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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-25
(45)【発行日】2024-10-03
(54)【発明の名称】結晶性エピネフリンマロン酸塩
(51)【国際特許分類】
   C07C 215/08 20060101AFI20240926BHJP
   C07C 55/08 20060101ALI20240926BHJP
   A61K 31/137 20060101ALI20240926BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20240926BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20240926BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240926BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20240926BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20240926BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20240926BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
C07C215/08 CSP
C07C55/08
A61K31/137
A61K47/04
A61K47/12
A61K47/26
A61K47/32
A61K47/38
A61P11/06
A61P37/08
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2021505650
(86)(22)【出願日】2019-07-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-25
(86)【国際出願番号】 US2019043856
(87)【国際公開番号】W WO2020028215
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2022-07-27
(31)【優先権主張番号】62/711,936
(32)【優先日】2018-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/731,442
(32)【優先日】2018-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521040259
【氏名又は名称】バイオテア ファーマ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BIOTHEA PHARMA,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】スマドッシ,ジャン-ピエール
(72)【発明者】
【氏名】ムッサ,アデル
【審査官】▲来▼田 優来
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2004/002551(WO,A1)
【文献】特許第0096205(JP,C1)
【文献】Alexandaer Mcpherson,Protein Science,2001年,10(2),pp.418-422,doi: 10.1110/ps.32001
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C,C07D
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶形態のエピネフリンマロン酸塩。
【請求項2】
前記結晶形態が、12.1843、13.4653、14.2595、14.6991、15.8664、17.3570、17.9004、19.5883、20.4659、21.5801、22.3908、22.9301、23.8776、24.6585、25.3418、26.0105、26.4829、25.3418、26.0105、26.4829、27.2385、27.8939、29.4741、33.2425、34.2629、34.8439に2シータとして表される1つ以上のピークを有するx線粉末回折スペクトルを有する請求項1に記載のエピネフリンマロン酸塩。
【請求項3】
請求項1で定義されたエピネフリンマロン酸塩及び医薬的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項4】
経口、直腸、胃内、局所、頭蓋内、鼻腔内、及び非経口投与に適する請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
舌下またはバッカル投与に適する請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項6】
充填剤及び崩壊剤を含む、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記充填剤が微結晶性セルロースであり、前記崩壊剤が架橋ポリビニルポリピロリドンである、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記充填剤が20~30重量%の量で存在し、前記崩壊剤が5~15重量%の量で存在する、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
さらに、滑沢剤及び流動促進剤を含む、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記滑沢剤がステアリン酸マグネシウムであり、前記流動促進剤が二酸化ケイ素である、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
さらに、希釈剤を含む、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記希釈剤がマンニトールである、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
さらに、クエン酸を含む、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
0.3~10mgの量のエピネフリン遊離塩基を含む、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項15】
30秒以内に崩壊する、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項16】
請求項1で定義されたエピネフリンマロン酸塩の製造方法であって、当該方法が、
マロン酸を、エピネフリン及び溶媒を含む溶液に加えるステップ、
前記溶液を攪拌するステップ、及び
前記エピネフリンマロン酸塩を溶液中で沈殿させるステップ
を備えることを特徴とする方法。
【請求項17】
さらに、沈殿を濾過するステップを備える、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
さらに、前記沈殿を乾燥するステップを備える、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
マロン酸が、エピネフリンに対して、0.01:1~3:1の比で加えられる、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記溶媒が、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソ-プロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、n-ペンタノール、2-メチル-ブタノール、3-メチル-ブタノール、及びヘキサノールからなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記溶媒がエタノールである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
アレルギー状態の患者を治療するための医薬の製造における、請求項1で定義されたエピネフリンマロン酸塩の使用。
【請求項23】
請求項22に記載の使用において、前記医薬が、経口、直腸、胃内、局所、頭蓋内、鼻腔内、または非経口的投与のために製剤化されたものであることを特徴とする使用。
【請求項24】
請求項22に記載の使用において、前記医薬が、バッカル錠または舌下錠の形態であることを特徴とする使用。
【請求項25】
請求項22に記載の使用において、前記アレルギー状態が、アナフィラキシー、喘息、または気管支喘息からなる群から選択されることを特徴とする使用。
【請求項26】
請求項25に記載の使用において、前記アレルギー状態がアナフィラキシーであることを特徴とする使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2018年7月30日に出願された米国仮出願第62/711,936号、及び2018年9月14日に出願された米国仮出願第62/731,442号の優先権を主張する。当該仮出願の開示は、参照することにより全体として本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、結晶形態の新規な医薬塩に関する。より具体的には、本発明は、結晶性エピネフリンマロン酸塩、結晶性エピネフリンマロン酸塩を含む医薬組成物、及び結晶性エピネフリンマロン酸塩の医薬組成物を患者に投与することを含む患者の治療方法に関する。
【背景技術】
【0003】
エピネフリンは、数十年間にわたりアナフィラキシーの治療に使用されている。1958年、Boseらは、種々のエピネフリン塩、例えば、エピネフリンクエン酸塩を、エピネフリンクエン酸塩の薬理活性に焦点を当てて研究した。Bose,et al.,Observations on the pharmacological activity of different salts of adrenaline,morphine and strychnine,Indian J Med Res.46(2):193-8(Mar.1958)。1972年、John J.Sciarraらは、エピネフリンマレイン酸塩、エピネフリンリンゴ酸塩、及びエピネフリンフマル酸塩の調製方法を開示した。John J.Sciarra,et al.,Synthesis and Formulation of Several Epinephrine Salts as an Aerosol Dosage Form,Journal of Pharmaceutical Sciences,61(2),219-223(1972)。この文献で研究されている他の塩には、エピネフリン塩酸塩及びエピネフリン酒石酸水素塩が含まれる。TE Peddicord,et al.,Stability of high-concentration dopamine hydrochloride,norepinephrine bitartrate,epinephrine hydrochloride,and nitroglycerin in 5% dextrose injection,Am J Health-Syst Pharm.54,1417-1419(1997)、MM Rawas-Qalaji,et al.,Epinephrine for the Treatment of Anaphylaxis:Do All 40 mg Sublingual Epinephrine Tablet Formulations with Similar In Vitro Characteristics Have the Same Bioavailability?,Biopharm.Drug Dispos.27,427-435(2006)。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、新規な結晶性エピネフリン塩であるエピネフリンマロン酸塩、及び該エピネフリン塩を含む医薬組成物、該エピネフリン塩の調製方法、ならびに該エピネフリン塩を当該患者に投与することを含む患者の治療方法に関する。好ましい実施形態では、該多形結晶性エピネフリンマロン酸塩は、図1に同定されるx線粉末回折パターンを有する。
【0005】
ある特定の実施形態では、該エピネフリンマロン酸塩を含む医薬組成物を提供する。該医薬組成物は、経口、直腸、胃内、局所、頭蓋内、鼻腔内、及び非経口投与に適し得る。好ましい実施形態では、該医薬組成物は、舌下錠の場合もあればバッカル錠の場合もある。該医薬製剤は、医薬的に有効な量のエピネフリンマロン酸塩及び1つ以上の医薬的に許容される賦形剤、すなわち、例えば、充填剤(例えば、微結晶性セルロース)及び崩壊剤(例えば、架橋ポリビニルポリピロリジンまたは低置換ヒドロキシプロピルセルロース)等を含むことができる。ある特定の実施形態では、該医薬組成物は、さらに、滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム)及び流動促進剤(例えば、二酸化ケイ素)を含むことができる。ある特定の実施形態では、該医薬組成物は、さらに、希釈剤(例えば、マンニトール)及び/またはpH調整剤(例えば、クエン酸)を含むことができる。該医薬組成物は、エピネフリンマロン酸塩を0.3~10mg含むことができる。該医薬組成物は、さらに、充填剤を20~30重量%及び崩壊剤を5~15重量%含むことができる。ある特定の実施形態では、該医薬組成物は、30秒以内に崩壊し得る。
【0006】
ある特定の実施形態では、該エピネフリンマロン酸塩の調製方法を提供する。該方法は、マロン酸を、エピネフリン塩基の溶媒(例えば、エタノール)溶液に加えることを含み得る。該マロン酸は、エピネフリンに対して、少なくとも0.001:1、少なくとも0.01:1、少なくとも1:1、少なくとも2:1、少なくとも3:1、少なくとも5:1、少なくとも10:1、少なくとも25:1、少なくとも50:1、少なくとも100:1、少なくとも500:1の比で該溶液に加えることができる。該マロン酸は、100:1以下、500:1以下、100:1以下、75:1以下、5:1以下、3:1以下、2:1以下、1:1以下の比で該溶液に加えることができる。ある特定の実施形態では、該マロン酸は、0.01:1~3:1の比で該溶液に加えることができる。好ましい実施形態では、該マロン酸は、エピネフリンに対して、1:1当量で該溶液に加えることができる。該方法は、該溶液を攪拌すること及び当該塩を溶液中で沈殿させることを含み得る。該方法は、さらに、該沈殿を濾過及び乾燥することを含み得る。
【0007】
ある特定の実施形態では、患者の治療方法を提供する。該方法は、医薬的に有効な量のエピネフリンマロン酸塩を、かかる治療を必要とする患者、例えば、アナフィラキシーに苦しむ患者等に投与することを含む。
【0008】
本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を形成する添付の図面は、本開示の様々な実施形態を例示しており、その説明と共に、さらに、本開示の原理を説明するように、また、当業者が本明細書に開示される実施形態を行うこと及び使用することを可能にするように機能する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、エピネフリンマロン酸塩のプロトン核磁気共鳴(H NMR)スペクトルを示す。
図2図2は、エピネフリンマロン酸塩のx線粉末回折(XRPD)スペクトルを示す。
図3図3は、エピネフリンマロン酸塩の示差走査熱量測定(DSC)スペクトルを示す。
図4図4は、エピネフリンマロン酸塩の熱重量分析を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、概して、新規な結晶性エピネフリン塩に関する。エピネフリンの新規な塩であるエピネフリンマロン酸塩は、医薬組成物、例えば、舌下及びバッカル医薬組成物等に望ましい特性を有する結晶形態で得ることができることが見出された。
【0011】
本発明を以下に詳細に説明する前に、本発明が、本明細書に記載する特定の方法、プロトコル、及び試薬に限定されず、それらが変化し得ることを理解されたい。また、本明細書で使用される専門用語は、特定の実施形態を説明するためのものに過ぎず、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲を限定するものとしては意図されないことも理解されたい。別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する当業者が一般に理解する意味と同一の意味を有する。
【0012】
数値に関連して使用される場合の「約」という用語は、示された数値より5%小さい下限を有し、かつ、示された数値より5%大きい上限を有する範囲内の数値を包含することを意味する。
【0013】
本明細書で使用される、疾患または障害を「治療する」、「治療すること」または「治療」とは、以下の1つ以上を達成することを意味する:(a)該障害の重症度及び/または持続期間を低減すること、(b)治療される障害(複数可)に特徴的な症状の出現を制限することまたは予防すること、(c)治療される障害(複数可)に特徴的な症状の悪化を抑制すること、(d)当該障害(複数可)の既往を有する患者における障害(複数可)の再発を制限または予防すること、ならびに(e)当該障害(複数可)の症状を以前に示した患者における症状の再発を制限または予防すること。
【0014】
本発明の「医薬組成物」は、異なる活性成分及び希釈剤及び/または担体が互いに混合された組成物の形態で存在する場合もあれば、活性成分が一部または完全に別の形態で存在する組み合わせ製剤の形態をとる場合もある。かかる組み合わせまたは組み合わせ製剤の例は、キット・オブ・パーツである。
【0015】
「治療量」または「治療有効量」とは、本来の目的を達成するのに十分な治療薬の量である。所与の治療薬の有効量は、当該薬剤の特性、投与経路、当該治療薬を投与される動物のサイズ及び種、ならびに投与の目的等の要因によって異なる。個々のケースの有効量は、当技術分野で確立された方法に従い、当業者によって経験的に決定され得る。
【0016】
本明細書で使用される、「患者」または「対象」という用語は、最も好ましくは、ヒトを指す。同様に含まれるのは、本明細書に記載の化合物から恩恵を受け得る任意の哺乳類または鳥類である。好ましくは、「対象」または「患者」は、実験動物(例えば、マウスもしくはラット)、家畜(例えば、モルモット、ウサギ、ニワトリ、シチメンチョウ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ラクダ、ウシ、ウマ、ロバ、ネコ、もしくはイヌ等)、またはチンパンジー等の他の霊長類からなる群から選択される。
【0017】
「医薬的に許容される」とは、ヒトまたは動物への投与に関して概して安全であることを意味する。好ましくは、医薬的に許容される成分は、連邦政府もしくは州政府の規制機関によって承認されたもの、またはUnited States Pharmacopeial Convention,Inc.,Rockville Md.が発行する米国薬局方にリストされているもの、または動物、より具体的にはヒトでの使用に対して一般に認められている他の薬種である。
【0018】
1つの実施形態では、本発明は、白色粉末の外観を有する結晶形態のエピネフリンマロン酸塩を提供する。該エピネフリンマロン酸塩は、水溶解度1142.7mg/mL、pKa5.47、及び分配係数(logP)-3.00を有し得る。結晶形態のエピネフリンマロン酸塩の水溶解度は、驚くべきことに、他のエピネフリン塩の水溶解度よりも大幅に高かった。この高い水溶解度が、該エピネフリンマロン酸塩を、当該薬物の経粘膜送達に特に適したものにする。当該薬物の高いバイオアベイラビリティ及び迅速な送達は、時に緊急事態において、アナフィラキシーの治療に使用されるエピネフリンにとって特に重要である。さらに、該エピネフリンマロン酸塩は吸湿性ではなく、7、14、30、60、90、120、または150日で好ましい安定性プロファイルを示すことができる。
【0019】
該エピネフリンマロン酸塩は、実質的に純粋であり得る。例えば、該エピネフリンマロン酸塩は、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、または99.9%以上の純度を有し得る。
【0020】
該エピネフリンマロン酸塩は、図1に示すプロトン核磁気共鳴(H NMR)スペクトルを有し得る。
【0021】
該エピネフリンマロン酸塩は、図2に示すx線粉末回折(XRPD)スペクトルを有し得る。図2に示すように、該エピネフリンマロン酸塩は、約12.1843、13.4653、14.2595、14.6991、15.8664、17.3570、17.9004、19.5883、20.4659、21.5801、22.3908、22.9301、23.8776、24.6585、25.3418、26.0105、26.4829、25.3418、26.0105、26.4829、27.2385、27.8939、29.4741、33.2425、34.2629、34.8439に2シータとして表される1つ以上のピークを有するx線粉末スペクトルを特徴とする多形であり得る。
【0022】
該エピネフリンマロン酸塩は、図3に示すように、示差走査熱量測定の融解温度極大約101℃~約106℃、好ましくは、約102℃~104℃を有し得る。
【0023】
別の実施形態では、本発明は、エピネフリンマロン酸塩を含む医薬組成物を提供する。該医薬組成物は、経口、直腸、胃内、局所、頭蓋内、鼻腔内、及び非経口投与での使用に好適であり得る。該医薬組成物は、任意の医薬的に許容される剤形、すなわち、固体、半固体または液体剤形等、例えば、錠剤、坐剤、丸剤、カプセル剤、散剤、液剤、懸濁液剤等、好ましくは、正確な用量の単回投与に適した単位剤形、即効型または所定の速度での該化合物の長期投与用の持続放出もしくは制御放出剤形等で投与され得る。該医薬組成物は、従来の医薬担体または賦形剤及び少なくとも1つの本発明の化合物、ならびに、さらに、他の薬剤、医薬品、担体、アジュバント等を含み得る。該医薬組成物は、1~95重量%の該エピネフリンマロン酸塩、より好ましくは、2~50重量%、5~20重量%、10~20重量%、または5~15重量%の該エピネフリンマロン酸塩を含み得る。さらに、該医薬組成物は、7、14、30日、またはそれ以上で好ましい安定性プロファイルを示し得る。
【0024】
好ましい実施形態では、該医薬組成物は、舌下錠またはバッカル錠の形態での経粘膜投与に適している。該医薬組成物は、医薬的に有効な量のエピネフリンマロン酸塩を含むことができる。ある特定の実施形態では、舌下錠またはバッカル錠の形態での経粘膜投与に適した該医薬組成物は、エピネフリン遊離塩基を0.3~10mg含む。該医薬組成物は、さらに、充填剤(例えば、微結晶性セルロース)及び崩壊剤(例えば、低置換ヒドロキシプロピルセルロースまたは架橋ポリビニルポリピロリドン(クロスポビドン))を含み得る。ある特定の実施形態では、該医薬組成物は、さらに、滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム)及び/または流動促進剤(例えば、二酸化ケイ素)を含むことができる。ある特定の実施形態では、該医薬組成物は、さらに、希釈剤(例えば、マンニトール)を含むことができる。ある特定の実施形態では、該医薬組成物は、さらに、pH調整剤(例えば、クエン酸)を含むことができる。
【0025】
ある特定の実施形態では、該充填剤と崩壊剤の比は、約9:1、9.5:0.5、8:2、7:3、及び6:4であり得る。該医薬組成物は、当該バッカル錠または舌下錠の急速かつ完全な、または実質的に完全な崩壊をもたらす場合もあれば、当該錠剤の崩壊速度を制御するように調整される場合もある。例えば、崩壊剤の比が高いほど、毛細管現象による錠剤の水の浸透が少ないため、錠剤の崩壊が遅くなる。ある特定の実施形態では、該バッカル錠または舌下錠は、30秒以内に実質的にまたは完全に崩壊することが可能である。ある特定の実施形態では、該医薬組成物は、1つ以上の充填剤、1つ以上の崩壊剤、1つ以上の滑沢剤、及び任意に、当技術分野で既知の他の賦形剤を含むことができる。例えば、該医薬組成物は、当業者によって理解されているように、希釈剤、結合剤、流動促進剤、着色剤、香味料、pH調整剤、コーティング剤等のうちの1つ以上を含むことができる。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態では、該医薬組成物は、微結晶性セルロースである充填剤(例えば、Ceolus(登録商標)-PH-301またはCeolus KG 802)を含む。他の実施形態では、該充填剤は、ラクトース、炭酸カルシウム、重炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、第二リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース粉末、デキストロース、デキストレート、デキストラン、デンプン、アルファ化デンプン、スクロース、キシリトール、ラクチトール、ソルビトール、重炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ポリエチレングリコール等のうちの1つ以上であり得る。ある特定の実施形態では、該医薬組成物は、充填剤を15~35重量%、より好ましくは、20~30重量%または22~27重量%、最も好ましくは、約25重量%含む。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態では、該医薬組成物は、架橋ポリビニルポリピロリドン(クロスポビドン)または低置換ヒドロキシプロピルセルロースである崩壊剤を含む。他の実施形態では、該崩壊剤は、架橋セルロース、例えば、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム、架橋カルボキシメチルセルロース、または架橋クロスカルメロース、架橋デンプン、例えば、デンプングリコール酸ナトリウム(例えば、Explotab(登録商標))、及び他の架橋ポリマーのうちの1つ以上であり得る。ある特定の実施形態では、該医薬組成物は、崩壊剤を2~20重量%、より好ましくは、5~15重量%または5~10重量%、最も好ましくは、約6~8重量%含む。
【0028】
本発明のいくつかの実施形態では、該医薬組成物は、ステアリン酸マグネシウムである滑沢剤、及び/または二酸化ケイ素である流動促進剤を含む。滑沢剤とは、材料の接着または摩擦を防止、低減、または阻害する化合物である。流動促進剤とは、当該組成物の流動性を改善する化合物である。他の実施形態では、該滑沢剤及び流動促進剤は、ステアリン酸、水酸化カルシウム、タルク、フマル酸ステアリルナトリウム、炭化水素、例えば、鉱油、または硬化植物油、例えば、硬化大豆油、高級脂肪酸ならびにそれらのアルカリ金属及びアルカリ土類金属塩、例えば、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、ナトリウムのステアリン酸塩、グリセロール、ワックス、Stearowet(登録商標)、ホウ酸、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ロイシン、ポリエチレングリコール(例えば、PEG-4000)またはメトキシポリエチレングリコール、オレイン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ベヘン酸グリセリル、ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸マグネシウムまたはナトリウム、コロイドシリカ、デンプン、例えば、コーンスターチ、シリコーン油のうちの1つ以上であり得る。ある特定の実施形態では、該医薬組成物は、滑沢剤及び/または流動促進剤を、個々に、0.1~5重量%、より好ましくは、0.5~4重量%、最も好ましくは、約1~3重量%含む。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態では、該医薬組成物は、マンニトールである希釈剤を含む。他の実施形態では、該希釈剤は、ラクトース、デンプン、ソルビトール、デキストロース、リン酸三カルシウム、リン酸カルシウム、無水ラクトース、噴霧乾燥ラクトース、アルファ化デンプン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートステアレート、スクロースベースの希釈剤、一塩基性硫酸カルシウム一水和物、硫酸カルシウム脱水(dehydrate)、乳酸カルシウム三水和物、デキストレート、加水分解穀物固形物、アミロース、粉末セルロース、炭酸カルシウム、グリシン、カオリン、または塩化ナトリウムであり得る。ある特定の実施形態では、該医薬組成物は、希釈剤を25~75重量%、より好ましくは、35~60重量%、最も好ましくは、45~55重量%含む。
【0030】
本発明のいくつかの実施形態では、該医薬組成物は、クエン酸であるpH調整剤を含む。他の実施形態では、該pH調整剤は、ホウ酸、乳酸、リンゴ酸、リン酸、リン酸二水素ナトリウム、または酒石酸であり得る。ある特定の実施形態では、該医薬組成物は、希釈剤を、0.1~3重量%、より好ましくは、0.1~2重量%、最も好ましくは、約0.1~1重量%含む。
【0031】
ある特定の実施形態では、該医薬製剤は、直接圧縮を用いて製造され得る。当業者には理解されるように、該医薬製剤は、参照することにより本明細書に組み込まれるKeith J.Simons et al.,Fast-Disintegrating Sublingual Tablets:Effect of Epinephrine Load on Tablet Characteristics,AAPS PharmSciTech 7(2):E41(Feb.2006)に記載の通りに設計及び調製され得る。
【0032】
他の実施形態では、本発明は、エピネフリンマロン酸塩の製造方法を提供する。該方法は、マロン酸を、エピネフリン及び溶媒を含む溶液に加えることを含み得る。該マロン酸は、エピネフリンに対して、少なくとも0.001:1、少なくとも0.01:1、少なくとも1:1、少なくとも2:1、少なくとも3:1、少なくとも5:1、少なくとも10:1、少なくとも25:1、少なくとも50:1、少なくとも100:1、少なくとも500:1の比で該溶液に加えることができる。該マロン酸は、100:1以下、500:1以下、100:1以下、75:1以下、5:1以下、3:1以下、2:1以下、1:1以下の比で該溶液に加えることができる。ある特定の実施形態では、該マロン酸は、0.01:1~3:1の比で該溶液に加えることができる。好ましい実施形態では、該マロン酸は、エピネフリンに対して、1:1当量で該溶液に加えることができる。該方法は、さらに、該溶液を攪拌することを含み得る。該方法は、さらに、該溶液にさらなる溶媒を加えることを含み得る。該方法は、さらに、該溶液を攪拌することを含み得る。該方法は、さらに、該エピネフリン塩を溶液中で沈殿させることを含み得る。該方法は、さらに、該沈殿を濾過することを含み得る。該方法は、さらに、該沈殿を乾燥することを含み得る。該方法では、該溶媒は、アルコール、ケトン、またはエステルであり得る。本発明と共に使用するための例示的な溶媒としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソ-プロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、n-ペンタノール、2-メチル-ブタノール、3-メチル-ブタノール、ヘキサノール、アセトン、メチルエチルケトン、及び酢酸エチルが挙げられる。好ましい実施形態では、該溶媒はエタノールである。
【0033】
他の実施形態では、本発明は、患者の治療方法を提供する。該患者は、アレルギー状態、例えば、アナフィラキシー、喘息、または気管支喘息の患者であり得る。該方法は、医薬的に有効な量のエピネフリンマロン酸塩を、かかる治療を必要とする患者、例えば、アナフィラキシーに苦しむ患者等に投与することを含む。該方法は、アレルギー状態に苦しむ患者に対して、バッカル錠または舌下錠を投与することを含み得る。
【0034】
以下の実施例は、本発明のある特定の実施形態を限定することなく例示する。
【実施例
【0035】
様々な実施形態を本明細書に記載してきたが、それらはほんの一例として提示されたものであり、限定ではないことを理解されたい。従って、本開示の幅及び範囲は、記載された例示的な実施形態のいずれによっても制限されるべきではない。さらに、これら記載された要素の、そのすべての可能な変形における任意の組み合わせは、本明細書で別段の指示がない限り、または文脈上明らかに矛盾しない限り、本開示に包含される。
【0036】
実施例1
エピネフリンマロン酸塩の調製
エピネフリンマロン酸塩を、以下の方法を用いて形成した。マロン酸2.3g(1.0当量)をエピネフリン4g(1.0当量)のEtOH(8mL)溶液に室温で加えた。この反応混合物は、30分間激しく攪拌した後に透明溶液に変わった。EtOH(10mL)を加えたところ、白色固体生成物が沈殿した。その混合物をさらに10時間攪拌し、濾過し、真空中で乾燥して、5.7gのエピネフリンマロン酸塩を得た(白色粉末として)。
【0037】
実施例2
エピネフリンマロン酸塩の物理的及び化学的性質
実施例1のエピネフリンマロン酸塩の物理的及び化学的性質を評価し、他のエピネフリン塩と比較した。
【0038】
A.溶解度
エピネフリンマロン酸塩の溶解度を評価し、他のエピネフリン塩と比較した。これらの試験は、ザルトリウス天秤(モデルSQP)、Thermo HPLC(UltiMate 3000システム、UV波長:205nm)、及びPhenomenex Lunaカラム(5μm C18(2)、4.6x250mm)を使用して実施した。カラムの温度は40℃であり、オートサンプラーの温度は室温であった。注入量は5μLであった。
【0039】
移動相Aは、4.0gの硫酸水素テトラメチルアンモニウム(MERYER、バッチ番号77957139)及び1.1の1-ヘプタスルホン酸ナトリウム(sodium 1-heptasulfonate)(Admas-beta、バッチ番号P1343755)を秤量し、これらの材料をフラスコに移すことによって調製した。0.1mol/LのEDTA溶液(ブランド:Sinopharm Chemical Reagent Co.,Ltd.、バッチ番号20150410)2mLをそのフラスコに加え、水を用いて体積を950mLに調整した。この溶液を混合し、0.1N水酸化ナトリウム溶液(ブランド:Enox、バッチ番号20161201)でpH3.5に調整した。移動相Bは、エタノールを用いて調製した。定組成溶離を、A/Bの比率85/15で用いた。ランタイムは8分であった。
【0040】
10mLの水に溶解した10mgの標準からなる標準溶液を使用した。試験液の溶液を調製し、水を25±2℃で加えた。5分毎に、その溶液を30秒間超音波処理した。その溶解を30分以内に観察し、溶液が飽和していることを確認した。その溶液を0.45umの膜を通して濾過し、その溶液を希釈して調べた。溶解度試験の結果を表1に示す。
【0041】
B.pH
エピネフリンマロン酸塩のpHを評価し、他のエピネフリン塩と比較した。これらの試験は、ザルトリウス天秤(モデルSQP)及びpH計(ブランド:INESA、モデル番号PHS-3E)を使用して実施した。20mgのサンプルを秤量し、20mLの容量フラスコに移し、残りの体積を水で構成した。その溶液を混合した。pH計は、pH4.0及びpH6.8の標準緩衝液で25℃にて較正した。この分析の結果を表2に示す。
【0042】
C.pKa
エピネフリンマロン酸塩のpKaを評価し、他のエピネフリン塩と比較した。これらの試験は、ザルトリウス天秤(モデルSQP)及び電位差滴定装置(ブランド:Methrom、モデル番号905 Titrando)を使用して実施した。0.17gのサンプルを秤量し、50mLの容量フラスコに移し、残りの体積を脱イオン水で構成した。その溶液を混合した。その溶液を、終点を示すためのpH指示薬を用いて、0.1mol/LのNaOH溶液で滴定した。この分析の結果を表3に示す。
【0043】
D.分配係数
エピネフリンマロン酸塩の分配係数(logP)を評価し、他のエピネフリン塩と比較した。これらの試験は、ザルトリウス天秤(モデルSQP)、Thermo HPLC(UltiMate 3000システム、UV波長:205nm)、及びPhenomenex Lunaカラム(5μm C18(2)、4.6x250mm)を使用して実施した。カラムの温度は40℃であり、オートサンプラーの温度は室温であった。注入量は5μLであった。
【0044】
移動相Aは、4.0gの硫酸水素テトラメチルアンモニウム(MERYER、バッチ番号77957139)及び1.1の1-ヘプタスルホン酸ナトリウム(Admas-beta、バッチ番号P1343755)を秤量し、これらの材料をフラスコに移すことによって調製した。0.1mol/LのEDTA溶液(ブランド:Sinopharm Chemical Reagent Co.,Ltd.、バッチ番号20150410)2mLをそのフラスコに加え、水を用いて体積を950mLに調整した。この溶液を混合し、0.1N水酸化ナトリウム溶液(ブランド:Enox、バッチ番号20161201)でpH3.5に調整した。移動相Bは、エタノールを用いて調製した。定組成溶離を、A/Bの比率85/15で用いた。ランタイムは8分であった。
【0045】
リン酸水素二ナトリウム溶液は、7.1gのリン酸水素二ナトリウム(ブランド:Sinopharm Chemical Reagent Co.,Ltd.、バッチ番号20150910)を秤量して調製した。クエン酸溶液は、5.25gのクエン酸水和物(ブランド:General-Reagent、バッチ番号5949-29-1)を秤量し、1000mLの水に溶解して調製した。pH3.47の緩衝液は、このリン酸水素二ナトリウム溶液のpHをこのクエン酸溶液で3.47に調整することにより調製した。n-オクタノール緩衝液は、100mLのn-オクタノール(ブランド:Chinasun Specialty Products Co.,Ltd.、バッチ番号20160601)と100mLのpH3.47の緩衝液を混合し、24時間振盪し、これを1時間静置し、n-オクタノール相とpH3.47の緩衝液相に分離させることにより調製した。
【0046】
10mgのサンプルを10mLの飽和n-オクタノール溶液に溶解し、完全に混合した。10mLの飽和pH3.47緩衝液を加え、3000r/分で1時間ボルテックスした。1時間後、1mLの溶液をこのn-オクタノールとpH3.47の相からピペットで取った。1mg/mLの標準を希釈剤に含む標準溶液を調製した。約0.1%の標準溶液からLOQ溶液を調製した。n-オクタノール相の溶液は1mLのメタノールで希釈して試験した。pH3.47相の溶液は直接注入した。分配係数は以下の式を用いて計算した:
、式中、Coは、油相中の溶質の平衡濃度であり、Cwは、水相中の溶質の平衡濃度である。分配係数分析の結果を表4に示す。
【0047】
実験例3
エピネフリンマロン酸塩を含む医薬組成物の調製
エピネフリンマロン酸塩及び他のエピネフリン塩を含む医薬組成物を調製した。10mgのエピネフリン(エピネフリン塩基で計算)を含む舌下錠を調製した。この組成物はさらに、微結晶性セルロース(PH-301)を充填剤として、低置換ヒドロキシプロピルセルロースを崩壊剤として、及びステアリン酸マグネシウムを滑沢剤として含んでいた。これらの錠剤は、約80mgの錠剤重量での圧縮力の範囲を用いて、直接圧縮によって調製した。
【0048】
実施例4
医薬組成物のインビトロ透過性
実施例3の医薬組成物のインビトロ透過性を調べた。これらの試験は、薬物の経皮拡散試験機(ブランドHuanghai、モデル番号RJY-6B)、ザルトリウス天秤(モデルSQP)、INESA pH計(モデルPHS-3E)、Thermo HPLC(UltiMate 3000システム、UV波長:205nm)、及びPhenomenex Lunaカラム(5μm C18(2)、4.6x250mm)を使用して実施した。カラムの温度は40℃であり、オートサンプラーの温度は室温であった。注入量は5μLであった。
【0049】
移動相Aは、4.0gの硫酸水素テトラメチルアンモニウム(MERYER、バッチ番号77957139)及び1.1の1-ヘプタスルホン酸ナトリウム(Admas-beta、バッチ番号P1343755)を秤量し、これらの材料をフラスコに移すことによって調製した。0.1mol/LのEDTA溶液(ブランド:Sinopharm Chemical Reagent Co.,Ltd.、バッチ番号20150410)2mLをそのフラスコに加え、水を用いて体積を950mLに調整した。この溶液を混合し、0.1N水酸化ナトリウム溶液(ブランド:Enox、バッチ番号20161201)でpH3.5に調整した。移動相Bは、メタノールを用いて調製した。定組成溶離を、A/Bの比率85/15で用いた。ランタイムは10分であった。
【0050】
エピネフリン塩のインビトロ拡散は、OD20mm及びリザーバ―容積7mLのフランツセルを用いて評価した。透析膜(Spectra/Por(登録商標)透析膜、MWCO1,000Da)を用いて、このインビトロ透過性試験の舌下粘膜を模倣した。活性成分のアッセイ含量を受け入れプールで検出した。磁気撹拌子を入れたレセプターチャンバーに、拡散媒体としてリン酸緩衝液(pH7.4)を満たした。水浴を37℃にセットし、フランツセルに水を循環させた。
【0051】
各錠剤を、Tにて膜上のドナーチャンバーの中央に置き、2mLの人工唾液(ブランド:Biomart、ブランド番号GL0305)を加えて錠剤の崩壊及び溶解を促進した。1mLのアリコートを10、30、60、90、及び120分でレセプターチャンバーから抜き取った。抜き取った量を新たな媒体で補充した。サンプルをHPLC分析用のHPLCバイアルに移した。このインビトロ透過性分析の結果を表5に示す。
【0052】
実施例5
医薬組成物の安定性
実施例3の医薬組成物の安定性を調べた。安定性試験は、包装したエピネフリン塩を25℃/RH60%及び40℃/RH75%の条件で、ならびに包装していないサンプルを1ヶ月間光(4500Lux)に当てて実施した。外観、アッセイ含量、及び関連物質を5、7、14及び30日目に調べた。
【0053】
このアッセイ含量は、ザルトリウス天秤(モデルSQP)、INESA pH計(モデルPHS-3E)、Thermo HPLC(UltiMate 3000システム、UV波長:205nm)、及びPhenomenex Lunaカラム(5μm C18(2)、4.6x250mm)を使用して調べた。カラムの温度は40℃であり、オートサンプラーの温度は室温であった。注入量は5μLであった。
【0054】
移動相Aは、4.0gの硫酸水素テトラメチルアンモニウム(MERYER、バッチ番号77957139)及び1.1の1-ヘプタスルホン酸ナトリウム(Admas-beta、バッチ番号P1343755)を秤量し、これらの材料をフラスコに移すことによって調製した。0.1mol/LのEDTA溶液(ブランド:Sinopharm Chemical Reagent Co.,Ltd.バッチ番号20150410)2mLをそのフラスコに加え、水を用いて体積を950mLに調整した。この溶液を混合し、0.1N水酸化ナトリウム溶液(ブランド:Enox バッチ番号20161201)でpH3.5に調整した。移動相Bは、メタノールを用いて調製した。定組成溶離を、A/Bの比率85/15で用いた。ランタイムは10分であった。
【0055】
アッセイ含量は、調べる20mgの各サンプルを、アッセイ試験液として50mLの移動相A(0.4mg/mL)に溶解して分析した。このサンプルを、準備が整い、遮光を行った直後に使用して調べた。
【0056】
純度は、ザルトリウス天秤(モデルSQP)、INESA pH計(モデルPHS-3E)、Thermo HPLC(UltiMate 3000システム、UV波長:205nm)、及びPhenomenexSynergiカラム(4μm Polar-RP 80A 250x4.6mm)を使用して調べた。カラムの温度は30℃であり、オートサンプラーの温度は室温であった。注入量は5μLであった。
【0057】
移動相Aは、1.136gのオルトリン酸二水素カリウム(ブランド:CNW、バッチ番号A1040040)及び1.74gのオルトリン酸水素二カリウム(ブランド:Ourchem、バッチ番号20160219)を秤量し、1000mLの水に移して調製した。pHは、オルトリン酸(ブランド:Ourchem、バッチ番号4112K060)で3.0±0.05に調整した。この溶液を0.45μmの膜を通して濾過し、脱気した。移動相Bは、メタノールを用いて調製した。ランタイムは50分であった。表6に示す勾配を用いた。
【0058】
純度は、調べる10mgの各サンプルを、純度及び関連物質の試験液として25mLの移動相A(0.4mg/mL)に溶解して分析した。このサンプルを、準備が整い、遮光を行った直後に使用して調べた。5、7、14及び30日目での異なる条件下での外観、アッセイ含量、及び関連物質を表7~9に示す。
【0059】
実施例6
湿気なしでのエピネフリンマロン酸塩の長期安定性試験
湿気なしでの30℃及び40℃におけるエピネフリンマロン酸塩の5ヶ月間の安定性試験を実施した。エピネフリンマロン酸塩を光と湿気を避けるために包装した。サンプルは、外側の梱包材がアルミ箔のバッグである褐色ガラス瓶に調製し、それらサンプルを乾燥剤シリカゲルの層間に保管した。外観、残留物、純度、TGA、及びDSCを毎月分析した。30℃安定性試験の結果を表10に示し、40℃安定性試験の結果を表11に示す。
【0060】
実施例7
水中25℃でのエピネフリンマロン酸塩の安定性試験
25℃でのエピネフリンマロン酸塩の120時間の安定性試験を水中で実施した。20mgのエピネフリンマロン酸塩を秤量し、50mLの容量フラスコに入れた。サンプルを水で溶解し、その体積まで希釈し、十分に混合した。このサンプルを25℃のオーブンに放置し、0時間、24時間、48時間、72時間、96時間、及び120時間でサンプルを収集した。この試験に使用した希釈剤(移動相)は、1000mLの容量フラスコで約1.36gのオルトリン酸二水素カリウムと1.74gのオルトリン酸水素二カリウムを混合し、そのpHをオルトリン酸で3.0に調整することにより調製した。これらのサンプルの外観と純度を調べた。水中での25℃安定性試験の結果を表12に示す。
【0061】
実施例8
エピネフリンマロン酸塩の分解試験
酸分解、アルカリ分解、酸化、ならびに熱分解(固体及び溶液)の影響を評価するエピネフリンマロン酸塩の分解試験を実施した。様々な条件の手順を以下に示す。
【0062】
標準:20mgのサンプルを50mLの容量フラスコに秤量して溶解し、必要な体積まで希釈剤で希釈し、十分に混合した。
【0063】
酸分解:20mgのサンプルを秤量して50mLの容量フラスコに入れた。2.0mol/LのHCl2mLをそのフラスコに加えた。そのフラスコを40℃の水浴に7日間置いた。
【0064】
アルカリ分解:20mgのサンプルを秤量して50mLの容量フラスコに入れた。0.05mol/LのNaOH2mLをそのフラスコに加えた。そのフラスコを室温で24時間保管した。
【0065】
酸化:20mgのサンプルを秤量して50mLの容量フラスコに入れた。10%H2mLをそのフラスコに加えた。そのフラスコを40℃の水浴に44時間置いた。
【0066】
熱分解(溶液、80℃):20mgのサンプルを秤量し、50mLメスフラスコに溶解し、必要な体積まで希釈剤で希釈し、十分に混合した。そのフラスコを80℃の水浴に46時間置いた。
【0067】
熱分解(固体、80℃):120mgのサンプルを80℃のオーブンに7日間置いた。
【0068】
これらサンプルの外観及び純度を調べた。この分解試験の結果を表13に示す。
【0069】
実施例9
エピネフリンマロン酸塩の舌下医薬組成物
エピネフリンマロン酸舌下錠を下記の通りに調製した。この医薬組成物を表14に示す。
【0070】
錠剤を以下のように調製した。エピネフリンマロン酸塩、微結晶性セルロース、マンニトール、及び架橋ポリビニルポリピロリドンを、425ミクロンのふるいを通して篩過した。クエン酸を850ミクロンのふるいを通して篩過した。篩過した材料を、500回転用に適切なサイズの混合容器に移した。二酸化ケイ素を425ミクロンのふるいを通して篩過した。その二酸化ケイ素を、125回転用の混合容器に加えた。ステアリン酸マグネシウムを425ミクロンのふるいを通して篩過した。ステアリン酸マグネシウムを、125回転用の混合容器に加えた。この錠剤は、0.5KN~5KNの力で200mgの用量を圧縮することによって混合した。
【0071】
実施例10
舌下医薬組成物の安定性試験
実施例9で調製したエピネフリンマロン酸塩舌下錠の安定性を調べた。錠剤は、ボトルに20錠包装し、各ボトルには、1.0グラムのシリカ乾燥剤1個及び錠剤の動きを防ぐのに十分なポリエステルコイルが含まれていた。これらのボトルは、誘導シールライナー付きのチャイルドレジスタンスクロージャー(CRC)を使用して蓋をし、密封した。ボトルを40℃及び25℃の安定性チャンバーに置いた。これらサンプルの安定性を最初のバッチ(t=0)、1週間の保管後(t=1)、及び4週間の保管後(t=4)に評価した。25℃での安定性試験の結果を表15に示し、40℃での安定性試験の結果を表16に示す。n=10のアッセイを各時点で行った。
【0072】
本明細書において表15及び16に示すように、これら医薬組成物は、予想外かつ驚くべき安定性をもたらした。
【0073】
実施例11
舌下医薬組成物の分散試験
実施例9に示したものと同様のプラセボ舌下錠(すなわち、薬物製品を含まない実施例9の製剤)の分散速度を、舌下投与後に調べた。これらプラセボ錠剤は、エピネフリンマロン酸塩が追加の希釈剤(すなわち、マンニトール)で置き換えられていることが一つ異なる実施例9に記載の組成と同じ組成を有していた。5人のボランティアが、水やその他の液体を加えずに1錠のダイアモンド型プラセボ錠剤を舌の下に置き、その錠剤が完全に分散するのに必要な時間を測定した。分散は、感触と目視確認によって特定した。分散は、5人のボランティア全員で20~25秒以内に完了した。本実施例11に示されるように、これら医薬組成物は、予想外かつ驚くべき分散速度をもたらした。
図1
図2
図3
図4