(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-25
(45)【発行日】2024-10-03
(54)【発明の名称】代替肉における結合剤としてのパタチン
(51)【国際特許分類】
A23J 3/22 20060101AFI20240926BHJP
A23J 3/00 20060101ALI20240926BHJP
A23J 3/16 20060101ALI20240926BHJP
A23J 3/14 20060101ALI20240926BHJP
A23L 13/00 20160101ALI20240926BHJP
A21D 2/36 20060101ALN20240926BHJP
A21D 2/26 20060101ALN20240926BHJP
A21D 13/80 20170101ALN20240926BHJP
【FI】
A23J3/22
A23J3/00 502
A23J3/16
A23J3/14
A23L13/00 Z
A23J3/00 508
A21D2/36
A21D2/26
A21D13/80
(21)【出願番号】P 2023506195
(86)(22)【出願日】2021-07-29
(86)【国際出願番号】 NL2021050481
(87)【国際公開番号】W WO2022025766
(87)【国際公開日】2022-02-03
【審査請求日】2023-03-20
(32)【優先日】2020-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】523031046
【氏名又は名称】コーポラティ コニンクレイケ アヴェベ ユー.アー.
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スペルブリンク、ロビン エリック ヤコーブス
(72)【発明者】
【氏名】セーヘルス、クリスティナ ランベルタ カタリーナ
(72)【発明者】
【氏名】スタニシツ、ニコラ
(72)【発明者】
【氏名】チェン、チョンホン
【審査官】三原 健治
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-520554(JP,A)
【文献】特表2017-517274(JP,A)
【文献】特表2020-512821(JP,A)
【文献】国際公開第2008/069650(WO,A1)
【文献】特表2015-521845(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106722525(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23J
A23L
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
代替肉を製造するための方法であって、
a)水と、変性タンパク質と、
非変性パタチンと、グリセロールの脂肪酸トリエステルを含む物質として定義される脂質と、を含む混合物を提供すること、及び
b)前記代替肉を成形すること、及び
c)前記代替肉を-35℃~20℃の温度に冷却すること、を含み、
前記脂質中の脂肪酸が、2質量%未満のC12以下の鎖長を有する脂肪酸を含み、
前記変性タンパク質が、塊茎、穀類若しくは堅果由来の変性植物タンパク質であるか、又は大豆タンパク質、ソラマメタンパク質、リョクトウタンパク質、キノコタンパク質、ヒヨコマメタンパク質及びレンチタンパク質からなる群から選択される変性植物タンパク質である、
代替肉を製造するための方法。
【請求項2】
前記脂肪酸が、2質量%未満のC14以下の鎖長を有する脂肪酸を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記脂肪酸の少なくとも98質量%が、C12以上の鎖長を有する脂肪酸である、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記脂肪酸の少なくとも98質量%が、C14以上の鎖長を有する脂肪酸である、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記脂質が、トウモロコシ油、大豆油、菜種油、ヒマワリ油、ブドウ種子油、落花生油、ゴマ油、オリーブ油、シアバター、ココアバター、及び米ぬか油からなる群の脂質のうちの1又は複数を含み、前記脂質が任意に水素化されていてもよい、請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記混合物に供給される前記脂質が、脂質1kg当たり18mmol未満の遊離脂肪酸を含み、及び/又は全脂質に対するジアシルグリセロール及びモノアシルグリセロールの合計が10重量%未満である、請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記変性植物タンパク質が、ジャガイモタンパク質、サツマイモタンパク質、小麦タンパク質/グルテン、エンバクタンパク質、スペルトコムギタンパク質、ゴマ種子タンパク質、麻の種子タンパク質、又は大豆タンパク質である、請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記変性植物タンパク質が、テクスチャ化大豆タンパク質、テクスチャ化ジャガイモタンパク質又はテクスチャ化グルテンからなる群から選択されるテクスチャ化植物タンパク質である、請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記代替肉が、冷却前に60℃を超える温度に加熱されない、請求項1~請求項8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記代替肉が、前記代替肉を調理するまでの期間を通して-35℃~20℃の温度に保たれ、前記調理するまでの期間の後で消費する前に、前記代替肉が少なくとも1分間にわたって少なくとも75℃の温度に加熱される、請求項1~請求項9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記代替肉を調理するまでの前記期間が1~14日間である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
塩化ナトリウム、塩化カリウム若しくは塩化カルシウム、グルタミン酸ナトリウム若しくはグルタミン酸カリウム及び硫酸カルシウムからなる群から選択される1又は複数の塩、並びに/あるいは
ヘム様顔料、レッドビート顔料、カロテン、カラメル、ビート果汁抽出物、トマト顔料、ダイコン顔料、パプリカ顔料及びアマランスからなる群から選択される1又は複数の顔料、並びに/あるいは
ジャガイモ繊維、サツマイモ繊維、ニンジン繊維、サイリウム繊維、竹繊維、大豆繊維、エンドウ繊維、リョクトウ繊維、タピオカ繊維、ココナッツ繊維、バナナ繊維、セルロース、耐性デンプン、耐性デキストリン、イヌリン、リグニン、キチン、ペクチン、β-グルカン及びオリゴ糖からなる群から選択される1又は複数の繊維、並びに/あるいは
天然デンプン、変性デンプン、セルロース誘導体、カラギーナン、アルギナート、寒天、コンニャク、キサンタン、及びペクチンからなる群から選択される1又は複数のテクスチャライザ、並びに/あるいは
デキストロース、リボース及びマルトデキストリンからなる群から選択される1又は複数の風味発生助剤、並びに/あるいは
スクロース、グルコース、フルクトース、シロップ、及び人工甘味料からなる群から選択される甘味料を含む1又は複数の香味料、を前記混合物中に含めることを更に含む、請求項1~請求項11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
水、
非変性パタチン、変性タンパク質、及び脂質を含み、
前記脂質がグリセロールの脂肪酸トリエステルを含む物質として定義され、前記脂質中の脂肪酸が、C12以下の鎖長を有する脂肪酸を2質量%未満含み、前記変性タンパク質が、塊茎、穀類若しくは堅果由来の変性植物タンパク質であるか、又は大豆タンパク質、ソラマメタンパク質、リョクトウタンパク質、キノコタンパク質、ヒヨコマメタンパク質及びレンチタンパク質からなる群から選択される変性植物タンパク質である、代替肉。
【請求項14】
前記脂肪酸が、C14以下の鎖長を有する脂肪酸を2質量%未満含む、請求項
13に記載の代替肉。
【請求項15】
前記脂肪酸の少なくとも98質量%が、C12以上の鎖長を有する脂肪酸である、請求項
13又は請求項
14に記載の代替肉。
【請求項16】
前記脂肪酸の少なくとも98質量%が、C14以上の鎖長を有する脂肪酸である、請求項
13~請求項
15のいずれか一項に記載の代替肉。
【請求項17】
前記脂質が、トウモロコシ油、大豆油、菜種油、ヒマワリ油、ブドウ種子油、落花生油、ゴマ油、オリーブ油、シアバター、ココアバター、及び米ぬか油からなる群の脂質のうちの1又は複数を含み、前記脂質が任意に水素化されていてもよい、請求項
13~請求項
16のいずれか一項に記載の代替肉。
【請求項18】
前記脂質が、脂質1kg当たり18mmol未満の遊離脂肪酸を含み、及び/又は全脂質に対するジアシルグリセロール及びモノアシルグリセロールの合計が10重量%未満である、請求項
13~請求項
17のいずれか一項に記載の代替肉。
【請求項19】
前記変性植物タンパク質が、ジャガイモタンパク質、サツマイモタンパク質、小麦タンパク質/グルテン、エンバクタンパク質、スペルトコムギタンパク質、ゴマ種子タンパク質、麻の種子タンパク質、又は大豆タンパク質である、請求項
13~請求項
18のいずれか一項に記載の代替肉。
【請求項20】
前記変性植物タンパク質が、テクスチャ化大豆タンパク質、テクスチャ化ジャガイモタンパク質及びテクスチャ化グルテンからなる群から選択されるテクスチャ化植物タンパク質である、請求項
13~請求項
19のいずれか一項に記載の代替肉。
【請求項21】
塩化ナトリウム、塩化カリウム若しくは塩化カルシウム、グルタミン酸ナトリウム若しくはグルタミン酸カリウム及び硫酸カルシウムからなる群から選択される1又は複数の塩、並びに/あるいは
ヘム様顔料、レッドビート顔料、カロテン、カラメル、ビート果汁抽出物、トマト顔料、ダイコン顔料、パプリカ顔料及びアマランスからなる群から選択される1又は複数の顔料、並びに/あるいは
ジャガイモ繊維、サツマイモ繊維、ニンジン繊維、サイリウム繊維、竹繊維、大豆繊維、エンドウ繊維、リョクトウ繊維、タピオカ繊維、ココナッツ繊維、バナナ繊維、セルロース、耐性デンプン、耐性デキストリン、イヌリン、リグニン、キチン、ペクチン、β-グルカン及びオリゴ糖からなる群から選択される1又は複数の繊維、並びに/あるいは
天然デンプン、変性デンプン、セルロース誘導体、カラギーナン、アルギナート、寒天、コンニャク、キサンタン、及びペクチンからなる群から選択される1又は複数のテクスチャライザ、並びに/あるいは
デキストロース、リボース及びマルトデキストリンからなる群から選択される1又は複数の風味発生助剤、並びに/あるいは
スクロース、グルコース、フルクトース、シロップ、及び人工甘味料からなる群から選択される甘味料を含む1又は複数の香味料
を更に含む、請求項
13~請求項
20のいずれか一項に記載の代替肉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
天然パタチンは、ゲル化剤又は乳化剤としてなど、様々な理由のために食品で使用され得る。脂質を更に含み、天然パタチンが脂質と接触している食品において、天然パタチンの使用は、特定の条件下でオフフレーバ(off-flavor)の形成を引き起こし得る。
【背景技術】
【0002】
パタチンは、リン脂質及びモノグリセリドを加水分解することが知られているが、一般にトリグリセリドに対する加水分解活性を有さない(例えば、Hirschberg et al,Eur.J.Biochem 2001,268,5037,Galliard et al.,Biochem.J.1971,121,379又はAndrews et al,Biochem J.1988,252,199を参照されたい)。しかしながら、パタチンは、短鎖脂肪酸を含むトリグリセリドに対して特異的であるが低い活性を有すると記載されており、これはチーズ風味の開発に有利である(国際公開第2014/007621号)。しかしながら、最も一般的な植物ベースの脂質は、そのような短鎖脂肪酸を含まない。実際、ほとんどの植物ベースの脂質は、一般に、C8以上の鎖長を有する脂肪酸のみを含む。したがって、現在策定されている洞察の前に、パタチンが中鎖から長鎖脂肪酸による脂質の加水分解をかなりの程度まで引き起こし得ることは認識されていない。
【0003】
ベーカリー製品、特にビーガンベーカリー製品は、天然パタチンを含む生地又はバッターをベースとし得る。この生地又はバッターは、一般に、脂質を更に含む。このような製品では、天然パタチンは、生地を結合させるか、又は焼成工程の前及びその間にバッターを発泡させ、エマルジョンを安定化させる機能を有する。焼成中、パタチンは変性するが、得られたベーカリー製品は、スポンジ構造及び弾性テクスチャを提供するためにベーカリー製品を固体の嗜好性食品に結合するので、変性タンパク質の存在から依然として利益を得る。しかしながら、生地又はバッターの調製中、並びに焼成中、天然パタチンの存在は、以前には認識されていなかった欠点であるオフフレーバの生成を引き起こし得る。
【0004】
代替肉は、天然パタチンが存在し得る食品の別のクラスである。このような製品では、天然パタチンはゲル化剤の機能を有し、製品に適切な固体外観を提供する。本質的に、代替肉は脂質も含む。
【0005】
2つの一般的なタイプの代替肉が区別され得る。第1のタイプの代替肉は、製造プロセス中に調理されるすぐに食べることができるタイプである。このタイプの製品は、そのまま、又は再加熱後に、最終消費者によって消費され得る。
【0006】
第2のタイプの代替肉は、「生タイプ」の代替肉である。生タイプの代替肉は、製造中に調理されていないという点で動物由来の肉を模倣している。消費前の加熱工程が必要である。
【0007】
代替肉が天然パタチンを含む場合、天然パタチンはオフフレーバを引き起こす可能性があり、これは本洞察の配合前には認識されていなかった問題である。この問題は、このような製品では、パタチンが脂質と接触している間、かなりの時間にわたって天然のままであるので、生タイプの代替肉に特に存在する。しかしながら、出来合い製品についても、調製中のパタチンの存在はオフフレーバを引き起こす可能性がある。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、天然パタチンが特定のタイプの脂質の存在下に存在する場合にオフフレーバを引き起こし得るという洞察に基づいている。本発明は、オフフレーバの形成を抑制する、水、天然パタチン及び特定のタイプの脂質を含む混合物を提供する。
【0009】
本発明者らは、脂質含有食品中の結合剤としての天然パタチンの使用が、脂質が天然パタチンと接触しているときはいつでもオフフレーバの形成をもたらし、(パタチンが変性しない限り)オフフレーバ形成がより高温でより速く起こることを見出した。
【0010】
したがって、オフフレーバ形成は、天然パタチンを含むか又はそれから調製される任意の食品について、調製、保存中及び焼成の第1段階で起こり得る。本発明者らは、特定のタイプの脂質のみを使用して食品を調製することによってオフフレーバ形成が防止され得ることを見出した。これにより、オフフレーバの減少及び/又は最長14日間又はそれを超える(凍結されている場合)などの長い貯蔵寿命を有する食品が得られる。
【0011】
本発明は、食品を製造するための方法を提供し、
a)水と、天然パタチンと、グリセロールの脂肪酸トリエステルを含む物質として定義される脂質と、を含む混合物を提供すること、及び
b)食品を製造すること、
を含み、
脂質中の脂肪酸は、2質量%未満のC12以下の鎖長を有する脂肪酸を含む。
【0012】
天然パタチンは、ジャガイモ(Solanum tuberosum)の塊茎などの塊茎に存在するタンパク質である。当業者は、塊茎中のどのタンパク質がパタチンと考えられ得るかを認識している。
【0013】
パタチンは、貯蔵タンパク質として塊茎中に天然に存在するタンパク質である。貯蔵タンパク質は、窒素、硫黄及び/又は炭素の貯蔵所として機能するタンパク質であり、植物が有害な生育条件の期間又は生育期の間を生き残ることを可能にする。貯蔵タンパク質は、一般に塊茎中の全タンパク質の40~50重量%の量で存在する。貯蔵タンパク質は、一般に、35~50kDa、好ましくは38~45kDaの分子量及び/又は4.8~5.6の等電点を特徴とし得る。分子量は、SDSページなどの一般的に知られている方法によって決定され得る。等電点はまた、例えば等電点電気泳動などの一般的に知られている方法によって決定され得る。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本文脈において、天然パタチンは、好ましくは、天然パタチンを含むタンパク質単離物の形態で混合物に提供される。好ましい実施形態では、天然パタチンを含むタンパク質単離物は、天然の塊茎タンパク質単離物、好ましくは天然のジャガイモタンパク質単離物である。当該天然の塊茎タンパク質単離物において、タンパク質は、乾燥物質に対して、好ましくは少なくとも75重量%、好ましくは少なくとも85重量%の量で存在する。
【0015】
好ましい実施形態では、天然のジャガイモタンパク質単離物などの天然の塊茎タンパク質単離物は、総タンパク質の重量%で、少なくとも35重量%、好ましくは少なくとも40重量%のジャガイモ貯蔵タンパク質を含む。35重量%~60重量%の総タンパク質に対するジャガイモ貯蔵タンパク質が存在する実施形態では、塊茎タンパク質単離物は、総塊茎タンパク質単離物と呼ばれ得る。
【0016】
更なる好ましい実施形態では、天然のジャガイモタンパク質単離物などの天然の塊茎タンパク質単離物は、総タンパク質の重量%で、少なくとも75重量%、好ましくは少なくとも80重量%のジャガイモ貯蔵タンパク質を含む。総タンパク質に対して、60重量%~85重量%のジャガイモ貯蔵タンパク質が存在する実施形態では、塊茎タンパク質単離物は、パタチンを含むHMW単離物と呼ばれ得る。
【0017】
更なる好ましい実施形態では、天然のジャガイモタンパク質単離物などの天然の塊茎タンパク質単離物は、総タンパク質の重量%で、少なくとも90重量%、より好ましくは少なくとも95重量%のジャガイモ貯蔵タンパク質を含む。総タンパク質に対して、90重量%~100重量%(100重量%を含む)のジャガイモ貯蔵タンパク質が存在する実施形態では、塊茎タンパク質単離物は、パタチン単離物と呼ばれ得る。パタチン単離物の一例は、Avebe製のSolanic 200である。
【0018】
天然パタチンは、ジャガイモ塊茎から、又は他のジャガイモ由来の加工流、例えばジャガイモジュース(例えば、ジャガイモデンプン製造の副産物として得られるジュース)、又はジャガイモ切断水(ジャガイモが、例えばフライ又はチップスとしての消費のために成形されているときに得られる加工水)から単離され得る。天然パタチンを単離するための特に便利な1つの方法が国際公開第2008/069650号に記載されているが、当業者は他の方法によって天然パタチンを得ることができる。更に、天然パタチンは市販されている。
【0019】
更に好ましい実施形態では、天然パタチンは、天然に存在する状態で使用される。すなわち、天然パタチンは、好ましくは、架橋又は錯化などによって修飾されていない。当業者に一般的に知られているように、天然パタチンは、定義により、非変性タンパク質であり、すなわち、天然パタチンは、その天然の生化学的機能(複数可)を果たすことができるパタチンである。したがって、天然パタチンは、明らかに変性せず、熱凝固又は酸凝固などの凝固に供されていない。
【0020】
天然パタチンは、0.1~25重量、好ましくは0.5~20重量%、より好ましくは0.75~15重量%などの任意の量で混合物中に存在し得る。より多量の天然パタチン並びにより高い温度は、より高いオフフレーバ形成をもたらし、このオフフレーバ形成は、本明細書で定義される脂質を適用することによって抑制又は排除され得る。
【0021】
水はまた、5~95重量%、好ましくは10~90重量%、より好ましくは15~85重量%の量などの任意の量で存在し得る。水の量は、当技術分野で周知のように、調製される食品のタイプによって変化する。
【0022】
混合物に含まれる脂質は、当該技術分野で知られているように、グリセロールの脂肪酸トリエステルを含む物質として定義される。グリセロールの脂肪酸トリエステルは、トリアシルグリセリド(TAG)、又はトリグリセリドとしても知られている。脂質という用語は、リン脂質又は糖脂質などの様々な他のグリセロールエステルを含むために使用されることがあるが、本文脈における脂質という用語は、グリセロールの脂肪酸トリエステル、すなわちグリセロール部分の3つ全てのヒドロキシル単位上の脂肪酸でエステル化されたグリセロールに基づく分子に限定される。
【0023】
当該脂質中の脂肪酸は、2質量%未満、好ましくは1.5質量%未満、より好ましくは1質量%未満、更により好ましくは0.5質量%未満のC12以下の鎖長を有する脂肪酸を含む。
【0024】
好ましい実施形態では、脂肪酸は、2質量%未満、好ましくは1.5質量%未満、より好ましくは1質量%未満、更により好ましくは0.5質量%未満のC14以下の鎖長を有する脂肪酸を含む。
【0025】
好ましい実施形態では、脂肪酸は、30質量%未満、好ましくは25質量%未満、より好ましくは20質量%未満、更により好ましくは15質量%未満のC16以下の鎖長を有する脂肪酸を含む。
【0026】
更に好ましい実施形態では、脂質は、脂肪酸の少なくとも92質量%、好ましくは少なくとも94質量%、より好ましくは少なくとも96質量%が、C16以上の鎖長を有する脂肪酸である物質である。
【0027】
更に好ましい実施形態では、脂質は、C10~C16脂肪酸の合計が総脂肪酸に対して35質量%未満、好ましくは25質量%未満、更により好ましくは18質量%である物質である。
【0028】
天然パタチンは、少なくともオフフレーバを引き起こすのに十分な程度まで、C10以上の鎖長を有する脂肪酸を含むいくつかの脂質に対して少なくともいくらかの活性を有することが見出されている。この活性は、C12以上の鎖長を有する脂肪酸を含むいくつかの脂質にも存在し、C14以上の鎖長を有する脂肪酸を含むいくつかの脂質にも存在する。C16以上の鎖長を有する脂肪酸を含む脂質であっても、オフフレーバを引き起こすのに十分な程度まで、パタチンによって加水分解され得る。
【0029】
したがって、本発明の根底にある洞察は、パタチンが、この活性がオフフレーバを引き起こす程度まで、C8~C16の鎖長を有するトリグリセリドに対して活性を及ぼすことである。
【0030】
パタチンの作用は加水分解性であり得るが、請求項1及び他の箇所で定義される脂質を適用することによって活性が抑制される、パタチンの別の、なお未知の酵素活性でもあり得る。天然パタチンを含むが請求項1とは異なる脂質を使用する食品におけるオフフレーバ形成の背後にある正確な機構は、現在のところ理解されていない。しかしながら、実施例は、本発明に従って食品を製剤化することがオフフレーバ形成を抑制することを示している。
【0031】
本文脈におけるオフフレーバは、「塗料」又は「嘔吐物」と記載され得る刺激臭を伴う、摂取時の長引く苦味として定義される。オフフレーバ形成を回避するために、請求項1及び他の場所に記載の脂質が使用され得る。
【0032】
オフフレーバは、好ましくは官能評価によって決定され得る。オフフレーバはまた、遊離脂肪酸の放出を測定することによって、及び/又はパラ-アニシジン値を測定することによって、モデル系において決定され得る。そのような場合、オフフレーバは、脂質のpAVが2以下、好ましくは1.5以下、更により好ましくは1以下に維持されること、及び/又は脂質からの遊離脂肪酸の放出が50mmol/kg油未満、好ましくは40mmol/kg油未満であることを条件として、存在しないと定義され得る。
【0033】
多くの好ましい脂質は、種子油、ナッツ油、又は果実油などの植物ベースの脂質である。異なる脂質の混合物も使用され得る。特に好ましい脂質は、トウモロコシ油、大豆油、菜種油、ヒマワリ油、ブドウ種子油、落花生油、ゴマ油、オリーブ油、シアバター、ココアバター、及び米ぬか油からなる群の脂質のうちの1又は複数を含む。任意に存在する実施形態では、脂質は部分的に水素化されていてもよい。
【0034】
脂質は、口語的に脂肪又は油と呼ばれることがある。本文脈における油は、20℃(大気圧下)で液体又は粘性である脂質である。液体又は粘性は、重力の影響下で流動する能力を反映する用語である。
【0035】
本文脈における脂肪は、室温(20℃)(大気圧下)で固体である脂質である。この文脈における固体は、支持体の非存在下で少なくとも24時間特定の形状を維持する能力として定義される。大気圧を超えて圧力が加えられると、固体脂質は形状を変化させる可能性があり、この変化した形状は、圧力が加えられた後、支持なしで少なくとも24時間維持され得る。
【0036】
混合物に供給される脂質は、可能な限り純粋であることが好ましい。すなわち、脂質中の遊離脂肪酸(「FFA」)の量は、好ましくは脂質1kg当たり18mmol未満、より好ましくは脂質1kg当たり9mmol未満、更により好ましくは脂質1kg当たり3mmol未満である。脂質中の遊離脂肪酸の量は、以下に記載されるように、化学滴定法によって決定され得る。遊離脂肪酸の量はまた、当技術分野で一般的に知られているように、HPLCによって決定され得る。
【0037】
追加的又は代替的に、混合物に提供される脂質中のジアシルグリセロール(「DAG」)及びモノアシルグリセロール(「MAG」)の総量は、全脂質に対して、好ましくは10重量%未満、より好ましくは6重量%未満、更により好ましくは4重量%未満である。脂質中のDAG及びMAGの量は、“Standard Methods for the Analysis of Oils,Fats and Derivatives”,1st supplement to the 7th edition(IUPAC,1987)に記載のカラムクロマトグラフィ又はキャピラリーガスクロマトグラフィによって測定され得る。
【0038】
本発明を使用して製造され得る食品には、水、天然パタチン及び他の場所で定義される脂質を含む混合物を含むか又はそれから調製された任意の食品が含まれる。
【0039】
本文脈において、オフフレーバが発生する機序に基づいて、2つのタイプの食品、天然パタチンが脂質と接触している長期間に起因してオフフレーバが発生する食品(「冷蔵」タイプの食品)と、天然パタチンが脂質と接触している短い熱ショックに起因してオフフレーバが発生する食品(「熱ショック」タイプの食品)と、が区別され得る。
【0040】
冷蔵タイプの食品において、天然パタチンが脂質と接触している長期間は、一般に、一定期間の貯蔵、好ましくは冷蔵である。貯蔵は、食品に対して能動的な工程が行われない任意の長期間を含む。したがって、貯蔵は、販売又は輸送前の貯蔵、ゲル化の期間、又は熟成、円熟若しくは発酵の期間のうちの1又は複数を含む、何らかの理由で食品を放置することを意味する。
【0041】
冷蔵対応の食品は、食品を製造する工程が-35℃~20℃の温度に冷却する工程を含む食品である。好ましい実施形態では、冷蔵タイプの食品は、冷却前に60℃を超える温度に加熱されていない。
【0042】
冷蔵タイプの食品は、水、パタチン及び脂質を含む食品であり、天然パタチンは一定域間の貯蔵中に脂質と接触しており、貯蔵期間中、パタチンは天然であり、それによってオフフレーバ形成を引き起こす可能性があり、このオフフレーバ形成は、本発明による脂質を選択することによって抑制される。
【0043】
好ましい冷蔵タイプの食品において、天然パタチンは、混合物中にゲル化剤として存在する。そのような場合、貯蔵中の温度は、好ましくは0~20℃、より好ましくは0℃~10℃、更により好ましくは0~5℃である。
【0044】
冷蔵タイプの食品の例は、代替肉、バッター、生地、チーズ、クリームチーズ、バター、ヨーグルト、ソース、ドレッシング、及びクリームであり、最も好ましくは植物ベース(ビーガン)のバッター、生地、チーズ、クリームチーズ、バター、ヨーグルト、ソース、ドレッシング、又はクリームである。
【0045】
ヒートショックタイプの食品は、食品を製造することが、食品を少なくとも75℃、好ましくは少なくとも125℃、より好ましくは少なくとも150℃の温度に少なくとも1分間、好ましくは少なくとも15分間加熱する工程を含む食品である。ヒートショックタイプの食品は、水、天然パタチン及び脂質の混合物から調製される食品であり、天然パタチンは脂質と接触しており、加熱中の温度上昇は、パタチンの変性及び付随する不活性化の前にオフフレーバ形成を引き起こす。
【0046】
ヒートショックタイプの食品の例は、一般に、マフィン、クッキー、ケーキ、パイ、マカロン、スポンジケーキ又はワッフルなどのベーカリー製品である。更に好ましいヒートショックタイプの食品は、クロケット、ナゲット、フィッシュフィンガ又はルピアなどのフライスナック(外皮及び内部充填物を有する製品であって、一般に、脂肪又は油中で150~200℃の温度に加熱することによって調製される製品)、最も好ましくは植物ベースの(ビーガン)フライスナックである。
【0047】
これらの2つのタイプの食品は、必ずしも相互に排他的ではなく、一部の食品では、オフフレーバ形成の両方の機構が関連する。室温で数時間~数日間熟成させた生地は、その後、焼成され得る。この場合、使用された脂質が本発明による脂質でない場合、焼成された生地は、両方の機構によるオフフレーバ形成を被る可能性がある。また、代替肉は、調理のために加熱される前に長期間にわたって低温で保存されるため、代替肉についても、両方のオフフレーバ形成機構が適用される。したがって、ベーカリー製品及び代替肉は、本発明のはるかに好ましい実施形態である。
【0048】
しかしながら、一般に、冷蔵タイプの食品は、本発明の脂質が適用されていない場合、食品中のオフフレーバ形成に関与する主な機構を特定することによって、ヒートショックタイプの食品から区別され得る。
【0049】
したがって、代替肉は、オフフレーバ形成が主に冷蔵期間中に起こり、短時間の調理/焼成期間が比較的少ないオフフレーバに寄与するため、冷蔵タイプの食品と考えられる。一方、マフィンなどのベーカリー製品は、焼成前の短時間のバッター調製中にオフフレーバ形成が比較的少なく、焼成期間中にオフフレーバ形成がより容易に起こるため、ヒートショックタイプの食品と考えられる。
【0050】
好ましい実施形態では、本発明の食品は、ベジタリアン又はビーガン食品、好ましくはビーガン食品である。これは、食品の製造中に導入される脂質が制御され得るという利点を有する。これは、ビーガン食品の製造中に、脂質が一般に、一般に周知の組成を有する単離及び/又は精製された植物ベースの脂質の形態で導入されるためである。肉、魚又は甲殻類を含む食品の場合、肉、魚又は甲殻類は脂質に寄与し、その組成はあまり知られていない可能性があり、及び/又は本発明によらない脂質に寄与する。
【0051】
本発明の食品は、問題の食品のタイプの製造について一般的に知られている方法によって製造され得る。本明細書に記載の個々の食品の製造に関する共通の一般知識を参照されたい。
【0052】
食品を製造することは、好ましくは、成形、混合、冷却、加熱、発酵、更なる成分との組み合わせ及び/又は一定期間の貯蔵、好ましくは15℃未満、好ましくは10℃未満の温度での冷蔵、の工程のうちの1又は複数を含む。これは当技術分野で一般的に知られている。
【0053】
代替肉
一実施形態では、本発明は、代替肉を製造するための方法を提供し、
a)水、変性植物タンパク質、天然パタチン、グリセロールの脂肪酸トリエステルを含む物質として定義される脂質を含む混合物を提供すること、
b)代替肉を成形すること、及び
c)代替肉を-35℃~20℃の温度に冷却すること、
を含み、
当該脂質中の脂肪酸が、C12以下の鎖長を有する2質量%未満の脂肪酸を含む。上記の本発明で使用され得る脂質の更なる説明が参照される。
【0054】
代替肉は、本文脈において、動物由来の肉に似ているが、主に植物ベースの材料を使用して調製される製品である。したがって、代替肉は、ベジタリアンに適しており、使用される実際の原料に応じて、ビーガンの生活様式にも適し得る。
【0055】
代替肉は、哺乳動物又は鳥由来の肉を含まないが、エビ又は貝類などの魚又は甲殻類由来の肉を含み得、更に、ミルク、クリーム又は卵などの非肉動物由来製品(動物の乱切りを必要としない製品)を含み得る代替肉である。好ましい実施形態では、ベジタリアン用代替肉は、哺乳動物、鳥、魚又は甲殻類に由来する肉を含まないが、ミルク、クリーム又は卵などの非肉動物由来製品を含んでもよい。
【0056】
ビーガン用代替肉は、いずれの動物由来の製品を含まない代替肉である。ビーガン代替肉は、植物ベースの成分のみを含む。
【0057】
好ましくは、代替肉は、バーガー、ミートボール、ソーセージ、挽肉、シュニッツェル、焼き串、ナゲット、リブ、フィレット又は肉塊の非肉類似物である。
【0058】
本発明の代替肉を得るために、最初に、水、変性タンパク質、天然パタチン及び脂質を含む混合物が提供される。好ましくは、混合物は、混合物の総重量に対して、少なくとも20重量%、より好ましくは30~85重量%、更により好ましくは48~65重量%、更により好ましくは51~61重量%の水を含む。
【0059】
変性タンパク質は、(特定の野菜製品の場合)魚又は甲殻類由来タンパク質を含む任意の非肉タンパク質であり得る。しかしながら、好ましくは、変性タンパク質は変性植物タンパク質である。変性タンパク質は、混合物の総重量に対して、好ましくは3~35重量%、好ましくは10~30重量%、より好ましくは15~26重量%、更により好ましくは18~24重量%の量で存在する。
【0060】
変性植物タンパク質は、好ましくは塊茎、穀類、堅果(nut)又はマメ科植物に由来するタンパク質である。特に好ましい実施形態では、タンパク質は、大豆タンパク質、エンドウタンパク質、小麦タンパク質/グルテン、ジャガイモタンパク質、ソラマメタンパク質、リョクトウタンパク質、麻の種子タンパク質、キノコタンパク質、ゴマ種子タンパク質、サツマイモタンパク質、ヒヨコマメタンパク質、レンチタンパク質、エンバクタンパク質及びスペルトコムギタンパク質、最も好ましくは大豆タンパク質、エンドウタンパク質からなる群から選択される。変性した植物タンパク質は、好ましくは、酸又は熱凝固によって得られるタンパク質などの凝固タンパク質である。当業者は、一般に公知の方法によって変性植物タンパク質を得ることができる。
【0061】
はるかに好ましい実施形態では、変性植物タンパク質は、テクスチャ化植物タンパク質である。テクスチャ化植物タンパク質は周知であり、市販されている。テクスチャ化植物タンパク質は、押出しの工程に供された植物ベースのタンパク質であり、これは、タンパク質に肉様の繊維構造を提供する。はるかに好ましい実施形態では、テクスチャ化植物タンパク質は、テクスチャ化エンドウ豆タンパク質、テクスチャ化大豆タンパク質、テクスチャ化ジャガイモタンパク質又はテクスチャ化グルテンである。
【0062】
天然パタチンは、混合物の総重量に対して、好ましくは1~15重量%、好ましくは2~10重量%、より好ましくは2.5~7.5重量%の量で混合物中に存在する。
【0063】
好ましい実施形態では、天然パタチンは、混合物中及び最終代替肉中の唯一の天然タンパク質である。これは、良好な結合強度を提供するという利点を有する。本文脈において、パタチンが唯一の天然タンパク質であることは、混合物が、全ての天然タンパク質に対して、60重量%以上、好ましくは少なくとも90重量%以上のジャガイモ貯蔵タンパク質を含むことを意味する。したがって、パタチンが、パタチンを含むHMW単離物として、又は好ましくは、パタチン単離物として提供される実施形態は、天然パタチンが唯一の天然タンパク質として存在する実施形態であると考えられる。特に、混合物は、好ましくは天然プロテアーゼ阻害剤を含まない。
【0064】
本明細書で定義される脂質は、製造と消費との間の期間の貯蔵時に、代替肉がオフフレーバを発生しないという利点をもたらすことが見出された。更に、本明細書で定義される脂質は、消費前の代替肉の加熱中のオフフレーバ形成を抑制することが見出された。
【0065】
脂質は、混合物の総重量に対して、好ましくは3~25重量%、好ましくは5~18重量%、より好ましくは8~15重量%の量で存在する。
【0066】
好ましくは、代替肉において、脂質は、-30℃より高い、より好ましくは-20℃より高い、更により好ましくは-10℃より高い、更により好ましくは-5℃より高い融点を有する脂肪又は油である。本文脈における適切な脂質の融点はまた、例えば教科書から一般に知られているが、脂質をゆっくりと加熱し、脂質が融解する温度を決定することによって実験的に決定され得る。
【0067】
好ましい実施形態では、本発明の脂質は、-35℃~20℃、好ましくは-18℃~15℃、より好ましくは0℃~10℃の範囲内の温度で固体である脂質である。好ましくは、この実施形態では、脂質は、20℃より高い、より好ましくは25℃より高い、更により好ましくは30℃より高い融点を有する。常温で固体の脂質を用いることにより、代替肉に肉のような外観が与えられ得、代替肉の形状がより良好に維持されるという利点を有する。
【0068】
噛むこと及び口当たりに悪影響を及ぼさないために、脂質は、好ましくは60℃未満、好ましくは50℃未満、より好ましくは45℃未満、更により好ましくは40℃未満の融点を有する。
【0069】
したがって、-35℃~20℃の温度範囲内で固体である脂質の融点は、好ましくは20~60℃、より好ましくは25~50℃、更により好ましくは30~45℃、最も好ましくは30~40℃の範囲内である。
【0070】
混合物は、一般に、任意の従来の手段によって調製されてもよく、成分を任意の順序で混合することによって調製されてもよい。好ましい実施形態では、変性タンパク質は脂質の一部と混合し、その後、脂質の第2の部分が添加されて、穏やかな圧力を加えることによって成形され得る均質な塊を得る。
【0071】
変性タンパク質がテクスチャ化植物タンパク質である場合、テクスチャ化タンパク質は、混合物を提供する前に水和されることが好ましい。そのような実施形態では、テクスチャ化された植物タンパク質は、水和を達成するために最初に水と混合され、その後、上で特定されるように、任意の他の成分、並びに脂質又は脂質の一部と混合される。混合物は、好ましくは、様々な成分の均質な混合物である。
【0072】
好ましい実施形態では、混合物は、味、外観、テクスチャ、舌触りなどを高めるために、様々な他の成分を更に含んでもよい。好ましくは、混合物は、塩化ナトリウム、塩化カリウム又は塩化カルシウム、グルタミン酸ナトリウム又はグルタミン酸カリウム及び硫酸カルシウムからなる群から選択される塩などの1又は複数の塩を含む。塩は、混合物の総重量に対して、例えば0.1~5重量%、好ましくは0.5~2.5重量%の量で存在し得る。はるかに好ましい実施形態では、混合物は、混合物の総重量に対して、0.1~3重量%、好ましくは0.5~2重量%の塩化ナトリウムを含む。
【0073】
また、混合物は、ヘム様顔料、レッドビート顔料、カロテン、カラメル、ビート果汁抽出物、トマト顔料、ダイコン顔料、パプリカ顔料及びアマランスなどの顔料を含んでもよい。顔料の量は、使用される顔料のタイプによって異なり、日常的な実験によって決定され得る。
【0074】
好ましい実施形態では、混合物は、ジャガイモ繊維、サツマイモ繊維、ニンジン繊維、サイリウム繊維、竹繊維、大豆繊維、エンドウ繊維、リョクトウ繊維、タピオカ繊維、ココナッツ繊維、バナナ繊維、セルロース、耐性デンプン、耐性デキストリン、イヌリン、リグニン、キチン、ペクチン、ベータグルカン、及びオリゴ糖からなる群から選択されるような1又は複数の繊維、特に食物繊維を更に含む。繊維の量は、混合物の総重量に対して、0.1~10重量%、好ましくは0.5~7.5重量%、より好ましくは1~5重量%であり得る。
【0075】
また、天然デンプン、変性デンプン、セルロース誘導体、カラギーナン、アルギナート、寒天、コンニャク、キサンタン、及びペクチンなどのテクスチャライザが、混合物の総重量に対して、好ましくは1~10重量%、好ましくは1.5~5重量%の量で混合物に含まれてもよい。
【0076】
更に、例えばデキストロース、リボース及びマルトデキストリンなどのメイラード活性成分などの風味発生助剤を含むことが好ましい。風味発生助剤は、混合物の総重量に対して、0.1~5重量%、好ましくは0.2~2重量%の量で存在し得る。
【0077】
また、例えばスクロース、グルコース、フルクトース、シロップ、及び人工甘味料からなる群から選択される甘味料などの他の香味料も混合物中に存在し得る。
【0078】
好ましい実施形態では、混合物、又は得られた代替肉は、アルギネート、寒天、コンニャク、キサンタン、ペクチン又はカラギーナンなどの親水コロイドを含まない。更に好ましい実施形態では、混合物、又は得られた代替肉は、セルロース誘導体、特にメチルセルロース又はカルボキシメチルセルロースなどのゲル化非デンプン炭水化物を含まない。更に好ましい実施形態では、混合物又は得られた代替肉は、変性デンプンを含まない。
【0079】
混合物の天然パタチン、脂質及びタンパク質の成分は、様々な重量比で存在し得る。天然パタチン:脂質の重量比は、好ましくは1:1~1:5、より好ましくは1:1~1:3である。脂質:変性タンパク質の重量比は、好ましくは1:1~1:5、より好ましくは1:1~1:3である。パタチン:タンパク質の重量比は、好ましくは1:1~1:10、より好ましくは1:2~1:6である。したがって、パタチン:脂質:タンパク質の重量比は、好ましくは順に、1:(1~3):(2~6)、好ましくは1:(1.5~2.5):(3~4)である。混合物の残りは、他の箇所で概説されるように、水及び任意の更なる成分である。
【0080】
その後、上述の混合物が任意の形状に成形される。形状は、代替肉のタイプによって決定される。消費者の好みを引き付けるために、任意の形状が使用され得るが、選択された形状は、好ましくは、問題の代替肉のタイプに慣習的である。例えば、バーガーを円板状に成形し、ソーセージが円筒状で、ミートボールが球状で提供され得る。
【0081】
成形は、任意の従来の手段によって達成され得る。しかしながら、好ましくは、成形は、混合物を選択された形状の型に導入することによって達成される。好ましくは、混合物は、選択された型に導入され、続いて動物由来の肉と同様の緻密な構造を達成するようにプレスされる。
【0082】
その後、混合物は、-35℃~20℃、好ましくは-18~15℃、より好ましくは0℃~10℃、より好ましくは0~5℃の温度に冷却される。冷却すると、天然パタチンがゲル化するため、型がなくても代替肉の形状を維持される効果がある。冷却は、任意の従来の手段によって達成され得る。冷蔵が好ましい。冷却が0℃未満の温度に行われる場合、最初に0~20℃の温度に冷却してパタチンをゲル化させ、続いてより低い温度に冷却する、2工程で冷却が行われることが好ましい。
【0083】
はるかに好ましい実施形態では、本発明の方法は、生タイプの代替肉をもたらす。この実施形態では、代替肉は、冷却前に60℃を超える温度に加熱されない。代わりに、代替肉は冷却され、一般に、代替肉を調理するまでの期間を通して、-35℃~20℃、好ましくは-18~15℃、より好ましくは0℃~10℃、より好ましくは0~5℃の温度に維持される。この期間は、代替肉の製造とその消費との間の期間である。この期間において、代替肉は、製造場所から様々な小売店、最終消費者に輸送される。この期間は、好ましくは1-14日間である。これは、冷却が一般に0℃~15℃の温度に維持される実施形態において特に当てはまる。
【0084】
冷却が0℃未満の温度でより長い時間維持される実施形態では、調理までの期間は、温度が0℃未満であった時間だけ延長され得る。温度が0℃未満に維持される時間は凍結時間と呼ばれ、凍結時間は、1日~3年、好ましくは1週間~1年などの任意の時間であり得る。
【0085】
代替肉が最終消費者に到着したときにのみ、バーガーは、少なくとも75℃の温度で少なくとも1分間調理される。
【0086】
この方法が実行されて、すぐに食べることができるタイプの代替肉を得る場合、成形後にバーガーパテが調理される。この場合の調理は、少なくとも75℃の温度まで少なくとも1分間加熱することを意味する。
【0087】
本発明は更に、水、天然パタチン、変性タンパク質及び脂質を含む代替肉を提供し、この脂質は、グリセロールの脂肪酸トリエステルを含む物質として定義され、当該脂質中の脂肪酸は、2質量%のC12以下の鎖長を有する脂肪酸を含む。好ましくは、脂質中の脂肪酸は、C14以下の鎖長を有する2%質量未満の脂肪酸を含む。更に好ましくは、脂質中の脂肪酸は、C16以下の鎖長を有する30質量%未満の脂肪酸を含む。
【0088】
代替肉は、成分水、天然パタチン、変性タンパク質及び脂質を含む。これらの成分は上で記載されているが、方法の文脈における記載された特徴及び定義は、本発明の代替肉に等しく関連する。混合物を提供する上記の説明は、パタチンが変性する場合、少なくとも加熱前ではなく、全ての異なる成分の量及び特徴が調製方法によって影響されないので、最終的な代替肉の組成を推測することを可能にする。
【0089】
したがって、全ての詳細を繰り返すことなく上記を要約すると、脂質中の脂肪酸の少なくとも92質量%は、C16以上の鎖長を有する脂肪酸である。多くの好ましい脂質は、30質量%未満の脂肪酸がC10~C16の鎖長を有する脂肪酸である、脂質である。代替肉中の脂質は、好ましくは、トウモロコシ油、大豆油、菜種油、ヒマワリ油、ブドウ種子油、落花生油、ゴマ油、オリーブ油、シアバター、ココアバター、及び米ぬか油からなる群の脂質のうちの1又は複数を含み、脂質は任意に水素化されていてもよい。
【0090】
変性植物タンパク質は、好ましくは塊茎、穀類、堅果又はマメ科植物に由来するタンパク質である。特に好ましい実施形態では、タンパク質は、大豆タンパク質、エンドウタンパク質、小麦タンパク質/グルテン、ジャガイモタンパク質、ソラマメタンパク質、リョクトウタンパク質、麻の種子タンパク質、キノコタンパク質、ゴマ種子タンパク質、サツマイモタンパク質、ヒヨコマメタンパク質、レンチタンパク質、エンバクタンパク質及びスペルトコムギタンパク質、最も好ましくは大豆タンパク質、エンドウタンパク質からなる群から選択される。好ましくは、タンパク質は、テクスチャ化植物タンパク質である。
【0091】
代替肉は、脂質1kg当たり18mmol未満の遊離脂肪酸を含み、代替的に又は追加的に、全脂質に対して10重量%未満のジアシルグリセロール及びモノアシルグリセロールの合計を有する。
【0092】
代替肉は、様々な任意成分、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム若しくは塩化カルシウム、グルタミン酸ナトリウム若しくはグルタミン酸カリウム及び硫酸カルシウムからなる群から選択される塩などの1又は複数の塩、並びに/あるいは、ヘム様顔料、レッドビート顔料、カロテン、カラメル、ビート果汁抽出物、トマト顔料、ダイコン顔料、パプリカ顔料及びアマランスからなる群から選択される顔料などの1又は複数の顔料、並びに/あるいはジャガイモ繊維、サツマイモ繊維、ニンジン繊維、サイリウム繊維、竹繊維、大豆繊維、エンドウ繊維、リョクトウ繊維、タピオカ繊維、ココナッツ繊維、バナナ繊維、セルロース、耐性デンプン、耐性デキストリン、イヌリン、リグニン、キチン、ペクチン、β-グルカン及びオリゴ糖からなる群から選択される繊維などの1又は複数の繊維、並びに/あるいは天然デンプン、変性デンプン、セルロース誘導体、カラギーナン、アルギナート、寒天、コンニャク、キサンタン、及びペクチンからなる群から選択されるテクスチャライザなどの1又は複数のテクスチャライザ、並びに/あるいはデキストロース、リボース及びマルトデキストリンからなる群から選択される1又は複数の風味発生助剤、並びに/あるいはスクロース、グルコース、フルクトース、シロップ、及び人工甘味料からなる群から選択される甘味料などの1又は複数の香味料を更に含む。
【0093】
本発明の代替肉は、好ましくは、唯一の天然タンパク質としてパタチンを含む。すなわち、代替肉は、好ましくは、例えばジャガイモ由来プロテアーゼ阻害剤又は他のタイプの天然タンパク質などのパタチン以外の他のタイプの天然タンパク質を含まない。
【0094】
ベーカリー製品
別の実施形態では、食品はベーカリー製品である。この実施形態では、方法は、好ましくは、食品を少なくとも75℃、好ましくは少なくとも125℃、より好ましくは少なくとも150℃の温度に少なくとも1分間、好ましくは少なくとも15分間加熱する工程を含む。食品がベーカリー製品である本発明による方法において、方法は、
a)水、穀粉、天然パタチン及び脂質を含む混合物を提供すること、
b)混合物を均質化し、任意に熟成させること、及び
c)混合物を少なくとも125℃の温度に少なくとも15分間加熱すること、
を含む。
【0095】
混合物は、問題のベーカリー製品のタイプに適した量の水を含み得る。ベーカリー製品の調製に関する一般知識が参照される。ベーカリー製品がバッターから調製される場合、混合物は一般に液体から粘性であり、10~40重量%、好ましくは15~35重量%、より好ましくは20~30重量%の量の水を含む。ベーカリー製品が生地から調製される場合、混合物は一般に、5~30重量%、好ましくは10~25重量%などのより少ない水を含む。
【0096】
ベーカリー製品を製造するための混合物は、穀粉を更に含む。穀粉は、当技術分野で知られている、問題のベーカリー製品を製造するのに適した任意のタイプの穀粉であり得る。好ましいタイプの穀粉は、小麦粉、トウモロコシ粉、タピオカ粉、大豆粉、米粉、豆粉、エンドウ粉、ジャガイモ粉、エンバク粉、ミレット粉、モロコシ粉、好ましくは小麦粉又はトウモロコシ粉である。ベーカリー製品を製造するのに適した穀粉が市販されている。
【0097】
ベーカリー製品を調製するための混合物は、天然パタチンを更に含む。この文脈に適した天然パタチンは、他の場所で定義されている。本明細書で定義されるベーカリー製品の製造において、パタチンは加熱工程中に変性する。しかしながら、オフフレーバは、パタチン変性の前の加熱工程中に発生し、本発明は、このオフフレーバ形成を抑制する混合物を提供する。
【0098】
ベーカリー製品を調製するための混合物は、脂質を更に含む。脂質もまた、他の場所で定義されている。脂質を混合物に提供することにより、加熱工程中のオフフレーバ形成が抑制される。
【0099】
ベーカリー製品を調製するための混合物は、更に、問題のベーカリー製品のタイプに従来の追加の成分を含んでもよい。ベーカリー製品の製造に関する一般的な知識が参照される。
【0100】
好ましい実施形態では、混合物は砂糖を含み得る。砂糖が存在する場合、砂糖は5~35重量%、好ましくは10~30重量%、より好ましくは15~25重量%の量で存在し得る。
【0101】
更に好ましい実施形態では、混合物は酵母を含み得る。酵母は、好ましくは熟熟成された生地からのベーカリー製品の製造に特に適している。
【0102】
他の好ましい実施形態では、混合物は、膨張剤を含んでもよい。適切な膨張剤及び適切な使用量は、当技術分野で一般的に知られている。好ましい膨張剤は炭酸水素ナトリウムであり、これは混合物中に0.1~2重量%の量で存在し得る。
【0103】
更なる従来の成分は、塩化ナトリウム及び/又は塩化カリウムなどの塩であり得、0.1~2重量%の量で存在し得る。
【0104】
更に、混合物は、当技術分野で知られているように、様々な既知の香味料及び添加剤を含んでもよい。香味料の例には、ココア、バニラ抽出物、甘味料、又は様々な果物、野菜又は肉様香味料が含まれる。添加剤は、一般に知られているように、乳化剤、安定剤及び/又は着色剤を含み得る。
【0105】
更に、従来の成分は、固形食料品などの食料品を含み得、その中で、当技術分野で知られているように、分割された若しくは完全な果実、例えば、分割されたリンゴ片、完全な又は砕いたベリー又はレーズン、又は分割された肉、野菜、チョコレート、チーズなどを含み得る。ミルク、バター又はクリームなどの液体又は粘性食料品も使用され得る。食料品を含めることは、パイ、クッキー又はマフィンなどのベーカリー製品の製造において特に好ましい。
【0106】
その後、ベーカリー製品の製造に関する従来の知識に従って、混合物を均質化し、任意に熟成させる。均質化は、混合、通気、混練、ホイッピングを含んでもよく、1分~30分などの適切な生地又はバッターを調製するのに必要な任意の時間にわたって行われてもよい。
【0107】
熟成は、0~40℃、好ましくは2~36℃の温度などでの放置期間を含み得る。この期間は、当技術分野で知られているように、例えば30分~300分であってもよい。
【0108】
熟成の工程は、例えば、混合物が酵母を含む場合に好ましく、この場合、熟成中の温度は、好ましくは20~40℃、より好ましくは25~36℃である。
【0109】
熟成の工程は、天然パタチンがゲル化剤として存在する場合など、混合物が増加した粘度を得る場合に更に好ましい。そのような場合、熟成中の温度は、好ましくは0~20℃、より好ましくは0℃~10℃、更により好ましくは0~5℃である。
【0110】
続いて、均質化され、任意に熟成された混合物が焼成して、ベーカリー製品を得る。焼成は、当技術分野で知られているように、問題のベーカリー製品のタイプに適した加熱工程によって達成される。加熱は、少なくとも15分間、少なくとも125℃、好ましくは少なくとも150℃、より好ましくは少なくとも175℃の温度までである。
【0111】
加熱工程中、混合物は、ベーカリー製品の製造において従来のいくつかの変化を受け、パタチン変性を受ける。パタチンの変性は、焼成中の混合物のコア温度が徐々にしか上昇しないため、ベーカリー製品の表面温度の加熱よりも遅い速度で起こる。一般に、ベーカリー製品のコア温度は焼成期間中に100℃を超えて上昇せず、その結果、パタチンは、焼成期間の大部分の間、オフフレーバ形成をもたらすのに十分な程度まで少なくとも部分的に天然のままである。このオフフレーバ形成は、本発明による脂質を選択することによって回避される。
【0112】
はるかに好ましい実施形態では、混合物は動物由来成分を含まない。このような実施形態では、ベーカリー製品は、1又は複数の植物ベースの脂質のみを含むビーガンベーカリー製品である。動物由来成分は、例えば、当該分野で公知のように、ミルク、クリーム及び卵を含む。
【0113】
特に好ましいタイプのベーカリー製品の1つは、マフィンである。この実施形態では、混合物はバッターであり、このバッターは10~40重量%、好ましくは15~35重量%、より好ましくは20~30重量%の水を含み得る。混合物は、穀粉、好ましくは15~35重量%、20~30重量%の小麦粉を更に含む。マフィンを製造するための混合物中の脂質は、15~35重量%、好ましくは20~30重量%の量で存在する。
【0114】
本発明の方法によって得られるベーカリー製品、中でもマフィンは、一般に概説された割合で、本方法について上に列挙された成分を含む。しかしながら、混合物は、パタチンの変性、穀粉のゲル化、炭酸水素ナトリウムの分解などの一般的な知識に従って様々な方法によって加熱工程によって変更され、上記の方法によって得ることができる本発明の食品が得られる。
【0115】
明確化及び簡潔な説明のために、特徴は、同じ又は別個の実施形態の一部として本明細書に記載されているが、本発明の範囲は、記載された特徴の全て又は一部の組合わせを有する実施形態を含み得ることが理解されよう。
【実施例】
【0116】
化学物質
使用されるパタチンは市販されている(Solanic 200(登録商標),Avebe)。ジャガイモ繊維はAvebe製のPaselli FPであった。
【0117】
室温で固体である脂質は、100%純粋なパーム油(KTC)、100%レッドパーム油(Aman Prana)、水素化菜種油、市販の植物油A、市販の植物油B、市販の油パームステアリンフレーク及び市販のシアバターであった。
【0118】
20℃で液体又は粘性である脂質はヒマワリ油(Reddy)、Olio di Sansa di Oliva(オリーブ油,Kalliston)、トウモロコシ油(Olitalia)、大豆油(Levo)、ブドウ種子油(Saveurs de Lapalisse)、菜種油(Your Organic Nature)、100%純ゴマ油(Chee Seng)、落花生油(Heuschen&Schrouff)及びライスオイル(Alesie)であった。
【0119】
実験におけるテクスチャ化植物タンパク質は、テクスチャ化大豆タンパク質:Soprotex N(Barentz)であった。
【0120】
乳化用機器
実験が「乳化」を示す場合、IKA製の、T18N(10g又は19g)分散ツールを有するT18 Ultraturrax、又はT25N(8g)分散ツールを有するT25 Ultraturraxを使用した。2タイプの装置による結果は同一である。更に、VWR製のAnalogボルテックスミキサーを使用し、Thermo Scientific製のMultifuge 1S-R又はX3Rベンチトップ遠心分離機を使用した。秤量には、Satorius製のBP3100S天秤を使用した。
【0121】
脂質とのパタチンのインキュベーション及び脂質の抽出
脱塩水中3.3%のパタチン溶液を調製した。固体形態で使用したパームステアリンフレークを除いて、固体脂質を50又は60℃で溶融した。脂質を1:1(w/w)の比でパタチン溶液又は脱塩水に添加し、これを対照として用いた。パームステアリン片を除いて、溶液を約10.000rpmで1分間、Turraxによって混合した。次いで、脂肪酸の放出及び脂肪の酸化が起こり得るように、溶液を穏やかに振とうしながら室温で一晩放置した。
【0122】
その後、ヘキサンを2グラムの溶液当たり約5mlの量で加え、試料を30分の時間枠で数回ボルテックスして、脂質を水相から抽出した。続いて、遠心分離(5分、4700rpm、振出し)により層を分離した。ヘキサン層(最上層)を遊離脂肪酸及び/又はpAVの決定に使用した。特に指示がない限り、上記のプロトコルに従った。
【0123】
遊離脂肪酸形成の決定
パタチンは、脂肪酸とグリセロールコアとの間のエステル結合を切断し、遊離脂肪酸を生成する。滴定を使用して、ヘキサン抽出後のパタチンと脂質との混合物の遊離脂肪酸含有量を決定した。この方法は、Cyberlipid Center(Leray)によって公開されている化学滴定法に基づく。
【0124】
溶媒混合物(エタノール/tert-ブチルメチルエーテル、1/1、v/v)を調製し、フェノールフタレイン溶液10mlを添加した。滴定剤として、エタノール溶液中の10mMのKOHを調製した。油相のヘキサン層をガラスピペットでキャップ付き100mlエルレンマイヤーに移した。溶媒混合物を添加して、約30~50mlの溶液を得た。溶液を時期撹拌器で撹拌しながら滴定剤を指示薬の終点まで添加した(数秒間持続する薄紫色)。添加された滴定剤の量は、滴定剤添加前後にエルレンマイヤーを秤量して決定した。重量を使用して、使用されたmmolアルカリ/kg油を計算した。ブランクについて値を補正した。
【0125】
【0126】
式中、m滴定剤は、g単位で試料に添加された滴定剤の質量であり、M滴定剤は、mmol KOH/g単位の滴定剤のモル質量であり、m油は、g単位の試料中の油の質量である。
【0127】
脂質のパラアニシジン値(pAV)の決定
二次酸化生成物は、the American Oil Chemists Society(AOCS,2004,Official method Cd.18-90 in:Official methods and recommended practices of the American Oil Chemists Society)の方法に従ってパラ-アニシジン価(pAV)を測定することによって決定した。この方法は、脂肪アルデヒド、特に不飽和アルデヒドを検出する。p-アニシジン値は、溶媒とパラ-アニシジン試薬(20mMパラ-アニシジン、SigmaAldrich A88255)の混合物100mL中に1.00gの油を含む溶液の1cmキュベット中で、350nmで測定した光学密度の100倍として定義される。
【0128】
ガスクロマトグラフィによる脂肪酸組成の決定
脂質の脂肪酸組成は、完全な脂質加水分解及び脂肪酸のメチルエステルへの変換に基づいて、GCによって決定した。
【0129】
約5mgの脂質試料を20mlガラスチューブに秤量し、そこに50MのNaOHを含有するメタノール2mlを添加した。チューブを閉じ、ブロックヒーター中、70℃で30分間インキュベートした。室温に冷却した後、MeOH中20%のBF3試薬3mlをチューブに添加し、脂肪酸のメチル化を行って脂肪酸メチルエステル(FAME)を得た。
【0130】
試料を室温に冷却し、その後、5mlの飽和NaCl水溶液及び2.5mlのn-ヘキサンを添加した。チューブを閉じ、1分間ボルテックスし、試験管回転子で15分間混合した。上部ヘキサン層から2ml採取し、これをGCに移した。
【0131】
【0132】
実施例1:様々な脂質の脂肪酸組成の決定
示されるように脂質を購入した。脂質の脂肪酸組成を、上記のプロトコルに従って決定した。結果を表1に示す。
【0133】
【0134】
実施例2:天然パタチンへの曝露時の脂質からの遊離脂肪酸の放出。
パタチンの存在下での異なる脂質の安定性を評価するために、一連のエマルジョンを、33グラム/リットルのパタチンのデミウォーター溶液及び等しい重量の脂質から調製した。使用前に脂肪を溶融し、油をそのまま使用した。
【0135】
【0136】
脂質及び水を、10krpmで1分間操作するultraturrax(T18N分散ツールを備えたT18 Ultraturrax)によって乳化し、これらのエマルジョンを周囲温度(20℃±0.2℃)又は40℃のいずれかで1日、穏やかに撹拌しながらインキュベートした。ブランクを室温で測定した。
【0137】
次いで、油の遊離脂肪酸含有量を記載の滴定によって決定した。pAVも決定した。結果を表2に示す。
【0138】
表2の結果は、全ての場合において、より高いインキュベーション温度がより高い遊離脂肪酸含有量をもたらすことを示しており、これは代替肉における遊離脂肪酸発生を確立するための加速試験として役立つ。更に、これは、一般に食品において、より高い調製温度がより速い遊離脂肪酸発生をもたらすことを示している。高い遊離脂肪酸含有量は、例えば遊離脂肪酸の存在によって、又は遊離脂肪酸の更なる酸化によって、異味を引き起こす可能性がある。
【0139】
実施例3:様々な脂質を用いて調製したパタチン含有エマルジョンにおけるオフフレーバ形成
エマルジョンを、1:2のパタチン溶液:脂質重量比における脂質の乳化によって、10重量%パタチン水溶液から調製した。エマルジョンは、訓練された感覚テスターのパネルによる感覚試験によってオフフレーバ形成について試験される。試験は、調製直後及び室温で2日間貯蔵した後、加速冷蔵期間を模倣して行った。結果を表3に示す。
【0140】
結果は、本文で指定された脂肪酸含有量を有する脂質が調製直後にオフフレーバをもたらさず、貯蔵に対して安定であることを示す。この定義と一致しない脂質は、調製直後に深刻なオフフレーバをもたらし、貯蔵すると更に悪化する。
【0141】
【0142】
実施例2及び3を組み合わせた結果に基づいて、pAVが2以下、好ましくは1.5以下、更により好ましくは1以下に維持されるならば、オフテイストが発生しないと結論付けることができる。更に、遊離脂肪酸の放出が一般に50mmol/kg油未満、好ましくは40mmol/kg油未満であることを条件として、オフテイストが発生しないと結論付けることができる。
【0143】
実施例4:様々な脂質で調製したパタチン結合代替肉におけるオフフレーバ形成
様々な脂質を使用して一連の生タイプの代替肉を調製した。代替肉を、標準化された手順に従って、以下に示される標準化されたレシピに従って調製した。
【0144】
テクスチャ加工された植物タンパク質を水和し、続いてHobart混合機で乾燥成分及びヒマワリ油と混合した。更なる可変脂質部分を導入し(必要に応じて融解し)、更に混合して均一な混合物を得た。混合物をバーガーパテに成形し、固化させた。
【0145】
【0146】
オフフレーバ形成を、調製直後及び室温で2日間貯蔵した後の訓練された感覚テスターのパネルによる感覚試験によって評価した。これらの条件は、加速冷蔵期間を模倣する。結果を表4に示す。
【0147】
【0148】
結果は、天然パタチンを結合剤として適用する代替肉において、本明細書で特定される脂質がオフフレーバ形成を抑制することを示す。
【0149】
実施例5:様々な脂質と組み合わせた天然パタチンから調製されたベーカリー製品におけるオフフレーバ形成
ベーカリー製品のモデルとして、ビーガンマフィンを製造した。しかしながら、同じ方法は、クッキー、ケーキ、パイ、マカロン、スポンジケーキ又はワッフルなどのベーカリー製品を得るために、他のベーカリー製品、好ましくはビーガンベーカリー製品の調製に関する一般的な知識を使用して適合されてもよい。
【0150】
水、天然パタチン及び様々な脂質を含む混合物としてバッターを調製することによって、ビーガン(卵を含まない)マフィンを調製した。
【0151】
天然パタチンを、純粋な天然パタチン(Avebeから市販されているSolanic 200(「S200」))として、又はおよそ1:1の比の天然パタチン及び天然のポテトプロテアーゼ阻害剤を含む天然のジャガイモタンパク質混合物(「PRミックス」)としてバッターに導入した。使用した脂質は、本発明による脂質であるヒマワリ油(「SF」)及び参照脂質としてのココナッツ油(「Coco」)であった。
【0152】
マフィンは、以下の成分に基づいて調製した。
【0153】
【0154】
マフィンは、乾燥成分を室温(20℃)で均質な混合物に混合し、脂質及び水を乾燥混合物に添加し、これを滑らかですべすべした外観のバッターに2分間混合することによって調製した。
【0155】
バッターを紙コップに約50mlずつ導入した。天然パタチンが室温で脂質と接触している総時間は約10分であった。
【0156】
続いて、バッターを有する紙コップを、オーブン(Probat)内で、最後の5分間、開いた弁を用いて、上部を195℃、底部を185℃の温度で33分間焼成した。
【0157】
ベーカリー製品の調製に関する一般常識に沿って、加熱温度は外側(オーブン)温度であり、ベーカリー製品のコア温度は、ベーカリー製品が準備された時点で、焼成期間中に約95℃まで徐々に上昇する。これにより、脂質が高温で天然パタチンと接触している有意な期間が残り、この期間は、最高温度でのパタチンの変性の前に、オフフレーバ形成の加速に関連する。
【0158】
調製後のバッター及び焼成後のマフィンの官能特性を、食品産業における一般的な慣行に沿って訓練された専門家のパネルによって評価した。
【0159】
【0160】
結果は、バッター(焼成前)、並びにパタチン及びココナッツ油を含むマフィン(焼成後)の両方がオフフレーバを有するが、本発明のパタチン及び脂質を含むバッター、並びにそれらから調製されたマフィンはオフフレーバを有さないことを示す。本明細書中で指定されるような脂質と組み合わせたパタチンは、ベーカリー製品において、バッターにおいても、焼成後においても、いかなる異味ももたらさない。更に、結果は、天然パタチンが本発明によらない脂質と高温で接触する状況を作り出すことによって、オフフレーバが加速的に発生することを確認する。これは、本発明の脂質を適用することによって回避することができ、それによってオフフレーバ形成を防止する。
<付記>
本開示は以下の態様を含む。
<項1>
食品を製造するための方法であって、
a)水と、天然パタチンと、グリセロールの脂肪酸トリエステルを含む物質として定義される脂質と、を含む混合物を提供すること、及び
b)前記食品を製造すること、
を含み、
前記脂質中の脂肪酸が、2質量%未満のC12以下の鎖長を有する脂肪酸を含む、食品を製造するための方法。
<項2>
前記脂肪酸が、2質量%未満のC14以下の鎖長を有する脂肪酸を含む、項1に記載の方法。
<項3>
前記脂肪酸の少なくとも98質量%が、C12以上、好ましくはC14以上の鎖長を有する脂肪酸である、項1又は項2に記載の方法。
<項4>
前記脂質が、トウモロコシ油、大豆油、菜種油、ヒマワリ油、ブドウ種子油、落花生油、ゴマ油、オリーブ油、シアバター、ココアバター、及び米ぬか油からなる群の脂質のうちの1又は複数を含み、前記脂質が任意に水素化されていてもよい、項1~項3のいずれか一項に記載の方法。
<項5>
前記混合物に供給される前記脂質が、脂質1kg当たり18mmol未満の遊離脂肪酸を含み、及び/又は全脂質に対するジアシルグリセロール及びモノアシルグリセロールの合計が10重量%未満である、項1~項4のいずれか一項に記載の方法。
<項6>
前記食品を製造することが、成形、混合、冷却、加熱、発酵、更なる成分との組み合わせ及び/又は一定期間の貯蔵、好ましくは10℃未満の温度での冷蔵、の工程のうちの1又は複数を含む、項1~項5のいずれか一項に記載の方法。
<項7>
前記食品が、代替肉、バッター、生地、ベーカリー製品、チーズ、クリームチーズ、バター、ヨーグルト、ソース、ドレッシング、クリーム、又は油で揚げたスナックから選択され、食品が、好ましくは動物由来成分を含まない、項1~項6のいずれか一項に記載の方法。
<項8>
前記食品を製造することが、-35℃~20℃の温度に冷却する工程を含む、項6に記載の方法。
<項9>
前記食品が代替肉であり、
a)水、変性タンパク質、天然パタチン及び前記脂質を含む混合物を提供すること、
b)前記代替肉を成形すること、及び
c)前記代替肉を-35℃~20℃の温度に冷却すること、
を含む、項1~項8のいずれか一項に記載の方法。
<項10>
前記代替肉が、冷却前に60℃を超える温度に加熱されない、項9に記載の方法。
<項11>
前記代替肉が、一般に、前記代替肉を調理するまでの期間を通して-35℃~20℃の温度に保たれ、この期間は好ましくは1~14日間であり、前記調理するまでの期間の後で消費する前に、前記代替肉が少なくとも1分間にわたって少なくとも75℃の温度に加熱される、項9又は項10に記載の方法。
<項12>
前記変性タンパク質が、変性植物タンパク質、好ましくは塊茎、穀類、堅果又はマメ科植物由来のタンパク質であり、好ましくは大豆タンパク質、エンドウタンパク質、小麦タンパク質/グルテン、ジャガイモタンパク質、ソラマメタンパク質、リョクトウタンパク質、麻の種子タンパク質、キノコタンパク質、ゴマ種子タンパク質、サツマイモタンパク質、ヒヨコマメタンパク質、レンチタンパク質、エンバクタンパク質及びスペルトコムギタンパク質からなる群から選択されるタンパク質である、項9~項11のいずれか一項に記載の方法。
<項13>
塩化ナトリウム、塩化カリウム若しくは塩化カルシウム、グルタミン酸ナトリウム若しくはグルタミン酸カリウム及び硫酸カルシウムからなる群から選択される塩などの1又は複数の塩、並びに/あるいは
ヘム様顔料、レッドビート顔料、カロテン、カラメル、ビート果汁抽出物、トマト顔料、ダイコン顔料、パプリカ顔料及びアマランスからなる群から選択される顔料などの1又は複数の顔料、並びに/あるいは
ジャガイモ繊維、サツマイモ繊維、ニンジン繊維、サイリウム繊維、竹繊維、大豆繊維、エンドウ繊維、リョクトウ繊維、タピオカ繊維、ココナッツ繊維、バナナ繊維、セルロース、耐性デンプン、耐性デキストリン、イヌリン、リグニン、キチン、ペクチン、β-グルカン及びオリゴ糖からなる群から選択される繊維などの1又は複数の繊維、並びに/あるいは
天然デンプン、変性デンプン、セルロース誘導体、カラギーナン、アルギナート、寒天、コンニャク、キサンタン、及びペクチンからなる群から選択されるテクスチャライザなどの1又は複数のテクスチャライザ、並びに/あるいは
デキストロース、リボース及びマルトデキストリンからなる群から選択される1又は複数の風味発生助剤、並びに/あるいは
スクロース、グルコース、フルクトース、シロップ、及び人工甘味料からなる群から選択される甘味料などの1又は複数の香味料、を前記混合物中に含めることを更に含む、項9~項12のいずれか一項に記載の方法。
<項14>
前記食品を製造することが、前記食品を少なくとも1分間、好ましくは少なくとも15分間、少なくとも75℃、好ましくは少なくとも125℃の温度に加熱する工程を含む、項1~項7のいずれか一項に記載の方法。
<項15>
前記食品がベーカリー製品であり、
a)水、穀粉、天然パタチン及び前記脂質を含む混合物を提供すること、
b)前記混合物を均質化し、任意に熟成させること、及び
c)前記混合物を少なくとも125℃の温度に少なくとも15分間加熱すること、
を含む、項14に記載の方法。
<項16>
前記食品が、動物由来成分を含まないベーカリー製品として定義されるビーガンベーカリー製品である、項14又は項15に記載の方法。
<項17>
前記混合物が、砂糖、人工甘味料、乳化剤、酵母、膨張剤、着色剤、香味料、及び/又は更なる任意成分のうちの1又は複数を更に含む、項14~項16のいずれか一項に記載の方法。
<項18>
項1~項17のいずれか一項に記載の方法によって得られる食品。
<項19>
脂質がグリセロールの脂肪酸トリエステルを含む物質として定義され、前記脂質中の脂肪酸が、C12以下の鎖長を有する脂肪酸を2質量%未満含み、好ましくは、前記脂肪酸が、C14以下の鎖長を有する脂肪酸を2質量%未満含む、水、天然パタチン、及び脂質から調製された食品。
<項20>
水、天然パタチン及び前記脂質を含む、60℃を超える温度に加熱されていない、項19に記載の食品。
<項21>
代替肉、バッター、生地、バター、チーズ、クリームチーズ、ヨーグルト、ソース、ドレッシング又はクリームである、項19又は項20に記載の食品。
<項22>
動物由来成分を含まない食品として定義される、ビーガン食品である、項19~項21のいずれか一項に記載の食品。
<項23>
水、天然パタチン、変性タンパク質及び前記脂質を含む代替肉である、項19~項22のいずれか一項に記載の食品。
<項24>
前記脂肪酸の少なくとも98質量%が、C12以上、好ましくはC14以上の鎖長を有する脂肪酸である、項23に記載の代替肉。
<項25>
前記脂質が、トウモロコシ油、大豆油、菜種油、ヒマワリ油、ブドウ種子油、落花生油、ゴマ油、オリーブ油、シアバター、ココアバター、及び米ぬか油からなる群の脂質のうちの1又は複数を含み、前記脂質が任意に水素化されていてもよい、項23又は項24に記載の代替肉。
<項26>
前記変性タンパク質が、変性植物タンパク質、好ましくは塊茎、穀類、堅果又はマメ科植物由来のタンパク質であり、好ましくは大豆タンパク質、エンドウタンパク質、小麦タンパク質/グルテン、ジャガイモタンパク質、ソラマメタンパク質、リョクトウタンパク質、麻の種子タンパク質、キノコタンパク質、ゴマ種子タンパク質、サツマイモタンパク質、ヒヨコマメタンパク質、レンチタンパク質、エンバクタンパク質及びスペルトコムギタンパク質からなる群から選択されるタンパク質である、項23~項25のいずれか一項に記載の代替肉。
<項27>
前記脂質が、脂質1kg当たり18mmol未満の遊離脂肪酸を含み、及び/又は全脂質に対するジアシルグリセロール及びモノアシルグリセロールの合計が10重量%未満である、項23~項26のいずれか一項に記載の代替肉。
<項28>
塩化ナトリウム、塩化カリウム若しくは塩化カルシウム、グルタミン酸ナトリウム若しくはグルタミン酸カリウム及び硫酸カルシウムからなる群から選択される塩などの1又は複数の塩、並びに/あるいは
ヘム様顔料、レッドビート顔料、カロテン、カラメル、ビート果汁抽出物、トマト顔料、ダイコン顔料、パプリカ顔料及びアマランスからなる群から選択される顔料などの1又は複数の顔料、並びに/あるいは
ジャガイモ繊維、サツマイモ繊維、ニンジン繊維、サイリウム繊維、竹繊維、大豆繊維、エンドウ繊維、リョクトウ繊維、タピオカ繊維、ココナッツ繊維、バナナ繊維、セルロース、耐性デンプン、耐性デキストリン、イヌリン、リグニン、キチン、ペクチン、β-グルカン及びオリゴ糖からなる群から選択される繊維などの1又は複数の繊維、並びに/あるいは
天然デンプン、変性デンプン、セルロース誘導体、カラギーナン、アルギナート、寒天、コンニャク、キサンタン、及びペクチンからなる群から選択されるテクスチャライザなどの1又は複数のテクスチャライザ、並びに/あるいは
デキストロース、リボース及びマルトデキストリンからなる群から選択される1又は複数の風味発生助剤、並びに/あるいは
スクロース、グルコース、フルクトース、シロップ、及び人工甘味料からなる群から選択される甘味料などの1又は複数の香味料
を更に含む、項23~項27のいずれか一項に記載の代替肉。
<項29>
水、天然パタチン、穀粉及び脂質から調製されたベーカリー製品である、項19に記載の食品。
<項30>
動物由来成分を含まないベーカリー製品として定義される、ビーガンベーカリー製品である、項29に記載のベーカリー製品。
<項31>
砂糖、人工甘味料、乳化剤、酵母、膨張剤、着色剤、香味料、及び/又は更なる任意成分のうちの1又は複数を更に含む、項29又は項30に記載のベーカリー製品。
<項32>
マフィン、クッキー、ケーキ、パイ、マカロン、スポンジケーキ、又はワッフルから選択される、項29~項31のいずれか一項に記載のベーカリー製品。