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▶ オックスフォード ユニバーシティ イノベーション リミテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-25
(45)【発行日】2024-10-03
(54)【発明の名称】多接合デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H10K 30/57 20230101AFI20240926BHJP
   H10K 30/40 20230101ALI20240926BHJP
   H10K 71/12 20230101ALI20240926BHJP
   H10K 71/15 20230101ALI20240926BHJP
   H10K 85/50 20230101ALI20240926BHJP
【FI】
H10K30/57
H10K30/40
H10K71/12
H10K71/15
H10K85/50
【請求項の数】 35
(21)【出願番号】P 2021521523
(86)(22)【出願日】2019-10-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-14
(86)【国際出願番号】 GB2019052988
(87)【国際公開番号】W WO2020084285
(87)【国際公開日】2020-04-30
【審査請求日】2022-10-14
(31)【優先権主張番号】1817166.0
(32)【優先日】2018-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】516245900
【氏名又は名称】オックスフォード ユニバーシティ イノベーション リミテッド
【氏名又は名称原語表記】OXFORD UNIVERSITY INNOVATION LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スネイス,ヘンリー ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】マクミーキン,デイビッド ピー.
【審査官】佐竹 政彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/153752(WO,A1)
【文献】特表2018-517303(JP,A)
【文献】特表2017-503348(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0005795(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 30/00-99/00
JSTPlus/JSTChina/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶A/M/X材料の層を含む多接合デバイスを製造する方法であって、
結晶A/M/X材料が式[A]a[M]b[X]c
(式中、
[A]は、1つ以上のAカチオンを含み、
[M]は、金属又は半金属のカチオンである1つ以上のMカチオンを含み、
[X]は、1つ以上のXアニオンを含み、
aは1~6の数であり、
bは1~6の数であり、
cは1~18の数である)
の化合物を含み、
前記方法が、膜形成溶液を基材上に配置することにより前記結晶A/M/X材料の層を形成する工程を含み、
ここで、前記膜形成溶液は、
(a)1つ以上のMカチオン、及び
(b)溶媒
を含み、
前記溶媒は、
(i)非プロトン性溶媒、及び
(ii)有機アミン
を含み、
前記基材は、
光活性材料を含む光活性領域、及び
溶液堆積法により前記光活性領域上に配置される電荷再結合層
を含み、ここで、前記電荷再結合層は、電子輸送有機マトリックス材料中に配置される透明導電性酸化物のナノ粒子を含み、前記電荷再結合層は、導電性ポリマーをさらに含む、方法。
【請求項2】
前記非プロトン性溶媒が、極性非プロトン性溶媒であり、及び/又は前記基材が、前記電荷再結合層上に配置される電荷輸送材料の層をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記電荷再結合層を溶液堆積法により前記光活性領域上に配置する工程
により、前記基材を製造する工程を含む、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
電荷輸送材料の層が、前記電荷再結合層上にさらに配置される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記基材中の前記光活性材料が、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)若しくはこれらの混合物中に溶解する、又は前記基材中の前記電荷再結合層の少なくとも1つの成分が、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)若しくはこれらの混合物中に溶解する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記基材中の前記光活性材料と前記基材中の前記電荷再結合層の少なくとも1つの成分との両方が、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)又はこれらの混合物中に溶解する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記透明導電性酸化物が、インジウムスズ酸化物(ITO)を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記有機マトリックス材料が、[6,6]-フェニル-C61-酪酸メチルエステル(PCBM)を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記導電性ポリマーが、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)及びポリスチレンスルホネート(PEDOT:PSS)を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記電荷再結合層を前記光活性領域上に配置する工程が、透明導電性酸化物のナノ粒子の溶媒分散体を前記光活性領域上に配置する工程を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記電荷再結合層を前記光活性領域上に配置する工程が、導電性ポリマーを前記光活性領域上に配置する工程、及び透明導電性酸化物のナノ粒子の溶媒分散体を前記光活性領域上に配置する工程を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ナノ粒子の溶媒分散体及び/又は前記導電性ポリマーが、スピンコーティングにより前記光活性領域上に配置される、請求項10又は請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記非プロトン性溶媒が、ジメチルホルムアミド若しくはジメチルスルホキシド又はこれらの混合物を含まない、及び/又は
前記非プロトン性溶媒が、クロロベンゼン、アセトン、ブタノン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、プロピオニトリル、トルエン又はこれらの混合物からなる群から選択される化合物を含む、及び/又は
前記有機アミンが、非置換若しくは置換アルキルアミン又は非置換若しくは置換アリールアミンである、
請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記非プロトン性溶媒が、アセトニトリルを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記有機アミンが、非置換又は置換(C1~10アルキル)アミンである、請求項13又は請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記有機アミンが、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン若しくはペンチルアミン若しくはヘキシルアミン、ベンジルアミン又はフェニルエチルアミンである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記有機アミンが、メチルアミンである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記式[A]a[M]b[X]cの化合物が、式[A][M][X]3(式中、[A]、[M]及び[X]が請求項1に定義されるとおりである)の化合物である、及び/又は
[A]が少なくとも1つの有機カチオンを含む、及び/又は
各Aカチオンが、アルカリ金属カチオン、式[R1R2R3R4N]+(式中、R1、R2、R3、R4はそれぞれ、独立して、水素、非置換又は置換C1~20アルキル、及び非置換又は置換C6~12アリールから選択され、R1、R2、R3及びR4のうちの少なくとも1つは水素ではない)のカチオン、式[R5R6N=CH-NR7R8]+(式中、R5、R6、R7及びR8はそれぞれ、独立して、水素、非置換又は置換C1~20アルキル、及び非置換又は置換C6~12アリールから選択される)のカチオン、並びにC1~10アルキルアンモニウム、C2~10アルケニルアンモニウム、C1~10アルキルイミニウム、C3~10シクロアルキルアンモニウム及びC3~10シクロアルキルイミニウム(これらは、それぞれ非置換又はアミノ、C1~6アルキルアミノ、イミノ、C1~6アルキルイミノ、C1~6アルキル、C2~6アルケニル、C3~6シクロアルキル及びC6~12アリールから選択される1つ以上の置換基で置換されている)から選択される、及び/又は
[M]が2つ以上の異なるMカチオンを含む、及び/又は
各Mカチオンが、Ca2+、Sr2+、Cd2+、Cu2+、Ni2+、Mn2+、Fe2+、Co2+、Pd2+、Ge2+、Sn2+、Pb2+、Yb2+及びEu2+から選択される、及び/又は
各Xアニオンがハロゲン化物である、及び/又は
[A]が式[R1NH3]+(式中、R1は非置換C1~10アルキルである)のカチオンを含み、前記有機アミンが非置換(C1~10アルキル)アミンを含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
各Aカチオンが、Cs+、Rb+、メチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、エチルアンモニウム、プロピルアンモニウム、ブチルアンモニウム、ペンチルアンモニウム、ヘキシルアンモニウム、ヘプチルアンモニウム、オクチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、ホルムアミジニウム、1-アミノエタン-1-イミニウム及びグアニジニウムから選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
各Mカチオンが、Sn2+及びPb2+から選択される、請求項18又は請求項19に記載の方法。
【請求項21】
[X]が、2つ以上の異なるハロゲン化物アニオンを含む、請求項1820のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
式[R1NH3]+のAカチオン上のC1~10アルキル基及び非置換(C1~10アルキル)アミン上のC1~10アルキル基は同じである、請求項1821のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記基材中の前記光活性領域中の前記光活性材料が、結晶A/M/X材料を含み、前記結晶A/M/X材料が、請求項1又は請求項1822のいずれか一項に定義される式[A]a[M]b[X]cの化合物を含む、及び/又は
前記基材が2つの別々の光活性領域を含み、各光活性領域が光活性材料を含む、及び/又は
前記膜形成溶液が、1つ以上のAカチオン及び1つ以上のXアニオンをさらに含む、及び/又は
前記方法が、1つ以上のAカチオンを含む組成物を前記基材上に配置する工程をさらに含む、及び/又は
前記膜形成溶液を基材上に配置する工程が、前記膜形成溶液を前記基材上にスピンコーティングする工程を含む、及び/又は
前記方法が、前記溶媒を除去して、前記結晶A/M/X材料を含む前記層を形成する工程をさらに含む、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記基材が2つの別々の光活性領域を含み、各光活性領域が結晶A/M/X材料を含む光活性材料を含み、前記結晶A/M/X材料が、請求項1又は請求項1822のいずれか一項に定義される式[A]a[M]b[X]cの化合物を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記方法が、1つ以上のAカチオン及び1つ以上のXアニオンを含む組成物を前記基材上に配置する工程をさらに含む、請求項23又は請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記方法が、前記溶媒を除去して、前記結晶A/M/X材料を含む前記層を形成する工程をさらに含み、前記溶媒が、膜形成溶液で処理された基材を加熱することによって、除去される、請求項2325のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記基材が、第1の電極をさらに含み、
前記方法が、
第2の電極を前記基材上に配置された前記結晶A/M/X材料の前記層上に配置する工程、又は
電荷輸送材料を前記基材上に配置された前記結晶A/M/X材料の前記層上に配置し、第2の電極を前記電荷輸送材料上に配置する工程
をさらに含む、
請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記基材が、前記電荷再結合層上に配置された電荷輸送材料の層を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記第2の電極が、元素金属を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
(a)少なくとも2つの光活性領域であって、前記光活性領域の少なくとも1つが結晶A/M/X材料の層を含み、前記結晶A/M/X材料が式[A]a[M]b[X]c(式中、[A]は1つ以上のAカチオンを含み、[M]は金属又は半金属のカチオンである1つ以上のMカチオンを含み、[X]は1つ以上のXアニオンを含み、aは1~6の数であり、bは1~6の数であり、cは1~18の数である)の化合物を含む、少なくとも2つの光活性領域、及び
(b)少なくとも1つの電荷再結合層であって、前記電荷再結合層の少なくとも1つが電子輸送有機マトリックス材料中に配置される透明導電性酸化物のナノ粒子を含み、前記電荷再結合層は、導電性ポリマーをさらに含む、少なくとも1つの電荷再結合層
を含む、多接合デバイス。
【請求項31】
前記電荷再結合層が、インジウムスズ酸化物を含む、及び/又は
前記光活性領域のうちの2つが、前記結晶A/M/X材料の層を含む、及び/又は
前記多接合デバイスが、少なくとも3つの光活性領域を含む、請求項30に記載の多接合デバイス。
【請求項32】
各光活性領域が、前記結晶A/M/X材料の層を含む、請求項31に記載の多接合デバイス。
【請求項33】
[A]が、少なくとも1つの有機カチオンを含み、及び/又は
各Aカチオンが、アルカリ金属カチオン、式[R1R2R3R4N]+(式中、R1、R2、R3、R4はそれぞれ、独立して、水素、非置換又は置換C1~20アルキル、及び非置換又は置換C6~12アリールから選択され、R1、R2、R3及びR4のうちの少なくとも1つは水素ではない)のカチオン、式[R5R6N=CH-NR7R8]+(式中、R5、R6、R7及びR8はそれぞれ、独立して、水素、非置換又は置換C1~20アルキル、及び非置換又は置換C6~12アリールから選択される)のカチオン、並びにC1~10アルキルアンモニウム、C2~10アルケニルアンモニウム、C1~10アルキルイミニウム、C3~10シクロアルキルアンモニウム及びC3~10シクロアルキルイミニウム(これらは、それぞれ非置換又はアミノ、C1~6アルキルアミノ、イミノ、C1~6アルキルイミノ、C1~6アルキル、C2~6アルケニル、C3~6シクロアルキル及びC6~12アリールから選択される1つ以上の置換基で置換されている)から選択される、及び/又は
[M]が2つ以上の異なるMカチオンを含む、及び/又は
各Mカチオンが、Ca2+、Sr2+、Cd2+、Cu2+、Ni2+、Mn2+、Fe2+、Co2+、Pd2+、Ge2+、Sn2+、Pb2+、Yb2+及びEu2+から選択される、及び/又は
各Xアニオンがハロゲン化物である、
請求項3032のいずれか一項に記載の多接合デバイス。
【請求項34】
前記多接合デバイスが前記光活性領域間に配置された少なくとも2つの電荷再結合層を含む、及び/又は
前記多接合デバイスが少なくとも2つの電荷再結合層を含み、第2の又はさらなる電荷再結合層の少なくとも1つが、導電性ポリマー又は透明導電性酸化物のナノ粒子を含む、及び/又は
前記多接合デバイスが少なくとも2つの電荷再結合層を含み、第2の又はさらなる電荷再結合層の少なくとも1つが、透明導電性酸化物のナノ粒子及び導電性ポリマーを含む、請求項33に記載の多接合デバイス。
【請求項35】
各光活性領域が、結晶A/M/X材料の層を含み、
[A]が、少なくとも1つの有機カチオンを含み、及び/又は
各Aカチオンが、アルカリ金属カチオン、式[R1R2R3R4N]+(式中、R1、R2、R3、R4はそれぞれ、独立して、水素、非置換又は置換C1~20アルキル、及び非置換又は置換C6~12アリールから選択され、R1、R2、R3及びR4のうちの少なくとも1つは水素ではない)のカチオン、式[R5R6N=CH-NR7R8]+(式中、R5、R6、R7及びR8はそれぞれ、独立して、水素、非置換又は置換C1~20アルキル、及び非置換又は置換C6~12アリールから選択される)のカチオン、並びにC1~10アルキルアンモニウム、C2~10アルケニルアンモニウム、C1~10アルキルイミニウム、C3~10シクロアルキルアンモニウム及びC3~10シクロアルキルイミニウム(これらは、それぞれ非置換又はアミノ、C1~6アルキルアミノ、イミノ、C1~6アルキルイミノ、C1~6アルキル、C2~6アルケニル、C3~6シクロアルキル及びC6~12アリールから選択される1つ以上の置換基で置換されている)から選択される、及び/又は
[M]が2つ以上の異なるMカチオンを含む、及び/又は
各Mカチオンが、Ca2+、Sr2+、Cd2+、Cu2+、Ni2+、Mn2+、Fe2+、Co2+、Pd2+、Ge2+、Sn2+、Pb2+、Yb2+及びEu2+から選択される、及び/又は
各Xアニオンがハロゲン化物である、及び/又は
前記電荷再結合層の少なくとも1つが、(i)インジウムスズ酸化物(ITO)のナノ粒子並びに(ii)ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)及びポリスチレンスルホネートを含むポリマーを含む、及び/又は
前記結晶A/M/X材料の少なくとも2つが互いに異なる、及び/又は
前記多接合デバイスが第1の電極及び第2の電極をさらに含み、前記光活性領域及び前記電荷再結合層の少なくとも1つが、前記第1の電極及び前記第2の電極の間に配置される、請求項3034のいずれか一項に記載の多接合デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶A/M/X材料の層を含む多接合デバイスの製造方法を提供する。また、本発明の方法によって得ることができる又は得られる多接合デバイスであって、少なくとも1つの光活性領域が結晶A/M/X材料の層を含む少なくとも2つの光活性領域を含む多接合デバイス、及び各光活性領域が結晶A/M/X材料の層を含む少なくとも3つの光活性領域を含む、多接合デバイスも提供する。
【背景技術】
【0002】
ペロブスカイト太陽電池が2009年に最初に報告された際には、太陽光から電力への変換効率は3%であった。2012年までには、9.2%及び10.9%を達成するペロブスカイト光起電力デバイスが実現された。それ以来、エネルギー景観を完全に変えることが見込まれる他のA/M/X材料をベースとしたペロブスカイト太陽光発電及び光起電力デバイスの分野への研究が急速に拡大した。ペロブスカイトをベースとした光起電力デバイスは、実現されて以来、23%超の効率が保証されている。
【0003】
明らかに高い電力変換効率の魅力とは別に、A/M/X材料の最も魅力的な特徴の一つは、比較的容易にこの材料の膜を高品質で製造できることである。ペロブスカイト膜は、一工程スピンコーティング、蒸着及び浸漬被覆、並びにこれらの3つの手段の様々な組み合わせを含めた多種多様な方法によって製作することができる。しかしながら、一工程スピンコーティングが依然として最も簡易且つ迅速な方法であり、特に高価な装置を使用する必要がないという追加の利点もある。この方法の多くのバリエーション、例えば貧溶媒クエンチングの形態の追加の工程を含めたものが開発されている。溶液処理製造法、例えばインクジェット印刷、スプレーコーティング、スロットダイコーティング、ブレードコーティング及びグラビア印刷は、実験室内で開発されたスピンコーティング法に若干の変更を加えて行うことができることが推測される。
【0004】
ペロブスカイト太陽電池は、太陽光発電の研究において非常に重要であるが、この材料の商業目的における可能性に関して幾つかの懸念が残る。一つは材料の安定性及び異常なヒステリシスであり、これらのデバイスのJ-V特性の中で頻繁に観察される。このヒステリシスの原因はイオン運動にあることが示されており、この影響を軽減するために多くの試みが行われてきた。いわゆる逆ポジティブイントリンシックネガティブ(p-i-n)構造が無視できるほどに小さいヒステリシスを示すことが示されるが、一方で正規ネガティブイントリンシックポジティブ(n-i-p)構造では、有機電子受容体、例えばC60若しくはフェニル-C61-酪酸メチルエステル(PCBM)による、n型電荷収集層として使用されることが多いTiO2の置き換え、又はTiO2層の上部(頂部)へのこのような材料の薄層の追加が、ヒステリシスをかなり成功裏に低下させており、これは結果として、デバイスの定常状態出力を有意に増加する。
【0005】
現在に至るまで、溶液法によって製造されたペロブスカイト膜のほとんどの報告書は、高沸点、極性の非プロトン性溶媒を使用する(例えば、Eperonら、Morphological Control for High Performance, Solution-Processed Planar Heterojunction Perovskite Solar Cells, Adv. Funct. Mater. 2013参照)。最も頻繁に使用される溶媒はジメチルホルムアミド(DMF)であるが、他の溶媒としてはジメチルスルホキシド(DMSO)、γ-ブチロラクトン及びジメチルアセトアミド(DMA)が挙げられる。溶媒の選択は、この場合、有機半導体及び色素増感太陽電池材料の処理において一般に使用されるほとんどの溶媒に難溶性又は完全に不溶性のいずれかである傾向があるハロゲン化鉛塩によって限定される。これらのような溶媒を使用する欠点の一つは、ペロブスカイト又はA/M/X材料膜の結晶化を誘発するために膜をかなり高温(100℃以上)まで加熱する必要があることである。これは、膜を貧溶媒にスピンコーティング中の規定の時点で浸してペロブスカイト材料を即座に結晶化させるいわゆる貧溶媒クエンチング法を用いることによってある程度は回避することができる。しかしながら、これは、追加の貧溶媒クエンチング工程を要することによりプロセスを複雑化し得る。
【0006】
WO2017/153752で議論されるように、A/M/X材料の膜を形成する既存の溶液ベース法に関連する幾つかの問題がある。現在、使用されている溶媒(例えば、DMF、DMSO、γ-ブチロラクトン及びDMA)が選択されたのは、A/M/X材料の前駆体化合物、特に金属ハロゲン化物前駆体を溶解できるためである。しかしながら、これらの溶媒は高沸点を有し、エネルギー必要量又は溶液処理の複雑さが増す。また、これらの溶媒は、デバイスの製造中に既存の有機層を除去する傾向もある。これらの溶媒は有毒であることが知られており、それに応じて取り扱いが困難なことがあり、毒性の懸念から大量生産が禁止な場合もある。最後に、これらの溶媒は、大気浄化装置に問題を起こすため、製造に用いることが困難である。
【0007】
さらなる懸念は、最も一般的に使用されるペロブスカイト用溶媒である高沸点溶媒、例えばDMFにおける多接合デバイスの他の構成要素(例えば、光起電力デバイス中の有機電子受容層)の溶解性である。C60及びPCBMは両方ともDMFに難溶性である。ペロブスカイト層を堆積する際、これは2つの問題を生じさせ得る:(i)最悪な場合、電子選択的接触のほぼ完全な洗い流し、又は(ii)最善の場合、ピンホールの形成による分路。電子選択的接触の部分的な洗い流しがごく小規模でのみ起きた場合でも、n型受容体の厚さ及び均一性の両方に変化が常にあるため、デバイス性能が再生不可能になるといった別の問題につながる。
【0008】
多接合デバイスアーキテクチャは、現在市販されている電池のほとんどが動作する単接合熱力学的極限を超えて光電池の電力変換効率を増加させることができる。溶液処理されたペロブスカイト層を有するモノリシックタンデム太陽電池は、慣例的に、シリコンPV電池と単一ペロブスカイト太陽電池接合との組み合わせのままである必要があった。
【0009】
金属ハロゲン化物ペロブスカイト半導体は、光電子デバイス、例えば発光ダイオード(LED)、光検出器、レーザー及び太陽電池中に集積された場合、高性能を示す。これらのペロブスカイトは、典型的には一般化学式ABX3を有し、これらの化学置換基、すなわちAサイトカチオン(メチルアンモニウム、ホルムアミジニウム、セシウム)、Bサイト金属カチオン(鉛若しくはスズ)又はXサイトアニオン(ヨウ化物、臭化物、塩化物)を置換することによりバンドギャップを調整させる。これは、ハロゲン化物ペロブスカイト半導体を、太陽スペクトルの特定の領域を吸収するように調整し、Shockley-Queisser及びTiedje-Yablonovitchの熱力学的効率限界を超える能力を有する多接合用途において用いることを可能にする。光子エネルギー及び電子バンドギャップの差を減らすことによって、電荷担体の熱損失を最小限に抑えることができ、それにより得ることが可能な最大電力変換効率(PCE)を増加することができる。光子エネルギーから熱への変換率を減少するために、広域のバンドギャップを有する多数の吸収体材料(multiple absorber materials)が必要とされる。近年では、広域のバンドギャップのペロブスカイトを用いた効率的な太陽電池が、有機Aサイトカチオンをセシウム(Cs)によって部分置換して、構造、熱及び光安定性を改善することにより製作されている。さらに、狭域のバンドギャップの材料も、Bサイトカチオンの変更を通して研究されており、鉛(Pb)のスズ(Sn)による部分置換は、異常なバンドギャップのボーイング挙動をもたらし、1.2eVに近づくバンドギャップにつながる。
【0010】
上記のペロブスカイト半導体により与えられる潜在的利点、特に必要に応じてバンドギャップを調整するために化学組成を変更する能力のため、全ペロブスカイト多接合太陽電池を構築できることが非常に望ましい。
【0011】
全ペロブスカイト多接合太陽電池への最近の関心の高まりは、特に溶液ベース法によるこれらのデバイスの製造が困難であることを実証する。これは、溶媒(溶剤)、例えばDMF及びDMSOを使用して順に重ねて多接合太陽電池を容易に構築することができないことに一部起因する。DMF及びDMSOは両方とも、ペロブスカイト塩の溶解に使用される高度に配位性の溶媒である。これらの溶媒は、均一且つ高品質のペロブスカイト膜を処理するために使用され、処理される際に容易に層に浸透し、これは既に下で処理された任意のペロブスカイト層の洗い流し又は化学分解をもたらす。
【0012】
記録効率を示すペロブスカイト太陽電池を、溶液ベースの製作法によって処理し、単接合デバイスにおいて23%に達した。溶液ベース法から高品質の吸収体材料を製作する能力は、並外れた光電子工学特性と合わせて、ペロブスカイト太陽電池を急増させた。近年では、4端子(4T)及び2端子(2T)シリコン担持ペロブスカイト(perovskite-on-silicon)、Cu(In,Ga)Se2(CIGS)担持ペロブスカイト、Cu2ZnSn(S,Se)4(CZTSSe)担持ペロブスカイト及びさらにはペロブスカイト担持ペロブスカイトタンデム電池において飛躍的な進歩を遂げた。タンデム太陽電池は、各サブセル間に半透明電極及び/又は再結合層を要し、これらは多種多様な材料及び処理法を用いて製作することができる。これらの高導電性透明層は、銀ナノワイヤー(Ag-NW)、N4,N4,N4",N4"-テトラ([1,1'-ビフェニル]-4-イル)-[1,1':4',1"-テルフェニル]-4,4"-ジアミンをドープした2,2'-(ペルフルオロナフタレン-2,6-ジイリデン)ジマロノニトリル(TaTm:F6-TCNNQ)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)ポリスチレンスルホネート(PEDOT:PSS)、アルミニウムをドープした酸化亜鉛(AZO)及び中でも注目すべきはインジウムスズ酸化物(ITO)を使用して製作された。これらの材料は、異なる堆積(析出)技術、例えばスプレーコーティング、膜転送積層、真空蒸着及びスパッタコーティングを用いて処理してもよい。スパッタITOは、低い抵抗率と合わせて、可視領域及び近赤外(NIR)領域にわたる高い光透過性のため大いに引き付ける力を得た。高密度且つコンパクトな性質に起因して、スパッタITOは、後続する材料層の処理に使用される溶媒に対する物的障壁として機能し得る。これらの溶媒は、高密度のピンホールがない層、例えばインジウム酸化物スズ酸化物(ITO)によって保護されない限り、下部の任意のペロブスカイト層を迅速に再溶解する。
【0013】
最近示されたように、17%超の電力変換効率(PCE)を有するモノリシック全ペロブスカイトタンデム電池を、高密度スパッタITO層を使用して製作することができる。これらのスパッタ被覆TCOは、高真空蒸着系と、有機層及びペロブスカイト層のスパッタ損傷を防止するためのナノ粒子(NP)又は原子層蒸着(ALD)の層を含む高密度バッファ層とを要する。さらに、ペロブスカイト吸収層と比較してITOの低い屈折率は、有意な内部反射率の損失を導入し、したがって実現可能な最大電力変換効率が限定される。したがって、再溶解の問題は、スパッタ被覆ITO又は他のより複雑な処理技術がなければ、全溶液処理された多接合ペロブスカイト太陽電池の実験的な実現を大きく妨げた。
【0014】
現在に至るまで、完全に溶液処理を介して多接合全ペロブスカイト太陽電池を構築することは不可能だった。第1のペロブスカイト層を保護し、全ペロブスカイト太陽電池の製作を可能にしようとするために、後述するように多数の戦略が用いられてきた。
【0015】
Eperonら(Perovskite-perovskite tandem photovoltaics with optimized bandgaps, Science, 2016)では、第2のペロブスカイト層の堆積に使用される溶媒からの損傷から下部の第1のペロブスカイト層を保護するために、使用される再結合層は、インジウムスズ酸化物でスパッタコーティングされている酸化スズの層を含む。この再結合層は、DMF/DNSO等の溶媒が通過できない物的障壁をペロブスカイト層間に提供する。しかしながら、これは、より複雑な処方技術、例えばスパッタコーティングを要し、これは、より複雑で時間やコストがかかる製造プロセスにつながる。
【0016】
Heoら(CH3NH3PbBr3-CH3NH3PbI3 Perovskite-Perovskite Tandem Solar Cells with Exceeding 2.2V Open Circuit Voltage, Adv. Mater. 2016, 28, 5121-5125)では、下部のペロブスカイト層への溶媒による損傷の問題は、太陽電池の上部及び底部を別々に製造し、次いでそれらを一緒に積層することによって回避される。前部セル及び背部セル間の接着性を維持するために厚い正孔輸送層が必要である。これらの太陽電池のために得られるPCEは約10.8%である。この方法は、より複雑な一連の製造工程(積層を含む)を要し、したがって完全な溶媒ベースではない。
【0017】
Shengら、Monolithic Wide Band Gap Perovskite/Perovskite Tandem Solar Cells with Organic Recombination Layers, J. Phys. Chem. C 2017, 121, 27256-27262では、第2のペロブスカイト層のDMFによる溶液処理を回避するために、逐次的蒸気-溶液処理法を用いる。得られるタンデム太陽電池は5.9%のPCEを有する。そのような方法は、前駆体の熱蒸発を要するため、大規模印刷技術にあまり向かない。
【0018】
Jiangら、A two-terminal perovskite/perovskite tandem solar cell J. Mater. Chem 2016, 4, 1208-1213では、貧溶媒クエンチング技術を用いてペロブスカイト層を堆積させ、膜転送積層技術を利用して、再結合層を下部セルの上に置く。これらのより複雑な技術のため、該方法は大規模に用いることができない。
【0019】
これらの戦略はいずれも、多接合デバイスを製造するための簡易な全溶液法を提供しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【文献】WO2017/153752
【非特許文献】
【0021】
【文献】Eperonら、Morphological Control for High Performance, Solution-Processed Planar Heterojunction Perovskite Solar Cells, Adv. Funct. Mater. 2013
【文献】Eperonら、Perovskite-perovskite tandem photovoltaics with optimized bandgaps, Science, 2016
【文献】Heoら、CH3NH3PbBr3-CH3NH3PbI3 Perovskite-Perovskite Tandem Solar Cells with Exceeding 2.2V Open Circuit Voltage, Adv. Mater. 2016, 28, 5121-5125
【文献】Shengら、Monolithic Wide Band Gap Perovskite/Perovskite Tandem Solar Cells with Organic Recombination Layers, J. Phys. Chem. C 2017, 121, 27256-27262
【文献】Jiangら、A two-terminal perovskite/perovskite tandem solar cell J. Mater. Chem 2016, 4, 1208-1213
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明は、複雑な処理技術、例えばスパッタコーティング、積層又は蒸着を用いる必要なくA/M/X多接合デバイスの構築を可能にし、それにより多接合デバイスへの全溶液手段が可能になり、従来の印刷技術、例えば溶液処理製造法、例えばインクジェット印刷、スプレーコーティング、スロットダイコーティング、ブレードコーティング及びグラビア印刷、並びにスピンコーティングを用いた安価且つ容易な該デバイスの製造を可能にする。特に、本発明は、溶液処理されたペロブスカイト層と、トンネル接合を含む溶液処理された電荷再結合層との両方を提供する。
【0023】
高揮発性、低沸点の、非プロトン性溶媒/有機アミンベース溶媒系を用いることにより、ペロブスカイト接合が互いの上に積み重ねられ、全溶液処理された全ペロブスカイト多接合太陽電池を作製することができることが示される。そのような溶媒系の溶媒和強さは、存在する有機アミンの量を変更することにより調整することができる。これは、使用される溶媒がA/M/X前駆体材料を溶解するために必要な溶媒和強さを有するが、最小過剰の有機アミンを用い、それによりデバイス中の下層を損傷するリスクが解消されることを意味する。したがって、使用される溶媒が、多接合デバイスの製造中に、存在する有機層又は下のペロブスカイト層を洗い落とさないことが発見された。これは、製造されたデバイスの再現性及び効率を改善する。
【0024】
本発明者らは、溶液ベース技術を用いて、様々な光活性層の間に配置され得る再結合層を開発した。本明細書に記載の電荷再結合層は、溶液ベース法を用いて堆積させることができる。これは、複雑な技術、例えばスパッタコーティング、積層又は真空蒸着を必要とせず、より簡易に多接合デバイスが製造されることを意味する。加えて、内部反射率の損失を低減し、電力変換効率を増加させることにつながる薄い(100nm未満の)電荷再結合層を製造することができることも意味する。
【0025】
この全溶液処理されたアーキテクチャは、堆積技術、例えばロール・ツー・ロール(R2R)処理、ブレードコーティング、スロットダイコーティング、グラビア印刷又はインクジェット印刷を用いて、剛性基材(リジッド基板)及び可撓性基材(フレキシブル基板)の両方の上に大面積の膜を製造するために適用される可能性を有する。したがって、本発明は、完全に溶液処理された多接合太陽電池を提供する手段を提供する。これらの知見は、大規模且つ低コストの印刷可能なペロブスカイト多接合太陽電池の新たな可能性につながる。
【課題を解決するための手段】
【0026】
したがって、本発明は、結晶A/M/X材料の層を含む多接合デバイスを製造する方法であって、結晶A/M/X材料が式[A]a[M]b[X]c(式中、[A]は1つ以上のAカチオンを含み、[M]は、金属又は半金属のカチオンである1つ以上のMカチオンを含み、[X]は1つ以上のXアニオンを含み、aは1~6の数であり、bは1~6の数であり、cは1~18の数である)の化合物を含み、前記方法が、膜形成溶液を基材上に配置することにより結晶A/M/X材料の層を形成する工程を含み、ここで、膜形成溶液は、
(a)1つ以上のMカチオン、及び
(b)溶媒
を含み、溶媒は
(i)非プロトン性溶媒、及び
(ii)有機アミン
を含み、基材は、光活性材料を含む光活性領域、及び溶液堆積法により光活性領域上に配置される電荷再結合層を含む、方法を提供する。
【0027】
また、本発明は、上記で定義される本発明の方法により得ることができる又は得られる多接合デバイスも提供する。
【0028】
また、本発明は、
(a)少なくとも2つの光活性領域であって、光活性領域の少なくとも1つが結晶A/M/X材料の層を含み、結晶A/M/X材料が式[A]a[M]b[X]c(式中、[A]は1つ以上のAカチオンを含み、[M]は金属又は半金属のカチオンである1つ以上のMカチオンを含み、[X]は1つ以上のXアニオンを含み、aは1~6の数であり、bは1~6の数であり、cは1~18の数である)の化合物を含む、少なくとも2つの光活性領域、及び
(b)透明導電性酸化物のナノ粒子を含む電荷再結合層
を含む多接合デバイスも提供する。
【0029】
A/M/X吸収層と比較してITOの低い屈折率に起因するかなりの内部反射率の損失を導入する高密度スパッタITO層とは対照的に、ナノ粒子は、溶液処理が可能なだけでなく、後続する任意の光吸収層を通して光を散乱することもでき、それによりデバイスの吸光度を高めることができる非連続層をもたらす。
【0030】
本発明はまた、
(a)少なくとも2つの光活性領域であって、光活性領域の少なくとも1つが結晶A/M/X材料の層を含み、結晶A/M/X材料が式[A]a[M]b[X]c(式中、[A]は1つ以上のAカチオンを含み、[M]は金属又は半金属のカチオンである1つ以上のMカチオンを含み、[X]は1つ以上のXアニオンを含み、aは1~6の数であり、bは1~6の数であり、cは1~18の数である)の化合物を含む、少なくとも2つの光活性領域、及び
(b)導電性ポリマーを含む電荷再結合層
を含む多接合デバイスも提供する。
【0031】
本発明はまた、
(a)少なくとも3つの光活性領域であって、各光活性領域が結晶A/M/X材料の層を含み、結晶A/M/X材料が式[A]a[M]b[X]c(式中、[A]は1つ以上のAカチオンを含み、[M]は金属又は半金属のカチオンである1つ以上のMカチオンを含み、[X]は1つ以上のXアニオンを含み、aは1~6の数であり、bは1~6の数であり、cは1~18の数である)の化合物を含む、少なくとも3つの光活性領域、及び
(b)光活性領域間に配置される少なくとも1つの電荷再結合層
を含む多接合デバイスも提供する。
【0032】
また、本発明を有利に用いて、異なるバンドギャップの発光ダイオードの多接合が集光された白色発光をもたらす、多接合発光デバイスを製造することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1A】2端子(2T)FA0.83Cs0.17Pb(Br0.7I0.3)3/MAPbI3(MA=メチルアンモニウム、CH3NH3 +)タンデムペロブスカイト太陽電池についての結果を示す図である。図1Aは、アセトニトリル(CH3CN)/メチルアミン(CH3NH2)(ACN/MA)溶媒系を使用して調製された、MAI:PbI2の化学量論的モル比100:100に関してPbI2の6%相対モル過剰からMAIの6%相対モル過剰までを範囲とする、上部セル(TC)及び中間層の上部に堆積されたMAPbI3薄膜の上面図の走査電子顕微鏡(SEM)画像を示す図である。
図1B】2端子(2T)FA0.83Cs0.17Pb(Br0.7I0.3)3/MAPbI3(MA=メチルアンモニウム、CH3NH3 +)タンデムペロブスカイト太陽電池についての結果を示す図である。図1Bは、全溶液処理されたペロブスカイト/ペロブスカイト2端子(2T)タンデムペロブスカイト太陽電池を示す概略図である。入射光はデバイスの下方から入射される。
図1C】2端子(2T)FA0.83Cs0.17Pb(Br0.7I0.3)3/MAPbI3(MA=メチルアンモニウム、CH3NH3 +)タンデムペロブスカイト太陽電池についての結果を示す図である。図1Cは、2Tペロブスカイト/ペロブスカイトタンデム電池のSEM断面図である。
図1D】2端子(2T)FA0.83Cs0.17Pb(Br0.7I0.3)3/MAPbI3(MA=メチルアンモニウム、CH3NH3 +)タンデムペロブスカイト太陽電池についての結果を示す図である。図1Dは、0.25V/sの走査速度で測定された、1.004の不整合率(ミスマッチファクター)が加えられたチャンピオンFA0.83Cs0.17Pb(Br0.7I0.3)3/MAPbI3タンデムヘテロ接合太陽電池のJ-V特性を示す図である。
図1E】2端子(2T)FA0.83Cs0.17Pb(Br0.7I0.3)3/MAPbI3(MA=メチルアンモニウム、CH3NH3 +)タンデムペロブスカイト太陽電池についての結果を示す図である。図1Eは、各サブセルの外部量子効率(EQE)スペクトル、及びタンデムペロブスカイト太陽電池の集積電流密度を示す図である。
図2A】ACN処理されたMAPb0.75Sn0.25I3ペロブスカイト材料のAからBサイトカチオンの組成の変化による影響を示す図である。図2A)は、変動するAからBサイトの化学量論のケルビンプローブ測定を示す図である。
図2B】ACN処理されたMAPb0.75Sn0.25I3ペロブスカイト材料のAからBサイトカチオンの組成の変化による影響を示す図である。図2B)は、変動するAからBサイトの化学量論のピーク発光波長で取った正規化時間分解フォトルミネセンス(PL)測定値を示す図である。
図2C】ACN処理されたMAPb0.75Sn0.25I3ペロブスカイト材料のAからBサイトカチオンの組成の変化による影響を示す図である。図2C)は、過渡光電流におけるAからBサイトの化学量論の影響を示す図である。
図2D】ACN処理されたMAPb0.75Sn0.25I3ペロブスカイト材料のAからBサイトカチオンの組成の変化による影響を示す図である。図2Dは、0.25V/sの走査速度で測定された、15%の過剰金属イオンを有する最適化MAPb0.75Sn0.25I3単接合ヘテロ接合太陽電池のJ-V特性を示す図である。
図3A】FA0.83Cs0.17Pb(Br0.7I0.3)3/MAPbI3/MAPb0.75Sn0.25I3三重接合ペロブスカイト太陽電池を示す図である。図3Aは、全溶液処理された三重接合2端子(2T)ペロブスカイト太陽電池を示す概略図である。入射光はデバイスの下方から入射される。
図3B】FA0.83Cs0.17Pb(Br0.7I0.3)3/MAPbI3/MAPb0.75Sn0.25I3三重接合ペロブスカイト太陽電池を示す図である。図3Bは、三重接合2T全ペロブスカイトタンデムのSEM断面図である。
図3C】FA0.83Cs0.17Pb(Br0.7I0.3)3/MAPbI3/MAPb0.75Sn0.25I3三重接合ペロブスカイト太陽電池を示す図である。図3Cは、0.25V/sの走査速度で測定された、1.323の不整合率が加えられて製作されたチャンピオンFA0.83Cs0.17Pb(Br0.7I0.3)3/MAPbI3/MAPb0.75Sn0.25I3三重接合ヘテロ接合太陽電池のJ-V特性を示す図である。
図3D】FA0.83Cs0.17Pb(Br0.7I0.3)3/MAPbI3/MAPb0.75Sn0.25I3三重接合ペロブスカイト太陽電池を示す図である。図3Dは、60sの期間にわたって測定された三重接合ヘテロ接合ペロブスカイト太陽電池の開回路電圧(Voc)を示す図である。
図4A】多接合ペロブスカイト太陽電池の光学及び電気モデリングを示す図である。図4Aは、単接合の実験データ及びクラス最高のACN/MA MAPbI3単接合セルを有する、完全に溶液処理されたFA0.83Cs0.17Pb(Br0.7I0.3)3/MAPbI3タンデム太陽電池の算出されたJ-V特性を示す図である。
図4B】多接合ペロブスカイト太陽電池の光学及び電気モデリングを示す図である。図4Bは、単接合の実験データ及びクラス最高のACN/MA MAPbI3単接合セルを有する、完全に溶液処理されたFA0.83Cs0.17Pb(Br0.7I0.3)3/MAPbI3タンデム太陽電池のEQEスペクトルを示す図である。
図4C】多接合ペロブスカイト太陽電池の光学及び電気モデリングを示す図である。図4Cは、最適化された層の厚さ、50nm未満の中間層、MgF2反射防止コーティング、及び強化された上部セル性能が想定されたFA0.83Cs0.17Pb(Br0.7I0.3)3/MAPbI3タンデム太陽電池の算出されたJ-V特性を示す図である。
図4D】多接合ペロブスカイト太陽電池の光学及び電気モデリングを示す図である。図4Dは、最適化された層の厚さ、50nm未満の中間層、MgF2反射防止コーティング、及び強化された上部セル性能が想定されたFA0.83Cs0.17Pb(Br0.7I0.3)3/MAPbI3タンデム太陽電池の模擬EQEスペクトルを示す図である。
図4E】多接合ペロブスカイト太陽電池の光学及び電気モデリングを示す図である。図4Eは、最適化された層の厚さ、50nm未満の中間層、MgF2反射防止コーティング、及び強化された上部セル性能が想定されたFA0.83Cs0.17Pb(Br0.7I0.3)3/MAPbI3/FA0.6MA0.4Pb0.4Sn0.6I3三重接合アーキテクチャのJ-V特性を示す図である。
図4F】多接合ペロブスカイト太陽電池の光学及び電気モデリングを示す図である。図4Fは、最適化された層の厚さ、50nm未満の中間層、MgF2反射防止コーティング、及び強化された上部セル性能が想定されたFA0.83Cs0.17Pb(Br0.7I0.3)3/MAPbI3/FA0.6MA0.4Pb0.4Sn0.6I3三重接合アーキテクチャの模擬EQEスペクトルを示す図である。
図5A】2%のカリウム添加物を有するFA0.83Cs0.17Pb(Br0.7I0.3)3ペロブスカイト材料の光学的特性を示す図である。図5Aは、積分球で測定されたFA0.83Cs0.17Pb(Br0.7I0.3)3の吸収スペクトルを示す図である。
図5B】2%のカリウム添加物を有するFA0.83Cs0.17Pb(Br0.7I0.3)3ペロブスカイト材料の光学的特性を示す図である。図5Bは、直接バンドギャップ材料及び交点(intercept)からの光学バンドギャップの適合(フィッティング)が想定されたFA0.83Cs0.17Pb(Br0.7I0.3)3ペロブスカイトのTaucプロットを示す図である。
図6】FA0.83Cs0.17Pb(Br0.7I0.3)3ペロブスカイト膜の上面図のSEM画像を示す図である。
図7A】2%molのカリウム(K+)添加物を有するSnO2/PCBM/FA0.83Cs0.17Pb(Br0.7I0.3)3/スピロ-OMeTADペロブスカイト太陽電池の電流電圧特性を示す図である。図7Aは、0.25V/sの走査速度を用いた模擬気団(エアマス、AM)1.5 100mW cm-2太陽光下で測定した短絡回路電流電圧曲線への順方向バイアスを示す図である。挿入図は、60sの期間の間、最大出力点で測定した光電流密度及び電力変換効率を示す。
図7B】2%molのカリウム(K+)添加物を有するSnO2/PCBM/FA0.83Cs0.17Pb(Br0.7I0.3)3/スピロ-OMeTADペロブスカイト太陽電池の電流電圧特性を示す図である。図7Bは、FA0.83Cs0.17Pb(Br0.7I0.3)3ヘテロ接合ペロブスカイト太陽電池の安定化された開回路電圧(Voc)を示す図である。
図8A】FA0.83Cs0.17Pb(Br0.7I0.3)3前部セル及びMAPbI3背部セルを有する全ペロブスカイトタンデム太陽電池に組み込まれるACN/MA溶媒処理されたMAPbI3ペロブスカイト吸収層のAからBサイトのカチオンの組成の変化によるA)電力変換効率への影響を示す図である。
図8B】FA0.83Cs0.17Pb(Br0.7I0.3)3前部セル及びMAPbI3背部セルを有する全ペロブスカイトタンデム太陽電池に組み込まれるACN/MA溶媒処理されたMAPbI3ペロブスカイト吸収層のAからBサイトのカチオンの組成の変化によるB)曲線因子(フィルファクター)への影響を示す図である。
図8C】FA0.83Cs0.17Pb(Br0.7I0.3)3前部セル及びMAPbI3背部セルを有する全ペロブスカイトタンデム太陽電池に組み込まれるACN/MA溶媒処理されたMAPbI3ペロブスカイト吸収層のAからBサイトのカチオンの組成の変化によるC)短絡回路電流密度への影響を示す図である。
図8D】FA0.83Cs0.17Pb(Br0.7I0.3)3前部セル及びMAPbI3背部セルを有する全ペロブスカイトタンデム太陽電池に組み込まれるACN/MA溶媒処理されたMAPbI3ペロブスカイト吸収層のAからBサイトのカチオンの組成の変化によるD)開回路電圧への影響を示す図である。
図9】90sの期間の間、最大出力点で測定したチャンピオンFA0.83Cs0.17Pb(Br0.7I0.3)3/MAPbI3二重接合太陽電池の光電流密度及び電力変換効率を示す図である。1.004の不整合率がPCEに適用された。
図10】タンデムペロブスカイト太陽電池及び三重接合ペロブスカイト太陽電池の算出された不整合率を示す表である。以下のペロブスカイト材料FA0.83Cs0.17Pb(Br0.7I0.3)3、MAPbI3及びFA0.83Cs0.17Pb0.5Sn0.5I3についての不整合率を算出した。キセノンアークランプによる太陽シミュレータの赤外線放射中の大強度スパイクを軽減し説明するためにKG2及びKG5フィルターを使用したため、スペクトル及びキャリブレーションは両方の測定で異なる。
図11A】AM1.5Gスペクトルと比較した、測定された太陽シミュレータスペクトルを示す図である。図11Aは、FA0.83Cs0.17Pb(Br0.7I0.3)3/MAPbI3タンデム太陽電池の測定に使用される、KG5フィルタリング(フィルター処理)されたシリコン対照セルで強度が設定されたキセノンランプスペクトルを示す図である。
図11B】AM1.5Gスペクトルと比較した、測定された太陽シミュレータスペクトルを示す図である。図11Bは、FA0.83Cs0.17Pb(Br0.7I0.3)3/MAPbI3/MAPb0.75Sn0.25I3三重接合太陽電池の測定に使用される、KG2フィルタリングされた対照セルで強度が設定されたキセノンランプスペクトルを示す図である。
図12A】最大開回路電圧を有するFA0.83Cs0.17Pb(Br0.7I0.3)3/MAPbI3タンデム太陽電池のデバイス性能を示す図である。図12Aは、0.25V/sの走査速度を用いた模擬気団(AM)1.5 100mW cm-2太陽光下で測定した電流電圧特性を示す図である。
図12B】最大開回路電圧を有するFA0.83Cs0.17Pb(Br0.7I0.3)3/MAPbI3タンデム太陽電池のデバイス性能を示す図である。図12Bは、60sの期間の間、最大出力点で測定した光電流密度及び電力変換効率を示す図である。1.004の不整合率がPCEに適用された。
図13A】MAPb0.75Sn0.25I3ペロブスカイト材料の特性を示す図である。図13Aは、50Ωの抵抗型負荷を用いて測定した、FTO/SnO2/PC61BM/MAPb0.75Sn0.75I3/スピロ(TFSI)2太陽電池アーキテクチャのEQEスペクトルを示す図である。
図13B】MAPb0.75Sn0.25I3ペロブスカイト材料の特性を示す図である。図13Bは、直接バンドギャップ材料が想定されたMAPb0.75Sn0.25I3ペロブスカイト材料のTaucプロットを示す図である。
図14A】ACN/MA MAPb0.75Sn0.25I3ペロブスカイト単接合太陽電池のAからBサイトのカチオンの組成の変化によるA)電力変換効率への影響を示す図である。
図14B】ACN/MA MAPb0.75Sn0.25I3ペロブスカイト単接合太陽電池のAからBサイトのカチオンの組成の変化によるB)曲線因子への影響を示す図である。
図14C】ACN/MA MAPb0.75Sn0.25I3ペロブスカイト単接合太陽電池のAからBサイトのカチオンの組成の変化によるC)短絡回路電流密度への影響を示す図である。
図14D】ACN/MA MAPb0.75Sn0.25I3ペロブスカイト単接合太陽電池のAからBサイトのカチオンの組成の変化によるD)開回路電圧への影響を示す図である。
図15A】最大開回路電圧を有するFA0.83Cs0.17Pb(Br0.7I0.3)3/MAPbI3/MAPb0.75Sn0.25I3三重接合太陽電池のデバイス性能を示す図である。図15Aは、0.25V/sの走査速度を用いた模擬気団(AM)1.5 100mW cm-2太陽光下で測定した電流電圧特性を示す図である。
図15B】最大開回路電圧を有するFA0.83Cs0.17Pb(Br0.7I0.3)3/MAPbI3/MAPb0.75Sn0.25I3三重接合太陽電池のデバイス性能を示す図である。図15Bは、60sの期間の間、最大出力点で測定した光電流密度及び電力変換効率を示す。1.323の不整合率がPCEに適用された。
図16A】再結合中間層並びに正孔及び電子受容層の光学的性質を示す図である。図16Aは、250nm~1050nmのガラス、インジウムスズ酸化物ナノ粒子(ITO NP)、フェニル-C61-酪酸メチルエステル(PC61BM)、フェニル-C61-酪酸メチルエステル(PC61BM)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)ポリスチレンスルホネート(PEDOT:PSS)、(2,2',7,7'-テトラキス(N,N'-ジ-p-メトキシフェニルアミン)-9,9'-スピロビフルオレン)(スピロ-OMeTAD)から測定された吸収を示す図である。
図16B】再結合中間層並びに正孔及び電子受容層の光学的性質を示す図である。図16Bは、透過測定を示す図である。
図16C】再結合中間層並びに正孔及び電子受容層の光学的性質を示す図である。図16Cは、反射率測定を示す図である。
図17A】FA0.83Cs0.17Pb(Br0.7I0.3)3/MAPbI3二重接合太陽電池でフィルタリングされたFA0.83Cs0.17Pb0.5Sn0.5I3のアーキテクチャ及びデバイス特性を示す。図17Aは、全溶液処理されたペロブスカイト/ペロブスカイト2端子(2T)FA0.83Cs0.17Pb(Br0.7I0.3)3/MAPbI3タンデムペロブスカイト太陽電池を用いたFA0.83Cs0.17Pb0.5Sn0.5I3ペロブスカイトのフィルタリングを示す概略図である。
図17B】FA0.83Cs0.17Pb(Br0.7I0.3)3/MAPbI3二重接合太陽電池でフィルタリングされたFA0.83Cs0.17Pb0.5Sn0.5I3のアーキテクチャ及びデバイス特性を示す。図17Bは、FA0.83Cs0.17Pb(Br0.7I0.3)3/MAPbI3二重接合太陽電池でフィルタリングされたFA0.83Cs0.17Pb0.5Sn0.5I3(実線)のEQEスペクトル、及びタンデムペロブスカイト太陽電池の集積電流密度を示す図である。また、不透明電極を有するFA0.83Cs0.17Pb(Br0.7I0.3)3/MAPbI3タンデムペロブスカイト太陽電池の各サブセルのEQEスペクトル、及びタンデムペロブスカイト太陽電池の集積電流密度も示す図である。
図17C】FA0.83Cs0.17Pb(Br0.7I0.3)3/MAPbI3二重接合太陽電池でフィルタリングされたFA0.83Cs0.17Pb0.5Sn0.5I3のアーキテクチャ及びデバイス特性を示す。図17Cは、0.25V/sの走査速度で測定された、フィルタリングされていない及び製作されたFA0.83Cs0.17Pb(Br0.7I0.3)3/MAPbI3二重接合太陽電池でフィルタリングされたチャンピオンFA0.83Cs0.17Pb0.5Sn0.5I3のJ-V特性を示す図である。
図17D】FA0.83Cs0.17Pb(Br0.7I0.3)3/MAPbI3二重接合太陽電池でフィルタリングされたFA0.83Cs0.17Pb0.5Sn0.5I3のアーキテクチャ及びデバイス特性を示す。図17Dは、フィルタリングされていない及びフィルタリングされたFA0.83Cs0.17Pb0.5Sn0.5I3太陽電池の、60sの期間の間、最大出力点で測定した光電流密度及び電力変換効率を示す。1.323の不整合率がPCEに適用された。
【発明を実施するための形態】
【0034】
定義
本明細書で使用される用語「結晶」は、拡張3D結晶構造を有する化合物である結晶化合物を示す。結晶化合物は、典型的には、結晶の形態、又は多結晶化合物の場合、(結)晶子(すなわち、粒径が1μm以下の複数の結晶)の形態である。結晶を合わせて層を形成することが多い。結晶物質の結晶は任意のサイズであり得る。結晶は、1nmから最大1000nmまでの範囲の1つ以上の寸法を有する場合、ナノ結晶として説明され得る。
【0035】
本明細書で使用される用語「有機化合物」及び「有機溶媒」は、当技術分野における典型的な意味を有し、当業者に容易に理解されると考えられる。
【0036】
本明細書で使用される用語「結晶A/M/X材料」は、1つ以上のAイオン、1つ以上のMイオン、及び1つ以上のXイオンを含む結晶構造を有する材料を指す。Aイオン及びMイオンはカチオンである。Xイオンはアニオンである。A/M/X材料は、典型的には、これ以上のいかなるタイプのイオンも含まない。
【0037】
本明細書で使用される用語「ペロブスカイト」は、CaTiO3の構造に関連する三次元結晶構造を有する材料又は(層が)CaTiO3の構造に関連する構造を有する材料の層を含む材料を指す。CaTiO3の構造は、式ABX3(式中、A及びBは異なるサイズのカチオンであり、Xはアニオンである)によって表すことができる。単位格子中、Aカチオンは(0,0,0)にあり、Bカチオンは(1/2,1/2,1/2)にあり、Xアニオンは(1/2,1/2,0)にある。Aカチオンは通常、Bカチオンより大きい。当業者は、A、B及びXが変化した場合、異なるイオンサイズが、ペロブスカイト材料の構造を、CaTiO3によって取られる構造からより低い対称性に歪められた構造へ変形させ得ることを理解するであろう。材料がCaTiO3の構造に関連する構造を有する層を含む場合も対称性が低くなる。ペロブスカイト材料の層を含む材料は周知である。例えば、K2NiF4型構造を取る材料の構造は、ペロブスカイト材料の層を含む。当業者は、ペロブスカイト材料が式[A][B][X]3(式中、[A]は少なくとも1つのカチオンであり、[B]は少なくとも1つのカチオンであり、[X]は少なくとも1つのアニオンである)によって表すことができることを理解するであろう。ペロブスカイトが1つを超えるAカチオンを含む場合、異なるAカチオンが、規則的に又は不規則的にAサイトにわたって分布され得る。ペロブスカイトが1つを超えるBカチオンを含む場合、異なるBカチオンが、規則的に又は不規則的にBサイトにわたって分布され得る。ペロブスカイトが1つを超えるXアニオンを含む場合、異なるXアニオンが、規則的に又は不規則的にXサイトにわたって分布され得る。1つを超えるAカチオン、1つを超えるBカチオン又は1つを超えるXカチオンを含むペロブスカイトの対称性は、CaTiO3の対称性より低い。層状ペロブスカイトの場合、A、B及びXイオン間で化学量論が変化し得る。例として、Aカチオンが3Dペロブスカイト構造内に適合させるにはイオン半径が大き過ぎる場合、[A]2[B][X]4構造を採り得る。用語「ペロブスカイト」は、ルドルスデン-ポッパー相を採用するA/M/X材料も包む。ルドルスデン-ポッパー相は、層状且つ3Dの構成成分の混合物を有するペロブスカイトを指す。そのようなペロブスカイトは、結晶構造An-1A'2MnX3n+1(式中、A及びA'は異なるカチオンであり、nは1~8又は2~6の整数である)を採ることができる。用語「混合2D及び3D」ペロブスカイトは、AMX3及びAn-1A'2MnX3n+1ペロブスカイト相の両方の領域又はドメインが存在するペロブスカイト膜を指すために用いられる。
【0038】
本明細書で使用される用語「金属ハロゲン化物ペロブスカイト」は、式が少なくとも1つの金属カチオン及び少なくとも1つのハロゲン化物アニオンを含有するペロブスカイトを指す。
【0039】
本明細書で使用される用語「混合ハロゲン化物ペロブスカイト」は、少なくとも2つのタイプのハロゲン化物アニオンを含有するペロブスカイト又は混合ペロブスカイトを指す。
【0040】
本明細書で使用される用語「混合カチオンペロブスカイト」は、少なくとも2つのタイプのAカチオンを含有する混合ペロブスカイトのペロブスカイトを指す。
【0041】
本明細書で使用される用語「混合金属ペロブスカイト」は、少なくとも2つのタイプの金属Mカチオンを含有する混合ペロブスカイトのペロブスカイトを指す。
【0042】
本明細書で使用される用語「有機-無機金属ハロゲン化物ペロブスカイト」は、式が少なくとも1つの有機カチオンを含有する金属ハロゲン化物ペロブスカイトを指す。
【0043】
本明細書で使用される用語「モノカチオン」は、単一正電荷を有する任意のカチオン、すなわち式A+(式中、Aは任意の部分、例えば金属原子又は有機部分である)のカチオンを指す。用語「ジカチオン」は、本明細書で使用される場合、二重正電荷を有する任意のカチオン、すなわち式A2+(式中、Aは任意の部分、例えば金属原子又は有機部分である)のカチオンを指す。用語「トリカチオン」は、本明細書で使用される場合、三重正電荷を有する任意のカチオン、すなわち式A3+(式中、Aは任意の部分、例えば金属原子又は有機部分である)のカチオンを指す。用語「テトラカチオン」は、本明細書で使用される場合、四重正電荷を有する任意のカチオン、すなわち式A4+(式中、Aは任意の部分、例えば金属原子である)のカチオンを指す。
【0044】
本明細書で使用される用語「アルキル」は、直鎖又は分岐鎖飽和炭化水素基を指す。アルキル基は、C1~20アルキル基、C1~14アルキル基、C1~10アルキル基、C1~6アルキル基又はC1~4アルキル基であってもよい。C1~10アルキル基の例として、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル又はデシルがある。C1~6アルキル基の例として、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル又はヘキシルがある。C1~4アルキル基の例として、メチル、エチル、i-プロピル、n-プロピル、t-ブチル、s-ブチル又はn-ブチルがある。本明細書における炭素数を指定する接頭辞なしに用語「アルキル」を用いる場合、1~6個の炭素を有する(これは、本明細書で言及される他の任意の有機基にも適用する)。
【0045】
本明細書で使用される用語「シクロアルキル」は、飽和又は部分不飽和環状炭化水素基を指す。シクロアルキル基は、C3~10シクロアルキル基、C3~8シクロアルキル基又はC3~6シクロアルキル基であってもよい。C3~8シクロアルキル基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘキサ-1,3-ジエニル、シクロヘプチル及びシクロオクチルが挙げられる。C3~6シクロアルキル基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシルが挙げられる。
【0046】
本明細書で使用される用語「アルケニル」は、1つ以上の二重結合を含む直鎖又は分岐鎖炭化水素基を指す。アルケニル基は、C2~20アルケニル基、C2~14アルケニル基、C2~10アルケニル基、C2~6アルケニル基又はC2~4アルケニル基であってもよい。C2~10アルケニル基の例として、エテニル(ビニル)、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル又はデセニルがある。C2~6アルケニル基の例として、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル又はヘキセニルがある。C2~4アルケニル基の例として、エテニル、i-プロペニル、n-プロペニル、s-ブテニル又はn-ブテニルがある。アルケニル基は、典型的には、1つ又は2つの二重結合を含む。
【0047】
本明細書で使用される用語「アルキニル」は、1つ以上の三重結合を含む直鎖又は分岐鎖炭化水素基を指す。アルキニル基は、C2~20アルキニル基、C2~14アルキニル基、C2~10アルキニル基、C2~6アルキニル基又はC2~4アルキニル基であってもよい。C2~10アルキニル基の例として、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル、オクチニル、ノニニル又はデシニルがある。C1~6アルキニル基の例として、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル又はヘキシニルがある。アルキニル基は、典型的には、1つ又は2つの三重結合を含む。
【0048】
本明細書で使用される用語「アリール」は、環部分中に6~14個の炭素原子、典型的には6~10個の炭素原子を含有する単環式、二環式又は多環式芳香環を指す。例としては、フェニル、ナフチル、インデニル、インダニル、アントラセニル及びピレニル基が挙げられる。用語「アリール基」は、本明細書で使用される場合、ヘテロアリール基を包含する。
【0049】
本明細書で使用される用語「ヘテロアリール」は、典型的には、環部分中に1個以上のヘテロ原子を含めた6~10個の原子を含有する単環式又は二環式芳香族複素環を指す。ヘテロアリール基は、一般に、O、S、N、P、Se及びSiから選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含有する5又は6員環である。例えば、1、2又は3個のヘテロ原子を含有し得る。ヘテロアリール基の例としては、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、フラニル、チエニル、ピラゾリジニル、ピロリル、オキサゾリル、オキサジアゾリル、イソオキサゾリル、チアジアゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、キノリル及びイソキノリルが挙げられる。
【0050】
置換有機基の文脈において本明細書で使用される用語「置換」は、C1~10アルキル、アリール(本明細書で定義されるもの)、シアノ、アミノ、ニトロ、C1~10アルキルアミノ、ジ(C1~10)アルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、アリール(C1~10)アルキルアミノ、アミド、アシルアミド、ヒドロキシ、オキソ、ハロ、カルボキシ、エステル、アシル、アシルオキシ、C1~10アルコキシ、アリールオキシ、ハロ(C1~10)アルキル、スルホン酸、チオール、C1~10アルキルチオ、アリールチオ、スルホニル、リン酸、リン酸エステル、ホスホン酸及びホスホン酸エステルから選択される1つ以上の置換基を有する有機基を指す。置換アルキル基の例としては、ハロアルキル、ペルハロアルキル、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、アルコキシアルキル及びアルカリル基が挙げられる。基が置換される場合、1、2又は3つの置換基を有し得る。例えば、置換される基は、1又は2つの置換基を有し得る。
【0051】
本明細書で使用される用語「ハロゲン化物(halide)」は、周期表の第VIII族元素の一価アニオンを示す。「ハロゲン化物」は、フッ化物、塩化物、臭化物及びヨウ化物を含む。
【0052】
本明細書で使用される用語「ハロ」は、ハロゲン原子を示す。例示的なハロ種は、フルオロ、クロロ、ブロモ及びヨードの種を包含する。
【0053】
本明細書で使用される場合、アミノ基は、式-NR2(式中、各Rは置換基である)の基である。Rは通常、水素、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、又はアリールから選択され、アルキル、アルケニル、シクロアルキル及びアリールのそれぞれは、本明細書で定義されるとおりである。典型的には、各Rは、水素、C1~10アルキル、C2~10アルケニル及びC3~10シクロアルキルから選択される。好ましくは、各Rは、水素、C1~6アルキル、C2~6アルケニル及びC3~6シクロアルキルから選択される。より好ましくは、各Rは水素及びC1~6アルキルから選択される。
【0054】
典型的なアミノ基は、式-NR2(式中、少なくとも1つのRは、本明細書で定義されるアルキル基である)の基であるアルキルアミノ基である。C1~6アルキルアミノ基は、少なくとも1つのRがC1~6アルキル基であるアルキルアミノ基である。
【0055】
本明細書で使用される場合、イミノ基は、式R2C=N-又は-C(R)=NR(式中、各Rは置換基である)の基である。すなわち、イミノ基は、C=N部分を含む基であって、前記C=N結合のN原子にあるか又はC原子に結合しているかのいずれかのラジカル部分を有する、C=N部分を含む基である。Rは、本明細書で定義されるとおりであり、すなわち、Rは通常、水素、アルキル、アルケニル、シクロアルキル又はアリールから選択され、アルキル、アルケニル、シクロアルキル及びアリールそれぞれは本明細書で定義されるとおりである。典型的には、各Rは、水素、C1~10アルキル、C2~10アルケニル及びC3~10シクロアルキルから選択される。好ましくは、各Rは、水素、C1~6アルキル、C2~6アルケニル及びC3~6シクロアルキルから選択される。より好ましくは、各Rは水素及びC1~6アルキルから選択される。
【0056】
典型的なイミノ基は、式R2C=N-又は-C(R)=NR(式中、少なくとも1つのRは、本明細書で定義されるアルキル基である)の基であるアルキルイミノ基である。C1~6アルキルイミノ基は、R置換基が1~6個の炭素原子を含むアルキルイミノ基である。
【0057】
本明細書で使用される用語「エステル」は、式アルキル-C(=O)-O-アルキル(式中、アルキル基は同じであるか又は異なり、本明細書で定義されるとおりである)の有機化合物を示す。アルキル基は、任意選択で置換されていてもよい。
【0058】
本明細書で使用される用語「エーテル」は、本明細書で定義される2つのアルキル基で置換された酸素原子を示す。アルキル基は、任意選択で置換されていてもよく、同じであっても異なっていてもよい。
【0059】
本明細書で使用される場合、用語「アンモニウム」は、四級窒素を含む有機カチオンを示す。アンモニウムカチオンは、式R1R2R3R4N+のカチオンである。R1、R2、R3及びR4は置換基である。R1、R2、R3及びR4のそれぞれは、典型的には、独立して水素、又は任意選択で置換されているアルキル、アルケニル、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル及びアミノから選択され、任意選択の置換基は、好ましくは、アミノ又はイミノ置換基である。通常、R1、R2、R3及びR4のそれぞれは、独立して、水素、及び任意選択で置換されているC1~10アルキル、C2~10アルケニル、C3~10シクロアルキル、C3~10シクロアルケニル、C6~12アリール及びC1~6アミノから選択され、存在する場合、任意選択の置換基は、好ましくは、アミノ基、特に好ましくはC1~6アミノである。好ましくは、R1、R2、R3及びR4のそれぞれは、独立して、水素、及び非置換C1~10アルキル、C2~10アルケニル、C3~10シクロアルキル、C3~10シクロアルケニル、C6~12アリール及びC1~6アミノから選択される。特に好ましい実施形態において、R1、R2、R3及びR4は、独立して、水素、C1~10アルキル、C2~10アルケニル及びC1~6アミノから選択される。さらに好ましくは、R1、R2、R3及びR4は、独立して、水素、C1~6アルキル、C2~6アルケニル及びC1~6アミノから選択される。
【0060】
本明細書で使用される用語「イミニウム」は、式(R1R2C=NR3R4)+(式中、R1、R2、R3及びR4は、アンモニウムカチオンと関連して定義されるとおりである)の有機カチオンを示す。したがって、イミニウムカチオンの特に好ましい実施形態において、R1、R2、R3及びR4は、独立して、水素、C1~10アルキル、C2~10アルケニル及びC1~6アミノから選択される。イミニウムカチオンのさらに好ましい実施形態において、R1、R2、R3及びR4は、独立して、水素、C1~6アルキル、C2~6アルケニル及びC1~6アミノから選択される。多くの場合、イミニウムカチオンは、ホルムアミジニウム、すなわちR1はNH2であり、R2、R3及びR4は全てHである。
【0061】
本明細書で使用される用語「多接合デバイス」は、互いに電子的に(electronically)直列に接続され、互いの上部に連続的に配置されている2つ以上の光電子デバイスを含む単一デバイスを指す。光電子デバイスは、正孔及び電子受容層間にはさまれたペロブスカイト吸収層を含み得る。トンネル接合されていてもよい電荷再結合層は、多接合デバイス中で互いの上部に積層されている、多接合デバイス中の各光電子デバイスを分離する。典型的には、多接合デバイス中の光電子半導体のバンドギャップは互いに異なる。
【0062】
多接合デバイスの例としては、光起電力デバイス、太陽電池、光起電力ダイオード、光検出器、フォトダイオード、光センサー、発色デバイス、発光トランジスタ、感光トランジスタ、フォトトランジスタ、固体三極管、発光デバイス(発光素子)、レーザー又は発光ダイオードが挙げられる。用語「太陽電池」及び「光起電力ダイオード」は、本明細書において互換的に使用される。用語「光電子デバイス」は、本明細書中で使用される場合、光の供給(source)、制御又は検出を行うデバイスを指す。光は、あらゆる電磁放射をも含むと理解される。光電子デバイスの例としては、光起電力デバイス、フォトダイオード(太陽電池を含む)、フォトトランジスタ、光電子増倍器、フォトレジスター、及び発光ダイオードが挙げられる。
【0063】
用語「から本質的になる」は、組成物を本質的に構成する成分及び他の成分を含む組成物であって、他の成分が、組成物の本質的特性に物質的に影響しないことを条件とする組成物を指す。典型的には、特定の成分から本質的になる組成物は、95wt%(重量%)以上の該成分又は99wt%以上の該成分を含む。
【0064】
本明細書で使用される用語「上に配置する」又は「上に配置された」は、一成分を別の成分上で利用できるようにすること又は一成分を別の成分上に置くことを指す。第1の成分は、第2の成分上で直接利用できるようにするか若しくは第2の成分上に置くことができる、又は第1及び第2の成分間に介入する第3の成分があり得る。例えば、第1の層が第2の層の上に配置される場合、これは、第1及び第2の層の間に介入する第3の層がある場合を包含する。典型的には、「上に配置する」は、1つの成分を別の成分の上に直接置くことを指す。
【0065】
本明細書で使用される用語「層」は、実質的に層状の形態(例えば、実質的に2つの垂直方向に延伸するが、第3の垂直方向の延伸は限定される)の任意の構造を指す。層は、層の広がりと共に変化する厚さを有し得る。典型的には、層は、ほぼ一定の厚さを有する。層の「厚さ」は、本明細書で使用される場合、層の平均厚さを指す。層の厚さは、例えば顕微鏡法、例えば膜の断面の電子顕微鏡法、又は例えば触針式プロフィロメーターを使用した表面形状測定法により容易に測定することができる。
【0066】
本明細書で使用される用語「バンドギャップ」は、材料中の価電子帯の上部と伝導帯の底部との間のエネルギー差を指す。当然ながら、当業者は、過度の実験を必要としない周知の手順を用いて半導体のバンドギャップ(ペロブスカイトのものを含む)を容易に測定することができる。例えば、半導体のバンドギャップは、半導体から光起電力ダイオード又は太陽電池を構築し、光起電力作用スペクトルを決定することによって評価することができる。或いは、バンドギャップは、透過分光測光法又は光熱偏向分光法のいずれかにより光吸収スペクトルを測定することによって評価することができる。バンドギャップは、x軸の光子エネルギーに対して吸収係数と光子エネルギーの積の二乗をY軸にプロットし、吸収端のx軸との直線交点から半導体の光学バンドギャップが得られる、Tauc, J., Grigorovici, R. & Vancu, a. Optical Properties and Electronic Structure of Amorphous Germanium. Phys. Status Solidi 15、627-637 (1966)に記載されているとおりにTaucプロットを作成することによって決定することができる。或いは、光学バンドギャップは、[Barkhouse DAR, Gunawan O, Gokmen T, Todorov TK, Mitzi DB. Device characteristics of a 10.1% hydrazineprocessed Cu2ZnSn(Se,S)4 solar cell. Progress in Photovoltaics: Research and Applications 2012; published online DOI: 10.1002/pip.1160.]に記載されているとおりに、入射光子-電子変換効率の開始点を記録することによって評価することができる。
【0067】
本明細書で使用される用語「半導体」又は「半導体材料」は、導電体(伝導体)と誘電体との間の中間の大きさの導電率を有する材料を指す。半導体は、負電荷(n)型半導体、正電荷(p)型半導体又は真性(i)半導体であってもよい。半導体は、0.5~3.5eV、例えば0.5~2.5eV又は1.0~2.0eVのバンドギャップを有し得る(300Kで測定した場合)。
【0068】
本明細書で使用される用語「n型領域」は、1つ以上の電子輸送(すなわち、n型)材料の領域を指す。同様に、用語「n型層」は、電子輸送(すなわち、n型)材料の層を指す。電子輸送(すなわち、n型)材料は、単一輸送化合物若しくは元素材料、又は2種以上の電子輸送化合物若しくは元素材料の混合物であり得る。電子輸送化合物又は元素材料は、非ドープであっても、1つ以上のドーパント元素でドープされていてもよい。
【0069】
本明細書で使用される用語「p型領域」は、1つ以上の正孔輸送(すなわち、p型)材料の領域を指す。同様に、用語「p型層」は、正孔輸送(すなわち、p型)材料の層を指す。正孔輸送(すなわち、p型)材料は、単一正孔輸送化合物若しくは元素材料、又は2種以上の正孔輸送化合物若しくは元素材料の混合物であり得る。正孔輸送化合物又は元素材料は、非ドープであっても、1つ以上のドーパント元素でドープされていてもよい。
【0070】
本明細書で使用される用語「電極材料」は、電極中での使用に適した任意の材料を指す。電極材料は、高い導電率を有する。本明細書で使用される用語「電極」は、電極材料からなる又は電極材料から本質的になる領域又は層を示す。
【0071】
本明細書で使用される用語「ナノ粒子」は、そのサイズが典型的にはナノメートル(nm)で測定される微細粒子を意味する。ナノ粒子は、典型的には、0.1nm~500nm、例えば0.5nm~500nmの粒径を有する。ナノ粒子は、例えば、0.1nm~300nm、又は例えば0.5nm~300nmのサイズを有する粒子であってもよい。多くの場合、ナノ粒子は、0.1nm~100nm、例えば0.5nm~100nmの粒径を有する。ナノ粒子は、高い球形度を有し得、すなわち実質的に球形であり得るか又は球形であり得る。高い球形度を有するナノ粒子は、例えば、0.8~1.0の球形度を有し得る。球形度は、
【0072】
【数1】
(式中、Vpは粒子の体積であり、Apは粒子の面積である)
として算出することができる。好ましくは、球形粒子は、1.0の球形度を有する。全ての他の粒子は1.0未満の球形度を有する。ナノ粒子は、別法では非球形であってもよい。例えば、偏球又は長球の形態であってもよく、滑らかな表面を有し得る。或いは、非球形ナノ粒子は、板状、針状、管状であってもよく、又は不規則な形状をとってもよい。
【0073】
方法
本発明は、結晶A/M/X材料の層を含む多接合デバイスを製造する方法であって、結晶A/M/X材料が、式[A]a[M]b[X]c(式中、[A]は1つ以上のAカチオンを含み、[M]は1つ以上の金属又は半金属のカチオンであるMカチオンを含み、[X]は1つ以上のXアニオンを含み、aは1~6の数であり、bは1~6の数であり、cは1~18の数である)の化合物を含み、前記方法が、膜形成溶液を基材上に配置することによって結晶A/M/X材料の層を形成する工程を含み、ここで、膜形成溶液は、
(a)1つ以上のMカチオン、及び
(b)溶媒
を含み、溶媒は、
(i)非プロトン性溶媒、及び
(ii)有機アミン
を含み、基材は、光活性材料を含む光活性領域と、溶液堆積により光活性領域上に配置された電荷再結合層とを含む、方法を提供する。
【0074】
典型的には、本方法は、膜形成溶液を電荷再結合層上に配置させる工程を伴う。したがって、典型的には、基材は、以下の順序で以下の層を含む:
・電荷再結合層、
・光活性領域。
【0075】
したがって、典型的には、本発明に従って製造された多接合デバイスは、以下の順序で以下の層を含む:
・結晶A/M/X材料の層、
・電荷再結合層、
・光活性領域。
【0076】
基材中の光活性材料は、ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解し得る。多くの場合、基材中の電荷再結合層の少なくとも1つの成分はジメチルホルムアミド(DMF)に溶解する。例えば、基材中の光活性材料と基材中の電荷再結合層の少なくとも1つの成分とは両方とも、ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解し得る。典型的には、基材中の光活性材料は、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)又はこれらの混合物に溶解する。多くの場合、基材中の電荷再結合層の少なくとも1つの成分は、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)又はこれらの混合物に溶解する。例えば、基材中の光活性材料と基材中の電荷再結合層の少なくとも1つの成分とは両方とも、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)又はこれらの混合物に溶解し得る。
【0077】
基材中の光活性材料と基材中の電荷再結合層とは両方とも、ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解し得る。典型的には、基材中の光活性材料と基材中の電荷再結合層とは両方とも、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)又はこれらの混合物に溶解する。
【0078】
非プロトン性溶媒
典型的には、非プロトン性溶媒は、ジメチルホルムアミド(DMF)を含まない。好ましくは、非プロトン性溶媒は、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド(DMSO)又はこれらの混合物を含まない。
【0079】
非プロトン性溶媒は、極性非プロトン性溶媒であってもよい。そのような溶媒は当業者に公知である。例えば、非プロトン性溶媒は、クロロベンゼン、アセトン、ブタノン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、プロピオニトリル又はこれらの混合物からなる群から選択される化合物を含んでもよい。
【0080】
非プロトン性溶媒は、非極性非プロトン性溶媒であってもよい。そのような溶媒は当業者に公知である。例えば、非プロトン性溶媒はトルエンを含んでもよい。
【0081】
典型的には、非プロトン性溶媒は、クロロベンゼン、アセトン、ブタノン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、プロピオニトリル、トルエン又はこれらの混合物からなる群から選択される化合物を含む。好ましくは、非プロトン性溶媒はアセトニトリルを含む。例えば、非プロトン性溶媒のうち80vol%以上は、アセトニトリルであってもよい。
【0082】
有機アミン
典型的には、有機アミンは、非置換若しくは置換アルキルアミン又は非置換若しくは置換アリールアミンである。
【0083】
アルキルアミンは、アルキル基及びアミン基を含む有機化合物であり、アミン基は第一級、第二級又は第三級アミン基であってもよい。アルキルアミン化合物は、第一級アミンRANH2(式中、各RAは、置換若しくは非置換であってもよいアルキル基である)、又は第二級アミンRA 2NH(式中、各RAは、置換若しくは非置換であってもよいアルキル基である)、又は第三級アミンRA 3N(式中、各RAは、置換若しくは非置換であってもよいアルキル基である)であってもよい。典型的には、アルキルアミンは第一級アルキルアミンである。
【0084】
典型的には、有機アミンは、非置換又は置換(C1~10アルキル)アミンである。例えば、アルキルアミン化合物は、第一級アミンRANH2(式中、RAは、非置換若しくは置換C1~10アルキル又は非置換若しくは置換C1~8アルキル、例えば非置換若しくは置換C1~6アルキルである)であってもよい。例えば、RAは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル(すなわち、n-ブチル)、ペンチル(n-ペンチル)又はヘキシル(n-ヘキシル)であってもよい。
【0085】
好ましくは、有機アミンは、非置換(C1~10アルキル)アミン又はフェニル基で置換された(C1~10アルキル)アミンである。例えば、有機アミンは、非置換(C1~8アルキル)アミン、例えば非置換(C1~6アルキル)アミン、例えばメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン若しくはペンチルアミン又はヘキシルアミンであってもよい。有機アミンは、フェニル基で置換された(C1~8アルキル)アミン、例えばフェニル基で置換された(C1~6アルキル)アミン、例えばベンジルアミン又はフェニルエチルアミンであってもよい。
【0086】
したがって有機アミンは、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン若しくはペンチルアミン、ヘキシルアミン、ベンジルアミン若しくはフェニルエチルアミン、又はこれらの混合物であってもよい。例えば、有機アミンは、メチルアミン、プロピルアミン又はブチルアミンであってもよい。好ましくは、有機アミンはメチルアミンである。
【0087】
溶媒は、本明細書に定義される2種以上の有機アミン化合物を含んでもよい。例えば、溶媒は、メチルアミン、ブチルアミン、フェニルエチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、オクタデシルアミン、アルキルアミン、ナフチルアミン及びベンジルアミン、メトキシポリエチレングリコールアミンを含んでもよい。
【0088】
アリールアミンは、アリール基及びアミン基を含む有機化合物である。典型的には、アリールアミンは、1個以上の水素原子をアリール基で置き換えることによってアンモニアから誘導される。
【0089】
アリールアミンは、第一級、第二級又は第三級アミン基であってもよいアミン基を含んでもよい。アリールアミン化合物は、第一級アミンRBNH2(式中、RBは、置換又は非置換であってもよいアリール基である)であってもよい。例えば、RBはフェニル、ナフチル、インデニル、インダニル、アントレセニル及びピレニル基から選択されてもよい。典型的には、RBはフェニル基であり、したがってアリールアミンはフェニルアミン(アニリン)であってもよい。
【0090】
アリールアミンは、第二級アミン、例えば式RBRANH(式中、RAは本明細書に記載のアルキル基であり、RBは本明細書に記載のアリール基である)の第二級アミンであってもよい。アリールアミンは、第三級アミン、例えば式RBRA 2N(式中、各RAは上記のアルキル基であり、RBは上記のアリール基である)の第三級アミンであってもよい。
【0091】
典型的には、本発明の方法における溶媒は、ガス状有機アミン、液体有機アミン又は有機アミン溶液のいずれかとしての有機アミンを非プロトン性溶媒に添加することによって生成される。したがって、本方法は、有機アミンを非プロトン性溶媒に添加することにより溶媒を生成する工程をさらに含んでもよい。ガス状有機アミンは、有機アミンを溶媒に通してバブリングすることによって溶媒に添加することができる。
【0092】
溶媒中の有機アミンの量は、必要条件に応じて変動し得る。典型的には、溶媒中に存在する有機アミンの量は、Mカチオンを完全に溶媒和するのに十分である。膜形成溶液中にAカチオン及びXアニオンも存在する場合、溶媒中に存在する有機アミンの量は、Mカチオン、Aカチオン及びXアニオンを完全に溶媒和するのに十分であってもよい。したがって、典型的には、溶媒は、膜形成溶液をその臨界溶液点で維持するのに十分な量の有機アミンの量を含む。好ましくは、小過剰の有機アミンのみが存在する、すなわち、通常、成分を溶解するために足りるだけのアミンが溶媒中に存在すべきである。典型的には、溶媒中のアミンの体積パーセントは50%以下、より典型的には25%未満、例えば10%未満である。
【0093】
Mカチオン並びに任意選択で、存在し得るあらゆるAカチオン及びXアニオンを溶媒和するために最小量の有機アミンを使用する膜形成溶液を有することが望ましい。そのような溶液は、下の層、例えば電荷再結合層、光活性領域又は任意の電荷輸送層(存在する場合)を溶解せずに、基材上にMカチオン並びに任意選択で、あらゆるAカチオン及びXアニオンを均一に堆積させることができる。
【0094】
典型的には、膜形成溶液は、以下の工程:
・Mカチオン、並びに任意選択で、存在し得るあらゆるAカチオン及びXアニオンが過剰の有機アミンによって非プロトン性溶媒中完全に溶媒和される溶液を調製する工程、
・有機アミンを含有しない非プロトン性溶媒中の、Mカチオンを含む化合物、並びに任意選択で、Aカチオン及びXアニオンを含む化合物(複数可)の分散体を調製する工程、
・分散体中の未溶解化合物が完全に溶解するまで、溶液を分散体に添加することによって、本発明の方法において使用される膜形成溶液を作製する工程
を含む方法によって調製される。
【0095】
当業者であれば理解し得るように、Mカチオン並びに任意選択で、存在するあらゆるAカチオン及びXアニオンの溶解度は、イオンの濃度及び性質に応じて変動する。上記の方法は、有機アミンの量を、最小過剰により全イオンを完全に溶媒和するのに適当な量が使用されるよう適合させることを可能にする。
【0096】
典型的には、Mカチオン、並びに任意選択で、存在し得るあらゆるAカチオン及びXアニオンが、過剰の有機アミンにより完全に溶媒和される溶液を、以下の工程:
・有機アミンを含有しない、Mカチオンを含む化合物、並びに任意選択で、Aカチオン及びXアニオンを含む化合物(複数可)の分散体を調製する工程、
・典型的にはガス状有機アミンを分散体に通してバブリングすることにより、Mカチオンを含む化合物並びに任意選択で、Aカチオン及びXアニオンを含む化合物(複数可)が溶解するまで、有機アミンを分散体に添加する工程
を含む方法によって調製する。
【0097】
典型的には、膜形成溶液は、溶液相堆積法、例えばグラビアコーティング、スロットダイコーティング、スクリーン印刷、インクジェット印刷、ドクターブレードコーティング、スプレーコーティング、ロール・ツー・ロール(R2R)処理、又はスピンコーティングにより基材上に配置される。典型的には、膜形成組成物を基材上に配置する工程は、膜形成溶液を基材上にスピンコーティングする工程を含む。
【0098】
典型的には、スピンコーティングは、少なくとも1000RPM、例えば少なくとも2000RPM、少なくとも3000RPM又は少なくとも4000RPM、例えば1000~10000RPMの間、2000~8000RPMの間、2500~7500RPMの間、好ましくは約5000RPMの速度で実施される。典型的には、スピンコーティングは、少なくとも1秒、少なくとも5秒又は少なくとも10秒、例えば1秒~1分、10秒~30秒、好ましくは約20秒の時間の間、実施される。
【0099】
典型的には、方法は、溶媒を除去して、結晶A/M/X材料を含む層を形成する工程をさらに含む。溶媒の除去は、溶媒を加熱すること、又は溶媒を蒸発させることを含んでもよい。
【0100】
溶媒は、通常、膜形成溶液で処理された基材を加熱することによって除去する。例えば、膜形成溶液で処理された基材を30℃~400℃、例えば50℃~200℃の温度に加熱してもよい。好ましくは、処理された膜形成溶液を、5~200分、好ましくは10~100分の時間の間、50℃~200℃の温度に加熱する。
【0101】
後処理
本発明の方法は、1つ以上のAカチオン及び任意選択で1つ以上のXアニオンを含む組成物を基材上に配置するさらなる工程を含んでもよい。本発明の方法において使用する膜形成溶液は、いかなるAカチオン及び/又はXアニオンを含まなくてもよい。この場合、結晶A/M/X材料が基材上に形成されるように、Aカチオン及び/又はXアニオンを別々の工程で基材に添加してもよい。或いは、本発明の方法において使用する膜形成溶液は、Aカチオン及び/又はXアニオンを含んでもよく、1つ以上のAカチオン及び任意選択で1つ以上のXアニオンを含む組成物を基材上に配置するさらなる工程を、結晶A/M/X材料の層の上で、後処理工程として実施する。
【0102】
典型的には、1つ以上のAカチオン及び任意選択で1つ以上のXアニオンを含む組成物は、溶液である。したがって、本発明の方法は、1つ以上のAカチオン及び任意選択で1つ以上のXアニオンを含む溶液を基材上に配置する工程をさらに含んでもよい。本発明の方法は、1つ以上のAカチオン及び1つ以上のXアニオンを含む組成物、例えば1つ以上のAカチオン及び1つ以上のXアニオンを含む溶液を基材上に配置する工程をさらに含んでもよい。
【0103】
1つ以上のAカチオン及び1つ以上のXアニオンを含む溶液は、式AX(式中、A及びXは、本明細書で定義されるとおりである)の1種以上の化合物を溶媒に溶解することにより形成することができる。溶媒は、膜形成溶液中の溶媒と異なっていても又は同じであってもよい。典型的には、溶媒は、膜形成溶液中の溶媒とは異なる。したがって、溶媒は、膜形成溶液中の溶媒と直交(orthogonal)する溶媒であってもよい。重要なことには、溶媒は、下のペロブスカイト膜を溶解しないことが必要である。例えば、溶媒は、イソプロパノール(2-プロパノール)、エタノール(EtOH)、メタノール(MeOH)、及びブタノールであってもよい。溶媒はトルエンであってもよい。溶媒はまた、溶媒の混合物、例えば上記のアルコール類と非プロトン性溶媒、例えばトルエン、アニソール、クロロベンゼンとの混合物であってもよい。
【0104】
典型的には、1つ以上のカチオン及び1つ以上のXアニオンを含む溶液を基材上にスピンコーティングする。典型的には、スピンコーティングは、少なくとも1000RPM、例えば少なくとも2000RPM、少なくとも3000RPM又は少なくとも4000RPM、例えば1000~10000RPMの間、4000~8000RPMの間、好ましくは約6000RPMの速度で実施される。典型的には、スピンコーティングは、少なくとも1秒、少なくとも5秒又は少なくとも10秒、例えば1秒~1分、10秒~30秒、好ましくは約20秒の時間の間、実施される。
【0105】
溶媒は通常、膜形成溶液で処理された基材を加熱することにより除去される。例えば、膜形成溶液で処理された基材は、30℃~400℃、例えば50℃~200℃の温度に加熱してもよい。好ましくは、処理された膜形成溶液は、5~200分、好ましくは10~100分の時間の間、50℃~200℃の温度に加熱する。
【0106】
式[A]a[M]b[X]cの化合物
本発明の方法は、結晶A/M/X材料の層を含む多接合デバイスであって、結晶A/M/X材料が式[A]a[M]b[X]c(式中、[A]は1つ以上のAカチオンを含み、[M]は金属又は半金属のカチオンである1つ以上のMカチオンを含み、[X]は1つ以上のXアニオンを含み、aは1~6の数であり、bは1~6の数であり、cは1~18の数である)の化合物を含む、多接合デバイスを製造する。aは多くの場合に1~4の数であり、bは多くの場合に1~3の数であり、cは多くの場合に1~8の数である。
【0107】
a、b及びcはそれぞれ、整数であっても整数でなくてもよい。例えば、化合物が、結晶格子が完全に占有されていないような空格子点を有する構造を採用する場合、a、b又はcは整数でなくてよい。本発明の方法は、生成物の化学量論を非常によく制御し、そのため、a、b又はcが整数でない場合の構造(例えば、A、M又はXサイトのうちの1つ以上に空格子点を有する構造)の形成によく適している。したがって、一部の実施形態では、a、b及びcの1つ以上は非整数の値である。例えば、a、b及びcのうちの1つは非整数の値であってもよい。一実施形態において、aは非整数の値である。別の実施形態では、bは非整数の値である。さらに別の実施形態では、cは非整数の値である。
【0108】
他の実施形態では、a、b及びcのそれぞれは、整数の値である。したがって、一部の実施形態では、aは1~6の整数であり、bは1~6の整数であり、cは1~18の整数である。多くの場合にaは1~4の整数であり、多くの場合にbは1~3の整数であり、多くの場合にcは1~8の整数である。
【0109】
式[A]a[M]b[X]cの化合物において、一般に:
[A]は、1つ以上のAカチオンを含み、ここで、Aカチオンは、例えば、アルカリ金属カチオン又は有機モノカチオンから選択されてもよく、
[M]は、1つ以上のMカチオンを含み、ここで、Mカチオンは、Pd4+、W4+、Re4+、Os4+、Ir4+、Pt4+、Sn4+、Pb4+、Ge4+、Te4+、Bi3+、Sb3+、Ca2+、Sr2+、Cd2+、Cu2+、Ni2+、Mn2+、Fe2+、Co2+、Pd2+、Ge2+、Sn2+、Pb2+、Yb2+及びEu2+、好ましくはSn2+、Pb2+、Cu2+、Ge2+及びNi2+、特に好ましくはPb2+及びSn2+から選択される金属又は半金属のカチオンであり、
[X]は、ハロゲン化物アニオン(例えば、Cl-、Br-及びI-)、O2-、S2-、Se2-及びTe2-から選択される1つ以上のXアニオンを含み、
aは、1~4の数であり、
bは、1~3の数であり、
cは、1~8の数である。
【0110】
好ましくは、式[A]a[M]b[X]cの化合物はペロブスカイトを含む。式[A]a[M]b[X]cの化合物は、多くの場合、金属ハロゲン化物ペロブスカイトを含む。
【0111】
[M]カチオン
[M]は、金属又は半金属のカチオンである1つ以上のMカチオンを含む。[M]は2つ以上の異なるMカチオンを含んでもよい。[M]は、1つ以上のモノカチオン、1つ以上のジカチオン、1つ以上のトリカチオン又は1つ以上のテトラカチオンを含んでもよい。
【0112】
典型的には、1つ以上のMカチオンは、Ca2+、Sr2+、Cd2+、Cu2+、Ni2+、Mn2+、Fe2+、Co2+、Pd2+、Ge2+、Sn2+、Pb2+、Yb2+、Eu2+、Bi3+、Sb3+、Pd4+、W4+、Re4+、Os4+、Ir4+、Pt4+、Sn4+、Pb4+、Ge4+及びTe4+から選択される。好ましくは、1つ以上のMカチオンは、Cu2+、Pb2+、Ge2+又はSn2+から選択される。
【0113】
典型的には、[M]カチオンは1つ以上の金属又は半金属のジカチオンを含む。例えば、各Mカチオンは、Ca2+、Sr2+、Cd2+、Cu2+、Ni2+、Mn2+、Fe2+、Co2+、Pd2+、Ge2+、Sn2+、Pb2+、Yb2+及びEu2+、好ましくはSn2+、Pb2+、Cu2+、Ge2+及びNi2+、好ましくはSn2+及びPb2+から選択してもよい。一部の実施形態において、[M]は2つの異なるMカチオンを含み、典型的には前記カチオンはSn2+及びPb2+である。
【0114】
本発明の方法において使用される膜形成溶液は、(a)本明細書に記載の1つ以上のMカチオン、及び(b)本明細書に記載の溶媒を含む。本発明の方法は、少なくとも1種のM前駆体を溶媒に溶解することにより膜形成溶液を形成する工程を含んでもよい。下記により詳述するように、M前駆体は、[M]中に存在する1つ以上のMカチオンを含む化合物である。[M](すなわち、式[A]a[M]b[X]cの化合物中の[M])がMカチオンを1種のみ含む場合、本発明の方法において1種のM前駆体のみが必要である。
【0115】
M前駆体は、典型的には、1つ以上の対アニオンを含む。したがって、典型的には、膜形成溶液は1つ以上の対アニオンを含む。多くのこのような対アニオンは当業者に公知である。1つ以上のMカチオン及び1つ以上の対アニオンは両方とも、第1の前駆体化合物に由来し得、該第1の前駆体化合物を本明細書に記載の溶媒に溶解して膜形成溶液が形成される。
【0116】
対アニオンは、ハロゲン化物アニオン、チオシアン酸アニオン(SCN-)、テトラフルオロホウ酸アニオン(BF4 -)又は有機アニオンであってもよい。好ましくは、本明細書に記載の対アニオンはハロゲン化物アニオン又は有機アニオンである。膜形成溶液は、2つ以上の対アニオン、例えば2つ以上のハロゲン化物アニオンを含んでもよい。
【0117】
典型的には、対アニオンは、式RCOO-、ROCOO-、RSO3 -、ROP(O)(OH)O-又はRO-(式中、Rは、H、置換若しくは非置換C1~10アルキル、置換若しくは非置換C2~10アルケニル、置換若しくは非置換C2~10アルキニル、置換若しくは非置換C3~10シクロアルキル、置換若しくは非置換C3~10ヘテロシクリル又は置換若しくは非置換アリールである)のアニオンである。例えば、Rは、H、置換若しくは非置換C1~10アルキル、置換若しくは非置換C3~10シクロアルキル又は置換若しくは非置換アリールであってもよい。典型的には、Rは、H、置換若しくは非置換C1~6アルキル又は置換若しくは非置換アリールである。例えば、Rは、H、非置換C1~6アルキル又は非置換アリールであってもよい。したがって、Rは、H、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、シクロペンチル、シクロヘキシル及びフェニルから選択することができる。多くの場合、(1つ以上の)対アニオンは、ハロゲン化物アニオン(例えば、F-、Cl-、Br-及びI-)並びに式RCOO-(式中、RはH又はメチルである)のアニオンから選択される。
【0118】
典型的には、対アニオンは、F-、Cl-、Br-、I-、ギ酸イオン又は酢酸イオンである。好ましくは、対アニオンは、Cl-、Br-、I-又はF-である。より好ましくは、対アニオンは、Cl-、Br-又はI-である。
【0119】
典型的には、M前駆体は、式MY2、MY3又はMY4(式中、Mは本明細書に記載の金属又は半金属のカチオンであり、Yは前記対アニオンである)の化合物である。
【0120】
したがって、M前駆体は、式MY2(式中、Mは、Ca2+、Sr2+、Cd2+、Cu2+、Ni2+、Mn2+、Fe2+、Co2+、Pd2+、Ge2+、Sn2+、Pb2+、Yb2+又はEu2+であり、Yは、F-、Cl-、Br-、I-、ギ酸イオン又は酢酸イオンである)の化合物であってもよい。好ましくは、Mは、Cu2+、Pb2+、Ge2+又はSn2+であり、Yは、Cl-、Br-、I-、ギ酸イオン又は酢酸イオンであり、好ましくはCl-、Br-又はI-である。
【0121】
典型的には、M前駆体は、酢酸鉛(II)、ギ酸鉛(II)、フッ化鉛(II)、塩化鉛(II)、臭化鉛(II)、ヨウ化鉛(II)、酢酸スズ(II)、ギ酸スズ(II)、フッ化スズ(II)、塩化スズ(II)、臭化スズ(II)、ヨウ化スズ(II)、酢酸ゲルマニウム(II)、ギ酸ゲルマニウム(II)、フッ化ゲルマニウム(II)、塩化ゲルマニウム(II)、臭化ゲルマニウム(II)又はヨウ化ゲルマニウム(II)である。場合によっては、第1の前駆体化合物は酢酸鉛(II)を含む。場合によっては、第1の前駆体化合物はヨウ化鉛(II)を含む。
【0122】
M前駆体は、典型的には、式MY2の化合物である。好ましくは、M前駆体は、式SnI2、SnBr2、SnCl2、PbI2、PbBr2又はPbCl2の化合物である。
【0123】
M前駆体は、式MY3(式中、MはBi3+又はSb3+であり、Yは、F-、Cl-、Br-、I-、SCN-、BF4 -、ギ酸イオン又は酢酸イオンである)の化合物であってもよい。好ましくは、MはBi3+であり、YはCl-、Br-又はI-である。この場合、A/M/X材料は、典型的には、ビスマス又はアンチモンハロゲノメタレートを含む。
【0124】
M前駆体は、式MY4(式中、Mは、Pd4+、W4+、Re4+、Os4+、Ir4+、Pt4+、Sn4+、Pb4+、Ge4+又はTe4+であり、Yは、F-、Cl-、Br-、I-、SCN-、BF4 -、ギ酸イオン又は酢酸イオンである)の化合物であってもよい。好ましくは、Mは、Sn4+、Pb4+又はGe4+であり、Cl-、Br-又はI-である。この場合、A/M/X材料は、典型的には、ヘキサハロメタレートを含む。
【0125】
典型的には、膜形成溶液中の[M]カチオンの総濃度は、0.01~10Mの間、例えば0.1~5Mの間、0.25~2.5Mの間、0.5~1.5Mの間、好ましくは0.75~1.25Mの間である。
【0126】
[A]カチオン及び[X]アニオン
一般に、前記1つ以上のAカチオンはモノカチオンである。[A]は、典型的には、有機及び/又は無機モノカチオンであってもよい1つ以上のAカチオンを含む。例えば、[A]は、有機及び/又は無機モノカチオンであってもよい少なくとも2つのAカチオンを含んでもよい。したがって、式[A]a[M]b[X]cの化合物は、混合カチオンペロブスカイトであってもよい。[A]は、有機カチオンである少なくとも1つのAカチオン及び無機カチオンである少なくとも1つのAカチオンを含んでもよい。[A]は、両方とも有機カチオンである少なくとも2つのAカチオンを含んでもよい。[A]は、両方とも無機カチオンである少なくとも2つのAカチオンを含んでもよい。
【0127】
A種が無機モノカチオンである場合、Aは、典型的には、アルカリ金属モノカチオン(すなわち、周期表の第1族の金属のモノカチオン)、例えばLi+、Na+、K+、Rb+、Cs+、例えばCs+又はRb+である。典型的には、[A]は少なくとも1つの有機モノカチオンを含む。A種が有機モノカチオンである場合、Aは、典型的には、アンモニウムカチオン、例えばメチルアンモニウム、又はイミニウムカチオン、例えばホルムアミジニウムである。
【0128】
各Aカチオンは、アルカリ金属カチオン、例えばLi+、Na+、K+、Rb+、Cs+、式[R1R2R3R4N]+(式中、R1、R2、R3、R4はそれぞれ、独立して、水素、非置換又は置換C1~20アルキル、及び非置換又は置換C6~12アリールから選択され、R1、R2、R3及びR4のうちの少なくとも1つは水素ではない)のカチオン、式[R5R6N=CH-NR7R8]+(式中、R5、R6、R7及びR8はそれぞれ、独立して、水素、非置換又は置換C1~20アルキル、及び非置換又は置換C6~12アリールから選択される)のカチオン、それぞれ非置換又はアミノ、C1~6アルキルアミノ、イミノ、C1~6アルキルイミノ、C1~6アルキル、C2~6アルケニル、C3~6シクロアルキル及びC6~12アリールから選択される1つ以上の置換基で置換されているC1~10アルキルアンモニウム、C2~10アルケニルアンモニウム、C1~10アルキルイミニウム、C3~10シクロアルキルアンモニウム及びC3~10シクロアルキルイミニウムから選択することができる。
【0129】
好ましくは、各Aカチオンは、Cs+、Rb+、メチルアンモニウム[(CH3NH3)+]、エチルアンモニウム[(CH3CH2NH3)+]、プロピルアンモニウム[(CH3CH2CH2NH3)+]、ブチルアンモニウム[(CH3CH2CH2CH2NH3)+]、ペンチルアンモニウム[(CH3CH2CH2CH2CH2NH3)+]、ヘキシルアンモニウム[(CH3CH2CH2CH2CH2CH2NH3)+]、ヘプチルアンモニウム[(CH3CH2CH2CH2CH2CH2CH2NH3)+]、オクチルアンモニウム[(CH3CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2NH3)+]、テトラメチルアンモニウム[(N(CH3)4)+]、ホルムアミジニウム[(H2N-C(H)=NH2)+]、1-アミノエタン-1-イミニウム[(H2N-C(CH3)=NH2)+]及びグアニジニウム[(H2N-C(NH2)=NH2)+]から選択される。
【0130】
[A]は通常、1、2又は3つのAモノカチオンを含む。[A]は、メチルアンモニウム[(CH3NH3)+]、エチルアンモニウム[(CH3CH2NH3)+]、プロピルアンモニウム[(CH3CH2CH2NH3)+]、ジメチルアンモニウム[(CH3)2NH+]、テトラメチルアンモニウム[(N(CH3)4)+]、ホルムアミジニウム[(H2N-C(H)=NH2)+]、1-アミノエタン-1-イミニウム[(H2N-C(CH3)=NH2)+]、グアニジニウム[(H2N-C(NH2)=NH2)+]、Cs+及びRb+から選択される単一カチオンを含んでもよい。例えば、[A]は、メチルアンモニウム[(CH3NH3)+]である単一カチオンを含んでもよい。
【0131】
或いは、[A]は、この群から選択される2つのカチオン、例えばCs+及びホルムアミジニウム[(H2N-C(H)=NH2)+]、例えばCs+及びRb+、又は例えばメチルアンモニウム[(CH3NH3)+]及びホルムアミジニウム[(H2N-C(H)=NH2)+]を含んでもよい。
【0132】
典型的には、本発明の方法において、[A]は、式[R1NH3]+(式中、R1は非置換C1~10アルキルである)のカチオンを含み、有機アミンは非置換(C1~10アルキル)アミンを含む。溶媒中の有機アミンの同一性は、プロトン化した際、カチオンAに対応するアルキルアミンと一致し得る。したがって、式[R1NH3]+のAカチオン上のC1~10アルキル基及び非置換(C1~10アルキル)アミン上のC1~10アルキル基は同じであり得る。例えば、Aカチオンはメチルアンモニウムであってもよく、有機アミンはメチルアミンを含んでいてもよい、又はAカチオンはエチルアンモニウムであってもよく、有機アミンはエチルアミンを含んでいてもよい、又はAカチオンはプロピルアンモニウムであってもよく、有機アミンはプロピルアミンを含んでいてもよい、又はAカチオンはブチルアンモニウムであってもよく、有機アミンはブチルアミンを含んでいてもよい、又はAカチオンはペンチルアンモニウムであってもよく、有機アミンはペンチルアミンを含んでいてもよい、又はAカチオンはヘキシルアンモニウムであってもよく、有機アミンはヘキシルアミンを含んでいてもよい、又はAカチオンはヘプチルアンモニウムであってもよく、有機アミンはヘプチルアミンを含んでいてもよい、又はAカチオンはオクチルアンモニウムであってもよく、有機アミンはオクチルアミンを含んでいてもよい。好ましい実施形態において、[A]はメチルアンモニウムを含み、有機アミンはメチルアミンを含む。
【0133】
[X]は1つ以上のXアニオンを含む。典型的には、[X]は、1つ以上のハロゲン化物アニオン、すなわちF-、Br-、Cl-及びI-から選択されるアニオンを含む。典型的には、各Xアニオンはハロゲン化物である。[X]は、典型的には、1、2又は3つのXアニオンを含み、これらは一般に、Br-、Cl-及びI-から選択される。典型的には、[X]は2つ以上の異なるハロゲン化物アニオンを含む。[X]は、例えば、2つのXアニオン、例えばCl及びBr、又はBr及びI、又はCl及びIからなってもよい。したがって、式[A]a[M]b[X]cの化合物は、多くの場合、混合ハロゲン化物ペロブスカイトを含む。[A]が1つ以上の有機カチオンを含む場合、式[A]a[M]b[X]cの化合物は有機-無機金属ハロゲン化物ペロブスカイトであってもよい。
【0134】
膜形成溶液は、本明細書に記載の1つ以上のAカチオンをさらに含んでもよい。したがって、膜形成溶液は、[A]中に存在する1つ以上のAカチオンのそれぞれを含むことが好ましいことがある。本発明の方法は、少なくとも1種のA前駆体を溶媒に溶解することにより膜形成溶液を形成する工程を含んでもよい。下記により詳述されるように、A前駆体は、[A]中に存在する1つ以上のAカチオンを含む化合物である。[A](すなわち、式[A]a[M]b[X]cの化合物中の[A])がAカチオンを1種のみ含む場合、1種のA前駆体のみが本発明の方法において必要である。
【0135】
膜形成溶液は、本明細書に記載の1つ以上のXアニオンをさらに含んでもよい。本発明の方法におけるXアニオン源に関しては、本発明の方法において別々のX前駆体を用意する必要がない場合がある。これは、一部の実施形態では、A前駆体(又は本方法が複数のA前駆体を伴う場合、そのうちの少なくとも1つ)及び/又はM前駆体(又は本方法が複数のM前駆体を伴う場合、そのうちの少なくとも1つ)が、1つ以上のXアニオンを含む塩、例えばハロゲン化物塩であるからである。好ましい実施形態において、A前駆体(又は存在する場合、複数のA前駆体)及びM前駆体(又は存在する場合、複数のM前駆体)は共に、[X]中に存在するそれぞれのXカチオンを含む。
【0136】
さらなるXアニオン、例えばフッ化物(F-)又は塩化物(Cl-)を、例えばSnF2又はSnCl2をそれぞれ添加剤として膜形成溶液に添加することにより、「ドーパント」として膜形成溶液に添加してもよい。特にPb:Snペロブスカイトは、さらなるSnF2を溶液に添加することにより有益であり得る。
【0137】
膜形成溶液は、典型的には、本明細書に記載の1つ以上のAカチオン及び本明細書に記載の1つ以上のXアニオンをさらに含む。この実施形態において、膜形成溶液は、1つ以上のAカチオン、1つ以上のMカチオン及び1つ以上のXアニオンを含む。したがって、一実施形態において、膜形成溶液は、式[A]a[M]b[X]cの化合物を生成するために必要なイオンを全て含んでもよい。
【0138】
Aカチオン及びXアニオンは両方とも、同じ前駆体化合物(複数可)に由来し得、これらは、本明細書に記載の溶媒に溶解されて、膜形成溶液を形成する。好ましくは、A/X前駆体化合物は、式[A][X](式中、[A]は本明細書に記載の1つ以上のAカチオンを含み、[X]は本明細書に記載の1つ以上のXアニオンを含む)の化合物である。A/X前駆体化合物は、典型的には、式AX(式中、Xはハロゲン化物アニオンであり、Aカチオンは本明細書で定義されるとおりである)の化合物である。1つを超えるAカチオン又は1つを超えるXアニオンが式[A]a[M]b[X]cの化合物中に存在する場合、1種を超える式AXの化合物を膜形成溶液に溶解してもよい。
【0139】
A/X前駆体化合物(複数可)は、例えば、CH3NH3Cl、CH3NH3Br、CH3NH3I、CH3CH2NH3Cl、CH3CH2NH3Br、CH3CH2NH3I、CH3CH2CH2NH3Cl、CH3CH2CH2NH3Br、CH3CH2CH2NH3I、N(CH3)4Cl、N(CH3)4Br、N(CH3)4I、(H2N-C(H)=NH2)Cl、(H2N-C(H)=NH2)Br、(H2N-C(H)=NH2)I、(H2N-C(CH3)=NH2)Cl、(H2N-C(CH3)=NH2)Br、(H2N-C(CH3)=NH2)I、(H2N-C(NH2)=NH2)Cl、(H2N-C(NH2)=NH2)Br、(H2N-C(NH2)=NH2)I、CsCl、CsBr、CsI、RbCl、RbBr及びRbIから選択することができる。
【0140】
一実施形態において、膜形成溶液は、Mカチオンに対して過剰のAカチオンを含む。この文脈において、用語「過剰」は、1つのイオンと別のイオンとのモル比が、式[A]a[M]b[X]cの標的化合物中の化学量論により必要とされるものより大きいことを意味する。典型的には、膜形成溶液中のAカチオンとMカチオンとの比は、1:1~5:1、例えば1:1~4:1、1:1~3:1、1:1~2:1、1:1~1.5:1、1:1~1.25:1又は1:1~1.1:1である。
【0141】
一実施形態において、膜形成溶液は、Aカチオンに対して過剰のMカチオンを含む。典型的には、膜形成溶液中のMカチオンとAカチオンとの比は、1:1~5:1、例えば1:1~4:1、1:1~3:1、1:1~2:1、1:1~1.5:1、1:1~1.25:1又は1:1~1.2:1である。これは、式[A]a[M]b[X]cの化合物が2つのMカチオンを含む(好ましくは式中、[M]はPb2+及びSn2+を含む)場合に好ましい。
【0142】
したがって、典型的には、膜形成溶液中の[A]カチオンの総濃度は、0.01~10Mの間、例えば0.1~5Mの間、0.25~2.5Mの間、0.5~1.5Mの間、好ましくは0.6~1.4Mの間である。
【0143】
典型的には、Xアニオンの総濃度は、A及び/又はMカチオンの総濃度に依存する。例えば、A/X前駆体化合物及び/又は1つ以上のXアニオンを含むM前駆体化合物を使用する場合、Xアニオンの総濃度は、上記の存在するA/X前駆体化合物及び/又はM前駆体化合物の総量に依存する。
【0144】
式[A]a[M]b[X]cの化合物のさらなる詳細な説明
典型的には、a=1、b=1及びc=3である。したがって、式[A]a[M]b[X]cの化合物は、式[A][M][X]3(式中、[A]、[M]及び[X]は本明細書中に記載するとおりである)の化合物であってもよい。典型的には、結晶A/M/X材料は、式(I):
[A][M][X]3 (I)
(式中、[A]は、モノカチオンである1つ以上のAカチオンを含み、[M]は、金属又は半金属のジカチオンである1つ以上のMカチオンを含み、[X]は、ハロゲン化物アニオンである1つ以上のアニオンを含む)
のペロブスカイトを含む。
【0145】
一部の実施形態において、式(I)のペロブスカイトは、単一Aカチオン、単一Mカチオン及び単一Xカチオンを含み、すなわち、ペロブスカイトは、式(IA):
AMX3 (IA)
(式中、A、M及びXは、上記で定義されるとおりである)
のペロブスカイトである。好ましい実施形態において、Aは、(CH3NH3)+、(CH3CH2NH3)+、(CH3CH2CH2NH3)+、(N(CH3)4)+、(H2N-C(H)=NH2)+、(H2N-C(CH3)=NH2)+、(H2N-C(NH2)=NH2)+、Cs+及びRb+から選択され、MはPb2+又はSn2+であり、Xは、Br-、Cl-及びI-から選択される。
【0146】
例えば、結晶A/M/X材料は、APbI3、APbBr3、APbCl3、ASnI3、ASnBr3及びASnCl3(式中、Aは本明細書に記載のカチオンである)から選択される式(IA)のペロブスカイト化合物を含んでもよい、又はそれから本質的になってもよい。
【0147】
例えば、結晶A/M/X材料は、CH3NH3PbI3、CH3NH3PbBr3、CH3NH3PbCl3、CH3NH3SnI3、CH3NH3SnBr3、CH3NH3SnCl3、CsPbI3、CsPbBr3、CsPbCl3、CsSnI3、CsSnBr3、CsSnCl3、(H2N-C(H)=NH2)PbI3、(H2N-C(H)=NH2)PbBr3、(H2N-C(H)=NH2)PbCl3、(H2N-C(H)=NH2)SnI3、(H2N-C(H)=NH2)SnBr3及び(H2N-C(H)=NH2)SnCl3、特にCH3NH3PbI3又はCH3NH3PbBr3、好ましくはCH3NH3PbI3から選択される式(IA)のペロブスカイト化合物を含んでもよい、又はそれから本質的になってもよい。
【0148】
一実施形態において、ペロブスカイトは、式(IB):
[AI xAII 1-x]MX3 (IB)
(式中、AI及びAIIは、Aについて上記で定義したとおりであり、M及びXは上記で定義したとおりであり、xは0超1未満である)
のペロブスカイトである。好ましい実施形態において、AI及びAIIはそれぞれ、(CH3NH3)+、(CH3CH2NH3)+、(CH3CH2CH2NH3)+、(N(CH3)4)+、(H2N-C(H)=NH2)+、(H2N-C(CH3)=NH2)+、(H2N-C(NH2)=NH2)+、Cs+及びRb+から選択され、MはPb2+又はSn2+であり、Xは、Br-、Cl-及びI-から選択される。AI及びAIIは、例えば、それぞれ(H2N-C(H)=NH2)+及びCs+であってもよい、又はそれぞれ(CH3NH3)+及び(H2N-C(H)=NH2)+であってもよい。或いは、それぞれ、Cs+及びRb+であってもよい。
【0149】
例えば、結晶A/M/X材料は、(CsxRb1-x)PbBr3、(CsxRb1-x)PbCl3、(CsxRb1-x)PbI3、[(CH3NH3)x(H2N-C(H)=NH2)1-x]PbCl3、[(CH3NH3)x(H2N-C(H)=NH2)1-x]PbBr3、[(CH3NH3)x(H2N-C(H)=NH2)1-x]PbI3、[(CH3NH3)xCs1-x]PbCl3、[(CH3NH3)xCs1-x]PbBr3、[(CH3NH3)xCs1-x]PbI3、[(H2N-C(H)=NH2)xCs1-x]PbCl3、[(H2N-C(H)=NH2)xCs1-x]PbBr3、[(H2N-C(H)=NH2)xCs1-x]PbI3、[(CH3NH3)x(H2N-C(H)=NH2)1-x]SnCl3、[(CH3NH3)x(H2N-C(H)=NH2)1-x]SnBr3、[(CH3NH3)x(H2N-C(H)=NH2)1-x]SnI3、[(CH3NH3)xCs1-x]SnCl3、[(CH3NH3)xCs1-x]SnBr3、[(CH3NH3)xCs1-x]SnI3、[(H2N-C(H)=NH2)xCs1-x]SnCl3、[(H2N-C(H)=NH2)xCs1-x]SnBr3、及び[(H2N-C(H)=NH2)xCs1-x]SnI3(式中、xは0超1未満であり、例えばxは0.01~0.99又は0.05~0.95又は0.1~0.9であってもよい)から選択される式(IB)のペロブスカイト化合物を含んでもよい、又はそれから本質的になってもよい。
【0150】
一実施形態において、ペロブスカイトは、式(IC):
AM[XI yXII 1-y]3 (IC)
(式中、A及びMは上記で定義したとおりであり、XI及びXIIは、Xについて上記で定義したとおりであり、yは0超1未満である)
のペロブスカイト化合物である。好ましい実施形態において、Aは、(CH3NH3)+、(CH3CH2NH3)+、(CH3CH2CH2NH3)+、(N(CH3)4)+、(H2N-C(H)=NH2)+、(H2N-C(CH3)=NH2)+、(H2N-C(NH2)=NH2)+、Cs+及びRb+から選択され、MはPb2+又はSn2+であり、XI及びXIIはそれぞれ、Br-、Cl-及びI-から選択される。
【0151】
例えば、結晶A/M/X材料は、APb[BryI1-y]3、APb[BryCl1-y]3、APb[IyCl1-y]3、ASn[BryI1-y]3、ASn[BryCl1-y]3、ASn[IyCl1-y]3(式中、yは0超1未満であり、Aは本明細書に記載のカチオンである)から選択される式(IC)のペロブスカイト化合物を含んでもよく、又はそれから本質的になってもよい。yは0.01~0.99であってもよい。例えば、yは0.05~0.95又は0.1~0.9であってもよい。
【0152】
例えば、結晶A/M/X材料は、CH3NH3Pb[BryI1-y]3、CH3NH3Pb[BryCl1-y]3、CH3NH3Pb[IyCl1-y]3、CH3NH3Sn[BryI1-y]3、CH3NH3Sn[BryCl1-y]3、CH3NH3Sn[IyCl1-y]3、CsPb[BryI1-y]3、CsPb[BryCl1-y]3、CsPb[IyCl1-y]3、CsSn[BryI1-y]3、CsSn[BryCl1-y]3、CsSn[IyCl1-y]3、(H2N-C(H)=NH2)Pb[BryI1-y]3、(H2N-C(H)=NH2)Pb[BryCl1-y]3、(H2N-C(H)=NH2)Pb[IyCl1-y]3、(H2N-C(H)=NH2)Sn[BryI1-y]3、(H2N-C(H)=NH2)Sn[BryCl1-y]3、及び(H2N-C(H)=NH2)Sn[IyCl1-y]3(式中、yは0超1未満であり、例えばyは0.01~0.99又は0.05~0.95又は0.1~0.9であってもよい)から選択される式(IC)のペロブスカイト化合物を含んでもよい、又はそれから本質的になってもよい。
【0153】
好ましい実施形態において、ペロブスカイトは、式(ID):
[AI xAII 1-x]M[XI yXII 1-y]3 (ID)
(式中、AI及びAIIは、Aについて上記で定義されるとおりであり、Mは上記で定義されるとおりであり、XI及びXIIは、Xについて上記で定義されるとおりであり、x及びyは両方とも0超1未満である)
のペロブスカイトである。好ましい実施形態において、AI及びAIIはそれぞれ、(CH3NH3)+、(CH3CH2NH3)+、(CH3CH2CH2NH3)+、(N(CH3)4)+、(H2N-C(H)=NH2)+、(H2N-C(CH3)=NH2)+、(H2N-C(NH2)=NH2)+、Cs+及びRb+から選択され、MはPb2+又はSn2+であり、XI及びXIIはそれぞれ、Br-、Cl-及びI-から選択される。
【0154】
例えば、結晶A/M/X材料は、(CsxRb1-x)Pb(BryCl1-y)3、(CsxRb1-x)Pb(BryI1-y)3、及び(CsxRb1-x)Pb(ClyI1-y)3、[(CH3NH3)x(H2N-C(H)=NH2)1-x]Pb[BryI1-y]3、[(CH3NH3)x(H2N-C(H)=NH2)1-x]Pb[BryCl1-y]3、[(CH3NH3)x(H2N-C(H)=NH2)1-x]Pb[IyCl1-y]3、[(CH3NH3)xCs1-x]Pb[BryI1-y]3、[(CH3NH3)xCs1-x]Pb[BryCl1-y]3、[(CH3NH3)xCs1-x]Pb[IyCl1-y]3、[(H2N-C(H)=NH2)xCs1-x]Pb[BryI1-y]3、[(H2N-C(H)=NH2)xCs1-x]Pb[BryCl1-y]3、[(H2N-C(H)=NH2)xCs1-x]Pb[IyCl1-y]3、[(CH3NH3)x(H2N-C(H)=NH2)1-x]Sn[BryI1-y]3、[(CH3NH3)x(H2N-C(H)=NH2)1-x]Sn[BryCl1-y]3、[(CH3NH3)x(H2N-C(H)=NH2)1-x]Sn[IyCl1-y]3、[(CH3NH3)xCs1-x]Sn[BryI1-y]3、[(CH3NH3)xCs1-x]Sn[BryCl1-y]3、[(CH3NH3)xCs1-x]Sn[IyCl1-y]3、[(H2N-C(H)=NH2)xCs1-x]Sn[BryI1-y]3、[(H2N-C(H)=NH2)xCs1-x]Sn[BryCl1-y]3、及び[(H2N-C(H)=NH2)xCs1-x]Sn[IyCl1-y]3(式中、x及びyは両方とも0超1未満であり、例えばx及びyは両方とも0.01~0.99又は0.05~0.95又は0.1~0.9であってもよい)から選択される式(ID)のペロブスカイト化合物を含んでもよい、又はそれから本質的になってもよい。
【0155】
一実施形態において、ペロブスカイトは、式(IE):
A[MI zMII 1-z]X3 (IE)
(式中、MI及びMIIは、Mについて上記で定義したとおりであり、A及びXは上記で定義したとおりであり、zは0超1未満である)
のペロブスカイトである。好ましい実施形態において、Aは、(CH3NH3)+、(CH3CH2NH3)+、(CH3CH2CH2NH3)+、(N(CH3)4)+、(H2N-C(H)=NH2)+、(H2N-C(CH3)=NH2)+、(H2N-C(NH2)=NH2)+、Cs+及びRb+から選択され、MIはPb2+であり、MIIはSn2+であり、Xは、Br-、Cl-及びI-から選択される。
【0156】
例えば、結晶A/M/X材料は、CH3NH3[PbzSn1-z]Cl3、CH3NH3[PbzSn1-z]Br3、CH3NH3[PbzSn1-z]I3、Cs[PbzSn1-z]Cl3、Cs[PbzSn1-z]Br3、Cs[PbzSn1-z]I3、(H2N-C(H)=NH2)[PbzSn1-z]Cl3、(H2N-C(H)=NH2)[PbzSn1-z]Br3及び(H2N-C(H)=NH2)[PbzSn1-z]I3(式中、zは0超1未満であり、例えばzは0.01~0.99又は0.05~0.95又は0.1~0.9であってもよい)から選択される式(IE)のペロブスカイト化合物を含んでもよい、又はそれから本質的になってもよい。
【0157】
一実施形態において、ペロブスカイトは、式(IF):
[AI xAII 1-x][MI zMII 1-z]X3 (IF)
(式中、AI及びAIIは、Aについて上記で定義したとおりであり、MI及びMIIは、Mについて上記で定義したとおりであり、Xは上記で定義したとおりであり、x及びzは両方とも0超1未満である)
のペロブスカイトである。好ましい実施形態において、AI及びAIIはそれぞれ、(CH3NH3)+、(CH3CH2NH3)+、(CH3CH2CH2NH3)+、(N(CH3)4)+、(H2N-C(H)=NH2)+、(H2N-C(CH3)=NH2)+、(H2N-C(NH2)=NH2)+、Cs+及びRb+から選択され、MIはPb2+であり、MIIはSn2+であり、Xは、Br-、Cl-及びI-から選択される。AI及びAIIは、例えば、それぞれ(H2N-C(H)=NH2)+及びCs+であってもよい、又はそれぞれ(CH3NH3)+及び(H2N-C(H)=NH2)+であってもよい。或いは、それぞれ、Cs+及びRb+であってもよい。
【0158】
例えば、結晶A/M/X材料は、[(CH3NH3)x(H2N-C(H)=NH2)1-x][PbzSn1-z]Cl3、[(CH3NH3)x(H2N-C(H)=NH2)1-x][PbzSn1-z]Br3、[(CH3NH3)x(H2N-C(H)=NH2)1-x][PbzSn1-z]I3、[(CH3NH3)xCs1-x][PbzSn1-z]Cl3、[(CH3NH3)xCs1-x][PbzSn1-z]Br3、[(CH3NH3)xCs1-x][PbzSn1-z]I3、[(H2N-C(H)=NH2)xCs1-x][PbzSn1-z]Cl3、[(H2N-C(H)=NH2)xCs1-x][PbzSn1-z]Br3、[(H2N-C(H)=NH2)xCs1-x][PbzSn1-z]I3(式中、x及びzは両方とも0超1未満であり、例えばx及びzはそれぞれ、0.01~0.99又は0.05~0.95又は0.1~0.9であってもよい)から選択される式(IF)のペロブスカイト化合物を含んでもよい、又はそれから本質的になってもよい。
【0159】
一実施形態において、ペロブスカイトは、式(IG):
A[MI zMII 1-z][XI yXII 1-y]3 (IG)
(式中、Aは上記に定義したとおりであり、MI及びMIIは、Mについて上記で定義したとおりであり、XI及びXIIは、Xについて上記で定義したとおりであり、y及びzは両方とも0超1未満である)
のペロブスカイト化合物である。好ましい実施形態において、Aは、(CH3NH3)+、(CH3CH2NH3)+、(CH3CH2CH2NH3)+、(N(CH3)4)+、(H2N-C(H)=NH2)+、(H2N-C(CH3)=NH2)+、(H2N-C(NH2)=NH2)+、Cs+及びRb+から選択され、MIはPb2+であり、MIIはSn2+であり、XI及びXIIはそれぞれ、Br-、Cl-及びI-から選択される。
【0160】
例えば、結晶A/M/X材料は、A[PbzSn1-z][BryI1-y]3、A[PbzSn1-z][BryCl1-y]3、A[PbzSn1-z][IyCl1-y]3(式中、y及びzは両方とも0超1未満であり、Aは本明細書に記載のカチオンである)から選択される式(IG)のペロブスカイト化合物を含んでもよい、又はそれから本質的になってもよい。y及びzはそれぞれ、0.01~0.99であってもよい。例えば、y及びzはそれぞれ、0.05~0.95又は0.1~0.9であってもよい。
【0161】
例えば、結晶A/M/X材料は、CH3NH3[PbzSn1-z][BryI1-y]3、CH3NH3[PbzSn1-z][BryCl1-y]3、CH3NH3[PbzSn1-z][IyCl1-y]3、Cs[PbzSn1-z][BryI1-y]3、Cs[PbzSn1-z][BryCl1-y]3、Cs[PbzSn1-z][IyCl1-y]3、(H2N-C(H)=NH2)[PbzSn1-z][BryI1-y]3、(H2N-C(H)=NH2)[PbzSn1-z][BryCl1-y]3、及び(H2N-C(H)=NH2)[PbzSn1-z][IyCl1-y]3(式中、y及びzは両方とも0超1未満であり、例えばy及びzはそれぞれ、0.01~0.99又は0.05~0.95又は0.1~0.9であってもよい)から選択される式(IG)のペロブスカイト化合物を含んでもよい、又はそれから本質的になってもよい。
【0162】
好ましい実施形態において、ペロブスカイトは、式(IH):
[AI xAII 1-x][MI zMII 1-z][XI yXII 1-y]3 (IH)
(式中、AI及びAIIは、Aについて上記で定義したとおりであり、MI及びMIIは、Mについて上記で定義したとおりであり、XI及びXIIは、Xについて上記で定義したとおりであり、x、y及びzはそれぞれ、0超1未満である)
のペロブスカイトである。好ましい実施形態において、AI及びAIIはそれぞれ、(CH3NH3)+、(CH3CH2NH3)+、(CH3CH2CH2NH3)+、(N(CH3)4)+、(H2N-C(H)=NH2)+、(H2N-C(CH3)=NH2)+、(H2N-C(NH2)=NH2)+、Cs+及びRb+から選択され、MIはPb2+であり、MIIはSn2+であり、XI及びXIIはそれぞれ、Br-、Cl-及びI-から選択される。
【0163】
例えば、結晶A/M/X材料は、[(CH3NH3)x(H2N-C(H)=NH2)1-x][PbzSn1-z][BryI1-y]3、[(CH3NH3)x(H2N-C(H)=NH2)1-x][PbzSn1-z][BryCl1-y]3、(CH3NH3)x(H2N-C(H)=NH2)1-x][PbzSn1-z][IyCl1-y]3、[(CH3NH3)xCs1-x][PbzSn1-z][BryI1-y]3、[(CH3NH3)xCs1-x][PbzSn1-z][BryCl1-y]3、[(CH3NH3)xCs1-x][PbzSn1-z][IyCl1-y]3、[(H2N-C(H)=NH2)xCs1-x][PbzSn1-z][BryI1-y]3、[(H2N-C(H)=NH2)xCs1-x][PbzSn1-z][BryCl1-y]3、及び[(H2N-C(H)=NH2)xCs1-x][PbzSn1-z][IyCl1-y]3(式中、x、y及びzはそれぞれ0超1未満であり、例えばx、y及びzはそれぞれ、0.01~0.99又は0.05~0.95又は0.1~0.9であってもよい)から選択される式(IH)のペロブスカイト化合物を含んでもよい、又はそれから本質的になってもよい。
【0164】
一実施形態において、a=2、b=1及びc=4である。この実施形態において、結晶A/M/X材料は、式(II):
[A]2[M][X]4 (II)
(式中、[A]は、モノカチオンである1つ以上のAカチオンを含み、[M]は、金属又は半金属のジカチオンである1つ以上のMカチオンを含み、[X]は、ハロゲン化物アニオンである1つ以上のXアニオンを含む)
の化合物(「2D層状ペロブスカイト」)を含む。この実施形態では、A及びMカチオン並びにXアニオンは上記で定義したとおりである。
【0165】
別の実施形態では、a=2、b=1及びc=6である。この実施形態において、結晶A/M/X材料は、この場合、式(III):
[A]2[M][X]6 (III)
(式中、[A]は、モノカチオンである1つ以上のAカチオンを含み、[M]は、金属又は半金属のテトラカチオンである1つ以上のMカチオンを含み、[X]は、ハロゲン化物アニオンである1つ以上のXアニオンを含む)
のヘキサハロメタレートを含んでもよい。
【0166】
式(III)のヘキサハロメタレートは、好ましい実施形態において、混合モノカチオンヘキサハロメタレートであってもよい。混合モノカチオンヘキサハロメタレートにおいて、[A]は、モノカチオンである少なくとも2つのAカチオンを含み、[M]は、金属又は半金属のテトラカチオンである少なくとも1つのMカチオンを含み(また、典型的には、[M]は、金属又は半金属のテトラカチオンである単一Mカチオンを含み)、[X]は、ハロゲン化物アニオンである少なくとも1つのXアニオンを含む(また、典型的には、[X]は、単一ハロゲン化物アニオン又は2つのタイプのハロゲン化物アニオンを含む)。混合金属ヘキサハロメタレートにおいて、[A]は少なくとも1つのモノカチオンを含み(また、典型的には、[A]は、単一モノカチオン又は2つのタイプのモノカチオンであり)、[M]は少なくとも2つの金属又は半金属のテトラカチオン(例えば、Ge4+及びSn4+)を含み、[X]は少なくとも1つのハロゲン化物アニオンを含む(また、典型的には、[X]は、単一ハロゲン化物アニオン又は2つのタイプのハロゲン化物アニオンである)。混合ハロゲン化物ヘキサハロメタレートにおいて、[A]は少なくとも1つのモノカチオンを含み(また、典型的には、[A]は、単一モノカチオン又は2つのタイプのモノカチオンであり)、[M]は少なくとも1つの金属又は半金属のテトラカチオンを含み(また、典型的には、[M]は単一金属テトラカチオンであり)、[X]は少なくとも2つのハロゲン化物アニオン、例えばBr-及びCl-又はBr-及びI-を含む。
【0167】
[A]は、任意の好適なモノカチオン、例えばペロブスカイトについて上記したものから選択される少なくとも1つのAモノカチオンを含んでもよい。ヘキサハロメタレートの場合、各Aカチオンは、典型的には、Li+、Na+、K+、Rb+、Cs+、NH4 +及び一価有機カチオンから選択される。一価有機カチオンは、例えば、500g/mol以下の分子量を有し得る単一正電荷を持つ有機カチオンである。例えば、[A]は、Li+、Na+、K+、Rb+、Cs+、NH4 +及び一価有機カチオンから選択される単一Aカチオンであってもよい。[A]は、好ましくは、Rb+、Cs+、NH4 +及び一価有機カチオンから選択されるモノカチオンである少なくとも1つのAカチオンを含む。例えば、[A]は、Li+、Na+、K+、Rb+、Cs+及びNH4 +から選択される単一無機Aモノカチオンであってもよい。別の実施形態では、[A]は少なくとも1つの一価有機Aカチオンであってもよい。例えば、[A]は単一の一価有機Aカチオンであってもよい。一実施形態において、[A]は(CH3NH3)+である。別の実施形態では、[A]は(H2N-C(H)=NH2)+である。
【0168】
好ましくは、[A]は2つ以上のタイプのAカチオンを含む。[A]は、単一Aモノカチオン又は実際には2つのモノカチオンであってもよく、これらはそれぞれ、独立して、K+、Rb+、Cs+、NH4 +、(CH3NH3)+、(CH3CH2NH3)+、(CH3CH2CH2NH3)+、(N(CH3)4)+、(N(CH2CH3)4)+、(N(CH2CH2CH3)4)+、(H2N-C(H)=NH2)+及び(H2N-C(CH3)=NH2)+から選択される。
【0169】
[M]は、好適な金属又は半金属のテトラカチオンから選択される1つ以上のMカチオンを含んでもよい。金属は、元素周期表の第3~12族の元素並びにGa、In、Tl、Sn、Pb、Bi及びPoを含む。半金属は、Si、Ge、As、Sb及びTeを含む。例えば、[M]は、Ti4+、V4+、Mn4+、Fe4+、Co4+、Zr4+、Nb4+、Mo4+、Ru4+、Rh4+、Pd4+、Hf4+、Ta4+、W4+、Re4+、Os4+、Ir4+、Pt4+、Sn4+、Pb4+、Po4+、Si4+、Ge4+及びTe4+から選択される金属又は半金属のテトラカチオンである少なくとも1つのMカチオンを含んでもよい。典型的には、[M]は、Pd4+、W4+、Re4+、Os4+、Ir4+、Pt4+、Sn4+、Pb4+、Ge4+及びTe4+から選択される少なくとも1つの金属又は半金属のテトラカチオンを含む。例えば、[M]は、Pd4+、W4+、Re4+、Os4+、Ir4+、Pt4+、Sn4+、Pb4+、Ge4+及びTe4+から選択される単一の金属又は半金属のテトラカチオンであってもよい。
【0170】
典型的には、[M]は、Sn4+、Te4+、Ge4+及びRe4+から選択される金属又は半金属のテトラカチオンである少なくとも1つのMカチオンを含む。一実施形態において、[M]は、Pb4+、Sn4+、Te4+、Ge4+及びRe4+から選択される金属又は半金属のテトラカチオンである少なくとも1つのMカチオンを含む。例えば、[M]は、Pb4+、Sn4+、Te4+及びGe4+から選択される少なくとも1つの金属又は半金属のテトラカチオンであるMカチオンを含んでもよい。好ましくは、[M]は、Sn4+、Te4+及びGe4+から選択される少なくとも1つの金属又は半金属のテトラカチオンを含む。上述するように、ヘキサハロメタレート化合物は、混合金属又は単一金属ヘキサハロメタレートであってもよい。好ましくは、ヘキサハロメタレート化合物は、単一金属ヘキサハロメタレート化合物である。より好ましくは、[M]は、Sn4+、Te4+及びGe4+から選択される単一の金属又は半金属のテトラカチオンである。例えば、[M]は、Te4+である単一の金属又は半金属のテトラカチオンであってもよい。例えば、[M]は、Ge4+である単一の金属又は半金属のテトラカチオンであってもよい。最も好ましくは、[M]は、Sn4+である単一の金属又は半金属のテトラカチオンである。
【0171】
[X]は、ハロゲン化物アニオンである少なくとも1つのXアニオンを含んでもよい。したがって、[X]は、F-、Cl-、Br-及びI-から選択される少なくとも1つのハロゲン化物アニオンを含む。典型的には、[X]は、Cl-、Br-及びI-から選択される少なくとも1つのハロゲン化物アニオンを含む。ヘキサハロメタレート化合物は、混合ハロゲン化物ヘキサハロメタレート又は単一ハロゲン化物ヘキサハロメタレートであってもよい。ヘキサハロメタレートが混合である場合、[X]は、F-、Cl-、Br-及びI-から選択される2、3又は4つのハロゲン化物アニオンを含む。典型的には、混合ハロゲン化物化合物において、[X]は、F-、Cl-、Br-及びI-から選択される2つのハロゲン化物アニオンを含む。
【0172】
一部の実施形態において、[A]は単一モノカチオンであり、[M]は単一の金属又は半金属のテトラカチオンである。したがって、結晶A/M/X材料は、例えば、式(IIIA):
A2M[X]6 (IIIA)
(式中、Aはモノカチオンであり、Mは金属又は半金属のテトラカチオンであり、[X]は少なくとも1つのハロゲン化物アニオンである)
のヘキサハロメタレート化合物を含んでもよい。[X]は、F-、Cl-、Br-及びI-から選択される、好ましくはCl-、Br-及びI-から選択される1、2又は3つのハロゲン化物アニオンであってもよい。式(IIIA)中、[X]は、好ましくは、Cl-、Br-及びI-から選択される1又は2つのハロゲン化物アニオンである。
【0173】
結晶A/M/X材料は、例えば、式(IIIB):
A2MX6-yX'y (IIIB)
(式中、Aはモノカチオン(すなわち、第2のカチオン)であり、Mは金属又は半金属のテトラカチオン(すなわち、第1のカチオン)であり、X及びX'はそれぞれ、独立して、(異なる)ハロゲン化物アニオン(すなわち、2つの第2のアニオン)であり、yは0~6である)
のヘキサハロメタレート化合物を含んでもよい、又はそれから本質的になってもよい。yが0又は6である場合、ヘキサハロメタレート化合物は単一ハロゲン化物化合物である。yが0.01~5.99である場合、化合物は混合ハロゲン化物ヘキサハロメタレート化合物である。化合物が混合ハロゲン化物化合物である場合、yは0.05~5.95であってもよい。例えば、yは1.00~5.00であってもよい。
【0174】
ヘキサハロメタレート化合物は、例えば、A2SnF6-yCly、A2SnF6-yBry、A2SnF6-yIy、A2SnCl6-yBry、A2SnCl6-yIy、A2SnBr6-yIy、A2TeF6-yCly、A2TeF6-yBry、A2TeF6-yIy、A2TeCl6-yBry、A2TeCl6-yIy、A2TeBr6-yIy、A2GeF6-yCly、A2GeF6-yBry、A2GeF6-yIy、A2GeCl6-yBry、A2GeCl6-yIy、A2GeBr6-yIy、A2ReF6-yCly、A2ReF6-yBry、A2ReF6-yIy、A2ReCl6-yBry、A2ReCl6-yIy又はA2ReBr6-yIy(式中、Aは、K+、Rb+、Cs+、(R1NH3)+、(NR2 4)+又は(H2N-C(R1)=NH2)+であり、R1は、H、置換若しくは非置換C1~20アルキル基又は置換若しくは非置換アリール基であり、R2は、置換又は非置換C1~10アルキル基であり、yは0~6である)であってもよい。任意選択で、yは0.01~5.99である。ヘキサハロメタレート化合物が混合ハロゲン化物化合物である場合、yは、典型的には1.00~5.00である。Aは上記で定義したとおりでよい。例えば、Aは、Cs+、NH4 +、(CH3NH3)+、(CH3CH2NH3)+、(N(CH3)4)+、(N(CH2CH3)4)+、(H2N-C(H)=NH2)+又は(H2N-C(CH3)=NH2)+、例えばCs+、NH4 +又は(CH3NH3)+であってもよい。
【0175】
ヘキサハロメタレート化合物は、典型的には、A2SnF6-yCly、A2SnF6-yBry、A2SnF6-yIy、A2SnCl6-yBry、A2SnCl6-yIy又はA2SnBr6-yIy(式中、Aは、K+、Rb+、Cs+、(R1NH3)+、(NR2 4)+若しくは(H2N-C(R1)=NH2)+であり、又はAは本明細書中で定義されるとおりであり、R1は、H、置換若しくは非置換C1~20アルキル基又は置換若しくは非置換アリール基であり、又はR2は、置換又は非置換C1~10アルキル基であり、yは0~6である)であってもよい。
【0176】
別の実施形態において、ヘキサハロメタレート化合物は、A2GeF6-yCly、A2GeF6-yBry、A2GeF6-yIy、A2GeCl6-yBry、A2GeCl6-yIy又はA2GeBr6-yIy(式中、Aは、K+、Rb+、Cs+、(R1NH3)+、(NR2 4)+若しくは(H2N-C(R1)=NH2)+であり、又はAは本明細書中で定義されるとおりであり、R1は、H、置換若しくは非置換C1~20アルキル基又は置換若しくは非置換アリール基であり、R2は、置換又は非置換C1~10アルキル基であり、yは0~6である)である。
【0177】
ヘキサハロメタレート化合物は、例えば、A2TeF6-yCly、A2TeF6-yBry、A2TeF6-yIy、A2TeCl6-yBry、A2TeCl6-yIy又はA2TeBr6-yIy(式中、Aは、K+、Rb+、Cs+、(R1NH3)+、(NR2 4)+若しくは(H2N-C(R1)=NH2)+であり、又はAは本明細書中で定義されるとおりであり、R1は、H、置換若しくは非置換C1~20アルキル基又は置換若しくは非置換アリール基であり、R2は、置換又は非置換C1~10アルキル基であり、yは0~6であり、又はyは本明細書中で定義されるとおりである)であってもよい。
【0178】
多くの場合、yは1.50~2.50である。例えば、yは1.80~2.20であってもよい。これは、化合物が、後述するように、2当量のAX'及び1当量のMX4を使用して生成する場合に生じ得る。
【0179】
一部の実施形態において、全イオンは単一アニオン又はカチオンである。したがって、結晶A/M/X材料は、式(IIIC):
A2MX6 (IIIC)
(式中、Aはモノカチオンであり、Mは金属又は半金属のテトラカチオンであり、Xはハロゲン化物アニオンである)
のヘキサハロメタレート化合物を含んでもよい、又はそれから本質的になってもよい。A、M及びXは、本明細書中で定義されるとおりであってよい。
【0180】
ヘキサハロメタレート化合物は、A2SnF6、A2SnCl6、A2SnBr6、A2SnI6、A2TeF6、A2TeCl6、A2TeBr6、A2TeI6、A2GeF6、A2GeCl6、A2GeBr6、A2GeI6、A2ReF6、A2ReCl6、A2ReBr6又はA2ReI6(式中、Aは、K+、Rb+、Cs+、(R1NH3)+、(NR2 4)+又は(H2N-C(R1)=NH2)+であり、R1は、H、置換若しくは非置換C1~20アルキル基又は置換若しくは非置換アリール基であり、R2は置換又は非置換C1~10アルキル基である)であってもよい。Aは、本明細書中に定義されるとおりであってよい。好ましくは、ヘキサハロメタレート化合物は、Cs2SnI6、Cs2SnBr6、Cs2SnBr6-yIy、Cs2SnCl6-yIy、Cs2SnCl6-yBry、(CH3NH3)2SnI6、(CH3NH3)2SnBr6、(CH3NH3)2SnBr6-yIy、(CH3NH3)2SnCl6-yIy、(CH3NH3)2SnCl6-yBry、(H2N-C(H)=NH2)2SnI6、(H2N-C(H)=NH2)2SnBr6、(H2N-C(H)=NH2)2SnBr6-yIy、(H2N-C(H)=NH2)2SnCl6-yIy又は(H2N-C(H)=NH2)2SnCl6-yBryであり、式中、yは0.01~5.99である。例えば、ヘキサハロメタレート化合物は、(CH3NH3)2SnI6、(CH3NH3)2SnBr6、(CH3NH3)2SnCl6、(H2N-C(H)=NH2)2SnI6、(H2N-C(H)=NH2)2SnBr6又は(H2N-C(H)=NH2)2SnCl6であってもよい。ヘキサハロメタレート化合物は、Cs2SnI6、Cs2SnBr6、Cs2SnCl6-yBry、(CH3NH3)2SnI6、(CH3NH3)2SnBr6又は(H2N-C(H)=NH2)2SnI6であってもよい。
【0181】
結晶A/M/X材料は、ビスマス又はアンチモンハロゲノメタレートを含んでもよい。例えば、結晶A/M/X材料は、(i)1つ以上のモノカチオン([A])又は1つ以上のジカチオン([B])、(ii)1つ以上の金属又は半金属のトリカチオン([M])、及び(iii)1つ以上のハロゲン化物アニオン([X])を含むハロゲノメタレート化合物を含んでもよい。化合物は、式BBiX5、B2BiX7又はB3BiX9(式中、Bは、(H3NCH2NH3)2+、(H3N(CH2)2NH3)2+、(H3N(CH2)3NH3)2+、(H3N(CH2)4NH3)2+、(H3N(CH2)5NH3)2+、(H3N(CH2)6NH3)2+、(H3N(CH2)7NH3)2+、(H3N(CH2)8NH3)2+又は(H3N-C6H4-NH3)2+であり、Xは、I-、Br-又はCl-であり、好ましくはI-である)の化合物であってもよい。
【0182】
さらなる実施形態において、結晶A/M/X材料は、ダブルペロブスカイトであってもよい。そのような化合物は、その全内容が参照により本明細書に組み込まれるWO2017/037448に定義されている。典型的には、化合物は、式(IV):
[A]2[B+][B3+][X]6 (IV)
(式中、[A]は、本明細書中に定義されるモノカチオンである1つ以上のAカチオンを含み、[B+]及び[B3+]は、[M]に等しく、Mは、モノカチオンである1つ以上のMカチオン及びトリカチオンである1つ以上のMカチオンを含み、[X]は、ハロゲン化物アニオンである1つ以上のXアニオンを含む)
のダブルペロブスカイト化合物である。
【0183】
[B+]に含まれるモノカチオンである1つ以上のMカチオンは、典型的には、金属及び半金属のモノカチオンから選択される。好ましくは、モノカチオンである1つ以上のMカチオンは、Li+、Na+、K+、Rb+、Cs+、Cu+、Ag+、Au+及びHg+から選択される。より好ましくは、モノカチオンである1つ以上のMカチオンは、Cu+、Ag+及びAu+から選択される。最も好ましくは、モノカチオンである1つ以上のMカチオンはAg+及びAu+から選択される。例えば、[B+]は、Ag+である1つのモノカチオンであってもよい、又は[B+]は、Au+である1つのモノカチオンであってもよい。
【0184】
[B3+]に含まれるトリカチオンである1つ以上のMカチオンは、典型的には、金属及び半金属のトリカチオンから選択される。好ましくは、トリカチオンである1つ以上のMカチオンは、Bi3+、Sb3+、Cr3+、Fe3+、Co3+、Ga3+、As3+、Ru3+、Rh3+、In3+、Ir3+及びAu3+から選択される。より好ましくは、トリカチオンである1つ以上のMカチオンは、Bi3+及びSb3+から選択される。例えば、[B3+]は、Bi3+である1つのトリカチオンであってもよい、又は[B3+]は、Sb3+である1つのトリカチオンであってもよい。ビスマスは、重金属、例えば鉛と比較して比較的毒性が低い。一部の実施形態では、モノカチオン([B+]中の)である1つ以上のMカチオンは、Cu+、Ag+及びAu+から選択され、トリカチオン([B3+]中の)である1つ以上のMカチオンはBi3+及びSb3+から選択される。
【0185】
例示的なダブルペロブスカイトはCs2BiAgBr6である。
【0186】
典型的には、化合物がダブルペロブスカイトである場合、式(IVa):
A2B+B3+[X]6 (IVa)
(式中、Aカチオンは本明細書中で定義したとおりであり、B+は、本明細書中で定義したモノカチオンであるMカチオンであり、B3+は、本明細書中で定義したトリカチオンであるMカチオンであり、[X]は、ハロゲン化物アニオンである1つ以上のXアニオン、例えば2つ以上のハロゲン化物アニオン、好ましくは単一ハロゲン化物アニオンである)
の化合物である。
【0187】
さらに別の実施形態において、化合物は、式(V):
[A]4[B+][B3+][X]8 (V)
(式中、[A]、[B+]、[B3+]及び[X]は上記で定義したとおりである)
の層状ダブルペロブスカイト化合物であってもよい。一部の実施形態において、層状ダブルペロブスカイト化合物は、式(Va):
A4B+B3+[X]8 (Va)
(式中、Aカチオンは本明細書中で定義したとおりであり、B+は、本明細書中で定義したモノカチオンであるMカチオンであり、B3+は、本明細書中で定義したトリカチオンであるMカチオンであり、[X]は、ハロゲン化物アニオンである1つ以上のXアニオン、例えば2つ以上のハロゲン化物アニオン、好ましくは単一ハロゲン化物アニオン又は2種のハロゲン化物アニオンを含む)
のダブルペロブスカイト化合物である。
【0188】
さらに別の実施形態において、化合物は、式(VI):
[A]4[M][X]6 (VI)
(式中、[A]、[M]及び[X]は、(例えば、式(I)又は(II)の化合物について)上記で定義したとおりである)
の化合物であってもよい。しかしながら、好ましくは、化合物は式(VI)の化合物ではない。化合物が式(VI)の化合物である場合、化合物は、好ましくは、式(VIA)
[AIAII]4[M][X]6 (VIA)
の化合物、すなわち、化合物(式中、[A]が2種のAモノカチオンを含む)であってもよい。他の好ましい実施形態では、式(VI)の化合物は、式(VIB):
[A]4[M][XIXII]6 (VIB)
の化合物、すなわち、式(VI)(式中、[X]が2種のXアニオンを含む)の化合物であってもよい。さらに他の好ましい実施形態において、式(VI)の化合物は、式(VIC):
[AIAII]4[M][XIXII]6 (VIC)
の化合物、すなわち、式(VI)(式中、[A]が2種のAモノカチオンを含み、[X]が2種のXアニオンを含む)の化合物であってもよい。式(VIa)、(VIb)及び(VIc)中、[A]、[M]及び[X]はそれぞれ、(例えば、式(I)又は(II)の化合物について)上記で定義したとおりである。
【0189】
別の実施形態において、a=1、b=1及びc=4である。この実施形態において、結晶A/M/X材料は、この場合、式(VII):
[A][M][X]4 (VII)
(式中、[A]は、モノカチオンである1つ以上のAカチオンを含み、[M]は、金属又は半金属のトリカチオンである1つ以上のMカチオンを含み、[X]は、ハロゲン化物アニオンである1つ以上のXアニオンを含む)
の化合物を含んでもよい。Aモノカチオン及びMトリカチオンは、本明細書で定義したとおりである。例示的な式(VII)の化合物はAgBiI4である。
【0190】
本発明が、上記の構造(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)及び(VII)の変形体(式中、関連するa、b及びc値の1つ以上は非整数値である)を製造する方法も包含することを理解すべきである。
【0191】
好ましくは、式[A]a[M]b[X]cの化合物は、式[A][M][X]3の化合物、式[A]4[M][X]6の化合物又は式[A]2[M][X]6の化合物である。例えば、好ましい実施形態において、式[A]a[M]b[X]cの化合物は、式(I)の化合物、例えば式(IA)、(IB)、(IC)、(ID)、(IE)、(IF)、(IG)、(IH)、(IIIA)の化合物、又は式(IIIB)、(IIIC)、(VIA)、(VIB)若しくは(VIC)の化合物である。一般に、式[A]a[M]b[X]cの化合物は、式(I)の化合物、例えば式(IA)、(IB)、(IC)、(ID)、(IE)、(IF)、(IG)又は(IH)の化合物である。
【0192】
一部の実施形態において、式[A]a[M]b[X]cの化合物は、[A]が2つ以上の異なるAカチオンを含む化合物である。例えば、[A]は2つのタイプのカチオンを含有してもよい。一部の実施形態において、式[A]a[M]b[X]cの化合物は、[X]が2つ以上の異なるXアニオンを含む化合物である。例えば、[X]は2つのタイプのアニオン、例えばハロゲン化物アニオンを含有してもよい。一部の実施形態において、式[A]a[M]b[X]cの化合物は、[M]が2つ以上の異なるMカチオンを含む化合物である。例えば、[X]は2つのタイプのアニオン、例えばSn2+及びPb2+を含有してもよい。
【0193】
これらの実施形態それぞれの一態様において、式[A]a[M]b[X]cの化合物は、[A]が2つ以上の異なるAカチオンを含み、[X]が2つ以上の異なるXアニオンを含む、化合物である。例えば、[A]は2つのタイプのAカチオンを含有してもよく、[X]は2つのタイプのXアニオン(例えば、2つのタイプのハロゲン化物アニオン)を含有してもよい。
【0194】
これらの実施形態それぞれの一態様において、式[A]a[M]b[X]cの化合物は、[A]が2つ以上の異なるAカチオンを含み、[M]が2つ以上の異なるMカチオンを含む、化合物である。例えば、[A]は2つのタイプのAカチオンを含有してもよく、[M]は2つのタイプのMカチオン(例えば、Sn2+及びPb2+)を含有してもよい。
【0195】
これらの実施形態それぞれの一態様において、式[A]a[M]b[X]cの化合物は、[X]が2つ以上の異なるXアニオンを含み、[M]が2つ以上の異なるMカチオンを含む、化合物である。例えば、[X]は2つのタイプのXアニオン(例えば、2つのタイプのハロゲン化物アニオン)を含有してもよく、[M]は2つのタイプのMカチオン(例えば、Sn2+及びPb2+)を含有してもよい。
【0196】
これらの実施形態それぞれの一態様において、式[A]a[M]b[X]cの化合物は、[A]が2つ以上の異なるAカチオンを含み、[X]が2つ以上の異なるXアニオンを含み、[M]が2つ以上の異なるMカチオンを含む、化合物である。例えば、[A]は2つのタイプのAカチオンを含有してもよく、[X]は2つのタイプのXアニオン(例えば、2つのタイプのハロゲン化物アニオン)を含有してもよく、[M]は2つのタイプのMカチオン(例えば、Sn2+及びPb2+)を含有してもよい。
【0197】
電荷輸送層
基材は、1つ以上のさらなる層を含んでもよい。例えば、基材は、電荷輸送材料の層をさらに含んでもよい。好ましくは、電荷輸送材料の層は、電荷再結合層上に配置される。典型的には、電荷輸送材料の層は、電荷再結合層上に直接配置される。或いは、電荷輸送材料の層と電荷再結合層との間に介在層があってもよい。したがって、基材は、以下の順序で以下の層を含んでもよい:
・電荷輸送材料の層(典型的には、本明細書に記載のn型材料だが、或いはp型材料であってもよい)、
・電荷再結合層、
・光活性領域。
【0198】
典型的には、結晶A/M/X材料の層は、電荷輸送材料の層の上に直接配置される。或いは、電荷輸送材料の層と結晶A/M/X材料の層との間に介在層があってもよい。典型的には、電荷輸送材料の層は、電荷再結合層の上に直接配置され、結晶A/M/X材料の層は、電荷輸送材料の層の上に直接配置される。したがって、本発明に従って製造される多接合デバイスは、以下の順序で以下の層を含んでもよい:
・結晶A/M/X材料の層、
・電荷輸送材料の層(典型的には、本明細書に記載のn型材料だが、或いはp型材料であってもよい)、
・電荷再結合層、
・光活性領域。
【0199】
一実施形態において、電荷輸送材料の層は、電子輸送(n型)材料の層である。別の実施形態では、電荷輸送材料の層は、正孔輸送(p型)材料の層である。典型的には、電荷輸送材料の層は、電子輸送(n型)材料の層である。
【0200】
典型的には、電荷輸送材料は、ジメチルホルムアミドに溶解する。したがって、電荷輸送材料は、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)又はこれらの混合物に溶解し得る。
【0201】
典型的には、電荷輸送材料の層は、1000nm未満、又は500nm未満、又は250nm未満、好ましくは100nm未満の厚さを有する。例えば、電荷輸送材料の層は、1~500nm、例えば5~250nm、又は10~75nmの厚さを有してもよい。
【0202】
電子輸送(n型)材料の例は、当業者に公知である。好適なn型材料は、有機又は無機材料であってもよい。好適な無機n型材料は、金属酸化物、金属硫化物、セレン化金属(metal selenide)、テルル化金属(metal telluride)、ペロブスカイト、非晶質Si、n型第IV族半導体、n型第III~V族半導体、n型第II~VI族半導体、n型第I~VII族半導体、n型第IV~VI族半導体、n型第V~VI族半導体、及びn型第II~V型半導体(これらはいずれもドープされていても又はドープされていなくてもよい)から選択することができる。より典型的には、n型材料は、金属酸化物、金属硫化物、セレン化金属、及びテルル化金属から選択される。
【0203】
したがって、n型層は、チタン、スズ、亜鉛、ニオブ、タンタル、タングステン、インジウム、ガリウム、ネオジウム、パラジウム若しくはカドミウムの酸化物、又は2つ以上の前記金属の混合物の酸化物から選択される無機材料を含んでもよい。例えば、n型層は、TiO2、SnO2、ZnO、Nb2O5、Ta2O5、WO3、W2O5、In2O3、Ga2O3、Nd2O3、PbO又はCdOを含んでもよい。他に用いてもよい好適なn型材料には、カドミウム、スズ、銅又は亜鉛の硫化物(2つ以上の前記金属の混合物の硫化物を含む)が挙げられる。例えば、硫化物は、FeS2、CdS、ZnS、SnS、BiS、SbS又はCu2ZnSnS4であってもよい。
【0204】
n型層は、例えば、カドミウム、亜鉛、インジウム若しくはガリウムのセレン化物又は2つ以上の前記金属の混合物のセレン化物、或いはカドミウム、亜鉛、カドミウム若しくはスズのテルル化物又は2つ以上の前記金属の混合物のテルル化物を含んでもよい。例えば、セレン化物はCu(In,Ga)Se2であってもよい。典型的には、テルル化物は、カドミウム、亜鉛、カドミウム又はスズのテルル化物である。例えば、テルル化物はCdTeであってもよい。
【0205】
n型層は、例えば、チタン酸化物(例えば、TiO2)、スズ酸化物(例えば、SnO2)、亜鉛酸化物(例えば、ZnO)、ニオブ、タンタル、タングステン、インジウム、ガリウム、ネオジウム、パラジウム、カドミウムの酸化物、又は2つ以上の前記金属の混合物の酸化物、カドミウム、スズ、銅、亜鉛の硫化物又は2つ以上の前記金属の混合物の硫化物、カドミウム、亜鉛、インジウム、ガリウムのセレン化物又は2つ以上の前記金属の混合物のセレン化物、或いはカドミウム、亜鉛、カドミウム若しくはスズのテルル化物又は2つ以上の前記金属の混合物のテルル化物から選択される無機材料を含んでもよい。
【0206】
例えばnドープされる場合に好適なn型材料であり得る他の半導体の例としては、第IV族元素又は化合物半導体、非晶質Si、第III~V族半導体(例えば、ヒ化ガリウム)、第II~VI族半導体(例えば、セレン化カドミウム)、第I~VII族半導体(例えば、塩化第一銅)、第IV~VI族半導体(例えば、セレン化鉛)、第V~VI族半導体(例えば、テルル化ビスマス)及び第II~V族半導体(例えば、ヒ化カドミウム)が挙げられる。
【0207】
有機及びポリマー電子輸送材料並びに電解質を含めた他のn型材料も用いてよい。好適な例としては、フラーレン又はフラーレン誘導体(例えば、C60、C70、フェニル-C61-酪酸メチルエステル(PCBM)、PC71BM(すなわち、フェニルC71酪酸メチルエステル)、ビス[C60]BM(すなわち、ビス-C60酪酸メチルエステル)及び1',1",4',4"-テトラヒドロ-ジ[1,4]メタノナフタレノ[1,2:2',3',56,60:2",3"][5,6]フラーレン-C60(ICBA))、ペリレン若しくはその誘導体を含む有機電子輸送材料、又はポリ{[N,N0-ビス(2-オクチルドデシル)-ナフタレン-1,4,5,8-ビス(ジカルボキシイミド)-2,6-ジイル]-alt-5,50-(2,20-ビチオフェン)}(P(NDI2OD-T2))が挙げられるが、これらに限定されない。
【0208】
好ましくは、n型材料はフェニル-C61-酪酸メチルエステル(PCBM)である。
【0209】
正孔輸送(p型)材料の例は、当業者に公知である。p型材料は、ドープされていなくても、又は1つ以上のドーパント元素でドープされていてもよい、単一p型化合物若しくは元素材料、又は2つ以上のp型化合物若しくは元素材料の混合物であってもよい。
【0210】
p型材料は、無機又は有機p型材料を含んでもよい。典型的には、p型材料は有機p型材料である。
【0211】
好適なp型材料は、ポリマー又は分子の正孔輸送体から選択することができる。p型材料は、例えば、スピロ-OMeTAD(2,2',7,7'-テトラキス-(N,N-ジ-p-メトキシフェニルアミン)9,9'-スピロビフルオレン)、P3HT(ポリ(3-ヘキシルチオフェン))、PCPDTBT(ポリ[2,1,3-ベンゾチアジアゾール-4,7-ジイル[4,4-ビス(2-エチルヘキシル)-4H-シクロペンタ[2,1-b:3,4-b']ジチオフェン-2,6-ジイル]])、PVK(ポリ(N-ビニルカルバゾール))、HTM-TFSI(1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド)、Li-TFSI(リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド)、スピロ-OMETAD+-ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド-(スピロ(TFSI)2)、tBP(tert-ブチルピリジン)、m-MTDATA(4,4',4"-トリス(メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン)、MeOTPD(N,N,N',N'-テトラキス(4-メトキシフェニル)-ベンジジン)、BP2T(5,5'-ジ(ビフェニル-4-イル)-2,2'-ビチオフェン)、ジ-NPB(N,N'-ジ-[(1-ナフチル)-N,N'-ジフェニル]-1,1'-ビフェニル)-4,4'-ジアミン)、α-NPB(N,N'-ジ(ナフタレン-1-イル)-N,N'-ジフェニル-ベンジジン)、TNATA(4,4',4"-トリス-(N-(ナフチレン-2-イル)-N-フェニルアミン)トリフェニルアミン)、BPAPF(9,9-ビス[4-(N,N-ビス-ビフェニル-4-イル-アミノ)フェニル]-9H-フルオレン)、スピロ-NPB(N2,N7-ジ-1-ナフタレニル-N2,N7-ジフェニル-9,9'-スピロビ[9H-フルオレン]-2,7-ジアミン)、4P-TPD(4,4-ビス-(N,N-ジフェニルアミノ)-テトラフェニル)、ポリTPD(すなわち、ポリ[N,N'-ビス(4-ブチルフェニル)-N,N'-ビスフェニルベンジジン])、PTAA(すなわち、ポリ(トリアリールアミン)、ポリ[ビス(4-フェニル)(2,4,6-トリメチルフェニル)アミン]としても知られる)又はPEDOT:PSSを含んでもよい。p型材料はカーボンナノチューブを含んでもよい。通常、p型材料は、スピロ-OMeTAD、P3HT、PCPDTBT、スピロ(TFSI)2及びPVKから選択される。好ましくは、p型材料は、スピロ-OMeTAD又はスピロ(TFSI)2である。
【0212】
好適なp型材料は、分子正孔輸送体、ポリマー正孔輸送体及びコポリマー正孔輸送体も含む。p型材料は、例えば、分子正孔輸送材料、1つ以上の以下の部分:チオフェニル、フェナレニル(phenelenyl)、ジチアゾリル、ベンゾチアゾリル、ジケトピロロピロリル、エトキシジチオフェニル、アミノ、トリフェニルアミノ、カルバゾリル(carbozolyl)、エチレンジオキシチオフェニル、ジオキシチオフェニル又はフルオレニルを含むポリマー又はコポリマーであってもよい。
【0213】
p型材料は、例えばtert-ブチルピリジン及びLiTFSIでドープされていてもよい。p型材料をドープして正孔密度を増加させてもよい。p型材料を、例えばNOBF4(テトラフルオロホウ酸ニトロソニウム)でドープして正孔密度を増加させてよい。
【0214】
他の実施形態において、p型層は無機正孔輸送体を含んでもよい。例えば、p型層は、ニッケルの酸化物(例えば、NiO)、バナジウム、銅又はモリブデンの酸化物、CuI、CuBr、CuSCN、Cu2O、CuO又はCIS、ペロブスカイト、非晶質Si、p型第IV族半導体、p型第III~V族半導体、p型第II~VI族半導体、p型第I~VII族半導体、p型第IV~VI族半導体、p型第V~VI族半導体、及びp型第II~V族半導体(無機材料がドープされていても、又はドープされていなくてもよい)を含む無機正孔輸送体を含んでもよい。p型層は、前記無機正孔輸送体の緻密層であってもよい。
【0215】
p型材料は、無機p型材料、例えばニッケル、バナジウム、銅又はモリブデンの酸化物、CuI、CuBr、CuSCN、Cu2O、CuO又はCIS、非晶質Si、p型第IV族半導体、p型第III~V族半導体、p型第II~VI族半導体、p型第I~VII族半導体、p型第IV~VI族半導体、p型第V~VI族半導体、及びp型第II~V族半導体(無機材料がドープされていても、又はドープされていなくてもよい)を含む材料であってもよい。p型材料は、例えばCuI、CuBr、CuSCN、Cu2O、CuO及びCISから選択される無機正孔輸送体を含んでもよい。
【0216】
一実施形態において、本発明は、本明細書に記載の電荷輸送材料の層を電荷再結合層の上に配置することにより基材を形成する工程を含む。典型的には、電荷輸送材料を含む組成物、好ましくは電荷輸送材料を含む溶液が、電荷再結合層の上に配置される。電荷輸送材料を含む溶液は、典型的には、溶液相堆積法、例えばグラビアコーティング、スロットダイコーティング、スクリーン印刷、インクジェット印刷、ドクターブレードコーティング、スプレーコーティング、ロール・ツー・ロール(R2R)処理、又はスピンコーティングにより、好ましくはスピンコーティングにより電荷再結合層の上に配置される。
【0217】
典型的には、電荷輸送材料を含む溶液中の溶媒は、クロロベンゼン、クロロホルム、アニソール、トルエン、テトラヒドロフラン、キシレン又はこれらの混合物から選択される。例えば、電荷輸送材料の層を電荷再結合層の上に配置することにより基材を形成する工程は、
・電荷輸送材料の溶液、好ましくはクロロベンゼン、クロロホルム又はこれらの混合物中の電子輸送(n型)材料の溶液であって、より好ましくは電子輸送(n型)材料がPCBMである、溶液を調製する工程、
・スピンコーティングにより電荷輸送材料を電荷再結合層の上に配置する工程
を含んでもよい。
【0218】
電荷再結合層
本発明の方法は、溶液堆積により電荷再結合層を光活性領域上に配置することによって基材を製造する工程をさらに含んでもよい。
【0219】
典型的には、電荷再結合層は、透明導電性酸化物のナノ粒子を含む。ナノ粒子は、電子及び正孔輸送層の両方の層の間にオーム性接触を作製し、それにより再結合層への効率的な電荷移動を可能にする。さらに、そのようなナノ粒子は、溶液ベース法を用いて容易に処理されて基材を形成する。
【0220】
透明導電性酸化物のナノ粒子は、インジウム亜鉛酸化物(indium zinc oxide、IZO)、インジウムスズ酸化物(indium tin oxide、ITO)、アルミニウム亜鉛酸化物(aluminium zinc oxide、AZO)、インジウムカドミウム酸化物(indium cadmium oxide)、フッ素をドープした酸化スズ(FTO)、アンチモンをドープした酸化スズ、アンチモンをドープした二酸化チタン、ニオブをドープした酸化スズ、ニオブをドープした二酸化チタン、スズ酸バリウム、バナジウム酸ストロンチウム、及びバナジウム酸カルシウムを含んでもよい。好ましくは、透明導電性酸化物のナノ粒子は、インジウムスズ酸化物(ITO)を含む。したがって、透明導電性酸化物のナノ粒子は、インジウムスズ酸化物のナノ粒子であってもよい。好ましくは、透明導電性酸化物のナノ粒子は、500nm未満、好ましくは250nm未満、より好ましくは100nm未満のサイズを有するインジウムスズ酸化物のナノ粒子である。典型的には、ナノ粒子のサイズは、溶液中の動的光散乱又は乾燥膜の透過電子顕微鏡により決定することができる。
【0221】
透明導電性酸化物のナノ粒子は、マトリックス材料中に配置されてよい。マトリックス材料は、無機又は有機マトリックス材料であってもよい。これは、多くの場合、誘電体マトリックス材料、例えば無機又は有機誘電体マトリックス材料である。或いは、電子輸送マトリックス材料であってもよい。通常、マトリックス材料は有機マトリックス材料である。典型的には、有機マトリックス材料は電子輸送有機マトリックス材料である。好適な例としては、これらに限定されないが、フラーレン又はフラーレン誘導体(例えば、C60又はフェニル-C61-酪酸メチルエステル(PCBM))、ペリレン又はその誘導体を含む有機電子輸送材料、又はポリ{[N,N0-ビス(2-オクチルドデシル)-ナフタレン-1,4,5,8-ビス(ジカルボキシイミド)-2,6-ジイル]-alt-5,50-(2,20-ビチオフェン)}(P(NDI2OD-T2))が挙げられる。好ましくは、有機マトリックス材料は、[6,6]-フェニル-C61-酪酸メチルエステル(PCBM)を含む。
【0222】
典型的には、電荷再結合層は導電性ポリマーをさらに含む。例えば、電荷再結合層は、p-ドープポリTPD、ポリトリアリールアミン(PTAA)、ポリチオフェンを含んでもよい。典型的には、導電性ポリマーは、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)又はその誘導体を含む。例えば、導電性ポリマーは、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)及びポリスチレンスルホネート(PEDOT:PSS)又はポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-テトラメタクリレート(PEDOT:TMA)を含んでもよい。好ましくは、導電性ポリマーは、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)及びポリスチレンスルホネート(PEDOT:PSS)を含む。
【0223】
電荷再結合層は、透明導電性酸化物のナノ粒子及び導電性ポリマーを含んでもよい。例えば、電荷再結合層は、インジウムスズ酸化物(ITO)ナノ粒子及びポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)及びポリスチレンスルホネート(PEDOT:PSS)を含んでもよい。透明導電性酸化物のナノ粒子は、電荷再結合層の導電性ポリマー中に均一に分配されていてよい。或いは、透明導電性酸化物のナノ粒子及び導電性ポリマーは、電荷再結合層中に2つの別個の副層を形成し得る。
【0224】
典型的には、電荷再結合層は、1000nm未満、例えば750nm未満、250nm未満、好ましくは100nm未満の厚さを有する。例えば、電荷再結合層は、5~500nm、10~250nm、20~150nm、好ましくは25~125nmの厚さを有していてもよい。一部の実施形態において、例えば電荷再結合層がトンネル接合である場合、電荷再結合層は、50nm未満、例えば30nm未満、例えば20nm以下、又は例えば10nm以下の厚さを有する。
【0225】
電荷再結合層はトンネル接合であってもよい。トンネル接合は、一般に、非常に薄い膜、例えば20nm以下、例えば10nm以下の厚さを有する膜である。膜は、典型的には、高度にドープされたp型材料の非常の薄い膜と接合している(interfaced)高度にドープされたn型材料の非常に薄い膜を含む。これは、電荷が接合を通り抜けることを可能にする。
【0226】
したがって、一実施形態では、電荷再結合層はトンネル接合である。典型的には、トンネル接合は、30nm未満、例えば20nm以下、又は10nm以下の厚さを有する。トンネル接合は、典型的には、第2の副層上に配置された第1の副層を含む、より典型的にはそれらからなり、第1及び第2の副層のうちの一方はn型材料であり、第1及び第2の副層のうちの他方はp型材料である。n型材料は、本明細書に記載のn型材料のいずれかを含んでもよい。n型材料は一般に、ドーパントでドープされている。p型材料は、本明細書に記載のp型材料のいずれかを含んでもよい。一般に、p型材料はドーパントでドープされている。トンネル接合中のn及びp型材料をドープするドーパントは、当技術分野で公知である。
【0227】
典型的には、電荷再結合層を光活性領域上に配置する工程は、透明導電性酸化物のナノ粒子の溶媒分散体を光活性領域上に配置する工程を含む。
【0228】
典型的には、溶媒は、下層、例えば光活性領域及び/又は電荷輸送層(存在する場合)に使用されるものに直交するように選択される。溶媒は、他の溶媒から堆積された材料の層を溶解しない場合、別の溶媒に直交する。例えば、溶媒は、極性溶媒、例えば極性プロトン性溶媒、例えばアルコールであってもよい。例えば、イソプロパノール(2-プロパノール)、メタノール又はエタノールであってもよい。極性非プロトン性溶媒、例えば、アセトン、アセトニトリル、メチルエチルケトンであってもよい。
【0229】
典型的には、透明導電性酸化物のナノ粒子の溶媒分散体は、イソプロパノール中のインジウムスズ酸化物ナノ粒子の分散体である。
【0230】
典型的には、インジウムスズ酸化物ナノ粒子は、溶媒分散体(溶媒プラスナノ粒子の総重量)の75重量%未満、例えば溶媒分散体の50重量%未満を構成する。例えば、インジウムスズ酸化物ナノ粒子は、溶媒分散体の0.001~50重量%の間、溶媒分散体の0.1~10重量%の間、溶媒分散体の0.5~5重量%の間、好ましくは溶媒分散体の約1重量%を構成してもよい。
【0231】
透明導電性酸化物のナノ粒子の溶媒分散体は、ロール・ツー・ロール(R2R)処理、ブレードコーティング、インクジェット印刷又はスピンコーティングにより光活性領域上に配置してもよい。典型的には、透明導電性酸化物のナノ粒子の溶媒分散体は、スピンコーティングにより光活性領域上に配置される。一実施形態において、透明導電性酸化物のナノ粒子の溶媒分散体は、光活性領域上に直接スピンコーティングされる。典型的には、スピンコーティングは、少なくとも1000RPM、例えば少なくとも2000RPM、少なくとも3000RPM、少なくとも4000RPM又は少なくとも5000RPM、例えば2000~10000RPMの間、4000~8000RPMの間、好ましくは約6000RPMの速度で実施される。典型的には、スピンコーティングは、少なくとも1秒、少なくとも5秒又は少なくとも10秒、例えば1秒~1分、10秒~30秒、好ましくは約20秒の時間の間、実施される。
【0232】
したがって、溶液堆積法により電荷再結合層を光活性領域上に配置することによって基材を製造する工程は、イソプロパノール中のインジウムスズ酸化物ナノ粒子の溶媒分散体を、約6000RPMの速度で、約20秒間、基材(光活性領域)上にスピンコーティングする工程を含んでもよい。
【0233】
電荷再結合層は、マトリックス材料をさらに含んでもよい。マトリックス材料は無機又は有機マトリックス材料であってもよい。これは、誘電体マトリックス材料、例えば無機又は有機誘電体マトリックス材料であってもよい。しかしながら、これは多くの場合、電子輸送マトリックス材料である。通常、マトリックス材料は、本明細書に記載の有機マトリックス材料である。したがって、ナノ粒子の溶媒分散体は、マトリックス材料、例えば本明細書に記載の有機マトリックス材料をさらに含んでもよい。マトリックス材料は、例えば、誘電体マトリックス材料であってもよく、又は電子輸送マトリックス材料であってもよい。マトリックス材料は有機であっても、又は無機であってもよいが、典型的には有機、例えば有機電子輸送マトリックス材料である。電荷再結合層を光活性領域上に配置する工程は、透明導電性酸化物のナノ粒子及びマトリックス材料、例えば有機マトリックス材料の溶媒分散体を光活性領域上に配置する工程を含んでもよい。
【0234】
マトリックス材料及びナノ粒子は、本発明の方法において、一緒に(例えば、上記のように)又は別々に配置してもよい。これらを別々に配置する場合、一つの選択肢として、先ず、例えばナノ粒子の溶媒分散体としてのナノ粒子を配置し、後続して、例えば溶媒中のマトリックス材料の溶液又は分散体としてのマトリックス材料を配置する。次いで、ナノ粒子がマトリックス材料中に分散されるように、マトリックス材料を配置されたナノ粒子に浸透させてもよい。
【0235】
電荷再結合層中に導電性ポリマーが存在する場合、電荷再結合層を光活性領域上に配置する工程は、上記の導電性ポリマーを光活性領域上に配置する工程、及び透明導電性酸化物のナノ粒子の溶媒分散体を光活性領域上に配置する工程を含んでもよい。好ましくは、導電性ポリマーは、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)及びポリスチレンスルホネート(PEDOT:PSS)を含む。典型的には、導電性ポリマーは溶媒中に分散される。例えば、導電性ポリマーは、アルコール、水、1種以上のアルコール及び水の混合物、又はアルコールの混合物中に分散されてもよく、例えばイソプロパノール(2-プロパノール)、エタノール(EtOH)、メタノール(MeOH)若しくは水又はこれらの混合物中に分散されてもよい。したがって、電荷再結合層を光活性領域上に配置する工程は、イソプロパノール(2-プロパノール)、エタノール(EtOH)、メタノール(MeOH)、水又はこれらの混合物中のポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)及びポリスチレンスルホネート(PEDOT:PSS)の分散体を光活性領域上に配置する工程を含んでもよい。
【0236】
導電性ポリマーは、ロール・ツー・ロール(R2R)処理、ブレードコーティング、インクジェット印刷又はスピンコーティングにより光活性領域上に配置してもよい。通常、導電性ポリマーはスピンコーティングにより光活性領域上に配置される。一実施形態において、導電性ポリマーを光活性領域上に直接スピンコーティングする。典型的には、スピンコーティングは、少なくとも1000RPM、例えば少なくとも2000RPM、少なくとも3000RPM、少なくとも4000RPM又は少なくとも5000RPM、例えば2000~10000RPMの間、4000~8000RPMの間、好ましくは約6000RPMの速度で実施される。典型的には、スピンコーティングは、少なくとも1秒、少なくとも5秒又は少なくとも10秒、例えば1秒~1分、10秒~30秒、好ましくは約20秒の時間の間、実施される。
【0237】
典型的には、電荷再結合層を光活性領域上に配置する工程は、2つの工程:
1)導電性ポリマーを光活性領域上に配置する工程、
2)透明導電性酸化物のナノ粒子の溶媒分散体を光活性領域上に配置する工程
を含む。
【0238】
典型的には、ナノ粒子の溶媒分散体と導電性ポリマーの両方は、スピンコーティングにより光活性領域上に配置される。ナノ粒子の溶媒分散体と(存在する場合)導電性ポリマーを光活性領域上にスピンコーティングする工程は、1つ以上のアニーリング工程と組み合わせてもよい。典型的には、アニーリングは、少なくとも20℃の温度、例えば20~150℃、例えば30~120℃、40~110℃、60~100℃、70~90℃の範囲の温度、好ましくは約80℃で実施される。典型的には、アニーリングは、1~120分、例えば2~60分、3~45分、4~30分、5~15分又は約10分の間、実施される。したがって、アニーリングは、20~150℃の温度で1~120分間、例えば60~100℃の温度で4~30分間、好ましくは約80℃で約10分間、実施してもよい。
【0239】
一実施形態において、電荷再結合層を光活性領域上に配置する工程は、以下の工程:
1.導電性ポリマーの溶媒分散体を光活性領域上に配置することにより導電性ポリマーを(任意選択でスピンコーティングにより)配置する工程(好ましくは、導電性ポリマーは、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)及びポリスチレンスルホネート(PEDOT:PSS)を含む)、
2.任意選択で、光活性領域上に配置された導電性ポリマーを、好ましくは約80℃で約10分間、アニーリングする工程、
3.透明導電性酸化物のナノ粒子の溶媒分散体を(任意選択でスピンコーティングにより)光活性領域上に配置する工程(好ましくは、ナノ粒子は、インジウムスズ酸化物(ITO)のナノ粒子である)、
4.任意選択で、光活性領域上の透明導電性酸化物のナノ粒子を、好ましくは約80℃で約10分間、アニーリングする工程
を含む。
【0240】
電荷再結合層を光活性領域上に配置する工程は、光活性領域上に、導電性ポリマーを配置する工程及び透明導電性酸化物のナノ粒子の溶媒分散体を配置する工程を同時に含んでもよい。例えば、導電性ポリマー及び透明導電性酸化物のナノ粒子は、同じ溶媒分散体中に存在してもよい。導電性ポリマー及び透明導電性酸化物のナノ粒子を含む分散体は、上記のスピンコーティングにより光活性領域上に配置させてもよい。
【0241】
光活性領域
基材中の光活性領域中の光活性材料は、当業者に公知の任意の好適な光活性材料を含んでもよい。例えば、光活性領域中の光活性材料は、シリコン、Cu(In,Ga)Se2(CIGS)、Cu2ZnSn(S,Se)4(CZTSSe)、CuInS(CIS)金属カルコゲニドナノ結晶、例えばPbS、PbSe又はPbS1-xSex、カルコゲニド薄膜、例えばCdTe若しくはCdTe1-xSex若しくはCdTe1-xSx、又は結晶A/M/X材料を含んでもよい。典型的には、基材中の光活性領域中の光活性材料は結晶A/M/X材料を含み、該結晶A/M/X材料は、本明細書に記載の式[A]a[M]b[X]cの化合物を含む。
【0242】
例えば、光活性領域中の光活性材料は式[A]a[M]b[X]cの化合物を含んでもよく、前記化合物は、本明細書に記載の式(IA)、(IB)、(IC)、(ID)、(IE)、(IF)、(IG)、(IH)、(IIIA)、(IIIB)、(IIIC)、(VIA)、(VIB)又は(VIC)の化合物である。典型的には、光活性領域中の光活性材料は、式[A]a[M]b[X]cの化合物を含み、前記化合物は、式(I)の化合物、例えば式(IA)、(IB)、(IC)、(ID)、(IE)、(IF)、(IG)又は(IH)の化合物である。
【0243】
例えば、光活性領域中の光活性材料は、式(IA):
AMX3 (IA)
(式中、A、M及びXは上記で定義したとおりである)
の化合物を含んでもよい。好ましい実施形態において、Aは、(CH3NH3)+、(CH3CH2NH3)+、(CH3CH2CH2NH3)+、(N(CH3)4)+、(H2N-C(H)=NH2)+、(H2N-C(CH3)=NH2)+、(H2N-C(NH2)=NH2)+、Cs+及びRb+から選択され、MはPb2+又はSn2+であり、Xは、Br-、Cl-及びI-から選択される。
【0244】
例えば、光活性領域中の光活性材料は、APbI3、APbBr3、APbCl3、ASnI3、ASnBr3及びASnCl3(式中、Aは、本明細書に記載されるカチオンである)から選択される式(IA)のペロブスカイト化合物を含んでもよい、又はこれから本質的になってもよい。
【0245】
例えば、光活性領域中の光活性材料は、CH3NH3PbI3、CH3NH3PbBr3、CH3NH3PbCl3、CH3NH3SnI3、CH3NH3SnBr3、CH3NH3SnCl3、CsPbI3、CsPbBr3、CsPbCl3、CsSnI3、CsSnBr3、CsSnCl3、(H2N-C(H)=NH2)PbI3、(H2N-C(H)=NH2)PbBr3、(H2N-C(H)=NH2)PbCl3、(H2N-C(H)=NH2)SnI3、(H2N-C(H)=NH2)SnBr3及び(H2N-C(H)=NH2)SnCl3から選択される式(IA)のペロブスカイト化合物、特にCH3NH3PbI3若しくはCH3NH3PbBr3、好ましくはCH3NH3PbI3を含んでもよい、又はこれから本質的になってもよい。
【0246】
例えば、光活性領域中の光活性材料は、式(ID):
[AI xAII 1-x]M[XI yXII 1-y]3 (ID)
(式中、AI及びAIIは、Aについて上記で定義したとおりであり、Mは上記で定義したとおりであり、XI及びXIIは、Xについて上記で定義したとおりであり、x及びyは両方とも0超1未満である)
の化合物を含んでもよい。好ましい実施形態において、AI及びAIIはそれぞれ、(CH3NH3)+、(CH3CH2NH3)+、(CH3CH2CH2NH3)+、(N(CH3)4)+、(H2N-C(H)=NH2)+、(H2N-C(CH3)=NH2)+、(H2N-C(NH2)=NH2)+、Cs+及びRb+から選択され、MはPb2+又はSn2+であり、XI及びXIIはそれぞれ、Br-、Cl-及びI-から選択される。
【0247】
例えば、光活性領域中の光活性材料は、[(CH3NH3)x(H2N-C(H)=NH2)1-x]Pb[BryI1-y]3、[(CH3NH3)x(H2N-C(H)=NH2)1-x]Pb[BryCl1-y]3、[(CH3NH3)x(H2N-C(H)=NH2)1-x]Pb[IyCl1-y]3、[(CH3NH3)xCs1-x]Pb[BryI1-y]3、[(CH3NH3)xCs1-x]Pb[BryCl1-y]3、[(CH3NH3)xCs1-x]Pb[IyCl1-y]3、[(H2N-C(H)=NH2)xCs1-x]Pb[BryI1-y]3、[(H2N-C(H)=NH2)xCs1-x]Pb[BryCl1-y]3、[(H2N-C(H)=NH2)xCs1-x]Pb[IyCl1-y]3、[(CH3NH3)x(H2N-C(H)=NH2)1-x]Sn[BryI1-y]3、[(CH3NH3)x(H2N-C(H)=NH2)1-x]Sn[BryCl1-y]3、[(CH3NH3)x(H2N-C(H)=NH2)1-x]Sn[IyCl1-y]3、[(CH3NH3)xCs1-x]Sn[BryI1-y]3、[(CH3NH3)xCs1-x]Sn[BryCl1-y]3、[(CH3NH3)xCs1-x]Sn[IyCl1-y]3、[(H2N-C(H)=NH2)xCs1-x]Sn[BryI1-y]3、[(H2N-C(H)=NH2)xCs1-x]Sn[BryCl1-y]3、及び[(H2N-C(H)=NH2)xCs1-x]Sn[IyCl1-y]3(式中、x及びyは両方とも0超1未満であり、例えばx及びyは両方とも0.01~0.99又は0.05~0.95又は0.1~0.9であってもよい)から選択される式(ID)のペロブスカイト化合物を含んでもよい、又はこれから本質的になってもよい。好ましくは、光活性領域中の光活性材料は、式[(H2N-C(H)=NH2)xCs1-x]Pb[BryI1-y]3(式中、x及びyは両方とも0.1~0.9である)のペロブスカイト化合物を含む。
【0248】
基材上に堆積された結晶A/M/X材料と光活性領域中の結晶A/M/X材料は、異なっていても、又は同じであってもよい。典型的には、基材上に堆積された結晶A/M/X材料と光活性領域中の結晶A/M/X材料は異なっている。例えば、光活性領域中の結晶A/M/X材料は、本明細書に記載の式(IA)、(IB)、(IC)、(ID)、(IE)、(IF)、(IG)、(IH)、(IIIA)、(IIIB)、(IIIC)、(VIA)、(VIB)若しくは(VIC)の化合物、好ましくは式(I)の化合物、例えば本明細書に記載の式(IA)、(IB)、(IC)、(ID)、(IE)、(IF)、(IG)若しくは(IH)の化合物を含んでもよく、又はこれから本質的になってもよく、基材上に堆積された結晶A/M/X材料は、異なる本明細書に記載の式(IA)、(IB)、(IC)、(ID)、(IE)、(IF)、(IG)、(IH)、(IIIA)、(IIIB)、(IIIC)、(VIA)、(VIB)若しくは(VIC)の化合物、好ましくは式(I)の化合物、例えば本明細書に記載の式(IA)、(IB)、(IC)、(ID)、(IE)、(IF)、(IG)若しくは(IH)の化合物を含んでもよい、又はこれから本質的になってもよい。
【0249】
例えば、光活性領域中の結晶A/M/X材料は、式(IA)の化合物を含んでもよく、又はこれから本質的になってもよく、基材上に堆積された結晶A/M/X材料は、本明細書に記載の式(IB)、(IC)、(ID)、(IE)、(IF)、(IG)、(IH)、(IIIA)、(IIIB)、(IIIC)、(VIA)、(VIB)若しくは(VIC)の化合物、例えば本明細書に記載の式(IB)、(IC)、(ID)、(IE)、(IF)、(IG)若しくは(IH)の化合物、好ましくは本明細書に記載の式(ID)、(IE)若しくは(IF)の化合物を含んでもよい、又はこれから本質的になってもよい。
【0250】
例えば、光活性領域中の結晶A/M/X材料は、式APbI3、APbBr3、APbCl3、ASnI3、ASnBr3若しくはASnCl3(式中、Aは本明細書に記載のカチオンである)の化合物、好ましくはAPbI3、より好ましくはCH3NH3PbI3を含んでもよく、又はこれから本質的になってもよく、基材上に堆積された結晶A/M/X材料は、式CH3NH3[PbzSn1-z]Cl3、CH3NH3[PbzSn1-z]Br3、CH3NH3[PbzSn1-z]I3、Cs[PbzSn1-z]Cl3、Cs[PbzSn1-z]Br3、Cs[PbzSn1-z]I3、(H2N-C(H)=NH2)[PbzSn1-z]Cl3、(H2N-C(H)=NH2)[PbzSn1-z]Br3若しくは(H2N-C(H)=NH2)[PbzSn1-z]I3(式中、zは0超1未満であり、例えばzは0.01~0.99又は0.05~0.95又は0.1~0.9であってもよい)の化合物、又は式[(CH3NH3)x(H2N-C(H)=NH2)1-x][PbzSn1-z]Cl3、[(CH3NH3)x(H2N-C(H)=NH2)1-x][PbzSn1-z]Br3、[(CH3NH3)x(H2N-C(H)=NH2)1-x][PbzSn1-z]I3、[(CH3NH3)xCs1-x][PbzSn1-z]Cl3、[(CH3NH3)xCs1-x][PbzSn1-z]Br3、[(CH3NH3)xCs1-x][PbzSn1-z]I3、[(H2N-C(H)=NH2)xCs1-x][PbzSn1-z]Cl3、[(H2N-C(H)=NH2)xCs1-x][PbzSn1-z]Br3、若しくは[(H2N-C(H)=NH2)xCs1-x][PbzSn1-z]I3(式中、x及びzは両方とも0超1未満であり、例えばx及びzはそれぞれ、0.01~0.99又は0.05~0.95又は0.1~0.9であってもよい)の化合物、好ましくは式CH3NH3[PbzSn1-z]I3若しくは[(CH3NH3)x(H2N-C(H)=NH2)1-x][PbzSn1-z]I3(式中、x、y及びzはそれぞれ0.05~0.95又は0.1~0.9である)の化合物を含んでもよい、或いはこれから本質的になってもよい。
【0251】
光活性領域中の光活性材料は、式:
Csz(H2N-C(H)=NH2)(1-z)[M][X]3
(式中、[M]は上記で定義したとおりであり、例えば、Pb、Sn又はPb及びSnの混合物を含んでもよく、[X]は1つ以上の異なるハロゲン化物アニオン、例えば2つ以上の異なるハロゲン化物アニオンであり、zは0.01~0.99である)
のペロブスカイト化合物を含んでもよい。例えば、ペロブスカイトは、式Csz(H2N-C(H)=NH2)(1-z)[PbxSn1-x]I3、Csz(H2N-C(H)=NH2)(1-z)[PbxSn1-x]Br3又はCsz(H2N-C(H)=NH2)(1-z)[PbxSn1-x]IyBr3(1-y)(式中、zは上記で定義したとおりであり、xは0~1であり(例えば0.5であってもよく)、yは0.01~0.99である)の化合物であってもよい。
【0252】
光活性領域中の光活性材料は、式:
Csz(H2N-C(H)=NH2)(1-z)[M]X3yX'3(1-y)
(式中、[M]は上記で定義したとおりであり、例えば、Pb、Sn又はPb及びSnの混合物を含んでもよく、Xは、I-、Br-、Cl-及びF-から選択される第1のハロゲン化物アニオンであり、X'は第1のハロゲン化物アニオンとは異なり、且つ、I-、Br-、Cl-及びF-から選択される第2のハロゲン化物アニオンであり、zは0.01~0.99であり、yは0.01~0.99である)
の化合物を含んでもよい。例えば、ペロブスカイトは、式Csz(H2N-C(H)=NH2)(1-z)PbBr3yI3(1-y)の化合物であってもよい。
【0253】
光活性領域中の結晶A/M/X材料は、式(ID)の化合物を含んでもよく、又はこれから本質的になってもよく、基材上に堆積された結晶A/M/X材料は、本明細書に記載の式(IA)、(IB)、(IC)、(IE)、(IF)、(IG)、(IH)、(IIIA)、(IIIB)、(IIIC)、(VIA)、(VIB)若しくは(VIC)の化合物、例えば本明細書に記載の式(IA)、(IB)、(IC)、(IE)、(IF)、(IG)若しくは(IH)の化合物、好ましくは本明細書に記載の式(IA)、(IE)若しくは(IF)の化合物を含んでもよい、又はこれから本質的になってもよい。
【0254】
例えば、光活性領域中の結晶A/M/X材料は、式[(CH3NH3)x(H2N-C(H)=NH2)1-x]Pb[BryI1-y]3、[(CH3NH3)x(H2N-C(H)=NH2)1-x]Pb[BryCl1-y]3、[(CH3NH3)x(H2N-C(H)=NH2)1-x]Pb[IyCl1-y]3、[(CH3NH3)xCs1-x]Pb[BryI1-y]3、[(CH3NH3)xCs1-x]Pb[BryCl1-y]3、[(CH3NH3)xCs1-x]Pb[IyCl1-y]3、[(H2N-C(H)=NH2)xCs1-x]Pb[BryI1-y]3、[(H2N-C(H)=NH2)xCs1-x]Pb[BryCl1-y]3、[(H2N-C(H)=NH2)xCs1-x]Pb[IyCl1-y]3、[(CH3NH3)x(H2N-C(H)=NH2)1-x]Sn[BryI1-y]3、[(CH3NH3)x(H2N-C(H)=NH2)1-x]Sn[BryCl1-y]3、[(CH3NH3)x(H2N-C(H)=NH2)1-x]Sn[IyCl1-y]3、[(CH3NH3)xCs1-x]Sn[BryI1-y]3、[(CH3NH3)xCs1-x]Sn[BryCl1-y]3、[(CH3NH3)xCs1-x]Sn[IyCl1-y]3、[(H2N-C(H)=NH2)xCs1-x]Sn[BryI1-y]3、[(H2N-C(H)=NH2)xCs1-x]Sn[BryCl1-y]3、若しくは[(H2N-C(H)=NH2)xCs1-x]Sn[IyCl1-y]3(式中、x及びyは両方とも0超1未満であり、例えばx及びyは両方とも0.01~0.99又は0.05~0.95又は0.1~0.9であってもよい)の化合物、好ましくは式[(CH3NH3)xCs1-x]Pb[BryI1-y]3(式中、x及びyは0.05~0.95又は0.1~0.9である)の化合物を含んでもよく、又はこれから本質的になってもよく、基材上に堆積された結晶A/M/X材料は、式APbI3、APbBr3、APbCl3、ASnI3、ASnBr3若しくはASnCl3(式中、Aは本明細書に記載のカチオンである)の化合物、好ましくはAPbI3、より好ましくはCH3NH3PbI3;又はCH3NH3[PbzSn1-z]Cl3、CH3NH3[PbzSn1-z]Br3、CH3NH3[PbzSn1-z]I3、Cs[PbzSn1-z]Cl3、Cs[PbzSn1-z]Br3、Cs[PbzSn1-z]I3、(H2N-C(H)=NH2)[PbzSn1-z]Cl3、(H2N-C(H)=NH2)[PbzSn1-z]Br3及び(H2N-C(H)=NH2)[PbzSn1-z]I3(式中、zは0超1未満であり、例えばzは0.01~0.99又は0.05~0.95又は0.1~0.9であってもよい)の化合物、好ましくはCH3NH3[PbzSn1-z]I3(式中、zは0.05~0.95又は0.1~0.9である)を含んでもよく、或いはこれから本質的になってもよい。
【0255】
或いは、基材上に堆積された結晶A/M/X材料及び光活性領域中の結晶A/M/X材料は両方とも、同じ式(本明細書に記載の(IA)、(IB)、(IC)、(ID)、(IE)、(IF)、(IG)、(IH)、(IIIA)、(IIIB)、(IIIC)、(VIA)、(VIB)又は(VIC))の化合物であってもよいが、異なる化学組成を有していてもよい(例えば、一方はCH3NH3PbI3であってもよく、他方はCH3NH3PbBr3であってもよい、又は一方はCH3NH3PbI3であってもよく、他方はCH3NH3SnI3であってもよい)。
【0256】
典型的には、光活性領域は、1つ以上の電荷輸送層、例えば2つの電荷輸送層を含む。電荷輸送層は、本明細書に記載の電子輸送(n型)材料の層、又は本明細書に記載の正孔輸送(p型)材料の層であってもよい。典型的には、光活性領域は2つの電荷輸送層を含み、電荷輸送層の一方は本明細書に記載の電子輸送(n型)材料の層であり、他方の電荷輸送層は本明細書に記載の正孔輸送(p型)材料の層である。
【0257】
好ましくは、光活性領域は電子輸送(n型)材料の層を含み、前記電子輸送材料はPCBMを含み、他方の電荷輸送層は正孔輸送(p型)材料の層であり、前記正孔輸送材料はスピロ-OMeTAD又はスピロ(TFSI)2を含む。
【0258】
したがって、光活性領域は、以下の順序で以下の層を含んでもよい:
・電荷輸送材料の層、好ましくは正孔輸送(p型)材料の層(より好ましくは、前記正孔輸送材料はスピロ-OMeTADを含む)、
・本明細書に記載の光活性材料の層、
・電荷輸送材料の層、好ましくは電子輸送(n型)材料の層(より好ましくは、前記電子輸送材料はPCBMを含む)。
【0259】
電子輸送(n型)材料の層は、例えば、有機n型材料の層及び無機n型材料の層を含んでもよい。多くの場合、有機n型材料(本明細書中でさらに定義されるとおりであってもよい、例えばPCBMであってもよい)の層は、無機n型材料(同様に本明細書中でさらに定義されるとおりであってもよく、例えばSnO2であってもよい)の層上に配置される。電子輸送(n型)材料の層は、典型的には、電極と接触した場合、例えば透明導電性酸化物(例えば、フッ素をドープした酸化スズ(FTO)又はインジウムをドープした酸化スズ(ITO)等)を含む第1の電極と接触した場合、この構造を有する。典型的には、電子輸送材料(SnO2であることが多い)の層の無機n型層を、透明導電性酸化物、例えばFTOと接触させる。実際、本発明者らは、そのような無機n型層が、有機n型層と透明導電性酸化物との電子的接触を改善することを発見した。同様に、本発明者らは、特に光活性材料が本明細書で定義される結晶A/M/X材料である場合、有機n型層(例えば、PCBM)が、無機n型層と比較して、光活性材料との電子的接触をより安定性にすることを発見した。また、本発明者らは、二重n層を有することによりn層中のピンホールの阻害が促進されることも発見した。したがって、本発明は、典型的には、透明導電性酸化物を含む電極及び光活性材料の間に2つのn型層を用いる。本発明者らは、特に、SnO2がPCBMとFTOとの電子的接触を改善すること、及びPCBMがペロブスカイト光活性材料との電子的接触をより安定性にするため、二重SnO2/PCBM n型層がSnO2単独と比較して改善されることを発見した。
【0260】
典型的には、光活性材料の層及び任意選択で、電荷輸送材料の層を含む光活性領域は、10~5000nm、例えば50~3000nm、100~2000nm、200~1500nm、好ましくは250~1250nmの合計厚さを有する。典型的には、任意の電荷輸送材料の層が存在する場合、それらは200nm未満、例えば150nm未満又は100nm未満、1~100nm、典型的には10~75nm、典型的には30~60nmの個々の厚さを有する。
【0261】
光活性領域中の光活性材料の層は、本発明の方法において使用される非プロトン性溶媒/有機アミン溶媒系を使用して製造することもできる。例えば、本発明の方法は、結晶A/M/X材料の層を配置することにより基材を製造する工程をさらに含んでもよく、結晶A/M/X材料は、本明細書に記載の式[A]a[M]b[X]cの化合物を含み、本方法は、膜形成溶液を、基材層、例えば基材中のn型又はp型層上に配置することにより結晶A/M/X材料の層を形成する工程を含み、膜形成溶液は、
(a)1つ以上のMカチオン、及び
(b)溶媒
を含み、該溶媒は、
(i)非プロトン性溶媒、及び
(ii)有機アミン
を含む。
【0262】
或いは、光活性領域中の光活性材料の層は、当業者に公知の他の方法に従って製造してもよい。例えば、本発明の方法は、結晶A/M/X材料の層を配置することにより基材を製造する工程をさらに含んでもよく、該結晶A/M/X材料は、本明細書に記載の式[A]a[M]b[X]cの化合物を含み、本方法は、従来の高沸点溶媒堆積法により、例えばDMF、DMSO又はこれらの混合物中のA/M/X前駆体化合物の溶液を(例えばスピンコーティングにより)基材前駆体上に配置することにより、結晶A/M/X材料の層を形成する工程を含む。
【0263】
三重接合デバイス
一実施形態において、基材は、本明細書に記載の2つの別々の光活性領域を含み、各光活性領域は光活性材料を含む。2つの別々の光活性領域によって、互いに直接物理的に接触しない2つの光活性領域を含む基材が意味される。基材が2つの別々の光活性領域を含む場合、基材上に形成された結晶A/M/X材料の層は、第3の光活性領域の一部を形成する。したがって、本発明の方法に従って製造された多接合デバイスは、3つの光活性領域を含んでもよい。したがって、本発明の方法に従って製造された多接合デバイスは、三重接合デバイスであってもよい。典型的には、多接合デバイス中の光活性領域の少なくとも2つは、本発明の方法を基準にして、本明細書中で定義される膜形成溶液を使用して形成される。
【0264】
この実施形態において、本明細書に記載のさらなる電荷再結合層は、基材中の2つの光活性領域間に配置されてもよい。したがって、基材は、さらなる電荷再結合層によって分けられる2つの光活性領域を含んでもよい。例えば、基材は、以下の順序で以下の層を含んでもよい:
・任意選択の電荷輸送層、好ましくは電子輸送(n型)材料の層、
・電荷再結合層、
・光活性領域、
・電荷再結合層、
・光活性領域。
【0265】
各光活性領域は、上記のとおりであってもよい。例えば、各光活性領域は、本明細書に記載の1つ以上の電荷輸送層、例えば2つの電荷輸送層を含んでもよい。電荷輸送層は、本明細書に記載の電子輸送(n型)材料の層、又は本明細書に記載の正孔輸送(p型)材料の層であってもよい。典型的には、各光活性領域は、2つの電荷輸送層を含み、電荷輸送層の一方は、本明細書に記載の電子輸送(n型)材料の層であり、他方の電荷輸送層は、本明細書に記載の正孔輸送(p型)材料の層である。これらの層は一般に、本明細書に記載の光活性材料の層のいずれかの側面(それぞれ上及び下)に配置される。
【0266】
好ましくは、各光活性領域は、電子輸送(n型)材料の層を含み、前記電子輸送材料はPCBMを含み、他方の電荷輸送層は、正孔輸送(p型)材料の層であり、前記正孔輸送材料はスピロ-OMeTADを含む。
【0267】
光活性領域の1つの中の電子輸送材料の層は、有機n型材料の層及び無機n型材料の層を含んでもよい。多くの場合、有機n型材料(例えば、PCBM)の層は、無機n型材料(例えば、SnO2)の層上に配置される。電子輸送(n型)材料の層は、典型的には、電極と接触する場合、例えば透明導電性酸化物(例えば、フッ素をドープした酸化スズ(FTO)等)を含む第1の電極と接触する場合、この構造を有する。
【0268】
したがって、各光活性領域は、以下の順序で以下の層を含んでもよい:
・電荷輸送材料の層、好ましくは正孔輸送(p型)材料の層(より好ましくは、前記正孔輸送材料はスピロ-OMeTADを含む)、
・本明細書に記載の光活性材料の層、
・電荷輸送材料の層、好ましくは電子輸送(n型)材料の層(より好ましくは、前記電子輸送材料はPCBMを含むか、又はPCBM及びSnO2を含む)。
【0269】
各光活性領域中の各光活性材料は、結晶A/M/X材料を含んでもよく、結晶A/M/X材料は、本明細書に記載の式[A]a[M]b[X]cの化合物を含む。例えば、光活性領域中の各光活性材料は、式[A]a[M]b[X]cの化合物を含んでもよく、前記化合物は、本明細書に記載の式(IA)、(IB)、(IC)、(ID)、(IE)、(IF)、(IG)、(IH)、(IIIA)、(IIIB)、(IIIC)、(VIA)、(VIB)又は(VIC)の化合物である。典型的には、光活性領域中の各光活性材料は、式[A]a[M]b[X]cの化合物を含み、前記化合物は、式(I)の化合物、例えば式(IA)、(IB)、(IC)、(ID)、(IE)、(IF)、(IG)又は(IH)の化合物である。
【0270】
2つの光活性領域中の結晶A/M/X材料は、本明細書に記載されるように、同じ結晶A/M/X材料であってもよく、又は異なる結晶A/M/X材料であってもよい。好ましくは、基材上に堆積された結晶A/M/X材料及び2つの光活性領域中の結晶A/M/X材料から選択される結晶A/M/X材料の少なくとも2つは異なる。一実施形態において、基材上に堆積された結晶A/M/X材料及び2つの光活性領域中の結晶A/M/X材料から選択される3つ全ての結晶A/M/X材料は異なる。
【0271】
例えば、一方の光活性領域中の光活性材料の層は式IDの化合物を含んでもよく、他方の光活性領域中の光活性材料の層は式IAの化合物を含んでもよく、基材上に堆積された結晶A/M/X材料は式IEの化合物を含んでもよい。
【0272】
好ましくは、光活性領域の1つの中の結晶A/M/X材料の層の少なくとも1つは、本発明の方法において使用されるような非プロトン性溶媒/有機アミン溶媒系を使用して堆積される。一実施形態において、各光活性領域中の光活性材料の各層は、本発明の方法において使用されるような非プロトン性溶媒/有機アミン溶媒系を使用して堆積され得る。
【0273】
或いは、光活性領域の1つの中の光活性材料の層の1つは、当業者に公知の他の方法に従って製造される。例えば、光活性材料の層は、従来の高沸点溶媒堆積法により、例えばDMF、DMSO又はこれらの混合物中のA/M/X前駆体化合物の溶液をスピンコーティングすることにより堆積してもよい。
【0274】
電極
基材は、典型的には、第1の電極を含む。第1の電極は、金属(例えば、銀、金、アルミニウム若しくはタングステン)又は透明導電性酸化物(例えば、フッ素をドープした酸化スズ(FTO)若しくはインジウムをドープした酸化スズ(ITO))を含んでもよい。典型的には、第1の電極は透明導電性酸化物を含む。第1の電極の層の厚さは、典型的には、5nm~100nmである。
【0275】
基材は、典型的には、
i)第1の電極(好ましくは第1の電極は透明導電性酸化物を含む)、
ii)光活性領域(前記光活性領域は、好ましくは結晶A/M/X材料を含み、結晶A/M/X材料は、本明細書に記載の式[A]a[M]b[X]cの化合物を含む)、
iii)光活性領域上に配置された本明細書に記載の電荷再結合層、及び
iv)任意選択で、電荷再結合層上に配置された本明細書に記載の電荷輸送材料の層
を含む。
【0276】
三重接合デバイスを製造するために、基材は、典型的には、
i)第1の電極(好ましくは第1の電極は透明導電性酸化物を含む)、
ii)光活性領域(前記光活性領域は、好ましくは結晶A/M/X材料を含み、結晶A/M/X材料は、本明細書に記載の式[A]a[M]b[X]cの化合物を含む)、
iii)光活性領域上に配置された本明細書に記載の電荷再結合層、
iv)光活性領域(前記光活性領域は、好ましくは結晶A/M/X材料を含み、結晶A/M/X材料は、本明細書に記載の式[A]a[M]b[X]cの化合物を含む)、
v)光活性領域上に配置された本明細書に記載の電荷再結合層、及び
vi)任意選択で、電荷再結合層上に配置された本明細書に記載の電荷輸送材料の層
を含む。
【0277】
第1の電極は、透明材料の層、例えばガラスの層上に堆積され得る。透明材料の層を反射防止コーティングで処理してもよい。典型的には、反射防止コーティングは、フッ化マグネシウム(MgF2)を含む。
【0278】
本方法は、第2の電極を基材上に堆積された結晶A/M/X材料の層上に堆積させる工程をさらに含んでもよい。
【0279】
第2の電極は、第1の電極について上記で定義されるものでよい。典型的には、第2の電極は、金属、例えば元素金属を含む、又はこれから本質的になる。第2の電極材料が含み得る又は本質的に構成し得る金属の例としては、銀、金、銅、アルミニウム、白金、パラジウム又はタングステンが挙げられる。第2の電極は、真空蒸発により配置され得る。第2の電極材料の層の厚さは、典型的には、1~250nm、好ましくは5nm~100nmである。
【0280】
好ましくは、本方法は、本明細書に記載の電荷輸送材料の層を、基材上に堆積された結晶A/M/X材料の層上に配置する工程、及び第2の電極を電荷輸送材料上に配置する工程を含む。電荷輸送材料の層は、本明細書に記載の電子輸送(n型)材料の層、又は本明細書に記載の正孔輸送(p型)材料の層であってもよい。典型的には、結晶A/M/X材料の層上に配置される電荷輸送材料の層は、本明細書に記載の正孔輸送(p型)材料の層であり、好ましくは前記正孔輸送材料はスピロ-OMeTADを含む。
【0281】
したがって、本発明の方法により製造される多接合デバイスは、以下の順序で以下の層を含んでもよい:
・第1の電極、
・光活性領域、
・電荷再結合層、
・任意選択の電荷輸送材料の層、好ましくは電子輸送(n型)材料の層(好ましくは前記電子輸送材料はPCBMを含む)、
・本明細書に記載の結晶A/M/X材料の層、
・任意選択の電荷輸送材料の層、好ましくは正孔輸送(p型)材料の層(好ましくは、前記正孔輸送材料はスピロ-OMeTADを含む)、
・第2の電極。
【0282】
本発明の方法により製造される三重接合デバイスの場合では、三重接合デバイスは、以下の順序で以下の層を含んでもよい:
・第1の電極、
・光活性領域、
・電荷再結合層、
・光活性領域、
・電荷再結合層、
・任意選択の電荷輸送材料の層、好ましくは電子輸送(n型)材料の層(好ましくは、前記電子輸送材料はPCBMを含む)、
・本明細書に記載の結晶A/M/X材料の層、
・任意選択の電荷輸送材料の層、好ましくは正孔輸送(p型)材料の層(好ましくは、前記正孔輸送材料はスピロ-OMeTADを含む)、
・第2の電極。
【0283】
一実施形態において、多接合デバイス中の光活性領域の少なくとも2つは、本明細書に記載の膜形成溶液を使用して形成される。この実施形態では、本発明の方法は、膜形成溶液を基材上に配置することにより結晶A/M/X材料の層を形成する工程、ここで基材は、光活性材料を含む1つの光活性領域、及び溶液堆積法により光活性領域上に配置された電荷再結合層を含む、次いでさらなる工程、
・任意選択で、本明細書に記載の電荷輸送材料の層を、基材上に堆積された結晶A/M/X材料の層上に形成する工程(好ましくは、電荷輸送材料は正孔輸送(p型)材料を含む)、
・本明細書に記載のさらなる電荷再結合層を形成する工程、
・本明細書に記載の膜形成溶液を使用して結晶A/M/X材料の層を堆積させることによりさらなる光活性領域を形成する工程、及び任意選択で、本明細書に記載の1つ以上の電荷輸送層を形成する工程、
・第2の電極を形成する工程
を含んでもよい。
【0284】
したがって、そのようなデバイスは、以下の順序で以下の層を含んでもよい:
・第1の電極、
・光活性領域、
・電荷再結合層、
・任意選択の電荷輸送材料の層、好ましくは電子輸送(n型)材料の層(好ましくは、前記電子輸送材料はPCBMを含む)、
・本明細書に記載の結晶A/M/X材料の層、
・任意選択の電荷輸送材料の層、好ましくは正孔輸送(p型)材料の層(好ましくは、前記正孔輸送材料はスピロ-OMeTADを含む)、
・電荷再結合層、
・任意選択の電荷輸送材料の層、好ましくは電子輸送(n型)材料の層(好ましくは、前記電子輸送材料はPCBMを含む)、
・本明細書に記載の結晶A/M/X材料の層、
・任意選択の電荷輸送材料の層、好ましくは正孔輸送(p型)材料の層(好ましくは、前記正孔輸送材料はスピロ-OMeTADを含む)、
・第2の電極。
【0285】
多接合デバイス
本発明はまた、本発明の方法により得ることができる又は得られる多接合デバイスにも関する。多接合デバイスは、多接合デバイスの製造方法に関連する上記の特徴のいずれかを含み得る。例えば、多接合デバイスは、上記の層の順序及び材料の組み合わせのいずれかを含み得る。また、結晶A/M/X材料(複数可)はそれぞれ、本明細書のいずれかにさらに定義されるとおりであってもよい。
【0286】
一実施形態において、本発明は、
(a)少なくとも2つの光活性領域であって、光活性領域の少なくとも1つが結晶A/M/X材料の層を含み、結晶A/M/X材料が式[A]a[M]b[X]c(式中、[A]は1つ以上のAカチオンを含み、[M]は金属又は半金属のカチオンである1つ以上のMカチオンを含み、[X]は1つ以上のXアニオンを含み、aは1~6の数であり、bは1~6の数であり、cは1~18の数である)の化合物を含む、少なくとも2つの光活性領域、及び
(b)透明導電性酸化物のナノ粒子を含む電荷再結合層
を含む多接合デバイスにも関する。
【0287】
透明導電性酸化物のナノ粒子は、本明細書に記載の透明導電性酸化物の任意のナノ粒子であってもよい。例えば、透明導電性酸化物のナノ粒子は、インジウムスズ酸化物(ITO)ナノ粒子、好ましくは100nm未満のサイズを有するITOナノ粒子であってもよい。
【0288】
本発明はまた、
(a)少なくとも2つの光活性領域であって、光活性領域の少なくとも1つが結晶A/M/X材料の層を含み、結晶A/M/X材料が式[A]a[M]b[X]c(式中、[A]は1つ以上のAカチオンを含み、[M]は金属又は半金属のカチオンである1つ以上のMカチオンを含み、[X]は1つ以上のXアニオンを含み、aは1~6の数であり、bは1~6の数であり、cは1~18の数である)の化合物を含む、少なくとも2つの光活性領域、及び
(b)導電性ポリマーを含む電荷再結合層
を含む多接合デバイスにも関する。
【0289】
上記の多接合デバイスにおいて、[A]、[M]及び[X]は全て、本明細書に記載されるとおりであってもよい。各A/M/X材料は、本明細書中でさらに定義されるとおりであってもよい。また、各光活性領域は、本明細書中でさらに定義されるとおりであってもよく、例えば、それぞれ、n型材料の層及びp型材料の層をさらに含んでもよく、n型及びp型材料は、本明細書中でさらに定義されるとおりであってもよい。
【0290】
導電性ポリマーは、本明細書に記載の任意の導電性ポリマーであってもよい。例えば、導電性ポリマーは、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)及びポリスチレンスルホネート(PEDOT:PSS)を含んでもよい。
【0291】
上記の多接合デバイスにおいて、電荷再結合層は、典型的には、透明導電性酸化物のナノ粒子及び導電性ポリマーを含み、これらは両方とも、本明細書のいずれかにさらに定義されるとおりであってもよい。したがって、電荷再結合層は、(i)インジウムスズ酸化物(ITO)のナノ粒子並びに(ii)ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)及びポリスチレンスルホネートを含むポリマーを含んでもよい。
【0292】
上記の多接合デバイスにおいて、光活性領域の2つは、本明細書に記載の結晶A/M/X材料の層を含んでもよい。一実施形態において、上記の多接合デバイスは、少なくとも3つの光活性領域を含む。好ましくは、各光活性領域は、本明細書に記載の結晶A/M/X材料の層を含む。各結晶A/M/X材料は、本明細書に記載の式(IA)、(IB)、(IC)、(ID)、(IE)、(IF)、(IG)、(IH)、(IIIA)、(IIIB)、(IIIC)、(VIA)、(VIB)若しくは(VIC)の化合物、好ましくは式(I)の化合物、例えば本明細書に記載の式(IA)、(IB)、(IC)、(ID)、(IE)、(IF)、(IG)若しくは(IH)の化合物を含んでもよい、又はこれから本質的になってもよい。各光活性領域は、本明細書中でさらに定義されるようなn型及びp型層をさらに含んでもよい。
【0293】
本発明はまた、
(a)少なくとも3つの光活性領域であって、それぞれの光活性領域が結晶A/M/X材料の層を含み、結晶A/M/X材料が式[A]a[M]b[X]c(式中、[A]は1つ以上のAカチオンを含み、[M]は金属又は半金属のカチオンである1つ以上のMカチオンを含み、[X]は1つ以上のXアニオンを含み、aは1~6の数であり、bは1~6の数であり、cは1~18の数である)の化合物を含む、少なくとも3つの光活性領域、及び
(b)光活性領域間に配置された少なくとも1つの電荷再結合層
を含む多接合デバイスにも関する。
【0294】
3つの光活性領域を含む多接合デバイスにおいて、[A]、[M]及び[X]は全て、本明細書中に記載するとおりであってもよい。
【0295】
典型的には、少なくとも2つの電荷再結合層は、光活性領域間に配置される。例えば、多接合デバイスは、以下の順序で以下の層を含んでもよい:
・光活性領域、
・電荷再結合層、
・光活性領域、
・電荷再結合層、
・光活性領域。
【0296】
典型的には、電荷再結合層の少なくとも1つは、導電性ポリマー又は透明導電性酸化物のナノ粒子を含む。例えば、各電荷再結合層は導電性ポリマー又は透明導電性酸化物のナノ粒子を含む。
【0297】
典型的には、電荷再結合層の少なくとも1つは、透明導電性酸化物のナノ粒子及び導電性ポリマーを含む。例えば、各電荷再結合層は、透明導電性酸化物のナノ粒子及び導電性ポリマーを含んでもよい。透明導電性酸化物のナノ粒子及び導電性ポリマーは、本明細書に記載されるとおりであってもよく、例えば透明導電性酸化物のナノ粒子は、インジウムスズ酸化物(ITO)ナノ粒子、好ましくは100nm未満のサイズを有するITOナノ粒子であってもよく、導電性ポリマーは、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)及びポリスチレンスルホネート(PEDOT:PSS)を含んでもよい。したがって、電荷再結合層(複数可)の各々は、(i)インジウムスズ酸化物(ITO)のナノ粒子並びに(ii)ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)及びポリスチレンスルホネートを含むポリマーを含んでもよい。
【0298】
上記の多接合デバイスにおいて、結晶A/M/X材料の少なくとも2つは互いに異なっていてもよい。一実施形態において、3つ以上の結晶A/M/X材料は互い異なっている。例えば、3つの結晶A/M/X材料が存在する多接合デバイスにおいて、3つ全ての結晶A/M/X材料は互いに異なっていてもよい。各光活性領域中の結晶A/M/X材料は本明細書に記載の式(IA)、(IB)、(IC)、(ID)、(IE)、(IF)、(IG)、(IH)、(IIIA)、(IIIB)、(IIIC)、(VIA)、(VIB)若しくは(VIC)の化合物、好ましくは式(I)の化合物、例えば本明細書に記載の式(IA)、(IB)、(IC)、(ID)、(IE)、(IF)、(IG)若しくは(IH)の化合物を含んでもよい、又はこれから本質的になってもよい。各光活性領域は、少なくとも1つ、好ましくは2つの電荷輸送層、例えば本明細書中でさらに定義されるようなn型層及びp型層をさらに含んでもよい。
【0299】
上記の多接合デバイスは、本明細書に記載の第1の電極及び第2の電極をさらに含んでもよく、光活性領域及び電荷再結合層(複数可)は、第1の電極及び第2の電極の間に配置される。好ましくは、第1の電極は透明導電性酸化物を含み、第2の電極は元素金属を含む。
【0300】
典型的には、本明細書に記載の多接合デバイスは、光電子(オプトエレクトロニクス)デバイス、光起電力デバイス、太陽電池、光検出器、フォトダイオード、光センサー、発色デバイス、トランジスタ、感光トランジスタ、フォトトランジスタ、固体三極管、電池、電池電極、コンデンサ、超コンデンサ、発光デバイス、発光ダイオード及びレーザーからなる群から選択される。例えば、多接合デバイスは光電子デバイスであってもよい。光電子デバイスの例としては、光起電力デバイス、フォトダイオード(太陽電池を含む)、フォトトランジスタ、光電子増倍器、フォトレジスター及び発光デバイスが挙げられる。好ましくは、多接合デバイスは、光起電力デバイス又は発光デバイスである。
いくつかの実施形態を以下に示す。
項1
結晶A/M/X材料の層を含む多接合デバイスを製造する方法であって、結晶A/M/X材料が式[A] a [M] b [X] c
(式中、
[A]は、1つ以上のAカチオンを含み、
[M]は、金属又は半金属のカチオンである1つ以上のMカチオンを含み、
[X]は、1つ以上のXアニオンを含み、
aは1~6の数であり、
bは1~6の数であり、
cは1~18の数である)
の化合物を含み、前記方法が、膜形成溶液を基材上に配置することにより前記結晶A/M/X材料の層を形成する工程を含み、ここで、前記膜形成溶液は、
(a)1つ以上のMカチオン、及び
(b)溶媒
を含み、前記溶媒は、
(i)非プロトン性溶媒、及び
(ii)有機アミン
を含み、前記基材は、
光活性材料を含む光活性領域、及び
溶液堆積法により前記光活性領域上に配置される電荷再結合層
を含む、方法。
項2
前記非プロトン性溶媒が、極性非プロトン性溶媒である、項1に記載の方法。
項3
前記基材が、前記電荷再結合層上に配置される電荷輸送材料の層をさらに含む、項1又は2に記載の方法。
項4
前記電荷再結合層を溶液堆積法により前記光活性領域上に配置する工程、及び
任意選択で、電荷輸送材料の層を前記電荷再結合層上に配置する工程
により、前記基材を製造する工程を含む、項1から3のいずれか一項に記載の方法。
項5
前記基材中の前記光活性材料が、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)若しくはこれらの混合物中に溶解する、又は前記基材中の前記電荷再結合層の少なくとも1つの成分が、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)若しくはこれらの混合物中に溶解し、
好ましくは、前記基材中の前記光活性材料と前記基材中の前記電荷再結合層の少なくとも1つの成分との両方が、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)又はこれらの混合物中に溶解し、
より好ましくは、前記基材中の前記光活性材料と前記基材中の前記電荷再結合層との両方が、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)又はこれらの混合物中に溶解する、項1~4のいずれか一項に記載の方法。
項6
前記電荷再結合層が透明導電性酸化物のナノ粒子を含み、任意選択で、前記透明導電性酸化物がインジウムスズ酸化物(ITO)を含む、項1~5のいずれか一項に記載の方法。
項7
前記透明導電性酸化物のナノ粒子がマトリックス材料、例えば有機マトリックス材料、任意選択で、電子輸送有機マトリックス材料中に配置され、任意選択で、前記有機マトリックス材料が[6,6]-フェニル-C61-酪酸メチルエステル(PCBM)を含む、項6に記載の方法。
項8
前記電荷再結合層が導電性ポリマーをさらに含み、好ましくは、前記導電性ポリマーが、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)及びポリスチレンスルホネート(PEDOT:PSS)を含む、項6又は7に記載の方法。
項9
前記電荷再結合層を前記光活性領域上に配置する工程が、透明導電性酸化物のナノ粒子の溶媒分散体を前記光活性領域上に配置する工程を含み、好ましくは、前記電荷再結合層を前記光活性領域上に配置する工程が、導電性ポリマーを前記光活性領域上に配置する工程、及び透明導電性酸化物のナノ粒子の溶媒分散体を前記光活性領域上に配置する工程を含み、任意選択で、前記ナノ粒子の溶媒分散体が、マトリックス材料、例えば有機マトリックス材料をさらに含み、任意選択で、前記ナノ粒子の溶媒分散体及び/又は前記導電性ポリマーが、スピンコーティングにより前記光活性領域上に配置される、項4~8のいずれか一項に記載の方法。
項10
前記非プロトン性溶媒がジメチルホルムアミドを含まず、好ましくは、前記非プロトン性溶媒が、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド又はこれらの混合物を含まない、項1~9のいずれか一項に記載の方法。
項11
前記非プロトン性溶媒が、クロロベンゼン、アセトン、ブタノン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、プロピオニトリル、トルエン又はこれらの混合物からなる群から選択される化合物を含み、好ましくは、前記非プロトン性溶媒がアセトニトリルを含む、項1~10のいずれか一項に記載の方法。
項12
前記有機アミンが、非置換若しくは置換アルキルアミン又は非置換若しくは置換アリールアミンである、項1~11のいずれか一項に記載の方法。
項13
前記有機アミンが非置換又は置換(C 1~10 アルキル)アミンであり、好ましくは前記有機アミンが、非置換(C 1~10 アルキル)アミン又はフェニル基で置換されている(C 1~10 アルキル)アミンであり、より好ましくは前記有機アミンが、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン若しくはペンチルアミン若しくはヘキシルアミン、ベンジルアミン又はフェニルエチルアミンであり、より好ましくは前記有機アミンがメチルアミンである、項12に記載の方法。
項14
前記式[A] a [M] b [X] c の化合物が、式[A][M][X] 3 (式中、[A]、[M]及び[X]が項1に定義されるとおりである)の化合物である、項1~13のいずれか一項に記載の方法。
項15
[A]が少なくとも1つの有機カチオンを含む、項1~14のいずれか一項に記載の方法。
項16
各Aカチオンが、アルカリ金属カチオン、式[R 1 R 2 R 3 R 4 N] + (式中、R 1 、R 2 、R 3 、R 4 はそれぞれ、独立して、水素、非置換又は置換C 1~20 アルキル、及び非置換又は置換C 6~12 アリールから選択され、R 1 、R 2 、R 3 及びR 4 のうちの少なくとも1つは水素ではない)のカチオン、式[R 5 R 6 N=CH-NR 7 R 8 ] + (式中、R 5 、R 6 、R 7 及びR 8 はそれぞれ、独立して、水素、非置換又は置換C 1~20 アルキル、及び非置換又は置換C 6~12 アリールから選択される)のカチオン、並びにC 1~10 アルキルアンモニウム、C 2~10 アルケニルアンモニウム、C 1~10 アルキルイミニウム、C 3~10 シクロアルキルアンモニウム及びC 3~10 シクロアルキルイミニウム(これらは、それぞれ非置換又はアミノ、C 1~6 アルキルアミノ、イミノ、C 1~6 アルキルイミノ、C 1~6 アルキル、C 2~6 アルケニル、C 3~6 シクロアルキル及びC 6~12 アリールから選択される1つ以上の置換基で置換されている)から選択され、好ましくは各Aカチオンが、Cs + 、Rb + 、メチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、エチルアンモニウム、プロピルアンモニウム、ブチルアンモニウム、ペンチルアンモニウム、ヘキシルアンモニウム、ヘプチルアンモニウム、オクチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、ホルムアミジニウム、1-アミノエタン-1-イミニウム及びグアニジニウムから選択される、前記項のいずれか一項に記載の方法。
項17
[M]が2つ以上の異なるMカチオンを含む、項1~16のいずれか一項に記載の方法。
項18
各Mカチオンが、Ca 2+ 、Sr 2+ 、Cd 2+ 、Cu 2+ 、Ni 2+ 、Mn 2+ 、Fe 2+ 、Co 2+ 、Pd 2+ 、Ge 2+ 、Sn 2+ 、Pb 2+ 、Yb 2+ 及びEu 2+ 、好ましくはSn 2+ 、Pb 2+ 、Cu 2+ 、Ge 2+ 及びNi 2+ 、好ましくはSn 2+ 及びPb 2+ から選択される、項1~17のいずれか一項に記載の方法。
項19
各Xアニオンがハロゲン化物であり、任意選択で、[X]が2つ以上の異なるハロゲン化物アニオンを含む、項1~18のいずれか一項に記載の方法。
項20
[A]が式[R 1 NH 3 ] + (式中、R 1 は非置換C 1~10 アルキルである)のカチオンを含み、前記有機アミンが非置換(C 1~10 アルキル)アミンを含み、好ましくは式[R 1 NH 3 ] + のAカチオン上のC 1~10 アルキル基及び非置換(C 1~10 アルキル)アミン上のC 1~10 アルキル基は同じであり、より好ましくは[A]がメチルアンモニウムを含み且つ前記有機アミンがメチルアミンを含む、項1~19のいずれか一項に記載の方法。
項21
前記基材中の前記光活性領域中の前記光活性材料が、結晶A/M/X材料を含み、前記結晶A/M/X材料が、項1及び14~20のいずれか一項に定義される式[A] a [M] b [X] c の化合物を含む、項1~20のいずれか一項に記載の方法。
項22
前記基材上に堆積された前記結晶A/M/X材料と前記光活性領域中の前記結晶A/M/X材料とが異なる、項21に記載の方法。
項23
前記基材が2つの別々の光活性領域を含み、各光活性領域が光活性材料を含み、好ましくは各光活性領域中の各光活性材料が結晶A/M/X材料を含み、前記結晶A/M/X材料が、項1及び14~20のいずれか一項に定義される式[A] a [M] b [X] c の化合物を含み、任意選択で、前記基材上に堆積された前記結晶A/M/X材料及び前記2つの光活性領域中の前記結晶A/M/X材料から選択される結晶A/M/X材料の少なくとも2つが異なり、任意選択で、前記基材上に堆積された前記結晶A/M/X材料及び前記2つの光活性領域中の結晶A/M/X材料から選択される3つ全ての結晶A/M/X材料が異なる、項1~22のいずれか一項に記載の方法。
項24
前記膜形成溶液が、1つ以上のAカチオン及び1つ以上のXアニオンをさらに含む、項1~23のいずれか一項に記載の方法。
項25
1つ以上のAカチオン及び任意選択で1つ以上のXアニオンを含む組成物を前記基材上に配置する工程をさらに含む、項1~23のいずれか一項に記載の方法。
項26
前記膜形成溶液を基材上に配置する工程が、前記膜形成溶液を前記基材上にスピンコーティングする工程を含む、項1~25のいずれか一項に記載の方法。
項27
前記方法が、前記溶媒を除去して、前記結晶A/M/X材料を含む前記層を形成する工程をさらに含み、任意選択で、前記溶媒が、膜形成溶液で処理された基材を加熱することによって、任意選択で、膜形成溶液で処理された基材を50℃~200℃の温度で、任意選択で10~100分の時間の間、加熱することによって除去される、項1~26のいずれか一項に記載の方法。
項28
前記基材が、
i)第1の電極、ここで、好ましくは前記第1の電極は、透明導電性酸化物を含む、
ii)光活性領域、ここで、前記光活性領域は、好ましくは結晶A/M/X材料を含み、前記結晶A/M/X材料は、項1及び14~20のいずれか一項に定義される式[A] a [M] b [X] c の化合物を含む、
iii)前記光活性領域上に配置された電荷再結合層、ここで、任意選択で、前記電荷再結合層は、項6~8のいずれか一項に定義されるとおりである、及び
iv)任意選択で、前記電荷再結合層上に配置された電荷輸送材料の層
を含む、項1~28のいずれか一項に記載の方法。
項29
前記方法が、
第2の電極を前記基材上に配置された前記結晶A/M/X材料の前記層上に配置する工程、又は
好ましくは、電荷輸送材料を前記基材上に配置された前記結晶A/M/X材料の前記層上に配置し、第2の電極を前記電荷輸送材料上に配置する工程
をさらに含み、
好ましくは前記第2の電極が元素金属を含む、
項1~28のいずれか一項に記載の方法。
項30
項1~29のいずれか一項に定義される方法により得ることができる多接合デバイス。
項31
前記多接合デバイスが光電子デバイスであり、任意選択で、前記光電子デバイスが、光起電力デバイス又は発光デバイスである、項1~29のいずれか一項に記載の方法、又は項30に記載の多接合デバイス。
項32
(a)少なくとも2つの光活性領域であって、前記光活性領域の少なくとも1つが結晶A/M/X材料の層を含み、前記結晶A/M/X材料が式[A] a [M] b [X] c (式中、[A]は1つ以上のAカチオンを含み、[M]は金属又は半金属のカチオンである1つ以上のMカチオンを含み、[X]は1つ以上のXアニオンを含み、aは1~6の数であり、bは1~6の数であり、cは1~18の数である)の化合物を含む、少なくとも2つの光活性領域、及び
(b)透明導電性酸化物のナノ粒子を含む電荷再結合層
を含む、多接合デバイス。
項33
(a)少なくとも2つの光活性領域であって、前記光活性領域の少なくとも1つが結晶A/M/X材料の層を含み、前記結晶A/M/X材料が式[A] a [M] b [X] c (式中、[A]は1つ以上のAカチオンを含み、[M]は金属又は半金属のカチオンである1つ以上のMカチオンを含み、[X]は1つ以上のXアニオンを含み、aは1~6の数であり、bは1~6の数であり、cは1~18の数である)の化合物を含む、少なくとも2つの光活性領域、及び
(b)導電性ポリマーを含む電荷再結合層
を含む、多接合デバイス。
項34
前記電荷再結合層が、透明導電性酸化物のナノ粒子及び導電性ポリマーを含み、任意選択で、前記電荷再結合層が、項6~8のいずれか一項にさらに定義されるとおりである、項32又は33に記載の多接合デバイス。
項35
前記光活性領域のうちの2つが、項32又は33に定義される結晶A/M/X材料の層を含み、任意選択で、前記A/M/X材料が、項14~20のいずれか一項にさらに定義されるとおりである、項32~34のいずれか一項に記載の多接合デバイス。
項36
少なくとも3つの光活性領域を含み、好ましくは各光活性領域が、項32又は33に定義される結晶A/M/X材料の層を含み、任意選択で、前記A/M/X材料が、項14~20のいずれか一項にさらに定義されるとおりである、項32~34のいずれか一項に記載の多接合デバイス。
項37
(a)少なくとも3つの光活性領域であって、各光活性領域が、結晶A/M/X材料の層を含み、前記結晶A/M/X材料が式[A] a [M] b [X] c (式中、[A]は1つ以上のAカチオンを含み、[M]は金属又は半金属のカチオンである1つ以上のMカチオンを含み、[X]は1つ以上のXアニオンを含み、aは1~6の数であり、bは1~6の数であり、cは1~18の数である)の化合物を含む、少なくとも3つの光活性領域、及び
(b)前記光活性領域間に配置された少なくとも1つの電荷再結合層
を含む、多接合デバイス。
項38
前記光活性領域間に配置された少なくとも2つの電荷再結合層を含む、項37に記載の多接合デバイス。
項39
前記電荷再結合層の少なくとも1つが、導電性ポリマー又は透明導電性酸化物のナノ粒子を含む、項37又は38に記載の多接合デバイス。
項40
前記電荷再結合層の少なくとも1つが、透明導電性酸化物のナノ粒子及び導電性ポリマーを含み、任意選択で、前記電荷再結合層の少なくとも1つが、項6~8のいずれか一項にさらに定義されるとおりである、項39に記載の多接合デバイス。
項41
各光活性領域が、項14~20のいずれか一項にさらに定義される結晶A/M/X材料の層を含む、項32~40のいずれか一項に記載の多接合デバイス。
項42
前記電荷再結合層の少なくとも1つが、(i)インジウムスズ酸化物(ITO)のナノ粒子並びに(ii)ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)及びポリスチレンスルホネートを含むポリマーを含む、項32~41のいずれか一項に記載の多接合デバイス。
項43
前記結晶A/M/X材料の少なくとも2つが互いに異なり、任意選択で、前記結晶A/M/X材料の3つ以上が互いに異なる、項32~42のいずれか一項に記載の多接合デバイス。
項44
第1の電極及び第2の電極をさらに含み、前記光活性領域及び前記電荷再結合層の少なくとも1つが、前記第1の電極及び前記第2の電極の間に配置され、好ましくは前記第1の電極が透明導電性酸化物を含み且つ前記第2の電極が元素金属を含む、項32~43のいずれか一項に記載の多接合デバイス。
項45
光起電力デバイス又は発光デバイスである、項32~44のいずれか一項に記載の多接合デバイス。
【実施例
【0301】
本発明の利点を、幾つかの特定の実施例を参照して以下に記載する。
【0302】
本明細書において、先にNoelら(N. K. Noel, S. N. Habisreutinger, B. Wenger, M. T.Klug, M. T. Horantner, M. B. Johnson, R. J. Nicholas, D. T. Moore, H. J. Snaith, Energy Environ. Sci. 2017, 10, 145)によって取り入れられたアセトニトリル/メチルアミン(ACN/MA)複合溶媒を用いて、下部のペロブスカイトデバイス上のペロブスカイト吸収層の逐次処理を可能にする。この全溶液処理されたアーキテクチャは、堆積技術、例えばロール・ツー・ロール(R2R)処理、ブレードコーティング又はインクジェット印刷を用いて、剛性基材及び可撓性基材の両方の上に大面積の膜を製造するために適用される可能性がある。15%超の安定化された電力変換効率(PCE)を達成し、2.18Vの開回路電圧(Voc)を送達する、全溶液処理されたタンデムアーキテクチャが提供される。さらに、本発明者らは、混合金属Sn/PbペロブスカイトMAPb0.75Sn0.25I3が、ACN/MA溶媒系を介して処理することもでき、MAの還元性質により、SnF2を使用する必要性を除外して、相当の効率を実現し、n-i-pアーキテクチャを用いて11%超の走査PCE(安定化10.5%)を得ることが可能になることを示す。多接合の光吸収を925nmまで拡張させるために混合金属MAPb0.75Sn0.25I3ペロブスカイト材料を使用して、2.83Vの開回路電圧(Voc)を有する第1のモノリシック三重接合ペロブスカイト太陽電池が実現される。光学及び電子モデルを利用して実験結果を有効化し、この特定のアーキテクチャ中に存在する光学的損失を明らかにする。次いで、24.3%のPCE及び3.15Vの対応するVocを有する三重接合デバイスを実現する可能性を示す、現在実現可能な1.94/1.57/1.24eVペロブスカイト材料の電子的特性を用いて、三重接合ペロブスカイト太陽電池をモデル化する。
【0303】
結果及び考察
全ペロブスカイトモノリシック2Tタンデム及び多接合太陽電池は、異なるサブセル間に電子直列接続を作製する手段を設けるためのトンネル接合(TJ)又は再結合層を要する。順に、各サブセルから生じる光電圧をまとめて、結果として高電圧デバイスになる。しかしながら、電荷の保存により、各サブセルから流れ出る電流密度は整合しなければならず、したがって電流は、任意のサブ接合から生じる最低電流密度に限定される。したがって、2Tモノリシックタンデム中の光電流密度を最大化するために、両方のサブセルは等しい電流密度を生じるべきであり、これは注意深くバンドギャップ及び各接合の厚さを調整することにより実現することができる。サブセル間の再結合層は、厳重な必要条件を満たさなければならない。第一に、それらは電荷抽出層へのオーム性接触を可能にし、抵抗損失を導入せずに収集した電子及び正孔の再結合を促進しなければならない。第二に、それらは光の寄生的吸収を回避するために可能な限り光学的に透明でなければならない。第三に、再結合層の堆積が下のいずれの層も損傷しないことが必要であり、これは典型的には、スパッタリングの際に「バッファ層」を導入することにより、又は溶液処理のための直交溶媒を使用することにより実現される。最後に、この中間層は、後続的に別のペロブスカイト層を処理する際に下部のペロブスカイト層又は他の電子層のいかなる再溶解をも防止するために、溶媒の浸透に対して十分な障壁でなければならない。
【0304】
ここで、これらの制約を満たす再結合層及びn-i-pペロブスカイト太陽電池アーキテクチャが開発される。再結合層では、PEDOT:PSS層とそれに後続するITOナノ粒子層との組み合わせが非常に適することが分かっている。第1の例では、純粋に鉛ベースのペロブスカイトタンデム電池の「広域のバンドギャップ」は、1.57eVの下部セルの上部の上の約1.94eV(図5に示すTaucプロットにより決定される)の上部セルを処理することによって開発される。広域バンドギャップ接合を最初に処理し、そのため、溶媒直交性の問題についてはあまり考える必要はない。したがって、従来の溶液処理の経路をたどって、2%(Pbに対するモル濃度)のカリウム(K+)添加物を有するFA0.83Cs0.17Pb(Br0.7I0.3)3が製作される(Z. Tang, T. Bessho, F. Awai, T. Kinoshita, M. M. Maitani, R. Jono, T. N. Murakami, H. Wang, T. Kubo, S. Uchida, H. Segawa, Sci. Rep. 2017, 7. 12183; J. K. Nam, S. U. Chai, W. Cha, Y. J. Choi, W. Kim, M. S. Jung, J. Kwon, D. Kim, J. H. Park, Nano Lett. 2017, 17, 2028; M. Muzammal uz Zaman, M. Imran, A. Saleem, A. H. Kamboh, M. Arshad, N. A. Khan, P. Akhter, Phys. B Condens. Matter 2017, 522, 57; T. Bu, X. Liu, Y. Zhou, J. Yi, X. Huang, L. Luo, J. Xiao, Z. Ku, Y. Peng, F. Huang, Y.-B. Cheng, J. Zhong, Energy Environ. Sci. 2017, 10, 2509; M. Abdi-Jalebi, Z. Andaji-Garmaroudi, S. Cacovich, C. Stavrakas, B. Philippe, J. M. Richter, M. Alsari, E. P. Booker, E. M. Hutter, A. J. Pearson, S. Lilliu, T. J. Savenije, H. Rensmo, G. Divitini, C. Ducati, R. H. Friend, S. D. Stranks, Nature, 2018, 555, 497-501を参照)。先に記載したように、ハロゲン化水素酸添加物を利用する堆積技術を用いて、直径がミクロンサイズに達する粒の高秩序ペロブスカイト材料が製作される(図6)(D. P. McMeekin, Z. Wang, W. Rehman, F. Pulvirenti, J. B. Patel, N. K. Noel, M. B. Johnston, S. R. Marder, L. M. Herz, H. J. Snaith, Adv. Mater. 2017, 1607039)。エネルギー乱れが低い高結晶質のペロブスカイト材料は、ハロゲン化物偏析を阻止することが示されている(W. Rehman, R. L. Milot, G. E. Eperon, C. Wehrenfennig, J. L. Boland, H. J. Snaith, M. B. Johnston, L. M. Herz, Adv. Mater. 2015, n/a)。さらに、上記で参照される最近の報告書が示唆するように、カリウムを添加物として利用して、イオン移動を阻止し、ペロブスカイト太陽電池中に本質的に存在する異常なヒステリシス挙動を低減する(H. J. Snaith, A. Abate, J. M. Ball, G. E. Eperon, T. Leijtens, N. K. Noel, S. D. Stranks, J. T.-W. Wang, K. Wojciechowski, W. Zhang, J. Phys. Chem. Lett. 2014, 5, 1511)。この吸収体材料では、単接合ペロブスカイト太陽電池中で、最大1.27Vの開回路電圧及び10.9%の安定化電力変換効率が得られ、これを図7に示す。
【0305】
広域ギャップセルの上部で処理される下部セルでは、下部のペロブスカイト膜の溶解の問題について考慮しなければならない。標準DMF/DMSO溶媒をベースとした手段の一つを用いる場合、下部のペロブスカイト膜を完全に溶媒和及び変色して、再結合層がDMF又はDMSOに対して不浸透性でない証拠とすることができる。これらの高沸点溶媒は、溶液処理された中間層にゆっくり浸透して下部のペロブスカイト層を再溶解するのに十分なほど長く表面上に残留し、そのため、全溶液処理されたタンデム太陽電池における有用性を限定してしまう。幾つかの明白な利点を有する、ペロブスカイト膜を処理するためのACN/MAベースの複合溶媒系が先に開発された(D. P. McMeekin, Z. Wang, W. Rehman, F. Pulvirenti, J. B. Patel, N. K. Noel, M. B. Johnston, S. R. Marder, L. M. Herz, H.J. Snaith, Adv. Mater. 2017, 1607039)。第一に、該溶媒はDMFよりはるかに揮発性であり、非常に迅速な乾燥を可能にする。第二に、取り入れるメチルアミンの量を変化させることにより溶媒和の強さを調整できる。塩を完全に溶解できるようにMAの適正量を選択するが、最小過剰とする。溶液中に過剰量のMAを有することは、デバイスに有害な影響を及ぼす可能性があることが発見された。中間層中の不要なピンホールは、メチルアミンの浸透及びペロブスカイト下層の再溶解をもたらし得る。したがって、溶液中のMA含量を注意深く調整してその臨界溶解点の溶液を得ることにより、下層を再溶解する可能性を最小限に抑える。この溶解点は、混合物が完全なペロブスカイト溶液になるまで、ACN/MAペロブスカイト溶液をニートな(純)ACNペロブスカイト分散体にゆっくり添加することにより決定される。この手段を通して、全ペロブスカイト多接合太陽電池を製作するための頑強(ロバスト)で高信頼性のプロトコルが得られた。
【0306】
最適な結果を達成するために、ACN/MA溶媒手段を介して処理されたMAPbI3及びMAPb0.75Sn0.25I3ペロブスカイト材料の両方に対して、Bサイト金属イオン含量を注意深く調整することを必要とした。図1A中、フェニル-C61-酪酸メチルエステル(PC61BM)層上のFA0.83Cs0.17Pb(Br0.7I0.3)3上部セル(TC)の上部の上に製作された、ACN/MA溶媒系により様々な非化学量論組成で処理されたMAPbI3ペロブスカイト膜の一連の走査電子顕微鏡(SEM)上面図画像を示す。非化学量論ペロブスカイト前駆体溶液の効果は先に議論されてきた(C. Roldan-Carmona, P. Gratia, I. Zimmermann, G. Grancini, P. Gao, M. Graetzel, M. K. Nazeeruddin, Energy Environ. Sci. 2015, 8, 3550; M. Yang, Z. Li, M. O. Reese, O. G. Reid, D. H. Kim, S. Siol, T. R. Klein, Y. Yan, J. J. Berry, M. F. A. M. van Hest, K. Zhu, Nat. Energy 2017, 2, 17038; D. Bi, W. Tress, M. I. Dar, P. Gao, J. Luo, C. Renevier, K. Schenk, A. Abate, F. Giordano, J. -P. Correa Baena, J.-D. Decoppet, S. M. Zakeeruddin, M. K. Nazeeruddin, M. Gra tzel, A. Hagfeldt, Sci. Adv. 2016, 2, e1501170; Q. Chen, H. Zhou, T.-B. Song, S. Luo, Z. Hong, H.-S. Duan, L. Dou, Y. Liu, Y. Yang, Nano Lett. 2014, 14, 4158; T. J. Jacobsson, J.-P. Correa-Baena, E. Halvani Anaraki, B. Philippe, S. D. Stranks, M. E. F. Bouduban, W. Tress, K. Schenk, J. Teuscher, J.-E. Moser, H. Rensmo, A. Hagfeldt, J. Am. Chem. Soc. 2016, 138, 10331を参照)が、しかしながら、研究団体は依然として、厳密な非化学量論が理論的であることに満場一致で同意しなければならない。一部の研究は、過剰の有機アンモニウムが性能向上をもたらすことを示したが、他の研究は前駆体溶液中に過剰のPbI2を有する利益を示した。しかしながら、これらの化学量論の小さな変化が、形態に与える効果、発光、トラップのパッシベーション及び安定性に及ぶ様々な形でペロブスカイトに影響を与えることは明らかである。
【0307】
図1Aでは、既存の太陽電池の上部で処理した場合、6%過剰のMAIから6%過剰のPbI2の範囲でACN-MA前駆体溶液の様々なAサイトからBサイトの組成を調整した一連の上面図SEM画像を示す。形態及び異なる組成を有する前駆体溶液の表面被覆率への影響を観察した。
【0308】
全溶液処理されたタンデムアーキテクチャにおいて、下層の溶解を防止するためにピンホールの存在を除去することが必須である。図8では、異なる範囲の組成で処理されたデバイスのタンデム太陽電池性能を示す。単接合電池効率を最大化するのに理想的な組成は3%過剰のMAIを含み、完全タンデム太陽電池はこの組成で製作した。
【0309】
図1B及び図1Cでは、2Tタンデムの概略図と、対応する走査電子顕微鏡SEM断面画像とを示す。太陽電池は従来のn-i-pアーキテクチャで製作され、2,2',7,7'-テトラキス(N,N'-ジ-p-メトキシフェニルアミン)-9,9'-スピロビフルオレン(スピロ-OMeTAD)p型電荷抽出層とnドープPC61BM電子輸送体との間に挟まれるPEDOT:PSSと後続するインジウムスズ酸化物(ITO)ナノ粒子で構成される再結合層は非常に有効に働くことがわかった。
【0310】
図1Dでは、電力密度100mW cm-2を有する模擬気団(AM)1.5太陽放射下で測定した最高性能の2端子タンデム太陽電池の一つの順方向及び逆方向電流密度電圧(J-V)特性を示す。不整合率の算出法の詳細な説明は、以下で確認できる。
【0311】
この作業において、再結合層は、PEDOT:PSS及びインジウムスズ酸化物(ITO)ナノ粒子(NP)の副層を含む。導電率の高いPEDOT:PSS(Heraus H1000)溶液をイソプロパノール(IPA)で希釈し、再結合層及び溶媒障壁の両方の機能を果たすスピロ-OMeTAD層上に直接スピンコーティングする。次いでITOナノ粒子(100nm超)の溶媒分散体からITO層をスピンコーティングする。製作されたITOナノ粒子層は、多孔質且つ非連続的であってもよい。しかしながら、これらのナノ粒子は、高いキャリア密度によってPEDOT:PSSからの正孔とPC61BMからの電子を再結合させて、再結合プロセスを改善する。ITO NP層は、両電子及び正孔受容層間にオーム性接触を作製し、再結合層への効率的な電荷移動を可能にする。
【0312】
このタンデムデバイスは、11.5mA cm-2の短回路電流密度(JSC)、0.63の曲線因子(FF)、2.18Vの開回路電圧(Voc)、及び15.2%の電力変換効率(安定化)を発生した(図9)。ペロブスカイト太陽電池はヒステリシス挙動する傾向があった。したがって、1.72Vの固定された最大電力点電圧でデバイスを保持することによる安定化効率測定を実施し、図3Aの挿入図に示すように15.2%の安定化効率に達した。図3Bでは、集積電流密度が前部セルで10.0mA cm-2及び背部セルで9.3mA cm-2の両方の接合の外部量子効率(EQE)を示す。EQE測定の間、光学的にバイアスされたサブセルのVocに等しい電圧バイアスが太陽電池に印加された。これによりEQEはJsc近くで測定された。2つのサブセル間の若干の電流密度不整合に留意されたい。図10では、多接合太陽電池中で使用された各材料の算出された不整合率を示す。スペクトルの赤外部分の高強度のスパイクに起因して、キセノンアークランプスペクトルは、AM1.5Gスペクトルと有意に不整合であり得る(図11に示す)。結果として、多接合太陽電池の特定のサブセルは、特に多接合太陽電池の場合において、過大評価されることも、又は過小評価されることもある。ここでは、この特定の場合において、タンデム電池は、AM1.5Gスペクトル下に限定された後部セル、及び太陽シミュレータランプ下に限定された上部セルである。これらの相違を打ち消すために、不整合率の補正が加えられ、これは本発明者らの推定した効率を相対的に約0.4%低減した。しかしながら、三重接合の場合では、キセノン強度のスパイクにより有意な不整合率が生じ、これはスペクトル不整合を打ち消すために32.3%の相対的な効率の低下の補正を必要とする。両方の補正率が、報告された効率に適用された。電圧損失の推定は、再結合中間層の品質を入手するために重要な測定基準である。図12に示すように、再結合層としてPEDOT:PSS/ITO NP中間層を使用して、2.22V相当の2TタンデムVocを測定し、両方のサブセルが、前部セルで1.27V及び後部セルで1.11Vの最大測定単接合Vocを生じたと仮定した場合、約180mVの中間層電圧損失の結果となった。
【0313】
ニートな鉛ベースのデバイスは安定性ペロブスカイト材料をもたらすが、不安定なスズベースのペロブスカイトを使用してバンドギャップを狭域にすることは、依然としてタンデム用途に非常に望ましい。図2に示すように、AサイトとBサイトとの比を調整することにより、MAPb0.75Sn0.25I3(図13のTaucプロットから決定された1.34eVのバンドギャップを有する)の材料特性への非化学量論前駆体溶液の影響も試験した。所望のMAPb0.75Sn0.25I3ペロブスカイト組成を維持するために、過剰のPbI2及びSnI2を75対25の比で添加した。図2Aは、ケルビンプローブフォース顕微鏡(KPFM)画像を示し、過剰の金属イオンをMAPb0.75Sn0.25I3ペロブスカイト前駆体溶液中に取り入れると、仕事関数の急激な増加が観察される。図2Bに示す、より低速の時間分解フォトルミネセンス(PL)減衰にも留意されたい。図2Cは、レーザーパルスによる光励起後の導電率(導電性、伝導性)減衰の最大摂動を測定する、様々な励起密度の対応するサンプルの過渡光導電率を示す。同様に、過剰の金属イオンを有する膜の光導電率の増加が観察され、より高い実効移動度が含意される。これらのより長期のキャリア寿命及びより高い光導電率が、デバイス性能の実質的向上(図14)と相関することが見出され、これは図2Dに示す11%超の最適化MAPb0.75Sn0.25I3のPCEをもたらす。
【0314】
驚くべきことに、ニートな鉛ベースのペロブスカイトと比較して、スズ-鉛ベースのペロブスカイト材料の最適なAサイトとBサイトとの比において実質的な差が見出された。Sn/Pbベースのペロブスカイトの場合、研究団体により、過剰のスズハロゲン化物を、中でも注目すべきはフッ化スズ(SnF2)又は塩化スズ(SnCl2)の形態で使用した場合に一貫して性能向上が観察されたように見える(D. Zhao, Y. Yu, C. Wang, W. Liao, N. Shrestha, C. R. Grice, A. J. Cimaroli, L. Guan, R. J. Ellingson, K. Zhu, X. Zhao, R.-G. Xiong, Y. Yan, Nat. Energy 2017, 2, 17018; K. P. Marshall, M. Walker, R. I. Walton, R. A. Hatton, Nat. Energy 2016, 1, 16178; S. J. Lee, S. S. Shin, Y. C. Kim, D. Kim, T. K. Ahn, J. H. Noh, J. Seo, S. I1 Seok, J. Am. Chem. Soc. 2016, 138, 3974; M. H. Kumar, S. Dharani, W. L. Leong, P. P. Boix, R. R. Prabhakar, T. Baikie, C. Shi, H. Ding, R. Ramesh, M. Asta, M. Graetzel, S. G. Mhaisalkar, N. Mathews, Adv. Mater. 2014, 26, 7122; A. G. Kontos, A. Kaltzoglou, E. Siranidi, D. Palles, G. K. Angeli, M. K. Arfanis, V. Psycharis, Y. S. Raptis, E. I. Kamitsos, P. N. Trikalitis, C. C. Stoumpos, M. G. Kanatzidis, P. Falaras, Inorg. Chem. 2017, 56, 84を参照)。添加物としてのフッ化スズは、Sn2+からSn4+へのスズ酸化の阻止を目的とする還元剤として容易に使用されてきた。酸化を阻止することにより、Sn2+空孔が限定され、これはSnベースのペロブスカイト中に見られる不要なp型挙動を引き起こす。この試験では、MAがSnF2の代わりに還元剤として作用するものとして当てにされており、SnF2はACN/MA溶媒系に難溶性のためである。アミンは還元剤として作用することが知られており、現象は金属ナノ粒子の合成中に活用されることが最も多かった(J. D. S. N.及びG. J. Blanchard*, 2006, DOI 10.1021/LA060045Zを参照)。ここで、アミンの還元特性を活用して、SnF2を効果的にMAと置き換えることを可能にする。図14は、様々なAサイトとBサイトのカチオンの比を有する最適化されていないデバイスのプロットを示す。過剰のMAIを有するデバイスは、ゼロに近いPCE及び若干から皆無の短回路密度(Jsc)をもたらすが、過剰量の金属イオンを有するデバイスは、単接合デバイス効率の増加を明らかに示し、15%過剰の金属イオンで最適な組成が実現される。したがって、スズベースのペロブスカイトは、Sn2+からSn4+への酸化を阻止する還元剤を要するだけでなく、最適な性能のために過剰の金属イオンも要する。これは、還元ヒドラジン雰囲気下で処理した場合にCsI:SnI2が0.4:1の非化学量論CsSnI3ペロブスカイト組成が最適な性能のために必要とされることを観察したSongらによる知見と一致する(T.-B. Song, T. Yokoyama, S. Aramaki, M. G. Kanatzidis, ACS Energy Lett. 2017, 2, 897を参照)。過剰のSnI2は、湿気又は酸素への曝露によりSn2+が2つの電子を失ってSn4+になる結果として生じる任意のSn2+空孔を置き換えるための「補償因子」の塩として機能することが確認された。図2Aでは、MAI富化組成を有するMAPb0.75Sn0.25I3ペロブスカイトのより深いフェルミ準位に留意されたいが、これは高濃度のSn2+空孔と一致し、ペロブスカイトのp-ドーピングにつながることが予測される。対照的に、金属イオン富化ペロブスカイト膜で観察された、より浅いフェルミ準位は、Sn2+空孔が少ないことを示すより本質的なペロブスカイト材料に対応し得る。図2Aで観察されるペロブスカイト吸収体中のキャリア寿命の延長は、高p型材料からより真性の半導体への移行に一致し、これを示すものと解釈された。さらに、このフェルミ準位の変化は、ペロブスカイトと電子又は正孔受容層との間、この場合、それぞれPC61BMとスピロ-OMETAD+ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド-(スピロ(TFSI)2)をドープしたスピロ-OMeTADとの間のエネルギー障壁を潜在的に誘発することができる。
【0315】
図3は、溶液処理手段を介して調製された、第1の全ペロブスカイトモノリシック三重接合太陽電池の構造及び性能特性を示す。図2に記載の狭域バンドギャップのMAPb0.75Sn0.25I3ペロブスカイト太陽電池を、図1に記載の二重接合タンデム太陽電池アーキテクチャの上部で処理して、925nmまでの光を吸収する三重接合太陽電池を製作した。図3Aは、FA0.83Cs0.17Pb(Br0.7I0.3)3ペロブスカイトが前部セルとして機能し、MAPbI3ペロブスカイトが中間セルであり、MAPb0.75Sn0.25I3でペロブスカイトが後部セルである、FA0.83Cs0.17Pb(Br0.7I0.3)3/MAPbI3/MAPb0.75Sn0.25I3で構成される2T三重接合電池の概略図を示す。図3Bは、対応するSEM断面画像を示す。図3Cは、100mW cm-2の模擬気団(AM)1.5及び太陽放射下で測定した「最高性能」の2端子三重接合太陽電池の一つの順方向及び逆方向電流密度電圧(J-V)特性を示す。7.5%のPCE(7.1%安定化)を測定したが、図3Dに示す最大Vocは別のデバイスで測定し(図15に示す)、60秒後に2.83Vの安定化開回路電圧を示す。
【0316】
図17は、DMF/DMSO溶媒で処理し、Ag電極を含まないFA0.83Cs0.17Pb(Br0.7I0.3)3/MAPbI3タンデム太陽電池でフィルタリングしたp-i-nアーキテクチャ中の高性能FA0.83Cs0.17Pb0.5Sn0.5I3ペロブスカイトを示す。これは、フロントタンデムスタック上に半透明電極を用いなかったため4端子(4T)タンデム測定ではないが、この測定は、高性能及び低バンドギャップをACN/MA溶媒系手段で得た場合、期待される効率向上を大まかに推定することを可能にする。図17Cは、フィルタリングしない場合、1.22eVの吸収開始、15.5%のPCE(安定化)を有するFA0.83Cs0.17Pb0.5Sn0.5I3ベースの接合を得ることができ、FA0.83Cs0.17Pb(Br0.7I0.3)3/MAPbI3タンデムでフィルタリングした場合、2.6%のPCE(安定化)を得ることができることを示す。したがって、狭域バンドギャップ材料は、潜在的にFA0.83Cs0.17Pb(Br0.7I0.3)3/MAPbI3を2.6%超ブーストさせて、17.7%のPCEに達することができる。また、この測定は、タンデム及び狭域バンドギャップ単接合太陽電池間の空隙(エアギャップ)、並びにその他の場合では標準モノリシック三重接合太陽電池中に存在しないであろう追加のPEDOT:PSS層を含むことも留意されたい。これらの理由から、本発明者らは、図17Bに示すEQEからより低い集積電流密度を測定する。
【0317】
Hoerantnerらによって報告されたように、本作業において本発明者らが使用したものと同様のバンドギャップを有するペロブスカイト吸収体を用いる全ペロブスカイト三重接合太陽電池は、より優れた性能の単接合及び二重接合効率が可能になるべきである。Hoerantnerらのモデリングは、最適化1.22eVバンドギャップ材料が、2つの広域バンドギャップサブセル2.04eV及び1.58eVを電流整合させ、12mA cm-2の理論最大JSC、3.54VのVoc及び36.6%のPCEを送達すべきであることを示す(M. T. Horantner, T. Leijtens, M. E. Ziffer, G. E. Eperon, M. G. Christoforo, M. D. McGehee, H. J. Snaith, ACS Energy Lett. 2017, 2, 2506を参照)。しかしながら、この性能は、寄生吸収及び反射損を減少する光透過性中間層によってのみ得ることができる。図16は、多接合スタック中に使用される各中間層の光学特性を示す。中間層構造中に用いられる厚さが約100nmのPC61BM層が、大部分の寄生吸収及び反射損に関与する。
【0318】
この完全に溶液処理された全ペロブスカイト多接合太陽電池アーキテクチャの真の可能性を評価するために、Hoerantnerらにより使用されたものと同様の光学及び電気モデルを用いてこの半導体スタックをシミュレートし、多接合デバイスの性能をさらに向上するように改善することができることを示す。最先端の単接合ペロブスカイト電池の抽出された電気特性と合わせて、実験の厚さ(experimental thickness)を使用して、図4A~Bは、タンデムスタックの性能の推定、及び対応するモデル化外部量子効率スペクトルを示す。現在のチャンピオンFA0.83Cs0.17Pb(Br0.7I0.3)3の電気特性をクラス最高のACN/MA MAPbI3と合わせることにより、タンデム太陽電池(1.94eV及び1.57eVのバンドギャップを有するサブセル)をほぼ19%まで増加させることができることが推定された。同一の吸収体及び中間層材料を有するが、最先端のMAPbI3を有し、DMF/DMSO手段を介して処理され、最適化されたペロブスカイト厚さ、50nmまで短縮した厚さの中間層、及びMgF2反射防止コーティングを有するスタックをモデル化した(図4C~Dに示す)。これらの改善により、タンデム電池が21.8%のPCEに達することを可能にする。この図では、電気特性が改善された強化された前部セルを有する最適化スタックもモデル化し、FA0.83Cs0.17Pb(Br0.7I0.3)3について、1%のエレクトロルミネセンス効率(EQEEL)、4・10-2Ωcm2の一連の抵抗(RS)及び10MΩcm2のシャント抵抗(RSH)が想定され、達成できるPCEを26.8%まで増加した。図4E~Fは、電流整合のために最適化されたペロブスカイト厚さ、最先端のMAPbI3及びFA0.6MA0.4Pb0.4Sn0.6I3ペロブスカイトサブセル及び反射防止コーティングが上部に加えられることが想定された三重接合アーキテクチャの性能を明らかにしている。最適化された厚さを用いて26.7%のPCEを実現することができ、前部セルのVocを改善することにより30%超のPCEの三重接合効率が実現可能の範囲内にある。各シミュレーションの特定の層の厚さを、これらの詳細な説明と共に以下に記載する。
【0319】
結論
提供される全溶液処理された全ペロブスカイト多接合太陽電池は、高効率の多接合アーキテクチャの大規模製造の新たな道を開く。これらのタンデムアーキテクチャは、高揮発性ACN/MAベース溶媒系を使用して実現することができ、これは、種々のエネルギーギャップのペロブスカイト吸収体の逐次積層を可能にした。高透過性且つ効率的なPEDOT:PSS/ITO NP再結合層を使用して、第1の全溶液処理されたモノリシックFA0.83Cs0.17Pb(Br0.7I0.3)3/MAPbI3タンデム太陽電池が製作され、15.2%の安定化電力変換効率に達した。狭域バンドギャップMAPb0.75Sn0.25I3ペロブスカイト接合を追加することにより、多接合の光吸収は925nmまで拡張され、第1の三重接合ペロブスカイト太陽電池が製作され、過去最高の2.83VのVocを達成する。
【0320】
実験の詳細
上部セル(TC)の製作:ガラス/FTO/SnO2/PC61BM/FA0.83Cs0.17Pb(Br0.7I0.3)3/スピロ-OMeTAD
基材の調製:フッ素をドープした酸化スズ(FTO)がコーティングされたガラス(Pilkington、15Ω□-1)上にデバイスを製作した。先ず、アノード接触が堆積される特定の領域でFTOを除去した。このFTOエッチングは、2MのHCl及び亜鉛粉末を使用して行った。次いで、基材をHellmanex洗剤、アセトン、イソプロピルアルコール中で順次洗浄し、圧縮空気銃で乾燥した。
【0321】
酸化スズ(SnO2)層の製作:スピンコーティングの直前に、本発明者らは、無水2-プロパノール(IPA)中に溶解させた17.5mg ml-1の塩化スズ(IV)五水和物(SnCl4・5H2O)(Sigma-Aldrich)からなるSnO2前駆体溶液を調製した。溶液を窒素中、回転変化(ramp)200rpm/sにて、3000rpmで30秒間スピンコーティングした。次いで、基材を窒素中、100℃で10分間乾燥した。後続するアニーリング工程を空気中、180℃で90分間行った。
【0322】
PC61BM層の製作:無水クロロベンゼン(CB)(Sigma)中に7.5mg ml-1のPC61BM(99%、solenne)を溶解することによりフェニル-C61-酪酸メチルエステル(PC61BM)前駆体溶液を調製した。本発明者らは、ジヒドロ-1H-ベンゾイミダゾール-2-イル(N-DBI)誘導体、特に3-ジメチル-2-フェニル-2,3-ジヒドロ-1H-ベンゾイミダゾール(N-DMBI)を使用してPC61BMをドープした(S. Rossbauer, C. Muller, T. D. Anthopoulos, Adv. Funct. Mater. 2014, 24, n/a; Z. Wang, D. P. McMeekin, N. Sakai, S. van Reenen, K. Wojciechowski, J. B. Patel, M. B. Johnston, H. J. Snaith, Adv. Mater. 2017, 29, 1604186; S. S. Kim, S. Bae, W. H. Jo, Chem. Commun. 2015, 51, 17413; P. Wei, T. Menke, B. D. Naab, K. Leo, M. Riede, Z. Bao, J. Am. Chem. Soc. 2012, 134, 3999; B. D. Naab, S. Guo, S. Olthof, E. G. B. Evans, P. Wei, G. L. Millhauser, A. Kahn, S. Barlow, S. R. Marder, Z. Bao, J. Am. Chem. Soc. 2013, 135, 15018; P. Wei, J. H. Oh, G. Dong, Z. Bao, J. Am. Chem. Soc. 2010, 132, 8852を参照)。本発明者らは、PC61BM前駆体溶液を0.25% wt%のN-DMBIでドープした。次いで、0.45μmのPTFEフィルターを使用して、この溶液を濾過した。本発明者らは、この溶液を、窒素が充填されたグローブボックス中で、回転変化(ramp)速度1000rpm/sにて、2000rpmで20秒間スピンコーティングし、基材を80℃で10分間アニールした。
【0323】
FAI合成:ホルムアミジン酢酸塩(99%、Sigma-Aldrich)を1.5×(倍)モル過剰のヨウ化水素酸(HI)(H2O中57wt%、蒸留され安定化されている、99.95%(Sigma-Aldrich))中に溶解することにより、ヨウ化ホルムアミジニウム(FAI)を合成した。酸を添加した後、溶液を50℃で10分間撹拌しておいた。大型ガラス皿中、100℃で2時間乾燥すると、黄色~白色の粉末が形成された。次いで、これをジエチルエーテルで3回洗浄した。後に粉末を無水エタノール(99.5%、Sigma-Aldrich)中に溶解し、120℃のN2富化雰囲気下で加熱して過飽和溶液を得た。完全に溶解したら、次いで、再結晶が起こるまで、N2富化雰囲気下で溶液をゆっくり室温まで冷却した。再結晶過程により、白色のフレーク状の結晶が形成された。次いで、溶液を4℃の冷蔵庫内に置き、その後、冷凍庫に移してさらに結晶化させた。その後、粉末をジエチルエーテルで3回洗浄した。最後に、粉末を50℃の真空オーブン中で終夜乾燥した。
【0324】
2%K添加物を有するFA0.83Cs0.17Pb(Br0.7I0.3)3ペロブスカイト前駆体溶液の調製:前駆体塩を無水N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)中に溶解して、30%対70%のKIとKBrとのモル比を用いた所望のFA0.83Cs0.17Pb(Br0.7I0.3)3組成及び2%K添加物を有する化学量論溶液を得ることにより、2%K添加物を有するFA/Cs(ホルムアミジニウム/Cs)ペロブスカイト溶液を調製した。前駆体溶液は、以下の前駆体塩:ヨウ化ホルムアミジニウム(FAI)、ヨウ化セシウム(CsI)(99.9%、Alfa Aesar)、ヨウ化鉛(PbI2)(99%、Sigma-Aldrich)、臭化鉛(PbBr2)(98%、Alfa Aesar)、ヨウ化カリウム(KI)(99%、Sigma-Aldrich)、臭化カリウム(99%、KBr)(Sigma-Aldrich)を使用して調製した。ヨウ化水素酸(HI)(H2O中57wt%、蒸留され安定化されている、99.95%、Sigma-Aldrich)27.2μl/ml及び臭化水素酸(HBr)(H2O中48wt%)54.8μl/mlを1mLの0.75M前駆体溶液に添加した。酸の添加後、ペロブスカイト前駆体溶液を窒素雰囲気下で2日間エージングした。
【0325】
FA0.83Cs0.17Pb(Br0.7I0.3)3ペロブスカイト層の調製:このエージングした前駆体ペロブスカイト溶液を、窒素で充填されたグローブボックス中、回転変化(ramp)速度500rpm/sにて、1200rpmで45秒間スピンコーティングした。N2グローブボックス中、70℃の温度のホットプレート上で膜を1分間乾燥した。次いで、185℃の空気雰囲気下のオーブン中で膜を90分間アニールした。このアニーリングプロセスの間、サンプルを大型ガラス容器で覆い、ダスト汚染を防止した。
【0326】
スピロ-OMeTAD正孔輸送層の製作:クロロベンゼン中の72.5mg/mlの2,2',7,7'-テトラキス-(N,N-ジ-p-メトキシフェニルアミン)9,9'-スピロビフルオレン(スピロ-OMeTAD)(Lumtec)溶液で電子遮断層を堆積した。スピロ-OMeTAD溶液1mL当たり38μlのリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(1-ブタノール溶液中170mg/mL)及びスピロ-OMeTAD溶液1mL当たり21μlの4-tert-ブチルピリジン(TBP)を添加した。サンプルをデシケーター中で24時間静置して酸化させた。回転変化(ramp)速度1000rpm/sにて、2000rpmで20秒間、窒素で充填されたグローブボックス中でスピンコーティングを実施した。
【0327】
再結合中間層の製作(TC/MC及びMC/BCの両方用):
PEDOT:PSS/ITO NP
水中のPEDOT:PSS(PH1000)(Heraeus Clevios)と、イソプロパノール(IPA)中の30wt%インジウムスズ酸化物、(ITO)100nm超のナノ粒子(NP)分散体(Sigma)との両方を前駆体溶液として使用して中間層を製作する。先ず本発明者らは、PEDOT:PSSの薄層を既存のスピロ-OMeTAD層の上部に直接堆積する。無水2-プロパノール(IPA)中のPEDOT:PSS(PH1000)を1対1.5の体積比(PEDOT:PSS対IPA)で希釈し、次いで2.7μmのGF/D膜フィルター(Whatman)で濾過することにより、スピンコーティングの直前にPEDOT:PSS前駆体溶液を調製した。基材を80℃で予熱し、次いで、本発明者らは、10%超の相対湿度(RHM)の乾燥空気雰囲気下、6000rpmの速度で20秒間、希釈PEDOT:PSS溶液を動的にスピンコーティングし、次いで80℃で10分間アニールした。次いで、本発明者らは、ITO NP層を堆積した。本発明者らは、IPA中30wt%を希釈してIPA中1wt%まで低下させることによりITO NP前駆体溶液を調製した。堆積前に、希釈溶液を超音波浴中で15分間、超音波処理した。本発明者らは、10%超の相対湿度(RHM)の乾燥空気雰囲気下、6000rpmの速度で20秒間、希釈ITO NP溶液を動的にスピンコーティングし、次いで80℃で10分間アニールした。
【0328】
中間セル(MC)の製作:PC61BM/MAPbI3/スピロ-OMeTAD
PC61BM層の製作:無水クロロベンゼン(CB)(sigma)及び無水クロロホルム(CF)溶媒の混合物中に30mg ml-1のPC61BM(99%、solenne)を溶解することにより、フェニル-C61-酪酸メチルエステル(PC61BM)前駆体溶液を調製した。溶媒は、2対1のCBとCFとの体積比で混合した。本発明者らは、ジヒドロ-1H-ベンゾイミダゾール-2-イル(N-DBI)誘導体、特に3-ジメチル-2-フェニル-2,3-ジヒドロ-1H-ベンゾイミダゾール(N-DMBI)を使用してPC61BMをドープした。本発明者らは、PC61BM前駆体溶液を0.25wt%のN-DMBIでドープした。次いで、この溶液を0.45μm PTFEフィルターを使用して濾過した。基材を80℃で予熱し、次いで、本発明者らは、10%超の相対湿度(RHM)の乾燥空気雰囲気下、4000rpmで20秒間、この溶液を動的にスピンコーティングし、基材を80℃で10分間アニールした。
【0329】
ACN/MA MAPbI3ペロブスカイト前駆体溶液の調製:
この操作において、本発明者らは、アセトニトリル(CH3CN)/メチルアミン(CH3NH2)(ACN/MA)MAPbI3溶液中のMA含量を制御することにより、より高い再現性を持つより優れたタンデム性能が得られることを発見した。ACN/MA MAPbI3溶液中の過剰のMAは、薄く不完全な中間層のピンホールを通って潜在的に浸透し得るため、下部の接合を部分的又は全体的に溶解し得る。したがって、ペロブスカイトを溶解するのに要する必要最低限量のMAを含む溶液を用いた。溶液中のMA含量の制御は、MA流量及び撹拌速度を制御することにより潜在的に行うことができるが、これらのパラメータを正確に制御することは場合によっては困難なことがあった。代わりに、本発明者らは、2種のACN MAPbI3分散体を調製し、一方を、過剰のMAを含めて完全なACN/MA MAPbI3溶液とし、他方を、MAを含まないACN MAPbI3分散体とした。スピンコーティングの直前に、過剰のMAを有するACN/MA MAPbI3を、ACN MAPbI3分散体に、ゆっくりと、この分散体が完全に溶解し、完全な溶液になるまで、添加した。得られた溶液は、臨界溶解点でのACN/MA MAPbI3溶液である。ACN/MA MAPbI3溶液及びACN MAPbI3分散体の調製を以下に記載する。MAを含まないACN MAPbI3ペロブスカイト前駆体溶液を、窒素下で、前駆体塩のヨウ化メチルアンモニウム(MAI)(Dyesol)及びヨウ化鉛(PbI2)(TCI)を使用してMAIでは1.03M及びPbI2では1Mの濃度で無水アセトニトリル(ACN)(Sigma Aldrich)中に添加して調製し、非化学量論溶液(1.03:1=MAI:PbI2)を得た。次いで、この溶液を超音波浴中で1時間、超音波処理してMAIとPbI2を完全に反応させ、ACNで充填したバイアルの底に黒色のペロブスカイト分散体を析出させる。
【0330】
ACN/MA MAPbI3ペロブスカイト前駆体溶液を、Noelら(N. K. Noel, S. N. Habisreutinger,B. Wenger, M. T. Klug, M. T. Horantner, M. B. Johnston, R. J. Nicholas, D. T. Moore, H. J. Snaith, Energy Environ. Sci. 2017, 10, 145を参照)によって記載される適合法を用いて調製した。本発明者らは、先ず、上記と同じ調製法を用いてACN/MA MAPbI3ペロブスカイト前駆体溶液を調製する。ペロブスカイトをACN中に溶解するために、エタノール中のメチルアミン(MA)の溶液(Sigma Aldrich、33wt%)を、氷浴中に入れておいたエアレーター中に入れた。次いで窒素を溶液中にバブリングして、MA溶液を脱気した。次いで生成されたMAガスを、乾燥剤(Drietire及びCaO)で充填された乾燥管に通した。大型電磁式撹拌子を約700rpmの速度で使用してACN/MA MAPbI3分散体を激しく撹拌しながら、黒色分散体にガスをバブリングした。分散体を15分間バブリングして黒色ペロブスカイト粒子を完全に溶解し、透明な淡黄色の溶液を得た。本発明者らは、この溶液が、ACN/MA MAPbI3溶液中に「過剰」量のMAを有するものであることに留意した。
【0331】
ACN/MA MAPbI3ペロブスカイト層の調製:ACN/MA MAPbI3前駆体ペロブスカイト溶液(その臨界溶解点における)を、10%超の相対湿度(RHM)の乾燥空気雰囲気下、5000rpmで20秒間、即座に動的にスピンコーティングする。次いで、50μlのMACl(Alfa Aesar、イソプロパノール中2mg/ml)を6000rpmで20秒間、動的にスピンコーティングすることにより、塩化メチルアンモニウム(MACl)の後処理を実施した。次いで膜を、80℃の空気雰囲気下、オーブン中で90分間アニールした。このアニーリングプロセスの間、サンプルを大型ガラス容器で覆い、ダスト汚染を防止した。
【0332】
スピロ-OMeTAD正孔輸送層の製作:クロロベンゼン中の85mg/mlの2,2',7,7'-テトラキス-(N,N-ジ-p-メトキシフェニルアミン)9,9'-スピロビフルオレン(スピロ-OMeTAD)(Lumtec)溶液を動的にスピンコーティングすることにより、電子遮断層を堆積させた。スピロ-OMeTAD溶液1ml当たり20μlのリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(アセトニトリル溶液中の520mg/mL)及びスピロ-OMeTAD溶液1mL当たりの33μlの4-tert-ブチルピリジン(tBP)を添加した。スピンコーティングは動的に行い、10%超の相対湿度(RHM)の乾燥空気雰囲気下、2000rpmで30秒間実施した。サンプルをデシケーター中で24時間静置して酸化させた。
【0333】
下部セル(BC)の製作:PC61BM/ACN/MA MA-MAPb0.75Sn0.25I3/スピロ(TFSI)2PC61BM層の製作:30mgml-1のPC61BM(99%、solenne)を無水クロロベンゼン(CB)(sigma)及び無水クロロホルム(CF)溶媒の混合物中に溶解することにより、フェニル-C61-酪酸メチルエステル(PC61BM)前駆体溶液を調製した。溶媒を2対1のCBとCFとの体積比で混合した。本発明者らは、PC61BMをジヒドロ-1H-ベンゾイミダゾール-2-イル(N-DBI)誘導体、特に3-ジメチル-2-フェニル-2,3-ジヒドロ-1H-ベンゾイミダゾール(N-DMBI)を使用してドープした。本発明者らは、PC61BM前駆体溶液を0.25%wt%のN-DMBIでドープした。次いでこの溶液を0.45μm PTFEフィルターを使用して濾過した。基材を80℃で予熱し、次いで、本発明者らは、この溶液を、10%超の相対湿度(RHM)の乾燥空気雰囲気下、4000rpmで20秒間、動的にスピンコーティングし、基材を80℃で10分間アニールした。
【0334】
ACN/MA-MA Pb0.75Sn0.25I3ペロブスカイト前駆体溶液の調製:混合金属ACN/MA MAPb0.75Sn0.25I3ペロブスカイト前駆体溶液を得るために、本発明者らは、ACN/MA MAPbI3とACN/MA MAPb0.5Sn0.5I3(MAを含まない)とを1:1の体積比で混合し、ACN/MA MAPb0.75Sn0.25I3を得た。MAを含まないACN/MA MAPb0.5Sn0.5I3溶液ペロブスカイト前駆体溶液を、窒素下で、前駆体塩のヨウ化メチルアンモニウム(MAI)(Dyesol)、ヨウ化鉛(PbI2)(TCI)、及び無水ヨウ化スズ(SnI2)ビーズ(TCI)を使用して、MAIでは0.8M、PbI2では0.46M、及びSnI2では0.46Mの濃度で無水アセトニトリル(Sigma Aldrich)中に添加して調製し、15%過剰の金属塩(1:1.15=MAI:PbI2+SnI2)を有する非化学量論溶液を得た。次いで、この溶液を窒素下、70℃で1時間撹拌して、MAIと混合金属とを完全に反応させ、次いで黒色のペロブスカイト分散体をACNで充填させたバイアルの底に析出させた。
【0335】
ACN/MA MAPbI3ペロブスカイト前駆体溶液を、Noelらによって記載される適合法を用いて調製した。本発明者らは、先ずMAIでは0.8M及びPbI2では0.46MでACN/MA MAPbI3ペロブスカイト前駆体溶液を調製し、15%過剰の金属塩(1:1.15=MAI:PbI2)を有する非化学量論溶液を得た。ペロブスカイトをACN中に溶解するために、エタノールH2O中のメチルアミン(MA)の溶液(Sigma Aldrich、40wt%)を、氷浴中に入れておいたエアレーター中に入れた。次いで、窒素を溶液中にバブリングして、MA溶液を脱気した。次いで生成されたMAガスを、乾燥剤(Drietire及びCaO)で充填された乾燥管に通した。大型電磁式撹拌子を約700rpmの速度で使用してACN/MA MAPbI3分散体を激しく撹拌しながら、黒色分散体にガスをバブリングした。分散体を15分間バブリングして黒色ペロブスカイト粒子を完全に溶解し、透明な淡黄色の溶液を得た。本発明者らは、この溶液が、ACN/MA MAPbI3溶液中に「過剰」量のMAを有するものであることに留意した。次いで、溶液を約3時間、活性化3Åモレキュラーシーブ(分子ふるい)と共に窒素中に保存し、MAバブリングプロセス中に導入されたH2Oを全て除去した。
【0336】
ACN/MA MAPb0.75Sn0.25I3ペロブスカイト層:この前駆体ペロブスカイト溶液を即座に、窒素グローブボックス中で、5000rpmで20秒間動的にスピンコーティングする。第2の後続スピンコーティング工程を用いて塩化メチルアンモニウム(MACl)を後処理として堆積した。IPA中の2mg ml-1のMAClの溶液を6000rpmで20秒間、動的にスピンコーティングした。次いで、膜を窒素中80℃で90分間アニールした。
【0337】
スピロ(TFSI)2合成:MAPb0.75Sn0.25I3ペロブスカイトに使用されるスピロ(TFSI)2正孔輸送層を、Nguyenら(W. H. Nguyen, C. D. Bailie, E. L. Unger, M. D. McGehee, J. Am. Chem. Soc. 2014, 136, 10996を参照)によって記載される適合法を用いて調製した。本発明者らは、先ず、2,2',7,7'-テトラキス-(N,N-ジ-p-メトキシフェニルアミン)9,9'-スピロビフルオレン(スピロ-OMeTAD)(Lumtec)溶液をクロロベンゼン(CB)中に2mg ml-1の濃度で溶解した。別途、本発明者らは、銀(I)ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(Ag-TFSI)をメタノール中に100mg ml-1で溶解した。本発明者らは、両方の溶液を同量で撹拌しながらゆっくり混合した。最終モル比は1対0.95(スピロ-OMeTAD対Ag-TFSI)である。次いで、本発明者らは、混合液を終夜撹拌しながら置いた。本発明者らは、溶液を2μmのPTFEフィルターで濾過してAgコロイドを除去した。本発明者らは、元の体積の約5%が残るまで、ロータリーエバポレーターを使用してCBを除去した。本発明者らは、次いで、トルエンを初期CB体積の50%の体積で、残りのフラスコに添加した。本発明者らは、溶液を冷蔵庫内に24時間入れておき、黒色の微粉を析出させた。黒色粉末が完全に沈着したら、本発明者らは、ガラスフリットフィルターを使用して過剰のトルエンを除去した。本発明者らは、粉末を4℃の冷トルエンで洗浄した。粉末が乾燥したら、本発明者らは、メタノール溶液中20mg ml-1を調製した。この黒色粉末は、メタノール中で低い溶解度を有さないはずであり、これは沈殿過程を開始する。本発明者らは、溶液を4℃で終夜冷蔵した。黒色粉末をバイアルの底から回収した。本発明者らは、ガラスフリットフィルターを使用して過剰のトルエンを除去し、4℃のメタノールで洗浄した。乾燥したら、本発明者らは、スピロ(TFSI)2粉末を収集し、秤量した。
【0338】
10wt%のスピロ(TFSI)2をドープしたスピロ-OMeTAD正孔輸送層の製作:スピロ(TFSI)2をドープしたスピロ-OMeTADを、窒素グローブボックス中、2000rpmで30秒間、動的にスピンコーティングすることにより、電子遮断層を堆積させた。この前駆体溶液は、クロロベンゼン中の7.25mg ml-1のスピロ(TFSI)2及び65.25mg ml-1の2,2',7,7'-テトラキス-(N,N-ジ-p-メトキシフェニルアミン)9,9'-スピロビフルオレン(スピロ-OMeTAD)(Lumtec)溶液で構成される72.5mg ml-1 wt%のスピロ溶液を用いて調製した。スピロ-OMeTAD溶液に添加物は添加しなかった。
【0339】
下部セル(BC)の製作:PEDOT:PSS/FA0.83Cs0.17Pb0.5Sn0.5I3/PC61BM/BCP
FA0.83Cs0.17Pb0.5Sn0.5I3ペロブスカイト前駆体の調製:窒素雰囲気下で、FAI(Dyesol)、CsI(99.9%、Alfa Aesar)、PbI2(99.999%、Alfa Aesar)、及びSnI2(99.999%、Alfa Aesar)を体積比で4:1のDMF:DMSOの混合溶媒中に溶解することにより、1.2MのFA0.83Cs0.17Pb0.5Sn0.5I3の化学量論溶液を調製した。また、60mMのフッ化スズ(II)(SnF2、99%、Sigma Aldrich)及び36mMのチオシアン酸鉛(II)(99.5%、Sigma Aldrich)も溶液中に溶解した。
【0340】
デバイスの調製:アセトン及びIPA中で逐次的にすすぐことにより、パターン化インジウムスズ酸化物(ITO)基材を清浄した。乾燥したら、基材をO2プラズマで10分間清浄した。プラズマ処理後すぐに、PEDOT:PSS溶液(PVP AI4083、Heraeus、メタノールとの体積比1:2)を周囲条件、4krpmで30秒間、スピンコーティングし、後続して150℃の環境で10分間アニールした。デバイスを即座にN2グローブボックスに移した。ペロブスカイト膜を製作する直前に、PEDOT:PSSでコーティングされたITO基材を再度、120℃で10分間アニールした。回転変化(ramp)6秒、3.6krpmで14秒間、溶液をスピンコーティングすることによりペロブスカイト膜を製作した。スピンコーティングプログラムを開始してから13秒後に、200μLのアニソールを、回転する基材上に分注した。スピンコーティングが終了したら、N2流を膜に15秒間適用し、次いですぐに120℃で10分間アニールした。PC61BMの高温溶液(90℃)50uL(体積比で3:1のクロロベンゼン:1,2-ジクロロベンゼンの混合溶媒中に溶解した20mg/mL)を、2krpmで30秒間、動的にスピンコーティングし、後続して90℃で2分間アニールすることによりPC61BM層を製造した。室温まで冷却したら、バソクプロイン(BCP、98%、Alfa Aesar)の0.5mg/mL溶液70μLを4krpmで20秒間、動的にスピンコーティングした。
【0341】
電極:100nm銀又は金電極を、約10-6Torrの真空下、約0.2nm・s-1の速度で、熱的に蒸発させた。
【0342】
太陽電池の特性評価:Abet Class AAB太陽2000シミュレータにより発生される放射照度100mWcm-2、模擬AM1.5太陽光下で、NREL較正KG5フィルタリングSi基準セルにより強度が校正された、電流密度-電圧(J-V)曲線を測定した(2400 Series SourceMeter, Keithley Instruments)。不整合率は1%未満になると算出された。太陽電池の活性領域は0.0919cm-2である。順方向J-V走査は順方向バイアス(FB)から短回路(SC)まで測定され、逆方向走査は短回路から順方向バイアスまで測定され、両方とも走査速度は0.25V s-1だった。1太陽照射下、整定時間5秒及び予測されるVOCを超える0.3Vの順方向バイアスが、走査前に行われた。
【0343】
EQE特性評価:TC及びBCでそれぞれ3W 470~475nm LED及び3W 730~740nm LEDで測定されないサブセルを光学的にバイアスすることにより多接合EQEを測定した。測定中、光学的にバイアスされたサブ接合のVocに等しい負バイアスをタンデムに適用(印加)した。これにより、短絡状態のタンデムの応答を測定することが可能になる。
【0344】
過渡光導電率:本文に記載する様々な電荷キャリア密度を有するように、470nmに調整され、7nsのパルス、10Hzで励起されるNd:YAGレーザー励振源を様々な範囲のフルエンスで使用する。このパルス光はサンプル面全体に照射され、膜を均一に励起する。24Vのバイアスが面内(横方向)の電極にわたって適用される。ここで、ペロブスカイト膜及びAu電極間の定抵抗は、サンプルの抵抗と比較してかなり小さいため、本発明者らは、2つの電極の導電率測定を用いる。可変抵抗器は、回路中でサンプルと直列にあり、常にサンプル抵抗の1%未満である。本発明者らは、並列オシロスコープ(1MΩ)を通して可変直列抵抗器における電圧降下を監視し、サンプルにおける2つの面内Au電極(4mmのチャネル間距離)にわたる電位降下を決定した。ペロブスカイト膜を、5mmのチャネル幅を有するようにスクライブし、200nmの不活性PMMAでコーティングする。過渡光導電率(σPh)を、式
【0345】
【数2】
(式中、Rrは可変抵抗(variable resistor)であり、Vbiasはバイアス電圧であり、lはチャネル間の長さであり、wはチャネル幅であり、tは膜厚である)
によって算出した。
【0346】
モデリング:
概要:本発明者らは、一般的な伝達マトリックス法(TMM)を用いてスタック(積み重ね)の光学特性をモデル化した(E. Centurioni, Appl. Opt. 2005, 44, 7532を参照)。全ての計算は、NumPy及びSciPyライブラリを多用するPythonで行った。波長依存複素屈折率、層厚さ及び入射角を入力値として入れた。TMMモデルは、スタック中の電場分布を出力する。これを使用して各層の透過率T(E)、反射率R(E)及び吸収率A(E)を算出した。次いで、内部量子効率が一つになると想定することにより、各サブセルの短絡電流を決定した。
【0347】
【数3】
ここで、ΦAM1.5(E)は、AM1.5スペクトルからの光子束である。
【0348】
各サブセルからのJV曲線は、このモデル化されたJSCと最先端の単接合セルの電気特性とを合わせることにより得た。これを行うために、本発明者らは、単一ダイオード同等モデルに従って最先端の単接合のJV曲線をパラメータ化した:
【0349】
【数4】
式中、n、VT、RS、J0及びRSHはそれぞれ、電子電荷、300Kにおける熱電圧、直列抵抗、暗電流、及びシャント抵抗である。各多接合サブセルのJV曲線は、近似式中のJsunを多接合スタックから算出したJSCと置き換えることによりモデル化する。Jsun及び他の適合パラメータ間の相関性はごくわずかなため、本発明者らは、他のパラメータを変化させずにJsunを変化させることができると確信できる。Jainら(A. Jain, A. Kapoor, Sol. Energy Mater. Sol. Cells 2004, 81, 269を参照)の手法を用いて、Lambert W関数を用いる単ダイオードモデルを解した。全てのサブセルのJV曲線を算出した後、本発明者らは、これらを合わせて多接合JV曲線を得た(A. Hadipour, B. de Boer, P. W. M. Blom, Org. Electron. 2008, 9, 617を参照)。この合わせたJV曲線から最大点を算出する。
【0350】
光学及び電気モデルの入力:ITO、FTO、PEDOT:PSS、PCBM、スピロ-OMeTAD、Ag、MA0.4FA0.6Sn0.6Pb0.4I3及びMAPbI3の屈折率を文献(T. A. F. Konig, P. A. Ledin, J. Kerszulis, M. A. Mahmoud, M. A. El-Sayed, J. R. Reynolds, V. V. Tsukruk, ACS Nano 2014, 8, 6182; J. M. Ball, S. D. Stranks, M. T. Horantner, S. Huttner, W. Zhang, E. J. W. Crossland, I. Ramirez, M. Riede, M. B. Johnston, R. H. Friend, H. J. Snaith, Energy Environ. Sci. 2015, 8, 602; D. Shi, V. Adinolfi, R. Comin, M. Yuan, E. Alarousu, A. Buin, Y. Chen, S. Hoogland, A. Rothenberger, K. Katsiev, Y. Losovyj, X. Zhang, P. A. Dowben, O. F. Mohammed, E. H. Sargent, O. M. Bakr, Science 2015, 347, 519; V. S. Gevaerts, L. J. A. Koster, M. M. Wienk, R. A. J. Janssen, ACS Appl. Mater. Interfaces 2011, 3, 3252; M. Filipic, P. Loper, B. Niesen, S. De Wolf, J. Krc, C. Ballif, M. Topic, Opt. Express 2015, 23, A263; P. B. Johnson, R. W. Christy, Phys. Rev. B 1972, 6, 4370; M. T. Horantner, T. Leijtens, M. E. Ziffer, G. E. Eperon, M. G. Christoforo, M. D. McGehee, H. J. Snaith, ACS Energy Lett. 2017, 2, 2506; P. Loper, M. Stuckelberger, B. Niesen, J. Werner, M. Filipic, S.-J. Moon, J.-H. Yum, M. Topic, S. De Wolf, C. Ballif, J. Phys. Chem. Lett. 2015, 6, 66を参照)から得た。FA0.83Cs0.17Pb(Br0.7I0.3)3の消衰係数kは、ガラス上の厚さtの薄膜の透過率T及び反射率Rを測定し、関係式:
【0351】
【数5】
を用いることにより得た。k(λ)を得たら、本発明者らは、これをLorentz振動子(オシレーター)に換算してパラメータ化し、解析表現を得、これをクラマース-クローニッヒ変換式:
【0352】
【数6】
を介して屈折率n(λ)に変換した。MAPbI3及びMAPb0.75Sn0.25I3の電気特性を、文献中の最良と報告されているセルと同じもの又は同様のものから得る(S. S. Shin, E. J. Yeom, W. S. Yang, S. Hur, M. G. Kim, J. Im, J. Seo, 2017, 6620; R. Prasanna, A. Gold-Parker, T. Leijtens, B. Conings, A. Babayigit, H. G. Boyen, M. F. Toney, M. D. McGehee, J. Am. Chem. Soc. 2017, 139, 11117を参照)。FA0.83Cs0.17Pb(Br0.7I0.3)3サブセルでは、本発明者らは、本発明者らの最良のFA0.83Cs0.17Pb(Br0.7I0.3)3単接合セルのJV曲線を使用する(図7)。PCBMに埋め込まれるITOナノ粒子を説明するために、本発明者らは、75%のITO及び25%のPCBMを有するBruggeman有効媒質としてその屈折率をモデル化する。この有効媒質の屈折率は、次式を解することにより算出される:
【0353】
【数7】
式中、nITO、nPCBM及びfITOはそれぞれ、ITOの複素屈折率、PCBMの複素屈折率、及びITOの分率(有効媒質中)である。
【0354】
タンデムのシミュレーション
FA0.83Cs0.17Pb(Br0.7I0.3)3/MAPbI3シミュレーション-図4A、B:光学モデルに使用される厚さは、タンデムのSEM断面から得られる。提供されるFA0.83Cs0.17Pb(Br0.7I0.3)3及びMAPbI3の電気特性は、本発明者ら独自の単接合デバイスから抽出される(図7)。点線のJVは、文献中の最良のACN処理されたMAPbI3セルと同様にMAPbI3が実行すると想定される性能をモデル化する。
【0355】
【表1】
【0356】
FA0.83Cs0.17Pb(Br0.7I0.3)3/MAPbI3(最適化)-図4C、D:本発明者らは、非ペロブスカイト層の厚さの上限を50nmとする。本発明者らは、MgF2反射防止コーティングを加える。本発明者らは、微分展開アルゴリズムを用いてペロブスカイト層及び反射防止コーティングの厚さを最適化して限界電流を最大化する。FA0.83Cs0.17Pb(Br0.7I0.3)3の電気特性は、本発明者ら独自のデバイスからのものである(図7)。MAPbI3の特性は、文献中の最良のMAPbI3セルからのものである(S. S. Shin, E. J. Yeom, W. S. Yang, S. Hur, M. G. Kim, J. Im, J. Seo, J. H. Noh, S. Il Seok, Science 2017, 356, 167を参照)。点線のJV曲線は、現在最先端のペロブスカイトと同様に上部セルが電気的に実行すると想定されるタンデムの性能をモデル化する。本発明者らは、これのためのHoerantnerらの手法(M. T. Hoerantner, T. Leijtens, M. E. Ziffer, G. E. Eperon, M. G. Christoforo, M. D. McGehee, H. J. Snaith, ACS Energy Lett. 2017, 2, 2506を参照)に従い、EQEEL=0.01、RS=4・10-2Ωcm2及びRSH=10MΩcm2と想定する。
【0357】
【表2】
【0358】
FA0.83Cs0.17Pb(Br0.7I0.3)3/MAPbI3/MA0.4FA0.6Pb0.4Sn0.6I3(最適化)シミュレーション-図4E、F:図E、Fの計算は、図C、Dと同様に行う。点線の三重接合JV曲線では、下部セル及び上部セルの両方は、現在最先端のペロブスカイト電池としてモデル化される。
【0359】
【表3】
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図8D
図9
図10
図11A
図11B
図12A
図12B
図13A
図13B
図14A
図14B
図14C
図14D
図15A
図15B
図16A
図16B
図16C
図17A
図17B
図17C
図17D