(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-25
(45)【発行日】2024-10-03
(54)【発明の名称】導電性フィルムの製造方法、及び、コロナ放電処理済み導電性フィルム
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20240926BHJP
C08J 7/00 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
C08J5/18 CES
C08J7/00 303
(21)【出願番号】P 2021025007
(22)【出願日】2021-02-19
【審査請求日】2023-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【氏名又は名称】立花 顕治
(72)【発明者】
【氏名】木村 圭作
(72)【発明者】
【氏名】山中 宗一郎
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-086290(JP,A)
【文献】特開平09-255803(JP,A)
【文献】特開2010-153307(JP,A)
【文献】特開2000-159915(JP,A)
【文献】特開2002-018276(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00-7/18
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
H01B 1/00-1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン系高分子と導電性金属フィラーとを含む樹脂組成物によって構成される導電性フィルムの製造方法であって、
前記樹脂組成物を用いて導電性フィルムを生成するステップと、
前記導電性フィルムにコロナ放電処理を施すことによって、前記導電性フィルムの体積抵抗率を低下させるステップとを含
み、
前記コロナ放電処理は、前記導電性フィルムの一方の面に接触した状態のローラ状電極を回転させて前記導電性フィルムを搬送しつつ、前記導電性フィルムの他方の面に非接触な状態で対向する放電用電極と前記ローラ状電極との間でコロナ放電を生じさせることによって行なわれ、
前記コロナ放電処理においては、以下の式(1)で定義される放電量D(W・min/m
2
)が、65W・min/m
2
よりも大きく、200W・min/m
2
よりも小さく、
放電量D=P/(L×V)・・・(1)
前記P(W)は、前記放電用電極による放電電力を示し、
前記L(m)は、前記導電性フィルムの幅方向における前記放電用電極の長さを示し、
前記V(m/min)は、前記導電性フィルムの搬送速度を示す、導電性フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記放電量Dが、100W・min/m
2よりも大きく、170W・min/m
2よりも小さい、請求項
1に記載の導電性フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記導電性フィルムにおいては、いずれの面にも絶縁層が形成されていない、請求項1から請求項1
または2のいずれか1項に記載の導電性フィルムの製造方法。
【請求項4】
ポリプロピレン系高分子と導電性金属フィラーとを含む樹脂組成物によって構成される導電性フィルムであって、
前記導電性フィルムの表面における水の接触角は1
25度以下であり、
前記導電性フィルムの体積抵抗率は1200Ω・cm以下である、コロナ放電処理済み導電性フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性フィルムの製造方法、及び、コロナ放電処理済み導電性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2014-91248号公報(特許文献1)は、導電性フィルムの製造方法を開示する。この導電性フィルムは、熱可塑性樹脂と導電性フィラーとを含む樹脂組成物を用いることによって製造される。この製造方法においては、Tダイから押し出された樹脂組成物をローラで後方に搬送することによって、導電性フィルムが製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、ポリプロピレン系高分子と導電性金属フィラーとを含む樹脂組成物によって構成される導電性フィルムにおいては、導電性フィルムの体積抵抗率を低下させることが求められている。しかしながら、上記特許文献1においては、体積抵抗率を低下させる技術が開示されていない。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであって、その目的は、体積抵抗率を低下させることが可能な導電性フィルムの製造方法等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある局面に従う導電性フィルムの製造方法は、ポリプロピレン系高分子と導電性金属フィラーとを含む樹脂組成物によって構成される導電性フィルムの製造方法である。この製造方法は、樹脂組成物を用いて導電性フィルムを生成するステップと、導電性フィルムにコロナ放電処理を施すことによって、導電性フィルムの体積抵抗率を低下させるステップとを含む。
【0007】
本発明者(ら)は、ポリプロピレン系高分子と導電性金属フィラーとを含む樹脂組成物によって構成される導電性フィルムにコロナ放電処理を施すことによって、体積抵抗率が低下することを見出した。この導電性フィルムの製造方法によれば、コロナ放電処理を通じて導電性フィルムの体積抵抗率が低下するため、体積抵抗率が比較的低い導電性フィルムを製造することができる。
【0008】
上記導電性フィルムの製造方法において、コロナ放電処理は、導電性フィルムの一方の面に接触した状態のローラ状電極を回転させて導電性フィルムを搬送しつつ、導電性フィルムの他方の面に非接触な状態で対向する放電用電極とローラ状電極との間でコロナ放電を生じさせることによって行なわれてもよい。
【0009】
上記導電性フィルムの製造方法におけるコロナ放電処理においては、以下の式(1)で定義される放電量D(W・min/m2)が、65W・min/m2よりも大きく、200W・min/m2よりも小さくてもよい。
放電量D=P/(L×V)・・・(1)
P(W)は放電用電極による放電電力を示し、L(m)は導電性フィルムの幅方向における放電用電極の長さを示し、V(m/min)は導電性フィルムの搬送速度を示す。
【0010】
上記導電性フィルムの製造方法において、上記放電量Dが、100W・min/m2よりも大きく、170W・min/m2よりも小さくてもよい。
【0011】
上記導電性フィルムの製造方法においては、導電性フィルムのいずれの面にも絶縁層が形成されていなくてもよい。
【0012】
本発明の他の局面に従うコロナ処理済み導電性フィルムは、ポリプロピレン系高分子と導電性金属フィラーとを含む樹脂組成物によって構成される。導電性フィルムの表面における水の接触角は110度以下であり、導電性フィルムの体積抵抗率は1200Ω・cm以下である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、体積抵抗率を低下させることが可能な導電性フィルムの製造方法等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】導電性フィルムの製造装置を模式的に示す図である。
【
図2】上方から見た放電用電極を模式的に示す図である。
【
図3】導電性フィルムの製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一側面に係る実施の形態(以下、「本実施の形態」とも称する。)について、図面を用いて詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。また、以下で説明する本実施の形態は、あらゆる点において本発明の例示にすぎない。本実施の形態は、本発明の範囲内において、種々の改良や変更が可能である。すなわち、本発明の実施にあたっては、実施の形態に応じて具体的構成を適宜採用することができる。
【0016】
[1.導電性フィルムの製造装置]
図1は、本実施の形態に従う導電性フィルムの製造装置10を模式的に示す図である。
図1に示されるように、製造装置10は、Tダイ100と、キャストロール200と、タッチロール300と、ローラ状電極700と、放電用電極400と、交流電源500と、巻取りロール600とを含んでいる。
【0017】
Tダイ100は、樹脂組成物を溶融押し出しするように構成されている。樹脂組成物は、ポリプロピレン系高分子と、導電性金属フィラーとを含んでいる。製造装置10においては、該樹脂組成物に基づいて、導電性フィルムC2が製造される。導電性フィルムC2は、例えば、複写機やプリンタ等の帯電フィルムや除電フィルム、その他電気・電子機器や部品用の各種機能性フィルムとして用いられる。
【0018】
導電性金属フィラーとしては、白金、金、銀、銅、ニッケル、チタン及びこれらの混合物が挙げられる。すなわち、樹脂組成物に含まれる導電性金属フィラーは、白金、金、銀、銅、ニッケル及びチタンが含まれる群から選択される少なくとも1種類の金属を含む。なお、これらの中では、ニッケル粒子が導電性金属フィラーとしてより好ましい。
【0019】
キャストロール200は、Tダイ100によって押し出された樹脂組成物を冷却し導電性フィルムC1を生成すると共に、導電性フィルムC1を下流に搬送するように構成されている。タッチロール300は、Tダイ100によって押し出された樹脂組成物をキャストロール200側に押圧して導電性フィルムC1を生成すると共に、導電性フィルムC1を下流に搬送するように構成されている。すなわち、樹脂組成物は、キャストロール200とタッチロール300とによって挟まれている。
【0020】
ローラ状電極700は、製造装置10において、キャストロール200の下流に位置している。ローラ状電極700は、導電性フィルムC1の一方の面に接触している。放電用電極400は、導電性フィルムC1の他方の面に非接触な状態で対向している。ローラ状電極700と放電用電極400とは、導電性フィルムC1を介して対向している。
【0021】
交流電源500は、高周波の高電圧を放電用電極400とローラ状電極700との間に印加するように構成されている。交流電源500によって電圧が印加されることによって、放電用電極400とローラ状電極700との間においてはコロナ放電が生じる。導電性フィルムC1にコロナ放電処理が施されることによって、導電性フィルム(コロナ放電処理済み導電性フィルム)C2が生成される。
【0022】
図2は、上方から見た放電用電極400を模式的に示す図である。
図2に示されるように、放電用電極400の長さL1は、導電性フィルムC1,C2の幅方向の長さと略同一である。これにより、導電性フィルムC1の全体に万遍なくコロナ放電処理が施される。
【0023】
製造装置10において導電性フィルムC1に施されるコロナ放電処理においては、以下の式(1)で定義される放電量D(W・min/m2)が、65W・min/m2よりも大きく、200W・min/m2よりも小さいことが好ましい。なお、放電量Dは、100W・min/m2よりも大きく、170W・min/m2よりも小さいことがより好ましい。また、放電量Dが大きくなるほど、導電性フィルムC1が溶融する可能性が高くなる。
【0024】
放電量D=P/(L×V)・・・(1)
ここで、P(W)は放電用電極400による放電電力を示し、L(m)は導電性フィルムC1,C2の幅方向における放電用電極400の長さを示し、V(m/min)は製造装置10における導電性フィルムC1,C2の搬送速度を示す。なお、放電量D1によるコロナ放電処理が2回施されることは、放電量D1×2によるコロナ放電処理が1回施されることと等価とみなせる。また、放電量D2によるコロナ放電処理と放電量D3によるコロナ放電処理とが施されることは、放電量D2+D3によるコロナ放電処理が1回施されることと等価とみなせる。
【0025】
再び
図1を参照して、巻取りロール600は、ローラ状電極700の下流に位置している。巻取りロール600は、コロナ放電処理が施されることによって製造された導電性フィルムC2を巻き取るように構成されている。巻取りロール600は、導電性フィルムC2を所定速度で巻き取るように構成されている。
【0026】
[2.導電性フィルムの製造方法]
図3は、導電性フィルムC2の製造方法を示すフローチャートである。このフローチャートに示される処理は、製造装置10によって行なわれる。
【0027】
図3を参照して、製造装置10は、導電性フィルムC1を生成する(ステップS100)。導電性フィルムC1の生成は、例えば、Tダイ100によって溶融押し出しされた樹脂組成物をキャストロール200及びタッチロール300で挟むことによって行なわれる。
【0028】
製造装置10は、生成された導電性フィルムC1にコロナ放電処理を施す(ステップS110)。コロナ放電処理は、放電用電極400とローラ状電極700との間でコロナ放電を生じさせることによって行なわれる。これにより、導電性フィルムC2が製造される。
【0029】
このように、製造装置10においては、導電性フィルムC1にコロナ放電処理が施される。導電性フィルムC1にコロナ放電処理が施される理由について次に説明する。
【0030】
ポリプロピレン系高分子と導電性金属フィラーとを含む樹脂組成物によって構成される導電性フィルムにおいては、導電性フィルムの体積抵抗率を低下させることが求められている。本発明者(ら)は、ポリプロピレン系高分子と導電性金属フィラーとを含む樹脂組成物によって構成される導電性フィルムC1にコロナ放電処理を施すことによって、導電性フィルムの体積抵抗率が低下することを見出した。本実施の形態に従う導電性フィルムの製造方法によれば、コロナ放電処理を通じて導電性フィルムC1の体積抵抗率が低下するため、体積抵抗率が比較的低い導電性フィルムC2を製造することができる。
【0031】
本実施の形態に従う導電性フィルムの製造方法によって製造された導電性フィルムC2の表面における水の接触角は110度以下であり、体積抵抗率は1200Ω・cm以下である。
【0032】
[3.特徴]
以上のように、本実施の形態に従う導電性フィルムの製造方法においては、導電性フィルムC1にコロナ放電処理が施される。したがって、この導電性フィルムの製造方法によれば、コロナ放電処理を通じて導電性フィルムC1の体積抵抗率が低下するため、体積抵抗率が比較的低い導電性フィルムC2を製造することができる。なお、本実施の形態においては導電性フィルムC1にコロナ放電処理が施されたが、他の放電処理(例えば、火花放電、アーク放電、グロー放電)が施されることによって導電性フィルムC1の体積抵抗率が低下するのであれば、導電性フィルムC1に他の放電処理が施されてもよい。
【0033】
[4.実施例等]
<4-1.実施例及び比較例>
図1に示される製造装置10を用いることによって、実施例1-10及び比較例1-3の導電性フィルムを製造した。以下、実施例1-10及び比較例1-3の各導電性フィルムについて説明する。
【0034】
実施例1-10及び比較例1-3の各導電性フィルムについて、以下の表1にまとめる。
【表1】
実施例1の導電性フィルムの厚みは75μmであった。この導電性フィルムの製造に用いられた樹脂組成物は、ポリプロピレン(PP)と、ニッケル(Ni)とを含んでいた。ニッケルの質量%濃度は66wt%であった。製造装置10における導電性フィルムの搬送速度は16m/minであった。放電用電極による放電電力Pは1000Wであった。放電電極の電極長Lは0.62mであった。上述の式(1)で定義される放電量Dは101W・min/m
2であった。
【0035】
実施例2の導電性フィルムの厚みは50μmであった。この導電性フィルムの製造に用いられた樹脂組成物は、ポリプロピレン(PP)と、ニッケル(Ni)とを含んでいた。ニッケルの質量%濃度は66wt%であった。製造装置10における導電性フィルムの搬送速度は16m/minであった。放電用電極による放電電力Pは1000Wであった。放電電極の電極長Lは0.62mであった。上述の式(1)で定義される放電量Dは101W・min/m2であった。
【0036】
実施例3の導電性フィルムの厚みは50μmであった。この導電性フィルムの製造に用いられた樹脂組成物は、ポリプロピレン(PP)と、ニッケル(Ni)とを含んでいた。ニッケルの質量%濃度は66wt%であった。製造装置10における導電性フィルムの搬送速度は12m/minであった。放電用電極による放電電力Pは1000Wであった。放電電極の電極長Lは0.62mであった。上述の式(1)で定義される放電量Dは134W・min/m2であった。
【0037】
実施例4の導電性フィルムの厚みは75μmであった。この導電性フィルムの製造に用いられた樹脂組成物は、ポリプロピレン(PP)と、ニッケル(Ni)とを含んでいた。ニッケルの質量%濃度は63wt%であった。製造装置10における導電性フィルムの搬送速度は18m/minであった。放電用電極による放電電力Pは1000Wであった。放電電極の電極長Lは0.62mであった。上述の式(1)で定義される放電量Dは90W・min/m2であった。
【0038】
実施例5の導電性フィルムの厚みは75μmであった。この導電性フィルムの製造に用いられた樹脂組成物は、ポリプロピレン(PP)と、ニッケル(Ni)とを含んでいた。ニッケルの質量%濃度は66wt%であった。製造装置10における導電性フィルムの搬送速度は8m/minであった。放電用電極による放電電力Pは500Wであった。放電電極の電極長Lは0.62mであった。上述の式(1)で定義される放電量Dは101W・min/m2であった。
【0039】
実施例6の導電性フィルムの厚みは75μmであった。この導電性フィルムの製造に用いられた樹脂組成物は、ポリプロピレン(PP)と、ニッケル(Ni)とを含んでいた。ニッケルの質量%濃度は66wt%であった。製造装置10における導電性フィルムの搬送速度は16m/minであった。放電用電極による放電電力Pは1000Wであった。放電電極の電極長Lは0.62mであった。上述の式(1)で定義される放電量Dは101W・min/m2であった。この導電性フィルムにおいては、ローラ状電極と接触する面にポリエチレンテレフタレート(PET)の層が形成されていた。このPET層の厚みは50μmであった。
【0040】
実施例7の導電性フィルムの厚みは75μmであった。この導電性フィルムの製造に用いられた樹脂組成物は、ポリプロピレン(PP)と、ニッケル(Ni)とを含んでいた。ニッケルの質量%濃度は66wt%であった。製造装置10における導電性フィルムの搬送速度は16m/minであった。放電用電極による放電電力Pは1000Wであった。放電電極の電極長Lは0.62mであった。上述の式(1)で定義される放電量Dは101W・min/m2であった。この導電性フィルムにおいては、両面にポリエチレンテレフタレート(PET)の層が形成されていた。各PET層の厚みは50μmであった。
【0041】
実施例8の導電性フィルムの厚みは150μmであった。この導電性フィルムの製造に用いられた樹脂組成物は、ポリプロピレン(PP)と、ニッケル(Ni)とを含んでいた。ニッケルの質量%濃度は73wt%であった。製造装置10における導電性フィルムの搬送速度は12m/minであった。放電用電極による放電電力Pは500Wであった。放電電極の電極長Lは0.62mであった。上述の式(1)で定義される放電量Dは67W・min/m2であった。
【0042】
実施例9の導電性フィルムの厚みは150μmであった。この導電性フィルムの製造に用いられた樹脂組成物は、ポリプロピレン(PP)と、ニッケル(Ni)とを含んでいた。ニッケルの質量%濃度は73wt%であった。製造装置10における導電性フィルムの搬送速度は12m/minであった。放電用電極による放電電力Pは750Wであった。放電電極の電極長Lは0.62mであった。上述の式(1)で定義される放電量Dは101W・min/m2であった。
【0043】
実施例10の導電性フィルムの厚みは150μmであった。この導電性フィルムの製造に用いられた樹脂組成物は、ポリプロピレン(PP)と、ニッケル(Ni)とを含んでいた。ニッケルの質量%濃度は73wt%であった。製造装置10における導電性フィルムの搬送速度は12m/minであった。放電用電極による放電電力Pは1250Wであった。放電電極の電極長Lは0.62mであった。上述の式(1)で定義される放電量Dは168W・min/m2であった。
【0044】
比較例1の導電性フィルムの厚みは50μmであった。この導電性フィルムの製造に用いられた樹脂組成物は、ポリプロピレン(PP)と、カーボンブラック(CB)とを含んでいた。カーボンブラックの質量%濃度は25wt%であった。製造装置10における導電性フィルムの搬送速度は16m/minであった。放電用電極による放電電力Pは1000Wであった。放電電極の電極長Lは0.62mであった。上述の式(1)で定義される放電量Dは101W・min/m2であった。
【0045】
比較例2の導電性フィルムの厚みは75μmであった。この導電性フィルムの製造に用いられた樹脂組成物は、ポリプロピレン(PP)と、カーボンブラック(CB)とを含んでいた。カーボンブラックの質量%濃度は25wt%であった。製造装置10における導電性フィルムの搬送速度は16m/minであった。放電用電極による放電電力Pは1000Wであった。放電電極の電極長Lは0.62mであった。上述の式(1)で定義される放電量Dは101W・min/m2であった。
【0046】
比較例3の導電性フィルムの厚みは50μmであった。この導電性フィルムの製造に用いられた樹脂組成物は、ポリプロピレン(PP)と、カーボンブラック(CB)とを含んでいた。カーボンブラックの質量%濃度は28wt%であった。製造装置10における導電性フィルムの搬送速度は16m/minであった。放電用電極による放電電力Pは1000Wであった。放電電極の電極長Lは0.62mであった。上述の式(1)で定義される放電量Dは101W・min/m2であった。
【0047】
<4-2.体積抵抗率の測定方法>
コロナ放電処理の有無で各導電性フィルムの体積抵抗率がどのように変化するかを測定した。各導電性フィルムに関して、コロナ放電処理前のサンプルと、コロナ放電処理後のサンプルとを準備し、各サンプルの体積抵抗率を測定した。
【0048】
各導電性フィルムに関する体積抵抗率の測定方法は以下の通りである。各導電性フィルムから7cm角サンプルを裁断して取り出し、電気抵抗測定器[IMC-0240型 井元製作所(株)製]及び抵抗計[RM3548 HIOKI製]を用いて導電性フィルムの体積抵抗率を測定した。電気抵抗測定器に2.16kgの荷重をかけた状態で導電性フィルムの抵抗値を測定し、荷重をかけてから60秒後の値をその導電性フィルムの抵抗値とした。下記式(2)に示すように、抵抗測定時の治具の接触表面の面積(3.14cm2)を抵抗値に乗算した値をフィルム厚みで割った値を体積抵抗率(Ω・cm)とした。
体積抵抗率(Ω・cm)=抵抗値(Ω)×3.14(cm2)÷厚み(cm)・・・(2)
【0049】
<4-3.水の接触角の測定方法>
コロナ放電処理の有無で各導電性フィルムの表面における水の接触角がどのように変化するかを測定した。各導電性フィルムに関して、コロナ放電処理前のサンプルと、コロナ放電処理後のサンプルとを準備し、各サンプルに関し水の接触角を測定した。接触角の測定は、JIS R 3257に規定される静滴法、θ/2法に準拠して、いわゆる接触角計を用いることによって行なわれた。
【0050】
<4-4.測定結果>
各導電性フィルムの測定結果に関し、以下の表2にまとめる。
【表2】
実施例1-10の各々においてはコロナ放電処理を通じて体積抵抗率が低下した一方、比較例1-3の各々においてはコロナ放電処理を通じて体積抵抗率が上昇した。また、実施例及び比較例のほとんどにおいて、表面における水の接触角の大きさは低下した。
【符号の説明】
【0051】
10 製造装置、100 Tダイ、200 キャストロール、300 タッチロール、400 放電用電極、500 交流電源、600 巻取りロール、700 ローラ状電極、C1,C2 導電性フィルム。