(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-25
(45)【発行日】2024-10-03
(54)【発明の名称】球面光学部品を搭載するための装置
(51)【国際特許分類】
G02B 7/00 20210101AFI20240926BHJP
G02B 3/00 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
G02B7/00 F
G02B3/00 Z
(21)【出願番号】P 2022518948
(86)(22)【出願日】2020-09-14
(86)【国際出願番号】 EP2020075664
(87)【国際公開番号】W WO2021063664
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2023-06-09
(31)【優先権主張番号】102019006980.3
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】516087698
【氏名又は名称】トーツ・テクノロジーズ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】TOOZ TECHNOLOGIES GMBH
【住所又は居所原語表記】Turnstrasse 27, 73430 Aalen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】プロクナウ、イェンス
(72)【発明者】
【氏名】ピュッツ、イェルク
(72)【発明者】
【氏名】シンガー、ヴォルフガング
【審査官】瀬戸 息吹
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106353950(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 5/00 - 5/08
H04N 5/222 - 5/257
H04N 23/00
H04N 23/40 - 23/76
H04N 23/90 - 23/959
G02B 7/00
G02B 7/18 - 7/24
G02B 1/00 - 1/08
G02B 3/00 - 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の半径(R1)を有する第1の球面凸面を有する第1の光学要素(3)用のマウントを備えた第1のホルダ(2)と、
第2の半径(R2)を有する第2の球面凹面を有する第2の光学要素(5)用のマウントを備えた第2のホルダ(4)とを備える、球面光学部品を搭載するための装置(1)であって、
前記第1および第2のホルダ(2、4)の少なくとも1つは、
第3の半径(R3)を有する球面座面(6)を有しており、
前記第1のホルダ(2)に前記第1の光学要素(3)が収容され、かつ前記第2のホルダ(2)に前記第2の光学要素(5)が収容されたときに、前記
第1、第2、および第3の半径(R1、R2、R3)が共通の中心点を有するように、前記第1のホルダ(2)が前記第2のホルダ(4)上に支持される、装置。
【請求項2】
前記第1および第2のホルダ(2、4)が、前記
球面座面(6)において同軸に互いに相対的に移動可能である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記
球面座面(6)が球面キャップの形状を有する、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記第1のホルダ(2)または前記第2のホルダ(4)は、座面としての3点支持
を含む、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
光学要素(3、5)の1つは
、発生した真空
を介して個々の前記第1または第2のホルダ(2、4)に
収容されている、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
光学要素(3、5)の1つがばねクランプ(8)によって個々の
前記第1または第2のホルダ(2、4)に固定される、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記第1の光学要素(3)
の面と前記第2の光学要素(5)
の面との間のギャップ(7)の距離を設定するための手段を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記第1および第2のホルダ(2、4)の
うちの1つに
前記ギャップ(7)の距離を設定するための調整ネジ(9)が設けられており、
前記調整ネジは、光学要素(3、5)が配置される
前記第1および第2のホルダ(2、4)の
うちの1つの中央領域の外側に配置され、かつ
前記第1および第2のホルダ(4、2)
のうちの他の1つの前記
球面座面(6)に作用する、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記第1および第2のホルダ(2、4)の
うちの1つにある調整ネジ(9)が、光学要素(3、5)が配置される中央領域の内側の周縁部に配置され、かつ光学要素(3、5)に作用する、請求項7に記載の装置。
【請求項10】
測定システム(11)をさらに備え、前記測定システム(11)は、中心厚さ(7)を決定するように、従って、
前記第1の光学要素(3)が前記第1のホルダ(2)に収容され、かつ前記第2の光学要素(5)が前記第2のホルダ(2)に収容されているときの前記第1および第2の光学要素(3、5)
の面間の距離を決定するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの球面光学部品を搭載するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
接合する光学部品を3つの空間方向に互いに独立して位置決めすることが知られている。例えば、2つのレンズ要素の接合グループを作成する場合、接合する一方の表面に可溶性パテが塗布される。2つのレンズ要素は共に接合され、レンズ要素を互いに相対的に移動させることによって、閉じ込められた気泡が押し出される。次に、レンズ要素の光軸が互いに位置合わせされる。しかしながら、レンズ要素の表面間の接合ギャップの厚さを正確に再現することができない。さらに、光軸方向にレンズ要素を非常に正確に位置決めすることは非常に困難であり、横方向の変位は、同時に表面の曲率による距離の変化をもたらす可能性がある。
【0003】
特許文献1は、光学要素用の球面ホルダを調整するための装置を開示している。この装置は、光共振器内の光学要素を調整するために使用される。装置では、光学要素は球面凸状ホルダに保持される。球面凸状ホルダは、球面凹状マウント内に位置している。ホルダは、外縁部に互いに90°オフセットされた4本の調整ネジによりマウントに接続されている。調整ネジを調整することで、マウント内の球面上でホルダを移動させて、所望の調整状態を設定することができる。設定された調整状態は、マウントの環状溝に挿入された非収縮性の接着剤によって恒久的に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、2つの球面光学部品を幾何学的に正確に、そして互いに規定された距離で調整して、それらを搭載するために、球面部品を搭載するための装置を提供するという課題を解決することを目的とする。距離は再現可能であり、任意選択的に調整可能であることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
目的は、請求項1の特徴的な構成により、本発明に従って達成される。従属請求項は、請求項1の特徴の有利な展開である。
球面光学部品を搭載するための装置は、半径R1を有する第1の球面凸面を有する第1の光学要素用のマウントを備えた第1のホルダと、半径R2を有する第2の球面光学凹面を有する第2の光学素子用のマウントを備えた第2のホルダとを備える。ホルダの少なくとも1つは、半径R3を有する座面を有し、第1の光学要素が第1のホルダに収容され、第2の光学要素が第2のホルダに収容されたときに、半径R1、R2、R3が共通の中心点を有するように第1のホルダが第2のホルダに支持される。
【0007】
半径R1、R2、R3は、好ましくは、ギャップが第1の要素の光学面と第2の要素の光学面との間の規定された距離を確立するように寸法決定される。
もちろん、本発明による効果を維持しつつ、半径R1が凹状であり、かつ半径R2が凸状であってもよい。
【0008】
球面および座面(単数または複数)が同心円状に配置されているため、これらの面の共通の中心点の周りの変位が阻止され、この中心点を中心とした要素の相対的な変位のみが可能である。
【0009】
この種の座面配置により、光学要素またはそれらの光軸を、(ホルダの互いに対する相対的な調整可能性の範囲内で)互いに相対的に位置決めすることができ、そのような位置決め動作は、半径R1、R2、R3によって決定される光学要素の球面間の距離の量に悪影響を与えるようなリスクがない。従って、本発明による装置によって、従来技術においてこれまで慣習的であったものよりもはるかに簡単かつ正確に、光学要素を相対的に位置決めすることが可能となる。
【0010】
位置決めは、特に、2つの光学要素を互いに位置合わせし、次に、それらを接着結合して基板複合体を形成する目的で行うことができる。
ホルダの座面は、好ましくは、光学要素が配置されるホルダの中央領域の外側に配置される。
【0011】
第1の実施形態では、座面は球面キャップの形態である。
第2の実施形態では、座面は3点支持によって形成される。
光学要素は、発生した真空によってホルダ内に収容することができる。
【0012】
代替的に、光学要素は、ばねクランプによってホルダに固定することができる。
有利には、第1の要素の光学面と第2の要素の光学面との間の距離を調整することができる。
【0013】
第1の実施形態では、調整ネジは、一方のホルダにおける光学要素が配置される中央領域の外側の周縁部に配置され、かつ他方のホルダの座面に作用する。
第2の実施形態では、調整ネジは、ホルダの1つにおける光学要素が配置される中央領域の内側の周縁部に配置され、かつ光学要素に作用する。
【0014】
好ましくは、光学要素間の規定された距離を決定するために、中心厚さを決定するように、従って、光学要素の光学表面間の距離を決定するように構成される測定システムが提供される。このようにして、光学要素を接合および位置決めするプロセスをチェックし、オープンループベースで制御し、必要に応じて、クローズドループベースで制御することができる。
【0015】
本発明による構成により、2つの光学要素を直列的なプロセスで位置決めおよび結合することが可能である。本発明による装置の支援により、光学要素の非常に正確かつ簡易な搭載を可能にしつつ、部品の相互に有利な球面座面配置を実現することができる。
【0016】
本発明は、図を参照して以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】球面部品を搭載するための本発明による装置の構成を示す図である。
【
図2】球面部品を搭載するための本発明による装置のさらなる構成を示す図である。
【
図3】本発明による装置の第1の詳細(光学要素のばねホルダ)を示す図である。
【
図4】本発明による装置の第2の詳細(光学要素に作用する調整ネジ)を示す図である。
【
図5】本発明による装置の第3の詳細(ホルダに作用する調整ネジ)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、球面部品1を搭載するための装置の構成を示す。第1のホルダ2は、半径R1を有する光学要素3の球面光学面が自由にアクセス可能となるように第1の光学要素3を収容する。この例では、この光学面は凸面である。第2のホルダ4は、半径R2を有する第2の光学要素5の球面光学面が自由にアクセス可能となるように第2の光学要素5を収容する。この例では、この光学面は凹面である。
【0019】
第1のホルダ2は、光学要素3が配置される中央領域の外側の周縁に、半径R3を有する凸状に形成された座面6を有する。さらに、第2のホルダ4は、光学要素5が配置される中央領域の外側の周縁に座面6を同様に有するが、この座面6は、同様に半径R3を有して凹状に形成される。
【0020】
第2のホルダ4は、第2の光学要素5の光学面が上方に露出するように底部に配置されている。収容された光学要素3を有する第1のホルダ2は、光学要素3の露出された光学面が第2の光学要素5の露出された光学面の上方に位置するように配置される。2つの光学要素3および5の光学面の位置は、光学面間に規定されたギャップ7(例えば、1μmまたは5μmまたは20μmまたは50μmまたは100μm)が実現されるように、ホルダ2および4の座面6によって所定の距離に設定されている。
【0021】
光学要素3および5の光学面の半径R1およびR2と、ホルダ2および4の座面6の半径R3とは、共通の中心点MPを有することが不可欠である。説明されているようにホルダ2および4が重ねて配置されると、光学要素3および5の光学面および座面6は、互いに同軸の位置をとる。従って、光学要素3および5の径方向への移動は阻止され、光学面間の距離はギャップ7によって規定される。従って、半径R3の座面6上での光学要素3および5の回転運動または相対的な変位のみが可能である。
【0022】
図1は、光学面間の距離に対応するギャップ7の大きさを決定するために、測定システム11を使用することが可能な例も示されている。このため、第1のホルダ2の中心には、穴10が設けられ、その穴1によって光学要素3および5の互いからの距離(中心厚さとも呼ばれる)を測定システム11を用いて決定することができる。中心厚さを決定するための測定システム11を用いて、2つの光学要素3および5を接合および位置決めするプロセスをチェックし、オープンループベースで制御し、必要に応じて、クローズドループベースで制御することができる。このような接合プロセスは、スマートグラスの眼鏡レンズ上にフィルムを位置決めする場合に特に有用である。第1の光学要素3(例では、眼鏡レンズ)と、第2の光学要素5(例では、フィルム)との間のギャップ7は、5μm未満の精度で製造することが可能である。
【0023】
図2は、
図1による装置の同心円状の構成をより明確に示す。第1の光学要素3の光学面の半径R1、第2の光学要素5の光学面の半径R2、および第1および第2のホルダ2,4の座面6の半径R3は、共通の中心点MPを有する。この例では、第1の光学要素はスマートグラスのレンズであり、第2の光学要素5は第2のホルダ4上に載置された薄膜である。さらに、第1のホルダ2内に第1の光学要素3を保持する別の方法が
図2に示されている。
【0024】
図3は、
図2に示される第1の光学要素3の第1のホルダ2内の保持を示す。第1の光学要素3は、第1の光学要素3の凹状光学面の縁部に作用するばねクランプ8によって、第1の光学要素3の凸状光学面に作用する接触点12に対して押圧される。例えば、接触点12は、120度の角度で配置された3つのV溝であり、各V溝には、ボールが固定されている。この球状表面は座面6を形成している。
【0025】
図4は、
図1および
図2による球面部品1を搭載するための装置を示しており、調整ネジ9によってギャップ7の大きさを調整することができる。調整ネジ9は、ボール14を介して第1の光学要素3の凹状光学面の縁部に作用する。第1の光学要素3の凸状光学面の縁部に配置された圧縮ばね13は、第1の光学要素3を調整ネジ9に対して押圧する。
ギャップ7の大きさは、調整ネジ9を調整することにより設定することができる。
【0026】
図5は、ギャップ7の大きさを設定するための第2の変形例を示す。この例では、調整ネジ9は、ボールを介して第2のホルダ4の座面6に対して作用する。この変形例でも、ギャップ7の大きさは、調整ネジ9の調整により設定される。また、
図5には、第1の光学要素3を保持するためのさらなる変形例が示されている。この例では、凸状光学面に作用するばねクランプ8によって、凹状光学面は、第1のホルダ2の接触点12に対して押圧される。
図5は、第1の光学要素が、凸状光学面の縁部に配置された圧縮ばね13によって固定されていることを示している。圧縮ばね13は、光学要素3の凹状光学面の縁部に配置された接触点13に対して第1の光学要素3を押圧する。
【符号の説明】
【0027】
1…搭載装置
2…第1のホルダ
3…第1の光学要素
4…第2のホルダ
5…第2の光学要素
6…座面
7…ギャップ
8…ばねクランプ
9…調整ネジ
10…穴
11…測定システム
12…接触点
13…圧縮ばね
14…ボール
R1…凸状光学面の半径
R2…凹状光学面の半径
R3…座面の半径
MP…中心点