IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ユタカ技研の特許一覧

<>
  • 特許-排気流制御弁 図1
  • 特許-排気流制御弁 図2
  • 特許-排気流制御弁 図3
  • 特許-排気流制御弁 図4
  • 特許-排気流制御弁 図5
  • 特許-排気流制御弁 図6
  • 特許-排気流制御弁 図7
  • 特許-排気流制御弁 図8
  • 特許-排気流制御弁 図9
  • 特許-排気流制御弁 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-25
(45)【発行日】2024-10-03
(54)【発明の名称】排気流制御弁
(51)【国際特許分類】
   F01N 13/08 20100101AFI20240926BHJP
   F02B 27/06 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
F01N13/08 B
F02B27/06 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023105639
(22)【出願日】2023-06-28
【審査請求日】2023-12-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000138521
【氏名又は名称】株式会社ユタカ技研
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(72)【発明者】
【氏名】大塚 保彦
(72)【発明者】
【氏名】石村 星磨
(72)【発明者】
【氏名】福田 守
【審査官】津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】特許第5689837(JP,B1)
【文献】特開2013-174131(JP,A)
【文献】特開2016-79807(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 13/08
F02B 27/06
F16K 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの排気系内の上流側の部屋と下流側の部屋とを連通する弁穴が開けられている弁座と、
前記弁穴を開閉するように前記弁座上の第1支点部でスイング可能に支持され、前記上流側の圧力を開弁方向に受ける弁体と、
この弁体を閉弁方向へ付勢し、前記上流側の圧力が所定値以上に上昇したとき前記弁体の開弁を許容する弁ばねと、
前記弁座に一端が当接すると共に前記弁ばねに他端が当接し、前記弁ばねの位置に合わせて前記弁座上の第2支点部を中心にスイング可能なリンクと、を備え、
前記弁座は、前記リンクに向かって屈曲している屈曲部を含み、
この屈曲部の先端が前記第2支点部とされ、
前記リンクの他端は、前記屈曲部が当接可能に形成された屈曲部当接部とされ、
前記屈曲部当接部は、前記弁体の全閉状態において、前記屈曲部の先端にのみ当接し、前記弁体の全開状態において、前記屈曲部の先端と末端との2カ所に当接する形状とされていることを特徴とする、排気流制御弁。
【請求項2】
前記リンクの角部は、前記弁体に接触しないよう面取りされている、請求項1に記載の排気流制御弁。
【請求項3】
前記リンクは、略矩形形状を呈し、前記先端及び他端の間の側面の一部に、中央に向かって凹む溝部が形成されている、請求項1に記載の排気流制御弁。
【請求項4】
前記弁ばねは、コイル状に巻かれているコイル部と、このコイル部の一端より直線状に延びている棒状の第1アームと、前記コイル部の他端より延びている第2アームと、を含み、
前記第1アームと前記第2アームとのなす角が開く方向に付勢力が作用し、
前記弁体には、前記第2アームが貫通している弁体穴部が開けられ、
前記弁体穴部は、前記第2アームが前記弁体に対して相対的に変位した際に前記第2アームとの接触を防ぐ逃げ部を含む、請求項1に記載の排気流制御弁。
【請求項5】
前記弁座のうちの前記弁体が着座する部位には、緩衝材が設けられている、請求項1に記載の排気流制御弁。
【請求項6】
前記弁体の前記緩衝材に当接する部位の裏面には、振動特性を調整するための錘が設けられている、請求項5記載の排気流制御弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気流制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンで発生した排気ガスは、マフラに送られて熱や音のエネルギーが低減される。しかし、エンジンから排出される排気ガスの流量は、一定ではなく突発的に多くなることがある。このような場合には、排気流量制御弁を開放し、排気ガスの一部をマフラの外に逃がすことが行われる。このように用いられる排気流量制御弁に関する従来技術として特許文献1に開示される技術がある。
【0003】
特許文献1に示されるような、排気流量制御弁は、マフラ内の上流側の部屋と下流側の部屋とを連通する弁穴が開けられている弁座と、弁穴を開閉可能に設けられている弁体と、この弁体に一端が当接し弁体を閉じ方向に付勢している弁ばねと、弁座から弁ばねまで延びていると共に弁体のスイングに合わせてスイングするリンクと、を有している。
【0004】
弁ばねの他端は、リンクを介して弁座に支持されている。リンクを設けることにより、弁ばねを弁体と共にスイングさせることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5689837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らが特許文献1に開示された排気流量制御弁について研究したところ、弁体が開いた際にリンクが脱落する虞があることが分かった。
【0007】
本発明は、リンクの脱落を抑制することができる排気流制御弁の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示によれば、エンジンの排気系内の上流側の部屋と下流側の部屋とを連通する弁穴が開けられている弁座と、
前記弁穴を開閉するように前記弁座上の第1支点部でスイング可能に支持され、前記上流側の圧力を開弁方向に受ける弁体と、
この弁体を閉弁方向へ付勢し、前記上流側の圧力が所定値以上に上昇したとき前記弁体の開弁を許容する弁ばねと、
前記弁座に一端が当接すると共に前記弁ばねに他端が当接し、前記弁ばねの位置に合わせて前記弁座上の第2支点部を中心にスイング可能なリンクと、を備え、
前記弁座は、前記リンクに向かって屈曲している屈曲部を含み、
この屈曲部の先端が前記第2支点部とされ、
前記リンクの他端は、前記屈曲部が当接可能に形成された屈曲部当接部とされ、
前記屈曲部当接部は、前記弁体の全閉状態において、前記屈曲部の先端にのみ当接し、前記弁体の全開状態において、前記屈曲部の先端と末端との2カ所に当接する形状とされていることを特徴とする、排気流制御弁が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、リンクの脱落を抑制することができる排気流制御弁の提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1による排気流制御弁が搭載されている排気マフラの要部断面図である。
図2図1に示された排気流制御弁の斜視図である。
図3図1の3部拡大図である。
図4図2に示された排気流制御弁の分解斜視図である。
図5図4に示された弁体の斜視図である。
図6図4に示されたリンクの正面図である。
図7図1に示された排気マフラの作用について説明する図である。
図8図7の8部拡大図である。
図9図8の9部拡大図である。
図10】実施例2による排気流制御弁の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、説明中、左右とはマフラが搭載されている車両の乗員を基準として左右、前後とは車両の進行方向を基準として前後を指す。また、図中Frは前、Rrは後、Leは乗員から見て左、Riは乗員から見て右、Upは上、Dnは下を示している。
【0012】
<実施例1>
図1を参照する。エンジンEの排気系の一部を構成する排気マフラ10は、楕円筒状のマフラ外筒11と、このマフラ外筒11の上流側の端部を閉じている上流側蓋部12と、マフラ外筒11の下流側の端部を閉じている下流側蓋部13と、マフラ外筒11の内部に固定されている2つの隔壁である第1隔壁部30及び第2隔壁部15と、を有している。
【0013】
マフラ外筒11の内部は、上流側蓋部12と第1隔壁部30によって区切られた第1室R1と、第1隔壁部30と第2隔壁部15によって区切られた第2室R2と、第2隔壁部15と下流側蓋部13によって区切られた第3室R3と、に分けられている。
【0014】
排気マフラ10は、上流側蓋部12から第1室R1までエンジンEで発生した排気ガスを導くパイプ状の部材である第1パイプ部材17と、第1隔壁部30及び第2隔壁部15を貫通し第1室R1内の排気ガスを第3室R3へ導くパイプ状の部材である第2パイプ部材18と、第2隔壁部15を貫通し第2室R2内の排気ガスを下流側蓋部13から排出するパイプ状の部材である第3パイプ部材19と、を有する。
【0015】
第1隔壁部30には、第1室R1と第2室R2とを連通している弁穴31が開けられており、この弁穴31を開閉可能に排気流制御弁20が設けられている。即ち、第1隔壁部30は、排気流制御弁20の弁座を兼ねている。以下、第1隔壁部30を弁座30ということがある。弁座30は、第1隔壁部30に一体的に形成されている、ということもできる。
【0016】
第2隔壁部15には、第3室R3から第2室R2へ排気ガスが流れることを許容する多数の第2隔壁穴部15aが開けられている。
【0017】
通常時においてエンジンEで発生した排気ガスは、第1パイプ部材17の内部を流れて第1室R1に導かれ、第2パイプ部材18の内部を通過して第1室R1から第3室R3に導かれる。第3室R3に達した排気ガスは、第2隔壁穴部15aを通過して第2室R2に達し、第3パイプ部材19を通過して第2室R2から排気マフラ10の外部へ排出される。
【0018】
排気ガスは、排気マフラ10の内部を通過している間にエネルギーが減衰され、温度が低下すると共に大気へ排出される際の音が小さくなる。
【0019】
なお、マフラ外筒11の形状は任意の形状を採用することができ、円筒形状や長円形状であってもよい。また、マフラ外筒11の内部は、2つの部屋に区切られていてもよいし、4つ以上の部屋に区切られていてもよい。
【0020】
図2図4を参照する。排気流制御弁20は、弁穴31が形成されている弁座30と、弁穴31を開閉する弁体40と、弁ばね25で弁体40へ押し付けられている支軸24と、この支軸24が貫通し支軸24に支持されている弁ばね25と、閉弁トルクを弁体40の開度増加に応じて減少制御するリンク50と、弁座30に固定され弁体40が当接する際の衝撃を和らげる緩衝材27と、弁体40に取り付けられ振動特性を調整する錘28と、を有している。
【0021】
図3を参照する。弁座30には、第1室R1側へ溝状に突出している支点溝32が形成されている。支点溝32の溝底は、弁体40のスイング軸である第1支点部P1となる。また弁座30には、第1支点部P1と弁穴31との間にリンク50に向かって屈曲している屈曲部33が形成されている。屈曲部33の先端は、リンク50のスイング軸である第2支点部P2とされている。また、弁座30には、緩衝材27を収納するために膨出させた膨出部34が、弁穴31を挟んで屈曲部33に対向する位置に形成されている。
【0022】
図4を参照する。弁体40は、略方形に形成された金属製の板によって構成され、その一端には、第1支点部P1に先端が当接するよう曲げられている突起41と、この突起41を挟んで並ぶ一対のストッパ片42とが形成される。図3を参照する。ストッパ片42は、弁体40が全開となるまでは、弁座30から離間している。ストッパ片42は、弁体40が全開となった際に弁座30に当接する。
【0023】
弁体40は、第1支点部P1周りに、弁穴31を閉鎖する全閉位置から、ストッパ片42を弁座30に当接させて弁穴31を全開にする全開位置までスイングすることができる。
【0024】
また弁体40の中央部には、閉じ状態において弁穴31から突出している凸部43が形成されている。凸部43は、断面台形をなしている。この凸部43の相対向する面は、凸部43の開口に向かって相互に広がるテーパ状に形成された斜面部43aである。
【0025】
図4を参照する。弁ばね25は、ねじりコイルばねによって構成され、コイル状に巻かれ支軸24が貫通しているコイル部25aと、このコイル部25aの一端より直線状に延びている棒状の第1アーム25bと、コイル部25aの中央部である他端より延びている第2アーム25cと、を有する。弁ばね25は、第1アーム25b及び第2アーム25c間の挟み角度が開く方向に付勢力が作用している。
【0026】
コイル部25aは、2つ形成されて同軸上に隣接して設けられている。コイル部25aの一端とは、隣接して設けられた2つのコイル部25aの両端に位置する端部をいう。一方、コイル部25aの他端とは、隣接して設けられた2つのコイル部25aの隣接している側の端部をいう。第1アーム25bは、それぞれのコイル部25aの一端から延びている。また、第2アーム部25cは、それぞれのコイル部25aの他端から伸び互いに接続されて略U字状を呈している。
【0027】
なお、コイル部25a、第1アーム25b、第2アーム25cが1つずつからなる弁ばね25を用いることもできる。つまり、弁ばね25は、コイル部25a、第1アーム25b、第2アーム25cが2つずつからなるものには限られない。
【0028】
図3を併せて参照する。コイル部25aは、その外周面が斜面部43a、43aに近接して配置されている。こうしてコイル部25aの一部は上記凸部43に収容されている。また一対の第1アーム25bの先端部は、弁体40の自由端に設けられる一対の係止爪45に係止され、U字状の第2アーム25cの先端部は、弁体穴部46を貫通している。第2アーム25cの先端は、リンク50を介して第2支点部P2に相対的にスイング自在に当接している。
【0029】
図3及び図5を参照する。弁体40には、第2アーム25cが貫通している弁体穴部46が開けられている。弁体穴部46は、略U字状を呈している。弁体穴部46は、第2アーム25cが弁体40に対して相対的に変位した際に第2アーム25cとの接触を防ぐ逃げ部46aを含む。
【0030】
図3のみを参照する。支軸24は、全体が略U字状に形成され、コイル部25aを貫通している。弁体40の凸部43の開口を縦断するようにして弁体40に固着され、この支軸24の円弧面により、コイル部25aの内周面の一部を支持することで、コイル部25aの外周面を上記凸部43の内周面より浮かせている。
【0031】
弁体40に固着されている支軸24によりコイル部25aの内周面の一部を支持すること、並びにコイル部25aの外周面を凸部43の内周面より浮かせたことにより、コイル部25aと、その支持部との摩擦部は一箇所となり、弁体40の開度変化に伴う第1アーム25b及び第2アーム25cの挟み角度の変化時、コイル部25aと支軸24との間に生じる摩擦を小さく抑えることができ、弁体40の開閉を一層スムーズに行うことができる。
【0032】
図3及び図6を参照する。リンク50は、1枚の略矩形状の金属板が略U字状に曲げられて形成されている。リンク50は、正面視において略矩形形状を呈し、両端にU字状のばね当接部51及び屈曲部当接部52が形成されている。ばね当接部51及び屈曲部当接部52は、略U字状に曲げられている金属板の対向するそれぞれの部位に形成されている。つまり、リンク50を平板状に開いた場合には、開かれた板は折り曲げられていた部位を中心に線対称となる。
【0033】
図3のみを参照する。ばね当接部51には、第2アーム25cのU字状の屈曲部がスイング自在に当接している。屈曲部当接部52には、屈曲部33が当接している。屈曲部当接部52は、一辺が略矩形状のリンク50の長手方向に沿って延び(幅方向に対して垂直に延び)、この一辺に対向する他辺が長手方向に対して斜めに延びることにより、先端に向かって徐々に開口する略U字状を呈している。屈曲部当接部52の形状は、弁体40が全開となった際に屈曲部33の先端と末端との2点に当接可能な形状とされている。つまり、屈曲部当接部52の形状は、屈曲部33の長さや板厚、延びる角度に合わせて、全開時に2点に当接するような形状とされている。
【0034】
リンク50の先端及び他端の間の側面の一部に、中央に向かって凹む溝部53が形成されている。また、リンク50は、弁体40に対向する角である角部54が、弁体に接触しないよう面取りされている。これらの溝部53及び角部54も、対向するそれぞれの位置に形成されている。
【0035】
なお、リンク50は、側面視において略U字状を呈する折り曲げ形状のものには限られない。リンク50は、1枚板によって構成されていても良い。また、ばね当接部51や屈曲部当接部52の形状は、略U字状には限られない。C字状やJ字状の他、任意の形状を採用することができる。特に、屈曲部当接部52は、弁体40が全開となった際に屈曲部33の先端と末端の2か所に当接することが重要であり、これを満たす限りにおいて任意の形状を採用することができる。
【0036】
緩衝材27には、金属製のメッシュを用いることができる。緩衝材27は、例えば、膨出部34にスポット溶接されて固定されている。
【0037】
錘28は、弁体40の緩衝材27に当接する部位の裏面に固定されている。錘28は、例えば、金属製で弁体40の裏面に溶接により固定されている。
【0038】
次に、この排気流制御弁20の作用について説明する。
【0039】
弁ばね25の装着に際しては、弁体40の、弁穴31とは反対側の凸部43の両斜面部43a、43aにコイル部25aを支持させ、第1及び第2アーム25b、25cの挟み角度を広げようとする弾性反発力に抗して、第1アーム25bを弁体40の自由端の係止爪45に係止すると共に、第2アーム25cをリンク50を介して弁座30の第2支点部P2に支持させるので、第1及び第2アーム25b、25cの挟み角度を広げようとする弾性反発力がコイル部25aを介して弁体40を閉弁方向へ付勢する。
【0040】
図7を参照する。エンジンEが高速、高負荷運転状態に移ると、排ガスの流量が増加して第1室R1の圧力が上昇する。その圧力による弁体40の開弁トルクが、弁ばね25による弁体40の閉弁トルクを上回ると、弁体40は全開位置に向かってスイングし、弁穴31の開度を増加させていく。すると、弁穴31の開度に応じて、第1パイプ部材17から第1室R1に出た排ガスが、弁穴31へと短絡し、傾斜した弁体40に誘導されながら、第2室R2から第3パイプ部材19を通過して大気に放出されることになる。これにより、背圧の減少によるエンジン出力の向上を図ることができる。
【0041】
ここで、弁ばね25の、弁体40に与える閉弁トルクについて考察する。
【0042】
図3において、弁ばね25の第2アーム25cからリンク50を介して第2支点部P2に作用する弾性反発力は、第1及び第2支点部P1、P2間を結ぶ直線に垂直な第1分力と、上記直線に平行な第2分力とに分けられ、その第1分力と、第1及び第2支点部P1、P2間の距離との積が、弁体40に及ぼす閉弁トルクとなる。
【0043】
ところで、図3及び図8に示すように、弁体40が全閉位置から開いていくと、リンク50を支持する第2支点部P2が、弁体40を支持する第1支点部P1より弁穴31側へオフセットしていることで、リンク50が弁体40の開きに応じて第2支点部P2周りに弁座30側へ倒れる倒れ角度は、弁体40の開き角度より大きくなる。これに伴い、第2アーム25cから第2支点部P2に作用する弾性反発力と第1分力とのなす角度は、弁体40の開きに応じて増加するので、第1分力は減少することになる。その結果、第1分力による弁体40の閉弁トルクは、図8に示すように、弁体40の開度増加に応じて減少することになる。しかも、弁体40の開度変化に伴う第1及び第2アーム25b、25cの挟み角度の変化は少なく、したがってコイル部25aと凸部43の斜面部43a、43aとの間に生じる摩擦も極めて小さい。
【0044】
かくして、弁体40が、第1室R1の圧力により開き始めると、自動的にスムーズに全開位置へとスイングし、背圧の減少及び気流音の低減を確実に図ることができる。また排ガスが排気マフラ10から弁穴31を経て第2室R2へ移るとき、傾斜した弁体40がその排ガスの流れをスムーズに誘導するので、背圧の減少及び気流音の低減を一層図ることができる。
【0045】
図9を参照する。屈曲部当接部52は、弁体40の全開状態において、屈曲部33の先端と末端との2カ所に当接している(P2、P3参照)。
【0046】
図1及び図7を参照する。エンジンEが低速、低負荷運転状態に戻ると、第1室R1の圧力による弁体40の開弁トルクが、弁ばね25による閉弁トルクより小さくなり、弁体40は全閉位置へと戻っていく。
【0047】
図3を参照する。このような排気流制御弁20において、弁ばね25のコイル部25aの一部を、弁体40の凸部43に収容したことで、コイル部25aの弁体40からの突出量を少なくして、排気流制御弁20のコンパクト化を図ることができる。
【0048】
また弁ばね25は、コイル部25aと、このコイル部25aの両端より延出する一対の第1アーム25bと、コイル部25aの中央部より延出する第2アーム25cとよりなり、そのコイル部25aを弁体40に支持させ、一対の第1アーム25bの先端部を、弁体40の一対の係止爪45に係止し、第2アーム25cの先端を、ばね当接部51に当接させたことで、一本の弁ばね25により弁体40全体に閉弁トルクを付与して、弁体40の開閉姿勢を安定させることができる。
【0049】
<実施例2>
次に、本発明の実施例2を図面に基づいて説明する。図10には、実施例2の排気流制御弁20Aが示されている。実施例1と共通する部分については、符号を流用すると共に、詳細な説明を省略する。
【0050】
排気流制御弁20Aは、弁座30Aが第1隔壁部30(図2参照)とは別部材によって構成されている。排気流制御弁20Aは、例えば、第1隔壁部30に溶接される。第1隔壁部30に形成された穴を塞ぐように排気流制御弁20Aは設けられる。
【0051】
以上に説明した排気流制御弁20、20Aについて以下に纏める。
【0052】
図1を参照する。第1に、排気流制御弁20は、エンジンEの排気系内の上流側の部屋(第1室R1)と下流側の部屋(第2室R2)とを連通する弁穴31が開けられている弁座30を有している。
【0053】
図8を参照する。排気流制御弁20は、さらに、弁穴31を開閉するように弁座30上の第1支点部P1でスイング可能に支持され、上流側の圧力を開弁方向に受ける弁体40と、この弁体40を閉弁方向へ付勢し、上流側の圧力が所定値以上に上昇したとき弁体40の開弁を許容する弁ばね25と、弁座30に一端が当接すると共に弁ばね25に他端が当接し、弁ばね25の位置に合わせて弁座30上の第2支点部P2を中心にスイング可能なリンク50と、を備えている。
【0054】
弁座30は、リンク50に向かって屈曲している屈曲部33を含む。この屈曲部33の先端が第2支点部P2とされ、リンク50の他端は、屈曲部33が当接可能に形成された屈曲部当接部52とされている。屈曲部当接部52は、弁体40の全閉状態において、屈曲部33の先端にのみ当接し(図3参照)、弁体40の全開状態において、屈曲部33の先端と末端との2カ所に当接する形状とされている。
【0055】
図9を参照する。屈曲部当接部52は、弁体40の全開状態において、屈曲部33の先端と末端(特に末端の下面であることが好ましい。)との2カ所に当接する(P2、P3参照)。このため、屈曲部33に1か所で当接している場合に比べて、リンク50が落下することを抑制することができる。リンク50の脱落を抑制することができる排気流制御弁20を提供することができる。排気流制御弁20A(図10参照)についても同様である。
【0056】
図8を参照する。第2に、第1の排気流制御弁20であって、リンク50の角部54は、弁体40に接触しないよう面取りされている。弁体40に接触してリンク50が脱落することを抑制することができる。排気流制御弁20A(図10参照)についても同様である。
【0057】
第3に、第1又は第2の排気流制御弁20であって、リンク50は、略矩形形状を呈し、先端及び他端の間の側面の一部に、中央に向かって凹む溝部53が形成されている。組み立て時に向きの識別をすることができ、誤組みを防止することができる。排気流制御弁20A(図10参照)についても同様である。
【0058】
第4に、第1乃至第3のいずれかの排気流制御弁20であって、弁ばね25は、コイル状に巻かれているコイル部25aと、このコイル部25aの一端より直線状に延びている棒状の第1アーム25bと、コイル部25aの他端より延びている第2アーム25cと、を含む。第1アーム25bと第2アーム25cとのなす角が開く方向に付勢力が作用している。
【0059】
図5を併せて参照する。弁体40には、第2アーム25cが貫通している弁体穴部46が開けられている。弁体穴部46は、第2アーム25cが弁体40に対して相対的に変位した際に第2アーム25cとの接触を防ぐ逃げ部46aを含む。
【0060】
第2アーム25cと弁体40との接触を抑制し、弁体40及びリンク50をそれぞれ円滑に作動させることができる。排気流制御弁20A(図10参照)についても同様である。
【0061】
図3を参照する。第5に、第1乃至第4のいずれかの排気流制御弁20であって、弁座30のうちの弁体40が着座する部位には、緩衝材27が設けられている。騒音の発生を抑制することができると共に、閉弁時における排気ガスの漏れを抑制することができる。排気流制御弁20A(図10参照)についても同様である。
【0062】
第6に、第5の排気流制御弁20であって、弁体40の緩衝材27に当接する部位の裏面には、振動特性を調整するための錘28が設けられている。これにより振動特性が向上し、騒音の発生を抑制することができる。排気流制御弁20A(図10参照)についても同様である。
【0063】
尚、本発明の作用及び効果を奏する限りにおいて、本発明は、実施例に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の排気流制御弁は、四輪車のマフラに好適である。
【符号の説明】
【0065】
E…エンジン
10…排気マフラ
20、20A…排気流制御弁
25…弁ばね、25a…コイル部、25b…第1アーム、25c…第2アーム
27…緩衝材
28…錘
30、30A…弁座
31…弁穴
40…弁体
46…弁体穴部、46a…逃げ部
50…リンク
52…屈曲部当接部
53…溝部
54…角部
P1…第1支点部
P2…第2支点部
R1…第1室(上流側の部屋)
R2…第2室(下流側の部屋)
【要約】      (修正有)
【課題】リンクの脱落を抑制することが出来る排気流制御弁を提供する。
【解決手段】排気流制御弁(20)は、弁穴(31)が開けられている弁座(30)と、弁穴(31)を開閉するようにスイング可能に支持されている弁体(40)と、弁体(40)を閉弁方向へ付勢している弁ばね(25)と、弁座(30)に一端が当接すると共に弁ばね(25)に他端が当接し、弁ばね(25)の位置に合わせて弁座(30)上の第2支点部(P2)を中心にスイング可能なリンク(50)と、を備えている。弁座(30)は、リンク(50)に向かって屈曲している屈曲部(33)を含む。リンク(50)の他端に形成されている屈曲部当接部(52)は、弁体(40)の全閉状態において、屈曲部(33)の先端にのみ当接し、弁体(40)の全開状態において、屈曲部(33)の先端と末端との2カ所に当接する形状とされている。
【選択図】図8
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10