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特許7561266改質USYゼオライト脱水素触媒によるパラフィン系ナフサの処理
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-25
(45)【発行日】2024-10-03
(54)【発明の名称】改質USYゼオライト脱水素触媒によるパラフィン系ナフサの処理
(51)【国際特許分類】
   C10G 35/095 20060101AFI20240926BHJP
   B01J 29/12 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
C10G35/095
B01J29/12 M
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2023501595
(86)(22)【出願日】2020-10-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-17
(86)【国際出願番号】 US2020057484
(87)【国際公開番号】W WO2022019938
(87)【国際公開日】2022-01-27
【審査請求日】2023-10-19
(31)【優先権主張番号】16/936,987
(32)【優先日】2020-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】316017181
【氏名又は名称】サウジ アラビアン オイル カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Saudi Arabian Oil Company
(73)【特許権者】
【識別番号】000190024
【氏名又は名称】日揮触媒化成株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】301041531
【氏名又は名称】一般財団法人JCCP国際石油・ガス・持続可能エネルギー協力機関
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】コセオグル,オマール レファ
(72)【発明者】
【氏名】アルシャレフ,アリ エイチ
(72)【発明者】
【氏名】渡部 光徳
(72)【発明者】
【氏名】内田 浩司
【審査官】上坊寺 宏枝
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/064001(WO,A1)
【文献】特表2013-542050(JP,A)
【文献】米国特許第5185484(US,A)
【文献】特表平9-504817(JP,A)
【文献】WANG YANGDONG;ET AL,CHARACTERIZATION OF TITANIUM-MODIFIED USY ZEOLITES AND THEIR CATALYTIC PERFORMANCE ON N- 以下備考,APPLIED CATALYSIS A: GENERAL,NL,ELSEVIER,2001年06月29日,VOL:214, NR:2,PAGE(S):167-177,http://dx.doi.org/10.1016/S0926-860X(01)00492-6,HEPTANE CRACKING
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G 35/00-35/24
B01J 29/08-29/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パラフィン系ナフサを処理する方法において、
脱水素反応器内でパラフィン系ナフサ原料を触媒系と接触させる工程であって、該触媒系は、脱水素生成物流を生成するための骨格置換超安定Y(USY)型ゼオライトを含む、工程、
を含み、
前記骨格置換USY型ゼオライトは改質USY骨格を有し、該改質USY骨格は、チタン原子、ジルコニウム原子、ハフニウム原子、およびその組合せからなる群より独立して選択される置換原子でUSYアルミノケイ酸塩骨格の骨格アルミニウム原子の一部を置換することによって改質されたUSYアルミノケイ酸塩骨格を含む、方法。
【請求項2】
前記骨格置換USY型ゼオライトが、該骨格置換USY型ゼオライトの総質量に基づいて、酸化物基準で計算して、0.01質量%から5質量%の置換原子を含有する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記骨格置換USY型ゼオライトが、該骨格置換USY型ゼオライトの総質量に基づいて、酸化物基準で計算して、0.01質量%から5質量%の置換原子を含有し、
該置換原子が、(a)チタン原子とジルコニウム原子、(b)チタン原子とハフニウム原子、(c)ジルコニウム原子とハフニウム原子、および(d)チタン原子、ジルコニウム原子、およびハフニウム原子からなる群より選択される組合せを含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記骨格置換USY型ゼオライトが、該骨格置換USY型ゼオライトの総質量に基づいて、酸化物基準で計算して、0.01質量%から5質量%の置換原子を含有し、
該置換原子がチタン原子とジルコニウム原子を含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記脱水素生成物流がオレフィンを含有する請求項1から4いずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記脱水素生成物流が、該脱水素生成物流の総質量に基づいて少なくとも5質量%のオレフィンを含む、請求項1から4いずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記触媒系が、前記骨格置換USY型ゼオライトの支持体をさらに含み、該支持体は、アルミナ、シリカ-アルミナ、およびその組合せからなる群より選択される無機酸化物を含請求項1から4いずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記支持体が、非晶質シリカ-アルミナを含む酸性支持体である、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記触媒系が、ニッケル、モリブデン、タングステン、白金、パラジウム、およびその組合せから選択される少なくとも1種類の活性相金属をさらに含む、請求項1から4いずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記パラフィン系ナフサ原料が、36℃から175℃の沸点範囲を有するパラフィンの豊富な炭化水素油を含む請求項1から4いずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記パラフィン系ナフサ原料が、5から10の炭素数を有するパラフィンの豊富な炭化水素油を含む、請求項1から4いずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記パラフィン系ナフサ原料の前記触媒系との接触が、
450℃から600℃の反応温度、
1kg/cm(約98kPa)から20kg/cm(約2.0MPa)の反応圧力、
0.5h-1から8h-1の液空間速度(LHSV)、および
1から5の水素対炭化水素モル比、
の条件下で行われる、請求項1から4いずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記脱水素生成物流を少なくとも脱水素液体生成物および気相生成物に分離する工程、および
前記脱水素液体生成物をガソリンにブレンドする工程、
をさらに含む、請求項1から4いずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記触媒系が、前記骨格置換USY型ゼオライトに加え、どのゼオライトも含まない、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記パラフィン系ナフサ原料が、36℃から175℃の沸点範囲を有するパラフィンの豊富な炭化水素油を含み、
前記パラフィン系ナフサ原料の前記触媒系との接触が、
450℃から600℃の反応温度、
1kg/cm (約98kPa)から20kg/cm (約2.0MPa)の反応圧力、
0.5h -1 から8h -1 の液空間速度(LHSV)、および
1から5の水素対炭化水素モル比、
の条件下で行われる、請求項13記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本出願は、その全ての開示がここに引用される、2020年7月23日に出願された米国特許出願第16/936987号に優先権を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本開示は、広く、パラフィン系ナフサ流をアップグレードするプロセスに関し、より詳しくは、ゼオライト触媒系の存在下でのパラフィン系ナフサの脱水素に関する。
【背景技術】
【0003】
軽質ナフサは、5または6の炭素原子を有するパラフィン系炭化水素を主に含有する、石油精製所またはガス製造所の生成物である。軽質ナフサを付加価値の高いガソリン混合成分に変換することは、継続的な課題となっている。従来の精製所では、軽質ナフサを異性化して、オクタン価の仕様を満たし蒸気圧の高いガソリン混合成分である異性化体(isomerate)を生産している。石油化学コンビナートでは、軽質ナフサを厳しい条件下で水蒸気分解して、エチレン、プロピレン、およびブテンなどのオレフィンを生産している。エチレン、プロピレン、およびブテンなどのオレフィンは、他の価値ある炭化水素の構成要素となるので、軽質ナフサのC5およびC6炭化水素よりも価値が高い。
【0004】
軽質ナフサの炭化水素成分における炭素-炭素結合および炭素-水素結合が不活性であるために、好ましくない熱力学、高い処理温度の必要性、低い選択性と収率、および商業的応用のための高いコストという結果がもたらされる。精製所では、シェールオイルやコンデンセートなどの軽質原料をより多量で処理し続けている。さらに、増加し続ける世界的なガソリン需要は、軽質ナフサに由来する製品から恩恵を受けることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、軽質ナフサをガソリン混合成分として、または他の価値のある炭化水素の構成要素として適した炭化水素に変換する費用効果の高いプロセスが引き続き必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の例示の実施の形態は、パラフィン系ナフサを脱水素するための脱水素触媒に関する。この脱水素触媒は、骨格置換超安定Y(USY)型ゼオライトを含む。骨格置換USY型ゼオライトは、改質USY骨格を有する。この改質USY骨格は、チタン原子、ジルコニウム原子、ハフニウム原子、およびその組合せからなる群より独立して選択される置換原子でUSYアルミノケイ酸塩骨格の骨格アルミニウム原子の一部を置換することによって改質されたUSYアルミノケイ酸塩骨格を含む。
【0007】
本開示のさらなる実施の形態は、パラフィン系ナフサを処理または脱水素する方法に関する。この方法は、脱水素反応器内でパラフィン系ナフサ原料を触媒系と接触させる工程を含む。この触媒系は、脱水素生成物流を生成するための骨格置換超安定Y(USY)型ゼオライトを含む。骨格置換USY型ゼオライトは、改質USY骨格を有する。改質USY骨格は、チタン原子、ジルコニウム原子、ハフニウム原子、およびその組合せからなる群より独立して選択される置換原子でUSYアルミノケイ酸塩骨格の骨格アルミニウム原子の一部を置換することによって改質されたUSYアルミノケイ酸塩骨格を含む。
【0008】
本開示の実施の形態の追加の特徴と利点は、以下の詳細な説明に述べられており、一部は、その説明から当業者に容易に明白となるか、またはその詳細な説明および以下の特許請求の範囲を含む、ここに記載された実施の形態を実施することによって認識されるであろう。先の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方とも、様々な実施の形態を記載しており、請求項の主題の性質および特徴を理解するための概要または骨子を提供する意図があることを理解すべきである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の実施の形態は、パラフィン系ナフサを脱水素し、それによって、パラフィン系ナフサの一部が少なくとも部分的に脱水素された、脱水素生成物流が形成される、脱水素触媒および脱水素触媒の使用を含む。実施の形態による脱水素触媒は、改質USY骨格を有する骨格置換超安定Y(USY)型ゼオライトを含む。改質USY骨格は、置換原子でUSYアルミノケイ酸塩骨格の骨格アルミニウム原子の一部を置換することによって改質されたUSYアルミノケイ酸塩骨格である。実施の形態において、この置換原子は、チタン原子、ジルコニウム原子、ハフニウム原子、およびその組合せからなる群より独立して選択される。
【0010】
ここで、パラフィン系ナフサを処理して、パラフィン系ナフサの少なくとも一部が少なくとも部分的に脱水素されている脱水素生成物流を生成する方法の実施の形態を詳しく参照する。
【0011】
実施の形態によれば、パラフィン系ナフサを処理する方法は、脱水素反応器内でパラフィン系ナフサ原料を触媒系と接触させて、脱水素生成物流を生成する工程を含む。この触媒系は、改質USY骨格を有する骨格置換超安定Y(USY)型ゼオライトを含む。改質USY骨格は、USYアルミノケイ酸塩骨格の標準的な定義によるUSYアルミノケイ酸塩骨格の類似体である。標準的な定義によれば、USYアルミノケイ酸塩骨格は、2.430nm以上かつ2.450nm以下の結晶格子定数(UD)、600m/gから900m/gの比表面積、およびシリカ(SiO)とアルミナ(Al)の基準で計算して、20から100のケイ素対アルミニウムのモル比を有するアルミノケイ酸塩ゼオライトの骨格である。
【0012】
本開示の実施の形態による骨格置換USY型ゼオライトに関して、改質USY骨格は、USYアルミノケイ酸塩骨格の骨格アルミニウム原子の一部を置換原子で置換することによって改質されたUSYアルミノケイ酸塩骨格である。実施の形態において、置換原子は、チタン原子、ジルコニウム原子、ハフニウム原子、およびその組合せからなる群より独立して選択される。
【0013】
本開示に使用されるように、「Ti-USY」という用語は、置換原子がチタンである、実施の形態による骨格置換USY型ゼオライトを称する。同様に、「Zr-USY」という用語は、置換原子がジルコニウムを含む、実施の形態による骨格置換USY型ゼオライトを称する。「Hf-USY」という用語は、置換原子がハフニウムを含む、実施の形態による骨格置換USY型ゼオライトを称する。「(Ti、Zr)-USY」という用語は、置換原子がチタンとジルコニウムを含む、実施の形態による骨格置換USY型ゼオライトを称する。「(Ti、Hf)-USY」という用語は、置換原子がチタンとハフニウムを含む、実施の形態による骨格置換USY型ゼオライトを称する。「(Zr、Hf)-USY」という用語は、置換原子がジルコニウムとハフニウムを含む、実施の形態による骨格置換USY型ゼオライトを称する。「(Ti、Zr、Hf)-USY」という用語は、置換原子がチタン、ジルコニウム、およびハフニウムを含む、実施の形態による骨格置換USY型ゼオライトを称する。
【0014】
骨格置換USY型ゼオライトおよびその調製を含む、実施の形態の触媒系を、これからより詳しく説明する。パラフィン系ナフサを処理する方法にこの触媒系を組み込むことは、それ以降に説明する。
【0015】
骨格置換超安定Y(USY)型ゼオライトを含む触媒
先に記載したように、パラフィン系ナフサを処理する方法の実施の形態において、触媒系は、骨格アルミニウム原子の一部がチタン原子、ジルコニウム原子、ハフニウム原子、またはその任意の組合せで置換されている、USYアルミノケイ酸塩骨格を有する骨格置換USY型ゼオライトを含む。この骨格置換USY型ゼオライトは、先に定義されたような、Ti-USY、Zr-USY、Hf-USY、(Ti、Zr)-USY、(Ti、Hf)-USY、(Zr、Hf)-USY、または(Ti、Zr、Hf)-USYであることがある。置換原子は、超安定Y型ゼオライトの骨格を形成するアルミニウム原子の代わりに使用され、したがって、超安定Y型ゼオライトの骨格の成分の機能を果たす。置換は、以下に限られないが、紫外、可視、および近赤外分光光度法(UV-Vis-NIR)、フーリエ変換赤外分光法(FT-IR)、または核磁気共鳴分光法(NMR)を含む分析技術によって、確認することができる。
【0016】
いくつかの実施の形態において、骨格置換USY型ゼオライトは、骨格置換USY型ゼオライトの総質量に基づいて、酸化物基準で計算して、0.01質量%から5質量%、または0.1質量%から5質量%、または0.2質量%から4質量%、または0.3質量%から3質量%の置換原子を含む。酸化物基準の計算において、チタン原子はTiOに基づいて計算され、ジルコニウム原子はZrOに基づいて計算され、ハフニウム原子はHfOに基づいて計算される。骨格置換USY型ゼオライト中のチタン、ジルコニウム、およびハフニウムは、例えば、蛍光X線分析、高周波プラズマ発光分析、または原子吸光分析などの公知の技術によって定量的に決定することができる。
【0017】
いくつかの実施の形態において、骨格置換USY型ゼオライトは、骨格アルミニウムを置換した置換原子に加え、骨格置換USY型ゼオライトの骨格に付着した、またはその外部に担持された、またはそれと結合した、ジルコニウム原子、チタン原子、ハフニウム原子、またはその任意の組合せをさらに含むことがある。そのような実施の形態において、ジルコニウム、チタン、またはハフニウム原子は、チタニア粒子、ジルコニア粒子、またはハフニア粒子などの酸化物粒子として付着することがある。この酸化物粒子は、50nm以下の粒径を有することがある。ここで考えられるような、定量分析を容易にする目的のために、骨格置換USY型ゼオライト中の置換原子の質量による量は、骨格アルミニウム原子と置換されたか、もしくはゼオライト骨格に付着した、またはその外部に担持された、またはそれと結合した、骨格置換USY型ゼオライトの総質量に基づいて、酸化物基準で計算された、チタン、ジルコニウム、およびハフニウムの総量を含む。しかしながら、全ての実施の形態において、USYアルミノケイ酸塩骨格の骨格アルミニウム原子の少なくとも一部が、チタン原子、ジルコニウム原子、ハフニウム原子、またはその任意の組合せで置換されていることを理解すべきである。例示の実施の形態において、骨格置換USY型ゼオライト中に存在するチタン、ジルコニウム、およびハフニウム原子の50%超、または75%超、または90%超、または99%超が、ゼオライト骨格中の骨格アルミニウム原子と置換されており、特に粒子として、ゼオライト骨格に単に付着した、またはその外部に担持された、またはそれと結合したわけではない。
【0018】
骨格置換USY型ゼオライトが、(Ti、Zr)-USY、(Ti、Hf)-USY、(Zr、Hf)-USY、または(Ti、Zr、Hf)-USYにおけるように、置換原子の組合せを含有する場合、酸化物基準で計算される、各ゼオライト中の置換原子の個々のタイプの質量比は限定されないことが当業者に認識されるはずである。実施の形態による方法に記載された反応は、チタン対ジルコニウム対ハフニウムの比率を調節することによって、調整されるかもしれないが、チタン対ジルコニウム対ハフニウムのどの比率が、本開示によるパラフィン系ナフサを処理する方法を実施するのに効果的であってもよいことを理解すべきである。
【0019】
1つの特別な非限定的な実施の形態において、骨格置換USY型ゼオライトは、置換原子がチタン原子とジルコニウム原子を含む、(Ti、Zr)-USYである、骨格置換USY型ゼオライトの総質量に基づいて、酸化物基準で計算して、0.01質量%から5質量%の置換原子を含むことがある。
【0020】
実施の形態によれば、骨格置換USY型ゼオライトは、シリカ部位対アルミナ部位の比が同じ比較の非置換USY型ゼオライトよりも大きい量の酸度を示すことがある。比較の非置換USY型ゼオライトにおけるシリカ部位対アルミナ部位の比は、従来の技術で測定した、シリカ対アルミナ比と同等であることを理解すべきである。しかしながら、骨格置換USY型ゼオライトに関して、シリカ部位対アルミナ部位の比は、シリカ部位の数が従来の分析で決定されるのに対し、アルミナ部位の数は、実際のアルミナ部位の数と、アルミニウム原子がチタン、ジルコニウム、またはハフニウムで置換されている骨格置換アルミナ部位の数との両方を含むように計算される。
【0021】
骨格置換USY型ゼオライトの調製
前記触媒系における骨格置換USY型ゼオライトは、骨格アルミニウム原子の一部が、チタン原子、ジルコニウム原子、ハフニウム原子、またはその任意の組合せで置換されているUSYアルミノケイ酸塩骨格を有する骨格置換USY型ゼオライトをもたらすどのゼオライト調製方法によって、調製されてもよい。1つの例示の調製技術において、触媒系における骨格置換USY型ゼオライトは、2.430nmから2.450nmの結晶格子定数、600m/gから900m/gの比表面積、および20から100のシリカ対アルミナのモル比を有するUSY型ゼオライトを500℃から700℃でか焼することによって、製造することができる。次に、か焼したUSY型ゼオライトを含有する懸濁液を形成する。この懸濁液は、5から15の液/固質量比を有することがある。この懸濁液に無機酸または有機酸を加えて、懸濁液のpHを1.0から2.0に低下させる。1つ以上の追加の溶液の混合中に沈殿を防ぐために、懸濁液のpHを1.0から2.0に前もって制御する。詳しくは、ジルコニウム、チタン、ハフニウム、またはその組合せの化合物を含有する1つ以上の追加の溶液を懸濁液に混ぜ合わせて、アルミニウム部位で骨格置換を行う。次に、懸濁液を、例えば、アンモニア水などの塩基で中和して、pHを7から7.5の範囲に上昇させる。得られた骨格置換USY型ゼオライトを濾過し、水で洗浄し、例えば、80℃から180℃の乾燥温度で乾燥させることができる。
【0022】
骨格置換USY型ゼオライトにおいて、骨格外(extraskeletal)アルミニウム(ゼオライト骨格の一部ではないアルミニウム原子)は、超安定Y型ゼオライトを得るために超安定Y型ゼオライト原材料から除去されることがある。骨格外アルミニウムは、例えば、40℃から95℃の温水中に超安定Y型ゼオライトを分散させて懸濁液を調製し、この懸濁液に硫酸を加え、温度を40℃から95℃に維持しつつ、10分から3時間に亘り懸濁液を撹拌して、骨格外アルミニウムを溶かすことによって、除去することができる。骨格外アルミニウムを溶かした後、懸濁液を濾過し、フィルタ上の残留物を40℃から95℃の精製水で洗浄し、3時間から30時間に亘り100℃から180℃で乾燥させ、それによって、骨格外アルミニウムが除去された超安定Y型ゼオライトを得ることができる。
【0023】
骨格置換USY型ゼオライトの調製において、超安定Y型ゼオライト原材料は、500℃から700℃または550℃から650℃でか焼されることがある。骨格置換USY型ゼオライトが得られる限り、か焼時間は特に限定されない。例示のか焼時間は、30分から10時間であることがある。USY型ゼオライト原材料のか焼雰囲気に関して、か焼が空気中で行われることが好ましい。か焼されたUSY型ゼオライト原材料を20℃から30℃の温度を有する水中に懸濁させて、懸濁液を形成する。USY型ゼオライトの懸濁液の濃度に関して、液固質量比は、例えば、5から15、または8から12であることがある。
【0024】
骨格置換USY型ゼオライトの調製において懸濁液のpHを低下させるための無機酸の非限定例としては、硫酸、硝酸、または塩化水素酸が挙げられるであろう。骨格置換USY型ゼオライトの調製において懸濁液のpHを低下させるための有機酸の例としては、カルボン酸が挙げられるであろう。無機酸または有機酸の量は、懸濁液のpHを1.0から2.0の範囲に制御できる限り、限定されない。酸の量の非限定例としては、骨格置換USY型ゼオライト中のアルミナのモル量の0.5から4.0倍、または0.7から3.5倍の酸のモル量が挙げられる。
【0025】
骨格置換USY型ゼオライトの調製中に懸濁液に混合される追加の溶液中に存在するチタン化合物の非限定例としては、硫酸チタン、酢酸チタン、塩化チタン、硝酸チタン、乳酸チタン、およびチタン原子にゼオライト骨格中のアルミニウム原子を置換させるのに十分な懸濁液中の溶解度を有するチタンの任意の化合物が挙げられる。実施の形態において、チタン化合物を水中に溶かすことにより調製されるチタン化合物の水溶液が、チタン化合物として適切に使用される。
【0026】
骨格置換USY型ゼオライトの調製中に懸濁液に混合される追加の溶液中に存在するジルコニウム化合物の非限定例としては、硫酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、塩化ジルコニウム、およびジルコニウム原子にゼオライト骨格中のアルミニウム原子を置換させるのに十分な懸濁液中の溶解度を有するジルコニウムの任意の化合物が挙げられる。実施の形態において、ジルコニウム化合物を水中に溶かすことにより調製されるジルコニウム化合物の水溶液が、ジルコニウム化合物として適切に使用される。
【0027】
骨格置換USY型ゼオライトの調製中に懸濁液に混合される追加の溶液中に存在するハフニウム化合物の非限定例としては、塩化ハフニウム、硝酸ハフニウム、フッ化ハフニウム、臭化ハフニウム、シュウ酸ハフニウム、およびハフニウム原子にゼオライト骨格中のアルミニウム原子を置換させるのに十分な懸濁液中の溶解度を有するハフニウムの任意の化合物が挙げられる。実施の形態において、ハフニウム化合物を水中に溶かすことにより調製されるハフニウム化合物の水溶液が、ハフニウム化合物として適切に使用される。
【0028】
骨格置換USY型ゼオライトの調製において、ジルコニウム化合物、ハフニウム化合物、またはチタン化合物の水溶液を超安定Y型ゼオライトの懸濁液と混合する場合、その水溶液は、懸濁液に徐々に加えられることがある。懸濁液への水溶液の添加を完了した後、この溶液は、例えば、3時間から5時間に亘り室温(25℃±10℃)で撹拌されることがある。さらに、混合が完了した後、上述した混合溶液は、そのpHが7.0から7.5に制御されるようにアンモニア水などのアルカリを添加することによって、中和され、それによって、触媒中に骨格置換ゼオライトを得ることができる。
【0029】
ジルコニウム化合物(またはその水溶液)のみが、上述した懸濁液に添加される化合物(またはその水溶液)として使用される場合、触媒系に使用するための骨格置換USY型ゼオライトは、Zr-USYとなることが当業者に明白であろう。同様に、ハフニウム化合物(またはその水溶液)のみが使用される場合、触媒系に使用するための骨格置換USY型ゼオライトは、Hf-USYとなる。チタン化合物(またはその水溶液)のみが使用される場合、触媒系に使用するための骨格置換USY型ゼオライトは、Ti-USYとなる。ジルコニウム化合物とチタン化合物(またはそれらの水溶液)のみが使用される場合、触媒系に使用するための骨格置換USY型ゼオライトは、(Ti、Zr)-USYとなる。ジルコニウム化合物とハフニウム化合物(またはそれらの水溶液)のみが使用される場合、触媒系に使用するための骨格置換USY型ゼオライトは、(Zr、Hf)-USYとなる。ジルコニウム化合物、チタン化合物、およびハフニウム化合物(またはそれらの水溶液)のみが使用される場合、触媒系に使用するための骨格置換USY型ゼオライトは、(Ti、Zr、Hf)-USYとなる。
【0030】
実施の形態による方法の触媒系は、骨格置換USY型ゼオライトの担体をさらに含むことがある。この担体としては、上述した骨格置換USY型ゼオライトを除く無機酸化物が挙げられるであろう。担体の無機酸化物は、造粒剤または結合剤の機能を果たす物質をさらに含むことがある。造粒剤としての物質を含む、任意の公知のゼオライト触媒担体に含まれるどの物質を使用してもよい。そのような無機酸化物の例としては、以下に限られないが、アルミナ、シリカ、チタニア、シリカ-アルミナ、アルミナ-チタニア、アルミナ-ジルコニア、アルミナ-ボリア、リン-アルミナ、シリカ-アルミナ-ボリア、リン-アルミナ-ボリア、リン-アルミナ-シリカ、シリカ-アルミナ-チタニア、およびシリカ-アルミナ-ジルコニアが挙げられる。例示の実施の形態において、触媒系は、アルミナおよびシリカ-アルミナから選択される無機酸化物を担体として含む。シリカ-アルミナ担体は、非晶質であることがある。さらなる例示の実施の形態において、触媒系は、アルミナ結合剤を含むことがある。
【0031】
触媒系が、骨格置換USY型ゼオライトと担体の両方を含む実施の形態において、ゼオライトと担体の質量比は、触媒活性の所望のレベルに応じて様々であろう。例示の実施の形態において、触媒系は、触媒系の総質量に基づいて、1質量%から80質量%、10質量%から80質量%、または20質量%から約70質量%を含むことがある。同様に、触媒系は、触媒系の総質量に基づいて、20質量%から92質量%、または20質量%から90質量%、または30質量%から80質量%を構成する触媒担体を含むことがある。
【0032】
実施の形態による方法の触媒系は、周期表のIUPACの第7族から第11族の個々の金属または金属の組合せから選択される活性金属成分をさらに含むことがある。活性金属の例としては、鉄、コバルト、ニッケル、ロジウム、パラジウム、銀、イリジウム、白金、金、クロム、モリブデン、およびタングステンが挙げられる。金属成分の組合せの非限定例としては、モリブデンとタングステンの組合せ;コバルトとニッケルの組合せ;モリブデン、タングステン、コバルトまたはニッケルの任意の1つ以上と、白金、ロジウム、またはパラジウムなどの白金族金属との組合せが挙げられる。例示の実施の形態において、触媒系は、ニッケル、モリブデン、タングステン、白金、パラジウム、またはその組合せから選択される少なくとも1つの活性相(active-phase)金属を含むことがある。理論で束縛する意図はないが、実施の形態による骨格置換USY型ゼオライト中のアルミニウムのチタン、ジルコニウム、またはハフニウムによる骨格置換により、ゼオライト触媒の表面上の活性金属分布の量が増えるであろうと考えられる。
【0033】
金属成分が触媒系に含まれる場合、その触媒系は、触媒系の総質量に基づいて、酸化物成分については酸化物基準で、または金属については金属基準で計算して、ゼロ超から約40質量%の金属成分を含有することがある。例示の実施の形態において、触媒系は、触媒系の総質量に基づいて、酸化物基準で計算して、モリブデン、タングステン、コバルト、またはニッケルなどの金属成分を3質量%から30質量%で含むことがある。さらなる例示の実施の形態において、触媒系は、触媒系の総質量に基づいて、金属基準で計算して、白金、ロジウム、またはパラジウムから選択される金属成分を0.01質量%から2質量%で含むことがある。
【0034】
脱水素プロセス流を生成するためのパラフィン系ナフサの処理
パラフィン系ナフサを処理する方法の実施の形態において、パラフィン系ナフサ原料は、脱水素反応器内で触媒系と接触させられて、脱水素生成物流を生成する。この触媒系は、先の項目で詳しく記載されてきた。不可欠な構成要素として触媒系を含む処理方法をこれから説明する。
【0035】
ここに用いられているように、「C5パラフィン」という用語は、5つの炭素原子を有するアルカンを意味する。同様に、「C6パラフィン」という用語は、6つの炭素原子を有するアルカンを意味する。
【0036】
ここに用いられているように、ある状況における「オレフィン」という用語は、炭素-炭素二重結合または少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含有する炭化水素を称する。しかしながら、いくつかの特定の状況において、「オレフィン」という用語は、特に、C5およびC6パラフィンの脱水素生成物の文脈で述べられた場合、5または6の炭素原子を有するアルケン(1-ペンテン、2-ペンテン、1,3-ペンタジエン、1,4-ペンタジエン、1-ヘキセン、2-ヘキセン、3-ヘキセン、1,3-ヘキサジエン、1,4-ヘキサジエン、1,5-ヘキサジエン、2,4-ヘキサジエン、および1,3,5-ヘキサトリエンなど)と、脱水素プロセス中にC5およびC6パラフィンの分解から生じる5未満の炭素原子を有するアルケン(エチレン、プロピレン、2-メチルプロペン、1-ブテン、シス-2-ブテン、トランス-2-ブテン、および1,3-ブタジエン)も包含する。
【0037】
ここに用いられているように、「ナフテン」および「シクロアルカン」という用語は、同義であり、C5およびC6パラフィンの脱水素生成物の文脈において、6以下の炭素原子を有する環状アルカンを称する。C5およびC6パラフィンの脱水素生成物の文脈におけるナフテンおよびシクロアルカンの例としては、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、およびシクロヘキサンが挙げられる。7つの炭素原子を有するアルカンの脱水素生成物の例としては、シクロヘプタン、メチルシクロヘキサン、およびジメチルシクロペンタンが挙げられるであろう。
【0038】
いくつかの実施の形態によれば、パラフィン系ナフサ原料は、2から16の炭素原子を有するアルカンを含有する炭化水素流である。さらなる実施の形態によれば、パラフィン系ナフサ原料は、2から14の炭素原子、2から12の炭素原子、2から10の炭素原子、3から8の炭素原子、4から7の炭素原子、5から12の炭素原子、5から10の炭素原子、5から7の炭素原子、または5から6の炭素原子を有するアルカンを主要分画として含有する炭化水素流であることがある。さらなる実施の形態において、パラフィン系ナフサ原料は、パラフィン系ナフサ原料の総質量に基づいて、合計で少なくとも80質量%、少なくとも90質量%、または少なくとも95質量%のC5およびC6アルカンを含有することがある。いくつかの実施の形態において、パラフィン系ナフサ原料は、36℃から175℃の沸点範囲を有し、5から10の炭素原子を有するアルカンを含有するまたはそれから実質的になる、パラフィンの豊富な炭化水素油であることがある。
【0039】
実施の形態によれば、パラフィン系ナフサ原料は、パラフィン系ナフサ原料を本開示に先に記載された触媒系と接触させて、脱水素などの反応をもたらすことによって処理される。この反応は、反応器内でバッチ反応または連続反応として行われることがある。本開示に使用されるように、「反応器」は、必要に応じて1種類以上の触媒の存在下で、1種類以上の反応体との間で1つ以上の化学反応が中で生じることのできる容器を称する。同様に、「脱水素反応器」は、脱水素が中で行われる任意の反応器である。反応器の例としては、バッチ式反応器、連続撹拌槽型反応器(CSTR)、または栓流反応器として作動するように作られた槽型または管型反応器が挙げられる。例示の反応器としては、固定床反応器、沸騰床反応器、移動床反応器、および流動床反応器などの充填床反応器が挙げられる。
【0040】
パラフィン系ナフサ原料は、先に記載された触媒系にこのパラフィン系ナフサ原料中のアルカンの少なくとも一部の脱水素を触媒させて、脱水素生成物流を生成するように脱水素反応器の構成に基づいてどの適切な様式で、この触媒系と接触されてもよい。脱水素生成物流は、C5およびC6アルカンの脱水素生成物を含むことがある。C5およびC6アルカンの脱水素生成物としては、オレフィン(1-ペンテン、2-ペンテン、1,3-ペンタジエン、1,4-ペンタジエン、1-ヘキセン、2-ヘキセン、3-ヘキセン、1,3-ヘキサジエン、1,4-ヘキサジエン、1,5-ヘキサジエン、2,4-ヘキサジエン、および1,3,5-ヘキサトリエン)、ナフテン(シクロペンタン、メチルシクロペンタン、およびシクロヘキサン)、芳香族化合物(例えば、ベンゼンおよびシクロペンタジエン)、ノルマルアルカン(n-アルカン)(例えば、ペンタンおよびヘキサン)、イソ-アルカン(例えば、2-メチルブタンおよび2-メチルペンタン)、および脱水素反応の副生成物としての水素ガスの組合せが挙げられるであろう。脱水素中に、水素原子がアルカンから除去されて、分解、異性化、環化、および芳香族化などのさらなる反応をもたらすことのある混合ラジカル種を形成することを理解すべきである。したがって、脱水素生成物流は、そのようなさらなる反応の生成物の混合物を含むと予測されるであろう。そのような生成物の例としては、必ずしも以下に限られないが、5未満の炭素原子を持つオレフィン(例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、および1,3-ブタジエン)、5未満の炭素原子を持つノルマルアルカン(例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン)、および5未満の炭素原子を持つイソ-アルカン(例えば、2-メチルプロパン)が挙げられる。
【0041】
本開示の実施の形態において、脱水素生成物流は、脱水素生成物流の総質量に基づいて、5質量%超の6以下の炭素原子を有するオレフィン、または10質量%超の6以下の炭素原子を有するオレフィン、または20質量%超の6以下の炭素原子を有するオレフィン、または30質量%超の6以下の炭素原子を有するオレフィン、または40質量%超の6以下の炭素原子を有するオレフィン、または50質量%超の6以下の炭素原子を有するオレフィンを含むことがある。パラフィン系ナフサ原料が主にC5およびC6アルカンを含有する分画である場合、その脱水素生成物流中のオレフィンは、エチレン、プロピレン、1-ブテン、シス-2-ブテン、トランス-2-ブテン、および1,3-ブタジエンを含むことになることを理解すべきである。それゆえ、いくつかの実施の形態において、脱水素生成物流は、脱水素生成物流の総質量に基づいて、5質量%超のオレフィン、または10質量%超のオレフィン、または20質量%超のオレフィン、または30質量%超のオレフィン、または40質量%超のオレフィン、または50質量%超のオレフィンを含むことがあり、ここで、オレフィンは、エチレン、プロピレン、1-ブテン、シス-2-ブテン、トランス-2-ブテン、1,3-ブタジエン、およびその組合せからなる群より選択される。理論で束縛する意図はないが、本開示の実施の形態にしたがって記載された触媒系は、ノルマルアルカン、イソ-アルカン、シクロアルカン、および芳香族化合物の質量分画に対して、脱水素生成物流中のオレフィンの質量分画を増加させる方向の有益な選択性を有すると考えられる。
【0042】
パラフィン系ナフサを処理する方法の実施の形態において、脱水素条件には、300℃から800℃の反応温度および0.01kg/cm(約980Pa)から30kg/cm(約2.9MPa)の反応圧力が含まれることがある。例えば、反応温度は、300℃から700℃、400℃から700℃、400℃から650℃、450℃から650℃、450℃から600℃、またはこれらの任意の部分的範囲であることがある。反応圧力は、例えば、0.1kg/cm(約9.8kPa)から30kg/cm(約2.9MPa)、1kg/cm(約98kPa)から30kg/cm(約2.9MPa)、1kg/cm(約98kPa)から25kg/cm(約2.5MPa)、1kg/cm(約98kPa)から20kg/cm(約2.0MPa)、またはこれらの任意の部分的範囲であることがある。例示の実施の形態において、パラフィン系ナフサ原料の触媒系との接触は、450℃から600℃の反応温度、1kg/cm(約98kPa)から20kg/cm(約2.0MPa)または2kg/cm(約200kPa)から6kg/cm(約590kPa)の反応圧力、0.5h-1から8h-1の液空間速度(LHSV)、および1から5の水素対炭化水素モル比の条件下で行われることがある。
【0043】
どの特定の理論によっても束縛されないが、炭化水素の脱水素は吸熱反応であり、変換レベルは化学平衡により制限されるので、より大きい変換を達成するために、比較的高い温度および比較的低い水素分圧で作動することが望ましいであろうと考えられる。しかしながら、厳しい条件下での反応にとって、芳香族化、分解、異性化、コークス形成、またこれらの組合せなどの望ましくない副反応が増加するであろうから、高い活性と選択性を長期間に亘り維持することは難しいであろう。したがって、反応条件は、触媒活性、触媒選択性、および触媒安定性の1つ以上を最大にすることに関して、選択されるであろう。
【0044】
現在記載されている1つ以上の実施の形態によれば、触媒系は、先に記載された反応体化学種の変換に関する比較的高い活性、直鎖アルケン(例えば、エチレン、プロピレン、2-メチルプロペン、1-ブテン、シス-2-ブテン、トランス-2-ブテン、および1,3-ブタジエンなどのオレフィン)への比較的高い選択性の変換、および比較的良好な安定性の内の1つ以上を有することがある。現在述べられているように、活性は、特定の温度、圧力、接触時間、およびもしあれば、水素、水蒸気または窒素などの希釈剤の存在下での、反応体材料を生成物(反応体材料からの異なる化学組成を有する物質)に変換する触媒の能力の尺度である。それに加え、現在記載されているように、選択性は、変換された反応体の総モル数に対する、モルパーセントでの生成物中の特定種の量の尺度である。現在述べられているように、触媒安定性は、活性と選択性のパラメータの時間による変化率の尺度であり、変化率が小さいほど、触媒系はより安定している。
【0045】
1つ以上の実施の形態によれば、オレフィン生成の選択性は、比較的高い温度および低い水素圧力により促進されるであろう、分解副反応および異性化などの望ましくない反応を低下させることによって、達成されることがある。現在記載されている選択的脱水素プロセスについて、直鎖炭化水素原料を脱水素して、分解または異性化反応(それぞれ、より小さい炭化水素鎖または分岐炭化水素鎖を生成する傾向にある)をほとんどまたは全く同時に起こさずに、直鎖アルケンを形成することが望ましいであろう。1つ以上の実施の形態によれば、現在記載されている脱水素反応の異性化または分解活性は、原料に対する生成物中の異性化または分解炭化水素のモル数で測定して、原料の2モル%未満に維持されることがある。
【0046】
1つ以上の実施の形態において、パラフィン系ナフサ原料の供給流を、脱水素触媒系を収容している反応器に導入することができる。この供給流は、反応体材料(例えば、C5およびC6ノルマルアルカン)、並びに希釈成分を含むことがある。希釈材料の例としては、水素、水蒸気、メタン、アルゴンや窒素などの不活性ガス、またはその組合せが挙げられる。制限なく、希釈剤対反応体材料の質量比は、500から1000、1000から2000、2000から3000、3000から4000、4000から5000、またはその任意の組合せなど、500から5000であることがある。
【0047】
脱水素反応器から出る脱水素生成物流は、脱水素された炭化水素、反応体材料と同一であることがある未変換の炭化水素、分解生成物、脱水素反応からの副生成物である水素、および希釈材料を含むことがある。水素などの希釈ガスは、脱水素生成物流の他の部分から分離されることがある。これらの希釈ガスは、希釈材料として再利用されるように再循環されることがある、または他の化学プロセスに利用されることがある。脱水素された炭化水素および未変換の炭化水素は、要望どおりに、下流の分離プロセスにより分離することができる。いくつかの実施の形態において、未変換の炭化水素は、次に、その後の反応の繰り返しのために、このプロセスに再循環されることがある。
【0048】
いくつかの実施の形態において、パラフィン系ナフサ原料は、希釈材料を含む供給流において触媒系と接触させられるように脱水素反応器に運ばれる。そのような実施の形態において、供給流中の希釈材料は、5体積%から30体積%の水素、5体積%から10体積%の水素、10体積%から15体積%の水素、15体積%から20体積%の水素、20体積%から25体積%の水素、または25体積%から30体積%の水素、またはその任意の組合せを含むことがある。いくつかの実施の形態において、水素対他の希釈剤のこの比を、C5からC6炭化水素の脱水素に利用してもよい。いくつかの実施の形態において、希釈剤は、水素と、窒素などの不活性ガスとを含む、またはそれらから完全になることがある。どの特定の理論によっても束縛されないが、希釈剤としての水素の比率は、ある反応条件下でのノルマルアルケンの選択性およびノルマルアルケンの収率を増加させると考えられる。触媒安定性は、希釈剤としての5体積%から30体積%の水素の使用により増加するであろう。
【0049】
いくつかの実施の形態において、パラフィン系ナフサ原料を処理する方法は、脱水素生成物流を、少なくとも脱水素液体生成物および気相生成物に分離する工程をさらに含むことがある。この分離は、例えば、減圧容器、フラッシュドラム、ブレイクポット、ノックアウトドラム、ノックアウトポット、圧縮機吸引ドラム、または圧縮機入口ドラムなどの適切な装置内での任意の従来の気液分離方法により行われてもよい。いくつかの実施の形態において、分離は、例えば、蒸留によるものなど、様々な沸点を有する炭化水素の流体混合物を分離するためのどの従来の方法によって行われてもよい。この方法は、次に、脱水素液体生成物をガソリンにブレンドする工程をさらに含むことがある。気相生成物は、他の精製プロセスに使用するために、または価値のある生成物として、回収されることがある。
【実施例
【0050】
本発明は、実例として提示され、当業者により認識されるように、限定的であることを意味しない、以下の実施例を参照することによって、より良く理解されるであろう。
【0051】
その性質および組成が表1に示されている、C5~C7炭化水素を含有するパラフィン系ナフサ試料を、脱水素反応を実証するためにパラフィン系ナフサ原料として使用した。固定床反応器を備えたパイロットプラントで実験を行った。このパイロットプラントは、Ti、Zr-USYゼオライトおよび活性相金属としての白金を含有する触媒が20cm装填されていた。このパイロットプラントを、3kg/cm(約294kPa)、4h-1のLHSV、3の水素対炭化水素モル比、および475℃、525℃、および575℃の反応温度で作動させた。
【0052】
【表1】
【0053】
3つの温度での脱水素生成物流内のパラフィン系ナフサ原料と生成物が、表2に纏められている。そのデータは、n-アルカンが、Ti、Zr-USYゼオライト触媒でイソ-アルカンとオレフィンに変換されていることを示す。このデータは、オレフィンの含有量が、温度の上昇と共に増加するであろうことをさらに示唆している。
【0054】
【表2】
【0055】
理論で束縛する意図はないが、Ti、Zr-USYゼオライトの酸度は、Ti、Zr-USYを含む脱水素システムが、同じ比率のシリカ対アルミナの未改質USYゼオライト触媒を組み込んだ比較のシステムから達成されるであろうよりも多い量のオレフィンを生成する能力に都合良く恩恵を与えるであろうと考えられる。
【0056】
全酸度は、シリカ対アルミナ比が40である比較の未改質USYゼオライト(USY-40)およびこれもシリカ部位対アルミナ部位の比が40であるTi、Zr-USYゼオライト(Ti、Zr-USY-40)について、ピリジン吸着と150℃での脱着によって決定した。USY-40は、ゼオライト1グラム当たり115マイクロモルのブレンステッド酸部位、およびゼオライト1グラム当たり47マイクロモルのルイス酸部位に基づく全酸度を有した。Ti、Zr-USY-40は、ゼオライト1グラム当たり149マイクロモルのブレンステッド酸部位、およびゼオライト1グラム当たり107マイクロモルのルイス酸部位に基づく全酸度を有した。
【0057】
USY-40およびTi、Zr-USY-40における強酸部位の数は、ピリジン吸着と450℃での脱着により決定した。USY-40は、ゼオライト1グラム当たり27マイクロモルのブレンステッド酸部位、およびゼオライト1グラム当たり21マイクロモルのルイス酸部位に基づく強酸部位を有した。Ti、Zr-USY-40は、ゼオライト1グラム当たり36マイクロモルのブレンステッド酸部位、およびゼオライト1グラム当たり37マイクロモルのルイス酸部位に基づく強酸部位を有した。
【0058】
項目の列挙
本開示の実施の形態は、少なくとも以下の項目を含み、これらは、全体としての本開示の範囲または付随の特許請求の範囲を限定する意図はない。
【0059】
項目1:パラフィン系ナフサを処理する方法であって、この方法は、脱水素反応器内でパラフィン系ナフサ原料を触媒系と接触させる工程を含み、この触媒系は、脱水素生成物流を生成するための骨格置換超安定Y(USY)型ゼオライトを含み、この骨格置換USY型ゼオライトは改質USY骨格を有し、この改質USY骨格は、チタン原子、ジルコニウム原子、ハフニウム原子、およびその組合せからなる群より独立して選択される置換原子でUSYアルミノケイ酸塩骨格の骨格アルミニウム原子の一部を置換することによって改質されたUSYアルミノケイ酸塩骨格を含む、方法。
【0060】
項目2:骨格置換USY型ゼオライトが、骨格置換USY型ゼオライトの総質量に基づいて、酸化物基準で計算して、0.01質量%から5質量%の置換原子を含有する、項目1の方法。
【0061】
項目3:骨格置換USY型ゼオライトが、骨格置換USY型ゼオライトの総質量に基づいて、酸化物基準で計算して、0.01質量%から5質量%の置換原子を含有し、その置換原子が、(a)チタン原子とジルコニウム原子、(b)チタン原子とハフニウム原子、(c)ジルコニウム原子とハフニウム原子、および(d)チタン原子、ジルコニウム原子、およびハフニウム原子からなる群より選択される組合せを含む、項目1の方法。
【0062】
項目4:骨格置換USY型ゼオライトが、骨格置換USY型ゼオライトの総質量に基づいて、酸化物基準で計算して、0.01質量%から5質量%の置換原子を含有し、その置換原子が、チタン原子とジルコニウム原子を含む、項目1の方法。
【0063】
項目5:脱水素生成物流がオレフィンを含有する、先の項目のいずれかの方法。
【0064】
項目6:脱水素生成物流が、脱水素生成物流の総質量に基づいて少なくとも5質量%のオレフィンを含む、先の項目のいずれかの方法。
【0065】
項目7:触媒系が、骨格置換USY型ゼオライトの支持体をさらに含み、その支持体が、アルミナ、シリカ-アルミナ、およびその組合せからなる群より選択される無機酸化物を含む、先の項目のいずれかの方法。
【0066】
項目8:触媒系が、非晶質シリカ-アルミナを含む酸性支持体をさらに含む、先の項目のいずれかの方法。
【0067】
項目9:触媒系が、ニッケル、モリブデン、タングステン、白金、パラジウム、およびその組合せから選択される少なくとも1種類の活性相金属をさらに含む、先の項目のいずれかの方法。
【0068】
項目10:パラフィン系ナフサ原料が、36℃から175℃の沸点範囲を有するパラフィンの豊富な炭化水素油を含む、先の項目のいずれかの方法。
【0069】
項目11:パラフィン系ナフサ原料が、5から10の炭素数を有するパラフィンの豊富な炭化水素油を含む、先の項目のいずれかの方法。
【0070】
項目12:パラフィン系ナフサ原料の触媒系との接触が、450℃から600℃の反応温度、1kg/cm(約98kPa)から20kg/cm(約2.0MPa)の反応圧力、0.5h-1から8h-1の液空間速度(LHSV)、および1から5の水素対炭化水素モル比の条件下で行われる、先の項目のいずれかの方法。
【0071】
項目13:触媒系がアルミナ結合剤をさらに含む、先の項目のいずれかの方法。
【0072】
項目14:脱水素生成物流を少なくとも脱水素液体生成物および気相生成物に分離する工程、および脱水素液体生成物をガソリンにブレンドする工程をさらに含む、先の項目のいずれかの方法。
【0073】
項目15:触媒系が、骨格置換USY型ゼオライトに加え、どのゼオライトも含まない、先の項目のいずれかの方法。
【0074】
項目16:骨格置換USY型ゼオライトが、骨格置換USY型ゼオライトの総質量に基づいて、酸化物基準で計算して、0.01質量%から5質量%の置換原子を含有する、先の項目のいずれかの方法。
【0075】
項目17:触媒系が、骨格置換USY型ゼオライトの支持体をさらに含み、この支持体は、アルミナ、シリカ-アルミナ、およびその組合せからなる群より選択される無機酸化物を含む、先の項目のいずれかの方法。
【0076】
項目18:パラフィン系ナフサ原料が、36℃から175℃の沸点範囲を有するパラフィンの豊富な炭化水素油を含む、先の項目のいずれかの方法。
【0077】
項目19:パラフィン系ナフサ原料の触媒系との接触が、450℃から600℃の反応温度、1kg/cm(約98kPa)から20kg/cm(約2.0MPa)の反応圧力、0.5h-1から8h-1の液空間速度(LHSV)、および1から5の水素対炭化水素モル比の条件下で行われる、先の項目のいずれかの方法。
【0078】
項目20:パラフィン系ナフサを脱水素するための脱水素触媒であって、この脱水素触媒は、骨格置換超安定Y(USY)型ゼオライトを含み、この骨格置換USY型ゼオライトは改質USY骨格を有し、この改質USY骨格は、チタン原子、ジルコニウム原子、ハフニウム原子、およびその組合せからなる群より独立して選択される置換原子でUSYアルミノケイ酸塩骨格の骨格アルミニウム原子の一部を置換することによって改質されたUSYアルミノケイ酸塩骨格を含む、脱水素触媒。
【0079】
項目21:骨格置換USY型ゼオライトが、骨格置換USY型ゼオライトの総質量に基づいて、酸化物基準で計算して、0.01質量%から5質量%の置換原子を含有する、項目20の脱水素触媒。
【0080】
項目22:骨格置換USY型ゼオライトが、骨格置換USY型ゼオライトの総質量に基づいて、酸化物基準で計算して、0.01質量%から5質量%の置換原子を含有し、その置換原子が、(a)チタン原子とジルコニウム原子、(b)チタン原子とハフニウム原子、(c)ジルコニウム原子とハフニウム原子、および(d)チタン原子、ジルコニウム原子、およびハフニウム原子からなる群より選択される組合せを含む、項目20の脱水素触媒。
【0081】
項目23:骨格置換USY型ゼオライトが、骨格置換USY型ゼオライトの総質量に基づいて、酸化物基準で計算して、0.01質量%から5質量%の置換原子を含有し、その置換原子が、チタン原子とジルコニウム原子を含む、項目20の脱水素触媒。
【0082】
項目24:骨格置換USY型ゼオライトの支持体をさらに含み、その支持体が、アルミナ、シリカ-アルミナ、およびその組合せからなる群より選択される無機酸化物を含む、項目20から23のいずれかの脱水素触媒。
【0083】
項目25:非晶質シリカ-アルミナを含む酸性支持体をさらに含む、項目20から24のいずれかの脱水素触媒。
【0084】
項目26:ニッケル、モリブデン、タングステン、白金、パラジウム、およびその組合せから選択される少なくとも1種類の活性相金属をさらに含む、項目20から25のいずれかの脱水素触媒。
【0085】
項目27:アルミナ結合剤をさらに含む、項目20から26のいずれかの脱水素触媒。
【0086】
項目28:パラフィン系ナフサを脱水素するための項目20から27のいずれかの脱水素触媒の使用。
【0087】
項目29:パラフィン系ナフサ原料が、36℃から175℃の沸点範囲を有するパラフィンの豊富な炭化水素油を含む、項目28の使用。
【0088】
項目30:パラフィン系ナフサ原料が、5から10の炭素数を有するパラフィンの豊富な炭化水素油を含む、項目28または29の使用。
【0089】
項目32:項目1から19のいずれかによるパラフィン系ナフサを処理する方法の任意の追加の特徴を含む、28から30のいずれかの使用。
【0090】
特に明記のない限り、ここに使用した全ての技術用語および科学用語は、本発明の属する技術分野の当業者が一般に理解するものと同じ意味を有する。ここでの説明に使用した専門用語は、特定の実施の形態を説明するためだけであり、限定を意図するものではない。本明細書および付随の特許請求の範囲に使用されるように、名詞は、文脈上明白に他の意味に解釈すべき場合を除いて、複数の対象を含むことが意図されている。
【0091】
特定の実施の形態をここに示し、記載してきたが、請求項の主題の範囲から逸脱せずに、様々な他の変更および改変を行えることを理解すべきである。さらに、請求項の主題の様々な態様がここに記載されているが、そのような態様は、組合せで使用される必要はない。したがって、付随の特許請求の範囲は、請求項の主題の範囲内にあるそのような変更および改変の全てを含むことが意図されている。
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
実施形態1
パラフィン系ナフサを処理する方法において、
脱水素反応器内でパラフィン系ナフサ原料を触媒系と接触させる工程であって、該触媒系は、脱水素生成物流を生成するための骨格置換超安定Y(USY)型ゼオライトを含む、工程、
を含み、
前記骨格置換USY型ゼオライトは改質USY骨格を有し、該改質USY骨格は、チタン原子、ジルコニウム原子、ハフニウム原子、およびその組合せからなる群より独立して選択される置換原子でUSYアルミノケイ酸塩骨格の骨格アルミニウム原子の一部を置換することによって改質されたUSYアルミノケイ酸塩骨格を含む、方法。
実施形態2
前記骨格置換USY型ゼオライトが、該骨格置換USY型ゼオライトの総質量に基づいて、酸化物基準で計算して、0.01質量%から5質量%の置換原子を含有し、好ましくは、該置換原子が、(a)チタン原子とジルコニウム原子、(b)チタン原子とハフニウム原子、(c)ジルコニウム原子とハフニウム原子、および(d)チタン原子、ジルコニウム原子、およびハフニウム原子からなる群より選択される組合せを含み、より好ましくは、該置換原子がチタン原子とジルコニウム原子を含む、実施形態1に記載の方法。
実施形態3
前記脱水素生成物流がオレフィンを含有し、好ましくは、該脱水素生成物流は、該脱水素生成物流の総質量に基づいて少なくとも5質量%のオレフィンを含む、実施形態1または2に記載の方法。
実施形態4
前記触媒系が、前記骨格置換USY型ゼオライトの支持体をさらに含み、該支持体は、アルミナ、シリカ-アルミナ、およびその組合せからなる群より選択される無機酸化物を含み、好ましくは、該支持体は、非晶質シリカ-アルミナを含む酸性支持体である、実施形態1から3いずれか1つに記載の方法。
実施形態5
前記触媒系が、ニッケル、モリブデン、タングステン、白金、パラジウム、およびその組合せから選択される少なくとも1種類の活性相金属をさらに含む、実施形態1から4いずれか1つに記載の方法。
実施形態6
前記パラフィン系ナフサ原料が、36℃から175℃の沸点範囲を有するパラフィンの豊富な炭化水素油を含み、好ましくは、該パラフィン系ナフサ原料は、5から10の炭素数を有するパラフィンの豊富な炭化水素油を含む、実施形態1から5いずれか1つに記載の方法。
実施形態7
前記パラフィン系ナフサ原料の前記触媒系との接触が、
450℃から600℃の反応温度、
1kg/cm (約98kPa)から20kg/cm (約2.0MPa)の反応圧力、
0.5h -1 から8h -1 の液空間速度(LHSV)、および
1から5の水素対炭化水素モル比、
の条件下で行われる、実施形態1から6いずれか1つに記載の方法。
実施形態8
前記脱水素生成物流を少なくとも脱水素液体生成物および気相生成物に分離する工程、および
前記脱水素液体生成物をガソリンにブレンドする工程、
をさらに含む、実施形態1から7いずれか1つに記載の方法。
実施形態9
前記触媒系が、前記骨格置換USY型ゼオライトに加え、どのゼオライトも含まない、実施形態1から8いずれか1つに記載の方法。
実施形態10
パラフィン系ナフサを脱水素するための脱水素触媒であって、該脱水素触媒は、骨格置換超安定Y(USY)型ゼオライトを含み、該骨格置換USY型ゼオライトは改質USY骨格を有し、該改質USY骨格は、チタン原子、ジルコニウム原子、ハフニウム原子、およびその組合せからなる群より独立して選択される置換原子でUSYアルミノケイ酸塩骨格の骨格アルミニウム原子の一部を置換することによって改質されたUSYアルミノケイ酸塩骨格を含む、脱水素触媒。
実施形態11
前記骨格置換USY型ゼオライトが、該骨格置換USY型ゼオライトの総質量に基づいて、酸化物基準で計算して、0.01質量%から5質量%の置換原子を含有し、好ましくは、該置換原子が、(a)チタン原子とジルコニウム原子、(b)チタン原子とハフニウム原子、(c)ジルコニウム原子とハフニウム原子、および(d)チタン原子、ジルコニウム原子、およびハフニウム原子からなる群より選択される組合せを含み、より好ましくは、該置換原子がチタン原子とジルコニウム原子を含む、実施形態10に記載の脱水素触媒。
実施形態12
前記骨格置換USY型ゼオライトの支持体をさらに含み、該支持体は、アルミナ、シリカ-アルミナ、およびその組合せからなる群より選択される無機酸化物を含み、好ましくは、該支持体は、非晶質シリカ-アルミナを含む酸性支持体である、実施形態10または11に記載の脱水素触媒。
実施形態13
ニッケル、モリブデン、タングステン、白金、パラジウム、およびその組合せから選択される少なくとも1種類の活性相金属をさらに含む、実施形態10から12いずれか1つに記載の脱水素触媒。
実施形態14
パラフィン系ナフサを脱水素するための実施形態10から13いずれか1つに記載の脱水素触媒の使用。
実施形態15
前記パラフィン系ナフサ原料が、36℃から175℃の沸点範囲を有するパラフィンの豊富な炭化水素油を含み、好ましくは、該パラフィン系ナフサ原料は、5から10の炭素数を有するパラフィンの豊富な炭化水素油を含む、実施形態14に記載の使用。