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特許7561045グラスランの取付構造及びグラスラン取付け用クリップ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-25
(45)【発行日】2024-10-03
(54)【発明の名称】グラスランの取付構造及びグラスラン取付け用クリップ
(51)【国際特許分類】
   B60J 10/76 20160101AFI20240926BHJP
   B60J 10/36 20160101ALI20240926BHJP
   F16B 2/22 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
B60J10/76
B60J10/36
F16B2/22 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021007807
(22)【出願日】2021-01-21
(65)【公開番号】P2022112131
(43)【公開日】2022-08-02
【審査請求日】2023-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000196107
【氏名又は名称】西川ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105175
【弁理士】
【氏名又は名称】山広 宗則
(74)【代理人】
【識別番号】100105197
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 牧子
(72)【発明者】
【氏名】小島 昌博
(72)【発明者】
【氏名】森原 康裕
【審査官】池田 晃一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/020525(WO,A1)
【文献】実開昭60-163113(JP,U)
【文献】特開平10-278584(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0167732(US,A1)
【文献】特開2019-214301(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 5/04
B60J 10/00 - 10/90
B60R 13/06
F16B 2/00 - 2/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のドアに設けられた枠体において車外側に延びるフランジに車外側から取付けられ、上側壁部と、下側壁部と、前記上側壁部と下側壁部を連結する連結壁部からなる断面略コ字形状で内方に係止部が形成された取付部と、昇降するドアガラスを溝部に案内する、前記下側壁部と、前記下側壁部の車内側と車外側から下設された車内側側壁部と、車外側側壁部からなる本体部を有するグラスランを、前記フランジに間歇的に形成された凹部にクリップを差し込んで取付けるグラスランの取付構造であって、
前記クリップは、前記フランジの上に載置されるベース面と、そのべース面から上方に延び前記グラスランの上側壁部に組付けられる上側組付部と、前記ベース面から下方に延び前記凹部に上方から差し込まれ係止される下側係止部を有し、
前記グラスランの上側壁部端部は前記上側組付部で覆われ、前記フランジの先端部は前記クリップで覆われないようにしたことを特徴とするグラスランの取付構造。
【請求項2】
前記グラスランの上側壁部の上面には凸状部又は凹状部が形成されるとともに、前記クリップの上側組付部は前記凸状部又は凹状部に係止されることを特徴とする請求項1に記載のグラスランの取付構造。
【請求項3】
前記グラスランの上側壁部端部は前記グラスランの延びる長手方向に切り欠きされ、その切り欠きされた部位に前記クリップは嵌め込まれ、その嵌め込まれたクリップの車内側を、前記上側壁部端部で前記切り欠きされていない部分と面一になるようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載のグラスランの取付構造。
【請求項4】
前記グラスランの上側壁部の上面には凸状部が形成されるとともに、前記グラスランの上側壁部端部及び前記凸状部の上部は前記グラスランの延びる長手方向に切り欠きされ、その切り欠きされた部位に前記クリップは嵌め込まれ、その嵌め込まれたクリップの車内側及び上側組付部を、前記上側壁部端部及び前記凸状部で前記切り欠きされていない部分と面一になるようにしたことを特徴とする請求項1に記載のグラスランの取付構造。
【請求項5】
前記クリップの上側組付部において、前記グラスランの延びる長手方向の両端部についてそれぞれ外側に向けて徐々に薄肉になるように前記上側組付部の上部をテーパー状にし、
前記枠体のフランジの車内側に取付けられ、前記ドア閉時に自動車のボディに弾接するメインシール部を有するドアウェザーストリップから車外側に向けて延びるリップ状のサブシール部を、前記クリップが取付けられた部分では、前記クリップの上側組付部の車内側に上方から弾接させたことを特徴とする請求項1又は2に記載のグラスランの取付構造。
【請求項6】
自動車のドアに設けられた枠体において車外側に延びるフランジに車外側から取付けられ、上側壁部と、下側壁部と、前記上側壁部と下側壁部を連結する連結壁部からなる断面略コ字形状で内方に係止部が形成された取付部と、昇降するドアガラスを溝部に案内する、前記下側壁部と、前記下側壁部の車内側と車外側から下設された車内側側壁部と、車外側側壁部からなる本体部を有するグラスランを、前記フランジに間歇的に形成された凹部に差し込んで取付けるグラスラン取付け用クリップであって、
前記フランジの上に載置されるベース面と、そのべース面から前記グラスランの上側壁部端部を覆うように上方に延び前記グラスランの上側壁部に組付けられる上側組付部と、前記ベース面から下方に延び前記凹部に上方から差し込まれ係止される下側係止部を有し、前記フランジの先端部は覆わないようにしたことを特徴とするグラスラン取付け用クリップ。
【請求項7】
前記ベース面は、前記グラスランの延びる長手方向に延びるベース基板と、そのベース基板の両端から車内側に向けてそれぞれ延びる第一支持板と第二支持板からなる、平面視で車内側に開口した略コ字状であり、
前記下側係止部は、前記第一支持板と第二支持板の間で前記ベース基板の車内側から延びることを特徴とする請求項1乃至6のうちいずれか一つに記載のグラスランの取付構造及びグラスラン取付け用クリップ。
【請求項8】
前記第一支持板の端部と第二支持板の端部を連結する連結板をさらに有することを特徴とする請求項7に記載のグラスランの取付構造及びグラスラン取付け用クリップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラスランの取付構造及びグラスラン取付け用クリップに関する。より詳細には、自動車のドアの枠体にクリップを使用してグラスランを取付けるグラスランの取付構造と、そのグラスラン取付け用のクリップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、グラスランを、クリップを使用してドアの枠体に強固に取付けて枠体に対するグラスランの密着性を高めたものが知られている(例えば、特許文献1~3参照)。
【0003】
特に、特許文献3で示された発明は、図13乃至図15に示すように、自動車ドア1に設けられた枠体(ドアパネル)11において車外側に延びるフランジ11Aに車外側から取付けられ、枠体11の一部を車外側から覆って隠すヒドンタイプのグラスラン20を、クリップ30を使用してルーフ側の枠体11に取付けたものである。ドア1の閉時にグラスラン20はルーフ側の車体開口部周縁(ボディ)2に弾接する。
【0004】
クリップ30には、グラスラン20に組付けられる上下の鉤状の組付部31,32と、その間に設けられフランジ11Aに差し込まれる断面略U字形状の差し込み部33と、その差し込み部33の上側から車外側斜め下側に向けて延びるように突出した係止突起34が形成されている。
また、フランジ11Aには、グラスラン20の延びる長手方向(ドア1を閉じた場合、車両の前後方向)に長孔11Hが形成されていて、その長孔11Hに上方からクリップ30の係止突起34が差し込まれて係止されるようになっている。
【0005】
これによれば、グラスラン20の延びる長手方向に間歇的に複数設けられたクリップ30によってグラスラン20は枠体11に強固に取付けられるため、高速走行時にドアガラス100が車外側に吸い出されることに伴いグラスラン20が一緒に車外側に吸い出されることを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】実開昭51-39919号公報
【文献】特開2020-50123号公報
【文献】国際公開第2007/020525号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、図14及び図15に示したように、クリップ30はフランジ11Aの先端部を覆うようにしてフランジ11Aに取付けられるため、クリップ30のない部分ではフランジ11Aの先端部とグラスラン20の間に隙間が発生する。これに対してクリップ30のある部分では隙間が発生しないか、仮に隙間があってもクリップ30のある部分と比較して隙間は小さい状態となるので、クリップ30の存在する部分と存在しない部分における隙間の差により波打ちが発生して外観的に見栄えが悪くなるといった問題がある。
【0008】
その波打ちを防ぐために、クリップ30が存在する部分ではフランジ11Aの先端部をカットすることでクリップ30のスペースを確保して、クリップ30の車外側面とクリップ30が存在しない部分のフランジ11Aの先端面を面一にすることができるが、フランジ11Aの先端部をカットするには手間がかかりコスト高になることに加え、フランジ11Aの剛性が低下するといった問題もある。
【0009】
そこで、本発明の目的とするところは、外観上見栄えが特に悪化することなく、枠体にグラスランを強固に取付けることができるグラスランの取付構造及びグラスラン取付け用クリップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明のグラスランの取付構造は、自動車のドア(1)に設けられた枠体(10)において車外側に延びるフランジ(10A)に車外側から取付けられ、上側壁部(53)と、下側壁部(54)と、前記上側壁部(53)と下側壁部(54)を連結する連結壁部(55)からなる断面略コ字形状で内方に係止部(56)が形成された取付部(51)と、昇降するドアガラス(100)を溝部に案内する、前記下側壁部(54)と、前記下側壁部(54)の車内側と車外側から下設された車内側側壁部(57)と、車外側側壁部(58)からなる本体部(52)を有するグラスラン(50)を、前記フランジ(10A)に間歇的に形成された凹部(10H)にクリップ(70)を差し込んで取付けるグラスランの取付構造であって、
前記クリップ(70)は、前記フランジ(10A)の上に載置されるベース面(71)と、そのべース面(71)から上方に延び前記グラスラン(50)の上側壁部(53)に組付けられる上側組付部(72)と、前記ベース面(71)から下方に延び前記凹部(10H)に上方から差し込まれ係止される下側係止部(73)を有し、
前記グラスラン(70)の上側壁部(53)端部は前記上側組付部(72)で覆われ、前記フランジ(10A)の先端部は前記クリップ(70)で覆われないようにしたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、前記グラスラン(50)の上側壁部(53)の上面には凸状部(68)又は凹状部(53b)が形成されるとともに、前記クリップ(70)の上側組付部(72)は前記凸状部(68)又は凹状部(53b)に係止されることを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、前記グラスラン(50)の上側壁部(53)端部は前記グラスラン(50)の延びる長手方向に切り欠きされ、その切り欠きされた部位(50H)に前記クリップ(70)は嵌め込まれ、その嵌め込まれたクリップ(70)の車内側を、前記上側壁部(53)端部で前記切り欠きされていない部分と面一になるようにしたことを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、前記グラスラン(50)の上側壁部(53)の上面には凸状部(68)が形成されるとともに、前記グラスラン(50)の上側壁部(53)端部及び前記凸状部(68)の上部は前記グラスラン(50)の延びる長手方向に切り欠きされ、その切り欠きされた部位(50H)に前記クリップ(70)は嵌め込まれ、その嵌め込まれたクリップ(70)の車内側及び上側組付部(72)を、前記上側壁部(53)端部及び前記凸状部(68)で前記切り欠きされていない部分と面一になるようにしたことを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、前記クリップ(70)の上側組付部(72)において、前記グラスランの延びる長手方向の両端部についてそれぞれ外側に向けて徐々に薄肉になるように前記上側組付部(72)の上部をテーパー状にし、
前記枠体(10)のフランジ(10A)の車内側に取付けられ、前記ドア(1)閉時に自動車のボディ(2)に弾接するメインシール部(82)を有するドアウェザーストリップ(80)から車外側に向けて延びるリップ状のサブシール部(83)を、前記クリップ(70)が取付けられた部分では、前記クリップ(70)の上側組付部(72)の車内側に上方から弾接させたことを特徴とする。
【0015】
また本発明のグラスラン取付け用クリップは、自動車のドア(1)に設けられた枠体(10)において車外側に延びるフランジ(10A)に車外側から取付けられ、上側壁部(53)と、下側壁部(54)と、前記上側壁部(53)と下側壁部(54)を連結する連結壁部(55)からなる断面略コ字形状で内方に係止部(56)が形成された取付部(51)と、昇降するドアガラス(100)を溝部に案内する、前記下側壁部(54)と、前記下側壁部(54)の車内側と車外側から下設された車内側側壁部(57)と、車外側側壁部(58)からなる本体部(52)を有するグラスラン(50)を、前記フランジ(10A)に間歇的に形成された凹部(10H)に差し込んで取付けるグラスラン取付け用クリップ(70)であって、
前記フランジ(10A)の上に載置されるベース面(71)と、そのべース面(71)から上方に延び前記グラスラン(50)の上側壁部(53)に組付けられる上側組付部(72)と、前記ベース面(71)から下方に延び前記凹部(10H)に上方から差し込まれ係止される下側係止部(73)を有し、前記フランジ(10A)の先端部は覆わないようにしたことを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、前記ベース面(71)は、前記グラスラン(50)の延びる長手方向に延びるベース基板(71A)と、そのベース基板(71A)の両端から車内側に向けてそれぞれ延びる第一支持板(71B)と第二支持板(71C)からなる、平面視で車内側に開口した略コ字状であり、
前記下側係止部(73)は、前記第一支持板(71B)と第二支持板(71C)の間で前記ベース基板(71A)の車内側から延びることを特徴とする。
【0017】
また、本発明は、前記第一支持板(71B)の端部と第二支持板(71C)の端部を連結する連結板(71D)をさらに有することを特徴とする。
【0018】
なお、括弧内の記号は、図面および後述する発明を実施するための形態に記載された対応要素または対応事項を示す。
【発明の効果】
【0019】
本発明のグラスランの取付構造によれば、自動車のドアに設けられた枠体において車外側に延びるフランジに車外側から取付けられる、いわゆるヒドンタイプのグラスランは枠体に対してクリップによって間歇的に取付けられるので、高速走行時にドアガラスが車外側に吸い出されることに伴いグラスランが一緒に車外側に吸い出されることを防止することができる。
このときクリップは、べース面から上方に延びる上側組付部をグラスランの上側壁部に組付け、ベース面から下方に延びる下側係止部をフランジに間歇的に形成された凹部に上方から差し込むようにして係止されるようにしたものであるが、フランジの先端部についてはクリップで覆うことがないようにしたものであるので、従来例の問題としてあげたように、グラスランの車外側面に波打ちが発生して外観的に見栄えが悪くなることはない。また、クリップの取付けにおいて枠体から延びるフランジの先端部をカットする必要もない。
【0020】
また本発明によれば、グラスランの上側壁部の上面には凸状部又は凹状部が形成されるとともに、クリップの上側組付部は凸状部又は凹状部に係止されるので、グラスランに対するクリップの車内外方向の動きは規制され、クリップはグラスランに安定した状態で組付けられる。
【0021】
また本発明によれば、グラスランの上側壁部端部はグラスランの延びる長手方向に切り欠きされ、その切り欠きされた部位にクリップが嵌め込まれるので、グラスランに対するクリップの長手方向(グラスランの延びる長手方向)の動きは規制され、クリップはグラスランに安定した状態で組付けられる。
しかも、嵌め込まれたクリップの車内側を、上側壁部端部で切り欠きされていない部分と面一にしたので、クリップが車内側に部分的に突出することはなく見栄えがよい。
【0022】
また本発明によれば、グラスランの上側壁部の上面には凸状部が形成されるとともに、グラスランの上側壁部端部及び凸状部の上部はグラスランの延びる長手方向に切り欠きされ、その切り欠きされた部位にクリップは嵌め込まれ、その嵌め込まれたクリップの車内側及び上側組付部を、上側壁部端部及び凸状部で切り欠きされていない部分と面一になるようにしたので、クリップはその車内側も上側組付部の部分もグラスランから車内側及び上方に突出することはなく見栄えがよい。
【0023】
また本発明によれば、クリップの上側組付部において、前記グラスランの延びる長手方向の両端部についてそれぞれ外側に向けて徐々に薄肉になるように上側組付部の上部をテーパー状にし、枠体のフランジの車内側に取付けられたドアウェザーストリップから車外側に向けて延びるリップ状のサブシール部を、クリップが取付けられた部分では、クリップの上側組付部の車内側に上方から弾接させたので、クリップの両端部でサブシール部との間に生じる三角形状の隙間を、テーパー状にしない場合と比較して小さくするように抑えられる。
【0024】
また本発明のグラスラン取付け用クリップによれば、グラスランを枠体に間歇的にではあるが強固かつ容易に取付けることができる。しかも、クリップは、ベース面と上側組付部と下側係止部を有するだけの単純な構成でフランジの先端部は覆う部分はないのでグラスランの車外側面に波打ちが発生することを防止することができる。
【0025】
また本発明によれば、クリップのベース面は、ベース基板とその両端からそれぞれ延びる第一支持板と第二支持板からなる平面視で略コ字状であるので、フランジとグラスランの間に差し込まれたベース面は、グラスランの係止部で押え付けられ安定した状態となる。
さらに、第一支持板の端部と第二支持板の端部を連結する連結板を有するものでは一層安定した状態となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施形態に係るグラスランの取付構造を示す要部拡大斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係るグラスランの取付構造を示す図13のB-B線拡大断面図である。
図3】本発明の実施形態に係るグラスランの取付構造を示す図13のA-A線拡大断面図である。
図4】本発明の実施形態に係るグラスラン取付用クリップを示す拡大斜視図である。
図5】本発明の実施形態に係るグラスラン取付用クリップを示すもので、図4とは異なる角度から視た状態を示す拡大斜視図である。
図6図1に示すグラスランの斜視図である。
図7図1に示す枠体の斜視図である。
図8】本発明の実施形態に係る別のグラスランの取付構造を示す図13のA-A線拡大断面図である。
図9】本発明の実施形態に係るさらに別のグラスランの取付構造を示す図13のA-A線拡大断面図である。
図10】本発明の実施形態に係るさらに別のグラスランの取付構造を示す図13のA-A線拡大断面図である。
図11】本発明の実施形態に係るさらに別のグラスランの取付構造を示す図13のA-A線拡大断面図である。
図12】本発明の実施形態に係る別のグラスラン取付用クリップを示す拡大斜視図である。
図13】自動車の外観側面図である。
図14】従来例に係るグラスランの取付構造を示す図13のA-A線拡大断面図である。
図15図14に示すクリップの拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1乃至図7及び図13を参照して、本発明の実施形態に係るグラスランの取付構造及びグラスラン取付け用クリップについて説明する。図1に示すC-C線は図13のA-A線に相当しその断面を図3に示し、また図1に示すD-D線は図13のB-B線に相当しその断面を図2に示した。なお、従来例で示したものと同一部分には同一符号を付した。
【0028】
本発明の実施形態に係るグラスランの取付構造は、図1及び図13に示すように、自動車の枠体10の車外側に沿ってクリップ70を使用して間歇的に取付けられ、枠体10の一部を車外側から覆って隠すヒドンタイプのグラスラン50に関するものである。
【0029】
グラスラン50は、押出成形されてなり、図2及び図3に示すように、枠体10において車外側に延びるフランジ10Aに車外側から取付けられる取付部51と、内側に溝部を形成し昇降するドアガラス100を溝部に案内する本体部52を有している。
【0030】
取付部51は、車内外方向に延びる上側壁部53と、下側壁部54と、それら上側壁部53と下側壁部54を連結する連結壁部55からなる断面略コ字形状で内方に、フランジ10Aに弾接する係止部56が形成されている。ここでは上側壁部53の下部に3つのリップ状の係止部56が形成され、下側壁部54の上部に2つの突起状の係止部56が形成されている。
上側壁部53の略中央部の上面には車体開口部周縁2に弾接してボディとドア1間をシールするボディシールリップ部65が突設されている。また、上側壁部53,連結壁部55及び下側壁部54に沿って断面略U字形状の芯材67が埋設されていて、剛性が高められている。
【0031】
また、上側壁部53の車内側の下部からは、車内側下方に延びるリップ部59が突設されている。
ここで、上側壁部53の車内側端部は、車外側から車内側下方に傾斜する傾斜面53aとされていて、リップ部59の上面は、その傾斜面53aに沿った面一で車内側下方に突出して直線的に延びている。上側壁部23の車内側端部に形成された傾斜面53aの上部は、上側壁部53の上面よりもさらに上方に突出するように形成された突出部68の頂上部68aと一致している。
【0032】
本体部52は、昇降するドアガラス100を溝部に案内する、上述した下側壁部54と、下側壁部54の車内側と車外側から下設された車内側側壁部57と、車外側側壁部58からなる。
車内側側壁部57の端部の車外側面には、車外側に向けて延びてドアガラス100の車内側面に摺接するインナリップ部61が設けられ、また車外側側壁部58の端部の車内側面には、車内側に向けて延びてドアガラス100の車外側面に摺接するアウタリップ部62が設けられている。なお、下側壁部54の下方にドアガラス100の端部に弾接するシールリップを突設することもできる。
取付部51の連結壁部55と本体部52の車外側側壁部58は上下に連続していてそれらの車外側には装飾モール(ここでは光モール)69が取付けられている。
【0033】
また、図1乃至図3に示すように、枠体10のフランジ10Aの車内側にはドアウェザーストリップ80が取付けられている。
ドアウェザーストリップ80は、押出成形されてなり、枠体10の傾斜板部10Bの下端から車内側に延びる車内側板部10Cの上面に、ドアウェザーストリップ80の延びる長手方向(ドア1の上部においてはドア1を閉じたときの車両前後方向)に対して所定間隔でクリップ(図示しない)を介して取付けられる取付基部81と、取付基部81の上側に一体成形されドア1の閉時に車体開口部周縁2に弾接してボディとドア1間をシールするメインシール部82と、取付基部81の車外側に一体成形され車外側に向けて延びるリップ状のサブシール部83を有している。取付基部81の車内側にはインナーガーニッシュ90が取付けられている。
サブシール部83は、図2に示すように、クリップ70が存在しない部分では、グラスラン50の上側壁部53の傾斜面53aに弾接し、図3に示すように、グラスラン50にクリップ70が取付けられた部分ではクリップ70、より具体的には後述するクリップ70の上側組付部72に弾接している。
【0034】
クリップ70は、樹脂製で、図4及び図5に示すように、ベース面71と、そのべース面71から斜め上方に延びる上側組付部72と、ベース面71から斜め下方に延びる下側係止部73からだけでなり、取付時に枠体10のフランジ10Aの先端部を覆う部分や、その先端部に接触する部分は一切設けられていない。
ベース面71は、平面視で略「ロ」字形状で、グラスラン50に取付けられるときには、グラスラン50の延びる長手方向に延びるベース基板71Aと、そのベース基板71Aの両端から車内側に向けてそれぞれ延びる第一支持板71Bと第二支持板71Cと、第一支持板71Bの端部と第二支持板71Cの端部を連結する連結板71Dからなる。
【0035】
上側組付部72は、ベース面71から上方に略45度の角度で延び、上側組付部72の先端には略L字形状に折れ曲がった突起72aが形成されている。突起72aは上側組付部72の先端から下方に延びた後、折れ曲がり水平で外方(連結板71D側)に延びて略L字形状になっている。
また上側組付部72の長手方向の両端部についてそれぞれ外側に向けて徐々に薄肉になるように上側組付部72の上部はテーパー状(テーパー部72b)にされている。
また下側係止部73は、第一支持板71Bと第二支持板71Cの間でベース基板71Aの車内側から下方に延び、下側係止部73の先端はベース面71の下面よりさらに下側に突出している。
【0036】
クリップ70が取付けられるグラスラン50の部分は、図6に示すように、グラスラン50の延びる長手方向に切り欠きされている。その切り欠き部50Hは、グラスラン50の上側壁部53が先端から切り欠きされることにより形成され、その長手方向の長さは、クリップ70の上側組付部72が組付け可能になるように、上側組付部72の長さと同等かそれより若干長くなっている。
また、クリップ70が係止されるフランジ10Aの部分は、図7に示すように、凹部(ここでは長孔)10Hとなっていて、その長手方向の長さは、クリップ70の下側組付部73が差し込まれて係止されるように、下側組付部73の長さと同等かそれより若干長くなっている。本実施形態では、フランジ10Aは二枚に重ねられた上側板と下側板からなり、上側板にだけ凹部(ここでは長孔)10Hが形成されているが、下側板にも形成して上下貫通するようにしてもよい。
なお、グラスラン50に形成された切り欠き部50Hの位置と、フランジ10Aに形成された凹部10Hの位置は、枠体10にグラスラン50が組付けられたときに相対向する位置になるように設定されている。
【0037】
グラスラン50を、クリップ70を使用して枠体10に組付けるとき、クリップ70はグラスラン50に形成された切り欠き部50Hに嵌め込まれる。
このとき、図3に示すように、クリップ70のベース面71はグラスラン50の上側壁部53と下側壁部54と連結壁部55からなる断面略コ字形状の内方に差し込まれるとともに、クリップ70の上側組付部72は、グラスラン50の上側壁部53に形成された突出部68を覆うように上方から突出部68に被せられ、略L字形状に折れ曲がった突起72aのコーナー部外方が突出部68の車外側面に引っ掛けられるようにして組付けられる。
【0038】
そして、枠体10のフランジ10Aにおいて凹部10Hが形成された部分が、グラスラン50の下側壁部54とクリップ70のべース面71の間に案内されるようにして、クリップ70が装着されたグラスラン50がフランジ10Aに取付けられる。
このとき、クリップ70の下側係止部73は、フランジ10Aの凹部10Hに上方から差し込まれてフランジ10Aに係止されるようになっている。この状態で、クリップ70のベース面71は、グラスラン50の上側壁部53の下部に形成された3つのリップ状の係止部56で上方から押え付けられている。
【0039】
ここで、フランジ10Aの先端部は、グラスラン50の上側壁部53と下側壁部54と連結壁部55からなる断面略コ字形状の内方においてクリップ70で覆われるものではない。すなわち、フランジ10Aの先端面とそれが相対向するグラスラン50の連結壁部55の車内側面との間にクリップ70をはじめ他の部材は存在しない。フランジ10Aの先端面とグラスラン50の連結壁部55の車内側面との間には空間を設けても、あるいは空間を設けることなくフランジ10Aの先端面がグラスラン50の連結壁部55の車内側面に接するようにしてもよい。本実施形態では、フランジ10Aは二枚に重ねられた板からなり上側板の先端面とグラスラン50の連結壁部55の車内側面との間には空間を設け、下側板の先端面とグラスラン50の連結壁部55の車内側面との間には空間を設けることなく接するようにしている。
【0040】
このように構成されたグラスラン50の取付構造によれば、ヒドンタイプのグラスラン50は枠体10に対してクリップ70によって間歇的に取付けられるので、高速走行時にドアガラス100が車外側に吸い出されることに伴いグラスラン50が一緒に車外側に吸い出されることを防止することができる。
このときクリップ70は、そのべース面71から上方に延びる上側組付部72をグラスラン50の上側壁部53に組付け、ベース面71から下方に延びる下側係止部73をフランジ10Aに間歇的に形成された凹部(長孔)10Hに上方から差し込むようにして係止されるようにしたものであるのでグラスラン50を間歇的にではあるが強固にフランジ10Aに取付けることができる。
しかも、フランジ10Aの先端部についてはクリップ70で覆うことがないようにしたものであるので、従来例の問題としてあげたように、グラスラン50の車外側面に波打ちが発生して外観的に見栄えが悪くなることはない。
【0041】
また、グラスラン50の上側壁部53の上面には凸状部となる突出部68が形成されるとともに、クリップ70の上側組付部72は突出部68に係止されるので、グラスラン50に対するクリップ70の車内外方向の動きは規制され、クリップ70はグラスラン50に安定した状態で組付けられる。
さらに、グラスラン50の上側壁部53端部、すなわち車内側の端部はグラスラン50の延びる長手方向に切り欠きされ、その切り欠きされた部位50Hにクリップ70が嵌め込まれるので、グラスラン50に対するクリップ70の長手方向(グラスラン50の延びる長手方向)の動きは規制され、クリップ70はグラスラン70にさらに安定した状態で組付けられる。
【0042】
また、ドアウェザーストリップ80から車外側に向けて延びるリップ状のサブシール部83は、図1に示すように、クリップ70が設けられた部分ではクリップ70の上側組付部72の車内側に上方から弾接され、クリップ70の両端部では形成されたテーパー部72bに上方から弾接されるので、クリップ70の両端部でサブシール部83との間に生じる三角形状の隙間Sを、テーパー状にしない場合と比較して小さくするように抑えられる。
【0043】
なお、本実施形態では、図3に示したように、クリップ70の上側組付部72の断面形状を、グラスラン50の突出部68の外周面と切欠きされた後に残った上側壁部53の先端面と傾斜面53aに沿って接するようにして先端には略L字形の突起72aを設けるようにしたが、これに限定されることなく、クリップ70の上側組付部72がグラスラン50の上側壁部53側に係止されるものであれば別の態様であってもよい。
例えば、図8に示すように、クリップ70の上側組付部72の断面形状を、切欠きされた後に残った上側壁部53の先端面との間に空間を設け、上側組付部72の先端に形成した鉤部72cで突出部68を引っ掛けるようにしてもよい。
【0044】
また、図9に示すように、グラスラン50の上側壁部53に突出部68を設けることなく、上側壁部53の上面に凹部53bを形成し、クリップ70の上側組付部72の先端に形成した突部72dを凹部53bに嵌め込むようにしてもよい。
また、図10に示すように、グラスラン50の上側壁部53の弾性でグラスラン50の上側壁部53をベース面71との間で挟持するようにしてもよい。
【0045】
さらに、図11に示すように、クリップ70が取付けられたときの上側組付部72の表面(外殻面)を、図2に示すように、クリップ70が取付けられていない部分のグラスラン50の上側壁部53及び突出部68の表面(外殻面)と一致させ面一にして取付けられたクリップ70が部分的に突出することがないようにすることもできる。
図11では、グラスラン50の上側壁部53端部及び突出部68の上部をグラスラン50の延びる長手方向に切り欠きして、その切り欠きされた部位にクリップ70を嵌めたときにクリップ70の車内側及び上側組付部72が、上側壁部53端部及び突出部68で切り欠きされていない部分と面一になるようにしたものである。
これによれば、クリップ70の車内側も上側組付部72の部分もグラスラン50から車内側及び上方に突出することはないので外観上見栄えがよい。
【0046】
また、嵌め込まれたクリップ70の車内側だけを、グラスラン50の上側壁部53端部で切り欠きされていない部分と面一にして、クリップ70が車内側に部分的に突出することがないようにすることもできる。
なお、クリップ70を取付けた部分が突出するが、グラスラン50を長手方向に切り欠くことなくクリップ70をグラスラン50が取付けることもできる。
【0047】
また、クリップ70のベース面71については、図4に示したように、ベース基板71Aと第一支持板71Bと第二支持板71Cと連結板71Dにより平面視で略「ロ」字形状になるようにしたが、図12に示すように連結板71Dを省くこともできるし、図示は省略するが、さらに第一支持板71Bと第二支持板71Cについても省くこともできる。
なお、ベース面71がフランジ10Aとグラスラン50の間に差し込まれた際にグラスラン50の係止部56で上方から押え付けられるようにした方がクリップ70は安定した状態となるので、連結板71Dや第一支持板71B,第二支持板71Cを省いたものより、それらを省かない平面視で略「ロ」字形状のものがより安定した状態でクリップ70を取付けることができる。
【符号の説明】
【0048】
1 ドア
2 車体開口部周縁(ボディ)
10,11 枠体
10A,11A フランジ
10B 傾斜板部
10C 車内側板部
10H 凹部(長孔)
11H 長孔
20 グラスラン
30 クリップ
31,32 組付部
33 差し込み部
34 係止突起
50 グラスラン
50H 切り欠き部
51 取付部
52 本体部
53 上側壁部
53a 傾斜面
53b 凹部
54 下側壁部
55 連結壁部
56 係止部
57 車内側側壁部
58 車外側側壁部
59 リップ部
61 インナリップ部
62 アウタリップ部
65 ボディシールリップ部
67 芯材
68 突出部
68a 頂上部
69 装飾モール
70 クリップ
71 ベース面
71A ベース基板
71B 第一支持板
71C 第二支持板
71D 連結板
72 上側組付部
72a 突起
72b テーパー部
72c 鉤部
72d 突部
73 下側係止部
80 ドアウェザーストリップ
81 取付基部
82 メインシール部
83 サブシール部
90 インナーガーニッシュ
100 ドアガラス
S 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図15