(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイ
(51)【国際特許分類】
B60K 35/231 20240101AFI20240927BHJP
G02B 27/01 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
B60K35/231
G02B27/01
(21)【出願番号】P 2020215139
(22)【出願日】2020-12-24
【審査請求日】2023-10-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】野口 建
【審査官】吉村 俊厚
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-53193(JP,A)
【文献】特開2009-73461(JP,A)
【文献】特開2014-164234(JP,A)
【文献】国際公開第2009/130838(WO,A1)
【文献】特開2003-29652(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0333600(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 35/231
G02B 27/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示光を出力する表示部と、
前記表示光を反射する反射鏡と、
前記反射鏡を回転させるリードスクリュー機構と、を備え、
前記表示光の虚像を表示するヘッドアップディスプレイ装置であって、
前記リードスクリュー機構は、回転軸を有するモータと、前記反射鏡に接続し前記モータの回転に伴って前記回転軸に沿って移動する可動部と、前記可動部の基準位置を検出するスイッチ部と、前記モータと前記スイッチを支持するフレームと、を備え、
前記フレームは、第1方向に延びる第1スリット孔が形成された底板部と、前記底板部の上面から前記第1方向と交わる第2方向に延びる第1側壁部及び第2側壁部と、を備え、
前記モータは、前記回転軸が前記第1側壁部から前記第2側壁部を渡るように前記フレームに支持され、
前記スイッチ部は、前記底板部の下面の前記第1スリット孔の一端側に支持され、
前記可動部は、前記回転軸が貫通する第1孔が形成された基部と、前記基部の一端側に設けられ前記反射鏡に接続する接続部と、前記基部の他端から延びる押圧部と、を備え、
前記可動部は、前記押圧部が前記底板部の前記上面から前記第1スリット孔を貫通して前記下面から突出するように前記回転軸に支持され、前記押圧部で前記スイッチ部を押圧可能に構成する、
ことを特徴とするヘッドアップディスプレイ。
【請求項2】
前記フレームの前記下面の前記第1スリット孔の他端側に、前記スイッチ部の配線を係止する配線クランプを備える、
ことを特徴とする請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ。
【請求項3】
前記第1スリット孔に連なるように形成され且つ前記第1方向と直交する第3方向に延びる第2スリット孔を備える、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のヘッドアップディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のウインドシールドなどに表示光を投射し、この表示光の虚像によって車両情報を表示するヘッドアップディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に従来のヘッドアップディスプレイが開示されている。このヘッドアップディスプレイはリードスクリュー機構を備えており、リードスクリュー機構の直線移動する可動部材端部に設けられたリンク部材が反射鏡と接続して、反射鏡を回転させる。リンク部材が可動部材の直線移動における基準位置を検出するスイッチを押す構成となっている。スイッチは、モータ上部に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、基準位置を検出するスイッチの配置のみを直線移動する可動部材の一端側から他端側へ変更することが困難である。
【0005】
本開示の課題は、ヘッドアップディスプレイの設計の自由度を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のヘッドアップディスプレイは、
表示光を出力する表示部と、
前記表示光を反射する反射鏡と、
前記反射鏡を回転させるリードスクリュー機構と、を備え、
前記表示光の虚像を表示するヘッドアップディスプレイ装置であって、
前記リードスクリュー機構は、回転軸を有するモータと、前記反射鏡に接続し前記モータの回転に伴って前記回転軸に沿って移動する可動部と、前記可動部の基準位置を検出するスイッチ部と、前記モータと前記スイッチを支持するフレームと、を備え、
前記フレームは、第1方向に延びる第1スリット孔が形成された底板部と、前記底板部の上面から前記第1方向と交わる第2方向に延びる第1側壁部及び第2側壁部と、を備え、
前記モータは、前記回転軸が前記第1側壁部から前記第2側壁部を渡るように前記フレームに支持され、
前記スイッチ部は、前記底板部の下面の前記第1スリット孔の一端側に支持され、
前記可動部は、前記回転軸が貫通する第1孔が形成された基部と、前記基部の一端側に設けられ前記反射鏡に接続する接続部と、前記基部の他端から延びる押圧部と、を備え、
前記可動部は、前記押圧部が前記底板部の前記上面から前記第1スリット孔を貫通して前記下面から突出するように前記回転軸に支持され、前記押圧部で前記スイッチ部を押圧可能に構成する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、ヘッドアップディスプレイの設計の自由度が高まる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【発明を実施するための形態】
【0009】
添付図面を参照して本開示のヘッドアップディスプレイHを以下に説明する。
【0010】
図1を参照する。ヘッドアップディスプレイHは、車両のウインドシールドWSに表示光Lを投射し、この表示光Lの虚像Vを車両の搭乗者Pに表示する。表示光Lは、車両の走行速度やエンジン回転数などの車両情報を数値や図形で表した画像光である。これにより、搭乗者Pは、ウインドシールドWS越しに見える前景に重ねて、車両情報を表す虚像Vを視認することができる。
【0011】
ヘッドアップディスプレイHは、表示部1と、第1反射鏡2と、第2反射鏡3と、リードスクリュー機構4と、制御部5と、筐体6を備える。
【0012】
表示部1は、例えば、液晶表示器やリアプロジェクション方式のプロジェクタなどの画像表示装置である。表示部1は、制御部5に制御されて、車両情報を数値や図形で表した画像光である表示光Lを第1反射鏡2に向けて出射する。
【0013】
第1反射鏡2は、例えば、平面鏡である。第1反射鏡2は、表示部1が出射した表示光Lを第2反射鏡3に向けて反射する。第1反射鏡2によって表示光Lを筐体6内で折り返すことで、表示光Lの光路長を長くすることができる。表示光Lの光路長が長くなるほど、ウインドシールドWSから虚像Vまでの結像距離を長くすることができる。
【0014】
第2反射鏡3は、例えば、凹面鏡である。第2反射鏡3は、第1反射鏡2が反射した表示光LをウインドシールドWSに向けて反射する。第2反射鏡3の反射面は、ウインドシールドWSの湾曲形状による虚像の歪みを補正する自由曲面で形成されており、虚像の歪みを抑制する効果がある。また、第2反射鏡3の反射面は、拡大鏡として機能する凹面でもあり、表示部1が表示する画像を拡大して大きな虚像を表示する効果がある。
【0015】
第2反射鏡3は、レバー3aと回転軸3bを備える。リードスクリュー機構4がレバー3aを動かすことにより、第2反射鏡3は、回転軸3bを中心に回転する。第2反射鏡3を回転させることで、表示光Lが投射されるウインドシールドWSの位置を調整することができる。この調整により、搭乗者Pの視線の高さに合わせて虚像Vの垂直方向における表示位置を調整することができる。
【0016】
リードスクリュー機構4は、制御部5に制御されて、直線的な力をレバー3aに加え、第2反射鏡3を回転させる。詳細な構成については、後述する。
【0017】
制御部5は、マイクロコントローラが実装された制御回路基板である。
【0018】
制御部5は、CAN(コントローラエリアネットワーク)などの車内ネットワークに接続し、車両情報を取得する。制御部5は、取得した車両情報を表示部1に画像表示させる。
【0019】
制御部5は、車両のステアリングに設けられたスイッチの操作情報を取得し、このスイッチ操作に応じてリードスクリュー機構4を制御して第2反射鏡3を回転させる。
【0020】
筐体6は、不透過な樹脂や金属で成形されたケースである。筐体6は、表示光Lを筐体6の外部に出射するための出射口が形成されている。この出射口は、透明な樹脂製フィルムなどの防塵カバー6aによって覆われている。
【0021】
(リードスクリュー機構4の構成)
図2から
図7を参照する。
図2から
図7において、互いに直交する第1方向X、第2方向Y、第3方向Zを次のように定義する。第1方向Xを軸線方向と定義し、矢印の先端方向を+X方向、他端方向を-X方向とする。第2方向Yを幅方向と定義し、矢印の先端方向を+Y方向、他端方向を-Y方向とする。第3方向Zを上下方向と定義し、矢印の先端方向を+Z方向と定義し、他端方向を-Z方向と定義する。また、+Z方向を上方向と定義し、-Z方向を下方向と定義する。
【0022】
リードスクリュー機構4は、フレーム41と、回転軸42aを有するモータ42と、ガイド軸43と、可動部44と、スイッチ部45と、コネクタ46と、配線クランプ部材47と、錘48を備える。
【0023】
フレーム41は、U字型の金属製支持体である。フレーム41は、底板部41aと、第1側面部41bと、第2側面部41cと、を備える。
【0024】
底板部41aは、軸線方向Xに延びるベース部であり、筐体6に螺子などで固定される。底板部41aは、上面41auから下面41abに貫通する貫通孔が形成されている。この貫通孔は、軸線方向Xに延びる第1スリット孔41a1と、第1スリット孔41a1に連なって幅方向Yに延びる第2スリット孔41a2から構成されている。
【0025】
第1側面部41bは、底板部41aの軸線方向Xの一端部の上面auから上方向+Zに延びた支持部である。第1側面部42bは、モータ42と錘48を支持する。第1側面部41bは、モータ42の回転軸42aが貫通する孔が形成されている。また、第1側面部41bは、ガイド軸43の一端を支持する。
【0026】
第2側面部41cは、底板部41aの軸線方向Xの他端部の上面auから上方向+Zに延びた支持部であり、第1側面部41bと向かい合う。第2側面部41cは、モータ42の回転軸42aの先端部を支持する。また、第2側面部41cは、ガイド軸43の他端を支持する。
【0027】
モータ42は、回転軸42aと、配線42b、ナット42c、ばね42dを備える。モータ42は、リードスクリュー機構4の動力であり、制御部5に制御されて回転軸42aを回転させる。回転軸42aは、軸線方向Xに延びる金属製のシャフトであり、ねじ切り加工がされている。2つの対となるナット42cは、回転軸42aに組付けられている。また、ばね42dがナット42cの間に位置するように回転軸42aに挿通されている。
【0028】
ガイド軸43は、軸線方向Xに延びる金属製のシャフトである。ガイド軸43は、第1側壁部41bから第2側壁部42cに架け渡されている。言い換えると、ガイド軸43の一端が第1側壁部41bに固定され、ガイド軸43の他端が第2側壁部41cに固定されている。また、ガイド軸43は、回転軸42aと平行になるようにフレーム41に支持されている。
【0029】
可動部44は、第2反射鏡3のレバー3aに接続し、モータ42の回転に伴って回転軸42a上を軸線方向Xに直線移動する移動体である。可動部44が軸線方向Xに直線移動するのに伴ってレバー3aが操作されて第2反射鏡3が回転する。
【0030】
可動部44は、基部44aと、接続部44bと、押圧部44cを備える。
【0031】
基部44aは、第1孔44a1と、第2孔44a2が形成されている。第1孔44a1は、U字の孔である。第1孔44a1は、2つの対となるナット42c及びばね42dを収容するようにモータ42の回転軸42aが挿通されている。第2孔44a2は、ガイド軸43が挿通されている。基部44aは、モータ42の回転に伴って回転軸42a上を軸線方向Xに直線移動する。
【0032】
接続部44bは、第2反射鏡3のレバー3aを挟んで接触するクリップ状の部位である。接続部44bは、基部44aの上方向+Zの一端部に形成される。
【0033】
押圧部44cは、スイッチ部45を押す平板状の部位である。押圧部44cは、基部44aの下方向-Zの他端部に形成される。押圧部44cは、フレーム41の底板部41aの第1スリット孔41a1を貫通するように、基部44aから下方向-Zに向けて延びる。
【0034】
スイッチ部45は、2本の配線45aを備えたプッシュスイッチである。スイッチ部45は、可動部44の基準位置を検出するためのスイッチである。言い換えれば、第2反射鏡3の回転角度の基準位置を検出するためのスイッチである。スイッチ部45は、底板部41aの下面41abの第1スリット孔41a1の端部近傍に固定されている。
【0035】
コネクタ46は、モータ42の配線42b及びスイッチ部45の配線45aを制御部5に電気的に接続するコネクタである。
【0036】
配線クランプ部材47は、スイッチ部45の配線45aを支持する樹脂製のクランプである。配線クランプ部材47は、底板部41aの下面41abに固定されている。
【0037】
錘48は、真鍮などの金属製の錘である。錘48は、リードスクリュー機構4の固有振動数周辺での共振現象を抑制するTMD(Tuned Mass Damper)である。
【0038】
(本開示のヘッドアップディスプレイHの利点)
ヘッドアップディスプレイHのリードスクリュー機構4は、基準位置を検出するスイッチ部45が底板部41aの下面41abの第1スリット孔41a1の端部近傍に固定されている。そして、軸線方向Xに直線移動する可動部44の下方向-Zに押圧部44cが形成されており、この押圧部44cが第1スリット孔41a1を貫通する。
この構成は、基準位置を検出するスイッチ部45の配置のみを直線移動する可動部材の一端側から他端側へ変更することが容易であるため、ヘッドアップディスプレイの設計の自由度が高まる。
また、第1スリット孔41a1の端部が押圧部44cのストッパとして機能することから、軸線方向Xにおける長さを調整することで、リードスクリュー機構4の可動範囲を定めることができる。
【0039】
また、配線クランプ部材47によりスイッチ部45の配線45aを保持する構成であるため、リードスクリュー機構4の筐体6への組付け性が良好となる。尚、配線クランプ部材47は、フレーム41と一体に構成してもよい。
【0040】
また、底板部41aには、軸線方向Xに延びる第1スリット孔41a1に連なって幅方向Yに延びる第2スリット孔41a2が形成されている。この第2スリット孔41a2により、可動部44をモータ42の回転軸42aに組み付ける際の組付けが良好となる。
【0041】
可動部44の組付けについて
図7を参照して説明する。可動部44は、U字の第1孔44a1にナット42c及びばね42dを収容するようにモータ42の回転軸42aを挿通する。この際、幅方向Yの先端方向+Yに向けて可動部44をスライドさせて回転軸42aに組付ける必要があるが、同時に可動部44の押圧部44cを第1スリット孔41a1に挿通しなければならない。ここで、第1スリット孔41a1に連なって幅方向Yに延びる第2スリット孔41a2が形成されているため、組付けが良好となる。
【符号の説明】
【0042】
WS …ウインドシールド
V …虚像
L …表示光
H …ヘッドアップディスプレイ
1 …表示部
2 …第1反射鏡
3 …第2反射鏡
3a …レバー
3b …回転軸
4 …リードスクリュー機構
41 …フレーム
41a …底板部
41a1…第1スリット孔
41a2…第2スリット孔
41au…上面
41ab…後面
41b …第1側壁部
41c …第2側壁部
42 …モータ
42a …回転軸
42b …配線
42c …ナット
42d …ばね
43 …ガイド軸
44 …可動部
44a …基部
44a1…第1孔
44a2…第2孔
44b …接続部
44c …押圧部
45 …スイッチ部
45a …配線
46 …コネクタ
47 …配線クランプ部材
48 …錘
5 …制御部
6 …筐体
6a …防塵カバー
X …軸線方向
Y …幅方向
Z …上下方向