(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-25
(45)【発行日】2024-10-03
(54)【発明の名称】加湿器
(51)【国際特許分類】
F24F 6/14 20060101AFI20240926BHJP
F24F 6/00 20060101ALI20240926BHJP
B05B 12/12 20060101ALI20240926BHJP
B05B 12/04 20060101ALI20240926BHJP
B05B 1/14 20060101ALI20240926BHJP
F02M 51/06 20060101ALI20240926BHJP
F02M 55/02 20060101ALI20240926BHJP
F02M 61/10 20060101ALI20240926BHJP
F02D 19/12 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
F24F6/14
F24F6/00 E
B05B12/12
B05B12/04
B05B1/14 Z
F02M51/06 Z
F02M55/02 360Z
F02M61/10 Z
F02D19/12 A
(21)【出願番号】P 2021051007
(22)【出願日】2021-03-25
【審査請求日】2024-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003333
【氏名又は名称】ボッシュ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】村田 聡
【審査官】井古田 裕昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-176783(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112303778(CN,A)
【文献】特表2020-516010(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 6/14
F24F 6/00
B05B 12/12
B05B 12/04
B05B 1/14
F02M 51/06
F02M 55/02
F02M 61/10
F02D 19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御ユニットの駆動制御により燃料噴射可能に構成された複数の車両用燃料噴射弁と、高圧化された水を前記複数の車両用燃料噴射弁に供給可能に蓄積するコモンレールとを具備し、複数の車両用燃料噴射弁により前記水を噴射することで微小の略球状の水煙の噴霧を可能とすると共に、前記複数の車両用燃料噴射弁の噴射の有無を制御することで前記水煙を複数配列せしめて視認可能な所望形状を形成可能としてなることを特徴とする加湿器。
【請求項2】
前記複数の車両用燃料噴射弁は、噴射ノズルの噴孔が鉛直方向の上方向に臨むように、かつ、水平方向で所定間隔を隔てて設けられ、前記制御ユニットは、前記所望形状に基づいて前記複数の車両用燃料噴射弁の噴射、非噴射を制御し、前記複数の車両用燃料噴射弁は、各々、前記制御ユニットにより噴射制御される度毎に、前記略球状の水煙を、鉛直方向において、離散的、かつ、ほぼ直線状の列に噴霧可能としてなることを特徴とする請求項1記載の加湿器。
【請求項3】
加湿空間の湿度を検出する湿度センサが設けられ、前記制御ユニットは、前記湿度センサにより検出された湿度が目標湿度に達するまで前記車両用燃料噴射弁による水の噴射を継続せしめるよう構成されてなることを特徴とする請求項2記載の加湿器。
【請求項4】
前記目標湿度を設定可能とする設定ユニットが設けられ、前記制御ユニットは、前記設定ユニットの設定湿度を前記目標湿度として読み込み可能に構成されてなることを特徴とする請求項3記載の加湿器。
【請求項5】
前記湿度センサには第1の無線端末が接続され、前記制御ユニットには第2の無線端末が接続される一方、
前記第1の無線端末は、前記湿度センサの検出信号を無線送信する一方、
前記第2の無線端末は、前記第1の無線端末の送信信号を受信、復調し、前記湿度センサの検出信号を前記制御ユニットへ入力可能に構成されてなることを特徴とする請求項4記載の加湿器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加湿器に係り、特に、噴霧形態の選択の自由度向上、湿度制御の精度向上等を図ったものに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、所望する空間を加湿する加湿器としては、超音波振動子により得られた超音波振動によって微細な水滴からなる水煙を発生させて空気中に放出する構成の超音波加湿器が主流となっていることは良く知られている通りであるが(例えば、特許文献1等参照)、所望される加湿空間の広さや噴霧の形態等の観点から必ずしも超音波加湿器で充足しきれないこともある。
そのため、大量、かつ、迅速な加湿が所望される空間に適する構成として、例えば、らせん状に配管された空気ノズルを介して旋回加湿気流を発生させ、放出することで大量、かつ、迅速な加湿を可能とした加湿器の提案なども行われている(例えば、特許文献2等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開昭61-007739号公報
【文献】特開2000-210600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば、加湿器から放出された水煙を視覚効果を得るために所望の形状等に形成可能とする構成のものは殆どなく、加湿器の噴霧形態、利用形態の自由度が小さいという問題がある。
さらに、放出する水煙の量を短時間で計測可能とする構成や、また、的確、且つ、高分解能で高精度な湿度制御を可能とする構成のものは少なく、これらの需要に対して十分対応できる状況ではない。
【0005】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、噴射形態の選択の自由度の向上と共に、加湿量の迅速で正確、且つ、精密で詳細な把握を可能とした加湿器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記本発明の目的を達成するため、本発明に係る加湿器は、
制御ユニットの駆動制御により燃料噴射可能に構成された複数の車両用燃料噴射弁と、高圧化された水を前記複数の車両用燃料噴射弁に供給可能に蓄積するコモンレールとを具備し、複数の車両用燃料噴射弁により前記水を噴射することで微小の略球状の水煙の噴霧を可能とすると共に、前記複数の車両用燃料噴射弁の噴射の有無を制御することで前記水煙を複数配列せしめて視認可能な所望形状を形成可能としてなるものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、車両用燃料噴射弁を用いて水を噴射させることで略球状の水煙の噴霧を可能とし、複数の車両用燃料噴射弁の噴射、非噴射を制御して、その略球状の水煙を空間に所望に応じて配することで、視認可能な所望形状を形成可能としたので、視覚的効果のある噴霧が可能となり噴射形態の選択の自由度が高い加湿器を提供することができる。
また、車両用燃料噴射弁を用いて水を噴射させることで、燃料噴射制御と同様の高精度で噴射量を把握することができ、しかも、高精度湿度センサにより検出された湿度が目標湿度に達した場合には、噴霧を停止する構成とすることで、噴射量の高精度の把握と相まって、的確、且つ、精密で詳細な湿度制御が確保できるという効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施の形態における加湿器の第1の構成例を示す構成図である。
【
図2】本発明の実施の形態における加湿器を構成する制御ユニットにより実行される加湿動作制御処理の手順を示すフローチャートである。
【
図3】本発明の実施の形態における加湿器による水煙の噴霧により文字”F”を視認可能に形成させた状態を模式的に示した模式図である。
【
図4】
図3に示されたように文字”F”を形成する場合の噴射画像パターンデータの一例を模式的に示す模式図である。
【
図5】本発明の実施の形態における加湿器の第2の構成例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、
図1乃至
図5を参照しつつ説明する。
なお、以下に説明する部材、配置等は本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。
最初に、本発明の実施の形態における加湿器の第1の構成例について、
図1を参照しつつ説明する。
本発明の実施の形態における加湿器Sは、複数の車両用燃料噴射弁10-1~10-8と、コモンレール(
図1においては「CL」と表記)40と、高圧ポンプ(
図1においては「HP」と表記)20と、給水タンク(
図1においては「WP」と表記)30と、制御ユニット(
図1においては「CNT」と表記)100と、設定ユニット(
図1においては「SET」と表記)110と、画像処理ユニット((
図1においては「IP」と表記)120と、湿度センサ1とを主たる構成要素として構成されてなるものである。
なお、
図1においては、複数の車両用燃料噴射弁として8本の車両用燃料噴射弁10-1~10-8が設けられた構成例が示されており、以下の説明においては、この8本の車両用燃料噴射弁10-1~10-8が設けられた構成例として説明する。
【0010】
この加湿器Sにおいて、車両用燃料噴射弁10-1~10-8、コモンレール40、高圧ポンプ20、給水タンク30、及び、制御ユニット100から構成される部分は、自動車両のコモンレール式燃料噴射制御装置を構成するものであり、その構成自体は、従来から良く知られているものと基本的に同一である。なお、得られる効果が同一であれば、その構成は可変が可能である。
【0011】
このコモンレール式燃料噴射制御装置においては、まず、給水タンク30と高圧ポンプ20の間は、第1の給水パイプ2により、高圧ポンプ20とコモンレール40との間は、第2の給水パイプ3により、それぞれ接続されている。
さらに、コモンレール40と車両用燃料噴射弁10-1~10-8との間は、車両用燃料噴射弁10-1~10-8の各々に対応して設けられた高圧パイプ4-1~4-8により、それぞれ相互に接続されている。
【0012】
そして、給水タンク30には、加湿に用いられる水が蓄積されると共に、図示されない送水ポンプが設けられており、制御ユニット100による駆動制御に応じて高圧ポンプ20へ水を送出可能となっている。
高圧ポンプ20は、制御ユニット100の駆動制御に応じて給水タンク30から給水された水を高圧化してコモンレール40へ送出し、コモンレール40においては、高圧化された水が蓄積されるようになっている。
コモンレール40に蓄積された高圧の水は、後述するような車両用燃料噴射弁10-1~10-8の噴射に応じて高圧パイプ4-1~4-8を介して車両用燃料噴射弁10-1~10-8にそれぞれ供給可能となっている。
【0013】
車両用燃料噴射弁10-1~10-8は、コモンレール40から供給された高圧水を、後述するように制御ユニット100の制御に応じて噴射端に設けられた噴射ノズル10Aを介して空中へ噴射する。車両用燃料噴射弁10-1~10-8によるこの噴射は、自動車両におけるエンジンへ対する燃料噴射と基本的に同様である。
なお、本発明の実施の形態において、車両用燃料噴射弁10-1~10-8は、詳細後述するように噴霧画像パターンの形成のために、噴射ノズル10Aが鉛直方向で上方に臨むように、かつ、水平方向において相互に所定間隔を隔てて配置されたものとなっている。但し、その配置によって噴霧画像パターンを如何様にも形成することが可能であるので、画像に厚みや膨らみをつける目的で、車両用燃料噴射弁を、例えば水平方向のみならず垂直方向に配置しても良い。
【0014】
設定ユニット110は、加湿対象の空間における所望湿度を設定可能となっており、その設定値が制御ユニット100へ出力されるよう構成されたものである。このような設定ユニット110は、本発明特有のものではなく、従来から知られている構成のものが適用可能である。
なお、所望湿度の設定は、例えば、アナログ式で連続的に可変可能としても、また、離散的に設定可能としても、いずれでも良い。またさらに、制御ユニット100へ対する設定値の出力形態は、例えば、ディジタル値が好適であるが、アナログ値として、制御ユニット100内で制御処理に必要とされるディジタル値に変換する構成としても良い。
【0015】
画像処理ユニット120は、詳細は後述するように車両用燃料噴射弁10-1~10-8による水の噴霧によって所望の噴霧状態を形成するために必要となるデータ(噴霧画像パターンデータ)を記憶すると共に、制御ユニット100による駆動制御に応じて必要な噴霧画像パターンデータを制御ユニット100へ出力可能に構成されたものである。
このような噴霧画像パターンデータの記憶、出力を行う画像処理ユニット120は、本発明特有のものではなく、例えば、従来から良く知られているマイクロコントローラやがイメージプロセッサ等で実現できるものである。
【0016】
制御ユニット100は、例えば、公知・周知の構成を有してなるマイクロコンピュータを中心に、RAMやROM等の記憶素子(図示せず)を備えると共に、入出力インターフェイス回路(図示せず)を主たる構成要素として構成されてなるものである。
本発明の実施の形態における制御ユニット100は、自動車両の燃料噴射制御を実行可能に構成された従来のものと基本的に同様のものであるが、さらに、後述するように、所望の噴霧状態を形成しつつ、所望する湿度を達成できるように水煙の噴霧制御を実行可能に構成されたものである。
【0017】
また、湿度センサ1は、加湿対象の空間の適宜な場所に設けられるか、又は、加湿対象の空間に臨むように加湿器の適宜な部位に設けられるものとなっている。この湿度センサ1の検出値の精度、分解能は、本加湿器Sで制御可能な湿度の精度、分解能の範囲にあれば良く、勿論、一般的な性能の湿度センサを用いても良い。
なお、本発明の実施の形態における加湿器Sは、商用電源を基に図示されない電源回路により加湿器S内部で必要な直流電圧を生成し、必要な回路へ供給可能に構成されている。
【0018】
次に、
図2乃至
図4を参照しつつ、加湿器Sにおける加湿制御について説明する。
最初に、本発明の実施の形態における加湿器Sによる加湿制御について
図3を参照しつつ概括的に説明する。
本発明の実施の形態における加湿器Sは、従来と異なり、車両用燃料噴射弁10-1~10-8により水を所定の方向に噴射することで、
図3に示されたように微少の略球状の水煙70の噴霧を可能とし、複数のその略球状の水煙によって所望の噴霧状態、すなわち、視認可能な文字や図形等の形成を可能としたものである。本発明の実施の形態においては、このように水の噴霧によって空中に形成された文字、図形等を”噴霧画像パターン”と称することとする。
図3には、この噴霧画像パターンとして、”F”を形成した場合の例が模式的に示されている。この噴霧画像パターンの場合、”F”に対応する部分は無噴射で、その周囲は噴射とすることで”F”が視認可能に形成されている(詳細は後述)。
【0019】
次に、制御ユニット100による具体的な加湿制御処理の手順について、
図2に示されたフローチャート及び
図4に示された噴霧画像パターンデータ例を参照しつつ説明する。
制御ユニット100により処理が開始されると、最初に、設定ユニット110において設定された所望の湿度(設定湿度)の制御ユニット100への読み込みが行われる(
図2のステップS110参照)。制御ユニット100に読み込まれた設定湿度は、制御ユニット100内の図示されない記憶領域に最新の設定湿度として記憶、保存される。
【0020】
次いで、制御ユニット100による駆動制御により給水タンク30の水(ポンプ水)が送水ポンプ(図示せず)により高圧ポンプ20へ送出、供給される(
図2のステップS120参照)。
次いで、制御ユニット100による駆動制御により高圧ポンプ20において高圧化された水(高圧水)がコモンレール40へ供給される(
図2のステップS130参照)。
【0021】
次いで、制御ユニット100により計測湿度の読み込みが行われる(
図2のステップS140参照)。すなわち、湿度センサ1の検出値が制御ユニット100に読み込まれ、加湿空間における最新の湿度として制御ユニット100内の適宜な記憶領域に記憶、保持されることとなる。
【0022】
次いで、制御ユニット100による動作制御に応じて画像処理ユニット120において、図示されない記憶領域に記憶、保持されている噴霧画像パターンデータの読み出しが行われる(
図2のステップS150参照)。
ここで、
図4を参照しつつ、本発明の実施の形態における噴霧画像パターンデータの例について説明する。
図4は、先に
図3に示された例のように”F”を噴霧画像パターンとする場合のデジタルデータである噴霧画像パターンデータの例である。
本発明の実施の形態における噴霧画像パターンは、先に概要を述べたように、車両用燃料噴射弁10-1~10-8の噴射と非噴射とを適宜制御することで、形成されるものとなっている。
【0023】
図4に示された噴霧画像パターンデータの場合、”1”は噴射に、”0”は非噴射に、それぞれ対応している。なお、
図4において、第1乃至第8の車両用燃料噴射弁10-1~10-8を、それぞれ「IJ1」~「IJ8」と表記している。
また、この
図4に示された例の場合、11回の噴射を繰り返すことで”F”の噴霧画像パターンを形成するための噴射画像パーターンデータとなっている。
すなわち、最初の噴射時である時刻t1における噴射画像パターンデータは、第1乃至第8の車両用燃料噴射弁10-1~10-8の全てにおいて噴射に対応する”1”となっている。なお、以下説明の便宜上、ある時刻における第1乃至第8の車両用燃料噴射弁10-1~10-8に対する噴射画像パーターンデータの並びを”データ行”と称することとする。
【0024】
次いで、時刻t2における噴射画像パターンデータは、第1、第2及び第8の車両用燃料噴射弁10-1,10-2,10-8に対しては噴射に対応する”1”が設定されている一方、第3乃至第7の車両用燃料噴射弁10-3~10-7に対しては非噴射に対応する”0”が設定されたものとなっている。
以下、時刻t3以降の噴射画像パターンデータについては個々の具体的な説明は省略するが、基本的には上述のように噴射に対しては”1”が、非噴射に対しては”0”が設定されたものとなっている。
【0025】
しかして、ステップS150における噴霧画像パターンデータの読み出しは、上述したような第1乃至第8の車両用燃料噴射弁10-1~10-8に対する噴霧画像パターンデータ全体が、画像処理ユニット120の所定の記録領域(図示せす)から読み出され、一時記憶領域(図示せず)に記憶、保持されることとなる。
【0026】
次いで、画像処理ユニット120において、上述のようにして読み出された噴霧画像パターンが有効なものであるか否かの判定が行われる(
図2のステップS160参照)。
噴射画像パターンが有効か否か、すなわち、噴射画像パターンデータが有効か否かの判定は、いわゆるパリティチェック等の従来から良く知られているデジタルデータの誤り検出手法などを用いるのが好適であり、本発明特有のものである必要はない。
【0027】
なお、本発明の実施の形態においては、一組の噴射画像パターンデータには、先に述べたような所望の文字等の画像パターンを形成するために必要な車両用燃料噴射弁10-1~10-8の噴射の有無に対応するデータのみならず、少なくともデータ行の総数や各データ行の番号などが含まれていることを前提としている。
したがって、噴射画像パターンデータが有効か否かの簡易な判定方法として、例えば、画像処理ユニット120の所定の記録領域(図示せす)から実際に読み出された一組の噴射画像パターンデータのデータ列が所定数であるか否かを判定することでも良い。
【0028】
そして、ステップS160において、画像処理ユニット120により噴霧画像パターンデータは有効と判定された場合(YESの場合)、次述するステップS170の処理へ進むこととなる。一方、ステップS160において、噴霧画像パターンデータは有効ではないと判定された場合(NOの場合)、後述するステップS220の処理へ進むこととなる。
ステップS170においては、画像処理ユニット120から制御ユニット100へ対してコマンド信号が送出される。
【0029】
すなわち、画像処理ユニット120から制御ユニット100に対して送出する噴霧画像パターンデータに基づく噴射を要求するためのコマンド信号が、先に画像処理ユニット120内の図示されないバッファ領域に一時的に保存された噴霧画像パターンデータと共に送出されることとなる。
なお、噴霧画像パターンデータの送出は、1回のコマンド信号の送出の際に一つのデータ行のデータが送出されるものとなっている。
【0030】
例えば、ステップS170が初回の実行時である場合、
図4の例では、噴射画像パターンデータの第1行のデータ、すなわち、時刻t1における第1乃至第8の車両用燃料噴射弁10-1~10-8に対する噴霧画像パターンデータである”11111111”が、コマンド信号と共に制御ユニット100へ送出されることとなる。
【0031】
制御ユニット100においては、画像処理ユニット120からの上述のようなコマンド信号と噴霧画像パターンデータに基づいて、車両用燃料噴射弁10-1~10-8に対して噴射信号としての駆動パルスが出力される。
そして、車両用燃料噴射弁10-1~10-nの内、駆動パルスが印加されたもののみが水を噴射することとなる(
図2のステップS180参照)。
【0032】
ここで、駆動パルスの印加による車両用燃料噴射弁10-1~10-8の噴射動作は、エンジンへの燃料噴射の場合と基本的に同様である。すなわち、微量で、かつ、正確な燃料噴射量の把握が必要とされる燃料噴射制御にあって、通常、車両用燃料噴射弁から噴射される燃料量は、少なくとも車両用燃料噴射弁10-1~10-8の噴射ノズル10Aの具体的な仕様(例えば、噴孔の数、噴孔の形状等)と、噴射の際に車両用燃料噴射弁に印加される駆動パルスのパルス幅並びに、高圧ポンプ20によって高圧化された水(高圧水)を蓄えたコモンレール40の内部の水圧によって、ほぼ一義的に定まるものとなっている。
したがって、車両用燃料噴射弁10-1~10-8の具体的な仕様に応じて、一回の噴射の際の駆動パルスの幅を適宜設定することで,一回の噴射における水の噴射量を定めることができる。
【0033】
そのため、加湿器S動作中の水の噴射量を把握したい場合、例えば、噴射回数を計数しつつ、適宜な噴射回数毎に、計数された噴射回数と1回の噴射の際の噴射量との積を算出し、その算出結果を適宜な表示素子(例えば、液晶表示素子)に表示する等の良く知られた技術を適用することで、定期的に水の噴射量を把握することが可能となる。
【0034】
また、車両用燃料噴射弁10-1~10-8から噴射された水は、空中で微少の略小球状の水煙70となり、徐々に上昇してゆく。したがって、車両用燃料噴射弁10-1~10-8が鉛直方向に沿って、かつ、噴射ノズル10Aの噴孔(図示せず)が上方向に臨んでいる場合には、
図3に模式的に示されたように、噴射の度毎に生じた微少の略小球状の水煙70は、噴射間隔に応じた間隔でほぼ直線状に上昇してゆくこととなる。その結果、噴射が続く場合には、水煙70は、鉛直方向で上方向へ上昇してゆくことで、全体的には各々がドット状で且つほぼ直線状に並ぶ水煙の列となる。
なお、
図3においては、図示を省略してあるが、当然の事ながら、各水煙70は噴射後、ある程度の時間経過後は順に消滅することとなるものである。
【0035】
次いで、加湿状態が目標湿度に達した状態にあるか否かが判定される(
図2のステップS190参照)。すなわち、先のステップS110で読み込まれた設定湿度が目標湿度とされ、ステップS140で読み込まれた計測湿度がこの目標湿度に達しているか否かが判定される。
ステップS190において、計測湿度は目標湿度に達したと判定された場合(YESの場合)、所定時間の間、噴射停止とされて(
図2のステップS200参照)、後述するステップS210の処理へ進むこととなる。
【0036】
一方、ステップS190において、計測湿度は目標湿度に達していないと判定された場合(NOの場合)、噴霧画像パターンが完成したか否かの判定が行われる(
図2のステップS210参照)。
ここで、噴霧画像パターンが完成したか否かは、直近の噴射(
図2のステップS190参照)が噴霧画像パターンデータの最終行に対するものであったか否かによって判定されるものとなっている。例えば、
図4に示された例の場合、時刻t10の行、すなわち、第10行が最終行となる。
【0037】
ステップS210において、噴霧画像パターンが完成したと判定された場合(YESの場合)、先のステップS140へ戻り、ステップS140以降の一連の処理が繰り返されることとなる。
すなわち、先に述べたように、画像処理ユニット120において、図示されない記憶領域から噴霧画像パターンデータの読み出しが行われ、上述したと同様の処理が繰り返されることとなる。
【0038】
なお、この例において、噴射画像パターンは一種類の場合を前提としているが、複数切り替えることができるようにしても良い。噴射画像パターンの切り替えは、例えば、画像処理ユニット120や設定ユニット110において、所望の噴霧画像パターン選択の機能を設け、その選択に応じて画像処理ユニット120における噴霧画像パターンの読み出しが行われるようにすると好適である。
【0039】
一方、ステップS210において、噴霧画像パターンは完成していないと判定された場合(NOの場合)、先のステップS170へ戻り、再びコマンド信号の送出が行われる。
すなわち、直近の噴射(
図2のステップS180参照)の対象となった噴霧画像パターンデータ行の次の行のデータがコマンド信号と共に制御ユニット100へ送出され、以下、ステップS180以降の処理が先に説明したと同様に繰り返されることとなる。
【0040】
例えば、ステップS170の処理実行が2回目の場合、
図4の噴射画像パターンデータ例では、第2行、すなわち、時刻t2における噴射画像パターンデータである”11000001”がコマンド信号と共に制御ユニット100へ送出されることとなる。
以下、上述のように噴射画像パターンのデータ行数に相当する噴射が繰り返されることで、
図4に示された噴射画像パターンデータの場合、
図3に示された模式図のように、水煙70の無い箇所に”F”の字の形状が視認できるようになる。
【0041】
一方、先のステップS160において、噴霧画像パターンは有効ではないと判定された場合(NOの場合)、車両用燃料噴射弁10-1~10-8に対して制御ユニット100から基本噴射信号としての基本駆動パルスが出力され、車両用燃料噴射弁10-1~10-8により水の噴射が行われる(
図2のステップ220参照)。
すなわち、基本噴射信号は、全ての車両用燃料噴射弁10-1~10-8からの水の噴射を実行するための信号であり、この場合、噴射画像パターンの形成は行われず、終始”11111111”に対応した水の噴射が行われる。
【0042】
次いで、加湿状態が目標湿度に達した状態にあるか否かが判定される(
図2のステップS230参照)。すなわち、ステップS140で読み込まれた計測湿度が目標湿度(ステップS110で読み込まれた設定湿度)に達しているか否かが判定される。
ステップS230において、計測湿度は目標湿度に達したと判定された場合(YESの場合)、所定時間の間、噴射停止とされて(
図2のステップS240参照)、先のステップS140へ戻り、ステップS140以降の一連の処理が再度繰り返されることとなる。
【0043】
一方、ステップS230において、計測湿度は目標湿度に達していない判定された場合(NOの場合)、先のステップS220へ戻り、ステップS220以降の処理が繰り返されることとなる。
なお、上述した本発明の実施の形態においては、噴射画像パターンとして”F”を形成する例を説明したが、噴射画像パターンは、勿論、”F”に限定される必要はなく、他の所望の文字や形状であっても良いものである。
【0044】
次に、本発明の実施の形態における加湿器の他の構成例について、
図5を参照しつつ説明する。
なお、
図1に示された構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付して、その詳細な説明を省略し、以下、異なる点を中心に説明することとする。
この第2の構成例は、湿度センサ1の検出信号を無線通信を用いて加湿器S本体と授受できるようにし、湿度センサ1の取り付けの自由度向上を図ったものである。
【0045】
以下、具体的に説明すれば、まず、湿度センサ1には、第1の無線端末(
図5においては「WT1」と表記)50が接続されて、加湿空間の所望の場所に設けることが可能となっている。
また、制御ユニット100には、第2の無線端末(
図5においては「WT2」と表記)60が接続されている。
第1の無線端末50は、湿度センサ1の検出信号を定期的に無線送信するよう構成されてなるものである。
【0046】
また、第2の無線端末60は、第1の無線端末50から送信された無線信号を受信し、湿度センサ1の元の検出信号を復調可能に構成されてなるものである。
このよう構成を有する無線端末は、従来から種々実用に供されているものがあり、本発明の実施の形態においても、そのような従来構成のものであれば良く、本発明特有の構成を採るものではない。
【0047】
また、上述の第1及び第2の無線端末50,60の構成は、必要最小限のものであるが、勿論、この構成に限定される必要はなく、さらなる動作、機能を付加した構成としても良い。
すなわち、例えば、第2の無線端末60は、所定時間間隔で第1の無線端末50に対して湿度センサ1の検出信号の送信を要求する送信要求信号を送信する。これに対して、第1の無線端末50は、第2の無線端末60からの送信要求信号を受信した場合に、湿度センサ1の検出信号を無線送信するような構成としても好適である。
【0048】
なお、本発明の実施の形態においては、8本の車両用燃料噴射弁10-1~10-8を設けた例を示したが、8本に限定される必要はなく任意であるが、形成する噴霧画像パターンの視認性を向上させる観点からは、本数の多いほうが好適である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
噴射形態の選択の自由度が高く、加湿量の迅速で正確、且つ、精密で詳細な把握が所望される加湿器に適用できる。
【符号の説明】
【0050】
1…湿度センサ
10-1~10-8…車両用燃料噴射弁
20…高圧ポンプ
30…給水タンク
100…制御ユニット
110…設定ユニット
120…画像処理ユニット