(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-25
(45)【発行日】2024-10-03
(54)【発明の名称】配線基板
(51)【国際特許分類】
H05K 1/02 20060101AFI20240926BHJP
H05K 3/46 20060101ALI20240926BHJP
H05K 3/28 20060101ALI20240926BHJP
H05K 3/00 20060101ALN20240926BHJP
【FI】
H05K1/02 J
H05K3/46 B
H05K3/28 A
H05K1/02 A
H05K3/00 N
(21)【出願番号】P 2021071065
(22)【出願日】2021-04-20
【審査請求日】2023-05-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142745
【氏名又は名称】伊藤 世子
(74)【代理人】
【識別番号】100136319
【氏名又は名称】北原 宏修
(74)【代理人】
【識別番号】100148275
【氏名又は名称】山内 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100143498
【氏名又は名称】中西 健
(72)【発明者】
【氏名】松橋 憲助
【審査官】小南 奈都子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-224392(JP,A)
【文献】特開2008-091560(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/02
H05K 3/46
H05K 3/28
H05K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセラミック層を積層した絶縁基板と、
前記絶縁基板の表面に設けられ、前記絶縁基板上に形成された溝によって分割されている表面金属層と、
前記絶縁基板の内部に配置されている配線層と
を備えている配線基板であって、
前記配線層は、上面視で前記溝の形成領域と重ならないように、前記溝の形成領域を迂回して配置されており、
前記溝の周囲には、絶縁コート層が設けられ、
前記配線層は、上面視で前記絶縁コート層の形成領域と重ならないように、前記絶縁コート層の形成領域を迂回して配置されており、
前記絶縁基板の内部には、内部金属層がさらに設けられており、
前記内部金属層には、上面視で前記溝の形成領域と重なる領域に、前記溝の形成領域の全てを含むように開口が形成されて
おり、
前記内部金属層の前記開口内には、前記セラミック層のみが設けられている、
配線基板。
【請求項2】
複数のセラミック層を積層した絶縁基板と、
前記絶縁基板の表面に設けられている表面金属層と、
前記絶縁基板の内部に配置されている配線層と、
前記表面金属層の一部を覆うように配置されている絶縁コート層と
を備えている配線基板であって、
前記配線層は、上面視で前記絶縁コート層の形成領域と重ならないように、前記絶縁コート層の形成領域を迂回して配置されており、
前記絶縁基板の内部には、内部金属層がさらに設けられており、
前記内部金属層には、上面視で前記絶縁コート層の形成領域と重なる領域に、前記絶縁コート層の全ての形成領域を含むように開口が設けられて
おり、
前記内部金属層の前記開口内には、前記セラミック層のみが設けられている、
配線基板。
【請求項3】
前記配線層は、前記絶縁基板の表面からの距離が0.5mm以内の位置に設けられている、請求項1または2に記載の配線基板。
【請求項4】
前記内部金属層は、前記絶縁基板の表面からの距離が0.5mm以内の位置に設けられている、請求項1または2に記載の配線基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面の金属層に溝または切断の目印となり得る絶縁コート層が形成されている配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子等の電子部品が搭載される配線基板には、セラミックなどで形成されている絶縁基板の表面に、金属などの導電性材料を用いて形成されている金属層が設けられている。この金属層は、外部の電子部品との接続端子などとして利用される。
【0003】
この金属層の表面には、金属層を保護するためのメッキ層が形成されている。メッキ層は、電解メッキ法を用いて形成される。電解メッキ法は、金属層と電気的に接続されたメッキ用配線を通電させることによって行われる。このようにして金属層の表面にメッキ層が形成された後に、金属層をメッキ用配線から電気的に独立させるために、金属層とメッキ用配線との間を切断することが必要となる場合がある。
【0004】
例えば、特許文献1には、リューターなどの研削装置を用いてメタライズ層の一部を研削除去し、メタライズ配線層とメタライズ金属層とを電気的に独立させることが記載されている。また、特許文献2には、イオンビーム、レーザビーム、および電子ビームなどの光線を照射することによって、メッキ用配線として機能する引出配線を切断することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平9-22958号公報
【文献】特開2017-32290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、金属層をメッキ用配線から電気的に独立させるために、金属層とメッキ用配線との間を切断する場合には、例えば、基板の表面に照射する光線の強度を高くし過ぎると、基板の内部にまで光線が到達して基板に深い溝が形成される可能性がある。基板の内部に形成されている配線層などが、このような溝の形成領域と重なると、内部の配線層にも溝が形成されてしまう。このようにして、配線層が切断されると、配線層の導通不良が発生する。また、基板の内部に形成されている金属層に溝が形成されると、金属層の一部が表面に露出することになり、金属層に短絡の可能性が増加してしまう。
【0007】
そこで、本発明では、基板の内部に形成されている配線層などの金属層を切断する可能性を低減させることのできる配線基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一局面にかかる配線基板は、絶縁基板と、前記絶縁基板の表面に設けられ、前記絶縁基板上に形成された溝によって分割されている表面金属層と、前記絶縁基板の内部に配置されている配線層とを備えている。この配線基板において、前記配線層は、上面視で前記溝の形成領域と重ならないように、前記溝の形成領域を迂回して配置されている。
【0009】
上記の構成によれば、表面金属層を分割する溝を形成するために行う溝形成工程において、絶縁基板の内部に形成されている配線層を切断する可能性を低減させることができる。
【0010】
上記の本発明の一局面にかかる配線基板において、前記溝の周囲には、絶縁コート層が設けられていてもよい。
【0011】
上記の構成によれば、溝を形成する際の目印として絶縁コート層を利用することができる。
【0012】
上記の本発明の一局面にかかる配線基板において、前記配線層は、上面視で前記絶縁コート層の形成領域と重ならないように、前記絶縁コート層の形成領域を迂回して配置されていてもよい。
【0013】
上記の構成によれば、溝を形成する際の目印となる絶縁コート層の形成領域と上面視で重ならないように配線層が設けられていることで、溝形成工程時に絶縁基板の内部に形成されている配線層を切断する可能性をより低減させることができる。
【0014】
上記の本発明の一局面にかかる配線基板において、前記絶縁基板の内部には、内部金属層がさらに設けられており、前記内部金属層には、上面視で前記溝の形成領域と重なる領域に、前記溝の形成領域の全てを含むように開口が形成されていてもよい。
【0015】
上記の構成によれば、表面金属層を分割する溝を形成するために行う溝形成工程において、絶縁基板の内部に形成されている内部金属層に溝が形成される可能性を低減させることができる。これにより、内部金属層の一部が表面に露出することを避けることができ、内部金属層が短絡する可能性を低減させることができる。
【0016】
本発明のもう一つの局面にかかる配線基板は、絶縁基板と、前記絶縁基板の表面に設けられている表面金属層と、前記絶縁基板の内部に配置されている配線層と、前記表面金属層の一部を覆うように配置されている絶縁コート層とを備えている。この配線基板において、前記配線層は、上面視で前記絶縁コート層の形成領域と重ならないように、前記絶縁コート層の形成領域を迂回して配置されている。
【0017】
上記の構成によれば、レーザビームなどを用いて表面金属層を分割する際に、レーザビームが内部の配線層の形成位置にまで到達し、配線層がレーザビームによって切断される可能性を回避することができる。
【0018】
上記の本発明のもう一つの局面にかかる配線基板において、前記絶縁基板の内部には、内部金属層がさらに設けられており、前記内部金属層には、上面視で前記絶縁コート層の形成領域と重なる領域に、前記絶縁コート層の全ての形成領域を含むように開口が設けられていてもよい。
【0019】
上記の構成によれば、レーザビームなどを用いて表面金属層を分割する際に、レーザビームが内部金属層の形成位置にまで到達し、内部金属層に溝が形成される可能性を回避することができる。これにより、内部金属層の一部が表面に露出することを避けることができ、内部金属層が短絡する可能性を低減させることができる。
【0020】
上記の本発明の何れかの局面にかかる配線基板において、前記配線層は、前記絶縁基板の表面からの距離が0.5mm以内の位置に設けられていてもよい。
【0021】
上記の構成によれば、表面金属層にレーザビームを照射した際に、レーザビームのエネルギーが到達する可能性のある絶縁基板の表面からの距離が0.5mm以内の位置において、絶縁コート層の形成領域を迂回して配線層を配置することができる。そのため、配線層がレーザビームによって切断される可能性を回避することができる。
【0022】
上記の本発明の何れかの局面にかかる配線基板において、前記内部金属層は、前記絶縁基板の表面からの距離が0.5mm以内の位置に設けられていてもよい。
【0023】
上記の構成によれば、表面金属層にレーザビームを照射した際に、レーザビームのエネルギーが到達する可能性のある絶縁基板の表面からの距離が0.5mm以内の位置において、絶縁コート層の形成領域と上面視で重なる位置に内部金属層を設けないようにすることができる。そのため、内部金属層に溝が形成される可能性を回避することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の一局面にかかる配線基板によれば、基板の内部に形成されている配線層などの金属層を切断する可能性を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる配線基板の構成を示す平面模式図である。
【
図2】
図1に示す配線基板に半導体素子が搭載された半導体パッケージの構成を示す平面模式図である。
【
図3】
図1に示す配線基板の一部分の上面の構成を示す平面図である。
【
図4】
図3に示す配線基板のA-A線部分の構成を示す断面図である。
【
図5】
図3に示す配線基板の内部のセラミック層上に設けられているベタパターンを示す平面図である。
【
図6】
図3に示す配線基板の内部のセラミック層上に設けられている内部配線を示す平面図である。
【
図7】
図3に示す配線基板のアルミナコートの形成領域に溝が形成された状態を示す平面図である。
【
図8】
図7に示す配線基板のB-B線部分の構成を示す断面図である。
【
図9】変形例にかかる配線基板の構成を示す断面図である。
【
図10】第2の実施形態にかかる配線基板の一部分の上面の構成を示す平面図である。
【
図11】
図10に示す配線基板のE-E線部分の構成を示す断面図である。
【
図12】
図10に示す配線基板の内部のセラミック層上に設けられているベタパターンおよび内部配線を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0027】
〔第1の実施形態〕
本実施形態では、本発明にかかる配線基板の一例として、配線基板1を例に挙げて説明する。この配線基板1には、半導体チップ71が搭載され、半導体パッケージ70を構成する。
【0028】
図1には、配線基板1の平面構成を模式的に示す。配線基板1は、上面視で略四角形状を有している。配線基板1の外形は、複数のセラミック層を含むセラミック基板(絶縁基板)11で形成されている。セラミック基板11の上面の中央部には、上面視で略四角形状の凹部10が形成されている。凹部10の底面には、半導体チップ71などの半導体素子が搭載される素子搭載予定部10aとなっている。
【0029】
上記のような構成を有する配線基板1の素子搭載予定部10aには、半導体チップ71が搭載される。これにより、半導体パッケージ70が得られる。
図2には、半導体パッケージ70の概略構成を示す。
【0030】
配線基板1は、ボンディングワイヤ72を介して半導体チップ71と電気的に接続される。具体的には、配線基板1の各配線部31と、半導体チップ71の各接続端子(図示せず)とが、ボンディングワイヤ72によって電気的に接続される。これにより、各配線部31と半導体チップ71との間で電気信号の伝達が可能となる。各配線部31は、基台セラミック層20の上面に形成されている。
【0031】
また、凹部10を取り囲むように形成されているセラミック基板11の側壁の上面には、上面金属層51が形成されている。本実施形態では、上面金属層51は、最上層に位置する第2セラミック層22の表面に形成されている。上面金属層51は、電解メッキ時にメッキ用配線として利用される。上面金属層51は、凹部10を取り囲むように形成された枠状の導電パターンを有している。電解メッキ時には、端子部53に印加された電力が、上面金属層51を介して各金属層に伝達される。
【0032】
上面金属層51は、引き出し配線部52を有している。引き出し配線部52は、上面金属層51の所定の位置から枝分かれするように設けられている。引き出し配線部52の配置位置は、配線基板1に形成されている配線、端子、およびビアなどの各導電パターンの形状に応じて任意に決めることができる。
【0033】
引き出し配線部52の先端には、端子部53が設けられている。この端子部53は、電解メッキ時に電力を印加するための接続端子として利用される。また、この端子部53は、配線基板1の電気検査時には、検査用の端子として利用される。
【0034】
上面金属層51(引き出し配線部52を含む)および端子部53の表面は、メッキ層で被覆されている。メッキ層は、電解メッキ法を用いて形成される。電解メッキ法は、端子部53および引き出し配線部52を介して、上面金属層51などの金属層に電力を印加することによって行われる。このようにして金属層の表面にメッキ層が形成された後、引き出し配線部52は切断され、端子部53と上面金属層51とは、電気的に独立した状態となる。
【0035】
また、引き出し配線部52上には、引き出し配線部52の一部を横切るようにアルミナコート(絶縁コート層)55が設けられている。アルミナコート55は、メッキ処理が終了した後に行われる上述の配線の切断処理(レーザカット)を行う際の切断箇所の目印となる。アルミナコート55は、アルミナを含有する絶縁ペーストを引き出し配線部52上の所定の位置に塗布することによって形成される。
【0036】
なお、本実施形態では、絶縁コート層の一例としてアルミナコートを挙げているが、絶縁コート層の材料は非導電性を有しているものであればよく、アルミナに限定はされない。
【0037】
配線基板1上に半導体チップ71が搭載された状態で、セラミック基板11の凹部10には、液状の樹脂材料が流し込まれる。この樹脂材料が硬化することで、凹部10には、樹脂が充填された状態となる。これにより、半導体パッケージ70が得られる。なお、セラミック基板11の凹部10に樹脂材料を流し込まない構成も可能である。すなわち、別の実施態様では、半導体パッケージ70は、配線基板1上に半導体チップ71を載せ、これらを互いに電気的に接続させることによって形成される。
【0038】
セラミック基板11は、複数のセラミック層を積層した積層構造を有している。本実施形態では、セラミック基板11は、下層から順に、基台セラミック層20、第1セラミック層21、および第2セラミック層22が積層された構成を有している(
図4など参照)。
【0039】
各セラミック層は、例えば、アルミナ(Al2O3)を主成分とする高温焼成セラミックで形成することができる。また、別の実施態様では、セラミック層は、ガラス-セラミックなどの中温焼成セラミック(MTCC)、または低温焼成セラミック(LTCC)で形成されていてもよい。
【0040】
基台セラミック層20は、略四角形の平板状を有している。基台セラミック層20の上面の中央部には、凹部10が形成されている。凹部10の底面は、素子搭載予定部10aとなっている。
【0041】
第1セラミック層21は、基台セラミック層20と略同じ大きさの略四角形の平板状を有しており、中央部に開口部を有する枠状の形状を有している。第1セラミック層21は、基台セラミック層20上に積層され、上面視で基台セラミック層20の上面の外周部分を囲うように設けられている。
【0042】
第2セラミック層22は、基台セラミック層20および第1セラミック層21と略同じ大きさの略四角形の平板状を有しており、中央部に開口部を有する枠状の形状を有している。第2セラミック層22の開口部は、第1セラミック層21の開口部と略同じ開口面積を有している。第2セラミック層22は、第1セラミック層21上に積層され、上面視で第1セラミック層21の上面の外周部分を囲うように設けられている。
【0043】
上記の構成により、配線基板1には、基台セラミック層20の上面の中央部に位置している凹部10の外周を取り囲むように、第1セラミック層21および第2セラミック層22で形成されているセラミック基板11の側壁が形成される。
【0044】
なお、本実施形態では、第1セラミック層21および第2セラミック層22は中央部に開口部を有する枠状の形状を有しているが、別の実施態様では、第1セラミック層21および第2セラミック層22に開口部が設けられていない構成も可能である。
【0045】
各セラミック層上に形成されている配線部31および上面金属層51などは、導電性材料を所定形状に成形して得られる導電パターンで形成されている。導電パターンは、例えば、銅(Cu)、チタン(Ti)、タングステン(W)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、金(Au)、白金(Pt)、モリブデン(Mo)、ニッケル(Ni)、またはマンガン(Mn)などの金属材料、あるいはこれらの金属材料を主成分とする合金材料によって形成することができる。
【0046】
導電パターンの形成には、例えば、印刷ペーストによるメタライズ法、パターン状の金属層を転写する方法などの従来公知の方法が用いられる。これらの各方法の中でも、例えば、メタライズ法を用いることが好ましい。
【0047】
続いて、配線基板1における引き出し配線部52および端子部53の形成領域周辺のより具体的な構成について説明する。
図3には、配線基板1における引き出し配線部52周辺の構成を示す。
図3は、
図1に示す配線基板1の破線枠内の領域を拡大して示す平面図である。
図4は、
図3に示す配線基板1のA-A線部分の構成を示す断面図である。
【0048】
また、
図5は、
図3に示す配線基板1の第1セラミック層21上に設けられているベタパターン(内部金属層)41のパターン形状を示す平面図である。
図6は、
図3に示す配線基板1の基台セラミック層20上に設けられている内部配線(配線層)32のパターン形状を示す平面図である。
【0049】
図4などに示すように、本実施形態では、セラミック基板11は、下層から順に、基台セラミック層20、第1セラミック層21、および第2セラミック層22が積層された構成を有している。
【0050】
セラミック基板11の上面を形成している第2セラミック層22の表面には、端子部53および引き出し配線部52などの金属層が形成されている。これらの金属層は、表面金属層とも呼ばれる。また、引き出し配線部52上には、引き出し配線部52の一部を覆うようにアルミナコート55が配置されている。本実施形態では、アルミナコート55は、引き出し配線部52の延伸方向と交差するように、すなわち、引き出し配線部52を横切るように配置されている。
【0051】
セラミック基板11の下面を形成している基台セラミック層20の表面には、下面金属層35が形成されている。下面金属層35は、配線部31および上面金属層51などと同様に、導電性材料を所定形状に成形して得られる導電パターンで形成されている。
図4などに示すように、下面金属層35は、セラミック基板11の内部を貫通するように設けられているビア36によって、セラミック基板11の上面に設けられている端子部53と電気的に接続されている。
【0052】
また、セラミック基板11の内部には、内部配線32およびベタパターン41などの導電パターンが設けられている。内部配線32およびベタパターン41は、配線部31および上面金属層51などと同様に、導電性材料を所定形状に成形して得られる導電パターンで形成されている。
【0053】
本実施形態では、第1セラミック層21上に、ベタパターン41が設けられている。ベタパターン41は、第1セラミック層21の表面の大部分を覆うように設けられている。ベタパターン41は、例えば、グランド(GND)に接続される。これにより、配線基板1に設けられた各配線内を伝達する電気信号へのノイズの影響を低減させることができる。なお、ノイズの低減効果を高めるためには、ベタパターン41の配置領域はできるだけ大きくすることが好ましい。
【0054】
そこで、本実施形態にかかる配線基板1では、ベタパターン41は、ビア36の配置領域およびその周辺領域、並びにパターン抜き部(開口)42を除いた第1セラミック層21の表面全体に形成されている。
【0055】
パターン抜き部42は、ベタパターン41を形成している導電パターンの一部に開口を設けることによって形成される。パターン抜き部42は、上面視でアルミナコート55の形成領域と重なる領域に、アルミナコート55の全ての形成領域を含むように設けられている(
図5参照)。
図5に示す例では、パターン抜き部42の開口形状は、略四角形となっているが、開口形状は略四角形に限定されない。また、パターン抜き部42がベタパターン41の端部に設けられている場合には、ベタパターン41の端部の一部分を切り欠くことによってパターン抜き部42を形成してもよい。
【0056】
ベタパターン41に上記のようなパターン抜き部42が設けられていることにより、レーザビームなどを用いて引き出し配線部52を切断する際に、レーザビームがベタパターン41の形成位置にまで到達し、ベタパターン41に溝が形成される可能性を回避することができる。これにより、第1セラミック層21に溝61が形成された場合であっても、ベタパターン41の一部が表面に露出することを避けることができ、ベタパターン41が短絡する可能性を低減させることができる。
【0057】
また、本実施形態では、基台セラミック層20上に、内部配線32が設けられている。内部配線32は、基台セラミック層20と第1セラミック層21との間に、任意のパターン形状で張り巡らされている。また、内部配線32の一部は、配線基板1の上面に露出した配線部31と接続されている。
【0058】
内部配線32は、上面視でアルミナコート55の形成領域と重ならないように、アルミナコート55の形成領域を迂回して配置されている(
図6参照)。これにより、レーザビームなどを用いて引き出し配線部52を切断する際に、レーザビームが内部配線32の形成位置にまで到達し、内部配線32がレーザビームによって切断される可能性を回避することができる。
【0059】
続いて、引き出し配線部52に溝61が形成された状態の配線基板1について説明する。
図7には、配線基板1の上面のアルミナコート55の形成領域に溝61が形成された状態を示す。
図7は、
図2に示す半導体パッケージ70の破線枠内の領域を拡大した図に相当する。
図8は、
図7に示す配線基板1のB-B線部分の構成を示す断面図である。
【0060】
溝61は、引き出し配線部52を横切るように設けられている。このような溝61は、
図1に示すような配線基板1を製造した後に、光線(例えば、レーザビーム、イオンビーム、電子ビームなど)または切削工具(例えば、リューターなど)などを使用した溝形成工程を行うことによって形成することができる。溝形成工程は、配線基板1を焼成した後、基板表面などに形成された金属層に電解メッキ処理を行ってメッキ層を形成した後に実施される。このようにして、引き出し配線部52を分割するような溝61が形成されることによって、端子部53と上面金属層51との電気的な接続を遮断することができる。
【0061】
溝形成工程は、レーザビームを使用して行うことが好ましい。これにより、目的とする位置をより的確に指定して溝を形成することができるとともに、より微細な溝を形成することができる。使用するレーザビームとしては、例えば、CO2レーザ、ファイバレーザ、YAGレーザなどのレーザ加工に用いられる一般的なレーザビームが挙げられる。また、レーザ加工の条件は、基板上に形成された配線の切断処理を行う際の通常の条件を適用することができる。
【0062】
図3では、溝形成工程においてレーザビームが照射される領域Cを破線枠で示す。上述したように、引き出し配線部52上の切断予定領域には、切断箇所の目印となり得るアルミナコート55が設けられている。レーザビームの照射領域Cは、アルミナコート55の形成領域の範囲内にある。溝形成工程時には、アルミナコート55の形成領域に対してレーザビームを照射する。
【0063】
領域Cにレーザビームが照射されると、溝61が形成される。
図8などに示すように、溝61は、セラミック基板11の内部にまで形成される。形成される溝61の深さは、レーザビームの強度などの諸条件によって異なるが、例えば、基板表面から最大で0.5mm程度になることがある。
【0064】
一方、第1セラミック層21および第2セラミック層22などの各セラミック層の厚さは、例えば、0.1mm以上0.3mm以下の範囲内である。そのため、配線基板1の上面からレーザビームを照射すると、レーザビームは第1セラミック層21の内部にまで到達し得る。これにより、
図8に示すように、溝61は、第2セラミック層22を貫通し、第1セラミック層21の一部にまで形成され得る。
【0065】
本実施形態にかかる配線基板1では、第1セラミック層21と第2セラミック層22との間に設けられているベタパターン41にパターン抜き部42が設けられている。上述したように、パターン抜き部42は、上面視でアルミナコート55の形成領域と重なる領域に、アルミナコート55の全ての形成領域を含むように設けられている(
図5参照)。そして、レーザビームの照射領域Cは、アルミナコート55の形成領域の範囲内にある。
【0066】
そのため、レーザビームを照射することによって形成される溝61は、上面視でパターン抜き部42の形成領域の範囲内に位置する。すなわち、ベタパターン41は、上面視で溝61の形成領域と重なる領域に、溝61の形成領域の全てを含むようなパターン抜き部42を有している。
【0067】
この構成によれば、溝形成工程時に、レーザビームがベタパターン41の形成位置にまで到達し、ベタパターン41に溝が形成される可能性を回避することができる。これにより、第1セラミック層21に溝61が形成された場合であっても、ベタパターン41の一部が表面に露出することを避けることができ、ベタパターン41が短絡する可能性を低減させることができる。
【0068】
また、本実施形態にかかる配線基板1では、基台セラミック層20と第1セラミック層21との間には、内部配線32が設けられている。上述したように、内部配線32は、上面視でアルミナコート55の形成領域と重ならないように、アルミナコート55の形成領域を迂回して配置されている(
図6参照)。そして、レーザビームの照射領域Cは、アルミナコート55の形成領域の範囲内にある。
【0069】
そのため、レーザビームを照射することによって形成される溝61は、上面視で内部配線32の形成位置と重ならない領域に形成される。すなわち、内部配線32は、上面視で溝61の形成領域と重ならないように、溝61の形成領域を迂回して配置されている。
【0070】
この構成によれば、溝形成工程において、内部配線32が形成されている第1セラミック層21にまでレーザビームが到達した場合であっても、内部配線32がレーザビームによって切断される可能性を回避することができる。
【0071】
上述したように、溝形成工程において形成される溝61の深さは、例えば、基板表面から最大で0.5mm程度になる。そのため、本実施形態は、内部配線32が、セラミック基板11の表面からの距離が0.5mm以内の位置に設けられている構成において適用されることが好ましい。同様に、本実施形態は、ベタパターン41が、セラミック基板11の表面からの距離が0.5mm以内の位置に設けられている構成において適用されることが好ましい。
【0072】
また、本実施形態の構成は、内部配線32およびベタパターン41が、セラミック基板11の表面からの距離が0.3mm以内の位置に設けられている構成において適用されることがより好ましい。各セラミック層の厚さは、0.1mm以上0.3mm以下の範囲内である。したがって、基板表面から3層以上離れた位置にあるセラミック層上に形成される配線層については、アルミナコート55および溝61の形成領域を迂回させなくてもよい。また、基板表面から3層以上離れた位置にあるセラミック層上に形成される内部金属層については、上面視でアルミナコート55および溝61の形成領域と重なる領域に開口が設けられていなくてもよい。
【0073】
(変形例1)
図9には、本実施形態の一変形例にかかる配線基板101の一部分の断面構成を示す。配線基板101は、セラミック基板111を備えている。セラミック基板111は、下層から順に、基台セラミック層20、第3セラミック層23、第1セラミック層21、および第2セラミック層22が積層された構成を有している。配線基板101においては、基台セラミック層20と第1セラミック層21との間に第3セラミック層23がさらに設けられている点が、配線基板1とは異なっている。
【0074】
セラミック基板111の内部には、内部配線32およびベタパターン41などの導電パターンが設けられている。内部配線32およびベタパターン41の構成については、配線基板1の構成と同様の構成が適用できる。
【0075】
変形例にかかる配線基板101においては、基台セラミック層20と第3セラミック層23との間に、金属層135がさらに設けられている。金属層135は、ベタパターンとして機能してもよいし、内部配線として機能してもよい。セラミック基板111の表面から金属層135の配置位置までの距離Dは、0.5mmよりも大きくなっている。金属層135は、上面視で、溝61の形成領域、あるいは、アルミナコート55の形成領域と重なる位置に設けられている。
【0076】
このように、セラミック基板111の表面からの厚み方向の距離Dが0.5mmを超える位置には、溝形成工程においてレーザビームが到達する可能性が低いため、金属層135などの配線層または内部金属層が設けられていてもよい。
【0077】
なお、第1の実施形態の配線基板1のように、セラミック基板11の全てのセラミック層において、内部配線32が、上面視でアルミナコート55または溝61の形成領域と重ならないように迂回して配置されていることがより好ましい。同様に、セラミック基板11の全てのセラミック層において、ベタパターン41が、上面視でアルミナコート55または溝61の形成領域と重なる領域にパターン抜き部42を有していることがより好ましい。これにより、配線基板1の製造後に行う各配線の電気検査を省略することができる。
【0078】
(他の変形例)
また、別の変形例では、アルミナコート55が設けられていなくてもよい。すなわち、一変形例にかかる配線基板においては、セラミック基板11の表面に設けられている引き出し配線部52を横切るように溝61が設けられているが、溝61の周囲にアルミナコート55は設けられていない。そして、セラミック基板11の内部に配置されている内部配線32は、上面視で溝61の形成領域と重ならないように迂回して配置されている。
【0079】
また、引き出し配線部52の先端に設けられている端子部53は、電解メッキ時に電力を印加するための接続端子に限定されない。一変形例では、端子部53は、例えば、コンデンサ実装用のパッドなどの特定の実装用のパッドであってもよい。すなわち、引き出し配線部52の切断処理は、特定の実装用のパッドを、他の実装用パッドから独立させるために行われてもよい。
【0080】
(第1の実施形態のまとめ)
以上のように、本実施形態にかかる配線基板1は、セラミック基板(絶縁基板)11と、セラミック基板11の表面に設けられている表面金属層と、セラミック基板11の内部に配置されている配線層と、表面金属層を横切るように設けられている溝61とを備えている。表面金属層(例えば、引き出し配線部52)は、溝61によって分割されている。配線層(例えば、内部配線32)は、上面視で溝61の形成領域と重ならないように、溝61の形成領域を迂回して配置されている。
【0081】
上記の構成によれば、引き出し配線部52に溝61を形成するために行う溝形成工程において、セラミック基板11の内部に形成されている配線層などを切断する可能性を低減させることができる。
【0082】
なお、配線基板1を単体で出荷するような場合などには、配線基板1は、溝61を有していなくてもよい。
【0083】
すなわち、本実施形態にかかる配線基板1は、セラミック基板(絶縁基板)11と、セラミック基板11の表面に設けられている表面金属層と、セラミック基板11の内部に配置されている配線層と、表面金属層(例えば、引き出し配線部52)の一部を覆うように配置されている絶縁コート層(例えば、アルミナコート55)とを備えている。配線層(例えば、内部配線32)は、上面視で絶縁コート層の形成領域と重ならないように、絶縁コート層の形成領域を迂回して配置されている。
【0084】
上記の構成によれば、引き出し配線部52上のアルミナコート55にレーザビームなどを照射して引き出し配線部52を切断する際に、セラミック基板11の内部に形成されている配線層などを切断する可能性を低減させることができる。
【0085】
〔第2の実施形態〕
続いて、第2の実施形態にかかる配線基板1について、
図10から
図12を参照しながら説明する。
図10には、第2の実施形態にかかる配線基板201の一部分の上面を拡大して示す。
図10では、配線基板201における引き出し配線部52周辺の構成を示す。
【0086】
第2の実施形態にかかる配線基板201においては、セラミック基板11の上面に、上面金属層51の所定の位置から枝分かれした引き出し配線部52が2個設けられている。
図12では、2個の引き出し配線部52のうち、左側に位置するものを引き出し配線部52Aとし、右側に位置するものを引き出し配線部52Bとする。各引き出し配線部52の先端には、端子部53がそれぞれ設けられている。
図12では、2個の端子部53のうち、左側に位置するものを端子部53Aとし、右側に位置するものを端子部53Bとする。
【0087】
引き出し配線部52A上には、引き出し配線部52Aの一部を横切るようにアルミナコート(絶縁コート層)55Aが設けられている。引き出し配線部52B上には、引き出し配線部52Bの一部を横切るようにアルミナコート(絶縁コート層)55Bが設けられている。アルミナコート55Aおよび55Bは、メッキ処理が終了した後に行われる上述の配線の切断処理(レーザカット)を行う際の切断箇所の目印となる。
【0088】
そして、引き出し配線部52Aの形成領域内には、溝61Aが設けられている。また、引き出し配線部52Bの形成領域内には、溝61Bが設けられている。溝61Aおよび61Bは、それぞれ引き出し配線部52Aおよび52Bを横切るように設けられている。
【0089】
図11は、
図10に示す配線基板1のE-E線部分の構成を示す断面図である。
図12は、
図10に示す配線基板201の第1セラミック層21上に設けられているベタパターン(内部金属層)241および内部配線(配線層)232のパターン形状を示す平面図である。
【0090】
セラミック基板11の内部には、内部配線232およびベタパターン241、並びに内部配線32などの導電パターンが設けられている。具体的には、第1セラミック層21上に、内部配線232およびベタパターン241が設けられており、基台セラミック層20上に、内部配線32が設けられている。
【0091】
ベタパターン241は、第1セラミック層21の表面の一部の領域を覆うように設けられている。
図12に示す例では、ベタパターン241は、上面視で、引き出し配線部52Aおよび端子部53Aなどの形成領域と重なる領域に設けられている。
【0092】
ベタパターン241は、パターン抜き部42を有している。パターン抜き部42は、ベタパターン41を形成している導電パターンの一部に開口を形成することによって形成される。パターン抜き部42は、上面視で、引き出し配線部52A上に設けられているアルミナコート55Aの形成領域と重なる領域に、アルミナコート55の全ての形成領域を含むように設けられている(
図12参照)。そして、溝形成工程時に照射されるレーザビームの照射領域Cは、アルミナコート55Aの形成領域の範囲内にある。
【0093】
この構成によれば、溝形成工程時に、レーザビームがベタパターン41の形成位置にまで到達し、ベタパターン41に溝が形成される可能性を回避することができる。これにより、第1セラミック層21に溝61Aが形成された場合に、ベタパターン241の一部が表面に露出することを避けることができ、ベタパターン241が短絡する可能性を低減させることができる。
【0094】
また、本実施形態では、第1セラミック層21上には、ベタパターン241の他に内部配線232が設けられている。内部配線232は、上面視でアルミナコート55Bの形成領域と重ならないように、アルミナコート55Bの形成領域を迂回して配置されている(
図12参照)。そして、溝形成工程時に照射されるレーザビームの照射領域Cは、アルミナコート55Bの形成領域の範囲内にある。
【0095】
この構成によれば、レーザビームを照射することによって形成される溝61Bは、上面視で内部配線232の形成位置と重ならない領域に形成される。したがって、レーザビームなどを用いて引き出し配線部52Bを切断する際に、レーザビームが内部配線232の形成位置にまで到達し、内部配線232がレーザビームによって切断される可能性を回避することができる。
【0096】
なお、第1の実施形態と同様に、配線基板201には、基台セラミック層20と第1セラミック層21との間に内部配線32が設けられている。内部配線32は、上面視でアルミナコート55Aおよび55Bの形成領域と重ならないように、アルミナコート55Aおよび55Bの形成領域を迂回して配置されている。これにより、レーザビームなどを用いて引き出し配線部52Aおよび52Bを切断する際に、レーザビームが内部配線32の形成位置にまで到達し、内部配線32がレーザビームによって切断される可能性を回避することができる。
【0097】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。また、本明細書で説明した異なる実施形態の構成を互いに組み合わせて得られる構成についても、本発明の範疇に含まれる。
【符号の説明】
【0098】
1 :配線基板
11 :セラミック基板(絶縁基板)
20 :基台セラミック層
21 :第1セラミック層
22 :第2セラミック層
32 :内部配線(配線層)
41 :ベタパターン(内部金属層)
42 :パターン抜き部(開口)
52 :引き出し配線部(表面金属層)
53 :端子部
55 :アルミナコート(絶縁コート層)
61 :溝
70 :半導体パッケージ
71 :半導体素子
101 :配線基板
111 :セラミック基板
201 :配線基板
232 :内部配線(配線層)
241 :ベタパターン(内部金属層)