(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-25
(45)【発行日】2024-10-03
(54)【発明の名称】センサ信号処理装置
(51)【国際特許分類】
G01F 1/667 20220101AFI20240926BHJP
【FI】
G01F1/667 C
(21)【出願番号】P 2023117311
(22)【出願日】2023-07-19
(62)【分割の表示】P 2022064907の分割
【原出願日】2017-08-10
【審査請求日】2023-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 功
【審査官】羽飼 知佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-145213(JP,A)
【文献】特開2002-365110(JP,A)
【文献】特開2004-157083(JP,A)
【文献】特開平10-142019(JP,A)
【文献】特開平09-250939(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/66-1/667
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号を送受信可能な第1センサと、前記第1センサよりも流体の流れの下流側に配置されて信号を送受信可能な第2センサと、からそれぞれ出力されるセンサ信号を処理するセンサ信号処理装置であって、
前記センサ信号に基づく信号を一方の入力端に入力されるコンパレータと、
前記コンパレータの他方の入力端にゼロクロス閾値電圧設定用の参照電圧を印加するか否かを切替える第1スイッチと、
前記他方の入力端にエンベロープ閾値電圧設定用のエンベロープ参照電圧を印加するか否かを切替える第2スイッチと、
前記他方の入力端にエラー検出閾値電圧設定用のエラー検出参照電圧を印加するか否かを切替える第3スイッチと、
前記コンパレータの出力に基づいて前記第1スイッチ、前記第2スイッチ、および前記第3スイッチの切替制御を行う制御部と、
を備え、
前記エンベロープ閾値電圧を生成する第1分圧回路と、
前記エラー検出閾値電圧を生成する第2分圧回路と、を更に備え、
前記第1分圧回路は、分圧用の第1抵抗と、前記第1抵抗に直列に接続される第1スイッチと、を有し、
前記第2分圧回路は、分圧用の第2抵抗と、前記第2抵抗に直列に接続される第2スイッチと、を有し、
前記コンパレータの電源電圧であるアナログ信号により、前記第1スイッチおよび前記第2スイッチのオンオフが切り替えられる、センサ信号処理装置。
【請求項2】
前記センサ信号を増幅する増幅器を更に備え、
前記制御部は、前記エラー検出参照電圧を2つのレベルで切替え可能であり、
前記制御部は、前記他方の入力端に前記エラー検出参照電圧が印加された状態での前記コンパレータの出力に応じて、前記増幅器のゲインを調整する、請求項1に記載のセンサ信号処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、抵抗の両端間をバイパスするか否かを切替えることで分圧比を変更することにより、前記エラー検出参照電圧を切替える、請求項2に記載のセンサ信号処理装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記一方の入力端に入力される信号が前記ゼロクロス閾値電圧と交わる複数のタイミングに基づき、前記第1センサと前記第2センサとの間の伝搬時間を算出する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のセンサ信号処理装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記一方の入力端に入力される信号が前記エンベロープ閾値電圧以上となったときに、前記他方の入力端に前記ゼロクロス閾値電圧を印加させ、
前記一方の入力端に入力される信号が前記ゼロクロス閾値電圧以上となったときに、前記他方の入力端に前記エラー検出閾値電圧を印加させ、
その後に前記他方の入力端に前記ゼロクロス閾値電圧を印加させる、請求項4に記載のセンサ信号処理装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記一方の入力端に入力される信号が一定時間経過する前に前記エンベロープ閾値電圧以上とならない場合は、前記切替制御を行う処理を中断する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のセンサ信号処理装置。
【請求項7】
前記第1センサおよび前記第2センサを駆動するHブリッジ回路と、
前記Hブリッジ回路を介して出力される前記センサ信号を電流/電圧変換する変換器と、を更に備え、
前記変換器の出力が前記一方の入力端に入力される、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のセンサ信号処理装置。
【請求項8】
前記第1センサおよび前記第2センサは、超音波センサである、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のセンサ信号処理装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のセンサ信号処理装置と、前記第1センサと、前記第2センサと、を備えるセンサシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサ信号処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、超音波を用いて流体の流量を測定する装置が種々提案されており、その一例は特許文献1に開示される。
【0003】
特許文献1の超音波流量計は、流体の流れる上流側に配置される第1超音波センサと、下流側に配置される第2超音波センサと備える。第1超音波センサから送信された超音波が第2超音波センサに受信されるまでの時間と、第2超音波センサから送信された超音波が第1超音波センサに受信されるまでの時間とに基づき、流体の流量が測定される。
【0004】
第1超音波センサおよび第2超音波センサは、それぞれくさびを備える。くさびは、超音波送受信器が設けられ、流体の流れる配管の外周面に設置される。くさびは、超音波送受信器から送信された超音波を所望の角度で流体に入射させる。
【0005】
また、くさびには、切欠きが設けられる。これにより、くさびに入射した配管伝搬波は、切欠きに阻害されて超音波送受信器に到達しにくくなるので、超音波送受信器に到達する配管伝搬波のエネルギーを流体伝搬波のエネルギーに対して小さくして、SN比を向上させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、特許文献1によれば、流体の流量を正確に測定できるとされている。しかしながら、特許文献1には、超音波センサから出力されるセンサ信号を処理するセンサ信号処理装置についての流量を正確に測定するための構成は開示されていない。
【0008】
上記状況に鑑み、本発明は、精度良く流体の流量を測定することを可能とし、小型化および低コスト化を図れるセンサ信号処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明の一態様は、信号を送受信可能な第1センサと、前記第1センサよりも流体の流れの下流側に配置されて信号を送受信可能な第2センサと、からそれぞれ出力されるセンサ信号を処理するセンサ信号処理装置であって、
前記センサ信号に基づく信号を一方の入力端に入力されるコンパレータと、
前記コンパレータの他方の入力端にゼロクロス閾値電圧設定用の参照電圧を印加するか否かを切替える第1スイッチと、
前記他方の入力端にエンベロープ閾値電圧設定用のエンベロープ参照電圧を印加するか否かを切替える第2スイッチと、
前記他方の入力端にエラー検出閾値電圧設定用のエラー検出参照電圧を印加するか否かを切替える第3スイッチと、
前記コンパレータの出力に基づいて前記第1スイッチ、前記第2スイッチ、および前記第3スイッチの切替制御を行う制御部と、
を備え、
前記エンベロープ閾値電圧を生成する第1分圧回路と、
前記エラー検出閾値電圧を生成する第2分圧回路と、を更に備え、
前記第1分圧回路は、分圧用の第1抵抗と、前記第1抵抗に直列に接続される第1スイッチと、を有し、
前記第2分圧回路は、分圧用の第2抵抗と、前記第2抵抗に直列に接続される第2スイッチと、を有し、
前記コンパレータの電源電圧であるアナログ信号により、前記第1スイッチおよび前記第2スイッチのオンオフが切り替えられる構成としている(第1の構成)。
【0010】
また、上記第1の構成において、前記センサ信号を増幅する増幅器を更に備え、
前記制御部は、前記エラー検出参照電圧を2つのレベルで切替え可能であり、
前記制御部は、前記他方の入力端に前記エラー検出参照電圧が印加された状態での前記コンパレータの出力に応じて、前記増幅器のゲインを調整する構成としてもよい(第2の構成)。
【0011】
また、上記第2の構成において、前記制御部は、抵抗の両端間をバイパスするか否かを切替えることで分圧比を変更することにより、前記エラー検出参照電圧を切替える構成としてもよい(第3の構成)。
【0012】
また、上記第1から第3のいずれかの構成において、前記制御部は、前記一方の入力端に入力される信号が前記ゼロクロス閾値電圧と交わる複数のタイミングに基づき、前記第1センサと前記第2センサとの間の伝搬時間を算出する構成としてもよい(第4の構成)。
【0013】
また、上記第4の構成において、前記制御部は、前記一方の入力端に入力される信号が前記エンベロープ閾値電圧以上となったときに、前記他方の入力端に前記ゼロクロス閾値電圧を印加させ、
前記一方の入力端に入力される信号が前記ゼロクロス閾値電圧以上となったときに、前記他方の入力端に前記エラー検出閾値電圧を印加させ、
その後に前記他方の入力端に前記ゼロクロス閾値電圧を印加させる構成としてもよい(第5の構成)。
【0014】
また、上記第1から第5のいずれかの構成において、前記制御部は、前記一方の入力端に入力される信号が一定時間経過する前に前記エンベロープ閾値電圧以上とならない場合は、前記切替制御を行う処理を中断する構成としてもよい(第6の構成)。
【0015】
また、上記第1から第6のいずれかの構成において、前記第1センサおよび前記第2センサを駆動するHブリッジ回路と、
前記Hブリッジ回路を介して出力される前記センサ信号を電流/電圧変換する変換器と、を更に備え、
前記変換器の出力が前記一方の入力端に入力される構成としてもよい(第7の構成)。
【0016】
また、上記第1から第7のいずれかの構成において、前記第1センサおよび前記第2センサは、超音波センサである構成としてもよい(第8の構成)。
【0017】
また、本発明の一態様は、上記第1から第8のいずれかの構成のセンサ信号処理装置と、前記第1センサと、前記第2センサと、を備えるセンサシステムである(第9の構成)。
【発明の効果】
【0018】
本発明のセンサ信号処理装置によると、精度良く流体の流量を測定することを可能とし、小型化および低コスト化を図れる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係る超音波センサシステムの構成を示す概略図である。
【
図2】本発明に係るセンサ信号処理装置の一構成例を示す図である。
【
図3】Hブリッジ回路の具体的な構成例を示す図である。
【
図4】センサ信号処理装置による流量測定処理を示すフローチャートである。
【
図5】受信処理において具体的に行われる処理工程の一部を示すフローチャートである。
【
図6】受信処理において具体的に行われる処理工程の一部を示すフローチャートである。
【
図7】受信処理において具体的に行われる処理工程の一部を示すフローチャートである。
【
図8】流量測定値の決定処理に関するフローチャートである。
【
図9】バースト波と超音波信号の一例を示すタイミングチャートである。
【
図10】比較例に係るセンサ信号処理装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0021】
<1.超音波センサシステムの構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る超音波センサシステムの構成を示す概略図である。
図1に示す超音波センサシステム500は、超音波を用いて配管P1内を軸線方向D1に沿って流れる流体の流量を測定するシステムである。超音波センサシステム500は、第1超音波センサ101(第1センサ)と、第2超音波センサ102(第2センサ)と、センサ信号処理装置200と、マイクロコンピュータ300と、を備える。なお、超音波センサシステム500は、例えば、都市ガス等の消費量を計測するガスメータに用いることができるが、その他の用途に用いてもよい。
【0022】
センサ信号処理装置200は、第1超音波センサ101および第2超音波センサ102それぞれから出力されるセンサ信号を処理する半導体集積回路である。センサ信号処理装置200は、マイクロコンピュータ300に接続されており、センサ信号の処理結果をマイクロコンピュータ300に出力する。
【0023】
第1超音波センサ101と第2超音波センサ102は、配管P1に設置される。第1超音波センサ101の設置位置と第2超音波センサ102の設置位置とは、配管P1の軸線方向D1において互いにずれている。具体的には、第1超音波センサ101は、配管P1における軸線方向D1に沿った流体の流れの上流側に配置され、第2超音波センサ102は、上記流れの下流側に配置される。
【0024】
センサ信号処理装置200は、配管P1内を流れる流体の流量を時間T1と時間T2との差分に基づいて測定する。時間T1は、第1超音波センサ101から送信された超音波が第2超音波センサ102で受信されるまでの時間である。時間T2は、第2超音波センサ102から送信された超音波が第1超音波センサ101で受信されるまでの時間である。
【0025】
<2.センサ信号処理装置の構成>
図2は、センサ信号処理装置200の一構成例を示す図である。センサ信号処理装置200は、Hブリッジ回路1と、I/Vアンプ(電流/電圧変換増幅器)2と、第1PGA(プログラマブルゲインアンプ)3と、第2PGA4と、コンパレータ5と、ロジック部6(制御部)と、スイッチ制御回路7と、電子ボリューム8と、スイッチSW1~SW3と、スイッチS1~S3と、を主に有する。コンパレータ5は、ヒステリシスコンパレータである。
【0026】
Hブリッジ回路1は、第1超音波センサ101と第2超音波センサ102に接続される。ここで、Hブリッジ回路1の具体的な構成例を
図3に示す。
図3に示すように、Hブリッジ回路1は、Hブリッジを構成するスイッチQ1~Q4と、Hブリッジを構成するスイッチQ5~Q8と、スイッチ11~14と、を有する。
【0027】
pチャネルMOSFETであるスイッチQ1のソースと、pチャネルMOSFETであるスイッチQ2のソースには、所定の電源電圧SWREG1が印加される。スイッチQ1のドレインと、nチャネルMOSFETであるスイッチQ3のドレインとが接続される。スイッチQ2のドレインと、nチャネルMOSFETであるスイッチQ4のドレインとが接続される。スイッチQ3のソースと、スイッチQ4のソースには、グランド電位が印加される。スイッチQ1とQ3との接続ノードには、第1超音波センサ101の一端が接続される。スイッチQ2とQ4との接続ノードには、第1超音波センサ101の他端が接続される。スイッチ11とスイッチ12は、それぞれ第1超音波センサ101の各端とI/Vアンプ2の各入力端との間の経路に配置される。
【0028】
pチャネルMOSFETであるスイッチQ5のソースと、pチャネルMOSFETであるスイッチQ6のソースには、所定の電源電圧SWREG2が印加される。スイッチQ5のドレインと、nチャネルMOSFETであるスイッチQ7のドレインとが接続される。スイッチQ6のドレインと、nチャネルMOSFETであるスイッチQ8のドレインとが接続される。スイッチQ7のソースと、スイッチQ8のソースには、グランド電位が印加される。スイッチQ5とQ7との接続ノードには、第2超音波センサ102の一端が接続される。スイッチQ6とQ8との接続ノードには、第2超音波センサ102の他端が接続される。スイッチ13とスイッチ14は、それぞれ第2超音波センサ102の各端とI/Vアンプ2の各入力端との間の経路に配置される。
【0029】
各スイッチQ1~Q4のオンオフは、ロジック部6によって制御される。具体的には、スイッチQ1とQ4がオンの場合、スイッチQ2とQ3はオフとされ、スイッチQ1とQ4がオフの場合、スイッチQ2とQ3はオンとされる。これにより、第1超音波センサ101にパルス状のバースト波を駆動用に入力させることができる。第1超音波センサ101が駆動されるときは、スイッチ11と12はオフとされる。スイッチ11と12のオンオフは、ロジック部6によって制御される。第1超音波センサ101が駆動されるとき、スイッチ13と14はオンとされる。スイッチ13と14のオンオフは、ロジック部6によって制御される。
【0030】
これにより、駆動される第1超音波センサ101から配管P1内へ出力された超音波は、流体を通って第2超音波センサ102により受信され、第2超音波センサ102から出力される超音波信号(センサ信号)としての電流信号をスイッチ13、14を介してI/Vアンプ2に入力させることができる。このようにして、上流側の第1超音波センサ101から下流側の第2超音波センサ102への超音波の送信が行われる。
【0031】
一方、各スイッチQ5~Q8のオンオフは、ロジック部6によって制御される。具体的には、スイッチQ5とQ8がオンの場合、スイッチQ6とQ7はオフとされ、スイッチQ5とQ8がオフの場合、スイッチQ6とQ7はオンとされる。これにより、第2超音波センサ102にパルス状のバースト波を駆動用に入力させることができる。第2超音波センサ102が駆動されるときは、スイッチ13と14はオフとされ、スイッチ11と12はオンとされる。
【0032】
これにより、駆動される第2超音波センサ102から配管P1内へ出力された超音波は、流体を通って第1超音波センサ101により受信され、第1超音波センサ101から出力される超音波信号(センサ信号)としての電流信号をスイッチ11、12を介してI/Vアンプ2に入力させることができる。このようにして、下流側の第2超音波センサ102から上流側の第1超音波センサ101への超音波の送信が行われる。
【0033】
I/Vアンプ2は、Hブリッジ回路1から入力される電流信号を電圧信号に変換してコンデンサC11、12を介して第1PGA3へ出力する。I/Vアンプ2は、電源電圧Vccにより駆動される。コンデンサC11、C12は、直流カット用のコンデンサである。
【0034】
第1PGA3は、I/Vアンプ2から入力される電圧信号をゲイン設定信号GSにより
設定されるゲインにて増幅して、コンデンサC21、C22を介して第2PGA4へ出力する。第1PGA3は、電源電圧Vccにより駆動される。コンデンサC21、C22は、直流カット用のコンデンサである。ゲイン設定信号GSは、ロジック部6により設定される。
【0035】
第2PGA4は、第1PGA3から入力される電圧信号をゲイン設定信号GSにより設定されるゲインにて増幅して後段側へ出力する。第2PGA4は、電源電圧Vccにより駆動される。例えば、第1PGA3は、3ビットによりゲイン設定され、第2PGA4は、5ビットによりゲイン設定される。すなわち、第1PGA3は、第2PGA4よりも前段において増幅の粗調整を行う。
【0036】
第2PGA4の出力端は、コンデンサC3を介して抵抗R1の一端とコンパレータ5の反転入力端子(-)との接続ノードに接続される。コンデンサC3は、直流カット用のコンデンサである。抵抗R1の他端には、所定の参照電圧Vrefが印加される。また、抵抗2の一端には参照電圧Vrefが印加され、他端はスイッチSW1を介してコンパレータ4の非反転入力端子(+)に接続される。参照電圧Vrefは、第2PGA4から出力される超音波信号の基準レベルを設定するために用いられる。コンパレータ5における超音波信号を用いたゼロクロス検知において、直流ノイズを回避するため、コンパレータ5の両入力端に同じ直流電圧(参照電圧Vref)を印加する。印加する直流電圧をゼロクロス閾値電圧と呼んでも良い。
【0037】
また、抵抗R3の一端には所定の電源電圧VREGが印加される。抵抗R3の他端は電子ボリューム8に接続される。電子ボリューム8には、抵抗R4の一端が接続される。抵抗R4の他端は、スイッチS1を介してグランド電位の印加端に接続される。スイッチS1は、アナログ信号ANGによりオンオフを切替えられる。
【0038】
スイッチS1がオンのとき、電子ボリューム8は、設定信号DPMに応じて抵抗値が変化し、電源電圧VREGを抵抗R3、R4を用いて分圧する分圧比を調整し、分圧後の電圧をエンベロープ参照電圧ENVREFとして電子ボリューム8と抵抗R4との接続ノードに発生させる。設定信号DPMは、ロジック部6により設定される。エンベロープ参照電圧ENVREFは、上記接続ノードに接続されるモニタ端子M1によりモニタ可能である。電子ボリューム8、抵抗R3、R4、およびスイッチS1から第1分割回路が構成される。
【0039】
上記接続ノードは、スイッチSW2を介してコンパレータ5の非反転入力端子に接続される。これにより、スイッチW2をオンとすることにより、エンベロープ参照電圧ENVREFをコンパレータ5に入力させることができ、コンパレータ5において超音波信号とエンベロープ閾値電圧とが比較される。
【0040】
また、抵抗R5の一端には、電源電圧VREGが印加される。抵抗R5の他端は、抵抗R6の一端に接続される。抵抗R6の他端は、抵抗R7の一端に接続される。抵抗R7の他端は、スイッチS2を介してグランド電位の印加端に接続される。抵抗R7の両端にはスイッチS3が接続される。スイッチS3は、切替信号ERCNTに応じてオンオフされる。切替信号ERCNTは、ロジック部6により設定される。スイッチS2は、アナログ信号ANGによりオンオフを切替えられる。
【0041】
スイッチS2がオンであるとき、スイッチS3のオンオフに応じて抵抗R7のバイパスがされるか否かが切替えられることにより、電源電圧VREGを抵抗R5、R6を用いて分圧する分圧比が調整され、分圧後の電圧がエラー検出参照電圧ERREFとして抵抗R5とR6との接続ノードに発生する。上記接続ノードは、スイッチSW3を介してコンパレータ5の非反転入力端子に接続される。これにより、スイッチW3をオンとすることにより、エラー検出参照電圧ERREFをコンパレータ5に入力させることができ、コンパレータ5において超音波信号とエラー検出閾値電圧とが比較される。抵抗R5~R7、スイッチS2、およびスイッチS3から第2分圧回路が構成される。
【0042】
アナログ信号ANGは、先述のようにスイッチS1およびS2のオンオフを制御する信号であるとともに、コンパレータ5の電源電圧ともなる。具体的には、アナログ信号ANGがスイッチS1およびS2をそれぞれオンとするレベルである場合に、アナログ信号ANGは、コンパレータ5に電源電圧として供給される。アナログ信号ANGは、スイッチS1およびS2をそれぞれオフする場合は、コンパレータ5に電源電圧は供給しない。アナログ信号ANGは、ロジック部6により設定される。
【0043】
これにより、センサ信号処理装置200によりセンサ信号の受信処理を行わない場合に、アナログ信号ANGによってスイッチS1およびS2をオフとするとともに、コンパレータ5に電源電圧を供給しないので、不要な電力消費を低減することができる。従って、超音波センサシステム500がバッテリ(不図示)によって動作する場合に、バッテリの電力消費を抑制することができ、長時間使用を可能とする。
【0044】
スイッチ制御回路7は、ロジック部6からの指令に応じて、スイッチSW1~SW3のオンオフをそれぞれ制御する。これにより、コンパレータ5において超音波信号と比較する閾値電圧を切替えることができる。コンパレータ5から出力される比較結果である比較信号CMPは、ロジック部6に入力される。ロジック部6は、比較信号CMPに基づいてスイッチSW1~SW3の切替えを行う。なお、スイッチSW1~SW3の切替えタイミングについては、後に詳述する。
【0045】
<3.センサ信号処理について>
次に、センサ信号処理装置200によるセンサ信号処理について、
図4~
図8の各種フローチャートを用いて説明する。
図4は、センサ信号処理装置200による流量測定処理を示すフローチャートである。
【0046】
図4のフローチャートが開始されると、まずステップS1でセンサ処理装置200は上流側送信処理を行う。ここで、ロジック部6は、Hブリッジ回路1におけるスイッチQ1~Q4から構成されるHブリッジ(
図3)を駆動することで、第1超音波センサ101を駆動するためのバースト波を発生させる。これにより、上流側の第1超音波センサ101から配管P1内へ向けて超音波が出力される。ここで、
図9には、発生するバースト波BSWの一例を示す。
【0047】
なお、このとき、ロジック部6は、アナログ信号ANGによりスイッチS1およびS2をオフとし、コンパレータ5への電源電圧の供給は停止させる。
【0048】
ステップS1の後、ステップS2に進み、センサ信号処理装置200は、下流側受信処理を行う。ここでは、上流側の第1超音波センサ101から送信された超音波が下流側の第2超音波センサ102により受信され、第2超音波センサ102から出力されるセンサ信号(超音波信号)が処理される。第2超音波センサ102から出力される超音波信号は、Hブリッジ回路1においてオンとされたスイッチ13、14(
図3)を介してI/Vアンプ2に入力され、I/Vアンプ2で電流/電圧変換され、第1PGA3および第2PGA4により増幅され、参照電圧VREFによりレベル調整されてコンパレータ5の反転入力端子に入力される。
【0049】
なお、下流側受信処理において、ロジック部6は、アナログ信号ANGによりスイッチ
S1およびS2をオンとするとともに、コンパレータ5への電源電圧の供給を行わせる。
【0050】
ここで、受信処理において具体的に行われる処理工程を
図5~
図8のフローチャートを用いて説明する。
図5のフローチャートが開始されると、まずステップS21で、ロジック部6は、スイッチ制御回路7に指令し、スイッチSW2をオン、スイッチSW1、SW3はオフとさせ、エンベロープ参照電圧ENVREFをコンパレータ5の非反転入力端子に入力させる。これにより、コンパレータ5において超音波信号と比較する閾値電圧がエンベロープ閾値電圧に設定される。
【0051】
ここで、
図9には、バースト波BSWが発生してから時間が経過して、コンパレータ5の反転入力端子に発生する超音波信号USWの一例を波形で示す。また、ステップS21で、
図9においては、エンベロープ閾値電圧EV_Vthが設定される。
【0052】
ステップS21の後、ステップS22で、ロジック部6は、コンパレータ5から出力される比較信号CMPに基づいて超音波信号がエンベロープ閾値電圧以上となったかを判定する。超音波信号がエンベロープ閾値電圧以上となっておらず(ステップS22のN)、一定時間が経過していない場合は(ステップS23のN)、ステップS22に戻る。なお、上記一定時間とは、ステップS21からの経過時間である。
【0053】
一定時間が経過する前に比較信号CMPのレベルがHighからLowに切替わった場合、ロジック部6は、超音波信号がエンベロープ閾値電圧以上となったと判定し(ステップS22のY)、ステップS25に進む。これにより、エンベロープ閾値電圧に達しない間のコンパレータ5の反転入力端子に入力される信号はノイズであるとして無視し、エンベロープ閾値電圧以上となった時点で上記信号は超音波信号であるとして扱うことができる。
図9の例では、タイミングt1において、超音波信号USWがエンベロープ閾値電圧EV_Vth以上となっている。
【0054】
なお、一定時間が経過しても超音波信号がエンベロープ閾値電圧以上とならなかった場合は(ステップS23のY)、ステップS24でロジック部6はタイムアウトとして下流側受信処理(ステップS2)を中断し、実施回数は増加せず、ステップS3には進まず、ステップS1に戻る。
【0055】
ステップS25に進むと、ロジック部6は、スイッチ制御回路7に指令し、スイッチSW1をオン、スイッチSW2、SW3はオフとさせる。これにより、参照電圧VREFがコンパレータ5の非反転入力端子に入力される。すなわち、コンパレータ5における比較に用いる閾値電圧がゼロクロス閾値電圧に切替えられる。
図9の例では、ゼロクロス閾値電圧ZERO_Vthが設定される。例えば、ゼロクロス閾値電圧ZERO_Vth(Vref)は、1.1Vに設定される。
【0056】
そして、ステップS26で、ロジック部6は、コンパレータ5から出力される比較信号CMPに基づいて超音波信号がゼロクロス閾値電圧以下となったかを判定する。超音波信号がエンベロープ閾値電圧以下となっていない場合は(ステップS26のN)、ステップS26に戻る。超音波信号がゼロクロス閾値電圧以下となった場合は(ステップS26のY)、ステップS27に進む。
図9の例では、タイミングt2において、超音波信号USWがゼロクロス閾値電圧ZERO_Vth以下となっている。
【0057】
なお、ここで、上流側送信処理(ステップS1)においてバースト波を発生開始したタイミングからロジック部6は、カウントを開始しており、超音波信号がエンベロープ閾値電圧以上となったタイミング(ステップS22のY、
図9のt1)までカウントを行う。このカウントでは、粗いカウントを行う。そして、上記タイミングから、ロジック部6は、細かいカウントを開始し、超音波信号がゼロクロス閾値電圧以下となったタイミング(ステップS26のY、
図9のt2)までのカウント値と、上記粗いカウントでのカウント値とに基づき、バースト波発生から上記タイミングまでの経過時間を保持する。すなわち、
図9の例では、バースト波BSWが発生したタイミングt0からタイミングt2までの経過時間(第1経過時間)が保持される。
【0058】
ステップS27に進むと、ロジック部6は、比較信号CMPに基づいて超音波信号がゼロクロス閾値電圧以上となったかを判定する。超音波信号がエンベロープ閾値電圧以上となっていない場合は(ステップS27のN)、ステップS27に戻る。超音波信号がゼロクロス閾値電圧以上となった場合は(ステップS27のY)、ステップS28(
図6)に進む。
図9の例では、タイミングt3において、超音波信号USWがゼロクロス閾値電圧ZERO_Vth以上となっている。ゼロクロス検知用の閾値は、
図9のタイミングt1以降からタイミングt3まで維持される。
【0059】
なお、ロジック部6は、上記細かいカウントを開始してからの超音波信号がゼロクロス閾値電圧以上となったタイミングまでのカウント値と、上記粗いカウントでのカウント値とに基づき、バースト波発生から上記タイミングまでの経過時間を保持する。すなわち、
図9の例では、タイミングt0からタイミングt3までの経過時間(第2経過時間)が保持される。
【0060】
ステップS28に進むと、ロジック部6は、スイッチ制御回路7に指令し、スイッチSW3をオン、スイッチSW1、SW2はオフとさせる。これにより、エラー検出参照電圧ERREFがコンパレータ5の非反転入力端子に入力される。すなわち、コンパレータ5における比較に用いる閾値電圧がエラー検出閾値電圧に切替えられる。ここで、切替信号ERCNTによりエラー検出参照電圧ERREFのレベルを切替えることで、閾値電圧はエラー検出第1閾値電圧、またはエラー検出第2閾値電圧を設定することができる。エラー検出第2閾値電圧は、エラー検出第1閾値電圧よりも高いレベルである。
【0061】
図9の例では、エラー検出第1閾値電圧ER_L_Vthと、エラー検出第2閾値電圧ER_H_Vthが示され、ここではエラー検出第1閾値電圧ER_L_Vthが閾値電圧として設定されている。
【0062】
閾値電圧としてエラー検出第1閾値電圧が設定された場合は、ステップS29で、ロジック部6は、比較信号CMPに基づいて超音波信号がエラー検出第1閾値電圧以上となったかを判定する。そうでない場合は(ステップS29のN)、ステップS30に進み、一定時間が経過していない場合は(ステップS30のN)、ステップS29に戻る。なお、上記一定時間は、ステップS28からの経過時間である。
【0063】
一定時間が経過する前に超音波信号がエラー検出第1閾値電圧以上となった場合は(ステップS29のY)、ステップS35に進む。なお、
図9の例では、タイミングt4において、超音波信号USWがエラー検出第1閾値電圧ER_L_Vth以上となっている。一方、エラー検出第1閾値電圧以上となる前に一定時間が経過した場合(ステップS30のY)、ステップS31に進み、ロジック部6は、次回の下流側受信処理(ステップS2)で設定信号GSにより設定する第1PGA3および第2PGA4によるゲインを増加させる。ステップS29のYの場合は、ゲインは維持される。
【0064】
一方、閾値電圧としてエラー検出第2閾値電圧が設定された場合は、ステップS32で、ロジック部6は、比較信号CMPに基づいて超音波信号がエラー検出第2閾値電圧以上となったかを判定する。そうでない場合は(ステップS32のN)、ステップS33に進み、一定時間が経過していない場合は(ステップS33のN)、ステップS32に戻る。
なお、上記一定時間は、ステップS28からの経過時間である。
【0065】
一定時間が経過する前に超音波信号がエラー検出第2閾値電圧以上となった場合は(ステップS32のY)、ステップS34に進み、ロジック部6は、次回の下流側受信処理(ステップS2)で設定信号GSにより設定する第1PGA3および第2PGA4によるゲインを減少させる。一方、エラー検出第2閾値電圧以上となる前に一定時間が経過した場合(ステップS33のY)、ステップS35に進む。この場合、ゲインは維持される。
【0066】
なお、ステップS28では、前回の下流側受信処理においてステップS31に進んだ場合は、エラー検出第1閾値電圧が設定され、前回の下流側受信処理においてステップS29のYであった場合は、エラー検出第2閾値電圧が設定され、前回の下流側受信処理においてステップS33のYであった場合は、エラー検出第1閾値電圧が設定され、前回の下流側受信処理においてステップS34に進んだ場合は、エラー検出第2閾値電圧が設定される。
【0067】
このようなステップS28~S34の処理が下流側受信処理(ステップS2)が繰り返されるごとに行われることにより、超音波信号はエラー検出第1閾値電圧とエラー検出第2閾値電圧との間のレベルに制御される。
【0068】
なお、上記では、エラー検出について、エラー検出第1閾値電圧ER_L_Vthと、エラー検出第2閾値電圧ER_H_Vthのいずれか一方を用いた判定としているが、両方の閾値を用いた判定としてもよい。すなわち、ステップS28から一定時間以内に超音波信号がエラー検出第1閾値電圧ER_L_Vth以上となるかを判定する。もし、エラー検出第1閾値電圧ER_L_Vth以上となった場合、エラー検出の閾値電圧をエラー検出第2閾値電圧ER_H_Vthに切替え、エラー検出第2閾値電圧ER_H_Vthへの切替えタイミングからの一定時間以内、またはステップS28からの一定時間以内に、超音波信号がエラー検出第2閾値電圧ER_H_Vth以上となるかを判定する。もし、エラー検出第2閾値電圧ER_H_Vth以上とならない場合に、そのままステップS35に進む。また、一定時間以内に超音波信号がエラー検出第1閾値電圧ER_L_Vth以上とならない場合は、ゲインを増加し、一定時間以内に超音波信号がエラー検出第2閾値電圧ER_H_Vth以上となった場合は、ゲインを減少する。
【0069】
なお、ステップ31またはステップS34に進んだ場合は、超音波信号のレベルが適切でなくエラーが発生したとして、ロジック部6はその旨を記憶する。ステップS31またはステップS34に進んだ場合も、ステップS35に進む。
【0070】
コンパレータ5の閾値電圧としてエラー検出閾値電圧は、ステップS28(
図9のt3)から、設定される一定時間以内で維持される。その時間では、スイッチSW3がオン、スイッチSW1とSW2がオフされる。
【0071】
ステップS35に進むと、ロジック部6は、スイッチ制御回路7に指令し、スイッチSW1をオン、スイッチSW2、SW3はオフとさせる。これにより、参照電圧VREFがコンパレータ5の反転入力端子と非反転入力端子の両方に入力される。すなわち、コンパレータ5における比較に用いる閾値電圧がゼロクロス閾値電圧に切替えられる。
図9の例では、ゼロクロス閾値電圧ZERO_Vthが設定される。
【0072】
そして、ステップS36(
図7)に進み、ロジック部6は、比較信号CMPに基づいて超音波信号がゼロクロス閾値電圧以下となったかを判定する。超音波信号がエンベロープ閾値電圧以下となっていない場合は(ステップS36のN)、ステップS36に戻る。超音波信号がゼロクロス閾値電圧以下となった場合は(ステップS36のY)、ステップS37に進む。
図9の例では、タイミングt5において、超音波信号USWがゼロクロス閾値電圧ZERO_Vth以下となっている。
【0073】
なお、ロジック部6は、上述した細かいカウントを開始してからの超音波信号がゼロクロス閾値電圧以下となったタイミングまでのカウント値と、上述した粗いカウントでのカウント値とに基づき、バースト波発生から上記タイミングまでの経過時間を保持する。すなわち、
図9の例では、タイミングt0からタイミングt5までの経過時間(第3経過時間)が保持される。
【0074】
ステップS37に進むと、ロジック部6は、比較信号CMPに基づいて超音波信号がゼロクロス閾値電圧以上となったかを判定する。超音波信号がエンベロープ閾値電圧以上となっていない場合は(ステップS37のN)、ステップS37に戻る。超音波信号がゼロクロス閾値電圧以上となった場合は(ステップS37のY)、ステップS38に進む。
図9の例では、タイミングt6において、超音波信号USWがゼロクロス閾値電圧ZERO_Vth以上となっている。
【0075】
なお、ロジック部6は、上述した細かいカウントを開始してからの超音波信号がゼロクロス閾値電圧以上となったタイミングまでのカウント値と、上述した粗いカウントでのカウント値とに基づき、バースト波発生から上記タイミングまでの経過時間を保持する。すなわち、
図9の例では、タイミングt0からタイミングt6までの経過時間(第4経過時間)が保持される。
【0076】
ステップS38では、ロジック部6は、保持された4つの経過時間(第1経過時間~第4経過時間)の平均値を、上流側から下流側への超音波の伝搬時間として算出する。
図9の例であれば、バースト波BSWが発生するタイミングt0から各タイミングt2、t3、t5、t6までのそれぞれの経過時間の平均値である伝搬時間Tpが算出される。
【0077】
ステップS38で下流側受信処理(ステップS2)は完了する(エンド)。その後、
図4に示すように、ステップS3の下流側送信処理に進む。ここで、ロジック部6は、Hブリッジ回路1におけるスイッチQ5~Q8から構成されるHブリッジ(
図3)を駆動することで、第2超音波センサ102を駆動するためのバースト波を発生させる。これにより、下流側の第2超音波センサ102から配管P1内へ向けて超音波が出力される。
【0078】
なお、このとき、ロジック部6は、アナログ信号ANGによりスイッチS1およびS2をオフとし、コンパレータ5への電源電圧の供給は停止させる。
【0079】
ステップS3の後、ステップS4に進み、センサ信号処理装置200は、上流側受信処理を行う。ここでは、下流側の第2超音波センサ102から送信された超音波が上流側の第1超音波センサ101により受信され、第1超音波センサ101から出力されるセンサ信号(超音波信号)が処理される。第1超音波センサ101から出力される超音波信号は、Hブリッジ回路1においてオンとされたスイッチ11、12(
図3)を介してI/Vアンプ2に入力され、I/Vアンプ2で電流/電圧変換され、第1PGA3および第2PGA4により増幅され、参照電圧VREFによりレベル調整されてコンパレータ5の反転入力端子に入力される。
【0080】
なお、上流側受信処理において、ロジック部6は、アナログ信号ANGによりスイッチS1およびS2をオンとするとともに、コンパレータ5への電源電圧の供給を行わせる。
【0081】
上流側受信処理において具体的に行われる処理工程は、先述した
図5~
図7のフローチャートに示した処理工程と同様である。すなわち、ロジック部6は、スイッチ制御回路7に指令して、スイッチSW1~SW3の切替制御を行うことで、コンパレータ5における比較に用いる閾値電圧を切替える。なお、
図5においてステップS24に進むタイムアウトとなった場合は、処理を中断し、実施回数は増加せず、ステップS5には進まず、ステップS1に戻る。
【0082】
このとき、ステップS28~ステップS34(
図6)の処理が上流側受信処理が行われるごとに行われるので、上流側受信処理において超音波信号はエラー検出第1閾値電圧とエラー検出第2閾値電圧との間のレベルに制御される。すなわち、超音波は伝搬時間に依って減衰度が変化するが、下流側受信処理および上流側受信処理において流体の流速に依らず、超音波信号のレベルが同程度となるよう制御される。超音波のレベルが同程度でない場合、超音波信号がエンベロープ閾値電圧以上となるタイミングがずれて、経過時間を取得するゼロクロスのタイミングがずれるので、下流側受信処理および上流側受信処理でそれぞれ算出される伝搬時間は、差分をとるのに不適切なものとなる可能性がある。従って、超音波信号のレベルが同程度となるよう制御することで、流体の流量の測定精度を向上させることができる。
【0083】
ステップS4の上流側受信処理の後、ステップS5に進み、ロジック部6は、下流側受信処理(ステップS2)および上流側受信処理(ステップS4)のそれぞれにおいて算出された伝搬時間の差分値を算出する。ここで、下流側受信処理と上流側受信処理の少なくともいずれかにおいてエラーが発生した場合は、ロジック部6は、エラー発生の旨も併せて上記差分値に対応させて記憶する。また、下流側受信処理と上流側受信処理の少なくともいずれかにおいて、ステップS24(
図5)のタイムアウトとなっている場合は、上記差分値は算出されないで、エラー発生の旨が記憶される。
【0084】
次に、ステップS6に進み、ロジック部6は、ステップS1~ステップS5の処理を所定回数実施したかを判定する。所定回数は、例えば64回とする。もし、所定回数実施していない場合は(ステップS6のN)、ステップS1に戻る。
【0085】
そして、所定回数実施した場合は(ステップS6のY)、ステップS7に進む。ステップS7では、具体的には
図8に示すフローチャートの処理工程が行われる。まずステップS41で、ロジック部6は、所定回数実施することでエラー発生がなく得られた伝搬時間の差分値(ステップS5)の個数は、所定の閾値以上であるかを判定する。この閾値は、例えば、上記所定回数の半分としてもよい(すなわち所定回数が64回の場合、閾値は32個など)。
【0086】
もし、閾値の個数以上、正常な差分値が得られた場合は(ステップS41のY)、ロジック部6は、所定回数実施により得られた全ての差分値の平均値を算出し、算出された平均値に基づいて流体の流量を算出する。算出された流量が今回の流量測定値として決定される。一方、正常な差分値は閾値の個数に達しない場合(ステップS41のN)、差分値に基づいて流量を算出すると精度が良好でない可能性があるので、ロジック部6は、流量の算出は行わずに、前回の流量測定値を今回の流量測定値として決定する。
【0087】
このようにステップS7で流量測定値が決定されると、ステップS8に進み、ロジック部6は、ステップS1~S5を実施した回数をリセットし、ステップS1に戻る。
【0088】
このように、本実施形態に係るセンサ信号処理装置200によれば、下流側受信処理および上流側受信処理において、コンパレータ5において超音波信号と比較する閾値電圧を、ノイズ除去のためのエンベロープ閾値電圧、レベル調整のためのエラー検出閾値電圧、およびゼロクロス閾値電圧で切替えるので、上流側と下流側との間の各伝搬時間の差分値を精度良く算出することが可能となり、流体の流量を精度良く測定することが可能となる
。
【0089】
なお、先述した実施形態では、超音波信号がゼロクロス閾値電圧と交わる4点のタイミング(
図9であればt2、t3、t5、t6)での各経過時間の平均値を算出して伝搬時間としたが、これに限ることはない。例えば、
図9であれば、タイミングt2、t3、t5、t6のうちいずれか2点のみでの各経過時間の平均値を算出してもよいし、いずれか1点のみでの経過時間を伝搬時間としてもよい。
【0090】
また、エンベロープ閾値電圧は固定値であってもよいが、次のようにロジック部6により調整可能としてもよい。下流側受信処理または上流側受信処理を行うたびにエンベロープ閾値電圧を上昇させて変更する。このとき、前回に算出された伝搬時間から今回算出された伝搬時間への変化量が閾値以上となった場合に、今回のエンベロープ閾値電圧の設定値(第1設定値)を記憶する。エンベロープ閾値電圧を上昇させると、エンベロープ閾値電圧が超音波信号のゼロクロスレベルから上側に突出する或る波形の頂点を超えたときに、上記或る波形の時間的に隣り合う波形においてエンベロープ閾値電圧以上となるので、4点のゼロクロス閾値電圧と交わるタイミングがずれ、算出される伝搬時間が大きく変化する。すなわち、上記第1設定値は、上記或る波形の頂点に相当する。
【0091】
第1設定値を記憶後、更にエンベロープ閾値電圧を上昇させて変更し、前回に算出された伝搬時間から今回算出された伝搬時間への変化量が再び閾値以上となった場合に、今回のエンベロープ閾値電圧の設定値(第2設定値)を記憶する。この第2設定値は、上記或る波形の時間的に隣り合う波形の頂点に相当する。そして、第1設定値と第2設定値との間の中点をエンベロープ閾値電圧として決定する。なお、エンベロープ閾値電圧の変更は、電子ボリューム8を設定信号DPMにより制御することで行える。
【0092】
このようにエンベロープ閾値電圧を調整することにより、エンベロープ閾値電圧以上となる超音波信号の波形が時間的にずれることを抑制し、算出される伝搬時間に悪影響を及ぼすことを抑制できる。
【0093】
<4.比較例との比較>
ここで、
図10は、本実施形態との比較を行うための比較例に係るセンサ信号処理装置201の構成を示す図である。本実施形態に係るセンサ信号処理装置200(
図2)と比較した、センサ信号処理装置201の構成上の相違点は、コンパレータとして第1コンパレータ51、第2コンパレータ52、および第3コンパレータ53を備えることである。
【0094】
第1コンパレータ51~第3コンパレータ53のそれぞれの反転入力端子には、それぞれ第2PGA4の出力端が接続される。すなわち、各反転入力端子には、超音波信号が入力される。そして、第1コンパレータ51の非反転入力端子には、参照電圧Vrefが入力され、第2コンパレータ52の非反転入力端子には、エンベロープ参照電圧ENVREFが入力され、第3コンパレータ53の非反転入力端子には、エラー検出参照電圧ERREFが入力される。
【0095】
ロジック部61には、第1コンパレータ51から出力される比較信号ZECMP、第2コンパレータ52から出力される比較信号ENVCMP、第3コンパレータ53から出力される比較信号ERCMPがそれぞれ入力される。
【0096】
このような比較例に係るセンサ信号処理装置201の構成によれば、先述した
図5~
図7で示した処理工程において、ステップS21、S25、S28、S35でコンパレータの閾値電圧を切替える代わりに、各比較信号ZECMP、ENVCMP、ERCMPをロジック部61が参照することで、本実施形態と同様の処理を行うことができる。
【0097】
しかしながら、比較例に係るセンサ信号処理装置201では3つのコンパレータを用いるため、1つのコンパレータ5を用いた本実施形態のほうがセンサ信号処理装置の回路面積を縮小することができ、コストも削減することができる。
【0098】
また、比較例に係るセンサ信号処理装置201では、3つのコンパレータの各遅延が相対的にずれないように整合をとる必要があり、コンパレータ回路自身が大型化する問題がある。これに対し、本実施形態であれば、コンパレータは1つであるので遅延の相対的なバラツキを考慮した設計が不要となり、コンパレータ回路自身を小型化できる他、製造プロセスの選択範囲も広がる。なお、本実施形態のコンパレータに遅延があっても、流量は伝搬時間の差分に基づき算出されるので、遅延分は相殺される。
【0099】
<5.その他>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の範囲内であれば、実施形態は種々の変形が可能である。例えば、センサシステムとしては、超音波以外の振動信号を送受信可能なセンサを用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明は、例えば、超音波センサシステムに利用することができる。
【符号の説明】
【0101】
101 第1超音波センサ
102 第2超音波センサ
200 センサ信号処理装置
300 マイクロコンピュータ
1 Hブリッジ回路
2 I/Vアンプ
3 第1PGA
4 第2PGA
5 コンパレータ
6 ロジック部
7 スイッチ制御回路
8 電子ボリューム
P1 配管
SW1~SW3 スイッチ
R1~R7 抵抗
S1~S3 スイッチ
M1 モニタ端子
Q1~Q8 スイッチ
11~14 スイッチ
51 第1コンパレータ
52 第2コンパレータ
53 第3コンパレータ
61 ロジック部
201 センサ信号処理装置
500 超音波センサシステム