(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-25
(45)【発行日】2024-10-03
(54)【発明の名称】化合物及びその使用
(51)【国際特許分類】
C07D 417/14 20060101AFI20240926BHJP
A61K 31/427 20060101ALI20240926BHJP
A61K 31/5377 20060101ALI20240926BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20240926BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20240926BHJP
A61P 31/20 20060101ALI20240926BHJP
A61P 31/22 20060101ALI20240926BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240926BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240926BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20240926BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240926BHJP
C12Q 1/02 20060101ALN20240926BHJP
【FI】
C07D417/14 CSP
A61K31/427
A61K31/5377
A61P31/12
A61P31/14
A61P31/20
A61P31/22
A61P35/00
A61P35/02
A61P35/04
A61P43/00 105
A61P43/00 111
A61P43/00 121
C12Q1/02
(21)【出願番号】P 2022546069
(86)(22)【出願日】2021-01-29
(86)【国際出願番号】 US2021015876
(87)【国際公開番号】W WO2021155262
(87)【国際公開日】2021-08-05
【審査請求日】2024-01-19
(32)【優先日】2020-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520281789
【氏名又は名称】フォグホーン セラピューティクス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】FOGHORN THERAPEUTICS INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】バスワニ、リシ ジー.
(72)【発明者】
【氏名】ファン、デイビッド エス.
【審査官】▲来▼田 優来
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/152437(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/160100(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/160180(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(A)の構造を有する化合物:
【化1】
またはその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
前記式(A)の化合物が、以下の構造:
【化2】
を有するか、またはその薬学的に許容される塩である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記式(A)の化合物が、以下の構造:
【化3】
を有するか、またはその薬学的に許容される塩である、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
前記式(A)の化合物が、以下の構造:
【化4】
を有するか、またはその薬学的に許容される塩である、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
請求項
1に記載の化合物及び薬学的に許容される賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項6】
それを必要とする対象においてがん
を治療
する方法のための医薬の製造のための請求項
1に記載の化合
物の使用
であって、前記方法は、有効量の前記化合物を前記対象に投与することを含む、使用。
【請求項7】
前記がんが、非小細胞肺癌、大腸癌、膀胱癌、原発不明癌、神経膠腫、乳癌、黒色腫、非黒色腫皮膚癌、子宮内膜癌、食道胃癌、食道癌、膵癌、肝胆道癌、軟組織肉腫、卵巣癌、頭頸部癌、腎細胞癌、骨癌、非ホジキンリンパ腫、小細胞肺癌、前立腺癌、胎児性腫瘍、胚細胞腫瘍、子宮頸癌、甲状腺癌、唾液腺癌、消化管神経内分泌腫瘍、子宮肉腫、胃腸間質腫瘍、CNS癌、胸腺腫瘍、副腎皮質癌、虫垂癌、小腸癌、陰茎癌、骨癌、または血液癌である、請求項
6に記載の使用。
【請求項8】
前記がんが、黒色腫である、請求項
7に記載の使用。
【請求項9】
前記黒色腫が、ブドウ膜黒色腫である、請求項
8に記載の使用。
【請求項10】
前記がんが、血液癌である、請求項
7に記載の使用。
【請求項11】
前記血液癌が
、急性骨髄性白血
病である、請求項
10に記載の使用。
【請求項12】
前記がんが、BRG1及び/またはBRMタンパク質を発現す
る、請求項
6に記載の使用。
【請求項13】
前記がんが、KRAS変異、GNAQ中の変異、GNA11中の変異、PLCB4中の変異、CYSLTR2中の変異、BAP1中の変異、SF3B1中の変異、EIF1AX中の変異、TFE3転座、TFEB転座、MITF転座、EZH2変異、SUZ12変異、及び/またはEED変異を有する、または有すると決定されている、請求項6に記載の使用。
【請求項14】
前記がんが転移性である、請求項6に記載の使用。
【請求項15】
前記がんが、抗がん療法に耐性があるか、または抗がん療法による以前の治療に応答していない、請求項6に記載の使用。
【請求項16】
前記方法が、抗がん療法を前記対象に施すことをさらに含む、請求項6に記載の使用。
【請求項17】
それを必要とする対象においてウイルス感染症を治療する方法のための医薬の製造のための請求項1に記載の化合物の使用であって、前記方法は、有効量の前記化合物を前記対象に投与することを含む、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、BRG1またはBRM関連因子(BAF)複合体を調節するために有用な化合物に関する。特に、本発明は、BAF複合体機能に関連する障害の治療に有用な化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
クロマチンの調節は、遺伝子発現に必須であり、ATP依存性のクロマチン再構築は、そのような遺伝子発現が生じる機序である。ヒトスイッチ/スクロース非発酵性(SWI/SNF)クロマチン再構築複合体は、BAF複合体としても知られ、BRG1(ブラフマー関連遺伝子1)及びBRM(ブラフマー)として知られる2つのSWI2様ATPアーゼを有する。ATP依存性クロマチン再構築因子SMARCA4としても知られる転写活性化因子BRG1は、19番染色体上のSMARCA4遺伝子によってコードされている。BRG1は、一部のがん腫瘍で過剰発現しており、がん細胞の増殖に必要である。BRMは、有望なグローバル転写活性化因子SNF2L2及び/またはATP依存性クロマチン再構築因子SMARCA2としても知られ、9番染色体上のSMARCA2遺伝子によってコードされ、BRG1機能喪失変異を特徴とする細胞中での腫瘍細胞成長にとって必須であることが示されている。BRG及び/またはBRMの非活性化は、細胞周期の停止及び腫瘍抑制など、細胞の下流効果をもたらす。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は、BAF複合体を調節するのに有用な化合物を特徴とする。いくつかの実施形態では、化合物は、BAF複合体の変化に関連する障害、例えば、BRG1及びBRMタンパク質の一方または両方の変化に関連する障害の治療に有用である。本発明の化合物は、単独で、または他の薬学的活性剤と組み合わせて、このような障害を治療するために使用することができる。
【0004】
一態様では、本発明は、以下の構造を有する化合物、N-(1-((4-(6-(2,6-ジメチルモルホリノ)ピリジン-2-イル)チアゾール-2-イル)アミノ)-3-メトキシ-1-オキソプロパン-2-イル)-1-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-カルボキサミド、またはその薬学的に許容される塩を特徴とする。
【0005】
【0006】
いくつかの実施形態では、本化合物またはその薬学的に許容される塩は、以下の構造を有する:
【0007】
【0008】
いくつかの実施形態では、本化合物またはその薬学的に許容される塩は、以下の構造を有する:
【0009】
【0010】
いくつかの実施形態では、本化合物またはその薬学的に許容される塩は、以下の構造を有する:
【0011】
【0012】
別の態様では、本発明は、以下の構造を有する化合物、N-(1-((4-(6-(2,6-ジメチルモルホリノ)ピリジン-2-イル)チアゾール-2-イル)アミノ)-3-(メトキシ-d3)-1-オキソプロパン-2-イル-3,3-d2)-1-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-カルボキサミドまたはその薬学的に許容される塩を特徴とする。
【0013】
【0014】
いくつかの実施形態では、本化合物またはその薬学的に許容される塩は、以下の構造を有する:
【0015】
【0016】
いくつかの実施形態では、本化合物またはその薬学的に許容される塩は、以下の構造を有する:
【0017】
【0018】
いくつかの実施形態では、本化合物またはその薬学的に許容される塩は、以下の構造を有する:
【0019】
【0020】
別の態様では、本発明は、前述の化合物のいずれか及び薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物を特徴とする。
別の態様では、本発明は、細胞または対象におけるBAF複合体の活性を低下させる方法を特徴とする。この方法は、細胞を有効量の前述の化合物もしくは医薬組成物のいずれかと接触させること、またはそれを対象に投与することを含む。
【0021】
別の態様では、本発明は、細胞または対象においてBRMを阻害する方法を特徴とする。この方法は、細胞を有効量の前述の化合物または医薬組成物のいずれかと接触させること、またはそれを対象に投与することを含む。
【0022】
別の態様では、本発明は、細胞または対象においてBRG1を阻害する方法を特徴とする。この方法は、細胞を有効量の前述の化合物または医薬組成物のいずれかと接触させること、またはそれを対象に投与することを含む。
【0023】
別の態様では、本発明は、細胞または対象においてBRM及びBRG1を阻害する方法を特徴とする。この方法は、細胞を有効量の前述の化合物または医薬組成物のいずれかと接触させること、またはそれを対象に投与することを含む。
【0024】
別の態様では、本発明は、細胞または対象においてアポトーシスを誘導する方法を特徴とする。この方法は、細胞を有効量の前述の化合物または医薬組成物のいずれかと接触させること、またはそれを対象に投与することを含む。
【0025】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、細胞は、がん細胞であり、及び/または対象は、がんを有する。
別の態様では、本発明は、BAF複合体関連障害を治療することを、それを必要とする対象において行う方法を特徴とする。この方法は、有効量の前述の化合物または医薬組成物のいずれかを対象に投与することを含む。
【0026】
別の態様では、本発明は、BRG1機能喪失変異に関連する障害を治療することを、それを必要とする対象において行う方法を特徴とする。この方法は、有効量の前述の化合物または医薬組成物のいずれかを対象に投与することを含む。いくつかの実施形態では、対象は、BRG1機能喪失障害を有すると決定される(例えば、障害及び/または対象は、BRG1機能喪失変異を有する細胞を含むと決定される)。
【0027】
前述の方法のいくつかの実施形態では、BAF複合体関連障害またはBRG1機能喪失変異に関連する障害は、がん、ウイルス感染、コフィン・シリス、神経線維腫症(例えば、NF-1、NF-2、または多発性神経鞘腫症)または多発性髄膜腫である。
【0028】
別の態様では、本発明は、がんを治療することを、それを必要とする対象において行う方法を特徴とする。この方法は、有効量の前述の化合物または医薬組成物のいずれかを対象に投与することを含む。
【0029】
別の態様では、本発明は、がんの腫瘍成長を減少させることを、それを必要とする対象において行う方法を特徴とする。この方法は、有効量の前述の化合物または医薬組成物のいずれかを対象に投与することを含む。
【0030】
別の態様では、本発明は、がんの転移性進行を抑制することを、それを必要とする対象において行う方法を特徴とする。この方法は、有効量の前述の化合物または医薬組成物のいずれかを投与することを含む。
【0031】
別の態様では、本発明は、がんの転移性コロニー形成(例えば、肺及び/または脳への転移性コロニー形成)を抑制することを、それを必要とする対象において行う方法を特徴とする。この方法は、有効量の前述の化合物または医薬組成物のいずれかを投与することを含む。
【0032】
別の態様では、がん中でのBRG1及び/またはBRMのレベル及び/または活性を低下させることを、それを必要とする細胞または対象において行う方法を特徴とする。この方法は、細胞を有効量の前述の化合物または医薬組成物のいずれかと接触させること、またはそれを対象に投与することを含む。
【0033】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、がんは、非小細胞肺癌、大腸癌、膀胱癌、原発不明癌、神経膠腫、乳癌、黒色腫、非黒色腫皮膚癌、子宮内膜癌、食道胃癌、食道癌、膵癌、肝胆道癌、軟組織肉腫、卵巣癌、頭頸部癌、腎細胞癌、骨癌、非ホジキンリンパ腫、小細胞肺癌、前立腺癌、胎児性腫瘍、胚細胞腫瘍、子宮頸癌、甲状腺癌、唾液腺癌、消化管神経内分泌腫瘍、子宮肉腫、胃腸間質腫瘍、CNS癌、胸腺腫瘍、副腎皮質癌、虫垂癌、小腸癌、陰茎癌、骨癌、または血液癌である。前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、がんは、食道癌である。
【0034】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、がんは、非小細胞肺癌、大腸癌、膀胱癌、原発不明癌、神経膠腫、乳癌、黒色腫、非黒色腫皮膚癌、子宮内膜癌、陰茎癌、骨癌、腎細胞癌、前立腺癌、または血液癌である。前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、がんは、非小細胞肺癌である。
【0035】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、がんは、黒色腫、前立腺癌、乳癌、骨癌、腎細胞癌、または血液癌である。
いくつかの実施形態では、がんは、黒色腫(例えば、ブドウ膜黒色腫、粘膜黒色腫、または皮膚黒色腫)である。いくつかの実施形態では、がんは、前立腺癌である。いくつかの実施形態では、がんは、血液癌(例えば、多発性骨髄腫、大細胞リンパ腫、急性T細胞白血病、急性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、免疫グロブリンAラムダ骨髄腫、びまん性混合型組織球性リンパ腫及びリンパ球性リンパ腫、B細胞リンパ腫、急性リンパ芽球性白血病(例えば、T細胞急性リンパ芽球性白血病またはB細胞急性リンパ芽球性白血病)、びまん性大細胞リンパ腫、または非ホジキンリンパ腫)である。いくつかの実施形態では、がんは、乳癌(例えば、ER陽性乳癌、ER陰性乳癌、トリプル陽性乳癌、またはトリプルネガティブ乳癌)である。いくつかの実施形態では、がんは、骨癌(例えば、ユーイング肉腫)である。いくつかの実施形態では、がんは、腎細胞癌(例えば、小眼球症転写因子(MITF)ファミリー転座腎細胞癌(tRCC))である。
【0036】
いくつかの実施形態では、がんは、BRG1及び/またはBRMタンパク質を発現し、及び/または細胞もしくは対象は、BRG1及び/またはBRMを発現するものとして同定されている。いくつかの実施形態では、がんは、BRG1タンパク質を発現し、及び/または細胞もしくは対象は、BRG1を発現するものとして同定されている。いくつかの実施形態では、がんは、BRMタンパク質を発現し、及び/または細胞もしくは対象は、BRMを発現するものとして同定されている。いくつかの実施形態では、対象またはがんは、BRG1機能喪失変異を有する、及び/またはそれらを有するものとして同定されている。いくつかの実施形態では、対象またはがんは、BRM機能喪失変異を有する、及び/またはそれらを有するものとして同定されている。
【0037】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、がんは、1つ以上のBRG1変異(例えば、ホモ接合性変異)を有するか、またはそれらを有すると決定されている。いくつかの実施形態では、1つ以上のBRG1変異は、タンパク質のATPアーゼ触媒ドメインに変異を含む。いくつかの実施形態では、1つ以上のBRG1変異は、BRG1のC末端での欠失を含む。
【0038】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、がんは、上皮成長因子受容体(EGFR)変異を有さないか、または有さないと決定されている。前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、がんは、未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)駆動因子変異を有さないか、または有さないと決定されている。前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、がんは、KRAS変異を有するか、または有すると決定されている。
【0039】
いくつかの実施形態では、がんは、GNAQにおける変異を有するか、または有すると決定されている。いくつかの実施形態では、がんは、GNA11における変異を有するか、または有すると決定されている。いくつかの実施形態では、がんは、PLCB4における変異を有するか、または有すると決定されている。いくつかの実施形態では、がんは、CYSLTR2における変異を有するか、または有すると決定されている。いくつかの実施形態では、がんは、BAP1における変異を有するか、または有すると決定されている。いくつかの実施形態では、がんは、SF3B1における変異を有するか、または有すると決定されている。いくつかの実施形態では、がんは、EIF1AXにおける変異を有するか、または有すると決定されている。いくつかの実施形態では、がんは、TFE3転座を有するか、または有すると決定されている。いくつかの実施形態では、がんは、TFEB転座を有するか、または有すると決定されている。いくつかの実施形態では、がんは、MITF転座を有するか、または有すると決定されている。いくつかの実施形態では、がんは、EZH2変異を有するか、または有すると決定されている。いくつかの実施形態では、がんは、SUZ12変異を有するか、または有すると決定されている。いくつかの実施形態では、がんは、EED変異を有するか、または有すると決定されている。
【0040】
いくつかの実施形態では、がんは、転移性である。例えば、がんは、移動及び/または移動細胞の浸潤を呈する細胞を含み、及び/または内皮動員及び/または血管新生を呈する細胞を含む。転移性がんは、腹膜腔、胸膜腔、心膜腔、またはくも膜下腔の表面への播種により、拡散され得る。あるいは、転移性がんは、リンパ系を介して拡散されるか、または血行性に広がり得る。いくつかの実施形態では、がんは、細胞移動がん(例えば、非転移性細胞移動がん)である。
【0041】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、がんは、薬物耐性である(例えば、がんは、遺伝子マーカーなどにより、化学療法剤または細胞傷害性剤に対して耐性である、または耐性である可能性が高いと決定されているか、または化学療法剤もしくは細胞傷害性剤に対して耐性である可能性が高い、例えば、化学療法剤または細胞傷害性剤に応答しなかったがん)、及び/または以前の治療(例えば、化学療法剤または細胞傷害性剤、免疫療法、外科手術、放射線療法、温熱療法、もしくは光凝固術、もしくはそれらの組み合わせ)に応答しなかったがんである。
【0042】
いくつかの実施形態では、がんは、ベムラフェニブ、ダカルバジン、CTLA4阻害剤、PD1阻害剤、インターフェロン療法、BRAF阻害剤、MEK阻害剤、放射線療法、テモゾロミド、イリノテカン、CAR-T療法、ハーセプチン、Perjeta、タモキシフェン、ゼローダ、ドセタキソール、カルボプラチンなどの白金剤、パクリタキセル及びドセタキセルなどのタキサン、ALK阻害剤、MET阻害剤、アリムタ、アブラキサン、ドキソルビシン、ゲムシタビン、アバスチン、ハラベン、ネラチニブ、PARP阻害剤、ブリラネストラント、mTOR阻害剤、トポテカン、ジェムザール、VEGFR2阻害剤、葉酸受容体拮抗薬、デムシズマブ、フォスブレタブリン、またはPDL1阻害剤、またはそれらの組み合わせに耐性がある、及び/または応答しない。
【0043】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、がんは、ダカルバジン、テモゾロミド、シスプラチン、トレオスルファン、フォテムスチン、IMCgp100、CTLA-4阻害剤(例えば、イピリムマブ)、PD-1阻害剤(例えば、ニボルマブまたはペムブロリズマブ)、PD-L1阻害剤(例えば、アテゾリズマブ、アベルマブ、またはデュルバルマブ)、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MEK)阻害剤(例えば、セルメチニブ、ビニメチニブ、またはタメチニブ)、及び/またはプロテインキナーゼC(PKC)阻害剤(例えば、ソトラスタウリンまたはIDE196)に耐性がある、及び/または応答しない。
【0044】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、がんは、ブドウ膜黒色腫の治療に使用される以前に投与された治療薬、例えば、MEK阻害剤またはPKC阻害剤に耐性があり、及び/または応答しない。例えば、いくつかの実施形態では、がんは、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MEK)阻害剤(例えば、セルメチニブ、ビニメチニブ、またはタメチニブ)、及び/またはプロテインキナーゼC(PKC)阻害剤(例えば、ソトラスタウリンまたはIDE196)に耐性があり、及び/または応答しない。
【0045】
いくつかの実施形態では、この方法は、抗がん療法、例えば、化学療法剤または細胞傷害性剤、免疫療法、外科手術、放射線療法、温熱療法、または光凝固、またはそれらの組み合わせを、対象に行うか、または細胞を接触させることをさらに含む。いくつかの実施形態では、抗がん療法は、化学療法剤または細胞傷害性剤、例えば、代謝拮抗剤、抗有糸分裂剤、抗腫瘍抗生物質、アスパラギン特異的酵素、ビスホスホネート、抗新生物形成剤、アルキル化剤、DNA修復酵素阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、コルチコステロイド、脱メチル化剤、免疫調節性、ヤヌス関連キナーゼ阻害剤、ホスフィノシチド3-キナーゼ阻害剤、プロテアソーム阻害剤、またはチロシンキナーゼ阻害剤、またはそれらの組み合わせである。
【0046】
いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、外科手術、MEK阻害剤、及び/またはPKC阻害剤、またはそれらの組み合わせなどのブドウ膜黒色腫の治療に使用される別の抗がん療法と組み合わせて使用される。例えば、いくつかの実施形態では、この方法は、本発明の化合物の投与の前、後、または同時に外科手術を行うことをさらに含む。いくつかの実施形態では、この方法は、本発明の化合物投与の前、後、または同時に、MEK阻害剤(例えば、セルメチニブ、ビニメチニブ、またはタメチニブ)及び/またはPKC阻害剤(例えば、ソトラスタウリンまたはIDE196)を投与することをさらに含む。
【0047】
いくつかの実施形態では、抗がん療法及び本発明の化合物は、互いに28日以内(例えば、21日以内、14日以内、または7日以内)に、それぞれが一緒になって対象を治療するのに有効な量で投与される。
【0048】
別の態様では、本開示は、ウイルス感染症を治療することを、それを必要とする対象において行うための方法を提供する。この方法は、有効量の前述の化合物のいずれかまたは医薬組成物を対象に投与することを含む。いくつかの実施形態では、ウイルス感染症は、レンチウイルス(例えば、ヒト免疫不全ウイルス(HIV))及びデルタレトロウイルス(例えば、ヒトT細胞白血病ウイルスI(HTLV-1)、ヒトT細胞白血病ウイルスII(HTLV-II))などのRetroviridae科のウイルス、Hepadnaviridae科のウイルス(例えば、B型肝炎ウイルス(HBV))、Flaviviridae科のウイルス(例えば、C型肝炎ウイルス(HCV))、Adenoviridae科のウイルス(例えば、ヒトアデノウイルス)、Herpesviridae科のウイルス(例えば、ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)、Epstein-Barr ウイルス、単純ヘルペスウイルス1(HSV-1)、単純ヘルペスウイルス2(HSV-2)、ヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)、Herpesvitus K*、CMV、varicella-zosterウイルス)、Papillomaviridae科のウイルス(例えば、ヒトPapillomavirus(HPV、HPV E1))、Parvoviridae科のウイルス(例えば、Parvovirus B19)、Polyomaviridae科のウイルス(例えば、JCウイルス及びBKウイルス)、Paramyxoviridae科のウイルス(例えば、Measlesウイルス)、またはTogaviridae科のウイルス(例えば、風疹ウイルス)による感染症である。
【0049】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、化合物の有効量は、参照と比較して、BRG1のレベル及び/または活性を少なくとも5%(例えば、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%)低下させる。
【0050】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、化合物の有効量は、BRG1のレベル及び/または活性を、参照と比較して、少なくとも5%(例えば、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%)、少なくとも12時間(例えば、少なくとも14時間、少なくとも16時間、少なくとも18時間、少なくとも20時間、少なくとも22時間、少なくとも24時間、少なくとも30時間、少なくとも36時間、少なくとも48時間、少なくとも72時間、少なくとも4日、少なくとも5日、少なくとも6日、少なくとも7日、少なくとも14日、少なくとも21日、少なくとも28日、またはそれ以上)低下させる。
【0051】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、化合物の有効量は、参照と比較して、BRMのレベル及び/または活性を少なくとも5%(例えば、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%)低下させる。
【0052】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、化合物の有効量は、BRMのレベル及び/または活性を、参照と比較して、少なくとも5%(例えば、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%)、少なくとも12時間(例えば、少なくとも14時間、少なくとも16時間、少なくとも18時間、少なくとも20時間、少なくとも22時間、少なくとも24時間、少なくとも30時間、少なくとも36時間、少なくとも48時間、少なくとも72時間、少なくとも4日、少なくとも5日、少なくとも6日、少なくとも7日、少なくとも14日、少なくとも21日、少なくとも28日、またはそれ以上)低下させる。
【0053】
いくつかの実施形態では、本発明の化合物の有効量は、肝臓及び/または脳へのがんの転移性コロニー形成を阻害するのに有効な量である。
化学用語
本発明の化合物は、1つ以上の不斉炭素原子を有することができ、光学的に純粋なエナンチオマー、例えばラセミ体などのエナンチオマーの混合物、光学的に純粋なジアステレオ異性体、ジアステレオ異性体の混合物、ジアステレオ異性体ラセミ体、またはジアステレオ異性体ラセミ体の混合物の形態で存在し得る。光学活性型は、例えば、ラセミ体の分割、不斉合成または不斉クロマトグラフィー(キラル吸着剤または溶離液を用いたクロマトグラフィー)によって得ることができる。すなわち、いくらかの開示された化合物は、様々なステレオ異性体形態で存在し得る。ステレオ異性体は、空間配置のみが異なる化合物である。エナンチオマーは、鏡像を重ね合わせることができない一対のステレオ異性体であり、最も一般的な理由は、キラル中心として作用する非対称的置換炭素原子が含まれるためである。「エナンチオマー」は、互いの鏡像であり、重ね合わせることができない一対の分子のうちの1つを意味する。ジアステレオマーは、鏡像とは関係のないステレオ異性体であり、最も一般的な理由は、2つ以上の非対称置換炭素原子を含み、1つ以上のキラル炭素原子を中心とした置換基の配置を表すためである。化合物のエナンチオマーは、例えば、キラルクロマトグラフィー及びそれに基づく分離方法などの1つ以上の周知の技術及び方法を使用して、ラセミ体からエナンチオマーを分離することによって調製することができる。本明細書に記載の化合物のエナンチオマーをラセミ混合物から分離するための適切な技術及び/または方法は、当業者によって容易に決定され得る。「ラセミ体」または「ラセミ混合物」は、2つのエナンチオマーを含む化合物を意味し、このような混合物は、光学活性を示さない。すなわち、偏光面を回転させない。「幾何異性体」とは、炭素-炭素二重結合、シクロアルキル環、または架橋二環系に関連して置換基原子の配向が異なる異性体を意味する。炭素-炭素二重結合の各側の原子(H以外)は、E構成(置換基が、炭素-炭素二重結合の反対側にある)またはZ構成(置換基が、同じ側に配向されている)であり得る。「R」、「S」、「S*」、「R*」、「E」、「Z」、「cis」、及び「trans」は、コア分子に対する構成を示す。いくつかの開示された化合物は、アトロプ異性体の形態で存在し得る。アトロプ異性体は、単結合の周りの回転が妨げられた結果生じるステレオ異性体であり、回転に対する立体ひずみ障壁が、配座異性体の単離を可能にするのに十分な高さである。本発明の化合物は、異性体特異的合成によって個々の異性体として調製するか、または異性体混合物から分離することができる。従来の分解技術としては、光学活性酸を使用して、異性体ペアの各異性体の遊離塩基の塩を形成すること(その後、遊離塩基の分別結晶化及び再生を行う)、光学活性アミンを使用して異性体ペアの各異性体の酸型の塩を形成すること(その後、分別結晶化及び遊離酸の再生を行う)、光学的に純粋な酸、アミン、またはアルコールを使用して、異性体ペアの異性体の各々のエステルまたはアミドを形成すること(その後、クロマトグラフィーによる分離及びキラル補助剤の除去を行うこと)、または周知の様々なクロマトグラフィー法を使用して、出発物質または最終生成物のいずれかの異性体混合物を分離することが挙げられる。開示された化合物の立体化学が構造によって命名または描写される場合、命名または描写されたステレオ異性体は、他のステレオ異性体と比較して少なくとも60重量%、70重量%、80重量%、90重量%、99重量%、または99.9重量%である。単一のエナンチオマーが構造によって命名または描写される場合、描写または命名されたエナンチオマーは、少なくとも60重量%、70重量%、80重量%、90重量%、99重量%、または99.9重量%光学的に純粋である。単一のジアステレオマーが構造によって命名または描写される場合、描写または命名されたジアステレオマーは、少なくとも60重量%、70重量%、80重量%、90重量%、99重量%、または99.9重量%純粋である。パーセント光学純度は、エナンチオマーの重量またはエナンチオマーの重量にその光学異性体を加えたものの重量に対する比である。ジアステレオマーの重量純度は、1つのジアステレオマーの重量またはすべてのジアステレオマーの重量に対する比である。開示された化合物の立体化学が構造によって命名または描写される場合、命名または描写されたステレオ異性体は、他のステレオ異性体と比較して少なくとも60重量%、70重量%、80重量%、90重量%、99重量%、または99.9重量%の純粋なモル分率である。単一のエナンチオマーが構造によって命名または描写される場合、描写または命名されたエナンチオマーは、少なくとも60重量%、70重量%、80重量%、90重量%、99重量%、または99.9重量%の純粋なモル分率である。単一のジアステレオマーが構造によって命名または描写される場合、描写または命名されたジアステレオマーは、少なくとも60重量%、70重量%、80重量%、90重量%、99重量%、または99.9重量%の純粋なモル分率である。モル分率による純度のパーセントは、エナンチオマーのモル数またはエナンチオマーのモル数にその光学異性体のモル数を加えたものに対する比率である。同様に、モル分率によるパーセント純度は、ジアステレオマーのモル数、またはジアステレオマーのモル数にその異性体のモル数を加えたものに対する比である。開示された化合物が立体化学を示さずに構造によって命名または描写され、化合物が少なくとも1つのキラル中心を有する場合、その名称または構造は、対応する光学異性体を含まない化合物のエナンチオマー、化合物のラセミ体混合物、またはその対応する光学異性体と比較して1つのエナンチオマーを豊富に含む混合物のいずれかを含むと理解されるものとする。開示された化合物が、立体化学を示さずに構造によって命名または描写され、2つ以上のキラル中心を有する場合、その名称または構造は、他のジアステレオマーを含まないジアステレオマー、他のジアステレオマー対を含まないいくつかのジアステレオマー、ジアステレオマーの混合物、ジアステレオマー対の混合物、一方のジアステレオマーが他のジアステレオマー(複数可)より豊富に含まれるジアステレオマーの混合物、または1つ以上のジアステレオマーが他のジアステレオマーより豊富に含まれるジアステレオマーの混合物を含むと理解されるものとする。本発明は、これらの形態のすべてを包含する。
【0054】
他に別段の断りがない限り、本明細書中に示す構造はまた、1つ以上の同位体濃縮原子が存在するという点でのみ異なる化合物を含むことを意図する。本発明の化合物に組み込むことができる例示的な同位体としては、2H、3H、11C、13C、14C、13N、15N、15O、17O、18O、32P、33P、35S、18F、36Cl、123I及び125Iなどの水素、炭素、窒素、酸素、リン、硫黄、フッ素、塩素及びヨウ素の同位体が挙げられる。同位体標識された化合物(例えば、3H及び14Cで標識されたもの)は、化合物または基質組織分布アッセイに有用であり得る。トリチウム化(すなわち、3H)及び炭素-14(すなわち、14C)同位体は、それらの調製の容易さ及び検出能の点において有用であり得る。さらに、重水素(すなわち、2H)などのより重い同位体での置換は、より高い代謝安定性(例えば、in vivo半減期の延長または必要な投薬量の減少)から得られる特定の治療上の利点をもたらし得る。いくつかの実施形態では、1つ以上の水素原子が、2Hもしくは3Hで置き換えられるか、または1つ以上の炭素原子が、13Cもしくは14C濃縮炭素で置き換えられる。15O、13N、11C及び18Fなどのポジトロン放出同位体は、基質受容体占有を検査するためのポジトロン放出断層撮影(PET)研究に有用である。同位体標識化合物の調製は、当業者に知られている。例えば、同位体標識化合物は、一般に、非同位体標識試薬の代わりに同位体標識試薬を使用することにより、本明細書に記載の本発明の化合物について開示された手順と類似の手順に従うことによって調製することができる。
【0055】
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術及び科学用語は、本発明が属する当業者により一般に理解されるものと同じ意味を有する。本開示で使用するための方法及び材料を本明細書に記載する。当技術分野で知られている他の適切な方法及び材料も使用することができる。材料、方法、及び実施例は、例示に過ぎず、限定的であることは意図されない。本明細書で言及されているすべての刊行物、特許出願、特許、配列、データベースエントリー、及び他の参考文献は、その全体が参考として援用される。矛盾する場合には、定義を含めて本明細書が優先する。
【0056】
定義
本出願では、文脈から別の意味であることが明確でない限り、(i)「a」という用語は「少なくとも1つ」を意味すると理解され得る;(ii)「または」という用語は、「及び/または」を意味すると理解され得る;(iii)「含む(comprising)」及び「含む(including)」という用語は、それ自体で提示されるか、1つ以上の追加の構成要素またはステップと一緒に提示されるか否かにかかわらず、項目別の構成要素またはステップを包含すると理解され得る。
【0057】
本明細書中で使用する場合、用語「約」及び「おおよそ」とは、記載された値の10%以内を上回るかまたは下回る値を指す。例えば、「約5nM」という用語は、4.5~5.5nMの範囲を示す。
【0058】
本明細書で使用される場合、「投与」という用語は、対象またはシステムへ組成物(例えば、化合物または本明細書に記載の化合物を含む調製物)を投与することを指す。動物対象(例えば、ヒト)への投与は、任意の適切な経路によるものであり得る。例えば、いくつかの実施形態では、投与は、気管支(気管支点滴によるものを含む)、頬側、経腸、皮内、動脈内、皮内、胃内、髄内、筋肉内、鼻腔内、腹腔内、髄腔内、腫瘍内、静脈内、脳室内、粘膜、鼻、口腔、直腸、皮下、舌下、局所、気管(気管内注入を含む)、皮内、膣内、及び硝子体であり得る。
【0059】
本明細書で使用される場合、「BAF複合体」という用語は、ヒト細胞におけるBRG1またはHBRM関連因子複合体を指す。
本明細書で使用される場合、「BAF複合体関連障害」という用語は、BAF複合体の活性のレベルによって引き起こされるかまたは影響を受ける障害を指す。
【0060】
本明細書で使用される場合、「BRG1機能喪失変異」という用語は、活性の低下(例えば、BRG1活性の少なくとも1%の低下、例えば、BRG1活性の2%、5%、10%、25%、50%、または100%の低下)を有するタンパク質をもたらすBRG1中での変異を指す。例示的なBRG1機能喪失変異には、ホモ接合性のBRG1変異及びBRG1のC末端での欠失が含まれるが、これらに限定されない。
【0061】
本明細書で使用される場合、「BRG1機能喪失障害」という用語は、BRG1活性の低下(例えば、BRG1活性の少なくとも1%の低下、例えば、BRG1活性の2%、5%、10%、25%、50%、または100%の低下)を呈する障害(例えば、がん)を指す。
【0062】
「がん」という用語は、腫瘍、新生物、癌腫、肉腫、白血病、及びリンパ腫などの悪性新生物細胞の増殖によって引き起こされる状態を指す。
本明細書で使用される場合、「組み合わせ療法」または「組み合わせて投与される」とは、2つ(またはそれ以上)の異なる剤または治療が、特定の疾患または状態に対して、定義された治療レジメンの一部として対象に投与されることを意味する。治療レジメンでは、対象に対する別個の剤の効果が重なるように、各剤の投与の用量及び周期性を定義する。いくつかの実施形態では、2つ以上の剤の送達は同時または並行であり、本剤は同時処方され得る。いくつかの実施形態では、2つ以上の剤は同時製剤化されず、処方されたレジメンの一部として連続的に投与される。いくつかの実施形態では、2つ以上の剤または治療を組み合わせて投与することは、症状、または障害に関連する他のパラメータの減少が、単独でまたは他の非存在下で送達される1つの剤または治療で観察されるものよりも大きくなるようなものである。2つの治療の効果は、部分的に相加的、完全に相加的、または相加的よりも大きくなり得る(例えば、相乗的)。各治療剤の連続または実質的に同時の投与は、経口経路、静脈内経路、筋肉内経路、及び粘膜組織を介した直接吸収を含む、任意の適切な経路によって行うことができるが、これらに限定されない。治療剤は、同じ経路によって、または異なる経路によって投与することができる。例えば、組み合わせの第1の治療剤を静脈内注射によって投与してもよい一方で、その組み合わせの第2の治療剤を経口投与してもよい。
【0063】
本明細書で使用される「CTLA-4阻害剤」という用語は、ヒトにおいてCTLA4遺伝子によってコードされるタンパク質の活性を阻害することができる抗体などの化合物を指す。既知のCTLA-4阻害剤には、イピリムマブが含まれる。
【0064】
タンパク質またはRNAの「レベルを決定すること」とは、当技術分野で知られている方法による、直接的または間接的に、タンパク質またはRNAを検出することを意味する。「直接決定すること」とは、物理的実体または値を得るためにプロセスを実行すること(例えば、サンプルに対してアッセイまたはテストを実施すること、またはその用語が本明細書で定義されている「サンプルを分析すること」)を意味する。「間接的に決定すること」とは、別の団体または供給源(例えば、物理的実体または値を直接的に取得した第三者の試験研究所)から物理的実体または値を得ることを指す。タンパク質レベルを測定する方法は、概して、ウェスタンブロット法、免疫ブロット法、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、放射免疫測定法(RIA)、免疫沈降、免疫蛍光、表面プラズモン共鳴、化学発光、蛍光偏光、リン光、免疫組織化学分析、マトリクス支援レーザ脱離/イオン化飛行時間(MALDI-TOF)質量分析法、液体クロマトグラフィー(LC)-質量分析、マイクロサイトメトリ、顕微鏡法、蛍光活性化細胞分類(FACS)、及びフローサイトメトリ、ならびに限定されないが、酵素活性または他のタンパク質パートナーとの相互作用を含む、タンパク質の性質に基づくアッセイを含むが、それらに限定されない。RNAレベルを測定する方法は、当技術分野で知られており、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)及びノーザンブロット分析が含まれるが、これらに限定されない。
【0065】
タンパク質またはRNAの「減少したレベル」または「増加したレベル」とは、参照と比較して、タンパク質またはRNAレベルのそれぞれの減少または増加を意味する(例えば、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約100%、約150%、約200%、約300%、約400%、約500%、もしくはそれ以上の減少または増加;参照と比較して、約10%を超える、約15%、約20%、約50%、約75%、約100%、または約200%の減少または増加;約0.01倍未満、約0.02倍、約0.1倍、約0.3倍、約0.5倍、約0.8倍、またはそれ以下の減少または増加;約1.2倍、約1.4倍、約1.5倍、約1.8倍、約2.0倍、約3.0倍、約3.5倍、約4.5倍、約5.0倍、約10倍、約15倍、約20倍、約30倍、約40倍、約50倍、約100倍、約1000倍、またはそれ以上を超える増加)。タンパク質のレベルは、質量/容量(例えば、g/dL、mg/mL、μg/mL、ng/mLなど)またはサンプル中の総タンパク質に対するパーセンテージで表すことができる。
【0066】
「BAF複合体の活性を低下させること」とは、BAF複合体に関連する活性のレベル、または関連する下流効果を低下させることを意味する。BAF複合体の活性を低下させる非限定的な例は、Sox2の活性化である。BAF複合体の活性レベルは、当技術分野で知られている任意の方法(例えば、Kadoch et al.Cell,2013,153,71-85に記載されている方法)を使用して測定され得、その方法は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0067】
本明細書で使用される場合、「誘導体」という用語は、本明細書に記載の化合物、ペプチド、タンパク質、または他の物質の、天然に存在する合成類似体及び半合成類似体を指す。本明細書に記載の化合物、ペプチド、タンパク質、または他の物質の誘導体は、元の材料の生物学的活性を保持または改善することができる。
【0068】
本明細書で使用される「薬物耐性であると決定される」がんは、化学療法剤に対して応答しないまたは応答の低下に基づいて、薬物耐性であるか、または予後アッセイ(例えば、遺伝子発現アッセイ)に基づいて薬物耐性であることが予測されるがんを指す。
【0069】
「薬物耐性」とは、1つ以上の化学療法剤(例えば、本明細書に記載の任意の剤)に対して応答しない、または応答の低下を呈するがんを意味する。
本明細書で使用される場合、「以前の治療に応答しなかった」または「以前の治療に対して難治である」という用語は、治療法による治療にもかかわらず進行したがんを指す。
【0070】
本明細書で使用される場合、「BRMを阻害すること」及び/または「BRG1を阻害すること」という用語は、タンパク質のATPアーゼ触媒結合ドメインまたはブロモドメインのレベルまたは活性を遮断するまたは低下させることを指す。BRM及び/またはBRG1阻害は、当技術分野で知られている方法、例えば、BRM及び/またはBRG1ATPアーゼアッセイ、Nano DSFアッセイ、またはBRM及び/またはBRG1ルシフェラーゼ細胞アッセイを使用して決定することができる。
【0071】
本明細書で使用される場合、IDE196としても知られる「LXS196」という用語は、以下の構造を有するPKC阻害剤、
【0072】
【0073】
またはその薬学的に許容される塩を指す。
本明細書で使用される場合、「転移性結節」は、元の腫瘍の部位以外の部位での身体内での腫瘍細胞の凝集を指す。
【0074】
本明細書で使用される場合、「転移性がん」は、腫瘍を形成するがん細胞が、対象内のある場所から別の場所または複数の場所に、リンパ系または血行性の広がりを介して転移するまたは広がる高い可能性を有するか、またはそれらを開始している、例えば、対象内に二次腫瘍を創出する腫瘍またはがんを指す。このような転移挙動は、悪性腫瘍の兆候を示し得る。場合によっては、転移挙動は、腫瘍細胞の細胞移動及び/または浸潤挙動の増加と関連し得る。
【0075】
転移性として定義することができるがんの例としては、これらに限定されないが、肺癌(例えば、非小細胞肺癌)、乳癌、卵巣癌、大腸癌、胆道癌、膀胱癌、脳癌(例えば、神経膠芽細胞腫及び髄質芽細胞腫)、子宮頸癌、絨毛癌、子宮内膜癌、食道癌、胃癌、血液新生物、多発性骨髄腫、白血病、上皮内新生物、肝癌、リンパ腫、神経芽細胞腫、口腔癌、膵癌、前立腺癌、肉腫、皮膚癌(例えば、黒色腫)、基底細胞癌、扁平上皮癌、精巣癌、間質性腫瘍、生殖細胞癌、甲状腺癌、及び腎癌が挙げられる。
【0076】
本明細書で使用される「非転移性細胞移動癌」は、リンパ系または血行性の広がりを介して移動しないがんを指す。
本明細書で使用される「PD-1阻害剤」という用語は、ヒトにおいてPDCD1遺伝子によってコードされるタンパク質の活性を阻害することができる抗体などの化合物を指す。既知のPD-1阻害剤には、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、ピジリズマブ、BMS 936559、及びアテゾリズマブが含まれる。
【0077】
本明細書で使用される「PD-L1阻害剤」という用語は、ヒトにおいてCD274遺伝子によってコードされるタンパク質の活性を阻害することができる抗体などの化合物を指す。既知のPD-L1阻害剤には、アテゾリズマブ及びデュルバルマブが含まれる。
【0078】
本明細書で使用される「医薬組成物」という用語は、薬学的に許容される賦形剤とともに製剤化され、哺乳動物、例えばヒトへの投与に適切な、本明細書に記載の化合物を含む組成物を表す。典型的には、医薬組成物は、哺乳動物の疾患の治療のための治療レジメンの一部として、政府の規制当局の承認を得て製造または販売されている。医薬組成物は、例えば、単位投薬形態での経口投与のため(例えば、錠剤、カプセル、カプレット、ゲルキャップ、またはシロップ)、局所投与のため(例えば、クリーム、ゲル、ローション、または軟膏としての)、静脈内投与のため(例えば、粒子塞栓物質を含まない滅菌溶液として、及び静脈内使用に好適な溶媒系で)、または任意の他の薬学的に許容される製剤中で製剤化することができる。
【0079】
「薬学的に許容される賦形剤」は、本明細書で使用される場合、患者において実質的に非毒性かつ非炎症性であるという性質を有する、本明細書に記載の化合物以外の任意の成分(例えば、活性化合物を懸濁または溶解させることが可能なビヒクル)を指す。賦形剤としては、例えば、付着防止剤、抗酸化剤、結合剤、コーティング剤、圧縮補助剤、崩壊剤、染料(着色)、皮膚軟化剤、乳化剤、フィラー(希釈剤)、膜形成剤またはコーティング剤、香味剤、芳香剤、滑沢剤(流動促進剤)、潤滑剤、防腐剤、印刷インキ、吸着剤、懸濁剤または分散剤、甘味料、及び水和用の水が挙げられ得る。
【0080】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される塩」という用語は、本明細書に記載の化合物の任意の薬学的に許容される塩を意味する。本明細書に記載の化合物のいずれかの薬学的に許容される塩には、毒性、刺激、アレルギー性応答などを有さず、合理的なベネフィット/リスク比に相応する、健全な医学的判断の範囲内において、ヒト及び動物の組織と接触させて使用するのに適している塩が挙げられ得る。薬学的に許容される塩は、当該技術分野において周知である。例えば、薬学的に許容される塩は、Berge et al.,J.Pharmaceutical Sciences 66:1-19,1977及びPharmaceutical Salts:Properties,Selection,and Use,(Eds.P.H.Stahl and C.G.Wermuth),Wiley-VCH、2008に記載されている。塩は、本明細書に記載される化合物の最終的な単離及び精製の間にインサイチュで調製することができるか、または、遊離塩基性基を適切な有機酸と反応させることによって別々に調製することができる。
【0081】
本発明の化合物は、薬学的に許容される塩として調製することができるように、イオン化可能な基を有し得る。これらの塩は、例えば、無機または有機酸を含む酸付加塩であり得るか、または塩は、本発明の化合物の酸性形態の場合、無機または有機塩基から調製され得る。多くの場合、化合物は、薬学的に許容される酸または塩基の付加生成物として調製される薬学的に許容される塩として調製または使用される。好適な薬学的に許容される酸及び塩基、ならびに適切な塩を調製するための方法は、当技術分野でよく知られている。塩は、無機及び有機の酸及び塩基を含む、薬学的に許容される非毒性の酸及び塩基から調製され得る。
【0082】
本明細書で使用される場合、「無増悪生存期間」は、治療されている疾患(例えば、がん)が悪化しない、薬物療法及び治療の間またはそれらの後の時間の長さを指す。
本明細書で使用される「増殖」は、構成(細胞)要素による類似の形態(細胞)の複製または増殖を含む。
【0083】
「参照」とは、タンパク質またはRNAレベルを比較するために使用される任意の有用な参照を意味する。参照は、比較の目的で使用される任意のサンプル、標準、標準曲線、またはレベルであり得る。参照は、通常の参照サンプルまたは参照標準またはレベルであり得る。「参照サンプル」は、例えば、対照、例えば、「正常対照」などの所定の負の対照値、または同じ対象から採取された以前のサンプル;正常細胞または正常組織など、正常な健康な対象のサンプル;疾患を有さないサンプル(例えば、細胞または組織);疾患と診断されたが、本発明の化合物でまだ治療されていない対象からのサンプル;本発明の化合物によって治療された対象のサンプル;または、既知の正常濃度の精製タンパク質またはRNA(例えば、本明細書に記載のいずれか)のサンプルであり得る。「参照標準またはレベル」とは、参照サンプルから得られた値または数を意味する。「正常対照値」は、非疾患状態を示す所定の値であり、例えば、健康な対照対象において予測される値である。典型的には、正常対照値は、範囲(「X~Y」)、高しきい値(「X以下」)、または低しきい値(「X以上」)として表す。特定のバイオマーカーの正常対照値内の測定値を有する対象は、典型的には、そのバイオマーカーの「正常範囲内」と称する。正常参照標準またはレベルは、疾患または障害(例えば、がん)を有さない正常な対象;本発明の化合物で治療された対象に由来する値または数であり得る。好ましい実施形態では、参照サンプル、標準、またはレベルは、以下の基準のうちの少なくとも1つによってサンプル対象サンプルと一致する:年齢、体重、性別、病期、及び全体的な健康。正常参照範囲内の、例えば本明細書に記載のいずれかである、精製されたタンパク質またはRNAのレベルの標準曲線もまた、参照として使用され得る。
【0084】
本明細書で使用される場合、「転移の広がりを遅延させる」とは、新しい遺伝子座の形成を減少または停止させる、または腫瘍量を減少させる、止める、または逆転させることを指す。
【0085】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、例えば、実験、診断、予防、及び/または治療の目的で、本発明による組成物が投与され得る任意の生物を指す。典型的な対象としては、任意の動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、非ヒト霊長類、及びヒトなどの哺乳動物)が含まれる。対象は、治療を求めるか必要としている、治療が必要である、治療を受けている、今後治療を受けるか、または特定の疾患または状態について熟練の専門家によるケアを受けているヒトまたは動物であり得る。
【0086】
本明細書で使用される場合、「治療する」、「治療される」、または「治療すること」という用語は、望ましくない生理学的状態、障害、または疾患を遅らせる(軽減する)こと、または有益なもしくは所望の臨床結果を得ることを目的とする治療的処置または任意の手段を意味する。有益なまたは所望の結果としては、これらに限定されないが、症状の緩和;状態、障害、もしくは疾患の程度の減少;状態、障害、もしくは疾患の安定した(すなわち、悪化していない)状態;状態、障害、もしくは疾患の進行の発生の遅延もしくは減速;状態、障害、もしくは病状の改善もしくは寛解(部分的もしくは全体);少なくとも1つの測定可能な物理的パラメータの改善(必ずしも患者が認識できるとは限らない);または状態、障害もしくは疾患の向上もしくは改善を含み得る。治療には、過剰なレベルの副作用を伴わずに、臨床的に有意な応答を引き出すことが含まれる。「治療」はまた、治療を受けていなかった場合に予測される生存期間と比較して、生存期間を延長することも含む。本発明の化合物はまた、例えば、障害を発症するリスクが高い対象において、障害を「予防的に治療する」または「予防する」ために使用され得る。
【0087】
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術及び科学用語は、本発明が属する当業者により一般に理解されるものと同じ意味を有する。本開示で使用するための方法及び材料を本明細書に記載する。当技術分野で知られている他の適切な方法及び材料も使用することができる。材料、方法、及び実施例は、例示に過ぎず、限定的であることは意図されない。本明細書で言及されているすべての刊行物、特許出願、特許、配列、データベースエントリー、及び他の参考文献は、その全体が参考として援用される。矛盾する場合には、定義を含めて本明細書が優先する。
【0088】
本発明の1つ以上の実施形態の詳細が、以下の発明を実施するための形態で説明される。本発明の他の特性、目的、及び利点は、説明及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【
図1】BRG1/BRM阻害剤(化合物A)によるいくつかのがん細胞株の細胞増殖の阻害を示すグラフである。
【
図2】BRG1/BRM阻害剤(化合物A)、MEK阻害剤(セルメチニブ)、及びPKC阻害剤(LXS196)によるブドウ膜黒色腫細胞株92-1の細胞増殖の阻害を示すグラフである。
【
図3】BRG1/BRM阻害剤(化合物A)、MEK阻害剤(セルメチニブ)、及びPKC阻害剤(LXS196)によるブドウ膜黒色腫細胞株MP41の細胞増殖の阻害を示すグラフである。
【
図4】BRG1/BRM阻害剤(化合物B)によるいくつかのがん細胞株の細胞増殖の阻害を示すグラフである。
【
図5】BRG1/BRM阻害剤(化合物B)で処理されたがん細胞株の用量反応曲線から計算された曲線下面積(AUC)を示すグラフである。
【
図6】BRG1/BRM阻害剤(化合物B)によるブドウ膜黒色腫及び非小細胞肺癌細胞株の細胞増殖の阻害を示すグラフである。
【
図7】BRG1/BRM阻害剤(化合物B)、MEK阻害剤(セルメチニブ)、及びPKC阻害剤(LXS196)によるブドウ膜黒色腫細胞株92-1の細胞増殖の阻害を示すグラフである。
【
図8】BRG1/BRM阻害剤(化合物B)、MEK阻害剤(セルメチニブ)、及びPKC阻害剤(LXS196)によるブドウ膜黒色腫細胞株MP41の細胞増殖の阻害を示すグラフである。
【
図9】PKC阻害剤(LXS196)による親及びPKC阻害剤難治性ブドウ膜黒色腫細胞株の細胞増殖の阻害を示すグラフである。
【
図10】BRG1/BRM阻害剤(化合物B)による親及びPKC阻害剤難治性ブドウ膜黒色腫細胞株の細胞増殖の阻害を示すグラフである。
【
図11】BRG1/BRM阻害剤(化合物C)によるブドウ膜黒色腫細胞株をグラフト移植されたマウスにおける腫瘍成長の阻害を示すグラフである。
【
図12】ブドウ膜黒色腫細胞株をグラフト移植し、BRG1/BRM阻害剤(化合物C)を投与したマウスの腫瘍サイズを示す図である。
【
図13】ブドウ膜黒色腫細胞株をグラフト移植し、BRG1/BRM阻害剤(化合物C)を投与したマウスの体重変化を示すグラフである。
【
図14】N-((S)-1-((4-(6-(cis-2,6-ジメチルモルホリノ)ピリジン-2-イル)チアゾール-2-イル)アミノ)-3-メトキシ-1-オキソプロパン-2-イル)-1-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-カルボキサミドによるいくつかのブドウ膜黒色腫細胞株の細胞増殖の阻害を示すグラフである。
【
図15】N-((S)-1-((4-(6-(cis-2,6-ジメチルモルホリノ)ピリジン-2-イル)チアゾール-2-イル)アミノ)-3-メトキシ-1-オキソプロパン-2-イル)-1-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-カルボキサミドによるブドウ膜黒色腫細胞株をグラフト移植したマウスにおける腫瘍増殖の阻害を示すグラフである。
【
図16】ブドウ膜黒色腫細胞株をグラフト移植し、N-((S)-1-((4-(6-(cis-2,6-ジメチルモルホリノ)ピリジン-2-イル)チアゾール-2-イル)アミノ)-3-メトキシ-1-オキソプロパン-2-イル)-1-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-カルボキサミドを投与したマウスの体重変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0090】
本開示は、BRG1及び/またはBRMの阻害に有用な化合物を特徴とする。これらの化合物は、例えば、がんなどのBAF関連障害の治療のために、BAF複合体の活性を調節するために使用され得る。本明細書に記載の例示的な化合物、またはその薬学的に許容される塩には、以下の構造を有する化合物が含まれる。
【0091】
【0092】
他の実施形態、ならびにこれらの化合物の製造の合成のための例示的な方法が、本明細書に記載されている。
医薬用途
本明細書に記載の化合物は、本発明の方法において有用であり、理論に拘束されるものではないが、BAF複合体のレベル、状態、及び/または活性を調節する、すなわち、哺乳動物におけるBAF複合体内のBRG1及び/またはBRMタンパク質の活性を阻害することによって、それらの能力を発揮すると考えられる。BAF複合体関連障害としては、これに限定されないが、BRG1機能喪失変異関連障害が挙げられる。
【0093】
本発明の一態様は、がん(例えば、非小細胞肺癌、大腸癌、膀胱癌、原発不明癌、神経膠腫、乳癌、黒色腫、非黒色腫皮膚癌、子宮内膜癌、または陰茎癌)などのBRG1機能喪失変異に関連する障害の治療を必要とする対象において、それらの治療を行う方法に関連する。いくつかの実施形態では、本発明は、黒色腫(例えば、ブドウ膜黒色腫)、前立腺癌、乳癌、骨癌、腎細胞癌、または血液癌を治療する方法に関する。
【0094】
いくつかの実施形態では、化合物は、以下の1つ以上(例えば、2つ以上、3つ以上、4つ以上)をもたらすのに有効な量及び時間で投与される:(a)腫瘍サイズの減少、(b)腫瘍増殖速度の低下、(c)腫瘍細胞死の増加、(d)腫瘍進行の減少、(e)転移数の減少、(f)転移速度の低下、(g)腫瘍再発の減少、(h)対象の生存率の延長、(i)対象の進行を伴わない生存の増加。
【0095】
がんの治療は、腫瘍サイズまたは体積の減少をもたらし得る。例えば、治療後、腫瘍サイズは、治療前のサイズの腫瘍サイズと比較して、5%以上(例えば、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以上)減少する。腫瘍サイズは、再現性のある任意の測定手段によって測定され得る。例えば、腫瘍サイズは、腫瘍の直径として測定され得る。
【0096】
がんの治療により、腫瘍数の減少がさらにもたらされ得る。例えば、治療後、腫瘍数は、治療前の数と比較して、5%以上(例えば、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以上)減少する。腫瘍数は、任意の再現可能な測定手段によって測定することができ、例えば、腫瘍数は、肉眼または特定の倍率(例えば、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、または50倍)で見える腫瘍を数えることによって測定され得る。
【0097】
がんの治療は、原発腫瘍部位から離れた他の組織または臓器内の転移性結節の数を減少させ得る。例えば、治療後、転移性結節数は、治療前の数と比較して、5%以上(例えば、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以上)減少する。転移性結節数は、任意の再現可能な測定手段によって測定され得る。例えば、転移性結節数は、肉眼で、または特定の倍率(例えば、2倍、10倍、または50倍)で見える転移性結節を数えることによって測定され得る。
【0098】
がんの治療は、未治療の対象の集団と比較して、本発明に従って治療される対象の集団の平均生存期間の延長をもたらし得る。例えば、平均生存期間は、30日より長く(60日、90日、または120日より長く)延長する。集団の平均生存期間の延長は、任意の再現可能な手段によって測定され得る。集団の平均生存期間の延長は、例えば、ある集団について、本発明の化合物による治療開始後の平均生存期間を計算することによって測定され得る。集団の平均生存期間の延長はまた、例えば、ある集団について、本発明の薬学的に許容される塩による第1ラウンドの治療完了後の平均生存期間を計算することによって測定され得る。
【0099】
がんの治療はまた、未治療の集団と比較して、治療された対象の集団の死亡率の低下をもたらし得る。例えば、死亡率は、2%超(例えば、5%、10%、または25%超)低下する。治療された対象の集団の死亡率の減少は、任意の再現可能な手段によって、例えば、ある集団について、本発明の薬学的に許容される塩による治療開始後の単位時間あたりの疾患関連死の平均数を計算することによって測定され得る。集団の死亡率の減少は、例えば、ある集団について、本発明の薬学的に許容される塩による治療の第1ラウンド完了後の単位時間あたりの疾患関連死の平均数を計算することによって測定され得る。
【0100】
本発明によって治療され得る例示的ながんとしては、これらに限定されないが、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、大腸癌、膀胱癌、神経膠腫、乳癌、黒色腫、非黒色腫皮膚癌、子宮内膜癌、食道胃癌、食道癌、膵癌、肝胆道癌、軟組織肉腫、卵巣癌、頭頸部癌、腎細胞癌、骨癌、非ホジキンリンパ腫、前立腺癌、胎児性腫瘍、胚細胞腫瘍、子宮頸癌、甲状腺癌、唾液腺癌、消化管神経内分泌腫瘍、子宮肉腫、胃腸間質腫瘍、CNS癌、胸腺腫瘍、副腎皮質癌、虫垂癌、小腸癌、血液癌、及び陰茎癌が挙げられる。
【0101】
組み合わせ製剤及びその使用
本発明の化合物は、1つ以上の治療剤と組み合わせることができる。特に、治療剤は、本明細書に記載の任意のがんを治療するまたは予防的に治療するものであり得る。
【0102】
組み合わせ療法
本発明の化合物は、単独で、または追加の治療剤、例えば、がんまたはそれに関連する症状を治療する他の剤と組み合わせて、またはがんを治療するための他の種類の治療と組み合わせて使用することができる。組み合わせ治療において、1つ以上の治療化合物の投薬量は、単独で投与される場合の標準投薬量から減少され得る。例えば、用量は、薬物の組み合わせ及び順列から経験的に決定されてもよく、またはイソボログラフ解析によって推定され得る(例えば、Black et al.,Neurology 65:S3-S6,2005)。この場合、組み合わせたときの化合物の投薬量は、治療効果をもたらすものである。
【0103】
いくつかの実施形態では、第2の治療剤は、化学療法剤(例えば、がんの治療に有用な細胞傷害性剤または他の化学化合物)である。これらとしては、アルキル化剤、代謝拮抗剤、葉酸類似体、ピリミジン類似体、プリン類似体及び関連阻害剤、ビンカアルカロイド、エピポドフィロトキシン、抗生物質、L-アスパラギナーゼ、トポイソメラーゼ阻害剤、インターフェロン、白金配位複合体、アントラセンジオン置換尿素、メチルヒドラジン誘導体、副腎皮質抑制剤、副腎皮質ステロイド、プロゲスチン、エストロゲン、抗エストロゲン、アンドロゲン、抗アンドロゲン、及びゴナドトロピン放出ホルモン類似体が挙げられる。また、5-フルオロウラシル(5-FU)、ロイコボリン(LV)、イリノテカン、オキサリプラチン、カペシタビン、パクリタキセル、及びドキセタキセルも含まれる。化学療法剤の非限定的例としては、チオテパ及びシクロスホスファミドなどのアルキル化剤;アルキルスルホン酸塩、例えば、ブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファン;アジリジン、例えば、ベンゾドーパ、カルボコン、メツレドーパ(meturedopa)、及びウレドーパ(uredopa);エチレンイミン及びメチルアメラミン(methylamelamine)、例えば、アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチイレンチオホスホルアミド及びトリメチルオロメラミン;アセトゲニン(特にブラタシン及びブラタシノン);カンプトテシン(合成類似体トポテカンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシン及びビゼレシン合成類似体を含む);クリプトフィシン(特に、クリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成類似体、KW-2189及びCB1-TM1を含む);エレウテロビン(eleutherobin);パンクラチスタチン;サルコジクチイン;スポンジスタチン;ナイトロジェンマスタード、例えば、クロラムブシル、クロルナファジン、コロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベムビシン(novembichin)、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード;ニトロソウレア、例えば、カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、及びラニムスチン;抗生物質、例えば、エンジイン抗生物質(例えば、カリケアマイシン、特にカリケアマイシンガンマ及びカリケアマイシンオメガII(例えば、Agnew,Chem.Intl.Ed Engl.33:183-186(1994));ダイネミシンAを含むダイネミシン;クロドロネートなどのビスホスホネート;エスペラミシン;ならびにネオカルジノスタチンクロモフォア及び関連色素タンパク質エネジイン抗生物質発色団)などの抗生物質、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カミノマイシン(caminomycin)、カルジノフィリン、クロモマイシニス、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、Adriamycin(登録商標)(モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン、及びデオキシドキソルビシンを含むドキソルビシン)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシンCなどのマイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、ピューロマイシン、ケラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメックス、ジノスタチン、ゾルビシン、メトトレキサート及び5-フルオロウラシル(5-FU)などの抗代謝物;デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサートなどの葉酸類似体;フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンなどのプリン類似体;アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロキシウリジンなどのピリミジン類似体;カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトンなどのアンドロゲン;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンなどの抗副腎剤;フロリン酸などの葉酸補液;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトレキサート;デフォファミン(defofamine);デメコルシン;ジアジクオン;エルホミチン(elfomithine);酢酸エリプチニウム;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダイニン、マイタンシン及びアンサミトシンなどのマイタンシノイド;ミトグアゾン、ミトキサントロン、モピダンノール(mopidamnol)、ニトラエリン、ペントスタチン;フェナメト;ピラルビシン;ロソキサントロン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖複合体(JHS Natural Products,Eugene,Oreg.)、ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2’,2’’-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特にT-2毒素、ベラキュリンA、ロリジンA、及びアングイジン);ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、例えば、Taxol(登録商標)(パクリタキセル;Bristol-Myers Squibb Oncology,Princeton,N.J.)、ABraxane(登録商標)(発色団不含)、パクリタキセルのアルブミン操作ナノ粒子製剤(American Pharmaceutical Partners,Schaumberg,Ill.)、及びTaxotere(登録商標)ドセタキセル(Rhone-Poulenc Rorer,Antony,France);クロランブシル(chloranmbucil);Gemzar(登録商標)ゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;シスプラチン、オキサリプラチン及びカルボプラチンなどの白金配位錯体;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン;Navelbine(登録商標)(ビノレルビン);ノバントロン;テニポシド;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;xeloda;イバンドロネート;イリノテカン(例えば、CPT-11);トポイソメラーゼ阻害剤RFS 2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸などのレチノイド;カペシタビン;ならびに上記のうちのいずれかの薬学的に許容される塩、酸、及び誘導体が挙げられる。2つ以上の化学療法剤をカクテルで使用して、本明細書に記載の第1の治療剤と組み合わせて投与することができる。組み合わせ化学療法の好適な投薬レジメンは、当技術分野において公知であり、例えば、Saltz et al.(1999)Proc ASCO 18:233a及びDouillard et al.(2000)Lancet 355:1041-7に記載されている。
【0104】
いくつかの実施形態では、第2の治療剤は、がん治療に使用されるサイトカイン(例えば、インターフェロンまたはインターロイキン(例えば、IL-2))などの生物学的製剤である治療剤である。いくつかの実施形態では、生物学的製剤は、抗VEGF剤、例えば、ベバシズマブ(Avastin(登録商標))などの抗血管新生剤である。いくつかの実施形態では、生物学的製剤は、免疫グロブリンベースの生物学的製剤、例えば、抗がん応答を刺激するため、またはがんにとって重要な抗原に拮抗するために標的を認識するモノクローナル抗体(例えば、ヒト化抗体、完全ヒト抗体、Fc融合タンパク質またはそれらの機能的断片)である。このような剤としては、リツキサン(リツキシマブ);Zenapax(ダクリズマブ);シムレクト(バシリキシマブ);シナギス(パリビズマブ);レミケード(インフリキシマブ);ハーセプチン(トラスツズマブ);マイロターグ(ゲムツズマブオゾガマイシン);キャンパス(アレムツズマブ);ゼヴァリン(イブリツモマブチウキセタン);ヒュミラ(アダリムマブ);ゾレア(オマリズマブ);Bexxar(トシツモマブ-I-131);ラプティバ(エファリズマブ);アービタックス(セツキシマブ);アバスチン(ベバシズマブ);タイサブリ(ナタリズマブ);アクテムラ(トシリズマブ);ベクティビックス(パニツムマブ);ルセンティス(ラニビズマブ);ソリリス(エクリズマブ);シムジア(セルトリズマブペゴル);シンポニー(ゴリムマブ);イラリス(カナキヌマブ);ステラーラ(ウステキヌマブ);アルゼラ(オファツムマブ);プラリア(デノスマブ);Numax(モタビズマブ);ABThrax(ラキシバクマブ);ベンリスタ(ベリムマブ);ヤーボイ(イピリムマブ);アドセトリス(ブレンツキシマブベドチン);パージェタ(ペルツズマブ);カドサイラ(アド-トラスツズマブエムタンシン);及びガザイバ(オビヌツズマブ)が挙げられる。また、抗体-薬物複合体も含まれる。
【0105】
第2の剤は、非薬物治療である治療剤であり得る。例えば、第2の治療剤は、放射線療法、凍結療法、温熱療法、及び/または腫瘍組織の外科的切除である。
第2の剤は、チェックポイント阻害剤であり得る。一実施形態では、チェックポイント阻害剤は、阻害性抗体(例えば、モノクローナル抗体などの単一特異性抗体)である。抗体は、例えば、ヒト化または完全にヒト抗体であり得る。いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、融合タンパク質、例えば、Fc受容体融合タンパク質である。いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、チェックポイントタンパク質と相互作用する抗体などの剤である。いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、チェックポイントタンパク質のリガンドと相互作用する抗体などの剤である。いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、CTLA-4(例えば、イピリムマブ/ヤーボイまたはトレメリムマブなどの抗CTLA4抗体)の阻害剤(例えば、阻害抗体または低分子阻害剤)である。いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、PD-1(例えば、ニボルマブ/Opdivo(登録商標);ペムブロリズマブ/Keytruda(登録商標);ピジリズマブ/CT-011)の阻害剤(例えば、阻害抗体または低分子阻害剤)である。いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、PDL1の阻害剤(例えば、阻害抗体または低分子阻害剤)(例えば、MPDL3280A/RG7446;MEDI4736;MSB0010718C;BMS936559)である。いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、PDL2(例えば、AMP224などのPDL2/Ig融合タンパク質)の阻害剤(例えば、阻害抗体またはFc融合または低分子阻害剤)である。いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、B7-H3(例えば、MGA271)、B7-H4、BTLA、HVEM、TIM3、GAL9、LAG3、VISTA、KIR、2B4、CD160、CGEN-15049、CHK1、CHK2、A2aR、B-7ファミリーリガンド、またはそれらの組み合わせの阻害剤(例えば、阻害抗体または低分子阻害剤)である。
【0106】
いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、外科手術、MEK阻害剤、及び/またはPKC阻害剤、またはそれらの組み合わせなどのブドウ膜黒色腫の治療に使用される別の抗がん療法と組み合わせて使用される。例えば、いくつかの実施形態では、この方法は、本発明の化合物の投与の前、後、または同時に外科手術を行うことをさらに含む。いくつかの実施形態では、この方法は、本発明の化合物の投与の前、後、または同時に、MEK阻害剤(例えば、セルメチニブ、ビニメチニブ、またはタメチニブ)及び/またはPKC阻害剤(例えば、ソトラスタウリンまたはIDE196)を投与することをさらに含む。
【0107】
本明細書に記載の組み合わせの実施形態のいずれかにおいて、第1の治療剤及び第2の治療剤は、同時にまたはいずれかの順序で順次投与される。第1の治療剤は、第2の治療剤の前または後に、即時、最大1時間、最大2時間、最大3時間、最大4時間、最大5時間、最大6時間、最大7時間、最大8時間、最大9時間、最大10時間、最大11時間、最大12時間、最大13時間、14時間、最大16時間、最大17時間、最大18時間、最大19時間、最大20時間、最大21時間、最大22時間、最大23時間、最大24時間、または最大1~7日、1~14日、1~21日、または1~30日の時間内で投与され得る。
【0108】
医薬組成物
本発明の化合物は、好ましくは、in vivoでの投与に好適である生物学的に適合性のある形態で、哺乳動物、好ましくはヒトに投与するために医薬組成物に製剤化される。したがって、一態様では、本発明は、好適な希釈剤、担体、または賦形剤と混合された本発明の化合物を含む医薬組成物を提供する。
【0109】
本発明の化合物は、遊離塩基の形態で、塩の形態で、溶媒和物で、及びプロドラッグとして使用され得る。すべての形態は、本発明の範囲内である。本発明の方法によれば、記載された化合物またはその塩、溶媒和物、またはプロドラッグは、当業者によって理解されるように、選択された投与経路に応じて様々な形態で患者に投与され得る。本発明の化合物は、例えば、経口、非経口、頬側、舌下、鼻腔、直腸、パッチ、ポンプ、または経皮投与によって投与され得、医薬組成物は、それに応じて製剤化される。非経口投与としては、静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、経上皮、経鼻、肺内、髄腔内、直腸、及び局所投与様式が含まれる。非経口投与は、選択された期間にわたる持続注入によるものであり得る。
【0110】
本発明の化合物は、例えば、不活性希釈剤または同化可能な食用担体と共に経口投与され得るか、またはハードシェルもしくはソフトシェルのゼラチンカプセルに封入され得るか、または錠剤に圧縮され得るか、または食事療法の食品に直接組み込まれ得る。経口治療投与の場合、本発明の化合物は、賦形剤と共に組み込まれ、摂取可能な錠剤、口腔内錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル剤、懸濁液、シロップ、及びウエハーの形態で使用され得る。
【0111】
本発明の化合物は、非経口投与されてもよい。本発明の化合物の溶液は、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と適切に混合された水中で調製され得る。分散液は、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、DMSO、及びアルコールを含むまたは含まないそれらの混合物、及び油中で調製され得る。これらの製剤は、通常の保存条件及び使用条件下で、微生物の増殖を防止するための保存剤を含有してもよい。好適な製剤を選択及び調製するための従来の手順及び成分は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences(2003,20th ed.)及び1999年に発行されたThe United States Pharmacopeia:The National Formulary(USP24NF19)に記載されている。注射用途に適切な医薬形態には、注入可能な滅菌溶液または滅菌分散液を即時調製するための滅菌水溶液または滅菌分散液及び滅菌粉末が含まれる。全ての場合において、この形態は滅菌されているものとし、これがシリンジにより容易に投与され得る程度に流体であるものとする。
【0112】
本明細書に記載の化合物は、例えば腫瘍内注射として腫瘍内に投与され得る。腫瘍内注射は、腫瘍血管系への直接注射であり、個別の、固形の、アクセス可能な腫瘍に対して特に企図されている。局所、局部、または全身への投与も適切であり得る。本明細書に記載の化合物は、例えば、おおよそ1cm間隔で、腫瘍に注射または複数回注射を行うことによって有利に接触させ得る。外科的介入の場合、本発明は、例えば手術不能な腫瘍を切除するために、術前に使用され得る。連続投与はまた、適切な場合、例えば、腫瘍または腫瘍血管系にカテーテルを移植することによって適用され得る。
【0113】
本発明の化合物は、本明細書に記載のように、動物、例えば、ヒトに、単独で、または薬学的に許容される担体と組み合わせて投与され得、その割合は、化合物の溶解性及び化学的性質、選択された投与経路、及び標準的な医薬慣行によって決定される。
【0114】
投薬量
本発明の化合物及び/または本発明の化合物を含む組成物の投薬量は、多くの要因、例えば、化合物の薬力学的特性;投与様式;治療対象の年齢、健康状態、及び体重;症状の性質及び程度;治療頻度、及び同時治療の種類(存在する場合);及び治療される動物における化合物のクリアランス率に応じて変化し得る。当業者は、上記の要因に基づいて適切な投薬量を決定することができる。本発明の化合物は、臨床応答に応じて、必要に応じて調節され得る好適な投薬量で最初に投与され得る。一般に、本発明の化合物が、例えば、0.05mg~3000mg(固体形態として測定)の1日投薬量でヒトに投与される場合、満足のいく結果が得られ得る。
【0115】
あるいは、投薬量は、患者の体重を用いて計算され得る。例えば、患者に投与される化合物またはその医薬組成物の用量は、0.1~50mg/kgの範囲であり得る。
【実施例】
【0116】
以下の略語は、実施例の項全体で使用される。
【0117】
【0118】
実施例1.N-((S)-1-((4-(6-(cis-2,6-ジメチルモルホリノ)ピリジン-2-イル)チアゾール-2-イル)アミノ)-3-メトキシ-1-オキソプロパン-2-イル)-1-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-カルボキサミドの調製
N-((S)-1-((4-(6-(cis-2,6-ジメチルモルホリノ)ピリジン-2-イル)チアゾール-2-イル)アミノ)-3-メトキシ-1-オキソプロパン-2-イル)-1-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-カルボキサミドは、以下のスキーム1に示すように合成した。
【0119】
スキーム1.
【0120】
【0121】
ステップ1:6-フルオロピリジン-2-カルボニルクロリド(中間体B)の調製
【0122】
【0123】
ジクロロメタン(500mL)及びN,N-ジメチルホルムアミド(0.26mL、3.54mmol)中の6-フルオロピリジン-2-カルボン酸(50.0g、354mmol)の冷却(0℃)溶液に、塩化オキサリル(155mL、1.77mol)を添加した。塩化オキサリルを完全に添加後、反応混合物を室温まで加温した。0.5時間後、混合物を真空濃縮して、中間体B(56.50g)を白色固体として得、これをさらに精製することなく次のステップで使用した。
【0124】
ステップ2:2-クロロ-1-(6-フルオロ-2-ピリジル)エテノン(中間体C)の調製
【0125】
【0126】
中間体B(56.0g、351mmol)を含む1,4-ジオキサン(800mL)冷却(0℃)混合物に、2Mトリメチルシリルジアゾメタンを含むヘキサン溶液(351mL、702ミリモル)を滴下して加えた。得られた反応混合物を、25℃で10時間撹拌した。続いて、反応混合物を、4M HClを含む1,4-ジオキサン(500mL、2.0モル)溶液でクエンチした。2時間撹拌後、反応溶液を真空濃縮して油を得た。残留物を飽和NaHCO3水溶液で希釈し、酢酸エチルで3回抽出した。組み合わせた有機層をブラインで2回洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、減圧濃縮して、中間体C(35.5g)を白色固体として得、これを次のステップに直接使用した。
【0127】
LCMS(ESI)m/z:[M+H]+=173.8。
ステップ3:4-(6-フルオロ-2-ピリジル)チアゾール-2-アミン(中間体E)の調製
【0128】
【0129】
中間体C(35.5g、205mmol)及びチオ尿素(14.0g、184mmol)を含むメタノール(250mL)及び水(250mL)の混合物の溶液に、室温で、NaF(3.56g、84.8mmol)を添加した。0.5時間撹拌後、反応混合物を部分的に真空濃縮して、MeOHを除去し、得られた溶液を2M HCl水溶液でpH約3に酸性化した。15分後、溶液を酢酸エチルで3回抽出した。有機層を廃棄し、水相を飽和NaHCO3水溶液でアルカリ化し、30分間撹拌し、酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機層をブラインで3回洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、減圧濃縮した。残留物を石油エーテルでトリチュレートし、25℃で10分間撹拌し、濾過した。得られた固体を真空乾燥させて、中間体E(28.0g、143mmol、収率70.1%、純度100%)を白色固体として得た。
【0130】
LCMS(ESI)m/z:[M+H]+=195.8。
1HNMR(400MHz,DMSO-d6)δ8.00-7.96(m,1H),7.72(d,J=7.2Hz,1H),7.24(s,1H),7.16(s,2H),7.02(d,J=8.0Hz,1H)。
【0131】
ステップ4:4-[6-[cis-2,6-ジメチルモルホリン-4-イル]-2-ピリジル]チアゾール-2-アミン(中間体G)の調製
【0132】
【0133】
中間体E(2.00g、10.3mmol)、cis-2,6-ジメチルモルホリン(3.54g、30.7mmol)、及びDIPEA(5.35mL、30.7mmol)を含むジメチルスルホキシド(10mL)の10個の別々の混合物を、N2雰囲気下、120℃で並行して撹拌した。36時間後、反応混合物を合わせて、水に滴加した。得られた懸濁液を濾過し、フィルターケーキを水で3回、石油エーテルで1回洗浄し、次に減圧乾燥させて、中間体G(25.5g、87.8mmol、収率95.2%)を黄色固体として得た。
【0134】
LCMS(ESI)m/z:[M+H]+=291.2。
1HNMR(400MHz,DMSO-d6)δ7.56-7.54(m,1H),7.17(s,1H),7.13(d,J=7.6Hz,1H),7.01(s,2H),6.72(d,J=8.8Hz,1H),4.26-4.15(m,2H),3.67-3.55(m,2H),2.38-2.34(m,2H),1.17(d,J=6.4Hz,6H)。
【0135】
ステップ5:tert-ブチルN-[(1S)-2-[[4-[6-[cis-2,6-ジメチルモルホリン-4-イル]-2-ピリジル]チアゾール-2-イル]アミノ]-1-(メトキシメチル)-2-オキソ-エチル]カルバメート(中間体I)の調製
【0136】
【0137】
中間体G(12.0g、41.3mmol)及び(2S)-2-(tertブトキシカルボニルアミノ)-3-メトキシ-プロパン酸(10.9g、49.6mmol)を含むジクロロメタン(60mL)溶液に、EEDQ(12.3g、49.6mmol)を添加した。室温で16時間撹拌した後、反応混合物を減圧下で濃縮して残留物を得た。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル=2:1~3:2)で精製して、中間体I(20.0g、40.7mmol、収率98.5%)を黄色のガムとして得た。
【0138】
LCMS(ESI)m/z:[M+H]+=492.2。
1HNMR(400MHz,DMSO-d6)δ12.37(s,1H),7.78(s,1H),7.64-7.60(m,1H),7.25(d,J=7.2Hz,1H),7.16(d,J=7.2Hz,1H),6.79(d,J=8.4Hz,1H),4.50-4.48(m,1H),4.25(d,J=11.6Hz,2H),3.70-3.51(m,4H),3.26(s,3H),2.44-2.40(m,2H),1.39(s,9H),1.18(d,J=6.4Hz,6H)。
【0139】
ステップ6:(S)-4-(4-(6-(cis-2,6-ジメチルモルホリノ)ピリジン-2-イル)チアゾール-2-イル)-1-メトキシ-3-オキソブタン-2-アミニウム塩化物(中間J)の調製
【0140】
【0141】
4M HClを含む1,4-ジオキサン(200mL、800mmol)溶液に、中間体I(20.0g、40.7mmol)を含むジクロロメタン(50mL)溶液を添加した。室温で2時間撹拌した後、混合物をメチルtert-ブチルエーテルで希釈して懸濁液を得た。固体を濾過により収集し、メチルtert-ブチルエーテルで2回洗浄し、真空乾燥させて、中間体J(19.0g)を黄色固体として得、これをさらに精製することなく次のステップで使用した。
【0142】
LCMS(ESI)m/z:[M+H]+=392.3。
1HNMR(400MHz,DMSO-d6)δ13.44-12.30(m,1H),8.65(d,J=4.4Hz,3H),7.87(s,1H),7.66-7.64(m,1H),7.25(d,J=7.2Hz,1H),6.83(d,J=8.8Hz,1H),4.39-4.30(m,1H),4.25(d,J=11.6Hz,2H),3.94-3.86(m,1H),3.85-3.77(m,1H),3.69-3.57(m,2H),3.31(s,3H),2.43(m,2H),1.18(d,J=6.4Hz,6H)。
【0143】
1-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-カルボン酸(中間体K)の調製
1-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-カルボン酸は、以下のスキーム2に示すとおりに合成した。
【0144】
スキーム2
【0145】
【0146】
ステップA:tert-ブチル1H-ピロール-3-カルボキシレート(中間体N)の調製
【0147】
【0148】
tert-ブチル-プロプ-2-エノエート(78.6mL、542mmol)及び1-(イソシアノメチルスルホニル)-4-メチルベンゼン(106g、542mmol)の混合物を含むTHF(1300mL)に、60%NaHを含むミネラル油(25.97g、649mmol)を、30℃で1時間かけてゆっくりと添加し、70℃まで加熱した。2時間後、反応混合物を飽和NH4Cl水溶液に注ぎ、酢酸エチルで3回抽出した。有機相を合わせ、ブラインで洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、濾過し、減圧濃縮させ、残留物を得た。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル=20:1~3:1)で精製して、中間体N(41.5g、236mmol、収率43%)を黄色固体として得た。
【0149】
LCMS(ESI)m/z[M+Na]+=180.4。
1HNMR(400MHz,CDCl3)δ8.36(brs,1H),7.35-7.25(m,1H),6.71-6.62(m,1H),6.59-6.49(m,1H),1.48(s,9H)。
【0150】
ステップB:tert-ブチル1-メチルスルホニルピロール-3-カルボキシレート(中間体O)の調製
【0151】
【0152】
中間体N(40.5g、242mmol)を含むTHF(1500mL)冷却溶液(0℃)に、1M NaHMDS溶液(484mL、484mmol)を加えた。0℃で30分間撹拌した後、メタンスルホニルクロリド(28.1mL、363mmol)をゆっくりと添加し、混合物を30℃まで加温した。16時間後、反応混合物を飽和NH4Cl水溶液にゆっくり注ぎ、酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機層をブラインで2回洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させ、濾過し、減圧濃縮して、残留物を得た。残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル=10:1)で精製して、黄色固体を得た。黄色固体をメチルtert-ブチルエーテルで室温でトリチュレートし、20分間撹拌し、濾過し、真空乾燥させて、中間体O(25.7g、105mmol、収率43%)を白色固体として得た。
【0153】
1HNMR(400MHz,CDCl3)δ7.66-7.64(m,1H),7.10-7.08(m,1H),6.73-6.71(m,1H),3.21(s,3H),1.56(s,9H)。
【0154】
ステップC:1-メチルスルホニルピロール-3-カルボン酸(中間体K)の調製
【0155】
【0156】
中間体O(25.7g、105mmol)を含む1,4-ジオキサン(100mL)混合物に、15℃で、HClを含む1,4-ジオキサン(400mL、1.6mol)を含む4M溶液を加えた。15℃で14時間撹拌した後、反応混合物を減圧濃縮して、残留物を得た。残留物をメチルtert-ブチルエーテルで15℃で16時間トリチュレートした。混合物を濾過し、真空乾燥させて、中間体K(18.7g、98.8mmol、収率94%)を白色固体として得た。
【0157】
LCMS(ESI)m/z[M+H]+=189.8。
1HNMR(400MHz,メタノール-d4)δ7.78-7.77(m,1H),7.25-7.23(m,1H),6.72-6.70(m,1H),3.37(s,3H)。
【0158】
ステップ7:N-((S)-1-((4-(6-(cis-2,6-ジメチルモルホリノ)ピリジン-2-イル)チアゾール-2-イル)アミノ)-3-メトキシ-1-オキソプロパン-2-イル)-1-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-カルボキサミドの調製
【0159】
【0160】
1-メチルスルホニルピロール-3-カルボン酸(中間体K)(2.43g、12.9mmol)、EDCI(2.69g、14.0mmol)、HOBt(1.89g、14.0mmol)、及びDIPEA(10.2mL、58.4mmol)を含むジクロロメタン(50mL)の溶液に中間体J(5.00g、11.7mmol)を添加した。室温で4時間撹拌した後、反応混合物を減圧濃縮した。残留物を水で希釈し、酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機層を飽和NH4Cl水溶液で3回、ブラインで1回洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、減圧濃縮して残留物を得た。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル=1:1~1:2)により精製した。残留物をメチルtert-ブチルエーテルでトリチュレートした。0.5時間後、懸濁液を濾過し、フィルターケーキをメチルtert-ブチルエーテルで洗浄し、真空乾燥させた。固体をジメチルスルホキシド(12mL)に溶解し、水(800mL)に滴下した。懸濁液を濾過して、湿ったフィルターケーキを得た。フィルターケーキを水に懸濁し、室温で撹拌した。1時間後、固体を濾過により収集し、水で3回洗浄し、真空乾燥させて、N-((S)-1-((4-(6-(cis-2,6-ジメチルモルホリノ)ピリジン)-2-イル)チアゾール-2-イル)アミノ)-3-メトキシ-1-オキソプロパン-2-イル)-1-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-カルボキサミド(3.9g、6.93mmol、収率59.3%)を白色固体として得た。
【0161】
LCMS(ESI)m/z:[M+H]+=563.1。
1HNMR(400MHz,DMSO-d6)δ12.49(brs,1H),8.51(d,J=7.2Hz,1H),7.98-7.97(m,1H),7.78(s,1H),7.67-7.57(m,1H),7.29-7.27(m,1H),7.26(d,J=7.2Hz,1H),6.88-6.74(m,2H),4.94-4.91(m,1H),4.25(d,J=11.6Hz,2H),3.77-3.67(m,2H),3.63-3.62(m,2H),3.57(s,3H),3.31(s,3H),2.44-2.38(m,2H),1.18(d,J=6.0Hz,6H)。
【0162】
実施例2.N-((S)-1-((4-(6-(cis-2,6-ジメチルモルホリノ)ピリジン-2-イル)チアゾール-2-イル)アミノ)-3-(メトキシ-d3)-1-オキソプロパン-2-イル-3,3-d2)-1-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-カルボキサミドの調製
【0163】
【0164】
N-((S)-1-((4-(6-(cis-2,6-ジメチルモルホリノ)ピリジン-2-イル)チアゾール-2-イル)アミノ)-3-(メトキシ-d3)-1-オキソプロパン-2-イル-3,3-d2)-1-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-カルボキサミドは、中間体HをN-(tert-ブトキシカルボニル)-O-(メチル-d3)-L-セリン-3,3-d2に置き換えて、実施例1に記載の合成プロトコルに従って調製した。N-(tert-ブトキシカルボニル)-O-(メチル-d3)-L-セリン-3,3-d2は、A.Yang et al,Org.Process Res.Dev.2019,23,818-824に記載の合成手順に従って、同位体濃縮された材料から調製した。
【0165】
LCMS(ESI)m/z:[M+H]+=568.2。
1HNMR(400MHz,DMSO-d6)δ12.45(s,1H),8.47(d,J=7.2Hz,1H),7.98(dd,J=2.3,1.7Hz,1H),7.78(s,1H),7.62(dd,J=8.5,7.4Hz,1H),7.29(dd,J=3.2,2.3Hz,1H),7.26(d,J=7.3Hz,1H),6.84-6.75(m,2H),4.91(d,J=7.2Hz,1H),4.25(dd,J=13.1,2.3Hz,2H),3.69-3.59(m,2H),3.56(s,3H),2.42(dd,J=12.8,10.5Hz,2H),1.18(d,J=6.2Hz,6H)。
【0166】
実施例3.N-((R)-1-((4-(6-(cis-2,6-ジメチルモルホリノ)ピリジン-2-イル)チアゾール-2-イル)アミノ)-3-(メトキシ)-1-オキソプロパン-2-イル)-1-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-カルボキサミドの調製
N-((R)-1-((4-(6-(cis-2,6-ジメチルモルホリノ)ピリジン-2-イル)チアゾール-2-イル)アミノ)-3-(メトキシ)-1-オキソプロパン-2-イル)-1-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-カルボキサミドは、中間体Hを(2R)-2-(tertブトキシカルボニルアミノ)-3-メトキシ-プロパン酸に置き換えて、実施例1に記載の合成プロトコルに従って調製した。
【0167】
LCMS(ESI)m/z:[M+H]+=563.1。
1HNMR(400MHz,DMSO-d6)δ12.5(s,1H),8.50(d,J=7.2Hz,1H),7.98(t,J=1.6Hz,1H),7.78(s,1H),7.62(dd,J=7.2,8.4Hz,1H),7.29(dd,J=2.0,3.2Hz,1H),7.26(d,J=7.2Hz,1H),6.79-6.81(m,2H),4.92(q,J=6.4,12.8Hz,1H),4.25(d,J=11.2Hz,2H),3.69-3.75(m,2H),3.59-3.66(m,2H),3.56(s,3H),3.31(s,3H),2.41(dd,J=10.8,12.8Hz,2H),1.18(d,J=6.0Hz,6H)。
【0168】
実施例4.N-((R)-1-((4-(6-(cis-2,6-ジメチルモルホリノ)ピリジン-2-イル)チアゾール-2-イル)アミノ)-3-(メトキシ-d3)-1-オキソプロパン-2-イル-3,3-d2)-1-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-カルボキサミドの調製
N-((R)-1-((4-(6-(cis-2,6-ジメチルモルホリノ)ピリジン-2-イル)チアゾール-2-イル)アミノ)-3-(メトキシ-d3)-1-オキソプロパン-2-イル-3,3-d2)-1-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-カルボキサミドは、中間体HをN-(tert-ブトキシカルボニル)-O-(メチル-d3)-D-セリン-3,3-d2に置き換えて、実施例1に記載の合成プロトコルに従って調製した。N-(tert-ブトキシカルボニル)-O-(メチル-d3)-D-セリン-3,3-d2は、A.Yang et al,Org.Process Res.Dev.2019,23,818-824に記載の合成手順に従って、同位体濃縮された材料から調製した。
【0169】
LCMS(ESI)m/z:[M+H]+=568.3。
1HNMR(400MHz,DMSO-d6)δ12.46(s,1H),8.52-8.38(m,1H),7.97(t,J=1.9Hz,1H),7.76(s,1H),7.62(dd,J=8.5,7.3Hz,1H),7.29(dd,J=3.3,2.3Hz,1H),7.26(d,J=7.4Hz,1H),6.79(dt,J=5.1,1.8Hz,2H),4.89(d,J=5.2Hz,1H),4.31-4.20(m,2H),3.63(ddd,J=10.5,6.2,2.5Hz,2H),3.56(s,3H),2.41(dd,J=12.8,10.5Hz,2H),1.18(d,J=6.2Hz,6H).
実施例5.BRM及びBRG-1のATPアーゼ触媒活性のアッセイ
BRMまたはBRG-1のATPアーゼ触媒活性は、ADP-Glo(商標)(Promega、V9102)を使用したin vitro生化学的アッセイによって測定された。反応が完了したら、ADP-Glo(商標)キナーゼアッセイを2段階で実施した。第1のステップでは、反応中で消費されていないあらゆるATPを枯渇させる。第2のステップでは、反応生成物ADPをATPに変換し、これは、ルシフェラーゼによって利用されて発光を生じ、Envisionなどの発光リーダーによって検出される。
【0170】
アッセイ反応混合物(10μL)には、30nMのBRMまたはBRG-1、20nMのサーモン精子DNA(Invitrogen、UltraPure(商標)Salmon Sperm DNA Solution、カタログ番号15632011)、及び400μMのATPを含むATPアーゼアッセイバッファーが含まれ、バッファーは、20mM Tris、pH8、20mM MgCl2、50mM NaCl、0.1%Tween-20、及び1mMフレッシュDTT(Pierce(商標)DTT(ジチオスレイトール)、カタログ番号20290)で構成されている。低容量の白色Proxiplate-384プラスプレート(PerkinElmer、カタログ番号6008280)上の2.5μLのATP/DNA溶液に2.5μLのATPアーゼ溶液を添加することによって反応が開始され、室温で1時間インキュベートした。次に、キットに含まれている5μLのADP-Glo(商標)試薬を添加した後、反応物を室温で40分間インキュベートした。次に、キットに含まれている10μLのキナーゼ検出試薬を添加して、ADPをATPに変換し、反応物を室温で60分間インキュベートした。最後に、発光測定は、Envisionなどのプレートリーダールミノメータを用いて収集させる。
【0171】
BRM及びBRG-1は、純度が90%を超えるHigh Five昆虫細胞株から合成した。
N-((S)-1-((4-(6-(cis-2,6-ジメチルモルホリノ)ピリジン-2-イル)チアゾール-2-イル)アミノ)-3-メトキシ-1-オキソプロパン-2-イル)-1-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-カルボキサミドは、アッセイにおいて、BRMに対して3.9nM及びBRG1に対して5.2nMのIP50を有することが見出された。N-((R)-1-((4-(6-(cis-2,6-ジメチルモルホリノ)ピリジン-2-イル)チアゾール-2-イル)アミノ)-3-(メトキシ-d3)-1-オキソプロパン-2-イル-3,3-d2)-1-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-カルボキサミドは、アッセイにおいて、BRMに対して443nM及びBRG1に対して777nMのIP50を有することが見出された。N-((S)-1-((4-(6-(cis-2,6-ジメチルモルホリノ)ピリジン-2-イル)チアゾール-2-イル)アミノ)-3-(メトキシ-d3)-1-オキソプロパン-2-イル-3,3-d2)-1-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-カルボキサミドは、アッセイにおいて、BRMに対して4.6nM及びBRG1に対して7.4nMのIP50を有することが見出された。
【0172】
実施例6:化合物Aの合成
BRG1/BRM阻害剤化合物Aは、以下の構造を有する:
【0173】
【0174】
化合物Aは、以下のスキーム3に示されるように合成した。
スキーム3.化合物Aの合成
【0175】
【0176】
化合物Aの存在下でのBRMまたはBRG-1のATPアーゼ触媒活性は、上記のADP-Glo(商標)(Promega、V9102)を使用したin vitro生化学的アッセイによって測定した。化合物Aは、アッセイにおいてBRMに対して10.4nM、BRG1に対して19.3nMのIP50を有することが見出された。
【0177】
実施例7.ブドウ膜黒色腫細胞株及び血液癌細胞株の成長に対するBRG1/BRM ATPアーゼ阻害の効果
手順:ブドウ膜黒色腫細胞株(92-1、MP41、MP38、MP46)、前立腺癌細胞株(LNCAP)、肺癌細胞株(NCI-H1299)、及び不死化胚性腎臓株(HEK293T)を、成長培地を含む96ウェルプレートに播種した(表1を参照)。BRG1/BRM ATPアーゼ阻害剤である化合物AをDMSOに溶解し、播種時に0~10μMの濃度勾配で細胞に添加した。細胞を37℃で3日間インキュベートした。3日間処理した後、培地を細胞から除去し、30マイクロリットルのTrypLE(Gibco)を10分間細胞に添加した。細胞をプレートから剥離させ、170マイクロリットルの成長培地を添加して再懸濁させた。2つのDMSO処理対照ウェルからの細胞をカウントし、実験開始時に播種した最初の細胞数を、37℃でさらに4日間、新鮮な化合物を含むプレートに再播種した。7日目に、上記のように細胞を回収した。3日目及び7日目に、Cell-titer glo(Promega)を添加して相対的な細胞成長を測定し、Envisionプレートリーダー(Perkin Elmer)で発光を測定した。各細胞株の成長が50%阻害された化合物の濃度(GI50)は、Graphpad Prismを使用して計算され、以下にプロットさせる。多発性骨髄腫細胞株(OPM2、MM1S、LP1)、すべての細胞株(TALL1、JURKAT、RS411)、DLBCL細胞株(SUDHL6、SUDHL4、DB、WSUDLCL2、PFEIFFER)、AML細胞株(OCIAML5)、MDS細胞株(SKM1)、卵巣癌細胞株(OV7、TYKNU)、食道癌細胞株(KYSE150)、ラブドイド腫瘍株(RD、G402、G401、HS729、A204)、肝癌細胞株(HLF、HLE、PLCRPF5)、及び肺癌細胞株(SW1573、NCIH2444)では、以下の変更を加えて上記の方法を実施した:細胞を96ウェルプレートに播種し、その翌日、BRG1/BRM ATPアーゼ阻害剤である化合物AをDMSOに溶解し、0~10μMの濃度勾配で細胞に添加した。3日目及び7日目の細胞分割時に、細胞を新しい96ウェルプレートに分割し、再播種の4時間後に新鮮な化合物を添加した。表1に、試験細胞株及び使用した成長培地を示す。
【0178】
【0179】
結果:
図1に示すとおり、ブドウ膜黒色腫及び血液癌細胞株は、他の試験を行った細胞株よりもBRG1/BRM阻害に対して感受性が高かった。ブドウ膜黒色腫及び血液癌細胞株の阻害は、7日目まで維持された。
【0180】
実施例8.ブドウ膜黒色腫細胞株におけるBRG1/BRM阻害剤と臨床PKC及びMEK阻害剤との比較
手順:ブドウ膜黒色腫細胞株、92-1またはMP41を、成長培地の存在下で96ウェルプレートに播種した(表1を参照)。BAF ATPアーゼ阻害剤(化合物A)、PKC阻害剤(LXS196;MedChemExpress)、またはMEK阻害剤(セルメチニブ;Selleck Chemicals)をDMSOに溶解し、播種時に0~10μMの濃度勾配で細胞に添加した。細胞を37℃で3日間インキュベートした。3日間処理した後、細胞成長をCell-titer glo(Promega)で測定し、発光をEnvisionプレートリーダー(Perkin Elmer)で読み取った。
【0181】
結果:
図2及び
図3に示すとおり、化合物Aは、臨床PKC及びMEK阻害剤と同等のブドウ膜黒色腫細胞の成長阻害を示した。さらに、化合物Aは、臨床的PKC及びMEK阻害剤よりも速い阻害の開始をもたらすことが判明した。
【0182】
実施例9:化合物Bの合成
BRG1/BRM阻害剤化合物Bは、以下の構造を有する:
【0183】
【0184】
化合物Bは、以下のスキーム4に示すとおり合成した。
スキーム4.化合物Bの合成
【0185】
【0186】
(2S)-2-アミノ-4-メチルスルファニル-N-[4-[3-(4-ピリジル)フェニル]チアゾール-2-イル]ブタンアミド(2g、4.75mmol、HCl塩)及び1-メチルスルホニルピロール-3-カルボン酸(898.81mg、4.75mmol)の混合物を含むDMF(20mL)に、EDCI(1.37g、7.13mmol)、HOBt(962.92mg、7.13mmol)、及びDIEA(2.46g、19.00mmol、3.31mL)を添加し、混合物を25℃で3時間撹拌した。混合物をH2O(100mL)に注ぎ、沈殿物を濾過により収集した。固体をMeOH(20mL)でトリチュレートし、沈殿物を濾過により収集した。固体をDMSO(10mL)に溶解し、次に混合物をMeOH(50mL)に注ぎ、形成された沈殿物を濾過により収集し、凍結乾燥して、化合物B(2.05g、3.66mmol、収率77.01%)を白色固体として得た。
【0187】
LCMS(ESI)m/z[M+H]+=555.9。
1HNMR(400MHz,DMSO)δ12.49(s,1H),8.68-8.66(m,2H),8.46(d,J=7.2Hz,1H),8.31-8.30(m,1H),8.02-8.00(m,1H),7.94-7.96(m,1H),7.83(s,1H),7.73-7.74(m,3H),7.61-7.57(m,1H),7.31-7.29(m,1H),6.79-6.77(m,1H),4.74-4.69(m,1H),3.57(s,3H),2.67-2.53(m,2H),2.13-2.01(m,5H)。ee%=100%。
【0188】
記載されたATPアーゼアッセイにおいて、化合物Bは、BRMに対して3.6nM及びBRG1に対して5.7nMのIP50を有することが見出された。
実施例10.ブドウ膜黒色腫、血液癌、前立腺癌、乳癌、及びユーイング肉腫細胞株の成長に対するBRG1/BRM ATPアーゼ阻害の効果
手順:上記実施例7に記載されたすべての細胞株もまた、化合物Bを用いて上記のように試験を行った。さらに、以下の細胞株もまた、以下のように試験を行った。簡潔に言えば、ユーイング肉腫細胞株(CADOES1、RDES、SKES1),網膜芽細胞腫細胞株(WERIRB1)、ALL細胞株(REH)、AML細胞株(KASUMI1)、前立腺癌細胞株(PC3、DU145、22RV1)、黒色腫細胞株(SH4、SKMEL28、WM115、COLO829、SKMEL3、A375)、乳癌細胞株(MDAMB415、CAMA1、MCF7、BT474、HCC1419、DU4475、BT549)、B-ALL細胞株(SUPB15)、CML細胞株(K562、MEG01)、バーキットリンパ腫細胞株(RAMOS2G64C10、DAUDI)、マントル細胞リンパ腫細胞株(JEKO1、REC1)、膀胱癌細胞株(HT1197)、及び肺癌細胞株(SBC5)では、以下の変更を加えて上記の方法を実施した:細胞を96ウェルプレートに播種し、その翌日、BRG1/BRM ATPアーゼ阻害剤である化合物BをDMSOに溶解し、0~10μMの濃度勾配で細胞に添加した。3日目及び7日目の細胞分割時に、細胞を新しい96ウェルプレートに分割し、再播種の4時間後に新鮮な化合物を添加した。表2に、試験細胞株及び使用した成長培地を示す。
【0189】
【0190】
結果:
図4に示すとおり、ブドウ膜黒色腫、血液癌、前立腺癌、乳癌、及びユーイング肉腫細胞株は、他の試験細胞株よりもBRG1/BRM阻害に対して感受性が高かった。ブドウ膜黒色腫、血液癌、前立腺癌、乳癌、及びユーイング肉腫細胞株の阻害は、7日目まで維持された。
【0191】
実施例11.癌細胞株の成長に対するBRG1/BRM ATPアーゼ阻害の効果。
手順:プールされた細胞生存率アッセイは、PRISM(混合物での相対的阻害の同時プロファイリング)を用いて、以下の変更を加えて、先の記載のように実施した(「High-throughput identification of genotype-specific cancer vulnerabilities in mixtures of barcoded tumor cell lines」、Yu et al,Nature Biotechnology 34,419-423,2016)。細胞株は、Cancer Cell Line Encyclopedia(CCLE)コレクションから入手し、フェノールレッドを含まないRPMI-1640培地に適合させ、10%熱不活化ウシ胎児血清(FBS)を添加して、独自の感染及びプーリングプロトコルをこの細胞株の大きなリストに適用した。ブラストサイジンを選択マーカーとして使用して、各細胞株に24ヌクレオチドバーコードを導入するために、レンチウイルススピン感染プロトコルを実行して、すべての細胞株の推定感染多重度(MOI)を1にした。次に、安定してバーコードが付けられた750を超えるPRISM癌細胞株を、25のプールで倍加時間に従って一緒にプールした。スクリーニングの実施では、前述のとおり(Yu et al.)各ウェルに25細胞株のプールを播種する代わりに、それぞれ、T25フラスコ(100,000細胞/フラスコ)または6ウェルプレート(50,000細胞/ウェル)を使用して、すべての付着細胞株プールまたはすべての浮遊細胞株プールを一緒に播種した。細胞は、DMSOまたは化合物のいずれかを用いて、最高濃度10μMから開始して、8点、3倍の用量反応で3重で処理を行った。アッセイのロバストの対照として、細胞を2つの以前検証された化合物、pan-Raf阻害剤AZ-628、及びプロテアソーム阻害剤ボルテゾミブで、並行して、それぞれ最高濃度2.5μM及び0.039μMを使用して処理した。
【0192】
化合物を用いて3日間処理した後、細胞を溶解し、ゲノムDNAを抽出し、バーコードをPCRで増幅し、次世代シーケンシングで検出した。細胞生存率は、処理サンプル中の細胞株固有のバーコードの数を、DMSO対照及び0日目の対照中のバーコードの数と比較することによって決定した。用量反応曲線を各細胞株にフィッテイングさせ、対応する曲線下面積(AUC)を計算し、すべての細胞株の中央値AUCと比較した(
図5)。
【0193】
結果:中央値未満のAUCを有する細胞株を最も感受性が高いと見なした。
実施例12.ブドウ膜黒色腫細胞株の成長に対するBRG1/BRM ATPアーゼ阻害剤の効果。
【0194】
手順:ブドウ膜黒色腫細胞株(92-1、MP41、MP38、MP46)及び非小細胞肺癌細胞(NCIH1299)を、成長培地を含む96ウェルプレートに播種した(表2を参照)。BRG1/BRM ATPアーゼ阻害剤である化合物BをDMSOに溶解し、播種時に0~10μMの濃度勾配で細胞に添加した。細胞を37℃で3日間インキュベートした。3日間の処理後、細胞成長をCell-titer glo(Promega)で測定し、発光をEnvisionプレートリーダー(Perkin Elmer)で読み取った。
【0195】
結果:
図6に示すとおり、化合物Bは細胞株において、強力な成長阻害をもたらした。
実施例13.ブドウ膜黒色腫細胞株におけるBRG1/BRM阻害剤と臨床PKC及びMEK阻害剤との比較
手順:ブドウ膜黒色腫細胞株、92-1またはMP41を、成長培地の存在下で96ウェルプレートに播種した(表2を参照)。BAF ATPアーゼ阻害剤(化合物B)、PKC阻害剤(LXS196;MedChemExpress)、及びMEK阻害剤(セルメチニブ;Selleck Chemicals)をDMSOに溶解し、播種時に0~10μMの濃度勾配で細胞に添加した。細胞を37℃で3日間インキュベートした。3日間の処理後、細胞成長をCell-titer glo(Promega)で測定し、発光をEnvisionプレートリーダー(Perkin Elmer)で読み取った。
【0196】
結果:
図7及び
図8に示すとおり、化合物Bは、臨床PKC及びMEK阻害剤と比較して、ブドウ膜黒色腫細胞の成長阻害に対してより強力な効果を示した。さらに、化合物Bは、臨床的PKC及びMEK阻害剤よりも速い成長阻害の開始をもたらすことが判明した。
【0197】
実施例14.BRG1/BRM ATPアーゼ阻害剤は、PKC阻害剤耐性細胞の成長の阻害に効果的である。
手順:MP41ブドウ膜黒色腫細胞は、1μMまで化合物の濃度を増加させた成長培地(表2を参照)での長期培養により、PKC阻害剤(LXS196;MedChemExpress)への耐性を付与した。3ヶ月後、PKC阻害剤(LXS196)またはBRG1/BRM ATPアーゼ阻害剤(化合物B)に対する親MP41細胞及びPKC阻害剤(PKCi)耐性細胞の感受性について、上記の実施例6に記載のとおり、7日間の成長阻害アッセイで試験を行った。
【0198】
結果:PKCi耐性細胞は、高濃度のLXS196で、親MP41細胞株よりも、成長に耐えることができたが(
図9)、BRG1/BRM ATPアーゼ阻害剤(化合物B)は、PKCi耐性細胞株及び親細胞株の両方において、強力な成長阻害をもたらした(
図10)。PKCi耐性細胞は、親MP41細胞よりも化合物Bに対してより感受性が高かった(
図10)。
【0199】
実施例15.化合物Cの合成
BRG1/BRM阻害剤化合物Cは、以下の構造を有する:
【0200】
【0201】
化合物Cは、以下のスキーム5に示すとおり合成した。
スキーム5.化合物Cの合成
【0202】
【0203】
上記のATPアーゼアッセイにおいて、化合物Cは、BRMに対して5.3nM及びBRG1に対して1.3nMのIP50を有することが見出された。
実施例16.BRG1/BRM ATPアーゼ阻害剤は、in vivoでブドウ膜黒色腫腫瘍の成長阻害を引き起こす。
【0204】
手順:ヌードマウス(Envigo)に対して、50%マトリゲル中の5x106の92-1ブドウ膜黒色腫細胞を腋窩部に皮下移植した。腫瘍を平均約200mm3まで成長させ、その時点でマウスをグループ化し、投薬を開始した。マウスにビヒクル(20%の2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン)または用量増加の化合物Cを強制経口投与することにより、1日1回投与した。腫瘍体積及び体重を3週間にわたって測定し、適切な用量(mg/kg)を達成するために、体重ごとに用量を調整した。このとき、動物を屠殺して、腫瘍を切開して撮像した。
【0205】
結果:
図11及び
図12に示すとおり、化合物Cによる処置は、用量依存的な腫瘍成長阻害を引き起こし、最高(50mg/kg)用量で腫瘍退縮が観察された。
図13に示すとおり、すべての処置は、体重減少が観察されることなく、十分に許容されるものであった(
図13)。
【0206】
実施例17.ブドウ膜黒色腫細胞株及び血液癌細胞株の成長に対するBRG1/BRM ATPアーゼ阻害の効果
手順:ブドウ膜黒色腫細胞株(92-1、MEL202、MP41、MP38、MP46)、前立腺癌細胞(22RV1)、急性白血病細胞(EOL1、THP1)、及び組織球性リンパ腫細胞(U937)を、成長培地を含む96ウェルプレートに播種した(表2を参照)。BRG1/BRM ATPアーゼ阻害剤、N-((S)-1-((4-(6-(cis-2,6-ジメチルモルホリノ)ピリジン-2-イル)チアゾール-2-イル)アミノ)-3-メトキシ-1-オキソプロパン-2-イル)-1-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-カルボキサミドをDMSOに溶解し、播種時に、0~2μM(ブドウ膜黒色腫細胞株の場合)または0~1μM(他の細胞株の場合)の濃度勾配で細胞に添加した。細胞を37℃で3日間インキュベートした。3日間の処理後、細胞成長をCell-titer glo(Promega)で測定し、発光をEnvisionプレートリーダー(Perkin Elmer)で読み取った。
【0207】
結果:
図14に示すとおり、N-((S)-1-((4-(6-(cis-2,6-ジメチルモルホリノ)ピリジン-2-イル)チアゾール-2-イル)アミノ)-3-メトキシ-1-オキソプロパン-2-イル)-1-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-カルボキサミドは、すべての細胞株において、強力な成長阻害をもたらした。表3に示すとおり、測定された絶対IC
50値は、すべての試験細胞株で、350ナノモル未満であった。
【0208】
表3に、試験細胞株、使用した成長培地、及び3日間の化合物処理後の絶対IC50値(nM)を示す。
【0209】
【0210】
実施例18.BRG1/BRM ATPアーゼ阻害は、in vivoでブドウ膜黒色腫腫瘍の成長阻害を引き起こす。
手順:ヌードマウス(Envigo)に対して、50%マトリゲル中の5x106の92-1ブドウ膜黒色腫細胞を腋窩領域に皮下移植した。腫瘍を平均約200mm3まで成長させ、その時点でマウスをグループ化し、投薬を開始した。マウスに、ビヒクル(20%の2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン)または用量増加のN-((S)-1-((4-(6-(cis-2,6-ジメチルモルホリノ))ピリジン-2-イル)チアゾール-2-イル)アミノ)-3-メトキシ-1-オキソプロパン-2-イル)-1-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-カルボキサミドを強制経口投与することにより、1日1回投与した。腫瘍体積及び体重を3週間にわたって測定し、適切な用量(mg/kg)を達成するために、体重ごとに用量を調整した。
【0211】
結果:
図15に示すとおり、N-((S)-1-((4-(6-(cis-2,6-ジメチルモルホリノ)ピリジン-2-イル)チアゾール-2-イル)アミノ)-3-メトキシ-1-オキソプロパン-2-イル)-1-(メチルスルホニル)-1H-ピロール-3-カルボキサミドによる処置は、用量依存的な腫瘍成長阻害を引き起こし、最高(1.5mg/kg)用量で腫瘍退縮が観察された。
図16に示すとおり、観察された体重変化率(%)に基づき、すべての処置は十分に許容されるものであった。
【0212】
他の実施形態
本発明は、その具体的実施形態と関連して説明されているが、さらなる修正が可能であり、本願は、一般に本発明の原理に従う、及び、本発明が関連する技術分野において既知または慣例的実践の範囲にあって上記の不可欠な特徴に当てはまり得る本発明からの発展を含む、本発明の任意の変形例、用途、または適合を対象とすることを意図しており、特許請求の範囲に準拠することを理解されるであろう。
【0213】
他の実施形態は、特許請求の範囲に見出される。
以下に、上記実施形態から把握できる技術思想を付記として記載する。
[付記1]
以下の構造を有する化合物:
【化30】
またはその薬学的に許容される塩。
[付記2]
前記化合物が、以下の構造:
【化31】
を有するか、またはその薬学的に許容される塩である、付記1に記載の化合物。
[付記3]
前記化合物が、以下の構造:
【化32】
を有するか、またはその薬学的に許容される塩である、付記2に記載の化合物。
[付記4]
前記化合物が、以下の構造:
【化33】
を有するか、またはその薬学的に許容される塩である、付記1に記載の化合物。
[付記5]
以下の構造を有する化合物:
【化34】
またはその薬学的に許容される塩。
[付記6]
前記化合物が、以下の構造:
【化35】
を有するか、またはその薬学的に許容される塩である、付記5に記載の化合物。
[付記7]
前記化合物が、以下の構造:
【化36】
を有するか、またはその薬学的に許容される塩である、付記6に記載の化合物。
[付記8]
前記化合物が、以下の構造:
【化37】
を有するか、またはその薬学的に許容される塩である、付記5に記載の化合物。
[付記9]
付記1~8のいずれか1項に記載の化合物及び薬学的に許容される賦形剤を含む、医薬組成物。
[付記10]
細胞または対象におけるBAF複合体の活性を低下させる方法であって、前記細胞を有効量の付記1~8のいずれか1項に記載の化合物または付記9に記載の医薬組成物と接触させるか、または前記対象にそれを投与することを含む、前記方法。
[付記11]
細胞または対象におけるBRMを阻害する方法であって、前記細胞を有効量の付記1~8のいずれか1項に記載の化合物または付記9に記載の医薬組成物と接触させるか、または前記対象にそれを投与することを含む、前記方法。
[付記12]
細胞または対象におけるBRG1を阻害する方法であって、前記細胞を有効量の付記1~8のいずれか1項に記載の化合物または付記9に記載の医薬組成物と接触させるか、または前記対象にそれを投与することを含む、前記方法。
[付記13]
細胞または対象におけるBRM及びBRG1を阻害する方法であって、前記細胞を有効量の付記1~8のいずれか1項に記載の化合物または付記9に記載の医薬組成物と接触させるか、または前記対象にそれを投与することを含む、前記方法。
[付記14]
細胞または対象におけるアポトーシスを誘導する方法であって、前記細胞を有効量の付記1~8のいずれか1項に記載の化合物または付記9に記載の医薬組成物と接触させるか、または前記対象にそれを投与することを含む、前記方法。
[付記15]
前記細胞ががん細胞である、及び/または前記対象ががんを有する、付記10~14のいずれか1項に記載の方法。
[付記16]
BAF複合体関連障害の治療を、それを必要とする対象において行う方法であって、前記対象に、有効量の付記1~8のいずれか1項に記載の化合物または付記9に記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
[付記17]
BRG1機能喪失変異に関連する障害の治療を、それを必要とする対象において行う方法であって、前記対象に、有効量の付記1~8のいずれか1項に記載の化合物または付記9に記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
[付記18]
前記対象が、BRG1機能喪失障害を有すると決定される、付記16または17に記載の方法。
[付記19]
前記BAF複合体関連障害またはBRG1機能喪失変異に関連する障害が、がん、ウイルス感染、コフィン・シリス、神経線維腫症(例えば、NF-1、NF-2、または多発性神経鞘腫症)または多発性髄膜腫である、付記16~18のいずれか1項に記載の方法。
[付記20]
がんの治療を、それを必要とする対象において行う方法であって、前記対象に、有効量の付記1~8のいずれか1項に記載の化合物または付記9に記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
[付記21]
がんの腫瘍成長を減少させることを、それを必要とする対象において行う方法であって、前記対象に、有効量の付記1~8のいずれか1項に記載の化合物または付記9に記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
[付記22]
がんの転移性進行を抑制することを、それを必要とする対象において行う方法であって、前記対象に、有効量の付記1~8のいずれか1項に記載の化合物または付記9に記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
[付記23]
がんの転移性コロニー形成を抑制することを、それを必要とする対象において行う方法であって、前記対象に、有効量の付記1~8のいずれか1項に記載の化合物または付記9に記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
[付記24]
がん中でのBRG1及び/またはBRMのレベル及び/または活性を低下させることを、それを必要とする対象において行う方法であって、前記対象に、有効量の付記1~8のいずれか1項に記載の化合物または付記9に記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
[付記25]
前記がんが、非小細胞肺癌、大腸癌、膀胱癌、原発不明癌、神経膠腫、乳癌、黒色腫、非黒色腫皮膚癌、子宮内膜癌、食道胃癌、食道癌、膵癌、肝胆道癌、軟組織肉腫、卵巣癌、頭頸部癌、腎細胞癌、骨癌、非ホジキンリンパ腫、小細胞肺癌、前立腺癌、胎児性腫瘍、胚細胞腫瘍、子宮頸癌、甲状腺癌、唾液腺癌、消化管神経内分泌腫瘍、子宮肉腫、胃腸間質腫瘍、CNS癌、胸腺腫瘍、副腎皮質癌、虫垂癌、小腸癌、陰茎癌、骨癌、または血液癌である、付記20~24のいずれか1項に記載の方法。
[付記26]
前記がんが、食道癌である、付記25に記載の方法。
[付記27]
前記がんが、非小細胞肺癌、大腸癌、膀胱癌、原発不明癌、神経膠腫、乳癌、黒色腫、非黒色腫皮膚癌、子宮内膜癌、陰茎癌、骨癌、腎細胞癌、前立腺癌、または血液癌である、付記25に記載の方法。
[付記28]
前記がんが、非小細胞肺癌である、付記25に記載の方法。
[付記29]
前記がんが、黒色腫、前立腺癌、乳癌、骨癌、腎細胞癌、または血液癌である、付記27に記載の方法。
[付記30]
前記がんが、黒色腫である、付記29に記載の方法。
[付記31]
前記黒色腫が、ブドウ膜黒色腫、粘膜黒色腫、または皮膚黒色腫である、付記30に記載の方法。
[付記32]
前記黒色腫が、ブドウ膜黒色腫である、付記31に記載の方法。
[付記33]
前記がんが、前立腺癌である、付記29に記載の方法。
[付記34]
前記がんが、血液癌である、付記29に記載の方法。
[付記35]
前記血液癌が、多発性骨髄腫、大細胞リンパ腫、急性T細胞白血病、急性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、免疫グロブリンAラムダ骨髄腫、びまん性混合型組織球性リンパ腫及びリンパ球性リンパ腫、B細胞リンパ腫、急性リンパ芽球性白血病、びまん性大細胞リンパ腫、または非ホジキンリンパ腫である、付記34に記載の方法。
[付記36]
前記がんが、乳癌である、付記29に記載の方法。
[付記37]
前記乳癌が、ER陽性乳癌、ER陰性乳癌、トリプルポジティブ乳癌、またはトリプルネガティブ乳癌である、付記36に記載の方法。
[付記38]
前記がんが、骨癌である、付記27に記載の方法。
[付記39]
前記骨癌が、ユーイング肉腫である、付記38に記載の方法。
[付記40]
前記がんが、腎細胞癌腫である、付記27に記載の方法。
[付記41]
前記腎細胞癌が、小眼球症転写因子ファミリー転座腎細胞癌である、付記40に記載の方法。
[付記42]
前記がんが、BRG1及び/またはBRMタンパク質を発現する、付記20~41のいずれか1項に記載の方法。
[付記43]
前記対象またはがんが、BRG1機能喪失変異を有する、付記20~42のいずれか1項に記載の方法。
[付記44]
前記BRG1機能喪失変異が、前記タンパク質のATPアーゼ触媒ドメインにある、付記43に記載の方法。
[付記45]
前記BRG1機能喪失変異が、BRG1のC末端での欠失である、付記43に記載の方法。
[付記46]
前記がんが、上皮成長因子受容体変異及び/または未分化リンパ腫キナーゼ駆動因子変異を有さない、または有さないと決定されている、付記20~45のいずれか1項に記載の方法。
[付記47]
前記がんが、KRAS変異、GNAQ中の変異、GNA11中の変異、PLCB4中の変異、CYSLTR2中の変異、BAP1中の変異、SF3B1中の変異、EIF1AX中の変異、TFE3転座、TFEB転座、MITF転座、EZH2変異、SUZ12変異、及び/またはEED変異を有する、または有すると決定されている、付記20~46のいずれか1項に記載の方法。
[付記48]
前記がんが、転移性である、付記20~47のいずれか1項に記載の方法。
[付記49]
前記がんが、抗がん療法に耐性があるか、または抗がん療法による以前の治療に応答していない、付記20~48のいずれか1項に記載の方法。
[付記50]
前記抗がん療法が、化学療法剤または細胞傷害性剤、免疫療法、外科手術、放射線療法、温熱療法、または光凝固、またはそれらの組み合わせである、付記49に記載の方法。
[付記51]
前記抗がん療法が、化学療法剤または細胞傷害性剤である、付記50に記載の方法。
[付記52]
前記化学療法剤または細胞傷害性剤が、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MEK)阻害剤及び/またはプロテインキナーゼC(PKC)阻害剤である、付記51に記載の方法。
[付記53]
前記がんが、PKC阻害剤に耐性があるか、またはPKC阻害剤による以前の治療に応答していない、付記20~52のいずれか1項に記載の方法。
[付記54]
前記方法が、抗がん療法を前記対象に施すことをさらに含む、付記20~53のいずれか1項に記載の方法。
[付記55]
前記抗がん療法が、化学療法剤または細胞傷害性剤、免疫療法、外科手術、放射線療法、温熱療法、または光凝固、またはそれらの組み合わせである、付記54に記載の方法。
[付記56]
前記抗がん療法が、外科手術、MEK阻害剤、及び/またはPKC阻害剤、またはそれらの組み合わせである、付記54または55に記載の方法。
[付記57]
前記MEK阻害剤が、セルメチニブ、ビニメチニブ、またはタメチニブである、付記56に記載の方法。
[付記58]
前記PKC阻害剤が、ソトラスタウリンまたはIDE196である、付記56に記載の方法。
[付記59]
ウイルス感染症の治療を、それを必要とする対象において行う方法であって、前記対象に、有効量の付記1~8のいずれか1項に記載の化合物または付記9に記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
[付記60]
前記ウイルス感染症が、Retroviridae科のウイルス、Hepadnaviridae科のウイルス、Flaviviridae科のウイルス、Adenoviridae科のウイルス、Herpesviridae科のウイルス、Papillomaviridae科のウイルス、Parvoviridae科のウイルス、Polyomaviridae科のウイルス、Paramyxoviridae科のウイルス、またはTogaviridae科のウイルスによる感染症である、付記59に記載の方法。
[付記61]
前記有効量の前記化合物が、参照と比較して、BRG1のレベル及び/または活性を少なくとも5%低下させる、付記10~60のいずれか1項に記載の方法。
[付記62]
前記有効量の前記化合物が、参照と比較して、少なくとも12時間、BRG1のレベル及び/または活性を少なくとも5%低下させる、付記61に記載の方法。
[付記63]
前記有効量の前記化合物が、参照と比較して、BRMのレベル及び/または活性を少なくとも5%低下させる、付記10~62のいずれか1項に記載の方法。
[付記64]
前記有効量の前記化合物が、参照と比較して、少なくとも12時間、BRMのレベル及び/または活性を少なくとも5%低下させる、付記63に記載の方法。