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  • 特許-セラミックデバイスおよびその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-25
(45)【発行日】2024-10-03
(54)【発明の名称】セラミックデバイスおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/465 20060101AFI20240926BHJP
   H01G 4/12 20060101ALI20240926BHJP
   H01G 4/224 20060101ALI20240926BHJP
   H01G 4/30 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
C04B35/465
H01G4/12 270
H01G4/224 100
H01G4/30 201D
H01G4/30 201L
H01G4/30 311Z
H01G4/30 515
H01G4/30 516
H01G4/30 517
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2021566081
(86)(22)【出願日】2020-04-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-13
(86)【国際出願番号】 EP2020061472
(87)【国際公開番号】W WO2020224992
(87)【国際公開日】2020-11-12
【審査請求日】2022-01-04
【審判番号】
【審判請求日】2023-10-19
(31)【優先権主張番号】102019111989.8
(32)【優先日】2019-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】300002160
【氏名又は名称】ティーディーケイ・エレクトロニクス・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】TDK ELECTRONICS AG
【住所又は居所原語表記】Rosenheimer Strasse 141e, 81671 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ウォズニアック, ウーヴェ
(72)【発明者】
【氏名】グランビチラ, ハーマン
【合議体】
【審判長】宮澤 尚之
【審判官】河本 充雄
【審判官】小野 久子
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-124058(JP,A)
【文献】特開平7-272973(JP,A)
【文献】特開2012-072033(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B35/465
H01G 4/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック基体(1)を有するセラミックデバイスであって、前記セラミック基体は、主成分としてセラミック材料を含み、前記セラミック材料の一般式は、Axy1-x-vTi1-y+w3* (Mn227z* Duであり、ここで
Aは、ネオジム、プラセオジム、セリウムおよびランタンからなる第1の金属の群から選択された第1のドーピングであり、
Bは、ニオブ、タンタルおよびバナジウムからなる第2の金属の群から選択された第2のドーピングであり、
Cは、ベースセラミック材料の主成分であり、前記主成分は、カルシウム、ストロンチウムおよびバリウムからなる第3の金属の群から選択され、
およびDは、少なくとも1つの第1の化合物を含む添加剤であり、前記第1の化合物は、アルミニウム、ニッケルおよび鉄からなる第4の金属の群から選択される第4の金属を含み、
xは前記Aの量の割合、yは前記Bの量の割合、vは前記Aの空孔の量の割合、wは過剰のチタンの量の割合、zは前記Mn227の量の割合、uは、前記Dの量の割合であり、
0.0≦x<0.1、
0.0≦y<0.1、
0≦v<1.5*x、
0≦w<0.05、
0.01≦z<0.1、
0≦u<0.05の関係が適用される、セラミック基体(1)を有するセラミックデバイス。
【請求項2】
前記第1のドーピングは少なくとも2つの第1の金属を含み、および/または、前記第2のドーピングは少なくとも2つの第2の金属を含み、および/または、前記ベースセラミック材料の主成分は少なくとも2つの第3の金属を含む
請求項1に記載のセラミックデバイス。
【請求項3】
前記添加剤は、少なくとも1つの第1の化合物と第2の化合物を含み、前記第1の化合物および前記第2の化合物はそれぞれ1つの第4の金属を含み、前記第1の化合物に含まれる第4の金属は、前記第2の化合物に含まれる第4の金属とは異なる
請求項1または2に記載のセラミックデバイス。
【請求項4】
前記セラミック基体(1)は、複数のセラミック層と、前記セラミック層の間に設けられた内部電極(2)とを有する
請求項1から3のいずれか一項に記載のセラミックデバイス。
【請求項5】
前記内部電極(2)は、主成分としてニッケルを含む、請求項4に記載のセラミックデバイス。
【請求項6】
コンデンサである、
請求項1から5のいずれか一項に記載のセラミックデバイス。
【請求項7】
前記コンデンサは、0603型以下の構造を有する請求項6に記載のセラミックデバイス。
【請求項8】
前記コンデンサは、電気容量が10nF以下である請求項6または7のいずれか一項に記載のセラミックデバイス。
【請求項9】
前記コンデンサは、ESD電圧が8kVを超える請求項6から8のいずれか一項に記載のセラミックデバイス。
【請求項10】
前記セラミック基体(1)上にパッシベーション層(4)が設けられている請求項6から9のいずれか一項に記載のセラミックデバイス。
【請求項11】
前記セラミック基体に、ガラスから形成されたパッシベーション層(4)が塗布されている請求項1から10のいずれか一項に記載のセラミックデバイス。
【請求項12】
前記セラミック基体(1)は、90%以上の焼結密度を有する、
請求項1から11のいずれか一項に記載のセラミックデバイス。
【請求項13】
請求項4から12のいずれか一項に記載のセラミックデバイスの製造方法であって、
一般式CTiO3で表され、
ここでCが、前記ベースセラミック材料の主成分であり、前記主成分がカルシウム、ストロンチウムおよびバリウムからなる第3の金属の群から選択された第3の金属を含む、ベースセラミック材料を提供するステップと、
前記セラミック材料に、Mn22O7、第1の金属を含む第1のドーパント、および/または第2の金属を含む第2のドーパント、および/またはTiを含有する化合物、および/または第4の金属を含む前記少なくとも1つの第1の化合物を含む添加剤を添加し、混合して混合物を得るステップであって、
ここで前記第1の金属がネオジム、プラセオジム、セリウムおよびランタンからなる第1の金属の群から選択され、前記第2の金属がニオブ、タンタルおよびバナジウムからなる第2の金属の群から選択され、前記第3の金属がカルシウム、ストロンチウムおよびバリウムからなる第3の金属の群から選択され、前記第4の金属がアルミニウム、ニッケルおよび鉄からなる第4の金属の群から選択されるステップと、
前記混合物を粉砕して混合物の粉末を得るステップと、
前記混合物の粉末からセラミックグリーンシートを製造するステップと、
前記セラミックグリーンシートに前記内部電極(2)を形成するステップと、
前記セラミックグリーンシートを積層してグリーンシート積層体を得るステップと、
前記グリーンシート積層体を圧着し、圧着グリーンシート積層体を得るステップと、
前記圧着グリーンシート積層体を個片化し、個片化素子の未加工材を得るステップと、
前記個片化素子を脱炭し、脱炭素子を得るステップと、
前記脱炭素子を焼結して焼結素子を得るステップと、
前記焼結素子をアニールしてセラミック基体を得るステップと、
前記セラミック基体の外面を金属被覆で被覆して焼結し、セラミックデバイスを得るステップとを含むセラミックデバイスの製造方法。
【請求項14】
前記ベースセラミック材料の主成分は、少なくとも2つの第3の金属を含む
請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第1のドーパントは、少なくとも2つの第1の金属を含み、および/または、前記第2のドーパントは、少なくとも2つの第2の金属を含む
請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
少なくともアルミニウムとニッケルを含む添加剤を添加する
請求項13から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
ニッケルを含む金属含有スラリーを使用して前記内部電極(2)を形成する
請求項13から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
脱炭されたグリーンシートの積層体を、温度1200~1250℃、保持時間1~5時間で焼結する
請求項13から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
脱炭されたグリーンシート積層体を還元性雰囲気中で焼結する
請求項13から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記セラミック基体(1)を、ガラスから形成されたパッシベーション層(4)で被覆する
請求項13から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
空気中で前記アニールを行う、請求項13から20のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック材料を有するセラミック基体を含むセラミックデバイスに関する。また、本発明は、セラミックデバイスの製造方法に関する。
【0002】
セラミックデバイスは電子素子に広く使用されている素子である。電子素子の小型化及び有効電力への要求が高まる中、より小さいセラミックデバイスを提供する必要がある。しかしながら、従来のセラミック材料を用いたセラミックデバイスは、サイズが小さくなると、特にセラミックデバイスの電気的特性に悪影響を及ぼす。このため、従来のセラミック材料を用いたコンデンサを小型化することにより、例えば、コンデンサ内部の静電気放電(Electrostatic Discharge;ESD)に対する感度が高くなる可能性があり、ESDにより、コンデンサが使用不能となるおそれがある。
【0003】
国際出願ドイツ語翻訳文11 2012 000 669号には、これまでの先行技術によるセラミック素子の第1の例が記載されている。
【0004】
国際出願ドイツ語翻訳文11 2012 000 669号には、バリスタ機能を備えたラミネート半導体セラミックコンデンサおよびその製造方法が記載されており、特に、バリスタ機能に使用されるSrTiO3系粒界絶縁型半導体セラミックが開示されている。また、対応する半導体セラミックにドーパントを添加する実施形態が開示されており、ドーパントは、主にランタン、ネオジム、ニオブおよびタンタルから選択される。
【0005】
フランス特許公報2 799 301号には、これまでの先行技術によるセラミック素子の第2の例が記載されている。
【0006】
フランス特許公報2 799 301号には、過電圧から電力網を保護するために使用できる非線形抵抗器およびその製造方法が記載されている。また、この非線形抵抗器が主成分として酸化亜鉛を有し、非線形抵抗器の側面に高抵抗層が設けられていること、及びこの非線形抵抗器にピロリン酸マンガン(Manganese Pyrophosphate)を添加してもよいことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際出願ドイツ語翻訳文11 2012 000 669号
【文献】フランス特許公報2 799 301号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の事情を鑑み、本発明の目的は、改良されたセラミック材料を主成分とするセラミック基体を含むセラミックデバイスを提供することである。また、本発明の目的は、セラミックデバイスの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明の解決手段は、請求項1に記載のセラミックデバイスである。前記セラミックデバイスの他の実施形態および前記セラミックデバイスの製造方法については、他の請求項を参照されたい。
【0010】
セラミック基体を有するセラミックデバイスを提供する。前記セラミック基体は、主成分としてセラミック材料を含み、前記セラミック材料は、一般式Axy1-x-vTi1-y+w3 * (Mn227z * Duで表される。前記一般式において、Aは、ネオジム、プラセオジム、セリウムおよびランタンからなる第1の金属の群から選択された第1のドーピングである。また、Bは、ニオブ、タンタルおよびバナジウムからなる第2の金属の群から選択された第2のドーピングである。また、Cは、ベースセラミック材料の主成分であり、該主成分は、カルシウム、ストロンチウムおよびバリウムからなる第3の金属の群から選択される。さらに、Dは、少なくとも1つの第1の化合物を含む添加剤であり、該化合物は、アルミニウム、ニッケルおよび鉄からなる第4の金属の群から選択される第4の金属を含む。また、xはAの量の割合、yはBの量の割合、vはAの空孔の量の割合、wは過剰のチタンの量の割合、zはMn227の量の割合、uはDの量の割合である。量の割合に対して、
0.0≦x<0.1、
0.0≦y<0.1、
0≦v<1.5*x、
0≦w<0.05、
0.01≦z<0.1
0≦u<0.05の関係が適用される。
【0011】
これ以降、ベースセラミック材料は、一般式CTiO3で表されるベース化合物を指すものとし、ここで、Cはベースセラミック材料の主成分であり、該主成分は第3の金属の群から選択される。
【0012】
また、これ以降、第1のドーピングは、ベースセラミック材料の格子において、第3の金属の原子位置を占める第1の金属を指すものとする。
【0013】
また、これ以降、第2のドーピングは、ベースセラミック材料の格子において、チタンの原子位置を占める第2の金属を指すものとする。
【0014】
前記セラミック材料の一実施形態では、前記セラミック材料は、第1のドーピングおよび第2のドーピングを含むベースセラミック材料と、少なくとも1つの添加剤と、組成式Mn227で表されるピロリン酸マンガンとを含む。
【0015】
第1のドーピング、第2のドーピング、および添加剤の量の割合の値は、いずれもゼロであってもよい。言い換えれば、セラミック材料は、ベースセラミック材料に加えて、第1のドーピング、第2のドーピングおよび添加剤のうちの1種類のみを含んでもよい。また、セラミック材料は、ベースセラミック材料を補完するものとして、第1のドーピングおよび添加剤、または第2のドーピングおよび添加剤のみを含んでいてもよい。さらに、セラミック材料は、第1のドーピングと第2のドーピングを含むベースセラミック材料のみを含んでいてもよい。この場合、セラミック材料にはいかなる添加剤も含まれていない。前述のすべての実施形態では、セラミック材料に含まれるピロリン酸マンガンの割合はゼロより大きい。言い換えれば、セラミック材料には常にピロリン酸マンガンが含まれている。
【0016】
また、第1のドーピングは少なくとも2つの第1の金属を含んでいてもよく、第2のドーピングは少なくとも2つの第2の金属を含んでいてもよく、ベースセラミック材料の主成分は少なくとも2つの第3の金属を含んでいてもよい。
【0017】
また、添加剤は、少なくとも1つの第1の化合物および第2の化合物を含んでいてもよく、これらの化合物は、それぞれ1つの第4の金属を含む。中でも、第1の化合物に含まれる第4の金属は、第2の化合物に含まれる第4の金属とは異なる。つまり、第1の化合物は、第2の化合物とは異なる第4の金属を含む。第1の化合物と第2の化合物として、少なくとも1つの第4の金属を含む金属酸化物を用いてもよい。
【0018】
セラミック材料は、以下の表1に示す成分の組み合わせのいずれかを有することが好ましい。
【0019】
【表1】
【0020】
表1において、B1は第2の金属を表し、B2は別の第2の金属を表し、これらの金属は第2のドーピングBに含まれており、ここで係数y1、y2は、第2のドーピングBにおいて第2の金属B1、B2がそれぞれ対応して占める量の割合である。係数y1とy2の合計は、セラミック材料における第2のドーピングの量の割合yとなる。
【0021】
また、C1は第3の金属、C2は別の第3の金属、C3はさらに別の第3の金属を表し、これらの金属は基体材料の主成分Cに含まれる。C1、C2、C3の値は、主成分Cにおける対応する第3の金属の量の割合を表し、ここで、C1、C2、およびC3の値の合計は1である。
【0022】
また、D1は第4の金属を表し、D2は別の第4の金属を表し、これらの金属は添加剤Dに含まれる。係数u1とu2の合計は、セラミック材料に含まれる添加剤の量の割合uとなる。
【0023】
なお、セラミック材料の成分の量の割合は、表1に記載されている実施例1~7に対応して、最大10%の範囲で変化してもよい。したがって、実施例1の第1のドーピングxの量の割合は、例えば、その値が0.02に限定されない。正確には、xは0.018から0.022の範囲内のすべての値を有してもよい。同様に、表1に記載されている対応する量の割合の他の値も、すべて最大10%の範囲で変化してもよい。有利な量の割合は、表に記載されている値の最大5%の範囲内で変化する。これは、実施例1の第1のドーピングの量の割合xの場合、0.019から0.021の範囲内のすべての値をとることができることを意味する。
【0024】
また、セラミックデバイスのセラミック基体は、同一であっても異なっていてもよい複数のセラミック層と、セラミック層の間に設けられた内部電極とを有していてもよい。ここで、内部電極は、主成分としてニッケルを含む。
【0025】
また、セラミックデバイスはコンデンサとして構成されてもよい。セラミックデバイスは、特に積層コンデンサとして構成されてもよい。積層コンデンサは、複数のセラミック層とセラミック層の間に設けられた内部電極とを有するセラミック基体を備える。内部電極は、好ましくはニッケルを含む。
【0026】
セラミック材料に含まれるピロリン酸マンガンにより、1200℃以下の比較的低い焼結温度で、緻密に焼結されたセラミック基体を得ることができる。これ以降、緻密に焼結されたセラミック基体は、焼結密度が90%以上の基体を指すものとする。
【0027】
本発明者は、ピロリン酸マンガンのプラスの効果、すなわち、焼結助剤としてのピロリン酸マンガンが1100℃よりも低い温度で、還元条件下ですでに一致溶融していることについて説明する。一致溶融とは、ピロリン酸マンガンがいわゆる融点で完全に液体になるが、分解はしないことを意味する。その結果、溶融したピロリン酸マンガンがセラミック基体内に均一に分布し、これによって、極めて均一かつ高度に圧縮されたセラミック基体が得られる。
【0028】
ピロリン酸マンガンによって焼結温度を下げることで、セラミックの焼結時の粒成長を抑制し、セラミック基体の電気的特性及び機械的特性を改善することができる。
【0029】
また、焼結温度を下げることで、ニッケルを含有する内部電極を使用できるようになる。これは、焼結温度が低い場合、ニッケルを含有する内部電極が溶融しないからである。ニッケルは、金、銀、パラジウムなどの従来の内部電極用金属に比べてコストが低いため、セラミック素子のコストを全体的に低レベルに抑えることができる。
【0030】
セラミック材料は、コンデンサ、特に積層コンデンサの一部であるセラミック基体の主成分とすることができ、それによりコンデンサを小型化すると共に、ESD耐性を備え、且つNiを含有する内部電極を有する積層コンデンサを提供することができる。このため、積層コンデンサは信頼性が高く、コストが低い。
【0031】
0603型以下の構造形式を、小型のコンデンササイズと見なすものとする。また、ESDの影響をほとんど受けないコンデンサとは、構造形式が0603型以下で、電気容量が10nF未満、ESD電圧が8kVを超えるコンデンサを指すものとする。ESD耐性のあるコンデンサは、電気容量が1nFで、ESD電圧が20kVを超えることが好ましい。ESD電圧とは、素子に損傷を与えずに負荷をかけられる電圧のことである。ESD電圧が高いほど、素子を損傷することなく負荷をかけられる電圧が高くなる。
【0032】
また、本発明は、セラミックデバイスの製造方法に関する。前記方法は、以下のステップを含む:
一般式CTiO3で表され、ここでCがベースセラミック材料の主成分であり、該主成分がカルシウム、ストロンチウムおよびバリウムからなる第3の金属の群から選択された第3の金属を含む、ベースセラミック材料を提供するステップと、
セラミック材料に、Mn22O7、第1の金属を含む第1のドーパント、および/または第2の金属を含む第2のドーパント、および/またはTiを含有する化合物、および/または第4の金属を含む少なくとも1つの第1の化合物を含有する添加剤を添加し、混合して混合物を得るステップであって、
ここで第1の金属がネオジム、プラセオジム、セリウムおよびランタンからなる第1の金属の群から選択され、第2の金属がニオブ、タンタルおよびバナジウムからなる第2の金属の群から選択され、該第3の金属がカルシウム、ストロンチウムおよびバリウムからなる第3の金属の群から選択され、第4の金属がアルミニウム、ニッケルおよび鉄からなる第4の金属の群から選択されるステップと、
前記混合物を粉砕して混合物の粉末を得るステップと、
混合物の粉末からセラミックグリーンシートを製造するステップと、
セラミックグリーンシートに内部電極を形成するステップと、
セラミックグリーンシートを積層してグリーンシート積層体を得るステップと、
グリーンシート積層体を圧着し、圧着グリーンシート積層体を得るステップと、
圧着グリーンシート積層体を個片化し、個片化素子の未加工材を得るステップと、
個片化素子を脱炭して、脱炭素子を得るステップと、
脱炭された素子を焼結して焼結素子を得るステップと、
焼結素子をアニールしてセラミック基体を得るステップと、
セラミック基体の外面を金属被覆で被覆して焼結し、セラミックデバイスを得るステップ。
【0033】
これ以降、少なくとも1つの第1の金属を含む物質を第1のドーパントと見なすものとし、該第1の金属は第1のドーパントの成分である。
【0034】
これ以降、少なくとも1つの第2の金属を含む物質を第2のドーパントと見なすものとし、該第2の金属は第2のドーピングの成分である。
【0035】
第1のドーパントとして、第1の金属の少なくとも1つの酸化物を用いてもよい。ここで、第1の金属は、第1の金属の群から選択される。
【0036】
第2のドーパントとして、第2の金属の少なくとも1つの酸化物を用いてもよい。ここで、第2の金属は、第2の金属の群から選択される。
【0037】
また、ベースセラミック材料に対して第1および/または第2のドーパントを添加してもよい。ここで、第1のドーパントは少なくとも2つの第1の金属を含み、第2のドーパントは少なくとも2つの第2の金属を含む。言い換えれば、第1のドーパントは、少なくとも2つの異なる第1の金属を含有する少なくとも1つの成分を含む。第1のドーパントは、好ましくは、第1の成分と第2の成分を含んでいてもよい。ここで、第1の成分は、第2の成分に含まれる第1の金属とは異なる第1の金属を含む。第2のドーパントは、第1の金属の代わりに第2の金属を含む点を除いて、第1のドーパントと同様である。
【0038】
ベースセラミック材料の主成分は、少なくとも2つの第3の金属をさらに含んでいてもよい。
【0039】
また、ベースセラミック材料に添加剤を添加してもよく、該添加剤は少なくともアルミニウムとニッケルを含む。言い換えれば、該添加剤は、少なくともアルミニウムとニッケルを含む第1の化合物を含んでいてもよい。添加剤は、好ましくは第1の化合物と第2の化合物を含んでいてもよい。ここで、第1の化合物はニッケルを含み、第2の化合物はアルミニウムを含み、またはその逆である。
【0040】
また、ニッケルを含む金属含有スラリーを使用して内部電極を形成してもよい。
【0041】
また、脱炭されたグリーンシートの積層体を、温度1200~1250℃、保持時間1~5時間で焼結してもよい。脱炭されたグリーンシートの積層体を1200℃、1250℃、またはその間の温度で4時間焼結することが好ましい。
【0042】
前記セラミックデバイスの製造方法の好ましい実施形態では、脱炭されたグリーンシートの積層体を還元性雰囲気中で焼結してもよい。これ以降、還元性雰囲気とは、セラミック材料およびニッケルを含有する内部電極の、特に空気中の酸素による酸化を防止する雰囲気を指すものとする。
【0043】
また、空気中でアニールして焼結素子を再酸化させることができる。例えば、コンデンサにおいて、このステップにより、コンデンサの電気的特性、例えば、コンデンサのESD耐性などを設定することができる。
【0044】
また、ガラスから形成されたパッシベーション層でセラミック基体を被覆してもよい。パッシベーションにより、セラミック基体を湿度や温度変化などの外部影響から保護する。
【0045】
以下、実施例に基づき、添付図面を参照して本発明について詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1図1は、セラミック基体を有するセラミックデバイスを示す。
【0047】
図面および図面中の寸法比は縮尺通りに描かれていない。
【発明を実施するための形態】
【0048】
図1は、セラミック基体1を有するセラミックデバイスを示し、前記基体は、内部に設けられた内部電極2と、セラミック基体1の2つの対向する外面1´に取り付けられた2つの金属被覆3とを有する。また、セラミック基体1は、ガラスから形成されたパッシベーション層4を有する。セラミックデバイスは、積層コンデンサとして構成されている。セラミック基体は、組成式La02Ba0194Sr0776Ti13 * (Mn2270.01で表されるセラミック材料を含むので、表1に示す実施例1の中の成分の組み合わせに対応する。
【0049】
一実施例では、組成式Ba02Sr08TiO3で表されるベースセラミック材料を提供して、セラミック基体を製造する。第1のドーパントとしての酸化ランタン、チタン含有化合物としての酸化チタン、およびピロリン酸マンガンをベースセラミック材料に添加する。ベースセラミック材料、第1のドーパント、チタン含有化合物およびピロリン酸マンガンの量の割合の合計は100モル%である。したがって、ベース化合物の量の割合の値は97モル%、第1のドーパントの量の割合の値は1モル%、チタン含有化合物の量の割合の値は1.5モル%、ピロリン酸マンガンの量の割合の値は0.5モル%である。その後、ベース化合物、第1のドーパント、チタン含有化合物およびピロリン酸マンガンを混合し、粉砕して混合物の粉末を得る。
【0050】
この混合物の粉末を使用してセラミックグリーンシートを製造し、ニッケルを含む金属含有ペーストによって、これらのセラミックグリーンシートに内部電極を形成する。次のステップでは、平らにプレスしたセラミックグリーンシートを積層してグリーンシート積層体とし、圧着して圧着グリーンシート積層体を得る。続いて、圧着グリーンシート積層体を個片化した後、個片化素子を600℃で脱炭し、還元性雰囲気中で、1250℃で4時間焼結して、セラミック基体1を得る。別のステップでは、セラミック基体1の2つの対向する外面1´を金属被覆3で被覆する。最後に、セラミック基体1には、ガラスから形成されたパッシベーション層4を塗布する。
【0051】
本発明は、上記の実施例に限定されない。セラミック材料は、特に、図1の実施例2~7に対応する成分の組み合わせを有していてもよいが、図1の実施例1~7の成分の組み合わせとは異なる特定の成分の組み合わせを有していてもよい。ここでは、実施例1~7を好適とする。また、セラミック材料の用途も、コンデンサに限定しない。
【符号の説明】
【0052】
1 セラミック基体
1´ 外面
2 内部電極
3 外金属層
4 パッシベーション層
図1