21と横桁20とPPC板22の構造により、重量が大きなドア開閉制御装置31をホーム先端部に設置できるようになる。また、横桁20にケーブル通し穴25を設けたことで、ドア開閉制御装置31に接続されるケーブル26を収容することができ、掘削する盛土の量を最小限に抑制できる。
【0026】
[従来の覆工板の構造]
図10は、従来のホームドア工事中断時に仮設される覆工板構造を示す平面図である。ホームで工事を施工する場合、覆工板を仮設した状態でもバリアフリー法に従い、ホーム先端から800~1000mmの位置に、点状突起42と1本の線状突起43を有する警告ブロック45を覆工板上に敷設することが必要となる。従来のホームドア工事中断時は、
図2に示すとおり、ホーム先端から長さD4=800mmの位置からホーム内側(線路側、ホーム先端と反対側)の位置に、複数の警告ブロック45をホーム長さ方向に連結した警告ブロックシート27が、ラインテープにより覆工板に貼り付けて固定される。
【0027】
そして、
図10に示すとおり、3枚の覆工板P1,P2,P3の横幅D1,D2,D3が全て約500mmであり、警告ブロックのホーム長さ方向と直角方向の長さD5が約400mmであり、警告ブロック45の位置がホーム先端から距離D4(800mm)にある。そのため、警告ブロックシート27は、覆工板P2とP3を跨いで貼り付けられることになる。
【0028】
警告ブロックシート27の両側をラインテープで覆工板に貼り付けることで、深夜の工事開始時の警告ブロックシートの撤去と、早朝の工事終了時の警告ブロックシートの復旧を短時間で容易に行うことができる。
【0029】
しかしながら、強風時には警告ブロックシート27がホーム上に飛散するリスクが懸念される。更に、降雨時には、工事中断時に警告ブロックシートを復旧する際、ガスバーナ等により覆工板表面を乾燥させながらラインテープで警告ブロックシートを貼り付ける作業が発生し、復旧作業時間が長くなりホームドア工事の実作業時間が短くなる問題が生じている。更に、覆工板P1、P2、P3のうちP2とP3に警告ブロックシートが跨って貼り付けられるため、工事中に覆工板P2とP3が警告ブロックシートと共に撤去される必要があり、ホームドア工事の効率が悪い。
【0030】
そこで、本発明の実施の形態では、覆工板に警告タイルシートをラインテープで貼り付けることに代えて、覆工板の構造を改良し、上記の従来の課題を解決する。
【0031】
[本実施の形態におけるホームドア工事用の覆工板構造]
図5は、本実施の形態におけるホームドア工事用の覆工板構造の一例を示す平面図である。
図6は、ホームドア工事用の覆工板構造を構成する3枚の覆工板の非連結状態を示す平面図である。
図5の水平方向が線路及びホームの長さ方向であり、垂直方向がホームの幅方向である。
図5の3枚の覆工板P11,P12,P13が並列に連結された覆工板構造100は、その連結を外すと、
図6に示される3枚の覆工板P11,P12,P13に分けられる。
【0032】
図5の例では、覆工板構造100は、3枚の覆工板P11, P12, P13を有する。覆工板P11がホーム先端側に配置され、ホーム先端側と反対側に覆工板P11と隣接して、覆工板P12、P13が順に隣接して配置される。覆工板P11の覆工板P12と反対側に線路が配置される。そして、覆工板P11, P12, P13は、一例として、水平方向の長さL10が約2500mmまたは2000mm等であり、垂直方向の幅D11, D12, D13が、それぞれD11=500mm、D12=300mm、D13=500mmである。
【0033】
図5の覆工板構造100は、ホーム先端側にその長さ方向が線路に沿って配置され、覆工板P11とP12を有する線路側の覆工板ユニット(P11+P12)と、覆工板ユニット(P11+P12)のホーム先端と反対側に配置された警告ブロック用覆工板P13とを有する。
【0034】
ホーム先端側にその長さ方向が線路に沿って且つ互いに隣接して配置される2枚の覆工板P11とP12を有する覆工板ユニット(P11+P12)は、第1の幅D11+D12と、第1の幅より長い第1の長さL10を有する長方形をなす。第1の幅D11+D12は、上記のとおり、D11=500mmとD12=300mmの和の800mmであり、バリアフリー法の法令で規定された警告ブロックのホーム先端からの距離800~1000mmの範囲内の長さである。
【0035】
更に、警告ブロック用覆工板P13は、ホーム先端と反対側で覆工板ユニット(P11+P12)に隣接して配置され、第2の幅D13と第2の幅より長い第2の長さL10を有する。
図5の例では、第2の長さL10は第1の長さL10と同じ長さであるが、必ずしも同じである必要はない。例えば、第2の長さと第1の長さが1:2または2:1など、比較的小さい整数比であってもよい。
【0036】
覆工板ユニット(P11,P12)を構成する覆工板と、警告ブロック用覆工板P13を構成する覆工板は、内部に空間を形成する内部空間形成構造体と、内部空間形成構造体の表面を覆う複数の床板を有する。この覆工板の構造については、
図7で詳述する。
【0037】
図5、
図6に示すとおり、警告ブロック用覆工板P13の表面に設けられた複数の床板40は、警告ブロック用覆工板P13の長さ方向に連続して配置される。各床板40は、警告ブロック用覆工板P13の幅D13と同じ幅を有し、床板40の覆工板の長さ方向の幅は、例えば300~420mmである。また、覆工板ユニットの覆工板P11,P12と警告ブロック用覆工板P13の左右両端には、後述する内部空間形成構造体の端部を被覆する端部連結部材53が設けられる。
図5、6には、覆工板P11,P12の複数の床板と端部連結部材53は図示されていない。
【0038】
警告ブロック用覆工板P13の各床板40は、表面に複数の点状突起42及び線状突起43が形成された警告ブロック床板41である。
図5、
図6の例では、警告ブロック床板41の表面に形成された警告ブロック45は、点状突起42が5×5の行列状に形成された点状ブロック44と、その点状ブロック44のホーム先端と反対側に配置された1本の線状突起(内方表示線)43を有する。
【0039】
警告ブロック床板41に形成される警告ブロック45は、覆工板ユニット(P11+P12)のホーム先端と反対側の長辺E1(覆工板P12の長辺E1)と接する警告ブロック用覆工板P13の長辺E2に沿って配置される。このように警告ブロック45を長辺E2に沿って配置することで、覆工板構造100において、警告ブロック45がホーム先端からD11+D12=800mmの位置に配置されることになる。この結果、ホーム先端から覆工板ユニット(P11+P12)と警告ブロック用覆工板P13を並列に配置すれば、覆工板構造100の長さ方向に形成される警告ブロックが、自動的にホーム先端から法令で定められた位置(800~1000mm)に配置されることになる。
【0040】
警告ブロック用覆工板P13の両端に被覆された端部連結部材53にも、5個の点状突起42と1個の線状突起43がプレス加工により形成される。端部連結部材53にも警告ブロック45の一部を形成することで、ホームの長さ方向に連結される複数の警告ブロック用覆工板P13には、途切れることのない帯状の警告ブロックが形成される。
【0041】
警告ブロック床板41は、例えば、アルミ板等の薄い板であり、金型プレス加工により、複数の点状突起42と線状突起43が薄い板に形成される。
【0042】
また、ホーム先端に配置された覆工板ユニット(P11+P12)を構成する覆工板P11には、そのホーム先端側の長辺E0に沿って、CPライン((Color Psychology(色彩心理)ライン)CPが塗装される。CPラインは、色弱者に対してホーム先端位置を知らせる機能を有する。
【0043】
前述したとおり、ホーム先端側の覆工板ユニット(P11+P12)を構成する2枚の覆工板P11,P12の幅の合計は500+300=800mmであるので、複数の警告ブロック床板41を表面に有する警告ブロック用覆工板P13を覆工板P12に並べてホーム上に配置すると、複数の警告ブロック床板41の表面に形成された警告ブロック45がホーム先端から800mmの位置に配置される。
【0044】
その結果、覆工板ユニット(P11+P12)を構成する覆工板P11,P12と、警告ブロック用覆工板P13とを、仮桁である覆工桁20C上に配置して固定するだけで、工事中断時の覆工板状態に復旧することができる。覆工板の復旧作業において従来のような警告ブロックシートをラインテープで覆工板に貼り付ける作業が不要になる。また、警告ブロック用覆工板P13の複数の警告ブロック床板41に直接、警告ブロック45を構成する複数の点状突起と1つの線状突起が形成されているので、従来のように警告ブロックシートが強風で覆工板からはがれることもない。
【0045】
更に、後で詳述するように、警告ブロック用覆工板P13を撤去せず覆工板P11とP12を撤去して工事を行うことができ、覆工板P11、P12を復旧する際に、正しい位置に残されている警告ブロック用覆工板P13を基準位置として覆工板P11、P12を復旧することができる。これにより、3枚の覆工板を全て復旧する場合に行われていた、車両とホーム先端部の覆工板との距離を確保するためのホームの建築限界測量を行わずに覆工板P11、P12を復旧でき、作業効率が向上する。
【0046】
また、覆工板P11とP12を撤去して先端タイルを敷設すれば、警告ブロック用覆工板P13を残した状態で先端タイル上にドア開閉制御装置を設置でき、警告ブロック用覆工板P13を撤去して警告ブロックを敷設する工事と並行させることで、工期短縮が可能になる。
【0047】
[覆工板の構造]
図7は、本実施の形態における覆工板の構成例を示す図である。
図7の(1)は、覆工板P11, P12, P13の平面図、(2)は覆工板の右側面図、(3)は覆工板のA-Aの断面図、(4)は端部連結部材の平面図、(5)は端部連結部材の左側面図、(6)は覆工板の正面図、(7)は覆工板のB-B断面図である。
【0048】
図7に示す覆工板は、
図5、
図6に示した覆工板P11,P12,P13の構造を示す。覆工板P11,P12の場合は、連結された複数の角形鋼管の表面に床板40が被覆され、警告ブロック用覆工板P13の場合は、連結された複数の角形鋼管の表面に警告ブロック床板41が被覆される。警告ブロック床板41には点状突起と線状突起が形成されるが、
図7ではそれらは省略されている。連結された複数の角形鋼管が、覆工板の内部に空間を形成する内部空間形成構造体に対応する。
【0049】
図7(1)の平面図に示すとおり、例えば、覆工板は、所定の間隔を空けて並列に配列された4本の角形鋼管SP1,SP2,SP3,SP4と、紙面上の2本の角形鋼管SP1,SP2及び下の2本の角形鋼管SP3,SP4それぞれを、表面側で連結する矩形連結部材50と、中央の2本の各角形鋼管SP2,SP3を裏面側で連結するU字型連結部材52とを有する。U字型連結部材52の中央には、覆工板を覆工桁に固定するクランクを挿入するスリット孔52aが形成される。
【0050】
更に、覆工板は、連結された4本の角形鋼管SP1~SP4の両端部をそれぞれ被覆する1対の直方体でキャップ型の端部連結部材53を有する。但し、左側の端部連結部材53は、角形鋼管に被覆されてない位置に示される。端部連結部材53は、連結された角形鋼管に図示しないネジにより固定される。また、端部連結部材53には、覆工板を覆工桁に載置したときの覆工板の高さ調整ネジ孔56と、覆工板を保持する場合に保持工具が挿入される覆工板保持工具孔57とが2箇所に形成される。
図7(4)の端部連結部材53の平面図にも、高さ調整ネジ孔56と覆工板保持工具孔57とが示される。
【0051】
そして、覆工板は、連結された4本の角形鋼管SP1~SP4の表面を被覆する床板40または警告ブロック床板41を有する。複数の床板40または警告ブロック床板41は、連結された角形鋼管SP1~SP4の両端の端部連結部材53の間の表面を被覆する。
図7には、平面図(1)には左端の1枚の床板40または警告ブロック床板41が実線で示される。残りの床板40または警告ブロック床板41は、B-B断面図(7)に破線で示される。床板40または警告ブロック床板41は、図示しないネジ孔で矩形連結部材50に固定されて、連結された角形鋼管SP1~SP4に固定される。
【0052】
覆工板の外側に位置する角形鋼管SP1,SP4には、目違い防止孔58が設けられる。覆工桁上に載置された状態で隣接する覆工板の剛性の違いによりそれらのたわみ量が異なり覆工板表面の高さがずれることがある。それを防止するための隣接する覆工板の目違い防止孔58に目違い防止ピン59が挿入される。
【0053】
図7(2)の右側面図には、端部連結部材53の側面と、角形鋼管SP1~SP4の側面とが示される。
図7(5)の端部連結部材53の左側面図には、端部連結部材の左側面に形成された3枚の端部連結部材蓋54が斜線で示される。端部連結部材53の端部連結部材蓋54が形成されていない領域は、覆工板を長手方向に連結するための図示しない連結部材が挿入される端部連結部材孔55が形成される。
【0054】
図7(3)のA-A断面図には、4本の角形鋼管SP1~SP4と、矩形連結部材50と、U字型連結部材52と、床板40または警告ブロック床板41それぞれの断面が示される。床板40または警告ブロック床板41は、4本の角形鋼管SP1~SP4の表面を覆う表面領域と両外側の角形鋼管SP1,SP4の外側面を一部覆う側面領域とを有し、断面図(3)ではコの字を左右反転した形状をなす。
【0055】
図7(6)の正面図には、角形鋼管SP4の右側端部を被覆する直方体の端部連結部材53と、角形鋼管SP4の表面側を被覆する床板40または警告ブロック床板41とが示される。また、連結部材50は破線で示される。さらに、角形鋼管SP4の中心位置に目違い防止孔58が示される。
【0056】
図7(7)の覆工板のB-B断面図には、角形鋼管SP4と端部連結部材53と床板40または警告ブロック床板41の断面が示され、更に、連結部材50と、平面図(1)に示されていない床板40または警告ブロック床板41が破線で示される。両端部連結部材53に形成された端部連結部材孔55も示される。さらに、角形鋼管SP4の中心位置に目違い防止孔58が示される。
【0057】
[本実施の形態におけるホームドア工事中断時のプラットホーム]
図8は、本実施の形態の覆工板構造を使用するホームドア工事中断時でのプラットホームの構造例を示す断面図である。
図8中の地面10、盛土11、高さ調整桁12、擁壁13、アスファルト塗装15、鋼管杭21及び覆工桁20Cは、
図2の従来例と同じである。
【0058】
但し、
図2の従来例と異なり、
図8の覆工桁20C上に高さ調整桁12を介して載置される覆工板構造は、線路19側のホーム先端に配置される覆工板P11と、覆工板P11に隣接して配置される覆工板P12と、覆工板P12に隣接して配置される警告ブロック用覆工板P13を有する。そして、
図8の例では、覆工板P11、P13の幅D11、D13は、
図2と同様に約500mmであるが、覆工板P12の幅D12は、
図2と異なり約300mmである。そのため、ホーム先端側に配置される覆工板P11とP12の幅D11、D12の合計D11+D12=D4が、法令で設定されているホーム先端から警告ブロックまでの長さの範囲の800mmになる。
【0059】
さらに、
図8の例では、警告ブロック用覆工板P13の床板は、点状突起42と線状突起43が金型プレス等により形成された警告ブロック床板であり、点状突起42と線状突起43を有する警告ブロック45が、警告ブロック用覆工板P13の長辺E2側に配置される。警告ブロック45の水平方向の長さが約400mmであるので、警告ブロック床板に形成される警告ブロック45は、幅D13が500mmの警告ブロック用覆工板P13の長辺E2側に偏って形成される。
【0060】
[本実施の形態の警告ブロック床板の製造工程]
図9は、本実施の形態の警告ブロック床板の製造工程例を示す図である。
図9(1)は、時計回りに、警告ブロックを形成する前の警告ブロック床板41の平面図、右側面図、正面図を示す。そして、
図9(2)~(6)は、警告ブロックを形成する各工程での平面図、右側面図、正面図を示す。
【0061】
図9(1)の工程では、警告ブロック床板41は、例えば矩形のアルミ板の上下端の所定幅の領域が90°折り曲げられて形成されている。右側面図の折り曲げられた形状は、
図7(3)に示した警告ブロック床板41と同じである。
【0062】
本実施の形態では、上記のアルミ板で形成された警告ブロック床板41に金型によるプレス加工を行って、点状突起と線状突起を形成する。前述したとおり、1枚の警告ブロック床板41には、例えば5×5=25個の点状突起42と1個の線状突起43をプレス加工で形成する。覆工板は工事中断時にホームに設置され、その上を鉄道利用者が歩行するので、表面が平坦であることが必要となる。
【0063】
そこで、本実施の形態では、最初に直線状に隣接する5個の点状突起をプレス加工する点状突起金型(図示せず)を使用して警告ブロック床板41を5回プレス加工し、その後、1個の線状突起をプレス加工する線状突起金型を使用して警告ブロック床板41をプレス加工する。このように、複数回に分けて25個より少ない個数(5個)の点状突起金型を順次プレス加工することで、プレス加工による警告ブロック床板の変形を抑制し平坦形状を維持できる。具体的には、以下のとおりである。
【0064】
図9(2)では、縦方向に並んだ5個のドーム型点状突起をプレス加工するためのドーム型点状突起金型(図示せず)を使用して警告ブロック床板41をプレス加工し、5個のドーム型点状突起42dを形成する。プレス加工では、ドーム型点状突起の金型(オス側とメス側)が右側面図に示された警告ブロック床板41の右側と左側からプレスされる。ドーム型点状突起とは半円球状の突起である。右側面図に示されるとおり、ドーム型点状突起42dは、警告ブロック床板41の表面側が凸、裏面側が凹の突起である。
【0065】
図9(3)は、5個用のドーム型点状突起金型を使用したプレス加工を更に4回繰り返した状態を示し、合計で25個のドーム型点状突起42dが警告ブロック床板に形成される。
【0066】
次に、
図9(4)では、ドーム型点状突起の頂部を平坦にするハーフドーム型点状突起金型(図示せず)を使用して、警告ブロック床板41をプレス加工し、法令で定められたハーフドーム型の点状突起42に加工する。このプレス加工は、5個用のハーフドーム型点状突起金型を使用して5回のプレス加工を行ってもよく、もしくは、25個用のハーフドーム型点状金型を使用して1回のプレス加工を行っても良い。このプレス加工では、ハーフドーム型点状突起の中心の丸い平坦部分と平坦部分の周囲の傾斜部分との間が法令で定められた2mm以内の角丸にすることが必要である。ドーム型点状突起の形状では歩行者が滑りやすいので、ハーフドーム型点状突起であることが定められている。
【0067】
更に、
図9(4)の右上に示すとおり、ハーフドーム型点状突起42の中心の丸い平坦部分に、1~2mmの凹凸を形成するのが望ましい。金属の床板に形成されたハーフドーム型点状突起42は、後述する粉体塗装を行っても時間の経過とともに滑り易くなるので、凹凸を形成することで滑りにくくすることができる。そして、粉体塗装の上に黄色塗装を行って弱視力者による識別を容易にするが、凹凸に黄色塗装を行うと、歩行者による摩耗で凸部頂部の黄色塗装がはがれても凹部内の黄色塗装が残り、識別力を長く維持できる。
【0068】
図9(5)では、線状突起43をプレス加工するための線状突起金型を使用して警告ブロック床板41をプレス加工し、1個の線状突起43を形成する。法令上、線状突起43は、平面視の幅が点状突起42より大きく、高さが点状突起42と同じである。線状突起43も、警告ブロック床板41の表面側が凸、裏面側が凹の突起である。線状突起43の場合も、
図9(5)の右上に示すとおり、線状突起43の中心の細長い平坦部分に、1~2mmの凹凸を形成するのが望ましい。そのメリットは、ハーフドーム型点状突起42と同じである。
【0069】
そして、
図9(6)では、最初に、警告ブロック床板41の平面視の全表面を滑り止め用の粉体樹脂で塗装する。その後、警告ブロック床板41の表面の25個の点状突起42と1個の線状突起43とが形成された警告ブロック45の領域に、弱視用の黄色塗装を行う。
【0070】
粉体樹脂の塗装剤は、例えば、飽和ポリエステル樹脂の塗料に、滑り止めのためのアルミナ粉末を混入したものである。塗装の具体的作業は、母材であるアルミ板の警告ブロック床板41を例えば340℃程度に熱した状態で、アルミナ粉末混入樹脂塗料を床板表面に吹き付ける静電塗装である。黄色塗装は溶剤塗装により行う。塗装作業は、アルミナ混入樹脂塗料の塗装時間を調整管理しながら、法令に基づく点状突起及び線状突起の上部平面の幅、全体の幅、高さ、上部平面と斜面の間の丸みの各測点を満たすように制御される。
【0071】
図5で説明したとおり、警告ブロック用覆工板P13には、表面の複数の警告ブロック床板41に加えて、端部連結部材53にも点状突起42と線状突起43を形成する。警告ブロック床板41は、例えばアルミ製の板であるが、端部連結部材53は鉄製である。警告ブロック床板41と端部連結部材53それぞれの材質が異なり、それに応じて板厚も異なる。
【0072】
このように材質と板厚が異なるため、警告ブロック床板41のプレス加工用と、端部連結部材53のプレス加工用とで、それぞれ異なるドーム型点状突起金型、ハーフドーム型点状突起金型、線状突起金型が使用される。
【0073】
端部連結部材53に5個の点状突起と1個の線状突起をプレス加工する工程では、
図9と同様に、最初に、5点のドーム型点状突起金型によるプレス加工で5個のドーム型点状突起を形成する。その後、ハーフドーム型点状突起金型により5個のドーム型点状突起の頂部を平坦にプレス加工する。そして、線状突起金型によるプレス加工で1個の線状突起を形成する。
【0074】
[変形例1]
図10に示した従来の覆工板構造では、幅500mmの3枚の覆工板P1,P2,P3を並列に並べる。同じ幅、同じ長さの覆工板を使用することで、作業性が良くなり、コストダウンになる。
【0075】
それに対して、
図5、6に示した本実施の形態の覆工板構造では、幅500mmの覆工板P11と、幅300mmの覆工板P12と、幅500mmの警告ブロック用覆工板P13を、並列に並べる。幅500mmの覆工板P11、P13は、
図7に示したように、内部空間形成構造体として4本の角形鋼管SP1~SP4を連結した構造であり、一方で、幅300mmの覆工板P12は、例えば3本の角形鋼管を連結した構造になる。そのため、同じ角形鋼管を使用すると、幅が狭い覆工板P12の剛性が、幅が広い覆工板P11、P13の剛性より低くなり、3枚の覆工板P11,P12,P13を覆工桁20C間に載置した場合、鉄道利用者の重量により、幅が狭い覆工板P12のたわみ幅が広い覆工板P11、P13より大きくなる。
【0076】
このたわみ量がばらつくことを解決するために、本実施の形態では、幅が狭い覆工板P12の角形鋼管の板厚を、幅が広い覆工板P11,P13の角形鋼管の板厚より厚くするのが望ましい。厚さの違いは、覆工桁20C上に載置した場合のたわみ量が同程度になるように選択することが望ましい。幅狭の覆工板の角形鋼管の板厚を幅広の覆工板の角形鋼管より厚くして、両覆工板の剛性を同等にし、たわみ量を同等にすることが望ましい。
【0077】
[変形例2]
上記の実施の形態では、線路側の覆工板ユニットP11+P12は、幅500mmの覆工板P11と幅300mmの覆工板P12を並列に連結して構成される。しかし、線路側の覆工板ユニットP11+P12を、幅400mmの2枚の覆工板を平行に連結して構成してもよい。あるいは、線路側の覆工板ユニットP11+P12を、幅800mmの1枚の覆工板で構成してもよい。いずれの場合も、警告ブロック用覆工板P13に設けられた警告ブロック45が、ホーム先端から800mmになるので、法規で定められている警告ブロックのホーム先端からの位置、800~1000mmを満たすことになる。
【0078】
[変形例3]
上記の実施の形態では、
図7に示したとおり、複数本の角形管を連結することで覆工板P11,P12及び警告ブロック用覆工板P13の内部空間形成構造体を構成する。内部空間形成構造体は、複数本の角形管を連結する構造以外に以下のような構造でもよい。
【0079】
例えば、特許第4880797号公報等の
図4、9、10に記載されるように、内部空間形成構造体は、覆工板の幅方向の断面が、覆工板の底面と上面の間で交互に曲折を繰り返す波型鋼板でもよい。即ち、波型鋼板は、覆工板の底面に位置する底面部と、上面に位置する上面部と、底面部と上面部の間に位置する底面から上面にまたは上面から底面に位置する斜め垂直部とを有する。または、複数本の溝形鋼を連結した構造でもよい。
【0080】
または、特開2020-143147号公報等に記載されるように、覆工板の底面と上面の間に空間を形成する蓋のない箱型の底板と、空間内を覆工板の長さ方向に延びて配置される底面から上面方向の複数の縦リブと、空間内の覆工板の幅方向に延びて配置される底面から上面方向の複数の横リブを有する構造も、内部空間形成構造体とすることができる。
【0081】
[覆工板を使用したホームドア設置工事]
次に、ホームドア設置工事における本実施の形態の覆工板構造の使用方法を説明して、覆工板構造のメリットを説明する。
【0082】
図11は、第1のタイプのホームドアが設置されたホームの断面図である。
図4に示した横桁20の位置の断面図である。また、
図12は、第1のタイプのホームドアが設置されたホームの平面図及び断面図である。
図12の(1)は平面図、(2)(3)は平面図のB、Aの位置の断面図である。
図12(3)は
図11と同じ位置の断面図であるが、ドア開閉制御装置が省略されている。第1のタイプのホームドアはドア開閉制御装置の筐体の両面が壁構造を有する。
【0083】
ホームドア設置工事の主な工程は、以下のとおりである。以下の工程は、例えば、PPC板22の長さ5000mmの単位で行われる。その場合、各施工チームがPPC板の長さ5000mmの単位別に工事を担当する。各断面図において、擁壁13の左側が線路側19であり、擁壁13の右側は盛土11で埋められている。
【0084】
(工程1)
図4で述べたとおり、ホーム長さ方向に沿って所定間隔(例えば5m)に鋼管杭21が打設され、横桁20(又は覆工桁)が鋼管杭で片持ちされるよう敷設される。例えば、
図12(1)の位置Aに鋼管杭21と横桁20が施設される。この横桁20は、工事中、横桁20の中間位置に敷設される中間支点(図示せず)と共に、覆工板を支える。具体的には、横桁20上に高さ調整桁が敷設され、高さ調整桁の上に覆工板が置かれる。覆工板の長さは、例えば、鋼管杭21の間隔5000mmの半分の2500mmである。
【0085】
(工程2)そして、ケーブルを収容するケーブルキャビネット29が線路側19の擁壁13にアンカー止めされる。
【0086】
(工程3)その後、横桁20間にPPC板22が敷設される。その結果ケーブルキャビネット29は擁壁13とPPC板22との間に配置される。PPC板22はホームドアの重量や風による応力等を支えるホームドア設置基板である。
【0087】
上記の工程2、3では、工事箇所の覆工板を撤去してそれぞれの工事が行われ、工事中断中は撤去した覆工板が元の位置に被覆され復旧される。
【0088】
(工程4)PPC板22が横桁20上に敷設された後、覆工板を撤去し、ホーム先端側に先端タイル24を、ホーム中央側に警告ブロック23が敷設される。
図12(2)のB-B断面の位置では、ホーム幅方向500mmの先端タイル24Bと、同300mm、400mmの警告ブロック23A,23Bが敷設される。
図12(3)のA-A断面の位置では、800mmの先端タイル24Aと、400mmの警告ブロック23Bが敷設される。300mmの警告ブロック23Aは点状ブロック44を有し、400mmの警告ブロック23Bは、点状ブロック44と線状突起(内方表示線)43を有する警告ブロック45(
図6)である。先端タイルと警告ブロック23は、ホーム表面28と同じ平面になる。
【0089】
(工程5)先端タイルと警告ブロックが敷設されると、
図11に示すとおり、A-A断面の位置の800mmの先端タイル24Aの上に、ホームドアであるドア開閉制御装置31が設置される。具体的には、ドア開閉制御装置31はPPC板22にアンカーボルトなどにより固定される。また、電源と信号のケーブルがケーブルキャビネット29内に敷設される。先端タイルと警告ブロックが敷設されると覆工板の復旧は行われない。
【0090】
図11に示されるとおり、ドア開閉制御装置31は、車両建築限界位置62よりホーム側に敷設される。ホームに沿って走行する車両への影響をなくすために車両建築限界位置62より線路側の空間に建築物を敷設することが禁止されていることが理由である。車両建築限界位置を守ることで、ホーム先端から、例えば390mm、の位置にドア開閉制御装置31が敷設されるため、その重量や風応力等を支えるPPC板22の幅は、例えば700mmが採用される。
【0091】
図13は、工程3でのホームの平面図及び断面図である。
図12と同様に、
図13(1)は平面図、(2)(3)は平面図のB、Aの位置の断面図である。工程1で、横桁20上に高さ調整桁(図示せず)を介して、線路19側から覆工板P11、P12、P13が敷設される。また、平面図のAの位置には、鋼管杭21を敷設するために追加の覆工板P14も敷設される。前述したとおり、鋼管杭21と横桁20は、例えば5000mm間隔で敷設され、それに対して、覆工板P11、P12、P13は、例えば2500mmの長さであり、5000mm間隔の横桁20と横桁間中間位置の中間支点との間に敷設される。
【0092】
覆工板が敷設された後、工程2では、覆工板P11、P12を仮撤去して、擁壁13にケーブルキャビネット29が敷設される。ケーブルキャビネット29は、幅が約500mmであるので、覆工板P11、P12(合計幅800mm)を仮撤去すれば、覆工板P13を撤去せず残したままの状態で、ケーブルキャビネット29を敷設できる。ケーブルキャビネット29を敷設した後、撤去してない覆工板P13に隣接して覆工板P12とP11を復旧する。覆工板P13を撤去しないことにより、覆工板P13の位置を基準にして、覆工板P12とP11を復旧することができ、ホーム建築限界距離を測定して覆工板P12とP11の位置を確定する作業をなくすことができる。ホーム建築限界距離とは、車両側面からホーム先端を建築できる距離である。従来のように覆工板P2とP3とを跨いで警告ブロックシートを貼り付けていた場合、警告ブロックシートを剥がして覆工板P2,P3をP1と共に撤去すると、覆工板の復旧時にホーム建築限界距離を測定してホーム先端の覆工板の位置を確定する作業が必要になっていた。警告ブロックシートを剥がす際に覆工板P2,P3の位置がずれる場合があり、覆工板P2,P3を共に撤去していた。
【0093】
同様に、工程3では、覆工板P11、P12(合計幅800mm)を仮撤去して、例えば幅700mmのPPC板22が5000mm間隔の横桁20の上に敷設される。この場合も、PPC板22の幅700mmに対して覆工板P11、P12(合計幅800mm)を仮に撤去すれば、覆工板P13を撤去せず残したままで、幅700mmのPPC板22を敷設することができ、工程2と同様に作業効率を高めることができる。
【0094】
図14は、工程4でのホームの平面図及び断面図である。
図14(1)は平面図、(2)(3)は平面図のB、Aの位置の断面図である。工程4では、覆工板P11、P12を撤去して、平面図のAの位置の固定柵の領域RG_Aでは先端タイル24Aが敷設され、Bの位置の乗降口の領域RG_Bでは先端タイル24Bと警告ブロック23Aが敷設される。その後、覆工板P11、P12は復旧されない。
【0095】
この時、覆工板P13は撤去せず覆工板P13の位置の警告ブロック23Bの敷設を先延ばししても良い。そして、少なくともAの位置の固定柵の領域RG_Aに先端タイル24Aが敷設されると、ドア開閉制御装置31を先端タイル24Aの上に設置することができる。従って、ドア開閉制御装置の設置工事は、覆工板P13を撤去して警告ブロック23Bを敷設する工事と並行に行うなどの工事の柔軟性が高くなる。または、ドア開閉制御装置31の設置工事を先行させ、警告ブロック23Bの敷設工事を後に行ってもよい。このような工事の柔軟性により工期を短縮できる。
【0096】
図15は、上記とは異なる第2のタイプのホームドアが設置されたホームの断面図である。
図15の第2のタイプのホームドア(ドア開閉制御装置31_2)は、
図11の第1のタイプのホームドア(ドア開閉制御装置31)とは異なり、ドアを収容する筐体の壁がスケルトン化されるなど軽量化されている。軽量化に伴い、ドア開閉制御装置31_2を固定する構造が、
図11とは異なる。
【0097】
すなわち、
図11のドア開閉制御装置31には、その重量と筐体の壁への風応力等を支えるために、鋼管杭21に取り付けた横桁20と強度の高いPPC板20の構造が採用される。それに対して、
図15のドア開閉制御装置31_2は、軽量化され筐体のスケルトン壁による風応力低下を理由に、盛土11上に敷設する幅1000mmのテラセル61と幅1400~1700mmのRC板(リインフォースト・コンクリート板)60の構造が採用される。これにより、ドア開閉制御装置31_2は、幅が広いRC板60の重量で支えられる。そして、覆工板構造は、例えば、ホーム先端から順に幅500mm、300mm、500mm、300mm(合計1600mm)または幅500mm、300mm、500mm、500mm(合計1800mm)の4枚が採用される。このため、テラセル61の敷設工事では、ホーム先端から2枚目~4枚目の覆工板を撤去することになり、RC板60の敷設工事では、4枚全ての覆工板を撤去することになる。
【0098】
しかし、ケーブルキャビネット29の敷設工事では、
図13と同様に、ホーム先端側の覆工板P11とP12だけを撤去し、残りの覆工板P13とP14を残したままにすることができる。同様に、RC板60上の固定柵の領域での先端タイル24Aの敷設工事と、乗降口の領域での先端タイル24Bと警告ブロック23Aの敷設工事を、覆工板P11、P12を撤去して行うことができる。そして、先端タイル24A上にドア開閉制御装置31_2を設置する工事と、覆工板P13を撤去して行う警告ブロック23Bを敷設する工事とを並行して、または自由な順番で行うことができる。したがって、
図15のドア開閉制御装置によるホームドア設置工事でも、本実施の形態の覆工板構造とすることで、覆工板の撤去と復旧作業の効率化と、工期短縮を実現できる。
【0099】
上記の覆工板P11とP12を撤去しP13を撤去せずに工事を行うことができるのは、覆工板P11とP12を同じ400mmにした場合も同様である。
【0100】
[まとめ]
(1)本実施の形態における覆工板構造では、覆工板の配列を変更して、ホーム先端の覆工板P11を幅500mmに、2枚目の覆工板P12を幅300mmにした。この2枚の覆工板を有する覆工板ユニット(P11+P12)の幅が800mmとなっていて、警告ブロック位置をホーム先端(または縁端)から800mm以上、最大でも1000mm程度とするバリアフリー法の規定に適合する。そして、3枚目の覆工板P13を、床板に金型プレス加工して複数の点状突起と1つの線状突起を直接形成した連続する複数枚の警告ブロック床板で被覆した警告ブロック用覆工板にする。これにより、3枚目の覆工板P13を覆工板ユニット(P11+P12)に並列に設置するだけで警告ブロックがバリアフリー法の規定の位置に敷設される。これにより、従来のように警告ブロックシートを敷設する必要がなく、工事中断時及び再開示の覆工板の復旧及び撤去の作業効率が上がる。また、警告ブロックシートが強風で飛散することがなくなる。
【0101】
本実施の形態の覆工板構造では、長方形の覆工板ユニット(P11+P12)と警告ブロック用覆工板P13の長さ方向が線路に沿って配置される。そして、警告ブロック用覆工板P13の長さ方向に連続して被覆される複数枚の警告ブロック床板それぞれに、金型プレス加工で複数の点状突起と1つの線状突起(または複数の点状突起、または複数の線状突起)が形成される。これにより、各警告ブロック床板の平坦性を保つことができ、複数枚の警告ブロック床板で被覆される警告ブロック用覆工板P13の全体の平坦性を得ることができる。
【0102】
これに対して、警告ブロック用覆工板P13が1枚の鋼板で構成される場合、1枚の非常に長い鋼板の表面に、複数の点状突起と1つの線状突起を有する警告ブロックシートの表面形状を金型プレス加工で形成すると、長い鋼板の平坦性を保つことは極めて困難となる。
【0103】
以上のような理由から、長方形の長さ方向が線路に沿って配置される覆工板がその長さ方向に連続する複数枚の床板で被覆される構造は、第1に覆工板全体の表面を平坦化でき、第1に複数枚の床板それぞれに金型プレス加工で警告ブロックシートの表面形状を形成するので、各床板を平坦化でき、第2にその複数の床板で被覆される警告ブロック用覆工板全体の表面も平坦化できる。従って、本実施の形態の覆工板の構造は、線路に沿って配置される長い警告ブロックシートの表面形状を形成することに適している。
【0104】
(2)本実施の形態の覆工板P11,P12及び警告ブロック用覆工板P13は、複数本の角形鋼管を連結した内部空間形成構造体を複数枚の床板40または警告ブロック床板41で被覆するので、内部に空間が形成され軽量化されている。したがって、ホームの長さ方向に長い長方形の覆工板であっても、軽量化されているため、工事中断時及び再開時の覆工板の復旧及び撤去の作業が効率化できる。
【0105】
(3)また、(1)の記載に関連するが、本実施の形態の警告ブロック用覆工板P13は、内部空間形成構造体を複数の警告ブロック床板41で被覆して構成される。そして、警告ブロック床板41は、各床板を金型プレス加工して複数の点状突起と1本の線状突起を表面に形成したものである。点状突起42と線状突起43を金型プレス加工すると、加工された板が歪んだり曲がったりしやすい。しかし、1枚の警告ブロック用覆工板P13の長さ方向を分割した比較的小さいサイズの床板であれば、金型プレス加工による歪や曲がりを許容できるまで抑制できる。
【0106】
さらに、警告ブロック床板は、滑り止めのための粉体樹脂塗装と、色弱用の黄色塗装を施す必要がある。塗装では、母材である警告ブロック床板を高温に熱した状態で、粉体樹脂塗料を吹き付け塗装する。この場合も、比較的小さいサイズの床板であるので、高温に熱する工程で生じる床板のひずみや曲がりを許容できるまで抑制できる。
【0107】
従って、本実施の形態のサイズが小さい床板で被覆される覆工板は、警告ブロックに必要な複数の点状突起42と1本の線状突起を床板に直接加工するのに適した構造を有する。言い換えると、本実施の形態では、内部空間形成構造体を被覆する小さいサイズの床板を警告ブロック床板に使用することで、金型プレス加工や静電塗装等による警告ブロックの形成を可能にする。
【0108】
また、ハーフドーム型の点状突起の頂部面に細かい凹凸を形成することで、床板が鉄板であっても、粉体塗装との組み合わせで、警告ブロックがより滑りにくくできる。また、細かい凹凸上に黄色塗装を行うことで、歩行者による摩耗があっても凹凸の凸部面のみ黄色塗装が剥がれ凹部の黄色塗装がはがれないので、弱視対策の黄色塗装の寿命を長くできる。
【0109】
(4)本実施の形態では、覆工板ユニットを2枚の幅が異なる覆工板P11とP12で構成し、幅が狭い2枚目の覆工板P12の内部空間形成構造体である角形鋼管の本数を、幅が広い1枚目の覆工板P11の角形鋼管の本数より少なくする。それに伴い、2枚目の覆工板P12の角形鋼管の板厚を、1枚目の覆工板P11の角形鋼管の板厚より厚くする。これにより、1枚目と2枚目の覆工板の硬性を同程度にでき、覆工桁20C上に並べて載置した場合のたわみ量を同程度にできる。
【0110】
(5)床板を金型プレス加工して警告ブロックを形成する工程では、ドーム型金型でプレス加工してドーム型点状突起を形成し、その後、ハーフドーム型金型でプレス加工してハーフドーム型点状突起に加工する。更に、5×5=25個の点状突起を、25個より少ない例えば5個の点状突起用の金型によるプレス加工を複数回繰り返して加工する。従って、25個の点状突起用の金型でプレス加工するよりも、警告ブロックの加工が容易になる。
【0111】
本実施の形態では、ホーム先端の1枚目の覆工板のホーム先端側長辺に沿ってCPラインを塗装したので、色弱者によるホーム先端の識別を容易にできる。
【0112】
(6)前述の特許文献1(特開2011-6844号公報)には、「パネル本体自体に凹凸を付けて警告表示部とすることも可能である。」との記載がある。しかし、特許文献1に記載されたプラットホーム用構成パネル1は、ホームの幅方向に長い長方形の覆工板がホームの長さ方向に並べられるものであり、本実施の形態の覆工板構造の覆工板のように、ホームの長さ方向に長い長方形の覆工板がホームの長さ方向に並列に配置されるものではないので、覆工板の撤去と復旧の作業性は極めて低い。また、プラットホーム用構成パネル1は1枚の鋼板であるので、金型プレスで複数の点状突起を直接形成すると、その平坦性を得ることは困難である。本実施の形態は、ホーム長さ方向に長い長方形の複数の覆工板をホームの幅方向に並列に配置される覆工板構造において、覆工板ユニット(P11+P12)と警告ブロック用覆工板P13をホーム先端に配置するだけで、法令で定められているホーム先端からの位置に警告ブロックを施設でき、警告ブロックシートの飛散等の課題を解決するものである。
【0113】
(7)本実施の形態の覆工板構造は、合計幅が例えば800mmの覆工板ユニット(P11+P12)と警告ブロック用覆工板P13を有するので、ホームドア工事において、覆工板ユニットの2枚の覆工板P11,P12を撤去し、警告ブロック用覆工板P13を撤去せず残したままで、ケーブルキャビネットやPPC板の敷設を行うことができ、工事の効率を高くできる。また、覆工板ユニット(P11+P12)を撤去し先端タイル敷設の後、ドア開閉制御装置の設置工事と警告ブロック23Bの敷設工事とを並行して行う、またはそれぞれ任意の順番で行うなどにより、工期短縮が可能になる。
【符号の説明】
【0114】
10:地面 11:盛土
13:擁壁 13a:避難口
14:RC板 15:アスファルト塗装
16:敷モルタル 17:警告ブロック
18:先端タイル 19:線路側
12:高さ調整桁 20:横桁
20C:覆工桁(仮桁) 21:鋼管杭
22:PPC板 23:警告ブロック
24:先端タイル 25:ケーブル通し穴
26:ケーブル 27:警告ブロックシート
28:ホーム表面 29:ケーブルキャビネット
30:ホームドア 31:ドア開閉制御装置(ホームドア筐体)
31_2:ドア開閉制御装置
32:ドア P1, P2, P3:覆工板
100:覆工板構造 P11,P12,P13:覆工板
P11とP12:覆工板ユニット P13:警告ブロック用覆工板
P13:警告ブロック用覆工板 D11,D12,D13:幅
40:床板 41:警告ブロック床板
42:点状突起 42d:ドーム型点状突起
43:線状突起 44:点状ブロック
45:警告ブロック
E0, E1, E2:長辺 SP1,SP2,SP3,SP4:角形鋼管
50,52:連結部材 52a:覆工板固定用孔
53:端部連結部材 54:端部連結部材蓋
55:端部連結部材孔 56:高さ調整ネジ孔
57:覆工板保持工具孔 58:目違い防止孔
59:目違い防止ピン
60:RC板 61:テラセル
62:車両建築限界位置