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  • 特許-判定装置及び判定方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-25
(45)【発行日】2024-10-03
(54)【発明の名称】判定装置及び判定方法
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/00 20170101AFI20240926BHJP
   G06T 7/269 20170101ALI20240926BHJP
   G06T 7/70 20170101ALI20240926BHJP
   G06V 20/58 20220101ALI20240926BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
G06T7/00 650
G06T7/269
G06T7/70 B
G06V20/58
G08G1/16 D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021009005
(22)【出願日】2021-01-22
(65)【公開番号】P2022112952
(43)【公開日】2022-08-03
【審査請求日】2023-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三野 敦
(72)【発明者】
【氏名】藤本 知之
(72)【発明者】
【氏名】村角 周樹
(72)【発明者】
【氏名】谷 泰司
(72)【発明者】
【氏名】橋本 順次
(72)【発明者】
【氏名】笠目 知秀
【審査官】菊池 伸郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-052647(JP,A)
【文献】特開2017-097581(JP,A)
【文献】特開2007-279805(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 1/00-7/90
G06V 10/00-40/70
G08G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行中の車両から撮影された画像内のカーブミラーに映る物体のオプティカルフローを抽出する抽出部と、
前記画像から、前記カーブミラーの向きを検出する検出部と、
前記カーブミラーの向きと前記物体のオプティカルフローの向きを基に、前記物体が前記車両に接近しているか否かを判定する判定部と、
を有することを特徴とする判定装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記画像内の前記カーブミラーの位置、及び前記検出部によって検出された前記カーブミラーの向きに応じて定められる条件を、前記物体のオプティカルフローの向きが満たすか否かによって、前記物体が前記車両に接近しているか否かを判定することを特徴とする請求項1に記載の判定装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記物体が前記車両に接近していると判定した場合、前記物体のオプティカルフローの向きを基に前記物体がどの方向から接近しているかをさらに判定することを特徴とする請求項2に記載の判定装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記物体のオプティカルフローと、前記車両の移動に起因して前記画像内のカーブミラーに生じるオプティカルフローと、の変化量の差分が所定の量より大きい場合、前記物体が接近していると判定することを特徴とする請求項2又は3に記載の判定装置。
【請求項5】
前記抽出部は、走行中の車両から撮影された画像内のカーブミラーに映る物体であって、あらかじめ登録された背景に含まれない物体のオプティカルフローを抽出し、
前記判定部は、前記オプティカルフローが下向きの成分を含む場合、前記物体が前記車両に接近していると判定することを特徴とする請求項1に記載の判定装置。
【請求項6】
判定装置によって実行される判定方法であって、
走行中の車両から撮影された画像内のカーブミラーに映る物体のオプティカルフローを抽出する抽出工程と、
前記画像から、前記カーブミラーの向きを検出する検出工程と、
前記カーブミラーの向きと前記物体のオプティカルフローの向きを基に、前記物体が前記車両に接近しているか否かを判定する判定工程と、
を含むことを特徴とする判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、判定装置及び判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載カメラで撮影された画像内のカーブミラーに映る特徴点の移動ベクトル(オプティカルフロー、移動フロー)の向きから、自車両に近付いてくる移動物体、あるいは、自車両から離れていく移動物体を判断する技術が知られている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-234999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、走行中の車両によって撮影された画像から、カーブミラーに映る物体が車両に接近して来ているか否かを判断できない場合があるという問題がある。
【0005】
例えば、図5に示すように、画像を撮影する車両(以降、自車両)が停止中である場合、自車両に接近してくる物体(図5の例では車両)のオプティカルフローは下向きの成分を含む。図5は、カーブミラーに映る物体の例を示す図である。
【0006】
一方で、図6に示すように、自車両が走行中の場合、自車両の移動に起因してカーブミラー内の静止物(背景)がオプティカルフローを生じさせる。図6は、カーブミラーに映る物体の例を示す図である。図6の車両は停止中であるものとする。
【0007】
このため、図6の例では、自車両が走行中の場合、画像に映る物体のオプティカルフローの向きだけでは、当該物体が自車両に接近して来ているか否かを判断できない。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、走行中の車両によって撮影された画像から、カーブミラーに映る物体が車両に接近して来ているか否かを判断できる判定装置及び判定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る判定装置は、抽出部と、検出部と、判定部と、を有する。抽出部は、走行中の車両から撮影された画像内のカーブミラーに映る物体のオプティカルフローを抽出する。検出部は、画像から、カーブミラーの向きを検出する。判定部は、カーブミラーの向きと物体のオプティカルフローの向きを基に、物体が車両に接近しているか否かを判定する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、走行中の車両によって撮影された画像から、カーブミラーに映る物体が車両に接近して来ているか否かを判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施形態に係る判定装置の構成例を示す図である。
図2図2は、接近する物体について説明する図である。
図3図3は、接近する物体について説明する図である。
図4図4は、実施形態に係る判定装置が実行する処理の手順を示すフローチャートである。
図5図5は、カーブミラーに映る物体の例を示す図である。
図6図6は、カーブミラーに映る物体の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する判定装置及び判定方法の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0013】
まず、図1を用いて、実施形態に係る判定装置について説明する。図1は、実施形態に係る判定装置の構成例を示す図である。
【0014】
判定装置10は、走行中の車両に搭載されたカメラによって撮影された画像を入力として受け付ける。
【0015】
そして、判定装置10は、入力された画像に映るカーブミラーの領域の画像を基に、物体が車両に接近しているか否かを判定する。
【0016】
判定装置10は、車両に備えられていてもよいし、車両に備えられた車載装置とインターネット等のネットワークを介して接続されるサーバであってもよい。
【0017】
なお、オプティカルフローは、連続する複数の画像(例えば動画像)における、特徴点の位置の変化をベクトルで表したものである。以降の説明では、オプティカルフローと移動ベクトルは同義であるものとする。
【0018】
ここで、図2及び図3を用いて、走行中の車両に接近する物体について説明する。図2及び図3は、接近する物体について説明する図である。
【0019】
まず、図2に示すように、車両V1が走行中であって、車載カメラの光軸中心に対して右側にカーブミラーM10がある場合を考える。
【0020】
この場合、車両V1の移動に起因して、画像中のカーブミラーM10内に左下向きの移動ベクトルF11が生じる。一方、車両V1に左側から接近して来る車両V2の移動に起因して、画像中のカーブミラーM10内に右下向きの移動ベクトルF12が生じる。
【0021】
次に、図3に示すように、車両V1が走行中であって、車載カメラの光軸中心に対して左側にカーブミラーM10がある場合を考える。
【0022】
この場合、車両V1の移動に起因して、画像中のカーブミラーM10内に右下向きの移動ベクトルF21が生じる。さらに、車両V1に左側から接近して来る車両V2の移動に起因して、画像中のカーブミラーM10内に右下向きの移動ベクトルF22が生じる。
【0023】
ここで、走行中の車両V1が観測する移動物体のベクトルは、車両V1が生じさせる移動ベクトルと移動物体の移動ベクトルの合成となる。しかしながら、通常は、移動物体のベクトルは、車両V1が生じさせる移動ベクトルよりも大きくなる。
【0024】
このため、図2のケースであれば、車両V1の移動ベクトルF11と向きが異なる移動ベクトルF12を、移動物体の移動ベクトルとして検知することができる。
【0025】
これに対し、図3のケースでは、車両V1の移動ベクトルF21と移動ベクトルF22の向きが同じであることから、移動物体の移動ベクトルを向きから単純に検知することは困難である。なお、向きが同じであるとは、向きが完全に一致することだけでなく、角度の差分が一定値以下であることであってもよい(例えば5度以内)。
【0026】
本実施形態の1つの目的は、走行中の自車両と移動物体が同一方向の移動ベクトルを生じさせるときに、移動物体が自車両に接近して来ているか否かを判定することである。
【0027】
図1に示すように、判定装置10は、入出力部11、記憶部12及び制御部13を有する。
【0028】
入出力部11は、データの入力及び出力を行うためのインタフェースである。入出力部11は、カメラ又は他の装置から画像の入力を受け付けることができる。
【0029】
また、入出力部11は、判定結果として、例えば物体が接近しているか否かを、テキストメッセージ、音声、バイナリデータ等の形式で出力する。
【0030】
判定装置10の制御部13及び記憶部12は、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ、入出力ポート等を有するコンピュータや各種の回路により実現される。
【0031】
記憶部12は、RAMやフラッシュメモリに対応する。RAMやフラッシュメモリは、判定装置10で実行される各種プログラムの情報等を記憶することができる。
【0032】
なお、判定装置10は、有線や無線のネットワークで接続された他のコンピュータや可搬型記録媒体を介して上記したプログラムや各種情報を取得することとしてもよい。
【0033】
コンピュータのCPUは、例えばROMに記憶されたプログラムを読み出して実行することによって、制御部13の検知部131、抽出部132、検出部133及び判定部134として機能する。
【0034】
検知部131は、走行中の車両から撮影された画像内のカーブミラーを検知する。
【0035】
抽出部132は、走行中の自車両から撮影された画像内のカーブミラーに映る物体の移動ベクトル(オプティカルフロー)を抽出する。例えば、抽出部132は、既存の画像処理技術を用いて移動ベクトルの抽出を行うことができる。
【0036】
検出部133は、画像から、カーブミラーの向きを検出する。検出部133は、既存の手法(参考文献:特開2019-8701号公報)を用いてカーブミラーの向きを検出してもよい。
【0037】
判定部134は、カーブミラーの向きと物体の移動ベクトルの向きを基に、物体が車両に接近しているか否かを判定する。
【0038】
これにより、判定装置10は、移動ベクトルの向きだけでなく、カーブミラーの向きを考慮して物体が自車両に接近しているか否かを精度良く判定することができる。
【0039】
例えば、判定部134は、画像内のカーブミラーの位置、及び検出部133によって検出されたカーブミラーの向きに応じて定められる条件を、物体の移動ベクトルの向きが満たすか否かによって、物体が車両に接近しているか否かを判定する。
【0040】
さらに、判定部134は、物体が車両に接近していると判定した場合、物体の移動ベクトルの向きを基に物体がどの方向から接近しているかをさらに判定する。
【0041】
例えば、図3のようにカーブミラーが左側に位置し、左向きである場合、物体の移動ベクトルの向きが右下であるという条件が設定される。
【0042】
このとき、右下向きの移動ベクトルが存在すれば条件が満たされることになるため、判定部134は、物体が左側から自車両に接近していると判定する。
【0043】
このように、判定装置10は、カーブミラーの位置及び向きを基に、物体が接近しているか否か、及び接近方向を判定することができる。
【0044】
さらに、判定部134は、物体の移動ベクトルと、車両の移動に起因して画像内のカーブミラーに生じる移動ベクトルと、の変化量の差分が所定の量より大きい場合、物体が接近していると判定する。
【0045】
これにより、判定装置10は、図3のようなケースであっても、物体が自車両に接近しているか否かを判定することができる。
【0046】
例えば、自車両の移動量(例えば、移動ベクトルの絶対値)と物体の移動ベクトルが同じ向きであり、かつ長さ(絶対値、量)が比例しているか又は同一であれば、判定装置10は、当該物体が接近していないと判定することができる。この場合、物体の移動ベクトルは自車両の移動に起因して生じていると考えられる。
【0047】
一方、自車両の移動量(例えば、移動ベクトルの絶対値)と物体の移動ベクトルが同じ向きであり、かつ長さ(絶対値、量)が比例していない場合、判定装置10は、当該物体が接近していると判定することができる。
【0048】
例えば、自車両の移動量を物体の移動ベクトルの絶対値が大きく上回っている場合、物体は自車両に接近していることが考えられる。
【0049】
さらに、抽出部132は、走行中の車両から撮影された画像内のカーブミラーに映る物体であって、あらかじめ登録された背景に含まれない物体の移動ベクトルを抽出してもよい。
【0050】
この場合、判定部134は、移動ベクトルが下向きの成分を含む場合、物体が車両に接近していると判定する。
【0051】
このように、あらかじめカーブミラーに映る背景が既知の場所であれば、物体の移動ベクトルを背景から分離して判定を行うことができ、処理負荷を低減し精度を向上させることができる。
【0052】
図4を用いて、実施形態に係る判定装置10において実行される処理の手順について説明する。図4は、実施形態に係る判定装置が実行する処理の手順を示すフローチャートである。
【0053】
図4に示すように、まず、検知部131は、入力された画像内のカーブミラーを検知する(ステップS101)。次に、抽出部132は、カーブミラー内の画像の特徴点を抽出する(ステップS102)。
【0054】
ここで、抽出した特徴点に基づく下向きの移動ベクトルがない場合(ステップS103:No)、判定部134は、物体が接近していないと判定する(ステップS110)。
【0055】
また、下向きの移動ベクトルがあり(ステップS103:Yes)、自車両が停車中の場合(ステップS104:Yes)、判定部134は、物体が接近していると判定する(ステップS109)。
【0056】
さらに、下向きの移動ベクトルがあり(ステップS103:Yes)、自車両が停車中でない場合(ステップS104:No)、判定装置10はステップS105へ進む。
【0057】
ここで、検出部133は、画像からカーブミラーの向きを検出する(ステップS105)。そして、判定部134は、物体の移動ベクトルの向きを取得する(ステップS106)。
【0058】
ここで、自車両が生じさせる移動ベクトルと物体の移動ベクトルが逆向きである場合(ステップS107:Yes)、判定部134は、物体が接近していると判定する(ステップS109)。
【0059】
一方、自車両が生じさせる移動ベクトルと物体の移動ベクトルが逆向きでない場合(ステップS107:No)、判定部134は、自車両の移動量と物体の移動ベクトルが比例しているか否かを判定する(ステップS108)。
【0060】
続いて、自車両の移動量と物体の移動ベクトルが比例している場合(ステップS108:Yes)、判定部134は、物体が接近していないと判定する(ステップS110)。
【0061】
また、自車両の移動量と物体の移動ベクトルが比例していない場合(ステップS108:No)、判定部134は、物体が接近していると判定する(ステップS109)。
【0062】
なお、ステップS107における「逆向き」は、「同じ向きでない」に置き換えられてもよい。ここで、同じ向きとは、移動ベクトルの角度の差分が所定範囲内にあることである。
【0063】
例えば、所定範囲を5度以内とすると、判定部134は、自車両が生じさせる移動ベクトルと物体の移動ベクトルの角度の差が5度以内の場合、ステップS107:Noに進む。
【0064】
上述してきたように、実施形態に係る判定装置10は、抽出部132と、検出部133と、判定部134と、を有する。抽出部132は、走行中の車両から撮影された画像内のカーブミラーに映る物体のオプティカルフローを抽出する。検出部133は、画像から、カーブミラーの向きを検出する。判定部134は、カーブミラーの向きと物体のオプティカルフローの向きを基に、物体が車両に接近しているか否かを判定する。
【0065】
このように、判定装置10は、カーブミラーの向きを考慮した上で判定を行う。このため、本実施形態によれば、走行中の車両によって撮影された画像から、カーブミラーに映る物体が車両に接近して来ているか否かを判断することができる。
【0066】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細及び代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲及びその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神又は範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0067】
10 判定装置
11 入出力部
12 記憶部
13 制御部
131 検知部
132 抽出部
133 検出部
134 判定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6