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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-25
(45)【発行日】2024-10-03
(54)【発明の名称】営業支援システム及び営業支援方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 30/0201 20230101AFI20240926BHJP
   G06Q 10/0637 20230101ALI20240926BHJP
【FI】
G06Q30/0201
G06Q10/0637
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021118930
(22)【出願日】2021-07-19
(65)【公開番号】P2023014776
(43)【公開日】2023-01-31
【審査請求日】2024-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】藤央弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】那須 弘明
【審査官】板垣 有紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-009166(JP,A)
【文献】特開2013-206148(JP,A)
【文献】特開2009-294702(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0149636(US,A1)
【文献】特開2004-164619(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサと、記憶装置と、を有する営業支援システムであって、
前記記憶装置は、提案先企業が生産する製品の製造能力及び前記製品の製造に使用される部材の所要量を示す製造情報と、提案元企業が販売する前記部材の変更による前記提案先企業の前記製品の製造指標の改善量の推定値と、前記提案元企業の前記部材の過去の販売実績を示す販売実績情報と、を保持し、
前記プロセッサは、
前記製品の製造指標の改善量の推定値と、前記製造情報と、に基づいて、前記製造指標の改善量の推定値に対応する前記部材の販売量の増加分を計算し、
前記部材の販売量の増加分と、前記販売実績情報と、に基づいて、前記提案元企業が前記変更された部材を対象として行う前記提案先企業への営業提案の指標を算出し、
算出した前記営業提案の指標を出力することを特徴とする営業支援システム。
【請求項2】
請求項1に記載の営業支援システムであって、
前記製品の製造指標の改善量の推定値は、前記製品の製造の時間稼働率の改善量の推定値、性能稼働率の改善量の推定値及び良品率の改善量の推定値を含み、
前記製造情報は、前記製品の製造能力の情報として、前記製品の単位時間当たりの製造量及び歩留まり率の情報を含み、
前記プロセッサは、前記製品の製造指標の改善量の推定値と、前記製造情報と、に基づいて、前記製造指標の改善量の推定値に対応する、所定の期間における前記部材の販売量の増加分を計算することを特徴とする営業支援システム。
【請求項3】
請求項2に記載の営業支援システムであって、
前記プロセッサは、前記製品の製造指標の改善量の推定値と、前記製造情報と、に基づいて、変更される前の前記部材を用いて前記所定の期間に製造される前記製品の良品の量に対する、変更された前記部材を用いて前記所定の期間に製造される前記製品の良品の量の増加分を計算し、計算された前記製品の良品の量の増加分に対応する前記部材の所要量を、前記所定の期間における前記部材の販売量の増加分として計算することを特徴とする営業支援システム。
【請求項4】
請求項2に記載の営業支援システムであって、
前記製造情報は、前記提案先企業の製造実行システムから取得されることを特徴とする営業支援システム。
【請求項5】
請求項2に記載の営業支援システムであって、
前記製品の製造指標の改善量の推定値は、前記提案先企業が前記提案元企業から提供された、前記変更された部材のサンプルを評価することによって推定された値であることを特徴とする営業支援システム。
【請求項6】
請求項1に記載の営業支援システムであって、
前記販売実績情報は、前記提案元企業から前記提案先企業への前記部材の販売の契約期間の長さ、販売量、単価及び販売頻度の情報を含み、
前記プロセッサは、前記部材の販売量の増加分と、前記販売実績情報と、に基づいて、前記部材の販売量の増加分を、前記部材の単価の増加分、前記部材の販売頻度の増加分及び前記契約期間の長さの延長分のそれぞれに換算した値を、前記提案先企業への営業提案の指標として計算することを特徴とする営業支援システム。
【請求項7】
プロセッサと、記憶装置と、を有する営業支援システムが実行する営業支援方法であって、
前記記憶装置は、提案先企業が生産する製品の製造能力及び前記製品の製造に使用される部材の所要量を示す製造情報と、提案元企業が販売する前記部材の変更による前記提案先企業の前記製品の製造指標の改善量の推定値と、前記提案元企業の前記部材の過去の販売実績を示す販売実績情報と、を保持し、
前記営業支援方法は、
前記プロセッサが、前記製品の製造指標の改善量の推定値と、前記製造情報と、に基づいて、前記製造指標の改善量の推定値に対応する前記部材の販売量の増加分を計算する第1手順と、
前記プロセッサが、前記部材の販売量の増加分と、前記販売実績情報と、に基づいて、前記提案元企業が前記変更された部材を対象として行う前記提案先企業への営業提案の指標を算出する第2手順と、
前記プロセッサが、算出した前記営業提案の指標を出力する第3手順と、を含むことを特徴とする営業支援方法。
【請求項8】
請求項7に記載の営業支援方法であって、
前記製品の製造指標の改善量の推定値は、前記製品の製造の時間稼働率の改善量の推定値、性能稼働率の改善量の推定値及び良品率の改善量の推定値を含み、
前記製造情報は、前記製品の製造能力の情報として、前記製品の単位時間当たりの製造量及び歩留まり率の情報を含み、
前記第1手順において、前記プロセッサは、前記製品の製造指標の改善量の推定値と、前記製造情報と、に基づいて、前記製造指標の改善量の推定値に対応する、所定の期間における前記部材の販売量の増加分を計算することを特徴とする営業支援方法。
【請求項9】
請求項8に記載の営業支援方法であって、
前記第1手順において、前記プロセッサは、前記製品の製造指標の改善量の推定値と、前記製造情報と、に基づいて、変更される前の前記部材を用いて前記所定の期間に製造される前記製品の良品の量に対する、変更された前記部材を用いて前記所定の期間に製造される前記製品の良品の量の増加分を計算し、計算された前記製品の良品の量の増加分に対応する前記部材の所要量を、前記所定の期間における前記部材の販売量の増加分として計算することを特徴とする営業支援方法。
【請求項10】
請求項8に記載の営業支援方法であって、
前記製造情報は、前記提案先企業の製造実行システムから取得されることを特徴とする営業支援方法。
【請求項11】
請求項8に記載の営業支援方法であって、
前記製品の製造指標の改善量の推定値は、前記提案先企業が前記提案元企業から提供された、前記変更された部材のサンプルを評価することによって推定された値であることを特徴とする営業支援方法。
【請求項12】
請求項7に記載の営業支援方法であって、
前記販売実績情報は、前記提案元企業から前記提案先企業への前記部材の販売の契約期間の長さ、販売量、単価及び販売頻度の情報を含み、
前記第2手順において、前記プロセッサは、前記部材の販売量の増加分と、前記販売実績情報と、に基づいて、前記部材の販売量の増加分を、前記部材の単価の増加分、前記部材の販売頻度の増加分及び前記契約期間の長さの延長分のそれぞれに換算した値を、前記提案先企業への営業提案の指標として計算することを特徴とする営業支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、企業の営業活動を支援する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
製品の生産及び在庫のロスコストに基づいて生産計画の作成を支援する技術として、例えば特開2010-86048号公報(特許文献1)に記載の技術がある。特許文献1には、「生産量パターン、所定日の在庫量、販売計画量および安全在庫量の各データに基づく受け払い処理を実行し在庫の過剰量、過少量を算定する在庫過剰量算出手段と、在庫過剰ないし在庫過少のロスコストを算定する在庫ロスコスト算出手段と、各パターンにおける各日の生産コストを算定する生産コスト算出手段と、各パターンの各日の間に生じる増産ないし減産のロスコストを算定する生産ロスコスト算出手段と、在庫過剰ないし在庫過少のロスコストと生産コストと増産ないし減産のロスコストとを合算し値が最小となる生産パターンを特定し出力する結果出力手段とからロスコスト最適化システムを構成する。」と記載されている。
【0003】
また、製品の生産量に応じた適切な販売価格の決定を支援する技術として、例えば特開2002-236792号公報(特許文献2)に記載の技術がある。特許文献2には、「製品販売システムは、顧客端末からインターネット経由で入力された注文条件から注文数量を契約済みの受注生産量に加算した総生産に係る固定費を注文の製品の固定費に割振り、これに原材料費と予め定めた利益を加えて販売価格を決め、その販売価格を含む販売条件を顧客端末へインターネットで送信して顧客に提示し、その販売条件に関する顧客の確認をインターネット経由で受信した後に、顧客に納品する。」と記載されている。
【0004】
また、工場の制約及び需要に基づいて在庫を最小化し、顧客の納期保証を高精度化する技術として、例えば特開2002-149936号公報(特許文献3)に記載の技術がある。特許文献3には、「入力した顧客からの需要情報に需要情報処理手段がプライオリティをつけ需給計画策定手段に送り、各工場からは生産能力、在庫状況等が制約情報処理手段を介して需給計画策定手段に送られる。需給計画策定手段はSCM等により確定した、需要に基づいた生産計画を各工場に送り、販売拠点(顧客)に対し需要情報の物品の納期を納期回答処理手段を通じて回答する。需要情報、生産情報を一括して取り込んだ上で、それぞれをひもつけしているので、納期回答が早く、かつ在庫を縮小できる。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-86048号公報
【文献】特開2002-236792号公報
【文献】特開2002-149936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
製品を製造する顧客企業に対してその製品の製造に使用されるもの(例えば製品の部材等)を販売しようとするときに、当該部材等の特性が工場における製品の製造の効率改善にどの程度寄与するかといった、顧客企業における製造価値を考慮することによって、販売する企業及び購入する顧客企業の双方に有益なソリューション、サービス又は製品等の提供(例えば当該部材の販売)の提案が可能になると考えられる。しかし、顧客企業における製造価値を考慮した提案の施策を策定する技術は従来なかった。
【0007】
例えば特許文献1には、コスト最小化の観点で生産計画を行う技術が開示されているが、生産と販売とを結びつけることは開示されていない。特許文献2には、生産量に基づく販売価格の設定という形で、生産と販売との関連付けが開示されている。特許文献3には、工場の制約及び需要に基づいて在庫を最小化し、顧客の納期保証を高精度化するという形で、生産と販売との関連付けが開示されている。しかし、これらのいずれにおいても、提供される製品等に起因する顧客企業における製造価値は考慮されておらず、したがって、製造価値に基づいた提案施策の策定を支援する技術については開示されていない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題の少なくとも一つを解決するため、本発明は、プロセッサと、記憶装置と、を有する営業支援システムであって、前記記憶装置は、提案先企業が生産する製品の製造能力及び前記製品の製造に使用される部材の所要量を示す製造情報と、提案元企業が販売する前記部材の変更による前記提案先企業の前記製品の製造指標の改善量の推定値と、前記提案元企業の前記部材の過去の販売実績を示す販売実績情報と、を保持し、前記プロセッサは、前記製品の製造指標の改善量の推定値と、前記製造情報と、に基づいて、前記製造指標の改善量の推定値に対応する前記部材の販売量の増加分を計算し、前記部材の販売量の増加分と、前記販売実績情報と、に基づいて、前記提案元企業が前記変更された部材を対象として行う前記提案先企業への営業提案の指標を算出し、算出した前記営業提案の指標を出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、提案元にとって有効であり、かつ、提案先に受け入れられやすい、適切な営業の提案を支援することができる。なお、上記した以外の目的、構成、効果は、以下の実施形態において明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施例の営業支援システムが実行する処理の一例を示すフローチャートである。
図2】本発明の実施例の営業支援システムのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図3】本発明の実施例の営業支援システムのソフトウェア構成の一例を示すブロック図である。
図4】本発明の実施例の営業支援システムが実行する処理の具体例を示す説明図である。
図5】本発明の実施例の営業支援システムの製造改善ポテンシャル算出機能が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
図6A】本発明の実施例の営業支援システムが保持するMES情報DBの一例を示す説明図である。
図6B】本発明の実施例の営業支援システムが保持する製造指標DBの一例を示す説明図である。
図7】本発明の実施例の営業支援システムの営業提案施策指針算出機能が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
図8A】本発明の実施例の営業支援システムが保持する販売実績DBの一例を示す説明図である。
図8B】本発明の実施例の営業支援システムが保持する営業提案指標DBの一例を示す説明図である。
図9】本発明の実施例の営業支援システムが営業の提案施策をレコメンドするために出力する情報の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面に基づいて、本発明の実施例を説明する。
【0012】
図1は、本発明の実施例の営業支援システムが実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【0013】
最初に、本実施例の営業支援システム201(図2参照)は、ステップ101を実行する。ステップ101において、営業支援システムは、当該営業支援システム201を使用して営業活動を行う企業(以下、説明の便宜上、提案企業とも記載する)から、当該提案企業の営業活動の対象である企業(以下、説明の便宜上、顧客企業とも記載する)の識別情報(例えば名称等)の入力を受け付ける。さらに、営業支援システム201は、提案企業による顧客企業への営業活動の対象物に新たに追加される価値によって、顧客企業内の製造指標において実現が見込まれる効果の目標値の登録を受け付ける。
【0014】
ここで、顧客企業への営業活動の対象物とは、例えば提案企業から顧客企業に提供されるソリューション、サービス又は製品等である。また、営業活動の対象物に新たに追加される価値とは、例えば新たなサービス、新機能又は性能向上等である。また、製造指標の一例は、設備総合指標(Overall Equipment Effectiveness、OEE)である。
【0015】
以下、営業活動の対象物が、顧客企業で製造される製品の部材として提案企業から提供される製品であり、新たに追加される価値が、当該部材となる製品の性能向上であり、製造指標としてOEEを使用する場合について説明する。以下、説明の便宜上、提案企業から顧客企業に提供される製品を部材製品、顧客企業が部材製品を使用して製造する製品を顧客製品とも記載する。例えば、部材製品は、顧客製品の素材であってもよいし、顧客製品に組み込まれる部品又はモジュール等であってもよい。
【0016】
次に、営業支援システム201は、ステップ102を実行する。ステップ102において、営業支援システム201は、顧客企業内で部材製品を評価した結果に基づいて効果が見込まれる製造指標の推定値を、顧客企業から受け付ける。例えば、提案企業が部材製品のサンプルを顧客企業に提供し、顧客企業が当該サンプルを評価することでOEEの改善を推定してもよい。
【0017】
次に、営業支援システム201は、ステップ103を実行する。ステップ103において、営業支援システム201は、顧客企業から顧客製品の製造に関する情報を取得して、それに基づいて、提案企業から提供された部材製品を用いた場合の製造における損失の改善ポテンシャルを評価する。このとき、営業支援システム201は、損失の改善ポテンシャルを、製品ごと及び設備ごとの数量等に換算して評価してもよい。また、営業支援システム201は、損失が改善されたことによる部材製品の必要量も算出する。ステップ103の詳細については、図5を参照して後述する。
【0018】
次に、営業支援システム201は、ステップ104を実行する。ステップ104において、営業支援システム201は、部材製品の必要量と、提案企業から顧客企業への部材製品の販売実績とに基づいて、営業提案指標を試算する。ここで、営業提案指標として、例えば顧客生涯価値(Life Time Value、LTV)を試算してもよい。ステップ104の詳細については、図7を参照して後述する。
【0019】
次に、営業支援システム201は、ステップ105を実行する。ステップ105において、営業支援システム201は、営業提案指標の試算値に基づいて、顧客企業の顧客製品の製造における価値までを考慮した、提案企業の営業の提案施策をレコメンドする。
【0020】
図2は、本発明の実施例の営業支援システム201のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【0021】
営業支援システム201は、相互に接続されたCPU(Central Processing Unit)2011、メモリ2012及び記憶装置2014を有する。メモリ2012は、例えば半導体メモリによって構成され、主に実行中のプログラム及びデータを保持するために利用される。CPU2011は、メモリ2012に格納されているプログラム2013に従って、様々な処理を実行する。CPU2011がプログラム2013に従って動作することで、様々な機能(後述、図3参照)が実現される。
【0022】
記憶装置2014は、例えばハードディスクドライブ又はソリッドステートドライブなどの大容量の記憶装置によって構成され、プログラム及びデータを長期間保持するために利用される。例えば、後述するデータベース(図3参照)等が記憶装置2014に保持されてもよい。
【0023】
CPU2011は、単一の処理ユニット又は複数の処理ユニットによって構成することができ、単一もしくは複数の演算ユニット、又は複数の処理コアを含むことができる。CPU2011は、1又は複数の中央処理装置、マイクロプロセッサ、マイクロ計算機、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ、ステートマシン、ロジック回路、グラフィック処理装置、チップオンシステム、及び/又は制御指示に基づき信号を操作する任意の装置として実装することができる。
【0024】
また、営業支援システム201の機能は、1以上のプロセッサ及び非一過性の記憶媒体を含む1以上の記憶装置を含む1以上の計算機からなる計算機システムに実装することができる。営業支援システム201が複数の計算機からなる計算機システムに実装される場合、当該複数の計算機はネットワーク(図示省略)を介して通信する。例えば、営業支援システム201の複数の機能の一部が一つの計算機に実装され、他の一部が他の計算機に実装されてもよい。
【0025】
CPU2011には、記録媒体読取装置203、入力装置204及び出力装置205が接続される。図2にはこれらが営業支援システム201の外部に設けられ、営業支援システム201に接続されるものとして記載されているが、これらを営業支援システム201の一部として扱ってもよい。
【0026】
記録媒体読取装置203は、記録媒体202に記録されたデータを読み取る。例えば記録媒体202が光ディスクであれば、記録媒体読取装置203は光ディスクドライブであり、記録媒体202が半導体メモリであれば、記録媒体読取装置203は半導体メモリの読み取り装置である。記録媒体読取装置203が読み取ったデータは、メモリ2012及び記憶装置2014の少なくともいずれかに格納される。
【0027】
入力装置204は、営業支援システム201に入力される情報を受け付ける装置であり、例えば文字入力装置、ポインティングデバイス、映像入力装置及び音声入力装置等の少なくともいずれかを含んでもよい。出力装置205は、営業支援システム201によって処理された情報を出力する装置であり、例えば画像表示装置、音声出力装置及び印刷装置等の少なくともいずれかを含んでもよい。また、入力装置204及び出力装置205は、ネットワーク(図示省略)に接続された通信装置を含んでもよい。営業支援システム201は、通信装置を介して、ネットワークに接続された他の情報処理システムとの間での情報の入出力を行うことができる。
【0028】
図3は、本発明の実施例の営業支援システム201のソフトウェア構成の一例を示すブロック図である。
【0029】
営業支援システム201は、製造改善ポテンシャル算出機能305、営業提案施策指針算出機能306、製造実行システム(Manufacturing Execution System、MES)情報データベース(DB)301、製造指標DB302、販売実績DB303及び営業提案指標DB304を有する。製造改善ポテンシャル算出機能305及び営業提案施策指針算出機能306は、それぞれ、図1に示したステップ103及びステップ104を実現する機能である。これらの機能は、CPU2011がプログラム2013に従って実行する処理によって実現されてもよい。すなわち、以下の説明において上記の機能を実現する処理は、実際にはCPU2011によって実行されてもよい。
【0030】
MES情報DB301には、顧客企業のMESから取得された、顧客企業における顧客製品の製造に関する情報(例えば製造設備及び製造工程の管理情報等)が格納される。なお、本実施例では顧客企業のMESから情報を取得できることが前提となっているが、MESから情報を取得できなくても、別の手段で同等の情報を取得することができれば、それを使用してもよい。MES情報DB301の詳細については図6Aを参照して後述する。
【0031】
製造指標DB302には、顧客企業が提案企業から提供された部材製品のサンプルを用いてOEEの改善を評価した結果が格納される。製造指標DB302の詳細については図6Bを参照して後述する。
【0032】
販売実績DB303には、提案企業による部材製品の販売実績の情報が格納される。販売実績DB303の詳細については図8Aを参照して後述する。
【0033】
営業提案指標DB304には、OEEの改善と販売実績とに基づいて計算された営業提案指標が格納される。営業提案指標DB304の詳細については図8Bを参照して後述する。
【0034】
図4は、本発明の実施例の営業支援システムが実行する処理の具体例を示す説明図である。
【0035】
図4の例において、企業Aは提案企業であり、企業Bは顧客企業である。企業Aの製品である部材Xは、企業Bが製造する顧客製品Yの部材製品であり、企業Aから企業Bへの営業活動の対象物である。この例では、部材Xの性能が従来より向上したときの企業Aから企業Bへの営業提案について説明する。
【0036】
図4の例では、企業Aは、企業Bを顧客として営業支援システム201に入力する。さらに、企業Aは、部材Xの性能向上が企業Bの製品Yの製造のOEEに与える効果の程度を推定する。図4の例では、部材Xの性能向上によって、企業Bの製品Yの製造における段取り替え工数が低下し、その結果、時間稼働率が6%向上し、性能稼働率が3%向上し、良品率は従来と変わらないと推定される。この推定の結果は営業支援システム201に入力される。これらの処理が、図1のステップ101に相当する。
【0037】
次に、企業Aは、上記の推定の結果を企業Bに通達する。営業支援システム201がこの通達を仲介してもよい。さらに、企業Aは、部材Xのサンプルを企業Bに渡す。企業Bは、部材Xのサンプルを評価し、OEEの改善効果を計算する。図4の例では、部材Xの性能向上によって、企業Bの製品Yの製造における時間稼働率が5%向上し、性能稼働率は3%向上し、良品率は1%向上すると評価される。この評価の結果は営業支援システム201に入力され、製造指標DB302に格納される。これらの処理は、図1のステップ102に相当する。
【0038】
次に、営業支援システム201の製造改善ポテンシャル算出機能305は、企業Bから取得したMES情報を参照して、上記のOEEの改善によって増加した製品Yの生産量を生産するために追加販売が見込まれる部材Xの量を、追加販売ポテンシャル(すなわち改善ポテンシャル)として計算する。図4の例では、1年あたり48tの部材Xの追加販売ポテンシャルがあると計算される。これは、図1のステップ103に相当する。
【0039】
次に、営業支援システム201の営業提案施策指針算出機能306は、企業Aから取得した販売実績情報を参照して、追加販売ポテンシャルをLTV指標に換算した値を計算する。図4の例では、1年あたり48tの追加販売ポテンシャルが、販売単価に換算すると4%の向上に相当し、販売頻度に換算すると1年あたり0.5回の増加に相当し、契約期間に換算すると1年あたり0.5か月の延長に相当すると計算される。これは、図1のステップ104に相当する。
【0040】
以下、上記の処理の詳細を説明する。
【0041】
図5は、本発明の実施例の営業支援システム201の製造改善ポテンシャル算出機能305が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【0042】
図5に示す処理は、図1のステップ103において実行される。最初に、製造改善ポテンシャル算出機能305は、MES情報DB301を参照して、顧客製品を製造する設備、生産能力、歩留まり実績情報、及び、製造に必要な部材に関する情報等を抽出する(ステップ501)。
【0043】
次に、製造改善ポテンシャル算出機能305は、ステップ501で抽出された情報及び製造指標DB302を参照して、製造指標DB302に登録されている製造指標の効果によって顧客製品の生産量がどの程度改善されるかを算出する(ステップ502)。
【0044】
次に、製造改善ポテンシャル算出機能305は、ステップ502において計算された通りに生産量が改善された場合に、当該改善された生産量の顧客製品を製造するために必要な部材(提案企業が提供する部材製品を含む)の量を算出する(ステップ503)。
【0045】
図6Aは、本発明の実施例の営業支援システム201が保持するMES情報DB301の一例を示す説明図である。
【0046】
MES情報DB301は、例えば、図6Aに示すテーブル601及びテーブル602を含む。
【0047】
テーブル601は、顧客製品の品目ごとに、製品名601A、その製品の製造設備601B、生産能力601C、製造の所要時間601D及び歩留まり実績601Eを含む。図6Aに例示するテーブル601は、顧客製品である製品Yが「設備1」という製造設備で製造され、その製造設備には1時間当たり10トン(t)の製品Yの生産能力があり、1バッチの製品Yの製造の所要時間が10時間であり、歩留まりが1バッチ当たり5%であることを示している。ここで、製造の所要時間として1バッチ当たりの所要時間を示しているが、これは製造の1区切り当たりの所要時間の例であり、例えば1ロットなど、任意の区切りを用いることができる。
【0048】
テーブル602は、顧客製品の品目と工程の組み合わせごとに、製品名602A、各工程の原料602B、所要量602C及びサプライヤー名602Dを含む。図6Aに例示するテーブル602は、製品Yの工程1において、原料として部材X、部材XX及び部材XXXが使用され、部材Xは1バッチ当たり50tが必要であり、企業Aから供給され、部材XXは1バッチ当たり40tが必要であり、企業AAから供給され、部材XXXは1バッチ当たり30tが必要であり、企業AAAから供給されることを示している。
【0049】
なお、テーブル602に保持されている部材Xに関する値は、提案企業が営業活動の対象としている、性能が改善された部材Xではなく、性能が改善される前の部材Xに関する値である。また、テーブル601に保持されている製品Yに関する値は、性能が改善される前の部材Xを原料として使用した場合の値である。
【0050】
図6Bは、本発明の実施例の営業支援システム201が保持する製造指標DB302の一例を示す説明図である。
【0051】
製造指標DB302は、例えば、図6Bに示すテーブル603を含む。テーブル603は、顧客製品の品目ごとに、製品名603A、製造指標603B及び想定効果603Cを含む。図6Bに例示するテーブル603は、製品Yの原料として性能が改善された部材Xを使用することによって、製造指標であるOEEのうち、時間稼働率が5.0%、性能稼働率が3.0%、良品率が1.0%改善することを示している。この想定効果603Cとして保持された改善率は、図1のステップ102において顧客企業が提案企業から提供されたサンプルを使用して評価した結果である。
【0052】
図7は、本発明の実施例の営業支援システム201の営業提案施策指針算出機能306が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【0053】
図7に示す処理は、図1のステップ104において実行される。最初に、営業提案施策指針算出機能306は、顧客企業の製造指標に基づいて算出された、顧客製品を製造するために必要な、提案企業が提供する部材製品の量を、提案企業にとっての追加販売ポテンシャルとして格納する(ステップ701)。例えば、追加販売ポテンシャルは、営業提案指標DB304に格納されてもよい(図8B参照)。
【0054】
次に、営業提案施策指針算出機能306は、販売実績DB303を参照して、追加販売ポテンシャルが計算された部材製品の顧客企業への販売実績から、当該部材製品の契約期間、販売量、販売頻度及び単価等を抽出する(ステップ702)。
【0055】
次に、営業提案施策指針算出機能306は、ステップ702で抽出した販売実績の情報に基づいて、契約単価アップ、購入頻度増加、及び契約期間延長のそれぞれの視点で、営業提案のための交渉材料となる営業提案指標を算出する(ステップ703)。
【0056】
図8Aは、本発明の実施例の営業支援システム201が保持する販売実績DB303の一例を示す説明図である。
【0057】
販売実績DB303は、例えば、図8Aに示すテーブル801を含む。テーブル801は、製品名801A、顧客名801B、契約期間801C、販売量801D、単価801E及び販売頻度801Fを含む。
【0058】
製品名801Aは、提案企業が提供する製品を識別する情報である。図8Aの例における「製品X」は、顧客製品Yの製造に使用される「部材X」に相当する部材製品である。顧客名801Bは、当該製品の提供先である顧客企業の識別情報である。契約期間801Cは、提案企業と顧客企業との間で締結された契約の有効期間を示す。販売量801D、単価801E及び販売頻度801Fは、それぞれ、当該製品が実際に販売された量、そのときの契約単価、及びその販売が行われた日を示す。
【0059】
図8Aの例は、提案企業である企業Aが、顧客企業である企業Bに対して、2021年の1年間の契約に従って、性能改善前の製品Xを2021年1月10日に100t、2021年2月11日に110t販売し、契約によって定められた単価は30万円/tであったことを示している。
【0060】
図8Bは、本発明の実施例の営業支援システム201が保持する営業提案指標DB304の一例を示す説明図である。
【0061】
営業提案指標DB304は、例えば、図8Bに示すテーブル802を含む。テーブル802は、製品名802A、追加販売ポテンシャル802B、企業名802C、営業提案指標802D及び営業提案交渉数値802Eを含む。
【0062】
製品名802Aは、提案企業が提供する製品を識別する情報である。追加販売ポテンシャル802Bには、図5の処理の結果として得られた値が格納される。企業名802Cは、当該製品の提供先である顧客企業の識別情報である。営業提案指標802D及び営業提案交渉数値802Eは、着目する営業提案指標の項目と、その項目に対応して計算された営業提案交渉のための数値を示す。図8Bには、営業提案指標としてLTVが採用される例を示す。このため、営業提案指標802Dとしては、LTVの算出に用いる数値の項目である契約単価、頻度(量)及び契約期間が格納される。それぞれの項目に対応する営業提案交渉数値802Eの算出については後述する。
【0063】
ここで、図6A図6B図8A及び図8Bを参照して、図5及び図7の処理の具体例を説明する。
【0064】
ステップ501において図6Aに示す情報が抽出され、製造指標DB302には図6Bに示す情報が格納されている場合、ステップ502における改善生産量の計算は次のように行われる。
【0065】
まず、製造改善ポテンシャル算出機能305は、時間稼働率の改善による生産量の改善を計算する。性能改善前の部材Xを使用したときの製品Yの製造の所要時間が1バッチ当たり10時間であり、これに対して性能が改善された部材Xを使用することで時間稼働率が5%改善する。このことから、1バッチ当たりの所要時間が9.5時間に短縮される(すなわち30分短縮される)と計算される。
【0066】
次に、製造改善ポテンシャル算出機能305は、性能稼働率の改善による生産量の改善を計算する。性能改善前の部材Xを使用したときの製品Yの生産能力が、1時間当たり10tであり、これに対して性能が改善された部材Xを使用することで性能稼働率が3%改善する。このことから、1時間当たりの生産能力が10.3tに増加すると計算される。
【0067】
次に、製造改善ポテンシャル算出機能305は、良品率の改善による生産量の改善を計算する。性能改善前の部材Xを使用したときの製品Yの歩留まり実績が、1バッチ当たり5%であり、これに対して性能が改善された部材Xを使用することで良品率が1%改善する。このことから、歩留まり率が1バッチ当たり5%から4%に低下すると計算される。
【0068】
次に、製造改善ポテンシャル算出機能305は、性能改善前の部材Xを使用した1バッチ分の製品Yの良品の生産量と、それと同じ時間に生産できる、性能改善後の部材Xを使用した製品Yの良品の生産量とを比較する。
【0069】
まず、テーブル601に基づいて、性能改善前の部材Xを使用した1バッチ分の製品Yの良品の生産量は、
【0070】
10[t/時間]×10[時間]×0.95=95[t]
【0071】
と計算される。
【0072】
次に、上記の95tの製品Yの生産の所要時間である10時間に、性能改善後の部材Xを使用した場合に生産できる製品Yの良品の生産量は、次のように計算される。
【0073】
まず、製造改善ポテンシャル算出機能305は、性能改善後の部材Xを使用した場合の1バッチ分の製品Yの良品の生産量を計算する。上記の通り、1時間当たりの生産能力が10.3t、1バッチ当たりの所要時間が9.5時間、歩留まり率が4%(すなわち良品率が96%)であることから、生産量は、
【0074】
10.3[t/時間]×9.5[時間]×0.96≒94[t]
【0075】
と計算される。
【0076】
ここで、所要時間が10時間から9.5時間に短縮されたことから、0.5時間の余剰が生じる。この0.5時間の製品Yの生産量は、
【0077】
10.3[t/時間]×0.5[時間]×0.96≒5[t]
【0078】
と計算される。上記の生産量の合計は、
【0079】
94[t]+5[t]=99[t]
【0080】
となる。
【0081】
以上の計算結果から、部材Xの性能改善による1バッチ当たりの製品Yの生産量の改善量は、
【0082】
99[t]-95[t]=4[t]
【0083】
と計算される。1か月に2バッチ分の製品Yが生産されていたとすると、部材Xの性能改善による1年分の製品Yの生産量の改善量は、
【0084】
4[t/バッチ・月]×2[バッチ]×12[月]=96[t]
【0085】
と計算される。
【0086】
次に、上記の計算結果に基づいて、改善された生産量の製品Yを生産するために必要な部材Xの量を計算する処理(ステップ503)を説明する。
【0087】
まず、テーブル601に基づいて、性能改善前の部材Xを使用した場合の1バッチ分の製品Yの生産量は、
【0088】
10[t/時間]×10[時間/バッチ]=100[t/バッチ]
【0089】
と計算される。そして、上記の計算結果とテーブル602に基づいて、製品Yの生産量に対する部材Xの所要量の比率は、
【0090】
50[t/バッチ]÷100[t/バッチ]=0.5
【0091】
と計算される。
【0092】
このため、ステップ502において部材Xの性能改善による1年分の製品Yの生産量の改善量が96[t/年]と計算された場合、ステップ503において、部材Xの性能改善による1年分の部材Xの所要量の改善量(すなわち増加量)は、
【0093】
96[t/年]×0.5=48[t/年]
【0094】
と計算される。この計算結果は、営業提案指標DB304のテーブル802の「製品X」に対応する追加販売ポテンシャル802Bの値として格納される(ステップ701)。
【0095】
ステップ702において、営業提案施策指針算出機能306は、図8Aに示した販売実績DB801の内容から、製品Xの契約期間として「1年」、販売量として「約100t/月」、販売頻度として「約1回/月」、単価として「30万円/t」等を抽出する。
【0096】
ステップ703において、営業提案施策指針算出機能306は、追加販売ポテンシャル802Bの値「48t/年」及び契約単価、販売頻度(量)及び販売実績DB801の内容に基づいて、契約期間のそれぞれに対応する営業提案交渉数値802Eを次のように計算する。
【0097】
まず、契約単価については、追加販売ポテンシャル48t/年に対して、現時点での契約の単価が30万円/tであるので、追加販売ポテンシャルを1か月の購入金額に換算すると、
【0098】
48[t/年]×30[万円/t]÷12[月]=120[万円/月]
【0099】
と計算される。販売実績における1か月あたりの販売量が100t/月であるとして、上記の追加販売ポテンシャルを1t当たりの単価に換算すると、
【0100】
120[万円/月]÷100[t/月]=1.2[万円/t]
【0101】
と計算される。すなわち、追加販売ポテンシャル48t/年は、単価を30[万円/t]から31.2[万円/t]に引き上げる(すなわち4%向上する)ことに相当する。
【0102】
次に、販売頻度については、契約期間が1年、販売実績における販売頻度が1回/月、1か月あたりの販売量が100t/月である場合に、追加販売ポテンシャルを1契約期間あたりの販売回数に換算すると、
【0103】
48[t/年]÷100[t/月]×1[回/月]≒0.5[回/年]
【0104】
と計算される。すなわち、追加販売ポテンシャル48t/年は、1契約期間(すなわち1年)あたりの購入回数を約0.5回増やすことに相当する。
【0105】
次に、契約期間については、契約期間が1年、1か月あたりの販売量が100t/月である場合に、追加販売ポテンシャルを契約期間に換算すると、
【0106】
48[t/年]÷100[t/月]≒0.5[月/年]
【0107】
と計算される。すなわち、追加販売ポテンシャル48t/年は、契約期間を1年に対して約0.5か月延長することに相当する。
【0108】
図9は、本発明の実施例の営業支援システム201が営業の提案施策をレコメンドするために出力する情報の一例を示す説明図である。
【0109】
例えば、図1のステップ105において、営業支援システム201が、出力装置205に図9の画面901を表示させてもよい。
【0110】
例えば、上記の通り追加販売ポテンシャルが48t/年と計算された場合、画面901には、追加販売ポテンシャル「48t/年」が表示されてもよい。さらに、単価が30万円/tである場合には、追加販売ポテンシャルを販売価格に換算した値「1440万円」が表示されてもよい。
【0111】
さらに、画面901には、追加販売ポテンシャルに対応する提案施策として、「単価アップ交渉」、「購入頻度アップ交渉」及び「契約期間延長交渉」が表示されてもよい。上記の例において、単価アップ交渉は、1か月分の価格を120万円増額する交渉である。購入頻度アップ交渉は、1年のうちいずれかの時点で0.5回分の部材製品を追加購入することを顧客企業に提案する交渉である。契約期間延長交渉は、契約期間を0.5か月延長する交渉である。
【0112】
単価アップ交渉が成功すれば、部材製品の性能向上の効果を永続的に得ることができる。これに対して、購入頻度アップ交渉は、交渉に成功しても部材製品の性能向上の効果を当該契約の年度のみに一時的に得られるものである。契約期間延長交渉が成功した場合には、上記の2例の中間的な効果が得られる。
【0113】
このため、提案企業は、単価アップ交渉を最も優先して行うことが望ましい。しかし、実際には市場の動向や提案企業と顧客企業との関係によっては単価アップ交渉が容易でないことも考えられる。このため、提案企業は、単価アップ交渉が容易でない場合には契約期間延長交渉を行い、それも困難であれば購入頻度アップ交渉を行う、といった営業提案の施策を策定することができる。一例を挙げれば、製品Yの市場が成長期であり、長期的な効果が訴求できるとの見通しに基づいて、単価アップ交渉を行うと判断することができる。
【0114】
上記の例では、顧客製品Yを100t製造するために部材製品Xが50t使用される。しかし、実際には、50tの部材製品Xから100tの顧客製品Yに加えて、副産物として別の顧客製品(例えば顧客製品Z)を製造できる場合がある。その場合には、顧客製品Zについても、上記と同様に、部材製品Xの性能改善によるOEE等の製造指標の改善を評価して、顧客製品Zに対応する部材製品Xの追加販売ポテンシャルを計算することができる。その場合、営業支援システム201は、顧客製品Yについて計算された追加販売ポテンシャル(例えば48t/年)と、顧客製品Zについて計算された追加販売ポテンシャルとを合計した値を使用して、営業提案交渉数値802Eを計算することができる。
【0115】
また、本発明の実施形態のシステムは次のように構成されてもよい。
【0116】
(1)プロセッサ(例えばCPU2011)と、記憶装置(例えばメモリ2012及び記憶装置2014の少なくとも一方)と、を有する営業支援システム(例えば営業支援システム201)であって、記憶装置は、提案先企業(例えば実施例における提案企業)が生産する製品の製造能力及び製品の製造に使用される部材の所要量を示す製造情報(例えばMES情報DB301)と、提案元企業(例えば実施例における顧客企業)が販売する部材の変更(例えば性能の改善等)による提案先企業の製品の製造指標の改善量の推定値と(例えば製造指標DB)、提案元企業の部材の過去の販売実績を示す販売実績情報(例えば販売実績DB303)と、を保持し、プロセッサは、製品の製造指標の改善量の推定値と、製造情報と、に基づいて、製造指標の改善量の推定値に対応する部材の販売量の増加分を計算し(例えばステップ103)、部材の販売量の増加分と、販売実績情報と、に基づいて、提案元企業が変更された部材を対象として行う提案先企業への営業提案の指標を算出し(例えばステップ104)、算出した営業提案の指標を出力する(例えばステップ105)。
【0117】
これによって、提案元が提案する商品等の変更に起因する顧客の製造における価値の向上を、提案する商品等の潜在的な販売量の増加量に換算して、その結果と過去の販売実績とに基づいて営業の提案の方向性を示唆することができる。その結果、提案元にとって有効であり、かつ、提案先に受け入れられやすい、適切な営業の提案が支援される。
【0118】
(2)上記(1)において、製品の製造指標の改善量の推定値は、製品の製造の時間稼働率の改善量の推定値、性能稼働率の改善量の推定値及び良品率の改善量の推定値を含み、製造情報は、製品の製造能力の情報として、製品の単位時間当たりの製造量及び歩留まり率の情報を含み、プロセッサは、製品の製造指標の改善量の推定値と、製造情報と、に基づいて、製造指標の改善量の推定値に対応する、所定の期間における部材の販売量の増加分(例えば実施例の1年あたりの追加販売ポテンシャル)を計算する。
【0119】
これによって、顧客の製造における価値の向上を潜在的な販売量の増加量に適切に換算し、適切な営業の提案を支援することができる。
【0120】
(3)上記(2)において、プロセッサは、製品の製造指標の改善量の推定値と、製造情報と、に基づいて、変更される前の部材を用いて所定の期間に製造される製品の良品の量に対する、変更された部材を用いて所定の期間に製造される製品の良品の量の増加分を計算し、計算された製品の良品の量の増加分に対応する部材の所要量を、所定の期間における部材の販売量の増加分として計算する。
【0121】
これによって、顧客の製造における価値の向上を潜在的な販売量の増加量に適切に換算し、適切な営業の提案を支援することができる。
【0122】
(4)上記(2)において、製造情報は、提案先企業の製造実行システムから取得される。
【0123】
これによって、潜在的な販売量の増加量を適切に見積もることができる。
【0124】
(5)上記(2)において、製品の製造指標の改善量の推定値は、提案先企業が提案元企業から提供された、変更された部材のサンプルを評価することによって推定された値である。
【0125】
これによって、顧客の製造における価値を適切に見積もることができる。
【0126】
(6)上記(1)において、販売実績情報は、提案元企業から提案先企業への部材の販売の契約期間の長さ、販売量、単価及び販売頻度の情報を含み、プロセッサは、部材の販売量の増加分と、販売実績情報と、に基づいて、部材の販売量の増加分を、部材の単価の増加分、部材の販売頻度の増加分及び契約期間の長さの延長分のそれぞれに換算した値(例えば営業提案交渉数値802E)を、提案先企業への営業提案の指標として計算する。
【0127】
これによって、営業の提案の方向性を適切に示唆することができる。
【0128】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明のより良い理解のために詳細に説明したものであり、必ずしも説明の全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることが可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0129】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によってハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによってソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、不揮発性半導体メモリ、ハードディスクドライブ、SSD(Solid State Drive)等の記憶デバイス、または、ICカード、SDカード、DVD等の計算機読み取り可能な非一時的データ記憶媒体に格納することができる。
【0130】
また、制御線及び情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線及び情報線を示しているとは限らない。実際にはほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0131】
201 営業支援システム
202 記録媒体
203 記録媒体読取装置
204 入力装置
205 出力装置
2011 CPU
2012 メモリ
2013 プログラム
2014 記憶装置
301 MES情報DB
302 製造指標DB
303 販売実績DB
304 営業提案指標DB
305 製造改善ポテンシャル算出機能
306 営業提案施策指針算出機能
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図9