(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-25
(45)【発行日】2024-10-03
(54)【発明の名称】耐火木材
(51)【国際特許分類】
B27K 3/02 20060101AFI20240926BHJP
E04B 1/94 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
B27K3/02 C
E04B1/94 R
(21)【出願番号】P 2023045705
(22)【出願日】2023-03-22
【審査請求日】2023-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】301062226
【氏名又は名称】株式会社日本設計
(74)【代理人】
【識別番号】100177426
【氏名又は名称】粟野 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】小泉 治
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-208353(JP,A)
【文献】特開2019-163612(JP,A)
【文献】特開平11-042737(JP,A)
【文献】特開2010-242331(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B27K 1/00-9/00
E04B 1/62-1/99
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
木材によって形成される本体部と、耐火部とを有し、
前記耐火部は少なくとも1段の耐火層を有し、
各段の耐火層は、前記本体部から前記耐火部に向かう方向に、難燃剤を含有する難燃性接着剤によって形成される難燃性接着剤層と、木材によって形成される燃え代層とをこの順に有する、耐火木材
であって、
前記耐火層の層厚方向に交差する所定方向に接着剤を介して積層され一体化される複数の木材層によって形成される集成材を有し、
前記集成材は、前記本体部と前記耐火部とを有する、耐火木材。
【請求項2】
各木材層は、前記耐火層の段数に対応する段数の溝部対を有し、
各木材層における各段の溝部対は、上記所定方向の両側から前記木材層が切り込まれた形状をなし、前記難燃性接着剤をそれぞれ充填される一対の溝部からなり、
各段の耐火層における前記難燃性接着剤層は、各木材層における対応する段の溝部対に充填された前記難燃性接着剤の集合によって形成される、請求項
1に記載の耐火木材。
【請求項3】
各木材層における各段の溝部対は、前記一対の溝部の間に間隔を形成する、請求項
2に記載の耐火木材。
【請求項4】
各木材層における各段の溝部対は、前記耐火層の層厚方向に見た時に前記一対の溝部が互いに重なる重なり部を有する、請求項
2に記載の耐火木材。
【請求項5】
各木材層における各段の溝部対は、上記所定方向に見た時に前記一対の溝部が互いに少なくとも部分的に重なるように形成される、請求項
2に記載の耐火木材。
【請求項6】
各耐火層において前記燃え代層の厚さは20~30mmである、請求項1に記載の耐火木材。
【請求項7】
前記難燃性接着剤をそれぞれ充填された状態の前記一対の溝部からなる前記溝部対が各木材層に形成された状態の上記複数の木材層を形成する木材層加工工程と、
上記複数の木材層を前記接着剤を介して積層し一体化することで前記集成材を形成する積層工程とを有する、請求項
2~5の何れか1項に記載の耐火木材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は耐火木材に関する。
【背景技術】
【0002】
木材に難燃剤を含有させて形成される耐火木材が知られている(例えば、特許文献1の段落[0004]参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のような耐火木材は、木材が固着する二酸化炭素量を上回る二酸化炭素排出量が製造時に必要となることや、高価であることなどの問題がある。
【0005】
そこで本発明の目的は、二酸化炭素の排出削減効果に優れ、安価な耐火木材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は以下のとおりである。
【0007】
[1]
木材によって形成される本体部と、耐火部とを有し、
前記耐火部は少なくとも1段の耐火層を有し、
各段の耐火層は、前記本体部から前記耐火部に向かう方向に、難燃剤を含有する難燃性接着剤によって形成される難燃性接着剤層と、木材によって形成される燃え代層とをこの順に有する、耐火木材。
【0008】
[2]
前記耐火層の層厚方向に交差する所定方向に接着剤を介して積層され一体化される複数の木材層によって形成される集成材を有し、
前記集成材は、前記本体部と前記耐火部とを有する、[1]に記載の耐火木材。
【0009】
[3]
各木材層は、前記耐火層の段数に対応する段数の溝部対を有し、
各木材層における各段の溝部対は、上記所定方向の両側から前記木材層が切り込まれた形状をなし、前記難燃性接着剤をそれぞれ充填される一対の溝部からなり、
各段の耐火層における前記難燃性接着剤層は、各木材層における対応する段の溝部対に充填された前記難燃性接着剤の集合によって形成される、[2]に記載の耐火木材。
【0010】
[4]
各木材層における各段の溝部対は、前記一対の溝部の間に間隔を形成する、[3]に記載の耐火木材。
【0011】
[5]
各木材層における各段の溝部対は、前記耐火層の層厚方向に見た時に前記一対の溝部が互いに重なる重なり部を有する、[3]又は[4]に記載の耐火木材。
【0012】
[6]
各木材層における各段の溝部対は、上記所定方向に見た時に前記一対の溝部が互いに少なくとも部分的に重なるように形成される、[3]~[5]の何れか1項に記載の耐火木材。
【0013】
[7]
各耐火層において前記燃え代層の厚さは20~30mmである、[1]~[6]の何れか1項に記載の耐火木材。
【0014】
[8]
前記難燃性接着剤をそれぞれ充填された状態の前記一対の溝部からなる前記溝部対が各木材層に形成された状態の上記複数の木材層を形成する木材層加工工程と、
上記複数の木材層を前記接着剤を介して積層し一体化することで前記集成材を形成する積層工程とを有する、[3]~[6]の何れか1項に記載の耐火木材の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、二酸化炭素の排出削減効果に優れ、安価な耐火木材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1実施形態の耐火木材を示す側面図である。
【
図3】本発明の第2実施形態の耐火木材を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を例示説明する。
【0018】
図1~
図2に示すように、本発明の第1実施形態において耐火木材1は、木材によって形成される本体部2と、耐火部3とを有し、耐火部3は少なくとも1段(本実施形態では2段)の耐火層4を有し、各段の耐火層4は、本体部2から耐火部3に向かう方向に、難燃剤を含有する難燃性接着剤によって形成される難燃性接着剤層4aと、木材によって形成される燃え代層4bとをこの順に有する。
【0019】
上記構成によれば、燃え代層4bの厚みに応じた所定時間の耐火の後に難燃性接着剤層4aによる燃え止まりを期待できるので、例えば30分、60分、90分耐火仕様など、要求される耐火時間の長さに応じて各耐火層4の厚みと段数を適宜設定することで、当該耐火時間を容易に実現できる。例えば、1段で30分耐火仕様にできる場合、2段に設定することで容易に60分耐火仕様を実現できる。また接着剤層に難燃剤を含有させる構成であるため、従来のように木材に難燃剤を含有させる構成に比べ、製造時の二酸化炭素排出量とコストを低減できる。したがって上記構成によれば、二酸化炭素の排出削減効果に優れ、安価な耐火木材1を実現できる。上記構成の耐火木材1は、建設材料(例えば、面材又は軸材)としての使用に特に適する。
【0020】
また上記構成によれば、難燃剤を含有する難燃性接着剤層4aは燃え代層4bの内側に設けられるので、大気からの吸湿による難燃性能の低下を抑制でき、安定した耐火性能を維持できる。また、難燃剤は接着剤に含有されるので、難燃剤が本体部2から剥がれ落ちることによる難燃性能の低下を抑制でき、この点からも、安定した耐火性能を維持できる。また上記構成は、仕上げ面に難燃剤を塗布する構成と比べると、仕上げ面の塗装が可能であることや、早期に難燃剤が燃え落ちてしまい、耐火効果を発揮できなくなる可能性を低減できることなどの利点がある。また上記構成は、木材・プラスチック複合材と比べると、廃棄時(例えば建設材料として使用する場合、建設物の解体に伴う廃棄)の処分も容易である。
【0021】
耐火木材1は、耐火層4の層厚方向に交差(本実施形態では直交)する所定方向に接着剤5を介して積層され一体化される複数の木材層6aによって形成される集成材6を有し、集成材6は、本体部2と耐火部3とを有する。上記構成によれば、要求されるサイズの面材(建設材料の場合、壁材、床材、天井材など)を容易に実現できる。
【0022】
各木材層6aは、耐火層4の段数に対応する段数の溝部対7を有し、各木材層6aにおける各段の溝部対7は、上記所定方向の両側から木材層6aが切り込まれた形状をなし、難燃性接着剤をそれぞれ充填される一対の溝部7aからなり、各段の耐火層4における難燃性接着剤層4aは、各木材層6aにおける対応する段の溝部対7に充填された難燃性接着剤の集合によって形成される。上記構成によれば、難燃性接着剤をそれぞれ充填された状態の一対の溝部7aからなる溝部対7が各木材層6aに形成された状態の上記複数の木材層6aを形成する木材層6a加工工程と、上記複数の木材層6aを接着剤5を介して積層し一体化することで集成材6を形成する積層工程とを経ることで、耐火木材1(集成材6)を容易に製造できる。
【0023】
各木材層6aにおける各段の溝部対7は、一対の溝部7aの間に間隔Sを形成する。上記構成によれば、各木材層6aにおいて一対の溝部7aを形成した時に上記間隔Sによって木材層6aの一体性を維持できる。したがって、木材層6a加工工程において、各木材層6aに、各段の溝部対7における一対の溝部7aを形成した後に、各溝部7aに難燃性接着剤を充填することで簡単且つ迅速な製造を実現できる。しかし、一対の溝部7aの一方を形成して難燃性接着剤を充填し、乾燥、固化させた後に一対の溝部7aの他方を形成して難燃性接着剤を充填する方法で製造してもよい。この場合、上記間隔Sを設けない構成としてもよい。
【0024】
各木材層6aにおける各段の溝部対7は、耐火層4の層厚方向に見た時に一対の溝部7aが互いに重なる重なり部7bを有する。上記構成によれば、重なり部7bによって難燃性接着剤層4aの耐火性能を向上できる。
【0025】
各耐火層4において燃え代層4bの厚さTは20~30mmである。上記構成によれば、1段の耐火層4の場合で30分耐火仕様(本実施形態では、2段の耐火層4を有するので60分耐火仕様)を容易に実現できる。
【0026】
図3~
図4に示す第2実施形態のように、各木材層6aにおける各段の溝部対7は、上記所定方向に見た時に一対の溝部7aが互いに少なくとも部分的に重なるように形成される構成としてもよい。上記構成によれば、燃え代層4bの厚みを確保し易くできる。
【0027】
第2実施形態では、各木材層6aにおける各段の溝部対7は、一対の溝部7aの間に間隔Sを形成する。上記構成によれば、各木材層6aにおいて一対の溝部7aを形成した時に上記間隔Sによって木材層6aの一体性を維持できる。したがって、木材層6a加工工程において、各木材層6aに、各段の溝部対7における一対の溝部7aを形成した後に、各溝部7aに難燃性接着剤を充填することで簡単且つ迅速な製造を実現できる。しかし、一対の溝部7aの一方を形成して難燃性接着剤を充填し、乾燥、固化させた後に一対の溝部7aの他方を形成して難燃性接着剤を充填する方法で製造してもよい。この場合、上記間隔Sを設けない構成としてもよい。
【0028】
図示はしないが、各木材層6aにおける各段の溝部対7は、上記所定方向に見た時に一対の溝部7aが互いに少なくとも部分的に重なるように形成され、且つ、耐火層4の層厚方向に見た時に一対の溝部7aが互いに重なる重なり部7bを有する構成としてもよい。上記構成によれば、燃え代層4bの厚みを確保し易くでき、且つ、重なり部7bによって難燃性接着剤層4aの耐火性能を向上できる。
【0029】
本発明は前述した実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【符号の説明】
【0030】
1 耐火木材
2 本体部
3 耐火部
4 耐火層
4a 難燃性接着剤層
4b 燃え代層
5 接着剤
6 集成材
6a 木材層
7 溝部対
7a 溝部
7b 重なり部
S 間隔
T 厚さ
【要約】
【課題】二酸化炭素の排出削減効果に優れ、安価な耐火木材を提供する。
【解決手段】木材によって形成される本体部と、耐火部とを有し、前記耐火部は少なくとも1段の耐火層を有し、各段の耐火層は、前記本体部から前記耐火部に向かう方向に、難燃剤を含有する難燃性接着剤によって形成される難燃性接着剤層と、木材によって形成される燃え代層とをこの順に有する、耐火木材。
【選択図】
図2