(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】車載用電源装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
H02M3/155 P
(21)【出願番号】P 2020202378
(22)【出願日】2020-12-07
【審査請求日】2023-04-25
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中島 新太
【審査官】佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-163447(JP,A)
【文献】国際公開第2018/116699(WO,A1)
【文献】特開2016-116337(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電路と第2導電路との間で電圧変換を行う電圧変換部と、前記電圧変換部を制御する制御部と、を備えた車載用電源装置であって、
前記電圧変換部は、第1スイッチング素子及び第2スイッチング素子を有し、前記第1スイッチング素子をオンオフ動作させることによって前記第1導電路に印加された電圧を降圧して前記第2導電路に印加する降圧動作と、前記第2スイッチング素子をオンオフ動作させることによって前記第1導電路に印加された電圧を昇圧して前記第2導電路に印加する昇圧動作とを行い、
前記制御部は、前記電圧変換部に対して前記降圧動作及び前記昇圧動作のうち前記降圧動作のみを行わせる第1制御と、前記昇圧動作のみを行わせる第2制御と、前記降圧動作及び前記昇圧動作の両方を行わせる第3制御とを行い、
前記第1制御の際に前記第1スイッチング素子に与えるオンオフ信号の第1デューティが上限閾値以上となった場合
に前記第3制御を行
い、
前記第1制御から前記第3制御に切り替える際、前記第3制御の第1モードに切り替え、
前記第1モードは、前記第2スイッチング素子に与えるオンオフ信号の第2デューティを固定したまま前記第1デューティを徐々に上昇させるモードであり、
更に、前記制御部は、前記第1制御から前記第3制御に切り替える際に、切り替え前後で電圧変換率が同一となるように前記第1デューティ及び前記第2デューティを調整する
車載用電源装置。
【請求項2】
第1導電路と第2導電路との間で電圧変換を行う電圧変換部と、前記電圧変換部を制御する制御部と、を備えた車載用電源装置であって、
前記電圧変換部は、第1スイッチング素子及び第2スイッチング素子を有し、前記第1スイッチング素子をオンオフ動作させることによって前記第1導電路に印加された電圧を降圧して前記第2導電路に印加する降圧動作と、前記第2スイッチング素子をオンオフ動作させることによって前記第1導電路に印加された電圧を昇圧して前記第2導電路に印加する昇圧動作とを行い、
前記制御部は、前記電圧変換部に対して前記降圧動作及び前記昇圧動作のうち前記降圧動作のみを行わせる第1制御と、前記昇圧動作のみを行わせる第2制御と、前記降圧動作及び前記昇圧動作の両方を行わせる第3制御とを行い、
前記第2制御の際に前記第2スイッチング素子に与えるオンオフ信号の第2デューティが下限閾値以下となった場合に前記第3制御を行い、
前記第2制御から前記第3制御に切り替える際、前記第3制御の第3モードに切り替え、
前記第3モードは、前記第1スイッチング素子に与えるオンオフ信号の第1デューティを固定したまま第2デューティを徐々に低下させるモードであり、
更に、前記制御部は、前記第2制御から前記第3制御に切り替える際に、切り替え前後で電圧変換率が同一となるように前記第1デューティ及び前記第2デューティを調整する
車載用電源装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1制御から前記第2制御に移行する際に、前記第1制御において前記第1デューティを徐々に上昇させる上昇制御を行い、前記上昇制御において前記第1デューティが前記上限閾値に達した場合に前記第3制御に切り替え、前記第3制御の後に前記第2制御を行う請求項1に記載の車載用電源装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第2制御から前記第1制御に移行する際に、前記第2デューティを徐々に低下させる低下制御を行い、前記低下制御において前記第2デューティが前記下限閾値に達した場合に前記第3制御に切り替え、前記第3制御の後に前記第1制御を行う請求項2に記載の車載用電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は車載用電源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、PWM制御によりスイッチングする降圧用スイッチング素子及び昇圧用スイッチング素子を備え、入力電圧を降圧変換又は昇圧変換して出力する電圧変換装置が開示されている。この電圧変換装置は、降圧変換において、降圧用PWM信号のデューティを徐々に上昇させて100%まで到達させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、構成によっては、降圧用PWM信号のデューティが100%に近づくと、正常にスイッチングできなくなる場合がある。例えば、降圧用スイッチング素子がNチャネル型のFETである場合、降圧用スイッチング素子をオン状態とするためには、ゲート電圧をソース電圧よりも高める必要がある。そこで、ブートストラップ回路によってゲート電圧をソース電圧よりも高めることが考えられる。しかし、この構成では、降圧用PWM信号のデューティ比が100%に近づくと、ブートストラップ回路のコンデンサの充電が不十分となり、降圧用スイッチング素子を正常にオン状態とすることができなくなるおそれがある。この場合、電圧変換が適切にされなくなる。
【0005】
そこで、本開示では、適切に電圧変換できなくなる事態の発生を抑制することが可能な技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の車載用電源装置は、
第1導電路と第2導電路との間で電圧変換を行う電圧変換部と、前記電圧変換部を制御する制御部と、を備えた車載用電源装置であって、
前記電圧変換部は、第1スイッチング素子及び第2スイッチング素子を有し、前記第1スイッチング素子をオンオフ動作させることによって前記第1導電路に印加された電圧を降圧して前記第2導電路に印加する降圧動作と、前記第2スイッチング素子をオンオフ動作させることによって前記第1導電路に印加された電圧を昇圧して前記第2導電路に印加する昇圧動作とを行い、
前記制御部は、前記電圧変換部に対して前記降圧動作及び前記昇圧動作のうち前記降圧動作のみを行わせる第1制御と、前記昇圧動作のみを行わせる第2制御と、前記降圧動作及び前記昇圧動作の両方を行わせる第3制御とを行い、
前記第1制御の際に前記第1スイッチング素子に与えるオンオフ信号の第1デューティが上限閾値以上となった場合又は前記第2制御の際に前記第2スイッチング素子に与えるオンオフ信号の第2デューティが下限閾値以下となった場合に前記第3制御を行う。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、適切に電圧変換できなくなる事態の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態の車載用電源システムの構成を概略的に示す回路図である。
【
図2】
図2は、第1制御から第2制御への移行処理の流れを示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、第1制御から第2制御へ移行するときの第1デューティ及び第2デューティの経時変化を示すグラフである。
【
図4】
図4は、第2制御から第1制御への移行処理の流れを示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、第2制御から第1制御へ移行するときの第1デューティ及び第2デューティの経時変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0010】
〔1〕第1導電路と第2導電路との間で電圧変換を行う電圧変換部と、前記電圧変換部を制御する制御部と、を備えた車載用電源装置であって、前記電圧変換部は、第1スイッチング素子及び第2スイッチング素子を有し、前記第1スイッチング素子をオンオフ動作させることによって前記第1導電路に印加された電圧を降圧して前記第2導電路に印加する降圧動作と、前記第2スイッチング素子をオンオフ動作させることによって前記第1導電路に印加された電圧を昇圧して前記第2導電路に印加する昇圧動作とを行い、前記制御部は、前記電圧変換部に対して前記降圧動作及び前記昇圧動作のうち前記降圧動作のみを行わせる第1制御と、前記昇圧動作のみを行わせる第2制御と、前記降圧動作及び前記昇圧動作の両方を行わせる第3制御とを行い、前記第1制御の際に前記第1スイッチング素子に与えるオンオフ信号の第1デューティが上限閾値以上となった場合又は前記第2制御の際に前記第2スイッチング素子に与えるオンオフ信号の第2デューティが下限閾値以下となった場合に前記第3制御を行う車載用電源装置。
【0011】
この構成によれば、第1制御の際、第1デューティが上限閾値以上となるまでは降圧動作のみを行って消費電力を抑えることができ、第1デューティが上限閾値以上となった場合には第3制御を行うことで降圧動作だけでは困難な電圧変換を実現することができる。又は、この構成によれば、第2制御の際、第2デューティが下限閾値以下となるまでは昇圧動作のみを行って消費電力を抑えることができ、第2デューティが下限閾値以下となった場合には第3制御を行うことで昇圧動作だけでは困難な電圧変換を実現することができる。したがって、消費電力を抑えつつ、適切に電圧変換できなくなる事態の発生を抑制することができる。
【0012】
〔2〕前記制御部は、前記第1制御から前記第2制御に移行する際に、前記第1制御において前記第1デューティを徐々に上昇させる上昇制御を行い、前記上昇制御において前記第1デューティが前記上限閾値に達した場合に前記第3制御に切り替え、前記第3制御の後に前記第2制御を行う〔1〕に記載の車載用電源装置。
【0013】
この構成によれば、降圧動作から昇圧動作に移行する過程で、適切に電圧変換できなくなる事態の発生を抑制することができる。
【0014】
〔3〕前記制御部は、前記第2制御から前記第1制御に移行する際に、前記第2デューティを徐々に低下させる低下制御を行い、前記低下制御において前記第2デューティが前記下限閾値に達した場合に前記第3制御に切り替え、前記第3制御の後に前記第1制御を行う〔1〕又は〔2〕に記載の車載用電源装置。
【0015】
この構成によれば、昇圧動作から降圧動作に移行する過程で、適切に電圧変換できなくなる事態の発生を抑制することができる。
【0016】
〔4〕前記制御部は、前記第1制御又は前記第2制御から前記第3制御に切り替える際に、切り替え前後で電圧変換率が同一となるように前記第1デューティ及び前記第2デューティを調整する〔1〕から〔3〕のいずれか一項に記載の車載用電源装置。
【0017】
この構成によれば、第1制御又は第2制御から第3制御に切り替える前後で、出力電圧が大きく変化することを抑制することができる。
【0018】
<第1実施形態>
〔車載用電源システムの構成〕
図1で示す車載用電源システム100は、車載用電源装置1と、第1電源部101と、第2電源部102とを備え、負荷111、112などの車載用負荷に対して電力を供給し得るシステムとして構成されている。
【0019】
車載用電源装置1は、例えば、車載用の昇降圧型DCDCコンバータとして構成されており、第1導電路91又は第2導電路92の一方の導電路に印加された直流電圧を昇圧又は降圧して他方の導電路に出力する構成をなすものである。
【0020】
車載用電源装置1は、電力線としての第1導電路91及び第2導電路92を備える。第1導電路91は、高圧電源部である第1電源部101の高電位側の端子に電気的に接続され、この高電位側の端子と導通する配線であり、第1電源部101から所定の直流電圧が印加される構成をなす。第2導電路92は、低圧電源部である第2電源部102の高電位側の端子に電気的に接続され、この高電位側の端子と導通する配線であり、第2電源部102から所定の直流電圧が印加される構成をなす。
【0021】
第1電源部101、第2電源部102は、例えば、鉛蓄電池、リチウムイオン電池、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ、その他の蓄電部など、公知の蓄電手段によって構成されている。第1電源部101の出力電圧は、第2電源部102の出力電圧よりも高い電圧であればよく、それぞれの出力電圧の具体的な値は特に限定されない。第1電源部101及び第2電源部102の低電位側の端子は図示しないグラウンドに電気的に接続され、所定のグラウンド電位(0V)に保たれている。
【0022】
第1電源部101に電気的に接続された第1導電路91には、負荷111が電気的に接続されており、負荷111は第1電源部101から電力供給を受ける構成をなす。第2電源部102に電気的に接続された第2導電路92には、負荷112が電気的に接続されており、負荷112は第2電源部102から電力供給を受ける構成をなす。負荷111、112は、公知の車載用の電気部品であり、特に種類は限定されない。
【0023】
車載用電源装置1は、電圧変換部6、電圧検出部21,22、制御部12、駆動回路41,42,43,44及びコンデンサ81,82を備えている。
【0024】
電圧変換部6は、第1導電路91と第2導電路92との間で電圧変換を行う。電圧変換部6は、第1スイッチング素子T1、第2スイッチング素子T2、第3スイッチング素子T3、第4スイッチング素子T4(以下、スイッチング素子T1,T2,T3,T4ともいう)、及びインダクタLを有する。スイッチング素子T1,T2,T3,T4は、例えばNチャネル型のMOSFETとして構成されている。スイッチング素子T1,T2,T3,T4は、Hブリッジ構造で配置されている。スイッチング素子T1,T2,T3,T4は、オンオフ信号が与えられることでオンオフ動作する。オンオフ信号は、例えばPWM(Pulse Width Modulation)信号である。インダクタLは、公知のコイルとして構成されている。電圧変換部6は、いわゆる双方向型のDCDCコンバータとして機能する。
【0025】
第1スイッチング素子T1及び第3スイッチング素子T3は、第1導電路91とグラウンドとの間に直列に接続される。第1スイッチング素子T1のドレインは、第1導電路91に電気的に接続されており、第1スイッチング素子T1のソースは、第3スイッチング素子T3のドレイン及びインダクタLの一端に電気的に接続されている。第3スイッチング素子T3のソースは、グラウンドに電気的に接続されている。
【0026】
第4スイッチング素子T4及び第2スイッチング素子T2は、第2導電路92とグラウンドとの間に直列に接続される。第4スイッチング素子T4のドレインは、第2導電路92に電気的に接続されている。第4スイッチング素子T4のソースは、第2スイッチング素子T2のドレイン及びインダクタLの他端に電気的に接続されている。第2スイッチング素子T2のソースはグラウンドに電気的に接続されている。
【0027】
コンデンサ81の一端は、第1導電路91に電気的に接続されており、コンデンサ81の他端は、グラウンドに電気的に接続されている。コンデンサ82の一端は、第2導電路92に電気的に接続されており、コンデンサ82の他端は、グラウンドに電気的に接続されている。
【0028】
電圧変換部6は、第1スイッチング素子T1をオンオフ動作させることによって第1導電路91に印加された電圧を降圧して第2導電路92に印加する降圧動作を行う。また、電圧変換部6は、第2スイッチング素子T2をオンオフ動作させることによって第1導電路91に印加された電圧を昇圧して第2導電路92に印加する昇圧動作を行う。
【0029】
電圧検出部21,22は、例えば公知の電圧検出回路として構成されている。電圧検出部21は、第1導電路91の電圧を検出する。電圧検出部22は、第2導電路92の電圧を検出する。
【0030】
制御部12は、例えばマイクロコンピュータとして構成され、CPU、ROM、RAM、不揮発性メモリ等を備える。制御部12には、電圧検出部21,22が電気的に接続されており、電圧検出部21,22によって検出された電圧を示す信号が入力される。
【0031】
制御部12は、駆動回路41,42,43,44を介して電圧変換部6に電気的に接続されており、電圧変換部6に対して降圧動作及び昇圧動作を行わせる。制御部12は、降圧動作及び昇圧動作を行わせる際、第2導電路92の電圧が目標電圧値に近づくようにフィードバック制御を行う。フィードバック制御は、例えばPI制御、PID制御などである。目標電圧値は、制御部12で設定される値であってもよく、外部ECU(Electronic Control Unit)などの外部装置から指示される値であってもよい。
【0032】
具体的には、制御部12は、第2導電路92の電圧と目標電圧値との偏差に基づいてPID演算やPI演算などの公知のフィードバック演算を行うことによって、第2導電路92の電圧を目標電圧値に近づけるようにオンオフ信号のデューティを決定する。デューティとは、スイッチング周期に対するオン時間のことである。制御部12は、フィードバック演算を周期的に行うことによって、デューティを周期的に更新する。デューティには、第1スイッチング素子T1をオンオフ制御するための降圧用の第1デューティと、第2スイッチング素子T2をオンオフ制御するための昇圧用の第2デューティとが含まれる。
【0033】
制御部12は、電圧変換部6に対して降圧動作を行わせる場合、第1デューティを決定し、決定した第1デューティのオンオフ信号を駆動回路41,43に与える。駆動回路41は、制御部12からオンオフ信号が与えられると、そのオンオフ信号と同周期及び同デューティのオンオフ信号を第1スイッチング素子T1のゲートに出力する。駆動回路43は、制御部12からオンオフ信号が与えられると、オンオフ状態を反転させて、駆動回路41が第1スイッチング素子T1のゲートに出力するオンオフ信号と相補的なオンオフ信号を第3スイッチング素子T3のゲートに出力する。これにより、降圧動作が行われる際、同期整流制御が行われる。
【0034】
制御部12は、電圧変換部6に対して昇圧動作を行わせる場合、第2デューティを決定し、決定した第2デューティのオンオフ信号を駆動回路42,44に与える。駆動回路42は、制御部12からオンオフ信号が与えられると、そのオンオフ信号と同周期及び同デューティのオンオフ信号を第2スイッチング素子T2のゲートに出力する。駆動回路44は、制御部12からオンオフ信号が与えられると、オンオフ状態を反転させて、駆動回路42が第2スイッチング素子T2のゲートに出力するオンオフ信号と相補的なオンオフ信号を第4スイッチング素子T4のゲートに出力する。これにより、昇圧動作が行われる際、同期整流制御が行われる。
【0035】
ハイサイドのスイッチング素子T1,T4を制御する駆動回路41,44の各々は、例えば図示しないブートストラップ回路を有している。駆動回路41,44は、スイッチング素子T1,T4のゲートにオン信号を与えるとき、ブートストラップ回路によってスイッチング素子T1,T4のソース電圧よりも高めた電圧をゲートに印加する。なお、本実施形態では、オン信号がハイレベル信号で、オフ信号がローレベル信号である。
【0036】
制御部12は、電圧変換部6に対して降圧動作及び昇圧動作のうち降圧動作のみを行わせる第1制御と、昇圧動作のみを行わせる第2制御と、降圧動作及び昇圧動作の両方を行わせる第3制御とを行う。制御部12は、第1制御の際に第1デューティが上限閾値以上となった場合に、第3制御を行う。制御部12は、第2制御の際に第2デューティが下限閾値以下となった場合に、第3制御を行う。本実施形態では、上限閾値を、上限値よりも小さい値とするが、上限値と同じ値としてもよい。また、本実施形態では、下限閾値を、下限値よりも大きい値とするが、下限値と同じ値としてもよい。
【0037】
ここで、上限値及び下限値について説明する。上述したように、駆動回路41,44は、ブートストラップ回路によって昇圧した電圧をスイッチング素子T1,T4のゲートに印加する。このため、駆動回路41,44が生成するオンオフ信号のデューティが100%に近づくと、オフ時間が短くなり、ブートストラップ回路に含まれるコンデンサの充電が不十分となる。その結果、駆動回路41,44がスイッチング素子T1,T4をオンに制御できなくなるおそれがある。そこで、第1スイッチング素子T1をオンオフ制御するための第1デューティに対して上限値が設定されている。また、昇圧動作の際にも、第4スイッチング素子T4がオン状態に切り替わらないと、同期整流方式でオンオフ制御することができない。このため、同期整流が可能な範囲として、第2スイッチング素子T2をオンオフ制御するための第2デューティに対して、100%から上記上限値を差し引いた値が下限値として設定されている。上限値、下限値、上限閾値及び下限閾値は、予め制御部12に記憶されている。本実施形態では、上限値は97%、下限値は3%、上限閾値は95%、下限閾値は5%である。
【0038】
制御部12は、第1制御から第2制御に移行する際に、第1制御において第1スイッチング素子T1に与えるオンオフ信号の第1デューティを徐々に上昇させる上昇制御を行う。制御部12は、上昇制御において第1デューティが上限閾値に達した場合に第3制御に切り替え、第3制御の後に第2制御を行う。
【0039】
制御部12は、第2制御から第1制御に移行する際に、第2制御において第2スイッチング素子T2に与えるオンオフ信号の第2デューティを徐々に低下させる低下制御を行う。制御部12は、低下制御において第2デューティが下限閾値に達した場合に第3制御に切り替え、第3制御の後に第1制御を行う。
【0040】
制御部12は、第1制御から第3制御に切り替える際に、切り替え前後で電圧変換率が同一となるように第1デューティ及び第2デューティを調整する。また、制御部12は、第2制御から第3制御に切り替える際に、切り替え前後で電圧変換率が同一となるように第1デューティ及び第2デューティを調整する。「電圧変換率」とは、入力電圧に対する出力電圧の割合のことである。「電圧変換率が同一」とは、電圧変換率が完全に同一である場合に限らず、実質的に同一である場合も含まれる。「電圧変換率が実質的に同一」とは、例えば切り替え前後の電圧変換率の差が、予め定められた微差以内であることを意味する。
【0041】
〔第1制御から第2制御への移行処理〕
次に、
図2を参照して、第1制御から第2制御へ移行する流れについて説明する。
制御部12は、例えば車両の始動スイッチ(例えばイグニッションスイッチ)がオンとなった場合に、
図2に示す処理を開始する。制御部12は、例えば車両の始動スイッチのオンオフ状態を示す信号を外部のECU(Electronic Control Unit)から受け取ることで、車両の始動スイッチのオンオフ状態を把握することができる。
【0042】
制御部12は、
図2に示す処理を開始すると、第2制御への移行条件が成立したか否かを判定する(ステップS10)。「第2制御への移行条件」は、例えば「車両の始動スイッチがオンとなったこと」であってもよいし、「各種センサによる検出値が所定値を超えたこと」であってもよいし、「ユーザによって所定の操作が行われたこと」であってもよい。制御部12は、第2制御への移行条件が成立していない場合(ステップS10にてNo)、ステップS10に戻る。つまり、制御部12は、第2制御への移行条件が成立するまで、第2制御への移行条件が成立したか否かの判定を繰り返す。なお、制御部12は、第2制御への移行条件が成立する前の状態においては、第1制御を行っているか、あるいは、第1制御、第2制御及び第3制御のいずれも行っていない。
【0043】
制御部12は、第2制御への移行条件が成立した場合(ステップS10にてYes)、上昇制御を開始する(ステップS11)。例えば、制御部12は、既に第1制御を行っている場合には実行中の第1制御において第2デューティを0%に固定したまま第1デューティを徐々に上昇させる。制御部12は、第1制御を行っていない場合には第1制御を開始させて第2デューティを0%に固定したまま第1デューティを徐々に上昇させる。これにより、電圧変換部6の出力電圧が徐々に上昇する。
【0044】
制御部12は、上昇制御を開始した後、第1デューティが上限閾値以上となったか否かを判定する(ステップS12)。制御部12は、第1デューティが上限閾値以上となっていない場合(ステップS12にてNo)、ステップS12の処理に戻る。つまり、制御部12は、上昇制御を継続しつつ、第1デューティが上限閾値以上となったか否かの判定を繰り返す。制御部12は、第1デューティが上限閾値以上となった場合(ステップS12にてYes)、第3制御に切り替える(ステップS13)。このとき、制御部12は、切り替え前後で電圧変換率が同一となるように第1デューティ及び第2デューティを調整する。
【0045】
ここで、第1デューティ及び第2デューティの調整方法の一例について説明する。電圧変換率は、以下の式(1)によって求められる。なお、電圧変換率を「TR[%]」とし、第1デューティを「D1[%]」とし、第2デューティを「D2[%]」とする。
TR=D1×(100/(100-D2))・・・式(1)
切り替え前の状態においては、D2=0であるため、式(1)に現在のD1を代入することで、切り替え直前のTRが求められる。例えばD1=95である場合、TR=95である。こうして切り替え直前の電圧変換率が求められる。つまり、切り替え直後の第1デューティ及び第2デューティは、式(1)にTR=95を代入した式(2)を満たすD1及びD2ということになる。
95=D1×(100/(100-D2))・・・式(2)
例えば式(2)のD2に第2デューティの下限値である3[%]を代入することで、D1が求められる。この場合、D1=92.15となる。つまり、切り替え直後において、第1スイッチング素子T1に与えられるオンオフ信号の第1デューティは92.15%となり、第3スイッチング素子T3に与えられるオンオフ信号の第3デューティは7.85%となる。そして、第2スイッチング素子T2に与えられるオンオフ信号の第2デューティは3%となり、第4スイッチング素子T4に与えられるオンオフ信号の第4デューティは97%となる。
【0046】
制御部12は、第1制御から第3制御に切り替える際、第3制御の第1モードに切り替える(ステップS13)。第3制御の第1モードは、第2デューティを固定したまま第1デューティを徐々に上昇させるモードである。制御部12は、第3制御の第1モードに切り替えた後、第3制御の第2モードへの切り替え条件が成立したか否かを判定する(ステップS14)。「第2モードへの切替条件」は、例えば「第1デューティが上限値に達したこと」であってもよいし、「第3制御に切り替えてからの経過時間が所定時間に達したこと」であってもよい。制御部12は、第2モードへの切替条件が成立していない場合(ステップS14にてNo)、ステップS14の処理に戻る。つまり、制御部12は、第1モードを継続して第1デューティを徐々に上昇させつつ、第2モードへの切替条件が成立したか否かの判定を繰り返す。制御部12は、第2モードへの切替条件が成立した場合(ステップS14にてYes)、第3制御の第2モードに切り替える(ステップS15)。第3制御の第2モードは、第1デューティを固定したまま第2デューティを上昇させるモードである。なお、第1デューティ及び第2デューティは、第1モードから第2モードへの切り替え前後で同一である。
【0047】
制御部12は、ステップS15にて第2モードに切り替えた後、第2制御への切替条件が成立したか否かを判定する(ステップS16)。「第2制御への切替条件」は、例えば「第2デューティが昇圧用の切替閾値以上となったこと」としてもよいし、「電圧変換率が、第1デューティを100%、第2デューティを下限閾値とした場合の電圧変換率と同一になったこと」としてもよいし、「第2モードに切り替えてからの経過時間が所定時間に達したこと」としてもよい。
【0048】
制御部12は、第2制御への切替条件が成立していない場合(ステップS16にてNo)、ステップS16の処理に戻る。つまり、制御部12は、第3制御の第2モードを継続しつつ、第2制御への切替条件が成立したか否かの判定を繰り返す。制御部12は、第2制御への切替条件が成立した場合(ステップS16にてYes)、第2制御に切り替える(ステップS17)。制御部12は、第3制御から第2制御に切り替える際に、切り替え前後で電圧変換率が同一となるように第1デューティ及び第2デューティを調整する。調整方法としては、例えば、まず式(1)に基づいて現在の電圧変換率を算出する。そして、式(1)において、現在の電圧変換率をTRに代入し、100[%]をD1に代入することで、D2を求める。これにより、切り替え後の第2デューティが求められる。また、別の調整方法として、切り替え後の第1デューティ及び第2デューティを予め決めておき、第3制御において現在の電圧変換率が切り替え後の電圧変換率と同一となったタイミングで第2制御に切り替えるようにしてもよい。制御部12は、第2制御に切り替えた後、第1デューティを100%に維持しつつ、電圧変換部6の出力電圧が目標電圧値となるように第2デューティを徐々に上昇させる。
【0049】
次に、第1制御から第2制御に移行するときのデューティの経時変化について説明する。
図3に示す例では、制御部12は、タイミングT10の前段階において、第1制御、第2制御及び第3制御のいずれも行っていない。制御部12は、タイミングT10において、第2制御への移行条件が成立したことに基づき、上昇制御を開始する。その結果、第1デューティは徐々に上昇し、電圧変換部6からの出力電圧が徐々に上昇する。その後、タイミングT11にて、第1デューティが上限閾値に達する。このため、制御部12は、切り替え前後で電圧変換率が同一となるように、第1制御から第3制御に切り替える。その結果、第1デューティが切り替え直前よりも低下し、第2デューティが切り替え直前よりも上昇する。制御部12は、タイミングT11にて、第1制御から第3制御の第1モードに切り替える。このため、第2デューティが固定されたまま、第1デューティのみが徐々に上昇する。その後、タイミングT12にて、第2モードへの切替条件が成立すると、制御部12は、第2モードに切り替える。その結果、第1デューティが固定されたまま、第2デューティが徐々に上昇する。更に、タイミングT13にて、第2制御への切替条件が成立すると、制御部12は、切り替え前後で電圧変換率が同一となるように第3制御から第2制御に切り替える。切替の際、第1デューティは上昇して100%となり、第2デューティは低下して例えば下限閾値となる。その後、第1デューティは100%で固定されたまま、第2デューティが徐々に上昇する。
【0050】
〔第2制御から第1制御への移行処理〕
次に、
図4を参照して、第2制御から第1制御へ移行する流れについて説明する。
制御部12は、例えば上述した第1制御から第2制御への移行処理によって第2制御へ移行した場合に、
図4に示す処理を開始する。
【0051】
制御部12は、
図4に示す処理を開始すると、第1制御への移行条件が成立したか否かを判定する(ステップS30)。「第1制御への移行条件」は、例えば「車両の始動スイッチがオフとなったこと」であってもよいし、「各種センサによる検出値が所定値を超えたこと」であってもよいし、「ユーザによって所定の操作が行われたこと」であってもよい。制御部12は、第1制御への移行条件が成立していない場合(ステップS30にてNo)、ステップS30に戻る。つまり、制御部12は、第1制御への移行条件が成立するまで、第1制御への移行条件が成立したか否かの判定を繰り返す。なお、制御部12は、第1制御への移行条件が成立する前の状態においては、第2制御を行っている。
【0052】
制御部12は、第1制御への移行条件が成立した場合(ステップS30にてYes)、低下制御を開始する(ステップS31)。具体的には、制御部12は、実行中の第2制御において第1デューティを100%に固定したまま第2デューティを徐々に低下させる。これにより、電圧変換部6の出力電圧が徐々に低下する。
【0053】
制御部12は、低下制御を開始した後、第2デューティが下限閾値以下となったか否かを判定する(ステップS32)。制御部12は、第2デューティが下限閾値以下となっていない場合(ステップS32にてNo)、ステップS32の処理に戻る。つまり、制御部12は、低下制御を継続しつつ、第2デューティが下限閾値以下となったか否かの判定を繰り返す。制御部12は、第2デューティが下限閾値以下となった場合(ステップS32にてYes)、第3制御に切り替える(ステップS33)。このとき、制御部12は、切り替え前後で電圧変換率が同一となるように第1デューティ及び第2デューティを調整する。
【0054】
第3制御への切り替え直後の第1デューティ及び第2デューティは、例えば上述した式(1)を用いて求められる。具体的には、まず切り替え直前の電圧変換率を算出する。切り替え前の状態において、D1=100であるため、式(1)に現在のD2を代入することで、切り替え直前の電圧変換率が求められる。切り替え前の状態において、例えばD2が5[%]である場合、TRは約105.26[%]である。つまり、切り替え直前の電圧変換率は、約105.26%である。切り替え直後の第1デューティ及び第2デューティは、式(1)にTRに105.26[%]を代入した式(2)を満たすD1及びD2ということになる。
105.26=D1×(100/(100-D2))・・・式(3)
例えば式(3)のD1に第1デューティの上限値である97%を代入することで、D1が求められる。この場合、D2は約7.85[%]となる。つまり、切り替え直後において、第1スイッチング素子T1に与えられるオンオフ信号の第1デューティは97%となり、第3スイッチング素子T3に与えられるオンオフ信号の第3デューティは3%となる。そして、第2スイッチング素子T2に与えられるオンオフ信号の第2デューティは7.85%となり、第4スイッチング素子T4に与えられるオンオフ信号の第4デューティは92.15%となる。
【0055】
制御部12は、第2制御から第3制御に切り替える際、第3制御の第3モードに切り替える(ステップS33)。第3制御の第3モードは、第1デューティを固定したまま第2デューティを徐々に低下させるモードである。制御部12は、第3制御の第3モードに切り替えた後、第3制御の第4モードへの切り替え条件が成立したか否かを判定する(ステップS34)。「第4モードへの切替条件」は、例えば「第2デューティが下限値に達したこと」であってもよいし、「第3制御に切り替えてからの経過時間が所定時間に達したこと」であってもよい。制御部12は、第4モードへの切替条件が成立していない場合(ステップS34にてNo)、ステップS34の処理に戻る。つまり、制御部12は、第3モードを継続して第2デューティを徐々に低下させつつ、第4モードへの切替条件が成立したか否かの判定を繰り返す。制御部12は、第4モードへの切替条件が成立した場合(ステップS34にてYes)、第3制御の第4モードに切り替える(ステップS35)。第3制御の第4モードは、第2デューティを固定したまま第1デューティを低下させるモードである。なお、第1デューティ及び第2デューティは、第1モードから第2モードへの切り替え前後で同一である。
【0056】
制御部12は、ステップS35にて第4モードに切り替えた後、第1制御への切替条件が成立したか否かを判定する(ステップS36)。「第1制御への切替条件」は、例えば「第1デューティが降圧用の切替閾値以下となったこと」としてもよいし、「電圧変換率が、第1デューティを上限閾値、第2デューティを0%とした場合の電圧変換率と同一になったこと」としてもよいし、「第4モードに切り替えてからの経過時間が所定時間に達したこと」としてもよい。
【0057】
制御部12は、第1制御への切替条件が成立していない場合(ステップS36にてNo)、ステップS36の処理に戻る。つまり、制御部12は、第3制御の第4モードを継続しつつ、第1制御への切替条件が成立したか否かの判定を繰り返す。制御部12は、第1制御への切替条件が成立した場合(ステップS36にてYes)、第1制御に切り替える(ステップS37)。制御部12は、第3制御から第1制御に切り替える際に、切り替え前後で電圧変換率が同一となるように第1デューティ及び第2デューティを調整する。調整方法としては、例えば、まず式(1)に基づいて現在の電圧変換率を算出する。そして、式(1)において、現在の電圧変換率をTRに代入し、0[%]をD2に代入することで、D1を求める。これにより、切り替え直後の第1デューティが求められる。また、別の調整方法として、切り替え後の第1デューティ及び第2デューティを予め決めておき、第3制御において現在の電圧変換率が切り替え後の電圧変換率と同一となったタイミングで第1制御に切り替えるようにしてもよい。制御部12は、第1制御に切り替えた後、第2デューティを0%に維持しつつ、電圧変換部6の出力電圧が目標電圧値となるように第1デューティを徐々に低下させる。
【0058】
次に、第2制御から第1制御に移行するときのデューティの経時変化について説明する。
図5に示す例では、制御部12は、タイミングT30の前段階において、第2制御を行っている。制御部12は、タイミングT30において、第1制御への移行条件が成立したことに基づき、低下制御を開始する。その結果、第2デューティは徐々に低下し、電圧変換部6からの出力電圧が徐々に低下する。その後、タイミングT31にて、第2デューティが下限閾値に達する。このため、制御部12は、切り替え前後で電圧変換率が同一となるように、第2制御から第3制御に切り替える。その結果、第1デューティが切り替え直前よりも低下し、第2デューティが切り替え直前よりも上昇する。制御部12は、タイミングT31にて、第2制御から第3制御の第3モードに切り替える。このため、第1デューティが固定されたまま、第2デューティのみが徐々に低下する。その後、タイミングT32にて、第4モードへの切替条件が成立すると、制御部12は、第4モードに切り替える。その結果、第2デューティが固定されたまま、第1デューティが徐々に低下する。更に、タイミングT33にて、第1制御への切替条件が成立すると、制御部12は、切り替え前後で電圧変換率が同一となるように第3制御から第1制御に切り替える。切替の際、第1デューティは上昇して例えば上限閾値となり、第2デューティは0%となる。その後、第2デューティは0%で固定されたまま、第1デューティが徐々に低下する。
【0059】
次に、本構成の効果を例示する。
本開示の車載用電源装置1は、電圧変換部6と制御部12とを備えている。制御部12は、電圧変換部6に対して降圧動作のみを行わせる第1制御と、昇圧動作のみを行わせる第2制御と、降圧動作及び昇圧動作の両方を行わせる第3制御とを行う。制御部12は、第1制御の際に第1デューティが上限閾値以上となった場合に第3制御を行う。また、制御部12は、第2制御の際に第2デューティが下限閾値以下となった場合に第3制御を行う。
この構成によれば、第1制御の際、第1デューティが上限閾値以上となるまでは降圧動作のみを行って消費電力を抑えることができ、第1デューティが上限閾値以上となった場合には第3制御を行うことで降圧動作だけでは困難な電圧変換を実現することができる。「降圧動作だけでは困難な電圧変換」とは、電圧変換率が1よりも小さくなる電圧変換のうち降圧動作だけでは困難な電圧変換のことを言い、具体的には、第1デューティが上限値を超える電圧変換のことを言う。更に、第2制御の際、第2デューティが下限閾値以下となるまでは昇圧動作のみを行って消費電力を抑えることができ、第2デューティが下限閾値以下となった場合には第3制御を行うことで昇圧動作だけでは困難な電圧変換を実現することができる。「昇圧動作だけでは困難な電圧変換」とは、電圧変換率が1よりも大きくなる電圧変換のうち昇圧動作だけでは困難な電圧変換のことを言い、具体的には、第2デューティが下限値を超える電圧変換のことを言う。この構成によれば、消費電力を抑えつつ、入力電圧に近い出力電圧に変換する場合であっても適切に電圧変換できなくなる事態の発生を抑制することができる。
【0060】
更に、制御部12は、第1制御から第2制御に移行する際に、第1制御において第1デューティを徐々に上昇させる上昇制御を行う。そして、制御部12は、上昇制御において第1デューティが上限閾値に達した場合に第3制御に切り替え、第3制御の後に第2制御を行う。
この構成によれば、降圧動作から昇圧動作に移行する過程で、適切に電圧変換できなくなる事態の発生を抑制することができる。
【0061】
更に、制御部12は、第2制御から第1制御に移行する際に、第2制御において第2デューティを徐々に低下させる低下制御を行う。そして、制御部12は、低下制御において第2デューティが下限閾値に達した場合に第3制御に切り替え、第3制御の後に第1制御を行う。
この構成によれば、昇圧動作から降圧動作に移行する過程で、適切に電圧変換できなくなる事態の発生を抑制することができる。
【0062】
制御部12は、第1制御又は第2制御から第3制御に切り替える際に、切り替え前後で電圧変換率が同一となるように第1デューティ及び第2デューティを調整する。
この構成によれば、第1制御又は第2制御から第3制御に切り替える前後で、出力電圧が大きく変化することを抑制することができる。
【0063】
<他の実施形態>
本開示は、上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではない。例えば、上述又は後述の実施形態の特徴は、矛盾しない範囲であらゆる組み合わせが可能である。また、上述又は後述の実施形態のいずれの特徴も、必須のものとして明示されていなければ省略することもできる。更に、上述した実施形態は、次のように変更されてもよい。
【0064】
上記第1実施形態では、制御部が「第1制御の際に第1デューティが上限閾値以上となった場合」と「第2制御の際に第2デューティが下限閾値以上となった場合」のいずれの場合にも第3制御を行う構成とした。これに対し、制御部がいずれか一方の場合にのみ第3制御を行うようにしてもよい。
【0065】
上記第1実施形態では、制御部がマイクロコンピュータを主体として構成されているが、マイクロコンピュータ以外の複数のハードウェア回路によって実現されてもよい。
【0066】
なお、今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、今回開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示された範囲内又は特許請求の範囲と均等の範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0067】
1 :車載用電源装置
6 :電圧変換部
12 :制御部
21 :電圧検出部
22 :電圧検出部
41 :駆動回路
42 :駆動回路
43 :駆動回路
44 :駆動回路
81 :コンデンサ
82 :コンデンサ
91 :第1導電路
92 :第2導電路
100 :車載用電源システム
101 :第1電源部
102 :第2電源部
111 :負荷
112 :負荷
L :インダクタ
T1 :第1スイッチング素子
T2 :第2スイッチング素子
T3 :第3スイッチング素子
T4 :第4スイッチング素子