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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-25
(45)【発行日】2024-10-03
(54)【発明の名称】半導体レーザ装置
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/02255 20210101AFI20240926BHJP
   H01S 5/02253 20210101ALI20240926BHJP
   H01S 5/14 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
H01S5/02255
H01S5/02253
H01S5/14
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022505090
(86)(22)【出願日】2021-02-12
(86)【国際出願番号】 JP2021005367
(87)【国際公開番号】W WO2021177001
(87)【国際公開日】2021-09-10
【審査請求日】2023-11-20
(31)【優先権主張番号】P 2020037680
(32)【優先日】2020-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 「高輝度・高効率次世代レーザー技術開発/次々世代加工に向けた新規光源・要素技術開発/高効率加工用GaN系高出力・高ビーム品質半導体レーザーの開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】深草 雅春
【審査官】大西 孝宣
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-096333(JP,A)
【文献】特開2014-120621(JP,A)
【文献】国際公開第2018/037548(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/167975(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/155668(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0104180(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0161752(US,A1)
【文献】国際公開第2014/190975(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00 - 5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長が異なる複数のレーザ光をそれぞれ出射する複数の半導体レーザ素子と、
前記複数のレーザ光を平行光化するための複数のレンズ部と、
前記複数のレーザ光がそれぞれ異なる入射角で入射するとともに、入射した前記各レーザ光の進行方向を波長に応じて変化させて、前記複数のレーザ光が合成された光を生成する波長分散素子と、
前記複数のレーザ光をそれぞれ前記各レーザ光に対応する前記入射角で前記波長分散素子に入射させる複数の第1反射面と、
前記複数のレーザ光をそれぞれ前記複数の第1反射面に導く複数の第2反射面と、を備え、
前記複数の半導体レーザ素子は、直線状に並んで配置され、
前記複数の第1反射面は、前記複数の半導体レーザ素子の並び方向において、前記複数の半導体レーザ素子から離れて配置され、
前記複数の第2反射面は、前記複数の第1反射面に近い前記第2反射面ほど前記複数の半導体レーザ素子から離れた位置に配置され、
前記複数の第1反射面は、前記複数の半導体レーザ素子の並び方向において前記複数の半導体レーザ素子から離れた位置に存在する前記第1反射面ほど、前記複数の半導体レーザ素子の並び方向に直交する方向において前記複数の半導体レーザ素子から離れた位置に配置されている、
半導体レーザ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体レーザ装置において、
前記複数の半導体レーザ素子は、前記波長分散素子に対向しておらず、前記複数の第1反射面は、前記波長分散素子に対向している、
半導体レーザ装置。
【請求項3】
請求項2に記載の半導体レーザ装置において、
前記複数の半導体レーザ素子、前記複数のレンズ部、前記複数の第1反射面および前記複数の第2反射面を有する2つの組が、前記複数の半導体レーザ素子の並び方向に並び、且つ、各組の前記複数の第1反射面が互いに隣り合うように配置されている、
半導体レーザ装置。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れか一項に記載の半導体レーザ装置において、
前記波長分散素子からの出射光の一部を前記波長分散素子側に反射させて前記複数の半導体レーザ素子に帰還させる部分反射ミラーを備え、
前記部分反射ミラーと前記複数の半導体レーザ素子により外部共振器が構成され、
前記複数の半導体レーザ素子は、互いに異なる波長で外部共振する、
半導体レーザ装置。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れか一項に記載の半導体レーザ装置において、
前記複数の半導体レーザ素子は、ファスト軸方向に並んで配置され、
前記波長分散素子に入射する前記複数のレーザ光を前記ファスト軸方向に平行光化するための他のレンズ部をさらに備える、
半導体レーザ装置。
【請求項6】
請求項1ないし4の何れか一項に記載の半導体レーザ装置において、
前記複数の半導体レーザ素子は、スロー軸方向に並んで配置され、
前記複数のレーザ光のファスト軸をそれぞれ略90°回転させる複数のビーム回転素子を備え、
前記波長分散素子に入射する前記複数のレーザ光を前記ファスト軸方向に平行光化するための他のレンズ部をさらに備える、
半導体レーザ装置。
【請求項7】
請求項6に記載の半導体レーザ装置において、
前記複数のレンズ部は、それぞれ、
前記ビーム回転素子の前段に配置され、前記複数の半導体レーザ素子の各々から出射された前記レーザ光をファスト軸方向に平行光化するファスト軸コリメータレンズと、
前記ビーム回転素子の後段に配置され、前記レーザ光をスロー軸方向に平行光化するスロー軸コリメータレンズと、を含む、
半導体レーザ装置。
【請求項8】
請求項6または7に記載の半導体レーザ装置において、
前記複数の半導体レーザ素子は、アレイ化されている、
半導体レーザ装置。
【請求項9】
請求項5ないし8の何れか一項に記載の半導体レーザ装置において、
出射波長が短い前記半導体レーザ素子ほど前記他のレンズ部までの光路長が短くなっている、
半導体レーザ装置。
【請求項10】
請求項9に記載の半導体レーザ装置において、
前記複数の第2反射面の配置によって、前記複数の半導体レーザ素子と前記他のレンズ部との間の光路長が調整されている、
半導体レーザ装置。
【請求項11】
請求項1ないし10の何れか一項に記載の半導体レーザ装置において、
波長分散素子は、回折格子である、
半導体レーザ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体レーザ装置に関し、たとえば、製品の加工等に用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体レーザ装置から出射されるレーザ光を用いて、様々な製品の加工が行われている。この種の半導体レーザ装置では、加工品質を高めるために、出射光の出力が高められることが好ましい。
【0003】
以下の特許文献1には、互いに出射波長が異なる複数の半導体レーザ素子からそれぞれ出射されたレーザ光を、回折格子で合成して、出射光の出力を高める構成の半導体レーザ装置が記載されている。ここでは、複数の半導体レーザ素子が、回折格子を中心とする円周に沿って、互いに近接して配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-54295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、複数の半導体レーザ素子が近接して配置されると、複数の半導体レーザ素子うちの一の半導体レーザ素子で生じた熱が、その一の半導体レーザ素子の隣りの半導体レーザ素子に影響する。このため、各半導体レーザ素子において、十分な光出力が得られないとの問題が生じる。
【0006】
この問題は、円周方向における半導体レーザ素子間の間隔を広げることにより解消され得る。しかし、波長の異なる複数のレーザ光を回折格子により合成する場合、回折格子を中心とする所定の角度範囲に、複数の半導体レーザ素子を配置する必要がある。このため、上記のように半導体レーザ素子間の間隔を広げると、上記の角度範囲に配置可能な半導体レーザ素子の数が減少し、結果、出射光の出力が低下するとの問題が生じる。
【0007】
かかる課題に鑑み、本発明は、波長が異なるレーザ光を合成して生成される出射光の出力を効果的に高めることが可能な半導体レーザ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の主たるの態様は、半導体レーザ装置に関する。本態様に係る半導体レーザ装置は、波長が異なる複数のレーザ光をそれぞれ出射する複数の半導体レーザ素子と、前記複数のレーザ光を平行光化するための複数のレンズ部と、前記複数のレーザ光がそれぞれ異なる入射角で入射するとともに、入射した前記各レーザ光の進行方向を波長に応じて変化させて、前記複数のレーザ光が合成された光を生成する波長分散素子と、前記複数のレーザ光をそれぞれ前記各レーザ光に対応する前記入射角で前記波長分散素子に入射させる複数の第1反射面と、前記複数のレーザ光をそれぞれ前記複数の第1反射面に導く複数の第2反射面と、を備える。
【0009】
本態様に係る半導体レーザ装置によれば、半導体レーザ素子間の間隔を広げても、複数の第2反射面の配置を調整することにより、複数の半導体レーザ素子から出射されたレーザ光をそれぞれ複数の第1反射面に導くことができ、また、複数の第1反射面の配置を調整することにより、各レーザ光を適正な入射角で波長分散素子に入射させることができる。よって、半導体レーザ素子間の熱の影響を抑制しつつ、多数の半導体レーザ素子を配置できる。これにより、波長が異なるレーザ光を合成して生成される出射光の出力を、効果的に高めることができる。
【発明の効果】
【0010】
以上のとおり、本発明によれば、波長が異なるレーザ光を合成して生成される出射光の出力を効果的に高めることが可能な半導体レーザ装置および外部共振型レーザ装置を提供することができる。
【0011】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下に示す実施形態は、あくまでも、本発明を実施化する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施形態に記載されたものに何ら制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施形態1に係る、半導体レーザ装置の構成を示す図である。
図2図2は、実施形態1に係る、半導体レーザ素子の構成を示す斜視図である。
図3図3は、実施形態1に係る、光学系の一部を拡大して示す図である。
図4図4は、実施形態2に係る、半導体レーザ装置の構成を示す図である。
図5図5は、実施形態3に係る、半導体レーザ装置の構成を示す図である。
図6図6は、実施形態4に係る、半導体レーザ装置の構成を示す図である。
図7図7は、実施形態4に係る、レーザアレイの構成を示す斜視図である。
図8図8は、実施形態4の変更例に係る、半導体レーザ素子の配置形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図を参照して説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本発明の一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される、数値、形状、材料、構成要素、および、構成要素の配置位置や接続形態などは、一例であって本発明を限定する主旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0014】
また、各図は模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。したがって、各図において縮尺等は必ずしも一致していない。各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略または簡略化する。なお、便宜上、各図には、互いに直交するX、Y、Z軸が付記されている。X軸方向は、半導体レーザ素子の並び方向であり、Y軸方向は、半導体レーザ素子におけるレーザ光の出射方向である。
【0015】
<実施形態1>
実施形態1において、ミラー41、42の反射面411、421は、請求の範囲に記載の「第1反射面」に対応し、ミラー31、32の反射面311、321は、請求の範囲に記載の「第2反射面」に対応する。また、実施形態1において、コリメータレンズ21a~21dおよびコリメータレンズ22a~22dは、請求の範囲に記載の「レンズ部」に対応する。
【0016】
ただし、上記記載は、あくまで、請求の範囲の構成と実施形態1の構成とを対応付けることを目的とするものであって、上記対応付けによって請求の範囲に記載の発明が実施形態の構成に何ら限定されるものではない。
【0017】
図1は、半導体レーザ装置1の構成を示す図である。
【0018】
半導体レーザ装置1は、光学系S1と、光学系S2と、回折格子50とを備える。
【0019】
光学系S1は、4つの半導体レーザ素子11a~11dと、4つのコリメータレンズ21a~21dと、4つのミラー31と、4つのミラー41とを備える。光学系S2は、4つの半導体レーザ素子12a~12dと、4つのコリメータレンズ22a~22dと、4つのミラー32と、4つのミラー42とを備える。光学系S1および光学系S2にそれぞれ配置される半導体レーザ素子の数は、4つに限られるものではなく、4つ以外の複数であればよい。
【0020】
図2は、半導体レーザ素子11aの構成を示す斜視図である。
【0021】
図2の(a)に示すように、半導体レーザ素子11aは、活性層111がN型クラッド層112とP型クラッド層113に挟まれた構造となっている。N型クラッド層112は、N型基板114に積層される。また、P型クラッド層113にコンタクト層115が積層される。電極116に電流が印加されることにより、発光領域117からレーザ光がZ軸正方向に出射される。一般に、発光領域117は、活性層111に平行な方向の幅W1が、活性層111に垂直な方向の幅W2よりも広くなっている。
【0022】
発光領域117の短辺方向の軸、すなわち、活性層111に垂直な方向(Z軸方向)の軸は、ファスト軸と称され、発光領域117の長辺方向の軸、すなわち、活性層111に平行な方向(X軸方向)の軸は、スロー軸と称される。図2の(b)において、118aはファスト軸を示し、118bはスロー軸を示している。発光領域117から出射されたレーザ光は、スロー軸方向よりもファスト軸方向の広がり角が大きい。このため、ビームB20の形状は、図2の(b)に示すように、ファスト軸方向に長い楕円形状となる。
【0023】
図1に示した半導体レーザ素子11a~11d、12a~12dは、図2の(a)および(b)と同様の構成である。半導体レーザ素子11a~11d、12a~12dは、互いに異なる波長のレーザ光を出射する。半導体レーザ素子11a~11d、12a~12dの出射波長帯は、隣り合う半導体レーザ素子間で、たとえば、数nm(たとえば1nm)程度互いに異なっている。半導体レーザ素子11a~11d、12a~12dの出射波長帯は、たとえば、390~450nm付近に設定される。本実施形態1では、半導体レーザ素子11a~11d、12a~12dとして、たとえば、分布帰還型(DFB:Distributed Feedback)レーザ素子または分布反射型(DBR:Distributed Bragg Reflector)レーザ素子が用いられる。
【0024】
図1に戻り、半導体レーザ素子11a~11d、12a~12dは、それぞれ、CANに収納された状態で、放熱プレートP1、P2に設置される。半導体レーザ素子11a~11d、12a~12dは、X軸方向に直線状に並んで配置される。4つのミラー41は、4つの半導体レーザ素子11a~11dに対してX軸正方向に離れて配置される。また、4つのミラー42は、4つの半導体レーザ素子12a~12dに対してX軸負方向に離れて配置される。
【0025】
半導体レーザ素子11a~11dの後段に、これら半導体レーザ素子11a~11dから出射されたレーザ光L1を全周に亘って平行光化するための4つのコリメータレンズ21a~21dが配置される。同様に、半導体レーザ素子12a~12dの後段に、これら半導体レーザ素子12a~12dから出射されたレーザ光L2を全周に亘って平行光化するための4つのコリメータレンズ22a~22dが配置される。
【0026】
また、コリメータレンズ21a~21dの後段に、コリメータレンズ21a~21dを透過したレーザ光L1をそれぞれ4つのミラー41に導くための4つのミラー31が配置される。同様に、コリメータレンズ22a~22dの後段に、コリメータレンズ22a~22dを透過したレーザ光L2をそれぞれ4つのミラー42に導くための4つのミラー32が配置される。ミラー31、32は、Y軸負側に反射面311、321を有する板状のミラーである。
【0027】
4つのミラー31は、それぞれ、Y軸方向において半導体レーザ素子11a~11dに対向する位置に配置される。Y軸正側から見たときの平面視において、4つのミラー31は、半導体レーザ素子11a~11dと同列に並ぶ。4つのミラー31は、X軸負側に隣り合うミラー31の反射面311で反射されたレーザ光L1を遮らないように、X軸正側のミラー31ほどY軸正方向にシフトするように配置されている。
【0028】
4つのミラー32は、ぞれぞれ、Y軸方向において半導体レーザ素子12a~12dに対向する位置に配置される。Y軸正側から見たときの平面視において、4つのミラー32は、半導体レーザ素子12a~12dと同列に並ぶ。4つのミラー32は、X軸正側に隣り合うミラー32の反射面321で反射されたレーザ光L2を遮らないように、X軸負側のミラー32ほどY軸正方向にシフトするように配置されている。
【0029】
4つのミラー31は、反射面311がX-Y平面に平行な平面上において略放物線状に並ぶように配置される。同様に、4つのミラー32は、反射面321がX-Y平面に平行な平面上において略放物線状に並ぶように配置される。4つのミラー31の反射面311の傾き角は互いに相違し、4つのミラー32の反射面321の傾き角は互いに相違する。
【0030】
4つのミラー41は、それぞれ、4つのミラー31で反射されたレーザ光L1を反射して、これらレーザ光L1を回折格子50の入射面上の略同一位置に入射させる。また、4つのミラー42は、それぞれ、4つのミラー32で反射されたレーザ光L2を反射して、これらレーザ光L2を回折格子50の入射面上の略同一位置に入射させる。回折格子50の入射面上におけるレーザ光L1、L2の入射位置は、略同一である。
【0031】
ミラー41、42は、Y軸正側に反射面411、421を有する板状のミラーである。Y軸正側から見たときの平面視において、4つのミラー41は、半導体レーザ素子11a~11dと同列に並ぶ。同様に、4つのミラー42は、Y軸正側から見たときの平面視において、半導体レーザ素子12a~12dと同列に並ぶ。したがって、4つのミラー41と4つのミラー42は、X軸方向に直線状に並ぶ。
【0032】
図3は、ミラー41、42付近を拡大して示す図である。
【0033】
4つのミラー41は、X軸正側のミラー41ほどY軸正方向にシフトするように配置されている。また、4つのミラー42は、X軸負側のミラー42ほどY軸正方向にシフトするように配置されている。4つのミラー41は、反射面411がX-Y平面に平行な平面上において略放物線状に並ぶように配置される。同様に、4つのミラー42は、反射面421がX-Y平面に平行な平面上において略放物線状に並ぶように配置される。4つのミラー41の反射面411の傾き角は互いに相違し、4つのミラー42の反射面421の傾き角は互いに相違する。
【0034】
図1に戻り、ミラー41、42で反射された複数のレーザ光L1、L2は、それぞれ異なる入射角で回折格子50に入射する。回折格子50は、入射した各レーザ光L1、L2の進行方向を波長に応じた回折角で変化させて、これら複数のレーザ光L1、L2が合成する。すなわち、回折格子50を透過した各レーザ光L1、L2は、互いに光軸が整合され、これにより、出射光L10が生成される。出射光L10は、たとえば、製品の加工に用いられる。
【0035】
回折格子50は、X-Y平面に平行な方向に所定の角度で傾くように配置される。回折格子50は、所定の入射角で入射する各波長のレーザ光L1、L2が、同一の進行方向に回折されるように、回折パターン(回折溝のピッチおよび深さ)が設定されている。また、ミラー31、32およびミラー41、42は、各波長のレーザ光L1、L2が、それぞれ、対応する入射角で回折格子50に入射するように、配置(Y軸方向の位置および傾き)が調整されている。
【0036】
同様に、半導体レーザ素子11a~11d、12a~12dは、ミラー31、32およびミラー41、42の配置と相俟って、各波長のレーザ光L1、L2が、それぞれ、対応する入射角で回折格子50に入射するように、配置(X軸方向の間隔)が調整されている。これにより、上記のように、回折格子50を透過した各レーザ光L1、L2の光軸を整合させることができ、これらレーザ光L1、L2が合成された出射光L10を生成することができる。
【0037】
図1の構成における回折格子50の角度配置と各レーザ光の入射角において、半導体レーザ素子11a~11d、12a~12dの発振波長は、λ12d<λ12c<λ12b<λ12a<λ11a<λ11b<λ11c<λ11dなる関係を満足するように選択されて配置される。
【0038】
<実施形態1の効果>
実施形態1によれば、以下の効果が奏される。
【0039】
半導体レーザ素子11a~11d、12a~12d間の間隔を広げても、ミラー31、32の反射面311、321(第2反射面)の配置を調整することにより、半導体レーザ素子11a~11d、12a~12dから出射されたレーザ光L1、L2をそれぞれミラー41、42の反射面411、421(第1反射面)に導くことができ、また、ミラー41、42の反射面411、421(第1反射面)の配置を調整することにより、各レーザ光L1、L2を適正な入射角で回折格子50(波長分散素子)に入射させることができる。よって、半導体レーザ素子11a~11d、12a~12d間の熱の影響を抑制しつつ、多数の半導体レーザ素子11a~11d、12a~12dを配置できる。これにより、波長が異なるレーザ光L1、L2を合成して生成される出射光L10の出力を、効果的に高めることができる。
【0040】
また、図1に示すように、半導体レーザ素子11a~11d、12a~12dは、X軸方向に直線状に並んで配置され、ミラー41、42の反射面411、421(第1反射面)は、半導体レーザ素子11a~11d、12a~12dの並び方向において、半導体レーザ素子11a~11d、12a~12dから離れて配置され、ミラー31、32の反射面311、321(第2反射面)は、反射面411、421(第1反射)面に近い反射面311、321(第2反射面)ほど半導体レーザ素子11a~11d、12a~12dから離れた位置に配置される。これにより、一のミラー31、32の反射面311、321で反射されたレーザ光L1、L2を、他のミラー31、32で遮られることなく、対応するミラー41、42の反射面411、421に適正に入射させることができる。よって、出射光L10の出力を、円滑に高めることができる。
【0041】
また、図1に示すように、半導体レーザ素子11a~11d、コリメータレンズ21a~21d(レンズ部)、4つの反射面411(第1反射面)および4つの反射面311(第2反射面)を有する光学系S1(組)と、半導体レーザ素子12a~12d、コリメータレンズ22a~22d(レンズ部)、4つの反射面421(第1反射面)および4つの反射面321(第2反射面)を有する光学系S2(組)とが、半導体レーザ素子11a~11d、12a~12dの並び方向(X軸方向)に並び、且つ、光学系S1、S2の反射面411、421(第1反射面)が互いに隣り合うように配置されている。このように、2つの光学系S1、S2を一方向に対称に配置することにより、配置可能な半導体レーザ素子11a~11d、12a~12dの数を顕著に増加させることができる。よって、出射光L10の出力を、より効果的に高めることができる。
【0042】
また、本実施形態1では、波長分散素子として回折格子50が用いられている。これにより、回折パターン(回折溝のピッチおよび深さ)を調整することにより、各波長のレーザ光L1、L2を円滑に合成することができる。
【0043】
<実施形態2>
図4は、実施形態2に係る半導体レーザ装置1の構成を示す図である。
【0044】
実施形態2では、実施形態1に比べて、回折格子50からの出射光L10の一部を回折格子50側に反射させて半導体レーザ素子11a~11d、12a~12dに帰還させる部分反射ミラー60が追加されている。また、半導体レーザ素子11a~11d、12a~12dは、外部共振型の半導体レーザ素子に変更される。すなわち、実施形態2では、部分反射ミラー60と半導体レーザ素子11a~11d、12a~12dにより外部共振器が構成され、半導体レーザ素子11a~11d、12a~12dは、部分反射ミラー60からの反射光が帰還することにより、互いに異なる波長で外部共振する。その他の構成は、上記実施形態1と同様である。
【0045】
回折格子50の角度配置と各レーザ光の入射角は実施形態1と同じであるので、半導体レーザ素子11a~11d、12a~12dの外部共振のそれぞれの波長λ11a~11d、λ12a~λ12dは、λ12d<λ12c<λ12b<λ12a<λ11a<λ11b<λ11c<λ11dなる関係になる。
【0046】
半導体レーザ素子11a~11d、12a~12dにおける外部共振が可能な波長幅は、30~40nm程度である。半導体レーザ素子11a~11d、12a~12dは、この波長幅の範囲内で、外部共振により発振する。半導体レーザ素子11a~11d、12a~12dは、それぞれ、外部共振により発振する波長付近にゲインのピークを持つように、組成が調整されることが好ましい。これにより、外部共振時に各半導体レーザ素子11a~11d、12a~12dを効率的に発振させることができ、各半導体レーザ素子11a~11d、12a~12dの出力を高めることができる。
【0047】
実施形態2においても、半導体レーザ素子11a~11d、12a~12dの出射波長の帯域は、上記実施形態1と同様、たとえば、390~450nm程度に設定されればよい。
【0048】
<実施形態2の効果>
実施形態2において、実施形態1と同様の効果が奏され得る。
【0049】
また、実施形態2によれば、部分反射ミラー60と半導体レーザ素子11a~11d、12a~12dにより外部共振器が構成されたため、半導体レーザ素子11a~11d、12a~12dから出射されたレーザ光L1、L2の回折格子50に対する入射角を緻密に調整しなくても、これらレーザ光L1、L2が出射光L10に適正に合成される波長で、半導体レーザ素子11a~11d、12a~12dが発振する。よって、簡易な調整作業により、出射光L10の出力を効果的に高めることができる。
【0050】
<実施形態3>
図5は、実施形態3に係る半導体レーザ装置1の構成を示す図である。
【0051】
実施形態3では、実施形態2に比べて、回折格子50に入射するレーザ光L1、L2をファスト軸方向に平行光化するためのファスト軸コリメータレンズ70がさらに配置されている。また、半導体レーザ素子11a~11d、12a~12dは、ファスト軸方向に並んでいる。すなわち、半導体レーザ素子11a~11d、12a~12dは、ファスト軸がX軸方向に平行になるように配置されている。実施形態3におけるその他の構成は、上記実施形態2と同様である。
【0052】
なお、実施形態3において、ファスト軸コリメータレンズ70は、請求項5に記載の「他のレンズ部」に対応する。
【0053】
ファスト軸コリメータレンズ70は、X-Y平面に平行な方向のみに湾曲するレンズ面70aを有する。レンズ面70aの母線は、Z軸に平行である。
【0054】
<実施形態3の効果>
上記実施形態2の構成では、半導体レーザ素子11a~11d、12a~12dから出射されたレーザ光L1、L2は、それぞれ、コリメータレンズ21a~21d、22a~22dによって平行光化されるものの、完全には平行光とはならず、平行光からやや広がった状態で回折格子50に入射する。このため、レーザ光L1、L2には、回折格子50に対して適正な入射角で入射しないビームが生じ、このビームは出射光L10から外れることになる。
【0055】
これに対し、実施形態3では、ファスト軸コリメータレンズ70によって、回折格子50に入射するレーザ光L1、L2がファスト軸方向にさらに平行光に近づけられる。このため、実施形態2に比べて、回折格子50に適正な入射角で入射しないビームを減少させることができ、より多くのビームを出射光L10に合成できる。よって、出射光L10の出力をより効果的に高めることができる。また、部分反射ミラー60からの帰還光量を確保できるので、効率良く、半導体レーザ素子11a~11d、12a~12dからレーザ光L1、L2を出射させることができる。
【0056】
また、実施形態3では、半導体レーザ素子11a~11d、12a~12dがファスト軸方向に並んで配置されため、半導体レーザ素子11a~11d、12a~12dから出射されたレーザ光L1、L2は、回折格子50に向かうにつれて、ファスト軸方向に互いに接近して、回折格子50の受光面上で重なる。したがって、光学部品の配置に誤差等が生じた場合、レーザ光L1、L2は、回折格子50の受光面上において、ファスト軸方向に位置ずれが生じることになる。しかし、ファスト軸方向はビーム品質が良いため、出射光L10全体のビーム品質を維持可能な位置ずれの許容範囲を広げることができる。よって、このように半導体レーザ素子11a~11d、12a~12dをファスト軸方向に並べることにより、出射光L10のビーム品質を高めることができ、且つ、光学部品の配置の調整作業を容易に行うことができる。
【0057】
なお、実施形態3に示した構成、すなわち、半導体レーザ素子11a~11d、12a~12dをファスト軸方向に配置し、ファスト軸コリメータレンズ70を配置する構成は、上記実施形態1の構成に適用されてもよい。これにより、上記と同様の効果が奏され得る。
【0058】
<変更例>
図5の構成では、実施形態1に係る図1の構成と同様、4つのミラー31の反射面311が、X-Y平面に平行な平面上において略放物線状に並ぶように配置され、4つのミラー41は、反射面411がX-Y平面に平行な平面上において略放物線状に並ぶように配置されている。この点は、4つのミラー32の反射面321および4つのミラー42の反射面421についても同様である。
【0059】
また、回折格子50の角度配置と各レーザ光の入射角も実施形態1と同じであるので、半導体レーザ素子11a~11d、12a~12dのそれぞれの波長λ11a~λ11d、λ12a~λ12dが、λ12d<λ12c<λ12b<λ12a<λ11a<λ11b<λ11c<λ11dなる関係で、外部共振器が形成されている。このように、半導体レーザ素子11a~11d、12a~12dについては、X軸正側の半導体レーザ素子ほど、外部共振の波長は短くなっている。
【0060】
一方、ファスト軸コリメータレンズ70には、全ての波長のレーザ光L1、L2が入射するため、レーザ光ごと(波長ごと)に、色収差が生じる。また、上記のように、半導体レーザ素子11a~11d、12a~12dの波長が異なるために、レーザ光ごと(波長ごと)に、収束作用が相違する。このため、図5の構成では、各波長のレーザ光を適正に平行光化するための構成がさらに用いられることが好ましい。
【0061】
この点に鑑み、本変更例では、半導体レーザ素子11a~11d、12a~12dのうち、出射波長が短い半導体レーザ素子ほどファスト軸コリメータレンズ70までの光路長が短くなるように、光学系S1、S2が構成される。具体的には、4つのミラー31の反射面311および4つのミラー32の反射面321の配置によって、半導体レーザ素子11a~11d、12a~12dとファスト軸コリメータレンズ70の間の光路長が上記のように調整されている。
【0062】
波長が短いほど、ファスト軸コリメータレンズ70の焦点距離が短くなる。したがって、上記のように出射波長が短い半導体レーザ素子ほどファスト軸コリメータレンズ70までの光路長が短くなるように光学系S1、S2を構成することにより、各波長のレーザ光L1、L2を、ファスト軸コリメータレンズ70によってより適正に平行光化することができる。よって、出射光L10の出力をより効果的に高めることができる。
【0063】
なお、半導体レーザ素子11a~11d、12a~12dとファスト軸コリメータレンズ70との間の光路長は、各波長のレーザ光L1、L2がファスト軸コリメータレンズ70によって適正に平行光化されるように調整されることが好ましい。この場合も、たとえば、4つのミラー31の反射面311および4つのミラー32の反射面321の配置によって、半導体レーザ素子11a~11d、12a~12dとファスト軸コリメータレンズ70の間の光路長が調整されればよい。
【0064】
図5の構成では、半導体レーザ素子11a~11d、12a~12dのうち、X軸正側の半導体レーザ素子ほど波長が短い。したがって、半導体レーザ素子11a~11d、12a~12dからファスト軸コリメータレンズ70までのそれぞれの光路長L1a~L1d、L2a~L2dが、L2d<L2c<L2b<L2a<L1a<L1b<L1c<L1dとなるように調整されればよい。これにより、出射波長が短い半導体レーザ素子ほどファスト軸コリメータレンズ70までの光路長が短くなることが、実現され得る。
【0065】
<実施形態4>
図6は、実施形態4に係る半導体レーザ装置1の構成を示す図である。
【0066】
実施形態4では、実施形態3に比べて、ミラー31、32の前段の構成が相違している。すなわち、実施形態4では、半導体レーザ素子11a~11d、12a~12dが、スロー軸方向に並ぶように、放熱プレートP1、P2に設置される。また、半導体レーザ素子11a~11d、12a~12dの後段に、それぞれ、ファスト軸コリメータレンズ81a~81d、82a~82dと、ビーム回転素子83a~83d、84a~84dと、スロー軸コリメータレンズ85a~85d、86a~86dとが配置される。実施形態4におけるその他の構成は、上記実施形態3と同様である。
【0067】
実施形態4では、4つの半導体レーザ素子11a~11dがアレイ化されている。同様に、4つの半導体レーザ素子12a~12dもアレイ化されている。
【0068】
図7は、レーザアレイ11の構成を示す斜視図である。
【0069】
図7に示すように、4つの半導体レーザ素子11a~11dがスロー軸に沿って並ぶようにベース120に設置されて、レーザアレイ11が構成されている。したがって、半導体レーザ素子11a~11dの発光領域117は、スロー軸方向に1列に並んでいる。4つの半導体レーザ素子12a~12dを含むレーザアレイについても同様の構成である。
【0070】
なお、図7では、4つの半導体レーザ素子11a~11dが互いに隣接してベース120に設置されることによりレーザアレイ11が構成されているが、4つの発光領域117がスロー軸方向に並ぶように形成された1つの半導体発光素子がベース120に設置されてもよい。この場合、当該半導体発光素子のうち、各発光領域117からレーザ光を出射させる構造部分が、それぞれ、半導体レーザ素子11a~11dに対応する。4つの半導体レーザ素子12a~12dについても、4つの発光領域117がスロー軸方向に並ぶように形成された1つの半導体発光素子によりアレイ化されてもよい。
【0071】
図6に戻り、こうして構成されたレーザアレイが放熱プレートP1、P2に設置される。これにより、半導体レーザ素子11a~11d、12a~12dが、スロー軸方向に並ぶように配置される。
【0072】
ファスト軸コリメータレンズ81a~81d、82a~82dは、半導体レーザ素子11a~11d、12a~12dから出射されたレーザ光L1、L2を、それぞれファスト軸方向において平行光化する。ファスト軸コリメータレンズ81a~81d、82a~82dは、たとえば、シリンドリカルレンズにより構成される。この場合、ファスト軸コリメータレンズ81a~81d、82a~82dは、レンズ面の母線がX軸に平行となるように配置される。
【0073】
ビーム回転素子83a~83d、84a~84dは、レーザ光L1、L2のファスト軸およびスロー軸を回転させる。ビーム回転素子83a~83d、84a~84dは、たとえば、入射面と出射面に、それぞれ、外方に凸のシリンドリカル面を有する光学素子である。各シリンドリカル面は、母線が互いに平行である。各シリンドリカル面は、互いに同じ形状であり、ビーム回転素子83a~83d、84a~84dの内部において焦点を共有する。
【0074】
この場合、ビーム回転素子83a~83d、84a~84dは、入射するレーザ光L1、L2のファスト軸およびスロー軸に対してシリンドリカル面の母線が45°となるように配置される。これにより、ビーム回転素子83a~83d、84a~84dを透過したレーザ光L1、L2は、スロー軸コリメータレンズ85a~85d、86a~86dに近づくにつれて、光軸を中心に一方向に回転する。
【0075】
スロー軸コリメータレンズ85a~85d、86a~86dは、入射するレーザ光L1、L2のスロー軸がZ軸に平行となる位置に配置される。これにより、レーザ光L1、L2は、対応するスロー軸コリメータレンズ85a~85d、86a~86dに対して、スロー軸がZ軸に平行となり、ファスト軸がX軸に平行となる状態で入射する。
【0076】
スロー軸コリメータレンズ85a~85d、86a~86dは、入射するレーザ光L1、L2を、それぞれスロー軸方向において平行光化する。スロー軸コリメータレンズ85a~85d、86a~86dは、たとえば、シリンドリカルレンズにより構成される。この場合、スロー軸コリメータレンズ85a~85d、86a~86dは、レンズ面の母線がX軸に平行となるように配置される。スロー軸コリメータレンズ85a~85d、86a~86dのレンズ面(シリンドリカル面)は、レーザ光L1、L2の出射面に形成されている。
【0077】
レーザ光L1、L2がスロー軸コリメータレンズ85a~85d、86a~86dのレンズ面(入射面)に入射すると、レンズ面の光学作用により、ビーム回転素子83a~83d、84a~84dにより付与されたビームの回転が停止する。したがって、スロー軸コリメータレンズ85a~85d、86a~86dを透過したレーザ光L1、L2は、上記実施形態3と同様、ファスト軸がX軸に平行な状態で、ファスト軸コリメータレンズ70へと進む。
【0078】
<実施形態4の効果>
実施形態4においても、上記実施形態3と同様の効果が奏され得る。
【0079】
また、実施形態4では、半導体レーザ素子11a~11dおよび半導体レーザ素子12a~12dがアレイ化されているため、半導体レーザ素子11a~11d、12a~12dの設置および位置調整を容易に行い得る。
【0080】
なお、上記実施形態3の変更例で示した構成が、実施形態4に同様に適用されてもよい。
【0081】
また、図6の構成では、半導体レーザ素子11a~11d、12a~12dと部分反射ミラー60とによって外部共振器が構成されたが、半導体レーザ素子11a~11d、12a~12dが内部共振により発振する構成であってもよい。この場合、図6の構成から部分反射ミラー60が省略され、半導体レーザ素子11a~11d、12a~12dは、上記実施形態1と同様、内部共振型の半導体レーザ素子に変更される。
【0082】
また、半導体レーザ素子11a~11d、12a~12dのそれぞれが、更に複数のエミッタを有するレーザアレイ素子で構成されており、複数のエミッタに対応するように、ビーム回転素子83a~83d、84a~84dのそれぞれが、複数のシリンドリカルレンズ面を有するレンズアレイの構成になっていてもよい。
【0083】
なお、半導体レーザ素子11a~11dは、必ずしも一体化されていなくてもよく、たとえば、図8に示すように、互いに分離して配置されてもよい。
【0084】
<その他の変更例>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、他に種々の変更が可能である。
【0085】
たとえば、実施形態1~4では、合計8つの半導体レーザ素子11a~11d、12a~12dが配置されたが、配置される半導体レーザ素子の数はこれに限られるものではない。たとえば、光学系S1、S2にさらに多くの半導体レーザ素子が配置されてもよい。また、光学系S1に配置される半導体レーザ素子の数と、光学系S2に配置される半導体レーザ素子の数とが相違していてもよい。
【0086】
また、実施形態1~4では、合計8つの反射面311、321が互いに分離して配置されたが、反射面311、321は、必ずしも分離していなくてもよい。たとえば、1つのミラーに、傾斜角の異なる4つの反射面311が、互いに分離されることなく、境界を共有する状態で、形成されてもよい。反射面321についても、これと同様に構成されてもよい。この点は、反射面411、421についても、同様である。
【0087】
また、上記実施形態1~4では、半導体レーザ素子11a~11dの間隔が一定であったが、半導体レーザ素子11a~11dの間隔は必ずしも一定でなくてもよい。この点は、半導体レーザ素子12a~12dについても同様である。
【0088】
また、上記実施形態では、半導体レーザ素子11a~11d、12a~12dが直線状に並んで配置されたが、半導体レーザ素子11a~11d、12a~12dは、必ずしも、直線状に並ばなくてもよい。たとえば、図1の構成において、半導体レーザ素子11b、11dが、半導体レーザ素子11a、11cに対して、Z軸方向にシフトした位置に配置されてもよい。この場合、半導体レーザ素子11b、11dのシフトに応じて、半導体レーザ素子11b、11dに対向するミラー31がY-Z平面に平行な方向に傾けられて、半導体レーザ素子11b、11dから出射されたレーザ光L1が、対応するミラー41に導かれる。また、これら2つのミラー41で反射されたレーザ光L1が回折格子50の共通の入射位置に入射するように、これら2つのミラー41が、Y-Z平面に平行な方向に傾けられる。
【0089】
また、ミラー41、42が、ミラー31、32に対してZ軸方向にシフトするように配置されてもよい。この構成では、ミラー41、42のシフトに応じて、回折格子50がZ軸方向にシフトされ、ミラー41、42で反射されたレーザ光L1、L2が回折格子50の共通の入射位置に入射するように、ミラー41、42の傾きが調整されればよい。なお、この場合は、ミラー41、42で反射されたレーザ光L1、L2が、X軸正方向の端のミラー31とX軸負方向の端のミラー32との間の隙間を通らないため、この隙間がなくなるように、ミラー31、32から前段の光学系が互いに接近して配置されてもよい。
【0090】
また、上記実施形態1~4では、半導体レーザ装置1に2つの光学系S1、S2が配置されたが、何れか一方の光学系のみが半導体レーザ装置1に配置されてもよい。
【0091】
また、上記実施形態1~4では、波長分散素子として透過型の回折格子50が用いられたが、波長分散素子として反射型の回折格子が用いられてもよい。また、回折格子50に代えて、プリズム等の他の波長分散素子が用いられてもよい。
【0092】
また、上記実施形態1~3では、請求の範囲に記載の「レンズ部」として、1つのコリメータレンズ21a~21d、22a~22dが用いられたが、レーザ光L1、L2をファスト軸方向に平行光化するシリンドリカルレンズと、レーザ光L1、L2をスロー軸方向に平行光化するシリンドリカルレンズとを組み合わせて、「レンズ部」が構成されてもよい。また、請求の範囲に記載の「他のレンズ部」も、必ずしも、1つのファスト軸コリメータレンズ70から構成されなくてもよく、複数のレンズを組み合わせて構成されてもよい。
【0093】
また、半導体レーザ装置1の構成も、上記実施形態1~4に示した構成に限られるものではなく、種々変更可能である。たとえば、ミラー41、42と回折格子50との間に、レーザ光L1、L2の光路を折り曲げるミラーが配置されてもよい。また、回折格子50の後段に、適宜、レンズ等の光学素子が配置されてもよい。
【0094】
なお、半導体レーザ装置1は、製品の加工に限らず、他の用途に用いられてもよい。
【0095】
この他、本発明の実施形態は、請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。例えば、上記の各実施の形態に対して当業者が思い付く各種変形を施して得られる形態や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素および機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0096】
1 半導体レーザ装置
11 レーザアレイ
11a~11d、12a~12d 半導体レーザ素子
21a~21d、22a~22d コリメータレンズ(レンズ部)
31、32、41、42 ミラー
50 回折格子(波長分散素子)
60 部分反射ミラー
70 ファスト軸コリメータレンズ(他のレンズ部)
81a~81d、82a~82d ファスト軸コリメータレンズ(レンズ部)
83a~83d、84a~84d ビーム回転素子
85a~85d、86a~86d スロー軸コリメータレンズ(レンズ部)
311 反射面(第2反射面)
411 反射面(第1反射面)
L1、L2 レーザ光
L10 出射光
S1、S2 光学系(組)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8