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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-25
(45)【発行日】2024-10-03
(54)【発明の名称】車両用制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60L 15/20 20060101AFI20240926BHJP
【FI】
B60L15/20 J
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021021431
(22)【出願日】2021-02-15
(65)【公開番号】P2022123951
(43)【公開日】2022-08-25
【審査請求日】2024-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水野 就斗
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-033884(JP,A)
【文献】国際公開第2010/134548(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/190021(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/189904(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0162009(US,A1)
【文献】国際公開第2019/116588(WO,A1)
【文献】特開2007-151397(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00- 3/12
B60L 7/00-13/00
B60L 15/00-58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪に連結される走行用モータを制御する車両用制御装置であって、
アクセル操作が解除されるコースト走行時に、前記走行用モータを回生状態に制御するモータ制御部と、
運転強度が低く車両挙動が緩慢な第1走行状況と、運転強度が高く車両挙動が敏速な第2走行状況と、の何れの走行状況であるかを判定する走行判定部と、
を有し、
前記モータ制御部は、前記第2走行状況のもとでアクセル操作が解除された場合に、前記第1走行状況のもとでアクセル操作が解除された場合よりも、前記走行用モータの回生トルクを小さくする、
車両用制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用制御装置において、
コースト走行時に使用される車両減速度の制限値として、第1制限値とこれよりも小さな第2制限値とを設定する制限値設定部、を有し、
前記モータ制御部は、
前記第1走行状況のもとでアクセル操作が解除された場合に、前記第1制限値に基づき前記走行用モータの回生トルクを制限し、
前記第2走行状況のもとでアクセル操作が解除された場合に、前記第2制限値に基づき前記走行用モータの回生トルクを制限する、
車両用制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用制御装置において、
前記モータ制御部は、
前記第2走行状況かつ車速が閾値を下回る状況のもとで、アクセル操作が解除された場合に、前記第2制限値に基づき前記走行用モータの回生トルクを制限する、
車両用制御装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の車両用制御装置において、
前記制限値設定部は、車速が低下するにつれて前記第1制限値と前記第2制限値との差を大きく設定する、
車両用制御装置。
【請求項5】
請求項2~4の何れか1項に記載の車両用制御装置において、
前記制限値設定部は、アクセル操作量が大きくなるにつれて前記第1制限値と前記第2制限値との差を大きく設定する、
車両用制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪に連結される走行用モータを制御する車両用制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド車両等の車両には、車輪に連結される走行用モータが設けられている。また、アクセルペダルの踏み込みが解除されるコースト走行においては、走行用モータの回生トルクが車速等に基づき制御されており、運転者に違和感を与えないように車両減速度が調整されている(特許文献1~4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-33884号公報
【文献】特許第6044713号公報
【文献】特開2003-250202号公報
【文献】特開平9-37407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、運転者に違和感を与えない車両減速度については、アクセル操作等の運転状況に応じて変化することが考えられる。つまり、車速等に基づき車両減速度を制御するだけでは、運転者に対して違和感を与えてしまう虞がある。
【0005】
本発明の目的は、コースト走行時の車両減速度を適切に制御することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施の形態の車両用制御装置は、車輪に連結される走行用モータを制御する車両用制御装置であって、アクセル操作が解除されるコースト走行時に、前記走行用モータを回生状態に制御するモータ制御部と、運転強度が低く車両挙動が緩慢な第1走行状況と、運転強度が高く車両挙動が敏速な第2走行状況と、の何れの走行状況であるかを判定する走行判定部と、を有し、前記モータ制御部は、前記第2走行状況のもとでアクセル操作が解除された場合に、前記第1走行状況のもとでアクセル操作が解除された場合よりも、前記走行用モータの回生トルクを小さくする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、モータ制御部は、第2走行状況のもとでアクセル操作が解除された場合に、第1走行状況のもとでアクセル操作が解除された場合よりも、走行用モータの回生トルクを小さくする。これにより、コースト走行時の車両減速度を適切に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施の形態である車両用制御装置を備えた車両の構成例を示す概略図である。
図2】メインコントローラの構成例を示す図である。
図3】目標モータトルクを示したトルクマップの一例を示す図である。
図4】基本条件判定状況の一例を示すタイミングチャートである。
図5】走行状況判定の実施状況の一例を示すタイミングチャートである。
図6】前後加速度の推移の一例を示す図である。
図7】横加速度の推移の一例を示す図である。
図8】基準制限値および最終補正制限値の設定手順の一例を示すフローチャートである。
図9】基準制限値の一例を示す図である。
図10A】制限値減少量の一例を示す図である。
図10B】制限値減少量の一例を示す図である。
図11】補正係数の一例を示す図である。
図12】補正制限値および最終補正制限値の設定状況の一例を示す図である。
図13】ドライバビリティ向上制御の実行手順の一例を示すフローチャートである。
図14】ドライバビリティ向上制御の実行状況の一例を示すタイミングチャートである。
図15】実施例1,2の実行状況を示すタイミングチャートである。
図16】実施例3,4の実行状況を示すタイミングチャートである。
図17】実施例5,6の実行状況を示すタイミングチャートである。
図18】実施例7,8,9の実行状況を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0010】
[車両構成]
図1は本発明の一実施の形態である車両用制御装置10を備えた車両11の構成例を示す概略図である。図1に示すように、車両11には、車輪12に連結される走行用モータ13が設けられている。走行用モータ13のロータ14には、モータ出力軸15、デファレンシャル機構16および車輪駆動軸17等を介して車輪12が連結されている。また、走行用モータ13のステータ18にはインバータ19が接続されており、インバータ19にはリチウムイオンバッテリ等のバッテリ20が接続されている。さらに、走行用モータ13には、レゾルバ等の回転センサ21が設けられている。
【0011】
車両用制御装置10には、マイコン等からなるメインコントローラ30およびモータコントローラ(モータ制御部)31が設けられている。メインコントローラ30には各種センサが接続されており、メインコントローラ30は各種センサからの信号に基づき走行用モータ13の目標モータトルク等を設定する。また、メインコントローラ30は、目標モータトルク等をモータコントローラ31に送信し、モータコントローラ31は、目標モータトルク等に基づきインバータ19の駆動信号を生成する。そして、駆動信号に基づき制御されるインバータ19は、バッテリ20の直流電力を交流電力に変換して走行用モータ13に供給し、目標モータトルク等に向けて走行用モータ13を制御する。なお、メインコントローラ30とモータコントローラ31とは、CAN等の車載ネットワーク32を介して互いに通信自在に接続されている。
【0012】
メインコントローラ30には、アクセルペダル33の踏み込み量(以下、アクセル開度Acpと記載する。)を検出するアクセルセンサ34が接続されており、ブレーキペダル35の踏み込み量を検出するブレーキセンサ36が接続されている。また、メインコントローラ30には、車両11の走行速度である車速Vを検出する車速センサ37、車両11の前後方向に作用する前後加速度Gxを検出する加速度センサ38、および車両11の車幅方向に作用する横加速度Gyを検出する加速度センサ39が接続されている。さらに、メインコントローラ30には、走行路の路面勾配θを検出する勾配センサ40、車両11の重量である車重Wvを検出する車重センサ41、回生モード(弱回生モード、強回生モード)を設定する際に操作されるモードスイッチ42、および走行用モータ13の回転速度Nmを検出する回転センサ21が接続されている。
【0013】
また、バッテリ20には、バッテリ20の充放電を監視するバッテリコントローラ43が設けられている。バッテリコントローラ43には、図示しない温度センサ、電流センサおよび電圧センサ等が接続されており、バッテリコントローラ43は、充放電電流等に基づきバッテリ20の充電状態であるSOC(State of Charge)を算出する。なお、バッテリ20のSOCとは、バッテリ20の電気残量を示す比率であり、バッテリ20の満充電容量に対する蓄電量の比率である。例えば、バッテリ20が上限容量まで充電された場合には、SOCが100%として算出され、バッテリ20が下限容量まで放電した場合には、SOCが0%として算出される。
【0014】
[メインコントローラ]
図2はメインコントローラ30の構成例を示す図である。図2に示すように、メインコントローラ30は、目標トルク設定部50、基本条件判定部51、走行状況判定部(走行判定部)52、減速度制限値設定部(制限値設定部)53およびトルク制限値変換部54を有している。以下、メインコントローラ30の各機能について順に説明する。
【0015】
・(目標トルク設定)
メインコントローラ30の目標トルク設定部50は、車速V、アクセル開度(アクセル操作量)Acpおよび回生モード情報に基づいて、走行用モータ13の目標モータトルクTmを設定する。図3は目標モータトルクTmを示したトルクマップの一例を示す図である。図3に示すように、トルクマップには、アクセル開度Acp毎に目標モータトルクTmを示す特性線L0~L5が設定されている。つまり、アクセル開度Acpが0%である場合には、特性線L0,L1に沿って目標モータトルクTmが設定され、アクセル開度Acpが25%である場合には、特性線L2に沿って目標モータトルクTmが設定される。同様に、アクセル開度Acpが50%である場合には、特性線L3に沿って目標モータトルクTmが設定され、アクセル開度Acpが75%である場合には、特性線L4に沿って目標モータトルクTmが設定され、アクセル開度Acpが100%である場合には、特性線L5に沿って目標モータトルクTmが設定される。例えば、アクセル開度Acpが「50%」であり、かつ車速が「Vx」である場合には、目標モータトルクTmとして「Tx」が設定される。
【0016】
また、図示する車両11においては、アクセル操作が解除されるコースト走行時に使用される回生モードとして、走行用モータ13を弱い回生トルクで制御する弱回生モードと、走行用モータ13を強い回生トルクで制御する強回生モードと、を有している。このため、トルクマップには、アクセル開度Acpが0%である場合に選択される特性線として、回生モードが弱回生モードである場合に選択される特性線L1と、回生モードが強回生モードである場合に選択される特性線L0と、が設けられている。つまり、弱回生モードが選択されており、かつアクセル開度Acpが0%である場合には、特性線L1に沿って目標モータトルクTmが設定される。また、強回生モードが選択されており、かつアクセル開度Acpが0%である場合には、特性線L0に沿って目標モータトルクTmが設定される。なお、共通ペダルモードとも呼ばれる強回生モードを用いることにより、減速走行であるコースト走行時には回生トルクを強く発生させることができるため、ブレーキペダル35を踏み込むことなく車両11を適切に減速させることが可能である。
【0017】
・(基本条件判定)
メインコントローラ30の基本条件判定部51は、バッテリ20のSOC、車速Vおよび回生モード情報に基づいて、後述するドライバビリティ向上制御を実行する際の基本条件が成立しているか否かを判定する。なお、後述するように、ドライバビリティ向上制御とは、運転者に違和感を与えることなくコースト走行を実行するため、運転状況に応じてコースト走行時の車両減速度を低下させる制御である。
【0018】
図4は基本条件判定状況の一例を示すタイミングチャートである。図4に時刻t1で示すように、バッテリ20のSOCが所定の閾値saを上回るとバッテリフラグFaが「0」に設定され(符号a1)、時刻t2で示すように、SOCが閾値saを下回るとバッテリフラグFaが「1」に設定される(符号a2)。バッテリフラグFaが「0」に設定される状況とは、バッテリ20を充電するための空き容量が少ない状況であり、走行用モータ13の回生制御が制限される状況である。一方、バッテリフラグFaが「1」に設定される状況とは、バッテリ20を充電するための空き容量が多い状況であり、走行用モータ13の回生制御が許容される状況である。
【0019】
図4に時刻t3で示すように、車速Vが所定の閾値vaを上回ると車速フラグFbが「0」に設定され(符号b1)、時刻t4で示すように、車速Vが閾値vaを下回ると車速フラグFbが「1」に設定される(符号b2)。また、時刻t5で示すように、モードスイッチ42の操作によって弱回生モードから強回生モードに切り替えられると、モードフラグFcが「1」に設定される(符号c1)。そして、時刻t5で示すように、全てのフラグFa,Fb,Fcが「1」に設定されると、基本条件が成立したことを示す基本条件フラグFx1が「1」に設定される(符号d1)。なお、各フラグFa,Fb,Fcの何れかが「0」に設定された場合には、基本条件が不成立であると判定されることから、基本条件フラグFx1が「0」に設定される。
【0020】
・(走行状況判定)
メインコントローラ30の走行状況判定部52は、車両11に作用する前後加速度Gxおよび横加速度Gyに基づいて、車両11の走行状況が通常走行とスポーツ走行との何れであるかを判定する。通常走行(第1走行状況)とは、前後加速度Gxや横加速度Gyが小さな走行状況であり、運転強度が低く車両挙動が緩慢な走行状況である。また、スポーツ走行(第2走行状況)とは、前後加速度Gxや横加速度Gyが大きな走行状況であり、運転強度が高く車両挙動が敏速な走行状況である。なお、運転強度とは、運転者による運転操作の程度を示す指標である。例えば、運転強度が高い状況とは、運転者による運転操作(アクセル操作、ブレーキ操作、ステアリング操作等)の操作速度が速い状況であり、運転強度が低い状況とは、運転者による運転操作の操作速度が遅い状況である。
【0021】
図5は走行状況判定の実施状況の一例を示すタイミングチャートであり、図6は前後加速度Gxの推移の一例を示す図であり、図7は横加速度Gyの推移の一例を示す図である。図5に時刻t1で示すように、前後加速度超過率が所定の閾値gaを上回ると加速度フラグFdが「1」に設定され(符号a1)、時刻t2で示すように、横加速度超過率が所定の閾値gbを上回ると加速度フラグFeが「1」に設定される(符号b1)。そして、時刻t2で示すように、双方の加速度フラグFd,Feが「1」に設定されると、走行状況がスポーツ走行であることを示すスポーツ走行フラグFx2が「1」に設定される(符号c1)。なお、加速度フラグFd,Feの何れかが「0」に設定された場合には、走行状況が通常走行であると判定されることから、スポーツ走行フラグFx2が「0」に設定される。
【0022】
図5に示した前後加速度超過率とは、前後加速度Gxが所定閾値を上回る時間の所定判定時間に対する割合である。図6に示すように、車両11の走行状況を判定する直近の判定時間を判定時間TAとし、判定時間TA中に前後加速度Gxが所定の閾値Xa,Xbを上回る時間を超過時間tx1~tx4としたとき、判定時間TAに対する合計超過時間tx1~tx4の割合が前後加速度超過率である。すなわち、前後加速度超過率が高くなる場合には、図6に実線Gx1で示すように、前後加速度Gxが大きく振れる走行状況、つまり車両11の加速や減速が勢いよく行われる走行状況が想定される。また、前後加速度超過率が低くなる場合には、図6に一点鎖線Gx2で示すように、前後加速度Gxが小さく振れる走行状況、つまり車両11の加速や減速が緩やかに行われる走行状況が想定される。なお、加速度センサ38は、例えば、車両後方に作用する前後加速度Gxを正の値(+)として検出し、車両前方に作用する前後加速度Gxを負の値(-)として検出する。このため、走行状況判定部52は、前後加速度Gxの絶対値を閾値Xa,Xbと比較判定することにより、加速度フラグFdを設定するための前後加速度超過率を算出している。また、閾値Xa,Xbは、互いに同じ値であっても良く、互いに異なる値であっても良い。
【0023】
また、図5に示した横加速度超過率とは、横加速度Gyが所定閾値を上回る時間の所定判定時間に対する割合である。図7に示すように、車両11の走行状況を判定する直近の判定時間を判定時間TBとし、判定時間TB中に横加速度Gyが所定の閾値Ya,Ybを上回る時間を超過時間ty1,ty2としたとき、判定時間TBに対する合計超過時間ty1,ty2の割合が横加速度超過率である。すなわち、横加速度超過率が高くなる場合には、図に実線Gy1で示すように、横加速度Gyが大きく振れる走行状況、つまり車両11が左右に蛇行する走行状況が想定される。また、横加速度超過率が低くなる場合には、図に一点鎖線Gy2で示すように、横加速度Gyが小さく振れる走行状況、つまり車両11が直進する走行状況が想定される。なお、加速度センサ39は、例えば、車両右方に作用する横加速度Gyを正の値(+)として検出し、車両左方に作用する横加速度Gyを負の値(-)として検出する。このため、走行状況判定部52は、横加速度Gyの絶対値を閾値Ya,Ybと比較判定することにより、加速度フラグFeを設定するための横加速度超過率を算出している。また、閾値Ya,Ybは、互いに同じ値であっても良く、互いに異なる値であっても良い。
【0024】
・(車両減速度の制限値設定)
メインコントローラ30の減速度制限値設定部53は、車速V、アクセル開度Acp、路面勾配θおよび車重Wvに基づき、コースト走行時に使用される車両減速度の制限値として、基準制限値(第1制限値)D1とこれよりも小さな最終補正制限値(第2制限値)D2bとを設定する。ここで、図8は基準制限値D1および最終補正制限値D2bの設定手順の一例を示すフローチャートであり、図9は基準制限値D1の一例を示す図である。また、図10Aおよび図10Bは制限値減少量αの一例を示す図であり、図11は補正係数Kの一例を示す図である。なお、本明細書において、車両減速度とは減速走行時に発生する車両加速度を意味しており、以下の説明では、車両減速度を正の値(+)として説明する。
【0025】
図8に示すように、ステップS10では、車両減速度の基準制限値D1が設定される。図9に実線daで示すように、基準制限値D1として固定値を採用しても良く、破線dbで示すように、基準制限値D1として、車速Vが高くなるほどに大きく設定される値を採用しても良い。この基準制限値D1は、通常走行でのコースト走行時に使用される車両減速度の制限値であり、運転者に対して違和感を与えないように設定される制限値である。つまり、通常走行でのコースト走行時においては、基準制限値D1を超えないように車両減速度を制限することにより、運転者に違和感を与えないように車両11を減速させることができる。
【0026】
図8に示すように、ステップS11では、車速Vおよびアクセル開度Acpに基づいて制限値減少量αが設定され、ステップS12では、基準制限値D1から制限値減少量αを減算することで補正制限値D2aが算出される。続いて、ステップS13では、路面勾配θに基づいて補正係数Kが設定され、ステップS14では、補正制限値D2aに補正係数Kを乗算することで最終補正制限値D2bが算出される。この最終補正制限値D2bは、スポーツ走行でのコースト走行時に使用される車両減速度の制限値であり、運転者に対して違和感を与えないように設定される制限値である。つまり、スポーツ走行でのコースト走行時においては、最終補正制限値D2bを超えないように車両減速度を制限することにより、運転者に違和感を与えないように車両11を減速させることができる。
【0027】
図10Aおよび図10Bに示すように、基準制限値D1から減算するための制限値減少量αは、車速Vが低下するにつれて大きく設定され、アクセル開度Acpが大きくなるにつれて大きく設定される。次いで、図11に示すように、補正制限値D2aに乗算するための補正係数Kは、路面勾配θが「0」つまり平坦路である場合に「1」に設定される。また、実線ka1で示すように、走行路が上り勾配である場合には、上り勾配が大きくなるにつれて補正係数Kが「1」を下回って小さく設定される。さらに、走行路が上り勾配である場合には、破線ka2で示すように、車重Wvが増加すると補正係数Kが小さく設定され、一点鎖線ka3で示すように、車重Wvが減少すると補正係数Kが大きく設定される。一方、実線kb1で示すように、走行路が下り勾配である場合には、下り勾配が大きくなるにつれて補正係数Kが「1」を上回って大きく設定される。さらに、走行路が下り勾配である場合には、破線kb2で示すように、車重Wvが増加すると補正係数Kが大きく設定され、一点鎖線kb3で示すように、車重Wvが減少すると補正係数Kが小さく設定される。
【0028】
続いて、前述した補正制限値D2aおよび最終補正制限値D2bの設定状況について図を用いて説明する。図12は補正制限値D2aおよび最終補正制限値D2bの設定状況の一例を示す図である。なお、図12には、最終補正制限値D2bとして、6つの最終補正制限値「D2b1」,「D2b1a」,「D2b1b」,「D2b2」,「D2b2a」,「D2b2b」が例示されている。
【0029】
図12に示すように、所定の基準制限値D1が設定されると、この基準制限値D1から制限値減少量αを減算することで補正制限値D2aが設定される。このとき、制限値減少量αは車速Vが低下するほどに大きく設定されるため、車速Vが低下するほどに基準制限値D1と補正制限値D2aとの差が大きく設定される。また、制限値減少量αはアクセル開度Acpが大きくなるほどに大きく設定されるため、アクセル開度Acpが大きくなるほどに基準制限値D1と補正制限値D2aとの差が大きく設定される。
【0030】
このように、補正制限値D2aが設定されると、この補正制限値D2aに補正係数Kを乗算することで最終補正制限値D2bが設定される。このとき、走行路が上り勾配である場合には、補正係数Kが「1」を下回って設定されるため、最終補正制限値D2bとして、補正制限値D2aよりも小さな「D2b1」が設定される。また、上り勾配においては、車重Wvが増加すると補正係数Kが小さく設定されるため、最終補正制限値D2bとして、「D2b1」よりも小さな「D2b1a」が設定される。さらに、上り勾配においては、車重Wvが減少すると補正係数Kが大きく設定されるため、最終補正制限値D2bとして、「D2b1」よりも大きな「D2b1b」が設定される。
【0031】
一方、走行路が下り勾配である場合には、補正係数Kが「1」を上回って設定されるため、最終補正制限値D2bとして、補正制限値D2aよりも大きな「D2b2」が設定される。また、下り勾配においては、車重Wvが増加すると補正係数Kが大きく設定されるため、最終補正制限値D2bとして、「D2b2」よりも大きな「D2b2a」が設定される。さらに、下り勾配においては、車重Wvが減少すると補正係数Kが小さく設定されるため、最終補正制限値D2bとして、「D2b2」よりも小さな「D2b2b」が設定される。
【0032】
・(回生トルクの制限値設定)
メインコントローラ30のトルク制限値変換部54は、コースト走行時に使用される回生トルクの制限値として、基準制限値D1に基づきトルク制限値Td1を算出し、最終補正制限値D2bに基づきトルク制限値Td2を算出する。例えば、トルク制限値変換部54は、基準制限値D1に車速Vおよび車重Wvを乗算することで仕事率に変換し、この仕事率を走行用モータ13の回転速度Nmで除算することでトルク制限値Td1に変換する。同様に、トルク制限値変換部54は、最終補正制限値D2bに車速Vおよび車重Wvを乗算することで仕事率に変換し、この仕事率を走行用モータ13の回転速度Nmで除算することでトルク制限値Td2に変換する。
【0033】
つまり、通常走行でのコースト走行時には、走行用モータ13の回生トルクをトルク制限値Td1によって制限することにより、基準制限値D1を超えないように車両減速度が制限される。また、スポーツ走行でのコースト走行時には、走行用モータ13の回生トルクをトルク制限値Td2によって制限することにより、最終補正制限値D2bを超えないように車両減速度が制限される。
【0034】
[ドライバビリティ向上制御:フローチャート]
以下、ドライバビリティ向上制御について説明する。なお、ドライバビリティ向上制御とは、コースト走行時のドライバビリティを向上させる観点から、走行状況に応じてコースト走行時の車両減速度を低下させる制御である。図13はドライバビリティ向上制御の実行手順の一例を示すフローチャートである。
【0035】
図13に示すように、ステップS20では、基本条件フラグFx1が「1」に設定されているか否かが判定される。ステップS20において、基本条件フラグFx1が「1」であると判定された場合、つまりドライバビリティ向上制御の基本条件が成立していると判定された場合には、ステップS21に進み、スポーツ走行フラグFx2が「1」に設定されているか否かが判定される。ステップS21において、スポーツ走行フラグFx2が「1」であると判定された場合、つまり運転強度の高いスポーツ走行が行われていると判定された場合には、ステップS22に進み、アクセルペダル33の踏み込みが解除されるか否かが判定される。
【0036】
ステップS22において、アクセル開度Acpが所定の閾値を下回ることにより、アクセルペダル33の踏み込みが解除されたと判定された場合には、ステップS23に進み、車両減速度が最終補正制限値D2bを超えないように、走行用モータ13の回生制御が実行される。つまり、走行用モータ13の回生トルクが、前述したトルク制限値Td2を超えないように制限される。続くステップS24では、アクセルペダル33が踏み込まれるか否かが判定される。ステップS24において、アクセル開度Acpが所定の閾値を上回ることにより、アクセルペダル33が踏み込まれたと判定された場合には、ステップS25に進み、アクセル開度Acpに応じた目標モータトルクTmに基づき走行用モータ13が制御される。
【0037】
また、ステップS20において、基本条件フラグFx1が「0」に設定されていると判定された場合、つまりドライバビリティ向上制御の基本条件が不成立であると判定された場合には、ステップS26に進み、アクセルペダル33の踏み込みが解除されるか否かが判定される。また、ステップS21において、スポーツ走行フラグFx2が「0」に設定されていると判定された場合、つまり運転強度の低い通常走行であると判定された場合には、ステップS26に進み、アクセルペダル33の踏み込みが解除されるか否かが判定される。
【0038】
このように、ドライバビリティ向上制御の基本条件が成立していない場合や、運転強度の低い通常走行であると判定された場合には、ステップS26に進む。そして、ステップS26において、アクセルペダル33の踏み込みが解除されたと判定された場合には、ステップS27に進み、車両減速度が基準制限値D1を超えないように、走行用モータ13の回生制御が実行される。つまり、走行用モータ13の回生トルクが、前述したトルク制限値Td1を超えないように制御される。続くステップS28において、アクセルペダル33が踏み込まれたと判定された場合には、ステップS25に進み、アクセル開度Acpに応じた目標モータトルクTmに基づき走行用モータ13が制御される。
【0039】
[ドライバビリティ向上制御:タイミングチャート]
続いて、ドライバビリティ向上制御をタイミングチャートに沿って説明する。図14はドライバビリティ向上制御の実行状況の一例を示すタイミングチャートである。図14に示すように、アクセルペダル33が踏み込まれる車両走行時には、アクセル開度Acpおよび車速Vに基づいて、最終補正制限値D2bを算出するための制限値減少量αが設定される。そして、時刻t1で示すように、アクセルペダル33の踏み込みが解除されると(符号a1)、走行用モータ13を回生状態に制御するコースト走行が開始される。
【0040】
ここで、時刻t1においては、基本条件フラグFx1およびスポーツ走行フラグFx2が「1」に設定されている。つまり、走行状況が運転強度の高いスポーツ走行であることから、制限値減少量αとして「X1」が設定され(符号b1)、最終補正制限値D2bとして「X2」が設定される(符号c1)。そして、設定された最終補正制限値X2に基づいて、コースト走行におけるモータ回生制御が実行される。この最終補正制限値X2とは、アクセル操作が解除されたタイミングでのアクセル開度Acpおよび車速Vに基づき算出される最終補正制限値D2bである。これにより、スポーツ走行においては、コースト走行時の車両減速度を小さくすることができる。つまり、運転強度の高いスポーツ走行に合わせて車両減速度を小さくすることができ、車両11のドライバビリティを高めることができる。
【0041】
また、図14に時刻taで示すように、アクセルペダル33の踏み込みが解除されると(符号a2)、走行用モータ13を回生状態に制御するコースト走行が開始される。ここで、時刻taにおいては、スポーツ走行フラグFx2が「0」に設定されている。つまり、走行状況が運転強度の低い通常走行であることから、車両減速度を制限するための制限値として基準制限値D1が選択される(符号c2)。そして、最終補正制限値D2bよりも大きな基準制限値D1に基づいて、コースト走行におけるモータ回生制御が実行される。これにより、通常走行においては、コースト走行時の車両減速度を大きくすることができる。つまり、運転強度の低い通常走行に合わせて車両減速度を大きくすることができ、車両11のドライバビリティを高めることができる。
【0042】
[ドライバビリティ向上制御:実施例1,2]
ドライバビリティ向上制御の実施例1,2をタイミングチャートに沿って説明する。図15は実施例1,2の実行状況を示すタイミングチャートである。図15には、実線を用いてスポーツ走行が行われる実施例1が示されており、一点鎖線を用いて通常走行が行われる実施例2が示されている。なお、基本条件フラグFx1およびアクセル開度Acpについては、実施例1,2で互いに共通となっている。
【0043】
図15実線で示すように、実施例1においては、スポーツ走行フラグFx2が「」に設定されており、走行状況がスポーツ走行であると判定される。このため、車両減速度を制限するための制限値として最終補正制限値D2bが設定され、最終補正制限値D2bに基づきトルク制限値Tdが設定される。そして、コースト走行時には、トルク制限値Tdを超えないように回生側のモータトルクである回生トルクが制限され、最終補正制限値D2bを超えないように車両減速度が制限される。
【0044】
図15一点鎖線で示すように、実施例2においては、スポーツ走行フラグFx2が「」に設定されており、走行状況が通常走行であると判定される。このため、車両減速度を制限するための制限値として基準制限値D1が設定され、基準制限値D1に基づきトルク制限値Tdが設定される。そして、コースト走行時には、トルク制限値Tdを超えないように回生トルクが制限され、基準制限値D1を超えないように車両減速度が制限される。
【0045】
図15に示すように、スポーツ走行においては、車両減速度を制限するための制限値として、基準制限値D1よりも小さな最終補正制限値D2bが設定される。そして、スポーツ走行においては、回生トルクを制限するための制限値として、トルク制限値Td1よりも小さなトルク制限値Td2が設定される。これにより、スポーツ走行においては、通常走行よりもコースト走行時の回生トルクを小さくすることができ、通常走行よりもコースト走行時の車両減速度を小さくすることができる。
【0046】
換言すれば、スポーツ走行中にアクセル操作が解除された場合には、最終補正制限値D2bに基づき走行用モータ13の回生トルクが制限され、通常走行中にアクセル操作が解除された場合には、基準制限値D1に基づき走行用モータ13の回生トルクが制限される。つまり、スポーツ走行中にアクセル操作が解除された場合には、通常走行中にアクセル操作が解除された場合よりも、走行用モータ13の回生トルクを小さくすることができる。これにより、運転強度の高いスポーツ走行に合わせて車両減速度を小さくすることができ、車両11のドライバビリティを高めることができる。
【0047】
[ドライバビリティ向上制御:実施例3,4]
ドライバビリティ向上制御の実施例3,4をタイミングチャートに沿って説明する。図16は実施例3,4の実行状況を示すタイミングチャートである。図16には、実線を用いてアクセル開度Acpの小さなスポーツ走行が行われる実施例3が示されており、一点鎖線を用いてアクセル開度Acpの大きなスポーツ走行が行われる実施例4が示されている。なお、基本条件フラグFx1およびスポーツ走行フラグFx2については、実施例3,4で互いに共通となっている。
【0048】
図16に実線で示すように、実施例3においては、アクセル開度Acpの小さなスポーツ走行であるため、車両減速度を制限する制限値として最終補正制限値D2baが設定され、最終補正制限値D2baに基づきトルク制限値Td2aが設定される。そして、コースト走行時には、トルク制限値Td2aを超えないように回生トルクが制限され、最終補正制限値D2baを超えないように車両減速度が制限される。
【0049】
図16に一点鎖線で示すように、実施例4においては、アクセル開度Acpの大きなスポーツ走行であるため、車両減速度を制限する制限値として最終補正制限値D2bbが設定され、最終補正制限値D2bbに基づきトルク制限値Td2bが設定される。そして、コースト走行時には、トルク制限値Td2bを超えないように回生トルクが制限され、最終補正制限値D2bbを超えないように車両減速度が制限される。
【0050】
図16に示すように、アクセル開度Acpの大きなスポーツ走行においては、アクセル開度Acpの小さなスポーツ走行に比べて、最終補正制限値D2bbが小さく設定されるとともに、トルク制限値Td2bが小さく設定される。このように、アクセル開度Acpの大きなスポーツ走行においては、運転強度の高まりに合わせて車両減速度を小さくすることができ、車両11のドライバビリティを高めることができる。
【0051】
[ドライバビリティ向上制御:実施例5,6]
ドライバビリティ向上制御の実施例5,6をタイミングチャートに沿って説明する。図17は実施例5,6の実行状況を示すタイミングチャートである。図17には、実線を用いて車速Vの高いスポーツ走行が行われる実施例5が示されており、一点鎖線を用いて車速Vの低いスポーツ走行が行われる実施例6が示されている。なお、基本条件フラグFx1、スポーツ走行フラグFx2およびアクセル開度Acpについては、実施例5,6で互いに共通となっている。
【0052】
図17に実線で示すように、実施例5においては、車速Vの高いスポーツ走行であるため、車両減速度を制限する制限値として最終補正制限値D2bcが設定され、最終補正制限値D2bcに基づきトルク制限値Td2cが設定される。そして、コースト走行時には、トルク制限値Td2cを超えないように回生トルクが制限され、最終補正制限値D2bcを超えないように車両減速度が制限される。
【0053】
図17に一点鎖線で示すように、実施例6においては、車速Vの低いスポーツ走行であるため、車両減速度を制限する制限値として最終補正制限値D2bdが設定され、最終補正制限値D2bdに基づきトルク制限値Td2dが設定される。そして、コースト走行時には、トルク制限値Td2dを超えないように回生トルクが制限され、最終補正制限値D2bdを超えないように車両減速度が制限される。
【0054】
図17に示すように、車速Vの高いスポーツ走行においては、車速Vの低いスポーツ走行に比べて、最終補正制限値D2bcが小さく設定されるとともに、トルク制限値Td2cが小さく設定される。このように、車速Vの高いスポーツ走行においては、運転強度の高まりに合わせて車両減速度を小さくすることができ、車両11のドライバビリティを高めることができる。
【0055】
[ドライバビリティ向上制御:実施例7,8,9]
ドライバビリティ向上制御の実施例7,8,9をタイミングチャートに沿って説明する。図18は実施例7,8,9の実行状況を示すタイミングチャートである。図18には、実線を用いて上り坂でのスポーツ走行が行われる実施例7が示されており、一点鎖線を用いて平坦路でのスポーツ走行が行われる実施例8が示されており、破線を用いて下り坂でのスポーツ走行が行われる実施例9が示されている。なお、基本条件フラグFx1、スポーツ走行フラグFx2およびアクセル開度Acpについては、実施例7~9で互いに共通となっている。
【0056】
図18に実線で示すように、実施例7においては、上り坂でのスポーツ走行であるため、車両減速度を制限する制限値として最終補正制限値D2b1が設定され、最終補正制限値D2b1に基づきトルク制限値Td21が設定される。そして、コースト走行時には、トルク制限値Td21を超えないように回生トルクが制限され、最終補正制限値D2b1を超えないように車両減速度が制限される。
【0057】
図18に一点鎖線で示すように、実施例8においては、平坦路でのスポーツ走行であるため、車両減速度を制限する制限値として最終補正制限値D2bが設定され、最終補正制限値D2bに基づきトルク制限値Td2が設定される。そして、コースト走行時には、トルク制限値Td2を超えないように回生トルクが制限され、最終補正制限値D2bを超えないように車両減速度が制限される。
【0058】
図18に破線で示すように、実施例9においては、下り坂でのスポーツ走行であるため、車両減速度を制限する制限値として最終補正制限値D2b2が設定され、最終補正制限値D2b2に基づきトルク制限値Td22が設定される。そして、コースト走行時には、トルク制限値Td22を超えないように回生トルクが制限され、最終補正制限値D2b2を超えないように車両減速度が制限される。
【0059】
図18に示すように、上り坂でのスポーツ走行においては、平坦路でのスポーツ走行に比べて、最終補正制限値D2b1が小さく設定されるとともに、トルク制限値Td21が小さく設定される。このように、上り坂でのスポーツ走行においては、重力によって車両11が減速することから、車両減速度を小さくすることで車両11の過度な減速を抑制することができる。
【0060】
これに対し、下り坂でのスポーツ走行においては、平坦路でのスポーツ走行に比べて、最終補正制限値D2b2が大きく設定されるとともに、トルク制限値Td22が大きく設定される。このように、下り坂でのスポーツ走行においては、重力によって車両11が加速することから、車両減速度を大きくすることで車両11の過度な加速を抑制することができる。
【0061】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。前述の説明では、車両用制御装置10が適用される車両11として、動力源として走行用モータ13のみを備えた電気自動車を例示しているが、これに限られることはなく、動力源として走行用モータ13およびエンジンを備えたハイブリッド車両であっても良い。また、前述の説明では、メインコントローラ30に、目標トルク設定部50、基本条件判定部51、走行状況判定部(走行判定部)52、減速度制限値設定部(制限値設定部)53およびトルク制限値変換部54を設け、モータコントローラ31をモータ制御部として機能させているが、これに限られることはない。例えば、1つのコントローラに、目標トルク設定部50、基本条件判定部51、走行状況判定部52、減速度制限値設定部53、トルク制限値変換部54およびモータ制御部を設けても良い。
【0062】
前述の説明では、補正制限値D2aに補正係数Kを乗算することで最終補正制限値D2bを算出し、この最終補正制限値D2bを第2制限値として用いているがこれに限られることはない。例えば、基準制限値D1から制限値減少量αを減算することで補正制限値D2aを算出し、この補正制限値D2aを第2制限値として用いても良い。また、前述の説明では、コースト走行時に使用される回生モードとして、2つの回生モード(弱回生モード,強回生モード)が設定されているが、これに限られることはない。例えば、コースト走行時に使用される回生モードとして、1つの回生モードを備えた車両の車両用制御装置であっても本発明を適用することが可能である。
【0063】
前述の説明では、ドライバビリティ向上制御の基本条件の1つとして、バッテリ20のSOCが閾値saを下回るか否かを判定しているが、これに限られることはない。例えば、SOCやバッテリ温度に基づきバッテリ20の充電許容電力を算出し、この充電許容電力が所定の閾値を上回る場合に、ドライバビリティ向上制御の基本条件の1つが成立していると判定しても良い。また、例えば、バッテリ温度が所定の閾値を下回る場合に、ドライバビリティ向上制御の基本条件の1つが成立していると判定しても良い。また、前述の説明では、ドライバビリティ向上制御の基本条件の1つとして、車速が閾値vaを下回るか否かを判定しているが、これに限られることはない。また、前述の説明では、ドライバビリティ向上制御の基本条件の1つとして、回生モードが強回生モードであることを判定しているが、これに限られることはない。
【符号の説明】
【0064】
10 車両用制御装置
12 車輪
13 走行用モータ
31 モータコントローラ(モータ制御部)
52 走行状況判定部(走行判定部)
53 減速度制限値設定部(制限値設定部)
D1 基準制限値(第1制限値)
D2b 最終補正制限値(第2制限値)
V 車速
Acp アクセル開度(アクセル操作量)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18