(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-25
(45)【発行日】2024-10-03
(54)【発明の名称】オレオカンタールタイプのセコイリドイドを得る方法、及びそれぞれの医薬製剤を製造する方法
(51)【国際特許分類】
C07C 67/30 20060101AFI20240926BHJP
C07C 69/734 20060101ALI20240926BHJP
C07D 309/28 20060101ALI20240926BHJP
C07C 69/732 20060101ALI20240926BHJP
A01P 1/00 20060101ALI20240926BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20240926BHJP
A01N 37/42 20060101ALI20240926BHJP
A01N 43/16 20060101ALI20240926BHJP
A01N 25/02 20060101ALI20240926BHJP
A61K 31/351 20060101ALI20240926BHJP
A61K 31/222 20060101ALI20240926BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240926BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240926BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240926BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20240926BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20240926BHJP
A61P 7/02 20060101ALI20240926BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20240926BHJP
【FI】
C07C67/30
C07C69/734 Z CSP
C07D309/28
C07C69/732 Z
A01P1/00
A01P3/00
A01N37/42
A01N43/16 Z
A01N25/02
A61K31/351
A61K31/222
A61P35/00
A61P25/28
A61P3/10
A61P3/06
A61P9/10 101
A61P7/02
A23L33/10
(21)【出願番号】P 2021547339
(86)(22)【出願日】2020-02-11
(86)【国際出願番号】 GR2020000015
(87)【国際公開番号】W WO2020165614
(87)【国際公開日】2020-08-20
【審査請求日】2023-02-08
(32)【優先日】2019-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GR
(73)【特許権者】
【識別番号】521355957
【氏名又は名称】オムファックス エスエイ
【氏名又は名称原語表記】OMPHAX SA
(74)【代理人】
【識別番号】100106448
【氏名又は名称】中嶋 伸介
(72)【発明者】
【氏名】プロコピオス・マギアティス
(72)【発明者】
【氏名】エレニ・メリオウ
(72)【発明者】
【氏名】パナギオティス・ディアマンタコス
(72)【発明者】
【氏名】アイミリア・リガコウ
【審査官】奥谷 暢子
(56)【参考文献】
【文献】特表2022-521065(JP,A)
【文献】国際公開第2017/077134(WO,A1)
【文献】特許第6351124(JP,B2)
【文献】Armandodoriano B.,Biophenolic components of olives,Food Research International,2000年,33,475-485
【文献】Antonio P.,Synthesis Biological Evaluation, and Molecular Modeling of Oleuropein and its Semisynthetic Derivatives as Cyclooxygenase Inhibitors,Journa of agricultural and Food Chemistry,57,2009年,11161-11167
【文献】Milena R.,Antioxydant activity of oleuropein and Semisynthetic acetyl-derivatives determined by measuring malondialdehyde in rat brain,Journal of Pharmacy and Pharmacology,69,2017年,1502-1512
【文献】Rita L.,1H and 13C NMR characterization of new oleuropein aglycones,Journal of the Chemical Society,Perkin Transaction 1,12,1995年,1519-1523
【文献】Thielmann J.,Antimicrobial activity of Olea europaea Linne extracts and their applicability as natural food preservative agents,International Journal of Food Microbiology, Elsevier BV,NL,251,2017年,48-66
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
A01P
A01N
C07D
A61K
A61P
A23L
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイプI及び/又はII:
【化3】
(ただし、R
1=H又はOHであり、R
2=H又はCOOCH
3であり、R
3=X1である)のセコイリドイドを、個別に又はいずれの組み合わせで得る方法であって、
前記方法において、
タイプI及び/又はII(ただしR
1=H又はOHであり、R
2=H又はCOOCH
3であり、R
3=CHOである)のセコイリドイド、及びその互変異性体を、個別の形態で又はいずれの組み合わせで含有する、Olea europaea L種並びにその全ての亜種及び栽培品種のオリーブオイルを、平均分子量200~400のポリエチレングリコール(PEG200~PEG400)を含む溶媒の群から選択される、オリーブオイルと混和しない親水性溶媒と、1:1~1:100である溶媒:オリーブオイルの比で接触させ、5分~24時間の期間にわたって激しく撹拌し、混合物を静置し、2つの相を重力又は遠心分離によって分離して、重い方の相を回収し、溶液をろ過によって清澄化して、溶液(A1)を得、ここで前記溶液(A1)は、式I及び/又はIIの物質(ただし、R
1=H又はOHであり、R
2=H又はCOOCH
3であり、R
3=X1である)を、個別に又はいずれの組み合わせで含有する、セコイリドイドを得る方法。
【請求項2】
以下のステップ:
前記溶液(A1)を、pH=<7の脱イオン蒸留水と、1:1~1:100である溶媒:水の比で混合し、1~24時間の期間にわたって撹拌するステップ;
不溶性の成分をろ過によって除去するステップ;並びに
溶液(B)を回収するステップであって、前記溶液(B)は、式I及び/又はIIの前記物質(ただし、R
1=H又はOHであり、R
2=H又はCOOCH
3であり、R
3=CH(OH)
2である)を、個別に又はいずれの組み合わせで含有する、ステップ
を更に含む、請求項1に記載のセコイリドイドを得る方法。
【請求項3】
以下のステップ:
前記溶液(B)を、吸着樹脂を内包したカラムに通すステップ;
前記樹脂を、メタノール、エタノール、アセトニトリル、及びアセトンを含む溶媒の群から選択される、水と混和できる低沸点有機溶媒(<100℃)で洗浄するステップ;
溶液を回収するステップ;
前記溶液を減圧下で気化させることによって濃縮して、産物(C)を製造するステップであって、前記産物(C)は、式I及び/又はIIの前記物質(ただし、R
1=H又はOHであり、R
2=H又はCOOCH
3であり、R
3=CHOである)、並びにその互変異性体を、そのいずれの物質を個別に、又はいずれの組み合わせで含有する、ステップ
を更に含む、請求項2に記載のセコイリドイドを得る方法。
【請求項4】
以下のステップ:
式Iの化合物(ただし、R
1=H又はOHであり、R
2=H又はCOOCH
3であり、R
3=CH(OH)
2である)を個別に又はいずれの組み合わせで選択的に含有する前記溶液(B)において、NaHCO
3を用いてpHを7.5~8に調整した後、前記溶液の水性部分を気化させ、残渣を非極性有機溶媒に再溶解させ、ろ過し、気化させて産物(E)を抽出するステップであって、前記産物(E)は、式IIの前記物質(ただし、R
1=H又はOHであり、R
3=CHO又はX1である)、及びその互変異性体を、個別に又はいずれの組み合わせで含有する、ステップ
を更に含む、請求項2に記載のセコイリドイドを得る方法。
【請求項5】
タイプI及び/又はII
【化3】
(ただし、
I:R
1=
Hであり、R
2=H又はCOOCH
3であり、R
3=X1である
;
II:R
1
=H又はOHであり、R
3
=X1である)のセコイリドイド。
【請求項6】
タイプI及び/又はII
【化4】
(ただし:
I:R
1=Hであり、R
2=H又はCOOCH
3であり、R
3=X2である
;
II:R
1=H又はOHであり、R
3=X2である)
のセコイリドイド。
【請求項7】
経口若しくは経皮投与のための医薬製剤、又は注射用溶液、又は乾燥及び圧縮後に製造される坐剤若しくは錠剤を製造するため
に適切な賦形剤と混合された、タイプI及び/又はII:
【化5】
(ただし:
I:R
1=Hであり、R
2=H又はCOOCH
3であり、R
3=X1又はX2である
;
II:R
1=H又はOHであり、R
3=X1又はX2である)
のセコイリドイドの、個別の又はいずれの組み合わせでの使用。
【請求項8】
栄養補助食品の製造のため
に適切な賦形剤と混合された、タイプI及び/又はII:
【化5】
(ただし、
I:R
1=
Hであり、R
2=H又はCOOCH
3であり、R
3=X1又はX2である
;
II:R
1
=H又はOHであり、R
3
=X1又はX2である)
のセコイリドイドの使用。
【請求項9】
癌、中枢神経系の変性疾患、糖尿病、高脂血症、炎症性疾患の治療において使用するための、並びにアテローム性動脈硬化症のプラーク及び血栓の形成を防止するための、請求項7に記載の医薬製剤。
【請求項10】
固体材料を殺菌するための溶液を調製するための、タイプI及び/又はII:
【化5】
(ただし、R
1=H又はOHであり、R
2=H又はCOOCH
3であり、R
3=X1又はX2である)
のセコイリドイドの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、オリーブオイル中に存在する主要なセコイリドイドフェノールの生体活性ジオール形態、及びその特定の異性形態又は誘導体を純粋な形態又は混合物として得る方法、これらを含有する医薬製剤、並びに上記医薬製剤の治療的使用に関する。本出願は、医学、薬学及び食品科学の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
Olea europaea L並びにその全ての亜種及び栽培品種に由来するオリーブオイルは、以下のタイプI及び/又はII:
【化1】
(ただしR
1=H又はOHであり、R
2=H又はCOOCH
3であり、R
3=CHOである)のセコイリドイド並びにその互変異性体を含有する。
【0003】
より特定的には、タイプIのセコイリドイド、S-(E)-オレオカンタール(1)(R1=R2=H、R3=CHO)、S-(E)-オレアセイン(2)(R1=OH、R2=H、R3=CHO)、R/S-(E)-オレウロペイノジアール(3a、b)(R1=OH、R2=COOCH3、R3=CHO)、及びR/S-(E)-リグストロジアール(4a、b)(R1=H、R2=COOCH3、R3=CHO)は、オリーブオイルの大半の種の中に0~3000mg/Kgの濃度で見られる主要なフェノール性物質である(非特許文献1:ournal of Agricultural and Food Chemistry 2014, 62(3), 600-607~非特許文献2:OLIVAE 2015, 122, 22-35)。上記物質(3a、b)及び(4a、b)は、S-(E)-オレオミッショナル(3)及びS-(E)-オレオコロナール(4)の互変異性体ジアルデヒド形態と平衡状態で存在し、そして条件に応じて通常よりも低い濃度でオリーブオイル中に存在する一般的なタイプIIのモノアルデヒド形態(5a、b及び6a、b)に変化できる。
【0004】
全ての物質(1~6)に関して、天然のソースからの単離の公開された方法又は化学合成の方法並びに多数の公開された生物学的及び薬学的特性(抗炎症性、抗癌性、抗糖尿病性、神経刺激性、抗酸化性)が存在する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Journal of Agricultural and Food Chemistry 2014, 62(3), 600-607
【文献】OLIVAE 2015, 122, 22-35
【文献】J. Chem. Soc., Perkin trans. 1995, 1, 1519-1523
【文献】Food Res. Intl. 2000, 33: 475-485
【文献】Phytochemistry Letters 8 (2014) 163-170
【文献】J. Agric. Food Chem. 2015、66、6053-6063
【文献】国際公開第2018017967号
【文献】仏国公開特許第2904312(A1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、本発明者らは、自ら実施した実験に基づいて、これらの物質が真の生体利用可能な活性形態ではないことを認識している。実際には、物質(1~6)は、人間の体液と接触すると、各物質に関して異なる比較的低い速度で水と化学的に反応し、活性形態であるS-(E)-オレオカンタジオール(7)、S-(E)-オレアセインジオール(8)、5S-(E)-オレオミッショナジオール(9)、5S-(E)-オレオコロナジオール(10)、オレウロペインジオール(11)、及びリグストロジオール(12)へと次第に変化する。これらは、物質(1~6)に比べて向上した活性及び大幅に向上した水溶性を示す。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、純粋な又は混合された形態の物質(7~12)、及び上記生体利用可能な形態(7~12)を別個に又は混合物として含有するため、人体に入ったときに活性化する必要のない、医薬製剤又は栄養補助食品又は化粧品の、製造を可能にする方法を開発することが、極めて重要である。同時に、既存の方法より高収率であり、また液体クロマトグラフィを用いた精製が必要ない、物質(1~6)又はその混合物の製造につながる新規の方法を発見することが、極めて重要である。
【0008】
現在まで、物質(7、8、10、11、12)の構造は完全かつ正確に分光分析的に解明されたことはなく、また、選択的な又は混合物の形態での産業上利用可能な製造方法は記述されていない。純粋なオレウロペインの酵素加水分解後の、物質(9)の分光データが記述されており(非特許文献3: J. Chem. Soc., Perkin trans. 1995, 1, 1519-1523)、また物質(9)は、オリーブ果実抽出物から、利用不可能な他の物質との混合物として、極めて低い収率で製造されてきた(非特許文献4: Food Res. Intl. 2000, 33: 475-485)。
【0009】
S-(Z)-オレアセインジオール及びS-(Z)-オレオカンタジオールの異性体を他の利用不可能な物質との混合物として極めて低い収率で製造するために使用される、Phillyrea種の植物の使用に関する参考文献が存在することに言及する必要がある(非特許文献5: Phytochemistry Letters 8 (2014) 163-170)。更に、異性物質S-(Z)-オレアセインジオール、S-(Z)-オレオカンタジオール、5S-(Z)-オレオミッショナジオール、及び5S-(Z)-オレオコロナジオールは、水とメタノールとの混合物を用いてオリーブオイルを抽出する際に、利用不可能な他の物質との混合物として、極めて低い収率で製造されるようである(非特許文献6: J. Agric. Food Chem. 2015、66、6053-6063)。
【0010】
物質(1~6)が、異なる官能基並びに特にそれぞれ異なる方法及び異なる条件(pH、温度、時間)下で水と反応できる2つのアルデヒド基を有することに留意することが極めて重要であり、したがって、具体的構造(7~12)と具体的な治療作用との関連は明らかでなく、発明的性質を有する。
【0011】
水によるオリーブオイルの抽出を用いる非特許文献7(国際公開第2018017967号)に記載された、物質(1)を製造する公知の方法が存在することも、強調しておく必要がある。この方法は、物質(1)の水性ナノエマルジョンの製造に関するものであり、本発明に記載されるような、物質(7)の真の水溶液に関するものではない。これは、重水中の関連するNMRスペクトル(
図1)によって実証されており、ここでは、3位からのアルデヒド基の略完全な排除を観察できる。この点は、本出願で言及されているものと類似の手順を使用するものの、最終的にはオレオカンタールのジオール形態(7)ではなくアルデヒド形態(1)のエマルジョンが得られる非特許文献7(国際公開第2018017967号)との極めて大きな違いである。
【0012】
また、オリーブオイルを水/アルコール混合物で抽出する、2008年2月1日付け非特許文献8(仏国公開特許第2904312(A1))が存在するが、ここでも、物質(7~12)、その活性、及びこれらを含有する水溶液の医薬としての潜在的使用に関する言及はない。
【0013】
本発明の革新の別の重要な要素は、抽出剤としての、オリーブオイルと混和しない高分子親水性アルコールの使用である。提案されるアルコール(PEG200~PEG400のサイズのポリエチレングリコール)は生体適合性であり、例えば1:1の比が必要な水とは対照的に、最高で1:100(溶媒:オリーブオイル)の比で標的物質を完全に抽出できる。本発明の方法は、生体適合性かつ非毒性の溶媒を最小限の量だけ用いて上記物質を抽出し、次にこれを水と混合して、真の溶液の形態でジオール形態(7~12)を放出でき、同時にこれをそのまま医薬製剤に組み込むことができるという利点を有する。
【0014】
PEG200~PEG400のサイズのポリエチレングリコール中の物質(13~18)の溶液は、オリーブオイルの抽出に従来使用されている水溶液又は単純アルコール(例えばメタノール)の溶液とは対照的に、極めて高い安定性を示し、医薬製剤の製造における利用が可能である。得られる溶液が、少なくとも12ヶ月にわたって、加水分解、酸化、及び重合のリスクなく安定したままであるため、このステージは従来の抽出法に比べて特に革新的である。また、過去に言及されているオリーブオイルの抽出におけるメタノールの使用(非特許文献6: J. Agric. Food Chem. 2015、66、6053-6063)では、メタノールの毒性により、得られた溶液をヒト用医薬製剤の製造に使用することは不可能であることも指摘しておくべきである。
【0015】
あるいは、ポリエチレングリコールの代わりにエタノール又はイソプロパノールを使用してよく、これらはそれぞれ、物質(1~6)のエチル又はイソプロピルヘミアセタールをもたらし、これらも水と接触するとジオール形態(7~12)を放出する。
【0016】
本発明に記載の物質の化学構造は、以下の通りである:
【化2】
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に従うオレオカンタジオール(7)の重水中での
1H-NMRスペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
S-(E)-オレオカンタジオール(7)、S-(E)-オレアセインジオール(8)、5S-(E)-オレオミッショナジオール(9)、5S-(E)-オレオコロナジオール(10)、オレウロペインジオール(11)、及びリグストロジオール(12)物質、又はこれらのうちのいずれの混合物を得る方法の原理
本発明者らは、自身が実施した実験に基づいて、オリーブオイル中に親油性アルデヒド形態で様々な濃度で存在する物質(1~6)を、オリーブオイルと混和しない中程度のサイズの親水性高分子アルコールと反応させて、ポリエチレングリコールヘミアセタール(13~18)へと変換でき、これをオリーブオイル層から選択的に抽出及び分離できることを発見した。次のステップでは、水と混合した後のポリエチレングリコールヘミアセタールは、ジオール(7~12)を提供できる。
【0019】
本発明の例示的な好ましい実施形態によると、得られる方法は以下のステップを含む:
1a. Olea europaea L並びにその全ての亜種及び栽培品種に由来する、物質(1~6)を含有するオリーブオイルを、ポリエチレングリコール(PEG200又はPEG400)と、PEG:オリーブオイル=1:1~100の比で混合して、5分~24時間の期間にわたって激しく撹拌する。混合物を静置し、重力又は遠心分離によって2つの相を分離させる。
【0020】
1b. ポリエチレングリコールヘミアセタール(13~18)の形態で溶解した物質を含有する、重い方の相を得て、必要に応じてろ過によって清澄化し、溶液A1を提供する。
【0021】
1c. 溶液A1をpH=<7の脱イオン蒸留水で、PEG:水=1:1又は1:10又は1:20又は1:100等の比で希釈し、物質は少なくとも1時間、最長で24時間後に、オレオカンタジオール、オレアセインジオール、オレオミッショナジオール、オレオコロナジオール、オレウロペインジオール及びリグストロジオールへと完全に変換される。いずれの不溶性成分をろ過によって除去して、溶液Bを提供する。
【0022】
1d. 溶液A1又はBは:水性キャリア、即ちシロップ、溶液、懸濁液と共に、医療製品若しくは栄養補助食品若しくは化粧品の成分として;又は注射用の溶液のための成分として;又は(クリーム若しくはゲルに組み込まれた)経皮投与製品のための成分として;又は吸入用製品の成分としてヒトに直接投与するために使用できる。
【0023】
1e. 溶液A1又はBを適切な濃度で用いて、賦形剤(例えばラクトース)との混合、流動床乾燥及び圧縮後に錠剤を、又は好適なベースとの混合後に坐剤を調製できる。なお、錠剤の調製中に、好適な賦形剤を使用し、また乾燥中に水分レベルを調整することによって、物質をジオール形態のままとすることができる。これは、仮に物質が親油性アルデヒド形態であれば起こらないであろう、錠剤の水中での即時溶解によって確認される。
【0024】
1f. 溶液Bを、吸着樹脂(例えばXAD4又はXAD16)を内包したカラムに通し、この樹脂を、水と混和できる低沸点有機溶媒(<100℃)(例えばメタノール、エタノール、又はアセトン)で洗浄し、得られた溶液を減圧下で濃縮して物質(1~6)(産物C)を提供する。
【0025】
具体的なケース:ステップ1aの開始材料のオリーブオイルが、物質(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、及び(6)のうちの1つのみを含有し、他のフェノール性誘導体を含有しないように、特に選択されるケースでは、プロセス1aは、溶液A1が、対応する形態のポリエチレングリコールヘミアセタール(13)又は(14)又は(15)又は(16)又は(17)又は(18)に溶解された物質を含有する、ステップ1bにつながり、これらのそれぞれについてステップ1cでは、溶液Bはジオール形態(7)又は(8)又は(9)又は(10)又は(11)又は(12)の物質を含有する。したがってステップ1fは、物質(1)又は(2)又は(3)又は(4)又は(5)又は(6)を純粋な形態で提供する。
【0026】
オレオカンタジオール(7)、オレアセインジオール(8)、オレオミッショナジオール(9)、オレオコロナジオール(10)、オレウロペインジオール(11)、及びリグストロジオール(12)、又はこれらの混合物の薬学的特性
1g. 0.5μMの等モル濃度の溶液A1又はBは、脂質過酸化を阻害することによって強力な抗酸化活性を示した。
【0027】
1h. 溶液A1又はBの細胞毒性活性の調査により、2.5μMの等モル濃度のオレオカンタジオール(7)、オレアセインジオール(8)、オレオミッショナジオール(9)、オレオコロナジオール(10)、オレウロペインジオール(11)、及びリグストロジオール(12)の混合物が、HeLa及びMCF‐7癌細胞の50%の死を誘発し得ることが示されたため、溶液A1又はB及びこれらに由来するいずれの医薬製剤は、癌の治療に使用できる。
【0028】
1i. 等モル濃度が25μMの溶液A1又はBは、COX‐2酵素の60%の阻害を示したため、溶液A1又はB及びこれらのいずれの医薬製剤は、炎症性疾患の治療に使用できる。
【0029】
1j. ケース1g~1iの拡張により、溶液A1又はBは、物質(1~6)が、その生物学的活性を測定するための実験が実施される水性媒体中で、オレオカンタジオール(7)、オレアセインジオール(8)、オレオミッショナジオール(9)、オレオコロナジオール(10)、オレウロペインジオール(11)及びリグストロジオール(12)へと少なくとも部分的に変換される全てのケースと同一の治療特性(神経保護、抗糖尿病、抗血栓)を有する。
【0030】
1k. 10%~40%w/vの物質(13~18)又は(7~12)を含有する溶液A1又はBは、殺菌剤として作用して固体材料の表面上の全ての微生物を殺滅し得ることが示された。
【0031】
上述の全ての医薬製剤は、抗癌、心臓保護、抗炎症、抗糖尿病、及び神経保護特性によって使用可能である。
【実施例】
【0032】
〔実施例1〕
オレオカンタール、オレアセイン、オレオミッショナル、オレオコロナール、オレウロペインアグリコン及びリグストロシドアグリコンを合計濃度1g/kgで含有するオリーブオイル(100L)を、PEG200(1L)と混合して10分間激しく撹拌する。この混合物を1時間静置し、2つの層を重力によって分離する。重い方の層を得てろ過し、不溶性の物質を除去する。清澄な溶液を、PEG200:水=1:20の比の、pH=<7の脱イオン蒸留水で希釈し、物質は24時間後にオレオカンタジオール、オレアセインジオール、オレオミッショナジオール、オレオコロナジオール、オレウロペインジオール、及びリグストロジオールに変換される。いずれの不溶性成分はろ過によって除去されている。最終的な溶液の、オレオカンタジオール、オレアセインジオール、オレオミッショナジオール、オレオコロナジオール、オレウロペインジオール及びリグストロジオールの合計含有量は、5g/kgである。
【0033】
〔実施例2〕
1g/Kgのオレオカンタールを含有し、他のフェノール2~6を含有しないオリーブオイル(100L)を、PEG200(1L)と混合して10分間激しく撹拌する。この混合物を1時間静置し、2つの層を重力によって分離する。重い方の層を除去してろ過し、不溶性の物質を除去する。清澄な溶液を、PEG200:水=1:10の比の蒸留水で希釈し、物質は24時間後にオレオカンタジオールへと変換される。いずれの不溶性成分はろ過によって除去されている。最終的な溶液のオレオカンタジオール含有量は10g/Lである。
【0034】
〔実施例3〕
実施例2の最終的な溶液(5mL)を、飽和糖溶液(95mL)と混合し、抗炎症活性を有する、50mg/100mLのオレオカンタジオールを含有するシロップを得る。
【0035】
〔実施例4〕
実施例1のポリエチレングリコール溶液(5mL)を水(95mL)と混合し、ヒドロキシプロピルセルロース(2g)を加える。得られたゲルの、オレオカンタジオール、オレアセインジオール、オレオミッショナジオール、オレオコロナジオール、オレウロペインジオール、及びリグストロジオールの合計含有量は、500mg/100mLであり、上記ゲルは炎症性疾患における局所的塗布に使用できる。
【0036】
2.水溶液中で、S-(E)-オレオカンタジオール(7)、S-(E)-オレアセインジオール(8)、5S-(E)-オレオミッショナジオール(9)、5S-(E)-オレオコロナジオール(10)、オレウロペインジオール(11)、及びリグストロジオール(12)、又はこれらの混合物を得る方法の原理
本発明の別の例示的な好ましい実施形態によると、この取得方法は、以下のステップを含む:
【0037】
2a. 物質(1~6)を含有するオリーブオイルをpH=<7の脱イオン蒸留水と水:オリーブオイル=1:100の比で混合して、5分~24時間の期間にわたって激しく撹拌する。混合物を静置し、重力又は遠心分離によって2つの相を分離させる。
【0038】
2b. 重い方の層を得る。これは、水に溶解した物質:オレオカンタジオール(7)、オレアセインジオール(8)、オレオミッショナジオール(9)、オレオコロナジオール(10)、オレウロペインジオール(11)、及びリグストロジオール(12)を含有する。不溶性成分をセルロースフィルタでのろ過によって除去し、溶液A2を得る。
【0039】
2c. 溶液A2を真空気化によって、溶液が乳状の形態になり始める飽和点まで濃縮する。
【0040】
2d. ステップ2cによる気化を水が完全に気化するまで又は凍結乾燥するまで継続すると、オレオカンタール、オレアセイン、オレオミッショナル、オレオコロナール、オレウロペインアグリコン及びリグストロシドアグリコン(並びにこれらの異性形態)の混合物が得られる(産物D)。
【0041】
2e. 溶液A2、又はステップ2cから得られた溶液は:水性キャリア、即ちシロップ、溶液、懸濁液中の医薬製剤若しくは栄養補助食品若しくは化粧品の成分として;又は注射用の溶液の成分として;又は(クリーム若しくはゲルに組み込まれた)経皮投与製品の成分として;又は吸入用製品の成分として、ヒトに直接投与するために使用できる。
【0042】
2f. ステップ2cからの溶液を適切な濃度で用いて、賦形剤(例えばラクトース)との混合、流動床乾燥及び圧縮後に錠剤を又は好適なベースとの混合後に坐剤を調製できる。
【0043】
したがって、上述の全ての医薬製剤は、抗癌、心臓保護、抗炎症、抗糖尿病及び神経保護特性によって使用可能である。
【0044】
具体的なケース:ステージ2aの開始材料のオリーブオイルが、物質(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、及び(6)のうちの1つのみを含有し、他のフェノール性誘導体を含有しないように、特に選択されるケースでは、プロセス2aは、上記水溶液が、対応するジオール形態(7)又は(8)又は(9)又は(10)又は(11)又は(12)に溶解された物質を含有する、ステップ2bにつながり、これらのそれぞれについてステップ2dでは、溶液の気化によって純度95%超の物質(1~6)が得られる。
【0045】
特記:
上述のステップ2b及び2cで得られた溶液は、水中での物質(7~12)の真の溶液であり、水性媒体中のアルデヒド形態(1~6)のエマルジョンではないことに留意されたい。これは、重水中の対応するNMRスペクトルによって証明されており、ここでは、物質(1~4)の3位からのアルデヒド基の略完全な排除を観察できる。この点は、本出願の実施例5で言及されているものと類似の手順を使用するものの、最終的にはジオール形態(7)ではなくジアルデヒド形態(1)のオレオカンタールのエマルジョンがもたらされる、非特許文献7(国際公開第2018017967号)との極めて大きな違いである。
【0046】
重水中でのオレオカンタジオール(7)の
1H-NMRスペクトルを示す
図1を参照すると、これは、(水と反応しなかった)単一のアルデヒド基を有するジオール形態の真の溶液であることが示されており、水中での、極めて低いパーセンテージで存在するジアルデヒド形態のエマルジョンではない。
【0047】
〔実施例5〕
オレオカンタール、オレアセイン、オレオミッショナル、オレオコロナール、オレウロペインアグリコン及びリグストロシドアグリコンの合計濃度が1g/Kgであるオリーブオイル(100L)をpH=<7の脱イオン蒸留水(100L)と混合し、24時間にわたって撹拌する。この混合物を1時間静置し、2つの層を重力によって分離する。重い方の層を得てろ過し、不溶性の物質を除去する。最終的な溶液の、オレオカンタジオール、オレアセインジオール、オレオミッショナジオール、オレオコロナジオール、オレウロペインジオール及びリグストロジオールの合計含有量は、500mg/Lである。
【0048】
〔実施例6〕
1g/Kgのオレオカンタールを含有し、他のフェノール2~6を含有しないオリーブオイル(100L)を、脱イオン蒸留水(100L)と混合して24時間にわたって機械的に撹拌する。この混合物を24時間静置し、2つの層を重力によって分離する。重い方の層を回収してろ過し、不溶性の物質を除去する。最終的な溶液のオレオカンタール含有量は500mg/Lである。
【0049】
オレウロペイン(5)及びリグストロシド(6)の環状アグリコンのモノアルデヒド形態を得る方法の原理
本発明のある好ましい実施形態によると、上記方法は以下のステップからなる:
【0050】
3a. オレオミッショナジオール(9)を含有するA2又はB水溶液のpHを、わずかにアルカリ性(7.5~8)に調整すると、気化後、2つの異性形態(5a、b)で存在するオレウロペインの環状アグリコンのモノアルデヒド形態が得られる。いずれの無機残渣を除去するために、気化の最終的な産物を有機溶媒(例えばジクロロメタン又は酢酸エチル)に溶解してろ過し、気化させて、産物Eを得る。
【0051】
3b. 初期状態の溶液A2又はBが、オレオミッショナジオール(9)の代わりにオレオコロナジオール(10)を含有する場合、上述の手順により、2つの異性形態(6a、b)のリグストロシドの環状アグリコンの純粋なモノアルデヒド形態が得られる。
【0052】
〔実施例7〕
1g/Kgのオレオコロナールを含有し、物質(1~3、5、6)のいずれも含有しないオリーブオイル(10L)を、蒸留水(100L)と混合して24時間にわたって機械的に撹拌する。この混合物を24時間静置し、2つの層を重力によって分離する。重い方の層を回収してろ過し、不溶性の物質を除去する。水性層のpHを7.6に調整し、溶液を24時間にわたって撹拌してろ過し、リグストロシドのモノアルデヒド環状アグリコンの溶液を得る。この溶液を気化させ、残渣をジクロロメタン(500mL)に再溶解させてろ過し、上記溶液を気化させて、リグストロシド環状アグリコン(6a、b)のモノアルデヒド形態(7g)を95%超の純度で得る。