(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】並列に並べた繊維糸のみからなる基材にメッキで形成した導電回路基板
(51)【国際特許分類】
B32B 5/24 20060101AFI20240927BHJP
H05K 1/02 20060101ALI20240927BHJP
H05K 3/46 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
B32B5/24
H05K1/02 D
H05K3/46 T
(21)【出願番号】P 2022046148
(22)【出願日】2022-03-22
【審査請求日】2022-03-22
【審判番号】
【審判請求日】2023-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】596047067
【氏名又は名称】広繁 勝也
(73)【特許権者】
【識別番号】504069439
【氏名又は名称】広繁 孝一
(74)【代理人】
【識別番号】100092107
【氏名又は名称】下田 達也
(72)【発明者】
【氏名】広繁 勝也
【合議体】
【審判長】馬場 慎
【審判官】衣鳩 文彦
【審判官】土居 仁士
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-103671(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/02
H05K 3/46
B32B 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列に並べた繊維糸のみを基材とした導電回路基板において、前記繊維糸は、化学繊維、植物繊維、紙繊維、金属繊維で、その同一種か複数種を用いて
、並列に並べた繊維糸にメッキを絡めて一体形成した導電回路の部位全体を補強用樹脂で覆ったことを特徴とする導電回路基板。
【請求項2】
基材である繊維糸の形状、及びピッチ間隔の双方を変えて形成したことを特徴とする請求項1記載の導電回路基板。
【請求項3】
請求項1又は請求項2における導電回路基板において、メッキで形成した導電回路の部位全体を覆った補強用樹脂に加えて帯状に複数本の補強用樹脂で基材を支持補強できるようにしたことを特徴とする導電回路基板。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の導電回路基板を多層に積層した各層の回路を導通したことを特徴とする導電回路基板。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の導電回路基板において、先端部に、接点や他の部品を接続することができる接続部を設けたことを特徴とする導電回路基板。
【請求項6】
請求項1、2、5のいずれか1項に記載の導電回路基板において、基材におけ
る並列に並べた繊維糸のみ
にメッキで一体形成した導電回路
と、同様に形成した他の導電回路を積層して形成する導電回路において、両導電回路の隙間
、間隙を
介して接着剤で圧接し、導電回路を導電接着させることを特徴とする導電回路基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の材質、形状の繊維糸を等間隔、あるいは不等間隔に並列に並べた基材にメッキを形成した導電回路基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来は、経糸と緯糸とを縫製してなるプリント配線基板用のガラスクロスにおいて、単繊維径が経糸の単繊維径と同じ、又は経糸の単繊維径より細く、かつ4.5μm以下のガラス繊維を集束してなるガラスヤーンを緯糸としたプリント配線基板用のガラスクロス(例えば、特許文献1参照)が存在している。
しかしながら、これまでの繊維による織布や不織布の基材は、メッキにより導電回路を形成しても欠点があるのが現状である。例えば導電回路基板は、近年電子機器が小型化、精密化が進み、少しでも薄く、安価で、基板に凹凸が少ないもの、また織布のように織られた交点で点接触するものであるが、線接触で接触面積が大なものが求められているが、現在存在していない。
この求められている要求に答えるものとして、織らず、単に並列に並べた複数本の繊維にメッキを絡めて一体形成したことで、薄く凹凸が少ない導電回路基板を得ることができる。このように、より軽く、より薄く、より柔らかく、より平坦で、より安価に提供できる基材に導電回路を形成したので、欠点に対応できるようになる。
そこで、本発明は、従来の織布、不織布では、なし得なかったものとして、並列に並べた繊維糸からなる基材にメッキを絡めて一体形成した基材を利用して導電回路を形成したものを発明した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-73249号公報 (特許請求の範囲の欄、発明の詳細な説明の欄、及び
図1、
図2を参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の繊維糸で織ったガラスクロスでは、より強い繊維糸を採用することで、強さは得られるが、実際には色々な形状、機能を得るため、また精密機器に採用されるためにコンパクト化が目指されるが、それには基板の厚さを薄くする、これは織ったり、不織布が基材であると、基板の厚さの比較で最低でも2倍以上の厚みになる。また、導電回路基板はより凹凸が少ないことが必要であり、これは電子部品が極小化しているため、基材が織ってあったり、不織布では凹凸があり、電子部品を載置する場合、隙間があるので、その隙間に落下(ズッコケる)する現象が散見される。
これらの欠点を解決するために本発明では、導電回路基板の平面の平坦さ、薄さに対応できる並列に並べた繊維からなる基材にメッキを絡めて一体形成した、より良い導電回路基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成できる本発明の第1発明は、請求項1に記載された通りの並列に並べた繊維糸のみからなる基材にメッキで形成した導電回路基板であり、次のようなものである。
並列に並べた繊維糸のみを基材とした導電回路基板において、前記繊維糸は、化学繊維、植物繊維、紙繊維、金属繊維で、その同一種か複数種を用いて、並列に並べた繊維糸にメッキを絡めて一体形成した導電回路の部位全体を補強用樹脂で覆うという構成である。
【0006】
上記の目的を達成できる本発明の第2発明は、請求項2に記載された通りの並列に並べた繊維糸のみからなる基材にメッキで形成した導電回路基板であり、次のようなものである。
請求項1における基材である繊維糸の形状、及びピッチ間隔の双方を変えて形成するという構成である。
【0007】
上記の目的を達成できる本発明の第3発明は、請求項3に記載された通りの並列に並べた繊維糸のみからなる基材にメッキで形成した導電回路基板であり、次のようなものである。
請求項1又は請求項2に記載の発明に加えて、メッキで形成した導電回路の部位全体を覆った補強用樹脂に加えて帯状に複数本の補強用樹脂で基材を支持補強できるようにする構成である。
【0008】
上記の目的を達成できる本発明の第4発明は、請求項4に記載された通りの並列に並べた繊維糸のみからなる基材にメッキで形成した導電回路基板であり、次のようなものである。
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の発明に加えて、導電回路基板を多層に積層した各層の回路を導通する構成である。
【0009】
上記の目的を達成できる本発明の第5発明は、請求項5に記載された通りの並列に並べた繊維糸のみからなる基材にメッキで形成した導電回路基板であり、次のようなものである。
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の発明に加えて、先端部に、接点や他の部品を接続することができる接続部を設ける構成である。
【0010】
上記の目的を達成できる本発明の第6発明は、請求項6に記載された通りの並列に並べた繊維糸のみからなる基材にメッキで形成した導電回路基板であり、次のようなものである。
請求項1、2、5のいずれか1項に記載の導電回路基板において、基材における並列に並べた繊維糸のみにメッキで一体形成した導電回路と、同様に形成した他の導電回路を積層して形成する導電回路において、両導電回路の隙間、間隙を介して接着剤で圧接し、導電回路を導電接着させる構成である。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る並列に並べた繊維糸のみからなる基材にメッキで形成した導電回路基板は、上記説明のような構成を有するので、以下に記載する効果を奏する。
(1)基材が並列に並べた繊維糸からなるので、微小部品の実装が可能である。
(2)基材が織っていないため、硬直な繊維糸、極細な繊維糸の使用が可能である。
(3)織布、不織布の基材に比べて同一サイズ、同一部材で作製した場合、少なくとも1/2の基材の厚さにできる。
(4)織布、不織布に比べて凹凸が少ないので、微小部材でも凹凸部に落下しないで、水平に実装できる。
(5)織布、不織布の基材で作製した導電回路は、凹凸があり、高周波用基板には使用することが難しかったが、本願発明の導電回路は凹凸が少ないため、高周波用基板の使用にも適している。
(6)織布、不織布の基材で作製した導電回路では、どうしても交点部が存在するので、電子部品の取り付けは点接触になるが、本願発明の基材が並列に並べた繊維糸からなる基材にメッキを形成した導電回路なので、最小でも点接触ではなく線接触で行うことができ、接触面積を大にすることができる。
(7)基材は、繊維糸を並列に並べただけなので、従来の織布、不織布に比べて硬直な繊維糸や、径の微細な繊維糸でも使用可能で、織ったり、不織布のように圧着したりする必要がないので、コストを下げることができる。
(8)導電性回路を積層する際、例えば1層目は横方向に、2層目を交差するように縦方向に配置することで導電性回路の強度を高めることができる。
(9)導電回路において、並列に並べた繊維糸を基材としているので、繊維糸や導電回路の隙間を利用して、接着剤を圧接し、又は導電接着剤やハンダを流し落し込み、導電回路を導電接着することができ、極めて作業が簡単にできるものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明
の並列に並べた繊維糸のみからなる基材にメッキで形成した導電回路基板を示すもので、第1実施例の概略拡大斜視図である。
【
図2】本発明
の並列に並べた繊維糸のみからなる基材にメッキで形成した導電回路を覆う補強用樹脂とは別に導電回路の無い部分に帯状補強用樹脂を適宜数設けたものを示す概略拡大斜視図である。
【
図3】本発明の第2実施例を示す概略拡大平面図である。
【
図4】
並列に並べた繊維糸のみにメッキを絡めて形成した下層の導電回路と、同様に形成した上層の導電回路を導電接続する上で、ハンダや導電接着剤で、繊維糸間や導電回路の隙間に流し落し込んだ実施例を示す概略拡大断面図である。
【
図5】
並列に並べた繊維糸のみにメッキを絡めて形成した下層の導電回路と、同様に形成した上層の導電回路を導電接着させるように接着剤を介して圧接接着する具体的な実施例を示す概略拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
並列に並べた繊維糸のみを基材とした導電回路基板において、前記繊維糸は、化学繊維、植物繊維、紙繊維、金属繊維で、その同一種か複数種を用いて、並列に並べた繊維糸にメッキを絡めて一体形成した導電回路の部位全体を補強用樹脂で覆った導電回路基板である。
【実施例1】
【0014】
以下、図面に基づいて、本発明の一実施例
の並列に並べた繊維糸のみからなる基材にメッキで形成した導電回路基板を説明する。
本発明の第1実施例について
図1に基づいて説明する。
並列に並べた繊維糸3のみを基材1とし、該基材1にメッキ2を絡めて一体的に形成したメッキ導電回路4を補強用樹脂5で覆うことで、薄く可撓性があり、丈夫なメッキで形成した導電回路基板Aを得るものである。
また、前記補強用樹脂5は、導電回路を保護、支持する機能に加えて、絶縁の機能を持たせることはいうまでもない。
尚、基材1の繊維糸3の材質は、化学繊維、植物繊維、紙繊維、金属繊維で、同一種か、複数種を組み合わせても良い。
また、繊維糸3の断面形状は円形、楕円形、角形、押し潰した形状でも良く、この断面形状の使用は、一種類でも、複数種類の組み合わせでも良いことは言うまでもない。
【0015】
本発明の第1実施例の変形例について、
図2に基づいて説明する。
並列に並べた繊維糸3のみの基材1を、形状の安定化を奏するようにするための変形例であって、メッキ導電回路4を覆う補強用樹脂5とは別に導電回路4の無い部分に帯状補強用樹脂10を適宜数設けたものである。
【0016】
次に、本発明の第2実施例について
図3に基づいて説明する。
第2実施例は、第1実施例と同一のメッキ導電回路4を積層して用いる実施例であり、下層導電回路基板Bを横方向に上層導電回路基板Cを縦方向に積層した交点部に上・下層導電接続部8を接続したものを示すが、これは下層導電回路基板Bと上層導電回路基板Cを同一方向に積層しても、斜めに交差するようにしても良いことは言うまでもない。
【0017】
次に、本発明の第3実施例について簡単に説明する。
前記第1実施例と同様に形成した導電回路基板Aの先端部に接点や、他の部品を接続することができる接続部(これは従来から知られている既存の接続部で良い)を設けた並列に並べた繊維糸のみからなる基材にメッキを形成した導電回路基板である。
【0018】
また、メッキ導電回路4を形成する上で、より簡易に製作することができることについて説明する。
図4に示す通り
、並列に並べた繊維糸3のみにメッキを絡めて形成した下層導電回路基板Bのメッキ導電回路4と上層導電回路基板Cのメッキ導電回路4を導電接続する上で簡単にハンダ9や導電接着剤7を流し落し込みするだけで導電接続することができるものである。
さらに
図5に示す通り
、並列に並べた繊維糸3のみにメッキを絡めて形成した下層導電回路基板Bのメッキ導電回路4と同様に形成し
た並列に並べた繊維糸3のみにメッキを絡めて形成した上層導電回路基板Cのメッキ導電回路4を導電接続するために、導電接着させる上・下層導電回路基板のメッキ導電回路4同士を接着剤6で直接圧接することで、導電回路を形成することができる。
さらに、その他の接着接続の方法として、超音波による導電接続やワイヤボンディングにより導電接続することは、本願発明を利用して行うことで極めて良好にできるものである。
【0019】
以上の通り、具体的な実施例として開示したが、さらに詳細な点を開示すると、基材1としての繊維糸3の材質としては、化学繊維、植物繊維、紙繊維、金属繊維、ガラス繊維、カーボン繊維、セラミック繊維、他に繊維に替わる各種繊維を選択して組み合わせることで適正な基材を使用するものである。
補強用樹脂5、及び帯状補強用樹脂10については、アクリル樹脂、シリコン樹脂、ガラス樹脂のように各種樹脂が採用できることは言うまでもない。
【0020】
また、繊維糸3の断面形状は、太さの違う円形、楕円形、四角形、長方形も可能であり、押し潰したカレンダー加工繊維、より糸繊維でも可能である。
また、各種樹脂については、インクジェットプリンターやスクリーン印刷で形成することが可能であり、感光樹脂を用いても良いことは言うまでもない。
【0021】
本発明は、以上のような色々な材質、形状を種々組み合わせて採用できるものである。しかも、繊維糸3も一種類でなく、複数種を混合させて用途に合ったものを使用することも可能である。
【0022】
なお、本発明の導電性回路基板を検査用として使用する場合には、周囲を支持する枠を採用すると、極めて使い勝手が良くなる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
モーター用巻線、ロボット等の屈曲部の配線基板、スマートフォン等の微細な配線基板、大電流の電気自動車用の配線基板、またドローン用の配線基板にも応用することができる。
【符号の説明】
【0024】
1・・・・基材
2・・・・メッキで形成した回路
3・・・・繊維糸
4・・・・メッキ導電回路
5・・・・補強用樹脂
6・・・・接着剤
7・・・・導電接着剤
8・・・・上・下層導電接続部
9・・・・ハンダ
10・・・・帯状補強用樹脂
A・・・・導電回路基板
B・・・・下層導電回路基板
C・・・・上層導電回路基板