IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 本田技研工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-内燃機関の吸気構造 図1
  • 特許-内燃機関の吸気構造 図2
  • 特許-内燃機関の吸気構造 図3
  • 特許-内燃機関の吸気構造 図4
  • 特許-内燃機関の吸気構造 図5
  • 特許-内燃機関の吸気構造 図6
  • 特許-内燃機関の吸気構造 図7
  • 特許-内燃機関の吸気構造 図8
  • 特許-内燃機関の吸気構造 図9
  • 特許-内燃機関の吸気構造 図10
  • 特許-内燃機関の吸気構造 図11
  • 特許-内燃機関の吸気構造 図12
  • 特許-内燃機関の吸気構造 図13
  • 特許-内燃機関の吸気構造 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-25
(45)【発行日】2024-10-03
(54)【発明の名称】内燃機関の吸気構造
(51)【国際特許分類】
   F02B 31/04 20060101AFI20240926BHJP
   F02M 35/10 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
F02B31/04 500A
F02M35/10 101D
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021058645
(22)【出願日】2021-03-30
(65)【公開番号】P2022155238
(43)【公開日】2022-10-13
【審査請求日】2023-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169111
【弁理士】
【氏名又は名称】神澤 淳子
(74)【代理人】
【識別番号】100098176
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 訓
(72)【発明者】
【氏名】中村 洋平
【審査官】櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/009348(WO,A1)
【文献】特開平11-210478(JP,A)
【文献】特開平08-128327(JP,A)
【文献】特開2016-070205(JP,A)
【文献】特開2015-190373(JP,A)
【文献】国際公開第2019/009347(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 31/04
F02M 35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼室(20)に連なる吸気通路(38)と、
前記吸気通路(38)に燃料を噴射するように設けられる燃料噴射弁(70)と、
シリンダ軸線(C)の方向において前記吸気通路(38)を複数に分けるように、該吸気通路(38)に設けられる仕切部(62)と
を備え、
前記仕切部(62)は、該仕切部(62)の下流側において、前記シリンダ軸線(C)に交差する幅方向が前記仕切部(62)の上流端(62u)よりも狭い偏位部(90)を有し、
該偏位部(90)は、前記幅方向において一方向に偏っていて、
前記燃料噴射弁(70)は、前記偏位部(90)が偏った方向とは異なる方向に燃料を噴射するように設けられている
ことを特徴とする内燃機関(10)の吸気構造(S)。
【請求項2】
前記シリンダ軸線(C)の方向においてクランク軸(17)側からシリンダヘッド(14)側の方向を第1方向と定義するとき、
前記仕切部(62)は、第1吸気通路(64)と、該第1吸気通路(64)の前記第1方向側の第2吸気通路(66)とに分けるように吸気流れ方向に延在し、
前記燃料噴射弁(70)は、前記第2吸気通路(66)側から燃料を噴射するように設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関(10)の吸気構造(S)。
【請求項3】
前記シリンダ軸線(C)の方向においてクランク軸(17)側からシリンダヘッド(14)側の方向を第1方向と定義するとき、
前記仕切部(62)は、第1吸気通路(64)と、該第1吸気通路(64)の前記第1方向側の第2吸気通路(66)とに分けるように吸気流れ方向に延在し、
吸気流れ方向において前記偏位部(90)が延在する領域において前記第1吸気通路(64)と前記第2吸気通路(66)とが連通するように、前記第1吸気通路(64)及び前記第2吸気通路(66)は区画形成されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関(10)の吸気構造(S)。
【請求項4】
前記シリンダ軸線(C)の方向において前記第1方向と反対側の方向を第2方向と定義するとき、
吸気流れ方向において前記偏位部(90)が延在する領域において前記第2吸気通路(66)が前記偏位部(90)の側方にまで前記第2方向に延びるように、前記第1吸気通路(64)及び前記第2吸気通路(66)は区画形成されている
ことを特徴とする請求項3に記載の内燃機関(10)の吸気構造(S)。
【請求項5】
前記第1吸気通路(64)は前記偏位部(90)が偏った方向に下流側で偏るように区画形成されている
ことを特徴とする請求項2から4のいずれか一項に記載の内燃機関(10)の吸気構造(S)。
【請求項6】
前記偏位部(90)の下流側縁部(90d)よりも下流側で前記第1吸気通路(64)は前記第2吸気通路(66)に連通し、前記燃焼室(20)に連なる単一の吸気通路となるように、前記第1吸気通路(64)及び前記第2吸気通路(66)は区画形成されている
ことを特徴とする請求項2から5のいずれか一項に記載の内燃機関(10)の吸気構造(S)。
【請求項7】
前記燃料噴射弁(70)は、前記偏位部(90)が偏った方向とは反対側の方向に偏った位置に設けられている
ことを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の内燃機関(10)の吸気構造(S)。
【請求項8】
前記偏位部(90)は、下流側ほど狭くなるように、形成されている
ことを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の内燃機関(10)の吸気構造(S)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼室に連なる吸気通路に仕切部を備える内燃機関の吸気構造に関する。
【背景技術】
【0002】
スロットル弁の下流側の吸気通路が、仕切部により複数の通路に分けられる内燃機関の吸気構造が種々提案されている。例えば、特許文献1の内燃機関の吸気構造では、スロットル弁の下流側にタンブル弁を設け、そのタンブル弁の下流側にインレットパイプから吸気ポートへと続けて仕切部である仕切板部を設け、この仕切板部により吸気通路を上下の下側副通路と上側主通路とに仕切ることが行われる。下側副通路がタンブル通路となり、タンブル弁は上側主通路を実質的に開閉するものである。なお、上記タンブル弁は、吸気振分け弁または吸気制御弁とも称され得るバルブであり、上記仕切部が設けられた内燃機関において、設けられない場合もある(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6714764号公報
【文献】特許第6439070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、燃焼室において、上記特許文献1における下側副通路からの吸気で強いタンブル流を生じさせるためには、その下側副通路からの吸気により強い指向性を持たせることが有効であり、仕切部をより下流側にまで延ばすことが望まれる。一方で、例えば好適な空燃比制御のためには、燃料噴射弁から噴射された燃料が仕切部に付着しないことが望まれる。本発明の目的は、吸気通路が仕切部により分けられるように構成された内燃機関において、燃焼室への燃料の供給を良好に保ちつつ燃焼室で強いタンブル流を生じさせることを可能にする構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の一態様は、
燃焼室に連なる吸気通路と、
前記吸気通路に燃料を噴射するように設けられる燃料噴射弁と、
シリンダ軸線の方向において前記吸気通路を複数に分けるように、該吸気通路に設けられる仕切部と
を備え、
前記仕切部は、該仕切部の下流側において、前記シリンダ軸線に交差する幅方向が前記仕切部の上流端よりも狭い偏位部を有し、
該偏位部は、前記幅方向において一方向に偏っていて、
前記燃料噴射弁は、前記偏位部が偏った方向とは異なる方向に燃料を噴射するように設けられている
ことを特徴とする内燃機関の吸気構造
を提供する。
【0006】
上記構成によれば、上記偏位部が設けられ、また燃料噴射弁がその偏位部が偏った方向とは異なる方向に燃料を噴射するように設けられる。したがって、燃料の仕切部への付着を抑えつつ、より好ましくは生じないようにしつつ、仕切部をより下流側にまで延ばすことができる。よって、仕切部により分けられた吸気通路の少なくとも1つからの吸気により強い指向性を与えることができ、よって燃焼室で強いタンブル流を生じさせることが可能になる。
【0007】
好ましくは、前記シリンダ軸線の方向においてクランク軸側からシリンダヘッド側の方向を第1方向と定義するとき、前記仕切部は、第1吸気通路と、該第1吸気通路の前記第1方向側の第2吸気通路とに分けるように吸気流れ方向に延在し、前記燃料噴射弁は、前記第2吸気通路側から燃料を噴射するように設けられている。この構成により、第1吸気通路からの吸気で燃焼室に好適にタンブル流を生じさせ、燃料を好適に燃焼させることができる。
【0008】
好ましくは、前記シリンダ軸線の方向においてクランク軸側からシリンダヘッド側の方向を第1方向と定義するとき、前記仕切部は、第1吸気通路と、該第1吸気通路の前記第1方向側の第2吸気通路とに分けるように吸気流れ方向に延在し、吸気流れ方向において前記偏位部が延在する領域において前記第1吸気通路と前記第2吸気通路とが連通するように、前記第1吸気通路及び前記第2吸気通路は区画形成されている。この構成により、第1吸気通路からの吸気を好適に下流側に流すことが可能になる。
【0009】
好ましくは、前記シリンダ軸線の方向において前記第1方向と反対側の方向を第2方向と定義するとき、吸気流れ方向において前記偏位部が延在する領域において前記第2吸気通路が前記偏位部の側方にまで前記第2方向に延びるように、前記第1吸気通路及び前記第2吸気通路は区画形成されている。この構成により、仕切部の偏位部をより下流側まで延ばすことができ、よって第1吸気通路からの吸気の指向性を一層強めることが可能になる。
【0010】
好ましくは、前記燃料噴射弁は、前記偏位部が偏った方向とは反対側の方向に偏った位置に設けられている。この構成により、燃料噴射弁から噴射された燃料の偏位部への付着がより一層生じにくくなる。
【0011】
好ましくは、前記第1吸気通路は前記偏位部が偏った方向に下流側で偏るように区画形成されている。この構成により、第1吸気通路からの吸気を偏位部でより好適に方向づけて流すことができる。
【0012】
好ましくは、前記偏位部は、下流側ほど狭くなるように、形成されている。この構成により、偏位部をより下流側まで延ばし、第1吸気通路からの吸気により強い指向性を与えることができ、またこれにより好ましくは燃料噴射弁からの燃料の進路を好適に確保することができる。
【0013】
好ましくは、前記仕切部の下流側縁部よりも下流側で前記第1吸気通路は前記第2吸気通路に連通し、前記燃焼室に連なる単一の吸気通路となるように、前記第1吸気通路及び前記第2吸気通路は区画形成されている。この構成により、単一の吸気通路からの吸気で、燃焼室への燃料の供給とタンブル流の形成とを生じさせることが可能になる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の上記態様によれば、上記構成を備えるので、吸気通路が仕切部により分けられるように構成された内燃機関において、燃焼室への燃料の供給を良好に保ちつつ燃焼室で強いタンブル流を生じさせることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る、内燃機関の概略構成図である。
図2図1の内燃機関の吸気通路の下流側の立体モデルの平面図である。
図3図2の立体モデルの正面図である。
図4図2の立体モデルの底面図である。
図5図2の立体モデルの背面図である。
図6図2の立体モデルの右側面図である。
図7図2の立体モデルの左側面図である。
図8図2の立体モデルの左側からの斜視図である。
図9図2の立体モデルの右側からの斜視図である。
図10図5に示す立体モデルの透視図であり、燃料噴射弁から噴射された噴霧燃料を模式的に示す図である。
図11図10に示すのと同様に燃料噴射弁から噴射された噴霧燃料を模式的に示す、図2に示す立体モデルの透視図である。
図12図10に示すのと同様に燃料噴射弁から噴射された噴霧燃料を模式的に示す、図2の立体モデルの吸気流れ方向に沿った断面図である。
図13図10に示すのと同様に燃料噴射弁から噴射した噴霧燃料を有する図2の立体モデルの断面図であり、(a)は図2のSA-SA線に沿った位置での断面図であり、(b)は図2のSB-SB線に沿った位置での断面図であり、(c)は図2のSC-SC線に沿った位置での断面図である。
図14図13に示す立体モデルの部分の斜視図であり、(a)は図13(a)の立体モデルであり、(b)は図13(b)の立体モデルであり、(c)は図13(c)の立体モデルである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る実施形態を添付図に基づいて説明する。同一の部品(又は構成)には同一の符号を付してあり、それらの名称及び機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0017】
本発明の一実施形態に係る内燃機関10の概略構成を図1に示す。図1は、内燃機関10のシリンダブロック12のシリンダボア12bの軸線(シリンダ軸線)Cに沿った、内燃機関10の断面図である。
【0018】
シリンダブロック12のシリンダボア12b内を往復動するピストン15は、クランクケース部16のクランク軸17のクランクピンと、コネクティングロッド18により連結されている。シリンダブロック12のシリンダボア12b内に摺動自在に嵌合されるピストン15の頂面15aと、頂面15aが対向するシリンダヘッド14の燃焼室天井面14aとの間には燃焼室20が構成される。
【0019】
内燃機関10は、SOHC型式の2バルブシステムを採用しており、シリンダヘッド14に動弁機構22が設けられている。動弁機構22を覆うように、シリンダヘッド14にはシリンダヘッドカバー24が重ねられて被せられる。シリンダヘッドカバー24内の動弁機構22に動力伝達を行うため、図示しない無端状のカムチェーンが、クランクケース部16、シリンダブロック12、シリンダヘッド14のクランク軸方向の一方側に設けられた図示しないカムチェーン室を通って、カム軸26とクランク軸17との間に架設され、カム軸26はクランク軸17に同期して1/2の回転速度で回転する。なお、シリンダヘッド14においてカムチェーン室と反対側(クランク軸方向の他方側)から燃焼室20内に向かって点火プラグが嵌挿されている。
【0020】
シリンダヘッド14において、燃焼室天井面14aに開口した吸気弁口28と排気弁口30からは、各々吸気ポート32と排気ポート34が互いに上下に離れる方向に湾曲しながら延出して形成される。なお、上記のように2バルブシステムを採用していて、シリンダヘッド14には、単一の吸気ポート32及び単一の排気ポート34が区画形成されている。
【0021】
吸気ポート32の上流端は、シリンダヘッド14の上方に向けて開口し、インレットパイプ36と接続して、連続した吸気通路38が構成され、インレットパイプ36の上流側に、スロットルボディ40が接続される。排気ポート34の下流端は、シリンダヘッド14の下方に向けて開口し、排気管42に連結される。排気管42の下流側には、排気浄化装置及び消音装置が設けられ得る。
【0022】
シリンダヘッド14における吸気ポート32の湾曲外壁部32aに一体に円筒状の吸気弁ガイド44が嵌着されている。吸気弁ガイド44に摺動可能に支持された吸気弁46が、吸気ポート32の燃焼室20に臨む吸気弁口28を開閉する。
【0023】
また、シリンダヘッド14における排気ポート34の湾曲外壁部34aに一体に嵌着された排気弁ガイド48に摺動可能に支持された排気弁50が、排気ポート34の燃焼室20に臨む排気弁口30を開閉する。
【0024】
吸気弁46および排気弁50はその傘部46a、50aが、いずれも燃焼室20に臨む吸気弁口28、排気弁口30を閉じるように、弁ばねにより上方に付勢されている。カム軸26の吸気カム、排気カムに当接揺動する吸気ロッカアーム56、排気ロッカアーム58によって、吸気弁46、排気弁50のステムエンド46b、50bが押し下げられて、所定のタイミングで吸気弁46、排気弁50が開弁し、吸気ポート32と燃焼室20、また、排気ポート34と燃焼室20が連通し、所定のタイミングの吸気、排気がなされる。
【0025】
内燃機関10の吸気ポート32の上流端には、インシュレ-タ60を介してインレットパイプ36が接続して、連続した吸気通路38が構成され、インレットパイプ36の上流側に、スロットルボディ40が接続される。スロットルボディ40は、内燃機関10の燃焼室20に連なる吸気通路38の一部を構成する断面略円形の吸気路40aを有し、その上流側は、図示しないエアクリーナ装置に接続している。
【0026】
スロットルボディ40は、その吸気路40aの吸気の流れ方向と垂直、すなわち吸気路40aの中心軸線と直角に交差するスロットル弁軸40bによってスロットルボディ40内に回転自在に軸支されて、吸気路40aの流路面積を可変制御し、吸気路40aを開閉し得るスロットル弁40cを備えている。スロットル弁40cはバタフライ式のもので、スロットル弁軸40bと、スロットル弁軸40bに固定される共に一体的に回転する円盤状の弁体40dとを有している。
【0027】
スロットル弁40cは運転者の操作等により、図1において時計回りに開弁方向に回動可能となっているとともに、図示しない復帰ばねにより、弁体40dはそれの縁部が吸気路40aの内壁面に当接する全閉位置に位置するように、閉弁方向に反時計回りに付勢されている。
【0028】
以上の内燃機関10において、燃焼室20でのより好ましい燃料つまり混合気の燃焼を得るために燃焼室20において燃料・空気混合気のタンブル渦流つまりタンブル流、すなわち縦回転を与えるための吸気構造Sが構成されている。吸気構造Sは、シリンダ軸線Cの方向において吸気通路38を複数に分けるように、吸気通路38に設けられた仕切部62を備える。すなわち、吸気通路38は、インレットパイプ36から吸気ポート32へと続く仕切部62によって、吸気流れ方向に沿って分割され、通った吸気が燃焼室20内でタンブル流を発生するように構成されたタンブル通路64と、タンブル通路64を除く主通路66とに仕切られている。タンブル通路64が第1吸気通路に相当し、主通路66が第2吸気通路に相当する。なお、タンブル通路64は副通路と称されてもよい。
【0029】
なお、吸気流れ方向に板状に延在する仕切部62は、吸気通路38の下流側を実質的に上下方向において二分するように、ここでは流れ方向に延びる軸線に略平行に実質的に延びるように設けられている。本実施形態では、タンブル通路64の流路断面積は主通路66の流路断面積よりも小さい。しかし、タンブル通路64の流路断面積が主通路66の流路断面積よりも大きくなるように仕切部62は設けられてもよく、それらを略同じにすることも可能である。
【0030】
吸気通路38の仕切部62によって仕切られた下側部分がタンブル通路64、上側部分が主通路66となるが、本明細書においてはそれらはその上下配置に限定されない。なお、本明細書において、吸気通路38などについての「上」、「下」とは、シリンダ軸線C方向においてクランク軸17側からシリンダヘッド14ないしシリンダヘッドカバー24側の方向を「上」又は「上」方向、この「上」方向とは逆向きの方向つまりシリンダヘッド14側からクランク軸17側の方向を「下」又は「下」方向といい、空間上の絶対的な「上」、「下」の意味ではない。この「上」又は「上」方向は第1方向に相当し、「下」又は「下」方向は第2方向に相当する。
【0031】
なお、仕切部62の上流側かつスロットル弁40cの下流側に吸気制御弁が更に設けられてもよい。この吸気制御弁は、例えば主通路66の流路面積を可変制御するように設けられ得る。当該吸気制御弁は、タンブル弁、タンブル制御弁又はTCVなどとも称され得る。なお、スロットル弁40cは、以下に説明するように電子制御されるが、電子制御されることに限定されず、例えばスロットルケーブルで機械的にコントロールされる弁であってもよく、これは吸気制御弁を設ける場合も同様である。
【0032】
内燃機関10では、燃料噴射弁68、70が設けられている。一方の燃料噴射弁(以下、第1燃料噴射弁)68は、仕切部62の上流側端部62uよりも上流側に設けられて、該上流側端部62uよりも上流側の吸気通路38の部分に燃料を噴射するように設けられている。他方の燃料噴射弁(以下、第2燃料噴射弁)70は、吸気ポート32に燃料を噴射するように設けられている。第2燃料噴射弁70は、主通路66に臨むように設けられ、ここではインレットパイプ36に設けられている。このように、第2燃料噴射弁70は、主通路66側から燃料を噴射し、吸気ポート32を介して燃焼室20に燃料を供給するように設けられている。なお、図1から明らかなように、第2燃料噴射弁70は、吸気通路38を区画形成する部材の上側の壁部に取り付けられている。なお、本開示は、燃料噴射弁の数を2つに限定するものではなく、例えば1つであってもよい。この場合、例えば、第2燃料噴射弁70のみを設けることができる。
【0033】
内燃機関10を制御するECU(電子制御ユニット)72は、所謂コンピュータとしての構成を備え、吸気制御部74及び燃料噴射制御部76を備えている。ECU72は、エンジン回転速度センサ、エンジン負荷センサなどの各種センサからの出力に基づいて内燃機関10の運転状態を解析して、吸気制御部74により、スロットル弁40cの作動を制御する。また、ECU72は、解析した内燃機関10の運転状態に基づいて、燃料噴射制御部76により、燃料噴射弁68、70の各作動を制御する。なお、ECU72には、これらの制御のためのプログラム及び各種データが記憶されている。
【0034】
ここで、図2から図9に、吸気通路38の下流側の立体モデルMを示す。立体モデルMは、インレットパイプ36の下流側端部から吸気ポート32を含み、その下流側においては吸気弁口28で終端する。なお、立体モデルMは吸気通路38の下流側端部のモデルであるので、立体モデルMの外表面80は、吸気通路38の下流側を区画形成する部材であるインレットパイプ36の内面36s、インシュレータ60の内面60s及びシリンダヘッド14の内壁面14sに対応する部分を有し、一部は仕切部62の表面62sに対応し、部分的に後述する偏位部90の表面90sに対応する。そこで、理解を容易にするように、インレットパイプ36の内面36s、インシュレータ60の内面60s、シリンダヘッド14の内壁面14s、仕切部62の表面62s、偏位部90の表面90sに対応する立体モデルMの個所に、それらの符号を付す。また、第2燃料噴射弁70が取り付けられてその噴射口が吸気通路38に臨む部分(以下、取付部)に符号「70s」を付す。更に、シリンダ軸線Cの方向において上側に符号「U」を用い、下側に符号「D」を用い、吸気流れ方向で上流側から下流側をみたときの右側に付号「R」を用い、そして左側に付号「L」を用いる。
【0035】
図1及び図2から図9より理解できるように、仕切部62は、その下流側において、シリンダ軸線Cに交差する左右方向(L-R方向)つまり幅方向の幅が仕切部62の上流側端部(上流端)62uよりも狭い偏位部90を有する。偏位部90は、吸気通路38を吸気が上流側から下流側に流れる方向つまり吸気流れ方向において吸気弁46に対して向かったときに吸気弁46のバルブ軸線の一方側からもう一方側に延びる方向として定められ得る幅方向において、仕切部62の幅狭の部分である。図4に示すように、タンブル通路64において、シリンダヘッド14により区画形成された部分のうちの仕切部62の上流側端部62u側に位置する上流端側部分の幅方向の幅W1よりも、下流端側部分64dの幅方向の幅W2は明らかに狭い。仕切部62は吸気通路38にタンブル通路64を区画形成するように設けられて形成されているので、この幅W2の部分に関する偏位部90は相対的に幅狭である。
【0036】
更に、偏位部90は、左右方向つまり幅方向において一方向に偏っている。ここでは、タンブル通路64の下流端側部分64dは右R側に偏るように区画形成されている。したがって、このタンブル通路64の偏っている下流端側部分64dを少なくとも部分的に区画形成する仕切部62の下流側の偏位部90は、ここでは右R側に偏っている。したがって、ここでは、図1において、シリンダ軸線Cは紙面に平行に延び、幅方向は同紙面に略直交するように延びる方向であるので、仕切部62の下流側に延びる偏位部90はあらわれず、よって実線ではなく二点破線で示している。
【0037】
そして、第2燃料噴射弁70の取付部70sは、図6及び図7から明らかなように、吸気通路38の左L側に位置付けられている。このように、第2燃料噴射弁70は、偏位部90が偏った方向とは反対側の方向に偏った位置に設けられている。このように、第2燃料噴射弁70は、偏位部90が偏った方向とは異なる方向に、より好ましくは反対側の方向に燃料を噴射することができるように設けられている。なお、第2燃料噴射弁70は、上側につまり主通路66側に設けられていて、主通路66側から燃料を噴射する。
【0038】
ここで、図5に示す立体モデルMの透視図である図10において、左L側に偏った位置に設けた第2燃料噴射弁70から噴射された噴霧燃料Fを模式的に表す。また、図10に示すのと同様に燃料噴射弁から噴射された噴霧燃料Fを模式的に示す、立体モデルMの透視図を図11に示す。更に、図10に示すのと同様に燃料噴射弁から噴射された噴霧燃料Fを模式的に示す、立体モデルMの吸気流れ方向に沿った断面図を図12に示す。図10から図12より、第2燃料噴射弁70から噴射された燃料Fは仕切部62に阻まれることなく、その少なくとも一部が、ここでは特にその少なくとも過半が、より好ましくはその全てが、まず主通路66を流れ、次に主通路66とタンブル通路64との合流部に流れ、そして直接的に吸気弁口28に到達し、燃焼室20に導入されることが理解できる。このような燃料噴射を可能にするように、第2燃料噴射弁70の配置、及び、偏位部90を含む仕切部62の形状等は設計されている。特に、仕切部62の仕切本体部92はその下流側で終端して主通路66とタンブル通路64との合流を可能にし、また、偏位部90の表面90sに沿って偏位部90に好ましくは触れることなく、第2燃料噴射弁70から噴射された燃料Fが吸気弁口28に達するように、仕切部62の仕切本体部92及び偏位部90は設計されている(例えば図11参照)。
【0039】
ここで、図10の噴射燃料Fを含む立体モデルMにおける断面図を図13及び図14に示す。ただし、図13(a)は図2のSA-SA線に沿った位置での立体モデルMの断面図であり、図13(b)は図2のSB-SB線に沿った位置での立体モデルMの断面図であり、図13(c)は図2のSC-SC線に沿った位置での立体モデルMの断面図である。図14図13の立体モデルMの部分の斜視図であり、図14(a)の立体モデルは図13(a)の立体モデルであり、図14(b)の立体モデルは図13(b)の立体モデルであり、図14(c)の立体モデルは図13(c)の立体モデルである。
【0040】
図13(a)及び図14(a)の切断箇所では、タンブル通路64と主通路66とが完全に分かれている。この図2のSA-SA線の位置では、仕切部62は、タンブル通路64と主通路66との間において幅方向の両端でインレットパイプ36の内面36sにまで延びていて、偏位部90の上流側につながる仕切本体部92が延在する。なお、図13(a)及び図14(a)では、仕切部62の表面62s及びそのうちの仕切本体部92の表面92sに対応する個所にそれらの符号を付している。
【0041】
図13(b)及び図14(b)の切断箇所では、タンブル通路64と主通路66とは部分的につながっている。また、図13(b)及び図14(b)の切断面では、仕切部62の表面62sが幅方向に延びるとともに上下方向にも延びていて、右側に偏っている。これより、図2のSB-SB線の位置では、仕切部62は仕切本体部92から偏位部90に移行していて、その偏位部90がタンブル通路64と主通路66とを完全に隔てない程度に、吸気ポート32にシリンダヘッド14の内壁面14sの右側の箇所から左方向に延在していることがわかる。つまり、吸気流れ方向において偏位部90が延在する領域において主通路66とタンブル通路64とが連通するように、タンブル通路64及び主通路66は区画形成されている。換言すると、仕切部62の仕切本体部92よりも下流側において該仕切本体部92の一部を流れ方向に延長するように、仕切本体部92につながる偏位部90は仕切本体部92の下流側に延出して形成されている。なお、図13(b)及び図14(b)では、仕切部62の表面62s及びそのうちの偏位部90の表面90sに対応する個所にそれらの符号を付していて、これは図13(c)及び図14(c)でも同様である。
【0042】
図13(c)及び図14(c)の切断箇所では、図13(b)及び図14(b)の切断箇所と比べて、偏位部90のシリンダヘッド14の内壁面14からの左方向の突き出し量が減少している。このように、偏位部90は、吸気流れ方向の下流側ほど狭くなるように、形成されている。これにより、図13(b)及び図14(b)の切断箇所よりも、図13(c)及び図14(c)の切断箇所で、主通路66とタンブル通路64との連通の程度が増している。つまり、図13(c)及び図14(c)の切断位置でのタンブル通路64と主通路66とのつながる量は、図13(b)及び図14(b)の切断位置でのそれらのつながる量よりも大きくなっている。より具体的には、吸気流れ方向において偏位部90が延在する領域において主通路66が偏位部90の脇つまり側方にまで下方に延びるように、タンブル通路64及び主通路66は区画形成されている。この主通路66の下方への拡張は、偏位部90が偏った方向とは反対側の方向で実施され、ここでは偏位部90の左L側で行われている。なお、この主通路66の下方への拡張及びそれによる主通路66とタンブル通路64との融合は、偏位部90の下流側ほど顕著である。
【0043】
更に、図13及び図14に示すように、主通路66側から燃焼室20に向けて燃料Fを噴射するように設けられている第2燃料噴射弁70は、偏位部90が偏った方向とは反対側の方向に燃料を噴射するように設けられている。したがって、仕切部62を、特にその偏位部90を吸気流れ方向でより下流側にまで延ばすことができる。そして、タンブル通路64は偏位部90が偏った方向に下流側で偏るように区画形成されている。したがって、吸気流れ方向でより下流側にまで延長された仕切部62の偏位部90で、タンブル通路64からの吸気により強い指向性を与えることができる。
【0044】
このように、仕切部62は、その上流側の仕切本体部92で主通路66とタンブル通路64とを完全に仕切り、その下流側において、偏位部90を有して、主通路66とタンブル通路64とのつながりを実現しつつもタンブル通路64からの流れをより下流側まで特徴づけるように設計されている。また、第2燃料噴射弁70は偏位部90が偏った方向とは逆側に偏って配置され、ここでは幅方向において反対側に配置され、偏位部90とは異なる方向に燃料を噴射でき、吸気弁口28を介して概ね直接的に燃焼室20に燃料を導入することができる。つまり、燃焼室への燃料の供給を良好に確保することができる。したがって、仕切部62の下流側部分である偏位部90をより下流側にまで延ばすことができる。よって、タンブル通路64からの流れにより強い指向性を与えることができる。この指向性は燃焼室20でより強いタンブル流を形成するように吸気弁口28と開弁時の吸気弁46の傘部46aとの間に向けられているので、タンブル通路64からの吸気で燃焼室20により好適にタンブル流を形成することができる。
【0045】
なお、タンブル通路64が仕切部62の下流側縁部つまり偏位部90の下流側縁部90dよりも下流側で主通路66と連通し、燃焼室20に連なる単一の吸気通路となるように、タンブル通路64及び主通路66は区画形成されている。これにより、タンブル通路64からの吸気は主通路66からの吸気とともに燃焼室20に導入され得、単一の吸気通路である単一の吸気ポート32からの吸気で、燃焼室20への燃料の供給とタンブル流の形成とを生じさせることが可能になる。なお、この構成は、部品点数の増加を抑制でき、コスト面でも優れる。
【0046】
以上、本発明に係る実施形態及びその変形例について説明したが、本発明はそれらに限定されない。本願の特許請求の範囲によって定義される本発明の精神及び範囲から逸脱しない限り、種々の置換、変更が可能である。
【0047】
上記実施形態では、偏位部90を右側に偏らせ、第2燃料噴射弁70を左側に偏らせた。しかし、この配置に限定されず、偏位部90を左側に偏らせ、第2燃料噴射弁70を右側に偏らせてもよい。
【符号の説明】
【0048】
10…内燃機関、12…シリンダブロック、14…シリンダヘッド、15…ピストン
20…燃焼室、28…吸気弁口、30…排気弁口、32…吸気ポート、34…排気ポート
38…吸気通路、40…スロットルボディ、46…吸気弁、50…排気弁
62…仕切部、64…タンブル通路(第1吸気通路)、66…主通路(第2吸気通路)
68…第1燃料噴射弁、70…第2燃料噴射弁、90…偏位部、92…仕切本体部
M…立体モデル、S…吸気構造
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14