IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エスケー ケミカルズ カンパニー リミテッドの特許一覧

特許7561186ポリエステル樹脂混合物、ポリエステルフィルムおよびその製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-25
(45)【発行日】2024-10-03
(54)【発明の名称】ポリエステル樹脂混合物、ポリエステルフィルムおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/02 20060101AFI20240926BHJP
   C08G 63/16 20060101ALI20240926BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
C08L67/02
C08G63/16
C08J5/18 CFD
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2022517370
(86)(22)【出願日】2020-07-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-30
(86)【国際出願番号】 KR2020009616
(87)【国際公開番号】W WO2021060686
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2023-04-03
(31)【優先権主張番号】10-2019-0119676
(32)【優先日】2019-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】513193923
【氏名又は名称】エスケー ケミカルズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イ ブーヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム ウィス
(72)【発明者】
【氏名】キム ジョンリャン
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-521807(JP,A)
【文献】特表2016-516878(JP,A)
【文献】特表2016-521806(JP,A)
【文献】特表2003-531214(JP,A)
【文献】特開平10-204273(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0224529(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0329980(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 63/00 - 64/42
C08K 3/00 - 13/08
C08L 1/00 -101/14
C08J 5/00 - 5/02
C08J 5/12 - 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンテレフタレート;およびジカルボン酸あるいはその誘導体とエチレングリコールおよび共単量体を含むジオールが重合され、ジカルボン酸あるいはその誘導体から誘導された酸部分およびエチレングリコールおよび共単量体を含むジオールから誘導されたジオール部分が繰り返される構造を有するポリエステル樹脂を含み、
前記共単量体はシクロヘキサンジメタノール、4-(ヒドロキシメチル)シクロヘキシルメチル4-(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンカルボキシレートおよび4-(4-(ヒドロキシメチル)シクロヘキシルメトキシメチル)シクロヘキシルメタノールを含み、
前記ポリエステル樹脂は全体ジオール部分に対して4-(ヒドロキシメチル)シクロヘキシルメチル4-(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンカルボキシレートおよび4-(4-(ヒドロキシメチル)シクロヘキシルメトキシメチル)シクロヘキシルメタノールから誘導されたジオール部分を0.2~30モル%で含み、
前記ポリエステル樹脂に導入された分子量が500~1000g/molであるオリゴマーの含有量が全体ポリエステル樹脂面積に対して3.0面積%以下である、ポリエステル樹脂混合物。
【請求項2】
前記ポリエチレンテレフタレートはバージンポリエチレンテレフタレート、リサイクルポリエチレンテレフタレートまたはこれらの混合物である、請求項1に記載のポリエステル樹脂混合物。
【請求項3】
前記ポリエステル樹脂は全体ジオール部分に対して4-(ヒドロキシメチル)シクロヘキシルメチル4-(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンカルボキシレートから誘導されたジオール部分を0.1~15モル%で含む、請求項1に記載のポリエステル樹脂混合物。
【請求項4】
前記ポリエステル樹脂は全体ジオール部分に対して4-(4-(ヒドロキシメチル)シクロヘキシルメトキシメチル)シクロヘキシルメタノールから誘導されたジオール部分を0.1~15モル%で含む、請求項1に記載のポリエステル樹脂混合物。
【請求項5】
前記ポリエステル樹脂は全体ジオール部分に対してシクロヘキサンジメタノールから誘導されたジオール部分を1~35モル%で含む、請求項1に記載のポリエステル樹脂混合物。
【請求項6】
前記ポリエステル樹脂は全体ジオール部分に対してジエチレングリコールから誘導されたジオール部分を2~15モル%で含む、請求項1に記載のポリエステル樹脂混合物。
【請求項7】
前記共単量体は1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-メチレン-1,3-プロパンジオール、2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-イソプロピル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3-メチル-2,4-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、ジエチレングリコールまたはこれらの混合物をさらに含む、請求項1に記載のポリエステル樹脂混合物。
【請求項8】
前記ポリエステル樹脂はテレフタル酸あるいはその誘導体から誘導された酸部分を含むか、あるいはテレフタル酸あるいはその誘導体から誘導された酸部分とジカルボン酸の共単量体あるいはその誘導体から誘導された酸部分を含み、
前記ジカルボン酸の共単量体あるいはその誘導体はイソフタル酸、ジメチルイソフタレート、フタル酸、ジメチルフタレート、フタル酸無水物、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ジメチル2,6-ナフタレンジカルボキシレート、ジフェニルジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、ジメチル1,4-シクロヘキサンジカルボキシレート、ジメチル1,3-シクロヘキサンジカルボキシレート、セバシン酸、コハク酸、イソデシルコハク酸、マレイン酸、マレイン酸無水物、フマル酸、アジピン酸、グルタル酸およびアゼライン酸からなる群より選ばれた1種以上である、請求項1に記載のポリエステル樹脂混合物。
【請求項9】
請求項1に記載のポリエステル樹脂混合物から形成された、ポリエステルフィルム。
【請求項10】
前記ポリエステルフィルムは厚さが50μmである時ASTM D1003-97に従って測定されたヘイズが5%以下である、請求項9に記載のポリエステルフィルム。
【請求項11】
前記ポリエステルフィルムは収縮開始温度が65℃以下である、請求項9に記載のポリエステルフィルム。
【請求項12】
前記ポリエステルフィルムは95℃で最大収縮率が55%~85%である、請求項9に記載のポリエステルフィルム。
【請求項13】
前記ポリエステルフィルムは単層フィルムである、請求項9に記載のポリエステルフィルム。
【請求項14】
前記ポリエステルフィルムは基材層および樹脂層を含む多層フィルムである、請求項9に記載のポリエステルフィルム。
【請求項15】
前記基材層はポリエチレンテレフタレートおよびポリエステル樹脂を0:100~50:50の重量比で含み、前記樹脂層はポリエチレンテレフタレートおよびポリエステル樹脂を10:90~100:0の重量比で含む、請求項14に記載のポリエステルフィルム。
【請求項16】
前記ポリエステルフィルムは横方向延伸比1.5倍~6倍または縦方向延伸比1.1倍~5倍で一軸延伸された、請求項9に記載のポリエステルフィルム。
【請求項17】
前記ポリエステルフィルムは横方向延伸比1.5倍~6倍および縦方向延伸比1.1倍~5倍で二軸延伸された、請求項9に記載のポリエステルフィルム。
【請求項18】
前記ポリエステルフィルムは半結晶化時間が0.1分~100分である、請求項9に記載のポリエステルフィルム。
【請求項19】
前記ポリエステルフィルムは前記基材層厚さに対する前記樹脂層厚さの百分率が2.5%~50%である、請求項14に記載のポリエステルフィルム。
【請求項20】
前記ポリエステルフィルム全体に含まれたポリエチレンテレフタレートおよびポリエステル樹脂の重量比は5:95~50:50である、請求項13または14に記載のポリエステルフィルム。
【請求項21】
請求項1に記載のポリエステル樹脂混合物を成形して未延伸フィルムを製造する段階;および前記未延伸フィルムを延伸する段階を含む、ポリエステルフィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリエステル樹脂混合物、ポリエステルフィルムおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱収縮フィルムは加熱すると収縮する性質を有するものであって、収縮包装、収縮ラベル(label)などとして用いられる。このような熱収縮フィルムにはポリ塩化ビニル(PVC)フィルム、ポリスチレン(Polystyrene)フィルム、ポリエステルフィルムなどがあり、このようなフィルムは各種容器のラベル(label)やキャップシール(cap seal)、または直接包装などの用途として用いられる。
【0003】
しかし、ポリ塩化ビニルからなるフィルムは焼却時に塩化水素ガス、ダイオキシンの原因になる物質が発生するなどの環境的な問題があり規制対象として分類されている。そして、ポリスチレンフィルムは収縮工程による作業安定性が良く、製品の外観が良好であることに対して、耐化学性が良くないため印刷する際に特殊な組成のインクを使用しなければならず、常温での保管安定性が不足して自ずから収縮するなどサイズが変形される短所がある。その上、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリスチレンフィルムをポリエチレンテレフタレート容器などの収縮ラベルとして使用する場合、ポリエチレンテレフタレート容器をリサイクル(Recycle)するための工程でラベルと容器を分離しなければならないわずらわしさがある。
【0004】
これに対して、ポリエステルフィルムはポリエチレンテレフタレート容器のラベルとして使用される場合、ラベルの分離なしにポリエチレンテレフタレート容器をリサイクルするための工程に投入でき、工程の便宜性を向上させることができる。特に、最近ポリエチレンテレフタレート容器の使用量が増加するに伴い別にラベルを分離せずリサイクル工程に投入できるポリエステルフィルムに対する関心が高まる傾向である。しかし、従来の熱収縮ポリエステルフィルムは十分な熱収縮率を示すことができずポリエステルフィルムの収縮特性の改善が必要な実情であり、特に非結晶性のポリエステルフィルムはポリエチレンテレフタレート容器のリサイクル工程で容器を洗浄した後乾燥する過程で容器と互いにくっつく融着現象が起きて容器のリサイクルを不可能にする問題がある。
【0005】
そのため、既存のポリエステル樹脂より優れた収縮特性を有し、ポリエチレンテレフタレート容器とともにリサイクル可能なポリエステルフィルムに対する研究が必要な実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、優れた収縮特性の熱収縮フィルムを提供できるポリエステル樹脂混合物を提供する。
【0007】
本発明はまた、前記ポリエステル樹脂混合物から形成されたポリエステルフィルムとその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の一実施形態によれば、ポリエチレンテレフタレート;およびジカルボン酸あるいはその誘導体とエチレングリコールおよび共単量体を含むジオールが重合され、ジカルボン酸あるいはその誘導体から誘導された酸部分およびエチレングリコールおよび共単量体を含むジオールから誘導されたジオール部分が繰り返される構造を有するポリエステル樹脂を含み、前記共単量体はシクロヘキサンジメタノール、4-(ヒドロキシメチル)シクロヘキシルメチル4-(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンカルボキシレートおよび4-(4-(ヒドロキシメチル)シクロヘキシルメトキシメチル)シクロヘキシルメタノールを含み、前記ポリエステル樹脂は全体ジオール部分に対して4-(ヒドロキシメチル)シクロヘキシルメチル4-(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンカルボキシレートおよび4-(4-(ヒドロキシメチル)シクロヘキシルメトキシメチル)シクロヘキシルメタノールから誘導されたジオール部分を0.2~30モル%で含むポリエステル樹脂混合物が提供される。
【発明の効果】
【0009】
発明の一実施形態によるポリエステル樹脂混合物は、バージンポリエチレンテレフタレートだけでなく、リサイクルポリエチレンテレフタレートを含んでも透明でかつ収縮率に優れた熱収縮ラベルの提供が可能であり、前記熱収縮ラベルはPET容器などに付着した状態で再びリサイクルが可能であるため最近注目を浴びている持続的に使用可能なプラスチックの提供に有用であると期待される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、発明の具体的な実施形態によるポリエステル樹脂混合物とそれから製造されるポリエステルフィルムなどについて説明する。
【0011】
本明細書で特に明記しない限り、専門用語は単に特定の実施例を言及するためのものであり、本発明を限定しようとする意図で使用されない。そして、 反対の意味が明確に記載されていない限り、単数形は複数形を含む。明細書で使用される「含む」の意味は、特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分を具体化し、他の特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素、成分および/または群の存在や付加を除外させるものではない。
【0012】
発明の一実施形態によれば、ポリエチレンテレフタレート;およびジカルボン酸あるいはその誘導体とエチレングリコールおよび共単量体を含むジオールが重合され、ジカルボン酸あるいはその誘導体から誘導された酸部分およびエチレングリコールおよび共単量体を含むジオールから誘導されたジオール部分が繰り返される構造を有するポリエステル樹脂を含み、前記共単量体はシクロヘキサンジメタノール、4-(ヒドロキシメチル)シクロヘキシルメチル4-(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンカルボキシレートおよび4-(4-(ヒドロキシメチル)シクロヘキシルメトキシメチル)シクロヘキシルメタノールを含み、前記ポリエステル樹脂は全体ジオール部分に対して4-(ヒドロキシメチル)シクロヘキシルメチル4-(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンカルボキシレートおよび4-(4-(ヒドロキシメチル)シクロヘキシルメトキシメチル)シクロヘキシルメタノールから誘導されたジオール部分を0.2~30モル%で含むポリエステル樹脂混合物が提供される。
【0013】
前記ポリエステル樹脂はジカルボン酸あるいはその誘導体とジオールが重合され、ジカルボン酸あるいはその誘導体から誘導された酸部分(acid moiety)およびジオールから誘導されたジオール部分(diol moiety)が繰り返される構造を有する。本明細書で、酸部分(acid moiety)およびジオール部分(diol moiety)は、ジカルボン酸あるいはその誘導体およびジオールが重合されてこれらから水素、ヒドロキシ基またはアルコキシ基が除去されて残った残基(residue)をいう。
【0014】
本明細書で用語の「ジカルボン酸あるいはその誘導体」は、ジカルボン酸とジカルボン酸の誘導体より選ばれる1種以上の化合物を意味する。そして、「ジカルボン酸の誘導体」は、ジカルボン酸のアルキルエステル(モノメチル、モノエチル、ジメチル、ジエチルまたはジブチルエステルなど炭素数1~4の低級アルキルエステル)あるいはジカルボン酸の無水物を意味する。そのため、例えば、テレフタル酸あるいはその誘導体はテレフタル酸;モノアルキルあるいはジアルキルテレフタレート;およびテレフタル酸無水物のようにジオールと反応してテレフタロイル部分(terephthaloyl moiety)を形成する化合物を通称する。
【0015】
前記ポリエチレンテレフタレートは安い価格および優れた物理/化学的性質によって商業的に広く使用されているが、熱収縮ラベルを提供するのに十分な熱収縮率を示すことができず、結晶性が高く加工時高い温度が求められ、結晶化速度が速いため透明な製品を提供するのに限界がある。
【0016】
かかる問題を解決するために研究を重ねた結果、ポリエチレンテレフタレートにシクロヘキサンジメタノール、4-(ヒドロキシメチル)シクロヘキシルメチル4-(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンカルボキシレートおよび4-(4-(ヒドロキシメチル)シクロヘキシルメトキシメチル)シクロヘキシルメタノールを含む共単量体から誘導されたジオール部分を含み、この中、4-(ヒドロキシメチル)シクロヘキシルメチル4-(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンカルボキシレートおよび4-(4-(ヒドロキシメチル)シクロヘキシルメトキシメチル)シクロヘキシルメタノールから誘導されたジオール部分を上述した範囲で含むポリエステル樹脂を配合すると、透明性および収縮率に優れたポリエステルフィルムを提供できることを見出して本発明を完成した。
【0017】
前記ポリエステルフィルムはポリ塩化ビニルフィルムの熱収縮温度と類似する程度の低い温度で熱収縮が可能でありながらも優れた収縮率を示してポリエチレンテレフタレート容器(PET容器)の変形または白濁現象なしでPET容器の熱収縮ラベルとして活用が可能である。
【0018】
また、通常の熱収縮ラベルの場合は使用されたPET容器のリサイクルのために洗浄後乾燥される過程でPET容器と融着されてPET容器をリサイクルストリームに供給する前に除去するが、前記一実施形態によるポリエステル樹脂混合物から製造された熱収縮ラベルの場合は高い乾燥温度でも結晶化が可能であるためPET容器に付着した状態でPET容器のリサイクルストリームに供給できる利点がある。
【0019】
本明細書で4-(ヒドロキシメチル)シクロヘキシルメチル4-(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンカルボキシレートは略してジオールAと呼び、4-(4-(ヒドロキシメチル)シクロヘキシルメトキシメチル)シクロヘキシルメタノールは略してジオールBと呼ぶ。
【0020】
以下、このようなポリエステル樹脂混合物について詳細に説明する。
【0021】
前記一実施形態によるポリエステル樹脂は、汎用の多様なポリエチレンテレフタレートと配合されてその収縮特性と結晶性および結晶化速度を適切な水準に調節することによって高透明性を有して収縮率に優れたポリエステルフィルムや厚い容器を提供することができる。
【0022】
そのため、前記ポリエチレンテレフタレートの種類は特に限定されない。非制限的な例として、前記ポリエチレンテレフタレートはジカルボン酸あるいはその誘導体とジオールが重合されて製造されたものであり、前記ジカルボン酸あるいはその誘導体は主にテレフタル酸あるいはその誘導体であり得、前記ジオールは主にエチレングリコールであり得る。
【0023】
前記ポリエチレンテレフタレートはテレフタル酸あるいはその誘導体以外の他の共単量体から誘導された酸部分を含み得る。具体的には、前記共単量体は炭素数8~14の芳香族ジカルボン酸あるいはその誘導体および炭素数4~12の脂肪族ジカルボン酸あるいはその誘導体からなる群より選ばれた1種以上であり得る。前記炭素数8~14の芳香族ジカルボン酸あるいはその誘導体にはイソフタル酸、ジメチルイソフタレート、フタル酸、ジメチルフタレート、フタル酸無水物、2,6-ナフタレンジカルボン酸などのナフタレンジカルボン酸、ジメチル2,6-ナフタレンジカルボキシレートなどのジアルキルナフタレンジカルボキシレート、ジフェニルジカルボン酸などポリエステル樹脂の製造に通常使用される芳香族ジカルボン酸あるいはその誘導体が含まれ得る。前記炭素数4~12の脂肪族ジカルボン酸あるいはその誘導体には1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸などのシクロヘキサンジカルボン酸、ジメチル1,4-シクロヘキサンジカルボキシレート、ジメチル1,3-シクロヘキサンジカルボキシレートなどのシクロヘキサンジカルボキシレート、セバシン酸、コハク酸、イソデシルコハク酸、マレイン酸、マレイン酸無水物、フマル酸、アジピン酸(adipic acid)、グルタル酸、アゼライン酸(azelaic acid)などポリエステル樹脂の製造に通常使用される線状、分岐状または環状脂肪族ジカルボン酸あるいはその誘導体が含まれ得る。前記共単量体は全体ジカルボン酸あるいはその誘導体に対して0~50モル%、0モル%~30モル%、0~20モル%あるいは0~10モル%で使用できる。
【0024】
前記ポリエチレンテレフタレートはエチレングリコール以外の他の共単量体から誘導されたジオール部分を含み得る。具体的に前記共単量体は炭素数8~40あるいは炭素数8~33の芳香族ジオール、炭素数2~20あるいは炭素数2~12の脂肪族ジオールあるいはこれらの混合物などであり得る。前記芳香族ジオールの具体的な例としては、ポリオキシエチレン-(n)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン-(n)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンまたはポリオキシプロピレン-(n)-ポリオキシエチレン-(n)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンなどのエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドが付加されたビスフェノールA誘導体(ここでnはポリオキシエチレンまたはポリオキシプロピレンユニット(unit)の個数(number)を示し、例えば、0~10であり得る)を例示し、前記脂肪族ジオールの具体的な例としては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロパンジオール(1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオールなど)、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-メチレン-1,3-プロパンジオール、2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-イソプロピル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、ペンタンジオール(1,5-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオールなど)、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3-メチル-2,4-ペンタンジオール、ヘキサンジオール(1,6-ヘキサンジオールなど)、ネオペンチルグリコール(2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール)、1,2-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、テトラメチルシクロブタンジオールなどの線状、分枝状または環状脂肪族ジオールを例示できる。前記共単量体は全体ジオールに対して0~50モル%、0モル%~30モル%、0~20モル%あるいは0~10モル%で使用できる。
【0025】
前記ポリエチレンテレフタレートは特に制限されるものではないが、前記ポリエステル樹脂と優れた混和性を示し、より優れた収縮特性を示すためにオルトクロロフェノールに1.2g/dlの濃度で150℃で15分間溶解させて35℃で測定した固有粘度が0.50~1.2dl/gあるいは0.50~1.0dl/gであり得る。
【0026】
前記一実施形態によるポリエステル樹脂はバージン(virgin)ポリエチレンテレフタレートの物性を補完できるだけでなく、リサイクル(recycled)ポリエチレンテレフタレートの低下した物性も非常に優れた水準に補完できる。
【0027】
リサイクルポリエチレンテレフタレートは使用された後回収されたポリエチレンテレフタレートあるいはこれから得られたものをすべて含む意味として理解されることができる。具体的には、前記リサイクルポリエチレンテレフタレートは回収された廃プラスチックを一定の基準に従って分離し、粉砕および洗浄した後溶融押出して再ペレット化したものであるかあるいは回収された廃プラスチックを単量体水準に解重合(depolymerization)した後これを再重合して得たものであり得る。このようなリサイクルポリエチレンテレフタレートは加工方法により再ペレット化した後結晶化して使用されたりあるいは結晶化した後固体状態でさらに重縮合された後使用されることができる。
【0028】
廃プラスチックを単量体水準に解重合して再重合したリサイクルポリエチレンテレフタレートはバージンポリエチレンテレフタレートと区別が容易でないほど良好な物性を示す。しかし、廃プラスチックを再ペレット化したものはバージンポリエチレンテレフタレートに比べて透明度が劣り、諸般物性が劣るためリサイクルポリエチレンテレフタレート単独であるいはバージンポリエチレンテレフタレートと混合しても適切な水準に収縮可能なフィルムを製造するのは難しい。しかし、一実施形態によるポリエステル樹脂は、このようなリサイクルポリエチレンテレフタレートと優れた混和性を示し、リサイクルポリエチレンテレフタレートと混合されて優れた収縮特性を示すポリエステルフィルムの提供を可能にする。特に、一実施形態によるポリエステル樹脂は、リサイクルポリエチレンテレフタレートと混和性が非常に優れ、その他の添加剤なしでも収縮率に優れたポリエステルフィルムを提供することができる。
【0029】
そのため、前記ポリエチレンテレフタレートとしてはバージン(virgin)ポリエチレンテレフタレート、リサイクル(recycled)ポリエチレンテレフタレートまたはこれらの混合物が使用される。
【0030】
特に、前記一実施形態によるポリエステル樹脂混合物は、リサイクルポリエチレンテレフタレートの中でもオルトクロロフェノールに1.2g/dlの濃度で150℃で15分間溶解させて35℃で測定した固有粘度が0.50~1.2dl/gあるいは0.50~1.0dl/gの樹脂を含んで高透明性および優れた加工性を示すことができる。
【0031】
また、前記一実施形態によるポリエステル樹脂は、リサイクルポリエチレンテレフタレートの中でも95モル%以上のテレフタル酸から誘導された酸部分および95モル%以上のエチレングリコールから誘導されたジオール部分を含む樹脂のリサイクルに有用である。前記樹脂はテレフタル酸とエチレングリコールで製造されるホモポリマー(homopolymer)であり得るので、テレフタル酸から誘導された酸部分およびエチレングリコールから誘導されたジオール部分の上限は100モル%であり、テレフタル酸から誘導された酸部分あるいはエチレングリコールから誘導されたジオール部分が100モル%未満の場合、5モル%以内で上述した共単量体から誘導された酸部分あるいはジオール部分を含み得る。中でも5モル%以内のイソフタル酸から誘導された酸部分および/または5モル%以内のシクロヘキサンジメタノールから誘導されたジオール部分を含み得る。
【0032】
前記ポリエステル樹脂は結晶化温度が130℃~160℃のリサイクルポリエチレンテレフタレートと混合されて前記リサイクルポリエチレンテレフタレートの結晶化速度を効率よく調節することができる。
【0033】
前記ポリエステル樹脂は融点が250℃以上のリサイクルポリエチレンテレフタレートと混合されて加工性に優れたポリエステル樹脂混合物を提供することができる。
【0034】
前記一実施形態によるポリエステル樹脂は、ジカルボン酸あるいはその誘導体とエチレングリコールおよび共単量体(共単量体はシクロヘキサンジメタノール、ジオールAおよびジオールBを含む)を含むジオールが重合され、ジカルボン酸あるいはその誘導体から誘導された酸部分とエチレングリコールから誘導されたジオール部分、シクロヘキサンジメタノールから誘導されたジオール部分、ジオールAから誘導されたジオール部分およびジオールBから誘導されたジオール部分が繰り返される構造を有する。
【0035】
前記ポリエステル樹脂は全体ジオール部分に対してジオールAから誘導されたジオール部分およびジオールBから誘導されたジオール部分を0.2~30モル%で含むことにより、収縮特性に優れたポリエステル樹脂混合物を提供することができる。
【0036】
具体的には、前記ジオールAおよびジオールBから誘導されたジオール部分により前記ポリエステル樹脂内の残留応力と関係した一定水準以上の分子鎖の長さが長くなって前記ポリエステル樹脂混合物から製造されたポリエステルフィルムの延伸時に残留応力が大きくなり、このようなポリエステルフィルムに熱量が供給されると残留応力解消による収縮力が増加して高収縮率を示す。
【0037】
仮に、ジオールAおよびジオールBから誘導されたジオール部分が0.2モル%未満であれば、ポリエチレンテレフタレートの収縮特性を改善できず、高収縮率のポリエステルフィルムを提供することが難しく、ジオールAおよびジオールBから誘導されたジオール部分が30モル%を超えると前記ポリエステル樹脂の重合過程で反応性低下により所望する粘度を確保することが難しく、前記ポリエステル樹脂混合物から製造されたポリエステルフィルムの延伸過程で過延伸による白化現象が発生して熱収縮フィルムとして価値が落ちる問題があり得る。
【0038】
前記ポリエステル樹脂は結晶性樹脂のポリエチレンテレフタレートと混合されても優れた収縮率を示すために、全体ジオール部分に対してジオールAから誘導されたジオール部分およびジオールBから誘導されたジオール部分を約0.2~30モル%、約0.5~30モル%、約1~30モル%、約2~30モル%、約3~30モル%、約4~30モル%、約5~30モル%、約6~30モル%、約7~30モル%、約8~30モル%、約9~30モル%あるいは約10~30モル%で含み得る。
【0039】
前記ポリエステル樹脂は上述した効果をより極大化するために全体ジオール部分に対して0.1~15モル%のジオールAから誘導されたジオール部分および/または0.1~15モル%のジオールBから誘導されたジオール部分を含み得る。
【0040】
一方、前記ポリエステル樹脂は全体ジオール部分に対してシクロヘキサンジメタノールから誘導されたジオール部分を1~35モル%、1~32モル%あるいは1~30モル%で含み得る。このような範囲内で優れた収縮特性および透明性を有するポリエステル樹脂混合物を提供することができる。
【0041】
前記シクロヘキサンジメタノールは1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,2-シクロヘキサンジメタノールまたはこれらの混合物であるかあるいは1,4-シクロヘキサンジメタノールであり得る。
【0042】
前記ポリエステル樹脂は全体ジオール部分に対してジエチレングリコールから誘導されたジオール部分を2~15モル%、3~15モル%、4~15モル%、5~15モル%あるいは10~13モル%で含み得る。前記ポリエステル樹脂内に導入されたジエチレングリコールから誘導されたジオール部分はポリエステル樹脂の重合時に2個のエチレングリコールが反応してジエチレングリコールを形成し、このようなジエチレングリコールがジカルボン酸あるいはその誘導体と反応して導入されたものであり得る。しかし、これに限定されるものではなく、ジエチレングリコールから誘導されたジオール部分の含有量を上述した範囲に調節するために、前記ポリエステル樹脂の製造時にエチレングリコール以外の共単量体としてジエチレングリコールを添加して形成されたものであり得る。前記ポリエステル樹脂はジエチレングリコールから誘導されたジオール部分を上述した範囲で含むことで、優れた収縮特性および透明性を有するポリエステル樹脂混合物を提供することができる。特に、前記ポリエステル樹脂の製造時にエチレングリコール以外の共単量体としてジエチレングリコールを添加してジエチレングリコールから誘導されたジオール部分を多量含むと、ポリエステルフィルムの伸び率が向上して高倍率延伸が可能になり、薄い厚さの収縮特性が非常に優れたポリエステルフィルムを提供することができる。
【0043】
前記ポリエステル樹脂で上述したジオール部分を除いた残りジオール部分はエチレングリコールから誘導されたジオール部分であり得る。
【0044】
一方、前記エチレングリコール以外の共単量体には上述した単量体の他にポリエステル樹脂の製造に通常使用されるジオールが含まれ得る。このようなジオールの具体的な例は上述したポリエチレンテレフタレートに使用できると羅列したジオールなどであり得る。
【0045】
一例として、前記ポリエステル樹脂はエチレングリコール以外の共単量体として1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-メチレン-1,3-プロパンジオール、2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-イソプロピル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3-メチル-2,4-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、ジエチレングリコールまたはこれらの混合物を使用して製造されることにより、前記共単量体から誘導されたジオール部分をさらに含み得る。このような共単量体は製造されるポリエステル樹脂の成形性やその他物性などを改善するために適切に使用できる。しかし、前記エチレングリコール以外の共単量体は上述したシクロヘキサンジメタノール、ジオールAおよびジオールB、あるいは必要に応じてジエチレングリコールの組み合わせたものが上述した物性を充足するのに有利である。前記共単量体にシクロヘキサンジメタノール、ジオールAおよびジオールB、あるいは必要に応じてジエチレングリコール以外の他のジオールが含まれる場合、その含有量は全体共単量体に対して10モル%以下、5モル%以下あるいは2モル%以下であり得る。
【0046】
前記ポリエステル樹脂も上述したポリエチレンテレフタレートとともにこれを製造するためのジカルボン酸あるいはその誘導体が主にテレフタル酸あるいはその誘導体であり得、テレフタル酸あるいはその誘導体以外の共単量体を含み得る。前記共単量体の種類および使用含有量は上述したポリエチレンテレフタレートに使用できる共単量体の種類と使用含有量を参照して調節することができる。
【0047】
前記ポリエステル樹脂は上述した構造によって、オルトクロロフェノールに1.2g/dlの濃度で150℃で15分間溶解させて35℃で測定した固有粘度が約0.45~1.2dl/g、約0.55~1.0dl/g、約0.60~1.0dl/gあるいは約0.60~0.9dl/gであり得る。このような範囲内で前記ポリエステル樹脂は適切な分子量を有して優れた機械的物性を有し、温和な圧力および温度下でポリエチレンテレフタレートと混合して成形できる。
【0048】
前記ポリエステル樹脂は上述した構造によって、ガラス転移温度が60℃~80℃、62℃~78℃あるいは63℃~75℃であり得る。
【0049】
また、前記ポリエステル樹脂はこれに導入されたオリゴマーの含有量が全体ポリエステル樹脂面積に対して3.0面積%以下、2.0面積%以下、1.5面積%以下あるいは1.0面積%以下であり得る。前記オリゴマーは分子量が500~1000g/molの化合物を意味し、前記ポリエステル樹脂はオリゴマーを含まなくてもよいので、前記オリゴマー含有量の下限は0面積%であり得る。一例として、前記ポリエステル樹脂は全体ポリエステル樹脂面積に対して前記ポリエステル樹脂に導入されたオリゴマーの含有量が0.1~3面積%、0.1~2面積%、0.1~1.5面積%あるいは0.1~1.2面積%であり得る。このような範囲内で高温で延伸時オリゴマーの析出によってヘイズが増加することを防止して延伸後にも高透明性を維持し、後工程の印刷工程での不良率を最小化できるポリエステルフィルムを提供することができる。
【0050】
なお、前記ポリエステル樹脂は上述したジカルボン酸あるいはその誘導体と上述したジオールのエステル化反応またはエステル交換反応段階;および前記エステル化またはエステル交換反応生成物の重縮合反応段階により製造されることができる。
【0051】
前記エステル化反応またはエステル交換反応では触媒が必ずしも必要ではないが、反応時間短縮のために選択的に触媒が使用される。このような触媒としてはナトリウム、マグネシウムのメチラート(methylate);Zn、Cd、Mn、Co、Ca、Baなどの酢酸塩、ホウ酸塩、脂肪酸塩、炭酸塩;金属Mg;Pb、Zn、Sb、Geなどの酸化物などを例示できる。
【0052】
前記エステル化反応またはエステル交換反応はバッチ(batch)式、半-連続式または連続式で行われ得、それぞれの原料は別に投入されるが、ジオールにジカルボン酸あるいはその誘導体を混合したスラリー形態で投入することが好ましい。前記ジオールはジカルボン酸あるいはその誘導体1モルに対して約1.2~3.0モルの割合で投入される。
【0053】
前記エステル化反応またはエステル交換反応開始前のスラリーにあるいは反応完了後の生成物に重縮合触媒、安定剤、呈色剤、結晶化剤、酸化防止剤、分岐化剤(branching agent)などを添加できる。しかし、上述した添加剤の投入時期はこれに限定されるものではなくポリエステル樹脂の製造段階中の任意の時点に投入することもできる。
【0054】
前記重縮合触媒としては、通常のチタン、ゲルマニウム、アンチモン、アルミニウム、スズ系化合物などを一つ以上適宜選択して使用できる。この中で、チタン系触媒は多量のシクロヘキサンジメタノールをテレフタル酸あるいはその誘導体と共重合させ得、アンチモン系触媒に比べて少量を使用しても同等な水準の反応を遂行でき、ゲルマニウム系触媒より安い利点を有する。有用なチタン系触媒としては、テトラエチルチタネート、アセチルトリプロピルチタネート、テトラプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、ポリブチルチタネート、2-エチルヘキシルチタネート、オクチレングリコールチタネート、ラクテートチタネート、トリエタノールアミンチタネート、アセチルアセトネートチタネート、エチルアセトアセチックエステルチタネート、イソステアリルチタネート、チタニウムジオキシド、チタニウムジオキシド/シリコンジオキシド共沈物、チタニウムジオキシド/ジルコニウムジオキシド共沈物などを例示できる。前記重縮合触媒の使用量は所望する色相と使用される安定剤および呈色剤に応じて変わるが、重合されたポリエステル樹脂の色相に影響を及ぼすので、ポリエステル樹脂の重量に対してチタン元素量が約1~100ppm、さらに好ましくは約1~50ppmになるように使用される。前記チタン元素量が約1ppm未満であれば所望する重合度に到達できず、約100ppmを超えるとポリエステル樹脂の色相が黄色くなって透明なポリエステルフィルムを得るのが難しくなる。
【0055】
前記安定剤としては、一般的にリン酸、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリエチルホスホノアセテートなどのリン系化合物を使用でき、その添加量はリン元素量を基準としてポリエステル樹脂の重量に対して10~200ppmであり得る。前記安定剤の添加量が10ppm未満であれば、安定化効果が不十分であり、ポリエステル樹脂の色相が黄色く変わる恐れがあり、200ppmを超えると所望する高重合度のポリエステル樹脂を得ることができない恐れがある。また、ポリエステル樹脂の色相を向上させるために添加される呈色剤としては、酢酸コバルト、コバルトプロピオネートなどの通常の呈色剤を例示でき、その添加量はコバルト元素量を基準としてポリエステル樹脂の重量に対して10~200ppmであり得る。必要に応じて、有機化合物呈色剤としてアントラキノン(Anthraquionone)系化合物、ペリノン(Perinone)系化合物、アゾ(Azo)系化合物、メチン(Methine)系化合物などを使用でき、市販の製品としてはClarient社のPolysynthren Blue RLSあるいはClarient社のSolvaperm Red BBなどのトナーを使用できる。前記有機化合物呈色剤の添加量はポリエステル樹脂重量に対して0~50ppmに調節できる。仮に、呈色剤を前記範囲の外の含有量で使用するとポリエステル樹脂の黄色を十分に分けることができないかまたは物性を低下させ得る。
【0056】
前記結晶化剤としては結晶核剤、紫外線吸収剤、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド樹脂などを例示できる。前記酸化防止剤としてはヒンダードフェノール系酸化防止剤、ホスファート系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤あるいはこれらの混合物などを例示できる。前記分岐化剤としては3以上の官能基を有する通常の分岐化剤として、例えば、無水トリメリット酸(trimellitic anhydride)、トリメチロールプロパン(trimethylol propane)、トリメリト酸(trimellitic acid)あるいはこれらの混合物などを例示できる。
【0057】
前記エステル化反応は、約200~300℃、約230~280℃、約230~265℃あるいは約245~255℃の温度および0~10.0kgf/cm(0~7355.6mmHg)、0~5.0kgf/cm(0~3677.8mmHg)、0.1~3.0kgf/cm(73.6~2206.7mmHg)あるいは1.0~3.0kgf/cm(736~2206.7mmHg)の圧力条件で実施できる。そして、前記エステル交換反応は150~270℃あるいは180~260℃の温度および0~5.0kgf/cm(0~3677.8mmHg)あるいは0.1~3.0kgf/cm(73.6~2206.7mmHg)の圧力条件で実施できる。ここで括弧の外に記載された圧力はゲージ圧力を意味し(kgf/cm単位で記載される)、括弧内に記載された圧力は絶対圧力を意味する(mmHg単位で記載される)。
【0058】
前記反応温度および圧力が前記範囲を外れる場合、ポリエステル樹脂の物性が低下する恐れがある。前記反応時間(平均滞留時間)は通常1~24時間あるいは100~300分であり、反応温度、圧力、使用するジカルボン酸あるいはその誘導体に対するジオールのモル比に応じて変わる。
【0059】
前記エステル化またはエステル交換反応により得た生成物は重縮合反応によってより高い重合度のポリエステル樹脂で製造される。一般に、前記重縮合反応は150~300℃、200~290℃、260~290℃、260~280℃あるいは265~275℃の温度および400~0.01mmHg、100~0.05mmHgあるいは10~0.1mmHgの減圧条件で行われる。ここで圧力は絶対圧力の範囲を意味する。前記400~0.01mmHgの減圧条件は重縮合反応の副産物のグリコールなどと未反応物のシクロヘキサンジメタノールなどを除去するためのものである。したがって、前記減圧条件が前記範囲を外れる場合、副産物および未反応物の除去が不充分である恐れがある。また、前記重縮合反応温度が前記範囲を外れる場合、ポリエステル樹脂の物性が低下する恐れがある。前記重縮合反応は、所望する固有粘度に到達するまで必要な時間の間、例えば、平均滞留時間1~24時間の間実施される。
【0060】
ポリエステル樹脂内に残留するシクロヘキサンジメタノールなどの未反応物の含有量を減少させる目的としてエステル化反応あるいはエステル交換反応末期あるいは重縮合反応初期、すなわち樹脂の粘度が十分に高くない状態で真空反応を意図的に長く維持して未反応の原料を系外に流出させ得る。樹脂の粘度が高くなると、反応器内の残留している原料が系外に抜け出にくくなる。一例として、重縮合反応前のエステル化反応あるいはエステル交換反応により得た反応生成物を約400~1mmHgあるいは約200~3mmHg減圧条件で0.2~3時間の間放置してポリエステル樹脂内に残留するエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノールなどの未反応物を効果的に除去することができる。この時、前記生成物の温度はエステル化反応あるいはエステル交換反応温度、または重縮合反応温度と同じであるかあるいはその間の温度に調節することができる。
【0061】
上記のように未反応原料を系外に流出させる工程を追加することで、ポリエステル樹脂内に残留するシクロヘキサンジメタノールなどの未反応物の含有量を減少させることができ、その結果、目的とする物性をより優れた水準に実現できるポリエステル樹脂を製造することができる。
【0062】
一方、重縮合反応後ポリマーの固有粘度は0.30~1.0dl/gであることが適当である。固有粘度が0.30dl/g未満の場合、固相反応での反応速度が顕著に低くなり、固有粘度が1.0dl/gを超える場合、溶融重合中の溶融物の粘度が上昇するに伴って攪拌機と反応器の間での剪断応力(Shear Stress)によりポリマーが変色する可能性が増加し、アセトアルデヒドのような副反応物質も増加する。
【0063】
前記一実施形態によるポリエステル樹脂は必要に応じて重縮合反応後に固相反応を追加で行ってより高い重合度を有することができる。
【0064】
具体的には、重縮合反応により得たポリマーを反応器の外に吐出して粒子化する。粒子化する方法はストランド状に押出後冷却液で固化後にカッターで切断するストランドカッティング法や、ダイ穴を冷却液に浸漬させて、冷却液中に直接押出してカッターで切断するアンダーウォーターカッティング法を用いることができる。一般的にストランドカッティング法では問題なくカッティングするためには冷却液の温度を低く維持し、Strandがよく固化されなければならない。アンダーウォーターカッティング法では冷却液の温度をポリマーに合わせて維持し、ポリマーの形状を均一にした方が良い。しかし、結晶性ポリマーの場合、吐出中の結晶化を誘導するためにわざと冷却液の温度を高く維持することもできる。
【0065】
粒子化されたポリマーの水洗浄によりシクロヘキサンジメタノールなどの未反応した原料のうち水に溶解する原料の除去が可能である。粒子が小さいほど粒子の重量に対して表面積が広くなるので粒子の大きさは小さいほど有利である。このような目的を達成するために粒子は約15mg以下の平均重量を有するように製造される。一例として、前記粒子化されたポリマーはポリマーのガラス転移温度と同じであるかあるいは約5~20℃程度低い温度の水に5分~10時間放置して水洗浄する。
【0066】
粒子化されたポリマーは固相反応中に融着されることを防止するために結晶化段階を経る。大気、不活性ガス、水蒸気、水蒸気含有不活性ガスの雰囲気または溶液の中で行うことが可能であり、110℃~210℃あるいは120℃~210℃で結晶化処理をする。温度が低いと粒子の結晶が生成される速度が過度に遅くなり、温度が高いと結晶が作られる速度より粒子の表面が溶融する速度が速いため粒子どうしがくっ付いて融着を発生させる。粒子が結晶化することにより粒子の耐熱度が上昇するので結晶化をいくつの段階に分けて段階別に温度を上昇させて結晶化することも可能である。
【0067】
固相反応は窒素、二酸化炭素、アルゴンなど不活性ガス雰囲気下または400~0.01mmHgの減圧条件および180~220℃の温度で平均滞留時間1~150時間の間行われる。このような固相反応により分子量がさらに上昇し、溶融反応で反応せず残存している原料物質と反応中に生成された環状オリゴマー、アセトアルデヒドなどが除去される。
【0068】
前記結晶化されたポリマーはオルトクロロフェノールに1.2g/dlの濃度で150℃で15分間溶解させて35℃で測定した固有粘度が0.65dl/g以上、0.70dl/g以上、0.75dl/g以上あるいは0.80dl/g以上の値に到達するように固相重合する。
【0069】
一方、前記ポリエステル樹脂混合物はポリエチレンテレフタレートとしてリサイクルポリエチレンテレフタレートを約50重量%まで含んでも特別な添加剤なしで透明でかつ熱収縮特性に優れたポリエステルフィルムを提供することができる。そのため、前記ポリエステル樹脂混合物でポリエチレンテレフタレートとポリエステル樹脂を混合する比率は特に限定されない。
【0070】
非制限的な例として、前記ポリエステル樹脂混合物はポリエチレンテレフタレートとポリエステル樹脂を1:99~99:1、1:99~80:20、1:99~70:30、1:99~60:40、1:99~50:50あるいは5:95~50:50の重量比で含み得る。
【0071】
一例として、前記ポリエステル樹脂混合物はポリエチレンテレフタレートとポリエステル樹脂を1:99~50:50あるいは5:95~50:50の重量比で含む場合、優れた収縮特性を示すポリエステルフィルムを提供することができる。
【0072】
前記ポリエステル樹脂混合物はポリエチレンテレフタレートおよびポリエステル樹脂内に含まれた全体シクロヘキサンジメタノールから誘導されたジオール部分をポリエチレンテレフタレートおよびポリエステル樹脂内に含まれた全体ジオール部分に対して0.5~32モル%に調節して透明性および収縮特性に優れたポリエステルフィルムを提供でき、印刷時ポリエステルフィルムが優れた耐化学性を示すことができる。
【0073】
前記一実施形態によるポリエステル樹脂混合物はリサイクルポリエチレンテレフタレートを含んでも、リサイクルポリエチレンテレフタレートに対するポリエステル樹脂の混和性が非常に優れ、リサイクルポリエチレンテレフタレートの物性を補完するための添加剤が必要ない利点がある。しかし、非制限的な例として、前記ポリエステル樹脂混合物は本発明が属する技術分野で通常採用する添加剤を含み得る。
【0074】
一方、発明の他の一実施形態によれば、前記ポリエステル樹脂混合物から形成されたポリエステルフィルムとその製造方法が提供される。
【0075】
前記ポリエステルフィルムは前記一実施形態によるポリエステル樹脂混合物から形成することにより透明でかつ優れた収縮特性を示すことができる。
【0076】
一例として、前記ポリエステルフィルムは、厚さが50μmである時ASTM D1003-97に従って測定されたヘイズが5%以下、4%以下、3%以下、2.5%以下、2%以下あるいは1%以下で高透明性を示すことができる。理論的にはヘイズは0%であることが最も好ましいので、下限は0%以上であり得る。
【0077】
また、前記ポリエステルフィルムは収縮開始温度が65℃以下で低いためPET容器の熱収縮ラベルなどとして使用される場合、PET容器の変形または白濁現象なしで優れた品質で成形されることができる。その上、前記ポリエステルフィルムは95℃で55%以上、60%以上、65%以上、70%以上あるいは75%以上の最大収縮率を示して優れた品質の熱収縮フィルムを提供することができる。前記最大収縮率の上限は特に限定されず、一例として85%以下であり得る。
【0078】
前記ポリエステルフィルムは単層フィルムであるかあるいは2以上の層を含む多層フィルムで構成される。
【0079】
前記ポリエステルフィルムが単層フィルムの場合、ポリエチレンテレフタレートおよびポリエステル樹脂が1:99~50:50あるいは5:95~50:50の重量比で混合されたポリエステル樹脂混合物により製造されることが優れた収縮特性を示すのに適する。
【0080】
前記ポリエステルフィルムが多層フィルムである場合、前記多層フィルムは基材層(core layer)および樹脂層(skin layer)を含み得る。
【0081】
前記樹脂層は基材層の一面あるいは両面に形成され、ポリエステルフィルムの少なくともいずれか一つの表面は樹脂層であり得る。このような構造で基材層は優れた収縮特性を示すようにポリエチレンテレフタレートとポリエステル樹脂の種類および配合比を調節し、樹脂層は結晶性を示すようにポリエチレンテレフタレートとポリエステル樹脂の種類および配合比を調節すれば、収縮特性に優れ、かつPET容器とリサイクルストリームに供給されても融着現象が発生せずPET容器とリサイクルが可能な熱収縮フィルムを提供することができる。
【0082】
一例として、基材層はポリエチレンテレフタレートおよびポリエステル樹脂を0:100~50:50の重量比で含み、樹脂層はポリエチレンテレフタレートおよびポリエステル樹脂を10:90~100:0の重量比で含むと優れた収縮特性と結晶性を同時に示すことができる。
【0083】
一方、前記ポリエステルフィルムは2以上の基材層および2以上の樹脂層を含み得る。非制限的な例として、前記ポリエステルフィルムは第1基材層上に第1樹脂層が形成され、前記第1樹脂層上に第2基材層が形成され、さらに第2基材層上に第2樹脂層が形成された構造を有することができる。
【0084】
前記ポリエステルフィルムが単層フィルムまたは多層フィルムであるか否かに関係なく前記ポリエステルフィルム全体に含まれたポリエチレンテレフタレートおよびポリエステル樹脂の重量比は5:95~50:50に調節されて優れた収縮特性と結晶性を同時に示すことができる。
【0085】
以下、前記ポリエステルフィルムの製造方法について詳細に説明する。
【0086】
前記ポリエステルフィルムの製造方法は、ポリエステル樹脂混合物を成形して未延伸フィルムを製造する段階;および前記未延伸フィルムを延伸する段階を含む。
【0087】
前記ポリエステル樹脂混合物はポリエチレンテレフタレートとポリエステル樹脂をチップあるいはペレット形態で準備して乾燥した後攪拌機により混合して提供される。具体的には、ポリエチレンテレフタレートおよびポリエステル樹脂は二軸押出機によりチップまたはペレット形態で成形される。そして、チップまたはペレット形態のポリエチレンテレフタレートを約120~160℃で乾燥し、これとは別にチップまたはペレット形態のポリエステル樹脂を約50~75℃で乾燥した後、攪拌機を用いて前記構成成分を混合してポリエステル樹脂混合物を製造する。またはチップまたはペレット形態のポリエチレンテレフタレートとチップまたはペレット形態のポリエステル樹脂を約50~160℃で共に乾燥した後、攪拌機を用いて前記構成成分を混合してポリエステル樹脂混合物を製造することもできる。
【0088】
その後、準備されたポリエステル樹脂混合物を成形して未延伸フィルムを製造する。ポリエステル樹脂混合物は高分子の熱分解を最小化して高分子の長鎖構造を維持して後続工程の延伸工程でフィルムが損傷または破断する問題を最小化できるように約230℃~310℃、約240℃~300℃、あるいは約250℃~290℃の温度で成形する。
【0089】
具体的には、チップまたはペレット形態のポリエチレンテレフタレートとポリエステル樹脂の混合物を押出機に供給し、シリンダーの温度を上述した範囲に調節して未延伸フィルムを得る。
【0090】
仮に、前記ポリエステルフィルムが多層構造であれば、2以上の層は順次あるいは同時に成形できる。すなわち、一つの層を成形した後その層上に他の層を成形する方式で各層を順次成形したり、あるいは2以上の層を一度に共押出などの方式で成形することができる。
【0091】
前記のような方法で得られた未延伸フィルムは適切な温度に冷却する。特に制限されるものではないが、製造された未延伸フィルムは約10~70℃の冷却ロールに密着した後巻かれて次の工程に供給される。
【0092】
前記未延伸フィルムを延伸する段階では前記未延伸フィルムを縦方向および/または横方向に延伸して一軸延伸フィルムあるいは二軸延伸フィルムを提供する。
【0093】
前記未延伸フィルムの延伸温度は前記ポリエステル樹脂のガラス転移温度以上の温度であり得る。具体的には、前記未延伸フィルムは55℃~180℃あるいは60℃~170℃の温度で延伸される。
【0094】
前記未延伸フィルムは高倍率で延伸される。一例として、前記未延伸フィルムは横方向延伸比1.5倍~6倍または縦方向延伸比1.1倍~5倍で一軸延伸される。また、他の一例として、前記未延伸フィルムは横方向延伸比1.5倍~6倍および縦方向延伸比1.1倍~5倍で二軸延伸される。
【0095】
前記ポリエステルフィルムはPET容器とともにリサイクルストリームに供給されても融着問題が発生しないように半結晶化時間が0.1分~100分、0.1~80分、0.1~70分、0.1~60分、0.1~50分、0.1~40分、0.1分~30分、0.1~20分、0.1分~10分、0.1分~7分、0.1分~6分、0.1分~5分、0.1分~4分、0.1分~3分、0.1分~2分、0.1分~1分あるいは0.5分~1分であり得る。
【0096】
前記ポリエステルフィルムの厚さは特に限定されないが、3μm~350μmであり得る。仮に、前記ポリエステルフィルムが多層フィルムの場合、前記基材層厚さに対する前記樹脂層厚さの百分率(樹脂層の厚さ/基材層の厚さ×100)は2.5%~50%であり得、前記ポリエステルフィルムの厚さに対する前記樹脂層厚さの百分率(樹脂層の厚さ/ポリエステルフィルムの厚さ×100)は1%~50%であり得る。
【0097】
前記ポリエステルフィルムは本発明が属する多様な技術分野に適用できるが、特に優れた収縮特性および透明性によりPET容器などの熱収縮ラベルとして有用に使用されると期待される。
【0098】
以下、発明の具体的な実施例により発明の作用、効果をより具体的に説明する。ただし、これは発明の例示として提示されたものであり、これによって発明の権利範囲はいかなる意味でも限定されるものではない。
【0099】
下記の物性は次のような方法により測定された。
【0100】
(1)固有粘度(IV)
試料をo-chlorophenolに1.2g/dlの濃度で150℃で15分間溶解させた後Ubbelohde粘度管を用いて試料の固有粘度を測定した。具体的には、粘度管の温度を35℃に維持し、粘度管の特定内部区間の間を溶媒(solvent)が通過するのにかかる時間(efflux time)tと溶液(solution)が通過するのにかかる時間tを求めた。その後、t値とt値を式1に代入して比粘度(specific viscosity)を算出し、算出された比粘度値を式2に代入して固有粘度を算出した。
【0101】
【数1】
【0102】
前記式2において、AはHuggins定数として0.247、cは濃度値として1.2g/dlの値がそれぞれ使用された。
【0103】
(2)ガラス転移温度(glass transition temperature;Tg)
ポリエステル樹脂のTgをDSC(differential scanning calorimetry)により測定した。測定装置としてはMettler Toledo社のDSC 1モデルを用いた。具体的には、分析に使用するポリエステル樹脂試料を除湿乾燥機(Moretto社のモデル名D2T)を用いて60℃の窒素雰囲気下で5~10時間の間乾燥した。したがって、Tgは試料内に残留する水分含量が500ppm未満の状態で測定した。乾燥された試料約6~10mgを取って、アルミニウムパンに満たして、常温で280℃まで10℃/minの速度で加熱して(1次スキャン)、280℃で3分間アニーリング(annealing)した。その後、試料を常温まで急速冷却させた後、再び常温で280℃まで10℃/minの速度で加熱して(2次スキャン)DSC曲線を得た。そして、Mettler Toledo社で提供する関連プログラム(STAReソフトウェア)のDSCメニューにあるglass transition機能によりDSC 2次スキャンでTg値を分析した。この時、Tgは2次スキャン時に得たDSC曲線が昇温過程のうち初めて階段状に変化するところで曲線の最大傾斜が現れる温度で規定され、スキャンの温度範囲はプログラムが計算するmidpointの-20℃~15℃から15℃~20℃に設定された。
【0104】
(3)オリゴマーの含有量
製造例で製造したポリエステル樹脂0.3gをo-chlorophenol 15mLに入れて150℃で15分間溶解させた後、常温に冷却した後ここにクロロホルム9mLを追加した。そして、Tosoh社のカラムおよびRI detectorを用いてゲル透過クロマトグラフィーを行った。このように得られたポリエステル樹脂の分子量グラフにより、全体分子量面積に対する500~1000g/molの分子量面積の比率を計算してポリエステル樹脂のオリゴマー含有量として規定した。
【0105】
(4)最大収縮率
実施例および比較例で製造したポリエステルフィルムを5cm×5cmの正方形状に切り出した後、これを95℃の温水中に10秒間浸漬させた後取り出した。そして、下記式3の初期長さに対する減った長さの比率を計算して95℃での最大収縮率として規定した。
【0106】
[式3]
最大収縮率(%)=(初期長さ-浸漬後測定した長さ)/初期長さ×100
(5)収縮開始温度
実施例および比較例で製造したポリエステルフィルムを5cm×5cmの正方形状に切り出した後、これを55℃~100℃温度範囲で各温度の温水中に10秒間浸漬させた後取り出した。そして、式3の初期長さに対する減った長さの比率を計算して2%以下に収縮した温度を収縮開始温度として規定した。
【0107】
(6)ヘイズ
実施例および比較例で製造したポリエステルフィルムを10cm×10cm(縦方向長さ×横方向長さ)の大きさで切って試験片を準備した。前記試験片に対してMinolta社のCM-3600A測定機を用いてASTM D1003-97測定法で前記試験片の平行透過率と拡散透過率を測定した。透過率は平行透過率と拡散透過率を合計した値で規定され、ヘイズは透過率に対する拡散透過率の百分率(ヘイズ=拡散透過率/透過率×100)で規定される。したがって、前記試験片の平行透過率と拡散透過率から透過率およびヘイズを求めた。
【0108】
(7)ポリエステルフィルムとPET容器の融着の有無
ポリエステルフィルムとポリエチレンテレフタレート容器(PET容器)を同時に体積密度(bulk density)が約250~600g/Lになるように粉砕してフレーク(flake)を得た。このように得られたポリエステルフォイル片とPET容器フレークを160℃で1時間の間放置してポリエステルフォイル片とPET容器フレークの間の融着の有無を肉眼で観察し、一部でも融着した部分が観察されると「O」で表し、観察されない場合は「X」で表した。
【0109】
(8)半結晶化時間
ポリエステルフィルムの半結晶化時間をDSC(differential scanning calorimetry)により測定した。具体的には、ポリエステルフィルムを140℃まで急激に加熱した後140℃で維持し、この時、結晶化の際に発生する全体発熱量の半分の発熱量が発生した時の時間(単位:分)を測定した。
【0110】
製造例1:ポリエステル樹脂の製造
カラムと、水によって冷却が可能なコンデンサが連結されている3kgバッチ反応器にテレフタル酸、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、4-(ヒドロキシメチル)シクロヘキシルメチル4-(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンカルボキシレート(以下、ジオールA)、および4-(4-(ヒドロキシメチル)シクロヘキシルメトキシメチル)シクロヘキシルメタノール(以下、ジオールB)を投入した。前記単量体は製造されたポリエステル樹脂に含まれた全体酸部分に対してテレフタル酸から誘導された酸部分が100モル%であり、全体ジオール部分に対して1,4-シクロヘキサンジメタノールから誘導されたジオール部分が7モル%、ジエチレングリコールから誘導されたジオール部分が12モル%、ジオールAから誘導されたジオール部分が13モル%、ジオールBから誘導されたジオール部分が2モル%、エチレングリコールから誘導されたジオール部分が66モル%になるように適切な含有量で投入した。そして、触媒としてテトラブチルチタネート0.3g、安定剤としてリン酸(phosphoric acid)0.4g、呈色剤として酢酸コバルト(cobalt acetate)2.1gを使用した。次に、反応器に窒素を注入して反応器の圧力が常圧より1.0kgf/cmだけ高い加圧状態にした(絶対圧力:1495.6mmHg)。
【0111】
そして、反応器の温度を220℃まで90分にわたって上げ、220℃で2時間維持した後、260℃まで2時間にわたって上げた。その次、反応器内の混合物を肉眼で観察して混合物が透明になるまで反応器の温度を260℃に維持してエステル化反応を行った。エステル化反応が完了すると、加圧状態の反応器内の窒素を外部に排出して反応器の圧力を常圧に下げた後、反応器内の混合物を真空反応が可能な3kg反応器に送させた。
【0112】
そして、反応器の圧力を常圧状態で5Torr(絶対圧力:5mmHg)まで30分にわたって下げ、同時に反応器の温度を270℃まで1時間にわたって上げ、反応器の圧力を1Torr(絶対圧力:1mmHg)以下に維持しながら重縮合反応を実施した。重縮合反応の初期には攪拌速度を速く設定するか、重縮合反応の進行に伴う反応物の粘度上昇により攪拌力が弱くなるかあるいは反応物の温度が設定した温度以上に上がる場合、攪拌速度を適切に調節することができる。前記重縮合反応は反応器内の混合物(溶融物)の固有粘度(IV)が0.77dl/gになるまで行った。反応器内の混合物の固有粘度が所望する水準に到達すると、混合物を反応器外部に吐出してストランド(strand)化し、これを冷却液で固化後平均重量が12~14mg程度になるように粒子化した。
【0113】
製造例2~8および比較製造例1~4:ポリエステル樹脂の製造
ポリエステル樹脂内の全体ジオール部分に対する1,4-シクロヘキサンジメタノールから誘導されたジオール部分、ジエチレングリコールから誘導されたジオール部分、ジオールAから誘導されたジオール部分、ジオールBから誘導されたジオール部分の含有量を表1に記載された通りに変更したことを除いては、製造例1と同様の方法でポリエステル樹脂を製造した。
【0114】
【表1】
【0115】
前記表1において、CHDMは全体ジオール部分に対して1,4-シクロヘキサンジメタノールから誘導されたジオール部分のモル%であり、DEGは全体ジオール部分に対してジエチレングリコールから誘導されたジオール部分のモル%であり、ジオールAは全体ジオール部分に対してジオールAから誘導されたジオール部分のモル%であり、ジオールBは全体ジオール部分に対してジオールBから誘導されたジオール部分のモル%であり、残りのジオール部分はエチレングリコールから誘導されたジオール部分である。
【0116】
実施例1:ポリエステル樹脂混合物およびポリエステルフィルムの製造
1)ポリエステル樹脂混合物の製造
前記製造例1で製造したポリエステル樹脂をリサイクルPET樹脂と95:5の重量比で混合してポリエステル樹脂混合物を製造した。
【0117】
具体的には、廃プラスチックを粉砕および洗浄して得たフレークを溶融押出して再ペレット化したリサイクルPET樹脂を別にペレット化した前記ポリエステル樹脂と常温で乾式で混合し、50℃~150℃の温度で乾燥してポリエステル樹脂混合物を製造した。
【0118】
リサイクルPET樹脂は廃プラスチックが回収された地域、廃プラスチックを分類する方法、およびそれを再ペレット化する方法によってその組成が多様である。本実験で使用したリサイクルPET樹脂はテレフタル酸およびイソフタル酸とエチレングリコールで製造されるコポリマーとして、イソフタル酸の含有量は全体ジカルボン酸に対して3モル%以内であり、固有粘度(IV)が0.74dl/gであり、結晶化温度が130℃であり、融点が250℃であった。
【0119】
前記ポリエステル樹脂をリサイクルPET樹脂と95:5の重量比で混合して製造したポリエステル樹脂混合物は基材層形成用ポリエステル樹脂混合物として使用し、上述した方法と同様の方法により前記製造例1で製造したポリエステル樹脂をリサイクルPET樹脂と90:10重量比で混合して樹脂層形成用ポリエステル樹脂混合物を製造した。
【0120】
2)ポリエステルフィルムの製造
基材層形成用ポリエステル樹脂混合物と樹脂層形成用ポリエステル樹脂混合物を260℃~290℃の温度でダイにより共押出した後、20℃~50℃に冷却して基材層の両面に第1および第2樹脂層が形成された3層構造の未延伸フィルムを製造した。その後、前記未延伸フィルムを75℃~90℃に再加熱して横方向に5倍延伸してポリエステルフィルムを製造した。
【0121】
製造されたポリエステルフィルムの基材層の厚さは40μmであり、各樹脂層の厚さは5μmであった。
【0122】
実施例2~13および比較例1~7:ポリエステル樹脂混合物およびポリエステルフィルムの製造
ポリエステル樹脂の種類および基材層形成用ポリエステル樹脂混合物と樹脂層形成用ポリエステル樹脂混合物内のリサイクルPET樹脂の含有量を下記表2に記載された通りに変更したことを除いては、実施例1と同様の方法でポリエステル樹脂混合物とポリエステルフィルムを製造した。
【0123】
【表2】
【0124】
試験例:ポリエステルフィルムの物性評価
実施例および比較例で製造したポリエステルフィルムを上述した方法により評価し、その結果を表3に記載した。
【0125】
【表3】
【0126】
前記表3を参照すると、実施例1~13はジオールAおよびジオールBから誘導されたジオール部分を全体ジオール部分に対して0.2~30モル%で含むポリエステル樹脂をリサイクルPET樹脂と混合することによって、リサイクルPET樹脂の結晶化速度を効果的に遅らせて高透明度のポリエステルフィルムを提供し、前記ポリエステルフィルムは上昇された結晶化温度によってPET容器フレークと160℃の高温で融着されないことが確認される。特に、実施例1~13によるポリエステルフィルムはリサイクルPET樹脂で製造されたフィルムに比べて収縮開始温度が非常に低く顕著に向上した最大収縮率を示し、熱収縮フィルムとして有用に使用されると期待される。
【0127】
これに対して、比較例1~5のポリエステルフィルムはジオールAおよびジオールBから誘導されたジオール部分を含まないポリエステル樹脂をリサイクルPET樹脂と混合して製造されることにより、十分に低い収縮開始温度および十分な収縮率を示さなかった。また、前記ジオールAおよびジオールBから誘導されたジオール部分を含まないポリエステル樹脂は非結晶性を示してリサイクルPET樹脂の配合比が低くなると、非結晶性を示してPET容器フレークと融着されて持続的にリサイクルが可能なポリエステルフィルムを提供できないことが確認される。