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特許7561299情報処理装置、情報処理方法及びプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-25
(45)【発行日】2024-10-03
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/14 20060101AFI20240926BHJP
【FI】
A61M1/14
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2024097756
(22)【出願日】2024-06-17
【審査請求日】2024-06-17
(31)【優先権主張番号】P 2023219969
(32)【優先日】2023-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004266
【氏名又は名称】弁理士法人MSウィード
(72)【発明者】
【氏名】繁田 愼也
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2021/0077694(US,A1)
【文献】国際公開第2023/013311(WO,A1)
【文献】国際公開第2023/013250(WO,A1)
【文献】特開2021-033901(JP,A)
【文献】特開2013-105221(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/14
A61M 1/16
G16H 40/40
G06Q 10/0875
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の血液を浄化する血液浄化装置のメンテナンス時期を推定する情報処理装置であって、
前記血液浄化装置の動作状態を示す状態パラメータから生成される動作データを取得する動作データ取得部と、
前記血液浄化装置のメンテナンス時期を推定するための機械学習を行った学習済み推定モデルに前記動作データを入力して、前記血液浄化装置の次回メンテナンスに係る推定データを取得する推定部と、
前記血液浄化装置のメンテナンス情報を表示するための表示データを前記推定データに基づいて生成する制御部と、を有し、
前記学習済み推定モデルは、前記血液浄化装置の過去のメンテナンスの実施データを機械学習することによって生成されている、情報処理装置。
【請求項2】
前記推定データは、前記血液浄化装置のメンテナンス対象部品のデータを含む、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記学習済み推定モデルは、前記血液浄化装置の過去の使用状況データ、過去の故障データ、及びメンテナンスの基本データを関連付けて機械学習することによって生成されている、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記状態パラメータは、前記血液浄化装置を構成する構成装置又は前記血液浄化装置の流路に設けられたセンサにおいて検出した動作信号、温度信号、圧力信号、又は流量信号の少なくともいずれか1つを含む、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記学習済み推定モデルは、前記構成装置ごとにメンテナンス対象部品及び前記メンテナンス対象部品に対するメンテナンス時期を推定し、
前記制御部は、前記構成装置ごとに前記メンテナンス対象部品及び前記メンテナンス時期を前記メンテナンス情報として表示するための前記表示データを前記推定データに基づいて生成する、請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記学習済み推定モデルは、
前記血液浄化装置におけるメンテナンスの統一化データを機械学習することによって生成され、
所定期間に行われるメンテナンスを同一タイミングにて実施するように推定する、請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記学習済み推定モデルは、
複数の前記患者の血液浄化実績データを機械学習することによって生成され、
次回患者の選出データを前記推定データに含めて推定する、請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記学習済み推定モデルは、前記血液浄化装置のメンテナンス時期を期間単位で推定し、推定した期間内においてメンテナンス時期を遅くするための条件を推定する、請求項6又は7に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記動作データ取得部は、前記状態パラメータから前記動作データを生成する算出部を備える、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記算出部は、前記血液浄化装置の構成装置又は前記血液浄化装置の流路に設けられたセンサにおいて検出した動作信号、温度信号、圧力信号、又は流量信号の少なくともいずれか1つから、前記血液浄化装置の動作回数又は洗浄回数を算出する、請求項9に記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記推定部は、前記血液浄化装置の過去のメンテナンスデータを前記学習済み推定モデルに入力し、
前記推定データは、過去のメンテナンス実施時から動作データ取得時までにおける前記血液浄化装置の状態変化が関連付けられている、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記推定データに含まれる前記メンテナンス対象部品の発注先を発注先データから選択し、前記メンテナンス対象部品の発注を行う、請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項13】
前記動作データ取得部は、複数の前記血液浄化装置の動作データを取得し、
前記制御部は、複数の前記血液浄化装置又はメンテナンス実施者の携帯端末装置に送信するためのメンテナンス情報を生成する、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項14】
前記学習済み推定モデルは、
前記血液浄化装置の過去の使用状況データ、過去の故障データ、過去のメンテナンスの実施データ、メンテナンスの基本データ、及び複数の前記患者の血液浄化実績データを関連付けて機械学習することによって生成され、
複数の前記血液浄化装置のそれぞれに対して次回患者の選出データを前記推定データに含めて推定する、請求項13に記載の情報処理装置。
【請求項15】
患者の血液を浄化する血液浄化装置のメンテナンス時期を推定する以下の各工程をプロセッサが行う情報処理方法であって、
前記血液浄化装置の動作状態を示す状態パラメータから生成される動作データを取得する工程と、
前記血液浄化装置のメンテナンス時期を推定するための機械学習を行った学習済み推定モデルに前記動作データを入力して、前記血液浄化装置の次回メンテナンスに係る推定データを取得する工程と、
前記血液浄化装置のメンテナンス情報を表示するための表示データを前記推定データに基づいて生成する工程と、を有し、
前記学習済み推定モデルは、前記血液浄化装置の過去のメンテナンスの実施データを機械学習することによって生成されている、情報処理方法。
【請求項16】
患者の血液を浄化する血液浄化装置のメンテナンス時期を推定するプログラムであって、
前記血液浄化装置の動作状態を示す状態パラメータから生成される動作データを取得し、
前記血液浄化装置のメンテナンス時期を推定するための機械学習を行った学習済み推定モデルに前記動作データを入力して、前記血液浄化装置の次回メンテナンスに係る推定データを取得し、
前記血液浄化装置のメンテナンス情報を表示するための表示データを前記推定データに基づいて生成する、処理をコンピュータに実行させ、
前記学習済み推定モデルは、前記血液浄化装置の過去のメンテナンスの実施データを機械学習することによって生成されている、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、血液浄化装置のメンテナンス時期の推定に係る情報処理装置、情報処理方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、人工知能(AI:Artificial Intelligence)を用いた情報処理が行われており、当該人工知能を種々の技術分野へと応用する研究及び開発が進められている。近年においては、医療分野においても人工知能の活用事例が増加してきており、医師及びその他の医療関係者に代わり、人工知能による各種の判断処理が可能になってきている。
【0003】
例えば、特許文献1乃至3には、血液浄化の医療分野における人工知能の活用が記載されている。特に、特許文献1には、入力された情報に基づいて、人工知能が医療機器の動作モジュールの状態を最適に適応させる透析システムが開示されている。また、特許文献2には、患者の体液に所定の波長の光を照射し、センサから得られる当該体液の光学特性から当該患者の感染症を人工知能によって予測する方法が開示されている。更に、特許文献3には、腹膜透析に使用される消耗部品の必要数量の算出、及び自動的な発注を行う水濾過システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2022-514408号公報
【文献】特表2022-538264号公報
【文献】特表2021-516089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、血液浄化装置においては、1度きりで交換する消耗部品以外にも、状態の維持及び管理といった定期的なメンテナンスを必要とするメンテナンス対象部品が存在する。このようなメンテナンス対象部品に対しては、それぞれにメンテナンスを行う頻度及び時期が設定されているため、血液浄化装置自体のメンテナンスが煩雑化している。
【0006】
本開示はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、血液浄化装置のメンテナンス対象部品のメンテナンス時期を容易に推定し、メンテナンスの頻度及び時期の適正化を図ることができるための情報処理装置、情報処理方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様によれば、「患者の血液を浄化する血液浄化装置のメンテナンス時期を推定する情報処理装置であって、前記血液浄化装置の動作状態を示す状態パラメータから生成される動作データを取得する動作データ取得部と、前記血液浄化装置のメンテナンス時期を推定するための機械学習を行った学習済み推定モデルに前記動作データを入力して、前記血液浄化装置の次回メンテナンスに係る推定データを取得する推定部と、前記血液浄化装置のメンテナンス情報を表示するための表示データを前記推定データに基づいて生成する制御部と、を有し、前記学習済み推定モデルは、前記血液浄化装置の過去のメンテナンスの実施データを機械学習することによって生成されている、情報処理装置。」が提供される。
【0008】
本開示の一態様によれば、「患者の血液を浄化する血液浄化装置のメンテナンス時期を推定する情報処理方法であって、前記血液浄化装置の動作状態を示す状態パラメータから生成される動作データを取得する工程と、前記血液浄化装置のメンテナンス時期を推定するための機械学習を行った学習済み推定モデルに前記動作データを入力して、前記血液浄化装置の次回メンテナンスに係る推定データを取得する工程と、前記血液浄化装置のメンテナンス情報を表示するための表示データを前記推定データに基づいて生成する工程と、を有し、前記学習済み推定モデルは、前記血液浄化装置の過去のメンテナンスの実施データを機械学習することによって生成されている、情報処理方法。」が提供される。
【0009】
本開示の一態様によれば、「患者の血液を浄化する血液浄化装置のメンテナンス時期を推定する以下の各工程をプロセッサが行う情報処理方法であって、前記血液浄化装置の動作状態を示す状態パラメータから生成される動作データを取得する工程と、前記血液浄化装置のメンテナンス時期を推定するための機械学習を行った学習済み推定モデルに前記動作データを入力して、前記血液浄化装置の次回メンテナンスに係る推定データを取得する工程と、前記血液浄化装置のメンテナンス情報を表示するための表示データを前記推定データに基づいて生成する工程と、を有し、前記学習済み推定モデルは、前記血液浄化装置の過去のメンテナンスの実施データを機械学習することによって生成されている、情報処理方法。」が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、血液浄化装置のメンテナンス対象部品のメンテナンス時期を容易に推定し、メンテナンスの頻度及び時期の適正化を図ることができるための情報処理装置、情報処理方法、及びプログラムを提供することができる。
【0011】
なお、上記効果は説明の便宜のための例示的なものにすぎず、本開示に係る効果は上記に限定されない。上記効果に加えて、本開示によれば、本開示中に記載されたいかなる効果を奏することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態に係る血液浄化装置の使用状態の一例を示す概略図である。
図2】第1実施形態に係る血液浄化装置の電気的構成を示すブロック図である。
図3】第1実施形態に係る血液浄化装置の内部配管部の構成図である。
図4】第1実施形態に係る血液浄化装置の体外循環部の構成図である。
図5】第1実施形態に係る情報処理装置に記憶されたデータテーブルである。
図6】第1実施形態に係る情報処理装置に記憶されたデータテーブルである。
図7】第1実施形態に係る情報処理装置の機能ブロック図である。
図8】第1実施形態に係る血液浄化装置におけるメンテナンスの推定に係るシーケンス図である。
図9】第1実施形態に係る情報処理装置に設定される学習済み推定モデルの設定の流れを示すフロー図である。
図10】第1実施形態に係る情報処理装置に設定される学習済み推定モデルの評価の流れを示す概略図である。
図11】第1実施形態に係る血液浄化装置において表示されるメンテナンス情報の報知例である。
図12】第1実施形態に係る情報処理装置において実行されるメンテナンスの推定に係るフロー図である。
図13】第1実施形態に係る情報処理装置において実行されるメンテナンスの推定の変形例に係る概略図である。
図14】第1実施形態に係る血液浄化装置において表示されるメンテナンス情報の報知変形例である。
図15】第1実施形態の変形例に係る血液浄化装置の構成図である。
図16】第2実施形態に係る情報処理装置において実行されるメンテナンスの推定に係る概略図である。
図17】第2実施形態に係る血液浄化装置において表示されるメンテナンス情報の報知例である。
図18】第3実施形態に係る情報処理装置において実行されるメンテナンスの推定に係る概略図である。
図19】第3実施形態に係る血液浄化装置において表示されるメンテナンス情報の報知例である。
図20】第4実施形態に係る血液浄化システムの構成を示す概略図である。
図21】第4実施形態に係る血液浄化装置の機能ブロック図である。
図22】第4実施形態に係る情報処理装置の物理構成を示すブロック図である。
図23】第4実施形態に係る血液浄化装置の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本開示の情報処理装置及びこれを有する血液浄化装置について詳細に説明する。なお、本発明は以下に説明する内容に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において任意に変更して実施することが可能である。また、各実施形態に用いる図面は、いずれも本開示に係る情報処理装置及びこれを有する血液浄化装置を模式的に示すものであって、理解を深めるべく部分的な強調、拡大、縮小、又は省略等を行っており、各構成部分の縮尺や形状等を正確に表すものとはなっていない場合がある。更に、各実施形態で用いる一部の数値は、いずれも一例を示すものであり、必要に応じて様々に変更することが可能である。そして、図面における共通する構成については、同一の参照符号が付されている。
【0014】
<第1実施形態>
(血液浄化装置の構成)
まず、図1乃至図6を参照しつつ、本開示の情報処理装置を有する血液浄化装置の構成を説明する。図1は、本実施形態に係る血液浄化装置の使用状態の一例を示す概略図である。図2は、本実施形態に係る血液浄化装置の電気的構成を示すブロック図である。図3は、本実施形態に係る血液浄化装置の内部配管部の構成図である。図4は、本実施形態に係る血液浄化装置の体外循環部の構成図である。図5及び図6は、本実施形態に係る血液浄化装置に記憶されたデータテーブルである。
【0015】
図1に示すように、血液浄化装置1は、患者Hに対して透析治療を行うための透析装置から構成されている。具体的に、血液浄化装置1は、ベースユニット2の上に設置された本体3、本体3の上部に接続されたディスプレイ4、及び本体3の側方に設置された血液浄化器5を有している。また、血液浄化装置1の本体3には、情報処理装置6、血液浄化器5との間において透析液を循環させるための内部配管部7、及び患者Hの体液である血液を体外で循環させるための体外循環部8を有している。血液浄化装置1は、このような構成により、患者Hの血液を体外に取り出し、当該血液から不要若しくは有毒な物質又は水分を血液浄化器5において除去し、浄化された血液を患者Hに戻すことが可能となっている。
【0016】
ベースユニット2は、本体3の底部に接続した板状のベース2a、及びベース2aに設置された4つのキャスタ2bから構成されている。これにより、血液浄化装置1を容易に移動させることが可能となる。なお、キャスタ2bの数量は4つの限定されることなく、血液浄化装置1を移動可能にすることができれば、3つ又は5つ以上であってもよい。
【0017】
本体3は、略直方体状の筐体から構成されている。また、本体3の内部及び表面には、血液浄化装置1を構成する各種の構成装置及び各種の構成部品が配設されている。ここで、構成装置の一例としては、後述する複式ポンプ、除水ポンプ、脱気ポンプ、加圧ポンプ、原液ポンプ、及び血液ポンプ等のポンプ、並びに各種の検出器がある。これらの構成装置であるポンプについては、バルブ、シール部材、スライダ、ベアリング、又はインペラ等の各種のメンテナンス対象部品を有している。換言すると、ポンプは、一般的にメンテナンス対象部品に該当する。一方、当該構成部品の一例としては、後述する電磁弁、フィルタ、各種のセンサ、血液回路等の部品がある。当該構成部品については、所定のメンテナンスが必要となるメンテナンス対象部品に属するもの、又は一回の透析治療によって交換が必要となる消耗部品(例えば、血液回路等)に属するものがある。
【0018】
図2に示すように、血液浄化装置1は、ディスプレイ4、情報処理装置6、内部配管部7、体外循環部8、及び通信部9が、制御ライン及びデータラインを介して、互いに電気的に接続されている。これにより、血液浄化装置1においては、各種の電気部品同士の信号、データ、情報の送受信が可能となるとともに、情報処理装置6による各種の制御も可能となる。なお、以下において、データとは、信号等を処理した数値、記号、又は文字等からなるものを基本的に想定する。また、情報とは、当該データを収集又は加工したものを基本的に想定し、例えば、受信者がその後の検討材料に用いたり、受信者に活用できる内容が想定される。ただし、データ及び情報については、その内容や前後の文脈に対応させ、上記想定に合致せずに使用される場合もある。
【0019】
本実施形態においては、血液浄化装置1の一例として血液透析装置の場合を説明しているが、これに限定されることはない。例えば、急性血液浄化用の装置、腹膜透析装置、限外濾過装置、又は血液濾過装置も、血液浄化装置1の一例となり得る。すなわち、本開示においては、血液浄化装置1が所定のメンテナンスを必要とするメンテナンス対象部品を有するものであれば、いずれの装置であってもよい。
【0020】
なお、血液浄化装置1の種類に応じて、上述した構成装置及び構成部品が異なる。当然のことながら、構成装置及び構成部品が異なれば、血液浄化装置1としてのメンテナンス対象部品も異なる。すなわち、本実施形態において説明する構成装置、構成部品、メンテナンス対象装置、及びメンテナンス対象部品は一例にすぎず、血液浄化装置1が有する他の装置及び部品であっても、構成装置及び構成部品に該当し、交換、保守、点検、及び整備が必要となる各種の装置及び部品については、メンテナンス対象装置及びメンテナンス対象部品に該当する。換言すると、メンテナンス対象装置及びメンテナンス対象部品は、血液浄化装置1の管理者側で適宜設定することができる。
【0021】
〔ディスプレイ〕
次に、図1及び図2に示すように、ディスプレイ4は、タッチパネル型の入力インターフェイスからなる入力部4a、及び一般的な画面型の出力インターフェイスからなる出力部4bを有している。すなわち、本実施形態におけるディスプレイ4は、入出力インターフェイスを備えるタッチパネルである。ここで、タッチパネルによる入力の検出方式は、静電容量式、又は抵抗膜式等のいなかる方式であってもよい。
【0022】
なお、ディスプレイ4から入力インターフェイスを分離してもよい。この場合には、テンキー又は文字入力キーなどの物理キーボタンを備えるキーボード、及びマウス等の入力装置が血液浄化装置1に設けられてもよい。
【0023】
〔通信部〕
次に、図2に示すように、通信部9は、通信処理回路9a及びアンテナ9bから構成されている。通信部9は、通信処理回路9a及びアンテナ9bを介して、血液浄化装置1とは離間して設置された病院のサーバ装置、又は医療従事者(血液浄化装置1の管理者)が使用する端末装置との間で情報の送受信を行う。
【0024】
通信処理回路9aは、LTE方式に代表されるような広帯域の無線通信方式に基づいて処理を実行してもよい。また、通信処理回路9aは、IEEE802.11に代表されるような無線LAN若しくはBluetooth(登録商標)のような狭帯域の無線通信に関する方式に基づいて処理を実行してもよい。さらに、通信処理回路9aは、非接触無線通信に関する方式に基づいて処理を実行してもよい。そして、通信処理回路9aは、このような無線通信に代えて、又は加えて、有線通信が利用されてもよい。
【0025】
〔内部配管部〕
次に、図3に示すように、内部配管部7は、血液浄化器5の給液側に主配管L1、排液側に主配管L2が接続され、血液浄化器5をバイパスするようにバイパス配管L3、バイパス配管L4、及びバイパス配管L5が主配管L1と主配管L2との間に接続された構造を有する。また、主配管L1の供給側(上流側)から主配管L2の排出側(下流側)とを接続するように、バイパス配管L10が設けられている。更に、主配管L2の途中には、主配管L2の一部をバイパスするように、バイパス配管L11,L12が主配管L2に対して並列となるように接続されている。そして、主配管L2とバイパス配管L11とを接続するように、接続配管L13が設けられている。例えば、各配管には、塩化ビニールチューブ又はシリコンチューブ等の柔軟性を備える材料が使用される。
【0026】
図3に示すように、各配管には、ポンプ、弁、センサ、フィルタ等が配設されている。具体的に、主配管L1においては、減圧弁V1、電磁弁V2、脱気ポンプP0、脱ガスチャンバ10、複式ポンプP1、背圧弁V3、温度センサS1、フィルタF1、電磁弁V4、フィルタF2、圧力センサS2、及び電磁弁V5が、内部配管部7の給液端子側から血液浄化器5の一端に向かって順番に配設されている。また、主配管L1の先端(血液浄化器5との接続側)にはコネクタC1が配設されている。更に、主配管L2においては、電磁弁V6、圧力センサS3、加圧ポンプP2、脱ガスチャンバ11、複式ポンプP1、背圧弁V7、流量検出器12、及び電磁弁V8が、血液浄化器5の一端から内部配管部7の排液端子側に向かって順番に配置されている。そして、主配管L2の先端(血液浄化器5との接続側)にはコネクタC2が配設されている。
【0027】
バイパス配管L3は、主配管L1上のフィルタF1と、主配管L2上の圧力センサS3の下流側とを接続する位置に設けられている。ここで、バイパス配管L3には、電磁弁V9が配設されている。また、バイパス配管L4は、主配管L1上のフィルタF2と、主配管L2上の圧力センサS3の上流側(すなわち、電磁弁V6の下流側)とを接続する位置に設けられている。ここで、バイパス配管L4には、電磁弁V10が配設されている。更に、バイパス配管L5は、主配管L1上の電磁弁V5の下流側と、主配管L2上の電磁弁V6の上流側とを接続する位置に設けられている。ここで、バイパス配管L5は、主配管L1のコネクタC1と主配管L2のコネクタC1とを接続することにより形成される。すなわち、治療を行う場合には主配管L1及び主配管L2が血液浄化器5に接続されるが、内部配管部7の洗浄を行う場合等に、コネクタC1及びコネクタC2が接続されてバイパスコネクタC3がバイパス配管L5上に形成されることになる。なお、上流及び下流とは、各部材における透析液の流れに対応して定義している。
【0028】
バイパス配管L10は、主配管L1上の電磁弁V2と脱気ポンプP0との間と主配管L2上の電磁弁V8の下流側との間に脱ガスチャンバ10を経由して接続され、減圧弁V1、電磁弁V2及び脱ガスチャンバ10以外の部品をバイパスするような構成を有する。バイパス配管L11,L12は、主配管L2上の圧力センサS3と複式ポンプP1との間と、主配管L2上の複式ポンプP1と流量検出器12との間に接続され、複式ポンプP1をバイパスするような構成を有する。本実施形態においては、バイパス配管L12と比較して、バイパス配管L11が複式ポンプP1に近い位置に接続されている。また、バイパス配管L11には、背圧弁V11及び除水ポンプP3が配設されている。更に、バイパス配管L12には、電磁弁V12が配設されている。接続配管L13は、主配管L2上の脱ガスチャンバ11と、バイパス配管L11上の背圧弁V11と除水ポンプP3との間と、を接続している。
【0029】
上述した各種の弁、各種のポンプ、及び流量検出器12は、情報処理装置6から供給される制御信号に基づいて、各動作が制御される。これにより、透析液を所望の流量にて循環させ、又は各種の洗浄を行うことができる。例えば、複式ポンプP1による送液量をより正確に行うため、複式ポンプP1が吸い込み動作を行っている場合、給水圧又は加圧ポンプP2によって加圧することにより、当該吸い込み動作をサポートするような制御が行われる。すなわち、給液側の吸い込み量のサポートのために、減圧弁V1を制御して給水圧が調整され、排液側の吸い込み量のサポートのために、加圧ポンプP2が制御される。ここで、加圧ポンプP2の圧力制御は、加圧ポンプP2の圧力が所定以上になると、背圧弁V11が開弁することで実行される。一方、複式ポンプP1が吐出動作している場合、吐出圧が所定値以下になったら液が流れないように背圧弁V3,V7が閉弁し、慣性の影響をなくすことによって吐出動作をサポートするような制御が行われる。すなわち、給液側の吐出量のサポートのために、背圧弁V3が閉弁し、排液側の吐出量のサポートのために、背圧弁V7が閉弁している。
【0030】
また、これらの弁、ポンプ、及び流量検出器12は、各構成装置若しくは構成部品、又はこれらを有する血液浄化装置1の動作状態を示す状態パラメータを情報処理装置6に対して送信することが可能である。例えば、これらの弁、ポンプ、流量検出器12は、内蔵された各種センサによって測定された状態パラメータを、情報処理装置6に対して送信してもよい。すなわち、状態パラメータとは、各種センサによって測定された測定値であってもよい。なお、各種センサが内蔵されていない場合には、各構成装置又は構成部品の近傍に配設された各種のセンサによって状態パラメータが測定され、送信されてもよい。そして、内部配管部7において測定される各状態パラメータを総称して配管部パラメータとも称する。
【0031】
同様に、上述した各種のセンサも、測定値を情報処理装置6に対して送信することが可能である。これにより、情報処理装置6は、血液浄化装置1の内部配管部7の動作状態を示す各種の状態パラメータを取得することが可能になる。一方、上述した各種のフィルタ、オーリング、コネクタ、ポートについては、センシング機能を備えていないため、その近傍に設けられている温度センサ又は圧力センサによって、それぞれの使用状況が把握されてもよい。
【0032】
以上のように、内部配管部7においては、透析液の循環処理、及び洗浄処理に加えて、血液浄化装置1、並びに血液浄化装置1の構成装置及び構成部品の動作状態を示す状態パラメータの取得処理が行われている。後述するが、取得された状態パラメータは、血液浄化装置1のメンテナンス時期の推定に利用されることになる。
【0033】
〔体外循環部〕
次に、図4に示すように、体外循環部8は、血液浄化器5に対する血液導入側に動脈側血液回路L21が接続され、血液浄化器5に対する血液導出側に静脈側血液回路L22が接続された構造を有する。また、動脈側血液回路L21と静脈側血液回路L22との間には、血液浄化器5をバイパスするように、液面調整回路L23が接続されている。ここで、液面調整回路L23は、血液浄化器5に対して並列に配置されたバイパスラインL24、及びバイパスラインL24に対する空気の導入又は排出を行うための開放ラインL25から構成されている。例えば、各回路には、塩化ビニールチューブ又はシリコンチューブ等の柔軟性を備える材料が使用される。
【0034】
動脈側血液回路L21には、コネクタC21、電磁弁V21、気泡検出器22、血液ポンプP21、血液濃度検出器23、及び動脈側エアトラップチャンバ24が、患者H側から血液浄化器5に向かって順番に配設されている。また、静脈側血液回路L22には、静脈側エアトラップチャンバ25、流量検出器26、圧力検出器27、気泡検出器28、電磁弁V22、及びコネクタC22が、血液浄化器5から患者Hに向かって順番に配設されている。なお、血液浄化装置1を駆動させて患者Hの血液を浄化する場合には、コネクタC21には動脈側穿刺針(図示せず)が接続され、コネクタC22には静脈側穿刺針(図示せず)が接続され、各穿刺針が患者Hの腕に刺さることになる。
【0035】
このような構成から、動脈側血液回路L21においては、患者Hから取り出した血液の量及び濃度が検出され、静脈側血液回路L22においては、患者Hに戻す血液の量及び濃度が検出される。
【0036】
液面調整回路L23のバイパスラインL24には、動脈側エアトラップチャンバ24から静脈側エアトラップチャンバ25に向かって、圧力センサS22、電磁弁V23、電磁弁V24、及び圧力センサS23が順番に配設されている。また、液面調整回路L23の開放ラインL25には、液面調整ポンプP22が配設されている。このような構成により、液面調整ポンプを駆動して空気の導入又は排出が可能となり、各エアトラップチャンバにおける血液面を調整することができる。
【0037】
上述した各電磁弁、各種のポンプ、及び各種の検出器は、情報処理装置6から供給される制御信号に基づいて、各動作が制御される。また、これらの電磁弁、ポンプ、及び検出器は、各構成装置若しくは構成部品、又はこれらを有する血液浄化装置1の動作状態を示す状態パラメータを情報処理装置6に対して送信することが可能である。例えば、これらの電磁弁、ポンプ、及び検出器は、内蔵された各種センサによって測定された状態パラメータを、情報処理装置6に対して送信してもよい。すなわち、状態パラメータとは、各種センサによって測定された測定値であってもよい。なお、各種センサが内蔵されていない場合には、各構成装置又は構成部品の近傍に配設された各種のセンサによって状態パラメータが測定され、送信されてもよい。そして、体外循環部8において測定される各状態パラメータを総称して、循環部パラメータとも称する。
【0038】
同様に、上述した各圧力センサも、測定値を情報処理装置6に対して送信することが可能である。これにより、情報処理装置6は、血液浄化装置1の体外循環部8の動作状態を示す各種の状態パラメータを取得することが可能になる。一方、上述した各コネクタ、フィルタ、エアトラップチャンバについては、センシング機能を備えていないため、その近傍に設けられている温度センサ又は圧力センサによって、それぞれの使用状況が把握されてもよい。
【0039】
以上のように、体外循環部8においては、血液の導入及び導出の処理、及び液面の調整処理に加えて、血液浄化装置1、並びに血液浄化装置1の構成装置及び構成部品の動作状態を示す状態パラメータの取得処理が行われている。後述するが、取得された状態パラメータは、血液浄化装置1のメンテナンス時期の推定に利用されることになる。
【0040】
〔情報処理装置〕
次に、本実施形態に係る情報処理装置6は、図2に示すように、プロセッサ6a及びメモリ6bから構成されている。
【0041】
プロセッサ6aは、GPU(Graphics Processing Unit:画像処理装置)又はCPU(Central Processing Unit:中央処理装置)から構成され、メモリ6bに記憶された各種プログラムに基づいて、接続された他の構成装置又は構成部品を制御する制御部として機能する。具体的には、プロセッサ6aは、血液浄化処理を実行するためのプログラム又はOSを実行するためのプログラムをメモリ6bから読み出して実行する。また、プロセッサ6aは、血液浄化装置1、並びに血液浄化装置1の構成装置及び構成部品のメンテナンス時期を推定するための処理を実行する。なお、プロセッサ6aは、単一のGPU又はCPUで構成されても良いが、複数のCPU又はGPUを組み合わせて構成しても良い。
【0042】
メモリ6bは、ROM、RAM、不揮発性メモリ、HDD等から構成され、記憶部として機能する。ROMは、血液浄化処理を実行するための指示命令をプログラムとして記憶する。また、ROMは、血液浄化装置1、並びに血液浄化装置1の構成装置及び構成部品のメンテナンス時期の推定を行うために必要となる学習済み推定モデルを記憶する。また、RAMは、ROMに記憶されたプログラムがプロセッサ6aにより処理されている間、データの書き込み及び読み込みをするために用いられる。不揮発性メモリは、当該プログラムの実行によってデータの書き込み及び読み込みが実行される記憶装置であって、ここに書き込まれたデータは、当該プログラムの実行が終了した後でも保存される。
【0043】
特に、本実施形態においては、患者の血液を浄化する血液浄化装置1のメンテナンス時期を推定するプログラムが記憶されている。当該プログラムは、血液浄化装置1の動作状態を示す状態パラメータから生成される動作データを取得する処理をコンピュータ(すなわち、血液浄化装置1の情報処理装置6)に実行させるものである。また、当該プログラムは、血液浄化装置1のメンテナンス時期を推定するための機械学習を行った学習済み推定モデルに動作データを入力して、血液浄化装置1の次回メンテナンスに係る推定データを取得する処理をコンピュータに実行させるものである。更に、当該プログラムは、血液浄化装置1のメンテナンス情報を表示するための表示データを当該推定データに基づいて生成する処理をコンピュータに実行させるものである。なお、当該プログラムによって実行される処理につては、後述するものとする。
【0044】
また、メモリ6bには、図5に示すような血液浄化装置1、その構成装置、及びその構成部品の動作状態が記憶されている。図5に示すように、構成装置及び構成部品の一例としては、内部配管部7及び体外循環部8を構成し、各配管又は各回路に配設されたものである。動作状態の記憶の一例として、図5のデータテーブルには、複式ポンプ、除水ポンプ、脱気ポンプ、加圧ポンプ、第1電磁弁(電磁弁V2に対応)、第2電磁弁(電磁弁V4に対応)、第1フィルタ(フィルタF1に対応)、及び第2フィルタ(フィルタF2に対応)について、現時点における「動作回数(駆動回数)」、「温度」、「圧力」、「流量」、「使用時間」、「使用回数」、「高温時間」、「洗浄回数」、及び「治療回数」が動作状態として記憶されている。
【0045】
より詳細には、各ポンプ及び電磁弁については「動作回数」、「温度」、「圧力」、「流量」、「使用時間」、「使用回数」、「高温時間」が動作状態として記憶されている。一方、フィルタに「動作回数」は記憶されておらず、「温度」、「圧力」、「流量」、「使用時間」、「使用回数」、「高温時間」、「洗浄回数」、及び「治療回数」が動作状態として記憶されている。血液透析装置については、「使用時間」、「使用回数」、「洗浄回数」、及び「治療回数」が動作状態として記憶されている。
【0046】
なお、図5に示すデータテーブルについては、構成装置及び構成部品の一部が記載されているだけであり、当然のことながら、図3及び図4に示された他の構成装置及び構成部品に関する動作状態が記憶されてもよい。また、動作状態の種類としても、図5のテーブルに示したものに限定されず、血液浄化装置1、その構成装置、及びその構成部品の各種の動作を示すものであれば、データテーブルに記憶することが可能である。例えば、「低温時間」等の動作状態を追加してもよい。
【0047】
また、メモリ6bには、図6に示すような血液浄化装置1、その構成装置、及びその構成部品のメンテナンス情報が記憶されている。図6に示すように、構成装置及び構成部品の一例としては、内部配管部7及び体外循環部8を構成し、各配管又は各回路に配設されたものである。具体的に、データテーブルには、複式ポンプ、除水ポンプ、脱気ポンプ、加圧ポンプ、第1電磁弁(電磁弁V2に対応)、第2電磁弁(電磁弁V4に対応)、第1フィルタ(フィルタF1に対応)、及び第2フィルタ(フィルタF2に対応)について、「構成装置/構成部品」、「部品名」、「運転/交換」、「前回のメンテナンス日時」及び「発注先」に係る情報が記憶されている。ここで、「運転/交換」とは、新品の状態又はメンテナンスが完了した状態から次回のメンテナンスまでの目安となるタイミングに係る情報である。
【0048】
より詳細には、各ポンプについては、メンテナンス対象部品が「部品名」の欄に記憶され、それぞれの部品の「運転/交換」、「前回のメンテナンス日時」及び「発注先」が記憶されている。一方、電磁弁及びフィルタについては、それ自体がメンテナンス対象部品であるため、「部品名」の欄には対象部品名が記憶されておらず、「運転/交換」、「前回のメンテナンス日時」及び「発注先」に係る情報が記憶されている。また、「運転/交換」として、各構成装置及び構成部品には、所定の時間が記憶されているが、時間に代えて使用回数、使用日時、又は使用量を記憶させてもよく、更にはこれらを組み合わせたデータとしてもよい。
【0049】
なお、図6に示すデータテーブルについては、構成装置及び構成部品の一部が記載されているだけであり、当然のことながら、図3及び図4に示された他の構成装置及び構成部品に関するメンテナンス情報が記憶されてもよい。また、メンテナンス情報の種類としても、図6のテーブルに示したものに限定されず、血液浄化装置1、その構成装置、及びその構成部品のメンテナンスに係る内容であれば、データテーブルに記憶することが可能である。例えば、「金額」等のメンテナンス情報を追加してもよい。
【0050】
(情報処理装置の機能構成)
次に、図7を参照しつつ、本実施形態に係る血液浄化装置1の情報処理装置6の機能的な構成を説明する。ここで、図7は、第1実施形態に係る情報処理装置6の機能ブロック図である。特に、図7においては、情報処理装置6以外にも血液浄化装置1の他の構成装置を記載し、各装置間における情報及びデータの流れも記載している。
【0051】
図7に示すように、情報処理装置6は、動作データ取得部51、推定部52、制御部53、及び記憶部54を有する。また、動作データ取得部51は、算出部55を含む。更に、推定部52は、学習済み推定モデル56を含む。これらの各部は、情報処理装置6のプロセッサ6a及びメモリ6b自体が機能することで実現され、又はプロセッサ6aがメモリ6bに記憶されたプログラムを読み出して実行することにより実現される。
【0052】
動作データ取得部51は、血液浄化装置1の動作状態を示す状態パラメータである各種の信号を、ポンプP61、圧力センサS62、温度センサS63、流量センサS64から受信する。ここで、ポンプP61とは、図3及び図4に示す各種のポンプを総称するものであり、いずれかのポンプに限定するものではない。同様に、圧力センサS62は、図3及び図4に示す各圧力センサ、及びポンプ以外の他の構成装置(例えば、圧力検出器27)に含まれる圧力センサを総称するものであり、いずれかの圧力センサに限定するものではない。また、温度センサS63は、図3及び図4に示す各温度センサ、及びポンプ以外の他の構成装置(例えば、各種の弁)に含まれる温度センサを総称するものであり、いずれかの温度センサに限定するものではない。更に、流量センサS64は、図3及び図4に示す各流量検出器に含まれる流量センサ、及び他の構成装置(例えば、各種の弁)に含まれる流量センサを総称するものであり、いずれかの流量センサに限定するものではない。
【0053】
動作データ取得部51は、ポンプP61から動作信号、温度信号、圧力信号、及び流量信号を受信する。動作信号は、ポンプP61自体の動作に係る電気信号であり、例えば、インペラの総回転数、ダイアフラムの駆動回数に係る電気信号である。温度信号、圧力信号、及び流量信号は、ポンプP61に設けられた各センサによって検出される電気信号であり、ポンプP61の内部における透析液又は血液の温度、圧力、及び流量に係る電気信号である。なお、ポンプP61の温度信号とは、ポンプP61自体の温度に係る電気信号であってもよい。
【0054】
また、動作データ取得部51は、血液浄化装置1の動作状態を示す状態パラメータとして、入力部4aから入力データも受信する。例えば、入力データとは、血液浄化装置1の管理者によって入力された、血液浄化装置1の動作時間、動作回数、又は治療回数である。なお、入力データは必ず受信されるわけではなく、後述する動作データを生成する場合の付加的なデータとして位置づけられる。
【0055】
動作データ取得部51の算出部55は、受信した各種の電気信号から動作状態を算出する。具体的に、算出部55は、ポンプP61から受信した各種の電気信号に基づいて、ポンプP61の現状の動作状態を算出する。当該動作状態の一例としては、図5に示すような「使用時間」、「使用回数」及び「高温時間」があるが、これら以外の動作状態を算出してもよい。例えば、算出部55は、動作信号、圧力信号、及び流量信号に基づいて、ポンプP61が動作している否かを判定しつつ、使用時間及び使用回数を算出してもよい。また、算出部55は、動作信号及び温度信号に基づいて、ポンプP61の高温時間を算出してもよい。
【0056】
また、算出部55は、圧力センサS62、温度センサS63、及び流量センサS64から受信した各種の電気信号に基づいて、各センサを備える構成装置若しくは構成部品の現状の動作状態を算出、又は各センサの近傍に位置する構成装置若しくは構成部品の現状の動作状態を算出する。当該動作状態の一例としては、図5に示すような「動作回数」、「使用時間」、「使用回数」及び「高温時間」があるが、これら以外の動作状態を算出してもよい。例えば、算出部55は、圧力信号及び流量信号に基づいて、電磁弁が動作している否かを判定しつつ、動作回数、使用時間及び使用回数を算出してもよい。同様に、算出部55は、算出した動作回数及び受信した温度信号に基づいて、電磁弁の高温時間を算出してもよい。同様に、算出部55は、圧力信号、流量信号、温度信号に基づいて、フィルタの使用時間、使用回数、高温時間を算出してもよい。
【0057】
更に、算出部55は、上述した構成装置及び構成部品の動作データに基づいて、血液浄化装置1の動作状態を算出する。当該動作状態の一例としては、図5に示すような「使用時間」、「使用回数」、「洗浄回数」、及び「治療回数」があるが、これら以外の動作状態を算出してもよい。例えば、算出部55は、構成装置及び構成部品の動作状態から血液浄化装置1が現状の動作状態(停止、治療前準備、治療中、治療後洗浄)を判定しつつ、「使用時間」、「使用回数」、「洗浄回数」、及び「治療回数」を算出してもよい。なお、算出部55は、入力部4aから受信した入力データに基づいて「使用時間」、「使用回数」、「洗浄回数」、及び「治療回数」を算出してもよく、又は受信した入力データに対する演算を行わずに「使用時間」、「使用回数」、「洗浄回数」、及び「治療回数」として設定してもよい。
【0058】
本実施形態において、動作データ取得部51は、算出部55による動作状態の算出が完了すると、各動作状態を取りまとめて1つの動作データとする。すなわち、動作データ取得部51は、学習済み推定モデル56に入力するための動作データを、算出された血液浄化装置1、構成装置、及び構成部品の各動作状態から取得する。換言すると、動作データとは、血液浄化装置1、構成装置、及び構成部品の各動作状態に係るデータを含んでいる。なお、動作状態の算出自体は、各構成装置又は他の算出器等を利用して、情報処理装置6の外部で実行されてもよい。この場合には、動作データ取得部51は、算出部55を有することなく、単に外部から各種の動作状態を受信することになる。また、動作データは、上述した複数の動作状態を必ず含まなくてもよく、例えば、1つの動作状態により1つの動作データが構成されてもよい。この場合、動作状態がそのまま動作データとして使用されることになる。
【0059】
動作データ取得部51は、取得した動作データを記憶するために、当該動作データを記憶部54に送信する。また、動作データ取得部51は、当該動作データの元となる各種の信号についても、記憶部54に送信してもよい。記憶部54は、受信した動作データをメモリ6bに記憶する。更に、動作データ取得部51は、取得した動作データから血液浄化装置1のメンテナンス時期を推定するために、当該動作データを推定部52に送信する。
【0060】
推定部52は、学習済み推定モデル56を用いて推定データを取得するために、受信した動作データに加えて、メンテナンスデータを記憶部54から受信する。ここで、メンテナンスデータとは、図6のデータテーブルに示す構成装置及び構成部品ごとの「前回のメンテナンス日時」である。また、推定部52は、受信した動作データ及びメンテナンスデータを学習済み推定モデル56に入力を行い、血液浄化装置1の次回メンテナンスに係る推定データを取得する。ここで、当該推定データについては、血液浄化装置1のメンテナンス時期及びメンテナンス対象部品のデータが含まれる。なお、学習済み推定モデル56及び推定データについては、モデル設定を含めて後述する。推定部52は、学習済み推定モデル56の出力結果である推定データを取得すると、当該推定データを制御部53に送信する。
【0061】
制御部53は、血液浄化装置1のメンテナンス情報を血液浄化装置1の管理者に報知するために、受信する推定データに加えて、記憶部54から発注先データを受信する。ここで、発注先データとは、図6のデータテーブルに示す構成装置及び構成部品ごとの「発注先」である。制御部53は、推定データ及び発注先データに基づいて、メンテナンス情報として表示するため表示データ及び表示指示となる制御信号を生成し、当該表示データとともに表示指示(制御信号)を出力部4bに送信する。また、制御部53は、当該推定データに含まれるメンテナンス対象部品の発注先を当該発注先データから選択し、メンテナンス対象部品の発注を自動的に行ってもよい。この場合、表示データには、メンテナンス対象部品が発注済みである旨の情報が追加されてもよい。
【0062】
出力部4bは、血液浄化装置1のメンテナンス情報をディスプレイ4を介して表示し、血液浄化装置1の管理者にメンテナンスの必要性の報知を行う。当該管理者は、メンテナンス情報を確認することにより、血液浄化装置1に係るメンテナンスを適宜実施することになる。
【0063】
(血液浄化装置における処理)
次に、本実施形態に係る血液浄化装置1のメンテナンス情報を推定及び表示するまでに、血液浄化装置1において実行される処理を、図8乃至図11を参照しつつ説明する。ここで、図8は、本実施形態の血液浄化装置1におけるメンテナンスの推定に係るシーケンス図である。図9は、本実施形態に係る学習済み推定モデルの設定の流れを示すフロー図である。図10は、本実施形態の情報処理装置6に設定される学習済み推定モデルの評価の流れを示す概略図である。図11は、本実施形態に係る血液浄化装置1において表示されるメンテナンス情報の報知例である。
【0064】
先ず、図8に示すように、情報処理装置6において、初期設定が行われる(S111)。ここで、初期設定とは、血液浄化装置1のメンテナンス情報を人工知能(AI:Artificial Intelligence)を用いて推定するために必要となる準備処理のことである。すなわち、初期設定により、学習済み推定モデル56が生成され、情報処理装置6に学習済み推定モデル56が実装される。
【0065】
具体的には、図9に示すように、情報処理装置6のプロセッサ6aは、学習済み推定モデル56を生成するための学習データを取得する(S201)。ここで、学習データの一例として、図10に示すように、血液浄化装置1の使用状況データ、過去の故障データ、メンテナンスの実施データ、及びメンテナンスの基本データが利用されてもよい。これらのデータは、入力部4aを介して血液浄化装置1の管理者によって入力されてもよく、通信部9を介して受信してもよい。
【0066】
使用状況データは、例えば、血液浄化装置1の使用時間、使用回数、治療回数、及び洗浄回数を含んでもよい。また、使用状況データは、例えば、血液浄化装置1の構成装置及び構成部品の動作回数、使用時間、及び高温時間を含んでもよい。更に、使用状況データは、例えば、血液浄化装置1、並びに血液浄化装置の1の構成装置及び構成部品で検出される温度、圧力、及び流量に係るデータを含んでもよい。すなわち、使用状況データとは、血液浄化装置1から検出されたデータに基づいて算出された、血液浄化装置1、並びに血液浄化装置1の構成装置及び構成部品の動作状況に係るデータから構成されていてもよい。
【0067】
過去の故障データは、例えば、故障部品の名称、故障の日時、故障時の使用状況に係るデータを含んでもよい。具体的に、ポンプP61の場合には、バルブ、インペラ、シールといった部品名に加え、故障が生じた日時、故障が生じた日時までにおけるポンプの使用状況に係るデータが、過去の故障データとして利用されてもよい。この場合に、過去の故障データは、上述した使用状況データに紐づいていることが好ましい。
【0068】
メンテナンスの実施データは、例えば、メンテナンス対象装置又はメンテナンス対象部品の名称、メンテナンス日時、及びメンテナンス内容に係るデータが含まれてもよい。具体的に、ポンプP61においてインペラが故障した場合、ポンプP61の名称(例えば、複式ポンプ、除水ポンプ、脱気ポンプ、加圧ポンプ、血液ポンプ、液面調整ポンプ等)に加えて、インペラの詳細、インペラ交換作業、交換時期に係るデータにより、メンテナンスの実施データが、メンテナンス内容に係るデータとして利用されてもよい。この場合に、メンテナンスの実施データは、上述した過去の故障データに紐づいていることが好ましい。
【0069】
メンテナンスの基本データは、例えば、血液浄化装置1におけるメンテナンス対象となる構成装置又は構成部品の名称、メンテナンス対象の部品名、及び交換時間に係るデータが含まれてもよい。ここで、交換時間とは、図6の「運転/交換」と同義であり、新品又はメンテナンスされた状態から次の交換までの通常の耐久時間のことである。具体的に、ポンプP61の場合には、ポンプP61の名称(複式ポンプ、除水ポンプ、脱気ポンプ、加圧ポンプ、血液ポンプ、液面調整ポンプ等)、メンテナンス対象の部品名(インペラ、バルブ、ポペットバルブ等)、各部品の交換時間が、メンテナンスの基本データとして利用されてもよい。なお、図6の「運転/交換」と同様に、交換時間に代えて使用回数、使用日時、又は使用量が使用されてもよく、更にはこれらを組み合わせたデータが使用されてもよい。
【0070】
以上のように、本実施形態においては、学習済み推定モデルを生成するために、血液浄化装置1の過去の使用状況データ、過去の故障データ、過去のメンテナンスの実施データ、及びメンテナンスの基本データが関連付けられて利用される。ただし、これらのデータをすべて関連付けすることが好ましいものの、一部のデータを除外したり、更に追加のデータを加える等を行ってもよく、データ間の関連付けについては後述する機械学習に応じて適宜変更してもよい。
【0071】
次に、情報処理装置6のプロセッサ6aは、取得した学習データにアノテーション処理を行う(S202)。具体的なアノテーション処理としては、取得された学習データに注釈等を付し、教師データを生成する。例えば、情報処理装置6のプロセッサ6aは、構成装置及び構成部品ごとに、過去のメンテナンス日時にタグ付けを行い、構成装置及び構成部品ごとに、所定の動作状態に対応したメンテナンス時期が紐づけられた正解データを生成する。
【0072】
次に、情報処理装置6のプロセッサ6aは、取得した学習データ及びアノテーション処理された教師データを用いて機械学習を行う(S203)。当該機械学習は、一例として、ニューロンを組み合わせて構成されたニューラルネットワークに学習データ及び教師データを与え、ニューラルネットワークの出力が教師データのうちの正解データと同じになるように、各ニューロンのパラメータを調整しながら学習を繰り返すことにより行われる。なお、上記機械学習は一例にすぎず、スコアリングを用いた機械学習を行ってもよい。
【0073】
次に、情報処理装置6のプロセッサ6aは、機械学習によって生成した学習済み推定モデル56の評価を行う(S204)。ここで、情報処理装置6のプロセッサ6aは、機械学習に使用した学習データとは異なる評価データを使用し、当該モデル評価を実行する。例えば、図10に示すように、情報処理装置6のプロセッサ6aは、血液浄化装置1並びに血液浄化装置1の構成装置及び構成部品に関する、使用時間、動作回数、温度、圧力、流量、治療回数、洗浄回数、及び過去のメンテナンスに係るデータを入力する。その後、情報処理装置6のプロセッサ6aは、学習済み推定モデル56から出力される推定データが、正しい結果であるかを評価する。ここで、推定データとしては、例えば、メンテナンス時期、対象装置、及び対象部品に係るデータが出力される。具体的な評価方法として、情報処理装置6のプロセッサ6aは、評価データに対応した実際のメンテナンス情報と、推定データが一致するか否かを判定する。ここで、実際のメンテナンス情報とは、評価データとして入力された過去のメンテナンスの次に実際されたメンテナンスに係る情報である。なお、実際のメンテナンス情報と推定データが一致しない場合には、学習データの取得からやり直し、再度の機械学習が実施されることになる。
【0074】
次に、情報処理装置6のプロセッサ6aは、評価データに対応した実際のメンテナンス情報と、推定データが一致した場合、生成した学習済み推定モデル56を実装する(S205)。具体的に、情報処理装置6のプロセッサ6aは、生成した学習済み推定モデル56をメモリ6bに記憶させる。これにより、情報処理装置6において学習済み推定モデル56を有する推定部52が機能することになる。
【0075】
図8に戻り、初期設定(S111)が完了した後、内部配管部7におけるデータ取得が実施される(S112)。具体的には、内部配管部7に設けられた各種の構成装置及び各種のセンサにより、血液浄化装置1の動作状態を示す状態パラメータのうちの配管部パラメータの測定が行われる。そして、内部配管部7において取得された配管部パラメータは、情報処理装置6に送信される(T111)。
【0076】
また、初期設定(S111)が完了した後、体外循環部8におけるデータ取得が実施される(S113)。具体的には、体外循環部8に設けられた各種の構成装置及び各種のセンサにより、血液浄化装置1の動作状態を示す状態パラメータのうちの循環部パラメータの測定が行われる。そして、体外循環部8において取得された循環部パラメータは、情報処理装置6に送信される(T112)。
【0077】
更に、初期設定(S111)が完了した後、ディスプレイ4におけるデータ入力が実施される(S114)。具体的に、血液浄化装置1の管理者による入力操作に対応し、血液浄化装置1の動作状態を示すデータがディスプレイ4の入力部4aを介して入力される。そして、ディスプレイ4から入力された入力データは、情報処理装置6に送信される(T113)。
【0078】
次に、情報処理装置6においては、動作データの算出処理が行われる(S115)。具体的に、情報処理装置6の動作データ取得部51が配管部パラメータ、循環部パラメータ、及び入力データを受信すると、動作データ取得部51の算出部55が受信したパラメータ及びデータに基づいて、学習済み推定モデルに入力するための血液浄化装置1の動作データを生成する。これにより、情報処理装置6の動作データ取得部51による動作データを取得する工程(動作データ取得処理)が完了する。
【0079】
次に、情報処理装置6においては、受信した配管部パラメータ、循環部パラメータ、及び入力データ、並びにS115において算出された動作データの記憶処理が行われる(S116)。具体的に、情報処理装置6の動作データ取得部が記憶部54に対して、これらのパラメータ及びデータを送信し、記憶部54がこれらのパラメータ及びデータをメモリ6bに記憶する。
【0080】
次に、情報処理装置6においては、算出された動作データを使用して、血液浄化装置1の次回メンテナンスに係る推定データの取得処理が行われる(S117)。具体的に、情報処理装置6の動作データ取得部51が推定部52に取得した動作データを送信する。また、推定部52は、記憶部54から過去のメンテナンスデータを取得する。その後、推定部52は、動作データ及びメンテナンスデータを学習済み推定モデル56に入力する。学習済み推定モデル56は、入力されたデータに基づいて推定処理を行い、推定結果である推定データを出力する。これにより、推定部52は、血液浄化装置1の次回メンテナンスに係る推定データを取得し、推定データを出力する工程が完了する。なお、推定データの一例としては、図10に示すような、メンテナンス時期、対象装置、及び対象部品に係るデータが含まれる。このため、当該推定データは、過去のメンテナンス実施時から動作データ取得時までにおける血液浄化装置1の状態変化が関連付けられていることになる。
【0081】
次に、情報処理装置6においては、血液浄化装置1の管理者に対して、血液浄化装置1のメンテナンス情報を報知するための表示データの生成処理が行われる(S118)。具体的に、情報処理装置6の推定部52は、取得した推定データを制御部53に送信する。制御部53は、記憶部54からメンテナンス対象装置及びメンテナンス対象部品に係る発注先データを取得する。その後、制御部53は、取得した両データに基づいて、メンテナンス対象部品の発注処理を行うとともに、発注報告を含むメンテナンス情報を表示するための表示データ及び当該表示データを表示させるための制御信号を生成する。これにより、血液浄化装置1のメンテナンス情報を表示するための表示データを推定データに基づいて生成する工程が完了する。
【0082】
次に、情報処理装置6からディスプレイ4に対して、表示データ及び制御信号の送信処理が行われる(T114)。具体的に、情報処理装置6の制御部53は、ディスプレイ4の出力部4bにおいて表示させる表示データとともに、表示指示である制御信号を出力部4bに送信する。その後、ディスプレイ4においては、受信した表示データに基づいたメンテナンスの報知が出力部4bによって行われる(S119)。
【0083】
ここで、図11には、出力部4bによって出力される画像の一例を示す。図11に示すように、出力部4bには、2つの表示部61及び表示部62が形成されている。表示部61には、所定期間内にメンテンナンスが必要である旨を報知するための文章(次回メンテナンスのお知らせ)が表示されている。一方、表示部62には、学習済み推定モデル56の推定結果であるメンテナンス時期、メンテナンス対象装置、及びメンテナンス対象部品が表示されている。また、表示部62には、ボタン63が表示されている。ボタン63は、必要となるメンテナンスのやり方についての解説を表示するためのボタンである。これにより、血液浄化装置1の管理者がボタン63に触れると、当該メンテナンスの解説が出力部4bにおいて別途表示される。
【0084】
(情報処理装置における処理)
次に、図12を参照しつつ、図8に記載されたメンテナンスの推定に係る処理において、情報処理装置6において実行される一連の処理フローを具体的に説明する。ここで、図12は、本実施形態に係る情報処理装置6において実行されるメンテナンスの推定に係るフロー図である。具体的に、図12は、図8のS115からS118までの処理及び判断に係るフロー図である。なお、当該処理フローは、情報処理装置6のプロセッサ6aがメモリ6bに記憶されたプログラムを読み出して実行することによって主に行われる。
【0085】
先ず、情報処理装置6のプロセッサ6aは、内部配管部7、体外循環部8、及び入力部4aから血液浄化装置1の動作状態を示す状態パラメータに係るデータを受信したか否かの判定を行う(S301)。ここで、情報処理装置6のプロセッサ6aが当該データを受信しない場合(S301:No)、本ステップが繰り返され、次のステップに進むことがない。
【0086】
一方、情報処理装置6のプロセッサ6aが当該データを受信した場合(S301:Yes)、情報処理装置6のプロセッサ6aは、受信したデータに基づく算出が必要か否かの判定を行う(S302)。具体的に、情報処理装置6のプロセッサ6aは、動作データ取得部51を機能させ、動作データ取得部51が受信したデータをそのまま動作データに使用できるか否か、及び動作データを生成するために必要なデータがそろっているか否かを判定する。例えば、受信したデータが動作信号、温度信号、圧力信号、又は流量信号のような場合には、これらの電気信号から動作回数、温度の数値、圧力の値、又は流量の値を算出する必要がある。また、受信したデータが動作回数、温度の数値、圧力の値、又は流量の値である場合でも、使用時間、使用回数、高温時間、洗浄回数、及び治療回数が算出できる場合には、算出が必要と判断される。これらのことを換言すると、情報処理装置6のプロセッサ6aは、受信データに基づいて、動作データに含めるデータが算出できるか否かを判定することになる。
【0087】
S302において算出が不要と判定された場合(S302:No)、次のステップであるS303をスキップしてS304に進む。これに対して、S303において算出が必要と判定された場合(S302:Yes)、情報処理装置6のプロセッサ6aは、動作データ取得部51の算出部55を機能させ、動作データに含めるデータの算出を実行する(S303)。具体的には、上述したように、各種の電気信号から動作回数、温度の数値、圧力の値、流量の値が算出され、更には使用時間、使用回数、高温時間、洗浄回数、及び治療回数が算出される。
【0088】
次に、情報処理装置6のプロセッサ6aは、受信したデータ又は算出結果を利用して、動作データを生成する(S304)。具体的に、情報処理装置6のプロセッサ6aは、動作データ取得部51を機能させ、動作回数、温度の数値、圧力の値、流量の値、使用時間、使用回数、高温時間、洗浄回数、及び治療回数を1つにまとめ、学習済み推定モデル56に入力するための動作データを生成する。
【0089】
次に、情報処理装置6のプロセッサ6aは、生成した動作データ及び受信した各種の信号をメモリ6bに記憶する処理を行う(S305)。具体的に、情報処理装置6のプロセッサ6aは、動作データ取得部51、及び記憶部54を機能させ、動作データ取得部51から記憶部54に動作データ及び当該信号を送信し、記憶部54によってメモリ6bに動作データ及び当該信号が記憶される。
【0090】
次に、情報処理装置6のプロセッサ6aは、血液浄化装置1の次回メンテナンスを推定する処理を行う(S306)。具体的に、具体的に、情報処理装置6のプロセッサ6aは、動作データ取得部51、推定部52、記憶部54及び学習済み推定モデル56を機能させ、動作データ取得部51が推定部52に動作データの送信を行うとともに、記憶部54が推定部52にメンテナンスデータの送信を行い、更には推定部52が受信した動作データ及びメンテナンスデータを学習済み推定モデル56に入力する。続いて、学習済み推定モデル56は、入力データを使用して、血液浄化装置1の次回メンテナンスに係る推定処理を行う。その後、学習済み推定モデル56は、次回メンテナンスに係る推定処理の結果である推定データを出力し、推定部52は当該推定データを取得する。
【0091】
次に、情報処理装置6のプロセッサ6aは、所定期間内に血液浄化装置1のメンテナンスが必要であるか否かを、取得された推定データに基づいて判定する(S307)。ここで、所定期間内とは、例えば、数週間以内又は数カ月以内等の期間であり、メンテナンス対象部品の発注等を考慮して決定されてもよい。具体的に、情報処理装置6のプロセッサ6aは、推定部52、及び制御部53を機能させ、推定部52が制御部53に推定データの送信を行う。その後、制御部53は、推定データに含まれるメンテナンス時期が、設定されている所定期間内であるか否かを判定する。
【0092】
S307において所定期間内のメンテナンスが不要と判定された場合(S307:No)、本フローを終了する。これに対して、S307において所定期間内のメンテナンスが必要と判定された場合(S307:Yes)、情報処理装置6のプロセッサ6aは、部品の発注が必要であるか否かを判定する(S308)。具体的に、情報処理装置6のプロセッサ6aは制御部53を機能させ、制御部53が推定データに含まれるメンテナンスの内容に応じて、メンテナンスの対象部品が発注部品であるか否かを判定する。例えば、メンテナンス内容が部品交換であれば、制御部53は部品の発注が必要であると判定し、メンテナンス内容が構成装置又は構成部品の動作確認であれば、制御部53は部品の発注が不要であると判定する。
【0093】
S308において部品の発注が必要ないと判定されると(S308:No)、次のステップであるS309をスキップしてS310に進む。一方で、S308において部品の発注が必要であると判定されると(S308:Yes)、情報処理装置6のプロセッサ6aは、メンテナンスの対象部品の発注処理を行う(S309)。具体的に、情報処理装置6のプロセッサ6aは、制御部53及び記憶部54を機能させ、記憶部54が制御部53に発注先データの送信を行う。続いて、制御部53は、推定データに含まれるメンテナンスの対象部品に対する発注先を、受信した発注先データから選択する。その後、制御部53は、選択した発注先に対して、メンテナンスの対象部品の発注を行う。例えば、制御部53は、メモリ6bに記憶された発注ひな形を読み出して発注依頼データを作成し、作成した発注依頼データを通信部を介して発注先に送信してもよい。
【0094】
次に、情報処理装置6のプロセッサ6aは、メンテナンスを報知するための表示データを生成する(S310)。具体的に、情報処理装置6のプロセッサ6aは制御部53を機能させ、制御部53が推定データに基づいて、血液浄化装置1のメンテナンスの時期、メンテナンス対象装置、及びメンテナンス対象部品の情報を含む表示データ及び当該表示データを表示させための制御信号を生成する。また、制御部53は、当該表示データに、部品発注に係る情報も付加してもよい。すなわち、制御部53は、部品発注済みの場合には、その旨を表示するための情報を表示データに追加してもよい。
【0095】
(第1実施形態の変形例)
上記実施形態において、図10に示すように、学習済み推定モデル56は、血液浄化装置1のメンテナンス時期を推定データとして出力していたが、推定データの出力内容をより詳細なものにしてもよい。例えば、図13に示すように、学習済み推定モデル56は、血液浄化装置1の構成装置ごとに、メンテナンス対象部品及びメンテナンス時期を推定し、その推定結果を出力してもよい。ここで、図13は、図10と同様にして示す、本実施形態に係る情報処理装置6において実行されるメンテナンスの推定の変形例に係る概略図である。このようなメンテナンス時期の推定を行うことにより、血液浄化装置1のメンテナンスを細分化して管理することが可能になる。
【0096】
このような場合、制御部53は、血液浄化装置1の構成装置ごとにメンテナンス対象部品及びメンテナンス時期をメンテナンス情報として表示するための表示データ及び制御信号を生成する。このため、ディスプレイ4の出力部4bには、図14のような表示がなされてもよい。ここで、図14は、第1実施形態に係る血液浄化装置1において表示されるメンテナンス情報の報知変形例である。図14に示すように、出力部4bにおいては、2つの表示部61及び表示部62に加えて、表示部64が追加されている。追加された表示部64においては、表示部62と同様に、メンテナンス説明を表示するためのボタン65が設けられている。また、表示部62及び表示部64においては、メンテナンス対象装置ごとに、メンテナンス時期及びメンテナンス対象部品が表示されている。特に、メンテナンス対象部品が複数ある場合にも、1つの表示部62において表示がなされている。
【0097】
また、表示部62及び表示部64には隣接して、スクロールバー66が表示されている。メンテナンス対象部品が複数存在し、1画面内で表示できない場合には、当該スクロールバー66を下方に移動させることにより、他のメンテナンス対象部品に係る表示部が現れることになる。これにより、血液浄化装置1の管理者は、メンテナンス対象部品の詳細情報を1つずつ確認することが可能になる。
【0098】
上記実施形態においては、学習済み推定モデル56の生成のために、教師データを用いた教師あり学習が行われていたが、これに限定されない。例えば、一般的な教師なし学習、又は強化学習を利用して、学習済み推定モデル56を生成してもよい。すなわち、血液浄化装置1のメンテナンス時期が推定できれば、機械学習の方式は限定されない。当然のことながら、機械学習の方式が異なれば、学習データが異なるため、学習済み推定モデル56を生成するための学習データについても、血液浄化装置1の過去の使用状況データ、過去の故障データ、過去のメンテナンスの実施データ、及びメンテナンスの基本データに限定されることはなく、血液浄化装置1に係る種々のデータを利用することが可能である。
【0099】
上記実施形態においては、血液浄化装置1のメンテナンス時期として特定の日時が推定されていたが、当該時期に幅を持たせて期間として、メンテナンス時期が推定されてもよい。すなわち、学習済み推定モデル56は、血液浄化装置1、構成装置及び構成部品のメンテナンス期間を推定してもよい。
【0100】
上記実施形態においては、メンテナンスに必要となる部品の発注が、制御部53によって自動的に実行されていたが、ディスプレイ4の出力部4bに発注すべき部品のリストが制御部53の処理によって表示され、血液浄化装置1の管理者によるディスプレイ4のボタン操作によって部品の発注が実行できるようにしてもよい。また、管理者による部品発注と、上記実施形態による自動的な部品発注とを事前設定可能とし、血液浄化装置1の管理者がいずれかの発注処理を選択できるようにしてもよい。
【0101】
上記実施形態においては、複式ポンプP1を使用して透析液を導入及び導出を行えるような配管構成が採用されていたが、例えば、複式ポンプP1に代えて、2つのダイアフラムポンプを使用してもよい。このような場合の一例を、図15を参照しつつ変形例として説明する。ここで、図15は本実施形態の変形例に係る血液浄化装置31の構成図である。なお、血液浄化装置1と同一の装置及び部品については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0102】
図15に示すように、変形例に係る血液浄化装置31は、血液浄化器5に対して透析液を導入出するための内部配管部37、及び血液浄化器5に対して血液を導入出するための体外循環部38を有している。なお、内部配管部37及び内部配管部7は機能的に同一であり、その構成部材等が異なっている。同様に、体外循環部38及び体外循環部8は機能的に同一であり、その構成部材等が異なっている。
【0103】
内部配管部37は、血液浄化器5の給液側に主配管L31、排液側に主配管L32が接続された構造を有する。主配管L31においては、減圧弁V1、電磁弁V2、透析液調整部91、ダイアフラムポンプP31、電磁弁V31、及びコネクタC1が、内部配管部37の給液端子側から血液浄化器5の一端に向かって順番に配設されている。また、主配管L32においては、電磁弁V32、ダイアフラムポンプP32、及び流量検出器12が、血液浄化器5の一端から内部配管部37の排液端子側に向かって順番に配置されている。内部配管部37においては、2つのダイアフラムポンプP31,P32の流量を調整することにより、除水を行うことが可能になっている。このため、内部配管部37には除水ポンプP3が配設されていない。
【0104】
体外循環部38は、血液浄化器5に対する血液導入側に動脈側血液回路L33が接続され、血液浄化器5に対する血液導出側に静脈側血液回路L33が接続された構造を有する。動脈側血液回路L33には、コネクタC21、動脈側クランプCL31、及び血液ポンプP21が、患者H側から血液浄化器5に向かって順番に配設されている。また、静脈側血液回路L34には、静脈側エアトラップチャンバ25、流量検出器26、気泡検出器28、静脈側クランプCL32、及びコネクタC22が、血液浄化器5から患者Hに向かって順番に配設されている。更に、動脈側クランプCL31と血液ポンプP21との間には、プライミング液を供給するための供給配管L35が接続されている。そして、供給配管L35には供給側クランプCL33が配設されており、供給配管L35は貯留バッグ92に接続されている。貯留バック92には、プライミング液としての生理食塩水が貯留されている。
【0105】
図15に示すように、内部配管部37と体外循環部38とは、連通配管L41によって接続されている。具体的に、連通配管L41の一端(内部配管部37側)は、内部配管部37の電磁弁V32とダイアフラムポンプP32との間に接続され、他端(体外循環部38側)は、静脈側エアトラップチャンバ25に接続されている。また、連通配管L41には電磁弁V33が、内部配管部37の構成部品として配設されている。
【0106】
このような変形例においては、ダイアフラムポンプP31,P32、電磁弁V31~V32がメンテナンス対象部品に該当し、上記実施形態と同様にメンテナンス時期等の推定が行われることになる。
【0107】
また、上述実施形態における血液浄化装置1においては、複式ポンプP1を使用して透析液の導入出を行う複式ポンプ方式が採用されていたが、これに限定されない。例えば、1枚のダイアフラムによって2室に仕切ったチャンバを2つ設置し、透析液量と排液量を等量に制御し、除水ポンプによって除水を制御するようなダブルチャンバ方式が採用されてもよい。
【0108】
当該ダブルチャンバ方式を採用した一例として、内部配管部においては、血液浄化器に対して透析液を導入するための供給側の配管に、減圧弁、第1電磁弁、供給側ダイアフラムポンプ、流量調整弁、流量計、濃度センサ、温度センサ、及び第2電磁弁が、供給液側から順番に配設されている。また、血液浄化器に対して透析液を導出するための排出側の配管に、第3電磁弁、透析液圧センサ、濾液ポンプ、排出側ダイアフラムポンプが、血液浄化器側から順番に配設されている。更に、当該排出側の配管から分岐された他の配管には、除水ポンプ及び陰圧循環ポンプが配設されている。
【0109】
当該ダブルチャンバ方式を採用した他の例として、内部配管部においては、血液浄化器に対して透析液を導入するための供給側の配管に、2種類の薬液を血液浄化器に向けて導入するためのポンプが設けられている。また、当該供給側の配管において、ダイアフラムポンプの導入口のそれぞれの近傍に、バランシングチャンババルブが設けられている。一方、血液浄化器に対して透析液を導出するための排出側の配管に、バランシングチャンババルブ、透析液フィルタ、保持バルブ、除水ポンプ、及び排出弁が配設されている。また、当該排出側の配管から分岐して設けられた循環用の配管には、熱交換器、バランシングチャンババルブ、フローポンプ、空気分離ポンプ、負荷圧弁、再循環バルブが配設されている。
【0110】
当該ダブルチャンバ方式を採用するような変形例においては、各配管に配設された各部品がメンテナンス対象部品に該当し、上記実施形態と同様にメンテナンス時期等の推定が行われることになる。
【0111】
更に、例えば、閉塞したビスカスチャンバチャンバ内を2枚のダイアフラムによって3室に仕切り、中央のビスカス室の容量を変化させ、透析液室と排液室に容量の差を発生させて除水を制御するようなビスカスチャンバ方式が採用されてもよい。すなわち、ビスカスチャンバ方式においては、除水ポンプが使用されない。
【0112】
当該ビスカスチャンバ方式を採用する場合、内部配管部においては、3室に仕切られたビスカスチャンバのビスカス室がビスカスポンプを介して接続されており、ビスカスオイル(シリコンオイル)の導入出が可能になっている。また、一方のビスカスチャンバから血液浄化器に向けて設けられた配管には、三方電磁弁、二方電磁弁、温度センサ、圧力センサが配設されている。更に、血液浄化器から他方のビスカスチャンバに向け設けられた配管には、液圧ポンプ、及びリリーフバルブが配設されている。
【0113】
当該ビスカスチャンバ方式を採用するような変形例においては、各配管に配設された各部品がメンテナンス対象部品に該当し、上記実施形態と同様にメンテナンス時期等の推定が行われることになる。
【0114】
(第1実施形態の作用効果)
本実施形態においては、血液浄化装置1の過去の使用状況データ、過去の故障データ、過去のメンテナンスの実施データ、及びメンテナンスの基本データを関連付けて機械学習することによって生成された学習済み推定モデル56に対して、血液浄化装置1の現在の動作データが入力されると、学習済み推定モデル56が血液浄化装置1のメンテナンス時期を推定する。すなわち、学習済み推定モデル56は、血液浄化装置1を構成する構成装置及び構成部品のうち、メンテナンス対象となるメンテナンス対象装置及び対象部品のメンテナンス時期を推定する。このため、血液浄化装置1の管理者がメンテナンス時期を推定する必要がなく、当該管理者はメンテナンス時期を含むメンテナンス情報の取得が容易かつ高精度に可能になる。また、学習済み推定モデル56は、上述した各種のデータを関連付けて機械学習することによって生成されているため、推定結果に係るメンテナンスの頻度及び時期の適正化が図られることになる。
【0115】
<第2実施形態>
第1実施形態においては、血液浄化装置又はメンテナンス対象装置(構成装置)ごとに1つのメンテナンス時期が推定されていたが、メンテナンス対象装置又はメンテナンス対象部品ごとにメンテナンス時期に幅を持たせ、更にはメンテナンス対象装置又はメンテナンス対象部品におけるメンテナンス時期の統一化が図られるようにしてもよい。すなわち、血液浄化装置、メンテナンス対象装置、又はメンテナンス対象部品のメンテナンス期間を推定する際に、互いに異なるメンテナンス対象のメンテナンス期間を考慮し、重複する期間をメンテナンス期間とするような推定が行われてもよい。このような場合を第2実施形態として、図16及び図17を参照しつつ説明する。ここで、図16は、本実施形態に係る情報処理装置6において実行されるメンテナンスの推定に係る概略図である。図17は、本実施形態に係る血液浄化装置1において表示されるメンテナンス情報の報知例である。なお、第1実施形態と異なる部分を基本的に説明し、同一内容についてはその説明を省略し、図面における符号も同一符号を付すこととする。
【0116】
図16に示すように、本実施形態においては、学習データとしてメンテナンスの統一化データが追加されている。ここで、メンテナンスの統一化データとは、メンテナンス対象装置又はメンテナンス対象部品ごとに、メンテナンス時期に許容範囲を設定したものである。当該メンテナンスの統一化データは、メンテナンスの基本データと関連付けられており、メンテナンスの基本データの交換時間に余裕を持たせるものである。例えば、図6に示す構成装置及び構成部品のそれぞれについて、月単位、週単位、日付単位、又は時間単位のメンテナンスの許容範囲が設定されてもよい。なお、図16においては、メンテナンスの統一化データとして、ポンプの構成部品であるポペットバルブ、キャップシール、及び接手の許容範囲が日付で設定されている場合が想定されている。
【0117】
上述したメンテナンスの統一化データを学習データとして追加し、第1実施形態の図9に示すフローと同様にして機械学習を行うことにより、学習済み推定モデル156が生成される。本実施形態に係る学習済み推定モデル156は、図16に示すように、第1実施形態と同様の入力データが入力された場合であっても、構成装置ごとにメンテナンス対象部品のメンテナンス期間を推定し、当該メンテナンス期間を推定データに含めて出力する。
【0118】
また、学習済み推定モデル156は、メンテナンス対象部品が複数ある場合、メンテナンスを同一タイミングにそろえるようにメンテナンス期間を推定する。例えば、複式ポンプのポペットバルブのメンテナンス期間が2023年12月10日から2023年12月31日と推定され、除水ポンプの接手のメンテナンス期間が2023年11月20日から2023年12月15日と推定される場合、学習済み推定モデル156は、当該ポペットバルブ及び接手のメンテナンス期間を、2023年12月10日から2023年12月15日として推定する。すなわち、学習済み推定モデル156は、各メンテナンス対象部品の共通するメンテナンス期間を、最終的な推定結果として出力する。換言すると、学習済み推定モデル156は、所定期間に行われるメンテナンスを同一タイミングにて実施するように推定していることになる。これにより、メンテナンスの回数を削減することが可能となり、血液浄化装置1の使用期間をより長くすることができる。
【0119】
更に、学習済み推定モデル156は、推定されるメンテナンス期間において、メンテナンス時期をできる限り遅くするための好適使用条件を推定する。例えば、複式ポンプのポペットバルブのメンテナンス期間が2023年12月10日から2023年12月31日と推定され、除水ポンプの接手のメンテナンス期間が2023年11月20日から2023年12月15日と推定される場合、共通する2023年12月10日から2023年12月15日の期間をメンテナンス期間として出力するためには、除水ポンプの接手のメンテナンス期間をできる限り遅らせる必要がある。このため、学習済み推定モデル156は、メンテナンス期間を遅らせるための条件を、好適使用条件として推定データに含めて出力する。当該好適使用条件としては、各メンテナンス対象装置又はメンテナンス対象部品の動作条件を限定する内容となる。より具体的には、使用されるポンプの流量、温度等の条件が当該動作条件に含まれる。これにより、メンテナンスの回数を削減することが可能となり、血液浄化装置1の使用期間をより長くすることができる。
【0120】
なお、学習済み推定モデル156による上記の出力を可能とするために、上述した学習データに基づいてアノテーション処理が適宜施され、所望の出力を行えるための教師データを生成することが好ましい。
【0121】
上記のようなメンテナンス期間が限定され、更には好適使用条件を含む推定データを利用して、出力部4bからメンテナンス情報の報知が行われる。例えば、図17に示すように、表示部62及び表示部64においては、メンテナンス時期の項目に所定の期間が表示される。更に、出力部4bには、表示部71も併せて表示される。表示部71には、推定データに含まる好適使用条件が表示されるとともに、その詳細な説明を確認するためのボタン72が表示される。これにより、血液浄化装置1の管理者がボタン72に触れると、血液浄化装置1、メンテナンス対象装置又はメンテナンス対象部品の好適な使用条件が別途表示される。
【0122】
なお、本実施形態においては、学習済み推定モデル156がメンテナンス時期を同一タイミングにするように推定していたが、学習済み推定モデル156は各メンテナンス対象部品のメンテナンス期間を推定データとして出力し、制御部53が当該推定データに基づいて、メンテナンス時期の統一化を図ってもよい。換言すると、メンテナンス時期の統一化については、AIによらず処理されてもよい。
【0123】
(第2実施形態の作用効果)
本実施形態においては、メンテナンスの統一化データを学習データとして追加して機械学習を行って学習済み推定モデル156が生成され、学習済み推定モデル156はメンテナンス対象となる装置及び部品のメンテナンス時期をそろえるように推定データを出力する。また、学習済み推定モデル156はメンテナンス時期をそろえるための好適動作条件も推定データに含めて出力する。このため、メンテナンスの回数を削減することが可能となり、血液浄化装置1の使用期間を増加させることができる。更には、血液浄化装置1の好適な動作条件も管理者に報知されるため、当該管理者は血液浄化装置1の使用スケジュール等を容易に決定することができる。
【0124】
<第3実施形態>
第2実施形態においては、メンテナンス時期を遅くするための条件として、血液浄化装置1、メンテナンス対象装置、又はメンテナンス対象部品の好適な動作条件が推定データに含まれていたが、これに代えて、患者の選出に関する条件を含めてもよい。すなわち、血液浄化装置1によって治療される次回患者の提案が行われてもよい。このような場合を第3実施形態として、図18及び図19を参照しつつ説明する。ここで、図18は、本実施形態に係る情報処理装置6において実行されるメンテナンスの推定に係る概略図である。図19は、本実施形態に係る血液浄化装置1において表示されるメンテナンス情報の報知例である。なお、第1実施形態及び第2実施形態と異なる部分を基本的に説明し、同一内容についてはその説明を省略し、図面における符号も同一符号を付すこととする。
【0125】
図18に示すように、本実施形態においては、学習データとして患者の血液浄化実績データが追加されている。ここで、患者の血液浄化実績データとは、患者Hごとに設定される血液浄化治療の条件である。当該メンテナンスの統一化データは、メンテナンスの基本データ及びメンテナンスの統一化データと関連付けられている。当該血液浄化治療の条件としては、例えば、透析液の量、透析時間、各装置の動作条件等が含まれてもよい。
【0126】
上述した患者の血液浄化実績データを学習データとして追加し、第1実施形態の図9に示すフローと同様にして機械学習を行うことにより、学習済み推定モデル256が生成される。本実施形態に係る学習済み推定モデル256は、図18に示すように、第1実施形態と同様の入力データが入力された場合であっても、構成装置ごとにメンテナンス対象部品のメンテナンス期間を推定するとともに、血液浄化装置1を好適に使用できる条件となる次回患者も推定し、当該次回患者に関するデータを推定データに含めて出力する。
【0127】
なお、学習済み推定モデル256による上記の出力を可能とするために、上述した学習データに基づいてアノテーション処理が適宜施され、所望の出力を行えるための教師データを生成することが好ましい。
【0128】
上記のようなメンテナンス期間が限定され、更には好適使用条件を含む推定データを利用して、出力部4bからメンテナンス情報の報知が行われる。例えば、図19に示すように、表示部62及び表示部64においては、メンテナンス時期の項目に所定の期間が表示される。更に、第2実施形態と同様に、出力部4bには、表示部71も併せて表示される。表示部71には、推定データに含まる好適使用条件である次回患者の条件が表示されるとともに、その詳細な説明を確認するためのボタン72が表示される。これにより、血液浄化装置1の管理者がボタン72に触れると、血液浄化装置1を良好に使用するための条件として、提案された患者Hのより詳細なデータが別途表示される。
【0129】
上記のような次回患者が選定された推定データを利用して、出力部4bからメンテナンス情報の報知が行われる。例えば、図19に示すように、表示部71には、推定データに含まれる好適使用条件として、特定の患者が記載されるとともに、その詳細な説明を確認するためのボタン72が表示される。これにより、血液浄化装置1の管理者がボタン82に触れると、血液浄化装置1によって治療されることが推奨される患者Hの詳細データが確認することが可能になる。
【0130】
(第3実施形態の作用効果)
本実施形態においては、患者の血液浄化実績データを学習データとして追加して機械学習を行って学習済み推定モデル256が生成される。そして、学習済み推定モデル256は、メンテナンス対象となる装置及び部品のメンテナンス時期をそろえるように推定データを出力し、メンテナンス時期をそろえるための好適動作条件として好ましい次回患者のデータを推定データに含めて出力する。このため、メンテナンスの回数を削減することが可能となり、血液浄化装置1の使用期間を増加させることができる。更には、血液浄化装置1の管理者は、好適な次回患者のデータを確認することができるため、血液浄化装置1に対する患者の割当等を容易に決定することができる。
【0131】
<第4実施形態>
第1乃至第3実施形態においては、次回メンテナンスに係る推定を血液浄化装置1において行っていたが、複数の血液浄化装置1を管理するサーバ装置において、推定処理を行うようにしてもよい。このような場合を第4実施形態として、図20乃至図23を参照しつつ説明する。ここで、図20は、本実施形態に係る血液浄化システムの構成を示す概略図である。図21は、本実施形態に係る血液浄化装置の機能ブロック図である。図22は、本実施形態に係る情報処理装置の物理構成を示すブロック図である。図23は、本実施形態に係る血液浄化装置の機能ブロック図である。なお、第1乃至第3実施形態と異なる部分を基本的に説明し、同一内容についてはその説明を省略し、図面における符号も同一符号を付すこととする。
【0132】
先ず、図20に示すように、本実施形態に係る血液浄化システム300は、複数の血液浄化装置1、サーバ装置400、及び携帯端末装置500を有している。また、2台の血液浄化装置1、サーバ装置400、及び携帯端末装置500は、インターネット等のネットワーク600によって、互いに通信可能に接続されている。なお、ネットワーク600は、無線、有線、又はこれらの組み合わせによって構成されてもよい。
【0133】
血液浄化システム300において、血液浄化装置1のそれぞれは、装置内で取得される各種のデータをネットワーク600を介してサーバ装置400又は携帯端末装置500に送信する。また、サーバ装置400は、血液浄化装置1から受信した各種のデータを処理し、当該処理結果を血液浄化装置1又は携帯端末装置500に送信する。更に、携帯端末装置500は、受信した各種のデータを処理し、血液浄化装置1又はサーバ装置に送信することも可能である。
【0134】
本実施形態の血液浄化装置1の構成は、第1実施形態の構成と基本的に同一である。異なる部分としては、血液浄化装置1の動作データ取得、次回メンテナンスに係る推定データの取得、及び推定データに基づく制御に係る処理が行われないため、血液浄化装置1は当該処理に係る構成及び機能を有しないことになる。なお、図20においては、血液浄化装置1は2台しか記載されていないが、血液浄化装置1の台数はこれに限られず、血液浄化システム300は、血液浄化装置1を3台以上、有していてもよい。また、血液浄化装置1は、同種の装置に限定されず、種類やバージョンが互いに異なる装置であってもよい。
【0135】
サーバ装置400は、病院内に設置され、病院内の各種のデータを管理し、病院内における各種のデータ処理を行うコンピュータである。なお、サーバ装置400の設置場所は病院に限定されず、病院外であってもよい。また、図20において、サーバ装置400は単一のものとして記載されているが、後述するサーバ装置400の各種の構成及び処理を複数の他のサーバ装置やクラウドサーバ装置に分配することも可能である。
【0136】
携帯端末装置500は、スマートフォンに代表される無線通信可能な装置であってよいが、これに限定されない。例えば、携帯端末装置500としては、フィーチャーフォン、携帯情報端末、PDA、ラップトップパソコン、デスクトップパソコンなどであってもよい。なお、図20においては、携帯端末装置500は1台しか記載されていないが、携帯端末装置500の台数はこれに限られず、血液浄化システム300は、携帯端末装置500を2台以上、有していてもよい。
【0137】
次に、図21を参照しつつ、本実施形態に係る血液浄化装置1の機能的な構成を説明する。特に、図21においては、第1実施形態と同一の装置、部品、構成については、同一符号を付している。
【0138】
図21に示すように、情報処理装置6は算出部55を有しており、情報処理装置6のプロセッサ6aがメモリ6bに記憶されたプログラムを読み出して実行することにより実現される。算出部55は、血液浄化装置1の動作状態を示す状態パラメータである各種の信号を、ポンプP61、圧力センサS62、温度センサS63、流量センサS64から受信する。また、算出部55は、血液浄化装置1の動作状態を示す状態パラメータとして、入力部4aから入力データも受信する。
【0139】
算出部55は、受信した各種の電気信号から動作状態を算出する。具体的に、算出部55は、ポンプP61から受信した各種の電気信号に基づいて、ポンプP61の現状の動作状態を算出する。また、算出部55は、圧力センサS62、温度センサS63、及び流量センサS64から受信した各種の電気信号に基づいて、各センサを備える構成装置若しくは構成部品の現状の動作状態を算出、又は各センサの近傍に位置する構成装置若しくは構成部品の現状の動作状態を算出する。更に、算出部55は、上述した構成装置及び構成部品の動作データに基づいて、血液浄化装置1の動作状態を算出する。そして、算出部55は、各動作状態を取りまとめて1つの動作データとする。ここで、当該動作データとは、血液浄化装置1、構成装置、及び構成部品の各動作状態に係るデータを含んでいる。
【0140】
その後、算出部55は、生成した1つの動作データを通信部9を介して、血液浄化装置1の外部へ送信する。本実施形態において、算出部55は、当該動作データをサーバ装置400に送信する。
【0141】
次に、図22及び図23を参照しつつ、本実施形態に係るサーバ装置400の構成を説明する。先ず、図21に示すように、サーバ装置400は、入力部404a、出力部404b、情報処理装置406、及び通信部409を有している。また、情報処理装置406は、プロセッサ406a及びメモリ406bから構成されている。更に、通信部409は、通信処理回路409a及びアンテナ409bから構成されている。
【0142】
情報処理装置406のプロセッサ406aは、GPU又はCPUから構成され、メモリ406bに記憶された各種プログラムに基づいて、各種の演算及び制御を行う制御部として機能する。なお、プロセッサ406aは、単一のGPU又はCPUで構成されても良いが、複数のCPU又はGPUを組み合わせて構成しても良い。
【0143】
メモリ406bは、ROM、RAM、不揮発性メモリ、HDD等から構成され、記憶部として機能する。ROMは、血液浄化装置1、並びに血液浄化装置1の構成装置及び構成部品のメンテナンス時期の推定を行うために必要となる学習済み推定モデルを記憶する。また、RAMは、ROMに記憶されたプログラムがプロセッサ406aにより処理されている間、データの書き込み及び読み込みをするために用いられる。不揮発性メモリは、当該プログラムの実行によってデータの書き込み及び読み込みが実行される記憶装置であって、ここに書き込まれたデータは、当該プログラムの実行が終了した後でも保存される。
【0144】
特に、本実施形態においては、患者の血液を浄化する血液浄化装置1のメンテナンス時期を推定するプログラムが記憶されている。当該プログラムは、血液浄化装置1の動作状態を示す状態パラメータから生成される動作データを取得する処理をコンピュータであるサーバ装置400に実行させるものである。また、当該プログラムは、血液浄化装置1のメンテナンス時期を推定するための機械学習を行った学習済み推定モデルに動作データを入力して、血液浄化装置1の次回メンテナンスに係る推定データを取得する処理をコンピュータに実行させるものである。更に、当該プログラムは、血液浄化装置1のメンテナンス情報を表示するための表示データを当該推定データに基づいて生成する処理をコンピュータに実行させるものである。なお、当該プログラムによって実行される処理については、後述するものとする。
【0145】
また、メモリ406bには、第1実施形態に係る情報処理装置6のメモリ6bと同様に、血液浄化装置1、その構成装置、及びその構成部品の動作状態が記憶されている。具体的には、図5に示す動作状態が記憶されている。ただし、サーバ装置400は、複数の血液浄化装置1の管理を行うため、メモリ406bには血液浄化装置1のそれぞれが識別できるように、各動作状態が記憶されている。
【0146】
更に、メモリ406bには、第1実施形態に係る情報処理装置6のメモリ6bと同様に、血液浄化装置1、その構成装置、及びその構成部品のメンテナンス情報が記憶されている。具体的には、図6に示すメンテナンス情報が記憶されている。ただし、サーバ装置400は、複数の血液浄化装置1の管理を行うため、メモリ406bには血液浄化装置1のそれぞれが識別できるように、各メンテナンス情報が記憶されている。
【0147】
通信部409は、通信処理回路409a及びアンテナ409bを介して、サーバ装置400とは離間して設置された血液浄化装置1、又は携帯端末装置500との間で情報の送受信を行う。
【0148】
通信処理回路409aは、LTE方式に代表されるような広帯域の無線通信方式に基づいて処理を実行してもよい。また、通信処理回路409aは、IEEE802.11に代表されるような無線LAN若しくはBluetooth(登録商標)のような狭帯域の無線通信に関する方式に基づいて処理を実行してもよい。さらに、通信処理回路409aは、非接触無線通信に関する方式に基づいて処理を実行してもよい。そして、通信処理回路409aは、このような無線通信に代えて、又は加えて、有線通信が利用されてもよい。
【0149】
次に、図23に示すように、情報処理装置406は、動作データ取得部451、推定部452、制御部453、及び記憶部454を有する。また、推定部452は、学習済み推定モデル456を含む。これらの各部は、情報処理装置406のプロセッサ406a及びメモリ406b自体が機能することで実現され、又はプロセッサ406aがメモリ406bに記憶されたプログラムを読み出して実行することにより実現される。
【0150】
動作データ取得部451は、通信部409を介して、血液浄化装置1から送信される動作データを取得する。また、動作データ取得部451は、取得した動作データを記憶するために、当該動作データを記憶部454に送信する。また、動作データ取得部451は、当該動作データの元となる各種の信号についても、記憶部454に送信してもよい。記憶部454は、受信した動作データをメモリ406bに記憶する。更に、動作データ取得部451は、取得した動作データから血液浄化装置1のメンテナンス時期を推定するために、当該動作データを推定部452に送信する。
【0151】
推定部452は、学習済み推定モデル456を用いて推定データを取得するために、受信した動作データに加えて、メンテナンスデータを記憶部454から受信する。ここで、メンテナンスデータとは、第1実施形態に係るものと同様に、図6のデータテーブルに示す構成装置及び構成部品ごとの「前回のメンテナンス日時」である。また、推定部452は、受信した動作データ及びメンテナンスデータを学習済み推定モデル456に入力を行い、血液浄化装置1の次回メンテナンスに係る推定データを取得する。ここで、当該推定データについては、血液浄化装置1のメンテナンス時期及びメンテナンス対象部品のデータが含まれる。
【0152】
本実施形態に係る学習済み推定モデル456は、第1実施形態に係る学習済み推定モデル56と同一であり、同様の学習データ及び機械学習によって生成される。このため、その詳細な説明は省略する。
【0153】
その後、推定部452は、学習済み推定モデル456の出力結果である推定データを取得すると、当該推定データを制御部453に送信する。制御部453は、血液浄化装置1のメンテナンス情報を血液浄化装置1の管理者に報知するために、受信する推定データに加えて、記憶部454から発注先データを受信する。ここで、発注先データとは、第1実施形態に係るものと同様に、図6のデータテーブルに示す構成装置及び構成部品ごとの「発注先」である。制御部453は、推定データ及び発注先データに基づいて、メンテナンス情報として表示するため表示データを生成し、当該表示データを通信部409に送信する。また、制御部453は、当該推定データに含まれるメンテナンス対象部品の発注先を当該発注先データから選択し、メンテナンス対象部品の発注を自動的に行ってもよい。この場合、表示データには、メンテナンス対象部品が発注済みである旨の情報が追加されてもよい。
【0154】
通信部409は、動作データを送信してきた血液浄化装置1に対して、受信した表示データを送信する。また、通信部409は、受信した表示データを携帯端末装置500にも送信する。これにより、血液浄化装置1の管理者は、血液浄化装置1のディスプレイ4、又は自身が操作する携帯端末装置500に表示される、血液浄化装置1の次回メンテナンスに係る情報を確認することが可能になる。
【0155】
なお、上記説明において、学習済み推定モデル456が第1実施形態に係る学習済み推定モデル56と同一であることとしていたが、当然のことながら、学習済み推定モデル456が第2実施形態に係る学習済み推定モデル156、又は第3実施形態に係る学習済み推定モデル256と同一であってもよい。特に、学習済み推定モデル456が第3実施形態に係る学習済み推定モデル256と同一である場合、学習済み推定モデル456は、血液浄化装置1の過去の使用状況データ、過去の故障データ、過去のメンテナンスの実施データ、メンテナンスの基本データ、及び複数の前記患者の血液浄化実績データを関連付けて機械学習することによって生成されている。そして、学習済み推定モデル456は、複数の血液浄化装置のそれぞれに対して、次回患者の選出データを推定データに含めて推定することが可能になる。これにより、複数の血液浄化装置1が設置されている病院全体として、血液浄化装置1に対する患者の割当等が容易に決定することができ、血液浄化治療に係る病院運営を円滑に行うことが可能になる。すなわち、病院全体の血液浄化装置1の状況を把握し、病院全体としのメンテナンススケジュールを立てることが可能になる。例えば、治療方法、透析液流量、又は血液ポンプ速度のデータから、ポンプ速度が速いとする厳しい条件で使用されている血液浄化装置1と、比較的ゆっくりとした治療に使用される血液浄化装置1とに分類できる場合、病院内の複数の血液浄化装置1がバランスよく使用できるように、患者の治療条件から血液浄化装置1を自動的に各患者に対して割り振ることができる。例えば、厳しい条件で使用してきた血液浄化装置1を、ゆっくりとした治療に使用するように、当該ゆっくりとした治療を行う患者に割り当てつつ、ゆっくりとした治療に使用してきた血液浄化装置1を、厳しい条件で使用する治療に使用できるように、当該条件に係る治療を行う患者に割り当てることができる。
【0156】
また、上述した実施形態においては、サーバ装置400において次回メンテナンスに係る推定が行われていたが、これに限定されない。例えば、携帯端末装置500の情報処理装置に学習済み推定モデルを実装し、推定処理を実行するようにしてもよい。
【0157】
(第4実施形態の作用効果)
本実施形態においては、血液浄化装置1の過去の使用状況データ、過去の故障データ、過去のメンテナンスの実施データ、及びメンテナンスの基本データを関連付けて機械学習することによって生成された学習済み推定モデル456に対して、血液浄化装置1の現在の動作データが入力されると、学習済み推定モデル456が血液浄化装置1のメンテナンス時期を推定する。すなわち、学習済み推定モデル456は、血液浄化装置1を構成する構成装置及び構成部品のうち、メンテナンス対象となるメンテナンス対象装置及び対象部品のメンテナンス時期を推定する。このため、血液浄化装置1の管理者がメンテナンス時期を推定する必要がなく、当該管理者はメンテナンス時期を含むメンテナンス情報の取得が容易かつ高精度に可能になる。また、学習済み推定モデル456は、上述した各種のデータを関連付けて機械学習することによって生成されているため、推定結果に係るメンテナンスの頻度及び時期の適正化が図られることになる。
【0158】
また、本実施形態においては、血液浄化装置1とは異なる装置において、推定処理が行われ、当該推定処理の結果が一元管理されることになる。このため、複数の血液浄化装置1のメンテナンス時期及びこれに係る情報を一元管理することができ、病院に設置される複数の血液浄化装置1の保守及び点検をより行いやすくすることが可能になる。
【0159】
<本開示の実施態様>
本開示の第1の実施の態様は、患者の血液を浄化する血液浄化装置のメンテナンス時期を推定する情報処理装置であって、前記血液浄化装置の動作状態を示す状態パラメータから生成される動作データを取得する動作データ取得部と、前記血液浄化装置のメンテナンス時期を推定するための機械学習を行った学習済み推定モデルに前記動作データを入力して、前記血液浄化装置の次回メンテナンスに係る推定データを取得する推定部と、前記血液浄化装置のメンテナンス情報を表示するための表示データを前記推定データに基づいて生成する制御部と、を有する情報処理装置である。
【0160】
このように、血液浄化装置の動作データを学習済み推定モデルに入力するだけで、血液浄化装置のメンテナンス対象部品のメンテナンス時期が出力されるため、メンテナンスに係る情報を容易に推定し、当該メンテナンスの頻度及び時期の適正化を図ることができる。
【0161】
本開示の第2の実施の態様は、第1の実施の態様において、前記推定データは、前記血液浄化装置のメンテナンス対象部品のデータを含むことである。これにより、具体的なメンテナンスの対象となる部位を把握することがようになる。
【0162】
本開示の第3の実施の態様は、第1又は第2の実施の態様において、前記学習済み推定モデルは、前記血液浄化装置の過去の使用状況データ、過去の故障データ、過去のメンテナンスの実施データ、及びメンテナンスの基本データを関連付けて機械学習することによって生成されていることである。これにより、学習済み推定モデルによる推定精度を高めることができ、信頼度のより高い推定データを取得可能になる。
【0163】
本開示の第4の実施の態様は、第1乃至第3のいずれかの実施の態様において、前記状態パラメータは、前記血液浄化装置を構成する構成装置又は前記血液浄化装置の流路に設けられたセンサにおいて検出した動作信号、温度信号、圧力信号、又は流量信号の少なくともいずれか1つを含むことである。これにより、血液浄化装置の現状の動作状態に対応させた推定データを得ることが可能になる。
【0164】
本開示の第5の実施の態様は、第4の実施の態様において、前記学習済み推定モデルは、前記構成装置ごとにメンテナンス対象部品及び前記メンテナンス対象部品に対するメンテナンス時期を推定し、前記制御部は、前記構成装置ごとに前記メンテナンス対象部品及び前記メンテナンス時期を前記メンテナンス情報として表示するための前記表示データを前記推定データに基づいて生成することである。これにより、血液浄化装置の管理者が容易にメンテナンス情報を確認することが可能になる。
【0165】
本開示の第6の実施の態様は、第3の実施の態様において、前記学習済み推定モデルは、前記血液浄化装置におけるメンテナンスの統一化データを機械学習することによって生成され、所定期間に行われるメンテナンスを同一タイミングにて実施するように推定することである。これにより、メンテナンスの回数を削減することが可能となり、血液浄化装置の使用期間を増加させることができる。
【0166】
本開示の第7の実施の態様は、第3の実施の態様において、前記学習済み推定モデルは、複数の前記患者の血液浄化実績データを機械学習することによって生成され、次回患者の選出データを前記推定データに含めて推定することである。これにより、メンテナンスの回数を削減することが可能となり、血液浄化装置の使用期間をより長くすることができる。また、血液浄化装置の管理者は、好適な次回患者のデータを確認することができるため、血液浄化装置に対する患者の割当等を容易に決定することができる。
【0167】
本開示の第8の実施の態様は、第6又は第7の実施の態様において、前記学習済み推定モデルは、前記血液浄化装置のメンテナンス時期を期間単位で推定し、推定した期間内においてメンテナンス時期を遅くするための条件を推定することである。これにより、メンテナンスの回数を削減することが可能となり、血液浄化装置の使用期間をより長くすることができる。
【0168】
本開示の第9の実施の態様は、第1乃至第8のいずれかの実施の態様において、前記動作データ取得部は、前記状態パラメータから前記動作データを生成する算出部を備えることである。これにより、推定データを取得するために必要となる動作データを容易に取得することが可能にある。
【0169】
本開示の第10の実施の態様は、第9の実施の態様において、前記算出部は、前記血液浄化装置の構成装置又は前記血液浄化装置の流路に設けられたセンサにおいて検出した動作信号、温度信号、圧力信号、又は流量信号の少なくともいずれか1つから、前記血液浄化装置の動作回数又は洗浄回数を算出することである。これにより、血液浄化装置の現状の動作状態に対応させた推定データを得ることが可能になる。
【0170】
本開示の第11の実施の態様は、第1乃至第10のいずれかの実施の態様において、前記推定部は、前記血液浄化装置の過去のメンテナンスデータを前記学習済み推定モデルに入力し、前記推定データは、過去のメンテナンス実施時から動作データ取得時までにおける前記血液浄化装置の状態変化が関連付けられていることである。これにより、学習済み推定モデルによる推定精度を高めることができ、信頼度のより高い推定データを取得可能になる。
【0171】
本開示の第12の実施の態様は、第1乃至第11のいずれかの実施の態様において、前記制御部は、前記推定データに含まれる前記メンテナンス対象部品の発注先を発注先データから選択し、前記メンテナンス対象部品の発注を行うことである。これにより、血液浄化装置の管理者の負担が軽減される。
【0172】
本開示の第13の実施の態様は、第1乃至第12のいずれかの実施の態様において、前記動作データ取得部は、複数の前記血液浄化装置の動作データを取得し、前記制御部は、複数の前記血液浄化装置又はメンテナンス実施者の携帯端末装置に送信するためのメンテナンス情報を生成することである。これにより、血液浄化装置の管理者が容易にメンテナンス情報を確認することが可能になる。
【0173】
本開示の第14の実施の態様は、第13の実施の態様において、前記学習済み推定モデルは、前記血液浄化装置の過去の使用状況データ、過去の故障データ、過去のメンテナンスの実施データ、メンテナンスの基本データ、及び複数の前記患者の血液浄化実績データを関連付けて機械学習することによって生成され、複数の前記血液浄化装置のそれぞれに対して次回患者の選出データを前記推定データに含めて推定することである。これにより、血液浄化装置の管理者は、好適な次回患者のデータを確認することができるため、血液浄化装置に対する患者の割当等を容易に決定することができる。
【0174】
本開示の第15の実施の態様は、患者の血液を浄化する血液浄化装置のメンテナンス時期を推定する情報処理方法であって、前記血液浄化装置の動作状態を示す状態パラメータから生成される動作データを取得する工程と、前記血液浄化装置のメンテナンス時期を推定するための機械学習を行った学習済み推定モデルに前記動作データを入力して、前記血液浄化装置の次回メンテナンスに係る推定データを取得する工程と、前記血液浄化装置のメンテナンス情報を表示するための表示データを前記推定データに基づいて生成する工程と、を有する情報処理方法である。このように、血液浄化装置の動作データを学習済み推定モデルに入力するだけで、血液浄化装置のメンテナンス対象部品のメンテナンス時期が出力されるため、メンテナンスに係る情報を容易に推定し、当該メンテナンスの頻度及び時期の適正化を図ることができる。
【0175】
本開示の第16の実施の態様は、患者の血液を浄化する血液浄化装置のメンテナンス時期を推定するプログラムであって、前記血液浄化装置の動作状態を示す状態パラメータから生成される動作データを取得し、前記血液浄化装置のメンテナンス時期を推定するための機械学習を行った学習済み推定モデルに前記動作データを入力して、前記血液浄化装置の次回メンテナンスに係る推定データを取得し、前記血液浄化装置のメンテナンス情報を表示するための表示データを前記推定データに基づいて生成する、処理をコンピュータに実行させるプログラムである。このように、血液浄化装置の動作データを学習済み推定モデルに入力するだけで、血液浄化装置のメンテナンス対象部品のメンテナンス時期が出力されるため、メンテナンスに係る情報を容易に推定し、当該メンテナンスの頻度及び時期の適正化を図ることができる。
【符号の説明】
【0176】
1 血液浄化装置
4 ディスプレイ
4a 入力部
4b 出力部
5 血液浄化器
6 情報処理装置
6a プロセッサ
6b メモリ
7 内部配管部
8 体外循環部
9 通信部
51 動作データ取得部
52 推定部
53 制御部
54 記憶部
55 算出部
56 学習済み推定モデル

【要約】      (修正有)
【課題】血液浄化装置のメンテナンス対象部品のメンテナンス時期を容易に推定し、メンテナンスの頻度及び時期の適正化を図ること。
【解決手段】患者の血液を浄化する血液浄化装置のメンテナンス時期を推定する情報処理装置であって、前記血液浄化装置の動作状態を示す状態パラメータから生成される動作データを取得する動作データ取得部と、前記血液浄化装置のメンテナンス時期を推定するための機械学習を行った学習済み推定モデルに前記動作データを入力して、前記血液浄化装置の次回メンテナンスに係る推定データを取得する推定部と、前記血液浄化装置のメンテナンス情報を表示するための表示データを前記推定データに基づいて生成する制御部と、を有し、前記学習済み推定モデルは、前記血液浄化装置の過去のメンテナンスの実施データを機械学習することによって生成されている、情報処理装置。
【選択図】図7
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23