(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-25
(45)【発行日】2024-10-03
(54)【発明の名称】有機EL表示素子用封止剤
(51)【国際特許分類】
H10K 50/844 20230101AFI20240926BHJP
C08G 59/20 20060101ALI20240926BHJP
C08G 59/68 20060101ALI20240926BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20240926BHJP
H01L 23/31 20060101ALI20240926BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20240926BHJP
H10K 85/10 20230101ALI20240926BHJP
【FI】
H10K50/844
C08G59/20
C08G59/68
H01L23/30 F
H10K50/10
H10K85/10
(21)【出願番号】P 2020545738
(86)(22)【出願日】2020-07-07
(86)【国際出願番号】 JP2020026535
(87)【国際公開番号】W WO2021010226
(87)【国際公開日】2021-01-21
【審査請求日】2023-04-14
(31)【優先権主張番号】P 2019131914
(32)【優先日】2019-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】小林 崇希
(72)【発明者】
【氏名】末▲崎▼ 穣
(72)【発明者】
【氏名】安部 真理子
【審査官】岩井 好子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/221935(WO,A1)
【文献】特開2009-132834(JP,A)
【文献】国際公開第2017/099055(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/083850(WO,A1)
【文献】特開2009-000830(JP,A)
【文献】国際公開第2017/078006(WO,A1)
【文献】特開2009-191129(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0112050(US,A1)
【文献】国際公開第2019/203180(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 50/844
C08G 59/20
C08G 59/68
H01L 23/29
H10K 50/10
H10K 85/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオン重合性化合物とカチオン重合開始剤とを含有する有機EL表示素子用封止剤であって、
前記カチオン重合性化合物は、シクロアルケンオキシド型脂環式エポキシ化合物、及び、ビフェニル骨格とエポキシ基又はオキセタニル基とを有する化合物を含み、
前記カチオン重合性化合物100重量部中における、前記シクロアルケンオキシド型脂環式エポキシ化合物の含有量が3重量部以上40重量部以下であり、前記ビフェニル骨格とエポキシ基又はオキセタニル基とを有する化合物の含有量が60重量部以上97重量部以下であり、
前記有機EL表示素子用封止剤は、E型粘度計を用いて、25℃、2.5rpmの条件で測定した粘度が10mPa・s以上1000mPa・s以下であり、
前記有機EL表示素子用封止剤の硬化物の25℃におけるナトリウムD線の屈折率が1.56以上である
ことを特徴とする有機EL表示素子用封止剤。
【請求項2】
前記カチオン重合性化合物は、前記シクロアルケンオキシド型脂環式エポキシ化合物及び前記ビフェニル骨格とエポキシ基又はオキセタニル基とを有する化合物に加えて、その他のカチオン重合性化合物を含む請求項
1記載の有機EL表示素子用封止剤。
【請求項3】
前記その他のカチオン重合性化合物として、3-エチル-3-(((3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ)メチル)オキセタン、1,2:7,8-ジエポキシオクタン、及び、1,2:5,6-ジエポキシシクロオクタンからなる群より選択される少なくとも1種を含む請求項
2記載の有機EL表示素子用封止剤。
【請求項4】
前記その他のカチオン重合性化合物として、3-エチル-3-(((3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ)メチル)オキセタンを含む請求項
3記載の有機EL表示素子用封止剤。
【請求項5】
前記カチオン重合性化合物100重量部中における前記その他のカチオン重合性化合物の含有量が10重量部以上50重量部以下である請求項
2、3又は4記載の有機EL表示素子用封止剤。
【請求項6】
前記カチオン重合開始剤は、対アニオンがボレート系である第4級アンモニウム塩を含む請求項
1、2、3、4又は5記載の有機EL表示素子用封止剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低アウトガス性及び塗布性に優れ、かつ、光取り出し効率に優れる有機EL表示素子を得ることができる有機EL表示素子用封止剤に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス(以下、「有機EL」ともいう)表示素子は、互いに対向する一対の電極間に有機発光材料層が挟持された積層体構造を有し、この有機発光材料層に一方の電極から電子が注入されるとともに他方の電極から正孔が注入されることにより有機発光材料層内で電子と正孔とが結合して発光する。このように有機EL表示素子は自己発光を行うことから、バックライトを必要とする液晶表示素子等と比較して視認性がよく、より薄型化が可能であり、かつ、直流低電圧駆動が可能であるという利点を有している。
【0003】
有機EL表示素子を構成する有機発光材料層や電極は、水分や酸素等により特性が劣化しやすいという問題がある。従って、実用的な有機EL表示素子を得るためには、有機発光材料層や電極を大気と遮断して長寿命化を図る必要がある。有機発光材料層や電極を大気と遮断する方法としては、封止剤を用いて有機EL表示素子を封止することが行われている(例えば、特許文献1)。有機EL表示素子を封止剤で封止する場合、通常、水分や酸素等の透過を充分に抑えるため、有機発光材料層を有する積層体上にパッシベーション膜と呼ばれる無機材料膜を設け、該無機材料膜上を封止剤で封止する方法が用いられている。
【0004】
近年、有機発光材料層から発せられた光を、発光素子を形成した基板面側から取り出すボトムエミッション型の有機EL表示素子に代わって、有機発光層の上面側から光を取り出すトップエミッション型の有機EL表示素子が注目されている。この方式は、開口率が高く、低電圧駆動となることから、長寿命化に有利であるという利点がある。このようなトップエミッション型の有機EL表示素子では、発光層の上面側が透明であることが必要であることから、発光素子の上面側に透明な封止層を介してガラス等の透明防湿性基材を積層することにより封止している(例えば、特許文献2)。しかしながら、トップエミッション型の有機EL表示素子では、透明防湿性基材や封止剤として充分に透明性の高いものを用いた場合であっても、電極やパッシベーション膜と封止剤との屈折率差によって、積層体から発せられた光の取り出し効率に劣るものとなることがあるという問題があった。また、従来の封止剤は、アウトガスを発生して素子を劣化させたり、塗布性に劣るものであったりするという問題があった。更に、加熱による有機EL表示素子へのダメージを低減するため、封止剤として低温で硬化可能なものが求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-115692号公報
【文献】特開2009-051980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、低アウトガス性及び塗布性に優れ、かつ、光取り出し効率に優れる有機EL表示素子を得ることができる有機EL表示素子用封止剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、カチオン重合性化合物とカチオン重合開始剤とを含有する有機EL表示素子用封止剤であって、上記カチオン重合性化合物は、シクロアルケンオキシド型脂環式エポキシ化合物、及び、ビフェニル骨格とエポキシ基又はオキセタニル基とを有する化合物を含む有機EL表示素子用封止剤である。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
本発明者は、有機EL表示素子用封止剤にカチオン重合性化合物としてシクロアルケンオキシド型脂環式エポキシ化合物を用いることにより、塗布性を向上させ、かつ、アウトガスの発生を防止することを検討した。しかしながら、このようなシクロアルケンオキシド型脂環式エポキシ化合物を用いた封止剤は、アウトガスの発生を防止する効果に優れるものの、電極やパッシベーション膜との屈折率差が大きいために電極やパッシベーション膜と封止剤との界面における反射により光取出し効率が低下するという問題があった。そこで本発明者は、カチオン重合性化合物として該シクロアルケンオキシド型脂環式エポキシ化合物と、ビフェニル骨格とエポキシ基又はオキセタニル基とを有する化合物とを組み合わせて用いることを検討した。その結果、低アウトガス性及び塗布性に優れ、かつ、得られる有機EL表示素子を光取り出し効率に優れるものとすることができる有機EL表示素子用封止剤を得ることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
また、カチオン重合開始剤として熱カチオン重合開始剤を用いて本発明の有機EL表示素子用封止剤を熱硬化型の封止剤とした場合には、容易に100℃以下の低温で硬化させることできるものとなる。
【0009】
本発明の有機EL表示素子用封止剤は、カチオン重合性化合物を含有する。
上記カチオン重合性化合物は、シクロアルケンオキシド型脂環式エポキシ化合物を含む。上記シクロアルケンオキシド型脂環式エポキシ化合物を含有することにより、本発明の有機EL表示素子用封止剤は、低アウトガス性及び塗布性に優れるものとなる。
【0010】
上記シクロアルケンオキシド型脂環式エポキシ化合物としては、例えば、3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、アジピン酸ビス(3,4-エポキシシクロヘキサン-1-イルメチル)、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロヘキサン付加物、メタクリル酸[(3,4-エポキシシクロヘキサン)-1-イル]メチル等が挙げられる。
【0011】
上記シクロアルケンオキシド型脂環式エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、セロキサイド2021P(ダイセル社製)、TTA26(サンケミカル社製)、EHPE3150(ダイセル社製)等が挙げられる。
【0012】
上記カチオン重合性化合物全体100重量部中における上記シクロアルケンオキシド型脂環式エポキシ化合物の含有量の好ましい下限は3重量部、好ましい上限は45重量部である。上記シクロアルケンオキシド型脂環式エポキシ化合物の含有量が3重量部以上であることにより、得られる有機EL表示素子用封止剤が硬化性、低アウトガス性、及び、塗布性により優れるものとなる。上記シクロアルケンオキシド型脂環式エポキシ化合物の含有量が45重量部以下であることにより、得られる有機EL表示素子が光取り出し効率により優れるものとなる。上記シクロアルケンオキシド型脂環式エポキシ化合物の含有量のより好ましい下限は5重量部、より好ましい上限は40重量部であり、更に好ましい上限は38重量部である。
【0013】
上記カチオン重合性化合物は、ビフェニル骨格とエポキシ基又はオキセタニル基とを有する化合物を含む。上記ビフェニル骨格とエポキシ基又はオキセタニル基とを有する化合物を含有することにより、本発明の有機EL表示素子用封止剤は、電極やパッシベーション膜との屈折率差が小さいものとなり、その結果、得られる有機EL表示素子が光取り出し効率に優れるものとなる。また、ビフェニル骨格とエポキシ基又はオキセタニル基とを有する化合物を含むことで、本発明の有機EL表示素子用封止剤を熱硬化型の封止剤とした場合に容易に100℃以下の低温で硬化させることできるものとなる。
【0014】
上記ビフェニル骨格とエポキシ基又はオキセタニル基とを有する化合物としては、ビフェニル骨格を有するエポキシ化合物やビフェニル骨格を有するオキセタン化合物であればよく、粘度、屈折率、光硬化性等の観点から各種のビフェニル骨格とエポキシ基又はオキセタニル基とを有する化合物を適宜選択することが可能である。
【0015】
上記ビフェニル骨格とエポキシ基又はオキセタニル基とを有する化合物としては、具体的には例えば、o-フェニルフェノールグリシジルエーテル、下記式(1)で表される化合物、p-フェニルフェノールグリシジルエーテル、4,4-ビフェニルジイルビス(グリシジルエーテル)、4,4’-ビス(グリシジルオキシ)-1,1’-ビフェニル、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ビス(グリシジルオキシ)-1,1’-ビフェニル等が挙げられる。なかでも、o-フェニルフェノールグリシジルエーテル、下記式(1)で表される化合物が好適である。
上記ビフェニル骨格とエポキシ基又はオキセタニル基とを有する化合物は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0016】
【0017】
式(1)中、nは、繰り返し数である。
該nは、式(1)で表される化合物が後述するオキセタニル当量の範囲を満たすものとなる値であることが好ましい。
【0018】
上記ビフェニル骨格とエポキシ基又はオキセタニル基とを有する化合物のエポキシ当量又はオキセタニル当量の好ましい下限は110、好ましい上限は500である。上記ビフェニル骨格とエポキシ基又はオキセタニル基とを有する化合物のエポキシ当量又はオキセタニル当量がこの範囲であることにより、得られる有機EL表示素子用封止剤が接着性、低アウトガス性、及び、塗布性により優れるものとなる。
なお、本明細書において、上記ビフェニル骨格とエポキシ基又はオキセタニル基とを有する化合物のエポキシ当量又はオキセタニル当量は、(ビフェニル骨格とエポキシ基又はオキセタニル基とを有する化合物の分子量)/(ビフェニル骨格とエポキシ基又はオキセタニル基とを有する化合物1分子中のエポキシ基又はオキセタニル基の数)を意味する。
【0019】
上記ビフェニル骨格とエポキシ基又はオキセタニル基とを有する化合物の分子量の好ましい下限は200、好ましい上限は1000である。上記ビフェニル骨格とエポキシ基又はオキセタニル基とを有する化合物の分子量がこの範囲であることにより、得られる有機EL表示素子用封止剤が接着性、低アウトガス性、及び、塗布性により優れるものとなる。
なお、本明細書において上記「分子量」は、分子構造が特定される化合物については、構造式から求められる分子量であるが、重合度の分布が広い化合物及び変性部位が不特定な化合物については、重量平均分子量を用いて表す場合がある。また、上記「重量平均分子量」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で溶媒としてテトラヒドロフランを用いて測定を行い、ポリスチレン換算により求められる値である。GPCによってポリスチレン換算による重量平均分子量を測定する際に用いるカラムとしては、例えば、Shodex LF-804(昭和電工社製)等が挙げられる。
【0020】
上記ビフェニル骨格とエポキシ基又はオキセタニル基とを有する化合物は25℃で液状であることが好ましい。上記ビフェニル骨格とエポキシ基又はオキセタニル基とを有する化合物のエポキシ当量又はオキセタニル当量が25℃で液状であることにより、得られる有機EL表示素子用封止剤が塗布性により優れるものとなる。
【0021】
上記ビフェニル骨格とエポキシ基又はオキセタニル基とを有する化合物のうち市販されているものとしては、例えば、OPP-EP(四日市合成社製)、ETERNACOLL OXBP(宇部興産社製)等が挙げられる。
【0022】
上記カチオン重合性化合物全体100重量部中における上記ビフェニル骨格とエポキシ基又はオキセタニル基とを有する化合物の含有量の好ましい下限は30重量部、好ましい上限は97重量部である。上記ビフェニル骨格とエポキシ基又はオキセタニル基とを有する化合物の含有量が30重量部以上であることにより、得られる有機EL表示素子が光取り出し効率により優れるものとなる。上記ビフェニル骨格とエポキシ基又はオキセタニル基とを有する化合物の含有量が97重量部以下であることにより、得られる有機EL表示素子用封止剤が硬化性、低アウトガス性、及び、塗布性により優れるものとなる。上記ビフェニル骨格とエポキシ基又はオキセタニル基とを有する化合物の含有量のより好ましい下限は50重量部、より好ましい上限は90重量部、更に好ましい上限は80重量部である。
上記シクロアルケンオキシド型脂環式エポキシ化合物の含有量を1とした場合、上記ビフェニル骨格とエポキシ基又はオキセタニル基とを有する化合物の含有量の比は、重量比で、好ましい下限が1、好ましい上限が20である。上記ビフェニル骨格とエポキシ基又はオキセタニル基とを有する化合物の含有量の比を1以上とすることにより、得られる有機EL表示素子用封止剤が屈折率(光取り出し効率)により優れるものとなり、20以下とすることにより、硬化性及び屈折率により優れるものとなる。上記ビフェニル骨格とエポキシ基又はオキセタニル基とを有する化合物の含有量の比のより好ましい下限は1.3、より好ましい上限は15、更に好ましい下限は1.4、更に好ましい上限は10である。
【0023】
上記カチオン重合性化合物は、上記シクロアルケンオキシド型脂環式エポキシ化合物及び上記ビフェニル骨格とエポキシ基又はオキセタニル基とを有する化合物に加えて、その他のカチオン重合性化合物を含んでいてもよい。
上記その他のカチオン重合性化合物としては、例えば、上記シクロアルケンオキシド型脂環式エポキシ化合物及び上記ビフェニル骨格とエポキシ基又はオキセタニル基とを有する化合物以外のその他のエポキシ化合物、その他のオキセタン化合物、ビニルエーテル化合物等が挙げられる。
【0024】
上記その他のエポキシ化合物としては、例えば、フルオレン型エポキシ化合物、1,7-オクタジエンジエポキシド、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、トリメチロ-ルプロパントリグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、フェニレンジグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0025】
上記その他のオキセタン化合物としては、例えば、3-エチル-3-(((3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ)メチル)オキセタン、3-エチル-3-((2-エチルヘキシルオキシ)メチル)オキセタン、3-エチル-3-((3-(トリエトキシシリル)プロポキシ)メチル)オキセタン、フェノールノボラックオキセタン、1,4-ビス(((3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ)メチル)ベンゼン等が挙げられる。
【0026】
上記ビニルエーテル化合物としては、例えば、ベンジルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、ジシクロペンタジエンビニルエーテル、1,4-ブタンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、トリプロピレングリコールジビニルエーテル等が挙げられる。
【0027】
なかでも、上記その他のカチオン重合性化合物としては、3-エチル-3-(((3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ)メチル)オキセタン、1,2:7,8-ジエポキシオクタン、及び、1,2:5,6-ジエポキシシクロオクタンからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、3-エチル-3-(((3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ)メチル)オキセタンがより好ましい。
【0028】
上記カチオン重合性化合物が上記その他のカチオン重合性化合物を含む場合、上記カチオン重合性化合物100重量部中における上記その他のカチオン重合性化合物の含有量の好ましい下限は1重量部、好ましい上限は60重量部である。上記その他のカチオン重合性化合物の含有量がこの範囲であることにより、得られる有機EL表示素子用封止剤が、接着性及び塗布性により優れるものとなる。上記その他のカチオン重合性化合物の含有量のより好ましい下限は10重量部、より好ましい上限は50重量部であり、更に好ましい下限は15重量部、更に好ましい上限は40重量部である。
また、上記カチオン重合性化合物が上記その他のカチオン重合性化合物を含む場合、上記カチオン重合性化合物100重量部中おける、上記シクロアルケンオキシド型脂環式エポキシ化合物と上記その他のカチオン重合性化合物との合計の含有量の好ましい下限は20重量部である。上記シクロアルケンオキシド型脂環式エポキシ化合物と上記その他のカチオン重合性化合物との合計の含有量が20重量部以上であることにより、得られる有機EL表示素子用封止剤が塗布性により優れるものとなる。上記シクロアルケンオキシド型脂環式エポキシ化合物と上記その他のカチオン重合性化合物との合計の含有量のより好ましい下限は25重量部である。
【0029】
本発明の有機EL表示素子用封止剤は、カチオン重合開始剤を含有する。
上記カチオン重合開始剤としては、熱カチオン重合開始剤や光カチオン重合開始剤が挙げられる。特に、本発明の有機EL表示素子用封止剤は、上記カチオン重合開始剤として熱カチオン重合開始剤を用いる場合に、容易に100℃以下の低温で硬化させることできるものとなる。
【0030】
上記熱カチオン重合開始剤としては、アニオン部分がBF4
-、PF6
-、SbF6
-、又は、(BX4)-(但し、Xは、少なくとも2つ以上のフッ素又はトリフルオロメチル基で置換されたフェニル基を表す)で構成される、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、アンモニウム塩、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩等が挙げられる。なかでも、スルホニウム塩が好ましい。
【0031】
上記スルホニウム塩としては、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート等が挙げられる。
【0032】
上記ホスホニウム塩としては、エチルトリフェニルホスホニウムヘキサフルオロアンチモネート、テトラブチルホスホニウムヘキサフルオロアンチモネート等が挙げられる。
【0033】
上記アンモニウム塩としては、例えば、ジメチルフェニル(4-メトキシベンジル)アンモニウムヘキサフルオロホスフェート、ジメチルフェニル(4-メトキシベンジル)アンモニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジメチルフェニル(4-メトキシベンジル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジメチルフェニル(4-メチルベンジル)アンモニウムヘキサフルオロホスフェート、ジメチルフェニル(4-メチルベンジル)アンモニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジメチルフェニル(4-メチルベンジル)アンモニウムヘキサフルオロテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、メチルフェニルジベンジルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート、メチルフェニルジベンジルアンモニウムヘキサフルオロアンチモネート、メチルフェニルジベンジルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、フェニルトリベンジルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジメチルフェニル(3,4-ジメチルベンジル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチル-N-ベンジルアニリニウムヘキサフルオロアンチモネート、N,N-ジエチル-N-ベンジルアニリニウムテトラフルオロボレート、N,N-ジメチル-N-ベンジルピリジニウムヘキサフルオロアンチモネート、N,N-ジエチル-N-ベンジルピリジニウムトリフルオロメタンスルホン酸等が挙げられる。
【0034】
上記熱カチオン重合開始剤のうち市販されているものとしては、例えば、三新化学工業社製の熱カチオン重合開始剤、King Industries社製の熱カチオン重合開始剤等が挙げられる。
上記三新化学工業社製の熱カチオン重合開始剤としては、例えば、サンエイドSI-60、サンエイドSI-80、サンエイドSI-B3、サンエイドSI-B3A、サンエイドSI-B4等が挙げられる。
上記King Industries社製の熱カチオン重合開始剤としては、例えば、CXC-1612、CXC-1821等が挙げられる。
【0035】
上記光カチオン重合開始剤は、光照射によりプロトン酸又はルイス酸を発生するものであれば特に限定されず、イオン性光酸発生型であってもよいし、非イオン性光酸発生型であってもよい。
【0036】
上記イオン性光酸発生型の光カチオン重合開始剤のアニオン部分としては、例えば、BF4
-、PF6
-、SbF6
-、(BX4)-(但し、Xは、少なくとも2つ以上のフッ素又はトリフルオロメチル基で置換されたフェニル基を表す)等が挙げられる。また、上記アニオン部分としては、PFm(CnF2n+1)6-m
-(但し、式中、mは0以上5以下の整数であり、nは1以上6以下の整数である)等も挙げられる。
上記イオン性光酸発生型の光カチオン重合開始剤としては、例えば、上記アニオン部分を有する、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族アンモニウム塩、(2,4-シクロペンタジエン-1-イル)((1-メチルエチル)ベンゼン)-Fe塩等が挙げられる。
【0037】
上記芳香族スルホニウム塩としては、例えば、ビス(4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル)スルフィドビスヘキサフルオロホスフェート、ビス(4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル)スルフィドビスヘキサフルオロアンチモネート、ビス(4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル)スルフィドビステトラフルオロボレート、ビス(4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル)スルフィドテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニル-4-(フェニルチオ)フェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニル-4-(フェニルチオ)フェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニル-4-(フェニルチオ)フェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、ジフェニル-4-(フェニルチオ)フェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ビス(4-(ジ(4-(2-ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル)スルフィドビスヘキサフルオロホスフェート、ビス(4-(ジ(4-(2-ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル)スルフィドビスヘキサフルオロアンチモネート、ビス(4-(ジ(4-(2-ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル)スルフィドビステトラフルオロボレート、ビス(4-(ジ(4-(2-ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル)スルフィドテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリス(4-(4-アセチルフェニル)チオフェニル)スルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。なかでも、トリフェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等のトリアリールスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが好ましい。
【0038】
上記芳香族ヨードニウム塩としては、例えば、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボレート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4-メチルフェニル-4-(1-メチルエチル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、4-メチルフェニル-4-(1-メチルエチル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、4-メチルフェニル-4-(1-メチルエチル)フェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、4-メチルフェニル-4-(1-メチルエチル)フェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0039】
上記芳香族ジアゾニウム塩としては、例えば、フェニルジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート、フェニルジアゾニウムヘキサフルオロアンチモネート、フェニルジアゾニウムテトラフルオロボレート、フェニルジアゾニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0040】
上記芳香族アンモニウム塩としては、例えば、1-ベンジル-2-シアノピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、1-ベンジル-2-シアノピリジニウムヘキサフルオロアンチモネート、1-ベンジル-2-シアノピリジニウムテトラフルオロボレート、1-ベンジル-2-シアノピリジニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、1-(ナフチルメチル)-2-シアノピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、1-(ナフチルメチル)-2-シアノピリジニウムヘキサフルオロアンチモネート、1-(ナフチルメチル)-2-シアノピリジニウムテトラフルオロボレート、1-(ナフチルメチル)-2-シアノピリジニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0041】
上記(2,4-シクロペンタジエン-1-イル)((1-メチルエチル)ベンゼン)-Fe塩としては、例えば、(2,4-シクロペンタジエン-1-イル)((1-メチルエチル)ベンゼン)-Fe(II)ヘキサフルオロホスフェート、(2,4-シクロペンタジエン-1-イル)((1-メチルエチル)ベンゼン)-Fe(II)ヘキサフルオロアンチモネート、(2,4-シクロペンタジエン-1-イル)((1-メチルエチル)ベンゼン)-Fe(II)テトラフルオロボレート、(2,4-シクロペンタジエン-1-イル)((1-メチルエチル)ベンゼン)-Fe(II)テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0042】
上記非イオン性光酸発生型の光カチオン重合開始剤としては、例えば、ニトロベンジルエステル、スルホン酸誘導体、リン酸エステル、フェノールスルホン酸エステル、ジアゾナフトキノン、N-ヒドロキシイミドスルホネート等が挙げられる。
【0043】
上記光カチオン重合開始剤のうち市販されているものとしては、例えば、みどり化学社製の光カチオン重合開始剤、ユニオンカーバイド社製の光カチオン重合開始剤、ADEKA社製の光カチオン重合開始剤、3M社製の光カチオン重合開始剤、BASF社製の光カチオン重合開始剤、ソルベイ社製の光カチオン重合開始剤、サンアプロ社製の光カチオン重合開始剤等が挙げられる。
上記みどり化学社製の光カチオン重合開始剤としては、例えば、DTS-200等が挙げられる。
上記ユニオンカーバイド社製の光カチオン重合開始剤としては、例えば、UVI6990、UVI6974等が挙げられる。
上記ADEKA社製の光カチオン重合開始剤としては、例えば、SP-150、SP-170等が挙げられる。
上記3M社製の光カチオン重合開始剤としては、例えば、FC-508、FC-512等が挙げられる。
上記BASF社製の光カチオン重合開始剤としては、例えば、IRGACURE261、IRGACURE290等が挙げられる。
上記ソルベイ社製の光カチオン重合開始剤としては、例えば、PI2074等が挙げられる。
上記サンアプロ社製の光カチオン重合開始剤としては、例えば、CPI-100P、CPI-200K、CPI-210S等が挙げられる。
【0044】
上述したカチオン重合開始剤のなかでも、対アニオンがボレート系である第4級アンモニウム塩(以下、「ボレート系第4級アンモニウム塩」ともいう)が好適に用いられる。
上記ボレート系第4級アンモニウム塩の対アニオンは、BF4
-又は(BX4)-(ただし、Xは、少なくとも2つ以上のフッ素若しくはトリフルオロメチル基で置換されたフェニル基を表す)であることが好ましい。
【0045】
上記カチオン重合開始剤の含有量は、上記カチオン重合性化合物100重量部に対して、好ましい下限が0.05重量部、好ましい上限が10重量部である。上記カチオン重合開始剤の含有量がこの範囲であることにより、得られる有機EL表示素子用封止剤が硬化性、保存安定性、及び、硬化物の耐湿性により優れるものとなる。上記カチオン重合開始剤の含有量のより好ましい下限は0.1重量部、より好ましい上限は5重量部である。
【0046】
本発明の有機EL表示素子用封止剤は、熱硬化剤を含有してもよい。
上記熱硬化剤としては、例えば、ヒドラジド化合物、イミダゾール誘導体、酸無水物、ジシアンジアミド、グアニジン誘導体、変性脂肪族ポリアミン、各種アミンとエポキシ樹脂との付加生成物等が挙げられる。
上記ヒドラジド化合物としては、例えば、1,3-ビス(ヒドラジノカルボノエチル)-5-イソプロピルヒダントイン、セバシン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド等が挙げられる。
上記イミダゾール誘導体としては、例えば、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、N-(2-(2-メチル-1-イミダゾリル)エチル)尿素、2,4-ジアミノ-6-(2’-メチルイミダゾリル-(1’))-エチル-s-トリアジン、N,N’-ビス(2-メチル-1-イミダゾリルエチル)尿素、N,N’-(2-メチル-1-イミダゾリルエチル)-アジポアミド、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール等が挙げられる。
上記酸無水物としては、例えば、テトラヒドロ無水フタル酸、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)等が挙げられる。
これらの熱硬化剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0047】
上記熱硬化剤のうち市販されているものとしては、例えば、大塚化学社製の熱硬化剤、味の素ファインテクノ社製の熱硬化剤等が挙げられる。
上記大塚化学社製の熱硬化剤としては、例えば、SDH、ADH等が挙げられる。
上記味の素ファインテクノ社製の熱硬化剤としては、例えば、アミキュアVDH、アミキュアVDH-J、アミキュアUDH等が挙げられる。
【0048】
上記熱硬化剤の含有量は、上記カチオン重合性化合物100重量部に対して、好ましい下限が0.5重量部、好ましい上限が30重量部である。上記熱硬化剤の含有量が0.5重量部以上であることにより、得られる有機EL表示素子用封止剤が熱硬化性により優れるものとなる。上記熱硬化剤の含有量が30重量部以下であることにより、得られる有機EL表示素子用封止剤が保存安定性により優れるものとなり、かつ、硬化物が耐湿性により優れるものとなる。上記熱硬化剤の含有量のより好ましい下限は1重量部、より好ましい上限は15重量部である。
【0049】
本発明の有機EL表示素子用封止剤は、安定剤を含有することが好ましい。上記安定剤を含有することにより、本発明の有機EL表示素子用封止剤は、より保存安定性に優れるものとなる。
【0050】
上記安定剤としては、芳香族アミン化合物が好適に用いられる。
上記芳香族アミン化合物としては、例えば、ベンジルアミン、アミノフェノール型エポキシ樹脂等が挙げられる。
上記アミノフェノール型エポキシ樹脂としては、トリグリシジル-p-アミノフェノール等が挙げられる。
なかでも、ベンジルアミンが好ましい。
これらの安定剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0051】
上記安定剤の含有量は、上記カチオン重合性化合物100重量部に対して、好ましい下限が0.001重量部、好ましい上限が2重量部である。上記安定剤の含有量がこの範囲であることにより、得られる有機EL表示素子用封止剤が優れた硬化性を維持したまま保存安定性により優れるものとなる。上記安定剤の含有量のより好ましい下限は0.005重量部、より好ましい上限は1重量部である。
【0052】
本発明の有機EL表示素子用封止剤は、シランカップリング剤を含有してもよい。上記シランカップリング剤は、本発明の有機EL表示素子用封止剤と基板等との接着性を向上させる役割を有する。
【0053】
上記シランカップリング剤としては、例えば、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらのシランカップリング剤は単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0054】
上記シランカップリング剤の含有量は、上記カチオン重合性化合物100重量部に対して、好ましい下限が0.1重量部、好ましい上限が10重量部である。上記シランカップリング剤の含有量がこの範囲であることにより、余剰のシランカップリング剤がブリードアウトすることを抑制しつつ、接着性を向上させる効果により優れるものとなる。上記シランカップリング剤の含有量のより好ましい下限は0.5重量部、より好ましい上限は5重量部である。
また、低アウトガス性の観点からは、上記シランカップリング剤の含有量は、上記カチオン重合性化合物100重量部に対して、好ましい上限が0.5重量部であり、より好ましい上限が0.1重量部であり、更に好ましい上限が0.01重量部である。
【0055】
本発明の有機EL表示素子用封止剤は、更に、本発明の目的を阻害しない範囲において、表面改質剤を含有してもよい。上記表面改質剤を含有することにより、本発明の有機EL表示素子用封止剤の塗膜の平坦性を向上させることができる。
上記表面改質剤としては、例えば、界面活性剤やレベリング剤等が挙げられる。
【0056】
上記表面改質剤としては、例えば、シリコーン系、アクリル系、フッ素系等のものが挙げられる。
上記表面改質剤のうち市販されているものとしては、例えば、ビックケミー・ジャパン社製の表面改質剤、AGCセイミケミカル社製の表面改質剤等が挙げられる。
上記ビックケミー・ジャパン社製の表面改質剤としては、例えば、BYK-330、BYK-340、BYK-345等が挙げられる。
上記AGCセイミケミカル社製の表面改質剤としては、例えば、サーフロンS-611等が挙げられる。
【0057】
本発明の有機EL表示素子用封止剤は、本発明の目的を阻害しない範囲で、素子電極の耐久性を向上させるために、有機EL表示素子用封止剤中に発生した酸と反応する化合物又はイオン交換樹脂を含有してもよい。
【0058】
上記発生した酸と反応する化合物としては、酸と中和する物質、例えば、アルカリ金属の炭酸塩若しくは炭酸水素塩、又は、アルカリ土類金属の炭酸塩若しくは炭酸水素塩等が挙げられる。具体的には例えば、炭酸カルシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が用いられる。
【0059】
上記イオン交換樹脂としては、陽イオン交換型、陰イオン交換型、両イオン交換型のいずれも使用することができるが、特に塩化物イオンを吸着することのできる陽イオン交換型又は両イオン交換型が好適である。
【0060】
本発明の有機EL表示素子用封止剤は、粘度調整等を目的として溶剤を含有してもよいが、残存した溶剤により、有機発光材料層が劣化したりアウトガスが発生したりする等の問題が生じるおそれがあるため、溶剤を含有しない、又は、溶剤の含有量が0.05重量%以下であることが好ましい。
【0061】
また、本発明の有機EL表示素子用封止剤は、必要に応じて、硬化遅延剤、補強剤、軟化剤、可塑剤、粘度調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の公知の各種添加剤を含有してもよい。
【0062】
本発明の有機EL表示素子用封止剤は、E型粘度計を用いて、25℃、2.5rpmの条件で測定した粘度の好ましい上限が2000mPa・sである。上記粘度が2000mPa・s以下であることにより、得られる有機EL表示素子用封止剤が塗布性に優れるものとなる。上記粘度のより好ましい上限は1500mPa・s、更に好ましい上限は1000mPa・sである。
また、上記粘度の好ましい下限は10mPa・sである。
上記粘度は、例えば、E型粘度計としてVISCOMETER TV-22(東機産業社製)を用いて、CP1のコーンプレートにて測定することができる。
【0063】
本発明の有機EL表示素子用封止剤は、硬化物の25℃におけるナトリウムD線の屈折率の好ましい下限が1.55である。上記屈折率がこの範囲であることにより、電極やパッシベーション膜との屈折率差が小さいものとなり、その結果、得られる有機EL表示素子が光取り出し効率に優れるものとなる。上記屈折率のより好ましい下限は1.56である。
上記「ナトリウムD線の屈折率」は、アッベ式屈折率計を用いて測定することができる。
また、上記屈折率を測定する硬化物としては、例えば、長さ20mm、幅10mm、厚さ0.5~1mm程度の測定片が用いられる。上記屈折率を測定する硬化物は、熱硬化性の封止剤であれば、100℃で30分加熱することにより得ることができ、光熱硬化性の封止剤であれば、2000mJ/cm2程度の紫外線を照射した後に100℃で30分加熱することにより得ることができる。
【0064】
本発明の有機EL表示素子用封止剤は、有機発光材料層を有する積層体を被覆して封止する面内封止剤として特に好適に用いられる。
また、本発明の有機EL表示素子用封止剤は、トップエミッション型の有機EL表示素子の封止に好適に用いられる。
【0065】
本発明の有機EL表示素子用封止剤を用いて有機EL表示素子を封止する方法としては、例えば、有機EL表示素子基板面に印刷、ディスペンス法、又は、インクジェット法等により、本発明の有機EL表示素子用封止剤を基材に塗布する工程、及び、塗布した有機EL表示素子用封止剤を加熱及び/又は光照射により硬化させる工程を有する方法等が挙げられる。
【0066】
本発明の有機EL表示素子用封止剤を基材に塗布する工程において、本発明の有機EL表示素子用封止剤は、基材の全面に塗布してもよく、基材の一部に塗布してもよい。塗布により形成される本発明の有機EL表示素子用封止剤の封止部の形状としては、有機発光材料層を有する積層体を外気から保護しうる形状であれば特に限定されず、該積層体を完全に被覆する形状であってもよいし、該積層体の周辺部に閉じたパターンを形成してもよいし、該積層体の周辺部に一部開口部を設けた形状のパターンを形成してもよい。
【0067】
上記有機EL表示素子用封止剤を加熱により硬化させる場合、有機発光材料層を有する積層体へのダメージを低減させつつ充分に硬化させる観点から、50℃以上120℃以下で加熱することが好ましい。
【0068】
本発明の有機EL表示素子用封止剤を光照射により硬化させる場合、本発明の有機EL表示素子用封止剤は、300nm以上400nm以下の波長及び300mJ/cm2以上3000mJ/cm2以下の積算光量の光を照射することによって好適に硬化させることができる。
【0069】
上記光照射に用いる光源としては、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、エキシマレーザ、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ、ナトリウムランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、LEDランプ、蛍光灯、太陽光、電子線照射装置等が挙げられる。これらの光源は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
これらの光源は、上記光カチオン重合開始剤の吸収波長に合わせて適宜選択される。
【0070】
本発明の有機EL表示素子用封止剤への光の照射手段としては、例えば、各種光源の同時照射、時間差をおいての逐次照射、同時照射と逐次照射との組み合わせ照射等が挙げられ、いずれの照射手段を用いてもよい。
【0071】
上記有機EL表示素子用封止剤を加熱及び/又は光照射により硬化させる工程により得られる硬化物は、更に無機材料膜で被覆されていてもよい。
上記無機材料膜を構成する無機材料としては、従来公知のものを用いることができ、例えば、窒化珪素(SiNx)や酸化珪素(SiOx)等が挙げられる。上記無機材料膜は、1層であってもよく、複数種の層を積層したものであってもよい。また、上記無機材料膜と本発明の有機EL表示素子用封止剤により構成される樹脂膜とを、交互に繰り返して上記積層体を被覆してもよい。
【0072】
上記有機EL表示素子を製造する方法は、本発明の有機EL表示素子用封止剤を塗布した基材(以下、「一方の基材」ともいう)と他方の基材とを貼り合わせる工程を有していてもよい。
本発明の有機EL表示素子用封止剤を塗布する基材(以下、「一方の基材」ともいう)は、有機発光材料層を有する積層体の形成されている基材であってもよく、該積層体の形成されていない基材であってもよい。
上記一方の基材が上記積層体の形成されていない基材である場合、上記他方の基材を貼り合わせた際に、上記積層体を外気から保護できるように上記一方の基材に本発明の有機EL表示素子用封止剤を塗布すればよい。即ち、他方の基材を貼り合わせた際に上記積層体の位置となる場所に全面的に塗布するか、又は、他方の基材を貼り合わせた際に上記積層体の位置となる場所が完全に収まる形状に、閉じたパターンの封止剤部を形成してもよい。
また、上記有機EL表示素子を封止する方法として、いわゆるダム・フィル封止の方法を用いてもよい。即ち、まず、有機EL表示素子の基板上に表示部の周縁を囲むように硬化性のペーストを塗布する。次いで、塗布した硬化性のペーストの内側に本発明の有機EL表示素子用封止剤を塗布し、周縁の硬化性ペーストにより封止剤のはみ出しを防止しながら対向する封止基板を貼り合わせる。その後、周縁の硬化性ペーストと内側に押し拡げられた本発明の有機EL表示素子用封止剤とを加熱及び/又は光照射により硬化させる方法を用いてもよい。
【0073】
上記有機EL表示素子用封止剤を加熱及び/又は光照射により硬化させる工程は、上記一方の基材と上記他方の基材とを貼り合わせる工程の前に行なってもよいし、上記一方の基材と上記他方の基材とを貼り合わせる工程の後に行なってもよい。
上記有機EL表示素子用封止剤を加熱及び/又は光照射により硬化させる工程を、上記一方の基材と上記他方の基材とを貼り合わせる工程の前に行なう場合、本発明の有機EL表示素子用封止剤は、加熱及び/又は光照射してから硬化反応が進行して接着ができなくなるまでの可使時間が1分以上であることが好ましい。上記可使時間が1分以上であることにより、上記一方の基材と上記他方の基材とを貼り合わせる前に硬化が進行し過ぎることなく、より高い接着強度を得ることができる。
【0074】
上記一方の基材と上記他方の基材とを貼り合わせる工程において、上記一方の基材と上記他方の基材とを貼り合わせる方法は特に限定されないが、減圧雰囲気下で貼り合わせることが好ましい。
上記減圧雰囲気下の真空度の好ましい下限は0.01kPa、好ましい上限は10kPaである。上記減圧雰囲気下の真空度がこの範囲であることにより、真空装置の気密性や真空ポンプの能力から真空状態を達成するのに長時間を費やすことなく、上記一方の基材と上記他方の基材とを貼り合わせる際の本発明の有機EL表示素子用封止剤中の気泡をより効率的に除去することができる。
【発明の効果】
【0075】
本発明によれば、低アウトガス性及び塗布性に優れ、かつ、光取り出し効率に優れる有機EL表示素子を得ることができる有機EL表示素子用封止剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0076】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0077】
(実施例1~5、7、8、参考例6、比較例1~4)
表1、2に記載された配合比に従い、各材料を、撹拌混合機を用いて撹拌速度2000rpmで撹拌混合することにより、実施例1~5、7、8、参考例6、比較例1~4の各有機EL表示素子用封止剤を作製した。撹拌混合機としては、AR-250(シンキー社製)を用いた。
【0078】
<評価>
実施例、参考例、及び、比較例で得られた各有機EL表示素子用封止剤について以下の評価を行った。結果を表1、2に示した。
【0079】
(1)粘度
実施例、参考例、及び、比較例で得られた各有機EL表示素子用封止剤について、E型粘度計を用いて、25℃、2.5rpmの条件における粘度を測定した。E型粘度計としては、VISCOMETER TV-22(東機産業社製)を用いた。
【0080】
(2)塗布性
実施例、参考例、及び、比較例で得られた各有機EL表示素子用封止剤100重量部に対して、平均粒子径10μmのポリマービーズ0.3重量部を加え、遊星式撹拌装置によって均一に分散させた。ポリマービーズとしては、ミクロパールSP(積水化学工業社製)を用いた。長さ5cm、幅5cmのガラス基板を2枚用意し、得られた分散液0.1mLを一方のガラス基板の中央部に載せ、30秒後に広がった直径を測定した。
該直径が5.5mm以上であった場合を「◎」、5.0mm以上5.5mm未満であった場合を「○」、4.5mm以上5.0mm未満であった場合を「△」、4.5mm未満であった場合を「×」として、塗布性を評価した。
【0081】
(3)硬化性
実施例、参考例、及び、比較例で得られた各有機EL表示素子用封止剤について、硬化させた時の反応率を求めた。
実施例1~4、8、参考例6、及び、比較例1~4で得られた有機EL表示素子用封止剤については、示差走査熱量測定(日立ハイテクサイエンス社製、「DSC6220」)を用いた反応熱量測定を行い、下記計算式(I)を用いて反応率を算出した。計算式(I)中、H0は、窒素ガス雰囲気下でアルミニウムサンプルパンを用いて、未硬化の状態で昇温レート10℃/分、40℃~200℃まで昇温させた時の反応熱量である。また、計算式(I)中、H1は、100℃にて30分間加熱硬化させた有機EL表示素子用封止剤を、昇温レート10℃/分で、40℃~200℃まで昇温させた時の反応熱量である。
(H0-H1)/H0 (I)
また、実施例5及び7で得られた有機EL表示素子用封止剤については、Photo-DSC(TAインスツルメント社製、「DSC Q100」と光源装置「Qseries PCA」との組み合わせ)を用いて、活性エネルギー線を照射した時及び昇温時の反応熱量測定を行い、下記計算式(II)を用いて反応率を算出した。計算式(II)中、H2は、高圧水銀灯(カットフィルターなし)を用いて、25℃窒素雰囲気下で、照度3.7W/cm2で積算光量1.5J/cm2の活性エネルギー線を照射し、照射直後に、昇温レート10℃/分で、40℃~200℃まで昇温させた時の、活性エネルギー線照射前から、昇温終了までの総発熱量である。上記積算光量は、UV-351(ORC社製)を用い、波長351nmの積算光量を測定したものである。また、計算式(II)中、H3は、上記条件で活性エネルギー線を照射した直後に、昇温レート20℃/分で100℃まで昇温させ、100℃で30分間ホールドした後に、10℃/分で25℃まで冷却し、その後昇温レート10℃/分で200℃まで昇温させた時の、25℃まで冷却した後から、200℃に昇温終了するまでの発熱量(H3)である。
(H2-H3)/H2 (II)
反応率が90%以上であった場合を「◎」、80%以上90%未満であった場合を「○」、60%以上80%未満であった場合を「△」、60%未満であった場合を「×」として硬化性を評価した。
【0082】
(4)屈折率及び光取り出し効率
厚さ1mmのシリコーンゴムシートを長さ20mm、幅10mmの長方形にくり抜いて型を作製した。この型を離型PETフィルム上に置き、型の中に実施例、参考例、及び、比較例で得られた各有機EL表示素子用封止剤を充填した後、もう1枚の離型PETフィルムで気泡が残らないようにカバーして積層体を得た。得られた積層体を2枚のガラス板に挟み込んで固定し、封止剤を硬化させた。実施例1~4、8、参考例6、及び、比較例1~4で得られた有機EL表示素子用封止剤については、100℃で30分間加熱して硬化させ、実施例5及び7で得られた有機EL表示素子用封止剤については、UV-LEDを用いて波長365nmの紫外線を1500mJ/cm2照射した後、90℃で30分間加熱して硬化させた。その後、PETフィルムを剥がしてシリコーンゴムシートから封止剤の硬化物を取り出し、長さ10mm、幅20mm、厚さ1mmの試験片を得た。得られた試験片について、アッベ式屈折率計を用いて、25℃におけるナトリウムD線の屈折率を測定した。アッベ式屈折率計としては、NAR-4T(アタゴ社製)を用いた。
また、電極やパッシベーション膜との屈折率差を考慮し、屈折率が1.56以上であった場合を「○」、1.54以上1.56未満であった場合を「△」、1.54未満であった場合を「×」として光取り出し効率を評価した。
【0083】
(5)低アウトガス性
実施例、参考例、及び、比較例で得られた各有機EL表示素子用封止剤を、バイアル瓶中に300mg計量して封入した後、硬化させた。実施例1~4、8、参考例6、及び、比較例1~4で得られた有機EL表示素子用封止剤については、100℃で30分間加熱して硬化させ、実施例5及び7で得られた有機EL表示素子用封止剤については、UV-LEDを用いて波長365nmの紫外線を1500mJ/cm2照射した後、90℃で30分間加熱して硬化させた。更に、このバイアル瓶を85℃の恒温オーブンで100時間加熱し、バイアル瓶中の気化成分量を、ガスクロマトグラフ質量分析計を用いて測定した。ガスクロマトグラフ質量分析計としては、JMS-Q1050(日本電子社製)を用いた。
気化成分量が50ppm未満であった場合を「○」、50ppm以上100ppm未満であった場合を「△」、100ppm以上であった場合を「×」として低アウトガス性を評価した。
【0084】
【0085】
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明によれば、低アウトガス性及び塗布性に優れ、かつ、光取り出し効率に優れる有機EL表示素子を得ることができる有機EL表示素子用封止剤を提供することができる。