IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ニフコの特許一覧

<>
  • 特許-空調用レジスタフィン 図1
  • 特許-空調用レジスタフィン 図2
  • 特許-空調用レジスタフィン 図3
  • 特許-空調用レジスタフィン 図4
  • 特許-空調用レジスタフィン 図5
  • 特許-空調用レジスタフィン 図6
  • 特許-空調用レジスタフィン 図7
  • 特許-空調用レジスタフィン 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-25
(45)【発行日】2024-10-03
(54)【発明の名称】空調用レジスタフィン
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/34 20060101AFI20240926BHJP
【FI】
B60H1/34 611A
B60H1/34 651B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021100617
(22)【出願日】2021-06-17
(65)【公開番号】P2023000036
(43)【公開日】2023-01-04
【審査請求日】2023-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000135209
【氏名又は名称】株式会社ニフコ
(74)【代理人】
【識別番号】100088708
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】谷亀 尚史
【審査官】佐藤 正浩
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0206270(US,A1)
【文献】実公昭42-006600(JP,Y1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0366807(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状のフィン本体、及び前記フィン本体の短手方向にある一方の縁に沿って配設された長尺状の加飾部材を備え、空調用空気の通風路を有したケースに対し傾動可能に組み付けられる空調用レジスタフィンであって、
前記フィン本体は短手方向の一方の縁部分が加飾部材用の取付部に設定され、該取付部の上下面に設けられて一端から他端付近まで延びた係合溝を有し、
前記加飾部材は縦断面が前記取付部を収容可能な略U形からなり、該U形の対向している上下面にそれぞれ設けられた係合突起を有しており、
前記取付部は、長手方向の少なくとも一端側付近にあって表面を段差に形成した状態で前記係合溝に通じている開口部を有しており、前記係合突起を前記開口部を通して前記係合溝内に係合し、その係合状態を保って前記加飾部材を前記フィン本体に対し長手方向に摺動して組み付け可能となっていることを特徴とする空調用レジスタフィン。
【請求項2】
前記係合溝は長手方向の一端を前記フィン本体の側面まで延設し、長手方向の他端に前記係合突起の摺動を規制する規制部を設けていることを特徴とする請求項1に記載の空調用レジスタフィン。
【請求項3】
前記フィン本体及び前記加飾部材は、左右略中間部に設けられて互いに係脱する係止部と被係止部の異なる一方を有し、前記係止部と前記被係止部の係合により前記加飾部材を前記フィン本体に仮止めしたり位置決め可能となることを特徴とする請求項1又は2に記載の空調用レジスタフィン。
【請求項4】
前記フィン本体の対応縁部分を前記加飾部材のU形の内側で把持し、かつ前記加飾部材の長手方向の一端側及び他端側に設けられた複数の係合突起で挟持していることを特徴とする請求項3に記載の空調用レジスタフィン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、風向調整装置に組み込まれて空調装置からの空調用空気の吹き出し態様を可変するときに好適な空調用レジスタフィンに関する。
【背景技術】
【0002】
図8は特許文献1に開示の空調用レジスタフィンを示し、(a)は空調用レジスタフィンを示す分解斜視図、(b)はフィン本体に加飾部材を組み付けた状態で示す空調用レジスタフィンの断面図、(c)は(b)の5b-5b線断面図である。同図の空調用レジスタフィン(下流フィン)14は、長尺状のフィン本体21、及びフィン本体の短手方向にある一方の縁に沿って配設された長尺状の加飾部材22を備え、空調用空気の通風路を有した不図示のケース(リテーナ)に対し傾動可能に組み付けられる。この構造では、フィン本体21及び加飾部材22のうちの一方には係合突部36が設けられ、他方には係合突部36を収容する収容凹部41が設けられ、収容凹部41には係合突部36を挟持して係合する係合爪部45が突出されている。また、フィン本体21には、下流側縁部にあって車幅方向に延びる複数の突条部34と、車幅方向中間に凹状の逃げ部33と、逃げ部の片側に位置決め凹部35とが設けられている。一方、加飾部材22には、凹状収容部41と、凸状ゲート部43と、位置決め突部44とが設けられている。
【0003】
そして、空調用レジスタフィン14は、フィン本体21と加飾部材22とが接近されると、逃げ部33とゲート部43とが対向し、位置決め凹部35と位置決め突起44とが対向し、係合突起36と係合爪部45とが対向する。更なるフィン本体21と加飾部材22との接近操作により、突条部34が収容部41に収容されるが、その際、係合爪部45を上下方向に押し広げる。そして、係合爪部45と突条部34の基端部とが対向する位置まで係合突部36が収容部41に進入すると、係合爪部45が弾性復帰する。これにより、係合爪部45は、係合突部36を上下から挟持することで係合する。この状態では、係合突部36の係合面36aと係合爪部45の係合面45aとが面接触する態様で係合している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-55647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の空調用レジスタフィンでは、フィン本体と加飾部材とが接近操作により組み付け可能となる。ところが、この構造では、対の係合爪部を拡開方向へ変位して間に係合突部の進入を許容し係合突部と係合させるため、例えば係合爪部と係合突起のラップ量を大きくすると組み付け性が悪くなり、逆に、ラップ量を小さくすると外れやすくなり、両方の要求を満足させることができない。また、加飾部材は、意匠性の点から外面にメッキ等の表面処理を施すことがあり、そのような表面処理されていると、組み付け時の係合爪部の拡径変位によりメッキ割れなどの外観不良要因となる虞がある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、以上のような課題を解消して、フィン本体に対して加飾部材の組み付け性が良好で、組み付け後に分離したり脱落の虞を解消できる空調用レジスタフィンを提供することにある。他の目的は以下の内容説明の中で明らかにする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため請求項1の発明は、図面を参照して特定すると、長尺状のフィン本体(20)、及び前記フィン本体の短手方向にある一方の縁に沿って配設された長尺状の加飾部材(27)を備え、空調用空気の通風路(13)を有したケース(10)に対し傾動可能に組み付けられる空調用レジスタフィン(2)であって、前記フィン本体は短手方向の一方の縁部分が加飾部材用の取付部に設定され、該取付部の上下面に設けられて一端から他端付近まで延びた係合溝(23)を有し、前記加飾部材は縦断面が前記取付部を収容可能な略U形からなり、該U形の対向している上下面にそれぞれ設けられた係合突起(28)を有しており、前記取付部は、長手方向の少なくとも一端側付近に設けられて表面を段差に形成した状態で前記係合溝に通じている開口部(25)を有しており、前記係合突起を前記開口部を通して係合溝内に係合し、その係合状態を保って前記加飾部材を前記フィン本体に対し長手方向に摺動して組み付け可能となっていることを特徴としている。
【0008】
以上の本発明において、空調用レジスタフィンは、車体前後方向に配置された筒状の通風路に上流から下流方向に流れる風向きを可変調整する部材である。フィン本体は、長尺状からなりその短手方向にある一方の縁、つまり板幅方向の一方縁に沿って組み付けられた加飾部材を有している。この加飾部材は、フィン本体に対し装着されることで空調用レジスタフィンの意匠性を向上したり高級感を付与する長尺状の部材である。
【0009】
以上の本発明は請求項2から4のごとく具体化されることがより好ましい。すなわち、
(1)、請求項1において、前記係合溝(23)は長手方向の一端を前記フィン本体の側面まで延設し、長手方向の他端に前記係合突起の摺動を規制する規制部(24e)を設けている構成である(請求項2)。
【0010】
(2)、請求項1又は2において、前記フィン本体及び前記加飾部材は、左右略中間部に設けられて互いに係脱する係止部(23b)と被係止部(28b)の異なる一方を有し、前記係止部と前記被係止部の係合により前記加飾部材を前記フィン本体に仮止めしたり位置決め可能となる構成である(請求項3)。
【0011】
(3)、請求項3において、前記フィン本体の対応縁部分を前記加飾部材のU形の内側で把持し、かつ前記加飾部材の長手方向の一端側及び他端側に設けられた複数の係合突起で挟持している構成である(請求項4)
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明では、空調用空気の通風路を有したケースに対し傾動可能に組み付けられる空調用レジスタフィンとして、フィン本体は、一端側に係合突起を係合溝内に挿入可能な開口部を形成しており、加飾部材の係合突起を開口部を通して係合溝内に係合し、その係合状態を保って加飾部材をフィン本体に対し長手方向に摺動して組み付けるようにしたため、係合突起と係合溝のラップ量を大きくしても、組み付け性を良好に維持できる。換言すると、この構造では、特許文献1に比べ組み付け性を損ねることなく係合突起と係合溝の係合強度を増大でき、不用意に外れたり脱落の虞を確実に解消可能となる。
【0013】
請求項2の発明では、係合溝が長手方向の一端をフィン本体の側面まで延設し、長手方向の他端に係合突起の摺動を規制する規制部を有しているため、例えば、形態のごとく係合溝がフィン本体側に設けられている場合だと、加飾部材を係合溝の一端から他端側へ摺動させると、最終段階で係合突起が規制部に当たって摺動不能となる。よって、加飾部材を特許文献1のごとく係合爪部を拡開方向へ変位させるような応力を必要とすることなく、単純なスライドによりフィン本体に組み付けることができる。
【0014】
請求項3の発明では、フィン本体及び加飾部材が左右略中間部に設けられて互いに係脱する係止部と被係止部の異なる一方を有し、係止部と被係止部の係合により加飾部材をフィン本体に仮止めしたり位置決め可能となるため、レジスタフィンを精度良く組み付けることができる。
【0015】
請求項4の発明では、フィン本体の取付部を加飾部材のU形の内側で把持し、前記加飾部材の長手方向の一端側及び他端側に設けられた複数の係合突起で挟持しているため、組立状態において取付強度を強化したり係合溝及び係合突起が目視不能となり意匠性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】(a)は発明形態の空調用レジスタフィンを用いた風向調整ユニットを示し、(b)は同ユニットのうち右側に設置された風向調整装置を示す正面図である。
図2】上記空調用レジスタフィンを示し、(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は下面図、(d)は拡大左側面図、(e)は拡大右区面図である。
図3】(a)と(b)は図2のA-A線拡大断面図とG-G線拡大断面図である。
図4】(a)は図2のB-B線断面図、(b)はC-C線断面図、(c)はD-D線断面図、(d)はE-E線断面図、(e)はF-F線断面図である。
図5】(a)から(d)は加飾部材をフィン本体に組み付ける場合の操作を説明するための模式図である。
図6】上記フィン本体の単品を示し、(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は下面図、(d)は拡大左側面図、(e)は拡大右区面図である。
図7】上記加飾部材の単品を示し、(a)は上面図、(b)は略U形の開口側より見た背面図、(c)は下面図、(d)は拡大左側面図、(e)は拡大右側面図である。
図8】(a)は特許文献1に開示の図2を示し、(b)、(c)、(d)は同文献1の図5を示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の最適な形態を図面を参照しながら説明する。この説明では、本発明形態の空調用レジスタフィンを備えた風向調整装置の概略構造、レジスタフィン構造、組付け操作、作動特徴の順に詳述する。
【0018】
(空調用レジスタフィンを備えた風向調整装置の概略構造)図1(a)において、自動車のインストルメントパネル6の中央部には、左右の風向調整装置1,1Aが枠体7内に配置された状態で風向調整ユニットとして装備されている。各風向調整装置1,1Aは、左右対称であり、装置同士の間に設けられた操作部8により不図示の送風機のオン・オフ等が切り換えられる。また、同(b)において、この風向調整装置1は、内側から外へ送風可能なケース10と、ケース10の対向した上下壁11,12に対し互いに間隔を保って配列された4枚の縦型(奥側)フィン3と、ケース10内の手前側に設けられてフィン3と交差する方向に配置された3枚の横型(手前側)レジスタフィン2と、各レジスタフィン2A,2B,2Cを連動させる連動片18と、4枚のフィン3を連動される連動片19と、レジスタフィン2Cに対し左右移動可能に支持されると共に右から2枚目のフィン3にも接続されているノブ35とを備えている。なお、フィン3,2の枚数はこの例に限られず任意に決められる。材質的には、ケース1、各フィン2,3、連動片18,19、ノブ35は全て樹脂品であるが、樹脂以外でも差し支えない。
【0019】
まず、ケース10は、略矩形の筒体からなり、前側が上下壁10,11及び両側壁15,16で区画されて通風路13が前後に貫通していて、ケース奥側に設けられる送風機からの空気を内側から外へ吹き出すようになっている。上下壁10,11は、内側に設けられた支持部16,17と、支持部16,17に設けられて各フィン3を構成しているフィン本体30の上下端に設けられた軸部31を嵌合する不図示の軸孔を有している。両側壁15,16は、各レジスタフィン2を構成しているフィン本体20の左右端に設けられた軸部21を嵌合する不図示の軸孔を有している。そして、各フィン3は、上下の軸部31が対応する軸孔に嵌合した状態で回動可能に組み込まれる。また、各フィン3は、上側に設けられた軸部32を有し、各軸部32が連動片19の対応する不図示の軸孔に嵌合されることにより、ノブ35の左右移動に同期して左右の傾き角が連動して可変される。
【0020】
これに対し、各レジスタフィン2は、左右の軸部21が対応する軸孔に嵌合した状態で回動可能に組み込まれる。また、各レジスタフィン2は、図2に示されるごとく軸部21と共に設けられた軸部22を有し、軸部22が連動片18の対応する不図示の軸孔に嵌合されることにより、ノブ35の軸部21を支点とした上下動に同期して上下の傾き角が連動して可変される。なお、3枚のレジスタフィン2のうち、本発明は中間のレジスタフィン2Cを除いて、上下のレジスタフィン2A,2Bに適用されている。以下の説明では、レジスタフィン2Aの方で構造を説明するが、レジスタフィン2Bにも同様に当てはまる。
【0021】
(レジスタフィン構造)図2図7において、このレジスタフィン2Aは、長尺状のフィン本体20、及びフィン本体20の短手方向にある一方の縁(前縁)に沿って取り付けられた細長形状の加飾部材27を備えている。ここで、フィン本体20は硬質樹脂の射出成形体である。加飾部材27はABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂)等の射出成形体であり、意匠面がめっき処理されている。細部は以下の通りである。
【0022】
フィン本体20は、図2図6に示されるごとく上下面20a,20bにおいて、短手方向つまり板幅方向にある一方の縁(手前側の縁)部分が加飾部材用の取付部に設定されており、該取付部を除く部分は平坦面となっている。また、前記取付部には、両端面に突出された軸部21と、上下面20a,20bに設けられて一端から他端付近まで真っ直ぐ延びた凹状の係合溝23と、係合溝23の略左右中間に設けられた係止部23bと、一端側付近にあって表面を段差に形成した状態で係合溝23に通じている開口部25と、開口部25より高くなった箇所として開口部25の両側部分24a,24b及び他端付近と他端に設けられた部分24c,24dと、他端側に設けられて係合溝23の他端を閉じている規制部24eとを有している。また、フィン本体20は、両端面のうち、一方端面に突出されて軸部21と平行に延びている軸部22を有している。なお、符号20cは、フィン本体20の奥(上流)側の右角部をケース10の内側形状に対応して切り欠した傾斜部である。
【0023】
このうち、両軸部21は、同軸線上に突出されており、レジスタフィン2Aをケース10の両側壁15,16に設けられた軸孔に回動可能に嵌合される。これに対し、軸部22は、上記したごとくが連動片18の対応する不図示の軸孔に嵌合される。上面20aの係合溝23と下面20bの係合溝23とは、図6(d)に示されるごとく加飾部材27に応じて板幅方向に少しずれた状態で対向している。係止部23bは、上面20a側の係合溝23の内底面に突出された凸部と凸部の間に設けられている。
【0024】
また、開口部25は、図5に示されるごとく加飾部材27をフィン本体20に組み付ける際、加飾部材27のU形内面に突出された対の係合突起28c,28cのうち、下面20bの係合溝23に対応する一方の係合突起28cを係合した状態で、上面20aの係合溝23に対し他方の係合突起28cを開口部25の段差で逃がしながら負荷を受けることなくスムースに係合されるようにする。規制部24eは、上下面の各係合溝23の他端を閉じることにより、加飾部材27が図5(c)から最終段階の同(d)まで摺動したときに、加飾部材27のU形内面に突出された対の係合突起28c,28cが当たってそれ以上の同方向への摺動を不能にする(図3(b)を参照)。
【0025】
これに対し、加飾部材27は、図2図7に示されるごとく縦断面が略U形で、U形の上面27aが下面27bより若干幅広に形成されていると共に、U形内に上記したフィン本体20の取付部を収容可能となっている。上面27aと下面27bの内面縁部には、一端側の係合突起28a,28aと、長手方向略中間の係合突起28b,28bと、他端側の係合突起28c,28cとがそれぞれ対向した状態に設けられている。
【0026】
各対の係合突起28a,28b,28cは、図3(b)に示されるごとく対応する上下面20a,20bの係合溝23に摺動可能に係合される。また、上面27aの係合突起28bは、上面側係合溝23内の係止部23bに弾性係合することにより加飾部材27をフィン本体20に仮止めしたり位置決め可能にする。上下面27a,27bの各係合突起28cは、上記したごとく加飾部材27をフィン本体20に摺動操作により組み付ける最終段階で他端側に位置して係合溝23を閉じる対応する規制部24eに当接する。更に、加飾部材27には、U形内の湾曲した奥部を平坦に修正してフィン本体20の取付部側端面と面接可能にする平坦部29が複数設けられている。この例では、平坦部29は、図7(b)に示されるごとく係合突起28aの近くと、係合突起28bと係合突起28cの間とに設けられているが、更に追加してもよい。
【0027】
(組付け操作)次に、加飾部材27をフィン本体20に組み付けるときの操作要領を説明する。この構造では、加飾部材27がフィン本体20に対し図5(a),(b)に示されるごとく下面27bの係合突起28cを下面20bの係合溝23に係合させると共に、上面27aの係合突起28cを上面20aに設けられた開口部25を通して上面側係合溝23に係合させる。そして、この状態から、加飾部材27が図5(b),(c)の矢印方向へ摺動される。この摺動操作は、上下面27a,27bの係合突起28c,28cがフィン本体の規制部24e,24eに当接されるまで行われる。最終段階では、上面27aの係合突起28bが係止部23bにクリック音を伴って弾性係合する。
【0028】
(作動)以下、以上のように組み付けられた空調用レジスタフィンの主な作動ないしは利点について言及する。
【0029】
(1)、この空調用レジスタフィン2Aでは、加飾部材27の上下面27a,27bに設けられた複数対の係合突起28a,28b,28cと、フィン本体20に設けられて係合突起28a,28b,28cと係合する上下面20a,20bの対の係合溝23,23とを有している。そして、この形態では、下面27bの係合突起28cを下面20bの係合溝23に係合し、上面27aの係合突起28cを開口部25を通して上面20aの係合溝23内に係合し、その係合状態を保って加飾部材27をフィン本体20に対し長手方向に摺動して組み付ける。これにより、この構造では、特許文献1に比べ組み付け性を損ねることなく係合突起28a,28b,28cと係合溝23,23の係合強度を増大でき、不用意に外れたり脱落の虞を確実に解消可能となる。
【0030】
この変形例としては、開口部25を上面20aと共に下面20bにも形成しておくと、上下面27a,27bの係合突起28cが共に対応する係合溝23内に良好に係合することができる。
【0031】
(2)、この形態では、係合溝23が長手方向の一端をフィン本体20の側面まで延設し、長手方向の他端に係合突起28cと当接して摺動を規制する規制部24eを有しており、加飾部材27を係合溝23の一端から他端側へ摺動させると、最終段階で係合突起28cが規制部24eに当たって摺動不能となる。この利点は、加飾部材27として特許文献1のごとく係合爪部を拡開方向へ変位させるような応力を必要とすることなく、単純なスライドによりフィン本体20に組み付けることができる。
【0032】
(3)、構造的には、フィン本体20及び加飾部材27が左右略中間部に設けられて互いに係脱する係止部23bと被係止部である係合突起28bの異なる一方を有し、係止部23bと被係止部である係合突起28bの係合により加飾部材27をフィン本体20に仮止めしたり位置決め可能となるため、レジスタフィン2Aを精度良く組み付けることができる。
【0033】
(4)、この形態では、係合溝23がフィン本体20に設けられると共に係合突起28a,28b,28cが加飾部材27に設けられているため、特許文献1に比べ脱落防止として機能する係合溝23と係合する係合突起28a,28b,28cの突出寸法を大きくでき、引いては係合強度を増大できる。また、係合溝23がフィン本体20の長手方向の一端より他端側まで延びているため、加飾部材27をフィン本体20の長手方向に摺動して組み付けたり、加飾部材27の対応部で係合溝23を覆うことが可能となり、外観見栄えを維持できる。
【0034】
(5)、この形態では、係合溝23がフィン本体20の上下面20a,20bに設けられていると共に上下面20a,20bの一方の係合溝23に開口部25を有している。加えて、係合突起28a,28b,28cが上下面20a,20bの各係合溝23に係合するよう複数設けられているため、フィン本体20に対する加飾部材27の組み付け時の摺動が安定し組み付け性を向上したり取付後の強度を向上できる。この場合、この形態では、フィン本体20の対応縁部分(上記取付部)を加飾部材27の略U形の内側で把持し、かつ、複数の係合突起28a,28b,28cで上下から挟持しているため、組立状態で取付強度を強化したり係合溝23及び係合突起28a,28b,28cが目視不能となり意匠性を向上できる。
【0035】
加えて、加飾部材27は、縦断面が略U形であり、内底面が湾曲となっているため、フィン本体20の対応取付部をU形内に収容した状態で間に隙間が形成されてがたつき易くなる。この対策として、形態ではU形の内底面に平坦な内当接部29を複数箇所に形成し、図4(b)及び(d)に示されるごとくフィン本体20の取付部の対応端が内当接部29に密接し易くすることによりがたつき発生の虞を解消している。
【0036】
以上のように、本発明は、請求項で特定される構成を備えておればよく、細部は必要に応じて種々変更可能なものである。例えば、フィン本体や加飾部材の形状はケース等に応じて変形可能である。風向調整装置の設置箇所は、この例のインストルメントパネルに限られず、センターコンソールや背もたれ等でも差し支えない。
【符号の説明】
【0037】
1・・・・・・・・・・風向調整装置
2A(2)・・・・・・空調用レジスタフィン
2B(2)・・・・・・空調用レジスタフィン
20・・・・・・・・・フィン本体(20aは上面、20bは下面)
10・・・・・・・・・ケース
11・・・・・・・・・上壁
12・・・・・・・・・下壁
13・・・・・・・・・通風路
18・・・・・・・・・連動片
19・・・・・・・・・連動片
21・・・・・・・・・回動用軸部
22・・・・・・・・・連動用軸部
23・・・・・・・・・係合溝
23b・・・・・・・・係止部
24e・・・・・・・・規制部
25・・・・・・・・・開口部
27・・・・・・・・・加飾部材(27aは上面、27bは下面)
28a,28c・・・・係合突起
28b・・・・・・・・係合突起(被係止部)
29・・・・・・・・・内当接部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8