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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-25
(45)【発行日】2024-10-03
(54)【発明の名称】液晶ポリマー組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/03 20060101AFI20240926BHJP
   C08L 23/36 20060101ALI20240926BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20240926BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20240926BHJP
   C09J 7/35 20180101ALI20240926BHJP
【FI】
C08L67/03
C08L23/36
B32B27/32 C
B32B27/36
C09J7/35
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021011962
(22)【出願日】2021-01-28
(65)【公開番号】P2022115386
(43)【公開日】2022-08-09
【審査請求日】2023-08-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000189659
【氏名又は名称】上野製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(72)【発明者】
【氏名】石津 忍
(72)【発明者】
【氏名】北林 賢一
【審査官】佐藤 のぞみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-115387(JP,A)
【文献】特開2021-134312(JP,A)
【文献】特開2019-214678(JP,A)
【文献】特開2019-137853(JP,A)
【文献】特開平04-135750(JP,A)
【文献】特開2002-029002(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 67/00-67/08
C08L 23/00-23/36
C08L 51/00-51/10
B32B
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶融解温度が210℃未満である液晶ポリマー100質量部およびイミン変性ポリオレフィン2080質量部を含有する液晶ポリマー組成物であって、
液晶ポリマーは、式[I]~[VI]
【化1】
[式中、p、q、r、s、tおよびuは、それぞれ各繰返し単位の液晶ポリマー中での組成比(モル%)を示し、以下の式を満たす:
35≦p≦55、
25≦q≦45、
2≦r≦15、
0≦s≦5、
2≦t≦15、
0≦u≦5、
r≧s]
で表される繰返し単位を含んで構成される全芳香族液晶ポリエステルである、液晶ポリマー組成物
【請求項2】
イミン変性ポリオレフィンの含有量は40~70質量部である、請求項1に記載の液晶ポリマー組成物。
【請求項3】
式[VI]で表される繰返し単位は、式[VII]
【化2】
で表される繰返し単位である、請求項1または2に記載の液晶ポリマー組成物。
【請求項4】
さらにp>qを満たす、請求項1~3のいずれかに記載の液晶ポリマー組成物。
【請求項5】
イミン変性ポリオレフィンは、イミン変性ポリエチレンまたはイミン変性ポリプロピレンである、請求項1~4のいずれかに記載の液晶ポリマー組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の液晶ポリマー組成物から構成される成形品。
【請求項7】
液晶ポリマー層(a)とポリオレフィン層(b)が接着層(c)を介して積層された構造を有する成形品であって、該接着層(c)は請求項1~5のいずれかに記載の液晶ポリマー組成物からなる、成形品。
【請求項8】
ポリオレフィン層(b)は、ポリエチレン層またはポリプロピレン層である、請求項7に記載の成形品。
【請求項9】
多層ブロー成形品である、請求項7または8に記載の成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ポリマーと特定の変性ポリオレフィンを含有する、接着性が著しく改善された液晶ポリマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
サーモトロピック液晶ポリマー(以下、液晶ポリマーまたはLCPとも称する)は、耐熱性、剛性等の機械物性、耐薬品性、寸法精度、誘電特性等に優れているため、成形品用途のみならず、繊維やフィルムといった各種用途にその使用が拡大しつつある。さらに優れたガスバリア性を有することから、包装材料としての用途が期待されている。
【0003】
しかし、液晶ポリマーをフィルムに加工した場合、加工方向(MD方向)には高い強度を示すものの、加工方向を横断する方向(TD方向)の強度が著しく低下するという問題があった。
【0004】
一方、従来、包装材料として広く用いられているポリプロピレンやポリエチレンなどのポリオレフィンは、フィルムへの加工性は優れるものの、ガスバリア性に劣るという問題があった。
【0005】
そこで、ポリオレフィンフィルムのガスバリア性を向上させるために、液晶ポリマーフィルムを積層し、複合フィルムとすることが検討されている。しかし、液晶ポリマーは他の樹脂、特にポリオレフィンとの接着性が不十分であり、複合フィルムとするためには特殊な処理を施す必要があった。
【0006】
例えば、液晶ポリマー層をコロナ放電等により表面処理することによって、接着層(接着剤)を介することなく液晶ポリマー層の一面に熱可塑性樹脂層を積層した複合フィルムが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平4-135750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の複合フィルムは、コロナ放電等による表面処理を要するため工程が煩雑となり、また接着強度も十分と言えないものであった。
したがって、他の樹脂との接着性が改善された液晶ポリマーの開発が望まれていた。
【0009】
本発明の目的は、接着性が改善された液晶ポリマー組成物を提供することにある。本発明の他の目的は、該液晶ポリマー組成物から構成される成形品、特に液晶ポリマーとポリオレフィンの接着層として該液晶ポリマー組成物を用いたブロー成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意検討した結果、液晶ポリマーにイミン変性ポリオレフィンを配合することにより、接着性が著しく改善された液晶ポリマー組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、以下の好適な態様を包含する。
〔1〕結晶融解温度が210℃未満である液晶ポリマー100質量部およびイミン変性ポリオレフィン1~100質量部を含有する、液晶ポリマー組成物。
〔2〕液晶ポリマーは、式[I]~[VI]
【化1】
[式中、p、q、r、s、tおよびuは、それぞれ各繰返し単位の液晶ポリマー中での組成比(モル%)を示し、以下の式を満たす:
35≦p≦55、
25≦q≦45、
2≦r≦15、
0≦s≦5、
2≦t≦15、
0≦u≦5、
r≧s]
で表される繰返し単位を含んで構成される全芳香族液晶ポリエステルである、〔1〕に記載の液晶ポリマー組成物。
〔3〕式[VI]で表される繰返し単位は、式[VII]
【化2】
で表される繰返し単位である、〔2〕に記載の液晶ポリマー組成物。
〔4〕さらにp>qを満たす、〔2〕または〔3〕に記載の液晶ポリマー組成物。
〔5〕イミン変性ポリオレフィンは、イミン変性ポリエチレンまたはイミン変性ポリプロピレンである、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の液晶ポリマー組成物。
〔6〕〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の液晶ポリマー組成物から構成される成形品。
〔7〕液晶ポリマー層(a)とポリオレフィン層(b)が接着層(c)を介して積層された構造を有する成形品であって、該接着層(c)は〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の液晶ポリマー組成物からなる、成形品。
〔8〕ポリオレフィン層(b)は、ポリエチレン層またはポリプロピレン層である、〔7〕に記載の成形品。
〔9〕多層ブロー成形品である、〔7〕または〔8〕に記載の成形品。
【発明の効果】
【0012】
本発明の液晶ポリマー組成物は、通常の成形材料として使用されるほか、接着性に優れるため、ブロー成形品や積層フィルムの接着層として好適に使用される。また、本発明の液晶ポリマー組成物は、特に液晶ポリマーとポリオレフィンの接着材料として好適に使用される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の液晶ポリマー組成物に使用する液晶ポリマーとは、当業者にサーモトロピック液晶ポリマーと呼ばれる、異方性溶融相を形成する液晶ポリエステルまたは液晶ポリエステルアミドである。
【0014】
異方性溶融相の性質は直交偏向子を利用した通常の偏向検査法、すなわちホットステージにのせた試料を窒素雰囲気下で観察することにより確認できる。
【0015】
本発明に使用する液晶ポリマーを構成する繰返し単位としては、芳香族オキシカルボニル繰返し単位、芳香族ジカルボニル繰返し単位、芳香族ジオキシ繰返し単位、芳香族アミノオキシ繰返し単位、芳香族ジアミノ繰返し単位、芳香族アミノカルボニル繰返し単位およびこれらの組合せなどが挙げられる。
【0016】
芳香族オキシカルボニル繰返し単位を与える単量体の具体例としては、例えば、芳香族ヒドロキシカルボン酸である、4-ヒドロキシ安息香酸、3-ヒドロキシ安息香酸、2-ヒドロキシ安息香酸、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、5-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、4’-ヒドロキシフェニル-4-安息香酸、3’-ヒドロキシフェニル-4-安息香酸、4’-ヒドロキシフェニル-3-安息香酸など、およびそれらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体、ならびにこれらのアシル化物、エステル誘導体、酸ハロゲン化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。これらの中では4-ヒドロキシ安息香酸および6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸が、得られる液晶ポリマーの機械物性、耐熱性、結晶融解温度、成形性を適度なレベルに調整しやすいことから好ましい。
【0017】
芳香族ジカルボニル繰返し単位を与える単量体の具体例としては、例えば、芳香族ジカルボン酸であるテレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジカルボキシビフェニルなど、およびそれらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体、ならびにこれらのエステル誘導体、酸ハロゲン化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。これらの中ではテレフタル酸および2,6-ナフタレンジカルボン酸が、得られる液晶ポリマーの機械物性、耐熱性、結晶融解温度、成形性を適度なレベルに調整しやすいことから好ましい。
【0018】
芳香族ジオキシ繰返し単位を与える単量体の具体例としては、例えば、芳香族ジオールであるハイドロキノン、レゾルシン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、1,4-ジヒドロキシナフタレン、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、3,3’-ジヒドロキシビフェニル、3,4’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジヒドロキシビフェニルエーテルなど、およびそれらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体、ならびにこれらのアシル化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。これらの中ではハイドロキノンおよび4,4’-ジヒドロキシビフェニルが、重合時の反応性、得られる液晶ポリマーの機械物性、耐熱性、結晶融解温度、成形性を適度なレベルに調整しやすいことから好ましい。
【0019】
芳香族アミノオキシ繰返し単位、芳香族ジアミノ繰返し単位および芳香族アミノカルボニル繰返し単位を与える単量体としては、芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミンおよび芳香族アミノカルボン酸などが挙げられる。
【0020】
本発明に使用する液晶ポリマーは、本発明の目的を損なわない範囲で、芳香族オキシジカルボニル繰返し単位、脂肪族ジヒドロキシ繰返し単位、脂肪族ジカルボニル繰返し単位やチオエステル結合を含むものであってもよい。チオエステル結合を与える単量体としては、メルカプト芳香族カルボン酸、および芳香族ジチオールおよびヒドロキシ芳香族チオールなどが挙げられる。これらの単量体の使用量は、芳香族オキシカルボニル繰返し単位、芳香族ジカルボニル繰返し単位、芳香族ジオキシ繰返し単位、芳香族アミノオキシ繰返し単位、芳香族ジアミノ繰返し単位および芳香族アミノカルボニル繰返し単位を与える単量体の合計量を含む全体に対して10モル%以下であるのが好ましい。
【0021】
これらの繰り返し単位を組み合わせた共重合体には、単量体の構成や組成比、共重合体中での各繰り返し単位のシークエンス分布によっては、異方性溶融相を形成するものとしないものが存在するが、本発明に使用する液晶ポリマーは異方性溶融相を形成する共重合体に限られる。
【0022】
本発明に使用する液晶ポリマーは、2種以上の液晶ポリマーをブレンドしたものであってもよい。
【0023】
本発明に使用する液晶ポリマーの示差走査熱量計により測定される結晶融解温度は210℃未満であり、好ましくは205℃以下であり、より好ましくは200℃以下であり、さらに好ましくは195℃以下である。本発明における液晶ポリマーは、示差走査熱量計により測定される結晶融解温度が、好ましくは150℃以上、より好ましくは155℃以上、さらに好ましくは160℃以上である。
【0024】
液晶ポリマーの結晶融解温度が210℃未満であることによって、イミン変性ポリオレフィンが組成物中で分散しやすくなり、フィルム、シート、ボトル等への成形性が改善されるとともに、液晶ポリマーと他の樹脂との接着性が得やすくなる。
【0025】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、「結晶融解温度」とは、示差走査熱量計(Differential Scanning Calorimeter、以下DSCと略す)によって、昇温速度20℃/分で測定した際の結晶融解ピーク温度から求めたものである。より具体的には、液晶ポリマーの試料を、室温から20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm1)の観測後、Tm1より20~50℃高い温度で10分間保持し、次いで、20℃/分の降温条件で室温まで試料を冷却した後に、再度20℃/分の昇温条件で測定した際の吸熱ピークを観測し、そのピークトップを示す温度を液晶ポリマーの結晶融解温度とする。測定用機器としては、例えば、セイコーインスツルメンツ(株)製Exstar6000等を使用することができる。
【0026】
本発明に使用する、結晶融解温度が210℃未満の液晶ポリマーとしては、式[I]~[VI]で表される繰返し単位を含んで構成される全芳香族液晶ポリエステルが好適である。
【化3】
【0027】
[式中、p、q、r、s、tおよびuは、それぞれ各繰返し単位の液晶ポリマー中での組成比(モル%)を示し、以下の式を満たす:
35≦p≦55、
25≦q≦45、
2≦r≦15、
0≦s≦5、
2≦t≦15、
0≦u≦5、
r≧s。]
【0028】
本発明に好適に用いられる上記の全芳香族液晶ポリエステルにおいて、式[I]で表される繰返し単位の全芳香族液晶ポリエステルに対する組成比pは、好ましくは35~55モル%、より好ましくは38~53モル%である。また、式[II]で表される繰返し単位の全芳香族液晶ポリエステルに対する組成比qは、好ましくは25~45モル%、より好ましくは28~43モル%である。
【0029】
本発明に好適に用いられる上記の全芳香族液晶ポリエステルにおいて、式[I]および式[II]で表される繰り返し単位は、p>qの関係を満たすことが好ましく、p/qが1.01~2.0であることがより好ましく、1.03~1.9であることがさらに好ましく、1.08~1.8であることが特に好ましい。
【0030】
式[I]で表される繰返し単位を与える単量体としては、例えば4-ヒドロキシ安息香酸ならびに、そのアシル化物、エステル誘導体、酸ハロゲン化物などのエステル形成性の誘導体が挙げられる。
【0031】
式[II]で表される繰返し単位を与える単量体としては、例えば6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸ならびに、そのアシル化物、エステル誘導体、酸ハロゲン化物などのエステル形成性の誘導体が挙げられる。
【0032】
また、本発明に好適に用いられる上記の全芳香族液晶ポリエステルは、式[III]で表される芳香族ジオキシ繰返し単位を含む。式[III]で表される繰返し単位の全芳香族液晶ポリエステルに対する組成比rは、好ましくは2~15モル%、より好ましくは4~14モル%である。
【0033】
式[III]で表される繰返し単位を与える単量体としては、例えば4,4'-ジヒドロキシビフェニルならびに、そのアシル化物などのエステル形成性の誘導体が挙げられる。
【0034】
本発明に好適に用いられる上記の全芳香族液晶ポリエステルは、芳香族ジオキシ繰返し単位として、さらに式[IV]で表される繰返し単位を含んでいてもよい。式[IV]で表される繰返し単位の全芳香族液晶ポリエステルに対する組成比sは、ある場合には0~5モル%、別の場合には1~4モル%である。
【0035】
芳香族ジオキシ繰返し単位として式[IV]で表される繰返し単位を含む場合、r≧sの関係を満たす。
【0036】
式[IV]で表される繰返し単位を与える単量体としては、例えばハイドロキノンならびに、そのアシル化物などのエステル形成性の誘導体が挙げられる。
【0037】
また、本発明に好適に用いられる上記の全芳香族液晶ポリエステルは、式[V]で表される芳香族ジカルボニル繰返し単位を含む。式[V]で表される繰返し単位の全芳香族液晶ポリエステルに対する組成比tは、好ましくは2~15モル%、より好ましくは4~14モル%である。
【0038】
式[V]で表される繰返し単位を与える単量体としては、例えば2,6-ナフタレンジカルボン酸ならびに、そのエステル誘導体、酸ハロゲン化物などのエステル形成性の誘導体が挙げられる。
【0039】
本発明に好適に用いられる上記の全芳香族液晶ポリエステルは、芳香族ジカルボニル繰返し単位として、さらに式[VI]で表される繰返し単位を含んでいてもよい。式[VI]で表される繰返し単位の全芳香族液晶ポリエステルに対する組成比uは、好ましくは0~5モル%、より好ましくは1~4モル%である。
【0040】
芳香族ジカルボニル繰返し単位として式[VI]で表される繰返し単位を含む場合、t≧uの関係を満たすことが好ましい。
【0041】
式[VI]で表される繰返し単位を与える単量体としては、例えばテレフタル酸およびイソフタル酸ならびに、これらのエステル誘導体、酸ハロゲン化物などのエステル形成性の誘導体が挙げられる。これらの中でも、より結晶融解温度を低く調整できることからイソフタル酸が好ましい。
【0042】
すなわち、式[VI]で表される繰返し単位が、以下の式[VII]で表される繰返し単位であることが好ましい。
【化4】
【0043】
なお、好適には、式[I]~式[VI]において、p+q+r+s+t+u=100である。
【0044】
また、r+s=t+uであることが好ましい。
【0045】
式[I]~[VI]で表される繰返し単位を与える上記の各単量体として、それぞれ2種以上の単量体を用いてもよい。
【0046】
本発明に好適に用いられる上記の全芳香族液晶ポリエステルは、上述した通り、式[I]~[VI]で表される繰返し単位を含んで構成されるが、本発明の目的を損なわない範囲で一般式[I]~[VI]で表される繰返し単位を与える主たる単量体の他に、他の繰り返し単位、すなわち一般式[I]~[VI]で表される繰返し単位以外の繰返し単位を与える単量体を共重合していてもよい。他の繰り返し単位を与える単量体としては、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジオール、芳香族ジカルボン酸、芳香族ヒドロキシジカルボン酸、芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミン、芳香族アミノカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、脂肪族ジオール、脂環族ジオール、芳香族メルカプトカルボン酸、芳香族ジチオールおよび芳香族メルカプトフェノールなどが例示される。これらの他の繰り返し単位を与える単量体は、式[I]~[VI]で表される繰返し単位を与える単量体の合計に対し、10モル%以下であることが好ましい。本発明における、結晶融解温度が210℃未満の液晶ポリマーとしては、一般式[I]~[VI]で表される繰返し単位以外の繰返し単位を含まない、すなわち、式[I]~[VI]で表される繰返し単位により構成される全芳香族液晶ポリエステルが特に好適である。
【0047】
以下、本発明に使用する液晶ポリマーの製造方法について説明する。
【0048】
本発明に使用する液晶ポリマーの製造方法に特に制限はなく、前記の単量体の組合せからなるエステル結合やアミド結合などを形成させる公知の重縮合方法、例えば溶融アシドリシス法、スラリー重合法などを使用することができる。
【0049】
溶融アシドリシス法とは、本発明で使用する液晶ポリマーの製造方法に使用するのに好ましい方法であり、この方法は、最初に単量体を加熱して反応物質の溶融液を形成し、続いて反応を続けて溶融ポリマーを得るものである。なお、縮合の最終段階で副生する揮発物(例えば、酢酸、水など)の除去を容易にするために真空を適用してもよい。
【0050】
スラリー重合法とは、熱交換流体の存在下で反応させる方法であって、固体生成物は熱交換媒質中に懸濁した状態で得られる。
【0051】
溶融アシドリシス法およびスラリー重合法の何れの場合においても、液晶ポリマーを製造する際に使用する重合性単量体成分は、常温において、ヒドロキシル基および/またはアミノ基をアシル化した変性形態、すなわち低級アシル化物として反応に供することもできる。低級アシル基は炭素原子数2~5のものが好ましく、炭素原子数2または3のものがより好ましい。特に好ましくは前記単量体のアセチル化物を反応に使用する方法が挙げられる。
【0052】
単量体のアシル化物は、別途アシル化して予め合成したものを用いてもよいし、液晶ポリマーの製造時に単量体に無水酢酸等のアシル化剤を加えて反応系内で生成せしめることもできる。
【0053】
溶融アシドリシス法またはスラリー重合法の何れの場合においても反応時、必要に応じて触媒を用いてもよい。
【0054】
触媒の具体例としては、例えば、有機スズ化合物(ジブチルスズオキシドなどのジアルキルスズオキシド、ジアリールスズオキシドなど)、二酸化チタン、三酸化アンチモン、有機チタン化合物(アルコキシチタンシリケート、チタンアルコキシドなど)、カルボン酸のアルカリおよびアルカリ土類金属塩(酢酸カリウム、酢酸ナトリウムなど)、ルイス酸(BFなど)、ハロゲン化水素などの気体状酸触媒(HClなど)などが挙げられる。
【0055】
触媒の使用割合は、単量体全量に対して通常1~1000ppm、好ましくは2~100ppmである。
【0056】
このようにして重縮合反応されて得られた液晶ポリマーは、溶融状態で重合反応槽より抜き出された後に、ペレット状、フレーク状、または粉末状に加工される。
【0057】
本発明に使用するイミン変性ポリオレフィンは、例えば、ポリオレフィンにイミノ基を複数有するポリイミン化合物を、ラジカル発生剤の存在下でグラフト処理することによって得ることができる。市販品としては、例えば、三井化学株式会社製のアドマー(登録商標)IP AT3346やAT2937等が例示される。イミン変性ポリオレフィンは、2種以上を併用してもよい。
【0058】
本発明に使用するイミン変性ポリオレフィンにおいて、変性するポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、ポリメチルペンテン等が例示され、その中でもポリエチレンおよびポリプロピレンが好ましく、ポリエチレンが特に好ましい。
【0059】
本発明において、イミン変性ポリオレフィンとしてイミン変性ポリエチレンを用いる場合、原料となるポリエチレンとしては、特に限定されず、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンなどが挙げられる。これらは単独で使用してもよく、または2種以上を併用してもよい。
【0060】
これらの中でも、得られる液晶ポリマー組成物の加工性の観点から、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)が好ましい。
【0061】
本発明において、イミン変性ポリオレフィンとしてイミン変性ポリプロピレンを用いる場合、原料となるポリプロピレンとしては、特に限定されず、例えば、ホモポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、ランダムポリプロピレンなどが挙げられる。これらは単独で使用してもよく、また2種以上を併用してもよい。
【0062】
これらの中でも、得られる液晶ポリマー組成物の加工性の観点から、ホモポリプロピレンが好ましい。
【0063】
本発明の液晶ポリマー組成物において、イミン変性ポリオレフィンの割合は、液晶ポリマー100質量部に対して、1~100質量部であり、接着性を発揮しやすい観点から5~90質量部が好ましく、10~85質量部がより好ましく、20~80質量部がさらに好ましく、40~70質量部が特に好ましい。
【0064】
本発明の液晶ポリマー組成物は、任意の成分として、無機および/または有機充填材を含有してもよい。
【0065】
本発明の液晶ポリマー組成物が含有してもよい、無機および/または有機充填材の具体例としては、例えば、ガラス繊維、シリカアルミナ繊維、アルミナ繊維、炭素繊維、チタン酸カリウム繊維、ホウ酸アルミニウム繊維、アラミド繊維、ポリアリレート繊維、ポリベンズイミダゾール繊維、タルク、マイカ、グラファイト、ウォラストナイト、ドロマイト、クレー、ガラスフレーク、ガラスビーズ、ガラスバルーン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタンなどが挙げられる。これらは単独で用いてよく、または2種以上を併用してもよい。
【0066】
これらの中では、タルクが、物性とコストのバランスが優れている点で好ましい。
【0067】
また、無機および/または有機充填材は、表面処理をされたものであってもよい。表面処理の方法としては、例えば、充填材表面に表面処理剤を吸着させる方法、混練する際に表面処理剤を添加する方法などが挙げられる。
【0068】
表面処理剤としては、反応性カップリング剤であるシラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、ボラン系カップリング剤など、潤滑剤である高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸金属塩、フルオロカーボン系界面活性剤などが挙げられる。
【0069】
無機および/または有機充填材を配合する場合、その含有量は、液晶ポリマーおよびイミン変性ポリオレフィンの合計量100質量部に対して、1~150質量部であることが好ましく、10~100質量部であることがより好ましい。
【0070】
無機および/または有機充填材の含有量が1質量部未満であると、液晶ポリマー組成物について無機および/または有機充填材による機械強度および耐熱性の向上効果が得られにくく、150質量部を超えると流動性が低下する傾向がある。本発明において、液晶ポリマー組成物は、無機および/または有機充填材を含まないことが好ましい。
【0071】
本発明の液晶ポリマー組成物には、液晶ポリマーおよびイミン変性ポリオレフィンの他に、本発明の目的を損なわない範囲で、さらに他の添加剤や樹脂成分が添加されてもよい。
【0072】
他の添加剤の具体例としては、例えば、滑剤である高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸金属塩(ここで高級脂肪酸とは、炭素原子数10~25のものをいう)など、離型剤であるポリシロキサン、フッ素樹脂など、着色剤である染料、顔料、カーボンブラックなど、難燃剤、帯電防止剤、界面活性剤、造核剤であるタルク、有機リン酸塩、ソルビトール類など、アンチブロッキング剤、酸化防止剤であるリン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤など、耐候剤、熱安定剤、中和剤などが挙げられる。これらの添加剤は、単独でまたは2種以上を併用することができる。
【0073】
他の添加剤を含有する場合、その合計量は、液晶ポリマーおよびイミン変性ポリオレフィンの合計量100質量部に対して、好ましくは0.01~5質量部、より好ましくは0.1~3質量部である。
【0074】
他の添加剤の合計量が0.01質量部未満であると、添加剤の機能を実現しにくく、5質量部を超えると、液晶ポリマー組成物の成形加工の熱安定性が悪くなる傾向がある。
【0075】
また、上記他の添加剤のうち、滑剤、離型剤、アンチブロッキング剤などの添加剤を使用する場合は、液晶ポリマー組成物を作製する際に添加してもよいし、成形する際に液晶ポリマー組成物のペレット表面に付着させてもよい。
【0076】
他の樹脂成分の具体例としては、例えば、熱可塑性樹脂であるポリアミド、ポリエステル、ポリアセタール、ポリフェニレンエーテルおよびその変性物、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミドなどや、熱硬化性樹脂であるフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂などが挙げられる。これらの樹脂成分は単独で用いてよく、または2種以上を併用してもよい。
【0077】
他の樹脂成分を含有する場合、その含有量は、液晶ポリマーおよびイミン変性ポリオレフィンの合計量100質量部に対して100質量部以下であることが好ましく、80質量部以下であることがより好ましい。本発明において、液晶ポリマー組成物は、他の添加剤および他の樹脂成分を含まないことが好ましい。
【0078】
本発明の液晶ポリマー組成物は、上記の液晶ポリマー、イミン変性ポリオレフィンと、所望により上記の無機充填材および/または有機充填材、他の添加剤や他の樹脂成分などを所定の組成で配合し、バンバリーミキサー、ニーダー、一軸もしくは二軸押出し機などを用いて溶融混練することによって、本発明の液晶ポリマー組成物とすることができる。また、液晶ポリマー、イミン変性ポリオレフィンをドライブレンドし、成形機内で溶融混錬することによっても、本発明の液晶ポリマー組成物とすることができる。
【0079】
本発明の液晶ポリマー組成物は、射出成形、押出成形、ブロー成形などの公知の成形方法によって、フィルム、シート、ボトル、容器、包装材料などに加工される。
【0080】
この中でも、成形の容易さ、量産性、コストなどの観点から、射出成形、押出成形またはブロー成形が好適である。
【0081】
射出成形を採用する場合、射出成形に用いられる射出成形機は、特に制限されないが、例えば、直圧式(油圧式)、トグル式などの型締め機構方式のいずれであってもよく、スクリュー方式(スクリュープリプラ式、インラインスクリュー式など)、プランジャ方式(シングルプランジャ式、プランジャプリプラ式など)などの射出方式のいずれであってもよい。
【0082】
シリンダーの方向についても、横形および縦形など、いずれの方式であってもよく、油圧式、電動式あるいは両者を組合せたタイプなどの駆動機構のいずれであってもよい。
【0083】
射出条件は、射出成形機の大きさ、金型の形状、取り個数により、最適な条件を適宜選択することができる。ゲート位置やゲート数は、射出成形品の種類に応じて選択できる。
【0084】
なお、射出成形方法には、上記の通常の射出成形方法のほか、例えば、インサート成形、射出圧縮成形、2色成形、サンドイッチ成形、ガスアシスト成形などを応用した射出成形方法も含まれる。
【0085】
押出成形またはブロー成形を採用する場合、フィルム、シート、容器、パイプ、繊維等に加工することができ、単独または単層の成形体としてもよく、機能向上やコストダウンの観点から他の樹脂組成物からなる部分または層を有する複合または多層の成形体としてもよい。フィルム、シート、繊維等を一軸または二軸延伸することも可能である。また、得られた成形体は、必要に応じて、曲げ加工、真空成形、ブロー成形、プレス成形等の二次加工成形を行って、目的とする成形体にしてもよい。
【0086】
本発明の液晶ポリマー組成物は、通常の成形材料として使用されるほか、接着性に優れるため、ブロー成形品や積層フィルムの接着層として好適に使用される。例えば、液晶ポリマー層(a)とポリオレフィン層(b)が接着層(c)を介して積層された構造を有する成形品であって、該接着層(c)を本発明の液晶ポリマー組成物とする成形品は好適である。ポリオレフィン層(b)はポリエチレン層またはポリプロピレン層であることが好ましく、ポリエチレン層であることが特に好ましい。このような成形品は上記の成形方法により得ることができるが、ブロー成形によって得られる多層ブロー成形品であることが好ましい。
【0087】
さらに、本発明の液晶ポリマー組成物から構成される成形品は、ボトルなどの中空製品の成形に好適なブロー成形によって所望の成形品に加工される。具体的なブロー成形法とは、ダイレクトブロー成形、インジェクションブロー成形、フリーブロー成形等が挙げられる。特に液晶ポリマー層とポリオレフィン層に対する接着性が改善されていることから、ダイレクトブロー成形やインジェクションブロー成形による多層ブロー成形に適する。
【0088】
また、本発明の液晶ポリマー組成物を用いて成形する際の温度条件は、使用する液晶ポリマーの結晶融解温度(210℃未満)から300℃の範囲で成形するのが好ましい。
【0089】
本発明の樹脂組成物から構成される成形品としては、特に限定されないが、例えば、機械部品、電気・電子部品、建築・土木部材、家庭・事務用品、家具用部品および日用品などが挙げられるが、特に容器としての成形品が有用である。
【0090】
電気・電子部品としては、例えば、コピー機、パソコン、プリンター、電子楽器、家庭用ゲーム機、携帯型ゲーム機などのハウジングや、内部部品(コネクタ、スイッチ、ICやLEDのハウジング、ソケット、リレー、抵抗器、コンデンサー、キャパシター、コイルボビンなど)が挙げられる。
【0091】
また、本発明の液晶ポリマー組成物は、液晶ポリマーとポリオレフィン等の樹脂のいずれに対しても優れた接着性を有することから、接着材料としても有用であり、例えば、積層フィルムにおける接着層等に利用できる。
【0092】
本発明の液晶ポリマー組成物と接着可能な樹脂としては、ポリエチレンやポリプロピレンに代表されるポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミドが例示され、その中でもポリオレフィンが好ましく、ポリエチレンがより好ましい。
【0093】
本発明の液晶ポリマー組成物の液晶ポリマーとの接着性については、JIS-K-7162に準拠した接着強度(引張せん断強度)により評価することができる。本発明の液晶ポリマー組成物の液晶ポリマーとの接着強度が通常220N以上、好ましくは250~750N、より好ましくは280~600Nである複合体が好適である。
【0094】
本発明の液晶ポリマー組成物のポリオレフィンとの接着性については、ポリオレフィンがポリエチレンである場合、JIS-C-6471に準拠した接着強度(90度剥離強度)により評価することができる。本発明の液晶ポリマー組成物のポリオレフィン(例えばLLDPE)との接着強度が通常5N以上、好ましくは8~60N、より好ましくは10~50Nである複合体が好適である。
【0095】
以下、実施例により本発明を詳述するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例
【0096】
実施例中の結晶融解温度および接着性は以下に記載の方法で測定した。
【0097】
〈結晶融解温度の測定〉
セイコーインスツルメンツ(株)製の示差走査熱量計(DSC)Exstar6000を用いて測定を行った。液晶ポリマーの試料を、室温から20℃/分の昇温条件下で測定し、吸熱ピーク温度(Tm1)を観測した後、Tm1より20~50℃高い温度で10分間保持する。次いで20℃/分の降温条件で室温まで試料を冷却した後に、再度20℃/分の昇温条件で測定した際の吸熱ピークを観測し、そのピークトップを示す温度を液晶ポリマーの結晶融解温度とする。
【0098】
〈液晶ポリマーとの接着性試験〉
射出成形機(日精樹脂工業(株)製UH1000-110)を用いて、成形温度250℃、金型温度40℃で、液晶ポリマー(合成例1のLCP)および接着層(実施例および比較例で得た液晶ポリマー組成物)の各バーフロー試験片(長さ150mm×幅13mm×厚さ0.8mm)を成形した。得られたバーフロー試験片を70mm重ねて250℃のヒーターに30秒間入れ、バーフロー試験片同士を接着させた。INSTRON5567(インストロンジャパンカンパニイリミテッド社製万能試験機)を用いて、JIS-K-7162に準拠して、接着強度(引張せん断強度)を測定した。
【0099】
〈直鎖状低密度ポリエチレンとの接着性試験〉
射出成形機(日精樹脂工業(株)製UH1000-110)を用いて、成形温度250℃、金型温度40℃で、直鎖状低密度ポリエチレンのバーフロー試験片(長さ150mm×幅13mm×厚さ0.8mm)を成形した。また、同条件で接着層のカラープレート試験片(90mm×55mm×厚さ0.8mm)を成形した。得られたバーフローとカラープレートを90mm重ねて250℃のヒーターに30秒間入れ、接着させた。INSTRON5567(インストロンジャパンカンパニイリミテッド社製万能試験機)を用いて、JIS-C-6471に準拠して、接着強度(90度剥離強度)を測定した。
【0100】
実施例および比較例において下記の略号は以下の化合物を表す。
LCP:液晶ポリマー
LLDPE:直鎖状低密度ポリエチレン
POB:4-ヒドロキシ安息香酸
BON6:6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸
BP:4,4'-ジヒドロキシビフェニル
NDA:2,6-ナフタレンジカルボン酸
IPA:イソフタル酸
【0101】
[合成例1(LCPの合成)]
トルクメーター付き攪拌装置および留出管を備えた反応容器に、POB、BON6、BP、NDAおよびIPAを表1に示す組成比にて、総量6.5モルとなるように仕込み、さらに全モノマーの水酸基量(モル)に対して1.03倍モルの無水酢酸を仕込み、次の条件で脱酢酸重合を行った。
【0102】
窒素ガス雰囲気下に室温から150℃まで1時間で昇温し、同温度にて30分間保持した。次いで、副生する酢酸を留去させつつ210℃まで速やかに昇温し、同温度にて30分間保持した。その後、340℃まで4時間かけ昇温した後、80分かけ10mmHgにまで減圧を行なった。所定のトルクを示した時点で重合反応を終了し、反応容器内容物を取り出し、粉砕機によりLCPのペレットを得た。重合時の留出酢酸量は、ほぼ理論値どおりであった。
【0103】
得られたLCPのDSCにより測定された結晶融解温度は183℃であった。
【0104】
【表1】
【0105】
上記合成例にて合成したLCPの他、実施例および比較例で使用した材料を以下に示す。
LLDPE:プライムポリマー(株)製、「ウルトゼックス(登録商標)4570」
イミン変性ポリエチレン:三井化学(株)製、「アドマー(登録商標)IP AT3346」
イミン変性ポリプロピレン:三井化学(株)製、「アドマー(登録商標)IP AT2937」
エチレン-グリシジルメタクリレート共重合体:住友化学(株)製、「ボンドファースト(登録商標)E」
【0106】
実施例1~3および比較例1~2
合成例にて合成したLCPおよび上記材料を表2に記載の含有量となるように配合し、二軸押出機(日本製鋼(株)製TEX-30)を用いて、250℃にて溶融混練を行い、液晶ポリマー組成物のペレットを得た。上記の方法により、バーフロー試験片を作製し、接着性試験を行った。結果を表2に示す。
【0107】
【表2】
【0108】
表2に示すように、実施例1~3の液晶ポリマー組成物はいずれも、接着強度が改善されており、LCPとLLDPEに対する接着性に優れたものであった。
【0109】
これに対して、比較例1~2の液晶ポリマー組成物は、接着性が悪く、接着材料として好ましくないものであった。