IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ KDDI株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-評価装置、評価方法及び評価プログラム 図1
  • 特許-評価装置、評価方法及び評価プログラム 図2
  • 特許-評価装置、評価方法及び評価プログラム 図3
  • 特許-評価装置、評価方法及び評価プログラム 図4
  • 特許-評価装置、評価方法及び評価プログラム 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-25
(45)【発行日】2024-10-03
(54)【発明の名称】評価装置、評価方法及び評価プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/063 20230101AFI20240926BHJP
   G06Q 10/105 20230101ALI20240926BHJP
   G06Q 10/04 20230101ALI20240926BHJP
【FI】
G06Q10/063
G06Q10/105
G06Q10/04
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021157479
(22)【出願日】2021-09-28
(65)【公開番号】P2023048270
(43)【公開日】2023-04-07
【審査請求日】2023-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】中村 徹
(72)【発明者】
【氏名】新田 修也
(72)【発明者】
【氏名】磯原 隆将
【審査官】青柳 光代
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-018312(JP,A)
【文献】特開2004-171239(JP,A)
【文献】特開2019-067155(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-0892927(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二部グラフにおける一方の独立集合の各ノードによる、他方の独立集合のノードの選好順序を双方から入力として取得する選好順序取得部と、
各ノードに対する前記選好順序上の順位総和した優秀度により各独立集合をソートして、当該独立集合内でのノードの優秀順位を算出する優秀順位算出部と、
前記二部グラフにおけるマッチングの候補について、各ノードによるマッチング相手の選好順序上の順位が、当該ノードよりも前記優秀順位が下位のいずれのノードによるマッチング相手の選好順序上の順位よりも上位であるか、又は等しいことを条件として、個人主義的公平性を満たしていると判定し、個人主義的公平性の有無を評価結果として出力する公平性判定部と、を備える評価装置。
【請求項2】
前記公平性判定部は、前記条件を緩和するための値kが与えられた場合に、前記条件において、あるノードによるマッチング相手の選考順序上の順位より、前記優秀順位が下位k番目以内のいずれかのノードによるマッチング相手の選好順序上の順位が上位であることを許容する請求項1に記載の評価装置。
【請求項3】
前記公平性判定部は、前記条件を緩和するための値lが与えられた場合に、各ノードによるマッチング相手の選好順序上の順位が、当該ノードよりも前記優秀順位が下位のいずれのノードによるマッチング相手の選好順序上の順位よりも上位、又は選好順序上順位の差がl以下であることを条件として、前記個人主義的公平性を満たしていると判定する請求項2に記載の評価装置。
【請求項4】
前記公平性判定部は、値k又はlにより前記条件を緩和することで前記個人主義的公平性を満たしていると判定した場合、当該値k及びlが小さいほど公平性の度合いが高いと評価し、当該公平性の度合いを前記評価結果として出力する請求項3に記載の評価装置。
【請求項5】
前記二部グラフにおける全ての可能性のあるマッチングの候補について、前記評価結果を確認し、前記個人主義的公平性を満たすマッチングの候補を出力するマッチング処理部を備える請求項1から請求項4のいずれかに記載の評価装置。
【請求項6】
前記マッチング処理部は、前記全ての可能性のあるマッチングの候補のうち、各ノードよるマッチング相手の選好順序上の順位に基づく所定の全体満足度の指標が上位のものを優先して出力する請求項5に記載の評価装置。
【請求項7】
コンピュータが、
選好順序取得部により、二部グラフにおける一方の独立集合の各ノードによる、他方の独立集合のノードの選好順序を双方から入力として取得
優秀順位算出部により、各ノードに対する前記選好順序上の順位総和した優秀度により各独立集合をソートして、当該独立集合内でのノードの優秀順位を算出
公平性判定部により、前記二部グラフにおけるマッチングの候補について、各ノードによるマッチング相手の選好順序上の順位が、当該ノードよりも前記優秀順位が下位のいずれのノードによるマッチング相手の選好順序上の順位よりも上位であるか、又は等しいことを条件として、個人主義的公平性を満たしていると判定し、個人主義的公平性の有無を評価結果として出力る評価方法。
【請求項8】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の評価装置としてコンピュータを機能させるための評価プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二部グラフにおけるマッチングの最適化手法に関する。
【背景技術】
【0002】
二部グラフにおけるマッチングの最適化問題は、労働者を仕事に割り当てるジョブマッチング問題の数学モデルなどとして古くから研究されている。全体として満足度を最適化するマッチングは、重み付き最小完全二部グラフの最小フロー問題に帰着される。非特許文献1の安定結婚問題は、このマッチングに安定性という概念を採用した問題であり、安定なマッチングをO(n)の計算量で見つけるアルゴリズムが提案されている。
【0003】
安定結婚問題については、これまでに様々な拡張問題が考えられており、拡張問題の一分野として、公平性の議論がある。非特許文献1のアルゴリズムによって見つかる安定なマッチングは、男性又は女性の一方に最適なマッチングであり、また、全体としてのコストの最適化などは考慮されていなかった。
そこで、最小コスト安定マッチング、最小後悔安定マッチング(非特許文献2)、男女平等安定マッチング(非特許文献3)など、安定結婚問題を拡張した最適化問題が研究されてきた。これらの問題は、全体最適化の意味合いでの公平性を目指している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】D. Gale and L. S. Shapley. College admissions and the stability of marriage. The American Mathematical Monthly, Vol. 69, pp. 9-15, 1962.
【文献】R. W. Irving, P. Leather, and D. Gusfield. An efficient algorithm for the "optimal" stable marriage. Journal of the ACM, Vol. 34, No. 3, pp. 532-543, 1987.
【文献】A. Kato. Complexity of the sex-equal stable marriage problem. Japan Journal of Industrial and Applied Mathematics, Vol. 10, pp. 1-19, 1993.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような全体最適化によって公平性を満足させるマッチング結果は、例えば、能力や評価の高い参加者にとっては、相対的に不利益をもたらすものである可能性があった。
【0006】
本発明は、必ずしも安定とは限らないマッチングにおける個人主義的な意味合いでの公平性を評価できる評価装置、評価方法及び評価プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る評価装置は、二部グラフにおける一方の独立集合の各ノードによる、他方の独立集合のノードの選好順序を双方から取得する選好順序取得部と、各ノードに対する選好順序を総合して、独立集合内での当該ノードの優秀順位を算出する優秀順位算出部と、各ノードによるマッチングの相手の選好順序上の順位が、当該ノードよりも前記優秀順位が下位のいずれのノードによるマッチングの相手の選好順序上の順位よりも上位であるか、又は等しいことを条件として、個人主義的公平性を満たしていると判定する公平性判定部と、を備える。
【0008】
前記公平性判定部は、前記条件において、前記優秀順位が下位k番目以内のノードによるマッチング相手の選好順序上の順位を問わなくてもよい。
【0009】
前記公平性判定部は、各ノードによるマッチングの相手の選好順序上の順位が、当該ノードよりも前記優秀順位が下位のいずれのノードによるマッチングの相手の選好順序上の順位よりも上位、又は選好順序上の順位の差がl以下であることを条件として、前記個人主義的公平性を満たしていると判定してもよい。
【0010】
前記公平性判定部は、前記個人主義的公平性を満たすためのk及びlの値に応じた公平性の度合いを出力してもよい。
【0011】
前記個人主義的公平性を満たすマッチングの候補を出力するマッチング処理部を備えてもよい。
【0012】
前記マッチング処理部は、前記マッチングの候補のうち、各ノードよるマッチングの相手の選好順序上の順位に基づく全体満足度が上位のものを優先して出力してもよい。
【0013】
本発明に係る評価方法は、二部グラフにおける一方の独立集合の各ノードによる、他方の独立集合のノードの選好順序を双方から取得する選好順序取得ステップと、各ノードに対する選好順序を総合して、独立集合内での当該ノードの優秀順位を算出する優秀順位算出ステップと、各ノードによるマッチングの相手の選好順序上の順位が、当該ノードよりも前記優秀順位が下位のいずれのノードによるマッチングの相手の選好順序上の順位よりも上位であるか、又は等しいことを条件として、個人主義的公平性を満たしていると判定する公平性判定ステップと、をコンピュータが実行する。
【0014】
本発明に係る評価プログラムは、前記評価装置としてコンピュータを機能させるためのものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、必ずしも安定とは限らないマッチングにおける個人主義的な意味合いでの公平性を評価できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態における評価装置の機能構成を示す図である。
図2】実施形態における選好順序を例示する図である。
図3】実施形態における選好順序に基づく優秀度及び優秀順位を例示する図である。
図4】実施形態における全体最適なマッチングを例示する図である。
図5】実施形態における個人主義的公平なマッチングを例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態の一例について説明する。
本実施形態の評価方法では、マッチング問題における個人主義的な公平性を明確に定義し、マッチング結果が個人主義的に公平であるかどうかを判別可能にする。また、どれくらい個人主義的に公平であるかの度合いが定量的に評価される。
ここでは、男女のマッチングを想定して説明するが、本実施形態はジョブマッチングなどの類似のユースケースにも適用可能である。なお、マッチングを行う2つの集合は、いずれも、他方の集合から選好順序が指定されていることとする。
【0018】
本実施形態で定義する個人主義的公平とは、能力又は評価がより高い者はより希望通りになるという考え方である。例えば、男女のマッチングにおいては、異性から選好順序上でより上位の順位に指定される傾向にある人物を、評価の高い人物とみなす。
ここでは、全ての異性からの選好順序上の順位の総和により人物の定量的な評価を行うことで、同性他者との比較が行われる。あるマッチングにおける任意の人物について、その人物よりも評価の低い同性他者とペアになっている相手の選好順序上の順位が、その人物とペアとなっている相手の選好順序上の順位よりも常に下位であるか等しいとき、このマッチングは個人主義的公平であるとする。
【0019】
具体的には、二部グラフにおける独立集合間のマッチングに対して、全体満足度と、個人主義的公平性とは、次のように定義することができる。
まず、同サイズnの男性集合Mと女性集合Wとがあり、これらのマッチングをXとする。ここでは簡単のため、必ず1対1のペアをn組作る場合のみ考える。各人はそれぞれ、もう一方の性別の全てのメンバに対する選好順序を持つ。
【0020】
マッチングXにおいて、男性mと女性wとがペアであるとき、X(m)=w,X(w)=mとする。また、男性m及び女性wについて、P(w)を、mの選好順序におけるwの順位とし、同様に、P(m)を、wの選好順序におけるmの順位とする。
【0021】
このとき、マッチングの全体満足度は、例えば、次のコスト関数Cにより評価することができる。
C(X)=Σ(m,w)∈X(P(w)+P(m))
【0022】
これに対し、本実施形態では、次のように個人主義的公平性を導入する。
G(m)=Σwi∈Wwi(m)を、mの優秀度とする。優秀度G(m)は、値が小さいほど女性集合Wからの評価が高いことを表す。同様に、G(w)=Σmi∈Mmi(w)をwの優秀度とする。
また、O(m)を、男性集合Mを優秀度G(m)の昇順にソートした場合の男性mの順位とし、これを優秀順位と呼ぶ。同様に、O(w)を、女性集合Wを優秀度G(w)の昇順にソートした場合の女性wの優秀順位とする。
ここで、ある集合Hについて、pよりも優秀順位の低い部分集合をH<pとすると、個人主義的公平性は、次のように定義できる。
【0023】
定義1.全てのm∈M及びw∈Wについて、
(1)全てのm′∈M<O(m)についてP(X(m))≦Pm′(X(m′))
(2)全てのw′∈W<O(w)についてP(X(w))≦Pw′(X(w′))
が成り立つとき、このマッチングXを個人主義的公平であるとする。
【0024】
ただし、定義1の条件を満足する個人主義的公平なマッチングは、任意の選好順序において、必ずしも存在するとは限らない。また、個人主義的な公平性を満足するものの、全体最適性を大きく損なうマッチングしか存在しない場合もある。
そこで、自分より優秀順位が下位k番目以内の人が自分よりも選好順序上の順位が上の人とマッチングするのを許容する、あるいは、ある2名とマッチングした相手の選好順序上の順位の差がl以下であれば差がないとみなし許容するといった、条件を緩和した次のような定義も可能である。
【0025】
定義2.全てのm∈M及びw∈Wについて、
(1)全てのm′∈M<O(m)+kについてP(X(m))≦Pm′(X(m′))+l
(2)全てのw′∈W<O(w)+kについてP(X(w))≦Pw′(X(w′))+l
が成り立つとき、このマッチングXを(k,l)-個人主義的公平であるとする。
【0026】
また、マッチング結果に対して、定義2におけるk、lの値の大きさにより個人主義的公平性の度合いを定量的に評価することもできる。すなわち、k,lが小さいほど厳しい条件を満足しているため、より個人主義的公平であると評価できる。
【0027】
なお、定義1及び2において、選好順序上の順位が等しい場合を含む条件を定義したが、これには限られず、等しい場合を除外(≦を<に変更)した、より厳しい条件としてもよい。この場合も、定義2におけるk又はlを適宜設定することで条件が緩和される。
【0028】
図1は、本実施形態における評価装置1の機能構成を示す図である。
評価装置1は、サーバ装置又はパーソナルコンピュータなどの情報処理装置(コンピュータ)であり、制御部10及び記憶部20の他、各種データの入出力デバイス及び通信デバイスなどを備える。
【0029】
制御部10は、評価装置1の全体を制御する部分であり、記憶部20に記憶された各種プログラムを適宜読み出して実行することにより、本実施形態における各機能を実現する。制御部10は、CPUであってよい。
【0030】
記憶部20は、ハードウェア群を評価装置1として機能させるための各種プログラム、及び各種データなどの記憶領域であり、ROM、RAM、フラッシュメモリ又はハードディスクドライブ(HDD)などであってよい。
具体的には、記憶部20は、本実施形態の各機能を制御部10に実行させるためのプログラム(評価プログラム)の他、後述の入力データ、評価値、マッチング候補データなどを記憶する。
【0031】
制御部10は、選好順序取得部11と、優秀順位算出部12と、公平性判定部13と、マッチング処理部14とを備える。
【0032】
選好順序取得部11は、二部グラフにおける一方の独立集合の各ノードによる、他方の独立集合のノードの選好順序を双方から取得する。
【0033】
優秀順位算出部12は、各ノードに対する選好順序を総合して、独立集合内でのノードの優秀順位を算出する。
【0034】
公平性判定部13は、各ノードによるマッチングの相手の選好順序上の順位が、このノードよりも優秀順位が下位のいずれのノードによるマッチングの相手の選好順序上の順位よりも上位であるか、又は等しいことを条件として、個人主義的公平性を満たしていると判定する。
すなわち、各ノードによるマッチングの相手の選好順序上の順位が優秀順位の降順に下降している場合に、個人主義的公平性を満たしていると判定される。
【0035】
このとき、公平性判定部13は、この条件において、優秀順位が下位k番目以内のノードによるマッチング相手の選好順序上の順位を問わないこととしてもよい。
また、公平性判定部13は、各ノードによるマッチングの相手の選好順序上の順位が、このノードよりも優秀順位が下位のいずれのノードによるマッチングの相手の選好順序上の順位よりも上位、又は選好順序上の順位の差がl以下であることを条件として、個人主義的公平性を満たしていると判定してもよい。
【0036】
ここで、条件を緩和したk,lの値は、予め与えられ、個人主義的公平性を満たしているか否かが判定されてもよいが、公平性判定部13は、個人主義的公平性を満たすためのk及びlの値に応じた公平性の度合いを、マッチングの評価結果として出力してもよい。
【0037】
マッチング処理部14は、公平性判定部13による判定結果に基づいて、個人主義的公平性を満たすマッチングの候補を出力する。
このとき、マッチング処理部14は、所定のレベル(k,l)の個人主義的公平性を満たすマッチングの候補のうち、各ノードよるマッチングの相手の選好順序上の順位に基づく全体満足度が上位のものを優先して、マッチング結果として出力してもよい。例えば、全体満足度が最も高いもの、上位所定数、又は全体満足度が所定以上のものなど、出力条件は適宜設定可能である。
【0038】
例えば、マッチング処理部14は、全ての可能性のあるマッチングについて、個人主義的公平であるか否かを確認し、全体満足度を算出することで適切なマッチング結果を特定できる。なお、具体的なマッチング結果の算出手段は限定されない。また、マッチング処理部14は、緩和した個人主義的公平性を使用し、定められたk,lの範囲内で、最も全体満足度の高いものを選択して出力してもよい。
【0039】
ここで、評価指標の違いに応じたマッチングの例を示す。
独立集合のサイズn=4とし、男性集合を{A,B,C,D}、女性集合を{a,b,c,d}とする。
【0040】
図2は、本実施形態における選好順序を例示する図である。
ここでは、男性それぞれが各女性を好きな順序に並べた表と、女性それぞれが各男性を好きな順序に並べた表とが例示されている。
例えば、男性Aの選好順序において、女性aの順位は3である。同様に、b,c,dの順位はそれぞれ1,2,4である。
【0041】
図3は、本実施形態における選好順序に基づく優秀度及び優秀順位を例示する図である。
ある女性に対する全ての男性による選好順序上の順位を総和したものが、この女性の優秀度となり、ある男性に対する全ての女性による選好順序上の順位を総和したものが、この男性の優秀度となる。
例えば、a列について、男性Aの選好順序のうちaの順位は3である。同様に、B,C,Dによるaの順位はそれぞれ3,3,4である。このとき、aの優秀度は、3+3+3+4=13となる。
【0042】
そして、同様に算出された各人の優秀度の昇順に優秀順位が付与され、女性a,b,c,dの優秀順位はそれぞれ4,2,2,1となり、男性A,B,C,Dの優秀順位はそれぞれ1,2,3,3となる。
【0043】
図4は、本実施形態における全体最適なマッチングを例示する図である。
前述(図2,3)の選好順序に基づく全体最適なマッチングXは、{(A,c),(B,a),(C,b),(D,d)}である。このとき、各人の優秀順位、及びXにおける各人のマッチング相手の選好順序上の順位は図4下段の通りであり、全体満足度C(X)は、ペアの順位の総和2+3+2+1+1+2+1+1=13となる。
【0044】
しかしながら、例えば、Aの優秀順位は1でありDの優秀順位3よりも小さい(上位である)にも関わらず、Aのマッチング相手の順位は2でありDのマッチング相手の順位1よりも大きい(下位である)。したがって、このマッチングXは、A,B,bにとっては不公平であり、個人主義的公平ではない。
一方で、緩和した定義を用いると、このマッチングXは(0,2)-個人主義的公平といえる。
【0045】
図5は、本実施形態における個人主義的公平なマッチングを例示する図である。
前述(図2,3)の選好順序に基づく個人主義的公平なマッチングXは、{(A,d),(B,b),(C,c),(D,a)}のみである。このとき、各人の優秀順位、及びXにおける各人のマッチング相手の選好順序上の順位は図5下段の通りであり、全体満足度C(X)は、ペアの順位の総和4×8=32である。
【0046】
このマッチングXは、個人主義的公平ではあっても、各人にとっては望ましくない組み合わせである。したがって、緩和した条件に基づく個人主義的公平性を満たすマッチングにより、全体満足度を向上させてもよい。このようなトレードオフの関係は、ユースケースに応じて適宜設定されてよい。
【0047】
本実施形態によれば、評価装置1は、集合の各ノードに対する選好順序を総合して、集合内での当該ノードの優秀順位を算出し、各ノードによるマッチングの相手の選好順序上の順位が、当該ノードよりも優秀順位が下位のいずれのノードによるマッチングの相手の選好順序上の順位よりも上位であるか、又は等しいことを条件として、個人主義的公平性を満たしていると判定する。
したがって、評価装置1は、必ずしも全体満足度が高く安定とは限らないマッチングにおける、個人主義的な意味合いでの公平性を評価できる。
【0048】
評価装置1は、個人主義的公平性を満たす条件において、優秀順位が下位k番目以内のノードによるマッチング相手の選好順序上の順位を問わないことで、条件を緩和した適度な公平性を評価できる。
あるいは、評価装置1は、各ノードによるマッチングの相手の選好順序上の順位が、当該ノードよりも優秀順位が下位のいずれのノードによるマッチングの相手の選好順序上の順位よりも上位、又は選好順序上の順位の差がl以下であることを条件として、前記個人主義的公平性を満たしていると判定することでも、条件を緩和した適度な公平性を評価できる。
また、評価装置1は、個人主義的公平性を満たすためのk及びlの値に応じて、マッチングの公平性の度合いを評価し出力することができる。
【0049】
評価装置1は、選好順序を入力として、個人主義的公平性を満たすマッチングの候補を推薦出力することができる。
また、評価装置1は、マッチングの候補のうち、各ノードよるマッチングの相手の選好順序上の順位に基づく全体満足度が上位のものを優先して出力することにより、個人主義的公平性を満たしつつ、全体満足度も高い適切なマッチングを提示できる。
【0050】
なお、これにより、例えばインターネット上で公平なマッチングサービスを提供できることから、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「レジリエントなインフラを整備し、持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る」に貢献することが可能となる。
【0051】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限るものではない。また、前述した実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【0052】
評価装置1による評価方法は、ソフトウェアにより実現される。ソフトウェアによって実現される場合には、このソフトウェアを構成するプログラムが、情報処理装置(コンピュータ)にインストールされる。また、これらのプログラムは、CD-ROMのようなリムーバブルメディアに記録されてユーザに配布されてもよいし、ネットワークを介してユーザのコンピュータにダウンロードされることにより配布されてもよい。さらに、これらのプログラムは、ダウンロードされることなくネットワークを介したWebサービスとしてユーザのコンピュータに提供されてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 評価装置
10 制御部
11 選好順序取得部
12 優秀順位算出部
13 公平性判定部
14 マッチング処理部
20 記憶部
図1
図2
図3
図4
図5