(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-25
(45)【発行日】2024-10-03
(54)【発明の名称】層を生成するための方法、製造システム及びコンポーネント
(51)【国際特許分類】
B23K 26/342 20140101AFI20240926BHJP
【FI】
B23K26/342
(21)【出願番号】P 2023508016
(86)(22)【出願日】2021-07-22
(86)【国際出願番号】 DE2021100634
(87)【国際公開番号】W WO2022028646
(87)【国際公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-04-11
(31)【優先権主張番号】102020120861.8
(32)【優先日】2020-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】594102418
【氏名又は名称】フラウンホーファー-ゲゼルシャフト ツル フェルデルング デル アンゲヴァンテン フォルシュング エー ファウ
【氏名又は名称原語表記】Fraunhofer-Gesellschaft zur Foerderung der angewandten Forschung e.V.
【住所又は居所原語表記】Hansastrasse 27c, D-80686 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100109896
【氏名又は名称】森 友宏
(72)【発明者】
【氏名】グレーフェ,ステファン
(72)【発明者】
【氏名】シュルツ,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】ギッピリヒ,マリウス
【審査官】山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】オーストリア国特許発明第00387173(AT,B)
【文献】特開昭63-248587(JP,A)
【文献】特開2017-125483(JP,A)
【文献】特表2019-500216(JP,A)
【文献】特開2020-011265(JP,A)
【文献】特開2008-036652(JP,A)
【文献】特表2015-535745(JP,A)
【文献】特開平04-341576(JP,A)
【文献】特開平07-290270(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 - 26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
層を生成するための方法であって、
・螺旋形状の可融部(101)を事前形成するステップと、
・基部(200)上に
前記螺旋形状の可融部(
101)を
移動するステップと、
・前記
螺旋形状の可融部(
101)を溶融して前記基部(200)と前記
螺旋形状の可融部(
101)との間で材料結合を形成するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記螺旋形状の
可融部(101)の隣接する2以上の巻線(106,108,110)は互いに接する、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
前記溶融はレーザユニット(1)により行われる、請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記レーザユニット(1)は、ファイバ導波ダイオードレーザユニット及び/又は直接ビームレーザユニットである、請求項
3に記載の方法。
【請求項5】
前記レーザユニット(1)は、5kWを超えるパワーを有する、請求項
4に記載の方法。
【請求項6】
前記
螺旋形状の可融部(
101)は、
・圧力ロック方法及び/又はフォームロック方法で前記基部(200)上に配置され、さらに/あるいは
・前記基部(200)上の周囲に配置される、
請求項1から
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記基部(200)が少なくとも断面において溶融されるように前記
螺旋形状の可融部(
101)にわたって溶接が行われる、請求項1から
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
・前記
螺旋形状の可融部(
101)を有する前記基部(200)は、前記溶融中に回転される、
請求項1から
7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記
螺旋形状の可融部(
101)を有する前記基部(200)は、前記溶融中に前記基部(200)の長手軸(210)又は前記基部(200)の対称軸(212)を中心として回転される、請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
送り方向は、前記長手軸(210)にさらに/あるいは前記基部(200)の前記対称軸(212)に実質的に平行に向けられている、請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
前記溶融は、500mm/分から2000mm/分の供給速度で行われる、請求項1から
10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
・前記
螺旋形状の可融部(
101)は、前記基部(200)の外周形状に対応する内周形状を有する、
請求項1から
11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記基部(200)の前記外周形状は回転対称である、請求項
12に記載の方法。
【請求項14】
・前記基部(200)は、丸い外周形状を有し、さらに/あるいは
・前記
螺旋形状の可融部(
101)は、丸い内周形状を有する、
請求項1から
13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記
螺旋形状の可融部(
101)は、鋼から形成されるか、鋼を含む、請求項1から
14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
・前記
螺旋形状の可融部(
101)は、0.1mmから5mmの厚さを有し、さらに/あるいは
・前記螺旋形状の
可融部(101)は、5mmから1000mmの直径を有し、さらに/あるいは
・前記螺旋形状の
可融部(101)のワイヤは、円形、楕円、三角形、四角形、及び/又は多角形の断面を有する、
請求項1から
15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記
螺旋形状の可融部(
101)は、第1のワイヤ要素及び第2のワイヤ要素を含み、前記第1のワイヤ要素及び前記第2のワイヤ要素は、異なる材料から形成されるか、異なる材料を含む、請求項1から
16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記
螺旋形状の可融部(
101)の前記配置は、前記
螺旋形状の可融部(
101)の前記溶融の位置とは独立して行われる、請求項1から
17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記
螺旋形状の可融部(
101)の前記配置は、第1の加工ステップにおいて行われ、前記溶融は、前記第1の加工ステップとは異なる第2の加工ステップにおいて行われる、請求項
18に記載の方法。
【請求項20】
溶融前に、特に3Dスキャニングプロセスにより、前記基部(200)上への前記
螺旋形状の可融部(
101)の前記配置をチェックするステップを含む、請求項1から
19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
溶融の前に前記
螺旋形状の可融部(
101)が配置された前記基部(200)を熱処理するステップを含む、請求項1から
20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
・少なくとも部分的に生産的に生成されたコンポーネントを生成するために、前記溶融された
螺旋形状の可融部(
101)上に第2の
螺旋形状の可融部及び/又はさらなる
螺旋形状の可融部を配置するステップ
を含む、請求項1から
21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
・前記第2の
螺旋形状の可融部及び/又はさらなる
螺旋形状の可融部を溶融して前記基部(200)及び/又は前記
螺旋形状の可融部(
101)と前記第2の
螺旋形状の可融部との間の材料結合を形成するステップ
を含む、請求項
22に記載の方法。
【請求項24】
・螺旋形状の
可融部(101)を
事前形成するように配置及び構成された第1の加工ユニット(502)及
び
・基部(200)上に前記
螺旋形状の可融部(
101)を
移動するように配置及び構成された第2の加工ユニット(504)及
び
・前記
螺旋形状の可融部(
101)を溶融して前記基部(200)と前記
螺旋形状の可融部(
101)との間に材料結合を形成するように配置及び構成された第3の加工ユニット(506)
を含む、製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、層を生成するための方法に関するものであり、特にコンポーネントをコーティングするため及び/又は生成するための方法、製造システム及びコンポーネントに関するものである。
【背景技術】
【0002】
耐腐食性及び/又は耐摩耗性材料でコーティングすることは、コンポーネントを機能的なものとしコンポーネントの耐用年数を増やすためのプロセスの1つである。例えば、肉盛溶接は、産業界においてよく使用されるコーティングプロセスである。肉盛溶接においては、基材に接合された層が固化後に形成されるように基材と充填材の両方が融解又は溶融される。
【0003】
それぞれの上面に複数の層を生成することにより、少なくとも部分的に生産的に製造されたコンポーネントを生成することができる。加えて、層を追加することによりコンポーネントの外形及び/又は機能を復元することができるので、このプロセスは補修溶接のためにも使用される。
【0004】
充填材は、粉体、ワイヤ及び/又はストリップとして処理され得る。層を生成するための既知のプロセスにおける1つの欠点は、実現可能な成膜速度が最新のミリングプロセスの金属除去速度を大きく下回ることである。現在の旋削プロセスと比較すると、これらのプロセスはミリングプロセスよりも高い金属除去速度を有しているため、この欠点はさらに際立ったものとなる。特に、回転対称コンポーネントについては、現在のところ、より厚い層又は対応するアディティブ製造法の時間及び費用に対する効果の高い適用を可能にする溶接プロセス及び/又はレーザプロセスが存在しない。特に、アブレーションプロセス及び成膜プロセスのタイミングが互いに調整される生産チェーンにおいては、これらの連結が非常に重要である。
【0005】
様々なプロセスを用いてコンポーネントのコーティング及び/又は生産的積層を実施することができる。考えられるプロセスとしては、フレーム溶射、冷ガス噴霧、アーク溶接、プラズマ粉体肉盛溶接、プラズマ噴霧及び選択レーザプロセスが挙げられる。粉体の充填材の場合、ノズル及び焦点径を大きくすることによって比較的簡単に加工領域を広げることができる。あるいは、相対移動を増すことにより機械加工プロセスの加速を実現することができる。
【0006】
しかしながら、これらのプロセスでは外形に近接する薄層を生成できるだけである。厚い層、特に装甲板又はヒールにおける厚い層は、この方法では通常生成することができない。加えて、粉体を利用するプロセスは、供給される粉体の一部が積層のために使用されないため、材料効率が低いことが多い。この理由は、一部の粉体粒子がコンポーネント上及び/又は機械上で束縛されていない状態のままとなるからである。加えて、粉体を利用するプロセスは健康に有害な場合がある。
【0007】
ワイヤをベースとするプロセスに関する付与速度は、一般的に、複数のワイヤを用いることにより増加することができる。あるいは、1以上のワイヤの供給速度を増加させることが可能である。しかしながら、付与速度を増加させるためのこれらの選択肢は、これらがプロセスの不安定性につながるという欠点に関連付けられる。高い付与速度でワイヤを供給することにより生じる、これらのプロセスの不安定性を低減するために、付加的なエネルギー源が使用される。例えば、ワイヤが誘導的に予熱されるか、アーク溶接プロセスにより融解パワーの一部が供給される。これらのハイブリッドプロセスは、肯定的な特徴を組み合わせているものとして述べられることが多いが、精密な制御性と、レーザデバイスのコスト増と、付加的なエネルギー源の低コストエネルギーの供給との間の妥協案である。
【0008】
例えば、DE 2605841 A1は、ワイヤがシャフトの周囲に巻回され、このシャフトに連続的に溶接されるプロセスを教示している。しかしながら、ワイヤの弾性により、特に隙間嵌めのみがワイヤの弾性によって形成され得るので、シャフト上にワイヤを配置することにより遊びが生じる。このため、ワイヤはシャフト上にしっかりと置かれず、ずれ続けることがある。加えて、このプロセスは、単一の加工装置上でワイヤ供給と溶接を行わなければならないので、現在のコーティング及び/又は生産的コンポーネント製造用途には好適なものではない。したがって、このプロセスの効率は低く、隙間嵌めが存在するため、生成される品質は現在の必要条件に合致していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の目的は、上述した欠点のうち1つ以上を軽減する又はなくすことができる、層を生成するため、特にコンポーネントをコーティングするため及び/又は生成するための方法、製造システム及びコンポーネントを提供することにある。特に、本発明の目的は、方法の信頼性を改善し、さらに/あるいは付与速度を高くしつつ、層を生成する、さらに/あるいはコンポーネントを製造することができる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の態様によれば、上述した目的は、層を形成するため、特にコンポーネントをコーティングするため及び/又は生成するための方法であって、基部上に事前形成可融部を配置するステップと、上記事前形成可融部を溶融して上記基部と上記事前形成可融部との間で材料結合を形成するステップとを含む方法により達成される。
【0011】
本発明は、既知のワイヤをベースとするプロセスの複雑性により、高い技術的努力によってのみ解決することができるプロセス的限界が生じているという認識に基づくものである。上述した方法は、既知のプロセスに比べてプロセスの複雑性を低減するものである。これは、特に、ワイヤ供給を制御する必要がなく、その結果として、生じ得るプロセスエラーを少なくすることができることによるものである。特に、ワイヤをベースとするプロセスを用いて高い付与速度を実現しようとする試みでは、適切なプロセス品質が実現できないことが多いことが示されている。上述した方法によれば、プロセスの複雑性が低減されているので、高いプロセス品質を実現することができる。特に、例えば、事前形成可融部により囲まれた、互いに隣接して配置された複数のワイヤを溶融することができる。
【0012】
また、本発明は、充填材を融解プロセスから切り離すことができるという認識に基づくものである。基部上への事前形成可融部の配置は、事前形成可融部の溶融から完全に独立して行うことができる。このため、基部上への事前形成可融部の配置は、セットアッププロセスとして理解することができる。後続の溶融プロセスは、このセットアッププロセスから独立している。このため、コスト集約的であることが多い溶融用の設備をセットアップ時間が生じることなく事前形成可融部を溶融するために、特に基部上に事前形成可融部を配置する形態で、完全に使用することができる。
【0013】
また、本発明は、非常に高い成膜速度が上述した方法によって実現できるという認識に基づくものである。例えば、レーザ肉盛溶接は、2kg/hの積層速度を有し得る。また、粉体をベースとするプロセスは、例えば14kg/hまでの付与速度を実現することができる。レーザ噴霧プロセスを用いると、例えば0.5~1.5kg/hの付与速度を実現することができる。本発明者等は、前節で述べた方法を用いることで20kg/hまでの付与速度が実現可能であることを見出した。現在使用されている粉体をベースとするプロセスと比較すると、約1.5倍の付与速度を実現することができる。これまで利用可能であったワイヤをベースとするプロセスと比較すると、7倍の付与速度を実現することができる。
【0014】
他の知見は、設備コストがそれほど大きく増加しないことである。事前形成可融部を溶融するために高いビーム品質は必要とされないことがわかっている。深溶け込み効果が生じるためには、良好なビーム品質を有し、局所的に集束されたエネルギーが必要となるが、このような深溶け込み効果をもたらす必要がないため、比較的低いビーム品質で十分である。この結果、熱伝導溶接において用いられているような比較的大きな焦点スポットが必要とされるだけである。
【0015】
事前形成可融部を異なる方法で設計することができる。特に、可融部をバネ、ワイヤメッシュ、スリーブ及び/又はハーフシェルとして形成することができる。特に、事前形成可融部は薄肉であることが好ましい。薄肉は、特に可融ユニット、特にレーザユニットを有する可融ユニットにより材料結合が生成されるような方法で溶接可能であることを意味している。基部と事前形成可融部との間の材料結合は、特に可融部及び基部を溶融することにより形成される。
【0016】
この方法により生産サイクルを構築することが可能となる。第1のステップにおいては、例えば可融部を特にバネ巻き機を用いて事前形成することができる。第2のステップにおいては、可融部を基部上に配置することができる。第3のステップにおいては、溶融が行われる。これらのステップを部分的に並列的に行うことができ、これにより様々なステップの最適なタイミングを確保することができる。
【0017】
異なる材料からなる事前形成可融部を配置することにより、累進的コンポーネントを生成できることが考えられる。これは、異なる用途においては重要になり得る。例えば、コンポーネントに特別な強度を与えるためにある層を設けることができ、摩耗耐性を改善するために他の層、特に外側に面した層を設けることができる。基部と事前形成可融部との間の材料結合は、好ましくは、基部に面する可融部の全面に沿って本質的に行われる。特に、実質的とは、基部に面する可融部の面の50%よりも大きい、75%よりも大きい、90%よりも大きい、95%よりも大きい、特に97.5%よりも大きい領域が材料的に基部に結合していることを意味している。
【0018】
プロセスの好ましい実施形態においては、事前形成可融部が螺旋形状のワイヤ要素として形成され、好ましくは、螺旋形状のワイヤ要素の隣接する2以上の巻線が互いに接している。特に、実質的にすべての巻線が互いに隣接していることが好ましい。螺旋形状のワイヤ要素は、例えばバネであり得る。螺旋形状のワイヤ要素が引張りバネ要素として、すなわち、巻線が互いに接触するように設計されていることが特に好ましい。
【0019】
螺旋形状のワイヤ要素は、好ましくは3つよりも多く、5つよりも多く、10よりも多く、特に20よりも多くの巻線を有している。例えば、螺旋形状のワイヤ要素は18の巻線を有し得る。ワイヤを巻いてバネにすることは、長い間知られているプロセスであり、プロセス信頼性の高いプロセスである。このプロセス信頼性は、一貫した特性を有する螺旋形状のワイヤ要素を提供でき、特にプロセス信頼性の高い溶融プロセスを可能にすることを意味している。
【0020】
これに代えて、あるいはこれに追加して、螺旋形状のワイヤ要素の巻線を互いに離間させることができる。この種の螺旋形状のワイヤ要素は、例えば、ドリル又は押出機スクリューを製造するために使用することができる。巻線間の距離は、そのコンポーネントに固有なものに設計することができる。
【0021】
事前形成可融部が2以上の螺旋形状のワイヤ要素を有していることがさらに好ましく、これらは好ましくは2つ以上の異なる材料から形成されるか、2つ以上の異なる材料を含んでいる。このため、ダブルバネピッチを有するバネ-バネ概念を実現することができる。
【0022】
この方法のさらに好ましい実施形態は、溶融がレーザユニットを用いて行われることにより特徴付けられる。レーザユニットは、特にレーザビームを生成及び/又は出射するために設計されている。レーザユニットは、好ましくは、ファイバ導波ダイオードレーザユニットである。さらに、レーザユニットは、直接ビームレーザユニットであってもよい。さらに、レーザユニットは、ファイバレーザ、ディスクレーザ、及び/又はCO2レーザであり得る。また、レーザユニットが、他の種類のレーザ源を含んでいてもよい。レーザユニットは、5kWを超え、好ましくは50kWを超え、特に100kWを超えるパワーを有することがさらに好ましい。
【0023】
レーザユニットは、丸い焦点又は矩形の焦点を生成することが好ましい。例えば、丸い焦点は、4.6mmの直径を有し得る。さらに、レーザユニットは、5mmを超え、特に約40mmのスポット幅を有し得る。さらに、他の焦点寸法形状を用いることができる。例えば、焦点は、楕円形であってもよく、あるいは、温度に最適化されたプロファイルを有していてもよい。上述した方法は、レーザビームのビーム品質に対して高い要求を求めるものではないので、特にファイバ導波ダイオードレーザユニット又は直接ビームレーザユニットを使用することができる。
【0024】
本プロセスのさらに好ましい実施形態においては、事前形成可融部は、圧力ロック方法及び/又はフォームロック方法で基部上に配置される。
【0025】
基部に対する事前形成可融部の圧力ロック構成は、例えば、螺旋形状のワイヤ要素を用いることで実現することができる。螺旋形状のワイヤ要素は、例えば、基部の外径よりも小さい内径を有し得るものであり、この結果、締まり嵌めが形成される。しかしながら、螺旋形状のワイヤ要素の特性のために、ワイヤ要素は、内径を増すためにねじられずに、基部上に押し付けられていてもよい。バネ力により螺旋形状のワイヤ要素が基部に対して圧力ロックされる。事前形成可融部のフォームロック構成は、例えば、基部の肩部に形成することができる。
【0026】
事前形成可融部は基部の周囲に配置されることがさらに好ましい。基部の周囲への事前形成可融部の配置は、特に、事前形成可融部が基部の外周及び/又は内周に沿って配置されることを意味している。例えば、シャフトのコーティングは、通常、外周面上に行われる。さらに、内側コーティングによって腐食から保護するために、チューブの内周への配置が好ましい場合がある。
【0027】
本方法のさらに好ましい発展は、基部が少なくとも断面において溶融するように事前形成可融部を介して溶接が行われることにより特徴付けられる。基部の断面溶融は、特に表面近傍の融解に関係している。
【0028】
本方法のさらに好ましい実施形態は、融解中に事前形成可融部を含む基部が回転されることによって特徴付けられる。基部は、好ましくは基部の長手軸周り及び/又は対称軸周りに回転される。事前形成可融部を含む基部を回転させることにより、プロセスがさらに簡略化される。このように、レーザビームは、基部及び/又は可融部の長手軸又は対称軸に沿って案内されるだけでよい。径方向送りは、特に回転運動により実現される。
【0029】
さらに、送り方向が基部の長手軸及び/又は対称軸と本質的に平行に揃っていることが好ましい。送り方向は、特に、可融ユニット、特にレーザビーム及び/又はレーザユニットの送りに関係している。加えて、送りをコンポーネントにより実現することができる。基部の長手軸及び/又は対称軸は、好ましくは可融部の長手軸及び/又は対称軸に同軸上に整列されている。
【0030】
本方法のさらに好ましい実施形態は、500mm/分から2000mm/分、特に700mm/分から900mm/分の送り速度で融解が生じることにより特徴付けられる。可融ユニット、特にレーザユニット及び/又はコンポーネントにより送り速度を実現することができる。送り速度は、好ましくは、先に述べた送り方向と平行に向けられる。
【0031】
本方法のさらに好ましい実施形態は、事前形成可融部が、丸い本体の外周外形に対応する内周外形を有し、さらに/あるいは、事前形成可融部が、基部の内周外形に対応する外周外形を有する点で特徴付けられる。
【0032】
特に、基部の外周外形及び/又は内周外形が回転対称であることが好ましい。回転対称は、特に放射対称を意味する。
【0033】
本方法の他の好ましい実施形態は、丸い外周外形を有する基部によって特徴付けられる。さらに、事前形成可融部が丸い内周外形を有することが好ましい。基部の丸い外周外形は、例えば、基部が丸い断面を有することを意味し得る。特に、この断面は、基部の長手軸及び/又は対称軸と平行に整列される直交断面積を有する。基部の丸い外周外形及び対応する延長部、特に直径を有する事前形成可融部の丸い内周外形により、基部の外周上に事前形成可融部を有利な方法で配置することが可能になる。
【0034】
さらに、事前形成可融部、特に螺旋形状のワイヤ要素は、金属材料から形成されるか、金属材料を含むことが好ましい。例えば、金属材料は、鋼、ニッケル系合金、チタン、銅、コバルト系合金、及び/又はアルミニウムであってもよいし、これらを含んでいてもよい。事前形成可融部、特に螺旋形状のワイヤ要素は、さらに、他の可融材料、例えばプラスチックをさらに含むか、これから形成されていてもよい。
【0035】
本プロセスのさらに好ましい実施形態においては、事前形成可融部は0.1mmから5mm、特に1mmから2mmの厚さを有する。さらに、螺旋形状のワイヤ要素は、5mmから1000mm、好ましくは20mmから100mm、さらに好ましくは30mmから40mmの直径を有し得る。
【0036】
さらに、螺旋形状のワイヤ要素のワイヤが、円形、楕円、三角形、四角形、及び/又は多角形の断面を有することが好ましい場合がある。例えば、ワイヤは0.1mmから5mm、特に1mmから2mmの厚さを有し得る。
【0037】
本方法の他の好ましい実施形態においては、事前形成可融部は、第1のワイヤ要素及び第2のワイヤ要素を含み、第1のワイヤ要素及び第2のワイヤ要素は、異なる材料から形成されるか、異なる材料を含む。
【0038】
本方法のさらに好ましい実施形態においては、事前形成可融部の配置は、事前形成可融部の溶融の位置とは独立して行われる。事前形成可融部の配置は、第1の加工ステップにおいて行われ、融解は、第1の加工ステップとは異なる第2の加工ステップにおいて行われることがさらに好ましい。
【0039】
本プロセスの他の好ましい実施形態においては、本方法は、溶融前に、基部上への事前形成可融部の配置をチェックするステップを含んでいる。配置のチェックは、例えば3Dスキャニングプロセスにより行うことができる。特に、基部上での可融部の相対位置がチェックされる。例えば、これは、可融部の基準点を基部、例えば基部の第1の端部及び/又は第2の端部の基準位置から離すことにより行うことができる。
【0040】
本プロセスのさらに好ましい実施形態においては、これは、融解前に、配置され事前形成された可融部を含む基部の熱処理を行うステップを含む。これは、特に基部及び/又は事前形成可融部の熱応力を低減する。加えて、事前形成可融部を溶融するために必要な融解パワー、特にレーザパワーは、熱処理により低減される。
【0041】
本方法のさらに好ましい実施形態においては、本方法は、少なくとも部分的に生産的に生成されたコンポーネントを生成するために、溶融された事前形成可融部上に第2の事前形成可融部及び/又はさらなる事前形成可融部を配置するステップを含んでいる。第2の事前形成可融部及び/又はさらなる事前形成可融部を溶融して基部及び/又は事前形成可融部と第2の事前形成可融部及び/又はさらなる事前形成可融部との間の材料結合を形成するステップを含むことがさらに好ましい。第2の事前形成可融部及び/又はさらなる事前形成可融部の配置においては、先に配置され溶融された事前形成可融部が固化することが好ましい。
【0042】
さらなる態様によれば、上述した目的は、上記で述べた実施形態のうちの1つによる方法を行うように構成される製造システムによって達成される。好ましくは、製造システムは、事前形成可融部、特に螺旋形状のワイヤ要素を生成するように配置及び構成される第1の加工ユニットを含んでいる。加えて、この製造システムは、基部上に事前形成可融部を配置するように配置及び構成される第2の加工ユニットを含み得る。
【0043】
さらに、製造システムは、基部と事前形成可融部との間に材料結合が形成されるように事前形成可融部を溶融するように配置及び構成される第3の加工ユニットを含み得る。特に、製造システムは、上記第2の加工ユニット及び上記第3の加工ユニットを含むことが好ましい。また、第1の加工ユニットが追加で設けられ得る。第1の加工ユニットの代替物として、例えば外部供給部により、事前形成可融部をどこかに設けてもよい。
【0044】
さらなる態様によれば、上述した目的は、上記で述べた実施形態のうちの1つによる方法により取得可能なコンポーネントにより達成される。
【0045】
第1の態様による方法により取得されるコンポーネントは、従来のコーティングされたコンポーネントとは異なっている。金属組織検査によって、基部と事前形成可融部との間の接触面に隣接する境界部において微細構造及び化学相を検査することができる。境界部においては、さらなる態様によれば、コンポーネント内で基部と事前形成可融部の材料の化学的混合が生じ、冶金的結合が生じる。化学的混合は、例えばEDX分析とも呼ばれるエネルギー分散X線分光を用いて検出することができる。
【0046】
PVDやCVDのような気相からの電解めっき又はコーティングのプロセスにおいては、冶金化合物が形成され、基部は本質的に熱的な影響を受けない。他の溶接プロセスと比較すると、差異は、特に、さらなる態様によるコンポーネントにおいては、真っ直ぐで均質な境界部が形成され、これにより熱影響部が比較的小さいことにある。
【0047】
従来の肉盛溶接プロセスにより生成されたコンポーネントの顕微鏡写真は、通常、互いに隣り合って並ぶ複数の溶接ビードにより層が形成されることを示している。境界部の境界及び熱影響部の方向は、通常、そのようなコンポーネント内において波状になっており、熱影響部は比較的大きい。加えて、互いに隣り合って配置される溶接ビードの生成により、既に生成されている隣接する溶接ビードの再度の融解及び/又は焼き戻しが生じる。これにより、隣接する2つの溶接ビード間の部分において構造的な改変が生じる。これは、金属組織部をエッチングすることにより、あるいは、エネルギー分散X線分光により分析することができる。これに対して、さらなる態様によれば、コンポーネントは、均質な微細構造により特徴付けられる。
【0048】
さらなる利点、さらなる態様の実施形態の変形例及び実施形態の詳細と考えられるさらなる実施形態については、本プロセスの対応する特徴及びさらなる実施形態に関して先に述べた説明が参照される。好ましい実施形態が例として添付図面を参照して説明される。添付図面は以下のものを示している。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】
図1は、基部及び事前形成可融部の典型的実施形態の模式的二次元図である。
【0050】
【
図2】
図2は、事前形成可融部を融解するための典型的方法設定の模式的二次元図である。
【0051】
【
図3】
図3は、
図2に示される設定の他の模式的二次元図である。
【0052】
【0053】
【0054】
図面においては、同一の、あるいは本質的に機能的に同一又は類似の要素は同一の参照符号を用いて示される。
【発明を実施するための形態】
【0055】
図1は、螺旋形状のワイヤ要素101として形成される事前形成可融部100を示している。事前形成可融部100は、第1の可融部端部102から第2の可融部端部104まで延びている。第1の可融部端部102に隣接して、第1の巻線106が設けられている。第2の可融部端部104に隣接して、第2の巻線108が設けられている。第1の巻線106と第2の巻線108との間に複数の追加の巻線110が設けられている。巻線106,108,110は互いに隣接している。互いに当接していることは、特に2つの隣接する巻線の間には隔たりがないことを意味している。これに代えて、あるいはこれに加えて、巻線106,108,110が互いに離間していることも考えられる。
【0056】
また、事前形成可融部100は例えばスリーブとして形成され得る。例えば、これは、対応する内周形状により基部200に対して圧力がかかった状態でロックされるように配置され得る。事前形成可融部のさらなる幾何形状については上記で既に説明した。
【0057】
また、
図1に示されている基部200は、第1の基部端部202から第2の基部端部204まで延びている。第1の基部端部202に隣接してコーティング部206が設けられている。コーティング部206には、本方法によりコーティングがなされる。さらに、基部200は、第2の基部端部204に隣接する部分にネジ部208を含んでいる。基部200は、対称軸212としても機能する長手軸210を有する回転対称コンポーネントとして形成される。さらに、
図1にはマンドレル10が示されており、このマンドレル10は、旋盤内で基部200をクランプするために設けられている。特に、マンドレル10は、旋盤の一部であり、通常は基部200の一部ではない。
【0058】
図2においては、事前形成可融部100が基部200上に配置されている。事前形成可融部100がレーザユニット1からのレーザビーム2により溶融される。レーザユニット1は、送り方向4において基部200の長手軸210と平行に移動される。レーザユニット1を送り方向4に移動させることにより、第1の可融部端部102から第2の可融部端部104に向かってレーザビームが連続的に移動される。この結果、第1の巻線106と第1の巻線106に対面するさらなる巻線とが溶融され、これらは
図2において融解部112として示されている。巻線を有する元々の構造は溶融によりなくなっている。レーザユニット1が送り方向4に移動される間は、事前形成可融部100を含む基部200は、ある回転速度で長手軸210周りに回転する。
【0059】
この回転速度は、基部200の直径、レーザユニット1の焦点サイズ及びレーザパワーに依存している。例えば、この回転速度は、毎分1回転から毎分20回転の間であり得る。例えば、得られる供給速度は、500mm/分から2000mm/分、特に700mm/分から900mm/分であり得る。
【0060】
コンポーネント400は、融部100を基部200に材料結合することにより形成される。
【0061】
図3は、
図2に示されるアセンブリの他の図を示している。
図3においては、基部200の長手軸210は、像平面に対して垂直である。特に、基部200は丸い外側形状を有するものとして示されている。さらに、事前形成可融部100は丸い内側形状を有するものとして示されている。
【0062】
図4は、加工ユニット502~506を有する製造システム500の模式図を示している。第1の加工ユニット502は、事前形成可融部100、特に螺旋形状のワイヤ要素101を生成するように配置及び構成されている。第1の加工ユニット502は、例えばバネ巻き機であり得る。第2の加工ユニット504は、基部200上に事前形成可融部100を配置するように配置及び構成されている。第3の加工ユニット506は、基部200と事前形成可融部100との間に材料結合が形成されるように事前形成可融部100を溶融するように配置及び構成されている。
【0063】
図5は、模式的プロセスを示している。ステップ300においては、事前形成可融部100が生成される。特に、これは、バネ巻き機を用いてなされ得る。このバネ巻き機は、ワイヤを巻いてバネにすることができる。これにより、事前形成可融部として機能する螺旋形状のワイヤ要素が形成される。ステップ302においては、事前形成可融部100が基部200上に配置される。この配置は、特に事前形成可融部100を基部200上に、特にコーティング部206上に押し込むことによりなされ得る。
【0064】
ステップ304においては、基部200上への事前形成可融部100の配置が検証される。この検証は、例えば3Dスキャニングプロセスを用いることによりすることができる。特に、配置チェックにより、事前形成可融部100が基部200の所定位置、特に所定のコーティング部206に配置されていることが検証される。
【0065】
ステップ306においては、基部200が事前形成可融部100とともに、特に上記配置された事前形成可融部100とともに熱処理される。この熱処理は、例えば300℃から800℃の温度で行うことができる。これに代えて、又はこれに加えてステップ306がステップ308の後に行われてもよい。その結果、先行及び/又は後続熱処理が考えられる。例えば、この熱処理に関して、炉加熱、誘導加熱、抵抗加熱、バーナ加熱、及び/又はレーザ加熱が用いられ得る。
【0066】
最後に、ステップ308において、基部200と事前形成可融部100との間で材料結合を形成するように事前形成可融部100が溶融される。
【0067】
上述した方法によれば、プロセスの複雑性が低減するため、プロセス時間を短くすることができ、コンポーネントの品質を改善することができる。加えて、この方法は、累進的なコンポーネントと規定されたコーティングの生成を可能にするため、一方で生成されるコンポーネントの品質が改善され、他方で生成されるコンポーネントの適用分野も広がる。特に、プロセスが簡略化することで、高精度製造設備に多額の投資をする余裕のない会社にワイヤをベースとする肉盛溶接を適用することが可能となる。このように、高品質プロセスが低コストで可能となる。
【0068】
特に腐食のおそれのあるコンポーネントの外周面及び内周面にコーティングを形成するためにこの方法を使用することができる。考えられる用途としては、特に石油化学工業におけるプロセスエンジニアリング及びエネルギー技術が挙げられる。さらに、このプロセスを用いて廃棄物焼却プラント用のコンポーネントをコーティングすることができる。さらに、自動車エンジニアリング用のコンポーネントのために、特に電気駆動車両、好ましくは乗用車及び/又はトラックにおいて使用されるコンポーネントのためにこの方法を用いることができる。また、このようにして生成されたコンポーネントを鉄道車両、工業用トラック及び建設機械において用いることができる。さらに、船舶及び飛行機用のシャフト及び軸を製造するためにこの方法を使用することができる。また、油圧システムにおける適用も考えられる。
【0069】
また、大きな摩耗損傷を受けるコンポーネントのためにこの方法が使用される。例えば、研磨粒子を有する流体を送る内側管において摩耗損傷が起こり得る。他の用途は、コンポーネントの生産的生成である。比較的高い成膜速度のために、経済的条件下で大量生産を行うためにもこの方法を用いることができる。これは、本質的に1回限りの生産及び小バッチ生産を専用として用いられている、これまで開発されたすべての生産的プロセスとは異なっている。さらに、以前は製造することが不可能であるか、多額の費用を使って初めて生成されていた構造を生成するためにこの方法を使用することができる。例えば、ギアシャフトにおいて油の供給を確保するために、油が供給される長い孔又は貫通孔が設けられている。例えば事前形成可融部の貫通孔を生成すべき位置に空の空間を設けることによって、簡単な方法でこれらの孔を生成するためにこの方法を用いることができる。
【符号の説明】
【0070】
1 レーザユニット
2 レーザビーム
4 送り方向
10 ホーン
100 事前形成可融部
101 螺旋形状ワイヤ要素
102 第1の可融部端部
104 第2の可融部端部
106 第1の巻線
108 第2の巻線
110 巻線
112 融解部
200 基部
202 第1の基部端部
204 第2の基部端部
206 コーティング部
208 ネジ部
210 長手軸
212 対称軸
400 コンポーネント
500 製造システム
502 第1の加工ユニット
504 第2の加工ユニット
506 第3の加工ユニット