(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-25
(45)【発行日】2024-10-03
(54)【発明の名称】電力管理システムおよび充放電計画作成方法
(51)【国際特許分類】
H02J 3/32 20060101AFI20240926BHJP
H02J 3/00 20060101ALI20240926BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240926BHJP
G06Q 50/06 20240101ALI20240926BHJP
【FI】
H02J3/32
H02J3/00 130
H02J3/00 170
H02J7/00 B
H02J7/00 P
H02J3/00 180
G06Q50/06
(21)【出願番号】P 2022179369
(22)【出願日】2022-11-09
【審査請求日】2024-05-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591030237
【氏名又は名称】BIPROGY株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【氏名又は名称】橘 和之
(72)【発明者】
【氏名】脇森 浩志
(72)【発明者】
【氏名】久米 洋輝
(72)【発明者】
【氏名】道坂 史明
(72)【発明者】
【氏名】阿部 航大
【審査官】新田 亮
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/152667(WO,A1)
【文献】特開2017-050972(JP,A)
【文献】特開2018-195034(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/32
H02J 3/00
H02J 7/00
G06Q 50/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電装置による予測発電電力と、電力負荷による予測需要電力と、
車両に搭載された車載蓄電池を含む蓄電池の充放電量と、時間帯別の電気料金体系とに基づいて、上記蓄電池の充放電計画を作成する電力管理システムであって、
予測対象期間の各時刻における発電電力量の予測値を取得する発電電力予測部と、
過去の発電電力量の実績値をもとに、上記予測対象期間の各時刻で見込まれる発電電力量の予測誤差を算出する発電予測誤差算出部と、
上記発電電力予測部により取得された発電予測値および上記発電予測誤差算出部により算出された発電予測誤差を用いて、上記予測対象期間の各時刻における別の発電予測値を算出する別発電予測値算出部と、
上記予測対象期間の各時刻における需要電力量の予測値を取得する需要電力予測部と、
過去の需要電力量の実績値をもとに、上記予測対象期間の各時刻で見込まれる需要電力量の予測誤差を算出する需要予測誤差算出部と、
上記需要電力予測部により取得された需要予測値および上記需要予測誤差算出部により算出された需要予測誤差を用いて、上記予測対象期間の各時刻における別の需要予測値を算出する別需要予測値算出部と、
上記予測対象期間の各時刻における上記車両のモビリティとしての使用状態および上記車載蓄電池の消費電力量の予測値を取得する車両状態予測部と、
上記車載蓄電池の過去の消費電力量の実績値をもとに、上記予測対象期間の各時刻で見込まれる消費電力量の予測誤差を算出する消費予測誤差算出部と、
上記車両状態予測部により取得された消費予測値および上記消費予測誤差算出部により算出された消費予測誤差を用いて、上記予測対象期間の各時刻における別の消費予測値を算出する別消費予測値算出部と、
上記予測対象期間における上記時間帯別の電気料金体系の情報を用いて、上記発電予測値、上記需要予測値および上記蓄電池の状態に関して設定された制約条件のもとで、上記発電電力予測部および上記別発電予測値算出部により得られる複数の上記発電予測値と、上記需要電力予測部および上記別需要予測値算出部により得られる複数の上記需要予測値と、
上記車両状態予測部および上記別消費予測値算出部により得られる複数の上記消費予測値と、上記蓄電池の状態とが上記制約条件を満たしつつ
、上記車両のモビリティとしての使用に必要な蓄電量の不足を生じることなく買電による電力調達料金を低減させる最適化計算を行うことにより、上記蓄電池の充放電計画を作成する充放電計画作成部とを備えた
ことを特徴とする電力管理システム。
【請求項2】
上記車両状態予測部は、
上記予測対象期間の各時刻における上記車両のモビリティとしての使用状態を複数パターン予測するとともに、各パターンの使用状態となる可能性の高さを示す生起確率を算出する車両使用状態予測部と、
上記車両使用状態予測部により生成された複数の使用状態予測パターンの中から、上記生起確率に基づいて何れか1つの使用状態予測パターンを抽出するパターン抽出部と、
上記パターン抽出部により抽出された使用状態予測パターンおよび上記車載蓄電池の過去の消費電力量の実績値をもとに、上記予測対象期間の各時刻における上記車載蓄電池の消費電力量の予測値を算出する消費予測値算出部とを備えた
ことを特徴とする請求項
1に記載の電力管理システム。
【請求項3】
上記車両状態予測部は、
上記予測対象期間の各時刻における上記車両のモビリティとしての使用状態を複数パターン予測するとともに、各パターンの使用状態となる可能性の高さを示す生起確率を算出する車両使用状態予測部と、
上記車両使用状態予測部により生成された複数の使用状態予測パターンの中から、上記生起確率に基づいて何れか複数の使用状態予測パターンを抽出するパターン抽出部と、
上記パターン抽出部により抽出された複数の使用状態予測パターンのそれぞれについて、当該使用状態予測パターンおよび上記車載蓄電池の過去の消費電力量の実績値をもとに、上記予測対象期間の各時刻における上記車載蓄電池の消費電力量の予測値を算出する消費予測値算出部とを更に備えた
ことを特徴とする請求項
1に記載の電力管理システム。
【請求項4】
発電装置による予測発電電力と、電力負荷による予測需要電力と、蓄電池の充放電量と、時間帯別の電気料金体系とに基づいて、上記蓄電池の充放電計画を作成する電力管理システムであって、
予測対象期間の各時刻における発電電力量の予測値を取得する発電電力予測部と、
過去の発電電力量の実績値をもとに、上記予測対象期間の各時刻で見込まれる発電電力量の予測誤差を算出する発電予測誤差算出部と、
上記発電電力予測部により取得された発電予測値および上記発電予測誤差算出部により算出された発電予測誤差を用いて、上記予測対象期間の各時刻における別の発電予測値を算出する別発電予測値算出部と、
上記予測対象期間の各時刻における需要電力量の予測値を取得する需要電力予測部と、
過去の需要電力量の実績値をもとに、上記予測対象期間の各時刻で見込まれる需要電力量の予測誤差を算出する需要予測誤差算出部と、
上記需要電力予測部により取得された需要予測値および上記需要予測誤差算出部により算出された需要予測誤差を用いて、上記予測対象期間の各時刻における別の需要予測値を算出する別需要予測値算出部と、
上記予測対象期間の各時刻における電気料金の予測値を取得する電気料金予測部と、
過去の電気料金の実績値をもとに、上記予測対象期間の各時刻で見込まれる電気料金の予測誤差を算出する電気料金予測誤差算出部と、
上記電気料金予測部により取得された電気料金予測値および上記電気料金予測誤差算出部により算出された電気料金予測誤差を用いて、上記予測対象期間の各時刻における別の電気料金予測値を算出する別電気料金予測値算出部と
、
上記電気料金予測部および上記別電気料金予測値算出部により得られる複数の上記電気料金予測値を用いて、上記発電予測値、上記需要予測値および上記蓄電池の状態に関して設定された制約条件のもとで、上記発電電力予測部および上記別発電予測値算出部により得られる複数の上記発電予測値と、上記需要電力予測部および上記別需要予測値算出部により得られる複数の上記需要予測値と、上記蓄電池の状態とが上記制約条件を満たしつつ買電による電力調達料金を低減させる最適化計算を行うことにより、上記蓄電池の充放電計画を作成する
充放電計画作成部とを備えた
ことを特徴とす
る電力管理システム。
【請求項5】
上記予測対象期間の各時刻における電気料金の予測値を取得する電気料金予測部と、
過去の電気料金の実績値をもとに、上記予測対象期間の各時刻で見込まれる電気料金の予測誤差を算出する電気料金予測誤差算出部と、
上記電気料金予測部により取得された電気料金予測値および上記電気料金予測誤差算出部により算出された電気料金予測誤差を用いて、上記予測対象期間の各時刻における別の電気料金予測値を算出する別電気料金予測値算出部とを更に備え、
上記充放電計画作成部は、上記電気料金予測部および上記別電気料金予測値算出部により得られる複数の上記電気料金予測値を用いて、上記発電予測値、上記需要予測値および上記蓄電池の状態に関して設定された制約条件のもとで、上記発電電力予測部および上記別発電予測値算出部により得られる複数の上記発電予測値と、上記需要電力予測部および上記別需要予測値算出部により得られる複数の上記需要予測値と、上記車両状態予測部および上記別消費予測値算出部により得られる複数の上記消費予測値と、上記蓄電池の状態とが上記制約条件を満たしつつ、上記車両のモビリティとしての使用に必要な蓄電量の不足を生じることなく上記電力調達料金を低減させる最適化計算を行うことにより、上記蓄電池の充放電計画を作成する
ことを特徴とする請求項
1に記載の電力管理システム。
【請求項6】
発電装置による予測発電電力と、電力負荷による予測需要電力と、車両に搭載された車載蓄電池を含む蓄電池の充放電量と、時間帯別の電気料金体系とに基づいて、上記蓄電池の充放電計画を作成する電力管理システムであって、
予測対象期間の各時刻における発電電力量の予測値を取得する発電電力予測部と、
過去の発電電力量の実績値をもとに、上記予測対象期間の各時刻で見込まれる発電電力量の予測誤差を算出する発電予測誤差算出部と、
上記発電電力予測部により取得された発電予測値および上記発電予測誤差算出部により算出された発電予測誤差を用いて、上記予測対象期間の各時刻における別の発電予測値を算出する別発電予測値算出部と、
上記予測対象期間の各時刻における需要電力量の予測値を取得する需要電力予測部と、
過去の需要電力量の実績値をもとに、上記予測対象期間の各時刻で見込まれる需要電力量の予測誤差を算出する需要予測誤差算出部と、
上記需要電力予測部により取得された需要予測値および上記需要予測誤差算出部により算出された需要予測誤差を用いて、上記予測対象期間の各時刻における別の需要予測値を算出する別需要予測値算出部と、
上記予測対象期間の各時刻における上記車両のモビリティとしての使用状態を複数パターン予測するとともに、各パターンの使用状態となる可能性の高さを示す生起確率を算出する車両使用状態予測部と、
上記車両使用状態予測部により生成された複数の使用状態予測パターンの中から、上記生起確率に基づいて何れか複数の使用状態予測パターンを抽出するパターン抽出部と、
上記パターン抽出部により抽出された複数の使用状態予測パターンのそれぞれについて、当該使用状態予測パターンおよび上記車載蓄電池の過去の消費電力量の実績値をもとに、上記予測対象期間の各時刻における上記車載蓄電池の消費電力量の予測値を算出する消費予測値算出部と
、
上記予測対象期間における上記時間帯別の電気料金体系の情報を用いて、上記発電予測値、上記需要予測値および上記蓄電池の状態に関して設定された制約条件のもとで、上記発電電力予測部および上記別発電予測値算出部により得られる複数の上記発電予測値と、上記需要電力予測部および上記別需要予測値算出部により得られる複数の上記需要予測値と、上記消費予測値算出部により得られる複数の消費予測値と、上記蓄電池の状態とが上記制約条件を満たしつつ、上記車両のモビリティとしての使用に必要な蓄電量の不足を生じることなく
買電による電力調達料金を低減させる最適化計算を行うことにより、上記蓄電池の充放電計画を作成する
充放電計画作成部とを備えた
ことを特徴とす
る電力管理システム。
【請求項7】
上記充放電計画作成部は、上記発電予測値、上記需要予測値および上記蓄電池の状態に関して設定された複数の制約条件のもとで上記電力調達料金を低減させる最適化計算を行い、上記複数の制約条件を全て満たす解が得られない場合に、上記の複数の制約条件の少なくとも1つを緩和し、緩和した制約条件のもとで上記電力調達料金を低減させる最適化計算を再度行うことを特徴とする請求項1~
6の何れか1項に記載の電力管理システム。
【請求項8】
上記複数の制約条件は、買電による電力使用量のピーク値を目標ピーク値以下とするためのピーク値関連制約条件と、充放電に伴う上記蓄電池の劣化を抑制するための電池劣化関連制約条件とを含み、
上記充放電計画作成部は、上記ピーク値関連制約条件に対して上記電池劣化関連制約条件よりも高い優先度を付与し、制約条件を満たす解が得られるまで、上記の複数の制約条件を上記優先度に従って段階的に緩和していきながら、上記最適化計算を繰り返し行う
ことを特徴とする請求項
7に記載の電力管理システム。
【請求項9】
上記電池劣化関連制約条件は、上記蓄電池の保持電力を所定の下限値以上かつ所定の上限値以下に保つという制約条件を含み、上記予測対象期間の中の所定の時間帯に設定される上記下限値を他の時間帯に設定される上記下限値に比べて大きく設定したことを特徴とする請求項
8に記載の電力管理システム。
【請求項10】
上記電池劣化関連制約条件は、上記蓄電池の保持電力を所定の下限値以上かつ所定の上限値以下に保つという制約条件を含み、上記蓄電池の保持電力が上記下限値未満となる場合であっても、上記下限値未満となる期間が所定時間以内の場合は、当該所定時間の期間においては現在の保持電力を上記下限値として扱うことを特徴とする請求項
8に記載の電力管理システム。
【請求項11】
発電装置による予測発電電力と、電力負荷による予測需要電力と、
車両に搭載された車載蓄電池を含む蓄電池の充放電量と、時間帯別の電気料金体系とに基づいて、上記蓄電池の充放電計画を作成する充放電計画作成方法であって、
電力管理装置の発電電力予測部が、予測対象期間の各時刻における発電電力量の予測値を取得する工程と、
上記電力管理装置の発電予測誤差算出部が、過去の発電電力量の実績値をもとに、上記予測対象期間の各時刻で見込まれる発電電力量の予測誤差を算出する工程と、
上記電力管理装置の別発電予測値算出部が、上記発電電力予測部により取得された発電予測値および上記発電予測誤差算出部により算出された発電予測誤差を用いて、上記予測対象期間の各時刻における別の発電予測値を算出する工程と、
上記電力管理装置の需要電力予測部が、上記予測対象期間の各時刻における需要電力量の予測値を取得する工程と、
上記電力管理装置の需要予測誤差算出部が、過去の需要電力量の実績値をもとに、上記予測対象期間の各時刻で見込まれる需要電力量の予測誤差を算出する工程と、
上記電力管理装置の別需要予測値算出部が、上記需要電力予測部により取得された需要予測値および上記需要予測誤差算出部により算出された需要予測誤差を用いて、上記予測対象期間の各時刻における別の需要予測値を算出する工程と、
上記電力管理装置の車両状態予測部が、上記予測対象期間の各時刻における上記車両のモビリティとしての使用状態および上記車載蓄電池の消費電力量の予測値を取得する工程と、
上記電力管理装置の消費予測誤差算出部が、上記車載蓄電池の過去の消費電力量の実績値をもとに、上記予測対象期間の各時刻で見込まれる消費電力量の予測誤差を算出する工程と、
上記電力管理装置の別消費予測値算出部が、上記車両状態予測部により取得された消費予測値および上記消費予測誤差算出部により算出された消費予測誤差を用いて、上記予測対象期間の各時刻における別の消費予測値を算出する工程と、
上記電力管理装置の充放電計画作成部が、上記予測対象期間における上記時間帯別の電気料金体系の情報を用いて、上記発電予測値、上記需要予測値および上記蓄電池の状態に関して設定された制約条件のもとで、上記発電電力予測部および上記別発電予測値算出部により得られる複数の上記発電予測値と、上記需要電力予測部および上記別需要予測値算出部により得られる複数の上記需要予測値と、
上記車両状態予測部および上記別消費予測値算出部により得られる複数の上記消費予測値と、上記蓄電池の状態とが上記制約条件を満たしつつ
、上記車両のモビリティとしての使用に必要な蓄電量の不足を生じることなく買電による電力調達料金を低減させる最適化計算を行うことにより、上記蓄電池の充放電計画を作成する工程とを有する
ことを特徴とする充放電計画作成方法。
【請求項12】
発電装置による予測発電電力と、電力負荷による予測需要電力と、蓄電池の充放電量と、時間帯別の電気料金体系とに基づいて、上記蓄電池の充放電計画を作成する充放電計画作成方法であって、
電力管理装置の発電電力予測部が、予測対象期間の各時刻における発電電力量の予測値を取得する工程と、
上記電力管理装置の発電予測誤差算出部が、過去の発電電力量の実績値をもとに、上記予測対象期間の各時刻で見込まれる発電電力量の予測誤差を算出する工程と、
上記電力管理装置の別発電予測値算出部が、上記発電電力予測部により取得された発電予測値および上記発電予測誤差算出部により算出された発電予測誤差を用いて、上記予測対象期間の各時刻における別の発電予測値を算出する工程と、
上記電力管理装置の需要電力予測部が、上記予測対象期間の各時刻における需要電力量の予測値を取得する工程と、
上記電力管理装置の需要予測誤差算出部が、過去の需要電力量の実績値をもとに、上記予測対象期間の各時刻で見込まれる需要電力量の予測誤差を算出する工程と、
上記電力管理装置の別需要予測値算出部が、上記需要電力予測部により取得された需要予測値および上記需要予測誤差算出部により算出された需要予測誤差を用いて、上記予測対象期間の各時刻における別の需要予測値を算出する工程と、
上記電力管理装置の電気料金予測部が、上記予測対象期間の各時刻における電気料金の予測値を取得する工程と、
上記電力管理装置の電気料金予測誤差算出部が、過去の電気料金の実績値をもとに、上記予測対象期間の各時刻で見込まれる電気料金の予測誤差を算出する工程と、
上記電力管理装置の別電気料金予測値算出部が、上記電気料金予測部により取得された電気料金予測値および上記電気料金予測誤差算出部により算出された電気料金予測誤差を用いて、上記予測対象期間の各時刻における別の電気料金予測値を算出する工程と、
上記電力管理装置の充放電計画作成部が、上記電気料金予測部および上記別電気料金予測値算出部により得られる複数の上記電気料金予測値を用いて、上記発電予測値、上記需要予測値および上記蓄電池の状態に関して設定された制約条件のもとで、上記発電電力予測部および上記別発電予測値算出部により得られる複数の上記発電予測値と、上記需要電力予測部および上記別需要予測値算出部により得られる複数の上記需要予測値と、上記蓄電池の状態とが上記制約条件を満たしつつ買電による電力調達料金を低減させる最適化計算を行うことにより、上記蓄電池の充放電計画を作成する工程とを有する
ことを特徴とする充放電計画作成方法。
【請求項13】
発電装置による予測発電電力と、電力負荷による予測需要電力と、車両に搭載された車載蓄電池を含む蓄電池の充放電量と、時間帯別の電気料金体系とに基づいて、上記蓄電池の充放電計画を作成する充放電計画作成方法であって、
電力管理装置の発電電力予測部が、予測対象期間の各時刻における発電電力量の予測値を取得する工程と、
上記電力管理装置の発電予測誤差算出部が、過去の発電電力量の実績値をもとに、上記予測対象期間の各時刻で見込まれる発電電力量の予測誤差を算出する工程と、
上記電力管理装置の別発電予測値算出部が、上記発電電力予測部により取得された発電予測値および上記発電予測誤差算出部により算出された発電予測誤差を用いて、上記予測対象期間の各時刻における別の発電予測値を算出する工程と、
上記電力管理装置の需要電力予測部が、上記予測対象期間の各時刻における需要電力量の予測値を取得する工程と、
上記電力管理装置の需要予測誤差算出部が、過去の需要電力量の実績値をもとに、上記予測対象期間の各時刻で見込まれる需要電力量の予測誤差を算出する工程と、
上記電力管理装置の別需要予測値算出部が、上記需要電力予測部により取得された需要予測値および上記需要予測誤差算出部により算出された需要予測誤差を用いて、上記予測対象期間の各時刻における別の需要予測値を算出する工程と、
上記電力管理装置の車両使用状態予測部が、上記予測対象期間の各時刻における上記車両のモビリティとしての使用状態を複数パターン予測するとともに、各パターンの使用状態となる可能性の高さを示す生起確率を算出する工程と、
上記電力管理装置のパターン抽出部が、上記車両使用状態予測部により生成された複数の使用状態予測パターンの中から、上記生起確率に基づいて何れか複数の使用状態予測パターンを抽出する工程と、
上記電力管理装置の消費予測値算出部が、上記パターン抽出部により抽出された複数の使用状態予測パターンのそれぞれについて、当該使用状態予測パターンおよび上記車載蓄電池の過去の消費電力量の実績値をもとに、上記予測対象期間の各時刻における上記車載蓄電池の消費電力量の予測値を算出する工程と、
上記電力管理装置の充放電計画作成部が、上記予測対象期間における上記時間帯別の電気料金体系の情報を用いて、上記発電予測値、上記需要予測値および上記蓄電池の状態に関して設定された制約条件のもとで、上記発電電力予測部および上記別発電予測値算出部により得られる複数の上記発電予測値と、上記需要電力予測部および上記別需要予測値算出部により得られる複数の上記需要予測値と、上記消費予測値算出部により得られる複数の消費予測値と、上記蓄電池の状態とが上記制約条件を満たしつつ、上記車両のモビリティとしての使用に必要な蓄電量の不足を生じることなく買電による電力調達料金を低減させる最適化計算を行うことにより、上記蓄電池の充放電計画を作成する工程とを有する
ことを特徴とする充放電計画作成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力管理システムおよび充放電計画作成方法に関し、特に、電力調達料金を抑制するために最適化された蓄電池の充放電計画を作成するシステムに用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、脱炭素社会に向けた再生可能エネルギーの導入拡大、電力需給バランスの調整などの観点から、発電と蓄電とを活用したエネルギーマネジメントシステムが開発され、広く提供されている。例えば、太陽光発電の余剰電力を蓄電池に充電し、夜間など他の時間帯に使用することで、電力調達料金の削減を図るシステムが知られている。将来的に普及する可能性のある電気自動車(EV)に搭載された蓄電池を活用することも注目を集めている。
【0003】
これに関し、従来、発電装置による予測発電電力と、電力負荷による予測消費電力と、蓄電池を搭載したEVの使用計画または予測使用状態と、時間帯別の電気料金とに基づいて、EVのモビリティとしての利便性を損なわずに電気料金を最小化させるように電力管理を行うようにしたシステムが知られている(例えば、特許文献1,2参照)。なお、以下の説明において、EVを車両といい、当該車両に搭載された蓄電池を車載蓄電池という。
【0004】
特許文献1に記載の電力管理システムは、自然エネルギー発電装置と、電力負荷と、電力管理装置と、蓄電池(車載蓄電池)を搭載した車両とを備え、電力管理装置は、車載蓄電池の施設外での使用を開始する予定時刻、当該使用を終了する予定時刻、および当該使用に要する電力量の予測を含む施設外使用予定と、電力負荷の消費電力の予測と、自然エネルギー発電装置の発電電力の予測とに基づいて、時刻毎の車載蓄電池の蓄電量を算出する。そして、得られた時刻毎の蓄電量における最大値が所定の蓄電量最大値となるように、電力料金が比較的安価な時間帯における外部供給電力を用いて車載蓄電池の充電を計画するとともに、施設外使用終了予定時刻における車載蓄電池の蓄電量が所定の蓄電量最小値以上となるように車載蓄電池の充放電を計画する。
【0005】
特許文献2に記載の電力供給システムでは、消費量予測データと、発電量予測データと、車両の使用履歴に基づいて算出される車載蓄電池が配線に電気的に接続されている期間のデータとに基づいて、予測期間における車載蓄電池を含む蓄電手段の蓄電および放電の推移を示す充放電スケジュールを算出し、算出された充放電スケジュールに従って、予測期間における蓄電手段の充放電電力を制御する。充放電スケジュールは、蓄電手段の充放電電力を決定するために使用する評価指標(交流電力線からの供給電力量に応じた買電料金)が所定の値となるように、混合整数計画問題に定式化して算出する。
【0006】
また、電気料金の抑制および蓄電池劣化の抑制の両方の観点から蓄電池の充放電計画を最適化することを目的としたシステムも知られている(例えば、特許文献3~5参照)。特許文献3に記載の充放電制御装置では、使用に応じた電気料金が生じる電力系統および電力系統による電力で充電される蓄電池から供給される電力の需要予測に基づいて、充放電計画を計算するための制約条件を生成するとともに、電気料金と蓄電池の劣化とを最小化する目的関数を生成して最適化問題を解くことで、電気料金の節約額を増やすとともに蓄電池の劣化量を低く抑えることを可能にした蓄電池の充放電計画を生成する。
【0007】
特許文献4に記載の充放電計画設定では、電力需要予測等に基づいて、電気料金の削減および蓄電池の劣化量の抑制を達成する最適化問題を解くことで、電気料金および劣化量に対して最適な充放電計画を作成する。特許文献4には、蓄電池が系統に逆潮流しないこと、蓄電池が蓄電容量の限界を超えないこと、蓄電池が1時間に充放電できる限界を超えないことを制約条件とし、電気料金および蓄電池の劣化量の和を最小にする最適解を求めるための関数を目的関数として、所定時間毎の充放電計画を求める最適化問題を解くことが記載されている。
【0008】
特許文献5には、電力消費のピークと蓄電池の充放電タイミングとの最適化を図ることができ、蓄電池を用いてより効率よく電力ピークカットを含む負荷平準化を行うことが可能な電力負荷平準化装置が開示されている。特許文献5に記載の電力負荷平準化装置では、予測された要求放電量(ピークカットに要する電力量)が所定値(例えばSOCで80%程度)よりも低い場合には、夜間電力を用いてリチウムイオン電池を充電する。また、予測された要求放電量が所定値よりも高い場合には、電力がピークになると予測される直前に充電が完了するようにリチウムイオン電池を充電する。これにより、リチウムイオン電池の劣化を抑制して寿命を向上させることと、電気料金が比較的安い夜間料金を用いてリチウムイオン電池の充電を行うことを両立させている。
【0009】
上記特許文献1~5に記載のシステムでは、発電電力、需要電力、車載蓄電池の使用状態などの予測結果をもとに最適化計算を行い、所与の制約を満たすような蓄電池の充放電計画を作成している。つまり、予測結果が正しいものとして制約式に当てはめることで充放電計画を作成している。しかしながら、実際の発電状態、需要状態、車載蓄電池の使用状態は、必ずしも予測の通りになるとは限らない。そのため、不確定な予測結果をもとに作成された充放電計画に従って蓄電池の充放電制御を行った場合に、実際には制約を満たさない充放電制御となってしまうことがあるという問題があった。
【0010】
なお、問題を定義するデータが不正確あるいは不確定な場合にも、信頼できる結果を返すことができるようにした最適化問題のモデリング技法として、ロバスト最適化が知られている。従来、このロバスト最適化を適用して電力の運転計画を作成するようにしたシステムも知られている(例えば、特許文献6,7参照)。ただし、特許文献6,7に記載の技術は、蓄電池の充放電計画を最適化するものではない。
【0011】
特許文献6に記載の運転計画作成装置では、電力の需要実績を示すデータおよび再生可能エネルギーによる発電実績を示すデータに基づいて、統計的に取り得る範囲を示す予測データを生成する。そして、当該予測データの示す範囲と、発電機の諸元および電力系統の状態に関する所定の制約とを含む制約式を満たし、少なくとも再生可能エネルギーの抑制をコストとした目的関数の値を所望の値に近づける問題を解くことで、発電機の運転計画を作成する。ここで、目的関数および制約式に入力値を当てはめることで問題データを生成するとともに、当該問題データに対して、ロバスト最適化手法に適用するための式変形を行い、式変形された式に対してロバスト最適化手法に基づいて発電機の運転計画を作成する。
【0012】
特許文献7に記載の情報処理装置では、複数の電力調達手段の各々から調達する電力量を操作変数とし、複数の電力調達手段を用いて予測需要に対応する電力量を調達するために必要な総コストを含む値を目的関数とし、電力調達手段から調達可能な電力量に関する制約条件を有する最適化モデルを生成し、当該最適化モデルを数理最適化手法により解くことで、複数の電力調達手段の各々から調達する電力量を示す電力調達計画を決定する。ここで、電力需要に不確実な制約が与えられた場合であっても、再計画を前提としたロバスト最適化問題を定式化し、定式化したロバスト最適化問題の最適解を求めることで、入力された電力需要に対して最適な発電計画を決定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】特許6053554号公報
【文献】特許5672186号公報
【文献】特開2016-73113号公報
【文献】特開2018-23188 号公報
【文献】特開2016-116401 号公報
【文献】特開2021-33625 号公報
【文献】特開2021-157724 号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上述のような問題を解決するために成されたものであり、少なくとも発電予測および需要予測に基づいて蓄電池の充放電計画を作成するシステムにおいて、予測が外れた場合でも所与の制約が満たされる可能性が高く、かつ、目的にできるだけ近づくような最適な充放電計画を作成できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記した課題を解決するために、本発明では、予測対象期間の各時刻における発電電力量の予測値を取得するとともに、当該取得した発電予測値と、過去の発電電力量の実績値をもとに算出した予測対象期間の各時刻で見込まれる発電電力量の予測誤差とを用いて、予測対象期間の各時刻における別の発電予測値を算出する。また、予測対象期間の各時刻における需要電力量の予測値を取得するとともに、当該取得した需要予測値と、過去の需要電力量の実績値をもとに算出した予測対象期間の各時刻で見込まれる需要電力量の予測誤差とを用いて、予測対象期間の各時刻における別の需要予測値を算出する。そして、予測対象期間における時間帯別の電気料金体系の情報を用いて、発電予測値、需要予測値および蓄電池の状態に関して設定された制約条件のもとで、上述のように取得および算出した複数の発電予測値および複数の需要予測値と蓄電池の状態とが制約条件を満たしつつ買電による電力調達料金を低減させる最適化計算を行うことにより、蓄電池の充放電計画を作成する。
【発明の効果】
【0016】
上記のように構成した本発明によれば、最初に取得される実際の発電予測値および需要予測値だけでなく、当該取得された実際の発電予測値および需要予測値をもとに算出される別の発電予測値および需要予測値を含めて、複数の発電予測値および複数の需要予測値を用いて最適化計算が行われる。すなわち、複数の発電予測値および複数の需要予測値と蓄電池の状態とが制約条件を満たし、かつ、買電による電力調達料金を低減させるような最適化計算が行われる。これにより、実際の発電予測および需要予測が外れた場合でも制約条件が満たされる可能性が高く、かつ、買電による電力調達料金ができるだけ低くなるような最適な充放電計画を作成することができる。
【0017】
特に、本発明では、実際の発電予測値および需要予測値と、過去の実績値をもとに算出した予測誤差とを用いて別の発電予測値および別の需要予測値を算出しているので、別の発電予測値および別の需要予測値として的外れな予測値が算出される可能性を低減することができる。このため、最適化計算の際に複数の発電予測値および複数の需要予測値の全てについて制約条件が満たされるようにするために、制約条件を不必要に緩くする必要がない。これにより、適切な制約条件のもとで、その制約条件を満たしつつ電力調達料金を低減させる最適化計算を行うことができる。つまり、本発明により取得および算出される複数の発電予測値および複数の需要予測値を用いて最適化計算を行えば、現実の発電電力および需要電力が実際の予測値から外れたとしても、適切に設定された制約条件を満たす範囲で適用可能となる充放電計画を作成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本実施形態による電力管理システムの全体構成例を示す図である。
【
図2】本実施形態による電力管理装置の機能構成例を示すブロック図である。
【
図3】発電実績データ記憶部に記憶される発電実績データの例を示す図である。
【
図4】需要実績データ記憶部に記憶される需要実績データの例を示す図である。
【
図5】車両使用実績データ記憶部に記憶される車両使用実績データの例を示す図である。
【
図6】車両状態予測部の具体的な機能構成例を示すブロック図である。
【
図7】車両使用状態予測部が一例として使用する予測モデルの概念を示す模式図である。
【
図8】ビームサーチによって所定単位時間ごとの車両使用状態を予測する処理の内容を説明するための模式図である。
【
図9】消費予測値算出部の処理例を説明するための図である。
【
図10】予測誤差の算出例を説明するための図である。
【
図11】本実施形態による電力管理装置の動作例を示すフローチャートである。
【
図12】制約条件の段階的緩和の一例を示す図である。
【
図13】本実施形態による電力管理装置の他の機能構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態による電力管理システムの全体構成例を示す図である。本実施形態の電力管理システムは、例えばクラウド上にサーバ装置として設置される電力管理装置100と、需要家において使用される電力を管理するシステム(EMS:Energy Management System)101と、車載蓄電池113に蓄えた電力を家庭の電力として使うことを可能にするためのV2H(Vehicle to Home)システム102とを備えて構成される。
【0020】
需要家とは、電力の供給を受けて使用する者をいい、一例においては一般家庭である。需要家は、工場、事務所、営業所、学校もしくは病院といった事業所であってもよい。需要家の施設には、EMS101、V2Hシステム102、再生可能エネルギーの発電装置の一例である太陽光発電装置111、電力を消費する各種電力負荷112-1,112-2,・・・(以下、単に電力負荷112と記す)、車載蓄電池113、および車載ではない蓄電池114が設定される。一般家庭の場合、電力負荷112は、例えば照明、テレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコンといった各種電気製品であり、蓄電池114は、小型の住宅用蓄電池である。以下では、住宅用蓄電池114として説明する。
【0021】
EMS101には、V2Hシステム102と、太陽光発電装置111と、電力負荷112と、住宅用蓄電池114とが接続されている。EMS101を用いることで、電力負荷112での電力使用量をリアルタイムで計測し、建物全体から部屋ごと、電気製品ごと、時間ごとのエネルギー使用状況を可視化することができる。また、太陽光発電装置111で発電される電力や、車載蓄電池113および住宅用蓄電池114に蓄積される電力を最適に運用し、電力使用量の多い時間帯を回避して電力負荷112を使用することによってピークを他の時間帯にシフトして平準化する「ピークシフト」や、電力使用量が所定の目標値を超えないようにする「ピークカット」を行うことも可能である。
【0022】
V2Hシステム102には、車両の車載蓄電池113が専用ケーブルによって着脱可能に接続される。V2Hシステム102と車載蓄電池113とを接続しているときは、太陽光発電装置111で発電された電力(以下、発電電力という)や、図示しない系統を通じて電力会社から購入した電力(以下、買電電力という)を車載蓄電池113に充電したり、車載蓄電池113に蓄積された電力(以下、蓄積電力という)を放電して電力負荷112で使用したりすることが可能である。
【0023】
一方、車両をモビリティ(移動手段)として使用するときは、V2Hシステム102と車載蓄電池113とを接続する専用ケーブルが外されて、車両が自由に移動できる状態となる。本実施形態において、V2Hシステム102は、車載蓄電池113が専用ケーブルによって接続されているときは車両が「在宅」であり、車載蓄電池113が専用ケーブルによって接続されていないときは車両が「外出」(モビリティとして使用中)であると判断する。
【0024】
電力管理装置100は、インターネット等の通信ネットワークを介してEMS101と接続され、当該EMS101を介して各種のデータを取得する。また、電力管理装置100は、通信ネットワークを介して電気料金提供サーバ200と接続され、電気料金提供サーバ200から時間帯別の電気料金体系のデータを取得する。そして、これらの取得したデータを用いて、後述する各種の予測および充放電計画の作成などの処理を実行し、その結果に基づいてEMS101を制御する。
【0025】
図2は、本実施形態による電力管理装置100の機能構成例を示すブロック図である。
図2に示すように、本実施形態の電力管理装置100は、機能構成として、発電実績データ記録部1A、発電電力予測部1B、発電予測誤差算出部1C、別発電予測値算出部1D、需要実績データ記録部2A、需要電力予測部2B、需要予測誤差算出部2C、別需要予測値算出部2D、車両使用実績データ記録部3A、車両状態予測部3B、消費予測誤差算出部3C、別消費予測値算出部3D、料金データ取得部4、充放電計画作成部5および充放電制御部6を備えている。また、本実施形態の電力管理装置100は、記憶媒体として、発電実績データ記憶部11、需要実績データ記憶部12、車両使用実績データ記憶部13および料金テーブル記憶部14を備えている。
【0026】
上記機能ブロック1A~1D,2A~2D,3A~3D,4~6は、ハードウェア、DSP(Digital Signal Processor)、ソフトウェアの何れによっても構成することが可能である。例えばソフトウェアによって構成する場合、上記機能ブロックは、実際にはコンピュータのCPU、RAM、ROMなどを備えて構成され、RAMやROM、ハードディスクまたは半導体メモリ等の記憶媒体に記憶されたプログラムが動作することによって実現される。
【0027】
電力管理装置100は、
図2に示す機能構成により、太陽光発電装置111による予測発電電力と、電力負荷112による予測需要電力と、車載蓄電池113による予測消費電力と、蓄電池113,114の充放電量と、時間帯別の電気料金体系とに基づいて、蓄電池113,114の充放電計画を作成する。本実施形態では、予測対象期間における各時刻の蓄電池113,114の充放電量を説明変数の1つとし、買電による電力調達価格を目的関数とする数理最適化モデル関数を用いて、複数の予測値をもとに最適化計算を行うことにより、所定の制約条件をすべて満たしつつ目的関数を最小化する充放電計画を作成する。
【0028】
発電実績データ記録部1Aは、太陽光発電装置111での発電電力量の計測データをEMS101からリアルタイムで取得し、発電実績データ記憶部11に記憶させる。本実施形態では、発電実績データ記録部1Aは、EMS101から所定単位時間ごとに送信される発電電力量の計測データを取得して発電実績データ記憶部11に記憶させる。なお、発電実績データ記録部1Aは、EMS101で録り溜めた所定単位時間ごとの計測データをバッチ的にまとめて取得するようにしてもよい。
【0029】
図3は、発電実績データ記憶部11に記憶される発電実績データの例を示す図である。
図3に示すように、発電実績データ記憶部11には、所定単位時間ごと(例えば、30分ごと)の時間、天候、発電電力量が時系列に記憶される。天候は、例えば、気象情報を提供するウェブサイトまたはサーバからインターネット等の通信ネットワークを介して取得する。
【0030】
需要実績データ記録部2Aは、電力負荷112での需要電力量(消費電力量)の計測データをEMS101からリアルタイムで取得し、需要実績データ記憶部12に記憶させる。本実施形態では、需要実績データ記録部2Aは、EMS101から所定単位時間ごとに送信される各電力負荷112-1,112-2,・・・での総消費電力量の計測データを取得して需要実績データ記憶部12に記憶させる。なお、需要実績データ記録部2Aは、EMS101で録り溜めた所定単位時間ごとの計測データをバッチ的にまとめて取得するようにしてもよい。
【0031】
図4は、需要実績データ記憶部12に記憶される需要実績データの例を示す図である。
図4に示すように、需要実績データ記憶部12には、所定単位時間ごと(例えば、30分ごと)の時間、曜日、需要電力量が時系列に記憶される。曜日は、例えば、電力管理装置100にあらかじめ記憶されたカレンダデータから取得する。
【0032】
車両使用実績データ記録部3Aは、車両のモビリティとしての使用状態(在宅/外出の何れかの状態)の検出データと、車載蓄電池113での消費電力量の計測データとをEMS101からリアルタイムで取得し、車両使用実績データ記憶部13に記憶させる。本実施形態では、車両使用実績データ記録部3Aは、EMS101から所定単位時間ごとに送信される車両使用状態の検出データを取得して車両使用実績データ記憶部13に記憶させる。また、車両使用実績データ記録部3Aは、車両の使用状態が外出から在宅に変化したことがEMS101により検出されたときに送信される消費電力量の計測データを取得して車両使用実績データ記憶部13に記憶させる。車載蓄電池113の消費電力量は、車両の使用状態が在宅から外出に変化したとき(出発時)に計測される車載蓄電池113の保持電力と、車両の使用状態が外出から在宅に変化したとき(帰宅時)に計測される車載蓄電池113の保持電力との差分から計算することが可能である。なお、車両使用実績データ記録部3Aは、EMS101で録り溜めた所定単位時間ごとの使用状態の検出データおよび状態変化時ごとの消費電力量の計測データをバッチ的にまとめて取得するようにしてもよい。
【0033】
図5は、車両使用実績データ記憶部13に記憶される車両使用実績データの例を示す図である。
図5に示すように、車両使用実績データ記憶部13には、所定単位時間ごと(例えば、30分ごと)の時間、曜日、車両使用状態が時系列に記憶されるとともに、車両が外出中のときにおける車載蓄電池113の消費電力量が記憶される。
図5において、車両使用状態の〇印は在宅、×印は外出を示している。
図5の例では、2019/4/1の8:30から15:30までの7時間30分において車両が外出中であったこと、およびその間の車載蓄電池113の消費電力量が記録されている。8:30より前および16:00より後は外出していないため、車載蓄電池113の消費電力量は記録されていない。所定単位時間ごと(30分ごと)の消費電力量は、例えば、
図5のように記録されている消費電力量を平均化した値を用いる。
【0034】
発電電力予測部1Bは、発電実績データ記憶部11に記憶された発電実績データを用いて、予測対象期間中における所定単位時間ごとの太陽光発電装置111での発電電力量(特許請求の範囲に記載した「予測対象期間の各時刻における発電電力量」に相当する。時刻tにおける発電電力量は、時刻tから時刻t+1までの発電電力量を意味する。これは、以下に述べる需要電力量および消費電力量についても同様である)を予測する。
【0035】
ここで、発電電力予測部1Bは、太陽光発電装置111による発電電力量の予測をバッチ処理として所定周期ごとに繰り返し行う。例えば、発電電力予測部1Bは、毎日の決められた時刻(例えば、午前0時)に、翌日の24時間を予測対象期間として、発電電力量の予測を行う。なお、この予測を行う時刻および予測対象期間は一例であり、これに限定されるものではない。
【0036】
発電電力予測部1Bは、発電実績データ記憶部11に記憶された発電実績データを用いて、どの時間帯のどのような天候のときにどの程度の発電電力量が得られるかの傾向を分析し、その分析結果と予測対象期間中における所定単位時間ごとの予測天候情報とに基づいて、予測対象期間中における所定単位時間ごとの発電電力量を予測する。予測天候情報は、例えば、気象情報を提供するウェブサイトまたはサーバからインターネット等の通信ネットワークを介して取得する。
【0037】
一例として、発電電力予測部1Bは、発電実績データ記憶部11に記憶された発電実績データを用いて、時間帯と天候を説明変数とし、発電電力量を目的変数とする関数から成る予測モデルを生成する。そして、予測対象期間中における所定単位時間ごとの予測天候情報を予測モデルに入力することにより、予測対象期間中における所定単位時間ごとの発電電力量を予測する。予測モデルの生成は、例えば、公知の機械学習を利用して行うことが可能である。例えば、予測モデルは、ランダムフォレスト等の機械学習を用いた回帰予測モデルとすることが可能である。
【0038】
需要電力予測部2Bは、需要実績データ記憶部12に記憶された需要実績データを用いて、予測対象期間中における所定単位時間ごとの電力負荷112での需要電力量(予測対象期間の各時刻における需要電力量)を予測する。ここで、需要電力予測部2Bは、電力負荷112による需要電力量の予測をバッチ処理として繰り返し行う。例えば、需要電力予測部2Bは、毎日の決められた時刻(例えば、午前0時)に、翌日の24時間を予測対象期間として、需要電力量の予測を行う。なお、この予測を行う時刻および予測対象期間は一例であり、これに限定されるものではない。
【0039】
需要電力予測部2Bは、需要実績データ記憶部12に記憶された需要実績データを用いて、どの曜日のどの時間帯にどの程度の需要電力量が発生するかの傾向を分析し、その分析結果と予測対象期間中における曜日情報とに基づいて、予測対象期間中における所定単位時間ごとの需要電力量を予測する。
【0040】
一例として、需要電力予測部2Bは、需要実績データ記憶部12に記憶された需要実績データを用いて、時間帯と曜日を説明変数とし、需要電力量を目的変数とする関数から成る予測モデルを生成する。そして、予測対象期間中における曜日情報を予測モデルに入力することにより、予測対象期間中における所定単位時間ごとの需要電力量を予測する。予測モデルの生成は、例えば、公知の機械学習を利用して行うことが可能である。例えば、予測モデルは、ランダムフォレスト等の機械学習を用いた回帰予測モデルとすることが可能である。なお、時間帯と曜日に加え、天候情報(天気、気温、湿度等)などの他の情報も説明変数として用いる予測モデルを生成するようにしてもよい。この場合、需要実績データ記憶部12に記憶する需要実績データには他の情報も含める。
【0041】
車両状態予測部3Bは、車両使用実績データ記憶部13に記憶された車載蓄電池113の車両使用実績データを用いて、予測対象期間中における所定単位時間ごとの車両のモビリティとしての使用状態および車載蓄電池113の消費電力量(予測対象期間の各時刻における車両使用状態および消費電力量)を予測する。ここで、車両状態予測部3Bは、車両使用状態および車載蓄電池113の消費電力量の予測をバッチ処理として繰り返し行う。例えば、車両状態予測部3Bは、毎日の決められた時刻(例えば、午前0時)に、翌日の24時間を予測対象期間として、車両使用状態および消費電力量の予測を行う。なお、この予測を行う時刻および予測対象期間は一例であり、これに限定されるものではない。
【0042】
車両状態予測部3Bは、車両使用実績データ記憶部13に記憶された車載蓄電池113の車両使用実績データを用いて、どの曜日のどの時間帯に車両がモビリティとして使用され、どの程度の消費電力量が発生するかの傾向を分析し、その分析結果と予測対象期間中における曜日情報とに基づいて、予測対象期間中における所定単位時間ごとの車両使用状態および消費電力量を予測する。例えば、車両状態予測部3Bは、予測対象期間中における所定単位時間ごとの車両使用状態を予測する。そして、車両使用実績データ記憶部13に車両使用実績データとして記憶されている車両使用状態の過去実績の中から、予測した車両使用状態に類似する車両使用状態を抽出し、抽出した類似の車両使用状態に対応する消費電力量の実績値をもとに車載蓄電池113の消費電力量を予測する。
【0043】
図6は、車両状態予測部3Bの具体的な機能構成例を示すブロック図である。
図6に示すように、車両状態予測部3Bは、車両使用状態予測部31、パターン抽出部32および消費予測値算出部33を備えて構成される。
【0044】
車両使用状態予測部31は、予測対象期間の各時刻における車両のモビリティとしての使用状態を複数パターン予測するとともに、各パターンの使用状態となる可能性の高さを示す生起確率を算出する。この車両使用状態予測部31は、例えば特開2022-2449号公報に開示されている処理と同様の処理を行うことにより、予測対象期間中における所定単位時間ごとの車両使用状態を予測するとともに、その予測した車両使用状態となる生起確率を算出する。
【0045】
すなわち、車両使用状態予測部31は、車両使用実績データ記憶部13に記憶された車両使用実績データを用いて、時間帯と曜日を説明変数とし、車両使用状態を目的変数とする関数から成る予測モデルを生成する。そして、予測対象期間中における曜日情報を予測モデルに入力することにより、予測対象期間中における所定単位時間ごとの車両使用状態を予測する。なお、時間帯と曜日に加え、天候情報などの他の情報も説明変数として用いる予測モデルを生成するようにしてもよい。この場合、車両使用実績データ記憶部13に記憶する車両使用実績データには他の情報も含める。
【0046】
図7は、車両使用状態予測部31が一例として使用する予測モデルの概念を示す模式図である。
図7に示す予測モデルは、所定単位時間ごとの日時情報および曜日情報をニューラルネットワークに入力し、所定単位時間ごとの車両使用状態をニューラルネットワークから出力するように構成された予測モデルである。ニューラルネットワークは、入力層と出力層との間にLSTM層(Long short-term memory)と関数層とを含んでおり、ある所定単位時間t
nに関する車両使用状態を、それより1つ前の所定単位時間t
n-1について予測された車両使用状態(ラベル)を引き継いで予測する。
【0047】
このような予測モデルを用いることにより、車両使用状態予測部31による車両使用状態の予測結果が、車両が在宅と予測される時間帯と、車両が外出と予測される時間帯とが短い時間間隔で交互に入れ替わるような間違った予測となる可能性を低減することができる。すなわち、30分単位の短い時間間隔で在宅と外出とが交互に切り替わることは、車両のモビリティとしての使用状態としては一般的なものとは言えず、在宅の時間帯も外出の時間帯もそれぞれ比較的長い時間継続することが多い。所定単位時間ごとに、車両使用状態の予測結果を表すラベルを付与し、LSTMを用いて系列ラベリングを適用した予測モデルを生成することにより、一般的な傾向に即した車両使用状態の予測を行うことができるようになる。
【0048】
車両使用状態予測部31は、
図7に示す概念で説明される予測モデルに対して予測期間情報(予測対象期間の日時情報および曜日情報)を入力することにより、予測対象期間中における所定単位時間ごとの車両のモビリティとしての使用状態を、所定単位時間ごとの複数の予測結果の中から生起確率の低い一部を枝刈りしながら複数パターン予測する。車両使用状態予測部31は、この予測の際に、例えばビームサーチと呼ばれる手法を用いる。
【0049】
図8は、ビームサーチによって所定単位時間ごとの車両使用状態を予測する処理の内容を説明するための模式図である。
図8において、時刻t1は予測対象期間の最初の所定単位時間、時刻t2は予測対象期間の2番目の所定単位時間、時刻t3は予測対象期間の3番目の所定単位時間である。4番目以降の所定単位時間は図示を省略している。
図8において、■印は車両が外出中であると予測することを表し、付記されている数値は生起確率を示している。□印は車両が在宅中であると予測することを表し、付記されている数値は生起確率を示している。
【0050】
図8の例では、使用状態予測部63は、時刻t1における車両使用状態を、外出である確率が0.8、在宅である確率が0.2と予測している。ここで、車両使用状態予測部31は、時刻t1における車両使用状態に関する2つの予測結果の中から、例えば生起確率が上位N個以外の予測結果を枝刈りする。枝刈りするとは、不採用にすることを意味する。ここでは、N=3とし、生起確率が上位3個以外の予測結果を枝刈りするものとして説明する。時刻t1では、予測されるのは2個のパターンのみであるから、枝刈りは行わない。
【0051】
次に、車両使用状態予測部31は、時刻t2における車両使用状態を、時刻t1の外出状態から続けて外出状態である確率が0.5、時刻t1の外出状態から在宅状態に変わる確率が0.3、時刻t1の在宅状態から外出状態に変わる確率が0.05、時刻t1の在宅状態から続けて在宅状態である確率が0.15と予測している。この場合、車両使用状態予測部31は、4パターンの予測結果のうち、生起確率が最も低い0.05であると予測した「時刻t1:在宅→時刻t2:外出」のパターンの予測結果を枝刈りする。
【0052】
次に、車両使用状態予測部31は、時刻t3における車両使用状態を予測する。ここで、車両使用状態予測部31は、時刻t2において枝刈りした車両使用状態については時刻t3以降の予測は行わず、時刻t2において生き残っている3パターンの予測結果を引き継いでそれぞれ外出/在宅の確率を予測する。このため、次のように6パターンの車両使用状態を予測することとなる。
(1)時刻t1:外出→時刻t2:外出→時刻t3:外出・・・確率0.1
(2)時刻t1:外出→時刻t2:外出→時刻t3:在宅・・・確率0.4
(3)時刻t1:外出→時刻t2:在宅→時刻t3:外出・・・確率0.1
(4)時刻t1:外出→時刻t2:在宅→時刻t3:在宅・・・確率0.2
(5)時刻t1:在宅→時刻t2:在宅→時刻t2:外出・・・確率0.12
(6)時刻t1:在宅→時刻t2:在宅→時刻t2:在宅・・・確率0.03
この場合、車両使用状態予測部31は、生起確率が上位3個以外のとなるパターン(1)、(3)、(6)を刈りする。
【0053】
以下、車両使用状態予測部31は、図示していない時刻t4から予測対象期間(翌日の24時間)の最後の所定単位時間である時刻t48(所定単位時間を30分とした場合の最終時刻)についても同様に、生起確率が上位3個以外のとなるパターンの予測結果を枝刈りしながらそれぞれ6パターンずつの車両使用状態を予測していく。そして、時刻t48における6パターンの予測結果の中から生起確率が上位3個以外となる3つパターンを枝刈りすることにより、最終的に3パターンの予測使用状態を得る。
【0054】
なお、ここに示した枝刈りの方法は一例であり、これに限定されるものではない。例えば、生起確率が所定値以下(例えば、0.1以下)の予測結果を枝刈りするようにしてもよい。また、ここでは3パターンの車両使用状態を予測する例について説明したが、これより多いパターン数の車両使用状態を予測するようにしてもよい。また、ここでは詳しく説明しないが、特開2022-2449号公報に変形例1または変形例2として説明した方法によって複数パターンの車両使用状態を予測するようにしてもよい。また、パターンごとに生起確率が算出される方法であればよく、特開2022-2449号公報に記載の方法に限定されるものではない。
【0055】
パターン抽出部32は、車両使用状態予測部31により生成された複数の使用状態予測パターンの中から、生起確率に基づいて何れか1つの使用状態予測パターンを抽出する。例えば、パターン抽出部32は、生起確率が最も大きい使用状態予測パターンを抽出する。
【0056】
消費予測値算出部33は、パターン抽出部32により抽出された使用状態予測パターンおよび車両使用実績データ記憶部13に記憶されている車載蓄電池113の過去の消費電力量の実績値をもとに、予測対象期間の各時刻における車載蓄電池113の消費電力量の予測値を算出する。ここで、消費予測値算出部33は、車載蓄電池113の外出ごとの消費電力量を予測するために、出発時刻と帰宅時刻が近い実績値を利用する。
【0057】
図9は、消費予測値算出部33の処理例を説明するための図である。
図9(0)は、パターン抽出部32により抽出された使用状態予測パターンである。まず、消費予測値算出部33は、
図9(a)に示すように、4/6の予測対象期間より前のD日分(
図9(a)の例ではD=5)の使用状態実績パターンの中から、出発時刻および帰宅時刻の差が
図9(0)の使用状態予測パターンとそれぞれ1時間以内である使用状態実績パターンを抽出する。
【0058】
次に、消費予測値算出部33は、
図9(b)に示すように、使用状態予測パターンと時刻の重なりが大きい順にK個(
図9(b)の場合はK=3)の使用状態実績パターンを抽出する。最後に、消費予測値算出部33は、K個の使用状態実績パターンの外出時の消費電力量の中央値を算出し、これを車載蓄電池113の消費電力量の予測値とする。なお、最初の条件に合致する使用状態実績パターンが1つもない場合は、直近30日の使用状態実績パターンのうち、使用状態予測パターンとの時刻の重なりが一番大きい使用状態実績パターンの消費電力量を車載蓄電池113の消費電力量の予測値とする。
【0059】
発電予測誤差算出部1Cは、発電実績データ記憶部11に記憶されている太陽光発電装置111の過去の発電電力量の実績値をもとに、予測対象期間の各時刻で見込まれる発電電力量の予測誤差(以下、発電予測誤差という)を算出する。すなわち、発電予測誤差算出部1Cは、予測対象期間中の30分おきの各時刻t1~t48のそれぞれについて発電予測誤差を算出する。発電予測誤差算出部1Cは、各時刻についてそれぞれ少なくとも1つ、好ましくは複数の発電予測誤差を算出する。
【0060】
例えば、発電予測誤差算出部1Cは、過去の発電電力量の実績値について標準偏差を算出し、当該標準偏差に基づき特定される所定の値範囲内でランダムな値を発生して発電予測誤差とする。一例として、発電予測誤差算出部1Cは、発電電力予測部1Bにより取得された発電予測値を平均として、標準偏差σから
図10に示すように正規分布を仮定し、±2σの範囲内でランダムな値を発生して発電予測誤差とする。このように、本実施形態では、標準偏差が±2σの範囲を超える誤差、つまり確率的に発生しにくい誤差については採用しないようにしている。
【0061】
別発電予測値算出部1Dは、発電電力予測部1Bにより取得された発電予測値および発電予測誤差算出部1Cにより算出された発電予測誤差を用いて、予測対象期間の各時刻における別の発電予測値を算出する。別発電予測値算出部1Dは、各時刻についてそれぞれ少なくとも1つ、好ましくは複数の別発電予測値を算出する。
【0062】
例えば、予測対象期間中における各時刻tの発電予測値をPPVt、各時刻tで見込まれる発電予測誤差をPPEtとして、別発電予測値算出部1Dは各時刻tの別の発電予測値PPVt’を以下の(式1)により算出する。ここで、rand(σ)は、平均0、標準偏差σの正規分布に従い、±2σの範囲内から乱数を1つ生成する関数である。
【0063】
【0064】
需要予測誤差算出部2Cは、需要実績データ記憶部12に記憶されている電力負荷112の過去の需要電力量の実績値をもとに、予測対象期間の各時刻で見込まれる需要電力量の予測誤差(以下、需要予測誤差という)を算出する。すなわち、需要予測誤差算出部2Cは、予測対象期間中の30分おきの各時刻t1~t48のそれぞれについて需要予測誤差を算出する。需要予測誤差算出部2Cは、各時刻についてそれぞれ少なくとも1つ、好ましくは複数の需要予測誤差を算出する。
【0065】
例えば、需要予測誤差算出部2Cは、過去の需要電力量の実績値について標準偏差を算出し、当該標準偏差に基づき特定される所定の値範囲内でランダムな値を発生して需要予測誤差とする。一例として、需要予測誤差算出部2Cも発電予測誤差算出部1Cと同様に、
図10に示すように正規分布を仮定し、±2σの範囲内でランダムな値を発生して需要予測誤差とする。
【0066】
別需要予測値算出部2Dは、需要電力予測部2Bにより取得された需要予測値および需要予測誤差算出部2Cにより算出された需要予測誤差を用いて、予測対象期間の各時刻における別の需要予測値を算出する。別需要予測値算出部2Dは、各時刻についてそれぞれ少なくとも1つ、好ましくは複数の別需要予測値を算出する。例えば、予測対象期間中における各時刻tの需要予測値をDPVt、各時刻tで見込まれる需要予測誤差をDPEtとして、別需要予測値算出部2Dは各時刻tの別の需要予測値DPVt’を以下の(式2)により算出する。
【0067】
【0068】
消費予測誤差算出部3Cは、車両使用実績データ記憶部13に記憶されている車載蓄電池113の過去の消費電力量の実績値をもとに、予測対象期間の各時刻で見込まれる蓄電池消費電力の予測誤差(以下、消費予測誤差という)を算出する。すなわち、消費予測誤差算出部3Cは、予測対象期間中の30分おきの各時刻t1~t48のそれぞれについて消費予測誤差を算出する。消費予測誤差算出部3Cは、各時刻についてそれぞれ少なくとも1つ、好ましくは複数の消費予測誤差を算出する。
【0069】
例えば、消費予測誤差算出部3Cは、過去の蓄電池消費電力の実績値について標準偏差を算出し、当該標準偏差に基づき特定される所定の値範囲内でランダムな値を発生して消費予測誤差とする。一例として、消費予測誤差算出部3Cも発電予測誤差算出部1Cと同様に、
図10に示すように正規分布を仮定し、±2σの範囲内でランダムな値を発生して消費予測誤差とする。
【0070】
別消費予測値算出部3Dは、車両状態予測部3Bにより取得された蓄電池消費予測値および消費予測誤差算出部3Cにより算出された消費予測誤差を用いて、予測対象期間の各時刻における別の蓄電池消費予測値を算出する。例えば、予測対象期間中における各時刻tの消費予測値をCPVt、各時刻tで見込まれる消費予測誤差をCPEtとして、別消費予測値算出部3Dは各時刻tの別の消費予測値CPVt’を以下の(式3)により算出する。
【0071】
【0072】
料金データ取得部4は、通信ネットワークを介して電気料金提供サーバ200から予測対象期間における時間帯別の電気料金体系のデータを取得し、料金テーブル記憶部14に記憶させる。ここで取得する電気料金体系のデータは、例えば、日本卸電力取引所(JEPX)が提供している翌日の取引価格(約定価格)のデータであり、これを予測対象期間における予測値として扱うことが可能である。なお、JEPX以外の第三者による予測サービスを利用して取引価格の予測値を取得するようにしてもよいし、取引価格の予測機能を料金データ取得部4が備えるようにしてもよい。
【0073】
充放電計画作成部5は、発電電力予測部1B、別発電予測値算出部1D、需要電力予測部2B、別需要予測値算出部2D、車両状態予測部3Bおよび別消費予測値算出部3Dにより算出される各予測値と、料金テーブル記憶部14に記憶されている予測対象期間における時間帯別の電気料金体系の情報とを用いて、所定の制約条件を満たしつつ、車両のモビリティとしての使用に必要な蓄電量の不足を生じることなく買電による電力調達料金を低減させる最適化計算を行うことにより、蓄電池113,114の充放電計画を作成する。
【0074】
ここで、充放電計画作成部5が使用する各予測値は、発電電力予測部1Bおよび別発電予測値算出部1Dにより得られる複数の発電予測値PPVt,PPVt’と、需要電力予測部2Bおよび別需要予測値算出部2Dにより得られる複数の需要予測値DPVt,DPVt’と、車両状態予測部3Bの消費予測値算出部33および別消費予測値算出部3Dにより得られる複数の消費予測値CPVt,CPVt’と、車両状態予測部3Bの車両使用状態予測部31により予測された車両使用状態である。
【0075】
充放電計画作成部5は、所定の制約条件のもとで、上述の各予測値と蓄電池113,114の状態とが制約条件を満たしつつ、車両のモビリティとしての使用に必要な蓄電量の不足を生じることなく買電による電力調達料金を低減させるように、蓄電池113,114に関する予測対象期間中における所定単位時間ごとの充放電計画を作成する。
【0076】
例えば、買電による電力調達料金をPPF、予測対象期間における各時刻tの蓄電池113,114の充電量をCATt、各時刻tの蓄電池113,114の放電量をDATt、各時刻tの複数の発電予測値をPPVt,p、各時刻tの複数の需要予測値をDPVt.p、各時刻tの電気料金をEPtで表した場合、充放電計画作成部5は、次の(式4)を目的関数とし、最適化計算を行うことにより、所定の制約条件を全て満たす中で電力調達料金PPFを最小化する充放電計画を作成する。(式4)において、各時刻tの蓄電池113,114の充電量CATtおよび放電量DATtが、最適化計算により最適化する操作変数(最適化変数)である。
【0077】
【0078】
ここで、複数の発電予測値PPVt,pおよび複数の需要予測値DPVt.pで使用している符号“p”は、予測値のパターン番号を示す。例えば、p=1の発電予測値PPVt,1は、発電電力予測部1Bにより予測された実際の発電予測値PPVtである。また、p=2,3,・・・の発電予測値PPVt,pは、別発電予測値算出部1Dにより算出された別の発電予測値PPVt’である。同様に、p=1の需要予測値DPVt,1は、需要電力予測部2Bにより予測された実際の需要予測値DPVtである。また、p=2,3,・・・の需要予測値DPVt,pは、別需要予測値算出部2Dにより算出された別の需要予測値DPVt’である。
【0079】
なお、最適化計算により電力調達料金PPFを最小化するとは、厳密に実際の最小値を求めることに限定されるものではない。例えば、演算の負荷を考慮して回帰的な演算の実行回数に制限を設け、その制限内で電力調達料金PPFを最小化するようにしてもよい。あるいは、電力調達料金PPFが所望の閾値を下回るまで回帰的に演算を実行し、電力調達料金PPFが所望の閾値を下回った時点で最小化されているものを解とするようにしてもよい。
【0080】
以下に、充放電計画作成部5が最適化計算において使用する所定の制約条件について説明する。本実施形態において、所定の制約条件は、発電予測値、需要予測値および蓄電池113,114の状態(充放電量および保持電力)に関して設定された複数の制約条件を含む。複数の制約条件は、買電による電力使用量のピーク値を目標ピーク値以下とするためのピーク値関連制約条件と、充放電に伴う蓄電池113,114の劣化を抑制するための電池劣化関連制約条件とを含む。
【0081】
次の(式5)は、ピーク値関連制約条件の一例である。ここで、PTはピーク目標値である。
(DPVt,p+CATt)-(PPVt,p+DATt)≦PT ・・・(式5)
この(式5)において、左辺の1つ目のカッコで示される第1項は各時刻tの電力使用量を示し、第2項は各時刻tの買電以外の電力調達量を示す。よって、左辺は、買電により調達して使用した電力量を示す。一般に、電気料金は基本料金と従量料金からなり、基本料金は年間の最大電力使用ピーク値によって決定される。そのため、買電による電力使用量をピーク目標値PT以下にすることを制約条件として設定する。
【0082】
また、次の(式6)~(式11)は、電池劣化関連制約条件の一例である。ここで、(式6)のVCATtは車載蓄電池113の時刻tから時刻t+1までの充電量、(式7)のVDATtは車載蓄電池113の時刻tから時刻t+1までの放電量、(式8)のRCATtは住宅用蓄電池114の時刻tから時刻t+1までの充電量、(式9)のRDATtは住宅用蓄電池114の時刻tから時刻t+1までの放電量である。
下限値≦VCATt≦上限値 ・・・(式6)
下限値≦VDATt≦上限値 ・・・(式7)
下限値≦RCATt≦上限値 ・・・(式8)
下限値≦RDATt≦上限値 ・・・(式9)
最小値≦VBHPt,p≦最大値 ・・・(式10)
最小値≦RBHPt≦最大値 ・・・(式11)
【0083】
また、上記(式10)のVBHPt,pは車載蓄電池113の各時刻tの保持電力であり、次の(式12)により計算される。この(式10)において、符号“p”はパターン番号を示す。例えば、p=1の保持電力VBHPt,1は、車両状態予測部3Bにより予測された実際の消費予測値CPVtを用いて計算される保持電力である。また、p=2,3,・・・の保持電力VBHPt,pは、別消費予測値算出部3Dにより算出された別の消費予測値CPVt’を用いて計算される保持電力である。上記(式11)のRBHPtは住宅用蓄電池114の各時刻tの保持電力であり、次の(式13)により計算される。
【0084】
【0085】
上記(式12)において、VBP0は、予測対象期間の最初の時刻t0における車載蓄電池113の初期保持電力である。FLGtは車両使用状態予測部31により予測された車両使用状態を示すフラグの値であり、外出の場合は“1”、在宅の場合は“0”である。また、上記(式13)において、RBP0は、予測対象期間の最初の時刻t0における住宅用蓄電池114の初期保持電力である。
【0086】
充放電計画作成部5は、以上の(式5)で示したピーク値関連制約条件および(式6)~(式11)で示した電池劣化関連制約条件のほか、例えば以下に示す制約条件を適用して最適化計算を行う。
・系統からの買電電力よりも太陽光発電装置111での発電電力を電力負荷112に使用することを優先する。
・太陽光発電装置111での発電電力が電力負荷112での消費電力を上回る場合(つまり、余剰電力が発生する場合)、蓄電池113,114に対する充電は、買電電力による充電よりも余剰電力による充電を優先する。
・車両が在宅であることが予測されている時間帯では、住宅用蓄電池114よりも車載蓄電池113を優先して充放電を行う。
・車両の使用状態が在宅から外出へ切り替わることが予測されている時刻における車載蓄電池113の保持電力が、次に車両の使用状態が外出から在宅へ切り替わることが予測されている時刻までの外出中における消費電力量の予測値を下回らないようにする。
【0087】
また、以下の制約条件を更に適用するようにしてもよい。
・車両のモビリティとしての緊急利用などを考慮し、帰宅時(専用ケーブルにより車載蓄電池113がV2Hシステム102に接続された時)における車載蓄電池113の蓄電残量が閾値以下の場合は、車両使用状態予測部31により予測された車両使用状態に関わらず、所定量までは充電を行う。
・車両をモビリティとして使用した帰宅直後でまだ車載蓄電池113が熱い状態で充放電をすると電池劣化が激しくなることから、帰宅後から所定時間を空けてから充放電をする。
【0088】
充放電制御部6は、以上のような制約条件のもと充放電計画作成部5により作成された充放電計画に従って、計画対象期間中(=予測対象期間中)における蓄電池113,114の実際の充放電を制御する。
【0089】
図11は、以上のように構成した本実施形態による電力管理装置100の動作例を示すフローチャートである。なお、発電実績データ記録部1A、需要実績データ記録部2Aおよび車両使用実績データ記録部3Aの処理は逐次実行されており、それぞれの実績データを発電実績データ記憶部11、需要実績データ記憶部12および車両使用実績データ記憶部13に記憶させる処理は、
図11に示すフローチャートとは非同期で別途実施されている。
【0090】
図11において、発電電力予測部1Bは、発電実績データ記憶部11に記憶されている発電実績データを用いて、予測対象期間の各時刻における発電電力量を予測する(ステップS1)。また、発電予測誤差算出部1Cは、発電実績データ記憶部11に記憶されている過去の発電電力量の実績値をもとに、予測対象期間の各時刻で見込まれる発電予測誤差を算出する(ステップS2)。そして、別発電予測値算出部1Dは、発電電力予測部1Bにより取得された発電予測値および発電予測誤差算出部1Cにより算出された発電予測誤差を用いて、予測対象期間の各時刻における別の発電予測値を算出する(ステップS3)。
【0091】
次に、需要電力予測部2Bは、需要実績データ記憶部12に記憶されている需要実績データを用いて、予測対象期間の各時刻における需要電力量を予測する(ステップS4)。また、需要予測誤差算出部2Cは、需要実績データ記憶部12に記憶されている過去の需要電力量の実績値をもとに、予測対象期間の各時刻で見込まれる需要予測誤差を算出する(ステップS5)。そして、別需要予測値算出部2Dは、需要電力予測部2Bにより取得された需要予測値および需要予測誤差算出部2Cにより算出された需要予測誤差を用いて、予測対象期間の各時刻における別の需要予測値を算出する(ステップS6)。
【0092】
さらに、車両状態予測部3Bは、車両使用実績データ記憶部13に記憶されている車載蓄電池113の車両使用実績データを用いて、予測対象期間の各時刻における車両のモビリティとしての使用状態および車載蓄電池113の消費電力量を予測する(ステップS7)。また、消費予測誤差算出部3Cは、車両使用実績データ記憶部13に記憶されている車載蓄電池113の過去の消費電力量の実績値をもとに、予測対象期間の各時刻で見込まれる消費予測誤差を算出する(ステップS8)。そして、別消費予測値算出部3Dは、車両状態予測部3Bにより取得された消費予測値および消費予測誤差算出部3Cにより算出された消費予測誤差を用いて、予測対象期間の各時刻における別の消費予測値を算出する(ステップS9)。
【0093】
また、料金データ取得部4は、電気料金提供サーバ200から予測対象期間における時間帯別の電気料金体系のデータを取得し、料金テーブル記憶部14に記憶させる(ステップS10)。なお、ステップS1~S3の処理、ステップS4~S6の処理、ステップS7~S9の処理およびステップS10の処理は、必ずしもこの順番で行うことを要するものではない。
【0094】
次いで、充放電計画作成部5は、以上のステップS1~S10において発電電力予測部1B、別発電予測値算出部1D、需要電力予測部2B、別需要予測値算出部2D、車両状態予測部3Bおよび別消費予測値算出部3Dにより算出された各予測値と、料金テーブル記憶部14に記憶された予測対象期間における時間帯別の電気料金体系の情報とを用いて、所定の制約条件を満たしつつ、車両のモビリティとしての使用に必要な蓄電量の不足を生じることなく買電による電力調達料金を低減させる最適化計算を行うことにより、蓄電池113,114の充放電計画を作成する(ステップS11)。これにより、
図11に示すフローチャートの処理が終了する。
【0095】
以上詳しく説明したように、本実施形態では、予測対象期間の各時刻における太陽光発電装置111の発電予測値(発電電力量の予測値)を取得するとともに、別の発電予測値を算出する。また、予測対象期間の各時刻における電力負荷112の需要予測値(需要電力量の予測値)を取得するとともに、別の需要予測値を算出する。また、予測対象期間の各時刻における蓄電池113,114の消費予測値(消費電力量の予測値)を取得するとともに、別の消費予測値を算出する。そして、予測対象期間における時間帯別の電気料金体系の情報を用いて、発電予測値、需要予測値および蓄電池の状態に関して設定された制約条件のもとで、上述のように取得および算出した複数の発電予測値、複数の需要予測値および複数の消費予測値と蓄電池の状態とが全ての制約条件を満たしつつ、車両のモビリティとしての使用に必要な蓄電量の不足を生じることなく買電による電力調達料金を低減させる最適化計算を行うことにより、蓄電池113,114の充放電計画を作成するようにしている。
【0096】
このように構成した本実施形態によれば、最初に取得される実際の発電予測値、需要予測値および消費予測値だけでなく、当該取得された実際の発電予測値、需要予測値および消費予測値をもとに算出される別の発電予測値、需要予測値および消費予測値を含めて、複数の発電予測値、複数の需要予測値および複数の消費予測値を用いて最適化計算が行われる。すなわち、複数の発電予測値、複数の需要予測値および複数の消費予測値と蓄電池の状態との全てが制約条件を満たし、かつ、車両のモビリティとしての使用に必要な蓄電量の不足を生じることなく買電による電力調達料金を低減させるような最適化計算が行われる。これにより、実際の発電予測、需要予測および消費予測が外れた場合でも制約条件が満たされる可能性が高く、かつ、車両のモビリティとしての使用に必要な蓄電量の不足を生じることなく買電による電力調達料金ができるだけ低くなるような最適な充放電計画を作成することができる。
【0097】
特に、本実施形態では、実際の予測値と、過去の実績値をもとに算出した予測誤差とを用いて別の予測値を算出しているので、別の予測値として的外れな予測値が算出される可能性を低減することができる。このため、最適化計算の際に複数の予測値の全てについて制約条件が満たされるようにするために、(式5)のピーク目標値PTを大きくしたり、(式6)~(式11)の下限値または最小値を小さくしたり、(式6)~(式11)の上限値または最大値を大きくしたりするといったように、制約条件を不必要に緩くする必要がない。これにより、適切な制約条件のもとで、その制約条件を満たしつつ電力調達料金を低減させる最適化計算を行うことができる。
【0098】
しかも、本実施形態では、過去の実績値をもとに標準偏差σを算出し、正規分布の±2σの範囲内から抽出した予測誤差のみを用いて別の予測値を算出しているので、確率的に発生しにくい別の予測値が算出されるのを回避することができる。このように、本実施形態により取得および算出される複数の予測値を用いて最適化計算を行えば、現実の発電電力、需要電力および消費電力が実際の予測値から外れたとしても、適切に設定された制約条件を満たす範囲で適用可能となる充放電計画を作成することが可能である。
【0099】
なお、以上のように適切に設定された制約条件(不必要に緩く設定していない制約条件)のもとで最適化計算を行った場合、複数の制約条件を全て満たす解が得られない場合があり得る。この場合、充放電計画作成部5は、複数の制約条件の少なくとも1つを緩和し、緩和した制約条件のもとで電力調達料金を低減させる最適化計算を再度行うようにしてもよい。
【0100】
この場合、例えば充放電計画作成部5は、ピーク値関連制約条件に対して電池劣化関連制約条件よりも高い優先度を付与し、制約条件を満たす解が得られるまで、複数の制約条件を優先度に従って段階的に緩和していきながら最適化計算を繰り返し行うようにしてもよい。例えば、上記(式5)~(式11)に示す複数の制約条件を全て満たす解が得られない場合に、まず電池劣化関連制約条件を緩和して最適化計算を再度行う。そして、緩和した電池劣化関連制約条件を含む複数の制約条件を全て満たす解が尚も得られない場合に、ピーク値関連制約条件を緩和して最適化計算を再度行う。ピーク値関連制約条件を緩和する際には、電池劣化関連制約条件は元に戻すのが好ましい。
【0101】
ここで、電池劣化関連制約条件を緩和するとは、上記(式6)~(式11)に示す制約条件の何れか1つまたは複数を緩和することを意味する。すなわち、(式6)~(式11)に示す下限値または最小値の何れか1つまたは複数を小さくすること、(式6)~(式11)の上限値または最大値の何れか1つまたは複数を大きくすること、またはその両方である。また、ピーク値関連制約条件を緩和するとは、(式5)に示すピーク目標値PTを大きくすることを意味する。
【0102】
ここでは、最初に電池劣化関連制約条件を緩和し、次にピーク値関連制約条件を緩和するという2段階の制約条件緩和の例を説明したが、3段階以上にわたって制約条件を段階的に緩和していくようにしてもよい。
図12は、この場合の緩和例を示す図である。
図12の例では、最初に電池劣化関連制約条件のみを直前より1段階緩和すること、電池劣化関連制約条件を直前の状態に元に戻してピーク値関連制約条件を直前より1段階緩和すること、および、電池劣化関連制約条件およびピーク値関連制約条件を1段階ずつ緩和することを1つのセットとして、このセットを順次繰り返して制約条件を段階的に緩和していく。なお、これは一例に過ぎず、これ以外の方法であってよい。
【0103】
また、緩和する電池劣化関連制約条件として、(式6)~(式11)に示す制約条件の他に、帰宅後から所定時間を空けてから充放電をするという条件を加えてもよい。この場合の条件緩和は、所定時間を短くすること、あるいはこの制約条件を無くすことの何れかである。
【0104】
なお、上記実施形態では、蓄電池として車載蓄電池113および住宅用蓄電池114の両方を備える構成を示したが、何れか一方のみを備える構成としてもよい。住宅用蓄電池114のみを備える構成の場合、車両使用実績データ記録部3A、車両状態予測部3B、消費予測誤差算出部3C、別消費予測値算出部3Dおよび車両使用実績データ記憶部13は省略される。また、(式6)、(式7)および(式10)に示す制約条件は除外される。そして、充放電計画作成部5は、(式5)、(式8)、(式9)および(式11)に示す複数の制約条件のもとで、電力調達料金を低減させる最適化計算を行うことによって住宅用蓄電池114の充放電計画を作成する。
【0105】
また、上記実施形態では、車両状態予測部3Bのパターン抽出部32により生起確率が最も大きい1つの使用状態予測パターンを抽出し、その使用状態予測パターンを利用して消費予測値算出部33により1つの消費予測値を算出するとともに、消費予測誤差算出部3Cにより算出された消費予測誤差を利用して別消費予測値算出部3Dにより別の消費予測値を算出する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、以下のように構成してもよい。
【0106】
すなわち、パターン抽出部32は、車両使用状態予測部31により生成された複数の使用状態予測パターンの中から、生起確率に基づいて何れか複数の使用状態予測パターンを抽出する。例えば、生起確率が高い方から順に複数の使用状態予測パターンを抽出する。消費予測値算出部33は、パターン抽出部32により抽出された複数の使用状態予測パターンのそれぞれについて、当該使用状態予測パターンおよび車載蓄電池113の過去の消費電力量の実績値をもとに、予測対象期間の各時刻における車載蓄電池113の消費電力量の予測値を算出する。
【0107】
このように構成した場合、消費予測誤差算出部3Cは複数の消費予測値のそれぞれについて1つまたは複数の消費予測誤差を算出し、別消費予測値算出部3Dは当該消費予測誤差を用いて別の消費予測値を算出する。一例として、生起確率が大きい方からm個(m≧2)の使用状態予測パターンを抽出し、抽出したm個の使用状態予測パターンからそれぞれn1個、n2個、・・・nm個(合計n1+n2+・・・+nm個)の消費予測値を算出するようにしてもよい。ここで、使用状態予測パターンの生起確率の大きさに応じてn1>n2>・・・>nmとしてもよい。
【0108】
あるいは、消費予測誤差算出部3Cおよび別消費予測値算出部3Dを省略して、充放電計画作成部5を次のように構成してもよい。すなわち、充放電計画作成部5は、発電予測値、需要予測値および蓄電池113,114の状態に関して設定された制約条件のもとで、発電電力予測部1Bおよび別発電予測値算出部1Dにより得られる複数の発電予測値と、需要電力予測部2Bおよび別需要予測値算出部2Dにより得られる複数の需要予測値と、パターン抽出部32により抽出された複数の使用状態予測パターンのそれぞれから消費予測値算出部33により得られる複数の消費予測値と、蓄電池113,114の状態とが制約条件を満たしつつ、車両のモビリティとしての使用に必要な蓄電量の不足を生じることなく電力調達料金を低減させる最適化計算を行うことによって蓄電池113,114の充放電計画を作成する。
【0109】
また、上記実施形態では、料金データ取得部4が電気料金提供サーバ200から予測対象期間における時間帯別の電気料金体系のデータを取得して料金テーブル記憶部14に記憶させ、この電気料金体系のデータを用いて最適化計算を行う例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、発電予測値や需要予測値と同様に、電気料金の予測誤差を用いて1つまたは複数の別の電気料金を算出した上で、こうして得られる複数の電気料金を用いて最適化計算を行うようにしてもよい。
【0110】
図13は、この場合における電力管理装置100’の機能構成例を示す図である。この
図13において、
図2に示した符号と同一の符号を付したブロックは、
図2に示した機能ブロックと同一の機能を含むものであり、図示を簡略化している。
図13に示す電力管理装置100’は、
図2に示した料金データ取得部4、料金テーブル記憶部14および充放電計画作成部5に代えて、電気料金実績データ記録部4A、料金データ取得部4B、電気料金予測誤差算出部4C、別電気料金予測値算出部4D、電気料金実績データ記憶部14’および充放電計画作成部5’を備えている。
【0111】
電気料金実績データ記録部4Aは、通信ネットワークを介して電気料金提供サーバ200から時間帯別の電気料金体系の実績データを取得し、電気料金実績データ記憶部14’に記憶させる。ここで取得する電気料金体系の実績データは、例えば、JEPXが過去に決定した取引価格(約定価格)のデータである。
【0112】
料金データ取得部4Bは、特許請求の範囲の電気料金予測部に相当するものであり、
図2に示した料金データ取得部4と同様に、通信ネットワークを介して電気料金提供サーバ200から予測対象期間の各時刻における電気料金のデータを取得する。ここで取得する電気料金のデータは、上述したように、JEPXが提供している翌日の取引価格のデータであり、これを予測対象期間における予測値(以下、電気料金予測値という)として扱うことが可能である。
【0113】
電気料金予測誤差算出部4Cは、電気料金実績データ記憶部14’に記憶されている過去の電気料金の実績値をもとに、予測対象期間の各時刻で見込まれる電気料金の予測誤差(以下、電気料金予測誤差という)を算出する。すなわち、電気料金予測誤差算出部4Cは、予測対象期間中の30分おきの各時刻t1~t48のそれぞれについて電気料金予測誤差を算出する。電気料金予測誤差算出部4Cは、各時刻についてそれぞれ少なくとも1つ、好ましくは複数の電気料金予測誤差を算出する。
【0114】
別電気料金予測値算出部4Dは、料金データ取得部4Bにより取得された電気料金予測値および電気料金予測誤差算出部4Cにより算出された電気料金予測誤差を用いて、予測対象期間の各時刻における別の電気料金予測値を算出する。別電気料金予測値算出部4Dは、各時刻についてそれぞれ少なくとも1つ、好ましくは複数の別電気料金予測値を算出する。
【0115】
充放電計画作成部5’は、料金データ取得部4Bおよび別電気料金予測値算出部4Dにより得られる複数の電気料金予測値を用いて、発電予測値、需要予測値および蓄電池113,114の状態に関して設定された制約条件のもとで、発電電力予測部1B、別発電予測値算出部1D、需要電力予測部2B、別需要予測値算出部2D、車両状態予測部3Bおよび別消費予測値算出部3Dにより算出される各予測値と蓄電池113,114の状態とが制約条件を満たしつつ、車両のモビリティとしての使用に必要な蓄電量の不足を生じることなく買電による電力調達料金を低減させる最適化計算を行うことにより、蓄電池113,114の充放電計画を作成する。
【0116】
また、上記実施形態において、蓄電池113,114の保持電力を所定の下限値以上かつ所定の上限値以下に保つという(式10)、(式11)の電池劣化関連制約条件に関して、予測対象期間の中の所定の時間帯に設定される下限値を他の時間帯に設定される下限値に比べて大きく設定するようにしてもよい。所定の時間帯は、予測対象期間の後半の時間帯とする。このようにすると、予測対象期間の後半で放電を行って目的関数を小さくするような不自然な充放電計画が作成されることを抑制することができる。また、車両がモビリティとして使われ始める時刻の前に車載蓄電池113の保持電力を高めておくなどの安全マージン的役割を持たせることも可能となる。
【0117】
また、上記実施形態において、充放電計画作成部5が最適化計算を行う際に、蓄電池113,114の保持電力を所定の下限値以上かつ所定の上限値以下に保つという(式10)、(式11)の電池劣化関連制約条件に関して、蓄電池113,114の保持電力が下限値未満となる場合であっても、下限値未満となる期間が所定時間以内の場合は、当該所定時間の期間においては現在の保持電力を下限値として扱うようにしてもよい。
【0118】
また、上記実施形態では、予測対象期間の開始時点においてバッチ処理を実行する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、予測対象期間の開始時点より所定時間前のタイミングでバッチ処理を実行するようにしてもよい。また、バッチ処理を行うタイミングをユーザが任意に指定できるようにしてもよい。
【0119】
また、上記実施形態では、EMS101の一例としてHEMS(Home Energy Management System)を例にとり、車両が在宅中か外出中かを予測する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、BEMS(Building Energy Management System)、FEMS(Factory Energy Management System)などのxEMSに対しても同様に本発明を適用することが可能である。
【0120】
その他、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0121】
1A 発電実績データ記録部
1B 発電電力予測部
1C 発電予測誤差算出部
1D 別発電予測値算出部
2A 需要実績データ記録部
2B 需要電力予測部
2C 需要予測誤差算出部
2D 別需要予測値算出部
3A 車両使用実績データ記録部
3B 車両状態予測部
3C 消費予測誤差算出部
3D 別消費予測値算出部
4 料金データ取得部
4A 電気料金実績データ記録部
4B 料金データ取得部
4C 電気料金予測誤差算出部
4D 別電気料金予測値算出部
5,5’ 充放電計画作成部
6 充放電制御部
31 車両使用状態予測部
32 パターン抽出部
33 消費予測値算出部
100,100’ 電力管理装置
101 EMS
102 V2Hシステム
111 太陽光発電装置
112 電力負荷
113 車載蓄電池
114 住宅用蓄電池