(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-25
(45)【発行日】2024-10-03
(54)【発明の名称】コルゲートホースの製造システム
(51)【国際特許分類】
B29C 48/90 20190101AFI20240926BHJP
B29C 48/32 20190101ALI20240926BHJP
B29C 48/09 20190101ALI20240926BHJP
B29C 49/04 20060101ALI20240926BHJP
B29C 49/38 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
B29C48/90
B29C48/32
B29C48/09
B29C49/04
B29C49/38
(21)【出願番号】P 2021020611
(22)【出願日】2021-02-12
【審査請求日】2023-09-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(73)【特許権者】
【識別番号】300031942
【氏名又は名称】株式会社ジーエムエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】有留 北斗
(72)【発明者】
【氏名】落岩 崇
(72)【発明者】
【氏名】重石 高志
(72)【発明者】
【氏名】福澤 洋平
(72)【発明者】
【氏名】永吉 圭
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-069180(JP,A)
【文献】特開2010-260241(JP,A)
【文献】特開2014-218028(JP,A)
【文献】国際公開第2018/124213(WO,A1)
【文献】特開2006-123410(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 48/00-48/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出機と、コルゲータと、肉厚調整機構とを備えたコルゲートホースの製造システムであって、
前記押出機は、
シリンダと、
前記シリンダの内部に設けられたスクリュと、
前記シリンダに設けられた原料供給部と、
前記原料供給部よりも前記シリンダの下流側に接続されたダイと、
前記ダイと一体化され、且つ、前記ダイの排出口側に設けられたダイランドと、
その外周を前記ダイランドに覆われた円柱状のコアと、
を有し、
前記コルゲータは、
流入部と、
排出部と、
前記コルゲータの内部に設けられ、且つ、前記流入部から前記排出部へ向かって移動するモールドブロックと、
を有し、
前記肉厚調整機構は、スピンドルを介して前記コアに接続され、且つ、位置決め動作が可能な位置決め機構を有
し、
パリソン形成手段と、
コルゲートホース成形手段と、
前記押出機、前記コルゲータおよび前記肉厚調整機構に電気的に接続され、且つ、これらの動作を制御可能な制御部と、
を更に備え、
パリソン形成手段は、
(a1)前記原料供給部から前記シリンダの内部へ原料となる樹脂を投入する工程、
(a2)前記スクリュによって前記樹脂を可塑化する工程、
(a3)前記ダイの排出口において、前記ダイランドと前記コアとの間から、可塑化された前記樹脂を円筒状のパリソンとして押し出す工程、
を有し、
コルゲートホース成形手段は、
(b1)前記パリソンを前記流入部から前記コルゲータの内部へ流入する工程、
(b2)前記パリソンを前記モールドブロックに接触させ、前記パリソンの形状を前記モールドブロックの形状に対応させることで、前記パリソンを加工する工程、
(b3)加工された前記パリソンを前記排出部からコルゲートホースとして排出する工程、
を有し、
前記モールドブロックは、凹部および凸部が交互配置された表面を有する蛇腹成形部を少なくとも含み、
前記コルゲートホースは、前記蛇腹成形部によって加工された蛇腹部を含み、
前記(a3)工程において、前記制御部は、前記位置決め機構の位置決め動作によって前記コアを移動させることで、前記ダイランドと前記コアとの間から押し出される前記パリソンの厚さを調整し、
前記(b2)工程において、前記パリソンの厚さが調整された際に前記パリソンの流入速度が変動し、前記制御部は、変動した前記パリソンの流入速度に近くなるように、前記モールドブロックの移動速度を調整する、コルゲートホースの製造システム。
【請求項2】
請求項
1に記載のコルゲートホースの製造システムにおいて、
前記ダイランドは、前記ダイの排出口に位置する第1端部を含み、
前記コアは、前記ダイの排出口に位置する第2端部を含み、
前記ダイランドの内径が、前記第1端部に近づくに連れて変化しているか、前記コアの口径が、前記第2端部に近づくに連れて変化しているか、または、それらの両方が、前記第1端部および前記第2端部に近づくに連れて変化しており、
前記コアが移動した際に、前記ダイの排出口における前記ダイランドと前記コアとの間の距離であるダイコア開度が変化することで、前記パリソンの厚さが調整される、コルゲートホースの製造システム。
【請求項3】
請求項
2に記載のコルゲートホースの製造システムにおいて、
(c)パリソン形成手段およびコルゲートホース成形手段が行われる前に、
前記パリソンの厚さの変動に関する第1データと、
前記パリソンの厚さの変動に応じた前記パリソンの流入速度の変動に関する第2データと、
前記パリソンの厚さの変動および前記パリソンの流入速度の変動に応じた前記ダイコア開度の変動に関する第3データと、
を、前記制御部に記録する工程を更に備える、コルゲートホースの製造システム。
【請求項4】
請求項
1に記載のコルゲートホースの製造システムにおいて、
前記制御部は、前記パリソンを加工中の前記モールドブロックの位置を検出できる、コルゲートホースの製造システム。
【請求項5】
請求項
4に記載のコルゲートホースの製造システムにおいて、
前記モールドブロックは、前記凹部と前記凸部との間の起伏よりも平滑な表面を有する平滑成形部を含み、
前記蛇腹成形部によって前記パリソンを加工する際に、前記制御部は、前記平滑成形部によって前記パリソンを加工する場合と比較して、前記パリソンの厚さを厚くし、且つ、前記モールドブロックの移動速度を遅くする、コルゲートホースの製造システム。
【請求項6】
請求項
1に記載のコルゲートホースの製造システムにおいて、
前記(b2)工程は、前記パリソンを前記モールドブロック側へ吸引することで行われる、コルゲートホースの製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コルゲートホースの製造システムに関し、特に、押出機およびコルゲータを用いてコルゲートホースを成形するための製造システムに好適に利用できる。
【背景技術】
【0002】
押出機を用いて原料である樹脂を可塑化することで、溶融樹脂を形成し、押出機のダイから上記溶融樹脂を押し出すことで、円筒状のパリソンを形成し、その後、コルゲータにおいてパリソンを加工することでコルゲートホース(コルゲートチューブ)を成形する技術が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、原料である樹脂からコルゲートチューブを成形する際に、コルゲートチューブに厚肉となる箇所と薄肉となる箇所とを設ける技術が開示されている。また、特許文献1には、コルゲータに備えられている金型の移動速度を変更できる技術と、押出機の押出口に設けられたギアポンプによって、樹脂の通過量を調整できる技術とが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えばバキューム成形法によってコルゲートホースを成形する場合、コルゲータでは、パリソンをモールドブロック(金型)で挟み込んだ状態で、パリソンを真空で吸引することで、パリソンをモールドブロックに接触させる工程が行われる。パリソンは、モールドブロックの内壁の形状に対応した形状に加工される。例えば、モールドブロックが、凹部および凸部の交互配置で構成された蛇腹成形部を有する場合、凸部および凹部の交互配置で構成された蛇腹部を有するコルゲートホースが成形される。
【0006】
しかし、コルゲートホースがそのような蛇腹部を有していると、凸部および凹部の起伏が原因で、場所によってパリソンの厚さにばらつきが発生し易くなる。パリソンの厚さが薄い箇所は破損し易い箇所であり、コルゲートホースの製品寿命が低下する恐れがある。従って、コルゲートホース全体に渡ってパリソンの厚さの均一性を高める技術が求められ、それによってコルゲートホースの信頼性を向上できる技術が求められる。
【0007】
その他の課題および新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施の形態におけるコルゲートホースの製造システムは、押出機と、コルゲータと、肉厚調整機構とを備える。前記押出機は、シリンダと、前記シリンダの内部に設けられたスクリュと、前記シリンダに設けられた原料供給部と、前記原料供給部よりも前記シリンダの下流側に接続されたダイと、前記ダイと一体化され、且つ、前記ダイの排出口側に設けられたダイランドと、その外周を前記ダイランドに覆われた円柱状のコアとを有する。前記コルゲータは、流入部と、排出部と、前記コルゲータの内部に設けられ、且つ、前記流入部から前記排出部へ向かって移動するモールドブロックとを有する。前記肉厚調整機構は、スピンドルを介して前記コアに接続され、且つ、位置決め動作が可能な位置決め機構を有する。
【0009】
一実施の形態におけるコルゲートホースは、押出機と、コルゲータと、肉厚調整機構とを備えたコルゲートホースの製造システムを用いることで成形される。ここで、前記押出機は、シリンダと、前記シリンダの内部に設けられたスクリュと、前記シリンダに設けられた原料供給部と、前記原料供給部よりも前記シリンダの下流側に接続されたダイと、前記ダイと一体化され、且つ、前記ダイの排出口側に設けられたダイランドと、その外周を前記ダイランドに覆われた円柱状のコアとを有する。前記コルゲータは、流入部と、排出部と、前記コルゲータの内部に設けられ、且つ、前記流入部から前記排出部へ向かって移動するモールドブロックとを有する。前記肉厚調整機構は、スピンドルを介して前記コアに接続され、且つ、位置決め動作が可能な位置決め機構を有する。
【発明の効果】
【0010】
一実施の形態によれば、高い信頼性を有するコルゲートホースを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態1における製造システムを示す模式図である。
【
図2】実施の形態1における肉厚調整機構を用いてパリソンを加工するための形成工程を示す平面図である。
【
図3】実施の形態1におけるコルゲートホースを示す側面図である。
【
図6】実施の形態1におけるダイランドおよびコアを示す斜視図である。
【
図7】実施の形態1におけるダイランドおよびコアを示す平面図である。
【
図8】実施の形態1におけるダイランドおよびコアの組み合わせを示す平面図である。
【
図9】実施の形態1におけるパリソン形成手段およびコルゲートホース成形手段を示すフローチャートである。
【
図10】実施の形態1における事前処理のフローチャートである。
【
図11】実施の形態1における成形運転中のタイミングチャートである。
【
図12】実施の形態1における成形運転中のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0013】
また、実施の形態で用いられる図面では、図面を見易くするために、ハッチングが省略されている場合もある。
【0014】
(実施の形態1)
<製造システム100の構成>
以下に
図1および
図2を用いて、実施の形態1におけるコルゲートホースの製造システム100について説明する。
【0015】
図1および
図2に示されるように、製造システム100は、押出機200、コルゲータ300および肉厚調整機構50を備える。押出機200を用いることで、原料である樹脂から円筒状のパリソン41が形成され、コルゲータ300を用いてパリソン41を加工することで、成形品としてコルゲートホース42が成形される。
【0016】
押出機200は、可塑化部10、および、可塑化部10の下流側に接続されたヘッド部20を有する。可塑化部10は、シリンダ11、スクリュ12、回転機構13および原料供給部14などを含む。スクリュ12は、シリンダ11の内部に設けられ、シリンダ11の上流端に接続された回転機構13の駆動によって回転する。原料供給部14は、シリンダ11の上流側に設けられている。
【0017】
図1では、可塑化部10が単軸押出機として例示されているが、可塑化部10は、二軸押出機、または、二軸を超える複数のスクリュを搭載した押出機であってもよい。
【0018】
ヘッド部20は、シリンダ11の下流側に接続されたダイ21、および、ダイ21と一体化され、且つ、ダイ21の排出口側に設けられたダイランド22などを含む。なお、
図2に示されるように、ヘッド部20は、コア23を更に含むが、ダイランド22およびコア23の構成と、その効果とについては、後で詳しく説明する。
【0019】
また、
図1では、原料である樹脂からパリソン41を形成し、パリソン41を加工してコルゲートホース42を成形する過程を分かり易く示すために、可塑化部10、ヘッド部20およびコルゲータ300が同一方向に配置されているように図示されている。しかし、実際には、
図2に示されるように、肉厚調整機構50、ダイ21およびコルゲータ300が、同一方向に配置され、可塑化部10は、これらと異なる方向に配置されている。
【0020】
図2に示されるように、ヘッド部20のダイ21にはクロスヘッドダイが適用され、ダイ21の内部において、溶融樹脂40の流入方向が変化している。可塑化部10からダイ21へ流入した溶融樹脂40は、ダイ21の内部にスパイラル状に流入した後、溶融樹脂40は、ダイランド22とコア23との間からパリソン41として押し出される。
【0021】
また、コア23の内部には、
図2の矢印のように、コア23の延在方向に沿って空気ARを流すための穴が設けられている。形成されたパリソン41の内径は、この空気ARによって広げられる。
【0022】
図1に示されるように、コルゲータ300は、本体31、モールドブロック32、パリソン41の流入経路となる流入部33、および、コルゲートホース42の排出経路となる排出部34などを含む。モールドブロック32は、流入部33から排出部34へ向かって移動する。
【0023】
図2に示されるように、コルゲータ300の本体31の内部には、レール35のような移動機構が設けられ、レール35には、モールドブロック32が搭載されている。レール35は、流入部33から排出部34へ向かうように回転する。レール35の移動によってモールドブロック32の移動が行われる。パリソン41が排出部34へ向かって流入されるに連れて、新たに流入されたパリソン41に、モールドブロック32の他の成形部を宛がうことができる。
【0024】
また、モールドブロック32は、平滑な表面を有する複数の平滑成形部32aと、複数の凹部および凸部の交互配置で構成された表面を有する複数の蛇腹成形部32bと含んでいる。平滑成形部32aの表面は、蛇腹成形部32bの凹部および凸部の間の起伏よりも平滑である。パリソン41の形状が複数の平滑成形部32aまたは蛇腹成形部32bの形状に対応するように、パリソン41が加工される。
【0025】
図2に示されるように、ヘッド部20には、肉厚調整機構50が接続されている。肉厚調整機構50は、スピンドル52を介してコア23に接続され、且つ、位置決め動作が可能な位置決め機構51、位置決め機構51の位置決め動作を制御するモータ53、および、位置決め機構51の位置決め動作に対応しながら位置決め機構51を支持できるボールねじ54を有する。
【0026】
モータ53が駆動すると、位置決め機構51は、ボールねじ54に支持されながら、コア23の延在方向に沿って位置決め動作を行う。コア23は、位置決め機構51の位置決め動作に応じて、スピンドル52を介してコア23の延在方向に沿って移動できる。
【0027】
また、製造システム100は、コンピュータなどで構成された制御部CUを備えている。制御部CUは、押出機200、コルゲータ300および肉厚調整機構50に電気的に接続され、これらの動作を制御できる。
【0028】
なお、上述のように、スクリュ12の回転は回転機構13によって制御され、モールドブロック32の移動はレール35のような移動機構によって制御され、位置決め機構51の位置決め動作はモータ53によって制御される。回転機構13、レール35およびモータ53は、制御部CUに電気的に接続され、これらの動作および制御は、制御部CUによって統括される。従って、以降では、押出機200、コルゲータ300および肉厚調整機構50で行われる種々の動作および制御を、制御部CUが行うと説明する場合もある。
【0029】
<コルゲートホース42の構成>
図3は、コルゲータ300によって成形されたコルゲートホース42の一例を示している。コルゲートホース42は、平滑な表面を有する複数の平滑部42aと、複数の凸部および凹部の交互配置で構成された表面を有する複数の蛇腹部42bとを含む。平滑部42aの表面は、蛇腹部42bの凸部および凹部の間の起伏よりも平滑である。
【0030】
平滑部42aは、モールドブロック32の平滑成形部32aの形状に対応した形で加工された箇所であり、蛇腹部42bは、モールドブロック32の蛇腹成形部32bの形状に対応した形で加工された箇所である。
【0031】
また、ここではモールドブロック32が平滑成形部32aおよび蛇腹成形部32bによって構成され、コルゲートホース42が平滑部42aおよび蛇腹部42bを含む場合を例示している。しかし、平滑部42aおよび蛇腹部42bの組み合わせは、平滑成形部32aおよび蛇腹成形部32bの組み合わせを変更することで、適宜変更できる。例えば、その全体が蛇腹部42bで構成されたコルゲートホース42を成形することもできる。
【0032】
<検討例について>
図4および
図5は、コルゲートホース42の断面の一部を拡大して示している。
図4は、コルゲートホース42の厚さが理想的である場合を示し、
図5は、本願発明者らが検討した検討例のコルゲートホース42における問題点を示している。
【0033】
図4のように、蛇腹部42bの凸部および凹部における厚さが均一になっているコルゲートホース42を成形することが理想的である。しかし、真空での吸引によってパリソン41をモールドブロック32に接触させる際に、蛇腹成形部32bの凸部および凹部の起伏が原因で、真空での吸引の強さにばらつきが生じ易くなるという問題が、本願発明者らの検討によって明らかになった。そのようなばらつきが生じると、例えば
図5のように、蛇腹部42bの凸部の厚さが、他の箇所と比較して薄くなる。
【0034】
これらの問題を解決するために、本願発明者らは、
図4の検討例の対策方法として、コルゲータ300の速度(モールドブロック32の移動速度)を遅くすることで、コルゲートホース42の全体の厚さを厚くする方法を試みた。その結果、蛇腹部42bの凸部の厚さは厚くなったが、パリソン41の流入速度に対して、モールドブロック32の移動速度が遅くなり過ぎると、モールドブロック32の各成形部の間の隙間にパリソン41が入り込み、正常な成形が行えなくなる場合があるという事が分かった。
【0035】
また、蛇腹部42bの厚さだけでなく、コルゲートホース42の全体の厚さが厚くなることで、コルゲートホース42の重量が増加し、軽量化が図り難くなるという問題と、材料のコストが増加するという問題とが発生した。
【0036】
また、蛇腹部42bを加工する時だけ、回転機構13により駆動されるスクリュ12の回転数を変更することで、パリソン41の押出量を多くし、蛇腹部42bの厚さを厚くする方法も考えられる。しかし、スクリュ12の回転数が変更されたタイミングと、パリソン41が押し出されるタイミングとには、タイムラグが発生するので、そのような方法を適用することは難しい。
【0037】
そこで、本願発明者らは、
図4の検討例の対策方法から見出された種々の問題を解決するために、肉厚調整機構50を採用し、ダイランド22とコア23との間から押し出されるパリソン41の厚さを調整する手法について検討を行った。
【0038】
<ヘッド部20の構成>
図6~
図8は、ヘッド部20のうちダイ21の排出口付近の構造を示している。
【0039】
図6および
図7に示されるように、ダイ21は、ダイ21と一体化され、且つ、ダイ21の排出口側に設けられたダイランド22と、コア23とを含む。コア23は、コルゲータ300へ向かう方向へ延在するように円柱状を成し、コア23の外周は、ダイランド22に覆われている。
【0040】
ダイランド22は、ダイ21の排出口に位置する先端部22eを含む。コア23は、肉厚調整機構50のスピンドル52に接続された端部23i、および、端部23iと反対側に位置し、且つ、ダイ21の排出口に位置する端部(先端部)23eを含む。
【0041】
また、
図6および
図7では、コア23の口径は、端部23eに近づくに連れて広くなっており、ダイランド22の内径は、一定である。溶融樹脂40は、ダイランド22とコア23との間を通過し、ダイ21の排出口においてダイランド22とコア23との間からパリソン41として押し出される。ここで、
図2に示される位置決め機構51の位置決め動作によって、
図7に示される矢印のように、コア23を移動させることができる。コア23が移動することで、ダイ21の排出口におけるダイランド22とコア23との間の距離であるダイコア開度L1が変化する。より具体的には、ダイコア開度L1は、ダイ21の排出口におけるダイランド22の内径とコア23の口径との間の長さである。
【0042】
例えば、
図7では、ダイコア開度L1を小さくすると、パリソン41の厚さが薄くなり、ダイコア開度L1を大きくすると、パリソン41の厚さが厚くなる。このように、コア23が移動することで、ダイランド22とコア23との間から押し出されるパリソン41の厚さを調整することが可能となる。
【0043】
なお、
図8に示されるように、ダイ21の排出口におけるダイランド22の形状およびコア23の形状は、様々な組み合わせを適用できる。そのような組み合わせとして、ここでは、例えばダイランド22の形状およびコア23の形状を、それぞれ、ダイバージタイプ、コンバージタイプまたはストレートタイプにすることができる。
【0044】
すなわち、ダイ21の排出口において、ダイランド22の内径が、先端部22eに近づくに連れて変化しているか、コア23の口径が、端部23eに近づくに連れて変化しているか、または、それらの両方が、端部23eおよび先端部22eに近づくに連れて変化するように、ダイランド22の形状およびコア23の形状の組み合わせが選択される。これにより、コア23が移動した際に、ダイコア開度L1を変化させることができ、パリソン41の厚さを調整することが可能となる。
【0045】
以下に
図9~
図12を用いて、実施の形態1におけるコルゲートホースの製造システム100が備えるパリソン形成手段およびコルゲートホース成形手段について説明する。
【0046】
<パリソン形成手段>
パリソン形成手段は、
図9に示されるステップS1~S3を有する。
【0047】
ステップS1では、原料供給部14からシリンダ11の内部へ原料となる樹脂が投入される。原料となる樹脂としては、熱可塑性樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂は、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレートまたはポリイミドである。実施の形態1における原料は、上記材料単体でもよいし、これらのうち2つ以上を含む混合物でもよい。
【0048】
なお、シリンダ11の周囲には図示されてない熱源が設けられ、熱源によってシリンダ11の各領域は所望の温度に調節される。熱源は、熱可塑性樹脂を溶融させることができる温度まで加熱できる手段であればよい。また、シリンダ11には、添加剤、フィラーまたはフィラー分散液を投入するための注液ノズルが設けられていてもよく、シリンダ11の途中で、これらを可塑化中の樹脂に投入することもできる。
【0049】
ステップS2では、スクリュ12によって、上記樹脂が混練させると共に可塑化される。これにより、可塑化された樹脂として溶融樹脂40が形成される。
【0050】
ステップS3では、パリソン41が形成される。可塑化された溶融樹脂40は、ダイランド22とコア23との間から円筒状のパリソン41として押し出される。このようにして、実施の形態1におけるパリソン41が形成される。また、パリソン41が多層構造である場合もある。例えば、複数の押出機においてそれぞれ溶融樹脂を形成し、それらの溶融樹脂を1つのダイへ供給することで、多層構造のパリソン41が形成できる。
【0051】
ステップS3において、制御部CUが、位置決め機構51の位置決め動作によってコア23を移動させることで、ダイコア開度L1が変化するので、パリソン41の厚さを調整できる。
【0052】
このため、回転機構13により駆動するスクリュ12の回転数を一定に保った状態で、パリソン41の厚さが調整できる。パリソン41の厚さを変更するタイミングと、パリソン41が押し出されるタイミングとには、タイムラグがほぼ発生しない。従って、蛇腹成形部32bによってパリソン41を加工したい場合など、所望のタイミングでパリソン41の厚さを変更できる。それ故、
図4の検討例のように、蛇腹部42bの凸部の厚さが局所的に薄くなるという問題を抑制できる。
【0053】
<コルゲートホース成形手段>
コルゲートホース成形手段は、
図9に示されるステップS4~S6を有する。
【0054】
ステップS4では、円筒状のパリソン41は、コルゲータ300の流入部33からコルゲータ300の内部へ流入される。
【0055】
ステップS5では、パリソン41は、モールドブロック32によって加工される。パリソン41を加工する方法の一例として、バキューム成形法が挙げられる。バキューム成形法は、パリソン41をモールドブロック32側へ吸引することで、モールドブロック32の各成形部の形状にパリソン41の形状を対応させる方法である。
【0056】
例えば、一対の蛇腹成形部32bによってパリソン41を挟み込んだ状態で、パリソン41を真空で吸引することで、一対の蛇腹成形部32bにパリソン41を接触させる。これにより、パリソン41の形状が変化し、蛇腹成形部32bの凹部に対応した箇所が、コルゲートホース42の蛇腹部42bの凸部として加工され、蛇腹成形部32bの凸部に対応した箇所が、コルゲートホース42の蛇腹部42bの凹部として加工される。
【0057】
ステップS6では、加工されたパリソン41は、コルゲータ300の排出部34から、円筒状の成形品であるコルゲートホース42として排出される。このようにして、実施の形態1におけるコルゲートホース42が成形される。
【0058】
ステップS5では、ステップS3においてパリソン41の厚さが調整された際に、パリソン41の厚さに応じてパリソン41の流入速度が変動する。ここで、制御部CUは、変動したパリソン41の流入速度に近くなるように、モールドブロック32の移動速度を調整できる。
【0059】
図10は、パリソン形成手段およびコルゲートホース成形手段が行われる前に、パリソン41の厚さの変動に関する第1データ、パリソン41の流入速度の変動に関する第2データ、および、ダイコア開度L1の変動に関する第3データを、制御部CUに記憶させる事前処理を示している。
【0060】
制御部CUが事前に第1~第3データを保有していることで、制御部CUがダイコア開度L1をどの程度変動させれば、パリソン41の厚さおよびパリソン41の流入速度がどの程度変動するのかという事を、制御部CUは制御できる。
【0061】
まず、ステップS7では、製品(コルゲートホース42)の要求に応じて、ユーザが、製品の外径および厚さを設定する。ステップS8では、これらの設定値に基づいて製品の断面積が算出される。
【0062】
一方で、ステップS9では、ユーザが、押出機200の運転条件として、例えば押出量および製品密度を設定する。なお、押出量とは、押出機200から押し出される単位時間当たりの樹脂の重量である。パリソン41が多層の樹脂層からなる場合、押出量は、全ての押出機200からの総重量を指す。また、製品密度とは、単位長さ当たりのコルゲートホース42の重量を、その体積で割った値である。
【0063】
なお、ステップS7~S9における各値は、実施の形態1におけるパリソン形成手段およびコルゲートホース成形手段のために新しく考慮する必要は無く、既存の設定値および既存の仕様を利用できる。
【0064】
ステップS10では、ステップS7~S9における各値に基づいて事前にシミュレーションを行うことで、パリソン41の厚さの変動に関する第1データと、パリソン41の流入速度の変動に関する第2データとが算出される。
【0065】
ステップS11では、ステップS10の結果に基づいて逆算することで、ダイコア開度L1の変動に関する第3データが算出される。
【0066】
図11は、平滑成形部32aまたは蛇腹成形部32bによってパリソン41を加工する際のタイミングチャート(成形運転中のタイミングチャート)である。
図11に示される「現在位置」は、加工中のパリソン41がモールドブロック32のうち何処に位置しているかを示している。
【0067】
図12は、制御部CUが、モールドブロック32の位置を検出し、その結果によってダイコア開度L1およびモールドブロック32の移動速度を変更する過程を示すフローチャートである。
【0068】
コルゲータ300の本体31は、元々、モールドブロック32を搭載するレール35の位置を検出する機能を備えている。そして、本体31(レール35)が行う動作は、制御部CUによって統括されている。
【0069】
従って、まず、ステップS12では、制御部CUは、モールドブロック32の位置を検出する。次に、ステップS13では、制御部CUは、パリソン41を加工中のモールドブロック32の位置を検出する。
【0070】
ステップS13の結果によって、
図11に示される「現在位置」に対応するモールドブロック32が平滑成形部32aであるか、蛇腹成形部32bであるかが判定される。何れかの判定結果に対応するように、制御部CUは、ステップS3で使用されるダイコア開度L1、および、ステップS5で使用されるモールドブロック32の移動速度の調整を行う。
【0071】
例えば、蛇腹成形部32bによってパリソン41を加工する際に、制御部CUは、平滑成形部32aによってパリソン41を加工する場合と比較して、パリソン41の厚さを厚くし、且つ、モールドブロック32の移動速度を遅くする。
【0072】
図4の検討例では、パリソン41の流入速度に対して複数のモールドブロック32の移動速度が遅くなり過ぎることで、モールドブロック32の各成形部の間の隙間にパリソン41が入り込むなどの問題があった。
【0073】
実施の形態1では、変動したパリソン41の流入速度に近くなるように、複数のモールドブロック32の移動速度を調整できる。そのため、上記問題が発生することを抑制できる。
【0074】
また、ダイコア開度L1を変化させることで、パリソン41の厚さを調整でき、更に、蛇腹部42bを成形したい場合など、所望のタイミングでパリソン41の厚さを変更できる。
【0075】
以上のように、実施の形態1における製造システム100によれば、パリソン41の厚さにばらつきが発生し難いので、コルゲートホース42全体に渡って厚さの均一性を高めることができる。このため、高い信頼性を有するコルゲートホース42を提供することができる。
【0076】
以上、本発明を上記実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【符号の説明】
【0077】
10 可塑化部
11 シリンダ
12 スクリュ
13 回転機構
14 原料供給部
20 ヘッド部
21 ダイ
22 ダイランド
22e ダイランドの先端部
23 コア
23i コアの端部
23e コアの端部(先端部)
31 本体
32 モールドブロック
32a 平滑成形部
32b 蛇腹成形部
33 流入部
34 排出部
35 レール
40 溶融樹脂
41 パリソン
42 コルゲートホース
42a 平滑部
42b 蛇腹部
50 肉厚調整機構
51 位置決め機構
52 スピンドル
53 モータ
54 ボールねじ
100 製造システム
200 押出機
300 コルゲータ
AR 空気
CU 制御部
L1 ダイコア開度