IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社カネカの特許一覧

特許7561215情報処理装置、情報処理方法およびプログラム
<>
  • 特許-情報処理装置、情報処理方法およびプログラム 図1
  • 特許-情報処理装置、情報処理方法およびプログラム 図2
  • 特許-情報処理装置、情報処理方法およびプログラム 図3
  • 特許-情報処理装置、情報処理方法およびプログラム 図4
  • 特許-情報処理装置、情報処理方法およびプログラム 図5
  • 特許-情報処理装置、情報処理方法およびプログラム 図6
  • 特許-情報処理装置、情報処理方法およびプログラム 図7
  • 特許-情報処理装置、情報処理方法およびプログラム 図8
  • 特許-情報処理装置、情報処理方法およびプログラム 図9
  • 特許-情報処理装置、情報処理方法およびプログラム 図10
  • 特許-情報処理装置、情報処理方法およびプログラム 図11
  • 特許-情報処理装置、情報処理方法およびプログラム 図12
  • 特許-情報処理装置、情報処理方法およびプログラム 図13
  • 特許-情報処理装置、情報処理方法およびプログラム 図14
  • 特許-情報処理装置、情報処理方法およびプログラム 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-25
(45)【発行日】2024-10-03
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G16H 40/20 20180101AFI20240926BHJP
   G06Q 10/20 20230101ALI20240926BHJP
【FI】
G16H40/20
G06Q10/20
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022576974
(86)(22)【出願日】2021-10-15
(86)【国際出願番号】 JP2021038179
(87)【国際公開番号】W WO2022158059
(87)【国際公開日】2022-07-28
【審査請求日】2023-06-06
(31)【優先権主張番号】P 2021007893
(32)【優先日】2021-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100178847
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 映美
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 祥平
【審査官】田上 隆一
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-086219(JP,A)
【文献】特許第6584721(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療機器の外観を示す外観データを取得する外観データ取得部と、
医療機器の外観に対応する当該医療機器の状態を示す医療機器状態モデルデータを用いて、前記外観データが示す医療機器の状態を解析する状態解析部と、
解析された医療機器の状態を示す医療機器状態情報を出力する状態出力部と、を備え、 前記医療機器状態モデルデータは、
前記医療機器の状態として、当該医療機器の再使用可能性を含み、
前記状態解析部は、
前記外観データが示す医療機器の再使用可能性を解析する
情報処理装置。
【請求項2】
前記外観データは、前記医療機器の三次元形状を示し、
前記外観データ取得部は、前記三次元形状から所定の外形を表す部位を前記状態の解析対象として定める
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記医療機器状態モデルデータは、
前記医療機器の外観として、少なくとも一部の部位における形状、色彩および寸法の少なくとも一つである外観特性を示す外観特性情報と、
前記医療機器の状態として、当該医療機器の異常の種類と程度の少なくとも一方の特性を示す異常情報との対応関係を示し、
前記状態解析部は、
前記外観データに基づく前記医療機器の外観特性に応じた当該医療機器の異常の特性を、前記医療機器の状態として解析する
請求項1または請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記外観特性は、前記医療機器をなす複数の部材間の接合部における形状、色調および寸法の少なくとも一つの性状を含み、
前記状態解析部は、前記性状に応じた前記異常の特性を解析する
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記外観特性は、前記医療機器の所定の部材の径を含み、
前記状態解析部は、前記径の分布に応じた前記異常の特性を解析する
請求項3または請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記外観特性は、前記医療機器の所定の部材の長さを含み、
前記状態解析部は、前記長さに応じた前記異常の特性を解析する
請求項3から請求項5のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記外観特性は、前記医療機器の所定の部材の表面形状を含み、
前記状態解析部は、前記表面形状に応じた前記異常の特性を解析する
請求項3から請求項6のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記外観特性は、前記医療機器の所定の部材の表面の模様を含み、
前記状態解析部は、前記模様に応じた前記異常の特性を解析する
請求項3から請求項7のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記所定の部材は金属材料を有し、
前記外観データ取得部は、前記外観データとしてX線センサを用いて撮影された画像を示す画像データを取得する
請求項7または請求項8に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記状態出力部は、
前記医療機器の状態ごとの前記医療機器の取り扱いに関する予め設定された案内情報から、解析された前記医療機器の状態に応じた前記案内情報を定める
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記医療機器の部位と状態の一方または両方である単位ごとの状態を示す前記医療機器状態情報に基づいて、現時点までの所定期間内の異常の頻度を計数する異常解析部を、さらに備える
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項12】
医療機器の外観を示す外観データと当該医療機器の状態を示す状態データとを対応付けたデータセットを含む訓練データを用いて、前記医療機器状態モデルデータを生成する状態学習部、をさらに備える
請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項13】
前記状態学習部は、
前記外観データ取得部が取得した外観データと、前記医療機器状態情報を出力した出力先機器から取得される状態データとを対応付けたデータセットを前記訓練データに含める 請求項12に記載の情報処理装置。
【請求項14】
コンピュータに、
請求項1から請求項13のいずれか一項に記載の情報処理装置として機能させるためのプログラム。
【請求項15】
情報処理装置における情報処理方法であって、
前記情報処理装置が、
医療機器の外観を示す外観データを取得する外観データ取得ステップと、
医療機器の外観に対応する当該医療機器の状態を示す医療機器状態モデルデータを用いて、前記外観データが示す医療機器の状態を解析する状態解析ステップと、
解析された医療機器の状態を示す医療機器状態情報を出力する状態出力ステップと、を実行し、
前記医療機器状態モデルデータは、
前記医療機器の状態として、当該医療機器の再使用可能性を含み、
前記状態解析ステップは、
前記外観データが示す医療機器の再使用可能性を解析する
情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法およびプログラムに関する。本発明は、例えば、医療機器の維持管理のための技術に関する。
本願は、2021年1月21日に日本に出願された特願2021-007893号について優先権を主張し、それらの内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
病院等の医療施設では、治療、診断、介護、リハビリテーション(リハビリ)、などの医療行為に際して種々の機器が用いられる。特に、人体などの生体に直接または間接的に作用する機器に対しては、機能や安全性を担保するうえで、その状態を管理することが重要である。このことにより、医療行為の有効性と生体の保護が図られる。従来から、医療機器の状態を定める手法について種々の手法が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、クリーニングを行うことにより繰り返し使用する医療機器を用いた検査に関する情報を処理する検査情報処理装置と、検査情報処理装置と通信可能であり医療機器の識別情報を読み取る第1読み取り装置と、医療機器のクリーニングに関する情報、医療機器のメンテナンスに関する情報、医療機器の故障に関する情報を処理するメンテナンス情報処理装置と、メンテナンス情報処理装置と通信可能であり医療機器の識別情報を読み取る第2読み取り装置と、情報管理装置、とを備える故障予測システムについて記載されている。情報管理装置は、検査情報処理装置およびメンテナンス情報処理装置と通信可能であり、検査に関する情報、クリーニングに関する情報、メンテナンスに関する情報、および故障に関する情報、並びに、医療機器の形式等を含む医療機器管理情報を医療機器の識別情報と紐付けて管理する。情報管理装置は、検査に関する情報、クリーニングに関する情報、メンテナンスに関する情報、故障に関する情報、および医療機器管理情報を機械学習し、医療機器の故障可能性を予測する故障予測部を備える。
【0004】
特許文献2には、医療施設に設置された医療機器に係る条件情報を収集し、収集された条件情報に基づいて、医療機器の保守作業内容を決定し、決定された保守作業内容に関する情報を医療機器の保守担当者に提供可能とする保守管理方法について記載されている。当該保守管理方法は、指定された機器識別情報により識別される医療機器に係る条件情報を取得し、取得された条件情報を所定の基準情報を比較し、比較結果に応じて定まる保守作業の内容を識別する作業識別情報を決定し、決定された作業識別情報により識別される保守作業の内容に関する情報を機器識別情報により識別される医療機器の保守担当者に提供可能とする。所定の基準情報は、医療機器の故障発生時における条件情報および医療機器と同系列の他医療機器の故障発生時における条件情報に基づいて更新される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6531213号公報
【文献】特開2005-122707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、医療機器の状態を目視により判定することは、必ずしも容易ではない。的確な判断がなされるまでに長年の経験や勘を要することがある。例えば、医療機器の損傷には種々の態様が存在する。損傷の態様ごとに使用可能性の有無、損傷の原因となった行為、使用可能とするための措置が異なりうる。医療機器の使用者は、損傷に至る前に兆候を把握したいと考えることがある。
【0007】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、本発明の課題の一つは、医療機器の状態を的確に判定することができる情報処理装置、情報処理方法およびプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、本発明の一態様は、医療機器の外観を示す外観データを取得する外観データ取得部と、医療機器の外観に対応する当該医療機器の状態を示す医療機器状態モデルデータを用いて、前記外観データが示す医療機器の状態を解析する状態解析部と、解析された医療機器の状態を示す医療機器状態情報を出力する状態出力部と、を備える情報処理装置である。
【0009】
(2)本発明の他の態様は、情報処理装置における情報処理方法であって、医療機器の外観を示す外観データを取得する外観データ取得ステップと、医療機器の外観に対応する当該医療機器の状態を示す医療機器状態データを用いて、前記外観データが示す医療機器の状態を解析する状態解析ステップと、解析された医療機器の状態を示す医療機器状態情報を出力する状態出力ステップと、有する情報処理方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、医療機器の状態を的確に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態に係る情報処理システムの機能構成例を示す概略ブロック図である。
図2】本実施形態に係る解析対象の部位と外形の対応関係を例示する表である。
図3】本実施形態に係る医療機器の形状と状態との対応関係を例示する表である。
図4】本実施形態に係る医療機器の形状と色彩の組み合わせと状態との対応関係を例示する表である。
図5】本実施形態に係る医療機器の径分布と状態との対応関係を例示する表である。
図6】本実施形態に係る医療機器の長さと状態との対応関係を例示する表である。
図7】本実施形態に係る表面形状と状態との対応関係を例示する表である。
図8】本実施形態に係る模様と色彩の組み合わせと状態との対応関係を例示する表である。
図9】本実施形態に係る医療機器の状態と案内情報との対応関係を例示する表である。
図10】本実施形態に係る部位ごとの異常の頻度を例示する表である。
図11】本実施形態に係る表面形状と再使用可能性との対応関係を例示する表である。
図12】本実施形態に係る医療機器状態情報提供処理の第1例を示すフローチャートである。
図13】本実施形態に係る異常解析処理の例を示すフローチャートである。
図14】本実施形態に係るモデル学習処理の例を示すフローチャートである。
図15】本実施形態に係る医療機器状態情報提供処理の第2例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。まず、本実施形態の概要について説明する。図1は、本実施形態に係る情報処理システム1の機能構成例を示す概略ブロック図である。情報処理システム1は、情報処理装置10と撮影部20を含んで構成される。
【0013】
情報処理装置10は、医療機器の外観を示す外観を示す外観データを取得する。図1に示す例では、外観データとして、撮影部20から画像データが入力される。情報処理装置10には、医療機器Mdの外観と、その医療機器Mdの状態との関連を示す医療機器状態モデルデータを設定しておく。情報処理装置10は、医療機器状態モデルデータを用いて、取得した外観データが示す医療機器Mdの状態を解析する。情報処理装置10は、解析された医療機器Mdの状態を示す医療機器状態情報を出力する。情報処理装置10は、パーソナルコンピュータ(PC:Personal Computer)、ワークステーション、サーバ装置などの汎用の機器として構成されてもよいし、専用の機器として構成されてもよい。
【0014】
撮影部20は、被写体として医療機器の外観を撮影する。撮影部20は、撮影した外観を示す外観データを生成し、生成した外観データを情報処理装置10に出力する。撮影部20は、例えば、カメラ、スキャナ、などのいずれであってもよい。カメラは、動画を撮影するビデオカメラ、静止画を撮影するスチルカメラのいずれであってもよい。カメラは、画素ごとに被写体表面から放射される可視光線、赤外線、または紫外線を検出する複数の受光素子を二次元平面に配列してなる撮像素子を備える。カメラは、被写体の三次元形状を撮影する立体カメラであってもよい。三次元形状は、三次元空間内における被写体の表面上に分布する座標点を示す点群データで示されてもよいし、二次元平面上の画素ごとの画素値と、個々の画素に対応する被写体表面上の点からの距離もしくは視差を用いて表されてもよい。
【0015】
スキャナは、三次元スキャナ、CT(Computed Tomography)スキャナのいずれであってもよい。三次元スキャナは、可視光線、赤外線または紫外線を入射波として被写体に照射する光源と、被写体表面からの反射波を検出する複数の受光素子を配列してなる撮像素子と、受光処理部を備える(図示せず)。受光処理部は、検出した反射波と既知の入射波の位相差に基づいて画素ごとに対応する被写体の表面上の点までの距離を定める。撮像素子の位置は撮像素子の光軸を基準とする相対的な方向に依存するため、受光処理部は、画素ごとに定めた距離と、その画素の位置に基づいて、その点の位置を特定することができる。画素ごとに特定された位置の集合により被写体表面の形状が表される。
【0016】
CTスキャナは、X線を被写体に入射波として照射する線源と、被写体から透過した透過波を検出する複数の検出素子を配列してなるX線センサと、検出処理部を備える。検出処理部は、検出素子ごとに検出した透過波の強度と既知の入射波の強度を連立して、被写体表面または内部における部位ごとのX線の吸収量を算出する。検出処理部は、部位ごとの吸収量に対応する画素の階調を用いて被写体の表面ならびに内部の構造を表す画像を生成することができる。X線は高分子加工物などの有機物や生体に対する透過性が相対的に高い反面、金属材料に対する透過性が低い。医療機器に用いられる金属材料には、例えば、ステンレス、ニッケルチタン合金などがある。そのため、金属材料を原料として構成される部材を備える機器に対しては、CTスキャナを用いることで診断または治療に用いられている状態や生体組織が付着されている状態であっても、その外観を表す画像を取得することができる。
【0017】
なお、本願では、外観とは視認して把握できる姿もしくは見かけを意味し、外部からの観察を必ずしも要しないという概念を含む。撮影部20は、撮影を主機能としない他の機器と一体化して構成されてもよい。撮影部20は、例えば、カメラもしくはスキャナを実装した顕微鏡、拡大鏡または内視鏡であってもよい。撮影部20は、例えば、偏光板またはバンドパスフィルタに代表される光学フィルタを備えていてもよい。撮影部20は、被写体の全体または一部の部位の特性を示す形状特性値を算出し、算出した形状特性値を外観データに含めてもよい。形状特性値の例については、後述する。
【0018】
本願では、医療機器とは、主に人間やその他の動物に対する治療、診断、介護またはリハビリにおいて生体の一部に接触して用いられる機器を指す。かかる医療機器の状態は、外観に表れる。医療機器は、例えば、カテーテル、ガイドワイヤ、外套管、内視鏡、鉗子、メス、などのいずれかの器材であってもよい。かかる医療機器は、使用の繰り返しや経年劣化により損傷が著しくなり、最終的には、治療、診断、介護またはリハビリに適さなくなる傾向がある。他方、目視による外観による状態の判断を正確に行うには、多くの経験が要求される。言い換えれば、経験の浅い医療機器の使用者が外観を目視しただけでは、その状態を正しく判断することが困難なことがある。本実施形態によれば、外観データから解析された医療機器Mdの状態を示す医療機器状態情報に接することで、使用者(例えば、医療従事者、患者もしくは患者の近親者)は医療機器Mdの状態を知得することができる。使用者には、正常な医療機器Mdの使用継続が促され、損傷またはその兆候が表れた医療機器Mdの使用が回避される。
【0019】
次に、情報処理装置10の構成例について説明する。情報処理装置10は、制御部120、記憶部140、入出力部150、表示部160、および操作部170を含んで構成される。
制御部120は、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサを含んで構成される。プロセッサは、記憶部140に予め記憶させた所定のプログラムに記述された命令に示される処理を実行して、情報処理装置10の機能を発揮する。本願では、プログラムに記述された命令に示される処理を実行することを、「プログラムの実行」、「プログラムを実行する」などと呼ぶことがある。制御部120は、例えば、プログラムを実行して外観データ取得部122、状態解析部124、状態出力部128、異常解析部130、および、状態学習部132の機能を実現する。制御部120の機能構成例については、後述する。なお、制御部120は、専用の部材を用いて実現されてもよい。
【0020】
記憶部140は、制御部120が実行する処理に用いる各種のデータを記憶する。記憶部140は、制御部120が取得した各種のデータを記憶する。記憶部140は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)などの記憶媒体を含んで構成される。
入出力部150は、他の機器と無線または有線を用いて各種のデータの入力または出力する。入出力部150は、他の機器とネットワークを経由して接続してもよい。入出力部150は、例えば、入出力インタフェース、通信インタフェースなどのいずれか、または両者を含んで構成されてもよい。
【0021】
表示部160は、制御部120から入力される各種の表示データに基づく表示情報を表示する。表示部160は、例えば、液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ、などのいずれであってもよい。
操作部170は、自部に対する操作を受け付け、受け付けた操作に応じて指示される各種の情報を示す操作信号を生成し、生成した操作信号を制御部120に出力する。操作部170は、タッチセンサ、マウス、キーボードなどの汎用の部材を含んで構成されてもよいし、ボタン、つまみなどの専用の部材を含んで構成されてもよい。操作部170がタッチセンサを含む場合には、タッチセンサを、表示部160をなすディスプレイと一体化して単一のタッチパネルとして構成されてもよい。
【0022】
次に、制御部120の機能構成例について説明する。外観データ取得部122は、撮影部20から外観データを取得する。外観データ取得部122は、取得した外観データを記憶部140に記憶する。外観データは、撮影部20に代えて、入出力部150を経由して他の機器から外観データが入力されてもよい。外観データは、撮影された画像を示す画像データに限られず、コンピュータグラフィクスを用いて合成された画像を示す画像データであってもよい。
【0023】
外観データは、被写体となる医療機器の三次元形状を示すことがある。三次元形状は、視点により観察される形状が顕著に異なることがある。そこで、外観データ取得部122は、取得した外観データに対して公知の視点レンダリング処理を行い、所定の外形を有する面を基準面として表す部位の画像を解析対象として定めてもよい。例えば、外観データ取得部122は、画像に表された被写体が、カテーテル、ガイドワイヤ、外套管または内視鏡である場合には、それぞれ長手方向に平行であって先端部を含む側面の画像を解析対象として定める(図2参照)。被写体が鉗子である場合には、外観データ取得部122は、鉗子を構成する結合部と、その結合部を用いて結合される一対の先端部が表れる主面を解析対象として定める。被写体がメスである場合には、外観データ取得部122は、メスを構成する刃の一方または両方の側面を解析対象として定める。
【0024】
外観データ取得部122は、例えば、視点レンダリング処理において、予め定めた解析対象の基準面を表す基準面画像と、視点ごとに観察される視点画像とを照合し、基準面画像と視点画像との合致度を示す指標値を算出する処理を繰り返す。外観データ取得部122は、算出した指標値が最も高い合致度を与える視点を定めることで、基準面画像と最も合致する視点画像を与える視点を探索することができる。記憶部140には、医療機器の種類ごとに予め定めた基準面の画像を示す基準面データを予め設定しておいてもよい。外観データ取得部122は、解析対象とする部位の画像を示す画像データを外観データとして記憶部140に記憶する。解析対象の画像は、二次元画像でもよいし、三次元画像でもよい。
【0025】
状態解析部124は、記憶部140に新たに記憶された外観データを読み出し、読み出した外観データに対して、予め記憶部140に設定しておいた医療機器状態モデルデータを用いて外観データに表される医療機器の状態を解析する。状態解析部124は、例えば、外観データに基づいて入力値を定め、定めた入力値に対して機械学習モデルを用いて算出される出力値を用いて医療機器の状態を定める。状態解析部124は、例えば、外観データが示す画素ごとの信号値を機械学習モデルに入力される入力値として定める。機械学習モデルとして、例えば、CNN(Convolutional Neural Network)が利用可能である。医療機器状態モデルデータは、医療機器の外観に対応する当該医療機器の状態を示すデータである。医療機器状態モデルデータは、医療機器の外観と当該医療機器の状態との対応関係を示すパラメータを含んで構成されてもよい。状態解析部124は、医療機器状態モデルデータで示されるパラメータを、機械学習モデルに基づく演算処理のパラメータ(本願では、「モデルパラメータ」と呼ぶことがある)として用いる。
【0026】
状態解析部124は、医療機器の状態として、例えば、正常、異常の兆候(本願では、単に「兆候」と呼ぶことがある)、異常のいずれかを判定する。そこで、状態解析部124には、出力値として取りうる値域のうち個々の段階に区分された段階ごとの段階別値域を設定しておく。段階別値域として、例えば、異常に対しては、0.6以上1以下、兆候に対しては、0.3以上0.6未満、正常に対しては、0以上0.3未満と設定しておく。状態解析部124は、算出した出力値を含む段階別値域を特定し、特定した段階別値域に対する異常の程度を定めることができる。なお、判定される異常の程度は、正常、兆候および異常の3段階に限られず、2段階であってもよいし、4段階以上に細分化されてもよい。状態解析部124は、異常の程度として、算出された出力値が採用されてもよい。状態解析部124は、定めた状態を示す医療機器状態情報を記憶部140に記憶する。
【0027】
状態解析部124は、異常の特性(本願では、「異常特性」と呼ぶことがある)として医療機器の全体または一部の部位に対する異常の種類を判定してもよい。異常の種類には、例えば、引張、圧縮、曲げ、ねじれ、せん断、つぶれ、へこみ、欠け、膨れ、くびれ、摩耗、傷、腐食、溶融、溶解、焼け、構成部品の欠落、異物等の付着などがある。発生しうる異常の種類は、医療機器の種類または部位により異なることがある。これは、個々の材質、形状、使用時にかかる力の方向、部材同士の干渉、薬剤または生体への曝露などの条件が異なるためである。例えば、カテーテルに対する異常の種類としては、先端部の摩耗、つぶれ、管部の引張、曲げ、ねじれ、せん断、傷、溶融、などがある。ガイドワイヤに対する異常の種類としては、引張、曲げ、ねじれ、くびれ、摩耗、傷、腐食、などがある。
【0028】
そこで、医療機器状態モデルデータにおいて、判定対象とする異常の種類の候補が医療機器の種類と部位のいずれか、または、それらの組み合わせである判定項目と予め関連付けられてもよい。かかる医療機器状態モデルデータを用いることで、状態解析部124は、医療機器の種類と部位のいずれかの判定単位、または組み合わせとする判定単位に応じた異常の種類を判定することができる。1台の医療機器に対して判定単位とする部位の個数は、2個以上となってもよい。状態解析部124は、個々の異常の種類の候補に対して、その異常の程度を判定してもよい。状態解析部124は、1個の医療機器または部位に対して、複数の異常の種類を候補として解析してもよい。状態解析部124は、入力値に対する出力値を判定単位ごとに算出できるように機械学習モデルを設定しておけばよい。
【0029】
状態解析部124は、外観データが示す医療機器の全体または一部の部位における外観の特性(本願では、「外観特性」と呼ぶことがある)を定め、定めた外観特性を示す外観特性情報に対して医療機器の状態を解析してもよい。解析により得られる医療機器の状態に、異常特性が含まれうる。医療機器状態モデルデータは、外観特性情報と異常特性情報との対応関係を示すモデルパラメータを含んで構成されればよい。状態解析部124は、例えば、医療機器の全体または一部の部位における形状、色彩ならびに寸法のいずれかの性状を示す特性値か、または、それらの特性値のいずれかの組み合わせを、外観特性を示す外観特性値として定める。
【0030】
外観データに示される医療機器の一部の部位は、医療機器の機能の発揮に必須となる所定の部材であってもよいし、所定の複数の部材が互いに接合して形成された接合部であってもよい。接合部は、使用により複数の部材が相互に接触しながら位置関係が変化するため、他の部位よりも変形や摩擦が著しくなりがちである。変形により形状と寸法のいずれか、または両者に変化が生じうる。摩擦により色調に変化が生じうる。
【0031】
形状を示す特性値は、上記の形状特性値に相当する。形状特性値として、例えば、カテーテルの管部、ガイドワイヤなどの長手形状の部材に対しては、所定の基準位置における径、径分布などが利用できる。基準位置は、例えば、他の部材(例えば、先端部、基端部など)に接する部分、その他、使用に伴い形状変化が著しい部分が適用されうる。径分布とは、径の長手方向の分布を意味する。色彩を示す数値として、個々の部材を表す部分に含まれる画素ごとの色信号値の平均値、最頻値などの代表値が利用できる。寸法を示す特性値(本願では、「寸法特性値」と呼ぶことがある)として、例えば、長手形状の部材に対する長手方向の長さが利用できる。状態解析部124は、外観データに示される形状特性値の一部を、外観特性を示す形状特性値と寸法特性値の一方または両方として採用してもよい。
【0032】
状態解析部124は、画素ごとの信号値に代え、または信号値とともに、定めた外観特性値を入力値として、機械学習モデルに基づいて医療機器状態モデルデータで示されるモデルパラメータを用いて出力値を算出する。状態解析部124は、算出される出力値に基づいて異常特性情報を推定する。
【0033】
状態出力部128は、記憶部140に新たに記憶された医療機器状態情報を読み出し、読み出した医療機器状態情報を表示部160に出力する。表示部160は、状態出力部128から入力される医療機器状態情報を表示する。ここで、状態出力部128は、読み出した医療機器状態情報に示される医療機器の状態を示す文字、図形、記号、または模様のいずれか、または所定の組み合わせを示す表示データを生成し、生成した表示データを表示部160に出力する。
【0034】
異常解析部130は、記憶部140に蓄積された医療機器状態情報を読み出し、読み出した個々の医療機器状態情報が示す医療機器の部位と状態(異常特性)のいずれか、またはその組合せ(本願では、「計数単位」と呼ぶことがある)を解析対象項目として特定する。異常解析部130は、項目ごとに計数した件数を頻度として定める(異常解析)。異常解析部130は、計数した頻度を示す異常解析情報を記憶部140に記憶する。異常解析部130は、頻度の計数において、記憶部140に蓄積された全ての医療機器状態情報を用いてもよいが、その一部のみを用いてもよい。異常解析部130は、その時点(現時点)までの所定の期間内(例えば、1か月から1年)に生成された医療機器状態情報を異常解析に用い、その他の期間における医療機器状態情報を用いなくてもよい。異常解析部130には、予め現時点に近い時点ほど大きい係数を設定しておき、個々の医療機器状態情報に対して、その時点に対応する係数を特定し、特定した係数を、その医療機器状態情報が示す計数単位ごとに加算して発生頻度として定めてもよい。これにより、異常解析において現時点に近い時点に生じた状態ほど重視された頻度が求まる。
なお、異常解析部130は、操作部170から、または、他機器から入出力部150を経由して異常解析指示を示す操作信号が入力されるとき頻度の計数を開始(トリガ)してもよい。
【0035】
異常解析部130は、異常解析情報を表示部160に出力し、表示させてもよい。異常解析部130は、操作信号の入力元である他機器に入出力部150を経由して異常解析情報を出力してもよい。
頻度は、件数または係数の累積値で表されてもよいし、計数単位ごとに所定の値域(例えば、0以上1以下)内に収まるように正規化された正規化値で表されてもよい。また、計数単位ごとの頻度は、個々の医療機器の状態の頻度のうち、異常の頻度で代表されてもよい。
【0036】
図10は、異常解析情報を例示する。例示される、異常解析情報は、計数単位として部位71、部位72、部位73のそれぞれについて、頻度71、頻度72、頻度73を示す。よって、異常解析情報に接した利用者は、異常が頻繁に生ずる部位を把握することができる。また、異常解析情報には、医療機器の状態を示す医療機器状態情報を関連付けられてもよい。かかる異常解析情報は、異常の分析、ひいては医療機器の維持管理、開発などに有用である。
【0037】
状態学習部132は、既存の医療機器の外観を示す外観データと当該医療機器の状態を示す状態データを対応付けて含むデータセットを複数個含む訓練データを取得し、取得した訓練データを用いて医療機器状態モデルデータを生成する。状態学習部132は、外観データに基づいて入力値を定め、入力値に対して機械学習モデルを用いて判定単位ごとに算出される出力値が、データセットごとの訓練データに対応する状態データで示される状態を表す目標値に、訓練データ全体として極力近似するようにモデルパラメータを定める(モデル学習)。例えば、CNNにおけるモデルパラメータには、畳み込み層と全結合層に属するノードへの直前の層からの入力値に対する畳み込み係数、そのノードに対するバイアス値と活性化関数のパラメータ、畳み込み層の直前の層のノードからの入力値の参照の要否が含まれる。
【0038】
モデル学習において、状態学習部132は、入力値に対して機械学習モデルを用いて算出される判定単位ごとの出力値と目標値との差の大きさがより小さくなるように、収束するまで逐次にモデルパラメータを更新する。更新前後のモデルパラメータの変化量、または更新前後の差の大きさの変化量が、所定の収束判定閾値未満となるとき、モデルパラメータが収束したと判定することができる。差の大きさの指標値として、例えば、平均二乗誤差(SSD:Sum of Squared Differences)、交差エントロピー誤差(cross entropy error)などの誤差関数を用いることができる。モデルパラメータを定める手法は、最急降下法(steepest descent)、確率的最適化(stochastic optimization)、逆誤差伝播法(back-propagation)、などのいずれの手法でもよい。状態学習部132は、算出したモデルパラメータを示すデータを医療機器状態モデルデータとして記憶部140に記憶する。
【0039】
状態学習部132は、外観データから入力値を定める手法として、状態解析部124と同様の手法を用いることができる。状態学習部132は、状態データで示される状態を表す出力値として、判定単位ごとの異常の程度に対応する設定値に定める。例えば、異常の程度が、「正常」と「異常」の2段階で判定される場合には、状態学習部132は、「正常」、「異常」との判定に対する出力値を、それぞれ0、1と定める。異常の程度が、「正常」、「兆候」、「異常」の3段階で判定される場合には、状態学習部132は、「正常」、「兆候」、「異常」との判定に対する出力値を、それぞれ0、0.45、1と定める。0.45との値は、「兆候」に対して与えられる段階別値域の中央値に相当する。なお、異常の程度が4段階で判定される場合には、状態学習部132は、「正常」、「異常」との判定に対する出力値を、それぞれ0、1と定め、それらの判定以外の中間段階に対する出力値を、その中間段階に対する段階別値域の中央値に定める。
【0040】
なお、本実施形態では、機械学習モデルは、CNN(Convolutional Neural Network)に限られず、RNN(Recurrent Neural Network)、ResNet(Residual Network)のいずれであってもよい。機械学習モデルは、ニューラルネットワークに限らず、決定木、回帰木、SVM(Support Vector Machine)などの数理モデルであってもよい。
状態学習部132は、他の機器から訓練データを取得し、取得した訓練データを用いてモデルパラメータを算出してもよい。
【0041】
次に、医療機器状態モデルデータで示される外観と状態との対応関係の例について説明する。図3から図6は、解析対象とする外観特性として形状、色彩および寸法のいずれか、または、それらのいずれかの組み合わせを例示する。外観特性を示す外観特性値は、機械学習モデルへの入力値として明示的に与えられてもよいし、その外観特性を有する被写体となる医療機器の全体または一部の部位の画像を示す外観データが入力値として与えられてもよい。入力値には、外観データに示される外観特性値が用いられてもよいし、外観データに示される画像から所定の医療機器または部位の外観特性値を定めてもよい。従って、医療機器状態モデルデータでは、次に例示される対応関係が暗示的に示される。
【0042】
図3は、形状と状態との対応関係を例示する。図3に示す例では、形状01、形状02、形状03のそれぞれに対して、状態が正常、兆候、異常と与えられる。ここで、01、02、03等は、個々の情報を識別するための符号であって、数値を示すものではない。
図4は、形状と色彩の組み合わせと状態との対応関係を例示する。図4に示す例では、形状・色彩11、形状・色彩12、形状・色彩13のそれぞれに対して、状態が正常、兆候、異常と与えられる。
図5は、径分布と状態との対応関係を例示する。図5に示す例では、径分布21、径分布22、径分布23のそれぞれに対して、状態が正常、兆候、異常と与えられる。
図6は、長さと状態との対応関係を例示する。図6に示す例では、長さ31、長さ32、長さ33のそれぞれに対して、状態が正常、兆候、異常と与えられる。
【0043】
状態解析部124は、医療機器の性状としての状、色彩および寸法のいずれか、もしくは、それらのいずれかの組み合わせに代え、または、これらとともに、外観特性として表面形状を解析してもよい。医療機器の性状には、表面形状とは、表面に表れた凹凸(例えば、エンボス加工)、穿孔(例えば、バルーンカテーテルなどの貫通孔)、または、それらの分布を意味する。表面形状は、摩耗、傷、腐食、溶融、溶解、などの種類の異常を表すことがあり、かかる異常は機器の機能を損なう原因となりうる。また、この種の異常は、一部の部位において他の部位よりも顕著に生ずる傾向がある。表面形状として、例えば、ガイドワイヤは、表面に縄目模様の表面形状を有する。ガイドワイヤは、複数本の微細な線材を並列して撚り合わせてなるためである。鉗子には、一対の先端部が互いに相対する面(相対面)において、それぞれの先端部の長手方向に対して平行に複数の微細な溝が刻まれている。金属を素材として構成される部材に対しては、状態解析部124は、解析対象の医療機器が使用されている段階で、X線を用いて撮影された画像を示す外観データを処理することにより、その状態を解析することができる。
【0044】
なお、表面形状は、表面の立体的形状と表面に付された模様との組み合わせとみなすこともできる。模様は、色調の分布に相当する。色調は、明度(明るさ)と彩度(色合い)を要素として含む。状態解析部124は、外観特性として、三次元空間において表現される表面形状に代え、二次元空間において表現される模様を解析してもよい。状態解析部124は、それらの模様の周期性を示す外観特性値を算出し、算出した外観特性値を入力値として用いてもよい。
【0045】
図7は、表面形状と状態との対応関係を例示する。図7に示す例では、表面形状41、表面形状42、表面形状43のそれぞれに対して、状態が正常、兆候、異常と与えられる。
図8は、模様と色彩の組み合わせと状態との対応関係を例示する。図8に示す例では、模様51、模様52、模様53のそれぞれに対して、状態が正常、兆候、異常と与えられる。
【0046】
状態出力部128は、読み出した医療機器状態情報に示される医療機器の状態に対応する案内情報を特定し、特定した案内情報を医療機器状態情報と関連付けて表示部160に出力してもよい。記憶部140には、医療機器の状態ごとに、当該医療機器の取り扱いに関する案内情報を示す案内データを予め記憶させておく。例えば、図9に示す例では、長さ31、長さ32、長さ33のそれぞれに対応する状態として、正常、兆候、異常のそれぞれに対して、案内情報61、案内情報62、案内情報63が与えられる。従って、解析対象となる医療機器が長さ33とする外観特性を有す場合には、状態解析部124は当該医療機器の状態を異常と判定する。状態出力部128は、異常を示す医療機器状態情報と案内情報63とを関連付けて表示部160または他機器に出力する。
【0047】
案内情報には、例えば、判定された状態に対する使用法を示す情報(本願では、使用法情報と呼ぶことがある)が含まれてもよい。使用法情報には、異常を解消もしくは低減させるための医療機器の使用法を示す情報が含まれる。より具体的には、使用法情報には、例えば、保持すべき部位、操作量、操作方向、タイミングなどのいずれか、またはいずれかの組合せが含まれる。使用法情報には、さらに異常を発生もしくは促進しがちな医療機器の使用法を示す情報が含まれてもよい。これにより、使用法情報に接した使用者は、異常を発生もしくは促進しがちな医療機器の使用法を認識し、異常を解消もしくは低減させるための医療機器の使用法を採用することが促される。本実施形態は、手術などの医療機器を用いた措置に対する教育、訓練などに応用することができる。
【0048】
なお、案内情報には、例えば、判定された状態に対する維持管理情報(メンテナンス情報)が含まれてもよい。維持管理情報には、判定された異常の種類、部位、程度のいずれか、またはいずれかの組み合わせに対して、その異常を解消もしくは低減させるための措置、その異常の進行を遅滞させるための措置、または当該医療機器の使用を禁止するための措置を示す情報が含まれる。より具体的には、例えば、部材の交換、洗浄、研磨、表面加工、廃棄、当該医療機器の販売業者、製造業者、維持管理業者など所定の業者への措置依頼などのいずれか、またはいずれかの組合せが挙げられる。
案内情報は、文字、記号、模様、画像などのいずれか、または、いずれかの組み合わせを用いて表現されてもよい。画像は、静止画像、動画像のいずれか、または、それらの組み合わせでもよい。
【0049】
医療機器の使用は生体に対する衛生や安全性を担保するために、しばしば1回のみに限定され、使用後に廃棄されることがある(ディスポーザブル(disposable))。しかしながら、環境問題の深刻化、公衆衛生への関心の高まり、医療費の削減、諸外国法令との差などの状況により、複数回にわたる再使用が図られることがある。再使用の態様には、そのまま、または洗浄ならびに消毒など使用者の日常的な措置により可能となる場合、一部の部材を回収のうえ新たな製品として用いられる場合、などがある。再使用の態様は、医療機器の種類や部材により異なりうる。
【0050】
そこで、状態解析部124は、外観データを用いて、その外観データに表された医療機器の再使用可能性を解析してもよい。再使用可能性は、再使用が可能であるか否か、または、その程度を意味する。再使用可能性の程度として、再使用に要する負荷の大きさが用いられてもよい。再使用に要する負荷として、労力、費用、時間などのいずれか、または、いずれかの組み合わせが用いられてもよい。再使用可能性の判定単位は、医療機器の全体でもよいし、その一部であってもよい。状態解析部124は、再使用可能性を、医療機器の全体もしくは一部の部位の状態を異常と判定する場合に解析し、正常と判定する場合に解析しなくてもよい。
【0051】
状態解析部124は、異常特性の解析と同様の手法を用いて、外観データに基づいて定めた入力値に対して機械学習モデルを用いて再使用可能性の程度を示す出力値を算出し、算出した出力値に基づいて再使用可能性を定めることができる。状態解析部124は、定めた再使用可能性を示す情報(本願では、「再使用可能性情報」と呼ぶことがある)を医療機器状態情報に含めて記憶部140に記憶する。状態出力部128は、再使用可能性情報を示す表示データを表示部160に出力してもよいし、入出力部150を経由して他機器に出力してもよい。再使用可能性情報に接した使用者に対して再使用可能性の判断を支援することができる。
【0052】
状態学習部132は、異常特性の解析に用いられるモデルパラメータと同様の手法を用いて、医療機器の全体または一部の部位の再使用可能性を判定単位としてモデル学習を行うことで、再使用可能性を判定するためのモデルパラメータを取得することができる。状態学習部132は、モデル学習に用いられる訓練データを構成する際、その訓練データに含めるデータセットに、外観データと対応付けて再使用可能性を示す出力値を含める。状態学習部132は、異常の程度と同様の手法を用いて、再使用可能性の程度に応じた出力値を定めることができる。
【0053】
図11は、表面形状と再使用可能性との対応関係を例示する。図11に示す例では、表面形状81、表面形状82、表面形状83、表面形状84のそれぞれに対して、状態は、正常、兆候、異常1、異常2と与えられる。異常2の方が、異常1よりも異常の程度が著しい。正常、兆候、異常1、異常2のそれぞれに対して、再使用可能性は、○、○、△、×と与えられる。○、△、×は、それぞれ再使用可、条件付再使用可、再使用不可を示す。再使用可とする条件には、例えば、日常的な措置を超える負荷を伴う特別な措置を施せば使用可能となる場合、一部の部材を交換すれば使用可能となる場合、維持管理業者など所定の業者に措置を依頼すれば使用可能となる場合、などの条件がある。これらの条件を示す情報が、案内情報に含まれてもよい。
【0054】
なお、医療機器の取り扱いに習熟した使用者は、出力先となる表示部160または他機器に表示される医療機器状態情報に示される状態が、自身で判断された状態と異なると考えることがある。そこで、操作部170または他機器は、受け付けた操作に応じて、使用者が判断した判定単位の状態を示す操作信号を生成して状態学習部132に出力してもよい。状態学習部132には、操作部170または入出力部150を経由して他機器から判定単位の状態を示す操作信号が入力され、その判定単位の状態を示す状態データと、判定対象とした医療機器の外観を示す外観データを対応付けてなるデータセットを訓練データに加えてもよい。状態学習部132は、新たにデータセットが加わった訓練データに対してモデル学習(転移学習)を行ってモデルパラメータを更新してもよい。状態学習部132は、既存の医療機器状態モデルデータに代えて、更新されたモデルパラメータを示す医療機器状態モデルデータを記憶部140に記憶する。
【0055】
再使用可能性を判断する使用者(再使用判断担当者)は、表示される再使用可能性情報が、自身で判断された再使用可能性とは異なると考えることがある。操作部170または他機器は、使用者から受け付けた操作に応じて、使用者が判断した医療機器の全部または一部を判定単位とする再使用可能性情報を示す操作信号を生成して状態学習部132に出力してもよい。状態学習部132には、操作部170または入出力部150を経由して他機器から再使用可能性情報を示す操作信号が入力され、その判定単位の再使用可能性を示す状態データと、判定対象とした医療機器の外観を示す外観データを対応付けてなるデータセットを訓練データに加えてもよい。状態学習部132は、新たにデータセットが加わった訓練データに対してモデル学習を行ってモデルパラメータを更新してもよい。状態学習部132は、既存の医療機器状態モデルデータに代えて、更新されたモデルパラメータを示す医療機器状態モデルデータを記憶部140に記憶する。
【0056】
次に、本実施形態に係る情報処理の例について説明する。図12は、本実施形態に係る医療機器状態情報提供処理の第1例を示すフローチャートである。
(ステップS102)情報処理装置10の外観データ取得部122は、医療機器の外観を示す外観データを取得する。
(ステップS104)状態解析部124は、取得された外観データを用いて医療機器の外観特性を解析する。
(ステップS106)状態解析部124は、解析した外観特性に対して機械学習モデルを用いて医療機器の状態を推定する。
(ステップS108)状態出力部128は、推定された医療機器の状態に対応する案内情報を特定する。
(ステップS110)状態出力部128は、推定された医療機器の状態を示す医療機器状態情報と特定した案内情報を対応付けて出力先機器である自装置の表示部160または他機器に出力する。その後、図12の処理を終了する。
【0057】
次に、本実施形態に係る情報処理の例について説明する。図13は、本実施形態に係る異常解析処理の例を示すフローチャートである。
(ステップS122)情報処理装置10の異常解析部130は、自装置の操作部170から、または、他機器から異常解析指示を示す操作信号の入力を待ち受け、当該操作信号が入力されるとき、ステップS124の処理に進む。
(ステップS124)異常解析部130は、所定の初期値を設定する(初期化)。異常解析部は、計数単位ごとの頻度の初期値としてゼロを設定する。
【0058】
(ステップS126)異常解析部130は、所定の解析期間内の医療機器状態情報から計数単位とする部位(もしくは医療機器全体)、状態のいずれか、または組み合わせを計数単位として特定する。
(ステップS128)異常解析部130は特定した計数単位についての頻度に所定の増分(例えば、1)を加算することにより、その頻度を累積する(インクリメント)。
(ステップS130)異常解析部130は、所定の解析期間内に未処理の医療機器状態情報の有無を判定する。あると判定するとき(ステップS130 YES)、ステップS132の処理に進む。ないと判定するとき(ステップS130 NO)、ステップS134の処理に進む。
【0059】
(ステップS132)異常解析部130は、処理対象の医療機器状態情報を未処理の医療機器状態情報に変更する。その後、異常解析部130は、変更後の医療機器状態情報についてステップS126、S128の処理を実行する。
(ステップS134)異常解析部130は、計数単位ごとの頻度を示す異常解析情報を異常解析指示の入力元となる自装置の表示部160に、または、入出力部150を経由して他機器に出力する。
【0060】
図14は、本実施形態に係るモデル学習処理の例を示すフローチャートである。
(ステップS202)状態学習部132は、医療機器の外観を示す外観データと医療機器の状態を示す状態データを収集する。状態学習部132は、収集した外観データごとに、その外観データが外観を示す医療機器の状態を示す状態データを対応付けてデータセットを構成する。状態学習部132は、構成したデータセットを複数組含む訓練データを構成する。
(ステップS204)状態学習部132は、機械学習モデルのモデルパラメータの初期値を設定する。初期値は、予め定めた任意の値であってもよいし、既存のモデルパラメータの値であってもよい。
【0061】
(ステップS206)状態学習部132は、データセットごとの外観データから機械学習モデルへの入力値を定め、定めた入力値に対して機械学習モデルを用いて算出される演算値が、そのデータセットの状態データで示される状態を表す出力値により近似するように再帰的に機械学習モデルのモデルパラメータを更新する。
(ステップS208)状態学習部132は、更新されるモデルパラメータが収束したか否かを判定する。収束したと判定するとき(ステップS208 YES)、ステップS210の処理に進む。収束していないと判定するとき(ステップS208 NO)、ステップS206の処理を繰り返す。
(ステップS210)状態学習部132は、その時点において得られたモデルパラメータを医療機器の状態の推定に用いるモデルパラメータとして確定し、確定したモデルパラメータを示す医療機器状態モデルデータを記憶部140に記憶する。
【0062】
図15は、本実施形態に係る医療機器状態情報提供処理の第2例を示すフローチャートである。図15に示す処理は、ステップS102-S108の処理と、ステップS142-S148の処理を含む。ステップS102-S108については、図12に示す処理と同様であるため、その説明を援用する。ステップS106の処理の終了後、ステップS142の処理に進む。
【0063】
(ステップS142)状態解析部124は、解析した外観特性に対して機械学習モデルを用いて医療機器の全体または一部に対する再利用可能性を推定する。その後、ステップS108の処理に進む。ステップS108の処理の終了後、ステップS144の処理に進む。
(ステップS144)状態出力部128は、推定された医療機器の状態を示す医療機器状態情報に推定した再利用可能性を示す再利用可能性情報を含め、特定した案内情報を対応付けて出力先機器である自装置の表示部160または他機器に出力する。
【0064】
(ステップS146)状態学習部132は、自装置の操作部170または他機器から使用者が判断した再使用可能性を示す操作信号の入力を待ち受ける。
(ステップS148)状態学習部132は、入力される操作信号により伝達される再使用可能性を示す出力値を定め、定めた出力値を示す状態データを、外観特性を解析した外観データと対応付けてデータセットを形成する。状態学習部132は、形成したデータセットを含む訓練データを用いて機械学習モデルのモデルパラメータを更新する。その後、図15の処理を終了する。
【0065】
なお、図15は、ステップS106、S142、S108の処理をその順序で実行する場合を示すが、これには限られない。ステップS142の処理は、ステップS106の前に実行されてもよいし、ステップS108の後に実行されてもよい。
【0066】
以上に説明したように、本実施形態に係る情報処理装置10は、外観データ取得部122と、状態解析部124と、状態出力部128とを備える。外観データ取得部122は、医療機器の外観を示す外観データを取得する。状態解析部124は医療機器の外観に対応する当該医療機器の状態を示す医療機器状態モデルデータを用いて、前記外観データが示す医療機器の状態を解析する。状態出力部128は解析された医療機器の状態を示す医療機器状態情報を出力する。
この構成によれば、医療機器の外観に対応した状態が判定される。目視による判定とは異なり、客観的かつ安定した状態の判定がなされる。破損そのほかの異常が生じた医療機器の使用が回避されることで、異常によるリスクを低減することができる。
【0067】
外観データは、医療機器の三次元形状を示すデータであってもよい。外観データ取得部122は、外観データが示す三次元形状から所定の外形を表す部位を状態の解析対象として定めてもよい。
この構成によれば、解析対象とする外形を表す部位が一定に定まる。一般に三次元形状は視点の位置により観測される外形が異なるが、部位を一定とすることで、外観に基づく医療機器の状態の判定精度を向上ならびに安定化することができる。
【0068】
医療機器状態モデルデータは、医療機器の外観として、少なくとも一部の部位における形状、色彩および寸法の少なくとも一つである外観特性を示す外観特性情報と、医療機器の状態として、当該医療機器の異常の種類と程度の少なくとも一方の特性を示す異常情報との対応関係を示すデータであってもよい。
状態解析部124は、外観データに基づく医療機器の外観特性に応じた当該医療機器の異常の特性を、医療機器の状態として解析してもよい。
この構成によれば、外観データに基づいて定まる外観特性に応じた異常の特性が解析される。そのため、使用者は解析された異常の特性を知得することができ、知得した異常の特性に応じた措置を講ずることができる。
【0069】
外観特性は、医療機器をなす複数の部材間の接合部における形状、色調および寸法の少なくとも一つの性状を含んでもよい。状態解析部124は、当該性状に応じた異常の特性を解析してもよい。
この構成によれば、外観データに基づいて定まる接合部における性状に応じた異常の特性が解析される。
【0070】
外観特性は、医療機器の所定の部材の径を含んでもよい。状態解析部124は、径の分布に応じた異常の特性を解析してもよい。
この構成によれば、外観データに基づいて定まる所定の部材の径の分布に応じた異常の特性が解析される。
【0071】
外観特性は、医療機器の所定の部材の長さを含んでもよい。状態解析部124は、長さに応じた異常の特性を解析してもよい。
この構成によれば、外観データに基づいて定まる所定の部材の長さに応じた異常の特性が解析される。
【0072】
外観特性は、医療機器の所定の部材の表面形状を含んでもよい。状態解析部124は、表面形状に前記異常の特性を解析してもよい。
この構成によれば、外観データに基づいて定まる所定の部材の表面形状に応じた異常の特性が解析される。
【0073】
外観特性は、医療機器の所定の部材の表面の模様を含んでもよい。状態解析部124は、模様に応じた異常の特性を解析してもよい。
この構成によれば、外観データに基づいて定まる所定の部材の表面の模様に応じた異常の特性が解析される。
【0074】
所定の部材は金属材料を有してもよい。外観データ取得部122は、外観データとしてX線センサを用いて撮影された画像を示す画像データを取得してもよい。
X線は有機化合物を透過し、金属を透過しないため、撮像された画像には所定の部材の外観が捕捉され、高分子化合物で構成された他の部材や生体組織の像が捕捉されない。この構成によれば、医療機器の使用時においても金属材料を有する所定の部材の外観に基づいて、その状態が解析される。
【0075】
状態出力部128は、医療機器の状態ごとの前記医療機器の取り扱いに関する予め設定された案内情報から、解析された医療機器の状態に応じた案内情報を定めてもよい。
この構成によれば、医療機器の状態に応じた案内情報が定まる。定まった案内情報に接した使用者には、案内情報に示される取り扱いが促される。また、使用経験が乏しい使用者に対して医療機器の取り扱いについて訓練を施すことができる。
【0076】
情報処理装置10は、医療機器の部位と状態の少なくとも一方の項目である計数単位ごとに異常の頻度を解析する異常解析部130を備えてもよい。
この構成によれば、計数単位ごとに発生した異常の頻度が解析される。解析された頻度に接した使用者は、異常が頻発する部位、異常の種類の一方または両方を知得することができる。ひいては、使用者は知得された情報を医療機器の維持管理または開発に役立てることができる。
【0077】
医療機器状態モデルデータは、医療機器の状態として、当該医療機器の再使用可能性を含んでもよい。状態解析部124は、外観データが示す医療機器の再使用可能性を解析してもよい。
この構成によれば、医療機器の外観に対応した医療機器の再使用可能性が判定される。客観的かつ安定した再使用可能性の判定がなされる。再使用できない医療機器の使用が回避されることで、再使用による経済性や環境負荷の低減を追求しながら再使用できない医療機器の使用を回避することができる。
【0078】
情報処理装置10は、医療機器の外観を示す外観データと当該医療機器の状態を示す状態データとを対応付けたデータセットを含む訓練データを用いて、医療機器状態モデルデータを生成する状態学習部132、をさらに備えてもよい。
この構成によれば、自装置が取得した外観データと当該外観データに対応する状態データを含む訓練データを用いて医療機器状態モデルデータを生成することができる。自装置の使用環境に応じた医療機器状態モデルデータが得られるため、より的確に医療機器の状態を推定できる。
【0079】
状態学習部132は、外観データ取得部122が取得した外観データと医療機器状態情報を出力した出力先機器から取得される状態データとを対応付けたデータセットを訓練データに含めてもよい。
この構成によれば、出力先機器を使用する使用者が判断した医療機器の状態を示す状態データが解析対象とした外観データと対応付けたデータセットを用いて、医療機器状態データが更新される。医療機器の外観と状態の対応関係が、外観データに示す外観と使用者が判断した状態に適合するように医療機器状態データが更新される。そのため、使用者の判断した状態に、推定される状態を近づけることができる。
【0080】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
【0081】
例えば、情報処理装置10は、1個または複数の撮影部20のそれぞれから入出力部150を経由して外観データを受信し、受信した外観データを処理対象とするサーバ装置として機能してもよい。状態出力部128は、表示部160に代えて、または表示部160とともに、入出力部150を経由して他機器に医療機器状態情報を出力してもよい。他機器は、例えば、解析対象の医療機器の使用者の端末装置でありうる。端末装置は、例えば、パーソナルコンピュータ、タブレット端末装置、多機能携帯電話機、などの情報機器となりうる。記憶部140には、外観データの送信元とする撮影部20と医療機器状態情報の出力先とする他機器を示す使用者データを予め記憶しておいてもよい。状態出力部128は、使用者データを参照して、外観データの送信元に対応する他機器を医療機器状態情報の出力先として特定することができる。入出力部150は、撮影部20または他機器とネットワークを用いて各種のデータを送受信可能に接続してもよい。
【0082】
情報処理装置10は、撮影部20を備え、単一の情報処理装置または情報処理システム1として構成されてもよい。情報処理装置10において、表示部160と操作部170の一方または両方が省略されてもよい。表示部160と操作部170の一方または両方は、情報処理装置10と別体であり、入出力部150を経由して無線または有線で接続されてもよい。
制御部120において、異常解析部130と状態学習部132の一方または両方が省略されてもよい。
【0083】
また、上述した実施形態における情報処理装置10の一部、または全部を、LSI(Large Scale integration)等の集積回路として実現してもよい。情報処理装置10の各機能ブロックは個別にプロセッサ化してもよいし、一部、または全部を集積してプロセッサ化してもよい。また、集積回路化の手法はLSIに限らず専用回路、または汎用プロセッサで実現してもよい。また、半導体技術の進歩によりLSIに代替する集積回路化の技術が出現した場合、当該技術による集積回路を用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0084】
上記各態様の情報処理装置、情報処理方法およびプログラムによれば、医療機器の外観に対応した状態が判定される。目視による判定とは異なり、客観的かつ安定した状態の判定がなされる。破損そのほかの異常が生じた医療機器の使用が回避されることで、異常によるリスクを低減することができる。
【符号の説明】
【0085】
10…情報処理装置、20…撮影部、120…制御部、122…外観データ取得部、124…状態解析部、128…状態出力部、130…異常解析部、132…状態学習部、140…記憶部、150…入出力部、160…表示部、170…操作部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15