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特許7561044コイル部品及びこれを備えるワイヤレス電力伝送デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-25
(45)【発行日】2024-10-03
(54)【発明の名称】コイル部品及びこれを備えるワイヤレス電力伝送デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01Q 7/00 20060101AFI20240926BHJP
   H01F 38/14 20060101ALI20240926BHJP
   H01F 17/00 20060101ALI20240926BHJP
   H01F 17/04 20060101ALI20240926BHJP
   H02J 50/40 20160101ALI20240926BHJP
   H02J 50/10 20160101ALI20240926BHJP
   H02J 50/80 20160101ALI20240926BHJP
【FI】
H01Q7/00
H01F38/14
H01F17/00 B
H01F17/04 A
H01F17/04 F
H02J50/40
H02J50/10
H02J50/80
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021007760
(22)【出願日】2021-01-21
(65)【公開番号】P2022112104
(43)【公開日】2022-08-02
【審査請求日】2023-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 和文
(72)【発明者】
【氏名】松島 正樹
(72)【発明者】
【氏名】千代 憲隆
【審査官】麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-001983(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0013661(US,A1)
【文献】国際公開第2015/147133(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 7/00
H01F 38/14
H01F 17/00
H01F 17/04
H02J 50/40
H02J 50/10
H02J 50/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1コイルパターンと、
前記第1コイルパターンと接続される第2コイルパターンと、
前記第1コイルパターンの開口領域に配置され、前記第1コイルパターンと同じ軸方向を有する第4コイルパターンと、
前記第1、第2及び第4コイルパターンを軸方向から覆う磁性体と、を備え、
前記第1及び第2コイルパターンは、前記軸方向と直交する第1方向に並置され、
前記第1コイルパターンは、前記軸方向及び前記第1方向と直交する第2方向における前記磁性体の第1外周端から前記第2方向に突出する第1突出部を有し、
前記第2コイルパターンは、前記磁性体の前記第1方向における一方側の第2外周端から前記第1方向に突出する第2突出部を有し、
前記第1コイルパターンの開口領域の一部は、前記磁性体よりも前記第2方向における外側に位置し、
前記第2コイルパターンの開口領域の一部は、前記磁性体よりも前記第1方向における外側に位置する、コイル部品。
【請求項2】
前記第1方向に延在し、前記第1コイルパターンと前記第2コイルパターンを接続する接続パターンをさらに備え、
前記接続パターンの前記第1方向における幅は、前記第2コイルパターンの開口領域の前記第1方向における開口幅より小さい、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記第2突出部と前記磁性体の前記第2外周端の前記第1方向における距離は、前記第2コイルパターンの前記第1方向における開口幅の1/2未満である、請求項1又は2に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記第2コイルパターンは、前記磁性体の前記1外周端から前記第2方向に突出する第3突出部を有する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項5】
前記第1及び第2コイルパターンは、前記第2方向に部分的な重なりを有している、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項6】
前記磁性体と重なる前記第1コイルパターンの第1区間は、周回方向に沿って前記第1方向における座標が変化する部分を含む形状を有し、
前記第2コイルパターンの第2区間は、前記第1区間に沿って配設されている、請求項5に記載のコイル部品。
【請求項7】
前記第1コイルパターンに接続される第3コイルパターンをさらに備え、
前記第1コイルパターンは、前記第2コイルパターンと前記第3コイルパターンの間に配置される、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項8】
前記第3コイルパターンは、前記磁性体の前記第1方向における他方側の第3外周端から前記第1方向に突出する第4突出部を有する、請求項7に記載のコイル部品。
【請求項9】
前記第4突出部と前記磁性体の前記第3外周端の前記第1方向における距離は、前記第3コイルパターンの前記第1方向における開口幅の1/2未満である、請求項8に記載のコイル部品。
【請求項10】
前記第3コイルパターンは、前記磁性体の前記1外周端から前記第2方向に突出する第5突出部を有する、請求項7乃至9のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項11】
前記第1及び第3コイルパターンは、前記第2方向に部分的な重なりを有している、請求項7乃至10のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項12】
前記磁性体と重なる前記第1コイルパターンの第3区間は、周回方向に沿って前記第1方向における座標が変化する部分を含む形状を有し、
前記第3コイルパターンの第4区間は、前記第3区間に沿って配設されている、請求項11に記載のコイル部品。
【請求項13】
前記第1乃至第3コイルパターンは、前記第1コイルパターンが発生する磁界と前記第2及び第3コイルパターンが発生する磁界とが互いに逆相となるよう接続されている、請求項7乃至12のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項14】
前記第2及び第3コイルパターンのそれぞれのターン数は、前記第1コイルパターンのターン数よりも多い、請求項7乃至13のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項15】
基材をさらに備え、
前記第1、第2及び第4コイルパターンは、前記基材の少なくとも一方の表面に設けられている、請求項1乃至14のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項16】
請求項1乃至15のいずれか一項に記載のコイル部品と、
前記第1及び第2コイルパターンに接続される通信回路と、
前記第4コイルパターンに接続される送電回路と、を備えるワイヤレス電力伝送デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はコイル部品及びこれを備えるワイヤレス電力伝送デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近距離無線通信(NFC)による通信可能エリアを調整する方法としては、特許文献1に記載されているように、メインコイルアンテナの他に、メインコイルアンテナに接続されるサブコイルアンテナを設ける方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開WO2013/073314号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された装置では、効率よく通信可能エリアを拡大することができないという問題があった。
【0005】
したがって、本開示は、通信可能エリアを効率よく拡大することが可能なコイル部品及びこれを備えるワイヤレス電力伝送デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施態様によるコイル部品は、第1コイルパターンと、第1コイルパターンと接続される第2コイルパターンと、第1及び第2コイルパターンを軸方向から覆う磁性体とを備え、第1及び第2コイルパターンは、軸方向と直交する第1方向に並置され、第1コイルパターンは、軸方向及び第1方向と直交する第2方向における磁性体の第1外周端から第2方向に突出する第1突出部を有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、通信可能エリアを効率よく拡大することが可能なコイル部品及びこれを備えるワイヤレス電力伝送デバイスを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、一実施形態によるコイル部品を内蔵する端末ホルダー1の模式的な平面図である。
図2図2は、スマートフォン3がオフセットして載置された場合を示す模式的な平面図である。
図3図3は、一実施形態によるコイル部品100の構造を説明するための略平面図である。
図4図4は、図3に示すA-A線に沿った略断面図である。
図5図5は、図3に示すB-B線に沿った略断面図である。
図6図6は、図3に示すC-C線に沿った略断面図である。
図7図7は、図3に示すD-D線に沿った略断面図である。
図8図8は、第1~第3コイルパターンCP1~CP3と磁性体7の位置関係をより詳細に説明するための模式図である。
図9図9は、磁性体7の外周端52の位置による磁束の変化を説明するための模式図である。
図10図10は、変形例によるコイル部品100aの構造を説明するための略平面図である。
図11図11は、コイル部品100を用いたワイヤレス電力伝送デバイス60のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら、本開示の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0010】
図1は、一実施形態によるコイル部品を内蔵する端末ホルダー1の模式的な平面図である。
【0011】
図1に示す端末ホルダー1は、スマートフォン3などの携帯端末を載置する載置面2を有している。載置面2はxy平面を有している。載置面2のz方向における下部には、後述する近距離無線通信(NFC)用のコイルパターンとワイヤレス電力伝送用のコイルパターンが配置されている。これにより、スマートフォン3を端末ホルダー1に載置すると、端末ホルダー1とスマートフォン3の間で近距離無線通信を行うことができるとともに、ワイヤレス電力伝送によってスマートフォン3を充電することができる。本開示によるコイル部品を内蔵する装置としては、図1に示す端末ホルダー1に限らず、自動車の車内に設けられるセンターコンソールなど、スマートフォン3が載置される装置であれば特に限定されない。
【0012】
図1においては、スマートフォン3が載置面2のx方向における略中央部に載置されているが、載置面2のx方向における幅はスマートフォン3のx方向における長さよりも長く、このため、図2(a)に示すようにスマートフォン3が+x方向(3時方向)にオフセットして載置される場合や、図2(b)に示すようにスマートフォン3が-x方向(9時方向)にオフセットして載置される場合が想定される。このため、端末ホルダー1は、スマートフォン3がオフセットして載置された場合であっても、近距離無線通信を行うことができるよう設計する必要がある。
【0013】
図3は、一実施形態によるコイル部品100の構造を説明するための略平面図であり、図4図3に示すA-A線に沿った略断面図、図5図3に示すB-B線に沿った略断面図、図6図3に示すC-C線に沿った略断面図、図7図3に示すD-D線に沿った略断面図である。
【0014】
図3図7に示すように、本実施形態によるコイル部品100は、PETフィルムなどからなる基材4と、基材4の表面4a,4bに設けられた第1~第4コイルパターンCP1~CP4と、磁性体7とを備えている。磁性体7の裏面側には、端末ホルダー1の筐体や回路基板などからなる金属部材8が存在する。つまり、磁性体7は、第1~第4コイルパターンCP1~CP4と、金属部材8の間に配置されている。通常、コイルパターンの近傍に金属部材8が存在するとアンテナ効率が低下するが、両者間に磁性体7が配置されていることから、磁性体7が磁路として機能し、アンテナ効率の低下が抑えられる。第1~第4コイルパターンCP1~CP4の上面は、端末ホルダー1の筐体や保護フィルムなどからなる絶縁性部材6で覆われている。絶縁性部材6の表面は、図1に示した端末ホルダー1の載置面2を構成する。
【0015】
第1~第3コイルパターンCP1~CP3はNFC用のアンテナコイルであり、第4コイルパターンCP4はワイヤレス電力伝送用の送電コイルである。第1~第3コイルパターンCP1~CP3は、第2コイルパターンCP2と第3コイルパターンCP3の間に第1コイルパターンCP1がx方向に挟まれるよう、並置されている。このうち、中央に位置する第1コイルパターンCP1は、x方向における略中央部における通信を主に担うメインアンテナであり、両側に位置する第2及び第3コイルパターンCP2,CP3は、x方向における通信可能エリアを拡大するためのサブアンテナである。第1~第3コイルパターンCP1~CP3の軸方向はいずれもz方向である。このように、メインアンテナである第1コイルパターンCP1の両側にサブアンテナである第2及び第3コイルパターンCP2,CP3が配置されることから、通信可能エリアがx方向に拡大する。これにより、スマートフォン3が載置面2のどの部分に載置されても、正しく近距離無線通信を行うことが可能となる。なお、x方向は第1方向の一例であり、y方向は第2方向の一例である。
【0016】
第1~第3コイルパターンCP1~CP3は、それぞれ開口を有する。図3図7に示す例では、第1コイルパターンCP1のx方向における開口幅は、第2及び第3コイルパターンCP2,CP3のx方向における開口幅よりも大きい。y方向における開口幅については、第1~第3コイルパターンCP1~CP3ともにほぼ同じである。第4コイルパターンCP4は、第1コイルパターンCP1の開口領域に配置されている。第4コイルパターンCP4の軸方向もz方向である。第1コイルパターンCP1のコイル軸と第4コイルパターンCP4のコイル軸は、一致していても構わないし、x方向又はy方向における位置が互いに異なっていても構わない。このように、第4コイルパターンCP4を第1コイルパターンCP1の開口領域に配置していることから、第1~第4コイルパターンCP1~CP4を基材4の表面に形成することができ、部品点数が削減される。また、第1~第4コイルパターンCP4は同時に形成することができるため、製造プロセスも簡素化される。
【0017】
第1コイルパターンCP1は、基材4の表面4aに形成された導体パターン11と、基材4の表面4bに形成された導体パターン12によって構成されている。第2コイルパターンCP2は、基材4の表面4aに形成された導体パターン21と、基材4の表面4bに形成された導体パターン22と、基材4を貫通して設けられ、導体パターン21,22を接続するビア導体23によって構成されている。第3コイルパターンCP3は、基材4の表面4aに形成された導体パターン31と、基材4の表面4bに形成された導体パターン32と、基材4を貫通して設けられ、導体パターン31,32を接続するビア導体33によって構成されている。第4コイルパターンCP4は、基材4の表面4aに形成された導体パターン41と、基材4の表面4bに形成された導体パターン42と、基材4を貫通して設けられ、導体パターン41,42を接続するビア導体43によって構成されている。第1~第3コイルパターンCP1~CP3は直列に接続されており、これにより一つのアンテナコイルを構成している。
【0018】
図3図7に示す例では、第1コイルパターンCP1のターン数が約1ターンであり、第2及び第3コイルパターンCP2,CP3のターン数がそれぞれ約2ターンであるが、第1~第3コイルパターンCP1~CP3のターン数については特に限定されない。図3図7に示す例のように、サブアンテナである第2及び第3コイルパターンCP2,CP3のターン数をメインアンテナである第1コイルパターンCP1よりも多くすれば、x方向の両側におけるアンテナ特性が高められる。一方、メインアンテナである第1コイルパターンCP1のターン数をサブアンテナである第2及び第3コイルパターンCP2,CP3のターン数よりも多くすれば、x方向における略中央部のアンテナ特性が高められる。第4コイルパターンCP4はワイヤレス電力伝送用の送電コイルであり、大きなインダクタンスが必要であることから、そのターン数は第1~第3コイルパターンCP1~CP3のターン数よりも多い。
【0019】
ワイヤレス電力伝送用の第4コイルパターンCP4は、全体が磁性体7によってz方向から覆われている。これに対し、NFC用の第1~第3コイルパターンCP1~CP3は、開口領域の大部分が磁性体7とz方向に重なるものの、一部の区間が磁性体7と重なりを有していない。つまり、第1~第3コイルパターンCP1~CP3は、磁性体7の外周端からx方向又はy方向に突出する突出部をそれぞれ有している。
【0020】
図8は、第1~第3コイルパターンCP1~CP3と磁性体7の位置関係をより詳細に説明するための模式図である。
【0021】
図8に示すように、磁性体7は外周端51~54を有している。外周端51は+y方向(12時方向)における端部であり、x方向に延在している。外周端52は+x方向(3時方向)における端部であり、y方向に延在している。外周端53は-x方向(9時方向)における端部であり、y方向に延在している。外周端54は-y方向(6時方向)における端部であり、x方向に延在している。ここで、磁性体7のy方向における幅Wy、つまり外周端51から外周端54までの距離は、第1~第3コイルパターンCP1~CP3のy方向における開口幅Dyよりも小さい。一方、磁性体7のx方向における幅Wx、つまり外周端52から外周端53までの距離は、第1コイルパターンCP1のx方向における開口幅Dxよりも大きい。なお、外周端51は第1外周端の一例であり、外周端52は第2外周端の一例であり、外周端53は第3外周端の一例である。
【0022】
第1コイルパターンCP1は、区間S11~S14を有している。区間S11は+y方向(12時方向)に位置し、x方向に延在している。区間S12は+x方向(3時方向)に位置し、y方向に延在している。区間S13は-x方向(9時方向)に位置し、y方向に延在している。区間S14は-y方向(6時方向)に位置し、x方向に延在している。ここで、区間S12,S13の大部分が磁性体7と重なっているのに対し、区間S11,S14は磁性体7と重なりを有していない。つまり、区間S11は、磁性体7の外周端51から+y方向に突出する突出部(第1突出部)を構成し、区間S14は、磁性体7の外周端54から-y方向に突出する突出部を構成する。このように、第1コイルパターンCP1の区間S11,S14は、磁性体7とz方向に重ならない突出部を構成していることから、±y方向への磁束の広がりが抑えられ、その分、磁束が±x方向に広がる。
【0023】
区間S11は導体パターン12からなり、区間S14は導体パターン11からなる。区間S12のうち導体パターン12からなる部分は、導体パターン22及びビア導体23を介して、第2コイルパターンCP2を構成する導体パターン21の一端に接続される。そして、導体パターン21の他端は、区間S12のうち導体パターン11からなる部分に接続される。同様に、区間S13のうち導体パターン12からなる部分は、導体パターン32及びビア導体33を介して、第3コイルパターンCP3を構成する導体パターン31の一端に接続される。そして、導体パターン31の他端は、区間S13のうち導体パターン11からなる部分に接続される。区間S14は、一対の端子E1,E2にて終端する。なお、図8に示す例では、導体パターン12と導体パターン22との間を接続するx方向に延在する接続パターンを有しており、導体パターン11と導体パターン21との間を接続するx方向に延在する接続パターンを有している。これらの接続パターンのx方向における幅は、第2コイルパターンCP2のx方向における開口幅よりも小さくなっている。同様に、導体パターン12と導体パターン32との間を接続するx方向に延在する接続パターンを有しており、導体パターン11と導体パターン31との間を接続するx方向に延在する接続パターンを有している。これらの接続パターンのx方向における幅は、第3コイルパターンCP1のx方向における開口幅よりも小さくなっている。
【0024】
第1コイルパターンCP1と第2及び第3コイルパターンCP2,CP3は、互いに周回方向が逆である。例えば、端子E1から端子E2に向かって電流を流すと、第1コイルパターンCP1には左回り(反時計回り)に電流が流れ、第2及び第3コイルパターンCP2,CP3右回り(時計回り)に電流が流れる。このように、第1~第3コイルパターンCP1~CP3は、第1コイルパターンCP1から発生する磁界と第2及び第3コイルパターンCP2,CP3から発生する磁界が互いに逆相となるよう接続されていることから、第1コイルパターンCP1から発生する磁界と第2及び第3コイルパターンCP2,CP3から発生する磁界は主に強め合うことになる。
【0025】
第2コイルパターンCP2は、区間S21~S24を有している。区間S21は+y方向(12時方向)に位置し、x方向に延在している。区間S22は+x方向(3時方向)に位置し、y方向に延在している。区間S23は-x方向(9時方向)に位置し、y方向に延在している。区間S24は-y方向(6時方向)に位置し、x方向に延在している。ここで、区間S23の大部分が磁性体7と重なっているのに対し、区間S21,S22,S24は磁性体7と重なりを有していない。つまり、区間S21は、磁性体7の外周端51から+y方向に突出する突出部(第3突出部)を構成し、区間S22は、磁性体7の外周端52から+x方向に突出する突出部(第2突出部)を構成し、区間S24は、磁性体7の外周端54から-y方向に突出する突出部を構成する。このように、第2コイルパターンCP2の区間S21,S24は、磁性体7とz方向に重ならない突出部を構成していることから、±y方向への磁束の広がりが抑えられ、その分、磁束が+x方向に広がる。
【0026】
第3コイルパターンCP3は、区間S31~S34を有している。区間S31は+y方向(12時方向)に位置し、x方向に延在している。区間S32は+x方向(3時方向)に位置し、y方向に延在している。区間S33は-x方向(9時方向)に位置し、y方向に延在している。区間S34は-y方向(6時方向)に位置し、x方向に延在している。ここで、区間S32の大部分が磁性体7と重なっているのに対し、区間S31,S33,S34は磁性体7と重なりを有していない。つまり、区間S31は、磁性体7の外周端51から+y方向に突出する突出部(第5突出部)を構成し、区間S33は、磁性体7の外周端53から-x方向に突出する突出部(第4突出部)を構成し、区間S34は、磁性体7の外周端54から-y方向に突出する突出部を構成する。このように、第3コイルパターンCP3の区間S31,S34は、磁性体7とz方向に重ならない突出部を構成していることから、±y方向への磁束の広がりが抑えられ、その分、磁束が-x方向に広がる。
【0027】
図9は、磁性体7の外周端52の位置による磁束の変化を説明するための模式図である。
【0028】
図9(a)は、磁性体7の外周端52のx方向における位置X1が第2コイルパターンCP2の開口領域と重なっている場合を示している。この場合、第1コイルパターンCP1によって生じる磁束φ1aは、第2コイルパターンCP2によって生じる磁束φ2と強め合い、これにより通信可能エリアが+x方向に広がる。特に、第2コイルパターンCP2のx方向における中央位置X2よりも、磁性体7の外周端52のx方向における位置X1が+x方向にあれば、つまり、位置X1と第2コイルパターンCP2の区間S22との距離が第2コイルパターンCP2のx方向における開口幅の1/2未満であれば、通信可能エリアの+x方向への広がりが大きくなる。ここで、第1コイルパターンCP1によって生じる磁束のうち磁束φ1b,φ1cからなる成分は、磁束φ2を打ち消すように作用するが、図9(a)に示す例では、第1コイルパターンCP1によって生じる磁束のうち、磁束φ1b,φ1cからなる成分は比較的少ない。
【0029】
これに対し、図9(b)に示すように、第2コイルパターンCP2の区間S22が磁性体7から+x方向に突出していない場合、磁束φ1bからなる成分が増えるため、図9(a)に示す場合と比べると、通信可能エリアの+x方向への広がりが抑えられる。また、図9(c)に示すように、第2コイルパターンCP2のx方向における中央位置X2よりも、磁性体7の外周端52のx方向における位置X1が-x方向にある場合、つまり、位置X1と第2コイルパターンCP2の区間S22との距離が第2コイルパターンCP2のx方向における開口幅の1/2以上である場合、磁束φ1cからなる成分が増えるため、図9(a)に示す場合と比べると、通信可能エリアの+x方向への広がりが抑えられる。これらの点を考慮すれば、磁性体7の外周端52のx方向における位置X1と第2コイルパターンCP2の位置関係は、図9(a)に示す位置関係であることが好ましい。図示しないが、磁性体7の外周端53のx方向における位置と第3コイルパターンCP3の位置関係についても同様である。
【0030】
このように、本実施形態においては、第1~第3コイルパターンCP1~CP3と磁性体7が上記の位置関係を有していることから、第1~第3コイルパターンCP1~CP3と鎖交する磁束が±x方向に広がる。その結果、端末ホルダー1の載置面2のどの位置にスマートフォン3が載置された場合であっても、スマートフォン3と正しく通信を行うことが可能となる。
【0031】
図10は、変形例によるコイル部品100aの構造を説明するための略平面図である。
【0032】
図10に示すコイル部品100aは、第1コイルパターンCP1が第4コイルパターンCP4の外形に沿って配設され、第2及び第3コイルパターンCP2,CP3の一部が第1コイルパターンCP1の一部に沿って配設されている点において、上述したコイル部品100と相違している。より具体的には、第1コイルパターンCP1の区間S12,S13が周回方向に沿ってx方向における座標が変化する部分を含む形状を有し、これに伴い、第1コイルパターンCP1の区間S12に沿って配設される第2コイルパターンCP2の区間S23や、第1コイルパターンCP1の区間S13に沿って配設される第3コイルパターンCP3の区間S32についても、周回方向に沿ってx方向における座標が変化する部分を含む形状を有している。図10に示すコイル部品100aが例示するように、第1コイルパターンCP1と第2及び第3コイルパターンCP2,CP3がy方向に部分的な重なりを有していても構わない。これにより、第2及び第3コイルパターンCP2,CP3の区間S23,S32の一部がx方向における中央側に延在する部分を有することから、x方向における略中央部のアンテナ特性が高められる。
【0033】
図11は、本実施形態によるコイル部品100を用いたワイヤレス電力伝送デバイス60のブロック図である。
【0034】
図11に示すワイヤレス電力伝送デバイス60は、第1~第4コイルパターンCP1~CP4を有するコイル部品100と、第1~第3コイルパターンCP1~CP3に接続された通信回路61と、第4コイルパターンCP4に接続された送電回路62とを備えている。通信回路61及び送電回路62は、制御回路63に接続されている。これにより、通信ライン64を介して送受信されるデータは、NFC用の第1~第3コイルパターンCP1~CP3を介してスマートフォン3と通信することができるとともに、電源65によって供給される電力は、ワイヤレス電力伝送用の第2コイルパターンCP2を介してスマートフォン3にワイヤレスで送電することができる。
【0035】
このように、本実施形態によれば、NFCによる通信とワイヤレス電力伝送による充電が可能な端末ホルダー1に適したコイル部品100を提供することが可能となる。
【0036】
以上、本開示の好ましい実施形態について説明したが、本開示は、上記の実施形態に限定されることなく、本開示の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本開示の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0037】
本開示に係る技術には、以下の構成例が含まれるが、これに限定されるものではない。
【0038】
本開示の一実施態様によるコイル部品は、第1コイルパターンと、第1コイルパターンと接続される第2コイルパターンと、第1及び第2コイルパターンを軸方向から覆う磁性体とを備え、第1及び第2コイルパターンは、軸方向と直交する第1方向に並置され、第1コイルパターンは、軸方向及び第1方向と直交する第2方向における磁性体の第1外周端から第2方向に突出する第1突出部を有する。
【0039】
係るコイル部品においては、第2方向への磁束の広がりが抑えられ、その分、磁束が第1方向に広がり、通信可能エリアを効率よく拡大することができる。
【0040】
また、第2コイルパターンは、磁性体の第1方向における一方側の第2外周端から第1方向に突出する第2突出部を有していても構わない。これによれば、第2コイルパターンの外側において、第1コイルパターンによって生じる磁束と第2コイルパターンによって生じる磁束が弱め合うことが抑制される。
【0041】
また、第2突出部と磁性体の第2外周端の第1方向における距離は、第2コイルパターンの第1方向における開口幅の1/2未満であっても構わない。これによれば、通信可能エリアの第1方向への広がりが大きくなる。
【0042】
また、第2コイルパターンは、磁性体の1外周端から第2方向に突出する第3突出部を有していても構わない。これによれば、第2方向への磁束の広がりが抑えられ、その分、磁束が十分に第1方向に広がる。
【0043】
また、第1及び第2コイルパターンは、第2方向に部分的な重なりを有していても構わない。この場合、磁性体と重なる第1コイルパターンの第1区間は、周回方向に沿って第1方向における座標が変化する部分を含む形状を有し、第2コイルパターンの第2区間は、第1区間に沿って配設されていても構わない。これによれば、第1方向における略中央部のアンテナ特性が高められる。
【0044】
また、コイル部品は、第1コイルパターンに接続される第3コイルパターンをさらに備え、第1コイルパターンは、第2コイルパターンと第3コイルパターンの間に配置されていても構わない。これによれば、通信可能エリアが第1方向に拡大する。
【0045】
また、第3コイルパターンは、磁性体の第1方向における他方側の第3外周端から第1方向に突出する第4突出部を有していても構わない。これによれば、第3コイルパターンの外側において、第1コイルパターンによって生じる磁束と第3コイルパターンによって生じる磁束が弱め合うことが抑制される。
【0046】
また、第4突出部と磁性体の第3外周端の第1方向における距離は、第3コイルパターンの第1方向における開口幅の1/2未満であっても構わない。これによれば、通信可能エリアの第1方向への広がりが大きくなる。
【0047】
また、第3コイルパターンは、磁性体の1外周端から第2方向に突出する第5突出部を有していても構わない。これによれば、第2方向への磁束の広がりが抑えられ、その分、磁束が十分に第1方向に広がる。
【0048】
また、第1及び第3コイルパターンは、第2方向に部分的な重なりを有していても構わない。この場合、磁性体と重なる第1コイルパターンの第3区間は、周回方向に沿って第1方向における座標が変化する部分を含む形状を有し、第3コイルパターンの第4区間は、第3区間に沿って配設されていても構わない。これによれば、第1方向における略中央部のアンテナ特性が高められる。
【0049】
また、第1乃至第3コイルパターンは、第1コイルパターンが発生する磁界と第2及び第3コイルパターンが発生する磁界とが互いに逆相となるよう接続されていても構わない。これによれば、第1コイルパターンから発生する磁界と第2及び第3コイルパターンから発生する磁界は主に強め合うことになる。
【0050】
また、第2及び第3コイルパターンのそれぞれのターン数は、第1コイルパターンのターン数よりも多くて構わない。これによれば、第1方向の両側におけるアンテナ特性が高められる。
【0051】
また、コイル部品は、第1コイルパターンの開口領域に配置され、第1コイルパターンと同じ軸方向を有する第4コイルパターンをさらに備えていても構わない。この場合、コイル部品は、基材をさらに備え、第1、第2及び第4コイルパターンは、基材の少なくとも一方の表面に設けられていても構わない。これによれば、第1、第2及び第4コイルパターンを基材の表面に形成することができ、部品点数が削減される。また、第1、第2及び第4コイルパターンは同時に形成することができるため、製造プロセスも簡素化される。
【0052】
また、本開示の一実施態様によるワイヤレス電力伝送デバイスは、上記コイル部品と、第1及び第2コイルパターンに接続される通信回路と、第4コイルパターンに接続される送電回路と、を備える。
【0053】
係るワイヤレス電力伝送デバイスにおいては、通信可能エリアを効率よく拡大することが可能なワイヤレス電力伝送デバイスを提供できる。
【符号の説明】
【0054】
1 端末ホルダー
2 載置面
3 スマートフォン
4 基材
4a,4b 基材の表面
6 絶縁性部材
7 磁性体
8 金属部材
11,12,21,22,31,32,41,42 導体パターン
23,33,43 ビア導体
51~54 外周端
60 ワイヤレス電力伝送デバイス
61 通信回路
62 送電回路
63 制御回路
64 通信ライン
65 電源
100,100a コイル部品
E1,E2 端子
S11~S14,S21~S24,S31~S34 区間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11