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7561056極異方性磁石、極異方性磁石を用いた回転子、回転機及び極異方性磁石の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-25
(45)【発行日】2024-10-03
(54)【発明の名称】極異方性磁石、極異方性磁石を用いた回転子、回転機及び極異方性磁石の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/276 20220101AFI20240926BHJP
   H01F 7/02 20060101ALI20240926BHJP
   H01F 41/02 20060101ALI20240926BHJP
   H02K 15/03 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
H02K1/276
H01F7/02 C
H01F7/02 E
H01F41/02 G
H02K15/03 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021026007
(22)【出願日】2021-02-22
(65)【公開番号】P2021141801
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-07-04
(31)【優先権主張番号】P 2020033529
(32)【優先日】2020-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003713
【氏名又は名称】大同特殊鋼株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】595181210
【氏名又は名称】株式会社ダイドー電子
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100160864
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 政治
(72)【発明者】
【氏名】溝口 徹彦
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 亮祐
(72)【発明者】
【氏名】藪見 崇生
【審査官】池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】特許第3997427(JP,B2)
【文献】特開昭60-246614(JP,A)
【文献】特開2020-005452(JP,A)
【文献】特許第6180507(JP,B2)
【文献】特開2015-153790(JP,A)
【文献】特開2009-022096(JP,A)
【文献】特開2006-217740(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/27
H02K 15/03
H01F 7/02
H01F 41/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径が1.0~5.0μmであり、潤滑剤を1.0質量%以下含むネオジム磁石用粉末を、3.4~4.0g/cm3の充填密度で擬円柱形のモールドキャビティに充填し、粉末充填済みモールドを得る充填工程と、
前記粉末充填済みモールドを配向装置へ装填し、充填された前記ネオジム磁石用粉末に圧力を加えることなく1.0~5.0Tの配向磁界を印加することで前記ネオジム磁石用粉末を配向し、配向済みモールドを得る配向工程と、
前記配向済みモールドを焼結炉へ装入してモールドごと焼結し、焼結体を得る焼結工程と、を備え、
前記モールドキャビティは、その形状が、前記焼結体が円筒形状または円柱形状となるように設計され、その断面形状が、該モールドキャビティ長軸の長さをb、短軸の長さをaとした場合、これらの比(b/a)が1.25~1.37であり、
前記焼結工程において、焼結の際の磁化容易軸方向の収縮量とそれに直交する方向の収縮量の(焼結の際の磁化容易軸方向の収縮量/それに直交する方向の収縮量)が1.25~1.37であり、
前記円筒形状又は円柱形状の周方向の磁極位置における表面磁束密度が450mT以上であり、
前記円筒形状又は円柱形状の軸方向の漏洩磁束量の大きさのバラツキが同軸状の上下を通じた漏洩磁束量の平均値に対してプラスマイナス5%以下である円筒形状または円柱形状の極異方性磁石の製造方法。
【請求項2】
前記配向工程において、極数が自然数Nの倍数である2N極の異方性を有するように配向することができる前記配向装置を使用することを特徴とする、請求項1に記載の極異方性磁石の製造方法。
【請求項3】
前記配向工程が、
前記粉末充填済みモールドを配向装置へ装填し、充填された前記ネオジム磁石用粉末に圧力を加えることなく、配向方向に垂直な方向へ印加した後に、前記配向方向へ1.0~5.0Tの配向磁界を印加することで前記ネオジム磁石用粉末を配向して前記配向済みモールドを得る工程である、
請求項1又は2に記載の極異方性磁石の製造方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の方法で製造した極異方性磁石の表面に重希土類金属(R)または重希土類金属を含むR系合金(ただし、RはDy、Tb、Hoから選択される少なくとも1種の元素)を接触させ、熱処理を行い、磁石内にR元素を拡散させることを特徴とする極異方性磁石の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は極異方性磁石、極異方性磁石を用いた回転子、回転機及び極異方性磁石の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータや発電機などの回転機に用いられる回転子に極異方性磁石が小型化、軽量化を目的として検討されている。しかし、所望の形状、配向、コスト低減が難しく、現実的な極異方性磁石がほとんど実現できていない。
極異方性磁石の製造に用いる磁場中成形装置として、特許文献1には、磁化方向が磁極位置では法線方向で、隣接する磁極の中間位置では接線方向であるとともに、前記磁極位置とそれに隣接する前記中間位置との間を等角度ピッチの要素に分割した時、隣接する要素の磁化方向がほぼ一定の角度差を有する極異方性リング磁石を製造するのに用いる磁場中成形装置であって、断面円形状の空隙を有する成形型と、リング状のキャビティを形成するために前記成形型の断面円形状の空隙の中心に配置した円柱状のコアロッドと、前記成形型の内面に開口する複数の空隙部と、各空隙部内に配置された複数のコイルとを有し、前記キャビティに沿って複数のコイルが配列しており、各空隙部内で前記キャビティに沿った複数のコイルがなす中心角θ1と、隣接する空隙部内のコイルがなす中心角θ2との比が0.8~1.2であることを特徴とする磁場中成形装置が記載されている。そして、このような磁場中成形装置によれば、表面磁束密度分布の正弦波整合率が安定して高く、モータに組み込まれた時にコギングトルクを実質的に発生させない極異方性リング磁石を製造できると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3997427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のリング状磁石を製造するための磁場中成形装置を用いた製造方法では、コアロッドが必要となるためにコスト高になり、また、着磁器が発生する磁界方向と磁石粉末の配向方向にずれを生じ、結果として十分な極異方性磁石の表面磁束密度を得られないという問題が生じ得る。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みて、以下の技術的課題を解決すべくなされたものである。
本発明の第1の課題は、従来に比べ低コストとしつつ、より大きな表面磁束密度を有する円筒形状または円柱形状の極異方性磁石を提供することである。
また、本発明の第2の課題は、大きな表面磁束密度を有する極異方性磁石を適用し、低コストとしつつ、ステータへ大きな磁束を供給することが可能な回転子を提供することである。
本発明の第3の課題は、大きな表面磁束密度を発生する極異方性磁石を適用し、従来に比べより高性能でかつ高速回転可能なモータや発電機などの回転機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は鋭意検討することで、焼結による収縮率が磁化容易軸方向とそれに直交する方向とで大きく異なることを考慮した擬円柱形のモールドキャビティに想到し、ここへ特定量の潤滑剤を添加した特定粒子径のネオジム磁石用粉末を、特定の充填密度となるように充填した後に特定範囲内の配向磁界を印加することで、ネオジム磁石用粉末をその磁化容易軸、すなわち該粉末の主相を構成する立方晶相であるNd2Fe14B相のc軸が磁束流れに沿うように配向させることができ、それをモールドごと焼結することで、表面磁束密度が大きい円筒形状または円柱形状の極異方性磁石を得ることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
本発明は以下の(1)~(14)である。
(1)極数が自然数Nの倍数である2N極である円筒形状または円柱形状の極異方性磁石。
(2)前記円筒形状または円柱形状の周方向の磁極位置における表面磁束密度が450mT以上であることを特徴とする上記(1)記載の極異方性磁石。
(3)前記円筒形状または円柱形状の周方向に漏洩する磁束量が極数に同期した正弦波状に形成され、かつ前記正弦波を1次成分とした場合、該1次成分を除く高調波成分の全体の比率が10%以下であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の極異方性磁石。
(4)前記円筒形状または円柱形状の軸方向の漏洩磁束量の大きさのバラツキが同軸状の上下を通じた漏洩磁束量の平均値に対してプラスマイナス5%以下であることを特徴とする上記(1)~(3)のいずれかに記載の極異方性磁石。
(5)上記(1)~(4)のいずれかに記載の極異方性磁石の外表面が保護管によって覆われてなる、回転子。
(6)前記極異方性磁石の両端面の外側にシャフトを有する、上記(5)に記載の回転子。
(7)20,000rpm以上で回転可能な、上記(5)または(6)に記載の回転子。
(8)上記(5)~(7)のいずれかに記載の回転子と、集中巻または分布巻のステータと、を有する回転機。
(9)移動体に搭載して用いる、上記(8)に記載の回転機。
(10)平均粒子径が1.0~5.0μmであり、潤滑剤を1.0質量%以下含むネオジム磁石用粉末を、3.4~4.0g/cm3の充填密度で擬円柱形のモールドキャビティに充填し、粉末充填済みモールドを得る充填工程と、
前記粉末充填済みモールドを配向装置へ装填し、充填された前記ネオジム磁石用粉末に圧力を加えることなく1.0~5.0Tの配向磁界を印加することで前記ネオジム磁石用粉末を配向し、配向済みモールドを得る配向工程と、
前記配向済みモールドを焼結炉へ装入してモールドごと焼結し、焼結体を得る焼結工程と、
を備える、円筒形状または円柱形状の極異方性磁石の製造方法。
(11)前記モールドキャビティの形状が、前記焼結体が円筒形状または円柱形状となるように設計されたことを特徴とする上記(10)に記載の極異方性磁石の製造方法。
(12)前記配向工程において、極数が自然数Nの倍数である2N極の異方性を有するように配向することができる前記配向装置を使用することを特徴とする、上記(10)または(11)に記載の極異方性磁石の製造方法。
(13)前記配向工程が、
前記粉末充填済みモールドを配向装置へ装填し、充填された前記ネオジム磁石用粉末に圧力を加えることなく、配向方向に垂直な方向へ印加した後に、前記配向方向へ1.0~5.0Tの配向磁界を印加することで前記ネオジム磁石用粉末を配向して前記配向済みモールドを得る工程である、
上記(10)~(12)のいずれかに記載の極異方性磁石の製造方法。
(14)上記(10)~(13)のいずれかに記載の方法で製造した極異方性磁石の表面に重希土類金属(R)または重希土類金属を含むR系合金(ただし、RはDy、Tb、Hoから選択される少なくとも1種の元素)を接触させ、熱処理を行い、磁石内にR元素を拡散させることを特徴とする極異方性磁石の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、表面磁束密度が大きい円筒形状または円柱形状の極異方性磁石を低コストで得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】円柱形状の2極の極異方性磁石を得る場合のモールドの概略斜視図である。
図2】円柱形状の4極の極異方性磁石を得る場合のモールドの概略斜視図である。
図3】円柱形状の4極の極異方性磁石を得る場合の別のモールドの概略斜視図である。
図4】円柱形状の2極の極異方性磁石を得る場合のモールドにネオジム磁石用粉末を充填してなる粉末充填済みモールドを配向装置に装填した状態を示す概略上面図である。
図5】円柱形状の4極の極異方性磁石を得る場合のモールドにネオジム磁石用粉末を充填してなる粉末充填済みモールドを配向装置に装填した状態を示す概略上面図である。
図6】円柱形状の4極の極異方性磁石を得る場合のモールドにネオジム磁石用粉末を充填してなる別の粉末充填済みモールドを配向装置に装填した状態を示す概略上面図である。
図7】本発明の製造方法によって得られた2極の極異方性磁石を示す概略斜視図である。
図8】本発明の製造方法によって得られた4極の極異方性磁石を示す概略斜視図である。
図9】軸方向の漏洩磁束量の大きさのバラツキの測定方法について説明するための図である。
図10】本発明の磁石に2つのシャフトを配置し、さらに保護管によって覆った状態を示す概略断面図である。
図11】モータの概略断面図である。
図12】実施例1および比較例1、2、4における周方向の表面磁束密度の波形を示すグラフである。
図13】実施例1における中心軸方向の磁束量の大きさのバラツキを示すグラフである。
図14】実施例9で得られた磁石を上(軸方向)から見た場合の右上4分の1の部分における、磁石中心点Oと、Oから平行方向にある磁石端部Xと、Oから垂直方向にある磁石端部Yとの位置関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の製造方法について説明する。
本発明は、平均粒子径が1.0~5.0μmであり、潤滑剤を1.0質量%以下含むネオジム磁石用粉末を、3.4~4.0g/cm3の充填密度で擬円柱形のモールドキャビティに充填し、粉末充填済みモールドを得る充填工程と、前記粉末充填済みモールドを配向装置へ装填し、充填された前記ネオジム磁石用粉末に圧力を加えることなく1.0~5.0Tの配向磁界を印加することで前記ネオジム磁石用粉末を配向し、配向済みモールドを得る配向工程と、前記配向済みモールドを焼結炉へ装入してモールドごと焼結し、焼結体を得る焼結工程と、を備える、円筒形状または円柱形状の極異方性磁石の製造方法である。
このような円筒形状または円柱形状の極異方性磁石の製造方法を、以下では「本発明の製造方法」ともいう。
【0011】
<充填工程>
本発明の製造方法における充填工程では、ネオジム磁石用粉末を用意する。
【0012】
ネオジム磁石用粉末は、ネオジム、遷移元素(T)およびホウ素(B)を主成分とする粉末である。
ここで「主成分」とは、合計含有率が90質量%以上であることを意味し、この合計含有率は95質量%以上であることがより好ましい。
また、遷移元素(T)としてはFe、Co、Niなどが含まれることが好ましい。特にNd-Fe-B系のネオジム磁石用粉末であることが好ましい。
【0013】
ネオジム磁石用粉末の平均粒子径は1.0~5.0μmであり、2.5~3.5μmであることが好ましい。
ネオジム磁石用粉末は、粒界相成分であるNdリッチ相と主相であるNd2Fe14B相の単結晶粒子とから構成されることが好ましい。主相が単結晶であればその粒子が有する磁化容易軸は1つであるため、その粒子は発生磁束方向に配向しやすくなり、結果として得られる磁石の磁束密度がより高くなるからである。平均粒子径が1.0~5.0μmであれば、ほぼ全てが単結晶粒子であると考えられる。ここで、平均粒子径は、レーザー式粉末粒度分布測定装置(例えば株式会社日本レーザー社製、HELOS&LODOS)により測定した粒度分布の中央値(D50)とした。
【0014】
ネオジム磁石用粉末の調製方法は特に限定されない。例えば、溶解した母合金を回転ロール上に噴射し、急冷することにより微細な結晶組織を持つ薄帯を得た後、この薄帯を平均粒子径1.0~5.0μmに粉砕することで、ネオジム磁石用粉末を得る方法が挙げられる。
【0015】
このようなネオジム磁石用粉末は、潤滑剤を1.0質量%以下の含有率で含む。ネオジム磁石用粉末が含む潤滑剤の含有率は0.01質量%以上であることが好ましく、0.05~1.0質量%であることがより好ましい。
【0016】
潤滑剤としては、カプリル酸メチル、ラウリル酸メチル、ステアリン酸亜鉛などを用いることができる。
【0017】
上記のような潤滑剤を前記ネオジム磁石用粉末へ添加し、十分に混合した後、これを擬円柱形のモールドキャビティに充填する。
【0018】
ここでネオジム磁石用粉末をモールドキャビティに充填する際の充填密度は3.4~4.0g/cm3とする。この充填密度は3.5~3.9g/cm3とすることが好ましい。
【0019】
本発明の製造方法では、充填工程においてモールドキャビティにネオジム磁石用粉末を特定の充填密度となるように充填してネオジム磁石用粉末の成形体を得た後、それを配向し、焼結することで円筒形状または円柱形状の極異方性磁石を得るが、充填工程において円筒形状または円柱形状のネオジム磁石用粉末の成形体を成形すると、これを配向し、焼結して得られる極異方性磁石の形状は、円筒形状または円柱形状とはならない。
これは前記成形体を焼結した場合、磁化容易軸方向とそれに直交する方向との収縮率が大きく異なるためである。
そこで、本発明者は、本発明の製造方法によって得られる極異方性磁石の形状が円筒形状または円柱形状となるためのネオジム磁石用粉末の成形体の形状、すなわち、モールドキャビティの形状について、以下のように鋭意検討を行った。
【0020】
初めに、本発明者は、平均粒子径が1.0~5.0μmであり、潤滑剤を1.0質量%以下含むネオジム磁石用粉末を、3.4~4.0g/cm3の充填密度で円柱形状のモールドキャビティに充填した後、ネオジム磁石用粉末が充填されているモールドを本発明の製造方法における配向工程および焼結工程に供し、極異方性磁石を得た。
その結果、得られた極異方性磁石の形状は、円柱形状ではなく、角に丸みを帯びた正方形に近い形状の2つの端面を有する角柱に類似したものであった。
これより、前記ネオジム磁石用粉末の成形体を焼結した場合、磁化容易軸方向に対して、それに直交する方向は、収縮し難いことが原因と考えられた。
【0021】
そこで、本発明者は実験を繰り返し、焼結の際の磁化容易軸方向の収縮量と、それに直交する方向の収縮量との関係について検討した。
ここで、焼結することによる収縮量は、磁石粉末の組成、粒子径、潤滑剤の量および種類、充填密度など、様々な要因に影響を受ける。そこで、本発明者は鋭意検討し、平均粒子径が1.0~5.0μmであり、潤滑剤を1.0質量%以下含むネオジム磁石用粉末を3.4~4.0g/cm3の充填密度で充填してなる成形体を本発明の製造方法における配向工程および焼結工程に供する場合、焼結の際の磁化容易軸方向の収縮量(b)は、それに直交する方向の収縮量(a)に対して大きく、その比(b/a)は1.25~1.37、好ましくは1.28~1.34、より好ましくは1.30~1.32、さらに好ましくは1.31程度であることを見出した。
なお、上記の通り、焼結することによる収縮量はさまざま要因によって変わるため、この比(b/a)は、得られる極異方性磁石の形状の端面が真円となるように、何回かの予備実験を行って求めるべきである。ただし、この比(b/a)の概ねの範囲は、本発明の製造方法の場合、上記の通りになることを本発明者は見出した。
【0022】
次に、上記の比(b/a)の測定結果の知見に基づき、本発明者はモールドキャビティの形状について検討した。
なお、モールドキャビティは、ネオジム磁石用粉末を収容するモールドの内面によって構成される空間部分である。
【0023】
図1は、円柱形状の2極の極異方性磁石を得る場合に用いるモールド10を示している。モールド10は、2つの端面12、14と、側面16と、内面18とを有する。内面18が構成する部分がモールドキャビティ19に相当し、ここへネオジム磁石用粉末を充填する。モールドキャビティ19の断面および端面は、図1に示すように楕円形である。
図1に示すように、2つの端面12、14におけるモールドキャビティ19の長軸の長さをb、短軸の長さをaとし、これらの比(b/a)が1.25~1.37(好ましくは1.31程度)となるようにする。
なお、円柱形状ではなく円筒形状の極異方性磁石を製造する場合には、例えば、図1に示す形状のモールドキャビティの中心(長さbを測定する方向と長さaを測定する方向との交点)に細長状の円柱、楕円柱、角柱等をあらかじめ設けておいたり、コアロッドを配置したりすることにより実施できる。
【0024】
図2は、円柱形状の4極の極異方性磁石を得る場合に用いるモールド20を示している。モールド20は、2つの端面22、24と、側面26と、内面28とを有する。内面28が構成する部分がモールドキャビティ29であり、ここへネオジム磁石用粉末を充填する。端面22、24においてモールドキャビティ29の断面および端面は、図2に示すように2つの楕円を直交させた形状を備える。
図2に示すように、モールドキャビティ29は2つの端面22、24の各々において、外周上における最も距離が離れた2点間の長さをbとし、長さbを測定する2方向のいずれに対しても45度をなす方向の長さaとし、これらの比(b/a)が1.25~1.37(好ましくは1.31程度)となるようにする。
なお、円柱形状ではなく円筒形状の極異方性磁石を製造する場合には、例えば、図2に示す形状のモールドキャビティの中心(長さbを測定する方向と長さaを測定する方向との交点)に細長状の円柱、楕円柱、角柱等をあらかじめ設けておいたり、コアロッドを配置したりすることにより実施できる。
【0025】
図3は、円柱形状の4極の極異方性磁石を得る場合に用いるモールド30を示している。
図3に示したモールド30は、図2に示したモールド20とやや形状が異なるが、いずれも円柱形状の4極の極異方性磁石を得るために用いるモールドである。
モールド30は、2つの端面32、34と、側面36と、内面38とを有する。内面38が構成する部分がモールドキャビティ39であり、ここへネオジム磁石用粉末を充填する。端面32、34においてモールドキャビティ39の断面および端面は、図3に示すように、角に丸みを帯びた正方形の形状を備える。
図2に示したモールドキャビティ29と図3に示したモールドキャビティ39とを比較すると、図2に示したモールドキャビティ29は、図3に示したモールドキャビティ39よりも内側に凹んだ(または突出した)部位が存在していることが分かる。この部位の形状と、後述する配向工程において印加する磁界の強さとを制御することによって、意図する極異方の配向を得ることができる。
図3に示すように、モールドキャビティ39は2つの端面32、34の各々において、外周上における最も距離が離れた2点間の長さをbとし、長さbを測定する2方向のいずれに対しても45度をなす方向の長さaとし、これらの比(b/a)が1.25~1.37(好ましくは1.31程度)となるようにする。
なお、円柱形状ではなく円筒形状の極異方性磁石を製造する場合には、例えば、図3に示す形状のモールドキャビティの中心(長さbを測定する方向と長さaを測定する方向との交点)に細長状の円柱、楕円柱、角柱等をあらかじめ設けておいたり、コアロッドを配置したりすることにより実施できる。
【0026】
なお、図1では2極の極異方性磁石を得る場合のモールド、図2および図3では4極の極異方性磁石を得る場合のモールドを例示したが、6極以上の極異方性磁石を得る場合のモールドについても同様の考え方によって設計することができる。
【0027】
図1図2および図3に例示されるようなモールドキャビティの形状を、本発明の製造方法では擬円柱形と定義する。すなわち、円柱状ではないが円柱状に近い形状であって、本発明の製造方法によって得られる極異方性磁石の形状が円筒形状または円柱形状となるモールドキャビティの形状を擬円柱形と定義する。
【0028】
なお、モールドは非磁性体からなるものであることが好ましい。非磁性体として、例えばグラファイトカーボンが例示できる。
【0029】
なお、図1図2および図3におけるモールド10、モールド20およびモールド30の外径は円筒状であるが、この形状は特に限定されない。
【0030】
本発明の製造方法では、上記のように、後述する焼結工程によって得られる焼結体が円筒形状または円柱形状となるようにモールドキャビティの形状が設計されることが好ましい。焼結体を加工せずにそのまま回転子として使用できるからである。
【0031】
本発明の製造方法における充填工程では、このような擬円柱形のモールドキャビティに前記ネオジム磁石用粉末を上記の充填密度となるように充填する。
このようにして得られた前記ネオジム磁石用粉末が充填されたモールドを、粉末充填済みモールドとする。
また、前記ネオジム磁石用粉末を充填した後の図1に示したモールド10を、粉末充填済みモールド40とする。また、前記ネオジム磁石用粉末を充填した後の図2に示したモールド20を、粉末充填済みモールド50とする。さらに、前記ネオジム磁石用粉末を充填した後の図3に示したモールド30を、粉末充填済みモールド60とする。
【0032】
<配向工程>
本発明の製造方法における配向工程では、粉末充填済みモールドを配向装置へ装填し、配向磁界を印加する。
配向工程では、極数が自然数Nの倍数である2N極の異方性を有するように配向することができる配向装置を用いることができる。
【0033】
例えば、本発明の製造方法によって2極の極異方性磁石を得る場合、図4に示すように粉末充填済みモールド40を配向装置に装填する。
図4は、図1に例示したモールド10におけるモールドキャビティ19へ前記ネオジム磁石用粉末を充填して得られる粉末充填済みモールド40を配向装置に装填した状態を上側から見た図(概略図)である。
図4に示すように、粉末充填済みモールド40を、その短軸方向から挟み込む位置に、2つのコイル42が配置されている。コイル42によって、図4に極性および点線で示す磁場を発生することができる。
図4に示した状態において、充填された前記ネオジム磁石用粉末に圧力を加えることなく1.0~5.0Tの配向磁界を印加することで、前記ネオジム磁石用粉末の磁化容易軸が図4に示した点線に平行となるように配向することができる。つまり、点線が配向方向である。このようにして、配向方向が、円周方向における磁極位置では法線方向で、隣接する磁極の中間位置では接線方向で、これらの中間位置では曲線を描くような極異方性磁石を得ることができる。
【0034】
また、例えば、本発明の製造方法によって4極の極異方性磁石を得る場合、図5に示すように粉末充填済みモールド50を配向装置に装填する。
図5は、図2に例示したモールド20におけるモールドキャビティ29へ前記ネオジム磁石用粉末を充填して得られる粉末充填済みモールド50を配向装置に装填した状態を上側から見た図(概略図)である。
図5に示すように、粉末充填済みモールド50をその2つの短径方向(長さaを測定する方向)の各々から挟み込む位置に、合計で4つのコイル52が配置されている。コイル52によって図5に極性および点線で示す磁場を発生することができる。
図5に示した状態において、充填された前記ネオジム磁石用粉末に圧力を加えることなく1.0~5.0Tの配向磁界を印加することで、前記ネオジム磁石用粉末の磁化容易軸が図5に示した点線に平行となるように配向することができる。つまり、点線が配向方向である。
【0035】
また、例えば、本発明の製造方法によって4極の極異方性磁石を得る場合、図6に示すように粉末充填済みモールド60を配向装置に装填する。
図6は、図3に例示したモールド30におけるモールドキャビティ39へ前記ネオジム磁石用粉末を充填して得られる粉末充填済みモールド60を配向装置に装填した状態を上側から見た図(概略図)である。
図6に示すように、粉末充填済みモールド60を図5の場合と同様の位置に、合計で4つのコイル62が配置されている。コイル62によって図6に極性および点線で示す磁場を発生することができる。
図6に示した状態において、充填された前記ネオジム磁石用粉末に圧力を加えることなく1.0~5.0Tの配向磁界を印加することで、前記ネオジム磁石用粉末の磁化容易軸が図6に示した点線に平行となるように配向することができる。つまり、点線が配向方向である。
【0036】
なお、図4では本発明の製造方法によって2極の極異方性磁石を得る場合の配向装置、図5および図6では本発明の製造方法によって4極の極異方性磁石を得る場合の配向装置を例示したが、6極以上の極異方性磁石を得る場合の配向装置についても同様の考え方によって設計することができる。
【0037】
配向工程において前記ネオジム磁石用粉末に印加する配向磁界は1.0~5.0Tであるが、この配向磁界は1.5~3.0Tとすることが好ましく、2.0~2.5T程度とすることがより好ましい。
【0038】
配向工程では、上記のようにして配向方向に配向するが、その前に配向方向に対して垂直方向に磁界を印加した後に、上記のように配向方向に配向磁界を印加して配向することが好ましい。
すなわち、配向工程が、前記粉末充填済みモールドを配向装置へ装填し、充填された前記ネオジム磁石用粉末に圧力を加えることなく、配向方向に垂直な方向へ印加した後に、前記配向方向へ1.0~5.0Tの配向磁界を印加することで前記ネオジム磁石用粉末を配向して前記配向済みモールドを得る工程であることが好ましい。
この場合、よりひび割れが少ない極異方性磁石を本発明の製造方法によって得ることができることを、本発明者は見出した。
【0039】
ここで配向方向に垂直な方向とは、通常、モールドキャビティにおける深さ方向と一致する。また、得られる円筒形状または円柱形状の極異方性磁石における中心軸と平行な方向と通常は一致する。
【0040】
また、配向方向に垂直な方向へ印加する磁界は、前述の配向方向へ印加する磁界(配向磁界)と同程度であってよい。すなわち、配向方向に垂直な方向へ印加する磁界は1.0~5.0Tであってよく、1.5~3.0Tとすることが好ましく、2.0~2.5T程度とすることがより好ましい。
【0041】
このような配向工程によって、配向された前記ネオジム磁石用粉末がモールドキャビティ内に充填されているモールドを得ることができる。このようなモールドを、配向済みモールドとする。
【0042】
<焼結工程>
本発明の製造方法における焼結工程では、配向工程によって得られた配向済みモールドを焼結炉へ装入して、モールドごと焼結する。
【0043】
焼結方法は特に限定されない。例えば従来公知の焼結炉に前記配向済みモールドを装入して焼結することができる。
焼結は真空中で行うことが好ましい。
【0044】
磁石の成分により焼結温度は最適温度を選択する必要がある。焼結温度は900~1100℃とすることが好ましい。
【0045】
焼結時間は1~20時間とすることが好ましく、2~15時間とすることがより好ましく、4~10時間程度とすることがさらに好ましい。
【0046】
このように前記配向済みモールドを焼結炉へ装入してモールドごと焼結することで、焼結体を得ることができる。
焼結体は、円筒形状または円柱形状である。
例えば図1に示したモールド10を用い、前述のように、ここへ前記ネオジム磁石用粉末を充填した後、図4に示した配向装置によって配向した後に焼結し、その後、結晶粒の配向方向に沿った磁界を印加することによって、配向方向に着磁された図7に示す円柱形状の2極の極異方性磁石を得ることができる。
また、例えば図2および図3に示したモールド20およびモールド30を用い、前述のように、ここへ前記ネオジム磁石用粉末を充填した後、図5および図6に示した配向装置によって配向した後に焼結し、その後、結晶粒の配向方向に沿った磁界を印加することによって、配向方向に着磁された図8に示す円柱形状の4極の極異方性磁石を得ることができる。
【0047】
得られた極異方性磁石の大きさは特に限定されない。回転機中のロータ形状で要求される形状を製造すればよい。必要に応じて、これら焼結体表面から重希土類を焼結体内部に拡散させる工程を行うことにより、焼結体の保磁力、ひいては磁石としての耐熱性を上昇させることができる。具体的な粒界拡散工程としてはどのような工程でも採用できるが、例えば、特許第6180507号公報に記載の方法を採用すると、磁石内部まで重希土類が効率よく導入され磁石特性を向上させることができる。
【0048】
<周方向の表面磁束密度分布について>
このような本発明の製造方法によって得られる極異方性磁石(以下では「本発明の磁石」ともいう)は、磁化方向が磁路と一致するため、磁石の磁化ポテンシャルを高い効率で、外部に磁束を漏洩できる。よって、回転機、例えばモータ性能に影響するステータ/ロータとのキャップで、発生する磁束密度が高い。また、円周形状または円柱形状の周方向に漏洩する磁束量が極数に同期した正弦波状に形成される。つまり、周方向の表面磁束密度分布が正弦波を構成する。
ここで周方向に漏洩する磁束密度は、磁気測定装置(例えば、日本電磁測器株式会社製、UHS-1DS)を用いて測定する。具体的には、磁気測定装置の磁界センサプローブを本発明の磁石の表面と0.5mm程度の間隔をあけてセットし、中心軸に対して垂直な円周に沿って一周、表面磁束を測定した後、磁界センサプローブを中心軸にそって下方向に1mm下げ、同様に一周、表面磁束密度を測定する。
【0049】
このようにして得られた周方向の表面磁束密度の波形について周波数分析(高速フーリエ変換=FFT(Fast Fourier Transform))することで高調波含有率を求めると、本発明の磁石の場合、10%以下となり得る。
周方向の表面磁束密度の波形について周波数分析では、正弦波を1次波とされ、それ以外の高調波が非正弦波とされる。したがって、高調波含有率が0%の場合、周方向の表面磁束密度は完全正弦波と考えられる。本発明の磁石は、このように、前記円筒形状または円柱形状の周方向に漏洩する磁束量が極数に同期した正弦波状に形成され、かつ前記正弦波を1次成分とした場合、該1次成分を除く高調波成分の全体の比率が10%以下であるものであることが好ましい。
この正弦波の振幅は高ければ高いほどよいが、回転機としての十分な出力特性を得る観点から、450mT以上、より好ましくは600mT以上、さらに好ましくは700mT以上が好ましい。本発明の磁石は、このように、前記円筒形状または円柱形状の周方向の磁極位置における表面磁束密度が450mT以上であるものであることが好ましい。
本発明の磁石における周方向の表面磁束密度の波形を周波数分析(フーリエ変換)して求められる高調波含有率が10%以下(好ましくは5%以下、より好ましくは4%以下、さらに好ましくは3%以下)であると、当該表面磁束密度の波形がおおむね正弦波であるといえるため、周方向に漏洩する磁束が正弦波状に形成されると言ってよい。
【0050】
なお、本発明の磁石の磁束密度の大きさは、正弦波の振幅を意味するものとする。
【0051】
<軸方向の漏洩磁束量の大きさのバラツキについて>
本発明の磁石は、中心軸方向の漏洩磁束量の大きさのバラツキが、円筒形状または円柱形状の同軸上における上下を通じた漏洩磁束量の平均値に対してプラスマイナス10%以下であることが好ましい。
【0052】
このバラツキの測定方法について、図9を用いて説明する。
図9では円柱形状の本発明の磁石を例示しているが、円筒形状の場合であっても同様に考えることができる。
初めに、図9に示すように、本発明の磁石68を軸X(2つの端面の法線方向)に平行方向において10箇所、均等に区切る。そして、各々の箇所において周方向の表面磁束密度を測定する。この場合、前述のように、その波形はおおむね正弦波となる。そして、その正弦波の振幅を、その箇所での磁束密度の大きさとする。
このような操作によって10箇所全ての磁束密度を求め、単純平均値を求める。
そして、その単純平均値に対する、全ての箇所の磁束密度の値の比(百分率)を求める。ここで求められた各々の比が、プラスマイナス5%以下(すなわち、95~105%)であることが好ましく、プラスマイナス3%以下(すなわち、97~103%)であることがより好ましい。
【0053】
<貫通孔等について>
本発明の磁石は、中心軸(例えば図9の軸X)に沿った貫通孔を有してもよい。この場合、回転軸を貫通孔に貫通させることで、本発明の磁石に回転軸を装着することができる。
【0054】
<回転子>
また、本発明の磁石は貫通孔を有さなくてもよい。
この場合、例えば図10に示すように用いてもよい。
図10は、本発明の磁石の両端面の外側に2つのシャフトを配置し、さらに保護管によって覆ってなる回転子を示す断面斜視図である。
図10に示す回転子において本発明の磁石70は、その両端面が2つのシャフト72に接している。
シャフト72はその断面が円形で、その断面直径は本発明の磁石70と同一となるように形成されている。
そして、本発明の磁石70が完全に覆われるように、保護管74によって覆われている。保護管74の内径は、本発明の磁石70およびシャフト72の外径とほぼ同一となるように構成されている。
このような保護管74を有すると、図10に示す回転子が回転した場合、磁石の破損回避など、耐遠心力を備えることができる。そして、図10に示す回転子は、例えば20,000rpm以上での回転が可能となり得る。
【0055】
<モータ>
本発明の磁石の貫通孔に回転軸を取り付けたものや、図10に示した態様の本発明の磁石70を用いて、例えば図11に示すモータを形成することができる。
図11は、図10に例示した本発明の磁石70を回転子として用いたモータ80を示している。図11は、モータ80の回転軸に垂直方向での断面図である。
モータ80は、円筒形のステータ82の内側に、周方向一定の間隔でコイル84を有しており、中心に本発明の磁石70を有する。そして、本発明の磁石70とコイル84との間には、一定のギャップ86が形成されている。
なお、図11に示したモータは集中巻ステータを有しているが、分布巻ステータを採用することもできる。
【0056】
本発明の磁石70は発生する磁束密度が大きいためギャップ86を比較的大きくすることができる。逆に言えば、ギャップ86を大きくしてもコイル84に十分な磁束を発生させることができる。磁石材料の電気導電率は高く、高周波の磁束変化が磁石材料へ印加した場合、大きな渦電流が発生しモータ効率が低下する。この渦電流を抑制するには、磁石を分割し、渦電流経路の相殺による方法が良く取られる。しかし、この場合、磁石加工/磁石組立/ロータへの磁石挿入など、莫大なコスト上昇が発生する。別の方法は、高周波の磁束変化の大きさを減らすことであるが、限られたロータ面積で大きな磁束(従来対比、1.5~3.0倍)を発生する磁石は存在せず、実現することは、困難であった。磁石70が回転子として回転した場合、ステータコイルへ流れる電流は、高調波を含む電圧/電流を制御するインバータで駆動する。この高周波電流が、コイルで高周波磁束変化を起こし、その高周波磁束変化が磁石へ印加され、渦電流が発生する。本発明の場合、渦電流が発生したとしても、ステータからの距離を大きく取れるため、その影響は、極めて軽微となる。仮に、一般的な小型モータのギャップを0.5mmとすると、1.5mmまで広げることが可能となる。これにより高周波磁束の大きさが1/10となると仮定すると、渦電流損は1/100となる。よって、従来は、渦電流が発生することで大きな熱損失等が生じ、エネルギー損失は熱による障害を招いていたため、とくに、高速回転モータは、磁石を使用した設計が、実現していなかった。しかし、本発明の磁石を用いたモータは、従来では実現できなかった同じ出力で、小型/軽量化したモータを高速回転化などで実現することができる。
【0057】
<2極の極異方円柱磁石を用いたモータ>
図7に示したような2極の極異方性磁石は極異方配向をしているため、パラレル配向と比較すると、モータ組込時、誘起電圧の波形が正弦波に近くなる(方形波から正弦波に近づくことで、高調波含有率が30%以上低減)。モータのマグネットトルクはコイルが発生する磁束とギャップで発生する磁束との積に比例する。ここで、インバータ制御では、コイルへの電流は、通常、正弦波で投入するため、磁石発生磁束も正弦波に近いほど、同じ磁石材質とした場合、他配向マグネットと比較して、マグネットトルクが1.2倍から1.8倍程度向上する。
さらに、高速モータへ適用した場合、高速モータでは回転遠心力が問題となる。また、ロータ径が小さいほど、遠心力影響は低減する。まず、遠心力対策として、ロータ外径に、強度部材となる保護管を構成する。さらに、高速モータでは、インバータ駆動を想定すると、高速に応じて、駆動制御周波数が300から5000Hz程度の高速となる。制御周波数の高速化により、ステータからロータへ、トルクに寄与しない高周波の磁束変化が印加され、保護管/ロータへ渦電流が発生する。極異方円柱磁石を用いた場合、上記の理由により、大きなマグネットトルクを発生できる。よって上記より、ロータとステータとの間隔を広く確保することが可能となる。本発明に係る磁石を適用すれば、ロータとステータの間隔を従来の0.5mmから1.5mmまで広げることが可能である。また、ロータとステータの間隔を広くすると、ロータに発生する高周波磁束量が低減し、渦電流を低減する。仮にロータに発生する高周波磁束密度が10分の1に低減すると、渦電流は100分の1程度まで低減することが可能である。結果として、高速回転モータを実現できる。
また、仮に10,000rpmのモータを20,000rpmとし、同等の出力を確保できたとすると、ロータ径は4分の1にできる可能性があり、モータの小型化も可能となる。
【0058】
<4極以上の極異方円柱磁石を用いたモータ>
図8に示したような4極の極異方性磁石または4極以上の極異方性磁石は、ラジアル/パラレル配向の円筒/セグメント磁石ロータと比較して、磁化路長さを長くすることができる。
2極の極異方性磁石の場合と同様、モータ組込時、誘起電圧の波形が、正弦波に近くなる(高調波含有率が下がる)。
2極ロータを4極ロータとした場合、ロータ回転数を半分程度としてもほぼ同等の誘起電圧を発生できる。したがって、回転数を下げても、モータ必要性能を確保できる。
さらに、高速モータは、高速とすることで、モータ出力[発生トルクと回転する積に比例]の向上を目的とする場合が多い。しかし、高速モータでは遠心力により磁石などへ応力が加わり、実現性が問題となる。4極以上の極異方円柱磁石を用いた場合、従来磁石と比較して、マグネットトルク向上/ロータ回転数低減の2手法を適用できる。これにより、ロータに発生する渦電流を低減し、従来にない出力で、高速回転における小型/軽量モータを実現できる。
【0059】
このような本発明の磁石を用いたモータは、車や航空機等の移動体に搭載して用いることができる。
【0060】
航空用途では、100,000rpmを超えるタービンをエネルギー源とした発電機が期待されているが、航空用途では出力/重量比が高いことが重要である。
本発明の磁石は大きな磁束を発生させることができるため、小型化/軽量化/高効率化が実現でき、例えば航空用途の高出力な発電機を形成することもできる。
【0061】
<発電機>
本発明の磁石は、コンプレッサの駆動源、タービンを動力源とする発電機にも適用することができる。
【実施例
【0062】
<実施例1>
表1の組成[1]に示す組成を備え、平均粒子径が3.2μmのネオジム磁石用粉末を用意した。そして、ここへ潤滑剤としてカプリル酸メチルを0.07質量%となるように加え、十分に混合した。その後、潤滑剤が添加されたネオジム磁石用粉末を、3.6g/cm3の充填密度で図2に示したカーボン製の擬円柱形のモールドキャビティに充填し、粉末充填済みモールドを得た。
次に、粉末充填済みモールドを配向装置へ装填し、充填された前記ネオジム磁石用粉末に圧力を加えることなく、図5に示すように2.0Tの配向磁界を印加して、配向済みモールドを得た。
次に、配向済みモールドを焼結炉へ装入して、1000℃で4時間、真空中にてモールドごと焼結し、焼結体を得た。さらに、得られた焼結体について、800℃で30分、520℃で1時間、時効処理を行った。
これに配向方向に沿った磁界を印加して図8に示した円柱形状の4極の極異方性磁石を得た。
そして、得られた極異方性磁石について前述の方法にて表面磁束密度(mT)、高調波成分比率(%)および軸方向の表面磁束密度のバラツキ(%)を測定した。
結果を測定条件等と共に表2に示す。
表2に示すように、表面磁束密度(mT)は高く(450mT以上)、高調波成分比率(%)が低く(10%以下)、軸方向の表面磁束密度のバラツキ(%)も5%以下となり、いずれも良好な性能であることを確認できた。
また、実施例1の場合の周方向の表面磁束密度の波形を図12に示す。
さらに、実施例1の場合の中心軸方向の磁束量の大きさのバラツキを図13に示す。
【0063】
<実施例2>
実施例1では潤滑剤としてカプリル酸メチルをネオジム磁石用粉末へ加えたが、実施例2ではカプリル酸メチルに代わりにラウリン酸メチルを潤滑剤として用い、これをネオジム磁石粉末へ加えた。
また、実施例1では配向済みモールドを焼結炉へ装入して、1000℃で焼結したが、実施例2では1020℃で焼結した。
そして、それ以外は実施例1と同様の操作を行い、得られた極異方性磁石について、実施例1の場合と同様に、表面磁束密度(mT)、高調波成分比率(%)および軸方向の表面磁束密度のバラツキ(%)を測定した。
結果を測定条件等と共に表2に示す。
表2に示すように、表面磁束密度(mT)は高く(450mT以上)、高調波成分比率(%)が低く(10%以下)、軸方向の表面磁束密度のバラツキ(%)も5%以下となり、いずれも良好な性能であることを確認できた。
【0064】
<実施例3>
実施例1では表1に示す組成[1]の組成を有し、平均粒子径が3.2μmのネオジム磁石用粉末を用いたが、実施例3では表1に示す組成[2]の組成を有し、平均粒子径が4.9μmのネオジム磁石用粉末を用いた。
そして、それ以外は実施例1と同様の操作を行い、得られた極異方性磁石について、実施例1の場合と同様に、表面磁束密度(mT)、高調波成分比率(%)および軸方向の表面磁束密度のバラツキ(%)を測定した。
結果を測定条件等と共に表2に示す。
表2に示すように、表面磁束密度(mT)は高く(450mT以上)、高調波成分比率(%)が低く(10%以下)、軸方向の表面磁束密度のバラツキ(%)も5%以下となり、いずれも良好な性能であることを確認できた。
なお、実施例3にて用いたネオジム磁石用粉末はDyを含む。この点が実施例1の場合に得られる極異方性磁石とは異なる性能を有するものになった主要因と推定される。
【0065】
<実施例4>
実施例1では、粉末充填済みモールドを配向装置へ装填して2.0Tの配向磁界を印加したが、実施例4では粉末充填済みモールドを配向装置へ装填して1.0Tの配向磁界を印加した。
そして、それ以外は実施例1と同様の操作を行い、得られた極異方性磁石について、実施例1の場合と同様に、表面磁束密度(mT)、高調波成分比率(%)および軸方向の表面磁束密度のバラツキ(%)を測定した。
結果を測定条件等と共に表2に示す。
表2に示すように、表面磁束密度(mT)は高く(450mT以上)、高調波成分比率(%)が低く(10%以下)、軸方向の表面磁束密度のバラツキ(%)も5%以下となり、いずれも良好な性能であることを確認できた。
なお、実施例4は実施例1の場合とは配向磁界が異なる。この点が実施例1の場合に得られる極異方性磁石とは異なる性能を有するものになった主要因と推定される。
【0066】
<実施例5>
実施例1では、粉末充填済みモールドを配向装置へ装填して2.0Tの配向磁界を印加したが、実施例5では粉末充填済みモールドを配向装置へ装填して3.0Tの配向磁界を印加した。
そして、それ以外は実施例1と同様の操作を行い、得られた極異方性磁石について、実施例1の場合と同様に、表面磁束密度(mT)、高調波成分比率(%)および軸方向の表面磁束密度のバラツキ(%)を測定した。
結果を測定条件等と共に表2に示す。
表2に示すように、表面磁束密度(mT)は高く(450mT以上)、高調波成分比率(%)が低く(10%以下)、軸方向の表面磁束密度のバラツキ(%)も5%以下となり、いずれも良好な性能であることを確認できた。
なお、実施例5は実施例1の場合とは配向磁界が異なる。この点が実施例1の場合に得られる極異方性磁石とは異なる性能を有するものになった主要因と推定される。
【0067】
<実施例6>
実施例1では、図2に示したカーボン製の擬円柱形のモールドキャビティを用い、図5に示すように配向磁界を印加して、図8に示した円柱形状の4極の極異方性磁石を得たが、実施例6では、図1に示したカーボン製の擬円柱形のモールドキャビティを用い、図4に示すように配向磁界を印加して、図7に示した円柱形状の2極の極異方性磁石を得た。
そして、それ以外は実施例1と同様の操作を行い、得られた極異方性磁石について、実施例1の場合と同様に、表面磁束密度(mT)、高調波成分比率(%)および軸方向の表面磁束密度のバラツキ(%)を測定した。
結果を測定条件等と共に表2に示す。
表2に示すように、表面磁束密度(mT)は高く(450mT以上)、高調波成分比率(%)が低く(10%以下)、軸方向の表面磁束密度のバラツキ(%)も5%以下となり、いずれも良好な性能であることを確認できた。
なお、実施例6は実施例1の場合とは極異方性磁石の極数が異なる。
【0068】
<実施例7>
実施例1において得られた極異方性磁石について、さらにGBDを施した。GBDとは、極異方性磁石の表面にTbNiAl合金付着(Tb付着量1wt%/mm2)させた後、Ar雰囲気で900℃、15hrsの熱処理を行うことで磁石内にTb元素を拡散させる処理である。
そして、それ以外は実施例1と同様の操作を行い、得られた極異方性磁石について、実施例1の場合と同様に、表面磁束密度(mT)、高調波成分比率(%)および軸方向の表面磁束密度のバラツキ(%)を測定した。
結果を測定条件等と共に表2に示す。
表2に示すように、表面磁束密度(mT)は高く(450mT以上)、高調波成分比率(%)が低く(10%以下)、軸方向の表面磁束密度のバラツキ(%)も5%以下となり、いずれも良好な性能であることを確認できた。
【0069】
<実施例8>
表1の組成[1]に示す組成を備え、平均粒子径が3.2μmのネオジム磁石用粉末を用意した。そして、ここへ潤滑剤としてカプリル酸メチルを0.07質量%となるように加え、十分に混合した。その後、潤滑剤が添加されたネオジム磁石用粉末を、3.6g/cm3の充填密度で図3に示したカーボン製の擬円柱形のモールドキャビティに充填し、粉末充填済みモールドを得た。
次に、粉末充填モールドを配向装置へ装填し、充填粉末に圧力を加えることなく、図6に示すように2.0Tの配向磁界を印加して、配向済みモールドを得た。
次に、配向済みモールドを焼結炉へ装入して、1000℃で4時間、真空中にてモールドごと焼結し、焼結体を得た。さらに、得られた焼結体について、800℃で30分、520℃で1時間、時効処理を行った。
これに配向方向に沿った磁界を印加して図8に示した円柱形状の4極の極異方性磁石を得た。
なお、図6では、図5に示したように内側に尖った部分が形成されていないが、この部分の形状と印加する磁界の強さを制御することにより、意図する極異方の配向を得ることができる。
そして、得られた極異方性磁石について前述の方法にて表面磁束密度(mT)、高調波成分比率(%)および軸方向の表面磁束密度のバラツキ(%)を測定した。
結果を測定条件等と共に表2に示す。
表2に示すように、表面磁束密度(mT)は高く(450mT以上)、高調波成分比率(%)が低く(10%以下)、軸方向の表面磁束密度のバラツキ(%)も5%以下となり、いずれも良好な性能であることを確認できた。
【0070】
<実施例9>
実施例8では潤滑剤としてカプリル酸メチルをネオジム磁石用粉末へ加えたが、実施例9ではカプリル酸メチルに代わりラウリン酸メチルを潤滑剤として用い、これをネオジム磁石粉末へ加えた。
また、実施例8では配向済みモールドを焼結炉へ装入して、1000℃で焼結したが、実施例9では1020℃で焼結した。
そして、実施例8では、図5に示すように、図5の紙面に対し平行方向に磁界を印加したが、実施例9では、磁石の配向方向に垂直な方向(磁石の軸方向)に2.0Tの磁界を印加して配向した後、磁石の配向方向にも4.8Tの配向磁界を印加した。その結果、前述の実施例8では、磁石表面に数か所若干のひび割れが確認されたが、実施例9では、同様のひび割れが全く確認されなかった。この結果から、磁石の軸方向に磁界を印加することにより、磁石の強度をより強固なもの(外観をきれいなもの)とすることができる。これは、予め磁石の軸方向に磁界を印加することにより粉末密度が増すこと、予め磁場をかけて粉末を磁力が帯びた状態にすることでより配向しやすくなったことが主な要因と考えられる。
【0071】
また、実施例9の場合の磁石表面における各測定点の配向角度および配向度を測定した。図14は、実施例9で得られた磁石を上(軸方向)から見た場合の右上4分の1の部分における、磁石中心点Oと、Oから平行方向にある磁石端部Xと、Oから垂直方向にある磁石端部Yとの位置関係を示す図である。表3は、位置関係(距離及び角度)の実測値と配向角度および配向度を示したものである。
表3のXは磁石中心点からのX方向の距離、Yは磁石中心点からのY方向の距離、Rは、磁石中心点から各測定点までの距離、θは、直線O-Xを0°とした場合の直線O-Xと直線O-各測定点がなす角度を示している。また、表3の配向角度はXRD(X線回析)によって算出した角度を示している。また、表3の配向度はXRDによって測定したものとXRDの結果から換算したBr/Jsの結果を示している。XRDでは、磁石中の結晶の向きが意図した方向に向いているかの程度(結晶学的配向度)を測定している。Br/Jsの結果は、同じ構成からなる磁石について、予備実験を行い、XRDの値を求めておき、XRDとBr/Jsの相関関係(両者の検量線の対比)から算出した。表3に示すように、実施例9は高い割合で図8に示すような配向を示す。具体的には、各測定点において、XRD、Br/Jsの結果は、いずれも80%以上となっている。
【0072】
<比較例1>
実施例1では表1の組成[1]に示す組成を備え、平均粒子径が3.2μmのネオジム磁石用粉末を用いたが、比較例1では同様の組成を備えるが、平均粒子径が0.8μmのネオジム磁石用粉末を用いた。
そして、それ以外は実施例1と同様の操作を行い、得られた極異方性磁石について、実施例1の場合と同様に、表面磁束密度(mT)、高調波成分比率(%)および軸方向の表面磁束密度のバラツキ(%)を測定した。
結果を測定条件等と共に表2に示す。
表2に示すように、表面磁束密度(mT)は悪化(450mT未満)し、高調波成分比率(%)が悪化し(10%超)、軸方向の表面磁束密度のバラツキ(%)も5%超と悪化した。これはネオジム磁石用粉末の粒径が小さいため、表面積が大きくなり充填不良となり、その結果、得られた極異方性磁石の内部に欠陥が生じたためと推定される。
また、比較例1の場合の周方向の表面磁束密度の波形を図12に示す。
【0073】
<比較例2>
実施例1では表1の組成[1]に示す組成を備え、平均粒子径が3.2μmのネオジム磁石用粉末を用いたが、比較例2では同様の組成を備えるが、平均粒子径が8.2μmのネオジム磁石用粉末を用いた。
また、実施例1では潤滑剤としてカプリル酸メチルをネオジム磁石用粉末へ加えたが、比較例2ではカプリル酸メチルに代わりにラウリン酸メチルを潤滑剤として用い、これをネオジム磁石粉末へ加えた。
そして、それ以外は実施例1と同様の操作を行い、得られた極異方性磁石について、実施例1の場合と同様に、表面磁束密度(mT)、高調波成分比率(%)および軸方向の表面磁束密度のバラツキ(%)を測定した。
結果を測定条件等と共に表2に示す。
表2に示すように、表面磁束密度(mT)は悪化(450mT未満)し、高調波成分比率(%)が悪化し(10%超)、軸方向の表面磁束密度のバラツキ(%)も5%超と悪化した。これはネオジム磁石用粉末の粒径が大きいため、非単結晶粒が多く含まれ、その結果、配向が不良となったためと推定される。
また、比較例2の場合の周方向の表面磁束密度の波形を図12に示す。
【0074】
<比較例3>
実施例1では潤滑剤が添加されたネオジム磁石用粉末を3.6g/cm3の充填密度でモールドキャビティに充填したが、比較例3では3.2g/cm3の充填密度でモールドキャビティに充填した。
そして、それ以外は実施例1と同様の操作を行い、得られた極異方性磁石について、実施例1の場合と同様に、表面磁束密度(mT)、高調波成分比率(%)および軸方向の表面磁束密度のバラツキ(%)を測定した。
結果を測定条件等と共に表2に示す。
表2に示すように、表面磁束密度(mT)、高調波成分比率(%)、軸方向の表面磁束密度のバラツキ(%)は、いずれも測定できなかった。これは充填密度が不足していたため、まともな中実円筒形状の作製ができなかった。
【0075】
<比較例4>
実施例1では潤滑剤が添加されたネオジム磁石用粉末を3.6g/cm3の充填密度でモールドキャビティに充填したが、比較例4では4.2g/cm3の充填密度でモールドキャビティに充填した。
そして、それ以外は実施例1と同様の操作を行い、得られた極異方性磁石について、実施例1の場合と同様に、表面磁束密度(mT)、高調波成分比率(%)および軸方向の表面磁束密度のバラツキ(%)を測定した。
結果を測定条件等と共に表2に示す。
表2に示すように、表面磁束密度(mT)は悪化(450mT未満)し、高調波成分比率(%)が悪化し(10%超)、軸方向の表面磁束密度のバラツキ(%)も5%超と悪化した。これは充填密度が高かったため、配向し難くなったことが要因と推定される。
また、比較例4の場合の周方向の表面磁束密度の波形を図12に示す。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
【表3】
【符号の説明】
【0079】
10 モールド
12、14 端面
16 側面
18 内面
19 モールドキャビティ
20 モールド
22、24 端面
26 側面
28 内面
29 モールドキャビティ
30 モールド
32、34 端面
36 側面
38 内面
39 モールドキャビティ
40 粉末充填済みモールド
42 コイル
50 粉末充填済みモールド
52 コイル
60 粉末充填済みモールド
62 コイル
68、70 本発明の磁石
72 シャフト
74 保護管
80 モータ
82 ステータ
84 コイル
86 ギャップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14