(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-25
(45)【発行日】2024-10-03
(54)【発明の名称】保持装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20240926BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H01L21/68 N
(21)【出願番号】P 2022122493
(22)【出願日】2022-08-01
【審査請求日】2024-03-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100144510
【氏名又は名称】本多 真由
(72)【発明者】
【氏名】稲吉 輝
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 敦
【審査官】境 周一
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-218992(JP,A)
【文献】国際公開第2020/213368(WO,A1)
【文献】特開2023-056710(JP,A)
【文献】特開2023-042825(JP,A)
【文献】国際公開第2016/080262(WO,A1)
【文献】特開2014-130908(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を保持する保持装置であって、
前記対象物が載置される側の第1面と、前記第1面の裏面である第2面とを有する板状に形成される板状部と、
前記板状部の前記第2面側に配置され、冷却機能を有する、板状のベース部と、
前記板状部と前記ベース部との間に配置され、前記板状部と前記ベース部とを接合する第1接合部と、
を備え、
前記板状部は、
前記第1面を含む第1板状部と、
前記第2面を含む第2板状部と、
前記第1板状部と前記第2板状部との間に配置され、前記第1板状部と前記第2板状部とを接合する第2接合部と、
を有し、
前記第2接合部の熱抵抗は、120℃の時に6.5×10
-4(m
2K/W)以下であ
り、
前記第1板状部を構成する材料の熱伝導率は、前記第2板状部を構成する材料の熱伝導率より大きいことを特徴とする、
保持装置。
【請求項2】
対象物を保持する保持装置であって、
前記対象物が載置される側の第1面と、前記第1面の裏面である第2面とを有する板状に形成される板状部と、
前記板状部の前記第2面側に配置され、冷却機能を有する、板状のベース部と、
前記板状部と前記ベース部との間に配置され、前記板状部と前記ベース部とを接合する第1接合部と、
を備え、
前記板状部は、
前記第1面を含む第1板状部と、
前記第2面を含む第2板状部と、
前記第1板状部と前記第2板状部との間に配置され、前記第1板状部と前記第2板状部とを接合する第2接合部と、
を有し、
前記第2接合部は樹脂を主成分とし、
前記第2接合部の熱抵抗は、120℃の時に2.5×10
-4
(m
2
K/W)以上6.5×10
-4
(m
2
K/W)以下であることを特徴とする、
保持装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の保持装置であって、
前記第2接合部の熱抵抗は、-60℃の時に5.5×10
-4
(m
2
K/W)以下であることを特徴とする、
保持装置。
【請求項4】
請求項2に記載の保持装置であって、
前記第1板状部を構成する材料の熱伝導率は、前記第2板状部を構成する材料の熱伝導率以上であることを特徴とする、
保持装置。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の保持装置であって、
前記第1接合部の熱抵抗は、120℃の時に6.5×10
-4
(m
2
K/W)以下であることを特徴とする、
保持装置。
【請求項6】
請求項1
または請求項2に記載の保持装置であって、
前記第2接合部の厚みは前記第1接合部の厚み以下であることを特徴とする、
保持装置。
【請求項7】
請求項1または請求項2に記載の保持装置であって、
前記第2接合部および前記第1接合部の少なくともいずれか一方は、側鎖の少なくとも一部にフェニル基を備えたシリコーン樹脂を含むことを特徴とする、
保持装置。
【請求項8】
請求項1または請求項2に記載の保持装置であって、
前記第2板状部のうち、前記第2面とは反対側の面側にヒーターが配置されることを特徴とする、
保持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物を保持する保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体を製造する際にウェハ等の対象物を保持する保持装置として、例えば、静電チャックが用いられる。静電チャックは、対象物が載置される板状部と、板状部を冷却するベース部と、板状部とベース部とを接合する接合部と、を備える。静電チャックは、板状部材の内部に配置されたチャック電極を備えており、チャック電極に電圧が印加されることにより発生する静電引力を利用して、板状部の表面(以下、「吸着面」とも呼ぶ。)にウェハ等の対象物を吸着して保持する。
【0003】
静電チャックの吸着面に保持されたウェハの温度が所望の温度にならないと、ウェハに対する各処理(成膜、エッチング等)の精度が低下するおそれがあるため、静電チャックにはウェハの温度分布を制御する性能が求められる。そのため、板状部の内部に配置された抵抗発熱体であるヒーターによる加熱や、ベース部材に形成された冷媒流路への冷媒供給による冷却を行うことにより、板状部の吸着面の温度分布の制御(ひいては、吸着面に保持されたウェハの温度分布の制御)が行われる。
【0004】
従来、上記抵抗発熱体の抵抗値を調整することにより、ウェハを保持する表面(吸着面)の温度分布の制御性を向上させていた。しかしながら、静電チャックにおいて、ウェハを保持する吸着面の温度分布は、ヒーター(抵抗発熱体)の精度の他にベース部や接合部の精度にも左右されるため、抵抗発熱体の抵抗値を調整するだけでは、ウェハを保持する吸着面の温度分布の制御性を十分に向上させることができない、という課題があった。
【0005】
この課題に対し、抵抗発熱体により形成されたヒーターを有する第2板状部とチャック電極を有する第1板状部とを接合することにより板状部を構成し、ヒーターの抵抗値のバラつきを抑制し、ウェハを保持する吸着面の温度分布の制御性を向上させる技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、静電チャックが強いプラズマエネルギーに曝露される環境下や、静電チャックに高電力が入力される環境下で使用される場合、吸着面は高温になりやすい。上記特許文献1に記載の静電チャックは、第1板状部と第2板状部とを接着剤により接合しており、一般に、接着剤の熱伝導率は比較的低いため、上記特許文献1に記載されている静電チャックを、吸着面が高温になりやすい環境下で用いると、板状部からベース部への熱の移動が抑制され、吸着面が十分冷却されない虞がある。そのため、第1板状部と第2板状部とを接合する接合部の熱引きを良くすることが望まれている。また、ヒーターから第1板状部への熱伝導の点でも、第1板状部と第2板状部とを接合する接合部について改善の余地があった。
【0008】
このような課題は、静電チャックに限らず、CVD(chemical vapor deposition)、PVD(physical vapor deposition)、PLD(Pulsed Laser Deposition)等の真空装置用ヒータ装置、サセプタ、載置台等の保持装置に共通する課題である。
【0009】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、第1板状部と第2板状部とが接合された板状部の上に対象物を保持する保持装置において、第1板状部と第2板状部との間の熱伝導性を向上させる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0011】
(1)本発明の一形態によれば、対象物を保持する保持装置が提供される。この保持装置は、前記対象物が載置される側の第1面と、前記第1面の裏面である第2面とを有する板状に形成される板状部と、前記板状部の前記第2面側に配置され、冷却機能を有する、板状のベース部と、前記板状部と前記ベース部との間に配置され、前記板状部と前記ベース部とを接合する第1接合部と、を備え、前記板状部は、前記第1面を含む第1板状部と、前記第2面を含む第2板状部と、前記第1板状部と前記第2板状部との間に配置され、前記第1板状部と前記第2板状部とを接合する第2接合部と、を有し、前記第2接合部の熱抵抗は、120℃の時に6.5×10-4(m2K/W)以下である。
【0012】
例えば、保持装置が強いプラズマエネルギーに曝露される環境下等では、板状部の第1面は高温になりやすい。板状部の第1面が、例えば、120℃になるような使用条件の場合に、熱抵抗を上記の範囲にすると、第1板状部から第2板状部への熱伝導を良好にすることができるため、第1板状部からベース部への熱の移動を良好にすることができ、板状部の第1面を良好に冷却することができる。
【0013】
(2)上記形態の保持装置であって、前記第2接合部の熱抵抗は、-60℃の時に5.5×10-4(m2K/W)以下であってもよい。上記のように、板状部の第1面が高温(例えば、120℃)になりやすい使用条件のときに、ベース部を-60℃以下の極低温にして使用する場合がある。そのような場合に、第2接合部の熱抵抗を上記の範囲にすると、板状部の第1面を急速に冷却することができる。
【0014】
(3)上記形態の保持装置であって、前記第1板状部を構成する材料の熱伝導率は、前記第2板状部を構成する材料の熱伝導率以上であってもよい。板状部の第1面の熱をベース部に移動させるため、板状部の熱伝導率は大きいことが好ましい。但し、例えば、第2板状部がヒーターを備える場合、ヒーターによって板状部の第1面の温度分布を調整するが、第2板状部の熱伝導率が高すぎると、ベース部(冷却)の影響を受けやすく、ヒーターによる板状部の第1面の温度分布の調整が困難になる可能性がある。そのため、第1板状部の熱伝導率を第2板状部の熱伝導率以上にすると、第2板状部がヒーターを備える場合にも、板状部の第1面の温度分布を適切に調整することができる。
【0015】
(4)上記形態の保持装置であって、前記第1接合部の熱抵抗は、120℃の時に6.5×10-4(m2K/W)以下であってもよい。このようにすると、板状部からベース部へ熱伝導も向上させることができるため、板状部からベース部への熱の移動をさらに良好にすることができ、板状部の第1面の冷却性をさらに良好にすることができる。
【0016】
(5)上記形態の保持装置であって、前記第2接合部の厚みは前記第1接合部の厚み以下であってもよい。保持装置において、板状部を構成する第1板状部と第2板状部との熱膨張差は小さいことが多い。一方、ベース部は冷却機能を有するため熱伝導率が大きい材料(例えば、金属を主成分とする材料)により形成されていることが多く、熱膨張率が大きいことが多い。そのため、第1接合部の厚みは、板状部とベース部との熱膨張差に基づく応力の緩和能を奏する程度の厚みがあるのが好ましい。一方、上述の通り、第1板状部と第2板状部は、熱膨張差が小さいことが多く、第2接合部の応力緩和能の重要性は第1接合部と比較して低いため、第2接合部の厚みは、第1接合部の厚み以下であっても問題ない。第2接合部の厚みを第1接合部の厚み以下にすると、板状部とベース部との熱膨張差に基づく応力を第1接合部により緩和すると共に、第2接合部の熱抵抗を小さくして(厚みを薄くする)、板状部からベース部へ熱伝導を向上させることができる。
【0017】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、保持装置を含む半導体製造装置、保持装置の製造方法、接合部の形成方法などの形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1実施形態の静電チャックの外観構成を概略的に示す斜視図である。
【
図2】静電チャックのXZ断面構成を概略的に示す説明図である。
【
図6】第2実施形態の静電チャックのXZ断面構成を概略的に示す説明図である。
【
図7】第3実施形態の静電チャックのXZ断面構成を概略的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の静電チャック10の外観構成を概略的に示す斜視図である。
図2は、静電チャック10のXZ断面構成を概略的に示す説明図である。
図1、
図2には、方向を特定するために、互いに直交するXYZ軸が示されている。
図2において、Y軸正方向は、紙面裏側に向かう方向である。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を上方向といい、Z軸負方向を下方向というものとするが、静電チャック10は実際にはそのような向きとは異なる向きで設置されてもよい。本実施形態における静電チャック10を、「保持装置」とも呼ぶ。
【0020】
静電チャック10は、対象物(例えばウェハW)を静電引力により吸着して保持する装置であり、例えば半導体製造装置の真空チャンバー内でウェハWを固定するために使用される。静電チャック10は、上下方向(Z軸方向)に並べて配置された板状部100と、ベース部200と、板状部100とベース部200とを接合する第1接合部400と、を備える。
【0021】
板状部100は、第1面S1と、第1面S1の裏面である第2面S2と、を有する板状部材である。詳しくは、板状部100は、略円形平面状の第1面S1を含む板状部材である第1板状部110(
図1)と、第1板状部110と略同一の径の略円形平面状の第2面S2(
図2)を含む板状部材である第2板状部120(
図1)と、第1板状部110と第2板状部120との間に配置され、第1板状部110と第2板状部120とを接合する第2接合部150と、を備える板状部材である。
【0022】
第1板状部110の内部には、導電性材料(例えば、タングステンやモリブデン等)により形成された吸着電極130(
図2)が配置されている。Z軸方向視での吸着電極130の形状は、例えば略円形である。吸着電極130に電源(不図示)から電圧が印加されると、静電引力が発生し、この静電引力によってウェハW(
図1)が第1板状部110の第1面S1に吸着固定される。すなわち、第1板状部110の第1面S1は、ウェハWが載置される載置面として機能する。吸着電極130の形状は、本実施形態に限定されず、例えば、渦巻形状等でもよい。
【0023】
第2板状部120の内部にはZ軸方向視で渦巻き型のヒーター140(
図2)が配置されている。図示するように、ヒーター140は、第2板状部120のうち、第2面S2とは反対側の面(第4面S4)側に配置されている。本実施形態において、ヒーター140は、タングステンやモリブデン等により形成されたメタライズ層である。ヒーター140の形状は、本実施形態に限定されず、例えば、円盤形状等でもよい。他の実施形態では、板状部100は、ヒーター140を備えなくてもよい。
【0024】
板状部100は、いわゆるファインセラミックス、ニューセラミックスと言われるセラミックス(例えば、アルミナや窒化アルミニウム等)を主成分とする緻密体である。本願明細書において、特定成分が「主成分である」あるいは「主に形成する材料である」とは、当該特定成分の含有率が、50体積%以上であることを意味する。他の実施形態では、板状部100は、例えば、ポリイミド等の樹脂、透明ガラス等のセラミック以外の材料を主成分として形成されてもよい。
【0025】
板状部100の熱伝導率は特に限定されないが、第1板状部110を構成する材料の熱伝導率は、第2板状部120を構成する材料の熱伝導率以上であることが好ましい。第1板状部110を構成する材料の熱伝導率は、第2板状部120を構成する材料の熱伝導率より高いことがより好ましい。
【0026】
第1板状部110の熱伝導率は、第1板状部110から切り出したサンプルをレーザーフラッシュ法により熱拡散率、比熱を測定することで、算出することができる。測定温度を、恒温槽等で一定に保つことで、各温度の熱伝導率を測定することが出来る。測定温度は、例えば、静電チャック10の一般的な使用温度である25℃(室温)としてもよい。第2板状部120、第2接合部150、第1接合部400の熱伝導率についても同様である。
【0027】
第1板状部110および第2板状部120の熱伝導率は、主成分のセラミックの種類、充填剤の種類、および含有量、気孔率等を調整することにより、調製することができる。
【0028】
板状部100を構成する第1板状部110と第2板状部120とは、同一の材料により形成されてもよいし、異なる材料により形成されてもよい。本実施形態において、第1板状部110と第2板状部120とは、同一の材料(例えば、アルミナ)を主成分として形成され、純度、気孔率、熱伝導率を異ならせている。すなわち、同じ材料系を用いて、物性を変えている。上述の通り、第1板状部110は第1面S1を含み、ウェハWが載置される。そのため、第1板状部110は、例えば、ウェハWのエッチングや、クリーニングの際等に、プラズマに晒されるため、耐プラズマ性を要する。従って、第1板状部110には、高い緻密性が要求される。また、第1板状部110の第1面S1は、プラズマからの入熱により高温になりやすいため、第1板状部110は高い熱伝導性を要する。そのため、セラミックスの純度を高くしている。すなわち、第1板状部110は高純度、かつ高緻密性(低気孔率)のセラミックス基板である。
【0029】
一方、第2板状部120は、ヒーター140が内部に配置される板状部材である。ヒーター140は、第2板状部120のうち、第2面S2とは反対側の面(第4面S4)側に配置されている。ヒーター140は、第1板状部110の第1面S1の温度分布を調整するため、ヒーター140からベース部200への熱の移動は少ない方が好ましい。そのため、第2板状部120の形成材料は、第1板状部110の形成材料よりも熱伝導率が低いことが好ましい。そこで、例えば、セラミックスの焼結助剤を混入する等により低熱伝導を実現することができる。例えば、アルミナ系母材に対し低融点のガラス(例えば、Si、Ca、Mgなどの酸化物)を混入する。その結果、第2板状部120は第1板状部110と比較して易焼結性となり、コストを低減することができる。なお、第1板状部110は、高純度、かつ高緻密性であるためコストが高くなるため、第2板状部120はコスト低減を図ることが好ましい。すなわち、第1板状部110の構成材料は、第2板状部120の構成材料より高純度であり熱伝導率が高く、第1板状部110は第2板状部120より高緻密(低気孔率)であることが好ましい。なお、異なる材料を用いて第1板状部110と第2板状部120との物性を変える場合に、例えば、第1板状部110を熱伝導率の高い窒化アルミニウムを主成分として形成し、第2板状部120を窒化アルミニウムより熱伝導率が低いアルミナを主成分として形成してもよい。
【0030】
第1板状部110の第1面S1の直径は、例えば、50mm~500mm程度(通常は200mm~350mm程度)である。本明細書において、数値範囲について「~」を用いた記載では、特に断りがない限り、下限値及び上限値を含むものとする。例えば、「10~20」という記載では、下限値である「10」、上限値である「20」のいずれも含むものとする。すなわち、「10~20」は、「10以上20以下」と同じ意味である。
【0031】
第2接合部150は、第1板状部110の第3面S3および第2板状部120の第4面S4と径が等しい略円形平面上の板状部材であり、第1板状部110と第2板状部120とを接合する。第2接合部150は、例えば、アクリル、ポリイミド等の有機物、シリコーン等を主成分とする接着剤やガラス、金属等により構成されている。第2接合部150は、セラミックス粉末等のフィラーを含んでいてもよい。
【0032】
第2接合部150の熱抵抗は、120℃の時に6.5×10-4(m2K/W)以下であることが好ましく、5.0×10-4(m2K/W)以下であることがさらに好ましい。第2接合部150の熱抵抗をR2(m2K/W)、第2接合部150の厚みをt2(m)、第2接合部150の構成材料の熱伝導率をλ2(W/mK)とすると、第2接合部150の熱抵抗R2は、以下の(式1)により求められる。
R2(m2K/W)=t2(m)÷λ2(W/mK) …(式1)
【0033】
例えば、静電チャック10が強いプラズマエネルギーに曝露される環境下等では、第1板状部110の第1面S1は高温になりやすい。第1板状部110の第1面S1が、例えば、120℃になるような使用条件の場合に、熱抵抗を上記の範囲にすると、第1板状部110から第2板状部120への熱伝導を良好にすることができるため、第1板状部110からベース部200への熱の移動を良好にすることができ、板状部100の第1面S1を良好に冷却することができる。すなわち、第2接合部150の存在に起因して板状部100における発熱および/または冷却の応答性が低下することを抑制することができ、板状部100の第1面S1の温度分布の制御性が低下することを抑制することができる。
【0034】
第2接合部の熱抵抗は、-60℃の時に5.5×10-4(m2K/W)以下であることが好ましく、4.0×10-4(m2K/W)以下であることより好ましく、3.5×10-4(m2K/W)以下であることがさらに好ましい。上述の通り、静電チャック10が強いプラズマエネルギーに曝露される環境下や、静電チャック10に高電力が入力される環境下で使用される場合、板状部100の第1面S1は高温になりやすい。板状部100の第1面S1が、例えば、120℃になるような使用条件の場合、板状部100を冷却するために、ベース部200に供給される冷媒の温度を、例えば、-100℃程度にする場合がある。ベース部200が低温になると第2接合部150も低温になるため、-60℃における第2接合部150の熱抵抗を上記の値にすることにより、ベース部200の温度を極低温(例えば、-100℃)にする場合に、第2接合部150を介したベース部200と第1板状部110との間の伝熱、すなわち、第1板状部110からベース部200への熱引きが行われ易くなり、静電チャック10における冷却効率を高めることができる。第2接合部150が樹脂によって構成される接着剤を備える場合、接着剤は一般的に温度が上昇するほど熱伝導率が低下する。すなわち、第2接合部150の厚みを一定にした場合、温度が上昇するほど熱抵抗が大きくなる傾向にある。-60℃における第2接合部150の熱抵抗を上記の値にすれば、第2接合部150の温度が-60℃より高くなっても十分な冷却性能を得ることができる。そのため、対象物が載置される側の面(第1面S1)の冷却速度を向上させることができる。
【0035】
第2接合部150の厚みは、特に限定されないが、第1接合部400の厚み以下であることが好ましい。板状部100を構成する第1板状部110と第2板状部120は、例えば、セラミックスを主成分とする材料により形成され、互いの熱膨張差は小さいことが多い。一方、ベース部200は冷却機能を有するため、熱伝導率が高い材料、例えば、金属を主成分とする材料から形成されることが多い(後に詳述する)。そのため、そのため、ベース部200の熱膨張率は比較的大きく、第2板状部120とベース部200との熱膨張率差は、第1板状部110と第2板状部120との熱膨張率差より大きいことが多い。そのため、第1接合部400の厚みは、熱膨張差に基づく応力の緩和能を奏する程度の厚みがあるのが好ましい。一方、上述の通り、第1板状部110と第2板状部120は、熱膨張差が小さいことが多く、第2接合部150の応力緩和能の重要性は第1接合部400と比較して低いため、第2接合部150の厚みは、第1接合部400の厚み以下であっても問題ない。第2接合部150の厚みを第1接合部400の厚み以下すると、板状部100とベース部200との熱膨張差に基づく応力を第1接合部400により緩和すると共に、第2接合部150の熱抵抗を小さくして(厚みを薄くする)、板状部100からベース部200へ熱伝導を向上させることができる。
【0036】
第1接合部400および第2接合部150の厚みは、下記の方法で測定することができる。
静電チャック10を、第1面S1に垂直な切断面(例えば、
図1におけるXZ面)で、切断機で切り出し、その断面を長さ測定が可能な拡大鏡もしくは顕微鏡で観察、測定する。ここで、切断面は、第1面S1の中心を通る。断面の中央部(第3面S3、第2面S2の中心に対応)、端部、これらの中間(半径/2)の位置を幅1.5mmの範囲で観察し、それぞれの範囲で凸部と凹部の厚みを測定し、平均値を算出し、それぞれ、第1接合部400の厚み、第2接合部150の厚みとする。
【0037】
ベース部200は、板状部100より径が大きい略円形平面状の板状部材である。ベース部200は、熱伝導率が大きい材料、例えば、アルミニウム、マグネシウム、モリブデン、チタン、タングステン、ニッケルのうちの少なくとも一種の金属を含むこととすることができる。モリブデン、チタン、タングステンは、上記した金属の中でも熱膨張率が比較的小さいため、これらのうちの少なくとも一種の金属を用いてベース部200を構成する場合には、ベース部200と板状部100との間の熱膨張率差を抑えることができて望ましい。なお、本願明細書において、「熱膨張率」は、「線膨張率」を指す。また、マグネシウムは、ヤング率が比較的小さいため、マグネシウムを用いてベース部200を構成する場合には、ベース部200で生じる熱応力を低減することができて望ましい。また、アルミニウムは、熱伝導率が比較的高く、加工が容易で低コストである。そのため、アルミニウムを用いてベース部200を構成する場合には、ベース部200による板状部100およびウェハWの冷却効率を高めることができ、静電チャック10の製造コストを抑えることができて望ましい。ベース部200による冷却効率を高めつつ製造コストを抑える観点からは、ベース部200における金属の含有割合が高い方が望ましく、ベース部200は、金属を主成分とすることが望ましい。例えば、汎用性が高いアルミニウムを90質量%以上含有すること(例えば、A6061、A5052などのアルミニウム合金により構成すること)が望ましい。ただし、ベース部200は、セラミックなどの金属以外の成分を含んでいてもよい。ベース部200の直径は、例えば、220mm~550mm程度(通常は220mm~350mm)であり、ベース部200の厚さは、例えば、20mm~40mm程度である。
【0038】
ベース部200の内部には冷媒流路210(
図2)が形成されている。静電チャック10の板状部100に保持されたウェハWを、プラズマを利用して加工する際、ウェハWに対してプラズマから入熱され、ウェハWの温度が上昇する。ベース部200に形成された冷媒流路210に冷媒(例えば、フッ素系不活性液体や水、液体窒素等)が流されると、ベース部200が冷却される。第1接合部400、および第2接合部150を介したベース部200と板状部100との間の伝熱により板状部100が冷却され、板状部100の第1面S1に保持されたウェハWが冷却される。これにより、ウェハWの温度制御が実現される。他の実施形態では、ベース部は内部に冷媒流路が形成されていなくてもよく、外部から冷却してもよい。
【0039】
第1接合部400は、板状部100と径が等しい略円形平面状の板状部材であり、板状部100とベース部200とを接合する。第1接合部400は、接着剤から形成されており、例えば、アクリル、ポリイミド等の有機物、シリコーン等を主成分とする接着剤を用いることができる。
【0040】
シリコーン接着剤は、例えば、硬化性の官能基を含むポリジメチルシロキサンと、架橋剤、シランカップリング剤、硬化触媒、およびフィラーを混合することで作製することができる。フィラーにはアルミナ、シリカ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ、炭化ケイ素、窒化ケイ素、酸化鉄、酸化マグネシウムのうち少なくとも1種類を用いることができる。板状部100とベース部200との接合には、シート状、もしくはワニス状のシリコーン接着剤を使用することができる。シート状で使用する場合、所定の形状に切断した後、シート状シリコーン接着剤を、板状部100、ベース部200それぞれに、真空中で貼りつけを行う。さらに板状部100と、ベース部200とを、シート状シリコーン接着剤を介して真空中で接合し、100℃以上の温度で硬化させることにより、板状部100とベース部200とを接合することができる。ワニス状のシリコーン接着剤を使用する場合、ベース部200にスクリーン印刷法で塗布し、板状部100と真空中で接合し、100℃以上の温度で硬化させることにより、板状部100とベース部200とを接合することができる。ここで、ベース部200には流れ出し防止用の樹脂壁を作製しておいても良い。
【0041】
第1接合部400の熱抵抗は、120℃の時に6.5×10-4(m2K/W)以下であってもよい。このようにすると、抜熱性を向上させることができる。第1接合部400を第2接合部150と同一の材料により形成してもよい。第1接合部400の熱抵抗をR1(m2K/W)、第1接合部400の厚みをt1(m)、第1接合部400の構成材料の熱伝導率をλ1(W/mK)とすると、第1接合部400の熱抵抗R1は、以下の(式2)により求められる。
R1(m2K/W)=t1(m)÷λ1(W/mK) …(式2)
【0042】
第1接合部400の厚みは特に限定されないが、200μm~800μmが好ましい。第1接合部400は、熱引きの点では薄い方が良いが、薄すぎると板状部100とベース部200の熱膨張差を緩和することができない。第1接合部400の厚みを、上記の範囲にすると、適切に熱引きができると共に、板状部100とベース部200の熱膨張差を緩和することができる。
【0043】
第1接合部400、および第2接合部150の熱伝導率は、接着剤の種類と、充填剤の種類、および割合を調整することにより調整することができる。例えば、熱伝導率を上げるために熱伝導フィラー(例えば、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素等)を添加することができる。
【0044】
静電チャック10の製造方法は、特に限定されないが、例えば、本願出願人の特許である特許第6867556号に記載の方法により製造することができる。
概略は以下の通りである。
まず、第1板状部110、および第2板状部120を作製し、第2板状部120とベース部200とを第1接合部400により接合する。
【0045】
まず、セラミックスグリーンシートを複数枚作製し、所定のセラミックスグリーンシートに所定の加工を行う。所定の加工としては、例えば、吸着電極130等の形成のためのメタライズペーストの印刷や、孔空け加工等が挙げられる。これらのセラミックスグリーンシートを積層して熱圧着し、切断等の加工を行うことにより、セラミックスグリーンシートの積層体を作製する。作製されたセラミックスグリーンシートの積層体を焼成することにより、第1板状部110を得る。なお、必要により、第1板状部110の反り修正や表面の研磨加工等を行ってもよい。
【0046】
次に、所定のセラミックスグリーンシート上に、ヒーター140の形成材料によってヒーターパターンを形成する。セラミックスグリーンシート上に、絶縁材料により形成されるカバー層であって、ヒーターパターンを覆うカバー層を配置する。セラミックスグリーンシートを含む複数のセラミックスグリーンシートが積層された積層体を焼成することにより、ヒーター140が内部に配置された第2板状部120を作製する。
【0047】
そして、第1接合部400により、第2板状部120とベース部200とを接合し、ベース部200の冷却機構による冷却(冷媒流路210への冷媒の供給)と、ヒーター140への給電と、を行いつつ、第2板状部120における第4面S4の温度分布を測定する。温度分布の測定結果に基づき、カバー層に覆われたヒーター140の一部分をカバー層ごと除去することによってヒーター140の電気抵抗(発熱量)を調整する。その後、第2接合部150により、第2板状部120と第1板状部110とを接合する。
【0048】
このように、本実施形態の静電チャック10の製造方法では、ヒーター140が配置された第2板状部120に、ベース部200が接合された状態で、ベース部200の冷却機構による冷却とヒーター140への給電とを行いつつ、第2板状部120の第4面S4の温度分布が測定され、温度分布の測定結果に基づき、カバー層に覆われたヒーター140の一部分をカバー層ごと除去することによってヒーター140の電気抵抗(発熱量)が調整され、その後、第2板状部120に第1板状部110が接合される。すなわち、本実施形態の静電チャック10の製造方法では、ヒーター140よりベース部200側(下側)の部分を作製した後、実際の使用時と同様の状態(すなわち、冷媒流路210への冷媒の供給とヒーター140への給電とが行われた状態)で第2板状部120の第4面S4の温度分布の測定を行い、該温度分布の測定結果に基づきヒーター140の電気抵抗(発熱量)の調整を行うことができる。従って、本実施形態の静電チャック10の製造方法によれば、ヒーター140の電気抵抗(発熱量)の調整を短時間で精度良く行うことができ、その結果、板状部100の第1面S1の温度分布の制御性を向上させることができる。なお、本明細書において、板状部100の第1面S1の温度分布の制御性が高いとは、第1面S1全体の温度分布が均一に近いことの意味を含む。
【0049】
以上説明したように、本実施形態の静電チャック10によれば、第2接合部150の熱抵抗は、120℃の時に6.5×10-4(m2K/W)以下であるため、第1板状部110から第2板状部120への熱伝導を良好にすることができるため、第1板状部110からベース部200への熱の移動を良好にすることができ、板状部100の第1面S1を良好に冷却することができる。
【実施例】
【0050】
実施例により本開示を更に具体的に説明する。ここでは、熱伝導率が異なる材料(材料No.1~6)で、厚みを違えて複数の第2接合部150としてサンプルA~E形成し、熱抵抗を算出した。
【0051】
材料No.1~6の接着剤(樹脂材料)および充填材は、以下の通りである。
材料1:フェニル基を含むシリコーン樹脂に窒化アルミニウム粉末を含むフィラーを充填(44vol%)
材料2:フェニル基を含むシリコーン樹脂にアルミナフィラーを高充填(44vol%)
材料3:シリコーン樹脂に窒化アルミニウム粉末を含むフィラーを充填(44vol%)
材料4:シリコーン樹脂にアルミナフィラーを高充填(44vol%)
材料5:シリコーン樹脂にアルミナフィラーを充填(20vol%)
材料6:シリコーン樹脂、充填材(フィラー)なし
ここで、シリコーン樹脂の側鎖に適量のフェニル基を含むことで、立体障害が増加し結晶化を妨げ、ガラス転移温度(Tg)を下げることが出来る。つまり、低温での柔軟性を付与することが出来る。
【0052】
図3は、各材料の熱伝導率を示す図である。
図3に示す例では、-100℃、-60℃、-40℃、-20℃、25℃、70℃、120℃、160℃、および180℃における熱伝導率を測定した結果を示す。熱伝導率は、熱線法により測定した。各材料でブロック体を形成し、ブロック体で熱電対とヒーターを挟み込み、ヒーターの入熱に対する、温度上昇を計測することで熱伝導率を直接測定した。測定温度を、恒温槽等で一定に保つことで、各温度の熱伝導率を測定した。
図3において、「―」と表示されている箇所は、測定していないことを示す。サンプル1~6において、温度が高くなるほど、熱伝導率が低下する傾向であった。
【0053】
上記各材料を用いて、厚さを違えたシート状のサンプルを作製した。サンプル名は、厚みと対応する符号+材料No.で示す。厚みと対応する符号は、以下の通りである。
A:0.20mm、B:0.30mm、C:0.35mm、D:0.40mm、E:0.50mm
例えば、材料1で厚さ0.2mmに形成されたサンプルのサンプル名はA1である。
【0054】
シート状のサンプルの作製方法は、以下の通りである。硬化前の接着剤である樹脂材料(100重量部)および無機フィラーに加えて、白金触媒(白金含有量で0.003重量部)、シランカップリング剤(2重量部)、および架橋剤(3重量部)を含む構成材料を、真空脱泡攪拌機を用いて真空下で撹拌した後、3本ロールミルで混練することにより、ペースト状の樹脂組成物(接着ペースト)を作製した。その後、作製した接着ペーストを、ドクターブレードを用いてポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの上に塗り広げた。次に、接着ペーストが塗り広げられたPETフィルムを切断し、その後、切断されたPETフィルム付きの接着ペーストを、乾燥機を用いて、適宜設定した温度および時間の条件下で加熱することによって半硬化または硬化させることにより、各サンプルとしての接着シートを作製した。
【0055】
図4は、厚み0.20mm、0.30mm、および0.35mmのサンプルの熱抵抗を示し、
図5は、厚み0.40mm、および0.50mmのサンプルの熱抵抗を示す。
図示するように、(1)サンプルC2、C4、D2、D4、E1、およびE3の熱抵抗は、120℃の時に6.5×10
-4(m
2K/W)以下である。(2)サンプルA1~A4、B1~B4、C1、C3、C4、D1、およびD3の熱抵抗は、-60℃の時に4.0×10
-4(m
2K/W)以下である。(3)サンプルA1~A4、B1~B4、C1、C3、D1、およびD3の熱抵抗は、120℃の時に5.0×10
-4(m
2K/W)以下である。
【0056】
図4、
図5に示すサンプルを用いて、第1実施形態の静電チャック10を構成した場合の板状部100の第1面S1の温度をシミュレーションした。シミュレーションの条件は、第1板状部110厚み3.0mm、第2板状部120厚み1.5mm、プラズマ入熱5000Wの条件で、一次元の定常熱伝導方程式により実施した。
【0057】
上記(1)に示す通りのサンプルでは120℃の時に熱抵抗が6.5×10-4(m2K/W)以下となり、このように第2接合部150を用いて静電チャックを構成すると、ベース部200に供給される冷媒の温度が25℃のとき、板状部100の第1面S1の温度を、140℃以下に制御することができた。さらに、上記(3)に示すサンプルの熱抵抗は、120℃の時に5.0×10-4(m2K/W)以下である。このようにすると、板状部100の第1面S1の温度を、120℃以下に制御することができた。さらに、上記(2)に示すサンプルの熱抵抗は、-60℃の時に4.0×10-4(m2K/W)以下である。このようにすると、ベース部200に供給される冷媒の温度を-100℃の極低温にして使用した場合に、板状部100の第1面S1の温度を、-20℃以下に制御することができた。
【0058】
<第2実施形態>
図6は、第2実施形態の静電チャック10AのXZ断面構成を概略的に示す説明図である。本実施形態の静電チャック10Aが第1実施形態の静電チャック10と異なる点は、板状部100Aが3層構造である点である。詳しくは、第1板状部110Aが2層構造である。以下に説明する実施形態において、静電チャック10と同一の構成には同一の符号を付し、先行する説明を参照する。
【0059】
第1板状部110Aは、第3板状部113と、第4板状部114と、第3板状部113と第4板状部114とを接合する第3接合部115と、を備える。本実施形態において、第3板状部113と第4板状部114とは、第1実施形態の第1板状部110と同様の材料により形成されている。また、第3接合部115は、第2接合部150と同一の材料により、形成されることが好ましく、熱抵抗が第2接合部150と略同一であることが好ましい。第3接合部115と、第2接合部150と、第1接合部400とが、同一材料で形成されることがさらに好ましい。このようにしても、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0060】
<第3実施形態>
図7は、第3実施形態の静電チャック10BのXZ断面構成を概略的に示す説明図である。本実施形態の静電チャック10Bが第2実施形態の静電チャック10Aと異なる点は板状部100Bの構成である。詳しくは、第1板状部110は第1実施形態と同様に1層であり、第2板状部120Bが2層構造である点である。以下に説明する実施形態において、静電チャック10と同一の構成には同一の符号を付し、先行する説明を参照する。
【0061】
第2板状部120Bは、第5板状部125と、第6板状部126と、第5板状部125と第6板状部126とを接合する第4接合部127と、を備える。第5板状部125は第1ヒーター141を備え、第6板状部126は第2ヒーター142を備える。このようにすると、板状部100Bの第1面S1の温度制御をより精密に行うことができる。本実施形態において、第5板状部125と第6板状部126とは、第1実施形態の第2板状部120と同様の材料により形成されている。また、第4接合部127は、第2接合部150と同一の材料により、形成されることが好ましく、熱抵抗が第2接合部150と略同一であることが好ましい。第4接合部127と、第2接合部150と、第1接合部400とが、同一材料で形成されることがさらに好ましい。このようにしても、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0062】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0063】
・上記実施形態では、2層構造の板状部と、3層構造の板状部を例示したが、板状部は4層以上であってもよい。4層以上の場合にも、板状部を構成する各層(板)を接合する接合部を、上記実施形態の第2接合部と同様にすることにより、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0064】
・上記実施形態では、板状部100の第1面S1の上に対象物が保持される例を示したが、板状部100の上に、さらに別のセラミックス基板を接合し、その上に対象物が保持される構成にしてもよい。
【0065】
・上記実施形態において、保持装置として静電チャックを例示したが、保持装置は、静電チャックに限定されない。例えば、CVD、PVD、PLD(Pulsed Laser Deposition)等の真空装置用ヒータ装置、サセプタ、載置台として構成することができる。
【0066】
・上記実施形態において、保持装置として、略円形平面の板状部材の積層体を備える例を示したが、平面形状は上記実施形態に限定されない。例えば、矩形平面、多角形平面等であってもよい。
【0067】
本開示は、上述の実施形態、実施例、変形例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0068】
本開示は、以下の適用例としても実現することが可能である。
[適用例1]
対象物を保持する保持装置であって、
前記対象物が載置される側の第1面と、前記第1面の裏面である第2面とを有する板状に形成される板状部と、
前記板状部の前記第2面側に配置され、冷却機能を有する、板状のベース部と、
前記板状部と前記ベース部との間に配置され、前記板状部と前記ベース部とを接合する第1接合部と、
を備え、
前記板状部は、
前記第1面を含む第1板状部と、
前記第2面を含む第2板状部と、
前記第1板状部と前記第2板状部との間に配置され、前記第1板状部と前記第2板状部とを接合する第2接合部と、
を有し、
前記第2接合部の熱抵抗は、120℃の時に6.5×10-4(m2K/W)以下であることを特徴とする、
保持装置。
[適用例2]
請求項1に記載の保持装置であって、
前記第2接合部の熱抵抗は、-60℃の時に5.5×10-4(m2K/W)以下であることを特徴とする、
保持装置。
[適用例3]
請求項1または請求項2に記載の保持装置であって、
前記第1板状部を構成する材料の熱伝導率は、前記第2板状部を構成する材料の熱伝導率以上であることを特徴とする、
保持装置。
[適用例4]
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の保持装置であって、
前記第1接合部の熱抵抗は、120℃の時に6.5×10-4(m2K/W)以下であることを特徴とする、
保持装置。
[適用例5]
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の保持装置であって、
前記第2接合部の厚みは前記第1接合部の厚み以下であることを特徴とする、
保持装置。
[適用例6]
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の保持装置であって、
前記第2板状部のうち、前記第2面とは反対側の面側にヒーターが配置されることを特徴とする、
保持装置。
【符号の説明】
【0069】
S1…第1面
S2…第2面
W…ウェハ
10、10A、10B…静電チャック
100、100A、100B…板状部
110…第1板状部、110A…第1板状部
113…第3板状部
114…第4板状部
115…第3接合部
120…第2板状部、120B…第2板状部
125…第5板状部
126…第6板状部
127…第4接合部
130…吸着電極
140、141、142…第2ヒーター
150…第2接合部
200…ベース部
210…冷媒流路
400…第1接合部
S3…第3面
S4…第4面