(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-25
(45)【発行日】2024-10-03
(54)【発明の名称】ガスタービンの軸封構造
(51)【国際特許分類】
F02C 7/28 20060101AFI20240926BHJP
F02C 7/06 20060101ALI20240926BHJP
F01D 25/16 20060101ALI20240926BHJP
F16C 33/80 20060101ALI20240926BHJP
F16J 15/447 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
F02C7/28 B
F02C7/06 A
F01D25/16 E
F01D25/16 J
F02C7/06 D
F16C33/80
F16J15/447
(21)【出願番号】P 2023142972
(22)【出願日】2023-09-04
【審査請求日】2023-09-04
(73)【特許権者】
【識別番号】390033042
【氏名又は名称】ダイハツディーゼル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100183232
【氏名又は名称】山崎 敏行
(72)【発明者】
【氏名】野原 弘康
(72)【発明者】
【氏名】▲浜▼口 弘志
(72)【発明者】
【氏名】植阪 弘和
【審査官】佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-196065(JP,A)
【文献】特開2018-096352(JP,A)
【文献】再公表特許第01/038707(JP,A1)
【文献】再公表特許第2019/159744(JP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 7/28
F02C 7/06
F01D 25/16
F16C 33/80
F16J 15/447
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インペラを有するロータと、
前記ロータを回転可能に支持する軸受と、
前記インペラを収容する収容空間を有し、前記軸受を保持するハウジングと、
前記軸受に供給されたオイルを前記ハウジングの外に排出するドレンと、
前記ロータと前記ハウジングとの間で、前記収容空間に対して前記軸受
に供給されるオイルを封止するエアを供給するエア供給路と、
前記エア供給路から供給された前記エアを前記ハウジングの外に排出するエア排出路と、
を備え
、
前記ハウジングが、軸方向において前記軸受と前記収容空間との間で、前記ロータの外周面を外囲する内周面を有し、
前記エア排出路が複数設けられ、前記複数の前記エア排出路が前記内周面にそれぞれ開口し、
前記複数のエア排出路の開口が、周方向に互いに間隔をあけて配置される、
ガスタービンの軸封構造。
【請求項2】
前記ドレンが、前記内周面の下部に開口し、前記エア排出路が、前記内周面の前記下部以外の部分に開口する、
請求項1に記載のガスタービンの軸封構造。
【請求項3】
前記ハウジング内に配置され、前記ロータの外周面から径方向の外側に延びるフィンを更に備え、
前記エア排出路が、前記フィンに対して前記収容空間側で開口する、
請求項1
又は2に記載のガスタービンの軸封構造。
【請求項4】
前記フィンが、前記ロータに外嵌されたスリーブに一体的に成形されている、
請求項
3に記載のガスタービンの軸封構造。
【請求項5】
前記ハウジング内に到達する前に前記エアを清浄化するエアクリーナを更に備え、
前記エアクリーナが、ストレーナを有する、
請求項1
又は2に記載のガスタービンの軸封構造。
【請求項6】
前記エアクリーナが、前記ハウジングの外に配置される、
請求項
5に記載のガスタービンの軸封構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービンの軸封構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、シャフトを支持するベアリングと、ベアリングを保持するハウジングとの間に介在するラビリンスシールを備えたガスタービンエンジンを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ラビリンスシールに供給されたエアの少なくとも一部は、ハウジング内に流れていくおそれがある。仮に異物がエアに混入されていると、異物がベアリングに到達し、それにより、ベアリングの安定作動を阻害するおそれがある。
【0005】
本発明は、ガスタービンに適用される軸受の保護を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、インペラを有するロータと、前記ロータを回転可能に支持する軸受と、前記インペラを収容する収容空間を有し、前記軸受を保持するハウジングと、前記軸受に供給されたオイルを前記ハウジングの外に排出するドレンと、前記ロータと前記ハウジングとの間で、前記収容空間に対して前記軸受を封止するエアを供給するエア供給路と、前記エア供給路から供給された前記エアを前記ハウジングの外に排出するエア排出路と、を備える、ガスタービンの軸封構造を提供する。
【0007】
上記構成によれば、エア排出路がドレンとは別に設けられている。そのため、ロータとハウジングとの間に供給されたエアが、ドレンを通ってオイルと共に排出されるまでハウジング内で滞留することを抑制され、エア排出路を介して積極的にハウジングの外に排出される。したがって、仮に異物がエアに混入されていたとしても、その異物が軸受に到達しにくい。これにより、軸受を異物から保護でき、ロータの安定作動を維持できる。
【0008】
前記ハウジングが、軸方向において前記軸受と前記収容空間との間で、前記ロータの外周面を外囲する内周面を有し、前記ドレンが、前記内周面の下部に開口し、前記エア排出路が、前記内周面の前記下部以外の部分に開口してもよい。
【0009】
上記構成によれば、ドレンが下部に開口する。ハウジング内のオイルフローにはオイルの自重が影響する。そのため、オイルがハウジングから円滑に排出される。一方、ハウジング内のエアフローにはロータの回転に伴う遠心力が影響し、ハウジング内には径方向外側に向かうエアフローが生じる。エアは、エアフローに乗ってハウジングの内周面に向かう。エア排出路が残余部(下部以外の部分)に開口していても、エアをエア排出路に円滑に導き、ハウジングから円滑に排出させることが可能である。よって、オイル及びエアの双方を円滑に排出できる。
【0010】
前記エア排出路が複数設けられ、前記複数の前記エア排出路が前記内周面にそれぞれ開口し、前記複数のエア排出路の開口が、周方向に互いに間隔をあけて配置されてもよい。これにより、エア排出路の開口が周方向に分散配置される。エアをチャンバから円滑に排出できる。
【0011】
前記軸封構造が、前記ハウジング内に配置され、前記ロータの外周面から径方向の外側に延びるフィンを更に備え、前記エア排出路が、前記フィンに対して前記収容空間側で開口してもよい。
【0012】
上記構成によれば、フィンによって、エアは、軸方向において軸受側へ流れることを阻害する。仮に異物がエアに混入されていたとしても、異物が軸受に到達しにくい。また、フィンによって、エアは、フィンに対して軸方向において軸受と反対側で、径方向の外側へ流れるように案内される。そこにエア排出路が開口しているため、エアをエア排出路に円滑に導くことができ、エア中の異物のハウジング内での滞留時間が短くなる。
【0013】
前記フィンが、前記ロータに外嵌されたスリーブに一体的に成形されていてもよい。これにより、ロータをスリーブに挿通するだけで、上記の作用を奏するフィンを簡単にロータに装着できる。
【0014】
前記軸封構造が、前記ハウジング内に到達する前に前記エアを清浄化するエアクリーナを更に備え、前記エアクリーナが、ストレーナを有してもよい。これにより、異物がエアに混入するおそれが低減し、軸受が異物から保護される。
【0015】
前記エアクリーナが、前記ハウジングの外に配置されてもよい。これにより、エアクリーナのメンテナンス作業を容易化できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ガスタービンに適用される軸受を保護できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図4】チャンバ内のエアフロー及びオイルフローを示す軸封構造の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。なお、同一の又は対応する要素には全図を通じて同一の符号を付して詳細な説明の重複を省略する。
【0019】
図1を参照して、ガスタービン1は、単なる一例として、陸上に定置され、発電機等の被駆動機(図示せず)の動力源として使用される。ガスタービン1の主軸2は、減速機構(図示せず)を介して発電機等の被駆動機と連結される。なお、本開示においては、特段断らない限り、「軸方向」は、主軸2の軸線Aに沿った方向であり、「軸直交方向」又は「径方向」は、主軸2の軸線Aに直交する方向であり、「周方向」は、軸線A周りの方向である。
【0020】
ガスタービン1は、圧縮部3、燃焼部4、及びタービン5を備える。主軸2は、圧縮部3のロータ11、タービン5のタービンロータ5a、及び減速機構の入力軸6を含む。入力軸6、ロータ11、及びタービンロータ5aは、軸方向において一方側から他方側へ(
図1紙面左側から右側へ)この順で並べられ、軸線Aを中心にして同軸状に配置されて順次に連結され、軸線A周りに一体に回転する。なお、本開示において、「ロータ」は、シャフト状の部材そのもの、又はシャフト状の部位を有する部材であって、自身の中心軸周りに自転する。
【0021】
主軸2は、軸方向に互いに離れた2つの軸受7,8によって回転可能に支持される。軸受7は、ロータ11の一端部を回転可能に支持する。軸受8は、ロータ11の他端部を支持してもよいし、タービンロータ5aを支持してもよい。軸受7,8の型式は、特に限定されず、図示された単列溝玉軸受は単なる一例である。本実施形態に係る軸封構造は、ガスタービン1の軸受7に適用されている。
【0022】
圧縮部3は、外気を取り込んで圧縮する。燃焼部4は、圧縮空気に燃料を噴射し、混合気を燃焼させ、高温高圧の燃焼ガスを生成する。タービン5は、燃焼ガスにより駆動される。タービン5が作動すると、主軸2が回転する。これにより、圧縮部3が駆動され、且つ入力軸6が回転駆動されて被駆動機に動力を与える。なお、排気は、タービン5から軸方向他方側へ排出される。入力軸6は、圧縮部3に対して軸方向一方側に配置され、タービン5は、圧縮部3に対して軸方向他方側に配置されている。燃焼部4は、圧縮部3の軸方向他方側に隣接し、また、タービン5の径方向外周側に配置されている。
【0023】
ロータ11はインペラ12を有する。ロータ11及びそのインペラ12は、回転することによって、遠心式圧縮機として機能する。インペラ12は、ロータ11に一体的に設けられ、軸方向の一方側から他方側に向かうにつれて拡径される。圧縮部3は、ハウジング13を有する。ハウジング13は、インペラ12を収容する収容空間14を形成し、また、ロータ11を支持する軸受7を保持している。
【0024】
ハウジング13は、収容空間14の形成のため、外壁15、内壁16、及び複数の支柱17を有する。外壁15は、軸直交方向に延在する。内壁16は、外壁15と軸方向に離れており、外壁15に対して軸方向他方側で軸直交方向に延在する。支柱17は、外壁15の内面(軸方向他方側の側面)と内壁16の内面(軸方向一方側の側面)との間に架け渡される。複数の支柱17は、周方向に間隔をあけて配置され、軸方向に対して概略的に平行に延在する。
【0025】
ハウジング13は、カバー18で覆われている。収容空間14は、外壁15、内壁16、及びカバー18によって囲まれており、カバー18には、ハウジング13の外部を収容空間14と連通させるダクト18aが設けられている。内壁16には吸気ガイド19が固定されている。吸気ガイド19は、軸方向中央部にくびれを有した筒状であり、内壁16から軸方向一方側へ延在し、インペラ12を取り囲み、軸方向一端側で開口する。外気は、ダクト18aを介して収容空間14内へと導かれる。収容空間14に流入された吸気は、吸気ガイド19に流入し、吸気ガイド19の内部を軸方向において一方側から他方側に向けて流れる間にインペラ12の作用で圧縮される。
【0026】
なお、ハウジング13の軸方向一方側には、減速機ケース40が設けられている。減速機ケース40は、減速機及びその入力軸6を収容する減速機室40aを形成する、減速機ケース40は、外壁15に固定されている。収容空間14と減速機室40aとは、外壁15によって軸方向に仕切られている。
【0027】
次に、軸封構造について説明する。
【0028】
図2を参照して、ハウジング13は、軸受7の保持のため、軸受ケース20及び保持リング21を有する。軸受ケース20は、外壁15の中心部を貫通する取付孔15aに嵌合される。取付孔15aは、両端が開口する円筒状であり、軸方向に沿って一様な円形断面を有する。
【0029】
軸受ケース20は、取付孔15a内に嵌合される円筒部20aと、円筒部20aから軸方向他方側に連続する円錐部20bとを有する。円筒部20aが嵌合された状態で、リング状の取付板22が、外壁15の外面側に設けられる。軸受ケース20及び外壁15が両方とも、取付板22に軸方向に締結され、それにより、軸受ケース20が取付板22を介して外壁15に固定される。なお、
図5に示す参照符号20fは、取付板22との締結のためボルトが螺合されるねじ穴である。
【0030】
円錐部20bは、軸方向他方側で先鋭であり、取付孔15aに対して軸方向他方側へ突出している。円錐部20bの先端部は、吸気ガイド19内に進入している。円錐部20bの外面は、外壁15の内面と滑らかに繋がる曲面を成し、吸気を吸気ガイド19の内部に案内する。
【0031】
図3を参照して、軸受ケース20の中心部には、軸方向に延在して両端で開口する軸孔23が形成される。軸孔23の軸方向一端部には、軸受収容部24が形成される。軸受収容部24は、円筒面24aと、円筒面24aの軸方向他端部から径方向内周側に延在する円環状の段差面24bとで画定される。円筒面24aは、軸方向において一様な径を有し、軸孔23の軸方向一端側の開口を画定する。軸受7は、その外輪の外周面が円筒面24aに密着し、且つその軸方向他方側の端面が段差面24bに軸方向に突き当てられた状態で、軸受収容部24に収容される。
【0032】
保持リング21は、軸受収容部24に内嵌される円筒部21aと、円筒部21aの軸方向一端部から径方向外周側に延在するフランジ部21bとを有する。円筒部21aの軸方向他端部は、軸受7の外輪に軸方向に突き当てられ、フランジ部21bは、軸受ケース20の円筒部20aの軸方向一端側の側面に突き当てられる。
【0033】
この状態で、フランジ部21bが円筒部20aに軸方向に締結される。これにより、軸受ケース20及び保持リング21が、外壁15に固定され、また、軸受7が、軸受ケース20及び保持リング21によって保持された状態となる。なお、
図5に示す参照符号20gは、保持リング21との締結のためボルトが螺合されるねじ穴である。
【0034】
ロータ11の軸方向一端部は、軸受ケース20の軸孔23に挿通される。ロータ11の一端部には、ジャーナル部11aが設けられている。ジャーナル部11aは、軸受7に挿通される部位であり、軸受7により回転可能に支承される。ロータ11は、ジャーナル部11aの軸方向他端部から径方向外周側に延在する段差面11bを有する。軸受7の内輪は、段差面11bに軸方向に突き当てられ、それにより、軸受7がロータ11に対して軸方向に位置決めされる。
【0035】
軸受7よりも収容空間14側、すなわち軸方向他方側に、シール9が設けられている。シール9は、例えば、アキシャル型のラビリンスシールである。シール9は、軸受ケース20に設けられる外周シール部9aと、ロータ11に設けられる内周シール部9bとで構成される。外周シール部9aは、軸孔23のうち、円錐部20bを貫通している部分の内面に設けられる。外周シール部9aと内周シール部9bとは、径方向に互いに近接対向し、軸方向に交互に並ぶ複数の膨張室及び絞り部を形成する。シール9には高圧のシールエアが供給され(
図2を参照)、それにより、シール9は、非接触で軸受収容部24を収容空間14に対して密封する。
【0036】
図4を参照して、軸受ケース20とロータ11とは、軸受7とシール9との間に、チャンバ10を形成する。チャンバ10は、ロータ11の外周面と、軸受ケース20の内周面(すなわち、軸孔23を画定する内面)とによって囲まれた空間である。チャンバ10は、軸方向に見て円環状の断面を有する。
【0037】
チャンバ10を形成している部位に関し、軸孔23の内面は、軸受7の外輪が突き当たる段差面24bから軸方向他方側へ延びる第1内周面23aと、第1内周面23aに対して軸方向他方側に位置して第1内周面23aよりも大径を有する第2内周面23bと、第1内周面23aの軸方向他端部と第2内周面23bの軸方向一端部とを径方向に接続する段差面23cと、第2内周面23bの軸方向他端部と内周シール部9bとを径方向に接続するチャンバ端面23dとを含む。
【0038】
なお、
図5に示すとおり、軸受ケース20を軸方向一方側から他方側へ軸方向に見た場合、軸方向一端側の開口の内側で、軸受収容部24の段差面24bが円環帯状に延在する。第1内周面23aが、段差面24bの径方向内周縁にて、円形を成す。第1内周面23aの内側にチャンバ端面23dが円環帯状に延在する。外周シール部9aが、チャンバ端面23dの径方向内周縁にて、円形を成す。第2内周面23bは、第1内周面23aよりも大径であり、第1内周面23aよりも軸方向他方側に位置するため、
図5では破線で示されている。
【0039】
図4に戻り、チャンバ10を形成している部位に関し、ロータ11は、軸受7の内輪が突き当たる段差面11bから内周シール部9bに向かって軸方向他方側へ延在する中間部11cと、中間部11cの軸方向他端部から径方向外周側に突出するフランジ部11dとを有する。
【0040】
中間部11cには、スリーブ25が外嵌される。スリーブ25は、中間部11cが挿通される円筒部25aと、円筒部25aの軸方向他端部から径方向外周側に突出するフィン25bとを有する。スリーブ25(又は円筒部25a)の軸方向他端部は、ロータ11のフランジ部11dに突き当てられている。フィン25bは、スリーブ25(の円筒部25a)に一体的に成形され、フランジ部11dの外周縁よりも径方向外周側へ突出する。
【0041】
チャンバ10の軸方向一端側は、軸受7の軸方向他方側の端面によって画定される。チャンバ10の軸方向他端側は、軸受ケース20のチャンバ端面23dによって画定される。軸受7の内輪と外輪との間のクリアランスは、チャンバ10と連通する。また、シール9は、非接触型のラビリンスシールであり、外周シール部9aと内周シール部9bとのクリアランスも、チャンバ10と連通する。
【0042】
チャンバ10は、軸受7に供給された潤滑油(以下、単にオイルという)を受容する。この点、
図5に示す参照符号20eは、軸受ケース20外から軸受ケース20内に潤滑油を流入させる油流入ポートである。
図3に示す参照符号21dは、この油流入ポート20e(
図3において不図示)と連通し、軸受7の軸方向一方側の端面に潤滑油を導く油供給路である。油流入ポート20eは、軸受ケース20に形成され、油供給路21dは、保持リング21の円筒部21aに形成される。
【0043】
軸受ケース20には、チャンバ10内のオイルをチャンバ10外へ導くドレン26が形成されている。ドレン26の一端は、第2内周面23b、すなわちチャンバ10に開口する。ドレン26の他端は、軸受ケース20の円筒部20aの軸方向一端部且つ径方向外周縁部に開口している。ドレン26は、軸受ケース20内において、チャンバ10から軸方向一方側に向かうほど径方向外周側に向かうようにして斜めに延在している。
【0044】
次に、シールエアの流れについて説明する。シールエアとは、シール9に供給され、収容空間14に対して軸受7に供給されるオイルを封止するエアである。
【0045】
図2を参照して、ガスタービン1は、上流流路31、エアクリーナ32、エア供給路33、及びエア排出路34を備える。シールエアは、収容空間14から取り出され、エアクリーナ32で清浄化される。エアクリーナ32は、シールエアがシール9に到達する前に、シールエアを清浄化する。エア供給路33は、ロータ11と軸受ケース20との間にエアを供給する。エア排出路34は、エア供給路33から供給されたシールエアをハウジング13の外に排出する。
【0046】
エアクリーナ32は、筐体32aと、筐体32aの収容空間をダーティ側とクリーン側とに仕切るストレーナ32bとを有する。筐体32aには、流入口32c及び流出口32dが設けられている。流入口32cはダーティ側に開口し、流出口32dはクリーン側に開口している。シールエア源である収容空間14も、シールエアの供給先であるシール9も、ハウジング13内に設けられている一方で、エアクリーナ32は、ハウジング13外に配置される。
【0047】
上流流路31は、収容空間14からシールエアとして取り出された圧縮空気をエアクリーナ32の流入口32cに導く。この点、ガスタービン1は、内壁16の更に軸方向他方側に配置されて軸直交方向に延在する隔壁部材27を備える。隔壁部材27は、内壁16と軸方向に近接対向する。隔壁部材27と内壁16とは、吸気ガイド19の軸方向他端部よりも径方向外周側で、圧縮空気を吸気ガイド19の内部から燃焼部4に導くための流路28を形成している。隔壁部材27は、当該流路28を画定している部分よりも径方向内周側で、取出孔27aを有する。取出孔27aは、隔壁部材27を貫通している。上流流路31の上流端部は、取出孔27aに接続される。
【0048】
上流流路31は、配管31a、複数の支柱17のうちのいずれか1つに形成されたアキシャル孔17a及びラジアル孔17b、並びに配管31bによって構成される。
【0049】
配管31aの一端部は、上流流路31の上流端部を成し、取出孔27aに接続される。配管31aは、隔壁部材27に対して軸方向他方側の空間内で径方向内周側に延在し、軸方向一方側に向けて折り返される。配管31aの他端部は、隔壁部材27の径方向外周縁部を貫通し、流路28を軸方向に沿って横切り、内壁16の外周縁部に接続される。アキシャル孔17aは、軸方向に沿って延在し、軸方向他端側で配管31aの下流端部と連通する。アキシャル孔17aは、軸方向他端側でのみ開口する非貫通穴でもよいし、支柱17の軸方向両側で開口する貫通穴でもよい。貫通穴の場合には、アキシャル孔17aからのシールエアの漏れを防ぐため、アキシャル孔17aの軸方向一端部を閉塞するプラグ29が設けられる。ラジアル孔17bは、アキシャル孔17aと連通し、支柱17の外面に開口する。配管31bの一端部は、ラジアル孔17bに接続され、配管31bの他端部は、流入口32cに接続される。
【0050】
エア供給路33は、配管33a、外壁15に形成されたラジアル孔15b及び流出口15c、配管33b、保持リング21に接続された流入口21c、軸受ケース20に形成された下流部33cによって構成される。
【0051】
配管33aの一端部は、エアクリーナ32の流出口32dに接続される。ラジアル孔15bは、外壁15の内部で径方向に延在し、外壁15の外周面に開口された非貫通穴である。配管33aの他端部は、ラジアル孔15bの開口に接続される。流出口15cは、ラジアル孔15bに連通し、外壁15の軸方向一方側の側面に開口する。流入口21cは、保持リング21のフランジ部21bを貫通している。配管33bは、外壁15の軸方向一方側に配置される。すなわち、配管33bは、減速機室40aに収容される。配管33bの一端部は、外壁15のラジアル孔15bに接続され、配管33bの他端部は、保持リング21の流入口21cに接続されている。
【0052】
エア供給路33の下流部33cは、軸受ケース20の内部に形成され、流入口21cをシール9の外周シール部9aと接続している。下流部33cの一端部は、円筒部20aの側面に開口し、保持リング21を貫通する流入口21cと連通する。下流部33cの他端部は、軸孔23のうち、円錐部20bを貫通している部分の内面、すなわち外周シール部9aで開口している。
【0053】
一例として、下流部33cは、円筒部20aの内部で軸方向に延びる直線部20cと、円錐部20bの内部で軸方向他方側に向かうほど径方向中心側へ向かうようにして斜めに延在する傾斜部20dとで構成される。直線部20cの軸方向他端部は、傾斜部20dの軸方向一端部と接続される。
【0054】
収容空間14内の圧縮空気は、取出孔27aを介して上流流路31に流入する。シールエアは、上流流路31を通流し、流入口32cを介してエアクリーナ32のダーティ側に流入する。シールエアは、ストレーナ32bを通過する際に濾過され、清浄化される。シールエアは、流出口32dを介してエアクリーナ32のクリーン側から流出する。エア供給路33は、エアクリーナ32から流出したシールエアをシール9に供給する。
【0055】
エアクリーナ32がハウジング13外に配置されているため、エアクリーナ32のメンテナンス作業を簡便に行える。また、エアクリーナ32がハウジング13外に配置されているため、シールエアを空冷できる。
【0056】
制御器50は、一次圧力センサ51によって検出されるエアクリーナ32の一次圧と、二次圧力センサ52によって検出されるエアクリーナ32の二次圧との差圧を測定する。制御器50は、差圧の測定値を所定の閾値と比較する。制御器50は、測定値が閾値以上であれば、ストレーナ32bが目詰まりを生じているとして、不図示の警報装置を作動させてもよい。これにより、作業員にエアクリーナ32のメンテンナンス作業時期の到来を報知できる。
【0057】
シール9内において、シールエアは、その圧力を漸次低下させながら軸方向の両側へ流れていく。シールエアの一部は、シール9内で軸方向他方側に流れ、シール9から吸気ガイド19の内部に排出され、吸気に混合される。シールエアの一部は、シール9内で軸方向一方側に流れ、シール9からチャンバ10内に流入する。チャンバ10内のシールエアは、ドレン26を介してオイルと共にハウジング13外に排出され得る。
【0058】
図3及び
図4を参照して、エア排出路34は、ドレン26とは独立して設けられる。エア排出路34は、シールエアがチャンバ10内で滞留することを抑制すべく、チャンバ10内のシールエアをハウジング13外に導くための流路である。
【0059】
エア排出路34は、軸受ケース20の内部に形成される。エア排出路34は、両端が開口する貫通穴によって構成される。エア排出路34の形成方法は特に限定されず、穿孔加工が使用されてもよいし、鋳造が使用されてもよい。
【0060】
エア排出路34の一端部は、チャンバ10に開口している。より具体的には、エア排出路34は、チャンバ10を画定している部材のうち、軸受ケース20に開口する。前述したとおり、軸受ケース20は、チャンバ10を画定している部位として、第1内周面23a、第2内周面23b、段差面23c、及びチャンバ端面23dを有する。そのうち、第1内周面23a及び第2内周面23bは、ロータ11の外周面を外囲し、チャンバ10の径方向の外周部を形成する。
【0061】
本実施形態では、エア排出路34は、第2内周面23bに開口する。第2内周面23bは、第1内周面23aよりも大径であり、チャンバ10の最外周部を形成する。また、第2内周面23bは、チャンバ10の軸方向他側部を形成する。エア排出路34は、チャンバ10のこのような箇所で開口している。
【0062】
エア排出路34の開口35は、軸線Aが通過する断面内に良く図示されるとおり、第2内周面23b上で軸方向に幅を有する。開口35の軸方向他方側(シール9側)の端縁は、フィン25bよりも軸方向他方側(シール9側)に位置している。本実施形態では、開口35の軸方向一方側(軸受7側)の端縁が、フィン25bよりも軸方向一方側(軸受7側)に位置するが、開口35の幅の全体がフィン25bよりもシール9側に配置されていてもよい。
【0063】
エア排出路34は、一端部の開口35から軸方向一方側に向かうほど径方向外周側に向かうようにして、軸受ケース20内で斜めに延在している。エア排出路34の他端部は、円筒部20aの軸方向一方側の端面に開口している。すなわち、エア排出路34の排出口36(
図3及び
図5を参照)は、圧縮部3のハウジング13の外である減速機室40aに開口する。
【0064】
図5を参照して、本実施形態では、複数のエア排出路34が、ガスタービン1に設けられている。ドレン26も、複数のエア排出路34も、軸受ケース20の第2内周面23bに開口している。ここで、ガスタービン1は、主軸2の軸線Aが水平に指向する姿勢で、陸上に定置されている。水平な軸線Aに直交する面内において、第2内周面23bは、円形で表される。
【0065】
ドレン26は、第2内周面23bの下部に開口する。複数のエア排出路34は、下部以外の部分に開口する。各エア排出路34の開口35は、軸線Aを通過する水平線B上に配置され、又は当該水平線Bよりも上方の部分に配置されている。複数のエア排出路34の開口35は、周方向に互いに間隔をあけて配置されている。
【0066】
本実施形態では、3つのドレン26と、5つのエア排出路34とが、軸受ケース20に設けられている。
【0067】
3つのドレン26は、下端ドレン26aと、下端ドレン26aの周方向両側に配置された一対のサイドドレン26b,26cとを含む。下端ドレン26aは、サイドドレン26b,26cよりも第2内周面23b上での開口幅が広い。「開口幅」とは、ドレン26の開口の周方向一端から周方向他端までの円弧の中心角、もしくは当該円弧の長さである。
【0068】
軸線Aに直交する面内で軸線Aを鉛直方向に通過する鉛直線Cは、下端ドレン26aの開口を通過する。下端ドレン26aは、軸方向に見たときに、鉛直線Cを基準として線対称となるようにして、第2内周面23b上に位置している。一対のサイドドレン26b,26cは、下端ドレン26aから周方向において同じ間隔をあけており、鉛直線Cを基準として互いに線対称に配置されている。一対のサイドドレン26b,26cはどちらも、軸線Aを通過する水平線Bよりも下方に位置する。すなわち、3つのドレン26はいずれも、第2内周面23bの下部に開口している。
【0069】
5つのエア排出路34の開口35は、鉛直線Cに対して線対称に配置される。5つのエア排出路34には、上端排出路34a、一対のサイド排出路34b,34c、及び一対の中間排出路34d,34eが含まれる。上端排出路34aの開口35は、鉛直線C上に配置され、下端ドレン26aと直径方向に対向する。サイド排出路34b,34cの開口は、水平線B上に配置され、直径方向に互いに対向する。中間排出路34dの開口35は、周方向において上端排出路34aとサイド排出路34bとの間に配置され、中間排出路34eの開口35は、周方向において上端排出路34aとサイド排出路34cとの間に配置される。一対の中間排出路34d,34eは、鉛直線Cを基準として線対称に配置される。
【0070】
このように、5つのエア排出路34の開口35は、第2内周面23bの上半部に設けられ、概略180度の範囲内に分散して配置されている。5つのエア排出路34の開口35は、周方向に完全に等間隔をあけて配置されている必要はない。
【0071】
オイルは、軸受7に供給された後にチャンバ10内に流入する。軸受7は、チャンバ10の軸方向一方側を画定しており、チャンバ10に臨んでいる。チャンバ10内のオイルの流れは、オイルの自重の影響を受ける。オイルは、チャンバ10内で鉛直下向きに流れやすい。チャンバ10の下部では、ドレン26が開口している。そのため、オイルは、ドレン26を介して円滑にハウジング13外に排出され、シール9に到達するのを抑制できる。特に、本実施形態では、ロータ11にフィン25bが設けられている。フィン25bが邪魔板の役割を果たし、オイルがチャンバ10内で軸方向他方側へ流れるのを阻止し、オイルのシール9への到達を一層抑制できる。
【0072】
フィン25bは、ロータ11に外嵌されるスリーブ25に一体的に形成されている。そのため、ロータ11がスリーブ25に挿通されるだけで、このような作用を奏するフィン25bをロータ11に簡便に設けることができる。
【0073】
一方、シール9からチャンバ10内に流入したシールエアの流れは、ロータ11の回転に伴う遠心力が影響する。そのため、シールエアは、チャンバ10内で径方向外周側に向けて流れやすい。シールエアは、軸方向一方側へ流れようにも、フィン25bによって阻止される。シールエアは、フィン25bによる阻止及び案内も相まって、軸方向外周側に向けて流れていく。
【0074】
シールエアの一部は、ロータ11の外周面付近且つフィン25bよりも軸方向他方側から、鉛直下向きに流れ、又は斜め下向きに流れる。このシールエアは、ドレン26を介してオイルと共にハウジング13外に排出される。ドレン26は、チャンバ10の径方向外周側を画定する第2内周面23bに開口している。そのため、下向きに流れたシールエアは、ドレン26の開口に円滑に流入し、チャンバ10から速やかに排出される。
【0075】
シールエアの一部は、ロータ11の外周面付近且つフィン25bよりも軸方向他方側から、水平に流れ、鉛直上向きに流れ、又は斜め上向きに流れ、第2内周面23bに達する。第2内周面23bの下部以外の部分には、複数のエア排出路34の開口35が分散して配置されている。そのため、水平又は上向きに流れたシールエアは、エア排出路34の開口35に円滑に流入し、チャンバ10から速やかにハウジング13外に排出される。エア排出路34の開口35が周方向に密に配置されるため、エアをハウジング13から円滑に排出できる。
【0076】
仮にこのようなエア排出路34が無ければ、上向きに流れたシールエアは、チャンバ10内で長く滞留するおそれがある。この滞留期間中にシールエアが軸方向一方側に流れ、軸受に到達するおそれがある。シールエアに異物が混入していた場合、異物が軸受7内に進入し、軸受7の安定作動、ひいてはロータ11の安定作動を阻害するおそれがある。
【0077】
これに対し、本実施形態においては、エア排出路34の存在により、このようなシールエアの滞留を防止できる。そのため、軸受7を保護することができ、ロータ11を安定的に作動させることができる。
【0078】
シールエアは、圧縮部3で生成される圧縮空気を使用しており、圧縮空気は、外気を基にして生成される。そのため、ガスタービン1が、例えば粉塵が発生しやすい環境に置かれている場合、圧縮空気に粉塵等の異物が混入するおそれが高くなる。本実施形態では、このような環境にガスタービン1が置かれている場合にも、軸受7を異物から保護できる。
【0079】
圧縮空気をシールエアとしてシール9に供給する系統に、エアクリーナが介在している。このため、外気あるいは圧縮空気に異物が混入されていたとしても、その異物をエアクリーナで除去でき、清浄化されたシールエアをシール9に供給できる。この点からも、軸受7を保護できる。
【0080】
これまで実施形態について説明したが、上記構成は、単なる一例であり、本発明の範囲内で追加、変更、又は削除可能である。
【符号の説明】
【0081】
1 ガスタービン
2 主軸
3 圧縮部
4 燃焼部
5 タービン
5a タービンロータ
6 入力軸
7,8 軸受
9 シール
9a 外周シール部
9b 内周シール部
10 チャンバ
11 ロータ
11a ジャーナル部
11b 段差面
11c 中間部
11d フランジ部
12 インペラ
13 ハウジング
14 収容空間
15 外壁
15a 取付孔
15b ラジアル孔
15c 流出口
16 内壁
17 支柱
17a アキシャル孔
17b ラジアル孔
18 カバー
18a ダクト
19 吸気ガイド
20 軸受ケース
20a 円筒部
20b 円錐部
20c 直線部
20d 傾斜部
20e 油流入ポート
20f,20g ねじ穴
21 保持リング
21a 円筒部
21b フランジ部
21c 流入口
21d 油供給路
22 取付板
23 軸孔
23a 第1内周面
23b 第2内周面
23c 段差面
23d チャンバ端面
24 軸受収容部
24a 円筒面
24b 段差面
25 スリーブ
25a 円筒部
25b フィン
26 ドレン
26a 下端ドレン
26b,26c サイドドレン
27 隔壁部材
27a 取出孔
28 流路
29 プラグ
31 上流流路
31a,31b 配管
32 エアクリーナ
32a 筐体
32b ストレーナ
32c 流入口
32d 流出口
33 エア供給路
33a,33b 配管
33c 下流部
34 エア排出路
34a 上端排出路
34b,34c サイド排出路
34d,34e 中間排出路
35 開口
36 排出口
40 減速機ケース
40a 減速機室
50 制御器
51 一次圧力センサ
52 二次圧力センサ
53 開閉弁
54 バイパス弁
55 逆止弁
A 軸線
【要約】
【課題】ガスタービンに適用される軸受を保護する。
【解決手段】軸封構造が、インペラ12を有するロータ11と、ロータ11を回転可能に支持する軸受7と、インペラ12を収容する収容空間14を有し、軸受7を保持するハウジング13と、軸受7に供給されたオイルをハウジング13の外に排出するドレン26と、ロータ11とハウジング13との間で、収容空間14に対して軸受7を封止するエアを供給するエア供給路33と、エア供給路33から供給されたエアをハウジング13の外に排出するエア排出路34と、を備える。
【選択図】
図2