(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-25
(45)【発行日】2024-10-03
(54)【発明の名称】中炭素ホウ素含有棒鋼のオンライン焼ならし処理に適した制御圧延及び制御冷却方法
(51)【国際特許分類】
C21D 8/06 20060101AFI20240926BHJP
C22C 38/00 20060101ALI20240926BHJP
C22C 38/54 20060101ALI20240926BHJP
B21B 3/00 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
C21D8/06 A
C22C38/00 301Y
C22C38/54
B21B3/00 D
(21)【出願番号】P 2023569673
(86)(22)【出願日】2022-05-11
(86)【国際出願番号】 CN2022092305
(87)【国際公開番号】W WO2022207009
(87)【国際公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-11-09
(31)【優先権主張番号】202110524496.2
(32)【優先日】2021-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522275980
【氏名又は名称】大冶特殊鋼有限公司
【氏名又は名称原語表記】DAYE SPECIAL STEEL CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.316 Huangshi Avenue Huangshi, Hubei 435001, China
(74)【代理人】
【識別番号】100129540
【氏名又は名称】谷田 龍一
(74)【代理人】
【識別番号】100137648
【氏名又は名称】吉武 賢一
(72)【発明者】
【氏名】張念
(72)【発明者】
【氏名】鄭文超
(72)【発明者】
【氏名】凌▲キン▼
(72)【発明者】
【氏名】陳平
(72)【発明者】
【氏名】黄国飄
(72)【発明者】
【氏名】何英武
【審査官】田口 裕健
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-001765(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112090966(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第112899574(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109234508(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110918642(CN,A)
【文献】国際公開第2014/030327(WO,A1)
【文献】特開平03-047918(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 38/00-38/60
C21D 8/00- 8/10
B21B 1/00- 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中炭素ホウ素含有
棒鋼
のオンライン焼ならし処理に適した制御圧延及び制御冷却方法であって、
前記中炭素ホウ素含有
棒鋼
の化学成分は、質量%で、
C 0.37~0.45%、Si 0.17~0.37%、Mn 0.60~0.90%、Al 0.020~0.060%、B0.0008~0.0035%、Ti0.030~0.060%、P ≦0.025%、S ≦0.025%、Cr ≦0.25%(0%を含まず)、Ni ≦0.20%(0%を含まず)、Mo ≦0.10%(0%を含まず)、Cu ≦0.20%(0%を含まず)を含み、残りはFe及び避けられない不純物であり、
前記中炭素ホウ素含有棒鋼は、ブリネル硬度190~220HBW、結晶粒度≧7級、帯状組織≦2級を満たし、
前記方法は、
オフライン焼ならしのプロセスを必要とせずに、加熱、粗圧延、仕上げ圧延、通水冷却、冷床徐冷というステップを順次に含み、
前記加熱ステップにおいて、ビレットの加熱炉内の加熱温度は1100~1200℃であり、総加熱時間は90~180minであ
り、
前記粗圧延ステップにおいて、ビレットが粗圧延ユニットに入る入口温度は1000~1050℃であり、
前記仕上げ圧延ステップにおいて、ビレットが仕上げ圧延ユニットに入る入口温度は780~830℃であり、
通水冷却は水箱による噴水冷却であり、通水冷却した後、完成品鋼材の温度は700~750℃であり、
前記水箱の水量は40~60L/minであり、完成品鋼材の走行速度は3~8m/sであり、
冷床徐冷ステップにおいて、完成品鋼材の冷却速度は0.10~0.15℃/sであり、
冷床徐冷ステップにおいて、前記完成品鋼材は保温カバーの中に入って冷床上で冷却され、500℃以下に冷却して保温カバーから出て空冷されることを特徴とする、
中炭素ホウ素含有
棒鋼のオンライン焼ならし処理に適した
制御圧延及び制御冷却方法。
【請求項2】
前記仕上げ圧延ステップにおいて、ビレットが仕上げ圧延ユニットに入る入口温度は780~830℃であり、
前記仕上げ圧延ステップにおいて、減定径仕上げ圧延ユニットを用いて仕上げ圧延を行うことを特徴とする、
請求項
1に記載の中炭素ホウ素含有
棒鋼のオンライン焼ならし処理に適した
制御圧延及び制御冷却方法。
【請求項3】
通水冷却後の完成品鋼材
の温度は710~730℃であることを特徴とする、
請求項
1に記載の中炭素ホウ素含有
棒鋼のオンライン焼ならし処理に適した
制御圧延及び制御冷却方法。
【請求項4】
冷床徐冷ステップにおいて、前記冷床はステッピング式冷床であることを特徴とする、
請求項
1に記載の中炭素ホウ素含有
棒鋼のオンライン焼ならし処理に適した
制御圧延及び制御冷却方法。
【請求項5】
前記ビレットの断面寸法は240mm×240mmであることを特徴とする、
請求項
1に記載の中炭素ホウ素含有
棒鋼のオンライン焼ならし処理に適した
制御圧延及び制御冷却方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧延鋼分野に関し、具体的には中炭素ホウ素含有鋼及びオンライン焼ならし処理の圧延冷却制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
中炭素ホウ素含有鋼は、良好な焼入れ性を有する合金構造鋼であり、自動車の等速伝動軸などの重要な部品を製造するために多く用いられ、加工と使用条件の要求により、材料組織と硬度に厳しい要求がある。
【0003】
製造過程において、従来技術は、一般的に、鋼材の組織硬度要求を満たすために鋼材をオフライン焼ならし処理する必要があるが、生産応用に使用される完成品材料の規格が小さい(20~50mm)ため、専門の焼ならし炉を使用してオフライン焼ならし処理を行う必要があり、生産効率が低いだけでなく混晶問題も発生しやすい。同時に鋼材のオフライン焼ならし処理による生産周期は、約1週間増加し、対応する生産コストは約400元/トン増加し、当該製品の量産と応用が深刻に制約された。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、中炭素ホウ素含有鋼及びオンライン焼ならし処理の圧延冷却制御方法を提供し、この方法を用いて製造された中炭素ホウ素含有鋼は、中炭素ホウ素含有鋼の熱間圧延状態の組織を明らかに細分化でき、ブリネル硬度190~220HBW、結晶粒度≧7級、帯状組織≦2級の要求を満たすため、元のオフライン焼ならし処理のポロセスの代わりになる。同時に生産周期を節約し、焼ならしコストを低下して企業の生産コストを低減し、製品競争力を高める。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の技術案を提供している。
【0006】
中炭素ホウ素含有鋼であって、前記中炭素ホウ素含有鋼の化学成分は、質量%で、C 0.37~0.45%、Si 0.17~0.37%、Mn 0.60~0.90%、Al 0.020~0.060%、B 0.0008~0.0035%、Ti 0.030~0.060%、P ≦0.025%、S ≦0.025%、Cr ≦0.25%、Ni ≦0.20%、Mo ≦0.10%、Cu ≦0.20%を含み、残りはFe及び避けられない不純物である。
【0007】
さらに、前記中炭素ホウ素含有鋼は、ブリネル硬度190~220HBW、結晶粒度≧7級、帯状組織≦2級を満たす。
【0008】
さらに、前記中炭素ホウ素含有鋼の規格は、Φ20~50mmである。
【0009】
本発明は、加熱、粗圧延、仕上げ圧延、通水冷却、冷床徐冷というステップを順次に含んでいる上記の中炭素ホウ素含有鋼のオンライン焼ならし処理に適した圧延冷却制御方法をさらに提供する。
【0010】
さらに、上記の中炭素ホウ素含有鋼のオンライン焼ならし処理に適した圧延冷却制御方法において、前記加熱ステップにおいて、ビレットの加熱炉内の加熱温度は1100~1200℃であり、総加熱時間は90~180minであり、好ましくは、ビレットの加熱炉内の加熱温度は1130~1180℃であり、総加熱時間は120~150minである。
【0011】
さらに、上記の中炭素ホウ素含有鋼のオンライン焼ならし処理に適した圧延冷却制御方法において、前記粗圧延ステップにおいて、ビレットが粗圧延ユニットに入る入口温度は1000~1050℃である。
【0012】
さらに、上記の中炭素ホウ素含有鋼のオンライン焼ならし処理に適した圧延冷却制御方法において、前記仕上げ圧延ステップにおいて、ビレットが仕上げ圧延ユニットに入る入口温度は780~830℃であり、好ましくは、前記仕上げ圧延ステップにおいて、ビレットが仕上げ圧延ユニットに入る入口温度は780~810℃であり、好ましくは、前記仕上げ圧延ステップにおいて、減定径仕上げ圧延ユニットを用いて仕上げ圧延を行う。
【0013】
さらに、上記の中炭素ホウ素含有鋼のオンライン焼ならし処理に適した圧延冷却制御方法において、通水冷却は水箱による噴水冷却であり、通水冷却した後、完成品鋼材の出水温度は700~750℃であり、好ましくは、前記水箱の水量は40~60L/minであり、完成品鋼材の走行速度は3~8m/sであり、好ましくは、通水冷却後の完成品鋼材の出水温度は710~730℃である。
【0014】
さらに、上記の中炭素ホウ素含有鋼のオンライン焼ならし処理に適した圧延冷却制御方法において、冷床徐冷ステップにおいて、完成品鋼材の冷却速度は0.10~0.15℃/Sである。
【0015】
さらに、上記の中炭素ホウ素含有鋼のオンライン焼ならし処理に適した圧延冷却制御方法において、冷床徐冷ステップにおいて、前記完成品鋼材は保温カバーの中に入って冷床上で冷却され、500℃以下に冷却して保温カバーから出て空冷される。
【0016】
さらに、上記の中炭素ホウ素含有鋼のオンライン焼ならし処理に適した圧延冷却制御方法において、冷床徐冷ステップにおいて、前記冷床はステッピング冷床である。
【0017】
さらに、上記の中炭素ホウ素含有鋼のオンライン焼ならし処理に好適な圧延冷却制御方法において、前記ビレットの断面寸法は240mm×240mmである。
【発明の効果】
【0018】
従来技術と比較して、本発明の有益な効果は、以下のようになる。
【0019】
(1)生産過程において鋼材の成分を再度調整する必要はなく、余計のオフライン焼ならしの生産設備を追加する必要はなく、圧延成形と冷却プロセスを調整するだけで当該種類の製品のオンライン焼ならし処理を実現することができ、同時に鋼材の組織硬度要求を満たすことができる。
【0020】
(2)生産過程の各段階で温度制御範囲が広く、工業化生産を容易に制御して実現した。
【0021】
(3)加熱ステップでオフライン焼ならしの代わりにオンライン焼ならしを利用し、固定設備投資を減少し、生産周期(約1週間)を短縮し、生産コスト(約400元/トン)を低減し、生産周期を加速し、生産コストを低減し、製品競争力を高めた。
【0022】
(4)本方法を用いて製造した中炭素ホウ素含有鋼は、硬度190~220HBW、実際の結晶粒度≧7級、帯状組織≦2級の要求を満たすことができ、ユーザーの当該製品のオフライン焼ならし後の技術指標要求を完全に満たすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
以下、図面に基づいて本発明の具体的な実施形態をさらに説明する。なお、本願の一部となる明細書図面は、本発明へのさらなる理解を提供するためのものであり、本発明の例示的な実施例及びその説明は、本発明への不当な限定となるものではなく、本発明を解釈するためのものである。
【
図1】実施例1で生産された規格32mmの40B鋼半径1/2での顕微組織図である。
【
図2】実施例2で生産された規格28mmの40B鋼半径1/2での顕微組織図である。
【
図3】比較例1で生産された規格30mmの40B鋼半径1/2での顕微組織図である。
【
図4】比較例2で生産された規格34mmの40B鋼半径1/2での顕微組織図である。
【
図5】比較例3で生産された規格28mmの40B鋼半径1/2での顕微組織図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照し、実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。各例示は、本発明を限定するのではなく、本発明の解釈によって提供される。実際には、本発明の範囲または精神から逸脱しない限り、本発明において補正および変形が可能であることは、当業者には明らかである。例えば、1つの実施例の一部の特徴を別の実施例に応用してまた別の実施例を生成することができる。したがって、本発明は、添付の請求項およびその均等物の範囲内に収まる補正および変形を含むことが望ましい。
【0025】
添付の図面には、本発明の1つまたは複数の例が示されている。詳細な説明では、図面内の特徴を指すために数字とアルファベット記号が使用されている。図面および説明における相似または類似記号は、本発明の相似または類似部分を指すために使用された。
【0026】
図1~
図2に示すように、本発明の実施例によれば、中炭素ホウ素含有鋼であって、該中炭素ホウ素含有鋼の化学成分は、質量%で、C 0.37~0.45%、Si 0.17~0.37%、Mn 0.60~0.90%、Al 0.020~0.060%、B 0.0008~0.0035%、Ti 0.030~0.060%、P ≦0.025%、S ≦0.025%、Cr ≦0.25%、Ni ≦0.20%、Mo ≦0.10%、Cu ≦0.20%を含み、残りはFe及び避けられない不純物である中炭素ホウ素含有鋼を提供する。中炭素ホウ素含有鋼は、主にマンガンMnとホウ素Bを合金元素とし、クロムCr、ニッケルNi、モリブデンMoまたは銅Cuなどの合金元素の含有量が高すぎると、圧延冷却制御後にベイナイトなどの組織が形成されやすくなり、硬度を高くしすぎる。
【0027】
前記中炭素ホウ素含有鋼の規格はΦ20~50mmであり、前記中炭素ホウ素含有鋼は、ブリネル硬度190~220HBW、結晶粒度≧7級、帯状組織≦2級を満たし、前記中炭素ホウ素含有鋼の規格は、Φ20~50mmである。
【0028】
本発明の実施例によれば、加熱、粗圧延、仕上げ圧延、通水冷却、冷床徐冷というステップを順次に含み、そのうち、選択したビレットの断面寸法が240mm×240mmである中炭素ホウ素含有鋼のオンライン焼ならし処理に適した圧延冷却制御方法を提供する。
【0029】
前記加熱ステップにおいて、ビレットの加熱炉内の加熱温度は、1100℃~1200℃(例えば、1100℃、1110℃、1120℃、1130℃、1140℃、1150℃、1160℃、1170℃、1180℃、1190℃、1200℃、及びそのうちいずれか2つの温度の間の区間帯または区間点)であり、総加熱時間は90~180min(例えば、90min、100min、110min、120min、130min、140min、150min、160min、170min、180min、及びそのうちいずれか2つの時間帯の間の時点)である。
【0030】
好ましい実施形態として、前記加熱ステップにおいて、ビレットの加熱炉内の加熱温度は1130~1180℃(例えば1130℃、1140℃、1150℃、1160℃、1170℃、1180℃、及びそのうちいずれか2つの温度の間の区間帯又は区間点)であり、総加熱時間は120~150min(例えば120min、130min、140min、150min、及びそのうちいずれか2つの時間帯の間の時点)であり、対応する加熱温度と加熱時間を選択する目的は、ビレットが十分に加熱されることを保証するとともに、過熱も発生させないことである。
【0031】
前記粗圧延ステップにおいて、そのうち、粗圧延ユニットに入る入口温度は1000~1050℃(例えば、1000℃、1010℃、1020℃、1030℃、1040℃、1050℃、及びそのうちいずれか2つの温度の間の区間帯又は区間点)である。粗圧延ユニットは6機の平立式連続圧延ユニットであり、作動ロール径は650mmである。粗圧延ユニットの入口温度は加熱ステップの温度と関係があり、加熱ステップと粗圧延ステップの間は高圧水によるリン除去によりビレットの温度が低下する。
【0032】
前記仕上げ圧延ステップにおいて、仕上げ圧延ユニットは減定径仕上げ圧延ユニットを採用し、仕上げ圧延ユニットに入る入口温度は780~830℃(例えば780℃、790℃、800℃、810℃、820℃、830℃、及びそのうちいずれか2つの温度の間の区間帯又は区間点)であり、より好ましい仕上げ圧延ユニットに入る入口温度は、780~810℃(例えば、780℃、790℃、800℃、810℃、及びそのうちいずれか2つの温度の間の区間帯又は区間点)である。精密圧延ユニットは4機の3-ロール減定径仕上げ圧延機であり、3-ロール減定径仕上げ圧延機を用いた成材の変形量が大きく、結晶粒の精密化に有利である。
【0033】
前記通水冷却ステップにおいて、完成品鋼材の通水冷却後の出水温度は700~750℃(例えば700℃、710℃、720℃、730℃、740℃、750℃、及びそのうちいずれか2つの温度の間の区間帯又は区間点)であり、より好ましい完成品鋼材の通水冷却後の出水温度は710~730℃(例えば710℃、720℃、730℃、及びそのうちいずれか2つの温度の間の区間帯又は区間点)である。水箱の水量は40~60L/minであり、完成品鋼材の走行速度は3~8m/sであることが好ましい(成材規格に応じて選択可能)。通水冷却及び上記パラメータ設定は、圧延中の鋼材の温度上昇による回復再結晶による結晶粒の粗大化を防止することができる。
【0034】
冷床徐冷ステップにおいて、通水冷却ステップ後の完成品鋼材は冷床に入って徐冷され、冷床はステッピング式冷床を用いて徐冷し、完成品鋼材の冷却速度は0.10~0.15℃/Sであり、前記完成品鋼材は保温カバーに入って冷床上で冷却され、500℃以下に冷却され、完成品鋼材を保温カバーから取り出して空冷する。保温カバーを利用して空冷を行うことは、徐冷作用があり、完成品鋼材は冷却速度が速いため内部残留応力が大きく、後続の旋削または熱処理過程で変形する問題を防止する。完成品鋼材を直接空冷すると、鋼材の内部応力が大きくなり、後続の加工過程で変形する問題が発生する可能性がある。完成品鋼材が保温カバーに入って冷床上で冷却されることで、直接空冷による問題を回避することができる。
【0035】
本願に開示された方法により製造された中炭素ホウ素含有鋼は、オフライン焼ならしのプロセスを必要とせずに、ブリネル硬度190~220HBW、実際の結晶粒度≧7級、帯状組織≦2級の要求を満たすことができ、ユーザーの当該製品のオフライン焼ならし後の技術指標要求を完全に満たすことができる。この中炭素ホウ素含有鋼を製造する圧延冷却制御方法は、オフライン焼ならしステップのコストと時間を節約し、固定設備投資を減少し、生産周期を短縮し、生産コストを低減し、生産周期を加速し、製品競争力を高める。
【0036】
実施例1
選択したビレットの断面寸法は240mm×240mmであり、該中炭素ホウ素含有鋼のビレットの化学成分は、質量%で、C 0.38%、Si 0.25%、Mn 0.86%、Al 0.032%、B 0.0017%、Ti 0.047%、P 0.013%、S 0.005 %、Cr 0.14%、Ni 0.03 %、Mo 0.02%、Cu 0.02%を含み、残りはFe及び避けられない不純物であり、ビレットの断面寸法は240mm×240mmである。
【0037】
加熱ステップ:ビレットの加熱炉に入る加熱温度は1140~1160℃、総加熱時間は142minである。
【0038】
粗圧延ステップ:粗圧延ユニットに入る入口温度は1038℃である。
【0039】
仕上げ圧延ステップ:減定径仕上げ圧延ユニットを採用し、仕上げ圧延ユニットに入る入口温度は795℃である。
【0040】
通水冷却ステップ:減定径仕上げ圧延ユニットによって圧延された完成品鋼材は、フライングシアにより切断後に水箱で噴水冷却され、完成品鋼材の通水冷却後の水箱から出る温度は728℃である。
【0041】
冷床徐冷ステップ:ステッピング式冷床で行い、完成品鋼材の冷却速度は0.10~0.15℃/Sである。
【0042】
切断後の完成品鋼材に保温カバーを付けてステッピング式冷床で冷却し、保温カバーを閉じて完成品鋼材を冷床上で徐々に冷却し、475℃まで冷却して保温カバーから出て空冷する。
【0043】
上記ステップで処理した完成品鋼材は、断面1/2での硬度が204/208 HBWであり、実際の結晶粒度は8級であり、
図1に示すように、帯状組織は1.5級である。
【0044】
実施例2
該中炭素ホウ素含有鋼のビレットの化学成分は、質量%で、C 0.38%、Si 0.25%、Mn 0.84%、Al 0.028%、B 0.0020%、Ti 0.045%、P 0.012%、S 0.008%、Cr 0.12%、Ni 0.02%、Mo 0.03%、Cu 0.03%を含み、残りはFe及び避けられない不純物であり、選択したビレットの断面寸法は240mm×240mmである。
【0045】
中炭素ホウ素含有鋼のオンライン焼ならし処理に適した圧延冷却制御方法のステップは、実施例1のように、そのうち、中炭素ホウ素含有鋼のオンライン焼ならし処理に適した圧延冷却制御方法の各ステップのパラメータの比較は表1を参照して、実施例2のステップで処理された完成品鋼材の断面1/2での硬度は212/215HBWであり、実際の結晶粒度は9級であり、
図2に示すように、帯状組織は1.5級である。
【0046】
表1は、実施例1及び実施例2の各ステップのパラメータ及び得られた鋼材の性能である。
【0047】
【0048】
実施例3~5
実施例3~5の中炭素ホウ素含有鋼のビレットの化学成分は実施例1と同じである。
【0049】
実施例3~5における加熱、粗圧延、仕上げ圧延、通水冷却、冷床徐冷の各ステップのパラメータは、表2に示されており、1/2Rでの硬度、結晶粒度、及び帯状組織度を含む完成品鋼材の性能も表2に示された。
【0050】
表2は、実施例3~5の各ステップのパラメータ及び得られた鋼材の性能である。
【0051】
【0052】
表2から分かるように、実施例3~5で得られた鋼材の1/2Rでの硬度は202~214HBWであり、結晶粒度は8~8.5級であり、帯状組織度は1.5~2.0級である。
【0053】
実施例6~8
実施例6~8の中炭素ホウ素含有鋼のビレットの化学成分は実施例1と同じである。
【0054】
実施例6~8における加熱、粗圧延、仕上げ圧延、通水冷却、冷床徐冷の各ステップのパラメータは、表3に示されており、1/2Rでの硬度、結晶粒度、及び帯状組織度を含む完成品鋼材の性能も表3に示された。
【0055】
表3は、実施例6~8で得られた鋼材の各ステップのパラメータ及び性能である。
【0056】
【0057】
表3から分かるように、実施例6~8で得られた鋼材の1/2Rでの硬度は、204~218HBWであり、結晶粒度は8~9級であり、帯状組織度は1.5~2.0級である。
【0058】
比較例1~3
比較例1~3の中炭素ホウ素含有鋼のビレットの化学成分は実施例1と同じである。
【0059】
比較例1~3における加熱、粗圧延、仕上げ圧延、通水冷却、冷床徐冷の各ステップのパラメータは、表4に示されている。
【0060】
表4は比較例1~3で得られた鋼材の異なるステップのパラメータ及び性能である。
【0061】
【0062】
表4から分かるように、比較例1は、加熱ステップにおける加熱温度が異なることで粗圧延機に入る温度が高くなる点以外、その他のステップのプロセスパラメータはすべて本願の保護範囲内にある。加熱ステップにおける加熱温度が高すぎるため、
図3に示すように、原材料の元のオーステナイト結晶粒が粗大になり、圧延過程の冷却水量が増加し、成材後の局所結晶粒度が粗大になり、硬度が高くなった。
【0063】
比較例2は、加熱ステップにおける総加熱時間が異なる点以外、他のステップのプロセスパラメータはすべて本願の保護範囲内にある。加熱時間が長すぎるため、
図4に示すように、原材料の元のオーステナイト結晶粒が粗大になり、成材後の局所結晶粒度が粗大になった。
【0064】
比較例3は、冷床徐冷ステップで保温カバーを使用せずに冷床冷却に直接入る点以外、他のステップのプロセスパラメータはすべて本願の保護範囲内にある。保温カバーを使用しないので冷却速度が速すぎるため、
図5に示すように、原材料の硬度が高くなり、残留内応力が大きくなり、後続の加工変形のリスクがある。
【0065】
実施例1~8と比較例1~3の分析に基づいて、本発明は、鋼材の圧延時の温度と冷却速度を調整することによってオンライン焼ならし処理に実現し、熱間圧延状態の鋼材の硬度と組織を元の焼ならし状態の要求に達させる中炭素ホウ素含有鋼のオンライン焼ならし処理に適した圧延冷却制御方法を提供する。
【0066】
以上は、本発明を限定するものではなく、本発明の好適な実施例にすぎない。当業者にとっては、本発明は種々の変更及び変化が可能である。本発明の精神と原則の中で行ったいかなる補正、等価置換、改良などは、本発明の保護範囲に含まれるべきである。