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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-25
(45)【発行日】2024-10-03
(54)【発明の名称】水性被覆材
(51)【国際特許分類】
   C09D 163/00 20060101AFI20240926BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20240926BHJP
   C09D 7/20 20180101ALI20240926BHJP
   C09D 133/14 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
C09D163/00
C09D5/02
C09D7/20
C09D133/14
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021029435
(22)【出願日】2021-02-26
(65)【公開番号】P2022130812
(43)【公開日】2022-09-07
【審査請求日】2023-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】599071496
【氏名又は名称】ベック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】三木 菜摘
(72)【発明者】
【氏名】北脇 和智
【審査官】井上 莉子
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-247070(JP,A)
【文献】特開2010-065098(JP,A)
【文献】特開平11-166153(JP,A)
【文献】特開2016-216689(JP,A)
【文献】特開2019-013008(JP,A)
【文献】特開平10-046008(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D
B32B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂エマルション(A)を含む主剤とアミノ基含有樹脂(B)を含む硬化剤を有
する水性被覆材であり、
上記アミノ基含有樹脂(B)は、ポリアミン樹脂を含み、
上記水性被覆材は、アクリル樹脂エマルション(C)、及び沸点が200℃以上であり、20℃における水への溶解度が10g/100gHO以下の有機溶剤(D)を含み、
上記エポキシ樹脂エマルション(A)と上記アクリル樹脂エマルション(C)の混合重量比は、5:95~9.2:9.9(48.2:51.8)であることを特徴とする水性被覆材。
【請求項2】
上記アクリル樹脂エマルション(C)は、エポキシ基含有モノマーを含むモノマー群の
重合体であることを特徴とする請求項1に記載の水性被覆材。
【請求項3】
上記エポキシ樹脂エマルション(A)と、上記アクリル樹脂エマルション(C)の平均粒
子径の比が(A)/(C)>1であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の水性被覆材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な水性被覆材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物、工場、倉庫等の内外装壁面及び床面、あるいは一般歩道、歩道橋、プラットホーム等の屋外床面、さらには橋梁、鉄塔等の鋼構造物に対し、被覆材による塗装を施し、美観性等を付与することが行われている。このような壁面及び床面、あるいは鋼構造物の塗装において、塗膜強度、密着性、防食性等の塗膜物性を考慮し、エポキシ樹脂系被覆材が広く使用されている。
しかし、エポキシ樹脂系被覆材においては、ポリアミンまたはポリアミドなどのアミン系硬化剤を用いて低温または高湿度下で塗装された場合、アミンブラッシング等による密着性の低下や塗膜の白化等の問題が生じる場合がある。
【0003】
また、最近では、環境、安全等を考慮し、水系の被覆材が採用されつつある。例えば、特許文献1には、水性エポキシ樹脂分散液とアミン樹脂等の硬化剤とを含有してなる熱硬化性水性被覆組成物が記載されている。ところが、水系塗料は、溶剤系塗料と比べ、塗膜物性に劣る場合がある。さらには、塗装条件によってはアミンブラッシング等による問題も生じやすい傾向にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-253004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、塗装条件による影響を抑え十分な塗膜性能を確保することができる水性被覆材を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、このような問題に対し鋭意検討した結果、エポキシ樹脂エマルションを含む主剤とアミノ基含有樹脂を含む硬化剤を有する水性被覆材に、アクリル樹脂エマルション及び特定の有機溶剤を含むことを特徴とする水性被覆材を見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は、下記の特徴を有するものである。
1.エポキシ樹脂エマルション(A)を含む主剤とアミノ基含有樹脂(B)を含む硬化剤を有
する水性被覆材であり、
上記アミノ基含有樹脂(B)は、ポリアミン樹脂を含み、
上記水性被覆材は、アクリル樹脂エマルション(C)、及び沸点が200℃以上であり、20℃における水への溶解度が10g/100gHO以下の有機溶剤(D)を含み、
上記エポキシ樹脂エマルション(A)と上記アクリル樹脂エマルション(C)の混合重量比は、5:95~9.2:9.9(48.2:51.8)であることを特徴とする水性被覆材。
2.上記アクリル樹脂エマルション(C)は、エポキシ基含有モノマーを含むモノマー群の
重合体であることを特徴とする1.に記載の水性被覆材。
3.上記エポキシ樹脂エマルション(A)と、上記アクリル樹脂エマルション(C)の平均粒
子径の比が(A)/(C)>1であることを特徴とする1.または2.に記載の水性被覆材。
【発明の効果】
【0008】
本発明の水性被覆材は、塗装条件による密着性の低下や塗膜の白化等を抑制し、十分な塗膜物性を発揮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明はエポキシ樹脂エマルション(A)を含む主剤とアミノ基含有樹脂(B)を含む硬化剤からなる水性被覆材(以下、単に「水性被覆材」ともいう。)に関するものである。
【0010】
本発明のエポキシ樹脂エマルション(A)(以下、単に「(A)成分」ともいう。)は、エポキシ樹脂を水性媒体に分散・乳化させたものである。なお、エポキシ樹脂を水性媒体に分散させる場合には、必要に応じて乳化剤等を用いることができる。なお、水性媒体とは、主に水を含む媒体であり、必要に応じ、例えば、低級アルコール、多価アルコール、エーテル化合物、エステル化合物、アルキレンオキサイド含有化合物等の水溶性溶剤が混合されていてもよい。
【0011】
上記(A)成分のエポキシ樹脂としては、水性媒体に分散しうるものであればよく、固形型エポキシ樹脂及び/または液状型エポキシ樹脂のいずれであってもよい。このようなエポキシ樹脂としては、例えば、分子中にエポキシ基を1個以上、好ましくは2個以上含有する樹脂が使用でき、例えば、芳香族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、エポキシ基を有するポリブタジエン樹脂、エポキシ基を有するポリウレタン樹脂等が挙げられる。本発明では、芳香族エポキシ樹脂が好ましく、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられ、この中でも、特に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂から選ばれる1種以上が好適である。さらに、上記エポキシ樹脂は、必要に応じて分子量を増大させたものや、脂肪酸を反応させることにより得られる脂肪酸変性エポキシ樹脂、あるいはアミノ基含有化合物を付加反応させて得られるアミン付加エポキシ樹脂(アミン変性エポキシ樹脂)を水性化することより得られるもの等であっても良い。これらは1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。なお、固形型エポキシ樹脂とは、常温(23℃)で固形のもの、液状型エポキシ樹脂とは、常温(23℃)で液状のものをいう。
【0012】
本発明では、上記(A)成分の具体例として、固形型エポキシ樹脂(a1)を必須成分として含む態様が挙げられる。このような態様としては、固形型エポキシ樹脂(a1)のみの態様、固形型エポキシ樹脂(a1)及び液状型エポキシ樹脂(a2)を含む態様が挙げられる。これにより、本発明の効果を十分に得ることができる。固形型エポキシ樹脂(a1)と液状型エポキシ樹脂(a2)を混合する場合、その混合比(固形分重量比)は、各エポキシ樹脂のエポキシ当量にもよるが、好ましくは100:0~5:95(より好ましくは100:0~10:90)である。なお、本発明において「α~β」は「α以上β以下」と同義である。
【0013】
(A)成分の調製方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、固形型エポキシ樹脂及び/または液状型エポキシ樹脂と、必要に応じて乳化剤を混合し樹脂溶液を調製した後、水性媒体(必要に応じて乳化剤を含む)と混合することにより乳化する方法等が挙げられる。なお、上記の調製時には、必要に応じて加熱することもできる。本発明において、固形型エポキシ樹脂と液状型エポキシ樹脂を併用する場合、固形型エポキシ樹脂と液状型エポキシ樹脂のそれぞれの水分散体を調整した後、混合して使用することが好ましい。エポキシ樹脂水分散体の樹脂固形分は、特に限定されないが、好ましくは10~80重量%(より好ましくは20~70重量%)である。
【0014】
上記乳化剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤をそれぞれ単独でまたは組み合わせて用いることができる。
アニオン性界面活性剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ステアリルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸アルカリ金属塩;ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等の硫酸エステルアルカリ金属塩等が挙げられる。
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、オキシエチレン・オキシプロピレンブロックコポリマー等が挙げられる。
乳化剤の配合量としては、樹脂固形分に対して好ましくは0.1~15重量%(より好ましくは0.1~10重量%、さらに好ましくは0.5~5重量%)の範囲内である。
【0015】
本発明の(A)成分の平均粒子径は、特に限定されないが、好ましくは100~1000nm(より好ましくは150~900nm、さらに好ましくは200~800nm特に好ましくは300~600nm)である。平均粒子径がこのような範囲内であれば、シール性、耐白華性、耐白化性等において有利な効果を得ることができる。なお、ここに言う平均粒子径は、動的光散乱法により測定される値である。
【0016】
また、本発明の(A)成分は、エポキシ当量xが、好ましくは100~3000(より好ましくは110~2000、さらに好ましくは120~1500)である。なお、ここでいう「エポキシ当量x」は、1グラム当量のエポキシ基を含む樹脂固形分のグラム数[g/eq]であり、エポキシ樹脂の重量平均分子量を1分子当たりのエポキシ基の数で除した値である。
【0017】
なお、上記(A)成分として、エポキシ当量xや平均粒子径等が異なるものを混合して使用することもできる。
【0018】
本発明のアミノ基含有樹脂(B)(以下、単に「(B)成分」ともいう)は、エポキシ樹脂エマルション(A)と反応し塗膜を形成するものである。このような(B)成分としては、例えば、1分子中にアミノ基を2個以上含有するポリアミン樹脂が使用でき、例えば、脂肪族ポリアミン、脂環式ポリアミン、芳香族ポリアミン、複素環状アミン及びこれらポリアミン樹脂のアミノ基を変性してなる変性ポリアミン樹脂等が挙げられる。なお、上記ポリアミン樹脂の変性には、公知の方法が利用でき、例えば、アミノ基のアミド化、アミノ基とカルボニル化合物のマンニッヒ反応、アミノ基とエポキシ基の付加反応、アミノ基とスチレンとの付加反応等が挙げられる。また、(B)成分としては、脂肪族ポリアミド、脂環式ポリアミド、芳香族ポリアミド、脂肪族ポリアミドアミン、脂環式ポリアミドアミン、芳香族ポリアミドアミン等も使用できる。これらは、1種または2種以上組み合わせて使用することができる。
【0019】
本発明では、(B)成分として、例えば、脂肪族ポリアミン、変性脂肪族ポリアミンから選ばれる1種以上を含むことが好ましい。これにより、エポキシ樹脂エマルションを含む主剤と混合した場合、基材、塗膜への付着発現性、密着性が向上する。脂肪族ポリアミンとしては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタミン、ジプロピレンジアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ヘキサメチレンジアミン等の鎖状脂肪族ポリアミン;N-アミノエチルピペラジン、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、メンセンジアミン、イソホロンジアミン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、3,9-ビス(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(スピロアセタールジアミン)、ノルボルナンジアミン、トリシクロデカンジアミン、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン等の環状脂肪族ポリアミン;メタキシレンジアミン等の脂肪芳香族アミン等が挙げられる。本発明では、特にメタキシレンジアミン、メタキシレンジアミンのスチレン付加反応生成物から選ばれる1種以上を含むことが好適である。
【0020】
(B)成分の態様としては、特に限定されないが、水性媒体に溶解可能な水可溶型樹脂、または水性媒体に分散可能な水分散型樹脂等が使用できる。本発明では、(B)成分として、水可溶型樹脂を含むことが好適である。この場合、貯蔵安定性に優れるとともに、主剤と混合した場合には、エポキシ樹脂エマルション(A)との相溶性、反応性が高まり、基材、塗膜への付着発現性、密着性がよりいっそう向上するとともに、耐水性、塗膜外観に優れた塗膜を形成することができる。なお、(B)成分は、無溶剤型(固形分100重量%)であっても、予め(B)成分が水性媒体に溶解又は分散したものであってもよい。(B)成分の固形分は、好ましくは50重量%以上(より好ましくは55重量%以上、さらに好ましくは60重量%以上)である。(B)成分の固形分の上限は100重量%以下である。この範囲を満たす場合、本発明の効果を十分に発揮することができる。なお、水性媒体とは、主に水を含む媒体であり、必要に応じ、例えば、低級アルコール、多価アルコール、エーテル化合物、エステル化合物、アルキレンオキサイド含有化合物等の水溶性溶剤が混合されていてもよい。
【0021】
また、上記(B)成分は、(B)成分の活性水素当量yが、好ましくは10~1000(より好ましくは50~800、さらに好ましくは80~600)である。なお、ここでいう「活性水素当量y」は、1グラム当量の活性水素基を含む樹脂固形分のグラム数[g/eq]であり、アミノ基含有樹脂の重量平均分子量を1分子当たりのアミノ基の水素原子数で除した値である。
【0022】
本発明の水性被覆材は、上記主剤と上記硬化剤を、主剤中の(A)成分のエポキシ当量([X]:固形分換算値)と、硬化剤中の(B)成分の活性水素当量([Y];固形分換算値)の比[X/(Y)]が、が、好ましくは0.1~3(より好ましくは0.0.5~2、さらに好ましくは0.7~1.5)となるように混合することが好ましい。このような場合、水性被覆材の基材、塗膜への付着発現性、密着性が向上する。さらには、水性被覆材の安定性、可使時間を高めることができる。
【0023】
なお、上記X、上記Yは混合時の配合部数から求められるものであり、具体的に、上記[X]は、主剤に含まれる(A)成分の配合量(固形分重量部)を、(A)成分のエポキシ当量xで除した値である。また、上記[Y]は、硬化剤に含まれる(B)成分の配合量(固形分重量部)を、(B)成分の活性水素当量yで除した値である。
【0024】
本発明の水性被覆材は、上記(A)成分、上記(B)成分に加えて、アクリル樹脂エマルション(C)(以下、単に「(C)成分」ともいう。)、及び沸点が200℃以上であり、20℃における水への溶解度が10g/100gHO以下の有機溶剤(D)(以下、単に「(D)成分」ともいう。)を含むことを特徴とする。(C)成分及び(D)成分を併用して含むことにより、上記(A)成分と上記(B)成分の相溶性、反応性等が高まり、優れた成膜性を得ることができる。その結果、緻密な塗膜を形成することができ、塗装条件による影響を効率的に抑制することができ、アミンブラッシング等が生じ難くなる。
【0025】
上記(C)成分、上記(D)成分は、主剤と硬化剤のいずれか一方、またはその両方に混合することができる。本発明では、上記(C)成分及び上記(D)成分を主剤に混合することが好ましい。これにより、上記効果がよりいっそう高まり、アミンブラッシング等が抑制された美観性に優れた塗膜を形成することができる。
【0026】
上記(C)成分は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが樹脂骨格の主成分となるものであり、必要に応じその他のモノマーその他の重合性モノマーを共重合したものである。なお、本発明では、アクリル酸アルキルエステルとメタクリル酸アルキルエステルを合わせて、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと表記している。また、モノマーとは、重合性不飽和二重結合を有する化合物の総称である。
【0027】
本発明では、(C)成分を構成するモノマー群中に疎水性モノマーを含むことが好ましい。疎水性モノマーとしては、例えば、長鎖アルキル(メタ)アクリレート、芳香族基含有モノマー等が挙げられる。
【0028】
長鎖アルキル(メタ)アクリレートとしては、炭素数4以上のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートが使用でき、例えば、n-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種または2種以上で用いることができる。
【0029】
芳香族基含有モノマーとしては、例えば、スチレン、2-メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ビニルナフタレン、クロロスチレン、等のスチレン系モノマー、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の芳香族基含有(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0030】
モノマー群中における上記疎水性モノマーの含有量は、重量比率で、好ましくは10重量%以上、より好ましくは30重量%以上、さらに好ましくは40重量%以上である。上限は特に限定されないが、好ましくは99.5重量%以下である。このような場合、(D)成分との相溶性が高まり、本発明の効果を高めることができる。
【0031】
その他のモノマーの具体例としては、例えば、アミド基含有モノマー、カルボニル基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、水酸基含有モノマー、ハロゲン化ビニリデン系モノマー、アルコキシシリル基含有モノマー、エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、ビニルエーテル、ビニルケトン等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上で使用することができる。
【0032】
本発明では、エポキシ基含有モノマーを含むことが好ましい。エポキシ基含有モノマーとしては、例えばグリシジル(メタ)アクリレート、ジグリシジルフマレート、3,4-エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシビニルシクロヘキサン、アリルグリシジルエーテル、ε-カプロラクトン変性グリシジル(メタ)アクリレート、β-メチルグリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用することができる。
【0033】
本発明では、(C)成分を構成するモノマー中に、エポキシ基含有モノマーを、好ましくは0.5~50重量%(より好ましくは1~30重量%)含むことができる。これにより、アミンブラッシング等による密着性の低下や塗膜の白化等を抑制し、十分な塗膜物性を発揮することができる。
【0034】
その他のモノマーの具体例として、
ニトリル基含有モノマーとしては、例えば(メタ)アクリロニトリル、シアン化ビニリデン、α-シアノエチル(メタ)アクリレート等、
アミド基含有モノマーとしては、例えばマレイン酸アミド、(メタ)アクリルアミド、N-モノアルキル(メタ)アクリルアミド、N、N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド、2-(ジメチルアミノ)エチル(メタクリレート)、N-[3-(ジメチルアミノ)プロピル](メタ)アクリルアミド、ビニルアミド等、
カルボニル基含有モノマーとしては、例えばアクロレイン、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン等、
カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、イソクロトン酸、サリチル酸等、
アミノ基含有モノマーとしては、例えばアミノメチルアクリレート、アミノエチルアクリレート、アミノプロピル(メタ)アクリレート、アミノ-n-ブチル(メタ)アクリレート、ブチルビニルベンジルアミン、ビニルフェニルアミン、p-アミノスチレン、N-メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N-t-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等、
水酸基含有モノマーとしては、例えばヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート等、
ハロゲン化ビニリデン系モノマーとしては、例えばフッ化ビニリデン等、
アルコキシシリル基含有モノマーとしては、例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上で使用することができる。
【0035】
上記(C)成分は、上記モノマーを適宜混合したモノマー群を乳化重合することにより製造することができる。重合方法としては公知の方法を採用すればよく、通常の乳化重合の他、ソープフリー乳化重合、フィード乳化重合、シード乳化重合、多段階乳化重合等を採用することもできる。重合時には、例えば、乳化剤、開始剤、分散剤、重合禁止剤、重合抑制剤、緩衝剤、連鎖移動剤、pH調整剤等を使用することができる。
【0036】
乳化剤としては、乳化重合に使用可能な各種界面活性剤が使用でき、これらは重合性不飽和二重結合を有する反応性タイプ(反応性界面活性剤)であってもよい。乳化剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤をそれぞれ単独でまたは組み合わせて用いることができる。具体的には、例えば上記(A)成分に記載したものの中から適宜選択できる。
【0037】
上記(C)成分のガラス転移温度(以下、単に「Tg」という。)は、上記モノマーの種類、混合比率等を選定することで調整できる。このTgは、最終的な要求性能等を考慮して適宜設定すればよいが、好ましくは-5~80℃(より好ましくは-3~60℃)のTgを有することが好ましい。また、(C)成分としてTgの異なる2種以上を使用することもできる。この場合、トータルTgが上記範囲を満たすことが好ましい。なお、ガラス転移温度は、Foxの計算式により求めることができる。
【0038】
上記(C)成分の平均粒子径は、特に限定されないが、好ましくは300nm以下(より好ましくは10~250nm、さらに好ましくは20~200nm、特に好ましくは30~180nm)である。平均粒子径がこのような範囲内であれば、含浸補強性、シール性、耐白華性、耐白化性等において有利な効果を得ることができる。また、(C)成分は平均粒子径の異なる2種以上を使用することもできる。なお、ここに言う平均粒子径は、動的光散乱法により測定される値である。
【0039】
本発明では、上記(A)成分と、上記(C)成分の平均粒子径の比が(A)/(C)>1(より好ましくは>1.2)であることが好ましい。これにより、形成塗膜の基材付近では(A)成分の濃度が高く、一方、形成塗膜の表面付近では(C)成分の濃度が高くなる傾向となりやすく、その結果、塗装条件による影響を抑制し、十分な塗膜物性を発揮することができる。なお、上記(A)成分と上記(C)成分が平均粒子径の異なる2種以上を含む場合には、(A)成分における平均粒子径の平均値と(C)成分における平均粒子径の平均値が上記条件を満たすことが好ましい。
【0040】
上記(C)成分の混合比量は、上記(A)成分との固形分重量比が(A):(C)=5:95~95:5(より好ましくは10:90~90:10、さらに好ましくは20:80~80:20)であることが好ましい。このような場合、塗装条件による影響を抑制できるとともに、種々の基材及び塗膜に対して優れた密着性を発揮することができる。さらには、耐水性、塗膜外観に優れた塗膜を形成することができる。
【0041】
(D)成分としては、沸点が200℃以上であり、20℃における水への溶解度が10g/100gHO以下の有機溶剤であれば、特に限定されないが、例えば、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル等のエチレングリコールエーテル化合物;ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジブチルエーテル等のジエチレングリコールエーテル化合物;プロピレングリコールフェニルエーテル、ジプロピレングリコール-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコール-tert-ブチルエーテル、ジプロピレングリコール-n-プロピルエーテル、トリプロピレングリコール-n-ブチルエーテル等のプロピレングリコールエーテル化合物;2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジイソブチレート、ベンジルアルコール等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用できる。なお、(D)成分は、沸点が200℃以上であり、その上限は好ましくは350℃以下(より好ましくは300℃以下)である。また、(D)成分の20℃における水への溶解度は10g/100gHO以下であるが、好ましくは8g/100gHO以下であり、その下限は好ましくは0g/100gHO以上(より好ましくは0.1g/100gHO以上)である。
【0042】
本発明では特に、プロピレングリコールフェニルエーテル、ジプロピレングリコール-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコール-tert-ブチルエーテル、ジプロピレングリコール-n-プロピルエーテル、トリプロピレングリコール-n-ブチルエーテル等のプロピレングリコールエーテル化合物から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0043】
(D)成分の混合量は、上記(A)成分(固形分)100重量部に対して、好ましくは1~80重量部(より好ましくは2~60重量部)である。このような範囲の場合、上記効果を十分に発揮することができる。
【0044】
本発明の水性被覆材には、上述の成分の他、主剤及び/または硬化剤に必要に応じ着色顔料、体質顔料、防錆顔料、シランカップリング剤、pH調整剤、可塑剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、消泡剤、レベリング剤、分散剤、沈降防止剤、たれ防止剤、増粘剤(チクソトロピック調整剤)、造膜助剤、艶消し剤、架橋剤、触媒(硬化促進剤)、密着性付与剤、紫外線吸収剤、光安定剤等を、本発明の効果が著しく阻害されない範囲内で混合することができる。本発明の水性被覆材のpHは、好ましくは3~12(より好ましくは4~11)である。なお、本発明では主剤のpHが上記を満たすことが好ましい。
【0045】
上記着色顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、ランプブラック、ボーンブラック、黒鉛、黒色酸化鉄、コバルトブラック、銅マンガン鉄ブラック、べんがら、モリブデートオレンジ、パーマネントレッド、パーマネントカーミン、アントラキノンレッド、ペリレンレッド、キナクリドンレッド、黄色酸化鉄、チタンイエロー、ファーストイエロー、ベンツイミダゾロンイエロー、コバルトグリーン、フタロシアニングリーン、群青、紺青、コバルトブルー、フタロシアニンブルー、キナクリドンバイオレット、ジオキサジンバイオレット、アルミニウム顔料、パール顔料等の1種または2種以上を使用することができる。
【0046】
上記体質顔料としては、例えば、重質炭酸カルシウム、寒水石、軽微性炭酸カルシウム、ホワイトカーボン、タルク、カオリン、クレー、陶土、チャイナクレー、珪藻土、バライト粉、硫酸バリウム、沈降性硫酸バリウム、珪砂、珪石粉、石英粉、樹脂ビーズ、ガラスビーズ、中空バルーン等が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。
【0047】
上記防錆顔料としては、市販または公知の材料を使用することができるが、クロム及び鉛のいずれも含まない顔料(「非クロム系防錆顔料」ともいう。)が好ましい。具体的には、例えば、リン酸亜鉛、リン酸鉄、リン酸アルミニウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウムなどのリン酸化合物;亜リン酸亜鉛、亜リン酸鉄、亜リン酸アルミニウム、亜リン酸カルシウム、亜リン酸マグネシウムなどの亜リン酸化合物;ポリリン酸亜鉛、ポリリン酸鉄、ポリリン酸アルミニウムなどのポリリン酸化合物;モリブデン酸亜鉛、モリンブデン酸アルミニウム、モリブデン酸カルシウム、モリブデン酸バリウム、リンモリブデン酸アルミニウムなどのモリブデン酸化合物;酸化バナジウムなどのバナジウム化合物;ホウ酸バリウム、メタホウ酸バリウム、ホウ酸カルシウムなどのホウ酸化合物;シアナミド亜鉛、シアナミド亜鉛カルシウムなどのシアナミド化合物などが挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。また、上記の顔料に各種の表面処理を行ったものを使用することもできる。
【0048】
本発明の水性被覆材では、触媒(硬化促進剤)を含むことが好ましい。触媒(硬化促進剤)としては、例えば、安息香酸、サリチル酸、トリヒドロキシ安息香酸、フタル酸、ケイ皮酸、ベンゼンヘキサカルボン酸等の各種芳香族カルボン酸類;トリメチルアミン、エチルジメチルアミン、プロピルジメチルアミン、N,N’-ジメチルピペラジン、ピリジン、ピコリン、1,8-ジアザビスシクロ(5,4,0)ウンデセン-1(DBU)、ベンジルジメチルアミン、2-(ジメチルアミノメチル)フェノール(DMP-10)、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(DMP-30)等の第三アミン類、ヒドロキシルアミン、フェノキシアミン等のヒドロキシルアミン類、イミダゾール、1-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、4(5)-メチルイミダゾール、2-エチル-4メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール等のイミダゾール類等の上記(B)成分、上記(M)成分以外のアミン類;フェノールノボラック、o-クレゾールノボラック、p-クレゾールノボラック、t-ブチルフェノールノボラック、ジシクロペンタジエンクレゾール等のフェノール類、オクチル酸錫、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、オルガノチタネート、酢酸ナトリウム等の有機金属化合物等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用できる。
【0049】
本発明の水性被覆材は、固形分が好ましくは5~60重量%(より好ましくは6~50重量%、さらに好ましくは7~45重量%)である。なお、固形分は、上記水性媒体の混合により調整することができる。このような範囲の場合、塗装作業性に優れるとともに、種々の基材、及び塗膜に対して、密着性をよりいっそう向上させることができる。
【0050】
本発明の水性被覆材は、内外装壁面及び床面、あるいは一般歩道、歩道橋、プラットホーム等の屋外床面、さらには橋梁、鉄塔等の鋼構造物への塗装における塗材(特に下塗材)として好適に用いられる。例えば、モルタル、コンクリート、窯業系サイディングボード、セラミック系サイディングボード、金属系サイディングボード、押出成形板、スレート板、ケイ酸カルシウム板、ALC板、金属、鋼材、木材、ガラス、陶磁器、合成樹脂等の基材、あるいはこのような基材上(基材の表面)に形成された多種多様な既存塗膜等の下地に適用する下塗材として好適に用いられる。また、このような下地(基材や既存塗膜)の形状としては、平滑(フラット)なもの、各種凹凸模様(例えば石材調、レンガ・タイル調、木目調、ボーダー調、塗り壁調、吹付け調等)を有するもの等が挙げられる。さらには、シーリング目地部を含む下地に対して、適用することもできる。
【0051】
本発明の水性被覆材の塗装においては、例えば、刷毛塗装、ローラー塗装、スプレー塗装等の種々の方法を採用することができる。また、工場内で塗装する場合は、上記以外にもロールコーター、フローコーター等を用いて塗装することもできる。
【0052】
水性被覆材の塗付け量については、好ましくは0.05~0.5kg/m(より好ましくは0.07~0.3kg/m)程度である。水性被覆材の塗回数は、下地の状態によって適宜設定すればよいが、好ましくは1~2回である。水性被覆材の乾燥時間は、好ましくは1時間以上1週間以内とすればよい。また乾燥温度は、好ましくは-10℃以上50℃以下、より好ましくは-5℃以上40℃以下であればよい。本発明の水性被覆材は、常温硬化型として好ましいものである。
【0053】
本発明の水性被覆材により形成された塗膜は、多種多様な上塗材に対し優れた密着性を有している。上塗材としては、一般的に建築物の塗装に使用されるものであれば特に限定されるものではなく、その結合材としては、例えば、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂等の有機質結合材、あるいはシリコン樹脂、アルコキシシラン、コロイダルシリカ、ケイ酸塩等の無機質結合材、アクリルシリコン樹脂等の有機無機複合結合材等が挙げられる。特に、本発明では、上記有機質結合材、上記有機無機複合結合材から選ばれる1種以上を含む上塗材との密着性を十分に発揮することができる。
【0054】
具体的な上塗材としては、例えば、建築用耐候性上塗り塗料(JIS K5658:2010)、鋼構造物用耐候性塗料(JIS K5659:2008)、つや有合成樹脂エマルションペイント(JIS K5660:2008)、建築用防火塗料(JIS K5661:1970)、合成樹脂エマルションペイント(JIS K5663:2008)、路面標示用塗料(JIS K5665:2011)、多彩模様塗料(JIS K5667:2003)、合成樹脂エマルション模様塗料(JIS K5668:2010)、アクリル樹脂系非水分散形塗料(JIS K5670:2008)、鉛・クロムフリーさび止めペイント(JIS K5674:2008)、屋根用高日射反射率塗料(JIS K5675:2011)、建物用床塗料(JIS K5970:2008)、建築用塗膜防水材(JIS A6021:2011)、建築用仕上塗材(JIS A6909:2014)、等が挙げられる。
【0055】
上塗材の塗装方法としては、特に限定されず公知の方法で塗装することができるが、例えば、刷毛塗り、コテ塗り、スプレー塗装、ローラー塗装、ロールコーター、フローコーター等種々の方法により塗装することができる。即ち、それぞれの上塗材に最適な塗装仕様で、通常の工程に基づいて、各上塗材を塗装すればよい。
【実施例
【0056】
以下に実施例及び比較例を示して、本発明の特徴をより明確にする。
【0057】
<主剤1~11の製造>
エポキシ樹脂エマルション(A)、アクリル樹脂エマルション(C)、有機溶剤(D)、触媒(P)、添加剤、及び水を表1に示す混合比で混合したものを主剤1~11とした。
【0058】
<硬化剤1の製造>
アミノ基含有樹脂(B1)を硬化剤1とした。
【0059】
なお、原料としては以下のものを使用した。
・エポキシ樹脂エマルション(A)
(A1)エポキシ樹脂エマルション[ビスフェノールA型エポキシ樹脂(固形型)水分散体、固形分46重量%、平均粒子径:390nm、エポキシ当量x508]
・アミノ基含有樹脂(B)
(B1)ポリアミン樹脂[水可溶型、メタキシレンジアミンのスチレン付加反応生成物、固形分100重量%、活性水素当量y:103]
・アクリル樹脂エマルション(C)
(C1)アクリル樹脂エマルション[スチレン/2-エチルヘキシルアクリレート/グリシジルメタクリレート共重合体、ガラス転移温度:20℃、固形分:33重量%、グリシジルメタクリレート含有量:9重量%、平均粒子径:75nm]
(C2)アクリル樹脂エマルション[スチレン/2-エチルヘキシルアクリレート/グリシジルメタクリレート共重合体、ガラス転移温度:-3℃、固形分:33重量%、グリシジルメタクリレート含有量:9重量%、平均粒子径:160nm]
(C3)アクリルシリコン樹脂エマルション[メチルメタクリレート/n-ブチルアクリレート/グリシジルメタクリレート/3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン/アクリル酸共重合体、ガラス転移温度:20℃、固形分:33重量%、アルコキシシリル基含有モノマー含有量:1重量%、グリシジルメタクリレート含有量:2重量%、平均粒子径:120nm]
(C4)アクリル樹脂エマルション[スチレン/2-エチルヘキシルアクリレート/メタクリレート共重合体、ガラス転移温度:20℃、固形分:33重量%、平均粒子径:75nm]
・有機溶剤(D)
(D1)ジプロピレングリコール-n-ブチルエーテル[沸点229℃、20℃における水への溶解度5g/100gHO]
(D2)プロピレングリコールフェニルエーテル[沸点243℃、20℃における水への溶解度1g/100gHO]
(D3)トリプロピレングリコール-n-ブチルエーテル[沸点274℃、20℃における水への溶解度3g/100gHO]
(D4)2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート[沸点255℃、20℃における水への溶解度0.09g/100gHO]
(D5)プロピレングリコール-n-ブチルエーテル[沸点170℃、20℃における水への溶解度6g/100gHO]
(D6)プロピレングリコール[沸点187℃、20℃における水への溶解度∞]
(P1)有機錫化合物分散液[固形分:10重量%]
・添加剤:消泡剤、増粘剤等
【0060】
【表1】
【0061】
(実施例1~8、比較例1~3)
表1に示す主剤1~11と、硬化剤1を、主剤中の(A)成分のエポキシ当量([X]:固形分換算値)と、硬化剤中の(B)成分の活性水素当量([Y];固形分換算値)の比[X/(Y)]=1.0となるように混合した水性被覆材(クリヤー型水性被覆材)を使用し、下記の評価を実施した。
【0062】
<評価1>
既存塗膜として黒色アクリル板(150mm×200mm×3mm)上に、主剤と硬化剤を混合して得られた水性被覆材を塗付厚み0.15mmとなるように混合直後に塗付し、標準状態(気温23℃、相対湿度50%)で1日間乾燥させた試験体[I]を作製した。それぞれの試験体を20℃の水に48時間浸漬させた後、試験体を取り出し、乾燥(23℃、3時間)させ、塗膜状態を目視にて、膨れ、剥れ、白化等を観察し評価した。
評価基準は、ほぼ異常がなかったものを「A」、異常があったものを「D」とする6段階評価(AA>A>AB>B>C>D)評価とした。結果は、表2に示す。
【0063】
<評価2>
鋼板上(150mm×200mm×1mm)に、水性被覆材を塗付け量0.1kg/mとなるように混合直後に塗付し、10℃環境下/湿度80%で3日間乾燥させ、次いで、水性上塗材(アクリルシリコン樹脂エマルション塗料)を塗付け量0.1kg/mとなるように塗付し、標準状態で、1日間乾燥させた試験体[II]を作製した。
作製した試験体[II]を、JIS K 5600-5-6に準じた碁盤目テープ法にて密着性を評価した。結果は表2に示す。
評価基準は、以下の通りである。
AA:欠損部面積が5%未満
A:欠損部面積が5%以上10%未満
AB:欠損部面積が10%以上25%未満
B:欠損部面積が25%以上40%未満
C:欠損部面積が40%以上55%未満
D:欠損部面積が55%以上
【0064】
【表2】